(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240807BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240807BHJP
H02J 9/04 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J3/38 110
H02J7/00 P
H02J9/04
(21)【出願番号】P 2020187203
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨安 正史
(72)【発明者】
【氏名】尾方 武
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090361(JP,A)
【文献】特開2011-043041(JP,A)
【文献】特開2010-255330(JP,A)
【文献】特開2014-082877(JP,A)
【文献】特開2017-051039(JP,A)
【文献】特開2014-007835(JP,A)
【文献】特開2012-196028(JP,A)
【文献】特開2013-099077(JP,A)
【文献】特開2013-229991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
H02J3/00-7/12
H02J7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸が配置された集合住宅と、
前記集合住宅において駐車される車両ごとに定められた駐車領域
を有し、前記駐車領域の各々が前記複数の住戸の何れかに対応付けられると共に、該駐車領域に駐車される車両の周囲に
構造物が設置され、前記構造物に該駐車領域に駐車された車両の電力を
前記集合住宅に給電するための電気的な接続点
が設置された駐車場と、
前記駐車領域に駐車された車両が前記接続点に電気的に接続されることで該車両からの給電を可能にされる又は給電される給電手段と、
前記給電手段に給電された電力を所定電圧の電力に変換する電力変換手段と、
前記電力変換手段によって変換された電力を複数の前記住戸の各々に配電可能とする配電手段と、
前記給電する車両の電力を該車両の前記駐車領域に対応する前記住戸に個別に給電するために前記配電手段を制御する制御手段と、
を含み、
前記給電手段は、前記駐車領域ごとに前記車両の前記接続点への接続を検知する接続検知手段を備え、
前記制御手段は、前記接続検知手段の検知結果に基づいて選択した前記住戸に電力が配電されるように制御する給電装置。
【請求項2】
前記構造物が、前記駐車領域における車両の駐車位置の基準となる車止めであり、前記接続点が、前記車止めの車幅方向外側面に設置されている請求項1に記載の
給電装置。
【請求項3】
前記配電手段は、前記住戸の各々に設けられ接点が開閉されることで前記配電手段による電力の配電と配電停止とが切り換えられる住戸側開閉手段を含み、
前記制御手段は、前記住戸側開閉手段の開閉を制御することで、前記住戸への給電と給電停止と切り換える請求項1又は請求項2に記載の給電装置。
【請求項4】
前記配電手段は、前記住戸の各々に設けられ、配電された電力の消費量を検知する消費量検知手段を含み、
前記制御手段は、
検知された消費量が予め設定した基準値を超えることで、該基準値を越えた住戸への給電を停止させるように前記住戸側開閉手段の開閉を制御する請求項3に記載の給電装置。
【請求項5】
前記給電手段は、接点が開閉されることで前記車両からの給電と給電停止とを切り換える給電側開閉手段を含み、
前記配電手段は、前記住戸ごとに該住戸への給電と給電停止とを選択する選択手段を含み、
前記制御手段は、
前記選択手段の操作に応じ、該選択手段の前記住戸に対応する駐車領域の前記給電側開閉手段を制御する請求項1から請求項4
の何れか1項に記載の給電装置。
【請求項6】
前記電力変換手段は、給電される交流電力を直流電力に変換する第1変換手段、及び前記直流電力を各住戸に配電するための所定の交流電力に変換する第2変換手段を含む請求項1から請求項5
の何れか1項に記載の給電装置。
【請求項7】
前記電力変換手段は、前記第1変換手段により変換された前記直流電力を蓄積する蓄積手段を含む請求項6に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電力を給電する給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PHVやEVなどの電動機(モータ)を駆動源に含む車両には、電動機に電力を供給するための蓄電池(バッテリー)が設けられており、蓄電池から供給する電力によって電動機が駆動されて走行可能とされている。
【0003】
蓄電池を備えた車両には、商用電源と同様の単相100Vの交流電力を出力可能なアクセサリーコンセントを設置できるようになっている。これにより、車両では、商用電力がなくともアクセサリーコンセントを用いることで、家庭用電化製品など各種電気機器の使用が可能となっている。
【0004】
特許文献1には、商用電力の給電が停止した停電時に、住宅内の電気機器群などに車両から電力を供給する停電時電力供給装置が開示されている。この停電時電力供給装置では、住宅の分電盤と非常時給電負荷電気機器群及び負荷非常時無停電負荷機器群とを接続する配線に切換スイッチを配設し、切換スイッチにハイブリッド車を接続している。これにより、停電時電力供給装置では、停電時に切換スイッチが作動されることで、非常時給電負荷電気機器群などへの給電元が分電盤からハイブリッド車に切り換えられて、停電時であっても非常時給電負荷電気機器群などの使用を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、戸建ての住宅では、敷地内の建物に隣接して駐車場があり、車両から建物内への給電のための配線や車両を建物内の配線と電気的に接続するためのコンセントなどの接続点の設置が容易にできる。しかし、住宅には、一つの建物に複数の住戸が形成された集合住宅があり、集合住宅では、複数の住戸と複数の駐車場がある。このような集合住宅では、住戸と住戸に対応する駐車場の車両とを接続するための配線を効果的に配策するためには検討の余地がある。
【0007】
