(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20240807BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240807BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20240807BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20240807BHJP
A47K 10/20 20060101ALI20240807BHJP
A47K 10/42 20060101ALI20240807BHJP
D21H 11/14 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A47L13/16 A
D21H27/00 Z
B65D83/08 B
A47K10/16 C
A47K10/20 B
A47K10/42 B
D21H11/14
(21)【出願番号】P 2020146056
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051028(JP,A)
【文献】特開2009-023721(JP,A)
【文献】特開2008-195412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/16
D21H 11/14,27/00
B65D 83/08
A47K 10/16-10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量が、
19.5~23.0g/m
2であり、
紙厚が、1.00~
1.38mm/10プライであり、
縦強度が、
500~850gf/25mmであり、
横強度が、
230~
390gf/25mmであり、
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が、70~100質量%であり、
ミルクカートン由来の古紙パルプの含有量が20質量%以下であ
り、
表面積が、160000~250000mm
2
であり、
略矩形状であり、縦幅が400~500mmであり、横幅が400~500mmである紙ワイパーが、交互に折り畳まれるように積層された紙ワイパー積層体と、
前記紙ワイパー積層体を収容し、その天面に設けられた取出し口から前記紙ワイパーをポップアップ式に取り出し可能である、箱形状の収納箱と、を備え、
前記収納箱は、長手方向である横幅の長さが410~510mmであり、短手方向である縦幅の長さが100~150mmであり、高さが70~110mmであり、かつ、
前記取出し口は、前記長手方向に沿って開口が形成された形状であり、前記短手方向において幅広な広幅部と、前記短手方向において幅狭な2つの狭幅部と、を少なくとも有し、
上面視において、前記広幅部は、前記2つの前記狭幅部の間に配置されており、
前記取出し口は、上面視において、その横幅の長さが310~380mmであり、前記狭幅部の縦幅の最大長が10~30mmである、
紙ワイパー
入り収納箱。
【請求項2】
さらに、
前記紙ワイパーのLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が、30質量%以下である、
請求項1に記載の紙ワイパー
入り収納箱。
【請求項3】
前記取出し口は、その外周が切り取り用のミシン目により形成されている、
請求項
1又は
2に記載の紙ワイパー入り収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の衛生思考の高まりにより、使い捨ての紙ワイパーが使用されている。このような紙ワイパーは。医療現場、企業及び大学の研究室、並びに電子部品等の製造工場等において汎用されている。紙ワイパーは、例えば、油成分及び汚れ等を拭き取るために使用される。例えば、医療現場では、医療器具や手すり等の清拭に使用される。また、研究所では、ビーカーなどの実験器具の清掃等に使用される。その他にも、各種液体の吸い取り、電子部品のワイピング、色素等の薬品類の吸着等に使用されている。
【0003】
