(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20240807BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240807BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 087
B60R16/02 623T
(21)【出願番号】P 2020167379
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 杉之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓将
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-116783(JP,A)
【文献】特開2018-102026(JP,A)
【文献】実開昭63-164327(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在し、一対の開口部を有する本体部と、
前記本体部内に形成され、前記開口部を介して外部から配索材を引き込んで収容する収容空間部と、を備え、
前記収容空間部は、
前記配索材が収容された収容状態で前記本体部の幅方向及び前記長手方向に直交する上下方向から見た場合、前記幅方向における一対の端部領域において、前記配索材のうち直線状部分がそれぞれ配置され、
前記収容状態で前記上下方向から見た場合、一対の前記端部領域の間である中央領域において、前記配索材の一対の前記直線状部分と連結される折返し部分が配置され、
前記上下方向から見て前記長手方向のうち、前記配索材が前記収容空間部に侵入する侵入方向側の端部である奥側端部を含む狭小領域を有し、
前記本体部は、
前記収容空間部の一部を形成し、かつ前記上下方向に対向する一対の対向面を有し、
一対の前記対向面は、
前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、一対の前記端部領域の前記上下方向における間隔より狭く形成され
、
前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、前記長手方向における前記奥側端部に向けて狭く形成される、
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
一対の前記対向面は、
前記長手方向から見た断面形状が、前記中央領域を頂点として、前記上下方向内側に膨らむように弓形に形成される、
請求項
1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
長手方向に延在し、一対の開口部を有する本体部と、
前記本体部内に形成され、前記開口部を介して外部から配索材を引き込んで収容する収容空間部と、を備え、
前記収容空間部は、
前記配索材が収容された収容状態で前記本体部の幅方向及び前記長手方向に直交する上下方向から見た場合、前記幅方向における一対の端部領域において、前記配索材のうち直線状部分がそれぞれ配置され、
前記収容状態で前記上下方向から見た場合、一対の前記端部領域の間である中央領域において、前記配索材の一対の前記直線状部分と連結される折返し部分が配置され、
前記上下方向から見て前記長手方向のうち、前記配索材が前記収容空間部に侵入する侵入方向側の端部である奥側端部を含む狭小領域を有し、
前記本体部は、
前記収容空間部の一部を形成し、かつ前記上下方向に対向する一対の対向面を有し、
一対の前記対向面は、
前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、一対の前記端部領域の前記上下方向における間隔より狭く形成され、
前記長手方向から見た断面形状が、前記中央領域を頂点として、前記上下方向内側に膨らむように弓形に形成される、
ことを特徴とするプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されたスライドシートやスライドドアに配索されるワイヤハーネスは、スライド部分がスライド自在となるように余長部分を有している。この余長部分を含むワイヤハーネスは、例えば、プロテクタ等に収容され保護されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プロテクタに収容されたワイヤハーネスは、余長部分が車両走行時の振動によりケース内面を叩くことで異音を発生する場合がある。余長部分は、ワイヤハーネスが折り返された状態にある折返し部分と、直線状態にある直線状部分とを有する。ワイヤハーネスが開口部を介してプロテクタ内に引き込まれた(押し込まれた)場合、直線状部分が長くなり、折返し部分が開口部から離間していく。一方、ワイヤハーネスが開口部を介してプロテクタから引き出された場合、直線状部分が短くなり、折返し部分が開口部に近づいていく。
