(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】制御弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 35/02 20060101AFI20240807BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20240807BHJP
F16K 31/44 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F16K35/02 Z
A62C35/68
F16K31/44 H
(21)【出願番号】P 2020164512
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-345883(JP,A)
【文献】特開2000-193134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 35/02
A62C 35/68
F16K 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部流路を開閉する弁本体の流入口と流出口の少なくとも何れか一方に開閉弁が設けられ、前記開閉弁を開閉操作する弁軸の先端の操作部位が前記弁本体の外側に突出して設けられた制御弁装置に於いて、
前記弁軸の操作部位には、
開閉操作機構が設けられると共に、軸外周の2面取りにより2面平行部が形成されており、
前記開閉操作機構は、
前記開閉弁の開放位置又は閉鎖位置の何れか一方で前記2面平行部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、
前記ロック部材を前記弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、
前記ロック部材のロック溝を前記2面平行部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材と、
が設けられ、
前記ロック位置側に付勢された状態のロック部材により前記2面平行部の位置をロックすることで前記開閉弁の閉鎖位置と開放位置で前記弁軸の回転をロックし、前記弁軸の操作部位に対する前記工具の嵌め込みにより前記
2面平行部の位置をロックしているロック部材
をロック解除位置に移動させて
前記ロック部材による前記2面平行部のロックを解除し前記弁軸
の回転による前記開閉弁の開閉操作を可能としたことを特徴とする制御弁装置。
【請求項2】
内部流路を開閉する弁本体の流入口と流出口の少なくとも何れか一方に開閉弁が設けられ、前記開閉弁を開閉操作する弁軸の先端の操作部位が前記弁本体の外側に突出して設けられた制御弁装置に於いて、
前記弁軸の操作部位には、
開閉操作機構が設けられると共に、軸外周の4面取りにより4面正方形部が形成されており、
前記開閉操作機構は、
前記開閉弁の開放位置と閉鎖位置の両方で前記4面正方形部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、
前記ロック部材を前記弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、
前記ロック部材のロック溝を前記4面正方形部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材と、
が設けられ、
前記ロック位置にあるロック部材により前記4面正方形部の位置をロックすることで前記開閉弁の閉鎖位置と開放位置で前記弁軸の回転をロックし、前記弁軸の操作部位に対する前記工具の嵌め込みにより前記ロック位置にある前記ロック部材
をロック解除位置に移動させて
前記ロック部材による前記4面正方形部のロックを解除し前記弁軸
の回転による前記開閉弁の開閉操作を可能としたことを特徴とする制御弁装置。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の制御弁装置に於いて、