そして、このような紙ワイパーは、箱形状の収納箱等に収納されて使用される。例えば、特許文献1には、ポップアップ式に取出すように交互に積層されたワイパーを収納する収納箱において、該収納箱のシート取出口用開口を所定幅のスリットが天面の長手方向に沿って両側面まで延びている繊維積層体収納箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した紙ワイパーには、丈夫さ及び吸水性に加えて、使用時の紙粉の脱落を抑制できることが要求される。例えば、対象物の拭き取り時に、対象物との摩擦によって紙粉といわれる脱落物(脱落紙粉)が発生すると、拭き取り対象にこれが付着し、種々の不具合が発生する。一例を挙げると、クリーンルーム等のように高度なクリーン度が要求される環境下で紙ワイパーを用いる場合、脱落紙粉の発生は発塵対策及び静電気対策に悪影響を与える。また、ビーカー等の実験器具の拭き取りに紙ワイパーを用いる場合、実験器具に脱落紙粉が付着すると、実験及び試験の妨げになる。さらに、紙ワイパーの脱落紙粉の発生は、紙ワイパー表面の毛羽立ちの原因にもなる。このようなことから、紙粉が脱落しない紙ワイパーが求められるのである。このような脱落紙粉の問題は、大面積の紙ワイパーの場合に顕著となる。
【0006】
しかし、紙ワイパーの丈夫さを確保するために、例えば、紙ワイパーの坪量を上げることが行われているが、紙ワイパーの繊維量が多くなるために、使用時の脱落紙粉の量が増えてしまう。
【0007】
また、紙ワイパーの製造工程に用いられるダブルディスクリファイナ(DDR)等の叩解機の負荷を調整することによって、紙ワイパーの丈夫さを確保することが試みられている。しかし、DDRの負荷を増やすと、叩解によって細かい繊維裁断が起きてしまい、脱落紙粉の量が増えてしまう。
【0008】
またさらに、乾燥紙力剤の添加量を増やすことによって、紙ワイパーの丈夫さを確保することが試みられている。しかし、薬剤を高充填すると、紙ワイパーの表面がパリッとしてしまい、ワイプ時に対象物との摩擦により脱落紙粉が発生しやすくなり、結果として脱落紙粉の量が増えてしまう。
【0009】
このように、紙ワイパーの丈夫さ、吸水性、及び使用時の脱落紙粉の抑制という全ての要求を実用レベルで満足できる紙ワイパーは、未だ開発できていないのが実情である。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、紙ワイパーの丈夫さ及び吸水性に優れるだけでなく、使用時に紙粉が脱落しない、紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、坪量が17.0~23.0g/m2であり、紙厚が1.00~1.40mm/10プライであり、縦強度が420~850gf/25mmであり、横強度が170~400gf/25mmであり、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が70~100質量%であり、ミルクカートン由来の古紙パルプの含有量が20質量%以下である、紙ワイパーとすることに知見を得て、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0013】
(1)
坪量が、17.0~23.0g/m2であり、紙厚が、1.00~1.40mm/10プライであり、縦強度が、420~850gf/25mmであり、横強度が、170~400gf/25mmであり、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が、70~100質量%であり、ミルクカートン由来の古紙パルプの含有量が、20質量%以下である、紙ワイパーである。
(2)
さらに、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が、30質量%以下である、(1)に記載の紙ワイパーである。
(3)
前記紙ワイパーの表面積は、160000~250000mm2である、(1)又は(2)に記載の紙ワイパーである。
(4)
前記紙ワイパーは、略矩形状であり、縦幅が、400~500mmであり、横幅が、400~500mmである、(1)~(3)のいずれかに記載の紙ワイパーである。
(5)
(1)~(3)のいずれかに記載の紙ワイパーが、交互に折り畳まれるように積層された紙ワイパー積層体と、前記紙ワイパー積層体を収容し、その天面に設けられた取出し口から前記紙ワイパーをポップアップ式に取り出し可能である、箱形状の収納箱と、を備える、紙ワイパー入り収納箱である。
(6)
前記収納箱は、長手方向である横幅の長さが410~510mmであり、短手方向である縦幅の長さが100~150mmであり、高さが70~110mmであり、かつ、前記取出し口は、前記長手方向に沿って開口が形成された形状であり、前記短手方向において幅広な広幅部と、前記短手方向において幅狭な2つの狭幅部と、を少なくとも有し、上面視において、前記広幅部は、前記2つの前記狭幅部の間に配置されており、前記取出し口は、上面視において、その横幅の長さが310~380mmであり、前記狭幅部の縦幅の最大長が10~30mmである、(5)に記載の紙ワイパー入り収納箱である。
