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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】コンバイン及び走行経路補正方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240807BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
A01D69/00 302M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020200125
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087963
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀崇
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄司
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106973(JP,A)
【文献】特開2017-211734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0326727(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 69/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインであって、
圃場の未刈領域において少なくとも第1直線行程と前記第1直線行程に平行して隣接する第2直線行程とを有する前記走行経路を作成する走行経路作成部と、
前記走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部と、
前記第1直線行程の前記自動刈取走行の実行中に、前記第1直線行程を進行方向と交差する方向に移動して前記走行経路を修正する行程移動部と、
前記第1直線行程が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程の少なくとも一部を前記一方向へ傾けて補正する行程補正部と、
を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記行程補正部は、前記第1直線行程の移動によって前記第1直線行程の終点が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程を前記一方向へ傾けて補正することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記行程移動部は、前記第1直線行程の平行移動を行って前記走行経路を修正し、
前記第1直線行程の前記平行移動が行われた場合に、前記第2直線行程を補正するか否かを選択する補正選択部を更に備え、
前記行程補正部は、前記補正選択部によって補正ありが選択された場合に、前記第2直線行程の補正を行うことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記補正選択部は、前記第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線が、前記第1直線行程の移動の前後で、所定角度以上傾いた場合に、前記第2直線行程の補正の選択を可能にすることを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記圃場の形状と共に前記走行経路を表示する表示部を更に備え、
前記補正選択部は、補正前の前記第2直線行程と補正後の前記第2直線行程とを異なる表示方法で前記表示部に表示して何れか一方を選択可能にすることを特徴とする請求項3又は4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記補正選択部は、補正前の前記第2直線行程及び補正後の前記第2直線行程のうち、仮選択された行程の刈幅を前記表示部に表示することを特徴とする請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
コンバインが自動刈取走行を行う走行経路を補正する走行経路補正方法であって、
圃場の未刈領域において少なくとも第1直線行程と前記第1直線行程に平行して隣接する第2直線行程とを有する前記走行経路において、前記第1直線行程の前記自動刈取走行の実行中に、前記第1直線行程を進行方向と交差する方向に移動して前記走行経路を修正する移動工程と、
前記第1直線行程が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程の少なくとも一部を前記一方向へ傾けて補正する補正工程と、
を有することを特徴とする走行経路補正方法。
【請求項8】
前記補正工程は、前記第1直線行程の移動によって前記第1直線行程の終点が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程を前記一方向へ傾けて補正することを特徴とする請求項7に記載の走行経路補正方法。
【請求項9】
前記移動工程は、前記第1直線行程の平行移動を行って前記走行経路を修正し、
前記第1直線行程の前記平行移動が行われた場合に、前記第2直線行程を補正するか否かを選択する選択工程を更に有し、
前記補正工程は、前記選択工程によって補正ありが選択された場合に、前記第2直線行程の補正を行うことを特徴とする請求項8に記載の走行経路補正方法。
【請求項10】
前記選択工程は、前記第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線が、前記第1直線行程の移動の前後で、所定角度以上傾いた場合に、前記第2直線行程の補正の選択を可能にすることを特徴とする請求項9に記載の走行経路補正方法。
【請求項11】
前記選択工程は、前記圃場の形状と共に前記走行経路を表示する前記コンバインの表示部に対して、補正前の前記第2直線行程と補正後の前記第2直線行程とを異なる表示方法で表示して何れか一方を選択可能にすることを特徴とする請求項9又は10に記載の走行経路補正方法。
【請求項12】
前記選択工程は、補正前の前記第2直線行程及び補正後の前記第2直線行程のうち、仮選択された行程の刈幅を前記表示部に表示することを特徴とする請求項11に記載の走行経路補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動刈取走行を行う直線行程を途中で移動する場合に、隣接する他の直線行程を補正するコンバイン、及びコンバインの走行経路を補正する走行経路補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、GPS等の衛星測位システムを利用して取得した自装置の位置情報に基づいて、予め設定された走行経路に従って自動刈取走行を行うことができる。
