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特許7534927ダイプレートカバー,ダイヘッド,押出機および樹脂ペレット製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ダイプレートカバー,ダイヘッド,押出機および樹脂ペレット製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
B29B9/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020187883
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077174
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知典
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 佳寛
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0132424(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110202771(CN,A)
【文献】特表2017-538602(JP,A)
【文献】特開2006-142661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂が押し出されるダイプレートの一面に取り付けられる、前記一面に設けられた複数の貫通孔及びそれぞれの前記貫通孔に挿通されたボルトを覆う形状を有するダイプレートカバーであって、
対向する第1のプレート部材および第2のプレート部材と、
前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に介在し、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に、断熱層を形成する内部空間を形成するスペーサ部材と、
前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との少なくとも一方に設けられ、前記内部空間と通じる連通口と、
前記連通口を気密に塞ぐ封止部材と、を有する、ダイプレートカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のダイプレートカバーにおいて、
前記断熱層は、大気圧よりも圧力が低い前記内部空間、大気圧と圧力が同じ前記内部空間、大気圧よりも圧力が高い前記内部空間、不活性ガスが充填された前記内部空間、断熱材が充填された前記内部空間の少なくともいずれか1つによって形成されている、ダイプレートカバー。
【請求項3】
請求項2に記載のダイプレートカバーにおいて、
一連の前記内部空間によって前記断熱層が形成されている、ダイプレートカバー。
【請求項4】
請求項2に記載のダイプレートカバーにおいて、
複数の前記内部空間によって前記断熱層が形成されている、ダイプレートカバー。
【請求項5】
請求項1に記載のダイプレートカバーにおいて、
前記ダイプレートカバーの厚みは、3.0mm以上10.0mm以下であり、
前記断熱層の厚みは、0.5mm以上1.0mm以下である、ダイプレートカバー。
【請求項6】
溶融樹脂が供給されるダイヘッドであって、
供給された溶融樹脂が通過するノズルを備えるダイプレートと、
前記ダイプレートの一側に配置されるダイホルダと、
前記ダイプレートの他側に配置されるダイプレートカバーと、を有し、
前記ダイプレートには、当該ダイプレートを前記ダイホルダに固定するボルトが挿通される複数の貫通孔が設けられ、
前記ダイプレートカバーは、前記ダイプレートに設けられている前記複数の貫通孔及びそれぞれの前記貫通孔に挿通された前記ボルトを覆う形状を有し
前記ダイプレートカバーは、対向する第1のプレート部材および第2のプレート部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に介在し、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に、断熱層を形成する内部空間を形成するスペーサ部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との少なくとも一方に設けられ、前記内部空間と通じる連通口と、前記連通口を気密に塞ぐ封止部材と、をさらに有する、ダイヘッド。
【請求項7】
請求項に記載のダイヘッドにおいて、
前記ダイプレートカバーが有する前記断熱層は、大気圧よりも圧力が低い前記内部空間、大気圧と圧力が同じ前記内部空間、大気圧よりも圧力が高い前記内部空間、不活性ガスが充填された前記内部空間、断熱材が充填された前記内部空間の少なくともいずれか1つによって形成されている、ダイヘッド。
【請求項8】
ダイヘッドから溶融樹脂を押し出しつつ切断する押出機であって、
溶融樹脂を混練しながら搬送して前記ダイヘッドに供給するスクリューと、
前記ダイヘッドから押し出される溶融樹脂を切断する切断機構と、を有し、
前記ダイヘッドは、
前記スクリューによって供給された溶融樹脂が通過するノズルを備えるダイプレートと、
前記ダイプレートの一側に配置されるダイホルダと、
前記ダイプレートの他側に配置されるダイプレートカバーと、を有し、
前記ダイプレートには、当該ダイプレートを前記ダイホルダに固定するボルトが挿通される複数の貫通孔が設けられ、
前記ダイプレートカバーは、前記ダイプレートに設けられている前記複数の貫通孔及びそれぞれの前記貫通孔に挿通された前記ボルトを覆う形状を有し