前記弁本体は、1次側の加圧水のシリンダ室に対する充水によりピストンを移動して弁体を閉鎖させ、前記シリンダ室の排水により前記ピストンを後退させて前記弁体を開放させる駆動機構を備えた一斉開放弁としたことを特徴とする制御弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備や泡消火設備等の消火設備に設けられる制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式スプリンクラー設備、泡消火設備においては、加圧送水装置からの加圧水をヘッドに供給する配管の途中に一斉開放弁として機能する制御弁装置を設けている。
【0003】
図10は従来の泡消火設備に用いられる制御弁装置(一斉開放弁)を示した説明図であり、軸心線105の方向をX軸方向、X軸の直交する横方向をY方向、図示の上下方向をZ方向として示している。
図10に示すように、一斉開放弁として機能する制御弁装置100は、弁本体102の流入口104と流出口106を連通する内部流路に設けられた弁体108が、シリンダ室110に設けたピストン112により開閉自在に設けられている。
【0004】
また、流入口104と流出口106のフランジ部114,116にはバタフライ弁を用いた開閉弁118,120が設けられ、開閉弁118,120を開閉操作する弁軸(ステム)122,124の先端の操作部位がフランジ部114,116の外側に突出して設けられ、それぞれ開閉操作機構126,128が設けられている。なお、開閉弁118は開放状態を示し、開閉弁120は閉鎖状態を示している。このように弁本体102に開閉弁118,120が一体に設けられたことで、制御弁装置100をコンパクトにして設置スペースを削減できる。
【0005】
弁本体102の流入口104には加圧送水装置130からの配管132が接続され、弁本体102の流出口106から引き出された配管134には泡ヘッド136が接続される。また、弁本体102のシリンダ室110からは起動配管138が引き出され、起動配管138には閉鎖型のスプリンクラーヘッド140と手動起動弁142が接続されている。
【0006】
初期状態で弁体108はスプリング111により閉鎖位置にある。この状態で加圧送水装置130から徐々に送水すると、加圧水はチェッキ部115の小孔を通り、シリンダ室110及び起動配管138に充水され、1次側圧力とシリンダ室110は同圧となり、ピストン112における受圧面積の差により弁体108は閉止される。
【0007】
火災により閉鎖型のスプリンクラーヘッド140が作動すると、起動配管138及びシリンダ室110の圧力水が排水され、チェッキ部115の小孔からシリンダ室110に供給される加圧水の量に対し排水量が上回るため、シリンダ室110の圧力は減圧し、ピストン112はスプリング111に抗して押し上げられ、弁体108が開放され、泡ヘッド136に泡消火剤を混合した加圧水が供給され、消火泡が放出される。点検等の際に、手動起動弁142を開放した場合も、閉鎖型のスプリンクラーヘッド140が作動した場合と同様になる。
【0008】
このような消火設備は、火災に備えてその機能が十分発揮できるように、定期的に点検を行うことが義務づけられている。定期点検の際には、流出口106のフランジ部116に設けられた開閉弁120を閉鎖位置に操作し、泡ヘッド136から消火泡を放出させることなく、手動起動弁142を開操作して弁本体102を開放動作させることで、点検している。
【0009】
また、弁本体102の修理や消耗品交換を行う場合には、開閉弁118,120の両方を閉鎖位置に操作して作業を行う。
【0010】
図11は従来の制御弁装置に設けられた開閉弁のロック機構を示した説明図であり、
図11(A)に弁本体の底面を示し、
図11(B)にロック機構を拡大して示す。
【0011】
図11に示すように、フランジ部114に設けられた開閉操作機構126を例にとると、弁軸122の先端にはストッパ144が固定され、ストッパ144の先端に形成されたストッパ爪146がプレート148の例えば開放位置孔150に入っており、開閉弁118は全開位置にロックされている。
【0012】