【0003】
走行経路は、自動刈取走行を行う複数の直線行程を組み合わせて作成されるところ、コンバインでは、予め設定された走行経路の直線行程に従って自動刈取走行を行っていても、未刈穀稈の条列が直線行程からずれている場合がある。そのため、コンバインでは、直線行程の自動刈取走行中に、作業者が手動操作によって進路を調整することがある。例えば、コンバインは、自動刈取走行の途中で作業中の直線行程を平行移動(いわゆる、パスオフセット)し、移動後の直線行程の自動刈取走行を継続するものがある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示される走行作業機は、走行機体が、作業しながら直進状に自動操舵走行する直進状走行経路と、作業を行わずに直進状走行経路の走行終端部から方向転換すべく人為操舵走行する方向転換経路とを繰り返して走行する。走行作業機の目標走行経路調整部は、自動操舵走行の途中で、人為操作入力に基づいて元の目標走行経路から平行移動された目標走行経路を、走行機体の進路が平行移動することなくこれから走行すべき目標走行経路として設定する。また、目標走行経路調整部には、人為操作入力に基づいて調整された目標走行経路区間から以降の目標走行経路を目標走行経路区間の調整量に基づいて自動調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6415880号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンバインでは、自動刈取走行の途中で直線行程を平行移動し、移動後の直線行程の自動刈取走行を継続するものがあるが、この直線行程に後続する他の直線行程を具体的に修正するものではなく、直線行程を作業する毎に平行移動等の修正処理を必要としていた。そのため、作業者は直線行程を作業する毎に修正処理の判断や操作が必要であり、作業者に手間がかかる問題が生じていた。
【0007】
特許文献1は、人為操作入力に基づいて調整された目標走行経路区間から以降の目標走行経路を調整すると記載しているが、どのようなことを目的として、どのように調整するかを記載していない。例えば、自動刈取走行の途中でコンバインの直線行程を平行移動させたとき、後続の直線行程の自動刈取走行を継続しても、刈取されない穀稈が残存する問題が生じていた。しかしながら、従来技術や特許文献1に記載の技術では、このような問題を解消することができない。
【0008】
本発明は、自動刈取走行を行う直線行程を途中で移動する場合に、隣接する他の直線行程を適切に補正することができるコンバイン及び走行経路補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のコンバインは、走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインであって、圃場の未刈領域において少なくとも第1直線行程と前記第1直線行程に平行して隣接する第2直線行程とを有する前記走行経路を作成する走行経路作成部と、前記走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部と、前記第1直線行程の前記自動刈取走行の実行中に、前記第1直線行程を進行方向と交差する方向に移動して前記走行経路を修正する行程移動部と、前記第1直線行程が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程の少なくとも一部を前記一方向へ傾けて補正する行程補正部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の本発明のコンバインにおいて、前記行程補正部は、前記第1直線行程の移動によって前記第1直線行程の終点が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程を前記一方向へ傾けて補正するとよい。
【0011】
上記の本発明のコンバインは、前記第1直線行程の前記平行移動が行われた場合に、前記第2直線行程を補正するか否かを選択する補正選択部を更に備え、前記行程補正部は、前記補正選択部によって補正ありが選択された場合に、前記第2直線行程の補正を行うとよい。
【0012】
上記の本発明のコンバインにおいて、前記補正選択部は、前記第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線が、前記第1直線行程の移動の前後で、所定角度以上傾いた場合に、前記第2直線行程の補正の選択を可能にするとよい。
【0013】
上記の本発明のコンバインは、前記圃場の形状と共に前記走行経路を表示する表示部を更に備え、前記補正選択部は、補正前の前記第2直線行程と補正後の前記第2直線行程とを異なる表示方法で前記表示部に表示して何れか一方を選択可能にするとよい。
【0014】
上記の本発明のコンバインにおいて、前記補正選択部は、補正前の前記第2直線行程及び補正後の前記第2直線行程のうち、仮選択された行程の刈幅を前記表示部に表示するとよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の走行経路補正方法は、コンバインが自動刈取走行を行う走行経路を補正する走行経路補正方法であって、圃場の未刈領域において少なくとも第1直線行程と前記第1直線行程に平行して隣接する第2直線行程とを有する前記走行経路において、前記第1直線行程の前記自動刈取走行の実行中に、前記第1直線行程を進行方向と交差する方向に移動して前記走行経路を修正する移動工程と、前記第1直線行程が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程の少なくとも一部を前記一方向へ傾けて補正する補正工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
上記の本発明の走行経路補正方法において、前記補正工程は、前記第1直線行程の移動によって前記第1直線行程の終点が一方向に移動した場合に、前記第2直線行程を前記一方向へ傾けて補正するとよい。
【0017】
上記の本発明の走行経路補正方法において、前記移動工程は、前記第1直線行程の平行移動を行って前記走行経路を修正し、前記第1直線行程の前記平行移動が行われた場合に、前記第2直線行程を補正するか否かを選択する選択工程を更に有し、前記補正工程は、前記選択工程によって補正ありが選択された場合に、前記第2直線行程の補正を行うとよい。