(7)
前記取出し口は、その外周が切り取り用のミシン目により形成されている、(5)又は(6)に記載の紙ワイパー入り収納箱である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、紙ワイパーの丈夫さ及び吸水性に優れるだけでなく、使用時に紙粉が脱落しない、紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の斜視図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の上面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の取出し口の説明に供する概念図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の取出し口の説明に供する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0017】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0019】
(紙ワイパー)
【0020】
本実施形態に係る紙ワイパーは、坪量が、17.0~23.0g/m2であり、紙厚が、1.00~1.40mm/10プライであり、縦強度が、420~850gf/25mmであり、横強度が、170~400gf/25mmであり、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有量が、70~100質量%であり、ミルクカートン由来の古紙パルプの含有量が、20質量%以下である。かかる紙ワイパーは、丈夫さ及び吸水性に優れており、かつ、使用時の紙粉の脱落を抑制することができる。
【0021】
本発明者らは、医療用紙ワイパー及び産業用紙ワイパー等の使用態様をつぶさに研究したところ、従来の紙ワイパーは、その丈夫さ及び吸水性を高めようとすると、使用時の脱落紙粉が多くなってしまい、これらを高いレベルで両立できていないことに気づいた。これに着目し、かかる不具合を解消すべく鋭意研究したところ、意外にも、本実施形態に係る紙ワイパーは、丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制を高いレベルで両立できることを見出した。
【0022】
なお、ここでいう脱落紙粉とは、紙ワイパーから脱落した紙粉のことをいい、紙粉には、例えば、紙ワイパーの繊維片及び填料粉末等が包含される。
【0023】
本実施形態に係る紙ワイパーの坪量は、17.0~23.0g/m2である。坪量の上限は、22.0g/m2以下であることが好ましく、21.0g/m2以下であることがより好ましい。また、坪量の下限は、19.0g/m2以上であることが好ましく、19.5g/m2以上であることがより好ましい。このような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。
【0024】
本実施形態に係る紙ワイパーの紙厚は、1.00~1.40mm/10プライである。紙厚の上限は、1.20mm/10プライ以下であることが好ましい。また、紙厚の下限は、1.10mm/10プライ以上であることが好ましく、1.16mm/10プライ以上であることがより好ましい。このような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。なお、ここでいう紙厚は、1プライのシートを10枚積層したときの厚さをいい、例えば、2プライのシートの場合、これを5シート積層したときの厚さ(2プライ×5)に相当する。
【0025】
本実施形態に係る紙ワイパーの縦強度は、420~850gf/25mmである。縦強度の上限は、810gf/25mm以下であることが好ましく、770gf/25mm以下であることがより好ましい。また、縦強度の下限は、500gf/25mm以上であることが好ましく、520gf/25mm以上であることがより好ましい。このような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。
【0026】
なお、ここでいう縦強度とは、紙ワイパー1プライについて乾燥時の縦幅方向の引っ張り強さである。縦強度は、JIS P 8113に準拠して測定することができる。縦幅方向とは、紙ワイパーの製造時の流れ方向(MD;Machine Direction)をいう。
【0027】