【0005】
プロテクタ内の余長部分とケースとは、ワイヤハーネスのプロテクタ内への引き込み、プロテクタ外への引き出しを容易にするために隙間が設けられている。そのため、余長部分のうち、折返し部分に所定周波数の振動が伝わると、当該折返し部分が連動して、ケース内面を叩く場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、配索材の余長部分を吸収する機能を維持しつつ、車両走行時の振動による異音の発生を抑制することができるプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、長手方向に延在し、一対の開口部を有する本体部と、前記本体部内に形成され、前記開口部を介して外部から配索材を引き込んで収容する収容空間部と、を備え、前記収容空間部は、前記配索材が収容された収容状態で前記本体部の幅方向及び前記長手方向に直交する上下方向から見た場合、前記幅方向における一対の端部領域において、前記配索材のうち直線状部分がそれぞれ配置され、前記収容状態で前記上下方向から見た場合、一対の前記端部領域の間である中央領域において、前記配索材の一対の前記直線状部分と連結される折返し部分が配置され、前記上下方向から見て前記長手方向のうち、前記配索材が前記収容空間部に侵入する侵入方向側の端部である奥側端部を含む狭小領域を有し、前記本体部は、前記収容空間部の一部を形成し、かつ前記上下方向に対向する一対の対向面を有し、一対の前記対向面は、前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、一対の前記端部領域の前記上下方向における間隔より狭く形成され、前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、前記長手方向における前記奥側端部に向けて狭く形成される、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記プロテクタにおいて、一対の前記対向面は、前記長手方向から見た断面形状が、前記中央領域を頂点として、前記上下方向内側に膨らむように弓形に形成される、ものである。
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、長手方向に延在し、一対の開口部を有する本体部と、前記本体部内に形成され、前記開口部を介して外部から配索材を引き込んで収容する収容空間部と、を備え、前記収容空間部は、前記配索材が収容された収容状態で前記本体部の幅方向及び前記長手方向に直交する上下方向から見た場合、前記幅方向における一対の端部領域において、前記配索材のうち直線状部分がそれぞれ配置され、前記収容状態で前記上下方向から見た場合、一対の前記端部領域の間である中央領域において、前記配索材の一対の前記直線状部分と連結される折返し部分が配置され、前記上下方向から見て前記長手方向のうち、前記配索材が前記収容空間部に侵入する侵入方向側の端部である奥側端部を含む狭小領域を有し、前記本体部は、前記収容空間部の一部を形成し、かつ前記上下方向に対向する一対の対向面を有し、一対の前記対向面は、前記狭小領域において、前記中央領域の前記上下方向における間隔が、一対の前記端部領域の前記上下方向における間隔より狭く形成され、前記長手方向から見た断面形状が、前記中央領域を頂点として、前記上下方向内側に膨らむように弓形に形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るプロテクタは、配索材の余長部分を吸収する機能を維持しつつ、車両走行時の振動による異音の発生を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4(A)、
図4(B)は、実施形態に係るプロテクタを幅方向から見た断面を示す模式図である。
【
図5】
図5(A)~
図5(C)は、実施形態に係るプロテクタを長手方向から見た断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るプロテクタの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す平面図である。
図3は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す分解斜視図である。
図4の(A)、
