(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像装置、半導体装置及び光電変換システム
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2020158968
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 真人
(72)【発明者】
【氏名】関根 寛
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197674(JP,A)
【文献】特開2020-047826(JP,A)
【文献】特開2018-078281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0151610(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111415950(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0021473(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面及び第二面を有する半導体層を含む光電変換装置であって、
前記半導体層に配置されて入射光によって発生した信号電荷を蓄積する第一導電型の第一半導体領域と、
前記半導体層に配置され
、前記信号電荷を保持する第一導電型の第二半導体領域と、
前記第一面の上に配置され、前記第一半導体領域に蓄積された前記信号電荷を前記第二半導体領域へ転送するためのチャネルを前記半導体層に形成する第一転送電極と、
前記第二半導体領域と前記第二面との間に配置された第二導電型の第三半導体領域と、
前記第三半導体領域と前記第二面との間に配置された第二導電型の第四半導体領域と、
前記第一面と前記第二面との間に配置された第一導電型のフローティングデフュージョン領域と、
前記第一面の上に配置され、前記第二半導体領域から前記信号電荷を前記フローティングデフュージョン領域へ転送するためのチャネルを前記半導体層に形成する第二転送電極と、を備え、
前記第三半導体領域は、前記第二半導体領域と、前記第一面に対する正射影において少なくとも一部が重なり、
前記第三半導体領域は、前記第四半導体領域と前記第一面に対する正射影において少なくとも一部が重なり、
前記第三半導体領域と前記第四半導体領域との間の前記第二導電型である中間半導体領域の不純物濃度の実効値が2×10
13cm
-3以上、1×10
15cm
-3以下であり、前記中間半導体領域の、前記第一面に対する法線方向における幅は0.13μm以上、0.8μm以下であ
り、
前記中間半導体領域の不純物濃度に対する前記第三半導体領域の不純物濃度の比が50以上である、ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
さらに、前記第二導電型の第五半導体領域が、前記第二半導体領域と前記第四半導体領域との間であって、前記第三半導体領域より前記第一面に対する法線方向において深い位置に配置されており、前記第五半導体領域は前記第二半導体領域と前記第一面に対する正射影において少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第四半導体領域と前記第五半導体領域とは前記第一面に対する正射影において部分的に重なることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第三半導体領域と前記第五半導体領域とは前記第一面に対する正射影において部分的に重なることを特徴とする請求項2又は3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
さらに、前記第四半導体領域と前記第二面との間に第二導電型の第六半導体領域が配置され、前記第五半導体領域と前記第六半導体領域との間の第二の中間半導体領域の不純物濃度の実効値が2×10
13cm
-3以上、1×10
15cm
-3以下であり、前記第二の中間半導体領域の第一面に対する法線方向における幅は0.13μm以上、0.8μm以下であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第四半導体領域と前記第五半導体領域との間の前記第二導電型の第三の中間半導体領域は不純物濃度の実効値が2×10
13cm
-3以上、1×10
15cm
-3以下であり、前記第三の中間半導体領域の前記第一面に対する法線方向における幅は0.13μm以上、0.8μm以下であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第二半導体領域の一部が、前記第二転送電極の一部と前記第一面に対する正射影において重なるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
さらに、前記フローティングデフュージョン領域からの信号を増幅するトランジスタを備えることを特徴とする請求項
1乃至7の
いずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第四半導体領域は、前記フローティングデフュージョン領域及び前記第二転送電極と、前記第一面に対する正射影において部分的に重なることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第三半導体領域の不純物濃度の実効値は、前記第一面に対する法線方向において前記中間半導体領域へ向けて、ピーク濃度から減少するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置を含む画素が配置された画素部と、
前記画素部を制御して、前記画素から信号を読み出すための垂直走査回路と、
前記画素から読み出された信号を処理する処理回路と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置を含む画素が配置された画素部を有する半導体デバイスと
前記半導体デバイスを収容するパッケージと、を有する半導体装置。
【請求項13】
レンズを有する光学系と、
前記光学系を通過した光を電気信号に変換する請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置を含む画素が配置された画素部と、
前記画素部から出力される信号を処理する信号処理部と、を有する光電変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、撮像装置、半導体装置及び光電変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、n型の電荷蓄積領域の下方にp型のバリア領域を設けることにより、基板の深部で発生した光電荷の一部が電荷蓄積領域へ流入するのをブロックできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入射光により電荷を発生する第一導電型の光電変換部と、電荷が転送されて蓄積される第一導電型の電荷蓄積領域とを備えた光電変換装置では、電荷蓄積領域に電荷が保持されている期間に発生した電荷信号が電荷蓄積領域へ混入して偽信号となりうる。そこで、電荷蓄積領域の下に第二導電型のバリア領域を設けることが考えられるが、その場合第二導電型のバリア領域の下に、中間の半導体領域を挟んで第二導電型の領域が配置される場合がありうる。中間の半導体領域が中性領域を形成した場合、中性領域で発生した信号電荷に対するバリア領域のポテンシャルバリアは低くなりうる。このために信号電荷の一部が第一導電型の電荷蓄積領域へ混入し、偽信号になることがありうる。本発明の目的は、電荷蓄積領域への偽信号の混入を抑制するのに有利な構造の光電変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光電変換装置は、第一面及び第二面を有する半導体層を含み、前記半導体層に配置されて入射光によって発生した信号電荷を蓄積する第一導電型の第一半導体領域と、前記半導体層に配置され、前記信号電荷を保持する第一導電型の第二半導体領域と、前記第一面の上に配置され、前記第一半導体領域に蓄積された前記信号電荷を前記第二半導体領域へ転送するためのチャネルを前記半導体層に形成する第一転送電極と、前記第二半導体領域と前記第二面との間に配置された第二導電型の第三半導体領域と、前記第三半導体領域と前記第二面との間に配置された第二導電型の第四半導体領域と、前記第一面と前記第二面との間に配置された第一導電型のフローティングデフュージョン領域と、前記第一面の上に配置され、前記第二半導体領域から前記信号電荷を前記フローティングデフュージョン領域へ転送するためのチャネルを前記半導体層に形成する第二転送電極と、を備え、前記第三半導体領域は、前記第二半導体領域と、前記第一面に対する正射影において少なくとも一部が重なり、前記第三半導体領域は、前記第四半導体領域と前記第一面に対する正射影において少なくとも一部が重なり、前記第三半導体領域と前記第四半導体領域との間の前記第二導電型である中間半導体領域の不純物濃度の実効値が2×1013cm-3以上、1×1015cm-3以下であり、前記中間半導体領域の、前記第一面に対する法線方向における幅は0.13μm以上、0.8μm以下であり、前記中間半導体領域の不純物濃度に対する前記第三半導体領域の不純物濃度の比が50以上である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
電荷蓄積領域への疑信号の混入を抑制するのに有利な構造の光電変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図9】光電変換システム及び光電変換システムを適用した移動体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
また、以下の実施形態において、信号キャリアは電子、したがって信号蓄積層の導電型はN型、回路を形成するトランジスタも特に断らない限りN型MOSトランジスタとして説明する。しかし、信号キャリアをホールとして、N型の導電型とP型の導電型を入れ替えてもよい。
【0010】
[第一実施形態]
本実施形態の光電変換装置について説明する。光電変換装置は、PD部、メモリ、PD部に蓄積された信号電荷をメモリに転送するためのPD信号転送部を備えうる。さらに、光電変換装置は、メモリからの信号電荷をフローティングデフュージョン領域(以下「FD部」と称する。)へ転送するメモリ信号転送部、信号電荷を増幅して出力する増幅用MOSトランジスタを備えうる。
