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特許7534949効率的な伝送路推定を可能とする基地局装置、制御方法、およびプログラム
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  • 特許-効率的な伝送路推定を可能とする基地局装置、制御方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】効率的な伝送路推定を可能とする基地局装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0452 20170101AFI20240807BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240807BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20240807BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240807BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20240807BHJP
   H04W 72/20 20230101ALI20240807BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240807BHJP
【FI】
H04B7/0452 110
H04B7/06 102
H04B7/06 100
H04W28/18 110
H04W72/0453
H04W24/10
H04W72/20
H04W16/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020211553
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098166
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】要海 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍司
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-203619(JP,A)
【文献】特表2016-528776(JP,A)
【文献】特表2012-531843(JP,A)
【文献】特表2015-513238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0452
H04B 7/06
H04W 28/18
H04W 72/0453
H04W 24/10
H04W 72/20
H04W 16/28
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
前記基地局装置との間の伝送路の特性が共通する複数の端末装置が共通のグループに属するように端末装置をグループ化するグループ化手段と、
1つのグループに属する複数の端末装置のうち、所定の信号を送信すべき端末装置に、当該所定の信号の送信を指示する指示手段と、
前記1つのグループに属する端末装置のうちの前記指示を受信した端末装置によって送信された前記所定の信号に基づいて伝送路の状態を推定する推定手段と、
前記1つのグループに属し、前記所定の信号を送信した端末装置と異なる他の端末装置の通信において、前記所定の信号に基づいて推定された伝送路の状態を利用する利用手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記指示手段は、前記1つのグループに属する複数の端末装置に対して、使用可能な周波数帯域のうちのそれぞれ異なる周波数部分において前記所定の信号を送信するように指示し、
前記推定手段は、前記複数の端末装置によって送信された前記所定の信号に基づいて、前記1つのグループに属する端末装置のそれぞれのための通信に適用される伝送路の状態を、前記周波数部分ごとに推定する、
ことを特徴とする請求項に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記指示手段は、前記使用可能な周波数帯域が分割されることにより得られる複数の前記周波数部分のそれぞれにおいて前記所定の信号を送信すべき端末装置を前記1つのグループに属する端末装置の中から選択して、選択された端末装置に対して対応する前記周波数部分を指定して前記所定の信号を送信するように指示する、ことを特徴とする請求項に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記指示手段は、所定の時間範囲内に前記使用可能な周波数帯域の全域において前記所定の信号が送信されるように、複数の前記周波数部分のそれぞれにおいて前記所定の信号を送信すべき端末装置を選択する、ことを特徴とする請求項に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記指示手段は、前記周波数部分の数に等しい数の端末装置が前記所定の信号を送信するように、複数の前記周波数部分のそれぞれにおいて前記所定の信号を送信すべき端末装置を選択する、ことを特徴とする請求項又はに記載の基地局装置。