また、集合住宅の駐車場では、複数台の車両が駐車されるため、駐車される車両の数に合わせて、車両の電力を建物に供給するための電気的な接続点を設ける必要がある。しかし、複数台の車両が駐車される駐車場において、駐車される車両の台数分の接続点を設置しても、駐車した車両と接続点との位置関係が適切でないと、駐車した車両を対応する住戸の接続するための接続点が分かり難くなることがある。
【0008】
本発明は上記事実を鑑みて成されたものであり、駐車場に駐車された車両の各々から集合住宅の住戸に効果的に効率よく給電できるようにした給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の態様の接続点構造は、建物の駐車場において駐車される車両ごと定められた駐車領域と、前記駐車領域に駐車される車両の周囲に設置された構造物と、を有し、前記駐車領域に駐車された車両の電力を前記建物に給電するための電気的な接続点を前記構造物に設けている。
【0010】
第1の態様の接続点構造では、建物の駐車場に車両ごと定められた駐車領域が設けられており、車両が駐車領域内に駐車されるようにしている。また、駐車領域の各々には、駐車領域に駐車された車両が電気的に接続されることで、車両から建物に給電できる接続点を設けている。
【0011】
ここで、駐車領域の各々には、駐車される車両の周囲となる位置に構造物が設置されており、接続点は、構造物に設けられている。構造物は、駐車領域ごとに定まるので、この構造物に接続点を設けることで、駐車領域に駐車された車両に対する接続点が容易に識別できて、車両を適切に接続点に接続できる。
【0012】
第2の態様の接続点構造は、第1の態様において、前記構造物が、前記駐車領域における車両の駐車位置の基準となる車止めであり、前記接続点が、前記車止めの車幅方向外側面に設置されている。
【0013】
第2の態様の接続点構造では、駐車領域において接続点が設けられる構造物として車止めを適用している。また、接続点は、車止めにおいて車幅方向の外側面に設けられているので、駐車領域に駐車された車両に対応する接続点が明確になると共に、接続点への車両の電気的な接続が容易になる。
【0014】
第3の態様の給電装置は、複数の住戸が配置された集合住宅と、各々に車両が駐車される複数の駐車領域を有し、前記駐車領域の各々が前記複数の住戸の何れかに対応付けられると共に、前記駐車領域の各々に請求項1又は請求項2に記載の接続点が設置された駐車場と、前記駐車領域に駐車された車両が前記接続点に電気的に接続されることで該車両からの給電を可能にされる又は給電される給電手段と、前記給電手段に給電された電力を所定電圧の電力に変換する電力変換手段と、前記電力変換手段によって変換された電力を複数の前記住戸の各々に配電可能とする配電手段と、前記給電する車両の電力を該車両の前記駐車領域に対応する前記住戸に個別に給電するために前記配電手段を制御する制御手段と、を含む。
【0015】
第3の態様の給電装置では、複数の住戸が配置された集合住宅に対する駐車場に、各々に車両が駐車される複数の駐車領域を有している。駐車領域の各々には、構造物が設置されており、構造物には、車両が電気的に接続されることで集合住宅の住戸に給電可能とする接続点が設置されている。
【0016】
給電手段は、接続点に電気的に接続された車両の各々から給電可能とされる又は給電される電力を電力変換部に出力する。電力変換手段は、入力される電力を所定電圧の電力に変換し、配電手段は、変換された電力を複数の住戸の各々に配電可能としている。
【0017】
ここで、駐車領域の各々が複数の住戸の何れかに対応付けられており、制御手段は、給電する車両の電力を該車両の駐車領域に対応する住戸に個別に給電するように配電手段を制御する。
【0018】
第4の態様の給電装置は、第3の態様において、前記給電手段は、前記駐車領域ごとに前記車両の前記接続点への接続を検知する接続検知手段と、前記制御手段は、前記接続検知手段の検知結果に基づいて選択した前記住戸に電力が配電されるように制御する。
【0019】
第4の態様の給電装置では、給電手段に駐車領域ごとに車両の接続点への接続を検知する接続検知手段が設けられている。制御手段は、接続検知手段の検知結果に基づいて選択した住戸に電力が配電されるように制御する。
【0020】
第5の態様の給電装置は、第3又は第4の態様において、前記配電手段は、前記住戸の各々に設けられ接点が開閉されることで前記配電手段による電力の配電と配電停止とが切り換えられる住戸側開閉手段を含み、前記制御手段は、前記住戸側開閉手段の開閉を制御することで、前記住戸への給電と給電停止と切り換える。
【0021】
第5の態様の給電装置では、配電手段に住戸の各々に設けられ接点が開閉されることで電力の配電と配電停止とが切り換えられる住戸側開閉手段を設けており、制御手段が住戸側開閉手段の開閉を制御して住戸への給電と給電停止と切り換える。
【0022】
第6の態様の給電装置は、第3から第5の何れか1の態様において、前記配電手段は、前記住戸の各々に設けられ、配電された電力の消費量を検知する消費検知手段を含み、前記制御手段は、検知された消費量が予め設定した基準値を超えることで、該基準値を超えた住戸への給電を停止させるように前記住戸側開閉手段の開閉を制御する。
【0023】
第6の態様の給電装置では、住戸の各々に配電された電力の消費量を検知する消費検知手段が設けられている。制御手段は、消費検知手段により検知された消費量が予め設定した基準値を超えることで、基準値を超えた住戸の住戸側開閉手段の開閉を制御して、給電を停止させる。
【0024】
第7の態様の給電装置は、第6の態様において、前記給電手段は、接点が開閉されることで前記車両からの給電と給電停止とを切り換える給電側開閉手段を含み、前記配電手段は、前記住戸ごとに該住戸への給電と給電停止とを選択する選択手段を含み、前記制御手段は、前記選択手段の操作に応じ、該選択手段の前記住戸に対応する駐車領域の前記給電側開閉手段を制御する。
【0025】
第7の態様の給電装置では、接点が開閉されることで車両からの給電と給電停止とを切り換える給電側開閉手段、及び住戸ごとに給電と給電停止とを選択するための選択手段が設けられている。制御手段は、選択手段の操作に応じ、対応する住戸の駐車領域に対する給電側開閉手段を制御する。
【0026】