図4の(B)は、実施形態に係るプロテクタを幅方向から見た断面を示す模式図である。
図5の(A)、
図5の(B)、及び
図5の(C)は、実施形態に係るプロテクタを長手方向から見た断面を示す模式図である。なお、
図1、
図3に示すプロテクタは、配索材Wが組み付けられた状態を示す。
図2、
図4の(A)、
図4の(B)、
図5の(A)~
図5の(C)に示す配索材Wは、一点鎖線で記して省略されている。
図4の(A)は、
図2に示すA-A断面図に相当する。
図4の(B)は、
図2に示すB-B断面図に相当する。
図5の(A)は、
図2に示すC-C断面図に相当する。
図5の(B)は、
図2に示すD-D断面図に相当する。
図5の(C)は、
図2に示すE-E断面図に相当する。
【0014】
図示のX方向は、本実施形態におけるプロテクタの長手方向である。Y方向は、本実施形態におけるプロテクタの幅方向(または短手方向)であり、長手方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態におけるプロテクタの上下方向であり、長手方向及び幅方向と直交する方向である。なお、Y方向及びZ方向は、例えば、プロテクタが車両に搭載された状態で鉛直方向に沿う場合がある。
【0015】
図1~
図3に示す本実施形態のプロテクタ1は、例えば、自動車等の車両に搭載されたスライドシートやスライドドア等に配索される配索材Wの一部を余長部分として内部に収容して保護するものである。配索材Wは、例えば、スライドシートやスライドドア等に設けられた電装品に対して電力を供給するための電線束と、電線束を覆う筒状(管状)の外装材(例えば、コルゲートチューブ等)とで構成されるワイヤハーネスである。配索材Wは、相対的に高い柔軟性、良好な屈曲性を有する。配索材Wは、プロテクタ1の内部に収容された部分が、例えば、スライドシートやスライドドアのスライド移動に連動する。本実施形態のプロテクタ1は、内部に配索材Wを収容した状態でワイヤハーネスWHを構成する。プロテクタ1は、本体部2と、収容空間部3と、を備える。
【0016】
本体部2は、長手方向に延在し、長手方向の一方に一対の開口部2a,2bを有するものである。開口部2a,2bは、プロテクタ1の内部に配索材Wの一部が収容された状態において、それぞれに配索材Wが挿通される。配索材Wは、一部が収容空間部3に収容される。配索材Wは、例えば、一方の端部が収容空間部3から開口部2aを介して外部に導出され、スライドシートに設けられた電装品に電気的に接続され、他方の端部が収容空間部3から開口部2bを介して外部に導出され、車両に搭載されたバッテリ等に電気的に接続される。配索材Wのうち、収容空間部3に収容された部分の一方の端部は、開口部2aを介した収容空間部3と外部との間の出し入れが可能に構成されている。一方、配索材Wのうち、収容空間部3に収容された部分の他方の端部は、開口部2bから外側に突出した本体部2の一部に結束バンド等により結束され、開口部2bを介した収容空間部3と外部との間の出し入れが規制されている。本体部2は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂等によって形成される。本体部2は、当該本体部2の外表面に設けられた取付部がボルト等の締結部材によって車体に締結される。本体部2は、アッパーケース10と、ロアケース20とで構成される。アッパーケース10及びロアケース20は、互いに組み付けられた組付状態で本体部2を構成する。
【0017】
アッパーケース10は、本体部2の上方側に配置される。アッパーケース10は、開口部11と、天井壁部12と、側壁部13とを有する。開口部11は、アッパーケース10の下方側端部に形成される。開口部11は、アッパーケース10がロアケース20に組み付けられた組付状態(本体部2)において、ロアケース20により閉塞される。側壁部13は、天井壁部12の外周端から、当該天井壁部12に対して交差する方向(例えば上下方向)に立設されている。アッパーケース10は、ロアケース20に対して係止構造により係止される。
【0018】
天井壁部12は、本体部2において、後述するロアケース20の底壁部22に対して上下方向に対向する。天井壁部12は、下方向内側に壁面12aを有する。本実施形態の天井壁部12は、長手方向から見た断面形状が、下方向内側に膨らむように弓形に形成される部分を有する。詳細には、天井壁部12は、長手方向から見た断面形状の下方向内側に膨らむ湾曲度が、長手方向における開口部2a,2bから離間するにつれて大きくなるように形成される。例えば、
図2に示すE-Eの位置における天井壁部12は、長手方向から見た断面形状が、幅方向において平坦である(
図5の(A))。一方、
