(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/28 20060101AFI20240807BHJP
E01C 19/27 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E01C19/28
E01C19/27
(21)【出願番号】P 2020197123
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209026(JP,A)
【文献】特開2017-114211(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241739(WO,A1)
【文献】特開2019-157407(JP,A)
【文献】特開2019-035277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
E02F 9/00-9/18
9/24-9/28
B60K 11/00-15/10
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前後方向における後方を撮影するバックカメラを備えた転圧機械であって、
前記機体の前記前後方向における最後端部を形成するリアフレームと、
前記機体の高さ方向における前記リアフレームの後部下面を構成し、前記機体の後輪の接地面との間でデパーチャアングルを規定する傾斜面と、
前記リアフレームよりも前記高さ方向において上側でエンジンルームを覆うエンジンカバーと
を備え、
前記エンジンルームの前記前後方向における後部開口には第1通気口を有するリアグリルが配置され、
前記エンジンルームには、前記第1通気口を介して前記エンジンルーム内に外気を吸い込む冷却ファンが配置され、
前記バックカメラは、前記機体の前記最後端部であって、
前記リアグリルよりも前記前後方向にて後側であり、前記傾斜面よりも前記高さ方向において上側であり、且つ、前記エンジンカバーの上面よりも前記高さ方向において下側の位置に搭載されることを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記エンジンカバーには開閉のための取手が設けられ、
前記バックカメラは、前記高さ方向において、前記エンジンカバーの前記上面と前記リアフレームの前記傾斜面との間であって前記取手の高さ位置を含む高さ範囲に搭載されることを特徴とする請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記エンジンルームには、前記前後方向の前側から順に、エンジン、
前記冷却ファン、熱交換装置が配置され
、
前記冷却ファンは、前記第1通気口を介して前記エンジンルーム内に外気を吸い込むことにより、冷却風によって前記熱交換装置及び前記エンジンを冷却
することを特徴とする請求項1又は2に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記リアグリルには、前記リアフレームの一部を構成するとともに前記最後端部を構成するリアバンパーが取り付けられ、
前記リアバンパーは、前記リアフレームの前記機体の前記前後方向における最後端面を形成するとともに、前記最後端面に開口して前記第1通気口に連通する第2通気口を有し、
前記バックカメラのレンズは、前記第2通気口に位置するように設けられることを特徴とする請求項
1に記載の転圧機械。
【請求項5】
前記第2通気口は複数設けられ、
前記レンズは、前記複数の前記第2通気口のうち、前記高さ方向において最も下側に位置する前記第2通気口に位置するように設けられることを特徴とする請求項4に記載の転圧機械。
【請求項6】
前記高さ方向において最も下側に位置する前記第2通気口の開口縁には、前記高さ方向において下側に凸となる方向に湾曲した下側湾曲縁が形成されることを特徴とする請求項5に記載の転圧機械。
【請求項7】
前記レンズは、前記バックカメラで撮影される撮影画面の下部に前記下側湾曲縁が映り込む傾きで前記第2通気口に位置するように設けられることを特徴とする請求項6に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧機械に関し、特にバックカメラを備えた転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事現場では、ダンプトラックで盛土を巻出し、ブルドーザやホイールローダが巻出された盛土を均し、土工用振動ローラなどの転圧機械が地面を締め固める。転圧機械は、土木工事における最終工程の転圧作業で使用されることから、転圧機械が機体を前後進させながら地面を締め固める周囲では、ダンプトラック、ブルドーザ、ホイールローダなどの作業機械が同時に稼働していることが多い。このため、転圧機械のキャブ(運転室)に搭乗するオペレータは、機体を前後進させる際に必ず後方の目視確認を行い、周囲で作業中の作業機械に注意を払う必要がある。
