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特許7534931モータ制御装置、シート搬送装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】モータ制御装置、シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20240807BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240807BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240807BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02P5/46 F
H02P5/46 C
G03G21/00 370
G03G21/14
G03G15/20 535
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020191891
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080685
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香川 陽介
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-10682(JP,B2)
【文献】特開2020-024272(JP,A)
【文献】特開2004-252351(JP,A)
【文献】特開2004-004573(JP,A)
【文献】特開2014-240869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動する第1モータを制御する第1制御手段と、
前記第1モータによる前記負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力する第2モータを制御する第2制御手段と、
前記第1モータの回転速度に応じた第1信号或いは前記第2モータの回転速度に応じた第2信号に基づいて、前記負荷の回転速度の変動成分を取得する取得手段と、を備え、
前記第1制御手段は、前記第1モータの目標回転速度を表す第1指令値と、前記第1信号とに基づいて、前記第1モータを制御し、
前記第2制御手段は、前記第2モータの目標回転速度を表す第2指令値と、前記取得手段によって取得され前記変動成分とに基づいて、前記第2モータの回転速度が、前記第2指令値が示す目標回転速度に対して前記変動成分とは逆位相で変動するように、前記第2モータを制御する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、前記第2指令値と、前記変動成分を示す信号の極性を反転させて得られ反転信号とに基づいて、前記第2モータを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、前記反転信号に基づく調整値を前記第2指令値に加算して得られ指令値に従って、前記第2モータを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記第1信号或いは前記第2信号が入力されるフィルタを備え、
前記フィルタは、前記第1信号或いは前記第2信号に基づいて前記負荷の回転速度の変動成分に対応する周波数成分を出力するように構成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記フィルタは、前記負荷の回転速度に相当する周波数を含む所定の周波数範囲内の周波数成分を通過させる周波数特性を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記フィルタから出力された信号の極性を反転させて出力する反転手段を更に備え、
前記第2制御手段は、前記第2指令値と、前記反転手段から出力された反転信号に基づいて、前記第2モータを制御する
ことを特徴とする請求項5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記第1制御手段は、前記第1指令値と、前記第1信号に基づく検出値との偏差が小さくなるように、前記第1モータを制御し、
前記第2制御手段は、前記反転信号に基づく調整値を前記第2指令値に加算した得られた指令値に従って、前記第2モータを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記第2指令値は、前記第1指令値よりも高い目標回転速度を示す値に設定される
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
シートを搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する第1モータ及び第2モータを制御する、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
を備えること特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に対して加圧する加圧ローラを有し、前記画像形成手段によって形成された画像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、
前記加圧ローラを駆動する第1モータ及び第2モータを制御する、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
を備えること特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
像担持体と、
記録媒体に転写される画像を前記像担持体に形成する画像形成手段と、
前記像担持体を回転駆動する第1モータ及び第2モータを制御する、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
を備えること特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
負荷を駆動する第1モータと、