第8の態様の給電装置は、第3から第7の何れか1の態様において、前記電力変換手段は、給電される交流電力を直流電力に変換する第1変換手段、及び前記直流電力を各住戸に配電するための所定の交流電力に変換する第2変換手段を含む。
【0027】
第8の態様では、第1の変換手段が、車両から給電される交流電力を直流電力に変換し、第2変換手段が直流電力を各住戸に配電するための所定の交流電力に変換する。
【0028】
第9の態様の給電装置は、第8の態様において、前記電力変換手段は、前記第1変換手段により変換された前記直流電力を蓄積する蓄積手段を含む。
【0029】
第9の態様では、直流電力を蓄積する蓄積手段を備えており、蓄積手段から交流電力に変換するための直流電力を出力することで、周波数、電圧及び位相等が安定した電力を出力できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の第1の態様の接続点構造によれば、駐車領域に駐車された車両に対する接続点が容易に識別できて、車両を適切に接続点に接続できる、という効果を有する。
【0031】
第2の態様の接続点構造によれば、駐車領域に駐車された車両に対応する接続点が明確になると共に、接続点への車両の電気的な接続が容易になる。
【0032】
第3の態様の給電装置によれば、駐車場に駐車された車両の各々から集合住宅の住戸に効率的に給電できる。
【0033】
第4の態様の給電装置によれば、駐車場に駐車された車両の各々から集合住宅の住戸に適切に給電できる。また、第5の態様の給電装置によれば、駐車場に駐車された車両の各々から給電される電力をより効率的に対応する住戸に給電できる。
【0034】
第6の態様の給電装置によれば、住戸ごとに車両から給電される電力を超えた電力消費を制限できる。また、第7の態様の給電装置によれば、選択手段の操作によって車両からの給電と給電停止とが制御されるので、車両から住戸への効果的な給電が可能になる。
【0035】
第8の態様の給電装置によれば、複数の車両から供給される電力を安定した交流電力に変換して各住戸に給電できる。さらに、第9の態様の給電装置によれば、周波数、電圧及び位相等が安定した電力を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本実施形態に係る給電システムの概略構成図である。
【
図2】給電システムの給電部及び電力変換部の主要部を示すブロック図である。
【
図3】給電システムの配電部の主要部を示すブロック図である。
【
図4】給電システムの制御部の主要部を示すブロック図である。
【
図5】(A)及び(B)の各々は、給電コンセント及び給電コンセントの設置の一例を示す概略斜視図である。
【
図6】(A)及び(B)は、各々給電コンセントの設置位置が異なる駐車場の主要部の平面図である。
【
図7】(A)は、
図6(A)及び
図6(B)とは給電コンセントの設置位置が異なる駐車場の主要部の平面図、(B)は、(A)に係る充電用ポストを示す概略斜視図である。
【
図8】(A)は。給電処理の一例を示す流れ図、(B)は制限処理の一例を示す流れ図である。
【
図9】変形例に係る給電システムの制御部の主要部を示すブロック図である。
【
図10】変形例に係る給電処理の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係る給電装置としての給電システム10の全体構成が概略構成図にて示されており、
図2~
図4の各々には、給電システム10の主要部がブロック図にて示されている。
【0038】
図1に示すように、給電システム10は、集合住宅12に設置されており、集合住宅12は、マンションやアパートなどの複数の住戸14が設けられた建物とされている。集合住宅12は、複数階建てとされており、集合住宅12には、各階に一つ又は複数の住戸14が配置されている。なお、集合住宅12は、住戸14が分譲であってもよく賃貸であってもよい。
【0039】
集合住宅12には、商用電源の電力を各住戸14に配電する配電設備(図示省略)等が設けられており、住戸14の各々には、商用電源の分電盤14Aが設置されている。集合住宅12では、住戸14において商用電源から分電盤14Aに配電された電力が照明設備や各種の電気設備機器に供給される。なお、商用電源の配電は、公知の一般的構成とされている。
【0040】
集合住宅12には、駐車場16が設置されている。駐車場16には、各々に1台ずつの車両20が駐車可能な駐車領域としての複数の駐車スペース18が設置されている。集合住宅12では、居住者の住戸14と、居住者が所有する車両20を駐車するための(契約している)駐車スペース18とが1対1で対応付けられている(定められている)。駐車スペース18には、フロントロック式のロック装置18A(他の図面では、図示を省略)が設置されており、ロック装置18Aは、ロック板18Bが起立することで駐車スペース18からの車両20の移動を制限する。なお、
図1では、駐車場16が集合住宅12の地階に設置された地下駐車場とされているが、駐車場16は、集合住宅12の1階に設置されていてもよく、屋外において集合住宅12に隣接された屋外駐車場であってもよい。また、ロック装置18Aは、電動式であってもよく、手動式であってもよいが、いずれも車両20を所有する居住者によって操作され、電動式であっても手動でロック解除できることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、車両20としてHV(Hybrid Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、EV(Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)などの車両を対象としており、車両20は、走行用の駆動源としての電動機(モータ)、及び電力を蓄積する蓄電池(バッテリー)を備えている。車両20では、蓄電池に蓄積した電力(HV、PHV、EV)や燃料電池により発電された電力(FCV)により電動機を回転駆動させて走行できる。
【0042】
車両20は、商用電源と同様の電力を出力するための車両側の接続点としてのアクセサリーコンセント(図示省略)の設置が可能となっており、アクセサリーコンセントには、蓄電池に蓄積された直流電力が商用電源と同様の交流電力に変換されて入力される。本実施形態では、一例として、車両20が単相100V/15Aの電力を出力する。なお、車両20は、単相200V、単相100V/200V、或いは、所定電圧の直流電力を出力してもよい。