【0018】
上記の本発明の走行経路補正方法において、前記選択工程は、前記第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線が、前記第1直線行程の移動の前後で、所定角度以上傾いた場合に、前記第2直線行程の補正の選択を可能にするとよい。
【0019】
上記の本発明の走行経路補正方法において、前記選択工程は、前記圃場の形状と共に前記走行経路を表示する前記コンバインの表示部に対して、補正前の前記第2直線行程と補正後の前記第2直線行程とを異なる表示方法で表示して何れか一方を選択可能にするとよい。
【0020】
上記の本発明の走行経路補正方法において、前記選択工程は、補正前の前記第2直線行程及び補正後の前記第2直線行程のうち、仮選択された行程の刈幅を前記表示部に表示するとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、自動刈取走行を行う直線行程を途中で移動する場合に、隣接する他の直線行程を適切に補正することができるコンバイン及び走行経路補正方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンバインの移動局及び基地局のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて、作業中の第1直線行程の移動及び隣接する第2直線行程の補正を行う第1動作例を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて、作業中の第1直線行程の移動及び隣接する第2直線行程の補正を行う第2動作例を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて、作業中の第1直線行程の移動及び隣接する第2直線行程の補正を行う他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態によるコンバイン1について説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場において複数の条列に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。コンバイン1は、所定数の条列を有する直線状の行程(以下、直線行程)を走行しながらそれらの条列の刈取作業を行う。
【0024】
コンバイン1は、複数の行程を所定の走行パターンで組み合わせた走行経路を予め設定し、走行経路に従って自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、圃場の未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)において複数の行程を往復する往復刈りや、未刈領域の外周内側に沿った行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈り等の走行パターンの自動刈取走行を行う。
【0025】
なお、コンバイン1は、所定の基準情報を基準にして走行経路を設定する。例えば、コンバイン1は、圃場の未刈領域の外周内側に沿って手動操作により刈取走行を行うことで、圃場の外形に沿って周回する枕地を作成する。そして、コンバイン1は、枕地の内周形状を基準情報として、すなわち、枕地基準で走行経路を設定する。あるいは、コンバイン1は、圃場において未刈領域の手動操作による刈取走行又は穀稈の刈取作業後の領域(以下、既刈領域と称する)の手動操作による走行を2点間で行って、始点及び終点を設定する。そして、コンバイン1は、始点及び終点を結ぶ直線(基準線)を基準情報として、すなわち、2点間直線基準で走行経路を設定する。
【0026】
コンバイン1は、一の行程の自動刈取走行の終了後、既刈領域等の枕地を旋回して、他の行程へ移動する。コンバイン1には、行程を走行経路に従って自動で走行する一方、旋回を手動操作に応じて走行する自動直進走行モードと、行程及び旋回の両方を走行経路に従って自動で走行する全自動走行モードの何れかで自動刈取走行を行う。なお、本実施形態では、何れのモードが設定されていてもよい。また、往復刈りの行程間の旋回には、前進のみで180度旋回する基本的な旋回方法であるU字ターンや、前進で90度旋回してから後退して更に前進で90度旋回するフィッシュテールターン等の様々な旋回方法の何れが設定されてもよい。旋回方法は、行程間の処理に応じて設定してもよく、作業者の操作に応じて設定してもよい。
【0027】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0028】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン27から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0029】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、所定の刈取幅に含まれる最大刈取条数以内の条列の刈取作業を行う。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、最大刈取条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。また、刈取部3は、デバイダ13から刈取部3の左方の穀稈までの距離を検出する株ならいセンサ17(図3参照)を備えている。
【0030】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0031】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0032】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク24と、排出装置25とを備える。グレンタンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置25は、オーガ等で構成され、グレンタンク24に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0033】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出し、例えば、コンバイン1の後方の右側寄りに排出する。
【0034】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備える。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。