前記第1モータによる前記負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力する第2モータと、
前記第1モータの回転速度に応じた第1信号を出力する第1出力手段と、
前記第2モータの回転速度に応じた第2信号を出力する第2出力手段と、
前記第1モータの目標回転速度を表す第1指令値と前記第1信号とに基づいて、前記第1モータを制御する第1制御手段と、
前記第1信号或いは前記第2信号に基づいて前記負荷の回転速度の変動成分を取得する取得手段と、
前記第2モータの目標回転速度を表す第2指令値と前記取得手段によって取得され前記変動成分とに基づいて、前記第2モータの回転速度が、前記第2指令値が示す目標回転速度に対して前記変動成分とは逆位相で変動するように、前記第2モータを制御する第2制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に対して加圧する加圧ローラを有し、前記画像形成手段によって形成された画像を前記記録媒体に定着させる定着手段と、を更に備え、
前記負荷は、前記加圧ローラである
ことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
像担持体と、
記録媒体に転写される画像を前記像担持体に形成する画像形成手段と、を更に備え、
前記第1モータは、前記負荷としての前記像担持体を駆動する
ことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置における画像形成速度の高速化の実現や種々のタイプの記録材(例えば厚紙)に対する画像形成の実現が求められている。これらを実現するために、画像形成装置において搬送ローラや定着器等の負荷の駆動に用いられるモータの高出力化が求められている。
【0003】
モータの高出力化を実現するための構成として、同一の負荷を複数のモータによって駆動する構成が知られている(例えば、特許文献1及び2)。このような構成では、例えば、1つのモータについては、フィードバック制御により駆動制御を行い、他のモータについては、一定の回転速度で回転させて当該1つのモータによる負荷の駆動をアシストすることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-240869号公報
【文献】特開2008-222334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置では、形成画像の光沢ムラ(グロスムラ)や記録材の波打ち等を防止するために、駆動対象の負荷を一定速度で回転させることが求められる。しかし、上述のように1つのモータのみについて回転速度のフィードバック制御を行う場合、負荷変動による負荷の回転速度の変動を抑えることが難しい。また、複数のモータについて回転速度のフィードバック制御を行うことでこのような変動を抑えたとしても、何らかの要因でモータ間に回転速度の偏差が生じると、それぞれのモータが負荷に対して出力するトルクの割合を適切に制御することが難しくなる。その結果、駆動対象の負荷を一定速度で回転させることができなくなってしまう。即ち、負荷の回転が不安定になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、負荷の回転が不安定になることを抑制することを可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るモータ制御装置は、負荷を駆動する第1モータを制御する第1制御手段と、前記第1モータによる前記負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力する第2モータを制御する第2制御手段と、前記第1モータの回転速度に応じた第1信号或いは前記第2モータの回転速度に応じた第2信号に基づいて、前記負荷の回転速度の変動成分を取得する取得手段と、を備え、前記第1制御手段は、前記第1モータの目標回転速度を表す第1指令値と、前記第1信号とに基づいて、前記第1モータを制御し、前記第2制御手段は、前記第2モータの目標回転速度を表す第2指令値と、前記取得手段によって取得され前記変動成分とに基づいて、前記第2モータの回転速度が、前記第2指令値が示す目標回転速度に対して前記変動成分とは逆位相で変動するように、前記第2モータを制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、負荷を駆動する第1モータと、前記第1モータによる前記負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力する第2モータと、前記第1モータの回転速度に応じた第1信号を出力する第1出力手段と、前記第2モータの回転速度に応じた第2信号を出力する第2出力手段と、前記第1モータの目標回転速度を表す第1指令値と前記第1信号とに基づいて、前記第1モータを制御する第1制御手段と、前記第1信号或いは前記第2信号に基づいて、前記負荷の回転速度の変動成分を取得する取得手段と、前記第2モータの目標回転速度を表す第2指令値と前記取得手段によって取得され前記変動成分とに基づいて、前記第2モータの回転速度が、前記第2指令値が示す目標回転速度に対して前記変動成分とは逆位相で変動するように、前記第2モータを制御する第2制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負荷の回転が不安定になることを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の全体の構成例を示す図
図2】画像形成装置の制御構成例を示すブロック図
図3】加圧ローラ16の駆動構成例を示す図
図4】比較例1におけるモータM1及びM2の制御構成例を示す図
図5】比較例1の制御構成において得られるFG信号の例を示す図
図6】比較例2におけるモータM1及びM2の制御構成例を示す図
図7】比較例2の制御構成において得られるFG信号の例を示す図
図8】実施形態におけるモータM1及びM2の制御構成例を示す図
図9】FG信号が入力されるBPFの周波数特性の例を示す図
図10】実施形態の制御構成において得られるFG信号の例を示す図
図11】モータM1及びM2の駆動制御の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<画像形成装置>
