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特許7534924耐加水分解性が高く、色味を抑えた強化ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】耐加水分解性が高く、色味を抑えた強化ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/11 20060101AFI20240807BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C03C3/11
C03C21/00 101
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020185808
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2021075453
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】19208145
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルテ グリム
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エルヴィン アイヒホルツ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/108417(WO,A1)
【文献】特開2015-093819(JP,A)
【文献】特開2001-337072(JP,A)
【文献】国際公開第2016/182054(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/199299(WO,A1)
【文献】特開2014-133680(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C03C 21/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩ガラスであって、
前記ガラスは、少なくとも6μm/時の閾値拡散率Dを有し、
前記ガラスは、USP660/ガラス粒子によるタイプIの限界の最大80%に相当する耐加水分解性を有し、
前記ガラスは、少なくとも12ppmのFe(モル%ベース)を有し、
z値とx値との合計は、1mmのサンプル厚みで測定された場合、CIE 1931色空間によればy値より少なくとも1.5倍高く、かつ、
下記成分:
【表1】
を特徴とする組成を有する、ガラス。
【請求項2】
前記ガラスが、500ppm未満のTiOを含む、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
前記ガラスが、ZrOを0.4モル%~5モル%の量で含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
前記ガラスが、1モル%未満のBを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラス中のAlのモル比が、NaOのモル比より高い、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項6】
アルカリ金属酸化物のモル比の合計が、Alのモル比より低い、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項7】
CaOとMgOとの合計に対するCaOのモル比が、0.5より大きい、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項8】
前記ガラスが、1mmのサンプル厚みで測定された場合および10mmのサンプル厚みで測定された場合、400nmの波長ならびに495nmおよび670nmの波長において85%より高い透過率を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項9】
495nmでの透過率と400nmでの透過率との比が、1mmのサンプル厚みで測定された場合および10mmのサンプル厚みで測定された場合、0.95:1~1.05:1の範囲にある、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項10】
1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで測定された場合、CIE 1931色空間において、z値とx値との比が、1.1~1.3の範囲にあり、z値とy値との比が、1.05~1.3の範囲にある、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項11】
1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで測定された場合、CIE 1931色空間において、y値とx値との比が、1超:1~1.05:1の範囲にある、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項12】
前記ガラスが温度上昇レジメンを伴う勾配炉内で60分間熱処理された場合、最大結晶化速度KGmaxが、800℃~1500℃の温度範囲において最大0.05μm/分である、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項13】
前記ガラスが、化学強化されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項14】
DoLが、20μm~100μmの範囲にあり、圧縮応力(CS)が、750MPa~1000MPaの範囲にある、請求項13記載のガラス。
【請求項15】
医薬品の一次包装としての、請求項1から14までのいずれか1項記載のガラスの使用。
【請求項16】
ガラス溶融物を、ダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法、リドロー法、フロート法または管引法により処理する工程と、
任意に、前記ガラスを化学強化により強化する工程とを含む、
請求項1から14までのいずれか1項記載のガラスを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品包装に特に適したガラスおよびガラス製品である。本ガラスは、化学強化性と、非常に良好な耐加水分解性と、色味の低さとを併せ持つ。また、本発明は、このようなガラスの製造方法およびその使用を含む。
【0002】
発明の背景
医療分野、特に、医薬分野で使用されるガラス物品は、厳格な品質基準を満たさなければならない。医薬品の一次包装用の物品、例えば、バイアル、アンプル、カートリッジおよびシリンジは、高い透明性、良好な滅菌性および優れた耐薬品性を示さなければならない。さらに、ガラスは、ガラスに収容されるかまたはガラスと接触している物質の品質を、所定の閾値を超えるように変化させてはならない。すなわち、ガラス材料は、例えば、収容されている薬剤の有効性および安定性を損ないまたはそれを毒性にさえする量の物質を絶対に放出してはならない。また、医薬品包装、例えば、医薬品容器用のガラスには、例えば、医薬品によるガラス瓶の破損を避けるために、高い機械的安定性および耐久性も必要である。
【0003】
したがって、医薬品容器に適した高い機械的安定性を併せ持つ改善された耐加水分解性を有するガラスを提供することが望ましい。このような所望のガラスは、特に、高い透明性を示すべきであり、同時に、費用効率の高い方法で製造可能であるべきである。
【0004】