図2に示すD-Dの位置における天井壁部12は、長手方向から見た断面形状が、幅方向において下方向内側に膨らむように弓形に形成される。さらに、
図2に示すC-Cに位置における天井壁部12は、長手方向から見た断面形状が、D-Dの位置の天井壁部12よりさらに下方向内側に膨らむように弓形に形成される。天井壁部12の長手方向から見た断面形状が平坦から弓形に遷移する位置は、アッパーケース10の長手方向の途中であるが、開口部2a,2b側であってもよいし、長手方向の中央付近であってもよい。
【0019】
ロアケース20は、本体部2の下方側に配置される。ロアケース20は、開口部21と、底壁部22と、側壁部23とを有する。開口部21は、ロアケース20の上方側端部に形成される。開口部21は、本体部2において、アッパーケース10により閉塞される。側壁部23は、底壁部22の外周端から、当該底壁部22に対して交差する方向(例えば上下方向)に立設されている。側壁部23は、本体部2において、アッパーケース10を支持する。
【0020】
底壁部22は、本体部2において、天井壁部12に対して上下方向に対向する。底壁部22は、上方向内側に壁面22aを有する。壁面12aと壁面22aとは、本体部2において、上下方向に対向する一対の対向面である。本実施形態の底壁部22は、長手方向から見た断面形状が、上方向内側に膨らむように弓形に形成される部分を有する。詳細には、底壁部22は、長手方向から見た断面形状の上方向内側に膨らむ湾曲度が、長手方向における開口部2a,2bから離間するにつれて大きくなるように形成される。例えば、
図2に示すE-Eの位置における底壁部22は、長手方向から見た断面形状が、幅方向において平坦である(
図5の(A))。一方、
図2に示すD-Dの位置における底壁部22は、長手方向から見た断面形状が、幅方向において上方向内側に膨らむように弓形に形成される。さらに、
図2に示すC-Cに位置における底壁部22は、長手方向から見た断面形状が、D-Dの位置の底壁部22よりさらに上方向内側に膨らむように弓形に形成される。底壁部22の長手方向から見た断面形状が平坦から弓形に遷移する位置は、ロアケース20の長手方向の途中であるが、開口部2a,2b側であってもよいし、長手方向の中央付近であってもよい。
【0021】
収容空間部3は、本体部2内に形成され、開口部2a,2bを介して外部と連通している。収容空間部3は、開口部2a,2bを介して外部から配索材Wの一部を余長部分として引き込んで(押し込んで)収容する。収容空間部3に収容された配索材Wは、例えば、スライドシートやスライドドアのスライド移動に伴って連動する。本実施形態の収容空間部3は、一対の端部領域30,31と、中央領域32と、狭小領域35とを有する。
【0022】
端部領域30,31は、
図4の(B)、
図5の(A)~
図5の(C)に示すように、配索材Wが収容空間部3に収容された収容状態において、本体部2を上下方向から見た場合に、幅方向の両端にある空間である。端部領域30,31は、収容空間部3に収容されている配索材Wのうち、直線状部分Wsがそれぞれ配置される。直線状部分Wsは、収容空間部3に収容された配索材Wのうち、長手方向に沿って直線状態が維持される部分である。配索材Wが収容空間部3に収容された収容状態において、配索材Wの一部が開口部2aから出し入れされた場合、直線状部分Wsは、見かけ上、長手方向の一方から他方に向けて増えたり、他方から一方に向けて減ったりする。
【0023】
端部領域30,31は、それぞれ、上下方向において、天井壁部12の壁面12aの一部と底壁部22の壁面22aの一部との間に形成される。各端部領域30,31において、壁面12aの一部と壁面22aの一部との間隔Daは、例えば、収容空間部3に収容される配索材Wの外径よりも広く設定されている(
図5の(C))。間隔Daは、長手方向に略一定であり、配索材Wのうち、少なくとも直線状部分Wsの外径より大きい。
【0024】
中央領域32は、配索材Wが収容空間部3に収容された収容状態において、本体部2を上下方向から見た場合に、一対の端部領域30,31の間にあり、配索材Wのうち、一対の直線状部分Wsと連結される折返し部分Wtが配置される領域である。折返し部分Wtは、収容空間部3に収容された配索材Wのうち、本体部2の長手方向の一方から他方にU字状に折り返された部分である。配索材Wが収容空間部3に収容された収容状態において、配索材Wの一部が開口部2aから出し入れされた場合、折返し部分Wtは、見かけ上、長手方向の一方から他方または他方から一方に向けて移動する。
【0025】