【0035】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、運転席29と、複数の操作具30(図3参照)とを備える。運転席29は、作業者が座る座席であり、例えば、右側に設けられる。操作具30は、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するためのハンドルを含み、作業者は、ハンドル等の操作具30を操作することにより、コンバイン1の走行や作業を操縦できる。また、操作具30は、エンジン27の回転速度、すなわちコンバイン1の走行部2の走行速度を調整するアクセルや、刈取部3を昇降させる昇降スイッチを含む。
【0036】
また、操縦部9は、自動刈取走行の設定や実行等を操作する自動運転操作部31と、タッチパネル等の表示部32とを備える(図3参照)。自動運転操作部31は、作業対象の圃場に係る圃場情報に基づく圃場マップを表示部32に表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路を進行方向が分かるように表示部32に表示してよい。自動運転操作部31は、圃場マップに未刈領域を表示していて、自動刈取走行の進行に応じて既刈領域を塗りつぶすように圃場マップを更新するとよい。
【0037】
自動運転操作部31は、例えば、自動直進走行モード及び全自動走行モードの何れかのモードの選択を受け付けるように構成されてよく、更に、自動直進走行モードにおいて手動操作の旋回後に行程の自動刈取走行を開始するための開始スイッチを備える。自動運転操作部31は、自動刈取走行の途中で作業中の直線行程を平行移動(いわゆる、パスオフセット)させるための移動スイッチを備え、平行移動の移動幅や移動方向の設定を受け付けるように構成される。自動運転操作部31は、自動刈取走行の途中で作業中の直線行程を進行方向と交差する方向に移動して進路を調整する手動操作を受け付けるために、自動刈取走行の一時停止スイッチや再開スイッチを備える。
【0038】
自動運転操作部31は、自動刈取走行の走行経路を作成する場合に、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターン(往復刈り又は回り刈り)の選択を受け付ける機能を有する。自動運転操作部31は、例えば、タッチパネルに表示する走行設定画面を介して往復刈り又は回り刈りの走行パターンを選択可能にし、選択された走行パターンを制御装置50へ送信する。
【0039】
また、自動運転操作部31は、自動刈取走行の走行経路を作成する場合に、走行経路作成の基準情報(枕地基準又は2点間直線基準)の選択を受け付ける機能を有する。自動運転操作部31は、例えば、タッチパネルに表示する走行設定画面を介して枕地基準又は2点間直線基準の基準情報を選択可能にし、選択された基準情報を制御装置50へ送信する。
【0040】
コンバイン1は、コンバイン1の周囲の画像を撮影する機体カメラ33(図3参照)を備えている。機体カメラ33は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。
【0041】
コンバイン1は、図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する移動局34を備えている。移動局34は、例えば、移動通信機35と、移動GPSアンテナ36と、データ受信アンテナ37とを備える。移動通信機35は、移動GPSアンテナ36によってGPS衛星と通信することにより、移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を取得する。
【0042】
なお、コンバイン1の作業対象となる圃場の周囲の畦等には、図2に示すように、基地局39が設置されていてもよい。本実施形態では、コンバイン1の位置情報の補正のために基地局39を利用する例を説明するが、基地局39を備えなくてもよく、基地局39による位置情報の補正を行わなくてもよい。基地局39は、固定通信機40と、固定GPSアンテナ41と、データ送信アンテナ42とを備える。固定通信機40は、固定GPSアンテナ41によってGPS衛星と通信することにより、基地局39の位置情報を取得する。固定通信機40は、基地局39の位置情報に基づく補正情報を、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。
【0043】
また、基地局39は、圃場を撮影する固定カメラ43を備えている。固定カメラ43は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。固定通信機40は、固定カメラ43が撮影した画像を取得して、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。
【0044】
移動局34の移動通信機35は、データ受信アンテナ37を介して基地局39の固定通信機40と無線通信を行う。移動通信機35は、補正情報を固定通信機40から受信し、補正情報に基づいて移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。移動通信機35は、固定カメラ43が撮影した圃場画像を固定通信機40から受信する。
【0045】
次に、コンバイン1の制御装置50について図3を参照して説明する。
【0046】
制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。例えば、制御装置50は、移動局34を制御して移動通信機35からコンバイン1の位置情報を取得する。
【0047】
コンバイン1は、通信部52を備えていて、制御装置50は、通信部52を介して、作業者の保有する携帯端末53等の外部機器と無線通信を行い、携帯端末53との間で各種情報を送受信する。
【0048】
携帯端末53は、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であって、例えば、タッチパネル等の表示部54を備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末53と同様の操作具30又は自動運転操作部31が操縦部9に備えられてもよい。なお、携帯端末53は、画像を撮影する携帯カメラ55を備えていてもよい。携帯カメラ55は、例えば、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。本実施形態では、圃場情報の取得のために携帯カメラ55を利用する例を説明するが、携帯カメラ55を備えなくてもよく、携帯カメラ55による圃場情報の取得を行わなくてもよい。