開閉弁118を閉じる場合には、ストッパ爪146を開放位置孔150から出した状態で弁軸122の先端に形成された二面平行部154にスパナ等の工具を入れて図示で右回りに回し、ストッパ爪146が閉鎖位置孔152に入ると全閉位置にロックされる。更に、ロックナット156を締め付けにより、全開位置又は全閉位置に確実にロックさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような従来の弁本体に開閉弁が一体に設けられた制御弁装置にあっては、制御弁装置が防護区画の高所に敷設された配管位置に設置されており、消火設備の点検や修理交換の際には、点検要員が脚立に登り、高所に設置されている弁本体の開閉操作機構126,128におけるストッパ144のロックを外して工具により弁軸122,124を回して開閉弁118,120を開閉操作する必要があり、脚立に乗った状態で両手を使用した高所作業となり、空いた手で体を支えることができないために不安定な姿勢での作業となり、安全且つ容易に作業することが困難な状況にある。
【0015】
本発明は、高所設置された制御弁装置に設けられた開閉弁を片手操作で開閉可能として作業の安全性と容易性を確保可能とする制御弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(制御弁装置)
本発明は、内部流路を開閉する弁本体の流入口と流出口の少なくとも何れか一方に開閉弁が設けられ、開閉弁を開閉操作する弁軸の先端の操作部位が弁本体の外側に突出して設けられた制御弁装置に於いて、
弁軸の操作部位に、開閉弁の閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、操作部位に対する工具の嵌め込みを受けてロックが解除されるとともに、操作部位に嵌め込まれた状態の工具の操作により弁軸が回転する開閉操作機構が設けられたことを特徴とする。
【0017】
(弁軸の2面平行部に対する開閉操作機構)
弁軸の操作部位には、軸外周の2面取りにより2面平行部が形成されており、
開閉操作機構は、
開閉弁の開放位置又は閉鎖位置の何れか一方で2面平行部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、
ロック部材を弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、
ロック部材のロック溝を2面平行部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材と、
が設けられ、
ロック位置側に付勢された状態のロック部材により2面平行部の位置をロックすることで開閉弁の閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みにより2面平行部の位置をロックしているロック部材をロック解除位置に移動させてロック部材による2面平行部のロックを解除し弁軸の回転による開閉弁の開閉操作を可能とする。
【0018】
(弁軸の4面正方形部に対する開閉操作機構)
弁軸の操作部位には、軸外周の4面取りにより4面正方形部が形成されており、
開閉操作機構は、
開閉弁の開放位置と閉鎖位置の両方で4面正方形部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、
ロック部材を弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、
ロック部材のロック溝を4面正方形部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材と、が設けられ、
ロック位置にあるロック部材により4面正方形部の位置をロックすることで開閉弁の閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みによりロック位置にあるロック部材をロック解除位置に移動させてロック部材による前記4面正方形部のロックを解除し弁軸による開閉弁の開閉操作を可能とする。
【0019】
(一斉開放弁)
弁本体は、1次側の加圧水のシリンダ室に対する充水によりピストンを移動して弁体を閉鎖させ、シリンダ室の排水によりピストンを後退させて弁体を開放させる駆動機構を備えた一斉開放弁とする。
【発明の効果】
【0020】
(基本的な効果)