【0011】
図1は、第一面及び第二面を有する半導体層を含む、光電変換装置1が形成された半導体基板を、平面視した平面図であり、光電変換装置1のレイアウトを簡易的に示している。光電変換装置1はフォトダイオード(PD)部2、信号電荷を保持するメモリ部3、PD部2からメモリ部3へ信号電荷を転送するための転送電極4、FD部5、メモリ部3に保持された信号電荷をFD部5へ転送するための転送電極6を有しうる。さらに、PD部2をリセットするために信号電荷を排出するための信号電荷排出部(以下「OFD」と称する。)7、PD部2に蓄積した信号電荷をOFD7へ転送するための転送電極8も有しうる。光電変換装置1は、FD部5に転送された信号電荷を増幅して読み出すためのMOSトランジスタなどを含むMOSトランジスタ部9も有しうる。
【0012】
転送電極4の下には、メモリ部3のN型半導体領域に接し、半導体界面部付近に形成されるN型半導体領域10が配置されている。光電変換装置1は、素子分離のための、例えばShallow Trench Isolation(STI)などの酸化膜、または拡散層半導体で形成された素子分離部11も有しうる。
【0013】
転送電極4、転送電極6及び転送電極8は、PD2やメモリ部3が形成された半導体基板の第一面の上に配置されうる。平面視においてN型半導体領域10は少なくとも一部が転送電極4に重なるように配置される。
【0014】
MOSトランジスタ部9は、信号増幅用のMOSトランジスタ、FD部をリセットするリセット用MOSトランジスタ等の複数のMOSトランジスタを含みうる。またメモリ部3上にはメモリ部に入射する光を低減もしくは防ぐために、遮光部材が配置されうる。遮光部材としては例えばタングステンを用いることができる。
【0015】
図2は
図1における一点鎖線で示したA、B間の断面図である。低不純物濃度のN型の半導体基板12はチャネルを形成する転送電極4及び6が配置された第一面と、その反対面の第二面とを有する半導体層を含んでいる。N型半導体領域15は入射光によって発生した信号電荷を蓄積しうる。P型半導体領域13は、第一面に対する正射影としての平面視においてN型半導体領域15と重なっている。高不純物濃度のP型半導体領域14、14’はPD部2およびメモリ部3の半導体界面部に形成されている。PD部2は、P型半導体領域14’とN型半導体領域15および半導体領域15の直下にあってP型半導体領域13の深さまでのN型半導体領域を含み、P型半導体領域13はPD2の感度を決めうる。
【0016】
N型半導体領域16はN型半導体領域15から転送される信号電荷を保持しうる。メモリ部3は、P型半導体領域14とN型半導体領域16とを含む。PD2及びメモリ部3はともに埋め込み構造となっている。
【0017】
またP型半導体領域17は、N型半導体領域15とN型半導体領域10とを電気的に分離しうる。P型半導体領域17は、転送電極4の下に位置し、平面視において転送電極4と少なくとも一部が重なる。P型半導体領域18は、N型半導体領域16とN型半導体領域であるFD部5とを電気的に分離しうる。P型半導体領域19は、N型半導体領域10の下にあり、平面視においてN型半導体領域10と少なくとも一部が重なり、N型半導体領域16とほぼ重ならないように配置されている。
【0018】
P型半導体領域20は、N型半導体領域16の下に、平面視においてN型半導体領域16と少なくとも一部が重なるように配置されている。P型半導体領域19及びP型半導体領域20は、PD部2への入射光によりPD部に発生した信号電荷が拡散してN型半導体領域10やN型半導体領域16に流入するのを防ぎうる。P型半導体領域21、22は、ともに隣接する光電変換装置のPD同士を分離するための領域である。P型半導体領域20とP型半導体領域22とは部分的に重なっている。つまり光電変換装置の分離境界部は平面的に見た場合メモリ部3、FD部5と少なくとも一部が重なりうる。
【0019】
薄い誘電体膜23が半導体界面部上に形成されている。転送電極4、6、8及びMOSトランジスタのゲート電極は誘電体膜23上に形成されている。遮光部材30が、メモリ部3に入射する光を低減もしくは防ぐために、メモリ部3の上(
図2において誘電体膜23に対して転送電極4、6のある方向)に配置されうる。遮光部材30はPD部2を除く他の領域を覆うように配置されていてもよい。
【0020】
P型半導体領域19は、P型半導体領域20とは別の半導体領域として形成しうる。しかし、P型半導体領域20をP型半導体領域19の領域まで含めて形成してもよい。P型半導体領域22は平面視において、画素と画素の境界上のうちメモリ部3の箇所以外の箇所に配置される。最も深い位置に配置されたP型半導体領域13は、半導体界面部にあるP型半導体領域14などとP型半導体領域20、21、22、18等を介して電気的に導通し、固定された電位となりうる。
【0021】
図3は
図1における一点鎖線で示したC、D間の断面図である。
図3は、
図1では不図示の隣接する画素に含まれるPD2’が記載されている。PD2とPD2’との間にメモリ部3が配置されている。隣接する画素のそれぞれのPD2とPD2’は、メモリ部3を挟んで配置されている。メモリ部3上には遮光部材30が配置されうる。P型半導体領域20とP型半導体領域21との間には中間半導体領域がある。