【0049】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成される。携帯端末53は、例えば、圃場外周を構成する圃場端の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等や、圃場の枕地(既刈領域)及び未刈領域の形状、大きさ及び位置情報(座標等)等を圃場情報として設定可能な圃場情報設定画面を表示する。携帯端末53は、自動運転操作部31と同様に圃場情報に基づく圃場マップを表示部54に表示してよい。
【0050】
また、携帯端末53は、操縦部9の自動運転操作部31と同様の機能を有して構成されてよい。例えば、携帯端末53は、タッチパネルを介して、走行経路の走行パターンの選択、走行経路の基準情報の選択を受け付ける機能を有し、選択結果をコンバイン1へ送信する。
【0051】
なお、制御装置50は、通信部52を介して、空撮カメラ57を備えたドローン等の空撮装置56と無線通信を行ってもよく、空撮装置56は、携帯端末53と無線通信を行ってもよい。本実施形態では、圃場情報の取得のために空撮装置56及び空撮カメラ57を利用する例を説明するが、空撮装置56及び空撮カメラ57を備えなくてもよく、空撮カメラ57による圃場情報の取得を行わなくてもよい。制御装置50又は携帯端末53は、作業者による空撮装置56の動作指示や圃場の撮影指示を受け付けて空撮装置56へ送信する。空撮装置56は、動作指示に応じて動作し、また、撮影指示に応じて空撮カメラ57を制御して、圃場を撮影して圃場画像を取得する。空撮装置56は、空撮カメラ57が撮影した圃場画像を制御装置50又は携帯端末53へ送信する。
【0052】
制御装置50は、機体カメラ33、固定カメラ43、携帯カメラ55又は空撮カメラ57によって撮影した圃場画像を受信して操縦部9の表示部32に表示する。あるいは、制御装置50は、撮影した圃場画像を携帯端末53へ送信して、携帯端末53の表示部54に表示させてもよい。
【0053】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動運転制御部62、行程移動部63、行程補正部64として動作する。なお、行程移動部63及び行程補正部64は、本発明に係る走行経路補正方法の移動工程及び補正工程を実現するものである。なお、走行経路補正方法では、自動運転操作部31の操作に基づく制御装置50が、後述する選択工程を実現する。
【0054】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、コンバイン1の機体カメラ33、基地局39の固定カメラ43、携帯端末53の携帯カメラ55又は空撮装置56の空撮カメラ57によって圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析することによって圃場情報を自動で取得する。なお、圃場情報設定部60は、機体カメラ33、固定カメラ43、携帯カメラ55又は空撮カメラ57のうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。
【0055】
また、圃場情報設定部60は、携帯端末53を介して手動で設定される圃場情報と、機体カメラ33、固定カメラ43、携帯カメラ55又は空撮カメラ57の圃場画像から自動で設定される圃場情報と整合性をとることでより正確な圃場情報を取得することもできる。
【0056】
走行経路作成部61は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取を行うために参照する走行経路を作成して記憶部51に記憶する。走行経路は、走行に関する走行設定だけでなく、刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での走行速度及び進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、刈取条数、他の作業に関する情報を含む。
【0057】
走行経路作成部61は、圃場情報設定部60によって設定した圃場情報に基づいて、圃場内の未刈領域に対して、走行しながら刈取を行う直線状の行程を設定し、複数の直線行程を組み合わせて走行経路を設定する。走行経路作成部61は、予め設定された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)又は操縦部9の自動運転操作部31若しくは携帯端末53の操作に応じて選択された走行パターンに応じた走行経路を作成する。例えば、走行経路作成部61は、未刈領域の外周内側に沿った直線行程の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路や、未刈領域において複数の直線行程を往復する往復刈りの行程を作成する。本実施形態では、回り刈り及び往復刈りの何れにおいても、2つ以上の直線行程が所定の刈取幅の間隔を空けて平行に配列されるものとする。
【0058】
また、走行経路作成部61は、予め設定された基準情報(枕地基準又は2点間直線基準)又は操縦部9の自動運転操作部31若しくは携帯端末53の操作に応じて選択された基準情報に応じた走行経路を作成する。走行経路作成部61は、枕地基準が設定されている場合には、往復刈り及び回り刈りの何れの走行パターンでも走行経路を作成することができる。走行経路作成部61は、枕地基準の回り刈りでは、枕地の内周である未刈領域の外周内側に沿った直線行程で渦巻状の走行経路を作成する。走行経路作成部61は、枕地基準の往復刈りでは、枕地の内側形状である未刈領域において複数の直線行程を往復する走行経路を作成する。また、走行経路作成部61は、2点間直線基準の往復刈りが設定されている場合には、始点及び終点を設定した基準線を基準にして、基準線を平行させた直線に対応する複数の直線行程を往復する往復刈りの走行経路を作成する。
【0059】
自動運転制御部62は、走行経路作成部61で作成された走行経路の走行設定及び作業設定に基づいて、動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御して、走行経路に応じた自動走行及び自動刈取を実行させる。自動運転制御部62は、刈取部3によって走行経路上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。また、自動運転制御部62は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動運転制御部62は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0060】