より高い機械的抵抗性を有するガラスを提供するために、ガラスを強化する、特に、ガラスを化学強化するのが公知である。この目的で、ガラスをイオン交換に供して機械的損傷を防止する圧縮応力層を形成させ、これにより、ガラスは損傷に対してはるかに耐久性を示す。イオン交換プロセスは、ガラス表面において、より小さなアルカリ金属イオン、例えばナトリウムおよび/またはリチウムイオン等が、より大きなアルカリ金属イオン、例えばカリウムイオンに交換されるように作用する。イオン交換プロセスの持続時間および温度により、交換層の深さが決定される。このイオン交換深さが、使用中での製品の表面に対する損傷深さを超えていれば、破損は防止される。
【0005】
イオン交換下での化学強化は、例えば、カリウム含有塩溶融物中に浸漬することにより行われる。また、ケイ酸カリウムの水溶液、ペーストもしくは分散液を使用することまたは蒸着もしくは温度活性化拡散によるイオン交換を行うことも可能である。上記方法のうち1番目のものが一般的に好ましい。
【0006】
圧縮応力層は、圧縮応力および浸透深さのパラメータを特徴とする。
【0007】
圧縮応力(CS)(「圧力応力」または「表面応力」)とは、イオン交換後のガラス表面にわたるガラスネットワーク上の変位作用により生じるが、ガラスの変形が生じない応力である。
【0008】
「浸透深さ」または「イオン交換層の深さ」または「イオン交換深さ」(「層の深さ」または「イオン交換層の深さ」、DoL)とは、イオン交換が生じ、圧縮応力が発生するガラス表面層の厚みである。圧縮応力CSおよび浸透深さDoLは、市販の応力計FSM6000を使用して、光学的に測定することができる。
【0009】
「拡散率」D(「閾値拡散率D」としても公知)は、DoLおよび化学強化時間tから、次の式:DoL=1.4sqrt(4t)に従って計算することができる。本開示では、Dは、KNO中で450℃で9時間の化学強化について与えられる。拡散率の表示は、各物品が化学強化を受けたことを意味するものではない。拡散率は、任意の化学強化を行う場合の化学強化に対する物品の感受性を表す。
【0010】
したがって、イオン交換は、ガラスがイオン交換プロセス(ガラスの製造および加工の分野の当業者に周知のプロセス)により硬化されまたは化学強化されることを意味する。化学強化に使用される典型的な塩は、例えば、K含有溶融塩または塩の混合物である。慣例的に使用される塩には、KNO、KCl、KSOまたはKSiが含まれる。添加剤、例えばNaOH、KOHおよび他のナトリウム塩またはカリウム塩も、化学強化のためのイオン交換速度をより良好に制御するのに使用される。ガラスの組成は、達成される浸透深さおよび表面応力に大きな影響を及ぼす。
【0011】
製薬業界で多くの場合使用されるガラスは、主成分が酸化ケイ素および酸化ホウ素であるが、アルミニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類酸化物を含有する場合もあるホウケイ酸塩ガラス(いわゆる、中性ガラス)である。
【0012】
特定の医療用途および特に、医薬用途において、アルミノケイ酸塩ガラスの化学強化ガラス物品、例えばガラス容器は、重要な役割を果たす。アルミノケイ酸塩ガラスは、ガラス物品を強化することができ、高い機械的安定性を示すことができるため有利である。一方、従来技術から公知のアルミノケイ酸塩ガラスの欠点は、例えば、ホウケイ酸塩ガラスと比較して、耐加水分解性が低いことである。一方、ホウケイ酸塩ガラスは、アルミノケイ酸塩ガラスほどには良好に強化することができない。従来技術のアルミノケイ酸塩ガラスの別の欠点は、高い透明性を有するガラスを提供するのに、コストのかかる原料が必要であることである。低コストの原料を使用すると、多くの場合、ガラスは、望ましくない色味を示す。
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記で言及された欠点を回避し、医療分野、特に医薬分野での使用に適した良好な耐加水分解性と良好な機械的強度とを併せ持つガラスを提供することである。特に、ガラス物品は、医薬品の一次包装としての使用に適していなければならず、低い色味で高い透明性を示し、同時によりコストのかからない原料で製造可能でなければならない。
【0014】
この目的は、本明細書に開示された主題により解決される。
【0015】
発明の説明
第1の態様では、本発明は、ケイ酸塩ガラスであって、前記ガラスが、少なくとも6μm/時の閾値拡散率D、耐加水分解性クラスI(ISO720:1985によるHGA1、またはUSP660/ガラス粒子によるタイプI)を有し、このガラスが、少なくとも0.0012モル%(12ppm)のFeを有する、ガラスを提供する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、ケイ酸塩ガラスであって、z値とx値との合計が、1mmのサンプル厚みで、CIE 1931色空間によれば、y値より少なくとも1.5倍高く、このガラスが、耐加水分解性クラスI(ISO720:1985によるHGA1、またはUSP660/ガラス粒子によるタイプI)を有する、ガラスを提供する。CIE 1931色空間は、3つの値、すなわち、x値、y値およびz値の組み合わせにより色感を表す。
【0017】
第3の態様では、本発明は、ケイ酸塩ガラスであって、前記ガラスが、少なくとも6μm/時の閾値拡散率Dを有し、このガラスが、耐加水分解性クラスI(ISO720:1985によるHGA1、またはUSP660/ガラス粒子によるタイプI)を有し、z値とx値との合計が、1mmのサンプル厚みで、CIE 1931色空間によれば、y値より少なくとも1.5倍高い、ガラスを提供する。
【0018】
本発明のガラスは、好ましくは、化学強化されている。「化学強化」という表現は、ガラスを化学強化することができること、すなわち、ガラスが化学強化に対して感受性を示すことを意味する。化学強化に対する感受性の程度は、拡散率Dとして与えられる。一方で「強化する(tempering)、強化性(temperable)および強化された(tempered)」という用語と、他方で「強化(toughening)、強化性(toughenable)および強化された(toughened)」という用語は、本開示において互換的に使用される。
【0019】
好ましくは、本発明のガラスは、少なくとも6μm/時の閾値拡散率Dを有する。実施形態において、拡散率は、8μm/時~50μm/時、10μm/時~35μm/時または15μm/時~30μm/時の範囲にある。一部の好ましいガラスは、20μm/時~25μm/時の拡散率を有する。好ましくは、本発明のガラスは、少なくとも6μm/時、より好ましくは、少なくとも8μm/時、より好ましくは、少なくとも10μm/時、より好ましくは、少なくとも15μm/時、より好ましくは、少なくとも20μm/時の閾値拡散率Dを有する。本発明のガラスの高い閾値拡散率Dは、医薬品包装に一般的に使用される従来技術のホウケイ酸塩ガラスと比較して、主な利点である。
【0020】
ガラスは、耐加水分解性クラスI(ISO720:1985によるHGA1、またはUSP660/ガラス粒子によるタイプI)を有する。本発明のガラスの高い耐加水分解性は、医薬品包装としての使用に特に有利である。本発明のガラスは、USP660/ガラス粒子によるタイプIの限界の最大80%、好ましくは、80%未満、より好ましくは、79%未満に相当する耐加水分解性を有する。
【0021】
優れた強化性(特に高い閾値拡散率D)と優れた耐加水分解性とを併せ持つことが、本発明のガラスの主な利点である。
【0022】