図1は、本発明の実施形態に係るモータ制御装置が実装される画像形成装置の構成例を示す。図1に示される画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の現像剤(トナー)により多色画像を形成する、電子写真方式の画像形成装置である。ただし、画像形成装置100は、単色の現像剤によって単色画像を形成する画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、例えば、印刷装置、プリンタ、複写機、複合機(MFP)及びファクシミリ装置のいずれであってもよく、電子写真方式以外の記録方式(インクジェット方式等)を採用した画像形成装置であってもよい。なお、参照符号の末尾のY,M,C,Kは、それぞれ、対応する部材が対象とする現像剤(トナー)の色が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックであることを示している。以下の説明では、色を区別する必要がない場合には、末尾のY,M,C,Kを省いた参照符号を使用する。
【0013】
画像形成装置100は、ネットワークを介して外部装置から受信した画像データに基づいて、記録材Sに画像を形成する。画像形成装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のトナー像をそれぞれ形成する4つの画像形成部を有する。イエロー(Y)のトナー像を形成する画像形成部は、感光ドラム1Y、帯電器2Y、レーザスキャナ3Y、現像器4Y、一次転写ローラ5Y、及びクリーニング装置7Yを有する。マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のトナー像を形成する画像形成部も、イエロー(Y)のトナー像を形成する画像形成部と同一の構成を有する。
【0014】
以下では、イエロー(Y)のトナー像の形成について説明するが、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像の形成も同様である。外部装置から受信された画像データに基づいて生成された画像信号は、レーザスキャナ3Yに入力される。レーザスキャナ3Yは、半導体レーザ及びポリゴンミラーを備え、入力された画像信号によって変調されたレーザ光を、半導体レーザから出力する。半導体レーザから出力されたレーザ光が、ポリゴンミラーで反射して感光ドラム1Yの表面に照射されることで、感光ドラム1Yが露光される。帯電器2Yによって表面が一様に帯電した感光ドラム1Yが露光されることで、感光ドラム1Y上に静電潜像が形成される。
【0015】
感光ドラム1Y上に形成された静電潜像が、現像器4Yから供給されるトナーによって現像されることで、感光ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。感光ドラム1Y上のトナー像は、感光ドラム1Yの回転に伴って、一次転写ローラ5Yと対向する位置T1まで移動する。一次転写ローラ5Yは、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが(図2に示される高圧制御部155から)印加されることで、感光ドラム1Y上のトナー像を中間転写ベルト6に転写する。クリーニング装置7Yは、中間転写ベルト6へのトナー像の転写後に感光ドラム1Yの表面に残ったトナーを回収することで、感光ドラム1Yの表面をクリーニングする。
【0016】
イエロー(Y)のトナー像と同様に、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像が、感光ドラム1M,1C,1C上にそれぞれ形成される。感光ドラム1Y,1M,1C,1C上にそれぞれ形成されたトナー像は、中間転写ベルト6上に順に重ね合わせて転写される。これにより、多色のトナー像が、中間転写ベルト6上に形成される。当該トナー像は、中間転写ベルト6の周面の移動に伴って、二次転写ローラ8と対向ローラ9との間の位置(二次転写部)T2に向けて搬送される。
【0017】
給紙カセット10には、ユーザによってセットされた記録材Sが収納されている。記録材Sは、給紙ローラ11によって給紙カセット10から搬送路に給紙され、レジストローラ対12に向けて送り出される。停止状態にあるレジストローラ対12まで搬送された記録材Sは、その先端がレジストローラ対12に突き当てられた状態で一時的に停止する。記録材Sは、中間転写ベルト6上のトナー像が二次転写部T2に至るタイミング合わせてレジストローラ対12が駆動されることで、記録材Sが二次転写部T2に向けて送り出される。
【0018】
二次転写ローラ8は、(図2に示される高圧制御部155から)バイアス電圧が印加されることで、二次転写部T2において中間転写ベルト6から記録材Sへトナー像を転写する。トナー像が転写された記録材Sは、定着装置14へ搬送される。クリーニング装置13は、記録材Sへのトナー像の転写後に中間転写ベルト6の表面に残ったトナーを回収することで、中間転写ベルト6の表面をクリーニングする。
【0019】
定着装置14は、定着ローラ15及び加圧ローラ16を備える。定着ローラ15は、ヒータ(図2の定着ヒータ161)を内部に備えており、当該ヒータによって加熱される。定着ローラ15は記録媒体Sに対して加熱し、加圧ローラ16は記録材Sに対して加圧するように構成される。定着装置14は、定着ローラ15及び加圧ローラ16を用いて、画像形成部によって形成されたトナー像(画像)を記録材Sに定着させる定着処理を行う。具体的には、記録材Sが定着ローラ15と加圧ローラ16とにより挟まれながら搬送される過程で、定着ローラ15と加圧ローラ16によって記録材Sに対して熱及び圧力が加えられる。これにより、記録材S上のトナー像が当該記録材に定着する。定着装置14による定着処理が行われた記録材Sは、排紙ローラ17によって画像形成装置100外部に排出される。
【0020】
このような画像形成装置において、種々のタイプの記録材(例えば、薄紙、厚紙、光沢紙、フィルム等)に対する画像形成を実現するには、定着処理において記録材に与えることが可能な熱量及び圧力を増加させる必要がある。定着処理における圧力を増加させると、加圧ローラ16を駆動させるためのトルクが増大する。そこで、本実施形態の画像形成装置100では、定着装置14の加圧ローラ16の駆動源として2つのモータ(モータM1及びM2)が使用される。加圧ローラ16は、モータM1及びM2によってそれぞれ対応するギアを介して駆動されることで回転する。定着ローラ15は、加圧ローラ16に従動して回転する。