【請求項6】
前記指示手段は、共通の無線リソースを用いて前記1つのグループに属する複数の端末装置に前記所定の信号を並行して送信させるように当該複数の端末装置に指示する、ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記指示手段は、前記1つのグループに属する1つの端末装置から前記所定の信号が送信されるときに当該所定の信号を所定の無線品質レベルで受信することができない場合に、前記共通の無線リソースを用いて前記1つのグループに属する複数の端末装置に前記所定の信号を並行して送信させるように当該複数の端末装置に指示する、ことを特徴とする請求項に記載の基地局装置。
【請求項8】
前記指示手段は、前記所定の信号に関連付けられた所定の周波数帯域幅で前記1つのグループに属する1つの端末装置から当該所定の信号が送信されるときに当該所定の信号を前記所定の無線品質レベルで受信することができない場合に、前記共通の無線リソースを用いて前記1つのグループに属する複数の端末装置に前記所定の信号を並行して送信させるように当該複数の端末装置に指示する、ことを特徴とする請求項に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記グループ化手段は、所定期間にわたって、複数の端末装置のためのアンテナウェイトが相互に共通する場合、又は、複数の端末装置のそれぞれのためのアンテナウェイトの差が所定レベル以下である場合に、当該複数の端末装置が同じグループに属するように前記グループ化を行う、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記所定の信号は、Sounding Reference Signal(SRS)である、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項11】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記基地局装置との間の伝送路の特性が共通する複数の端末装置が共通のグループに属するように端末装置をグループ化することと、
1つのグループに属する複数の端末装置のうち、所定の信号を送信すべき端末装置に、当該所定の信号の送信を指示することと、
前記1つのグループに属する端末装置のうちの前記指示を受信した端末装置によって送信された前記所定の信号に基づいて伝送路の状態を推定することと、
前記1つのグループに属し、前記所定の信号を送信した端末装置と異なる他の端末装置の通信において、前記所定の信号に基づいて推定された伝送路の状態を利用することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1から1のいずれか1項に記載の基地局装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いてビームを形成して通信する際の伝送路推定の効率化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の技術分野において、スループットの向上や通信容量の拡大のために、複数のアンテナを用いて空間リソースを有効活用する技術が知られている。この技術は、例えば、多入力多出力(MIMO)やアンテナダイバーシティを含む。セルラ通信システムでは、基地局装置が、端末装置から送信された上りリンクの所定の信号(例えば、SRS(Sounding Reference Signal))に基づいて伝送路の状態を推定することができる。そして、基地局装置は、その推定値に基づいて、上りリンク又は下りリンクにおいて使用するビームを決定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多数の端末装置のそれぞれに対して適切なビームを形成するには、各端末装置について伝送路推定を行う必要がある。しかしながら、多数の端末装置のそれぞれから伝送路推定のために所定の信号を送信させるには、各端末装置に対して無線リソース(周波数リソース・時間リソース)を割り当てる必要があり、周波数利用効率が大幅に劣化してしまいうる。
【0004】
本発明は、多数の端末装置のための効率的な伝送路推定手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による基地局装置は、前記基地局装置との間の伝送路の特性が共通する複数の端末装置が共通のグループに属するように端末装置をグループ化するグループ化手段と、1つのグループに属する複数の端末装置のうち、所定の信号を送信すべき端末装置に、当該所定の信号の送信を指示する指示手段と、前記1つのグループに属する端末装置のうちの前記指示を受信した端末装置によって送信された前記所定の信号に基づいて伝送路の状態を推定する推定手段と、前記1つのグループに属し、前記所定の信号を送信した端末装置と異なる他の端末装置の通信において、前記所定の信号に基づいて推定された伝送路の状態を利用する利用手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多数の端末装置のための伝送路推定を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】基地局装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】基地局装置の機能構成例を示す図である。