前記ダイプレートカバーは、対向する第1のプレート部材および第2のプレート部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に介在し、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に、断熱層を形成する内部空間を形成するスペーサ部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との少なくとも一方に設けられ、前記内部空間と通じる連通口と、前記連通口を気密に塞ぐ封止部材と、をさらに有する、押出機。
【請求項9】
請求項に記載の押出機において、
前記ダイヘッドの前記ダイプレートカバーが有する前記断熱層は、大気圧よりも圧力が低い前記内部空間、大気圧と圧力が同じ前記内部空間、大気圧よりも圧力が高い前記内部空間、不活性ガスが充填された前記内部空間、断熱材が充填された前記内部空間の少なくともいずれか1つによって形成されている、押出機。
【請求項10】
請求項に記載の押出機において、
前記切断機構は、
前記ダイヘッドの前記ノズルから押し出された溶融樹脂を受け入れる切断処理部と、
前記切断処理部内で回転駆動され、前記ノズルから押し出される溶融樹脂を前記切断処理部内で切断するカッターヘッドと、を有する、押出機。
【請求項11】
請求項10に記載の押出機において、
前記カッターヘッドは、前記切断処理部に供給された水の中で溶融樹脂を切断し、
前記ダイヘッドの前記ダイプレートカバーは、前記切断処理部内の水に臨む、押出機。
【請求項12】
ダイヘッドから溶融樹脂を押し出す工程(a)と、ダイヘッドから押し出される溶融樹脂を分断する工程(b)と、を含む樹脂ペレット製造方法であって、
前記工程(a)で溶融樹脂が押し出される前記ダイヘッドは、
供給された溶融樹脂が通過するノズルを備えるダイプレートと、
前記ダイプレートの一側に配置されるダイホルダと、
前記ダイプレートの他側に配置されるダイプレートカバーと、を有し、
前記ダイプレートには、前記ダイプレートを前記ダイホルダに固定するボルトが挿通される複数の貫通孔が設けられ、
前記ダイプレートカバーは、前記ダイプレートに設けられている前記複数の貫通孔及びそれぞれの前記貫通孔に挿通された前記ボルトを覆う形状を有し
前記ダイプレートカバーは、対向する第1のプレート部材および第2のプレート部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に介在し、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との間に、断熱層を形成する内部空間を形成するスペーサ部材と、前記第1のプレート部材と前記第2のプレート部材との少なくとも一方に設けられ、前記内部空間と通じる連通口と、前記連通口を気密に塞ぐ封止部材とをさらに有する、樹脂ペレット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイプレートカバー,ダイヘッド,押出機および樹脂ペレット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂を押し出しつつ切断して樹脂ペレットを製造する押出機が知られている。押出機は、溶融樹脂を混練しながら搬送してダイヘッドから押し出す。さらに、押出機は、ダイヘッドから連続的に押し出される溶融樹脂を所定の長さに切断する。例えば、特許文献1には、溶融樹脂を混練しながら搬送するスクリューと、溶融樹脂が押し出されるダイヘッドと、ダイヘッドから押し出される溶融樹脂を切断する切断手段と、を有する押出機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-188638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
良好な樹脂ペレットを製造するために、溶融樹脂が押し出されるダイヘッドの温度を保つことが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、ダイプレートカバーは、断熱層を内包しており、溶融樹脂が押し出されるダイプレートの一面に取り付けられる。前記ダイプレートに取り付けられたダイプレートカバーは、前記ダイプレートの前記一面に設けられている複数の貫通孔及びそれぞれの前記貫通孔に挿通されたボルトを覆う。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、ダイヘッドの温度が保たれ、良好な樹脂ペレットが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態における樹脂ペレット製造システムを示す模式図である。
図2】ダイヘッドおよび切断機構の構造を模式的に示す断面図である。
図3】ダイヘッドの斜視図である。
図4】ダイヘッドの分解斜視図である
図5】(a)はダイプレートカバーの正面図であり、(b)は(a)に示されるA-A線に沿ったダイプレートカバーの断面図である。
図6】ダイプレートカバーの斜視図である。
図7】ダイプレートカバーの一変形例を示す斜視図である。
図8】(a),(b),(c)は、ダイプレートカバーの他の変形例を示す模式図である。
図9】ダイヘッドが用いられるシステムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一または実質的に同一の機能を有する部材や機器などには同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<樹脂ペレット製造システム>
図1は、押出機を含む樹脂ペレットの製造システムを示す模式図である。図1に示される樹脂ペレット製造システム1は、主要機器である押出機10と、複数の付属機器20と、から構成されている。押出機10には、モータ11,減速機12,混練処理部13,ダイヘッド14および切断機構(ペレタイザ、カッターユニット)15が含まれる。付属機器20には、タンク21,循環ポンプ22,脱水装置23,輸送ホッパ24,ブロワー25およびペレットサイロ26が含まれ、これら機器は配管によって適宜接続されている。
【0011】