一般的には、特に、医薬品包装の分野では、昼白色の色感が望まれる。別の色感、特に、黄褐色の色感は、一般的には、このようなガラスが観察者にとって「悪い」または「汚く」さえ見えるため、望ましくないと見なされる。さらに、ガラスの望ましくない色感は、医薬品包装の内容物の適切な検査を損なう場合がある。したがって、従来技術では、黄褐色の印象を招くFe-Ti酸化物の形成を避けるために、Feの含有量が極めて少ないガラスが製造されてきた。このため、Feの含有量を可能な限り低く保つためには、非常に純度の高い原料が必要であった。このような原料は、非常に高価である。
【0023】
本発明者らは、高純度の非常に高価な原料を利用する必要なく、良好な色感を有するガラスを提供する方法を見出した。特に、本発明のガラスは、少なくとも12ppm(モル%ベース)、例えば、少なくとも20ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、50ppm超、少なくとも60ppm、少なくとも70ppm、少なくとも80ppmまたは少なくとも90ppmの量で、Feを含むことができる。ただし、Feの量は、あまり高くすべきでない。好ましくは、ガラスは、最大0.1モル%(1000ppm)、より好ましくは、最大500ppm、より好ましくは、最大250ppm、より好ましくは、最大125ppmのFe含有量を有する。
【0024】
ガラスの色感は、CIE 1931色空間による位置により説明することができる。好ましくは、本発明のガラスは、z値とx値との合計がy値より少なくとも1.5倍高いようなものである。このようなガラスは、望ましくない黄褐色の印象とは程遠い、特に良好な色感を与える。
【0025】
好ましくは、本発明のガラスは、モル%で示された量で、下記成分:
【表1】
を含む。
【0026】
好ましくは、本発明のガラスは、アルミノケイ酸塩ガラスである。アルミノケイ酸塩ガラスは、従来技術で一般に使用されるホウケイ酸塩ガラスと比較して、特に有利な閾値拡散率Dを有する。
【0027】
ガラスは、ケイ酸塩ガラスである。すなわち、ガラスは、相当量のSiOを含有する。SiOは、好ましくは、55モル%~85モル%、より好ましくは、60モル%~80モル%、より好ましくは、65モル%~75モル%、より好ましくは、65モル%~70モル%、より好ましくは、66モル%~69モル%の量で、本発明のガラスに含有される。SiOの量が非常に少ないと、耐薬品性が低下する場合がある。SiOの量が非常に多いと、加工温度(ドイツ語:「Verarbeitungstemperatur(VA)」)が高くなり、製造が損なわれる場合がある。
【0028】
好ましくは、本発明のガラスは、5モル%~25モル%、より好ましくは、7.5モル%~20モル%、より好ましくは、10モル%~15モル%、より好ましくは、11モル%~13モル%の量で、Alを含む。アルミノケイ酸塩ガラスは、ホウケイ酸塩ガラスと比較して、特に有利な閾値拡散率Dを有する。ただし、Alの量は、あまり高くてはならない。アルミノケイ酸塩ガラスは、多くの場合、ホウケイ酸塩ガラスと比較して、より高い融点を有するためである。特に、ガラスは、Alの量が非常に多いと、溶融させるのが困難である場合があり、加工温度(VA)が高くなるため、エネルギー投入量がより多くなる場合がありかつ/または成形が困難になる場合がある。これに対して、Alの量が非常に少ないと、耐薬品性が損なわれる場合がある。
【0029】
好ましくは、本発明のガラスは、5モル%~20モル%、より好ましくは、6モル%~15モル%、より好ましくは、7モル%~12モル%、より好ましくは、8モル%~11モル%の量で、NaOを含む。このような量のNaOは、化学強化に関して特に好ましい。NaOの量が非常に多いと、アルカリ溶出により、耐加水分解性が損なわれる場合がある。
【0030】
好ましくは、本発明のガラスは、0.5モル%~5モル%、より好ましくは、0.6モル%~2モル%、より好ましくは、0.7モル%~1.5モル%、より好ましくは、0.8モル%~1.3モル%の量で、KOを含む。KOは、耐失透性を改善することができる。さらに、KOのアルカリ溶出はより少ない。ただし、KOの量が非常に多いと、耐加水分解性が損なわれる場合がある。さらに、KOは、熱膨張率を増大させ、その結果、耐熱衝撃性が低下し、これは、さらなる加工中にも不利になる場合がある。また、多量のKOは、ガラスのイオン交換能力を妨害し、化学強化の際の拡散率および/または浸透深さ(DoL)を低下させる場合がある。したがって、KOの量は、好ましくは、上記されたように制限される。
【0031】
「RO」という用語は、アルカリ金属酸化物であるLiO、NaOおよびKOを指す。本発明のガラスは、例えば、0.1モル%~1モル%の量で、LiOを含むことができる。ただし、好ましくは、本発明のガラスは、LiOを含まない。LiOは、コスト増大に関わり、その利用可能性は、特に、リチウムイオン電池等の別の用途のために制限される場合がある。好ましくは、NaOは、本発明のガラスの主なアルカリ金属酸化物である。好ましくは、ROに対するNaOのモル比は、0.75:1~1:1、より好ましくは、0.85:1~0.95:1の範囲にある。特に、これは、耐加水分解性および化学強化に関して有利である場合がある。
【0032】
好ましくは、本発明のガラスは、3.5モル%~20モル%、より好ましくは、4モル%~15モル%、より好ましくは、5モル%~10モル%、より好ましくは、6モル%~9モル%、より好ましくは、7.2モル%~8モル%の量のCaOを含む。CaOは、アルカリ土類酸化物であり、ガラスの粘度を調整するのに役立つ(溶融挙動の最適化)。CaOは、ガラスの融点を下げ、より少ないエネルギーで溶融できるようにする。対照的に、酸化カルシウム含有量が高すぎると、DoL値が低下する程度までガラスのイオン交換能力/拡散率が悪化する場合がある。加えて、交換浴のイオン交換能力が損なわれる場合がある。すなわち、イオン交換浴をより頻繁に交換しなければならない。したがって、CaOの量を上記された範囲に調整することが有利である。
【0033】
好ましくは、本発明のガラスは、0.1モル%~5モル%、より好ましくは、0.2モル%~1.5モル%、より好ましくは、0.3モル%~1モル%、より好ましくは、0.4モル%~0.5モル%の量で、MgOを含む。MgOは、特に、ガラスの粘度を調整するのに有利であることができる。MgOは、ガラスの融点を低下させ、ガラスがより良好に溶融するのに役立つ。ガラスのイオン交換能力は、MgOにより向上させることができる。ただし、MgOの量が多いと、耐失透性が損なわれる場合がある。
【0034】
「RO」という用語は、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、BaOおよびSrOを指す。本発明のガラスは、BaOおよび/またはSrOを、例えば、それぞれ0.1モル%~1モル%の量で含むことができる。ただし、好ましくは、本発明のガラスは、BaOおよび/またはSrOを含まない。好ましくは、CaOは、本発明のガラスの主なアルカリ土類金属酸化物である。好ましくは、CaO対ROのモル比は、0.8:1~1:1、より好ましくは、0.9:1~0.98:1の範囲にある。特に、CaOとMgOとの合計に対するCaOのモル比は、0.5より大きいことが好ましく、より好ましくは、少なくとも0.6、より好ましくは、少なくとも0.7、特に、0.8:1~1:1、より好ましくは、0.9:1~0.98:1の範囲にある。他の実施形態では、CaOとMgOとのモル比の合計は、CaOのモル比より、少なくとも1.7倍高いことができる。
【0035】
好ましくは、本発明のガラスは、0モル%~0.3モル%、より好ましくは、0モル%~0.2モル%、より好ましくは、0モル%~0.1モル%、より好ましくは、0モル%~0.05モル%の量で、TiOを含む。TiOは、耐薬品性の改善に寄与することができる。ただし、特に好ましくは、本発明のガラスは、TiOを含まない。TiOは、Feと反応し、ガラスに黄褐色の着色を生じる場合がある。したがって、ガラス中のTiOの量を制限するのが好ましい。