【0022】
以下、メモリ部3への偽信号の混入を抑制するための条件について説明する。P型半導体領域20及びP型半導体領域21は、その実効値としての実効不純物濃度が1×1015cm-3以上である領域とする。すなわちドナーとアクセプタとが混在する場合はそのドナー濃度とアクセプタ濃度との差分濃度が1×1015cm-3以上である領域とする。これにより中間半導体領域が決まる。例えば、P型半導体領域20とP型半導体領域21との間の中間半導体領域は、次の3つの状態となりうると考えられる。第1の状態は、実効不純物濃度1×1015cm-3未満のP型とN型が混在する状態である。第2の状態は、P型半導体領域20及びP型半導体領域21の不純物分布の裾の広がりによってすべてP型という状態である。また、第3の状態は、P型半導体領域20からP型半導体領域21に渡って実効不純物濃度が1×1015cm-3以上のP型半導体領域が存在する状態である。
【0023】
半導体基板12の第一面に対して法線方向での断面E-Fにおける実行不純物濃度を示す
図4により、メモリ部3への偽信号の混入の抑制の条件について説明する。
図4に示すように、半導体領域20と半導体領域21との間の中間半導体領域にはP型不純物とN型不純物との両方が存在する。P型半導体領域20及びP型半導体領域21の各領域の不純物濃度はその領域における平均の実効不純物濃度とする。
【0024】
N型半導体領域16への偽信号電荷の混入を防ぐためには、P型半導体領域20の深さは浅いほうが良く、大きいポテンシャルバリア形成のためにその不純物濃度は高濃度が良い。しかるにP型半導体領域20が浅く不純物濃度が高濃度であるとその不純物プロファイルの広がりのゆえに、N型半導体領域16の不純物濃度も高濃度にしないとメモリ部3が受け入れられる信号電荷量が減少してしまう。しかるにN型半導体領域16の不純物濃度も高濃度にすると転送電極4の下部にN型半導体領域16の信号溜まりが形成されうる。このため、転送電極6によるFD部5への信号電荷の転送において、N型半導体領域16に保持された信号電荷のほぼすべてを転送することは困難になる。よってP型半導体領域20の不純物濃度はあまり高濃度にはできない。
【0025】
一方P型半導体領域20は、N型半導体領域16に信号電荷が保持されている間はポテンシャルバリアとして機能しなければならないので空乏化してはならない。P型半導体領域20とN型半導体領域16との間には通常1.5~2V程度の逆バイアス電圧がかかるので、2つの領域間の距離を0.2μmとすると、P型半導体領域20は2×1016cm-3程度以上の不純物濃度を持つ必要がある。これらの事情を考慮することにより、P型半導体領域20の不純物濃度は通常2×1016cm-3程度に設定される。またこの時の半導体領域20の不純物濃度のピークは通常5×1016cm-3程度となる。
【0026】
ここで統計力学理論によれば、一般に熱平衡状態においてポテンシャルエネルギー差kTがある場合の自由粒子の密度はe倍異なる。kはボルツマン定数、Tは絶対温度、eはネイピア数である。これよりホール濃度がe倍異なる半導体領域のポテンシャル差はkT/qである。ここでqは素電荷量である。kTはホールの熱運動エネルギー程度である。
【0027】
P型半導体領域20が偽信号に対するポテンシャルバリアとなるためにはkT/qの4倍程度以上のポテンシャルがあるとよい。P型半導体領域20の不純物濃度をNbとしその周りのP型の中性領域の濃度をNaとしたときに、ポテンシャル差=(kt/q)ln(Nb/Na)の関係にある。この差が4倍以上であるためには、Nb/Naが約50以上あればよい。
【0028】
よって、P型半導体20の不純物濃度のピークのホール濃度が5×1016cm-3程度の場合、P型半導体領域20からP型半導体領域21に至る間に1×1015cm-3以下のホール濃度となる領域が存在すれば、不純物濃度の差が約50倍になる。よって、このような不純物濃度の差を与えることによりP型半導体領域20は信号電荷に対する十分なポテンシャルバリアになりうる 。
【0029】
一方、以上より中間半導体領域の不純物濃度が所定の条件を満たさなければ、P型半導体領域20は偽信号に対する有効なポテンシャルバリアとならない場合がありうる。中間半導体領域の実効アクセプタ濃度が1×1015cm-3以下であれば、P型半導体領域20は十分なポテンシャルバリアになる必要条件を満たす。ここで必要条件と述べたのは実効不純物濃度、ここでは実効アクセプタ濃度とホール濃度とが異なることがありうるからである。
【0030】
一般に実効不純物濃度が位置によって変化している場合、そのキャリア濃度変化は実効不純物濃度変化よりもゆるやかになる。つまり、実効アクセプタ濃度が急激に変化している場合にホール濃度はその急激な変化に十分には追随しない。なぜならホールの熱運動によってデバイ長よりも短い場所間での変化が均されてしまうからである。したがって不純物濃度の変化をキャリア濃度の変化に反映させるためにはデバイ長以上の長さがあるとよい。デバイ長はキャリア濃度によって決まりキャリア濃度が低いほど長くなる。
【0031】