タンク21は、配管27aを介して循環ポンプ22に接続されており、循環ポンプ22は、配管27bを介して押出機10(切断機構15)に接続されている。また、脱水装置23は、配管27cを介して押出機10(切断機構15)に接続されている一方、配管27dを介してタンク21に接続されている。つまり、配管27a,27b,27c,27dにより、タンク21,循環ポンプ22,切断機構15,脱水装置23を繋ぐ流路が形成されている。タンク21には液体が貯留される。本実施形態では、水がタンク21に貯留されている。タンク21内の水は、循環ポンプ22の作用により、タンク21,循環ポンプ22,切断機構15,脱水装置23,タンク21の順で循環する。もっとも、切断機構15から脱水装置23に流れる水の一部は、分岐部28で分流され、配管27eを通ってタンク21に戻る。システム内を循環する水は、樹脂ペレットを輸送する輸送水として機能するとともに、冷却水としても機能する。以下の説明では、システム内を循環する水を“ペレット輸送水”と呼ぶ場合がある。
【0012】
<樹脂ペレット製造方法>
図1に示されている樹脂ペレット製造システム1では、例えば、次のようなプロセスによって樹脂ペレットが製造される。まず、押出機10に樹脂原料が供給される(原料供給工程)。より特定的には、押出機10の原料投入口である原料ホッパ30に樹脂原料が投入される。押出機10に供給される樹脂原料は、例えば、熱可塑性樹脂である。樹脂原料には、必要に応じて添加剤などが加えられる。
【0013】
原料ホッパ30に投入された樹脂原料は、混練処理部13に供給される。混練処理部13に供給された樹脂原料は、溶融される(溶融工程)。さらに、溶融された樹脂原料(溶融樹脂)は、混練(混合)されながら搬送される(混練/搬送工程)。より特定的には、溶融樹脂は、混練処理部13が備えるスクリュー40の回転によって混練されながら前方へ送られ、ダイヘッド14に供給される。つまり、混練・搬送工程では、溶融樹脂の混練と搬送とが同時並行で実施される。また、樹脂原料は、主にスクリュー40の回転によって生じるせん断応力に起因する発熱によって溶融される。もっとも、溶融樹脂を溶融させるときには、ヒータなどの加熱手段によって溶融樹脂に熱が加えられることもある。
【0014】
ダイヘッド14に供給された溶融樹脂は、ダイヘッド14を通過し、当該ダイヘッド14から連続的に押し出される(押出工程)。言い換えれば、溶融樹脂は、ダイヘッド14を通過することにより、ストランド状(紐状、ロープ状)に成形される。
【0015】
図2は、ダイヘッド14および切断機構15の構造を模式的に示す断面図である。ダイヘッド14の先に、切断機構15の切断処理部(切断処理空間)50が設けられている。ダイヘッド14を通過した溶融樹脂は、切断機構15の切断処理部50内に押し出される(吐出される)。言い換えれば、切断機構15の切断処理部50は、ダイヘッド14から押し出される溶融樹脂を受け入れる。
【0016】
切断処理部50は、ペレット輸送水の流路上に設けられている。よって、ペレット輸送水が樹脂ペレット製造システム1内を循環すると、切断処理部50はペレット輸送水によって満たされる。つまり、ダイヘッド14を通過した溶融樹脂は、水中(ペレット輸送水中)に押し出される。
【0017】
切断機構15は、切断処理部50内で回転駆動されるカッターヘッド51を備えており、カッターヘッド51には複数のカッター刃が取り付けられている。ダイヘッド14から切断処理部50に押し出されたストランド状の溶融樹脂は、カッターヘッド51(カッター刃)によって水中(ペレット輸送水中)で所定の長さに切断され、固化する(切断/固化工程、ペレット化工程)。つまり、ストランド状に押し出された溶融樹脂は、ペレット状に分断される。この結果、所定の大きさ(長さ及び太さ)の樹脂ペレットが製造される。なお、水中で溶融樹脂を切断する手法は、“アンダーウォータカット”と呼ばれることがある。
【0018】
再び図1を参照する。樹脂ペレットとペレット輸送水との混合物(スラリー)は、配管27cを通って脱水装置23に移動する。脱水装置23では、樹脂ペレットとペレット輸送水とが分離される(脱水工程)。樹脂ペレットから分離されたペレット輸送水は、配管27dを通ってタンク21に流れる(戻る)。一方、ペレット輸送水が分離(除去)された樹脂ペレットは、輸送ホッパ24に移動する。
【0019】
輸送ホッパ24は、配管29を介してペレットサイロ26に接続されている。輸送ホッパ24に移動した樹脂ペレットは、ブロワー25が生成する気流により、配管29を介してペレットサイロ26に送られる(移送工程)。ペレットサイロ26に送られた樹脂ペレットは、ペレットサイロ26内に貯留される(貯留工程)。つまり、樹脂ペレットは、輸送ホッパ24からペレットサイロ26へ空送される。また、ペレットサイロ26は、空送された樹脂ペレットを貯留する容器である。
【0020】
樹脂ペレット製造システム1では、上記のようなプロセスによって樹脂ペレットが製造される。もっとも、樹脂ペレット製造システム1は、樹脂原料や樹脂ペレットの種類や特性などに応じて種々の変更が可能である。また、樹脂ペレット製造方法は、樹脂原料や樹脂ペレットの種類や特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、図1に示されている脱水装置23とペレットサイロ26との間に、遠心脱水乾燥機が設けられることもある。遠心脱水乾燥機は、脱水装置23では除去しきれなかった水分を樹脂ペレットから除去する。この場合、樹脂ペレット製造方法には、遠心脱水工程や乾燥工程などが含まれる。また、樹脂ペレット製造システム1には、樹脂ペレットを大きさに基づいて分別する篩などの選別手段が設けられることもある。この場合、樹脂ペレット製造方法には、選別工程が含まれる。
【0021】
<押出機>
次に、図1に示されている押出機10についてより詳しく説明する。上記のとおり、押出機10は、モータ11,減速機12,混練処理部13,ダイヘッド14および切断機構(ペレタイザ、カッターユニット)15を含んでいる。