【0036】
好ましくは、本発明のガラスは、0.1モル%~10モル%、より好ましくは、0.3モル%~10モル%、より好ましくは、0.4モル%~5モル%、より好ましくは、0.5モル%~10モル%、より好ましくは、0.6モル%~1.5モル%の量で、ZrOを含む。特に、ZrOは、TiOの代替として使用することができる。ZrOの量は、好ましくは、最大10モル%、より好ましくは、最大7.5モル%、より好ましくは、最大5モル%、例えば、最大4.5モル%、最大3モル%または最大1.5モル%である。ZrOは、耐加水分解性を向上させることができる。特に、ZrOは、例えば、[ZrO3]2-とCa2+との構造単位を形成する(これにより、Ca2+イオンの移動性を低減することができる)ことによりガラス構造を安定化することができる。さらに、ZrOは、ガラスのイオン交換性を改善することができ、その結果、より高いCS値を達成することができる。ただし、多量のZrOは、加工温度を上昇させ、耐失透性を低下させる場合がある。
【0037】
好ましくは、本発明のガラスは、0.1モル%~3モル%、より好ましくは、0.2モル%~2モル%、より好ましくは、0.3モル%~1モル%、より好ましくは、0.4モル%~0.6モル%の量で、Clを含む。特に、Clは、清澄剤として作用することができる。
【0038】
本発明のガラスは、例えば、少なくとも0.1モル%の量で、Bを含むことができる。ただし、本発明のガラス中のBの量は、好ましくは、1モル%未満、より好ましくは、0.5モル%未満である。Bは、ガラスが化学強化される性能を損なう場合がある。したがって、本発明のガラスは、好ましくは、Bを含まない。
【0039】
上記されたように、ガラス中にFeとTiOとの両方が存在すると、ガラスの望ましくない黄褐色の着色が生じる。Feの量を減らすには、特定の純粋な原料を使用する必要があるため、高コストになる。したがって、本発明の態様は、代わりにTiOの含有量を減らすことに関する。特に、ガラス中のFeのモル比は、TiOのモル比と少なくとも同じ程度の大きさであることが好ましい。より好ましくは、ガラス中のFeのモル比は、TiOのモル比より高い。
【0040】
上記されたように、ZrOは、TiOの代替として使用することができる。好ましくは、ガラス中のZrOのモル比は、TiOのモル比より、少なくとも5倍、より好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも50倍高い。同様に、Feに対するZrOのモル比は、好ましくは、Feに対するTiOのモル比より、少なくとも5倍、より好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも50倍高い。上記されたように、ガラス中にFeとTiOとの両方が存在すると、ガラスの望ましくない黄褐色の着色が生じる。したがって、TiOの代替として、ZrOを使用するのが有利である。さらに、別の理由で、ZrOは有利である。すなわち、CSおよびDoLに対するZrOの影響は、TiOのそれぞれの影響と比較してより高い。このため、TiOと比較して、改善された化学強化の結果が、ZrOにより達成される。
【0041】
上記されたように、Feは、本発明のガラスに存在することができる。Feを回避するために、非常に純粋な原料を使用する必要はない。このことは、本発明の特に有利な点である。ただし、Feは、非常に大量に存在すべきではない。特に、Feの量は、ZrOの量と比較して、非常に少ないのが好ましい。好ましくは、ガラス中のZrOのモル比は、Feのモル比より、少なくとも5倍、より好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも50倍高い。一方、ガラス中のZrOのモル比は、好ましくは、Feのモル比より、最大100倍高い。
【0042】
上記されたように、AlとNaOとは両方とも、ガラスの化学強化に関して有利である。アルミノケイ酸塩ガラスは、ホウケイ酸塩ガラスと比較して、特に有利な閾値拡散率Dを有する。さらに、ナトリウムは、通常、化学強化中にカリウムに交換されるため、好ましくは、ある程度の量のNaOが、ガラス中に存在する。ただし、ガラス中のAlのモル比は、好ましくは、NaOのモル比より高い。好ましくは、Al対NaOのモル比は、1.05:1~1.35:1、より好ましくは、1.1:1~1.3:1の範囲にある。これは、耐薬品性、耐加水分解性およびイオン交換性に関して特に有利である。
【0043】
好ましくは、本発明のガラスは、Alとアルカリ金属酸化物ROとの両方を含む。ただし、アルカリ金属酸化物ROのモル比の合計は、Alのモル比以下であるのが好ましい。好ましくは、アルカリ金属酸化物ROのモル比の合計は、Alのモル比より低い。好ましくは、RO対Alのモル比は、0.8:1~1:1、より好ましくは、0.85:1~1未満:1である。これは、耐薬品性、耐加水分解性およびイオン交換性に関して特に有利である。
【0044】
興味深いことに、CaOに対するAlのモル比は、化学強化されるガラスの性能に関連することが見出された。好ましくは、ガラス中のAlのモル比は、CaOのモル比より、少なくとも1.1倍、より好ましくは、少なくとも1.2倍、より好ましくは、少なくとも1.3倍、より好ましくは、少なくとも1.4倍、より好ましくは、少なくとも1.5倍高い。ただし、CaOに対するAlのモル比は、あまり高くすべきではない。そうしなければ、融点が著しく上昇する場合がある。好ましくは、ガラス中のAlのモル比は、CaOのモル比より、最大2倍、より好ましくは、最大1.9倍、より好ましくは、最大1.8倍、より好ましくは、最大1.7倍、より好ましくは、最大1.6倍高い。
【0045】
上記されたように、本発明のガラスは、好ましくは、アルミノケイ酸塩ガラスである。ただし、ガラスは、好ましくは、上記されたのと同様に他の成分を含む。好ましくは、SiOとAlとのモル比の合計は、70モル%~90モル%、より好ましくは、75モル%~85モル%の範囲にある。特に好ましくは、SiOとAlとのモル比の合計は、82モル%未満である。
【0046】
この説明において、ガラスが、成分を含まないことまたはガラスが、特定の成分を含有しないことが言及される場合には、これは、この成分がガラス中に不純物としてのみ存在することが可能であることを意味する。これは、該成分が相当な量で添加されないことを意味する。相当な量とは、300ppm(モル濃度)未満、好ましくは、200ppm(モル濃度)未満、より好ましくは、100ppm(モル濃度)未満、特に好ましくは、50ppm(モル濃度)未満、最も好ましくは10ppm(モル濃度)未満の量である。好ましくは、本発明のガラスは、F、SnOおよび/またはCeOを含まない。
【0047】
本発明のガラスは、優れた透過率を有する。好ましくは、ガラスは、400nmの波長において、1mmのサンプル厚みで、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、495nmの波長において、1mmのサンプル厚みで、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、670nmの波長において、1mmのサンプル厚みで、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、400nmの波長において、10mmのサンプル厚みで、75%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、495nmの波長において、10mmのサンプル厚みで、75%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、670nmの波長において、10mmのサンプル厚みで、75%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、1mmのサンプル厚みで、400nmと比較して495nmにおいて、最大5%高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、10mmのサンプル厚みで、400nmと比較して495nmにおいて、最大5%高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、1mmのサンプル厚みと比較して、10mmのサンプル厚みで、最大5%低い400nmでの透過率を有する。