本発明は、内部流路を開閉する弁本体の流入口と流出口の少なくとも何れか一方に開閉弁が設けられ、開閉弁を開閉操作する弁軸の先端の操作部位が弁本体の外側に突出して設けられた制御弁に於いて、弁軸の操作部位に、開閉弁の閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、操作部位に対する工具の嵌め込みを受けてロックが解除されるとともに、操作部位に嵌め込まれた状態の工具の操作により弁軸が回転する開閉操作機構が設けられたため、高所設置された制御弁装置に設けられた開閉弁を、点検要員が脚立に登って操作する場合、一方の手で体を支えながら、他方の手に持ったスパナ等の工具を開閉操作機構に嵌め込む操作を行うことでロックが解除されて開放位置又は閉鎖位置に弁軸を回すことができ、片手操作ができることから、高所作業における安全性が確保され、また、片手で容易に作業することができ、高い作業の安全性と容易性を実現可能とする。
【0021】
(弁軸の2面平行部に対する開閉操作機構の効果)
また、弁軸の操作部位には、軸外周の2面取りにより2面平行部が形成されており、開閉操作機構は、開閉弁の開放位置又は閉鎖位置の何れか一方で2面平行部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、ロック部材を弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、ロック部材のロック溝を2面平行部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材とが設けられ、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みによりロック位置にあるロック部材を2面平行部からロック解除位置に移動させて弁軸による開閉弁の開閉操作を可能とするようにしたため、点検要員が脚立に登って操作する場合、スパナ等の工具をロック部材を押し当てて弁軸先端の2面平行部に嵌め入れることで、ロック部材が移動してロックが解除され、この状態で工具により弁軸を回すことで閉鎖位置から開放位置への開操作又は開放位置から閉鎖位置へ閉操作が片手作業により安全且つ容易にできる。
【0022】
また、開閉操作を行った後に、工具を外すと付勢手段によりロック部材がロック位置に押し戻され、ロックナット等による固定作業を必要とすることなく、自動的に操作後の開閉位置又は閉鎖位置にロックすることができる。
【0023】
(弁軸の4面正方形部に対する開閉操作機構の効果)
また、弁軸の操作部位には、軸外周の4面取りにより4面正方形部が形成されており、開閉操作機構は、開閉弁の開放位置と閉鎖位置の両方で4面正方形部に着脱される一端に開口したロック溝が形成されたロック部材と、ロック部材を弁本体に対し摺動自在に支持するガイド部材と、ロック部材のロック溝を4面正方形部に嵌め入れたロック位置に付勢する付勢部材とが設けられ、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みによりロック位置にあるロック部材を4面正方形部からロック解除位置に移動させて弁軸による開閉弁の開閉操作を可能とするようにしたため、点検要員が脚立に登って操作する場合、スパナ等の工具をロック部材を押し当てて弁軸先端の4面正方形部に嵌め入れることで、ロック部材が移動してロックが解除され、この状態で工具により弁軸を回すことで閉鎖位置から開放位置への開操作又は開放位置から閉鎖位置へ閉操作が片手作業により安全且つ容易にできる。
【0024】
また、開閉操作を行った後に、工具を外すと付勢手段によりロック部材が4面正方形部に嵌合したロック位置に押し戻され、ロックナット等による固定作業を必要とすることなく、自動的に操作後の開閉位置又は閉鎖位置にロックすることができる。特に、弁軸の操作部位を4面正方形部とした場合には、90°異なる開放位置と閉鎖位置のいずれについても、ロック部材は4面正方形部にガイド溝が嵌合して弁軸の回転を確実にロックすることができる。
【0025】
(一斉開放弁の効果)
また、弁本体は、1次側の加圧水のシリンダ室に対する充水によりピストンを移動して弁体を閉鎖させ、シリンダ室の排水によりピストンを後退させて弁体を開放させる駆動機構を備えた一斉開放弁としたため、開放型の泡ヘッドを設けた泡消火設備や開放型のスプリンクラーヘッドを設けた乾式スプリンクラー消火設備の制御弁装置として使用可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】制御弁装置の実施形態を泡消火設備の設置を例にとって示した説明図
【