【0022】
<混練処理部>
モータ11は、押出機10の駆動源である。より特定的には、モータ11は、混練処理部13の駆動源である。モータ11から出力される回転駆動力は、減速機12を介して混練処理部13のスクリュー40に入力され、スクリュー40を回転させる。減速機12は、モータ11から出力される回転駆動力の速度を減じ、スクリュー40に入力される回転駆動力のトルクを増大させる。
【0023】
スクリュー40は、螺旋状のブレードを備えており、ハウジング41の内部に回転可能に設けられている。原料ホッパ30がハウジング41の長手方向一端側に設けられており、ダイヘッド14がハウジング41の長手方向他端側に設けられている。なお、ハウジング41の長手方向は、スクリュー40の軸方向と一致している。
【0024】
図1に示されているスクリュー40の背後には、スクリュー40と同様の他のスクリューが設けられている。他のもう一本のスクリューは、スクリュー40と平行に並んでおり、モータ11によってスクリュー40と同様に回転される。つまり、押出機10は、互いに平行な2本のスクリューを備えており、一般的に“二軸混練押出機”と呼ばれる。以下の説明では、スクリュー40および当該スクリュー40と平行に並んでいる他のもう一本のスクリューを“スクリュー40”と総称する。
【0025】
原料ホッパ30に投入された樹脂原料は、主にスクリュー40の回転によって生じるせん断応力に起因する発熱によって溶融される。もっとも、混練処理部13には、必要に応じて樹脂原料を加熱したり、樹脂材料の温度を調節したりするための加熱手段(ヒータ)が設けられている。溶融された樹脂原料(溶融樹脂)は、スクリュー40の回転によって混練されながら搬送される。具体的には、溶融樹脂は、スクリュー40の回転によって、原料ホッパ30が設けられているハウジング41の長手方向一端側(スクリュー40の軸方向一端側)からダイヘッド14が設けられているハウジング41の長手方向他端側(スクリュー40の軸方向他端側)に向かって搬送される。
【0026】
上記のように、溶融樹脂は、回転するスクリュー40によって混練されつつハウジング41の長手方向に搬送される。つまり、ハウジング41の長手方向(スクリュー40の軸方向)は、溶融樹脂の搬送方向である。そこで以下の説明では、原料ホッパ30が設けられているハウジング41の長手方向一端側(スクリュー40の軸方向一端側)を搬送方向の“上流側”とし、ダイヘッド14が設けられているハウジング41の長手方向他端側(スクリュー40の軸方向他端側)を搬送方向の“下流側”とする。
【0027】
<切断機構>
図2に示されように、切断処理部50は、配管27bと配管27cとの間に設けられている。よって、循環ポンプ22が作動すると、配管27bを介して切断処理部50にペレット輸送水が流入し、配管27cを介して切断処理部50からペレット輸送水が流出する。この結果、切断処理部50はペレット輸送水によって満たされ、ダイヘッド14を通過した溶融樹脂は、切断処理部50を満たしているペレット輸送水の中に押し出される。
【0028】
切断処理部50内で回転駆動されるカッターヘッド51には、複数のカッター刃が取り付けられている。それらカッター刃は、溶融樹脂が押し出されるダイヘッド14の一面と対向するカッターヘッド51の一面に取り付けられている。カッターヘッド51の一面に取り付けられている複数のカッター刃は、カッターヘッド51の回転方向に沿って所定ピッチで並んでいる。このため、製造される樹脂ペレットの長さは、ダイヘッド14とカッターヘッド51との間の間隔(対向距離),カッターヘッド51の回転速度,カッター刃のピッチなどに依存する。よって、ダイヘッド14とカッターヘッド51との間の間隔,カッターヘッド51の回転速度,カッター刃のピッチなどを調節することによって、製造される樹脂ペレットの長さを変更することができる。
【0029】
なお、製造される樹脂ペレットの太さは、後述するダイプレート70のノズル77の内径に依存する。よって、ノズル77の内径が異なるダイプレート70に交換することによって、製造される樹脂ペレットの太さを変更することができる。
【0030】
<ダイヘッド>
ダイヘッド14は、スクリュー40が収容されているハウジング41の端部に取り付けられている。より特定的には、ダイヘッド14は、ハウジング41の下流側の端部に取り付けられている。
【0031】
図3はダイヘッド14の斜視図であり、図4はダイヘッドの分解斜視図である。ダイヘッド14は、ダイホルダ60,ダイプレート70およびダイプレートカバー80から構成されている。ダイホルダ60は、炭素鋼によって形成されており、ダイプレート70およびダイプレートカバー80は、ステンレス鋼(SUS)によって形成されている。もっとも、ダイホルダ60,ダイプレート70,ダイプレートカバー80の材料は、特定の材料に限定されず、好適な材料を適宜選択することができる。例えば、樹脂の種類によっては、腐食に強い耐食材料が選択される。
【0032】
ダイホルダ60はダイプレート70の一側に配置され、ダイプレートカバー80はダイプレート70の他側に配置されている。ダイプレート70はダイホルダ60に固定され、ダイプレートカバー80はダイプレート70に固定されている。つまり、ダイホルダ60,ダイプレート70およびダイプレートカバー80は一体化されている。
【0033】
<ダイホルダ>
ダイホルダ60は、全体として円柱状の外形を有する。ダイホルダ60の側面には、4つの固定部61が一体成形されている。4つの固定部61は、ダイホルダ60の周方向に沿って配置されている。それぞれの固定部61には貫通孔62が形成されている。それぞれの貫通孔62には、切断機構(切断処理部50)とダイホルダ60とを固定するためのロッドが挿入される。より特定的には、切断処理部50に設けられている油圧シリンダのピストンロッドが貫通孔62に挿入される。貫通孔62に挿入されたピストンロッドを貫通孔62に対して抜け止めした上でシリンダチューブ内に引き戻すと、切断処理部50とダイホルダ60とが互いに固定される。別の見方をすると、切断処理部50とダイホルダ60との間にダイプレート70が挟み込まれる。