【0043】
給電システム10では、集合住宅12において、駐車場16に駐車された車両20から当該車両20を所有する居住者の住戸14に給電して、車両20の所有する居住者の住戸14において車両20の電力を使用可能にする。
【0044】
図1及び
図2に示すように、給電システム10は、給電手段としての給電部22、電力変換手段としての電力変換部24、配電手段としての配電部26及び制御部28を備えている。給電部22は、車両20の各々から給電される電力を電力変換部24に供給する。電力変換部24は、車両20の各々から給電される交流電力を連系させて商用電源と同様の交流電力に変換する。配電部26は、電力変換部24で生成された交流電力を各住戸14に配電する。
【0045】
以下に給電システム10の具体的構成の一例を説明する。
図2に示すように、給電システム10の給電部22には、建物側の接続点としての給電コンセント30、給電検知手段としての接続検知器32、及び車両用接続箱34により構成される給電回路36が設けられている。給電部22では、給電回路36が駐車スペース18ごとに設けられている。
【0046】
給電コンセント30は、駐車スペース18又は駐車スペース18に隣接された所定位置の構造物に設置され、給電コンセント30には、下記給電ケーブル48の一端に設けられた給電プラグが差し込まれる(装着される)。給電ケーブル48の他端は、車両20に設置されたアクセサリーコンセントに接続される。これにより、給電回路36には、給電コンセント30を介して車両20から給電される。車両20は、給電コンセント30に接続されることで、ステアリングロックなどの車両20の移動を禁止する禁止機構が作動される。また、駐車スペース18では、ロック装置18Aのロック板18Bが起立され、ロック装置18Aにより駐車スペース18から車両20がでるのを制限している。なお、ロック装置18Aは、ロック板18Bが起立するフロントロック式に限らず、車両20の下側(前輪と後輪との間)においてロック板が傾動上昇するセンターロック式やロック板が昇降する昇降式などであってもよい。
【0047】
給電コンセント30は、配線38を介して車両用接続箱34の接続されており、配線38の中間部には、接続検知器32が配置されている。接続検知器32には、例えば、CT(Current Transformer:計器用変流器)40などが用いられ、配線38の電流を検知することで、車両20から給電されたか否かを検知する。なお、接続検知器32は、車両20と給電コンセント30とが給電ケーブル48によって電気的に接続されることで、車両20から給電されたことを検知できればよく、接続検知手段としては、給電回路36に印加された電圧を検知する構成などを適用できる。
【0048】
車両用接続箱34は、配線38と電力変換部24とを電気的に接続する。車両用接続箱34には、絶縁トランス42及び地絡検出器(例えば、地絡継電器GR:Ground Relay)44が設けられている。絶縁トランス42は、車両20側(一次側)と電力変換部24側(二次側)とを絶縁することで、二次側(又は一次側)に生じた支障が車両20(又は二次側)に波及するのを抑制する。また、地絡検出器44は、配線の地絡を検知し、地絡が検知されると電力変換部24への電気的接続を遮断する(地絡保護)。
【0049】
図5(A)及び
図5(B)には、給電コンセント30の一例が概略斜視図にて示されている。また、
図6(A)、
図6(B)及び
図7(A)の各々には、駐車場16の主要部が平面図にて示され、
図7(B)には、給電コンセント30の他の設置例が示されている。
【0050】
図6(A)、
図6(B)及び
図7(A)に示すように、駐車場16では、駐車スペース18の各々が白線などによって明示されている。また、駐車スペース18の各々には、駐車場16の壁面16A側の床面(地面)に構造物としての車止め46が配置されており、車止めは、例えば、アンカーなどが用いられて固定的に設置されている。車両20は、車止め46が基準とされ、駐車スペース18内において後輪が車止め46に接触又は近接する位置に駐車される。このような、駐車場16には、駐車される車両20に対応する各種の位置に給電コンセント30を設置できる。
【0051】
また、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、給電コンセント30には、防水形フランジインレットタイプを適用できる。防水形フランジインレットタイプの給電コンセント30は、図示しない差し込み口がねじ込み式の平蓋30Aによって緊密に閉止(密閉)されることで防水構造が得られ、平蓋30Aを廻して取り外すことで開放される。また、給電コンセント30に対応する給電ケーブル48には、外周が防水丸蓋30Bによって被覆された差し込みプラグとしてのコードコネクタボディ(図示省略)が先端に取り付けられる。給電コンセント30では、給電ケーブル48の先端の防水丸蓋30Bを廻して装着されることで、差し込み口とコードコネクタボディとが密閉された防水構造が得られる。
【0052】
図6(A)、
図6(B)及び
図7(A)に示すように、このような給電コンセント30は、駐車スペース18の各々に設置された車止め46の車幅方向外側の側面46Aに取り付けることができる。また、給電コンセント30は、基部側が車止め46内に埋め込まれた構造とされている。
【0053】
これにより、車止め46の側面46Aは、駐車される車両20に隠れることがなく、車両20の駐車中において車外に開放される。また、給電コンセント30は、車止め46の側面46Aに配置されることで、給電ケーブル48の着脱が容易になると共に、車両20の駐車中や非駐車中の何れにおいても車両20への居住者などの乗降に支障をきたすことがない。また、給電コンセント30は、防水形フランジインレットタイプを適用することで、給電ケーブル48の装着、非装着にかかわらず、雨水の浸入が抑制される。
【0054】
また、
図6(B)に示すように、給電コンセント30は、駐車場16において、各駐車スペース18が隣接する構造物としての壁面16Aに設置されていてもよい。
【0055】