中央領域32は、上下方向において、天井壁部12の壁面12aの一部と底壁部22の壁面22aの一部との間に形成される。中央領域32において、壁面12aの一部と壁面22aの一部との間隔Dbは、例えば、長手方向及び幅方向において一定ではなく、長手方向における開口部2a,2bと反対側の端部に向けて狭く形成される。また、中央領域32における間隔Dbは、例えば、幅方向における中央から両端部に向けて広くなるように形成される。
【0026】
狭小領域35は、上下方向から見て長手方向のうち、配索材Wが収容空間部3に侵入する侵入方向側の端部である奥側端部を含む領域である。本実施形態の奥側端部は、長手方向において、一対の開口部2a,2bと反対側の端部である。狭小領域35は、上下方向において、天井壁部12の壁面12aの一部と底壁部22の壁面22aの一部との間に形成される。壁面12a及び壁面22aは、
図4の(A)、
図4の(B)、
図5の(C)に示すように、狭小領域35において、中央領域32の上下方向における間隔Dbが、一対の端部領域30,31の上下方向における間隔Daより狭く形成される。狭小領域35は、壁面12aと壁面22aの上下方向の間隔Dbが、端部領域30,31における壁面12aと壁面22aの上下方向の間隔Daより狭くなる領域である。本実施形態の狭小領域35は、例えば、上下方向から見て長手方向の途中(例えば中央付近)から、奥側端部までを含む領域である。
【0027】
狭小領域35において、壁面12aの一部と壁面22aの一部との間隔Dbは、例えば、収容空間部3に収容される配索材Wの外径よりも狭く設定される。狭小領域35における間隔Dbは、長手方向及び幅方向において一定ではなく、少なくとも折返し部分Wtの外径より小さい。
【0028】
本実施形態のプロテクタ1では、配索材Wの折返し部分Wtが、例えば、スライドシートのスライド移動に伴い、長手方向に移動する。配索材Wの一部が開口部2aを介して収容空間部3から外部に引き出された場合、折返し部分Wtは、例えば、長手方向におけるR位置→Q位置→P位置の順に移動する(
図3)。折返し部分WtがR→Q→Pと移動して開口部2a,2bに近づいた場合、直線状部分Wsが短くなる。一方、配索材Wの一部が開口部2aを介して外部から収容空間部3に引き込まれた場合、折返し部分Wtは、例えば、長手方向におけるP位置→Q位置→R位置の順に移動する。折返し部分WtがP→Q→Rと移動して開口部2a,2bから離れた場合、直線状部分Wsが長くなる。
【0029】
直線状部分Wsが短くなった状態では、例えば、車両走行時の振動が加わったとしても、直線状部分Wsは短いので、折返し部分Wtが振動することにより本体部2の内面を叩いて異音が生じることは少ない。一方、直線状部分Wsが長くなった状態では、折返し部分Wtが狭小領域35にあって一対の壁面12a及び壁面22aにより上下方向から挟持されているので、車両走行時の振動が加わったとしても、折返し部分Wtの振動を抑制することができる。これにより、折返し部分Wtが振動することによる異音の発生を抑制することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態におけるプロテクタ1では、一対の壁面12a、壁面22aは、収容空間部3における狭小領域35において、中央領域32の上下方向における間隔Dbが、端部領域30,31の上下方向における間隔Daより狭く形成される。
【0031】
従来、プロテクタ1では、収容空間部3に収容された配索材Wが車両走行時の振動により本体部2の壁面12a,22aを叩くことで異音を発生する場合がある。配索材Wの一部が開口部2aを介して収容空間部3から外部に引き出された場合、直線状部分Wsが短くなり、折返し部分Wtが開口部2aに近づいていく。配索材Wの一部が開口部2aを介して外部から収容空間部3に引き込まれた場合、直線状部分Wsが長くなり、折返し部分Wtが開口部2aから離間していく。
【0032】
配索材Wと各壁面12a,22aとの間には、開口部2aを介した収容空間部3に対する配索材Wの出し入れを容易にするために、一定の隙間が必要とされる。折返し部分Wtが開口部2aから離れている場合(折返し部分Wtが奥側端部に近づいている場合)、直線状部分Wsが長くなることから、例えば、車両走行時の振動により折返し部分Wtが振動し、各壁面12a,22aを叩く場合がある。そこで、上記構成より、端部領域30,31における壁面12a,22aと直線状部分Wsとの隙間を確保しつつ、直線状部分Wsが長くなる狭小領域35における壁面12a,22aと折返し部分Wtとの隙間を抑制する。この結果、車両走行時の振動による折返し部分Wtの振動を抑えて、当該振動に起因する異音の発生を抑制することができる。
【0033】