【0003】
特許文献1には、機体の前後方向における後方を撮影するバックカメラを取り付けたホイールローダが開示されている。建屋を覆う建屋カバーの後端には開口部が形成され、この開口部は多数の通気口を有するグリルで覆われている。特許文献1のバックカメラは、グリルの上部、すなわち、建屋の後端上部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のバックカメラは、建屋の後端上部に取り付けられているため、バックカメラの搭載位置の高さは、キャブに搭乗したオペレータの目線の高さに近い。従って、オペレータが目視できない死角をバックカメラによって補うことができない場合がある。具体的には、バックカメラのレンズの傾きを水平に近づけ、上方から後方遠方を撮影できるように調整した場合、バックカメラの撮影画面はオペレータが実際に目視する視界範囲とほぼ同じとなる。
【0006】
この場合には、バックカメラによって機体後部の直下を確認することができない。一方、バックカメラのレンズの傾きを下方に向け、上方から機体後部の直下を撮影できるように調整した場合、バックカメラの撮影画面には機体後部において建屋の後端上部よりも後方に突出した部位、例えば特許文献1においてはカウンタウエイトが大幅に映り込む。この場合には、バックカメラに映り込む部位によって撮影範囲が狭くなるとともに、後方遠方を撮影できない。従って、後方の目視確認を行うオペレータを効果的にアシストし、運転中の安全性をさらに向上することができる転圧機械が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、後方の目視確認を行うオペレータを効果的にアシストし、運転中の安全性をさらに向上することができる転圧機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明の転圧機械は、機体の前後方向における後方を撮影するバックカメラを備えた転圧機械であって、転圧機械は、機体の前後方向における最後端部を形成するリアフレームと、機体の高さ方向におけるリアフレームの後部下面を構成し、機体の後輪の接地面との間でデパーチャアングルを規定する傾斜面と、リアフレームよりも高さ方向において上側でエンジンルームを覆うエンジンカバーとを備え、エンジンルームの前後方向における後部開口には第1通気口を有するリアグリルが配置され、エンジンルームには、第1通気口を介してエンジンルーム内に外気を吸い込む冷却ファンが配置され、バックカメラは、機体の最後端部であって、リアグリルよりも前後方向にて後側であり、傾斜面よりも高さ方向において上側であり、且つ、エンジンカバーの上面よりも高さ方向において下側の位置に搭載される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の転圧機械によれば、後方の目視確認を行うオペレータを効果的にアシストし、運転中の安全性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る転圧機械の側面図である。
【
図3】転圧機械のリアバンパー付近を拡大した斜視図である。
【
図5】搭載状態のカメラアセンブリをリアバンパーの背面側から見た斜視図である。
【
図6】搭載状態におけるカメラアセンブリの縦断面図である。
【
図7】
図6の場合のバックカメラの撮影画面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る転圧機械について図面を参照して説明する。
図1は、転圧機械の側面図を示す。転圧機械は、機体1に、例えば、フロントフレーム2、リアフレーム4、キャブ(運転室)6、前輪(ローラ)8、後輪10及び機関室12が設けられた土工用振動ローラである。
【0012】
機体1は、前輪8及び後輪10を駆動することで前後進しながら、金属製の円筒状なす前輪8によって地面を締固めることができる。なお、以降説明する図において、矢印で示した「前」、「後」は機体1の前後方向における向きを表し、矢印で示した「上」、「下」は機体1の上下方向、換言すると機体1の高さ方向における向きを表す。また、矢印で示した「左」、「右」は機体1を後方から見たときの左右方向、換言すると機体1の幅方向における向きを表す。
【0013】