図4】基地局装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば第5世代(5G)のセルラ通信システムであり、例えば1つ以上のアンテナを有する基地局装置101と、例えば複数の端末装置を含んだ端末装置群102および端末装置群103とを含んで構成される。なお、端末装置群102は、基地局装置101との間の伝送路の状態が概ね共通する複数の端末装置を含む端末装置群である。また、端末装置群103も、基地局装置101との間の伝送路の状態が概ね共通する複数の端末装置を含む端末装置群であるが、端末装置群102とは伝送路の状態が共通しない。なお、端末装置群に含まれる各端末装置は、1つ以上のアンテナを有する。本無線通信システムでは、基地局装置101と端末装置との少なくともいずれかが、基地局装置101とのその端末装置との間の伝送路の状態に応じたアンテナウェイトを用いて、ビームを形成して通信を行う。なお、本実施形態及び添付の特許請求の範囲を通じて、基地局装置101と端末装置との間の伝送路の状態とは、基地局装置101が有する1つ以上のアンテナのそれぞれと、端末装置が有する1つ以上のアンテナのそれぞれとの間の伝送路の状態を示す。例えば、基地局装置101がアンテナをN本有し、端末装置がアンテナをM本有する場合、N×M個の伝送路の状態が推定される。基地局装置101は、例えば、伝送路の状態の推定値に基づいて、基地局装置101又は端末装置の1つ以上のアンテナのそれぞれにおいて送信対象の無線フレームに乗じるウェイトを計算し、そのウェイトを乗じた送信対象の無線フレームを複数のアンテナから並行して送出する。なお、送信側の装置は、例えば、受信側の装置が複数のアンテナを有する場合には、複数のデータストリームを並行して送信することができる。すなわち、基地局装置101と端末装置との間で、双方が複数のアンテナを用いて、複数のストリームを送受信するMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術を使用することが可能である。この手法では、同じ周波数帯及び時間において、空間的に複数のデータストリームが多重されて送信されうる。この場合、例えば、送信アンテナ数×受信アンテナ数のアンテナウェイト行列(プリコーディング行列)に、各データストリームを示すベクトルを乗じることにより、各送信アンテナで送信すべきデータストリームのベクトルが生成される。そして、送信側の装置の複数のアンテナのそれぞれが、そのベクトルのうちの対応する要素を送信する。これによれば、一例において、受信側の装置の各アンテナで受信された信号から、送信された複数のストリームを高品質に抽出することが可能となる。
【0010】
基地局装置101は、端末装置から送信されたSRS(Sounding Reference Signal)などの所定の無線信号に基づいて伝送路の状態を推定し、その伝送路推定値に基づいて、自装置が下りリンクでの通信で使用すべきプリコーディング行列や、端末装置が上りリンクでの通信で使用すべきプリコーディング行列を算出することができる。しかしながら、第5世代(5G)のセルラ通信システムでは、従来システムと比べて広い周波数帯域幅を使用するため、端末装置が、SRSのようにその使用可能な周波数帯域の全体にわたって信号を送信する場合、使用可能な送信電力が広い周波数帯域で分散して使用される。一例において、ロングタームエボリューション(LTE)では、20MHzの周波数帯域を使用可能であったのに対して、5Gでは、100MHzの周波数帯域を使用可能である。このため、端末装置から送信された信号が基地局装置に十分な電力で到達するには、端末装置が基地局装置から一定の距離の範囲内に存在する必要がある。これに対して、端末装置が使用可能な周波数帯域を分割して得られる一部の周波数部分でのみSRSを送信するようにすることができる。一例において、SRSは、使用可能な周波数帯域が最大4つに分割された周波数部分において送信されるようにすることができる。しかしながら、この場合、端末装置は、分割された周波数部分においてそれぞれSRSを送信する必要があり、その分だけ、使用可能な周波数帯域の全体における伝送路の状態の推定が完了するまでの時間が長期化してしまう。すなわち、例えばSRSの送信機会が所定の周期で到来する場合、端末装置は、その周期ごとに1つの周波数部分でSRSを送信するため、使用可能な周波数帯域の全域で伝送路推定が完了するまでには、分割によって得られた周波数部分の個数にその周期の長さを乗じた期間が少なくとも必要となる。
【0011】