【0048】
好ましくは、ガラスは、400nmおよび495nmおよび670nmの波長において、1mmのサンプル厚みで、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、400nmおよび495nmおよび670nmの波長において、10mmのサンプル厚みで、75%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。
【0049】
好ましくは、ガラスは、400nm、450nm、495nm、550nm、600nm、650nmおよび670nmの波長において、1mmのサンプル厚みで、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、400nm、450nm、495nm、550nm、600nm、650nmおよび670nmの波長において、10mmのサンプル厚みで、75%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。
【0050】
好ましくは、本発明のガラスは、可視範囲において高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、380nm~780nmの全波長領域における任意の波長において、1mmのサンプル厚みで、50%より高い、より好ましくは、60%より高い、より好ましくは、70%より高い、より好ましくは、80%より高い、より好ましくは、85%より高い、より好ましくは、90%より高い透過率を有する。好ましくは、ガラスは、380nm~780nmの全波長領域における任意の波長において、10mmのサンプル厚みで、50%より高い、より好ましくは、60%より高い、より好ましくは、70%より高い、より好ましくは、75%より高い、より好ましくは、80%より高い、より好ましくは、85%より高い透過率を有する。
【0051】
好ましくは、本発明のガラスは、可視範囲、特に、400nmおよび495nmおよび670nmの波長において、高い透過率を有する。好ましくは、400nmおよび495nmおよび670nmにおける透過率が、非常に類似している。
【0052】
好ましくは、495nmでの透過率と400nmでの透過率との比は、1mmのサンプル厚みおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.95:1~1.05:1、より好ましくは、0.97:1~1.04:1、より好ましくは、0.99:1~1.03:1、より好ましくは、1:1~1.02:1の範囲にある。495nmでの透過率が、400nmでの透過率と比較して、より高いのが特に好ましい。最も好ましくは、495nmでの透過率と400nmでの透過率との比は、1超:1~1.015:1の範囲にある。
【0053】
好ましくは、670nmでの透過率と495nmでの透過率との比は、1mmのサンプル厚みおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.95:1~1.05:1、より好ましくは、0.96:1~1.03:1、より好ましくは、0.97:1~1.02:1、より好ましくは、0.98:1~1.01:1の範囲にある。
【0054】
好ましくは、670nmでの透過率と400nmでの透過率との比は、1mmのサンプル厚みおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.95:1~1.05:1、より好ましくは、0.96:1~1.04:1、より好ましくは、0.97:1~1.03:1、より好ましくは、0.98:1~1.02:1、より好ましくは、0.99:1~1.01:1の範囲にある。
【0055】
上記されたように、本発明のガラスは、好ましくは、化学強化されている。またさらに、本発明は、強化ガラス、特に、化学強化ガラスに関する。好ましくは、圧縮応力(CS)に対する中心張力(CT)の比は、0.05~2.0の範囲にある。DoLは、特に、KNO中において、450℃で12時間の化学強化の場合、好ましくは、20μm~100μm、より好ましくは、25μm~75μm、より好ましくは、30μm~60μm、より好ましくは、35μm~50μmの範囲にある。中心張力(CT)は、好ましくは、100MPa~200MPaの範囲にある。圧縮応力(CS)は、好ましくは、750MPa~1000MPa、より好ましくは、800MPa~900MPaの範囲にある。特に好ましい実施形態では、本発明の化学強化ガラスは、少なくとも840MPaのCSおよび少なくとも30μmのDoL、より好ましくは、少なくとも840MPaのCSおよび少なくとも40μmのDoLを有する。
【0056】
上記されたように、色感は、3つの値、すなわち、x値、y値およびz値(色度座標)の組み合わせによる色感を表すCIE 1931色空間に基づいて説明することができる。これは、好ましくは、中心窩の2°の弧内のCIE標準観察者(CIE 1931 2°標準観察者)について、6770Kでの光源「C」を使用するDIN 5033に類似して決定される。簡潔にいえば、X、Y、およびZ標準スペクトル値を、CIE 1931色空間系の表から得て、測定された透過値を乗じることで、各三刺激値が得られる。
【0057】
色空間内の色位置(color location)または色位置(color position)を定義する色度座標x、yおよびzは、和x+y+zが1に等しくなるように正規化することにより得られる。このため、x値、y値およびz値は、正の値であり、和x+y+z=1である。CIE 1931色空間色度図は、色空間を表し、ここで、x軸は、x値を指し、y軸は、y値を指す。z値は、z=1-x-yを計算することにより、x値とy値との任意の与えられたペアから推論することができる。点x=y=z=1/3は、いわゆる、「白点」を表す。白点は、「白」の色を定義する。高いx値は、赤みがかった色を表す。高いy値は、緑がかった色を表す。高いz値は、青みがかった色を表す。各色度は、色空間における特定の色位置として表される。加法混色は、成分の直線接続線上に色位置を有する。色刺激値を正確に特徴付けるために、三刺激値Yは、全てのy値の合計を比(=21.293658)で除すことにより、輝度基準値(DIN 5033、パート1)として使用される。これにより、得られた値は、最大100に正規化される。この値は、比較プローブと比較して、人間の目に対してガラスがより明るいかまたはより暗いかを示す。
【0058】
x値、y値およびz値は、正の値であり、和x+y+z=1である。CIE 1931色空間色度図は、色空間を表し、ここで、x軸は、x値を指し、y軸は、y値を指す。z値は、z=1-x-yを計算することにより、x値とy値との任意の与えられたペアから推論することができる。点x=y=z=1/3は、いわゆる、「白点」を表す。白点は、「白」の色を定義する。高いx値は、赤みがかった色を表す。高いy値は、緑がかった色を表す。高いz値は、青みがかった色を表す。
【0059】