図2】2面平行部が形成された弁軸の操作部位に対する開閉操作機構を取り出して示した説明図
【
図3】ガイド部材を取り外した状態で開閉操作機構を示した説明図
【
図4】開閉操作機構に用いられるガイド部材のロック部材を取り出して示した説明図
【
図5】開放位置にある開閉操作機構に対する工具の装着を示した説明図
【
図6】弁軸を閉鎖位置に回動してロックさせた状態を示した説明図
【
図7】4面正方形部が形成された弁軸の操作部位に対する開閉操作機構の他の実施形態を示した説明図
【
図8】開放位置にある
図7の開閉操作機構に対する工具の装着を示した説明図
【
図9】
図8に続いて弁軸を閉鎖位置に回動してロックさせた状態を示した説明図
【
図10】フランジ部に開閉弁が設けられた従来の制御弁装置を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る制御弁装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0028】
[実施形態の基本的な概念]
実施形態は、概略的に、消火設備に設けられる制御弁装置に関するものである。ここで、「消火設備」とは、施設で発生した火災を抑制消火するための設備であり、消火ポンプ等の加圧送水装置から消火剤を、配管系統を通して防護区画に設置されたヘッドに供給して散布し、火災を抑制消火するものであり、スプリンクラー消火設備や泡消火設備などを含む概念である。また、「施設」とは、防護対象となる建物等の構造物であり、例えば、オフィスビル、工場、デパートやスーパー等の商業施設、学校や図書館等の公共施設、工場、倉庫などを含む概念である。また、「火災を抑制消火する」とは、火災を抑制する概念と火災を消火する別の概念を併せたものである。例えば、火災の抑制とは火災の延焼、火災の燃焼速度、又は火災の規模を抑制する概念であり、火災の消火とは燃焼を鎮火させる概念である。勿論、どちらか一方となる場合も含む。
【0029】
また、「制御弁装置」とは、消火設備の配管系統に設けられ、ヘッドから消火剤を散布して火災を消火抑制するために配管経路の開閉をする弁装置であり、消火設備の分野で知られた一斉開放弁、流水検知機能を備えた自動警報弁、減圧制御を行う調圧弁などを含む概念である。
【0030】
本実施形態の制御弁装置は、弁本体、弁本体の流入口と流出口に設けられた開閉弁、及び開閉弁の開閉操作機構で構成されるものである。ここで、「弁本体」とは、駆動機構により弁体を開閉させるものであり、駆動機構は、例えば、ピストン・シリンダ機構であり、1次側の加圧水をシリンダ室に対する充水によりピストンを移動して弁体を閉鎖させ、シリンダ室の排水によりピストンを後退させて弁体を開放させるものである。また、「弁本体の流入口と流出口に設けられた開閉弁」とは、弁本体の流入口と流出口の少なくとも何れか一方に設けられ、弁本体の外側に突出した弁軸の先端の操作部位が設けられた手動により開閉可能な弁である。
【0031】
また、「開閉操作機構」とは、弁本体の流入口と流出口に設けられた開閉弁の弁軸の操作部位に、閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、操作部位に対するスパナ等の工具の嵌め込みを受けてロックが解除される機構である。
【0032】
本実施形態の開閉操作機構は、ロック部材、ガイド部材及び付勢部材で構成される。ここで、「ロック部材」とは、開閉弁の開放位置又は閉鎖位置の何れか一方で弁軸の操作部位に着脱される一端に開口したロック溝が形成された部材である。また、「ガイド部材」とは、弁本体に対し摺動自在に支持する部材である。さらに、「付勢部材」とは、ロック部材のロック溝を弁軸の操作部位に嵌め入れたロック位置に付勢する部材であり、スプリング、バネを含む概念である。
【0033】
本実施形態にあっては、開閉弁の弁軸の操作部位に、軸外周の2面取りにより2面平行部が形成されるものである。この場合、開閉操作機構は、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みによりロック位置にあるロック部材を2面平行部からロック解除位置に移動させて弁軸による開閉弁の開閉操作を可能とする。
【0034】