【0021】
本実施形態において、モータM1及びM2は、同一の負荷を駆動する複数のモータの一例であり、モータM2は、モータM1による負荷の駆動をアシストするように構成される。モータM1は、負荷を駆動する第1モータの一例であり、モータM2は、モータM1による当該負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力する第2モータの一例である。
【0022】
<制御構成>
図2は、画像形成装置100の制御構成例を示すブロック図である。図2に示されるシステムコントローラ150は、CPU150a、ROM150b、及びRAM150cを備え、画像形成装置100全体を制御する。システムコントローラ150は、画像処理部151、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御部157、センサ類159、及びACドライバ160と接続されている。システムコントローラ150は、接続された各ユニットとの間でデータの送受信が可能である。
【0023】
CPU150aは、ROM150bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。RAM150cは、揮発性の記憶デバイスである。RAM150cは、CPU150aが各種プログラムを実行するためのワークエリアとして使用され、各種データが一時的に格納される一時記憶領域としても使用される。RAM150cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御部157に対する指令値、操作部152から受信される情報等のデータが格納される。
【0024】
システムコントローラ150は、ユーザが各種の設定を行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように操作部152を制御することで、操作部152を介してユーザによる設定を受け付ける。システムコントローラ150は、操作部152を介したユーザによる設定の内容を示す情報を操作部152から受信する。また、システムコントローラ150は、画像形成装置の状態をユーザに知らせるためのデータを操作部152に送信する。操作部152は、システムコントローラ150から受信したデータに基づいて、画像形成装置の状態を示す情報を表示部に表示する。
【0025】
システムコントローラ150(CPU150a)は、画像処理部151における画像処理に必要となる、画像形成装置100内の各デバイスの設定値データを画像処理部151に送信する。また、システムコントローラ150は、各デバイスからの信号(センサ類159からの信号等)を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155を制御する。高圧制御部155は、システムコントローラ150によって設定された設定値に基づいて、高圧ユニット156を構成する各デバイスに対して、それぞれの動作に必要となる電圧を供給する。なお、高圧ユニット156は、帯電器2(2Y,2M,2C,2K)、現像器4(4Y,4M,4C,4K)、及び一次転写ローラ5(5Y,5M,5C,5K)、及び二次転写ローラ8で構成される。また、センサ類159には、搬送ローラによって搬送される記録材(記録媒体)を検出するセンサ等が含まれる。
【0026】
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154から検出信号を受信し、当該検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ150に送信する。システムコントローラ150は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160を制御することで、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。上述のように、定着ヒータ161は、定着装置14に含まれる、定着処理に用いられるヒータである。
【0027】
システムコントローラ150(CPU150a)は、モータ制御部157の動作を制御する。システムコントローラ150は、モータ制御部157による制御対象のモータの回転位置(回転位相)又は回転速度等についての指令信号を生成し、モータ制御部157へ出力する。モータ制御部157は、CPU150aから与えられる指令信号に従って、制御対象のモータ(モータM1及びモータM2)の駆動制御を行う。
【0028】
本実施形態の画像形成装置100は、当該画像形成装置が備える少なくとも一部の負荷について、複数のモータで同一の負荷を駆動する構成を有する。図1及び図2に示されるモータM1及びM2は、同一の負荷を駆動するそのような複数のモータの一例であり、定着装置14が有する加圧ローラ16を駆動する。モータM1は、負荷(加圧ローラ16)を駆動する。モータM2は、モータM1による負荷(加圧ローラ16)の駆動をアシストするための駆動力を出力する。このように、モータM2は、負荷のアシスト駆動用のモータとして使用される。
【0029】
<加圧ローラ16の駆動構成>
図3は、定着装置14の加圧ローラ16を回転させるための駆動構成例を示す。図3(A)は、加圧ローラ16を上方から見たときの平面図である。図3(B)は、図3(A)において破線Xにより示される部分の断面図である。加圧ローラの軸16aにはギア16gが備えられている。モータM1の回転軸31及びモータM2の回転軸32は、それぞれ歯切り加工が施されており、加圧ローラのギア16gと接続されている。
【0030】
このように、加圧ローラ16の駆動系は、モータM1から出力されるトルクが回転軸31からギア16gに伝達され、モータM2から出力されるトルクが回転軸32からギア16gに伝達されるように構成されている。即ち、モータM1及びM2から出力されるトルクの合力が、ギア16gに伝達され、更にギア16g及び軸16aを介して加圧ローラ16に伝達されることで、加圧ローラ16の回転駆動が行われる。
【0031】