【0034】
図2に示されるように、ダイヘッド14がハウジング41に固定されると、ダイホルダ60の一面60bがハウジング41の下流側端面41eに突き当たる。以下の説明では、ハウジング41の下流側端面41eに突き当たるダイホルダ60の一面60bを“背面60b”と呼び、背面60bと反対側のダイホルダ60の他の一面60fを“前面60f”と呼ぶ場合がある。つまり、ダイヘッド14がハウジング41に固定されると、ハウジング41の下流側端面41eとダイホルダ60の背面60bとが密接する。なお、ダイヘッド14は、ダイホルダ60がハウジング41にボルトで固定されることにより、ハウジング41に固定される。
【0035】
<ダイプレート>
図3図4に示されるように、ダイプレート70は、全体として円柱状の外形を有し、ダイホルダ60と同一または実質的に同一の外径を有する。図2に示されるように、ダイホルダ60に固定されているダイプレート70の一面70bは、ダイホルダ60の前面60fに突き当たっている。以下の説明では、ダイホルダ60の前面60fに突き当たっているダイプレート70の一面70bを“背面70b”と呼び、背面70bと反対側のダイプレート70の他の一面を“前面70f”と呼ぶ場合がある。つまり、ダイプレート70がダイホルダ60に固定されると、ダイホルダ60の前面60fとダイプレート70の背面70bとが密接する。
【0036】
図4に示されるように、ダイプレート70の前面70fには、当該ダイプレート70の全周に亘って周縁部71が形成されている。さらに、周縁部71の内側に外側環状領域72が設けられ、外側環状領域72の内側に内側環状領域73が設けられ、内側環状領域73の内側に中央領域74が設けられている。つまり、ダイプレート70の前面70fには、周縁部71,外側環状領域72,内側環状領域73および中央領域74が、径方向外側から径方向内側に向かってこの順で設けられている。ダイヘッド14の軸方向を高さ方向としたとき、外側環状領域72は周縁部71よりも低く、内側環状領域73は外側環状領域72よりも高い。また、中央領域74は内側環状領域73よりも低い。
【0037】
ダイプレート70の外側環状領域72には貫通孔75aが形成されており、ダイプレート70の中央領域74には貫通孔75bが形成されている。貫通孔75a,75bの数や配置は、ダイプレート70の大きさなどに応じて適宜変更されるが、本実施形態では、外側環状領域72に4つの貫通孔75aが等間隔で形成されており、中央領域74に1つの貫通孔75bが形成されている。外側環状領域72に形成されている4つの貫通孔75aは、ダイプレート70の周方向に沿って等間隔で配置されている。つまり、4つの貫通孔75aは、90度間隔で配置されている。中央領域74に形成されている貫通孔75bは、ダイプレート70の中心に配置されている。
【0038】
ダイプレート70は、貫通孔75a,75bに挿通されたボルト76によってダイホルダ60に固定されている。つまり、ダイプレート70は、5本のボルト76によってダイホルダ60に固定されている。それぞれのボルト76は、頭部に穴76aが設けられた穴付きボルト(ソケットボルト、キャップボルト)である。より特定的には、それぞれのボルト76は、頭部に六角形の穴76aが設けられた六角穴付きボルト(ヘキサゴンソケットボルト、ヘキサゴンキャップボルト)である。
【0039】
ダイプレート70の内側環状領域73には、複数のノズル77が形成されている。ここで、内側環状領域73は、高さが異なる2つの領域にさらに分けられる。より特定的には、内側環状領域73は、外側環状領域72に隣接する外側環状領域72よりも一段高い領域73aと、領域73aに隣接する領域73aよりも一段高い領域73bとに分けられる。ノズル77は、内側環状領域73の領域73bに設けられている。領域73bには、それぞれが複数のノズル77を含む4つのノズル群が設けられている。もっとも、複数のノズル77は、群を形成するように配列されていなくともよい。例えば、複数のノズル77がダイプレート70の周方向に沿って一定間隔で配置される場合もある。
【0040】
図2に示されるように、それぞれのノズル77の一端は、ダイプレート70の内部に形成されている共通のプレート流路78に連通しており、それぞれのノズル77の他端は、ダイプレート70の前面70fで開口している。さらに、ノズル77が連通しているプレート流路78は、ダイホルダ60の内部に形成され、スクリュー40によって搬送された溶融樹脂が流入するホルダ流路63に連通している。このように、ダイヘッド14には、ダイホルダ60の背面60bからダイプレート70の前面70fに至る一連の樹脂流路が設けられている。なお、以下の説明では、プレート流路78に連通しているそれぞれのノズル77の一端を“入口”と呼び、ダイプレート70の前面70fで開口しているそれぞれのノズル77の他端を“出口”と呼ぶ場合がある。
【0041】
スクリュー40の回転によってダイヘッド14に送り込まれた溶融樹脂は、ダイホルダ60を経由してダイプレート70に流入する。より特定的には、溶融樹脂は、ダイホルダ60内のホルダ流路63を通ってダイプレート70内のプレート流路78に流入する。プレート流路78に流入した溶融樹脂は、それぞれのノズル77の入口からそれぞれのノズル77に流入する。ノズル77に流入した溶融樹脂は、ノズル77を通過してノズル77の出口から流出する。つまり、最終的に、それぞれのノズル77の出口から切断機構15の切断処理部50内に溶融樹脂が押し出される。なお、ノズル77を通過することによって溶融樹脂がストランド状に成形されることは既述のとおりである。
【0042】
<ダイプレートカバー>