また、本実施形態にあっては、弁軸の操作部位に、軸外周の4面取りにより4面正方形部が形成されるものである。この場合、開閉操作機構は、弁軸の操作部位に対する工具の嵌め込みによりロック位置にあるロック部材を4面正方形部からロック解除位置に移動させて弁軸による開閉弁の開閉操作を可能とする。
【0035】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す実施形態では、泡消火設備に使用される制御弁装置を例にとって具体的な実施形態を説明する。
【0036】
[実施形態の具体的内容]
(制御弁装置の概要)
図1は制御弁装置の実施形態を泡消火設備の設置を例にとって示した説明図である。
図1に示すように、本実施形態の制御弁装置10は、泡消火設備に設けられて一斉開放弁として機能する。制御弁装置10は、弁本体12の1次側の流入口14と2次側の流出口16を連通する内部流路に弁体18が設けられ、弁体18はシリンダ室20に設けたピストン22により開閉自在に設けられ、スプリング21により閉鎖方向に付勢されている。ここで、制御弁装置10の位置関係を明確にするため、1次側と2次側を通る軸心線15の方向をX軸方向、X軸に直交する横方向をY方向、X軸に直交する上下方向をZ方向とするXYZ直交座標系として示している。なお、制御弁装置10の上下左右の位置関係は、これに限定されず、設置形態に応じて相対的に決まるものである。
【0037】
弁本体12の流入口14と流出口16が形成されたフランジ部24,26にはバタフライ弁を用いた開閉弁28,30がZ軸方向(上下方向)に配置した弁軸(ステム)32,34により開閉自在に設けられ、開閉弁28,30を開閉操作する弁軸32,34の先端の操作部位がフランジ部24,26の下部外側に突出して設けられ、それぞれ開閉操作機構36,38が設けられている。
【0038】
開閉操作機構36,38は、開閉弁28,30の全閉位置と全開位置で弁軸32,34の回転をロックし、弁軸32,34の下端の操作部位に対するスパナ等の工具の嵌め込みを受けてロックが解除され、全開位置又は全閉位置に操作してロックさせることができる。なお、開閉弁28は弁体面がY-Z面に位置して流入口14を開く全開状態を示し、開閉弁30は弁体面がX-Z面に位置して流出口16を閉じる全閉状態を示している。
【0039】
弁本体12の流入口14には加圧送水装置40から1次側の配管42が接続され、弁本体12の流出口16から引き出された2次側の配管44には泡ヘッド46が接続されている。また、弁本体12のシリンダ室20からは起動配管48が引き出され、起動配管48には閉鎖型のスプリンクラーヘッド50と手動起動弁52が接続されている。
【0040】
初期状態で弁体18はスプリング21により閉鎖位置に押圧されており、この状態で加圧送水装置40から徐々に送水すると、加圧水はチェッキ部25の小孔を通り、シリンダ室20及び起動配管48に充水され、1次側圧力とシリンダ室20は同圧となり、ピストン22における受圧面積の差により弁体18は閉止される。
【0041】
火災により閉鎖型のスプリンクラーヘッド50が作動すると、起動配管48及びシリンダ室20の圧力水が排水され、チェッキ部25の小孔からシリンダ室20に供給される加圧水の量に対し排水量が上回るため、シリンダ室20の圧力は減圧し、ピストン22は押し上げられて弁体18が開放され、泡ヘッド46に泡消火剤を混合した加圧水が供給され、消火泡が放出される。
【0042】
[開閉操作機構]
図2は2面平行部が形成された弁軸の操作部位に対する開閉操作機構を取り出して示した説明図であり、
図2(A)に横から見た断面を示し、
図2(B)に底面を示す。
図3はガイド部材を取り外した状態で開閉操作機構を示した説明図、
図4は開閉操作機構に用いられるガイド部材のロック部材を取り出して示した説明図である。
【0043】
図2に示すように、2次側の開閉弁30の開閉操作機構38は、フランジ部26の下部外側に取り出された弁軸34の先端の操作部位に、軸外周の平行な2面取りにより2面平行部54が形成されている。
【0044】
開閉操作機構38は、スペーサ58、ロック部材60、ガイド部材62、スプリング64及びプラグ66で構成される。
【0045】
ロック部材60は、
図4に示すように、横方向(Y軸方向)から見て逆L字型のブロック部材であり、上部左右に矩形のガイド片70が張出し形成され、上部に一端に開口したロック溝61が形成されている。またロック部材60の1次側となる図示手前側の前壁の端面にはスプリング64の一端を収納する受け穴72が形成されている。