<比較例>
ここで、図4乃至図7を参照して、モータM1及びM2によって同一の負荷を駆動する場合の、モータM1及びM2の制御構成に関する2つの比較例を説明する。図4は、比較例1の制御構成を示し、図6は、比較例2の制御構成を示す。
【0032】
●比較例1
図4に示される比較例1の制御構成は、モータM1の制御に使用される速度制御部411、速度検出部412、及び減算器413と、モータM2の制御に使用される速度制御部421とで構成されている。速度制御部411は、モータM1の回転速度を制御する。速度検出部412は、モータM1の回転速度を検出する。速度制御部421は、モータM2の回転速度を制御する。モータM1及びM2はブラシレスモータ等で構成される。モータM1及びM2にそれぞれ取り付けられた回路基板(図示せず)内に、速度出力部451及び452がそれぞれ設けられている。速度出力部451及び452は、それぞれ、モータM1及びM2の回転速度を示す検出信号として(モータM1及びM2の回転周期に同期した)FG(Frequency Generator)信号を出力する。
【0033】
速度制御部411は、入力された速度指令値ω_ref1に基づいて、モータM1の回転速度を制御する。速度検出部412は、速度出力部451から出力されるFG信号に基づいてモータM1の回転速度を検出し、速度検出値ω_det1を出力する。速度検出部412から出力された速度検出値ω_det1は、減算器413へ入力される。減算器413は、速度指令値ω_ref1と速度検出値ω_det1との差分を、速度制御部411へ出力する。速度制御部411は、減算器413の出力に基づいて、モータM1の回転速度を制御する。このように、モータM1の駆動制御は、速度指令値ω_ref1と、速度検出部412から出力される速度検出値ω_det1とを用いたフィードバック制御により行われる。
【0034】
速度制御部421は、入力された速度指令値ω_ref2に基づいて、モータM2が一定の回転速度で回転するようにモータM2の回転速度を制御する。モータM2の回転速度は、モータM1の回転速度よりも高い回転速度に設定される。これは、モータM1による負荷の駆動をモータM2によってアシストするためである。モータM2がモータM1より低い回転速度で回転する場合、モータM2がモータM1にとって負荷になるが、モータM2がモータM1より高い回転速度で回転する場合、モータM2はモータM1にとって負荷にならない。なお、比較例1の制御構成では、モータM1に対して行われているようなフィードバック制御はモータM2に対しては行われない。
【0035】
このように、図4に示される比較例1の制御構成では、モータM2が、速度指令値ω_ref2に応じて一定のトルクを発生させ、発生させたトルクでモータM1による負荷の駆動をアシストする。この制御構成によれば、モータM1及びM2がそれぞれ負荷に対して出力するトルクの割合を、モータM2の回転速度の設定値により制御することが可能である。
【0036】
しかし、比較例1の制御構成では、モータM2に対しては回転速度のフィードバック制御が行われず、モータM1に対してのみ回転速度のフィードバック制御が行われるため、回転速度制御の応答性が比較的低い。このため、負荷変動に起因して負荷軸の回転速度に生じる変動を十分に抑えることが難しい。
【0037】
図5は、比較例1の制御構成において得られるFG信号の例を示す。なお、図5には、負荷軸の回転速度に変動が生じた場合の、速度出力部451及び452からそれぞれ出力されるFG信号をF-V(周波数-電圧)変換して得られた信号が示されている。図5に示されるように、モータM1に対応するFG信号及びモータM2に対応するFG信号には、それぞれ、負荷変動に起因する正弦波状の速度変動成分が生じている。
【0038】
画像形成装置100において、このような比較例1の制御構成をモータM1及びM2に適用した場合、モータM1及びM2による駆動対象の負荷である加圧ローラ16の回転速度に変動が発生することで画像の定着状態にムラが生じうる。その結果、形成画像の光沢ムラ(グロスムラ)や記録材の波打ち等が生じうる。このため、負荷変動によらず負荷(加圧ローラ16)の回転速度を一定の回転速度に制御できる制御構成を実現することが望ましいと言える。
【0039】
●比較例2
比較例2は、比較例1の制御構成よりもモータM1及びM2の回転速度制御の応答性が改善される制御構成の例である。図6に示される比較例2の制御構成は、モータM1の制御に使用される速度制御部611、速度検出部612、及び減算器613と、モータM2の制御に使用される速度制御部621、速度検出部622、及び減算器623とで構成されている。
【0040】
速度制御部611は、モータM1の回転速度を制御する。速度検出部612は、モータM1の回転速度を検出する。速度制御部621は、モータM2の回転速度を制御する。速度検出部622は、モータM2の回転速度を検出する。モータM1及びM2はブラシレスモータ等で構成される。モータM1及びM2にそれぞれ取り付けられた回路基板(図示せず)内に、速度出力部651及び652がそれぞれ設けられている。速度出力部651及び652は、それぞれ、モータM1及びM2の回転速度を示す検出信号として(モータM1及びM2の回転周期に同期した)FG信号を出力する。
【0041】
速度制御部611、速度検出部612、及び減算器613の動作は、それぞれ、比較例1における速度制御部411、速度検出部412、及び減算器413と同様である。比較例1と同様、モータM1の駆動制御は、速度指令値ω_ref1と、速度検出部612から出力される速度検出値ω_det1とを用いたフィードバック制御により行われる。
【0042】
速度制御部621、速度検出部622、及び減算器623の動作は、それぞれ、速度制御部611、速度検出部612、及び減算器613と同様である。ただし、比較例2の制御構成では、モータM1とモータM2とが、共通の速度指令値ω_ref1に基づいて制御される。具体的には、速度制御部621は、入力された速度指令値ω_ref1に基づいて、モータM2の回転速度を制御する。速度検出部622は、速度出力部652から出力されるFG信号に基づいてモータM2の回転速度を検出し、速度検出値ω_det2を出力する。速度検出部622から出力された速度検出値ω_det2は、減算器623へ入力される。減算器623は、速度指令値ω_ref1と速度検出値ω_det2との差分を、速度制御部621へ出力する。速度制御部621は、減算器623の出力に基づいて、モータM2の回転速度を制御する。このように、モータM2の駆動制御は、速度指令値ω_ref1と、速度検出部622から出力される速度検出値ω_det2とを用いたフィードバック制御により行われる。