好ましくは、CIE 1931色空間におけるx値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、少なくとも0.30および最大0.35、より好ましくは、少なくとも0.31および最大0.32である。好ましくは、CIE 1931色空間におけるy値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、少なくとも0.30および最大0.35、より好ましくは、少なくとも0.31および最大0.32である。好ましくは、x値およびy値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、少なくとも0.30および最大0.35、より好ましくは、少なくとも0.31および最大0.32である。
【0060】
上記のように、特に医薬品包装の分野においては、昼白色の色感が望まれる。対照的に、黄褐色の色感は望ましくない。昼白色の色感は、x=y=z=1/3により表されるため、これは、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みでの本発明の1つの可能性のある実施形態である。ただし、実際には、昼白色とわずかに異なる色感がさらに好ましい。したがって、z値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、1/3より高く、好ましくは、0.34より高く、より好ましくは、0.35より高く、より好ましくは、0.36より高く、より好ましくは、少なくとも0.37またはさらに0.37より高いのが好ましい。一方、ガラスがあまり青く見えないようにするために、z値が高すぎてはならない。特に好ましくは、z値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.37~0.38、より好ましくは、0.37超~0.375、より好ましくは、0.371~0.374の範囲にある。
【0061】
総じて、z値は、10mmのサンプル厚みでは、1mmのサンプル厚みの場合より小さくてもよい。例えば、1mmのサンプル厚みでのz値と10mmのサンプル厚みでのz値との差は、0.0001~0.005、より好ましくは、0.0005~0.002の範囲にあることができる。したがって、10mmのサンプル厚みにおいて、z値は、好ましくは、0.37超~0.375、より好ましくは、0.371~0.373の範囲にある。
【0062】
好ましくは、z値とx値との比は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、1.1~1.3、より好ましくは、1.15~1.25の範囲にある。好ましくは、z値とy値との比は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、1.05~1.3、より好ましくは、1.1~1.25の範囲にある。
【0063】
ガラスの色感は、y値がx値より高い場合に特に有利であることが判明した。ただし、y値とx値との間の差は、高すぎてはならない。好ましくは、CIE 1931色空間におけるy値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、x値より最大1.1倍高い。好ましくは、y値とx値との比は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、1超:1~1.05:1、より好ましくは、1.01:1~1.03:1、より好ましくは、1.015:1~1.025:1の範囲にある。
【0064】
好ましくは、x値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.31~0.312、より好ましくは、0.31~0.311の範囲にある。好ましくは、y値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.316~0.318の範囲にある。好ましくは、y値は、1mmのサンプル厚みで、0.316~0.317の範囲および/またはy値は、10mmのサンプル厚みで、0.317~0.318の範囲にある。好ましくは、x値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.31~0.312、より好ましくは、0.31~0.311の範囲にあり、y値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.316~0.318の範囲にある。好ましくは、x値は、1mmおよび/または10mmのサンプル厚みで、0.31~0.312、より好ましくは、0.31~0.311の範囲にあり、y値は、1mmのサンプル厚みで、0.316~0.317の範囲および/または10mmのサンプル厚みで、0.317~0.318の範囲にある。
【0065】
総じて、y値は、10mmのサンプル厚みでは、1mmのサンプル厚みの場合より高くてもよい。例えば、10mmのサンプル厚みでのy値と1mmのサンプル厚みでのy値との差は、0.0005~0.002、より好ましくは、0.00075~0.0015の範囲にあることができる。
【0066】
「サンプル厚み」に言及する場合、厚みは、各パラメータを測定することができるサンプルの厚みを示す。サンプル厚みは、ガラスまたはガラス物品の実際の厚みを指すのではなく、ガラスまたはガラス物品の厚みは、決してサンプルの厚みに限定されない。
【0067】
好ましくは、ガラスは、1mmのサンプル厚みと比較して、10mmのサンプル厚みで、最大10%、より好ましくは、最大5%、より好ましくは、最大1%、より好ましくは、最大0.5%高いy値を有する。好ましくは、y値は、1mmのサンプル厚みと比較して、10mmのサンプル厚みで、0.1%~0.5%、より好ましくは、0.25%~0.4%高い。
【0068】
好ましくは、ガラスは、1mmのサンプル厚みと比較して、10mmのサンプル厚みで、最大10%、より好ましくは、最大5%、より好ましくは、最大1%、より好ましくは、最大0.5%低いz値を有する。好ましくは、z値は、1mmのサンプル厚みと比較して、10mmのサンプル厚みで、0.1%~0.5%、より好ましくは0.15%~0.4%低い。
【0069】
好ましくは、ガラスは、25℃~300℃の温度範囲で、3×10-6/℃超の平均線熱膨張係数CTEを有する。
【0070】
好ましくは、本発明のガラスは、0.1~5mm、より好ましくは、0.4~2.5mmの厚みを有する。好ましくは、本発明のガラスは、ガラス管、特に、0.1~5mm、より好ましくは、0.4~2.5mmの肉厚を有するガラス管である。
【0071】
ガラスは、USP660によれば、ガラス粒子試験におけるガラス粒子1g当たりの塩酸の消費量が最大0.081ml/g、好ましくは、0.080ml/g未満、より好ましくは、0.079ml/g未満である。
【0072】
好ましくは、ガラスは、800℃~1500℃の温度で失透しない。
【0073】
耐失透性は、KGmaxという用語で表現することができる。KGmaxが低いほど、耐失透性は高くなる。KGmaxは、最大結晶化速度(μm/分)を意味する。結晶化速度の測定は周知である。結晶化速度は、形成された結晶に沿って、すなわち、それらの最大の広がりで測定される。特に、結晶化速度は、ガラスを勾配強化(例えば、勾配炉を使用して)に供することにより決定される。
【0074】
いわゆる下限失透温度(LDT)は、温度上昇レジメンにおいて失透が始まる温度である。液相線温度(上限失透温度(UDT)とも呼ばれる)を超えると、結晶は、より長い時間の後であっても生じない。LDTおよびUDTの値は、一般的には、異なるガラス間で異なる。「結晶化」および「失透」という用語は、特に断らない限り、本明細書において同義的に使用される。
【0075】