なお、自動運転制御部62は、自動直進走行モードが設定されている場合には、走行経路において一の直線行程の自動刈取走行を完了すると、自動刈取走行を停止する。また、自動運転制御部62は、次の直線行程の始点への手動操作による走行が完了すると、操縦部9の自動運転操作部31若しくは携帯端末53による開始スイッチの操作に応じて、次の直線行程の自動刈取走行を開始する。
【0061】
行程移動部63は、自動運転制御部62による自動刈取走行の実行中に、操縦部9の自動運転操作部31又は携帯端末53の手動操作に応じて、作業中の直線行程(以下、第1直線行程と称する)を進行方向と交差する方向に移動して進路を調整する。例えば、行程移動部63は、自動運転操作部31の移動スイッチの操作に応じて、第1直線行程を、進行方向に交差する左右方向の何れか一方へ、所定の移動幅だけ平行移動(いわゆる、パスオフセット)するように走行経路を修正する。移動幅や移動方向は、予め設定されていてもよく、自動運転操作部31の操作に応じて設定されてもよい。
【0062】
行程移動部63は、第1直線行程を修正すると、修正後の第1直線行程に合わせてコンバイン1の位置を移動するように制御する。例えば、行程移動部63は、株ならいセンサ17の検出結果に基づいて未刈領域の穀稈の条列に対するコンバイン1の位置を検出し、検出したコンバイン1の位置が修正後の第1直線行程に適合するように、動力部8並びに走行部2を制御してコンバイン1を移動する。
【0063】
また、行程移動部63は、自動刈取走行の実行中に、コンバイン1の位置が手動操作によって調整されると、第1直線行程を調整後のコンバイン1の位置に応じて移動(位置補正)するように走行経路を修正する。
【0064】
行程補正部64は、行程移動部63によって自動刈取走行の作業中の第1直線行程が移動されると、その移動に応じて、未刈領域にある走行経路の他の直線行程を補正する。具体的には、行程補正部64は、移動後の第1直線行程の自動刈取走行が終了して第1直線行程の終点が決定したときに、第1直線行程に隣接する他の直線行程(以下、第2直線行程と称する)を補正する。なお、行程補正部64は、第1直線行程の自動刈取走行が終了した後、第2直線行程の自動刈取走行が開始される前に、所定のタイミングで自動的に第2直線行程を補正してもよく、あるいは、操縦部9の自動運転操作部31又は携帯端末53の手動操作に応じて第2直線行程を補正してもよい。
【0065】
行程補正部64は、移動後の第1直線行程の終点が、移動前に比べて、進行方向に交差する左右方向の一方(一方向)に移動している場合、第2直線行程を同じ一方向に傾けて補正する。例えば、行程補正部64は、第2直線行程を、第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線と平行になるように補正する。換言すれば、行程補正部64は、移動前後の第1直線行程の終点の移動と同様にして、第2直線行程の端点を移動して補正してよい。あるいは、移動後の第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線が、移動前の第1直線行程に比べて所定の傾き角度で傾いているところ、行程補正部64は、この傾き角度より大きい角度で、第2直線行程を傾けて補正してもよい。
【0066】
なお、行程補正部64は、第2直線行程の始点及び終点のうち、第1直線行程の始点と進行方向において同じ側にある一端点を固定して、他端点が一方向に移動するように、第2直線行程を傾けて補正するとよい。あるいは、行程補正部64は、第1直線行程の自動刈取走行を終了したときの未刈領域に基づいて、穀稈の残存のないように、第2直線行程の固定点を始点から終点までの所定の位置に設定してよい。行程補正部64は、第1直線行程に隣接する第2直線行程だけでなく、後続の直線行程のそれぞれについて同様の補正を行ってよい。
【0067】
次に、コンバイン1によって枕地基準の回り刈りの走行経路を自動刈取走行する場合に、作業中の第1直線行程の移動及び隣接する第2直線行程の補正を行う第1動作例を説明する。図4は、圃場F1の未刈領域A1の自動刈取走行を行うために、未刈領域A1の周囲の枕地H1の内周(未刈領域A1の外周内側)に沿って直線行程R1の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路P1を設定した例を示す。回り刈りの走行経路P1では、未刈領域A1の各辺で、同じ進行方向の直線行程R1が所定の刈取幅の間隔を空けて平行に配列されている。
【0068】
予め設定された走行経路P1の第1直線行程R1aの自動刈取走行において、例えば、第1直線行程R1aと未刈の穀稈の条列とのずれを、第1直線行程R1aの作業途中で認識すると、作業者は、操縦部9の自動運転操作部31の移動スイッチを操作してコンバイン1の移動を指示する。
【0069】
行程移動部63は、自動運転操作部31の移動スイッチの操作に応じて、第1直線行程R1aのうち、移動指示以降の部分を平行移動させて走行経路を修正する。このとき、未刈の穀稈の条列の方へ第1直線行程R1aを移動させるとよい。図4では、移動指示以降の第1直線行程R1aについて、移動前の状態を破線で示し、移動後の状態を実線で示す。このとき、第1直線行程R1aの終端が移動しているので、行程移動部63は、回り刈りにおいて第1直線行程R1aの終端に連続する他の直線行程の始端の位置を、第1直線行程R1aの終端の位置に合わせて補正するとよい。また、行程移動部63は、移動後の第1直線行程R1aに合わせてコンバイン1の位置を移動させる。
【0070】
次に、移動後の第1直線行程R1aの自動刈取走行が終了すると、行程補正部64は、回り刈りの走行経路P1において第1直線行程R1aよりも内側に隣接する第2直線行程R1bを、第1直線行程R1aの始点及び終点を結ぶ直線と平行になるように補正する。このとき、第2直線行程R1bの終端が移動しているので、行程補正部64は、第2直線行程R1bの終端に連続する他の直線行程の始端の位置を、第2直線行程R1bの終端の位置に合わせて補正するとよい。なお、行程補正部64は、未刈領域の各直線行程R1のうち、補正した第2直線行程R1bよりも更に内側に隣接する各直線行程R1についても、第2直線行程R1bと同様にして、第1直線行程R1aと平行になるように補正するとよい。
【0071】
次に、コンバイン1によって2点間直線基準の往復刈りの走行経路を自動刈取走行する場合に、作業中の第1直線行程の移動及び隣接する第2直線行程の補正を行う第2動作例を説明する。図5は、圃場F2の未刈領域A2の自動刈取走行を行うために、未刈領域A2に設定された始点S及び終点Eを直線で結ぶ基準線Lを基準にして、基準線Lを平行させた直線に対応する複数の直線行程R2を往復する往復刈りの走行経路P2を設定した例を示す。往復刈りの走行経路P2では、複数の直線行程R2が、所定の刈取幅の間隔を空けて平行に配列されている。走行経路P2は、条方向に交差する条の配列方向において一端側の直線行程R2を一方向に走行した後、枕地を走行して他端側へ移動し、他端側の直線行程R2を他方向(一方向と逆方向)に走行する往復走行を行うように構成される。走行経路P2において複数の直線行程R2の処理順は、配列方向の両端側から中央側に向かって設定され、そのため、開始行程は配列方向の一端側に設定され、最終行程は配列方向の中央側に設定される。