【0043】
このように、図6に示される比較例2の制御構成では、モータM1及びM2の両方に対して回転速度のフィードバック制御が行われる。このため、比較例2の制御構成によれば、比較例1の制御構成よりも、回転速度制御の応答性を高めることが可能であり、負荷変動に起因して負荷軸の回転速度に生じる変動を低減できる。
【0044】
図7は、比較例2の制御構成において得られるFG信号の例を示す。なお、図7には、負荷軸の回転速度に変動が生じた場合の、速度出力部651及び652からそれぞれ出力されるFG信号をF-V変換して得られた信号が示されている。図7に示されるように、モータM1に対応するFG信号及びモータM2に対応するFG信号のいずれにおいても、比較例1(図5)よりも負荷変動による速度変動成分が低減されている。
【0045】
しかし、比較例2の制御構成のように、複数のモータに対してそれぞれ独立に回転速度のフィードバック制御を行う場合、同一の速度指令値ω_ref1に基づく制御を行ったとしても、モータ間に(ロータの)回転位相の位相差が生じうる。例えば、各モータの取り付け誤差又は負荷軸に取り付けられたギアの偏心に起因して、このような位相差が生じうる。その結果、モータ間の回転速度の偏差が0に収束しなくなり、複数のモータがそれぞれ負荷に対して出力するトルクの割合を適切に制御することが難しくなりうる。
【0046】
<モータM1及びM2の制御構成>
そこで、本実施形態では、複数のモータによって同一の負荷を駆動する場合に、それぞれのモータが負荷に対して出力するトルクの割合を適切に制御しつつ、負荷(負荷軸)の回転速度をより高い精度で制御できる(一定に保てる)制御構成を実現する。以下では、2つのモータM1及びM2によって同一の負荷を駆動する構成例について説明するが、本実施形態は3つ以上のモータによって同一の負荷を駆動する構成にも適用可能である。
【0047】
図8は、本実施形態におけるモータM1及びM2の制御構成の例として、モータM1及びM2を制御するモータ制御部157の構成例を示すブロック図である。モータM1及びM2は、同一の負荷である加圧ローラ16を駆動する。モータM1及びモータM2は、本実施形態ではブラシレスモータで構成されるが、ステッピングモータやブラシ付きモータ等の、他のタイプのモータで構成されてもよい。なお、モータ制御部157は、以下で説明する機能を実行するハードウェア(FPGA又はASIC等)で実現されてもよいし、一部がハードウェアで実現され、プログラムを実行する1つ以上のプロセッサによってその他の部分が実現されてもよい。また、モータ制御部157の全体が、プログラムを実行する1つ以上のプロセッサによって実現されてもよい。
【0048】
モータ制御部157は、モータM1に対応する構成として、速度制御部811、速度検出部812、及び減算器813を有し、モータM2に対応する構成として、速度制御部821、変動補償部822、及び加算器823を有する。モータM1及びM2にそれぞれ取り付けられた回路基板(図示せず)内に、速度出力部851及び852がそれぞれ設けられている。速度出力部851及び852は、それぞれ、モータM1及びM2の回転速度を示す検出信号として(モータM1及びM2の回転周期に同期した)FG信号を出力する。このように、速度出力部851は、第1モータ(モータM1)に対応する第1検出手段の一例であり、速度出力部852は、第2モータ(モータM2)に対応する第2検出手段の一例である。速度出力部851及び852は、それぞれ対応するモータの回転速度を示す検出信号(FG信号)を出力する。
【0049】
速度制御部811は、CPU150aから出力される速度指令値ω_ref1に基づいて、モータM1の回転速度を制御する。速度指令値(指令速度)ω_ref1は、モータM1の目標回転速度を表す第1指令値(第1指令速度)の一例である。速度検出部812は、速度出力部851から出力されるFG信号に基づいてモータM1の回転速度を検出し、検出した回転速度を示す速度検出値ω_det1を出力する。速度検出部812から出力された速度検出値ω_det1は、減算器813へ入力される。減算器813は、速度指令値ω_ref1と速度検出値ω_det1との差分を、速度制御部811へ出力する。速度制御部811は、減算器813の出力に基づいて、モータM1の回転速度を制御する。
【0050】
このように、モータM1の駆動制御は、速度指令値ω_ref1と、速度検出部812から出力される速度検出値ω_det1とを用いたフィードバック制御により行われる。即ち、速度制御部811は、モータM1の目標回転速度を表す速度指令値ω_ref1と、速度出力部851から出力されたFG信号とに基づいて、モータM1を制御する。より具体的には、速度制御部811は、速度検出値ω_det1と、速度出力部851から出力されたFG信号に基づく検出値との偏差が小さくなるように、モータM1を制御する。
【0051】
速度制御部821は、CPU150aから出力される速度指令値ω_ref2に基づいて、モータM2が一定の回転速度で回転するようにモータM2の回転速度を制御する。速度指令値(指令速度)ω_ref2は、モータM2の目標回転速度を表す第2指令値(第2指令速度)の一例である。CPU150aは、モータM2の回転速度をモータM1の回転速度より高い回転速度に設定する。即ち、速度指令値ω_ref2は、速度指令値ω_ref1よりも高い目標回転速度を示す値に設定される(ω_ref2>ω_ref1)。これは、モータM1による負荷の駆動をモータM2によってアシストするためである。モータM2がモータM1より低い回転速度で回転する場合、モータM2がモータM1にとって負荷になる。一方、モータM2がモータM1より高い回転速度で回転する場合、モータM2はモータM1にとって負荷にならない。この場合、モータM1の出力トルクとモータM2の出力トルクとの合力が、駆動対象の負荷(加圧ローラ16)に伝達される。これにより、モータM1による負荷(加圧ローラ16)の駆動を、モータM2によってアシストすることが可能になる。CPU150aは、このような回転速度の設定に応じた速度指令値ω_ref2を、モータ制御部157(速度制御部821)へ出力する。