さらに、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、駐車スペース18の各々に車両20への充電に用いられる構造物としての充電用ポスト50が設置されている場合、給電コンセント30は、充電用ポスト50に配設されていてもよい。充電用ポスト50は、例えば、外周面に扉50Aが設けられており、扉50Aを開くことで車両20への充電用ケーブル(図示省略)が引き出し可能になるか又は充電用ケーブルが装着(電気的に接続)可能となる。なお、充電用ポスト50などを用いた車両20への充電のための構成は、公知の構成を適用できる。
【0056】
このような充電用ポスト50において、内部に給電コンセント30を取り付けると共に、給電コンセント30を開放可能とする扉50Bを設ける。これにより、車両20から給電コンセント30への給電が可能になり、充電用ポスト50が充給電用ポスト(充給電用装置)として機能でき、通常時は車両20への充電に利用でき、停電時などの非通常時には住戸14へ給電に利用できる。
【0057】
なお、給電コンセント30は、車止め46、駐車場16の壁面16A、充電用ポスト50に限らず、駐車スペース18に駐車される車両20に隣接する位置で床面(又は地面)に固定的に配置される各種の構造物に取り付けることができる。例えば、給電コンセント30は、駐車スペース18ごとにポスト或いはポール(何れも外形円柱形状に限らず角柱形状でもよい)を設置し、設置したポストあるいはポールに設置されていてもよい。また、構造物は、地中の基礎に連結されて固定的に設置されていればよく、例えば、花壇などを適用でき、給電コンセント30は、花壇において駐車スペース18に向けられた側壁面に設置されてもよい。
【0058】
図2に示すように、電力変換部24には、交流電力を所定電圧の直流電力に変換する第1変換手段としてのコンバータ(AC-DCコンバータ)52、直流電力を交流電力に変換する第2変換手段としてのインバータ(DC-ACインバータ)54が設けられている。また、電力変換部24には、蓄電手段としてのバッテリー56を設けると共に、バッテリー56に対する充放電を行う充放電部58を設けることができる。
【0059】
コンバータ52は、給電回路36ごと、すなわち駐車スペース18ごとに設けられており、コンバータ52は、直流電力を充放電部58に出力する。充放電部58は、コンバータ52から入力される直流電力によりバッテリー56を充電する。また、充放電部58は、バッテリー56の電力をインバータ54に出力する。なお、コンバータ52は、給電回路36ごとに限らず、複数の給電回路36ごとに設けられてもよい。この場合、一つの給電回路36の交流電力が他の給電回路36に回り込むのを防止する逆流防止機能が設けられればよい。
【0060】
インバータ54は、充放電部58から入力される直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換する。インバータ54において変換する交流電力は、単相2線式100Vであってもよく、単相3線式100V/200Vであってもよい。インバータ54は、複数設けられて、電力変換部24から出力する交流電力(住戸14側の消費電力)に応じて複数が連系されて動作されるようにしてもよい。電力変換部24では、コンバータ52の出力電力がバッテリー56を介してインバータ54に供給されることで、インバータ54への供給電力(電圧)の安定化を図ることができて、インバータ54が出力する交流電力の安定化を図ることができる。なお、電力変換部24は、バッテリー56を介さずにインバータ54の出力がコンバータ52に入力される構成であってもよい。
【0061】
図3に示すように、配電部26には、配電盤60が設置されている。配電盤60には、各々が所与の遮断容量とされてメインブレーカ(主幹開閉器)62、及び複数の分岐ブレーカ(分岐用配線遮断器)64が設置されている。メインブレーカ62の一次側(電源側)には、電力変換部24が電気的に接続されており、メインブレーカ62には、交流電力が供給される。また、メインブレーカ62の二次側(負荷側)には、分岐ブレーカ64の各々の一次側に電気的に接続されている。
【0062】
給電システム10では、一例として二つの分岐ブレーカ64A、64Bが配置されている。分岐ブレーカ64Aは、各住戸14への給電に用いられ、分岐ブレーカ64Bは、給電システム10の動作用の電源として用いられる。すなわち、分岐ブレーカ64Bには、制御部28の下記コントローラ86、駐車場16の非常照明や非常電源用のコンセントが接続される。
【0063】
配電部26では、分岐ブレーカ64Aの二次側には幹線としての配線66が電気的に接続されている。
図1に示すように、配線66は、集合住宅12内を階下から階上に向けて配策されて、最上階まで配策されている。また、配線66には、階ごとに接続ボックス68が設けられており、配線66は、接続ボックス68(
図1参照)内において、階ごとの配線70が分岐される。
【0064】
集合住宅12の各住戸14には、配電盤72が設けられている。各階において配線66から分岐された配線70は、各住戸14の間を渡り配線されて配電盤72の各々に電気的に接続されており、各階において各住戸14の配電盤72が配線70によって連接接続されている。これにより、給電システム10では、車両20の電力が各住戸14に配電可能となっている。
【0065】
各住戸14の配電盤72には、所与の遮断容量(例えば、車両20における給電許容電流に応じた遮断容量)のブレーカ(配線用遮断器)74、住戸14での電力の消費量を検出するための消費検知としての電流検知器(例えば、CT)76、及び住戸側開閉手段としての継電器(マグネットリレー)78が設けられている。また、住戸14には、切替器(切替スイッチ)80が設けられており、切替器80には、配電盤72からの配線82A、分電盤14Aからの配線82B、及び特定回路(特定負荷)84の配線82Cが接続されている。切替器80は、特定回路84の接続元(電源)を、分電盤14Aと配電盤72との間で切り替える。これにより、特定回路84では、切替器80が操作されることで、供給される電力が、商用電源の電力から車両20の電力に切り替えられる。
【0066】
特定回路84は、車両20の給電電力が用いられるように設定された回路とされており、特定回路84には、例えば商用電源の停電時において使用するように居住者が設定した電気設備機器が接続される。また、特定回路84は、居住者が車両20の給電電力を使用するように設定した電気設備機器が接続されるものであってもよい。