図3図4に示されるように、ダイプレートカバー80は、全体として環状の外形を有し、ダイプレート70の外側環状領域72とほぼ同一の形状および寸法を有する。より特定的には、ダイプレートカバー80の内径は、ダイプレート70の外側環状領域72の内径とほぼ同一であり、ダイプレートカバー80の外径は、ダイプレート70の外側環状領域72の外径とほぼ同一である。言い換えれば、ダイプレートカバー80の内径は、ダイプレート70の内側環状領域73の外径とほぼ同一であり、ダイプレートカバー80の外径は、ダイプレート70の周縁部71の内径とほぼ同一である。
【0043】
ダイプレートカバー80は、複数本の皿ボルト81によってダイプレート70に固定されている。ダイプレート70に固定されているダイプレートカバー80は、ダイプレート70の外側環状領域72の実質的に全域を覆っている。ダイプレート70に固定されているダイプレートカバー80の表面と、ダイプレート70の周縁部71および内側環状領域73の領域73aの表面とは、実質的に同一の高さである。つまり、ダイプレートカバー80は、ダイプレート70の外側環状領域72と周縁部71との高低差に相当する厚みを有している。また、ダイプレートカバー80は、ダイプレート70の外側環状領域72と内側環状領域73の領域73aとの高低差に相当する厚みを有している。本実施形態のダイプレートカバー80の厚みは約3.0mmである。別の見方をすると、外側環状領域72と周縁部71との高低差は約3.0mmであり、外側環状領域72と内側環状領域73の領域73aとの高低差も約3.0mmである。なお、ノズル77が設けられている内側環状領域73の領域73bは、ダイプレートカバー80の表面よりも僅かに高い位置にある。
【0044】
ダイプレートカバー80は、ダイプレート70の外側環状領域72に設けられている4つの貫通孔75a及びそれら貫通孔75aに挿通されているボルト76の頭部を一括して覆っている。また、中央領域74に設けられている貫通孔75bおよび貫通孔75bに挿通されているボルト76の頭部は、センターカバー90によって覆われている。センターカバー90の厚みは約6.0mmである。また、センターカバー90は、皿ボルト81と同一の皿ボルト91によってダイプレート70に固定されている。
【0045】
本実施形態では、ダイプレート70の前面70fに設けられている貫通孔75a,75bや、それら貫通孔75a,75bに挿通されているボルト76の頭部は、カバー部材(ダイプレートカバー80,センターカバー90)によって覆われている。よって、ノズル77から押し出された溶融樹脂や切断処理部50内のペレット輸送水が、貫通孔75a,75bやボルト76の穴76aに入ることはない。つまり、ダイプレートカバー80やセンターカバー90は、貫通孔75a,75bやボルト76の穴76aに対する溶融樹脂や水の接触や侵入を防止または抑制する塞ぎ板である。
【0046】
再び図2を参照する。ダイヘッド14の最前面に位置しているダイプレートカバー80は、切断処理部50内のペレット輸送水に臨んでいる。このため、ダイヘッド14の熱がダイプレートカバー80を介してペレット輸送水に伝達されやすく、ダイヘッド14の温度が低下しやすい。ダイヘッド14の温度が低下すると、ダイヘッド14を通過する溶融樹脂の温度が低下し、溶融樹脂の流動性が低下したり、溶融樹脂が固化したりする虞がある。一方、ダイヘッド14内での溶融樹脂の流動性低下や固化は、良好な樹脂ペレットの製造を妨げる原因となる。そこで、ダイヘッド14の温度を保つことが望まれる。特に、ノズル77が設けられているダイプレート70の温度低下は、製造される樹脂ペレットの良否に与える影響が大きい。そこで、良好な樹脂ペレットを製造するためには、特にダイプレート70の温度を保つことが望まれる。しかし、ダイプレート70とペレット輸送水とを隔てるものは、ダイホルダ60やダイプレート70よりも薄いダイプレートカバー80のみである。
【0047】
なお、樹脂原料の特性(特に、融点)によっては、ペレット輸送水など水を循環させずに樹脂ペレットが製造されることもある。このような樹脂ペレット製造方法では、溶融樹脂は、水が存在していない切断処理部50内に押し出されて切断される。つまり、溶融樹脂は、空中に押し出されて切断される。この場合、ダイプレートカバー80は、ペレット輸送水など水ではなく空気に臨む。したがって、ダイプレートカバー80が水に臨んでいる場合に比べて、ダイプレートカバー80を介したダイヘッド14からの放熱は少ない。しかし、ダイプレートカバー80を介してダイヘッド14の熱が放熱されることに変わりはない。よって、水を循環させずに樹脂ペレットを製造する場合であっても、良好な樹脂ペレットを製造するためには、ダイヘッド14の温度を保つことが望ましい。なお、水中で溶融樹脂を切断する手法が“アンダーウォータカット”と呼ばれることがある一方、空中で溶融樹脂を切断する手法は“ホットカット”と呼ばれることがある。
【0048】
上記のとおり、樹脂ペレットを製造する際に用いられる切断手法がアンダーウォータカットであっても、ホットカットであっても、良好な樹脂ペレットを製造するためには、ダイヘッド14の温度を保つことが望ましい。しかしながら、ダイプレートカバー80を介してダイヘッド14の熱が放熱され続ける状況下でダイヘッド14の温度を保つためには多くのエネルギーが必要となる。例えば、放熱による温度低下分を加味してダイヘッド14の加熱温度を高く設定する必要がある。また、ダイヘッド14内での温度低下分を加味して溶融樹脂の加熱温度を高く設定する必要がある。これらの結果、押出機10のランニングコストが高くなったり、樹脂ペレットの製造コストが高くなったりする。
【0049】
そこで、本実施形態では、ダイプレートカバー80に、ダイヘッド14の温度を保つための機能を持たせてある。具体的には、ダイプレートカバー80は、金属3Dプリンターを用いて作られており、断熱層を内包している。つまり、ダイプレートカバー80は、断熱層を内包する金属3Dプリンター造形品である。
【0050】
<断熱層>