ホール濃度が1×1015cm-3の時のデバイ長は0.13μm程度である。この場合P型半導体領域20の実効アクセプタ濃度のピークが5×1016cm-3程度であり、そこから徐々に深くなるにつれて実効アクセプタ濃度が減少する。中間半導体領域の境界では実効アクセプタ濃度は1×1015cm-3となるが、ホール濃度が1×1015cm-3となるのは、もっと深い場所ということになりうる。ホール濃度が1×1015cm-3となる場所が中間半導体領域に存在するためには、中間半導体領域の幅がデバイ長以上、すなわち0.13μm程度以上あればよい。
【0032】
一方、中間半導体領域の幅が広くかつN型半導体領域が多くを占めており、中間半導体領域がPD部に接している状況を考える。この場合は、中間半導体領域のポテンシャルがP型半導体領域20よりも大幅に低くなって、別の問題を引き起こす可能性が生ずる。つまり中間半導体領域のポテンシャルが低いとN型半導体領域15に蓄積できる信号電荷量が減少し、PD2の飽和信号量は減少することになる。しかも画素の飽和した信号電荷が中間半導体領域を通って隣接画素に流れ出し、ブルーミングを引き起こしやすくなる。
【0033】
OFDを備えている光電変換装置はOFDを備えていない通常の光電変換装置よりはブルーミングが抑えられるが、中間半導体領域のポテンシャルの低さによってはブルーミングを抑えることが難しくなる。よって中間半導体領域のポテンシャルはある程度以上必要であり、実際的にはP型半導体領域20に対して考えると、P型半導体領域20に対する中間半導体領域のポテンシャル差はkT/qの8倍程度以内に抑える必要がある。
【0034】
今までの議論に基づいて検討すると、eの8乗は約2980なのでP型半導体20のピーク付近のホール濃度が5×1016cm-3程度であれば、中間半導体領域のホール濃度は2×1013cm-3程度以上ある必要がある。キャリア濃度2×1013cm-3のデバイ長は0.8μmである。中間半導体領域の深さ方向の幅が0.8μm以下、かつその平均の実効アクセプタ濃度が2×1013cm-3以上であれば、P型半導体領域20に対する中間半導体領域のポテンシャル差はkT/qの8倍程度以内となる。
【0035】
以上まとめると、P型半導体領域20とP型半導体領域21との間に実効アクセプタ濃度が1×1015cm-3以下になるような中間半導体領域が存在し、その深さ方向の幅は0.13μm以上、0.8μm以下であること。かつその中間半導体領域の平均の実効アクセプタ濃度が2×1013cm-3以上であれば、P型半導体領域20に対する中間半導体領域のポテンシャル差はkT/qの4倍程度以上8倍程度以下となる。kT/qの4倍程度以上8倍程度以下とは、ポテンシャルに換算して常温で約100mV程度以上、約200mV程度以下である。
【0036】
本実施形態の中間半導体領域は以上のような条件を満たすことにより信号電荷に対するポテンシャルバリアを形成することができる。よって本実施形態によれば、メモリ部への偽信号電荷の混入を抑制し、かつ飽和信号量も従来程度を維持する優れた特性を実現することができる。
【0037】
なお、上記条件を満足できるならば、半導体基板12はアクセプタ濃度が1×10
15cm
-3未満のP型の半導体基板であってもよい。また、N型の半導体基板12中に形成された深さが
図2のP型半導体領域13程度まであり、中間半導体領域に相当する部分の実効アクセプタ濃度が1×10
15cm
-3未満であるようなP型ウエルが配置されたものでもよい。
【0038】
〔第一実施形態の変形例〕
図5は第一実施形態の変形例の平面図であり、同図の一点鎖線で示すG-H間の断面が
図6に示されている。
図6からわかるように第一実施形態と比べて、転送電極4とその直下に形成されるN型半導体領域10の面積が大きくなっている。また転送電極4と転送電極6とは接近しており、その間に界面部P型半導体領域14が形成され、第一実施形態と比べてN型半導体領域16の面積は小さくなっている。よってN型半導体領域10自体がメモリ部となって信号電荷を保持する主体となりうる。N型半導体領域16は一部の信号電荷を保持もするが主としてN型半導体領域10から転送電極6への信号電荷通路の役目を果たしている。
【0039】
以上のような構造においてP型半導体領域19がN型半導体領域10への信号電荷混入を防止するポテンシャルバリアの役目を果たす。P型半導体領域19の直下では、平面視においてP型半導体領域20はごく一部を除いて重なっていない。つまり、P型半導体領域19とP型半導体領域20とは部分的に重なっている。またP型半導体領域20とP型半導体領域22とも部分的に重なっている。第一実施形態で説明したようにP型半導体領域19とP型半導体領域22との間の中間半導体領域は、実効アクセプタ濃度が1×1015cm-3以下になるようにする。中間半導体領域の深さ方向の幅は0.13μm以上、0.8μm以下、かつその中間半導体領域の平均の実効アクセプタ濃度が2×1013cm-3以上とする。このとき、P型半導体領域19に対する中間半導体領域のポテンシャル差はkT/qの4倍程度以上8倍程度以下となってP型半導体領域19は適度なポテンシャルバリアとして機能する。
【0040】