【0067】
一方、
図4に示すように、制御部28には、コントローラ86が設けられており、コントローラ86は、配電部26の配電盤60から供給される電力によって作動可能となっている(
図3参照)。コントローラ86は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ、通信インタフェース、表示部及び操作部の構成を有し、各構成がバスを介して相互に通信可能に接続されたマイクロコンピュータ(図示省略)を備えている。
【0068】
ROMは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データが格納される。
【0069】
通信インタフェースは、給電部22、電力変換部24及び配電部26に設置されている各機器との間で信号の授受を行うためのインタフェースである。操作部は、各種の入力を行うために使用され、マウス等のポインティングデバイス及びキーボードを含んでもよい。表示部は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部は、タッチパネル方式を採用して、操作部として機能しても良い。
【0070】
コントローラ86では、ROM又はストレージに給電制御のための給電制御プログラムが格納されており、CPUがROM又はストレージから給電制御プログラムを読み出し、RAMを作業領域として実行することで、給電制御プログラムに応じた機能が実現される。
【0071】
コントローラ86には、電力変換部24のコンバータ52、インバータ54及び充放電部58などが各々電気的に接続されている。コントローラ86は、コンバータ52、インバータ54及び充放電部58の各々の作動を制御することで、電力変換部24の作動を制御し、電力変換部24における出力電力を制御する。
【0072】
また、コントローラ86には、給電部22の給電回路36に設けられている接続検知器32の各々が電気的に接続されていると共に、配電部26において各住戸14に設置されている電流検知器76及び継電器78の各々が接続されている。
【0073】
コントローラ86には、住戸14の各々と住戸14の居住者が所有する車両20の駐車スペース18とが対応付けられて記憶されており、駐車スペース18ごとの給電回路36の接続検知器32と住戸14の電流検知器76及び継電器78とが対応付けられて記憶されている。これにより、コントローラ86では、接続検知器32によって給電コンセント30に接続された駐車スペース18の車両20と、その車両20を所有している居住者の住戸14の特定が可能となっている。
【0074】
コントローラ86では、何れかの接続検知器32により車両20からの給電を検知すると、給電を検知した車両20(駐車スペース18)に対応する住戸14の継電器78をオンさせる(接点を閉じる)。また、コントローラ86は、継電器78をオンした住戸14について、電流検知器76によって消費電流(消費電力)を検知し、消費電流が予め設定した電流値としての基準値を超えると、基準値を超えた住戸14の継電器78をオフする(接点を開く)。この基準値は、車両20から供給可能な電力(電流値)に基づいて設定されている。これにより、コントローラ86は、車両20から給電される電力を超える電力が住戸14で消費されるのを制限している。
【0075】
次に、本実施形態の作用として、給電システム10における制御部28(コントローラ86)の動作を説明する。
図8(A)には、給電システム10における給電処理の概略が流れ図にて示され、
図8(B)には、制限処理の概略が流れ図にて示されている。
【0076】
給電システム10には、電力変換部24にバッテリー56が配置されている。このため、給電システム10の制御部28では、商用電源の停電・非停電にかかわらず動作できる。
【0077】
図8に示すように、給電システム10の制御部28は、最初のステップ100において、給電回路36の各々に設けられた接続検知器32の出力信号(電流値)を読込み、次のステップ102では、給電コンセント30に車両20が接続されたか否かを検知する。
【0078】
集合住宅12の駐車場16には、駐車スペース18ごとに車止め46が設置されており、車両20は、車止め46によって定まる位置に駐車される。居住者は、車両20の電力を住戸14で使用したい場合、車両20のアクセサリーコンセントと駐車スペース18に設置されている給電コンセント30とを給電ケーブル48によって電気的に接続する。
【0079】
これにより、車両20の電力が給電コンセント30を介して給電回路36を流れる電流(コンバータ52が動作してバッテリー56への充電が開始されるため)が、接続検知器32によって検知されて、車両20が給電コンセント30に接続されたことが検知される。
【0080】
給電コンセント30は、駐車スペース18において車両20のタイヤが接触する車止め46の側面に設けられている。このため、給電コンセント30は、車体に隠れることがなく、車両20の外側から容易に視認でき、給電コンセント30には、給電ケーブル48を容易にかつ適切に接続できる。しかも、給電コンセント30に接続された給電ケーブル48は、車体側面近傍を通っているので、車両20の周囲を移動する居住者等の接触が抑制され、給電コンセント30と車両20との接続状態を維持できる。また、給電コンセント30は、駐車スペース18の車止め46に設置されるので、他の駐車スペース18の車両が接続されてしまう誤接続を防止できる。
【0081】
制御部28は、何れかの給電コンセント30への車両20の接続を検知すると、ステップ102において肯定判定して、ステップ104に移行する。ステップ104において制御部28は、給電コンセント30への車両20の接続が検知された駐車スペース18に対応する住戸14の継電器78をオンさせる(電気接点を閉じる)。
【0082】
これにより、住戸14の特定回路84に車両20から給電可能になる。この状態で居住者が切替器80を操作することで、特定回路84において商用電源の電力に変えて車両20の給電電力を使用できる。また、車両20が接続されていない他の給電コンセント30の駐車スペース18に対応する住戸14では、配電盤72の継電器78がオフされており、配電盤72からは特定回路84に給電されない。これにより、居住者が所有している車両20から給電されたのと同様の電力を住戸14において使用できる。