図5(a)はダイプレートカバー80の正面図である。図5(b)は、図5(a)に示されているA-A線に沿ったダイプレートカバー80の断面図である。ダイプレートカバー80の内部(内側)には、大気圧よりも圧力が低い内部空間(空隙)82が設けられている。言い換えれば、ダイプレートカバー80の内部には、真空の内部空間82が設けられている。この結果、ダイプレートカバー80の内部に、断熱層としての真空層83が形成されている。
【0051】
内部空間82は、ダイプレートカバー80の外形に倣う環状の空間であって、かつ、一連の空間である。また、内部空間82の厚み(t)は約0.5mmである。言い換えれば、真空層83は、ダイプレートカバー80の外形に倣う環状の層であって、かつ、一連の層である。また、真空層83の厚み(t)は約0.5mmである。なお、ダイプレートカバー80の全体の厚み(T)が約3.0mmであることは既述のとおりである。
【0052】
図6は、ダイプレートカバー80の斜視図である。ダイプレートカバー80の一面には、内部空間82と通じる複数の連通口84aが設けられている。本実施形態では、2つの連通口84aが設けられている。2つの連通口84aは、ダイプレートカバー80の中心を挟んで対向する位置に配置されている。つまり、2つの連通口84aは、180度異なる位置に配置されている。それぞれの連通口84aは、ダイプレートカバー80と同一または同種の金属によって作られている封止部材84bによって気密に塞がれている。つまり、封止部材84bは、連通口84aを塞ぐ栓である。
【0053】
真空の内部空間82(真空層83)は、真空環境下で、連通口84aを封止部材84bによって気密に塞ぐことによって形成される。例えば、真空チャンバー内で連通口84aに封止部材84bを嵌め込んで溶接することによって、真空の内部空間82(真空層83)が形成される。
【0054】
本実施形態では、ダイヘッド14の最前面に位置し、切断処理部50内の水(ペレット輸送水)や空気に臨むダイプレートカバー80が断熱層を備えている。よって、ダイホルダ60やダイプレート70から水や空気に伝達される熱量が減少し、ダイヘッド14の温度低下が抑制される。つまり、ダイヘッド14の保温性が向上する。この結果、ダイヘッド14を通過する溶融樹脂の流動性の低下や固化が防止または抑止され、良好な樹脂ペレットが製造される。また、樹脂ペレット製造システム1の稼動中にダイヘッド14やダイヘッド14を通過する溶融樹脂の温度を所定温度に維持するために要するエネルギーが低減される。
【0055】
樹脂ペレット製造システム1の立ち上げ方式の1つに“ドライスタート方式”がある。ドライスタート方式では、切断処理部50にペレット輸送水などの水が到達する前に溶融樹脂の押出し及び切断が開始される。このため、溶融樹脂は一時的に空中で切断され、その後は水中で切断される。
【0056】
上記のようなドライスタート方式では、切断処理部50に到達した水がダイヘッド14に接触すると、ダイヘッド14の熱が急激に奪われる。しかし、本実施形態では、切断処理部50に到達した水が接触するダイプレートカバー80が断熱層を備えているので、ダイヘッド14から水への熱伝導が抑制される。
【0057】
樹脂ペレット製造システム1の立ち上げ方式の他の1つに“ウエットスタート方式”がある。ウエットスタート方式の一態様では、切断処理部50がペレット輸送水など水で満たされ、かつ、ダイヘッド14の温度が所定温度まで上昇した後に、溶融樹脂の押出し及び切断が開始される。また、ウエットスタート方式の他の一態様では、切断処理部50がペレット輸送水など水で満たされ、かつ、ダイヘッド14の温度が所定温度まで上昇する前に、溶融樹脂の押出し及び切断が開始される。つまり、ウエットスタート方式では、ダイヘッド14が切断処理部50内の水に臨んでいる状態で、ダイヘッド14の温度を上昇させる必要がある。本実施形態では、切断処理部50内の水に臨むダイプレートカバー80が断熱層を備えているので、ダイヘッド14の温度を短時間で所定温度まで上昇させることができる。
【0058】
ペレット輸送水を含む水の熱伝導率は空気の20倍以上である。よって、ダイプレートカバー80によるダイヘッド14の保温性向上は、アンダーウォータカットが行われる場合に特に有効である。また、融点が高い溶融樹脂は、僅かな温度低下によっても流動性が低下したり、固化したりする。よって、ダイプレートカバー80によるダイヘッド14の保温性向上は、融点が高い溶融樹脂を処理する場合に特に有効である。
【0059】
<ダイプレートカバーの変形例>
図7は、ダイプレートカバー80の一変形例を示す分解斜視図である。図7に示されているダイプレートカバー80は、プレート部材85,プレート部材86およびスペーサ部材87から構成されている。プレート部材85とプレート部材86とは互いに対向している。スペーサ部材87は、対向するプレート部材85とプレート部材86との間に介在している。つまり、図7に示されているダイプレートカバー80は、積層構造(サンドイッチ構造)を有する。
【0060】
スペーサ部材87は、複数の開口部87aを有するフレーム状に形成されている。スペーサ部材87を挟んでプレート部材85とプレート部材86とを真空環境下で接合すると、それぞれの開口部87aが閉塞され、真空の内部空間82が形成される。つまり、ダイプレートカバー80の内部に、独立した複数の真空の内部空間82が形成される。この結果、複数の真空の内部空間82からなる群によって、ダイプレートカバー80の内部に、断熱層としての真空層83が形成される。プレート部材85とプレート部材86とは、例えば、放電プラズマ焼結や電子ビーム溶接によって接合される。
【0061】
図8(a),図8(b),図8(c)のそれぞれは、ダイプレートカバー80の他の変形例を示す模式図である。これらの図に示されているダイプレートカバー80の内部には、図7に示されているダイプレートカバー80よりも多数の真空の内部空間82が設けられている。もっとも、図8(a),図8(b),図8(c)に示されているダイプレートカバー80は、複数の真空の内部空間82からなる群によって断熱層(真空層83)が形成されている点で、図7に示されているダイプレートカバー80と共通している。
【0062】