また、狭小領域35における壁面12a,22aと折返し部分Wtとの隙間を抑制するために、壁面12a,22aに不織布等を貼り付ける必要がないので、異音の発生を抑制するためのコスト増を抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態におけるプロテクタ1では、一対の壁面12a,22aは、狭小領域35において、中央領域32の上下方向における間隔Dbが、長手方向における奥側端部に向けて狭く形成される。これにより、長手方向における奥側端部に向けて、一対の壁面12a,22aと折返し部分Wtとの隙間が次第に狭くなるので、直線状部分Wsが長くなる狭小領域35における壁面12a,22aと折返し部分Wtとの隙間を容易に抑制することができる。一方、直線状部分Wsが短くなる、狭小領域35以外の中央領域32における壁面12a,22aと折返し部分Wtとの隙間を確保し、収容空間部3に対する配索材Wの出し入れを容易にする。
【0035】
また、本実施形態におけるプロテクタ1では、一対の壁面12a,22aは、長手方向から見た断面形状が、中央領域32を頂点として、上下方向内側に膨らむように弓形に形成される。これにより、一対の壁面12a,22aのうち、一方の壁面12a(または壁面22a)の断面形状を弓形にし、他方の壁面22a(または壁面12a)の断面形状を直線状にした場合と比較して、両方の壁面12a,22aの断面形状を弓形にした方が、湾曲度を小さくすることができ、プロテクタ1の強度低下を抑制することができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、一対の壁面12a,22aは、長手方向から見た断面形状が、中央領域32を頂点として、上下方向内側に膨らむように弓形に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、各壁面12a,22aの幅方向における中央部が上下方向内側に突出して形成された突起部を有するものであってもよい。この場合、突起部は、狭小領域35において、中央領域32の上下方向における間隔Dbが、一対の端部領域30,31の上下方向における間隔Daより狭く形成されることが好ましい。また、突起部は、狭小領域35において、中央領域32の上下方向における間隔Dbが、長手方向における奥側端部に向けて狭く形成されることが好ましい。
【0037】
また、上記実施形態では、各壁面12a,12bの長手方向から見た断面形状が上下方向内側に膨らむように弓形に形成されており、各壁面12a,12bは、幅方向において両端から中央に向けて傾斜するように形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、壁面12aの幅方向のうち、各端部領域30,31の一部を形成する端部側壁面と、狭小領域35の一部を形成する狭小領域側壁面との間にそれぞれ段差を設け、狭小領域側壁面が幅方向の両端にある段差から中央に向けて、上下方向内側に膨らむように弓形に形成されていてもよい。そして、壁面22aの幅方向のうち、各端部領域30,31の一部を形成する端部側壁面と、狭小領域35の一部を形成する狭小領域側壁面との間にそれぞれ段差を設け、狭小領域側壁面が幅方向の両端にある段差から中央に向けて、上下方向内側に膨らむように弓形に形成されていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、狭小領域35は、上下方向から見て長手方向の途中(例えば中央付近)から奥側端部までを含む領域としているが、これに限定されるものではない。狭小領域35は、例えば、上下方向から見て長手方向の一方の端部(例えば開口部2a,2b側の端部)から他方の端部(奥側端部)までを含む領域であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、開口部2a,2bは、いずれも本体部2の長手方向の一方側に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、図示例では、開口部2aが本体部2の長手方向の一方に突出して他方に折り返した部分である配索材挿通部の先端に形成されているが、当該配索材挿通部が長手方向の他方である奥側端部側に向けて延在し、開口部2aが開口部2bから長手方向に離間した位置に形成されていてもよい。配索材挿通部は、例えば、開口部2aが形成された先端が、本体部2の長手方向の中央付近や、当該中央付近から奥側端部側に延在していてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 プロテクタ
2 本体部
2a,2b 開口部
3 収容空間部
10 アッパーケース
12 天井壁部
20 ロアケース
22 底壁部
30,31 端部領域
32 中央領域
35 狭小領域
W 配索材
Ws 直線状部分
Wt 折返し部分