一方P型半導体領域20とP型半導体領域21とは少なくとも一部が重なっている。P型半導体領域20とP型半導体領域21の間に第一実施形態と同様の条件の第二の中間半導体領域が配置される。このために、P型半導体領域20は電荷がN型半導体領域16に混入するのを抑制する有効なポテンシャルバリアとして機能しうる。またP型半導体領域19はP型半導体領域20よりも浅い位置に配置される。なぜなら信号電荷を保持するN型半導体領域10はN型半導体領域16よりも浅い位置に配置されるからである。N型半導体領域10への偽信号の混入を防ぐためには、ポテンシャルバリアとなるP型半導体領域19の形成される深さが浅い方が信号保持時に発生した電荷に対するバリア効果が高くなる。本実施形態では、第一実施形態よりもさらに偽信号のメモリへの混入を抑制する効果が高い。ただし半導体界面部のP型半導体領域14と最深部に形成されるP型半導体領域13とが電気的に導通する必要があるので、P型半導体領域20とP型半導体領域13とは電気的に導通する部分を持っている。
【0041】
なお、本変形例において、第二の中間半導体領域は実効アクセプタ濃度が1×10
15cm
-3以下であって、かつその平均の実効アクセプタ濃度が2×10
13cm
-3以上とする。また、第二の中間半導体領域の深さ方向の幅は0.13μm以上、0.8μm以下とする。この条件が満足されるならば、半導体基板12はアクセプタ濃度が1×10
15cm
-3未満のP型半導体基板であってもよい。また、N型の半導体基板12中に形成された、深さがP型半導体領域13程度まであって、第二の中間半導体領域に相当する部分の実効アクセプタ濃度が1×10
15cm
-3未満であるようなP型ウエルが使われていてもよい。さらに
図6においてP型半導体領域22の形成範囲がP型半導体20の直下に及んでいるような構造であってもよい。
【0042】
この時P型半導体20とP型半導体22との間に、P型半導体領域20とP型半導体領域21との間の中間半導体領域と同様の条件を満たす第三の中間半導体領域があれば偽信号抑制効果は維持できる。ただ、この条件が満たされていなくても、N型半導体16の面積は小さいので、P型半導体領域19がポテンシャルバリアとして効果的であれば、全体として偽信号の混入抑制効果が損なわれる度合いは小さい。
【0043】
以上本変形例によれば、PDの飽和信号量を減ずることなく、メモリへの信号混入抑制効果が第一実施形態よりもさらに高くでき、優れた特性を実現することができる。
【0044】
[第二実施形態]
以上に述べた光電変換装置を撮像装置100に適用した例を
図7により説明する。撮像装置100は、例えば、複数の画素が行列状に配列された画素部101と、画素部101の行の画素を制御する垂直走査回路102と、信号を読み出して処理する信号処理回路103と、列毎に設けた回路の制御を行う水平走査回路104と、を有する。それぞれの画素には第一実施形態及び変形例で説明した光電変換装置が含まれている。また撮像装置は、撮像装置を制御するための制御信号とタイミング信号を発生する制御回路を含んでもよい。
【0045】
典型的には、垂直走査回路102は画素の所定の行を選択して、その行にある画素から信号を読み出す制御を行う。垂直走査回路102の制御により、光電変換装置のPD部2からの信号は不図示の垂直信号線へ出力される。水平走査回路104は行単位で読み出された信号を、信号処理回路103を制御して外部へ出力させる制御を行う。信号処理回路103は、画素からの信号を増幅する増幅回路、ノイズを低減する回路、A/D変換器を含みうる。
【0046】
次にグローバルシャッターを備えるセンサについて説明する。グローバルシャッターを備えるセンサは、複数のPD部とそれらに夫々対応するメモリ部とを有する。複数のPD部から対応する複数のメモリ部へ信号電荷が一斉に転送されることによりグローバルシャッター機能が実現される。
【0047】
グローバルシャッターの動作は次のように行われる。垂直走査回路102の制御により所定のタイミングで、画素部101の画素に含まれるPD部2は入射される光に応じた信号電荷の蓄積を開始する。次に垂直走査回路102の制御により光電変換装置の転送電極4の電位が一斉にVHにされ、複数のPD部2に蓄積された信号電荷は同じタイミングで信号電荷を蓄積する半導体領域へ転送される。このようにPD部2から同じタイミングでPD部2に蓄積された信号電荷が読み出されうる。次に垂直走査回路102により、転送電極6が行毎に制御されて信号電荷はフローティングデフュージョン領域5へ転送される。フローティングデフュージョン領域5からの信号はMOSトランジスタ部9の増幅回路で増幅されて垂直信号線へ読み出されて信号処理回路103へ入力される。信号処理回路103は信号を、例えば増幅し、A/D変換して、水平走査回路104の制御により外部へ信号を出力する。本実施形態の撮像装置は以下に述べるシステムや機器の撮像部に適用することができる。
【0048】
[第三実施形態]
本実施形態による光電変換システムについて、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。第一実施形態で述べた光電変換装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図8には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラ200のブロック図を例示している。
【0049】