本実施形態に係る紙ワイパーの横強度は、170~400gf/25mmである。横強度の上限は、390gf/25mm以下であることが好ましく、350gf/25mm以下であることがより好ましく、310gf/25mm以下であることが更に好ましい。また、横強度の下限は、230gf/25mm以上であることが好ましく、250gf/25mm以上であることがより好ましい。このような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。
【0028】
なお、ここでいう横強度とは、紙ワイパー1プライについて乾燥時の横幅方向の引っ張り強さである。横強度は、JIS P 8113に準拠して測定することができる。横幅方向とは、紙ワイパーの製造時の流れ方向に垂直な方向(CD;Cross Direction)をいう。
【0029】
本実施形態に係る紙ワイパーは、少なくともNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を含むものである。そして、本実施形態に係る紙ワイパーは、木材パルプ製であることが好ましい。さらには、非木材パルプ(例えば、麻パルプ、竹パルプ等)、化学繊維(例えば、セルロース系繊維、オレフィン系化学繊維、ポリエステル系繊維等)、及び無機物(例えば、ガラス繊維等)を含まないことが好ましい。またさらに、本実施形態に係る紙ワイパーは木材パルプのみを含むことがより好ましい。
【0030】
本実施形態に係る紙ワイパーは、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を含有する。NBKPの含有量は、70~100質量%である。NBKPの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。NBKPは、LBKP等と比較して繊維長が長い傾向にあるため、繊維同士がより密接に絡み合うため強度の向上に適する。そして、本実施形態においてNBKP(N材)の含有量をこのような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。
【0031】
なお、上記NBKPの材種は、モミ、マツ、スギ、及びヒノキ等の針葉樹から作製されるパルプであることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る紙ワイパーは、さらにLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を含有してもよい。LBKPを含有する場合、LBKPの含有量は30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことがより更に好ましい。LBKPは、NBKP等と比較して繊維長が短い傾向にあるため、LBKP(L材)の含有量をこのような範囲に制御することにより、キメがより細かい紙ワイパーでありながら、その丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制のバランスを高いレベルに維持することができる。
【0033】
なお、上記LBKPの材種は、ユーカリ、ポプラ、アカシア、及びカシ等の広葉樹から作製されるパルプであることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る紙ワイパーは、さらにミルクカートン由来の古紙パルプを含有してもよいが、この古紙パルプの含有量は20質量%以下である。古紙の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが更に好ましい。この古紙パルプの含有量をこのような範囲に制御することにより、紙ワイパーの丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制のバランスが一層向上する。
【0035】
なお、本実施形態における古紙パルプとは、ミルクカートン由来の古紙パルプであるものをいう。ミルクカートン由来の古紙パルプは、針葉樹パルプが主体であり、紙ワイパーの強度を確保しやすい一方、品質のばらつきが大きく、含有割合が高すぎると製品の品質に影響する傾向にあるので、上記範囲の含有率にすることが好ましい。よって、例えば、上述したNBKP及びLBKPは、ここでいう古紙パルプには該当しない。
【0036】
本実施形態に係る紙ワイパーは、本実施形態の効果を阻害しない範囲であれば、その他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、柔軟剤、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤等が挙げられる。しかし、添加剤合計の含有量は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