【0052】
変動補償部822は、速度出力部852から出力されるFG信号から、負荷軸の回転速度の変動成分を取得し、取得した変動成分に基づいて、負荷軸の回転速度の変動を補償するための調整値ω_adj2を生成して出力する。変動補償部822から出力される調整値ω_adj2は、加算器823によって速度指令値ω_ref2に対して加算されることで、速度指令値ω_ref2に対して適用される。なお、変動補償部822は、速度出力部851から出力されるFG信号から、負荷軸の回転速度の変動成分を取得するように構成されてもよい。
【0053】
変動補償部822は、バンドパスフィルタ(BPF)831、演算部832、及び信号生成部833を含む。速度出力部852から出力されるFG信号は、変動補償部822内のBPF831に入力される。BPF831は、入力されたFG信号から所定の周波数成分を抽出するためのバンドパスフィルタである。具体的には、BPF831は、加圧ローラ16の回転ムラ等の負荷変動による、負荷軸(加圧ローラ16の軸16a)の回転速度の変動に対応する周波数成分を抽出するように構成される。このように、本実施形態においてBPF831は、(速度出力部851又は)速度出力部852から出力されたFG信号(検出信号)から、負荷の回転速度の変動成分を取得する取得手段の一例である。
【0054】
図9は、BPF831の周波数特性の例を示している。例えば、モータM1の回転速度が50Hz、モータM1の回転軸31とギア26とのギア比が10である場合、負荷軸(加圧ローラ16の軸16)の回転速度は5Hzとなる。この場合、BPF831は、図9に示されるように、負荷(負荷軸)の回転速度に相当する周波数を含む所定の周波数範囲内の周波数成分を通過させる周波数特性を有する。即ち、BPF831は、このような周波数範囲内(通過帯域内)の周波数成分を通過させるように、低周波数側及び高周波数側のカットオフ周波数が定められた周波数特性を有する。BPF831は、DC成分等の、通過帯域外の周波数成分を減衰させる(阻止する)ように動作する。
【0055】
このように、BPF831は、負荷軸の回転速度の変動成分を示す信号を出力する。BPF831から出力された信号は、演算部832に入力される。演算部832は、入力された信号の極性を反転させて出力する。即ち、演算部832は、入力された信号の位相を反転させることで、入力された信号とは逆位相の信号を出力する。即ち、演算部832は、負荷軸の回転速度の変動成分とは逆位相の変動を示す信号を出力する。
【0056】
演算部832から出力された信号は、信号生成部833に入力される。信号生成部833は、入力された信号(負荷軸の回転速度の変動成分とは逆位相の変動を示す信号)に基づいて、負荷軸の回転速度の変動を補償するための制御信号(調整値ω_adj2)を生成して出力する。調整値ω_adj2は、負荷軸の回転速度の変動成分とは逆位相の変動成分を含む信号の値として生成される。
【0057】
変動補償部822から出力される調整値ω_adj2は、加算器823によって速度指令値ω_ref2に対して加算される。これにより、速度制御部821に入力される速度指令値が、ω_ref2から(ω_ref2+ω_adj2)に調整される。即ち、負荷軸の回転速度の変動成分とは逆位相の変動成分を含む回転速度の指令値(ω_ref2+ω_adj2)が、速度制御部821に入力される。速度制御部821は、調整値ω_adj2を速度指令値ω_ref2に加算して得られた指令値(ω_ref2+ω_adj2)に従って、モータM2を制御する。このようにして、モータM2の駆動制御は、速度指令値ω_ref1と、変動補償部822から出力される調整値ω_adj2とを用いたフィードバック制御により行われる。
【0058】
このように、速度制御部821は、速度指令値ω_ref2と、負荷の回転速度の変動成分とに基づいて、モータM2の回転速度が、速度指令値ω_ref2が示す目標回転速度に対して当該変動成分とは逆位相で変動するように、モータM2を制御する。より具体的には、速度制御部821は、速度指令値ω_ref2と、BPF831から出力された信号(即ち、負荷(負荷軸)の回転速度の変動成分を示す信号)の極性を反転させて得られた反転信号とに基づいて、モータM2を制御する。
【0059】
図10は、図8に示される制御構成において得られるFG信号の例を示す。なお、図10には、負荷軸に回転速度に変動が生じた場合の、速度出力部851及び852からそれぞれ出力されるFG信号をF-V変換して得られた信号が示されている。図10に示されるように、比較例2(図7)と同様、モータM1に対応するFG信号及びモータM2に対応するFG信号のいずれにおいても、比較例1よりも負荷変動による速度変動成分が低減されている。
【0060】
このように、本実施形態のモータ制御部157は、モータM2の回転速度の検出結果に表れる速度変動成分を、負荷軸の回転速度の変動成分として取得する。更にモータ制御部157は、取得した変動成分とは逆位相で回転速度が変動するように、モータM2の制御(フィードバック制御)を行う。即ち、モータ制御部157は、負荷変動による負荷軸の回転速度の変動を、モータM2の回転速度の変動により打ち消すように、モータM2の回転速度を制御する。これにより、モータM1のみのフィードバック制御では低減が難しい、負荷変動による負荷軸の回転速度の変動を、低減することが可能である。
【0061】
また、本実施形態のモータ制御部157は、比較例2とは異なり、速度指令値ω_ref2に応じてモータM2により一定のトルクを発生させ、発生させたトルクでモータM1による負荷の駆動をアシストするように構成されている。これにより、モータM1及びM2がそれぞれ負荷に対して出力するトルクの割合を、モータM2の回転速度の設定値(速度指令値ω_ref2)により適切に制御することが可能である。このように、同一の負荷を駆動するモータM1及びM2がそれぞれ負荷に対して出力するトルクの割合を適切に制御しつつ、負荷(負荷軸)の回転速度をより高い精度で一定の回転速度に制御することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、負荷の回転が不安定になることを抑制することが可能になる。