フロントフレーム2は、機体1の前部において前輪8を挟む位置に配設された一対の骨格部材であり、回動支持体14を介してリアフレーム4に回動可能に取付けられている。リアフレーム4は、機体1の後部に配設された骨格部材である。後輪10は、ゴム製のタイヤを備え、リアフレーム4を挟む位置に対をなして配設されている。
【0014】
キャブ6は、リアフレーム4の前部上側に配設され、オペレータが座る座席やコントロールパネル、操作レバー及びモニターなどが備えられている。オペレータがキャブ6に搭乗して座席に着座し、コントロールパネルや操作レバーを操作することにより、機体1の前後進などの走行操作が可能である。
【0015】
機関室12は、キャブ6の後側であってリアフレーム4の上側に配設され、HST(Hydraulic Static Transmission)16が配置されている。HST16は、油圧ポンプから構成され、リア油圧モータ15、及びアクスルを介して後輪10を駆動し、リアフレーム4を回動させる。併せて、HST16は、フロント油圧モータ17を介して前輪8を駆動させる。機関室12のHST16よりも後方にはエンジンルーム18が形成され、エンジンルーム18にはHST16を駆動するエンジン20が配置されている。
【0016】
HST16の上方では、サブフレーム22がリアフレーム4に支持されている。サブフレーム22には後処理装置24が載置されている。後処理装置24は、エンジン20の排ガスを浄化するための装置であり、例えば三元触媒装置やNOx浄化装置などから構成されている。後処理装置24で浄化された排ガスはマフラー26から外部に排出される。
【0017】
エンジンルーム18には、機体1の前後方向の前側から順に、エンジン20、冷却ファン28、熱交換装置30が配置されている。熱交換装置30は、エンジン20に循環する冷却水を冷却するラジエータなどを含む。冷却ファン28は、例えばエンジン20のクランクシャフトに連結され、エンジン20の駆動力により回転駆動される。
【0018】
エンジンルーム18の前後方向における後部開口にはリアグリル32が配置されている。リアグリル32は、リアフレーム4に固定されるとともに、多数の第1通気口34が開口されている。冷却ファン28は、第1通気口34を介してエンジンルーム18内に外気を吸い込み、冷却風により熱交換装置30及びエンジン20を冷却する。
【0019】
機関室12は、エンジン20、冷却ファン28、及び熱交換装置30を上方と側方とから覆うエンジンカバー36と、HST16及び後処理装置24を上方と側方とから覆う後処理装置カバー38とによって囲まれている。エンジンカバー36及び後処理装置カバー38は例えば鋼板部材で形成されている。後処理装置カバー38は、リアフレーム4及びサブフレーム22にボルトで固定されている。
【0020】
エンジンカバー36は、リアフレーム4よりも高さ方向にて上側においてエンジンルーム18を覆い、サブフレーム22にヒンジ40を介して上下方向に開閉可能に取り付けられている。エンジンカバー36の後部両側面には、アーム状の取手42とラッチ機構44とがそれぞれ設けられている。オペレータは、取手42を掴んでエンジンカバー36を開閉可能であり、ラッチ機構44を操作することにより閉状態のエンジンカバー36をリアフレーム4に係止可能である。
【0021】
リアグリル32の後側にはリアバンパー46が取り付けられている。リアバンパー46は、リアフレーム4の一部を構成するとともに機体1の前後方向における最後端部を構成する部位であり、機体1の前後方向における最後端面48を形成している。また、リアフレーム4の高さ方向における後部下面には傾斜面50が形成されている。リアフレーム4の傾斜面50は、機体1の後輪10の接地面52との間でデパーチャアングルαを規定する。デパーチャアングルαは、機体1が障害物などを乗り越えるときにリアバンパー46が障害物に接触するか否かを判定する際の目安となる角度である。
【0022】
図2は転圧機械を後方から見た図を示し、
図3は転圧機械のリアバンパー46付近を拡大した斜視図を示す。リアバンパー46に形成される機体1の最後端面48には、複数の第2通気口54が開口されている。本実施形態の場合、第2通気口54は、上段に3つ、中段に2つ、下段に1つの合計6つ形成されている。各第2通気口54は第1通気口34に連通している。冷却ファン26は、第1通気口34及び第2通気口54を介してエンジンルーム18内に外気を吸い込むことができる。
【0023】
図1から
図3に示すように、転圧機械は、機体1の前後方向における後方を撮影するバックカメラ56(以下、カメラ56ともいう)を備えている。カメラ56はリアバンパー46に取り付けられ、カメラ56の搭載位置は、