【0083】
制御部28では、次のステップ106において車両20からの給電が停止された給電回路36を検知したか否かを確認する。何れかの給電コンセント30において車両20の接続が解除されると、制御部28は、ステップ106において肯定判定してステップ108に移行する。このステップ108では、車両20の接続が解除された給電コンセント30の駐車スペース18に対応する住戸14の継電器78をオフする(電気接点を開く)。これにより、給電システム10では、何れかの駐車スペース18に駐車していた車両20の給電コンセント30との接続が解除されると、対応する住戸14への給電が停止される。
【0084】
このように給電システム10は、駐車スペース18の各々に対応して給電コンセント30を設置している。また、給電システム10では、車両20が接続された給電コンセント30の駐車スペース18に対応する住戸14の特定回路84に給電し、車両20の接続が解除されて給電コンセント30の駐車スペース18に対応する住戸14の特定回路84への給電を停止する。このため、給電システム10では、給電コンセント30に接続された車両20の電力が他の住戸14で使用されることがない。
【0085】
一方、給電システム10では、複数の車両20から給電された電力を対応する住戸14に分配する。このため、車両20から給電される電力(例えば電流値)が制限されていても、いずれかの住戸14において、車両20の給電電力を超える電力が使用される可能性がある。ここから、給電システム10では、各住戸14において消費される電力(電流値)を住戸14に対応する車両20から給電された電力(電流値)を超えないように制限している。
【0086】
図8(B)に示すように、制御部28では、最初のステップ110において各住戸14の消費電流を電流検知器76によって検知し、次のステップ112では、検知した電流値が予め設定している基準値を超えている住戸14があるか否かを確認する。
【0087】
ここで、何れかの住戸14において電流値が基準値を超えていると、制御部28は、ステップ112において肯定判定してステップ114に移行する。制御部28は、ステップ114において、該当する住戸14の継電器78をオフ操作して給電を停止させる。住戸14の居住者は、車両20から給電さていた電力が停止されるので、電力消費が大きかったことを任意認識できる。
【0088】
一方、制御部28では、ステップ116に移行して、住戸14に対する給電を停止させてから所定時間が経過したか否かを確認し、所定時間が経過していると、ステップ116において肯定判定してステップ118に移行する。ステップ118において、制御部28は、給電を停止した住戸14について、継電器78をオンさせることで、給電を再開する。これにより、給電システム10は、車両20からの給電が継続されている状態で、対応する住戸14への給電停止が必要以上にながくなってしまうのを抑制できる。
【0089】
このように、給電システム10では、車両20が駐車される駐車スペース18の各々に車止め46が接地されており、車両20は、車止め46を基準にして駐車される。給電コンセント30は、この車止め46の車幅方向外側になる側面46Aに設置されている。これにより、自車に対応する給電コンセント30が容易に認識できて、車両20を自身の住戸14に対応する給電コンセント30に適切に電気的に接続できる。
【0090】
また、給電システム10では、各居住者について駐車スペース18と住戸14とが対応付けられており、制御部28(コントローラ86)は、給電する車両20が駐車されている駐車スペース18に対応する住戸14を適切に選択して、車両20の給電電力を対応する住戸14に個別に給電できる。
【0091】
また、給電システム10では、駐車スペース18ごとの給電回路36に接続検知器32が設けられており、制御部28は、接続検知器32により車両20が給電可能に駐車された駐車スペース18を検知できる。これにより、給電システム10では、車両20が給電可能に電気的に接続されたことを適切に検知できて、車両20に対応する住戸14に的確に給電できる。
【0092】
さらに、給電システム10では、住戸14の各々に継電器78が設けられており、継電器78によって住戸14ごとに給電及び給電停止できる。これにより、給電システム10では、駐車スペース18に駐車された車両20に対応する住戸14のみに的確に給電できる。
【0093】
また、給電システム10では、住戸14の各々に配電された電力の消費量(電流値)を検知する電流検知器76が設けられており、制御部28は、電流検知器76により検知される電流値が予め設定した基準値(例えば、車両20が給電可能な電流値)を超えることで、基準値を超えた住戸14の継電器78を作動させて給電を停止させる。これにより、各住戸14において消費電力を車両20の給電電力に制限できる。
【0094】
なお、給電システム10では、給電回路36に給電側開閉器を設け、制御部28が継電器78と共に給電側開閉器を制御してもよい。これにより、給電システム10では、住戸14への給電停止に合せて車両20からの給電を停止できるので、車両20の電力が不必要に出力されてしまうのを制限できる。
【0095】
さらに、給電システム10では、電力変換部24においてコンバータ52が車両20から給電される電力を直流電力に変換し、インバータ54が直流電力を商用電源と同様の交流電力に変換する。これにより、複数の車両20から個別に供給される交流電力を効率よく連系させて、商用電源と同様の交流電力として出力できる。しかも、給電システム10では、集合住宅12に幹線とする配線66を配策すると共に、各階において配線66から分岐させた配線70を配策し、各階の住戸14に給電している。このため、給電システム10では、複数の車両20と複数の住戸14との間で配電のための配線を効果的に配策でき、複数の車両20と複数の住戸14とを接続するための配線が集合住宅12の外観品質を損ねてしまうのを防止できる。
【0096】
また、給電システム10では、電力変換部24にバッテリー56が設けられており、直流電力がバッテリー56に蓄積され、バッテリー56からインバータ54に直流電力が出力される。これにより、インバータ54には、安定した直流電力が供給されるので、インバータ54は、周波数、電圧及び位相等が安定した交流電力を出力できる。
【0097】