【0046】
ガイド部材62はロック部材60を弁本体12に対し摺動自在に支持するものであり、
図4に示すように、1次側となる手前側に開口した平面から見て略コ字形のベース76の両側に逆L字形に屈曲したガイドレール74が一体に起立されており、弁本体12の下側にビス止め等により固定された状態で、ガイドレール74の中にロック部材60のガイド片70を収納することで、ロック部材60を摺動自在に支持する。
【0047】
図2に示すように、弁軸34はリング状のスペーサ58を介して先端の2面平行部54を下部外側に取出し、2面平行部54がガイド部材62により摺動自在に配置されたロック部材60のロック溝61の中に位置している。
【0048】
ロック部材60の1次側の先端前壁は弁本体12の外側に箱形に刳り貫き形成された収納凹部56に収納され、プラグ66のねじ込みで閉鎖された受け穴71とロック部材60に形成された受け穴72との間に、付勢部材として機能するスプリング64が配置され、ロック部材60のロック溝61を弁軸34の2面平行部54に嵌合させたロック位置に位置決めしている。
【0049】
2面平行部54が形成された弁軸34の先端面には、例えば矢印を用いたマーカ68が設けられ、矢印の方向が開閉弁30におけるバタフライ弁体面の方向を示しており、図示のようにマーカ68が軸心線15の方向を向くと開放位置(全開位置)を示し、これに対し軸心線15に直交した方向を向くと開閉弁30の閉鎖位置(全閉位置)を示す。なお、開閉弁30の開放位置と閉鎖位置の表示は、ロック部材60の表面に「開」、「閉」の文字を表示し、マーカ68の矢印の示す位置で開放位置と閉鎖位置が分かるようにしても良い。
【0050】
[開閉操作機構による開閉弁の操作]
図5は開放位置にある開閉操作機構に対する工具の装着を示した説明図、
図6は弁軸を閉鎖位置に回動してロックさせた状態を示した説明図である。
【0051】
泡消火設備の点検において制御弁装置10の動作を点検する場合、点検要員は高所に設置されている制御弁装置10の近くに脚立を配置して上り、開閉弁30を全閉とする操作を行う。
【0052】
開閉弁30を閉鎖する操作は、
図5に示すように、点検要員が片手に持ったスパナ等の工具78を、弁軸34の先端に形成された2面平行部54に嵌め入れるように押し付けると、ロック部材60がスプリング64に抗して1次側(図示右側)へ移動し、ロック溝61が2面平行部54から抜け出したロック解除位置に移動することで、弁軸34のロックが解除される。
【0053】
続いて、工具78を、矢印Aのように、下から見て左回りに90°回すことで、開閉弁30を全閉位置に操作することができる。開閉弁30を全閉位置に操作したら、2面平行部54から工具78を外すと、スプリング64の力によりロック部材60は
図6に示す位置に押し戻され、ロック部材60におけるロック溝61の開放側の内端部(エッジ部)が弁軸34に形成された2面平行部54の片側の両脇に当接し、弁軸34の回転が自動的にロックされる。
【0054】
また、
図6に示す開閉弁30の全閉位置から全開位置に操作する場合には、ロック部材60の開放側の内端部の当接でロックされている弁軸34の先端の2面平行部54に、
図5に示した工具78を嵌め入れ、工具78を下から見て右回りに回すと、2面平行部54の回転に伴ってロック部材60がスプリング64に抗して押されることでロックが解除され、工具78により90°回すと開閉弁30が全開位置に操作され、2面平行部54から工具78を外すと、スプリング64の力によりロック部材60は
図5に示す位置に押し戻され、弁軸34の回転が自動的にロックされる。
【0055】
このような開閉弁30の開閉操作機構38の構成及び開閉操作は、1次側に設けられた開閉弁28の開閉操作機構36についても同じになる。
【0056】
[弁軸の4面正方形部に対する開閉操作機構]
図7は4面正方形部が形成された弁軸の操作部位に対する開閉操作機構の他の実施形態を示した説明図、
図8は開放位置にある
図7の開閉操作機構に対する工具の装着を示した説明図、
図9は
図8に続いて弁軸を閉鎖位置に回動してロックさせた状態を示した説明図である。
【0057】