結晶化が起こる場合、結晶化は、下限失透温度(LDT)を超える温度でかつ上限失透温度(UDT)を下回る温度で起こるため、LDTとUDTの間の範囲で起こる。その結果、結晶化速度がその最大値を有する温度は、LDTとUDTとの間である。KGmaxを決定するためには、ガラスを、LDTとUDTとの間の温度に加熱しなければならない。一般的には、LDTからUDTまでの範囲内の異なる温度が試験される。どの温度で正確に最大結晶化が起こるかが未知であることが多いためである。また、これにより、結晶化が起こる温度範囲の下限および上限それぞれとして、LDTおよびUDTを決定することも可能になる。
【0076】
結晶化速度は、好ましくは、温度上昇レジメンを伴う勾配炉内で、1時間ガラスを熱処理することにより決定される。勾配炉は、異なる加熱ゾーンを有する炉であり、このため、異なる温度の領域を有する炉である。温度上昇レジメンは、炉に入れる前に、ガラスの温度が炉の任意の領域の温度より低いことを意味する。このため、ガラスの温度は、ガラスを炉のどの領域に入れるかに関係なく炉に入れることにより上昇する。したがって、失透の測定は、好ましくは、異なる温度のゾーンを有する(予熱された)勾配炉内で1時間の熱処理により行われる。勾配炉は、時間ベースの勾配ではなく、位置ベースの勾配である。勾配炉は、異なる温度の場所またはゾーンに分割されているためである。
【0077】
複数の加熱ゾーンに分割されている炉により、異なる温度を同時に試験することができる。これは、勾配炉の特別な利点である。例えば、最低温度を800℃とし、最高温度を1500℃とすることができ、最低温度を1025℃、最高温度を1210℃とすることができ、最低温度を1050℃とし、最高温度を1450℃とすることができ、最低温度を1100℃、最高温度を1395℃とすることができまたは最低温度を1060℃、最高温度を1185℃とすることができる。温度は、結晶化速度をLDTとUDTとの間の範囲内の異なる温度で決定することができ、その範囲内の潜在的に異なる結晶化速度を比較することにより、KGmaxを最大結晶化速度として決定することができるように選択されるべきである。LDTおよびUDTが未知である場合、LDTおよびUDTの決定を可能にするために、比較的広い範囲の温度が試験されるのが好ましい。例えば、勾配炉内の最低温度は、ガラスの処理温度(VA)より約350K低くなるように選択することができる。
【0078】
好ましくは、本発明のガラスは、800℃~1500℃、例えば、1025℃~1210℃、1050℃~1450℃、1100℃~1395℃または1060℃~1185℃の温度範囲において、ガラスが温度上昇レジメンを伴う勾配炉内で60分間熱処理される場合に、KGmaxが好ましくは、最大0.05μm/分、より好ましくは、最大0.02μm/分、より好ましくは、最大0.01μm/分であるような耐失透性である。最も好ましくは、失透は全く起こらない。重要なことに、勾配強化の間に全く失透が起こらなければ、KGmaxは決定することができない。また、失透が起こらないことを、KGmax=0μm/分と表現することもできない。
【0079】
特に、ガラスが温度上昇レジメンを伴う勾配炉内で60分間熱処理される場合、800℃~1500℃の温度範囲において、ガラスが最大0.05μm/分の最大結晶化速度(KGmax)を有するという事実は、勾配炉が800℃~1500℃の範囲全体をカバーしなければならないことを意味するものではない。例えば、UDTが1200℃であることが所定のガラスについて公知である場合、1200℃超の温度を、勾配炉で試験する必要はない。最大結晶化速度KGmaxが、1200℃を下回る温度でなければならないような温度では結晶化が起こらないためである。同様に、UDTが、1450℃、1395℃、1210℃または1185℃であることが公知である場合、それぞれ1450℃、1395℃、1210℃または1185℃超の温度を、勾配炉で試験する必要はない。
【0080】
好ましくは、結晶化速度は、ガラス粒子、特に、直径1.6mm~4mmのガラス粒子を使用して決定される。このようなガラス粒子は、好ましくは、勾配強化のために、担体、例えば、白金担体上に置かれる。例えば、担体は、各々がガラス粒子を取り上げるための窪みと、各窪みの底部の孔とを有することができ、これにより、結晶化速度を顕微鏡下で決定することができる。ガラス粒子の好ましいサイズを考慮すると、窪みは、好ましくは、それぞれ4mmの直径を有し、孔は、好ましくは、それぞれ1mmの直径を有する。
【0081】
熱処理に続けて、どの結晶化速度がどの温度範囲で起こったかを顕微鏡下で決定することができる。決定された最高結晶化速度が、最大結晶化速度KGmaxである。LDTおよびUDTはそれぞれ、結晶化が生じた温度範囲の下限および上限として決定することができる。異なるガラス粒は、勾配炉の異なる温度ゾーンに容易に割り当てることができる。炉内のどの位置が、どの温度を有し、どのガラス粒が、熱処理中に炉内のどの位置に位置するかが公知であるためである。
【0082】
また、本発明は、容器、特に、医薬品容器の製造のための、本発明のガラスの使用に関する。
【0083】
一態様において、本発明は、
- ガラス原料を溶融させる工程と、
- 得られたガラスを冷却する工程とを含む、本発明のガラスを製造するための方法に関する。
【0084】
一態様において、本発明は、
- ガラス溶融物を、特にダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法、リドロー法、フロート法または管引法、特にダナー法、ベロ法または垂直ドロー法により処理する工程を含む、本発明のガラスを製造するための方法に関する。
【0085】
いくつかの態様では、該方法は、
- 物理強化および/または化学強化により、ガラスを強化する工程を含む。
【0086】
化学強化が特に好ましい。好ましくは、化学強化は、イオン交換プロセスを含む。好ましくは、イオン交換プロセスは、ガラスまたはガラスの一部を、一価のカチオンを含有する塩浴に浸漬することを含む。好ましくは、一価のカチオンは、カリウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンとナトリウムイオンとの混合物である。カリウムイオンが特に好ましい。好ましくは、KNOが使用される。好ましくは、化学強化は、320℃~700℃、より好ましくは、400℃~500℃の温度で行われる。好ましくは、化学強化の全持続時間は、5分~48時間、より好ましくは、1時間~24時間、より好ましくは、4時間~15時間、より好ましくは、5時間~12時間である。KNO中で、450℃で9時間の化学強化が特に好ましい。
【0087】
本発明のガラスは、任意の形態にあることができる。本発明によるガラスは、例えば、ガラス容器、ガラスシート、ガラスプレート、ガラスロッド、ガラスチューブ、ガラスブロックまたは例えば、医薬分野もしくは医療分野に有用な別の物品であることができる。
【0088】
また、本発明は、本発明のガラスを含む、医薬品の一次包装に関する。医薬品の一次包装は、好ましくは、ボトル、例えば、大型または小型の瓶、例えば、注射瓶もしくはバイアル、アンプル、カートリッジ、ボトル、フラスコ、薬瓶、ビーカーまたはシリンジから選択される。
【0089】
「医薬品の一次包装」という用語は、薬剤と直接接触するガラス製の包装と理解されたい。包装は、薬剤を環境の影響から保護し、薬剤が患者により使用されるまで、その仕様に従って薬剤を維持する。
【0090】
ガラス容器の形態にあるガラスは、医薬品の一次包装として使用することができる。ガラスは、液体内容物、例えば、活性成分の溶液、溶媒、例えば、バッファー系等と接触させることができる。同内容物は、1~11の範囲のpH、4~9の範囲のpHまたは5~7の範囲のpHを有することができる。ガラスは、特に良好な耐薬品性を示し、したがって、これらの内容物の貯蔵または保存に特に適している。本発明の文脈において、特に良好な耐薬品性は、ガラスが医薬分野に適用可能な液体内容物の貯蔵および保存のための要件を高度に満たすこと、特に、ガラスが、ISO 720またはUSP660により加水分解クラス1に相当する耐加水分解性を有することを意味する。