図8に例示したデジタルスチルカメラ200は、光電変換装置が配置された撮像装置204を有する。撮像装置204には複数の画素が配置されており、画素には第一実施形態に係る光電変換装置が含まれている。さらに、デジタルスチルカメラ200は、被写体の光学像を撮像装置204に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り203、レンズ202の保護のためのバリア201を有する。レンズ202及び絞り203は、撮像装置204に光を集光する光学系である。撮像装置204は、上記の実施形態の光電変換装置を有し、レンズ202により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0050】
光電変換システムは、また、撮像装置204より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部207を有する。信号処理部207は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部207は、撮像装置204が搭載された半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置204とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置204と信号処理部207とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0051】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)213を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体212、記録媒体212に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)211を有する。なお、記録媒体212は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0052】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部209、撮像装置204と信号処理部207に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部208を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置204と、撮像装置204から出力された出力信号を処理する信号処理部207とを有すればよい。
【0053】
撮像装置204は、撮像信号を信号処理部207に出力する。信号処理部207は、撮像装置204から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部207は、撮像信号を用いて、画像を生成する。このように、本実施形態によれば、第一実施形態に係る光電変換装置を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0054】
[第四実施形態]
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
図9(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310には、第一実施形態の光電変換装置を含む画素が配置されている。光電変換システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、光電変換システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、光電変換システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。
【0055】
ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0056】
光電変換システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、光電変換システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0057】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム300で撮像する。
図9(b)に、車両前方を撮像する場合の光電変換システムを示した。点線350は撮像範囲の一例を示す。車両情報取得装置320が、光電変換システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0058】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0059】
[第五実施形態]
第一実施形態に係る光電変換装置を適用した機器の例について説明をする。
図10は第一実施形態の光電変換装置を有する半導体装置430を備えた機器415を説明する模式図である。半導体装置430は、半導体基板402に光電変換装置を含む画素400が形成された撮像部401を含む。半導体装置430は、半導体層を有する半導体デバイス410のほかに、半導体デバイス410を収容するパッケージ420を含むことができる。パッケージ420は、半導体デバイス410が固定された基体と、半導体デバイス410に対向するガラスなどの蓋体と、を含むことができる。パッケージ420は、さらに、基体に設けられた端子と半導体デバイス410に設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプなどの接合部材を含むことができる。