【0072】
予め設定された走行経路P2の第1直線行程R2aの自動刈取走行において、例えば、第1直線行程R2aと未刈の穀稈の条列とのずれを、第1直線行程R2aの作業途中で認識すると、作業者は、操縦部9の自動運転操作部31の移動スイッチを操作してコンバイン1の移動を指示する。
【0073】
行程移動部63は、自動運転操作部31の移動スイッチの操作に応じて、第1直線行程R2aのうち、移動指示以降の部分を平行移動させて走行経路を修正する。このとき、未刈の穀稈の条列の方へ第1直線行程R2aを移動させるとよい。図5では、移動指示以降の第1直線行程R2aについて、移動前の状態を破線で示し、移動後の状態を実線で示す。また、行程移動部63は、移動後の第1直線行程R2aに合わせてコンバイン1の位置を移動させる。
【0074】
次に、移動後の第1直線行程R2aの自動刈取走行が終了すると、行程補正部64は、往復刈りの走行経路P2において第1直線行程R2aに隣接する第2直線行程R2bを、第1直線行程R2aの始点及び終点を結ぶ直線と平行になるように補正する。なお、行程補正部64は、未刈領域の各直線行程R2のうち、補正した第2直線行程R2bよりも更に配列方向の中央側に隣接する各直線行程R2も、第2直線行程R2bと同様にして、第1直線行程R2aと平行になるように補正するとよい。また、往復刈りの走行経路P2では、隣り合う最終の直線行程R2とその直前の直線行程R2とが互いに異なる進行方向となり、行程補正部64は、当該直前の直線行程R2を第2直線行程R2bとして、第1直線行程R2aと平行になるように補正する場合がある。この場合、行程補正部64は、最終の直線行程R2についても、第2直線行程R2bと同様にして、第1直線行程R2aと平行になるように補正するとよい。
【0075】
上記した行程補正部64による走行経路の補正例では、移動した第1直線行程に隣接する第2直線行程の全体が、第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線の全体と平行になるように補正する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の補正例では、行程補正部64は、第2直線行程の少なくとも一部を、第1直線行程の移動開始点及び移動終了点を結ぶ直線と平行になるように補正してもよい。
【0076】
他の補正例について、図6を参照して説明する。図6は、圃場F3の未刈領域A3の自動刈取走行を行うために、未刈領域A3の周囲の枕地H3の内周(未刈領域A1の外周内側)に沿って直線行程R3の周回を中央側にずらしながら繰り返す回り刈りの走行経路P3を設定した例を示す。
【0077】
他の補正例では、行程移動部63によって第1直線行程R3aを条方向に交差する条の配列方向に移動したときの移動開始点M1と移動終了点M2とを記憶部51等に記憶しておく。
【0078】
行程補正部64は、第1直線行程R3aの移動開始点M1及び移動終了点M2の条方向の座標を、第2直線行程R3bの補正開始点N1及び補正終了点N2の条方向の座標に設定する。また、行程補正部64は、第1直線行程R3aの移動開始点M1から移動終了点M2への傾斜角度を、第2直線行程R3bの補正開始点N1と補正終了点N2との間に設定する。換言すれば、行程補正部64は、移動終了点M2の配列方向への変位を補正終了点N2に設定する。更に、行程補正部64は、補正終了点N2以降の第2直線行程R3bの配列方向の座標を、補正終了点N2と等しく設定する。
【0079】
これにより、行程補正部64は、第1直線行程R3aの移動部分(すなわち、移動開始点M1及び移動終了点M2間の部分)に対応する第2直線行程R3bの補正部分(すなわち、補正開始点N1及び補正終了点N2間の部分)のみを、第1直線行程R3aの移動開始点M1及び移動終了点M2を結ぶ直線と平行になるように傾けて補正する。
【0080】
なお、図6に示すように、回り刈りの走行経路P3では、中央側に向かうに連れて直線行程R3の条方向の長さが短くなるため、第2直線行程が第1直線行程の移動部分に対応する条方向の座標に達していない場合には、その第2直線行程を補正しなくてもよい。
【0081】
本実施形態のコンバイン1によれば、走行パターンの種類や基準情報の種類に拘わらず、行程移動部63は作業中の第1直線行程を移動して走行経路を修正することができ、行程補正部64は第1直線行程の移動に応じて第2直線行程を適切に補正することができる。
【0082】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、制御装置50を備えていて、制御装置50は、走行経路作成部61、自動運転制御部62、行程移動部63、行程補正部64として機能する。走行経路作成部61は、圃場の未刈領域において少なくとも第1直線行程と第1直線行程に平行して隣接する第2直線行程とを有する走行経路を作成する。自動運転制御部62は、走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御する。行程移動部63は、第1直線行程の自動刈取走行の実行中に、第1直線行程を進行方向と交差する方向に移動して走行経路を修正する。行程補正部64は、第1直線行程の移動によって第1直線行程が一方向に移動した場合に、第2直線行程の少なくとも一部を同じ一方向へ傾けて補正する。
【0083】
例えば、行程補正部64は、第1直線行程の移動によって第1直線行程の終点が一方向に移動した場合に、第2直線行程を同じ一方向へ傾けて補正するとよい。
【0084】
本実施形態のコンバイン1は、自動刈取走行の作業中の第1直線行程を移動した場合、隣接する第2直線行程についても補正を行うので、直線行程を作業する毎に修正処理を行う必要がない。そのため、直線行程を作業する毎に作業者が各直線行程の修正処理の判断や操作を行う必要がなく、作業者にかかる手間を軽減することができる。
【0085】
ところで、コンバイン1の自動刈取走行の作業中の第1直線行程を移動した場合に、隣接する第2直線行程を単に平行移動するだけでは、刈取されない穀稈が残存する問題が生じてしまう。しかしながら、本実施形態のコンバイン1は、第1直線行程の移動による傾きに合わせて第2直線行程を傾けて補正するので、平行して配列された直線行程をまとめて同様に補正することができる。そのため、穀稈を残存することなく刈取作業するように走行経路を修正することができる。