図1に破線矢印で示すように、リアバンパー46、すなわち、機体1の前後方向における最後端部であり、リアグリル32よりも機体1の前後方向にて後側である。なお、機体1の当該最後端部は機体1の最後端面48の近傍を含む周辺領域である。
【0024】
また、カメラ56の搭載位置は、
図1に一点鎖線矢印で示すように、リアフレーム4に形成される傾斜面50よりも機体1の高さ方向にて上側である。また、カメラ56の搭載位置は、
図1に二点鎖線矢印で示すように、エンジンカバー36の上面36aよりも機体1の高さ方向にて下側である。
【0025】
また、カメラ56は、高さ方向にて、エンジンカバー36の上面36aとリアフレーム4の傾斜面50との間であって、エンジンカバー36の取手42の高さ位置を含む高さ範囲に搭載されている。本実施形態の場合、カメラ56は取手42と実質的に同一の高さに搭載されている。
【0026】
より詳しくは、カメラ56のレンズ56aは、6つの第2通気口54のうち、高さ方向にて最も下側に位置する第2通気口54aに位置付けられている。第2通気口54aの開口縁には、高さ方向にて下側に凸となる方向に湾曲した下側湾曲縁54bが形成され、レンズ56aは下側湾曲縁54bの上側直近に位置付けられる。
【0027】
図4は、カメラアセンブリ58を拡大した斜視図を示す。また、
図5は、搭載状態のカメラアセンブリ58をリアバンパー46の背面46a側から見た斜視図を示す。カメラアセンブリ58は、カメラ56、カバー60、及びブラケット62を組付けた組立体である。カバー60は、カバー部材64と固定部材66とから構成されている。
【0028】
カバー部材64は、左右方向に延設する板状に形成され、
図4に示すように、カバー部材64の長手方向中央には開口部64aが形成されている。
図5に示すように、カバー部材64の背面64bには、開口部64aの左右両側に機体1の前方に向けて位置決め部64cが立設されている。一対の位置決め部64cの間にカメラ56の本体56bを嵌め込むことにより、カメラ56のレンズ56aをカバー部材64の開口部64aに位置決め可能である。
【0029】
レンズ56aは、開口部64aに位置決めされた状態において、カバー部材64の前面64dから突出していない。また、カバー部材64の上部には、カメラ56の本体56b側に折り曲げられた庇部64eが形成されている。レンズ56aをカバー部材64の前面64dから突出させず、さらに庇部64eを形成したことにより、上方からレンズ56aへの埃、砂、雨水などの付着が抑制される。
【0030】
固定部材66は、左右両端にそれぞれ立上部66aを有する縦断面U字状に形成されている。固定部材66には、各立上部66aからそれぞれ左右方向外側に折り曲げて延設された折曲部66bが形成されている。また、固定部材66には、各立上部66a間に固定部66cが形成されている。
【0031】
固定部材66は、各折曲部66bにおいてカバー部材64の背面64bにボルト68a及びナット68bで固定されている。カメラ56の本体56bの下面からはネジ部56cが突出され、ネジ部56cは固定部66cのネジ孔に挿通されてボルト56dで螺合されている。これにより、カメラ56の本体56bは、カバー部材64の一対の位置決め部64cの間に嵌め込まれて位置決めされた状態で固定部材66に載置され、固定部材66ひいてはカバー60に固定される。こうして、カバー部材64及び固定部材66から構成されたカバー60がカメラ56と一体に組付けられる。
【0032】
ブラケット62は、左右両端にそれぞれ垂下部62aを有する縦断面逆U字状に形成されている。ブラケット62には、各垂下部62a間に固定部62bが形成されている。固定部材66の各立上部66aは、ブラケット62の各垂下部62aの間に位置付けられる。互いに当接、或いは対向する二対の垂下部62a及び立上部66aは、それぞれ二組のボルト70a及びナット70bで固定される。各垂下部62aにおける下側のボルト70a及びナット70bの締結部位には、それぞれ円弧状の開口を有する長孔72が形成されている。
【0033】
各垂下部62aにおいて、下側のボルト70aのネジ部は、上側のボルト70a及びナット70bの締結部位を支点として、長孔72を移動可能である。これにより、カバー60がブラケット62に対して機体1の前後方向及び上下方向に傾動可能となる。従って、ブラケット62に対するカバー60の傾きを調整すれば、カメラ56のレンズ56aの傾きを調整可能である。
【0034】
図5に示すように、リアバンパー46の背面46aには、取付部46bが突出して形成されている。取付部46bには、ブラケット62の固定部62bがボルト74a及びナット74bで固定される。これにより、カメラアセンブリ58がリアバンパー46に固定され、ひいてはカメラ56がカバー60を構成する固定部材66と、ブラケット62とを介してリアバンパー46に取り付けられる。