【0091】
本発明によるガラスは、内容物と接触する医薬品容器の製造に適しており、したがって、それらの内容物の貯蔵および保存を提供することができる。使用することができる内容物は、例えば、医薬分野で使用される全ての固体および液体組成物である。
【0092】
ガラスの特性により、ガラスは、広範な用途、例えば、医薬品の一次包装、例えば、カートリッジ、シリンジ、アンプルまたはバイアル等に非常に適したものとなる。なぜならば、容器内に貯蔵された物質、特に水溶液が、ガラスに対して認め得るほどの攻撃をしないためである。
【0093】
また、本発明は、本発明のガラスを含む医薬製品および製剤に関する。製剤は、生物学的薬剤、例えば、抗体、酵素、タンパク質、ペプチド等と、1種以上の薬学的に許容され得る賦形剤とを含有することができる。
【0094】
また、本発明によるガラスは、別のガラス物品の製造における中間製品、例えば、医薬品の一次包装へのさらなる加工のための、例えば、半完成品の形態の管状ガラスであることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】CIE 1931色空間における実施例のガラスE2およびE3ならびに比較例C1およびC2の位置を示す。x軸は、x値を指し、y軸は、y値を指す。
図2】0.314~0.32のx値および0.308~0.314のy値に焦点を合わせた図1の拡大図を示す。10mmの厚みを有する比較例C1の位置は、焦点を合わせた領域の外側にあるため、図2には示されていない。
【0096】
以下に、本発明を、実施例および比較例を参照してより詳細に説明する。実施例および比較例は、本発明の教示を例証するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0097】
実施例
ガラス組成
表1に、実施例E1~E3および比較例C1~C3の組成をモル%で示す。
【表2】
【0098】
実施例のガラスE1~E3は、TiOの代わりにZrOを含む。これにより、ガラスの昼白色の色感に望ましく近づくことについて妥協することなく、Feを含む純粋でない原料の使用が可能となり、費用の削減につながる。
【0099】
比較例C1のガラスは、黄色味を示した。
【0100】
耐加水分解性
表2に、USP660(ガラス粒子)による耐加水分解性試験の結果を示す。簡潔にいえば、ガラス粒子を、USP660ガラス粒子試験に従って処理した。溶出液を、フレーム式原子吸光分析(F-AAS)により分析して、NaO、KO、MgOおよびCaOについての値(mg/l)を得た。NaO相当値を、これらの値の加重和として得た。加重和に対する各酸化物の寄与を、KO、MgOまたはCaOそれぞれの分子量に対するNaOの分子量の比率に基づいて決定した。例えば、KOについての加重係数は、下記のように計算される。
【0101】
M(NaO)/M(KO)=[61.979/(239.098+15.999)]=0.658)
この係数は、DIN ISO4802-2:2017にも記載されている。NaO相当値を、NaOに対して得られた値と、それに応じてKO、MgOおよびCaOの加重値との和として得た。
【0102】
全ての値を、USP660のタイプIの限界の割合を決定するために、mg/lからμg/gに容易に変換することができる。簡潔にいえば、USP660のタイプIの限界は、ガラス粒子1g当たりに62μgのNaO当量に相当する。例えば、ガラス粒子1g当たりに53.28μgのNaO当量の値は、USP660のタイプIの限界の約86%に相当する。
【表3】
【0103】
E2の耐加水分解性は、E1の耐加水分解性に匹敵するものであった。
【0104】
結果から、本発明のガラスは、耐加水分解性クラスI(USP660/ガラス粒子によるタイプI)を有することが分かる。実際に、本発明のガラスの耐加水分解性は、比較例よりも良好である。E1~E3が、タイプIの限界の80%未満に相当する耐加水分解性を達成するためである。対照的に、比較例は、このような値を達成しない。C1~C3は、タイプIの限界の80%超に相当する耐加水分解性を有する。C3は、タイプIの限界の135%を有することさえあるため、USP660によるタイプIIでしかない。
【0105】
総括すると、本発明のガラスは、比較例よりも良好で、優れた耐加水分解性を有する。
【0106】
化学強化
化学的強化を、種々の期間について、KNO中で450℃で行った。結果を、下記表3に示す。
【表4】
【0107】
上記されたように、閾値拡散率Dは、DoLおよび化学強化時間tから、次の式:DoL=1.4sqrt(4t)に従って計算することができる。本開示では、Dは、KNO中で、450℃で9時間の化学強化について与えられる。
【0108】
これに基づいて、E2およびE3の閾値拡散率Dは、約22.7μm/hであると計算することができる。C1の閾値拡散率は、約44.4μ/hであり、C2の閾値拡散率は、約14.5μm/hであり、C3の閾値拡散率は、約32.7μm/hである。
【0109】
このため、本発明のガラスは、化学強化に良好に適している。
【0110】
光学特性
実施例のガラスE1~E3の屈折率は、1.513であった。C1の屈折率は、1.515であり、C2の屈折率は、1.516であった。
【0111】
1mmまたは10mmの肉厚を有するガラス管の光学特性を測定した。このため、サンプルの厚みを、それぞれ1mmまたは10mmとした。特に、透過率を、波長400nm、波長495nmおよび波長670nmで測定した。CIE 1931色空間のx値およびy値を、DIN 5033により決定した。結果を、下記表4に示す。サンプルを、二重反復で測定した。平均値を、表4に示す。
【表5】
【0112】
ガラスE2、E3およびC1のCIE 1931色空間における色位置を、図1に示す。
【0113】
データから、比較例C1は、特に、10mmのサンプル厚みで、高いx値および高いy値を有する不利な色位置を有することが分かる。特に、0.311より小さい非常に有利なx値および0.318より小さい非常に有利なy値は、本発明のガラスによってのみ達成することができる。
【0114】
このため、本発明のガラスは、非常に良好な光学特性を有する。
【0115】
失透
耐失透性は、KGmaxで表すことができる。KGmaxが低いほど、耐失透性は高くなる。KGmaxは、最大結晶化速度(μm/分)を意味する。結晶化速度の測定は周知である。結晶化速度は、形成された結晶に沿って、すなわち、それらの最大の広がりで測定される。
【0116】
簡潔にいえば、結晶化速度を、温度上昇レジメンを伴う勾配炉内で、ガラスを60分間熱処理することにより決定した。重要なことに、勾配強化の間に全く失透が起こらなければ、KGmaxは決定することができない。
【0117】
結晶化速度を、直径1.6mm~4mmのガラス粒子を使用して決定した。ガラス粒子を、勾配強化のために、白金担体上に置いた。担体は、それぞれがガラス粒子を取り上げるための窪みと、光学検査のための各窪みの底部の孔とを有した。これにより、結晶化速度を顕微鏡下で決定した。窪みは、それぞれ4mmの直径を有し、孔は、それぞれ1mmの直径を有した。
【0118】
失透は、1060℃~1185℃の温度範囲では、実施例のガラスE3について検出されなかった。失透は、1100℃~1395℃の温度範囲では、ガラスE1、E2およびC2について検出されなかった。対照的に、比較例C1では、1100℃~1395℃の温度範囲で、失透が存在した(KGmax=0.01μm/分)。
【0119】
このため、本発明のガラスは、非常に良好な耐失透性を有する。
図1
図2