本実施形態に係る紙ワイパーは、拭き取り面積を大きくした場合であっても、その丈夫さ、吸水性、及び脱落紙粉の抑制を高いレベルで維持することができる。その好適な態様の一例としては、その表面積が160000~250000mm2であるものが挙げられる。表面積の下限は、160000mm2より大きいことがより好ましく、190000mm2以上であることが更に好ましい。また、表面積の上限は、230000mm2以下であることがより好ましい。このような範囲に制御することによって、汚れの拭き取り等のワイプ用途で使用する際に必要枚数が少なくて済む。例えば、小面積の紙ワイパーを複数枚(大面積1枚と同等の面積分)取って使用する場合と比較して、紙のカット部分の合計長さが短くなることで、カット部分から脱落する紙粉が少ないという利点がある。すなわち、大面積でありながら、特に脱落紙粉の抑制の効果が一層向上する。
【0038】
なお、表面積とは、片面の表面積のことをいう。そして、紙ワイパーを折りたたんで後述する収納箱等に収容する場合には、折りたたんだ紙ワイパーを展開した状態の表面積をいう。
【0039】
本実施形態に係る紙ワイパーの形状は、特に限定されず、矩形状(長方形状、正方形状)、円形状、楕円形状、多角形状等であってもよいが、ポップアップ式の紙ワイパー入り収納箱に使用する観点から、矩形状であることが好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態に係る紙ワイパーが矩形状である場合、縦幅は、400~500mmであることが好ましい。縦幅の下限は、430mm以上であることがより好ましい。また、縦幅の上限は、465mm以下であることがより好ましい。そして、横幅は、400~500mmであることが好ましい。横幅の下限は、425mm以上であることがより好ましい。また、横幅の上限は、460mm以下であることがより好ましい。さらには、縦幅及び横幅が、いずれも上述した範囲にあることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る紙ワイパーは、抄紙機を用いた抄造工程によって製造することができる。その際、例えば、紙ワイパーの坪量は、使用パルプの量を増やすことによって大きくすることができる。そして、紙ワイパーの紙厚は、使用パルプの量を増やしたり、クレーピングの調整等を行うことによって大きくすることができる。また、紙ワイパーの縦強度は、使用パルプの量を増やす、叩解を強める、湿潤剤や乾燥紙力剤を添加すること等によって大きくすることができる。さらに、紙ワイパーの横強度は、使用パルプの量を増やす、叩解を強める、湿潤剤や乾燥紙力剤を添加すること等によって大きくすることができる。
【0042】
上述したクレーピングの調整は、例えば、クレープ本数やクレープ高さを制御することによって効果的に行うことができる。クレープは、微細なシワ、ヒダであり、このクレープが伸縮したりすることによって、紙厚等を制御することができ、さらには、坪量、紙厚、縦強度、及び横強度等の物性バランスの制御にも資するものである。本実施形態では、このような観点から、クレープ本数の上限は、通常、22本/6mm以下とすることが好ましく、20本/6mm以下とすることがより好ましい。また、クレープ本数の下限は、12本/6mm以上とすることが好ましく、15本/6mm以上とすることがより好ましい。そして、本実施形態では、クレープ高さの上限は、通常、70μm以下とすることが好ましく、63μm以下とすることがより好ましい。また、クレープ高さの下限は、41μm以上とすることが好ましく、47μm以上とすることがより好ましい。特に、本実施形態の坪量を有する紙ワイパーにおいて、クレープ本数及びクレープ高さを上記指針に基づき制御することによって、特に、紙厚、縦強度、及び横強度等を上述した各範囲内となるよう効果的に制御することができる。
【0043】
上述した本実施形態に係る紙ワイパーは、紙ワイパーの丈夫さ及び吸水性に優れるだけでなく、使用時の紙粉の脱落を抑制できるものである。そして、拭き取り用の紙ワイパーとして使用されるような比較的大面積のものであっても、このような利点を発揮することができる。さらには、拭き取り用の紙ワイパーを、ポップアップ式に取り出し可能な収納箱に収納して使用する際にも、このような効果を発揮することができる。
【0044】
以下、一例として、かかる紙ワイパーの積層体を収納箱に収納して用いる場合について、説明する。