【0062】
<フローチャート>
図11は、印刷ジョブの実行時のモータM1及びM2の駆動制御の手順を示すフローチャートである。CPU150aは、操作部152を介したユーザの指示、又は外部装置からの指示に従って、印刷ジョブの実行を開始すると、図11に示される手順でモータM1及びM2の駆動制御を開始する。
【0063】
S101で、CPU150aは、印刷ジョブの用紙設定に応じて、モータM1及びM2に対する速度指令値ω_ref1及びω_ref2を設定する。更にS102で、CPU150aは、設定した速度指令値ω_ref1及びω_ref2をモータ制御部157へ出力するとともに、モータM1及びM2の駆動開始指令をモータ制御部157へ出力する。これにより、モータ制御部157が、設定した速度指令値ω_ref1及びω_ref2に従ってモータM1及びM2の駆動を開始する。
【0064】
その後、S103で、CPU150aは、印刷ジョブの実行を終了するか否かを判定し、印刷ジョブの実行を終了すると、S104で、モータM1及びM2の駆動停止指令をモータ制御部157へ出力する。これにより、モータ制御部157が、モータM1及びM2の駆動を停止する。
【0065】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置(モータ制御部157)は、モータM1を制御する速度制御部811と、モータM2を制御する速度制御部821とを備える。モータM1は、負荷(例:加圧ローラ16)を駆動するように構成され、モータM2は、モータM1による負荷の駆動をアシストするための駆動力を出力するように構成される。変動補償部822(BPF831)は、モータM1に対応する速度出力部851又はモータM2に対応する速度出力部852から出力された、対応するモータの回転速度を示すFG信号(検出信号)から、負荷の回転速度の変動成分を取得する。速度制御部811は、モータM1の目標回転速度を表す速度指令値ω_ref1と、速度出力部851から出力されたFG信号とに基づいて、モータM1を制御する。速度制御部821は、モータM2の目標回転速度を表す速度指令値ω_ref2と、変動補償部822(BPF831)によって取得された変動成分とに基づいて、モータM2を制御する。具体的には、速度制御部821は、モータM2の回転速度が、速度指令値ω_ref2が示す目標回転速度に対して当該変動成分とは逆位相で変動するように、M2モータを制御する。
【0066】
このように、本実施形態によれば、速度制御部821は、負荷(負荷軸)の回転速度の変動成分を取得し、取得した変動成分とは逆位相の変動をモータM2の回転速度に生じさせる。このように、速度制御部821は、モータM1の駆動制御により抑えることができない、負荷変動により生じた負荷の回転速度の変動を、モータM2の回転速度に生じさせた変動により打ち消すように、モータM2の駆動制御を行う。これにより、同一の負荷を駆動する複数のモータがそれぞれ負荷に対して出力するトルクの割合を適切に制御しつつ、負荷(負荷軸)の回転速度をより高い精度で制御することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、負荷の回転が不安定になることを抑制することが可能になる。
【0067】
<変形例>
本実施形態は、以下で説明するように種々の変形が可能である。例えば、モータM1及びモータM2は、ブラシレスモータに代えて、ステッピングモータやブラシ付きモータ等の、他のタイプのモータで構成されてもよい。また、本実施形態における、複数のモータで同一の負荷を駆動する構成は、加圧ローラ16以外の負荷の駆動に適用されてもよく、例えば、中間転写ベルト6又は感光ドラム1等の像担持体の駆動に適用されてもよい。その場合、モータ制御装置(モータ制御部157)は、像担持体を回転駆動する第1モータ及び第2モータ(モータM1及びM2)を制御するように構成される。
【0068】
本実施形態では、各モータのFG機能を使用してモータM1及びM2の回転速度を検出する構成が用いられているが、これとは異なる構成で回転速度の検出が行われてもよい。例えば、負荷軸にエンコーダを取り付けて、当該エンコーダを用いてモータM1及びM2(の回転軸)の回転速度を検出する構成が用いられてもよい。
【0069】
図8の制御構成では、負荷軸の回転速度の変動成分に対応する周波数成分を抽出可能なBPFを用いているが、より高い周波数帯域における変動成分の取得も可能にするために、BPFに代えてハイパスフィルタ(HPF)を用いてもよい。また、図8の制御構成では、負荷軸の回転速度の変動成分を、モータM2に対応するFG信号から取得しているが、モータM1に対応するFG信号から取得してもよい。また、本実施形態の変動補償部822は、負荷軸の回転速度の変動成分に対応する周波数成分を速度変動成分として取得しているが、低減対象の速度変動成分に応じて、異なる周波数成分を取得対象としてもよい。例えば、モータM1又はM2の回転速度の変動成分に対応する周波数成分が取得対象とされてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、同一の負荷を2つのモータM1及びM2により駆動する構成例について説明したが、3つ以上のモータにより同一の負荷を駆動する構成についても同様に実現可能である。その場合にも同様の効果を得ることが可能である。
【0071】
また、本発明のモータ制御装置は、本実施形態で説明したように画像形成装置に設けられるのに限らず、例えば、記録媒体や原稿等のシートを搬送するシート搬送装置に設けられてもよい。その場合、モータ制御装置は、シートを搬送する搬送ローラを駆動する複数のモータ(第1及び第2モータ)を制御するように構成される。
【0072】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0073】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0074】
100:画像形成装置、150a:CPU、157:モータ制御部、M1,M2:モータ、16:加圧ローラ、811,821:速度制御部、812:速度検出部、822:変動補償部、851,852:速度出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11