【0035】
図6は、搭載状態におけるカメラアセンブリ58の縦断面図を示す。
図6において、カメラ56の撮影範囲は、カメラ56のレンズ56aから上斜め方向及び下斜め方向に延びる破線で示されている。レンズ56aは下側湾曲縁54bが撮影範囲の下端にかかる傾きに調整されている。下側湾曲縁54bは、前述したように、リアバンパー46において最も下側に位置する第2通気口54aの下側に凸となる方向に湾曲した開口縁である。
【0036】
図7は、
図6の場合のカメラ56の撮影画面76を示す。撮影画面76は、キャブ6に備えられたモニターの画面に映し出され、オペレータが後方を目視確認する際に併せて視認可能となっている。撮影画面76の下部には、第2通気口54aの下側湾曲縁54bが映り込んでいる。すなわち、レンズ56aは、カメラ56で撮影される撮影画面76の下部に下側湾曲縁54bが映り込む傾きで第2通気口54aに位置付けられている。
【0037】
以上のように、本実施形態の転圧機械は前述したカメラ56を備えることにより、オペレータの後方の目視確認が妨げられることなく、カメラ56によってオペレータの死角となる範囲を撮影画面76に映し出すことができる。従って、後方の目視確認を行うオペレータがカメラ56によって効果的にアシストされ、転圧機械の運転中の安全性をさらに向上することができる。
【0038】
具体的には、カメラ56をリアバンパー46、すなわち機体1の最後端部であって、且つエンジンカバー36の上面36aよりも機体1の高さ方向において下側に搭載する。これにより、カメラ56の撮影画面76に、エンジンカバー36が映り込むことはない。
【0039】
また、カメラ56の撮影画面76に映り込むリアフレーム4の面積を極力小さくすることが可能であり、その分、機体1の後方の撮影範囲を大きく確保できる。従って、
図7に示したように、オペレータは、撮影画面76において、機体1の後部の直下を確認することができるとともに、後方遠方を確認することもでき、オペレータの死角を大幅に低減することができる。
【0040】
しかも、カメラ56の搭載位置は、リアバンパー46、すなわち機体1の最後端部であって、且つリアフレーム4の傾斜面50よりも機体1の高さ方向において上側となる。これにより、カメラ56をリアフレーム4及びその一部をなすリアバンパー46により保護することができるため、機体1の後部への接触が生じた場合であっても、カメラ52の破損を防止することができる。
【0041】
また、カメラ56は、機体1の高さ方向にて、エンジンカバー36の上面36aとリアフレーム4の傾斜面50との間であって、エンジンカバー36の取手42の高さ位置を含む高さ範囲に搭載されている。これにより、オペレータは、地上、すなわち前述した接地面52からカメラ56に容易にアクセス可能である。従って、カメラ56の角度調整やカメラ56のレンズ52aの清掃といったメンテナンスを容易に行うことができ、カメラ56に係るメンテナンス性を向上することができる。
【0042】
また、カメラ56は、リアグリル32よりも機体1の前後方向において後側に搭載される。これにより、カメラ56の撮影画面76にリアグリル32が映り込むことはないため、オペレータの死角をさらに低減可能である。また、冷却ファン28は、リアグリル32に形成された多数の第1通気口34を介してエンジンルーム18内に外気を吸い込む。
【0043】
この際に吸い込まれる冷却風の気流がリアグリル32の第1通気口34を通過する前にカメラ56に衝突する。これにより、カメラ56のレンズ56aに付着した埃や砂などが除去され、レンズ52aの清掃頻度が低減される。従って、カメラ56に係るメンテナンス性をさらに向上することができる。
【0044】
しかも、カメラ56が冷却風により冷却されるとともに、エンジンルーム18内からカメラ56への熱伝達が抑制される。従って、例えば夏季に周囲温度が上昇した場合であっても、カメラ56の本体56bに内蔵された電子機器が過度に高温に曝されることが抑制され、周囲温度に起因したカメラ56の故障を防止することができる。
【0045】
また、冷却ファン28は、リアグリル32に形成された第1通気口34とリアバンパー46の第2通気口54とを介してエンジンルーム18内に外気を吸い込む。カメラ56のレンズ56aがリアバンパー46の第2通気口54に位置付けられることにより、吸い込まれる冷却風の気流を第2通気口54においてさらに効果的にカメラ56に衝突させることができる。
【0046】