【0086】
このように、本発明によれば、自動刈取走行を行う直線行程を途中で移動する場合に、隣接する他の直線行程を適切に補正することができるコンバイン1を提供することができる。
【0087】
また、他の実施形態では、コンバイン1において、操縦部9の自動運転操作部31は、行程移動部63によって自動刈取走行の途中で作業中の第1直線行程を移動した場合に、隣接する第2直線行程を補正するか否かを選択する補正選択部として機能する。補正選択部としての自動運転操作部31は、例えば、第2直線行程を補正するか否かの補正選択情報(補正あり又は補正なし)を選択可能な補正選択画面をタッチパネルに表示する。自動運転操作部31は、補正選択画面の操作に応じて入力された補正選択情報を制御装置50へ送信する。
【0088】
補正選択部は、第1直線行程の自動刈取走行が終了した後、第2直線行程の自動刈取走行が開始されるまでの所定のタイミングで、例えば、第2直線行程の自動刈取走行の開始時点で、補正選択画面を表示する。なお、自動直進走行モードが設定されている場合、自動運転操作部31は、補正選択画面を介した選択操作がされるまで、開始スイッチの操作を不能にし、補正選択画面を介した選択操作がされた後、開始スイッチの操作を可能にする。
【0089】
このような他の実施形態において、行程補正部64は、補正選択部としての自動運転操作部31から受信した補正選択情報が補正ありを示す場合、第1直線行程に隣接する第2直線行程の補正を行う。一方、補正選択情報が補正なしを示す場合、行程補正部64は、第2直線行程の補正を行わない。
【0090】
これにより、作業者は、任意に移動した第1直線行程以外の他の第2直線行程等については、補正の要否を任意に選択することができる。そのため、作業者の意図に合わせて自動刈取走行を行うことができる。
【0091】
更に、他の実施形態では、補正選択部としての自動運転操作部31は、行程移動部63によって第1直線行程を移動した場合に、移動前の第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線と、移動後の第1直線行程の始点及び終点を結ぶ直線との間の傾き角度を判定する。補正選択部は、移動前後の第1直線行程の傾き角度が所定角度以上傾いた場合に、隣接する第2直線行程の補正ありの選択を可能にする。一方、傾き角度が所定角度未満である場合、補正選択部は、第2直線行程の補正ありの選択を不能にし、補正選択画面を表示せず、行程補正部64による第2直線行程の補正を行わないようにする。なお、第1直線行程の傾き角度と比較する所定角度は、直線行程の進行方向の長さが長いほど小さな角度に設定し、直線行程の進行方向の長さが短いほど大きな角度に設定するとよく、作業者によって任意に設定してもよい。
【0092】
これにより、第1直線行程の移動が、傾き角度が所定角度以上になるほど比較的大きい場合には、自動刈取走行に不具合が生じていると判断して、第2直線行程の補正の機会を設けることができる。一方、第1直線行程の移動が、傾き角度が所定角度未満であるほど比較的小さい場合には、他の直線行程の作業に与える影響が少ないと判断して、第2直線行程の補正の要否を選択する手間を省くことができる。
【0093】
あるいは、他の実施形態では、補正選択部としての自動運転操作部31は、行程移動部63によって第1直線行程を移動した場合に、移動前の第1直線行程の終点の位置と、移動後の第1直線行程の終点の位置との移動距離を判定してもよい。この場合、補正選択部は、移動前後の第1直線行程の終点が所定距離以上移動した場合に、隣接する第2直線行程の補正ありの選択を可能にする。一方、第1直線行程の終点の移動距離が所定距離未満である場合、補正選択部は、第2直線行程の補正ありの選択を不能にし、補正選択画面を表示せず、行程補正部64による第2直線行程の補正を行わないようにする。なお、判定する所定距離は、例えば、所定条数の刈幅に設定してよく、作業者によって任意に設定してもよい。
【0094】
また、他の実施形態では、補正選択部としての自動運転操作部31は、行程移動部63によって第1直線行程を移動した場合に、隣接する第2直線行程を補正するか否かの選択を受け付ける手法として、補正前の第2直線行程と補正後の第2直線行程とを異なる表示方法でタッチパネルに表示して、何れか一方を選択可能にするとよい。補正選択部は、上記した補正選択画面に圃場マップを表示すると共に、圃場マップ上に補正前の第2直線行程と補正後の第2直線行程とを選択可能に表示してよい。補正選択部は、補正前の第2直線行程が選択された場合には、補正選択情報を補正なしに設定する一方、補正後の第2直線行程が選択された場合には、補正選択情報を補正ありに設定する。例えば、補正選択部は、異なる線種、異なる線色、異なる線太さ、異なる濃淡等によって補正前の第2直線行程と補正後の第2直線行程とを識別可能に表示する。
【0095】
また、補正選択部は、補正前の第2直線行程と補正後の第2直線行程とを仮選択可能に表示していて、何れかの行程が仮選択された後、確定ボタン等の確定操作に応じて、仮選択されている補正前の第2直線行程又は補正後の第2直線行程の選択を確定して、対応する補正選択情報を設定する。更に、補正選択部は、仮選択されている補正前の第2直線行程又は補正後の第2直線行程の刈幅を、補正選択画面の圃場マップ上に表示するとよい。圃場マップでは、圃場、未刈領域、枕地、走行経路等が所定の縮小率で縮小されて表示されているところ、補正選択部は、仮選択されている第2直線行程の進行方向長さ及び刈幅の範囲を示すフレーム等を同じ縮小率で縮小して、圃場上の位置を合わせて表示する。
【0096】
これにより、作業者は、補正前の第2直線行程と補正後の第2直線行程とを比較して確認しながら、第2直線行程の補正が必要か否かを判断して選択することができる。
【0097】
上記した実施形態では、自脱型コンバインで構成されるコンバイン1の例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、コンバイン1は、普通型コンバインで構成されてもよい。
【0098】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うコンバイン及び走行経路補正方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
31 自動運転操作部(補正選択部)
32、54 表示部
50 制御装置
51 記憶部
52 通信部
53 携帯端末
60 圃場情報設定部
61 走行経路作成部
62 自動運転制御部
63 行程移動部
64 行程補正部
P1、P2、P3 走行経路
R1a、R2a、R3a 第1直線行程
R1b、R2b、R3b 第2直線行程
図1
図2
図3
図4
図5
図6