図8(a)に示されているダイプレートカバー80に設けられている内部空間82の平面形状は、六角形または六角形の一部に相当する形状である。図8(b)に示されているダイプレートカバー80に設けられている内部空間82の平面形状は、円形または円形の一部に相当する形状である。図8(c)に示されているダイプレートカバー80に設けられている内部空間82の平面形状は、ほぼ台形である。
【0063】
なお、図8(a),図8(b),図8(c)に示されているダイプレートカバー80は、金属3Dプリンターによって実現することができ、積層構造(サンドイッチ構造)によって実現することもできる。
【0064】
隣接する2つの内部空間82の間の壁は、それら内部空間82を隔てる隔壁として機能するとともに、ダイプレートカバー80の強度を高めるリブとしても機能する。よって、独立した複数の内部空間82からなる群によって断熱層(真空層83)を形成することは、ダイプレートカバー80の強度低下を回避しつつ断熱層(真空層83)の体積を確保できる点で有利である。
【0065】
<ダイヘッドの他の使用例>
上記実施形態では、ダイヘッドが押出機に用いられる場合について説明した。しかし、ダイヘッドの用途は押出機に限られない。
【0066】
図9は、ダイヘッド14が用いられるシステムの一例を示す模式図である。図示されているシステム100は、重合タンク101,ギヤポンプ102,モータ103,減速機104,切断機構(ペレタイザ)105を含む。ダイヘッド14は、ギヤポンプ102と切断機構(ペレタイザ)105との間に配置される。
【0067】
ギヤポンプ102は、重合タンク101内の樹脂原料などをダイヘッド14に供給する。ダイヘッド14に供給された樹脂原料などは、ダイホルダ60およびダイプレート70を通過し、ダイプレート70のノズル77から切断機構(ペレタイザ)105に向けて押し出される。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、ダイプレートカバーや断熱層の厚みは、適宜変更することができる。もっとも、強度や製造コストなどの面からは、ダイプレートカバーの厚みは、3.0mm以上10.0mm以下が好ましい。また、ダイプレートカバーの厚みが3.0mm以上10.0mm以下である場合、断熱層の厚みは、0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。
【0069】
大気圧よりも圧力が低い内部空間(真空層/低圧空気層)に代えて、大気圧と圧力が同じ内部空間(空気層)、大気圧よりも圧力が高い内部空間(高圧空気層)、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス)が充填された内部空間(ガス層)、断熱材が充填された内部空間(断熱材層)のいずれか1つによって断熱層を形成することもできる。
【0070】
ダイプレートの前面に配置されるダイプレートカバー以外の塞ぎ板にも断熱層を設けることができる。例えば、図3図4に示されているダイプレートカバー80に加えて、センターカバー90にも断熱層を設けることができる。この場合、ダイプレートカバー80の断熱層とセンターカバー90の断熱層の形状,構造,大きさ,厚さなどは、実質的に同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、図3図4に示されているダイプレートカバー80の断熱層(真空層83)の厚さは0.5mmであったが、ダイプレートカバー80よりも厚いセンターカバー90に設けられる断熱層(真空層)の厚さは、例えば1.0mmとすることができる。
【0071】
また、1つのダイプレートカバーやセンターカバーに、2種類以上の断熱層を設けてもよい。例えば、1つのダイプレートカバーに、真空層およびガス層を内包させてもよく、真空層および断熱材層を内包させてもよく、真空層,ガス層および断熱材層を内包させてもよい。また、1つのダイプレートカバーに、断熱層を2層以上設けてもよい。この場合、下層の断熱層と上層の断熱層とは、同種の断熱層であってもよく、異種の断熱層であってもよい。
【0072】
上記実施の形態では、ダイプレートカバー80の表面と、ダイプレート70の周縁部71および内側環状領域73の領域73aの表面とは、実質的に同一の高さを有していたが、これらの高さが異なる実施の形態も本発明の実施の形態の1つである。
【0073】
押出機には、少なくとも二軸押出機および単軸押出機が含まれる。また、二軸押出機には、少なくとも連続同方向噛合い二軸押出機および連続異方向非噛合い二軸押出機が含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 樹脂ペレット製造システム
10 押出機
11 モータ
12 減速機
13 混練処理部
14 ダイヘッド
15 切断機構
20 付属機器
21 タンク
22 循環ポンプ
23 脱水装置
24 輸送ホッパ
25 ブロワー
26 ペレットサイロ
27a,27b,27c,27d,27e,29 配管
28 分岐部
30 原料ホッパ
40 スクリュー
41 ハウジング
41e 下流側端面
50 切断処理部
51 カッターヘッド
60 ダイホルダ
60b 一面(背面)
60f 一面(前面)
61 固定部
62 貫通孔
63 ホルダ流路
70 ダイプレート
70b 一面(背面)
70f 一面(前面)
71 周縁部
72 外側環状領域
73 内側環状領域
73a,73b 領域
74 中央領域
75a,75b 貫通孔
76 ボルト
76a 穴
77 ノズル
78 プレート流路
80 ダイプレートカバー
81,91 皿ボルト
82 内部空間
83 真空層
84a 連通口
84b 封止部材
85,86 プレート部材
87 スペーサ部材
87a 開口部
90 センターカバー
100 システム
101 重合タンク
102 ギヤポンプ
103 モータ
104 減速機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9