また、端末装置が使用可能な周波数帯域の全域において一度にSRSを送信することができたとしても、多数の端末装置のそれぞれに対してSRS送信用の無線リソース(周波数リソース及び時間リソース)を割り当てると、その無線リソースの量が膨大となってしまい、ユーザデータのスループットの低下等の問題が生じうる。さらに、上述のように、SRSの送信の際に、使用可能な周波数帯域を最大で4分割することができるが、この分割後に得られる周波数部分の帯域幅が依然として従来規格よりも広く、十分な電力で基地局装置まで届かないことが想定されうる。以下では、端末装置をグループ化してSRS等の伝送路推定用の所定の信号の送受信を行うことによって、これらの問題の少なくともいずれかを解消する。
【0012】
本実施形態の基地局装置101は、自装置の配下に存在する(接続中又は在圏中の)端末装置を、基地局装置101との間の伝送路の特性が共通する複数の端末装置が共通のグループに属するように、グループ化する。基地局装置101は、例えば、所定期間にわたって、基地局装置101との間の通信で使用されるべきアンテナウェイトが相互に共通する複数の端末装置を、1つのグループに属するようにグループ分けを行う。一例において、端末装置は、基地局装置101から受信した伝送路推定用の信号に基づいて、基地局装置101が使用すべきプリコーディング行列を指定するPMI(Precoding Matrix Indicator)を基地局装置101へ通知する。そして、基地局装置101は、所定の期間にわたって同じPMIを報告している複数の端末装置を同じグループとするように、グループ分けを行いうる。また、基地局装置101は、例えば端末装置からの所定の信号に基づいて自装置が使用するアンテナウェイトを計算することができる。このときに、複数の端末装置のそれぞれに対して計算したアンテナウェイトの差が所定レベル以下であり、それらのアンテナウェイトが十分に類似していると判定することができる場合に、基地局装置101は、そのアンテナウェイトに対応する端末装置を同じグループとするように、グループ化を行いうる。一例において、例えば電車やバスなどで移動している複数の端末装置が同じグループに属するようなグループ分けが行われうる。なお、端末装置のグループ化は、例えば、各端末装置との通信に関するPMIやアンテナウェイトに変化がない場合にのみ、行われてもよい。すなわち、通信の品質が安定している場合にのみ、グループ化が行われるようにしてもよい。本実施形態では、一例として、端末装置群102がグループとして扱われ、また、端末装置群103は、端末装置群102と異なる別個のグループとして扱われるものとする。
【0013】
基地局装置101は、グループ化された複数の端末装置のための伝送路推定を、グループ単位で実行する。例えば、1つのグループに属する1つの端末装置が送信したSRSなどの伝送路推定用の所定の信号に基づいて伝送路推定を実行し、その伝送路推定の結果を、そのグループに属する他の端末装置の通信にも適用する。これによれば、例えば、グループごとに1つの端末装置が所定の信号を送信するだけで、そのグループに属する他の端末装置についての伝送路推定を完了することができ、この結果、所定の信号の送信のための無線リソースの量を大幅に削減することができる。なお、基地局装置101は、グループに対して、例えば1つなどの少数の端末装置が所定の信号を送信するように、その少数の端末装置に対してのみ、指示を送信しうる。
【0014】
また、基地局装置101は、1つのグループに属する複数の端末装置のそれぞれに対して、使用可能な周波数帯域の異なる周波数部分において所定の信号を送信するように指示してもよい。この場合、基地局装置101は、その周波数部分ごとに伝送路推定を実行し、周波数部分ごとの伝送路推定の結果を、同じグループに属すると共に所定の信号を送信していない他の端末装置の通信にも適用することができる。周波数部分は、例えば、使用可能な周波数帯域が分割されることによって得られうる。一例において、使用可能な周波数帯域が100MHz幅を有し、その周波数帯域が4分割されて、25MHz幅の4つの周波数部分が形成されうる。そして、この4つの周波数部分のそれぞれに対応する4つの端末装置のみが、その対応する周波数部分において所定の信号を送信するようにしうる。基地局装置101は、1つのグループに属する複数の端末装置の中から、各周波数部分に対応する端末装置を選択し、その選択された端末装置に対して、対応する周波数部分を指定して、所定の信号を送信するように指示しうる。これによれば、使用可能な周波数帯域の一部分である周波数部分に電力を集中させて所定の信号を送信することができるため、基地局装置101は、使用可能な周波数帯域の全域において所定の信号が送信される場合と比して高い電力レベルで所定の信号を受信することができる。この結果、基地局装置101は、広範囲に分布する端末装置からの所定の信号を十分な電力レベルで受信し、伝送路の状態を推定することができるようになる。
【0015】