【0060】
機器415は、光学装置440、制御装置450、処理装置460、表示装置470、記憶装置480、機械装置490の少なくともいずれかを備えることができる。光学装置440は、半導体装置430に対応して設けられてもよい。光学装置440は、例えばレンズやシャッター、ミラーである。制御装置450は、半導体装置430を制御する。制御装置450は、例えばASICなどの半導体装置である。
【0061】
処理装置460は、半導体装置430から出力された信号を処理する。処理装置460は、AFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成するための、CPUやASICなどの半導体装置でありうる。表示装置470は、半導体装置430で得られた情報(画像)を表示するEL表示装置や液晶表示装置であってもよい。記憶装置480は、半導体装置430で得られた情報(画像)を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスであってもよい。記憶装置480は、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリでありうる。
【0062】
機械装置490は、モーターやエンジンなどの可動部あるいは推進部を有しうる。機器415では、半導体装置430から出力された信号を表示装置470に表示したり、機器415が備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。そのために、機器415は、半導体装置430が有する記憶回路や演算回路とは別に、記憶装置480や処理装置460をさらに備えることが好ましい。機械装置490は、半導体装置430から出力され信号に基づいて制御されてもよい。
【0063】
また、機器415は、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器に適する。カメラにおける機械装置490はズーミングや合焦、シャッター動作のために光学装置440の部品を駆動することができる。あるいは、カメラにおける機械装置490は防振動作のために半導体装置430を移動することができる。
【0064】
また、機器415は、車両や船舶、飛行体などの輸送機器であり得る。輸送機器における機械装置490は移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器415は、半導体装置430を輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置460は、半導体装置430で得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置490を操作するための処理を行うことができる。あるいは、機器415は内視鏡などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器、複写機などの事務機器、ロボットなどの産業機器であってもよい。
【0065】
上述した第一実施形態に係る光電変換装置によれば、良好な画素特性を得ることが可能となる。従って、半導体装置の価値を高めることができる。ここでいう価値を高めることには、機能の追加、性能の向上、特性の向上、信頼性の向上、製造歩留まりの向上、環境負荷の低減、コストダウン、小型化、軽量化の少なくともいずれかが該当する。
【0066】
従って、本実施形態に係る半導体装置430を機器415に用いれば、機器の価値をも向上することができる。例えば、半導体装置430を輸送機器に搭載して、輸送機器の外部の撮影や外部環境の測定を行う際に優れた性能を得ることができる。よって、輸送機器の製造、販売を行う上で、本実施形態に係る半導体装置を輸送機器へ搭載することを決定することは、輸送機器自体の性能を高める上で有利である。特に、半導体装置で得られた情報を用いて輸送機器の運転支援および/または自動運転を行う輸送機器に半導体装置430は好適である。
【0067】
[実施形態の変形例]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。また、上記第三実施形態乃至第五実施形態に示した光電変換システムや機器は、光電変換装置を適用しうる光電変換システムの例を示したものである。本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図8乃至
図10に示した構成に限定されるものではない。
【0068】
本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0069】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0070】
2:フォトダイオード 3:メモリ部 4:転送電極 5:フローティングデフュージョン領域 6:転送電極 11:素子分離部 12:半導体基板 13:第二導電型の半導体領域 14、14’:第二導電型の半導体領域 15、16:第一導電型の半導体領域 17~22:第二導電型の半導体領域