【0045】
(紙ワイパー入り収納箱)
【0046】
図1は、第1実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の斜視図であり、
図2は、
図1の紙ワイパー入り収納箱の上面図である。
【0047】
本実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱1は、上述した紙ワイパーが、交互に折り畳まれるように積層された紙ワイパー積層体10と、紙ワイパー積層体10を収容し、その天面に設けられた取出し口21から紙ワイパーをポップアップ式に取り出し可能である、箱形状の収納箱20と、を備える。
【0048】
紙ワイパー積層体10は、交互に折り畳まれるように積層(Vフォールド等と呼ばれることもある。)することにより、各シートが継続して取出し口21から取り出すことができる。積層されるプライ数は、1プライ、2プライ、又はそれ以上であってもよいが、上述した脱落紙粉の抑制の観点から、1プライ又は2プライであることが好ましく、1プライであることがより好ましい。
【0049】
収納箱20は、その天面に取出し口21を有する。取出し口21は、その長手方向(
図2における横幅方向)に沿って開口が形成された形状であり、短手方向(
図2における縦幅方向)において幅広な広幅部22と、短手方向において幅狭な2つの狭幅部(左狭幅部23と右狭幅部24)とを少なくとも有し、広幅部22は、左狭幅部23と右狭幅部24の間に配置されている。
【0050】
取出し口21の形状は、使用する紙ワイパーの形状等を考慮して決定することができる。例えば、表面積が大きい紙ワイパーや横幅が広い紙ワイパーを収納箱20に収容する場合、取出し口21は、その長手方向に沿って略直線状に延設された狭幅部(左狭幅部23及び右狭幅部24)が設けられていることが好ましい(
図2参照)。例えば、
図2に示すように、その長手方向に沿って略直線状となるよう細長い形状とすることができる。
【0051】
そして、広幅部22を、左狭幅部23と右狭幅部24の間に配置するとともに、長手方向において取出し口の略中央に配置することが好ましい(
図2参照)。これにより、使用者が広幅部22から紙ワイパーを取り出しやすくなる。
【0052】
さらに、広幅部22の上面視における形状は、特に限定されず、使用する紙ワイパーの形状等を考慮して決定することができる。例えば、
図2に示すように、略円形状又は楕円形状でもよいし、矩形状、多角形状、その他不定形状等であってもよい。
【0053】
従来の紙ワイパーは、横幅が広いと丈夫さ等が低下する傾向にあるため、このような横幅が広い紙ワイパーをポップアップ式の収納箱から取り出す際に、紙ワイパーの変形や脱落紙粉の発生等の不具合が発生する。しかし、本実施形態に係る紙ワイパーは、丈夫さ及び吸水性に優れるだけでなく、使用時に紙粉が脱落しないため、表面積が大きい紙ワイパーや横幅が広い紙ワイパーであっても、このような不具合は発生しない点で好適である。
【0054】
収納箱20の寸法形状は、収容する紙ワイパー積層体10の形状を考慮して決定することができるので、特に限定されないが、従来の大面積又は横幅が広い紙ワイパー及びこれを収容する紙ワイパー入り収納箱で発生する上記の不具合を、効果的に防止できるという観点から、収納箱20の寸法形状も、表面積が大きい紙ワイパーや横幅が広い紙ワイパーを収納できるものが好適例として挙げられる。収納箱20の寸法形状の好適例としては、例えば、長手方向である収納箱20の横幅Wの長さは、410~510mmであることが好ましい。そして、短手方向である収納箱20の縦幅Dの長さは、100~150mmであることが好ましい。また、収納箱20の高さHは、70~110mmであることが好ましい。
【0055】
取出し口21の寸法形状も、収容する紙ワイパー積層体10の形状を考慮して決定することができるので、特に限定されないが、従来の紙ワイパー及びこれを収容する紙ワイパー入り収納箱で発生する上記の不具合を、効果的に防止できるという観点から、取出し口21の寸法形状は、表面積が大きい紙ワイパーや横幅が広い紙ワイパーを取り出しに適したものが好適例として挙げられる。取出し口21の寸法形状の好適例としては、例えば、上面視において、広幅部22が2つの狭幅部(左狭幅部23及び右狭幅部24)の間に配置されており、取出し口21は、上面視において、その長手方向である横幅W1の長さが310~380mmであり、短手方向である縦幅の最大長D1が30~50mmであることが好ましい。なお、取出し口21の横幅W1は、広幅部22の横幅W2、左狭幅部23の横幅W3、右狭幅部24の横幅W4の合計である(W1=W2+W3+W4)。また、上述した縦幅の最大長D1は、広幅部22の縦幅と同じである。