なお、基地局装置101は、所定の時間範囲内に、使用可能な周波数帯域の全域において所定の信号の送信が完了するように、すなわち、所定の信号をいずれかの端末装置が送信開始してから短い時間のうちに、周波数帯域の全域において所定の信号の送信が完了するように、各周波数部分で所定の信号を送信する端末装置を選択しうる。例えば、同じタイミングで全ての周波数部分において所定の信号が送信されるように、基地局装置101は、そのタイミングで所定の信号を送信可能な状態となっている端末装置を周波数部分の数に等しい数だけ特定し、その特定された端末装置がそれぞれ異なる周波数部分において所定の信号を送信するように指示しうる。なお、これは一例であり、例えば、周波数部分の数より少ない端末装置が選択され、その端末装置の少なくとも一部が複数の周波数部分において所定の信号を送信するようにしてもよい。例えば、2つの端末装置が選択され、その2つの端末装置のそれぞれが、半数の周波数部分において所定の信号を送信するようにしうる。このとき、2つの端末装置は、それぞれ他方の端末装置が所定の信号を送信した周波数部分では所定の信号を送信しないようにしうる。これによれば、1つの端末装置が使用可能な周波数帯域の全域の全ての周波数部分において所定の信号を送信する場合と比して、半分の時間で所定の信号の送信を完了することができる。なお、このように、共通のグループに属する複数の端末装置のための伝送路推定を短期間で完了することを可能とすることにより、伝送路推定を実行する周期を短くすることができ、伝送路推定の精度を向上させることもできる。
【0016】
上述のように、グループに属する1つの端末装置に所定の信号を送信させ、基地局装置101がその所定の信号に基づいて伝送路の状態の推定を実行して、その結果を他の端末装置に適用することで、伝送路推定を効率化することができる。一方で、上述のように使用可能な周波数帯域を分割して周波数部分についてのみ所定の信号を送信するようにしても、その周波数部分の帯域幅が従来規格で使用可能な周波数帯域より広く、単位周波数幅あたりの電力密度が相対的に低くなってしまいうる。この結果、基地局装置101が十分な電力レベルで所定の信号を受信できないことがありうる。これに対して、基地局装置101は、例えば、1つのグループに属する複数の端末装置に対して、共通の無線リソース(同じ周波数リソース及び時間リソース)において、同じ所定の信号を並行して送信するように指示しうる。ここで、これらの複数の端末装置は、共通のグループに属するため、伝送路の状態がほぼ同じとなっている。このため、これらの複数の端末装置が同じ無線リソースで同じ所定の信号を送信することによって、ダイバーシティ送信の効果を得ることができる。この結果、1つの端末装置から送信される所定の信号の電力密度が不十分な場合であっても、複数の端末装置を協働させることによって、電力密度を向上させ、基地局装置101が、それらの複数の端末装置が属するグループに関する伝送路の状態の推定を効率的に実行することができる。
【0017】
なお、複数の端末装置に共通する無線リソースで同じ所定の信号を送信させる際には、使用可能な周波数帯域の全域に対して1つの所定の信号を送信させるようにしてもよい。複数の端末装置が協働することによって電力密度の低下を抑制することができるため、使用可能な周波数帯域の全域にわたって一度に所定の信号を送信したとしても、十分に伝送路の推定を行うことができる場合があるからである。なお、グループに属する複数の端末装置が協働しても、基地局装置101が十分な電力で所定の信号を受信することができない場合に、上述のように、使用可能な周波数帯域を複数の周波数部分に分割して、その周波数部分ごとに所定の信号が送信されるようにしてもよい。
【0018】
また、基地局装置101は、1つのグループに属する1つの端末装置によって所定の信号が送信されるときにその信号を所定の無線品質レベルで受信することができない場合に、そのグループに属する複数の端末装置に共通の無線リソースを用いて並行して所定の信号を送信させるようにしてもよい。すなわち、1つの端末装置による所定の信号の送信によって、基地局装置101が、十分な無線品質レベルでその所定の信号を受信することができる場合には1つの端末装置にその所定の信号を送信させ、無線品質レベルが不十分である場合は、複数の端末装置に所定の信号を送信させる。これにより、所定の信号を送信する端末装置の数を抑制することができ、端末装置の電力消費を抑制することができる。なお、ここでの無線品質は、RSRP(参照信号受信電力)でありうるが、これに限られず、SNR(信号対雑音比)、SINR(信号対雑音及び干渉比)、RSRQ(参照信号受信品質)、受信信号強度などが無線品質として用いられてもよい。なお、無線品質は、伝送路損失の大きさによって表されてもよく、この場合、伝送路損失が小さいほど、無線品質レベルが高いと判定される。
【0019】
なお、基地局装置101は、例えば、所定の信号を送信可能な最小の帯域幅の周波数帯域において1つの端末装置がその所定の信号を送信した際の無線品質レベルが所定の無線品質レベルに達しない場合に、その端末装置が属しているグループに属する複数の端末装置に共通の無線リソースを用いて並行して所定の信号を送信させるようにしてもよい。なお、最小の帯域幅の周波数帯域は一例であり、所定の信号に関連付けられた所定の周波数帯域幅で所定の信号が送信されるときの無線品質レベルが所定の無線品質レベルに達するか否かが判定されてもよい。所定の周波数帯域幅は、一例において使用可能な周波数帯域の全域の周波数帯域幅であってもよい。