図7に示すように、本実施形態の開閉操作機構は、開閉弁30の弁軸34の操作部位として、軸外周の4面取りにより4面正方形部80が形成されたことを特徴とし、弁軸34の4面正方形部80に対し
図2乃至
図6の実施形態に示したと同じ構成及び機能の開閉操作機構38が設けられている。
【0058】
本実施形態の開閉操作機構38は、
図7に示すように、開閉弁30の全開位置では、マーカ68で示すように開放位置(全開位置)にある弁軸34の4面正方形部80にロック部材60のロック溝61がスプリング64の付勢により嵌め込まれ、開閉弁30を開放位置にロックしている。
【0059】
開閉弁30を開放する操作は、
図8に示すように、点検要員が片手に持ったスパナ等の工具78を弁軸34の先端に形成された4面正方形部80に嵌め入れるように押し付けると、工具78にロック部材60がスプリング64に抗して1次側(図示右側)へ移動し、ロック溝61が4面正方形部80から抜け出したロック解除位置に移動することで、弁軸34のロックが解除される。
【0060】
続いて、工具78を、矢印Aで示すように、下から見て左回りに90°回すことで、開閉弁30を全閉位置に操作することができる。開閉弁30を全閉位置に操作したら、4面正方形部80から工具78を外すと、スプリング64の力によりロック部材60は
図9に示す位置に押し戻され、ロック部材60のロック溝61が弁軸34の4面正方形部80に嵌め込まれ、弁軸34の回転が自動的にロックされる。
【0061】
また、
図9に示す開閉弁30の全閉位置から全開位置に操作する場合には、
図8に示したと同様に工具78を弁軸34の先端に形成された4面正方形部80に嵌め入れるように押し付けると、ロック部材60がスプリング64に抗して1次側(図示右側)へ移動し、ロック溝61が4面正方形部80から抜け出したロック解除位置に移動することで、弁軸34のロックが解除され、工具78を例えば下から見て右回りに90°回すことで、開閉弁30を開放位置に操作することができる。
【0062】
本実施形態では、開閉弁30の開放位置(全開位置)と閉鎖位置(全閉位置)の各々で、ロック部材60のロック溝61が90°位置が異なっても同じよう4面正方形部80に完全に嵌合し、2面平行部54の場合は、全閉位置で
図6に示したように、ロック溝61は2面平行部54に嵌合せずに当接したロックとなる場合に比べ、全閉位置でのロックが全開位置と同様に確実にできるメリットがある。
【0063】
このような
図7乃至
図9に示した開閉弁30の開閉操作機構38の構成及び開閉操作は、1次側に設けられた開閉弁28の開閉操作機構36についても同じになる。
【0064】
[本発明の変形例]
(開閉操作機構)
上記の実施形態は、スペーサ,ロック部材、ガイド部材、スプリング及びプラグで構成される開閉操作機構を例にとっているが、これに限定されず、開閉弁の弁軸における操作部位に、開閉弁の閉鎖位置と開放位置で弁軸の回転をロックし、操作部位に対する工具の嵌め込みを受けてロックが解除される機構構造であれば、適宜の機構構造をもつ開閉操作機構が含まれる。
【0065】
(弁本体)
上記の実施形態は、弁本体として泡消火設備や乾式スプリンクラー消火設備に使用される一斉開放弁を例にとっているが、閉鎖型スプリンクラーヘッドを設けた湿式スプリンクラー消火設備に設けられる流水検知機能を備えた自動警報弁や2次側圧力を減圧制御する調圧弁についても、1次側及び又は2次側のフランジ部に開閉弁を一体に設けた場合の開閉操作機構として適用することができる。
【0066】
(開閉弁)
上記の実施形態は、弁本体のフランジ部に一体に設けられる開閉弁としてバタフライ弁を例にとっているが、弁軸の操作により開閉されるボール弁等の適宜の構造の開閉弁が含まれる。
【0067】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0068】
10:制御弁装置
12:弁本体
14:流入口
16:流出口
18:弁体
20:シリンダ室
22:ピストン
24,26:フランジ部
28,30:開閉弁
32,34:弁軸
36,38:開閉操作機構
54:2面平行部
56:収納凹部
58:スペーサ
60:ロック部材
61:ロック溝
62:ガイド部材
64:スプリング
66:プラグ
68:マーカ
70:ガイド片
71,72:受け穴
74:ガイドレール
76:ベース
78:工具
80:4面正方形部