【0056】
広幅部22の横幅W2は、70~90mmであることが好ましい。そして、左狭幅部23の横幅W3及び右狭幅部24の横幅W4は、160~220mmであることが好ましい。左狭幅部23の縦幅D2及び右狭幅部24の縦幅D3は、10~30mmであることが好ましい。そして、左狭幅部23及び右狭幅部24は、広幅部22を挟んで対称な形状であることが好ましい。よって、左狭幅部23の横幅W3及び右狭幅部24の横幅W4は、同じ長さであることが好ましい。同様に、左狭幅部23の縦幅D2及び右狭幅部24の縦幅D3は、同じ長さであることが好ましい。
【0057】
図3は、第2実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の上面図である。
【0058】
本実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱2は、取出し口21が、その外周が切り取り用のミシン目26により形成されていることが好ましい。紙ワイパー入り収納箱2は、その天面に設けられた取出し口21は、ミシン目26により外周が形成され(
図3の破線参照)、ミシン目26で囲まれた領域を切り離すことによって、取出し口21を構成する開口を形成可能となっている。
【0059】
ミシン目26で囲まれた領域のうち、取出し口21の広幅部22の領域に対応する箇所に短手方向(縦幅方向)に沿ってスリット25が形成されている。このスリット25から左右に分割して切り離せるようになっているため、ミシン目26で囲まれた領域を容易に開口することができる。
【0060】
また、図示はしないが、ミシン目26は、長手方向(横幅方向)を2重線とし、縦幅方向を単線としてもよい。また、2重線とするミシン目26は、一方のミシン目のカット部分と他方のミシン目のカット部分とが千鳥状に配置された構成としてもよい。
【0061】
図4は、第3実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の取出し口の説明に供する概念図である。
【0062】
紙ワイパー入り収納箱3の取出し口27の広幅部28は、上面視において多角形状である。このように、本実施形態では、多角形状の広幅部であってもよい。多角形状としては、例えば、矩形状(例えば、長方形状、正方形状、菱形形状、平行四辺形状、台形状等;
図5参照)、6角形状、8角形形状等であってもよい。例えば、紙ワイパー入り収納箱4の広幅部28は、上面視において略矩形状である点で、第1実施形態の紙ワイパー入り収納箱1と相違する。
【0063】
図5は、第4実施形態に係る紙ワイパー入り収納箱の取出し口の説明に供する概念図である。
【0064】
紙ワイパー入り収納箱4の取出し口29の広幅部30は、長手方向(横幅方向)に沿って略平行となるように、上下の端部が略直線状となっている点で、第3実施形態の紙ワイパー入り収納箱3と相違する。このように、本実施形態では、広幅部28の形状は特に限定されず、使用に適した形状に設計することもできる。
【0065】
以上説明してきたように、本実施形態に係る紙ワイパーは、丈夫さ及び吸水性に優れるだけでなく、使用時の脱落紙粉の発生を抑制することもできる。そして、大面積であったり、幅広な形状であっても、このような効果を高いレベルで維持することができる。よって、本実施形態に係る紙ワイパーの使用時には、毛羽立ちや紙粉が少なく、拭き取り後の繊維も目立たないものである。また、拭き取り対象である水分及び油分を素早く吸収することができる。さらには、木材パルプであるNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を主原料としており、その態様によっては蛍光染料等を用いなくてもよいという効果も期待できる。よって、本実施形態に係る紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱は、ラボ等の研究所、精密電子部品、化粧品、食品等の製造工場、病院等の医療施設等において好適に使用することができる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
<実施例1~9、比較例1~6>
【0068】
(紙ワイパー積層体10の作製)
【0069】
まず、各表に示す材料を用い、抄紙機を用いて紙ワイパーを製造する工程を行い、各表に示す坪量、紙厚、強度、及び寸法形状を有する矩形状の紙ワイパーを作製した。続いて、得られた紙ワイパーを1プライずつ交互に折り畳むように積層し、