【0020】
このように、グループ単位で伝送路推定のための所定の信号の送信と、その所定の信号に基づく伝送路推定値のグループに属する複数の端末装置への適用が行われることにより、多数の端末装置のそれぞれが個別に所定の信号を送信することを防ぐことができる。また、伝送路の状態が共通する端末装置が同じグループに属するようなグループ化により、そのグループに属する複数の端末装置が同じ無線リソースで所定の信号を送信することで、送信ダイバーシティの効果を得ることが可能となる。これにより、基地局装置101において、十分な無線品質レベルで所定の信号を受信することを可能とし、高精度な伝送路推定を行うことが可能となる。
【0021】
(装置構成)
続いて、上述のような基地局装置101のハードウェア構成例について図2を用いて説明する。基地局装置101は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、基地局装置101の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置101が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路によって構成される。なお、図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置101は、例えば、LTE用および5G用の無線通信回路および有線通信用の有線通信回路などの、複数の通信回路を有しうる。
【0022】
図3に、本実施形態に係る基地局装置101の機能構成例を示す。基地局装置101は、その機能構成例として、例えば、グループ化部301、伝送路推定部302、通信制御部303、及び、送信指示部304を有する。なお、図3は、基地局装置101が有する機能のうちの、本実施形態の説明に関連する部分のみを示しており、基地局装置101は、一般的なセルラ通信システムの基地局装置としての機能を当然に有する。また、基地局装置101は、図3に示した機能及び基地局装置としての汎用機能以外の機能を有してもよい。また、図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0023】
グループ化部301は、基地局装置101の配下の端末装置を、伝送路の状態が共通する端末装置が同一のグループに属するようにグループ化を行う。グループ化部301は、例えば、配下の複数の端末装置から受信したPMIが所定期間にわたって一致していた場合に、その複数の端末装置を1つのグループに含める。なお、グループ化部301は、例えば定期的にグループ化すべき端末装置が存在するか、新規のグループを形成するべき状態であるか、および、既存のグループを維持するかを判定しうる。グループ化部301は、例えば、グループ化によって形成されたグループを管理する。グループ化部301は、例えば、グループごとに、そのグループに属する端末装置の識別情報を管理しうる。
【0024】
伝送路推定部302は、端末装置が送信した所定の信号に基づいて伝送路推定を実行する。伝送路推定は、従来の手法と同様にして行われうる。なお、伝送路推定部302は、グループ化部301がグループを形成している場合に、そのグループに属している一部の端末装置が送信した所定の信号に基づいて伝送路推定を行う。そして、伝送路推定部302は、その伝送路推定の結果を、グループに対する伝送路推定値として記憶する。通信制御部303は、伝送路推定部302によって推定された伝送路推定値を用いてビームを形成し、端末装置と通信を行う。このとき、通信制御部303は、例えばグループ化部301がグループを形成している場合に、そのグループに属している端末装置が送信した所定の信号に基づいて推定した伝送路推定値を、そのグループに属する他の端末装置の通信にも利用する。
【0025】
送信指示部304は、端末装置に対して、SRS等の伝送路推定用の所定の信号の送信を指示する。送信指示部304は、例えば、グループ化部301がグループを形成している場合には、例えば、そのグループに属する一部の端末装置のみに対して所定の信号を送信するように指示する。なお、送信指示部304は、例えば、周波数成分ごとに一部の端末装置が所定の信号を送信するように指示を行いうる。すなわち、送信指示部304は、グループに属する全ての端末装置に対して、それぞれ異なる周波数部分で所定の信号を送信するように指示してもよい。また、送信指示部304は、例えば、同じ無線リソースで同じ所定の信号を送信するように、グループ内の複数の端末装置に指示してもよい。なお、グループ内でどのように所定の信号が送信されるべきかの例については、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。いずれの場合であっても、送信指示部304は、所定の信号を送信すべきグループ内の端末装置に対して、所定の信号の送信を指示する。
【0026】