また、制御部28(コントローラ86)がバッテリー56の電力によって動作できるので、給電システム10では、商用電源の停電時に動作して、車両20から給電される電力を、停電時に車両20に対応する住戸14に給電できる。これにより、給電システム10では、車両20の電力を停電時の非常用電力として各住戸14に給電できる。
【0098】
〔変形例〕
次に本実施形態の変形例を説明する。
なお、変形例において基本的構成は、本実施形態と同様であり、変形例において本実施形態と同様の機能部品については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0099】
変形例に係る給電装置としての給電システム10Aでは、駐車スペース18に駐車して給電コンセント30に接続した車両20の給電及び給電停止を、居住者の遠隔操作できるようにしている。
図9には、制御部90の概略構成がブロック図にて示されている。
【0100】
給電システム10Aでは、制御部28に変えて制御部90が用いられており、制御部90には、コントローラ86に変えてコントローラ92が用いられている。また、給電システム10Aには、駐車スペース18ごとの給電回路36に給電側開閉手段としての継電器(マグネットリレー)94が配置されている。継電器94は、接点が開閉されることで、車両20からの給電と給電停止とが切り換えられる。
【0101】
また、給電システム10Aには、住戸14の各々に選択手段としての操作スイッチ96が配置されており、操作スイッチ96は、居住者により操作される。制御部90のコントローラ92は、操作スイッチ96の各々と電気信号の交換が可能に接続される。この際、コントローラ92には、通信インタフェースとして、各種の機器と通信するためのインタフェースを含んでもよく、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる通信インタフェースを備えてもよい。これにより、例えば、コントローラ92が住戸14内の操作スイッチ96等の機器と通信可能に接続され、コントローラ92は、住戸14内の操作スイッチ96等の機器からの信号に基づいて、給電開始及び給電停止が遠隔操作を可能にできる。
【0102】
図10には、制御部90(コントローラ92)において実行される給電処理の概略が流れ図にて示されている。
図10に示す給電処理は、車両20を駐車スペース18に駐車して給電コンセント30に接続されることで実行され、制御部90は、最初のステップ120において、操作スイッチ96による車両20からの給電を開始するための操作(オン操作)を検知したか否かを確認する。
【0103】
ここで、居住者が操作スイッチ96をオン操作し、操作スイッチ96のオン操作を制御部90が検知すると、制御部90は、ステップ120において肯定判定して、ステップ122に移行する。ステップ122において、制御部90は、居住者の住戸14に対応する駐車スペース18の継電器94をオンさせる(図示しない接点を閉じる)。これにより、車両20からの給電された電力が、電力変換部24に供給されて、各住戸14へ配電可能になる。
【0104】
また、制御部90は、接続検知器32が給電を検知し、ステップ124において、住戸14の継電器78をオンすることで、操作スイッチ96を操作した居住者の住戸14に車両20から給電電力に応じた電力が給電される。
【0105】
一方、制御部90では、ステップ126において、居住者が操作スイッチ96により給電停止のための操作(給電停止操作)が行われたか否かを確認する。居住者が給電停止操作を行うと、制御部90は、ステップ126において肯定判定してステップ128に移行する。ステップ128において制御部90は、居住者の住戸14に対応する駐車スペース18の継電器94をオフさせる(図示しない接点を開放)。これにより、車両20からの給電が停止される。
【0106】
また、制御部90では、車両20からの給電が停止されると、ステップ130において、住戸14の継電器78をオフさせて、操作スイッチ96を操作した居住者の住戸14への車両20からの給電(実際には、他の車両20から給電される電力の給電)を停止させる。
【0107】
このように、給電システム10Aは、給電システム10と同様に動作できるので、給電システム10Aは、給電システム10と同様の効果を奏する。
【0108】
また、給電システム10Aでは、駐車スペース18に駐車されて給電コンセント30に接続された車両20に対し、居住者の要求に応じて給電、給電停止を切り換える。これにより、給電システム10Aでは、居住者が車両20から給電される電力を使用しない状態で、車両20の電力が消費されるのを抑制できる。しかも、停電時などに限らず、商用電源から電力が供給されている状態であっても車両20の電力を住戸14で使用することができ、商用電源の電力消費を抑制できる。
【0109】
なお、以上説明した本実施形態及び変形例の給電システム10、10Aには、給電部22及び電力変換部24が設けられており、複数台の車両20から給電される電力を1系統の電力に変換して出力できる。このため、給電部22及び電力変換部24を用いることで、各々が出力可能な電力が少ない複数台の車両20を用いて大きな(大容量)の電力を生成できる。
【0110】
ここから、多数の人の集まる避難施設に停電等が発生した場合に、避難施設において必要とする電力を複数の車両20によって賄うことができる。また、給電部22及び電力変換部24を用いることで、車両20が出力できない単相200V(単相3線式100V/200V)や三相200Vなどの電力を生成できるので、複数台の車両20から給電される電力を効果的に利用できる。
【符号の説明】
【0111】
10、10A 給電システム(給電装置)
12 集合住宅
14 住戸
16 駐車場
18 駐車スペース
20 車両
22 給電部(給電手段)
24 電力変換部(電力変換手段)
26 配電部(配電手段)
28、90 制御部(制御手段)
30 給電コンセント(接続点)
32 接続検知器
46 車止め(構造物)
50 充電用ポール(構造物)
52 コンバータ(第1変換手段)
54 インバータ(第2変換手段)
56 バッテリー(蓄電手段)
76 電流検知器(消費検知手段)
78 継電器(住戸側開閉手段)
86、92 コントローラ(制御手段)
94 継電器(給電側開閉手段)
96 操作スイッチ(選択手段)