図1に示す紙ワイパー積層体10(紙ワイパー120枚入り)を得た。なお、表1及び表2のNBKPはマツ、スギを原料とした針葉樹晒クラフトパルプであり、LBKPはユーカリを原料とした広葉樹晒クラフトパルプであり、古紙パルプはミルクカートン由来の古紙パルプであった。
【0070】
(紙ワイパー入り収納箱1の作製)
【0071】
得られた紙ワイパー積層体10を、
図1及び
図2に示す収納箱(W=130~510mm、D=100~150mm、H=70~110mm;取出し口21のW1=80~380mm、W2=30~90mm、W3=25~220mm、D1=30~50mm、D2=D3=10~30mm)に収容し、紙ワイパー入り収納箱1を作製した。
【0072】
各実施例及び各比較例の紙ワイパー及び紙ワイパー入り収納箱について、以下の要領で官能評価を行った。
【0073】
なお、紙ワイパーの縦強度は、紙ワイパー1プライについて乾燥時の縦幅方向の引っ張り強さであり、JIS P 8113に準拠して測定した。ここでいう縦幅方向とは、紙ワイパーの製造時の流れ方向(MD;Machine Direction)をいい、
図1及び
図2において短手方向(縦幅方向)の強度をいう。
【0074】
そして、紙ワイパーの横強度とは、紙ワイパー1プライについて乾燥時の横幅方向の引っ張り強さであり、JIS P 8113に準拠して測定した。ここでいう横幅方向とは、紙ワイパーの製造時の流れ方向に垂直な方向(CD;Cross Direction)をいい、
図1及び
図2において長手方向(横幅方向)の強度をいう。
【0075】
(官能評価)
【0076】
官能評価は、60名を対象にして行った。各実施例及び各比較例の丈夫さ、吸水性、脱落紙粉の少なさについて、60名が1点から5点で評価した。
【0077】
「優」は60名の評価の平均点が4.0点以上であることを示し、「良」は平均点が3.0点以上4.0点未満であることを示し、「可」は平均点が2.0点以上3.0点未満、「不可」は平均点が2.0点未満であることを示している。なお、いずれの評価も「可」以上の場合に合格と判定した。
【0078】
(紙ワイパーの丈夫さの評価)
紙ワイパー使用時の丈夫さを評価した。具体的には、温度23℃、湿度50%(調湿条件下)で、ドライ状態でプラスチック製の机上をサンプル1枚で拭き取る動作をした場合の丈夫さを評価した。
・「◎」:特に丈夫に感じた優れたもの(優)
・「〇」:丈夫に感じた(良)
・「△」:破れはなく、使用に問題はなかった(可)
・「×」:破れがあり、使用に問題があった(不可)
【0079】
(紙ワイパーの吸水性の評価)
紙ワイパー使用時の吸水性を評価した。具体的には、温度23℃、湿度50%(調湿条件下)で、プラスチック製の机上にある10ml水を、サンプル1枚で拭き取った場合の吸水性を評価した。なお、サイズの小さサンプルはサンプルの合計面積が160000~250000mm2となるよう複数枚を取り出して評価した。
・「◎」:特に吸水性が良いと感じた(優)
・「〇」:吸水性が良かった(良)
・「△」:吸水性に関して使用上の問題がなかった(可)
・「×」:吸水性が悪かった(不可)
【0080】
(紙ワイパーの脱落紙粉の評価)
紙ワイパーを紙ワイパー入り収納箱1から取り出して、温度23℃、湿度50%(調湿条件下)で、ドライ状態でプラスチック製の机上をサンプル1枚で拭き取る動作をした場合の脱落紙粉を評価した。なお、サイズの小さいサンプルは、その合計面積が160000~250000mm2となるよう複数枚を取り出して評価した。例えば、実施例1では10枚分を、実施例2では5枚分を取り出して使用し、これらから発生した紙粉の多少をもって評価した。
・「◎」:脱落紙粉が目視では確認できなかった(優)
・「〇」:脱落紙粉が目視で多少確認されたが、気にならないレベル(良)
・「△」:脱落紙粉が目視で確認されたが、通常使用では問題のないレベル(可)
・「×」:脱落紙粉が目視で多量に確認され、使用上の問題があった(不可)
【0081】
各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を、表1及び表2に示す。
【0082】
【0083】
【符号の説明】
【0084】
1,2,3,4:紙ワイパー入り収納箱、10:紙ワイパー積層体、20:収納箱、21,27,29:取出し口、22,28,30:広幅部、23:左狭幅部、24:右狭幅部、25:スリット、26:ミシン目、W:収納箱の横幅、W1:取出し口の横幅、W2:広幅部の横幅、W3:左狭幅部の横幅、W4:右狭幅部の横幅、D:収納箱の縦幅、D1:広幅部の縦幅、D2:左狭幅部の縦幅、D3:右狭幅部の縦幅、H:収納箱の高さ