なお、送信指示部304は、端末装置に所定の信号の送信を指示する際に、どの無線リソース(周波数リソース・時間リソース)においてその所定の信号を送信すべきかのマッピングの情報を端末装置に通知する。一例において、端末装置と基地局装置101との間の伝送路損失に基づいて、伝送路損失が大きい端末装置に対しては相対的に多くの無線リソースを所定の信号の送信用に割り当て、伝送路損失が小さい端末装置に対しては相対的に少ない無線リソースを所定の信号の送信用に割り当てる。そして、送信指示部304は、その割り当てた所定の信号が、基地局装置101において、例えば復調可能な程度の十分な無線品質レベルで受信可能であるかを判定する。送信指示部304は、無線品質レベルが不十分であると判定した場合に、同じリソースを用いて、複数の端末装置に所定の信号を送信させるような指示を出力する。また、送信指示部304は、無線品質レベルが十分であると判定した場合に、各周波数リソースにおいて1つの端末装置に所定の信号を送信させるような指示を出力する。そして、送信指示部304は、そのように複数の端末装置が同じ無線リソースで所定の信号を送信するように、使用可能な周波数帯域の全域における各無線リソースで所定の信号を送信すべき端末装置を割り当てる。これにより、効率的な伝送路推定が可能となる。
【0027】
なお、基地局装置101は、例えばグループ化や所定の信号の送信指示(所定の信号の送信に関する設定)を行ってから一定時間が経過した後に、再度、グループ化の判定及び実行と、所定の信号の送信設定を再度実行しうる。すなわち、基地局装置101は、一定時間が経過する前は、設定の再実行を行わないようにしうる。これにより、設定処理が頻発することを防ぎ、ネットワークの負荷を低減することができる。
【0028】
(処理の流れ)
続いて、基地局装置101が実行する処理の流れの例について、図4を用いて概説する。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは処理の概要を説明するにとどめ、その詳細については説明を省略する。
【0029】
基地局装置101は、まず、配下に存在する各端末装置について、それらの端末装置から報告されたPMIに基づいて、又は、それらの端末装置が送信したSRS等に基づく計算により、アンテナウェイトを特定する(S401)。なお、アンテナウェイトの特定は一例であり、ここでは、基地局装置101は、複数の端末装置のそれぞれの伝送路の状態が共通するか否かを特定可能な情報を特定しうる。そして、基地局装置101は、例えばS401で特定したアンテナウェイトに基づいて、伝送路の状態が共通する複数の端末装置が同じグループに属するように、端末装置のグループ化を行う(S402)。なお、基地局装置101は、例えば、配下の端末装置のいずれかにおけるアンテナウェイトに変化がないなど、伝送路の状態が安定していると判定した場合に、その端末装置と同様に伝送路の状態が安定していて、その伝送路の状態が共通する他の端末装置が存在するかを判定することにより、それらの端末装置をグループ化するかを判定してもよい。また、基地局装置101は、例えば、グループ化すべき端末装置が存在するか否かを周期的に判定してもよい。
【0030】
基地局装置101は、端末装置をグループ化した場合、そのグループに属する端末装置に対して、グループ単位で伝送路推定が行われるように、一部の端末装置に対してSRS等の所定の信号の送信を指示する(S403)。この指示は、上述の通りであり、例えば、使用可能な周波数帯域が分割されて得られる複数の周波数部分のそれぞれについて、一部の端末装置のみが所定の信号を送信するような、所定の信号を送信する端末装置とその端末装置が所定の信号を送信すべき無線リソースの割り当てが行われうる。また、周波数部分のそれぞれについて、1つの端末装置が所定の信号を送信すると基地局装置101において所定の信号の無線品質レベルが不十分である場合には、同じ無線リソースにおいて複数の端末装置が並行して所定の信号を送信するような、所定の信号を送信する端末装置とその端末装置が所定の信号を送信すべき無線リソースの割り当てが行われうる。
【0031】
そして、基地局装置101は、S403の指示に従って端末装置から送信された所定の信号を受信して、その所定の信号に基づく伝送路推定を実行する(S404)。そして、基地局装置101は、その伝送路推定の結果として得られる伝送路推定値を、グループ内の全端末装置の通信に利用する(S405)。すなわち、S404で得られた伝送路推定値を利用してビームを形成して、所定の信号を送信していない端末装置との間で通信を実行しうる。なお、上述の処理は、基地局装置101ではなく、例えばネットワーク上の制御装置など、他の装置によって実行されてもよい。
【0032】
このように、本実施形態の手法によれば、グループ化された複数の端末装置について、それらの端末装置のそれぞれが所定の信号を送信する頻度を低減し、伝送路推定用の所定の信号のための無線リソースの浪費を防ぐことができる。また、グループ内のいずれかの端末装置からの所定の信号に基づいて伝送路推定がされれば足りるため、伝送路推定が完了するまでの時間を短期化することが可能となる。
【0033】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4