これにより、カメラ56のレンズ56aに付着した埃や砂などがさらに効果的に除去され、レンズ52aの清掃頻度がさらに低減され、カメラ56に係るメンテナンス性をさらに向上することができる。しかも、カメラ56が冷却風によりさらに効果的に冷却されるとともに、エンジンルーム18内からカメラ56への熱伝達がさらに効果的に抑制される。従って、周囲温度に起因したカメラ56の故障をさらに効果的に防止することができる。
【0047】
また、カメラ52のレンズ52aは、リアバンパー46において、機体1の高さ方向において最も下側に位置する第2通気口54aに位置付けられている。これにより、オペレータは、撮影画面76において、機体1の後部の直下をより詳細に確認することができるため、オペレータの死角をさらに低減することができる。また、オペレータがカメラ56のメンテナンスを行う際、カメラ56へのアクセスがさらに容易となるため、カメラ56に係るメンテナンス性をさらに向上することができる。
【0048】
また、機体1の高さ方向にて最も下側に位置する第2通気口54aには、機体1の高さ方向において下側に凸となる方向に湾曲した下側湾曲縁54bが形成されている。これにより、第2通気口54aの開口縁に付着した埃、砂などが自重により下側湾曲縁54bに沿って落下し易くなる。
【0049】
従って、第2通気口54aの開口縁に堆積した埃、砂などによってカメラ56の撮影範囲が狭くなることが抑制されるため、転圧機械の運転中の安全性をさらに向上することができる。しかも、カメラ56の周囲に位置する第2通気口54aの清掃頻度が低減され、カメラ56に係るメンテナンス性をさらに向上することができる。
【0050】
また、カメラ56のレンズ56aは、カメラ56で撮影される撮影画面76の下部に第2通気口54aの下側湾曲縁54bが映り込む傾きで第2通気口54aに位置付けられている。これにより、
図7に示すように、オペレータは、撮影画面76を見て後方確認する際、下側湾曲縁54bのみならず、機体1の最後端面48を視認することができる。
【0051】
従って、撮影画面76において、機体1の最後端面48とその周囲の被撮影物との位置関係をオペレータが容易に把握することができるため、転圧機械の運転中の安全性をさらに向上することができる。しかも、カメラ56の本体56bに内蔵された電子機器は、第2通気口54aにおいて冷却風によりさらに効果的に冷却されるとともに、エンジンルーム18内からの熱伝達がさらに効果的に抑制される。従って、カメラ56が過度に高温に曝されることによる故障をより一層効果的に防止することができる。
【0052】
しかも、撮影画面76の下部に下側湾曲縁54bが若干映り込むだけであるため、カメラ56の撮影範囲が狭くなって後方確認に支障を来すことはない。さらに、下側湾曲縁54bは撮影画面76において緩やかな曲線として視認される。これにより、オペレータは、下側湾曲縁54bと撮影画面76に映り込む他の被撮影物、例えば
図7に示すように、現場において左右方向に映し出された直線状の段差78などとの識別を容易に行うことができる。従って、転圧機械の運転中の安全性をさらに向上することができる。
【0053】
なお、撮影画像76がカラー画像である場合には、下側湾曲縁54b、レンズ56aが位置付けられる第2通気口54aの開口縁全体、或いはリアバンパー46全体を着色することにより、オペレータは、下側湾曲縁54bと他の被撮影物との識別をさらに容易に行うことが可能である。
【0054】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、カメラ56の搭載位置は、説明した位置に厳密には限定されない。少なくとも、リアバンパー46、すなわち機体1の最後端部であって、リアフレーム4に形成される傾斜面50よりも機体1の高さ方向において上側であり、且つ、エンジンカバー36の上面36aよりも機体1の高さ方向において下側にカメラ56を搭載すれば良い。
【0055】
また、リアバンパー46の第2通気口54a以外の第2通気口54にレンズ56aが位置付けられるようにカメラ56を搭載しても良い。また、上記実施形態における本発明の趣旨を逸脱しない構成は、土工用の振動ローラ以外の種々の転圧機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 機体
4 リアフレーム
10 後輪
18 エンジンルーム
20 エンジン
28 冷却ファン
30 熱交換装置
32 リアグリル
34 第1通気口
36 エンジンカバー
36a エンジンカバーの上面
42 取手
46 リアバンパー(最後端部)
48 最後端面
50 傾斜面
52 接地面
54 第2通気口
54a 高さ方向にて最も下側に位置する第2通気口
54b 下側湾曲縁
56 バックカメラ
56a レンズ
76 撮影画面
α デパーチャアングル