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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】加圧装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 11/00 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
B25B11/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001030
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106189
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 善幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 厚樹
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238900(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105500242(CN,A)
【文献】特開2016-063145(JP,A)
【文献】特開2005-230856(JP,A)
【文献】特開2010-238913(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02226838(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 11/00 - 11/02
B25B 5/16
H05K 3/00
H05K 3/46
B23K 20/00
F27D 3/12
F27D 5/00
B32B 15/01
B32B 37/00 - 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体を加圧して保持する加圧装置であって、
前記積層体が載置される土台部と、
前記土台部に対向して配置され、前記土台部との間で前記積層体を挟持するカバー部と、
前記カバー部上に載置された圧縮バネと、
前記圧縮バネに対し、前記カバー部の反対側に配置された支持部と、
前記支持部に設けられて前記圧縮バネに加圧力を付与する加圧調整部と、
前記土台部に立設された複数の柱部と、前記支持部を前記柱部に着脱自在に固定する支持部取付構造と、を備え、
前記加圧調整部は、前記加圧力を調整可能に前記支持部に取り付けられており、
前記複数の柱部は、前記積層体を囲むように配置されており、
前記支持部は、前記圧縮バネに対向する加圧面と、前記加圧面とは反対側である係止面とを備えており、
前記支持部取付構造は、
前記係止面に当接して前記支持部を固定する係止片と、
前記支持部に設けられ、前記柱部が挿通されるガイド孔と、
前記柱部に設けられ、前記係止片が挿通して保持される係合孔と、を備えている、加圧装置。
【請求項2】
前記加圧調整部は、前記圧縮バネの弾性限度を超えて前記圧縮バネに加圧力を付与可能である、請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記圧縮バネは複数設けられており、
前記カバー部との間で前記複数の圧縮バネを挟持している蓋部を更に備え、
前記加圧調整部は、前記蓋部を介して前記圧縮バネに加圧力を付与している、請求項1または2記載の加圧装置。
【請求項4】
前記圧縮バネと前記支持部との間に配置された上段カバー部と、
前記上段カバー部と前記支持部との間に配置された複数の上段圧縮バネと、を更に備え、
前記加圧調整部は、前記上段圧縮バネに加圧力を付与することで、間接的に前記圧縮バネに加圧力を付与する、請求項1~3のいずれか一項記載の加圧装置。
【請求項5】
前記加圧調整部は、前記支持部から前記圧縮バネに向けて突出する突出部を備え、
前記加圧調整部は、前記突出部の突出量を調整可能に前記支持部に取り付けられている、請求項1~4のいずれか一項記載の加圧装置。
【請求項6】
前記加圧調整部は、前記支持部に螺合して貫通する軸部を備えており、
前記突出部は、前記軸部の一部である、請求項5記載の加圧装置。
【請求項7】
前記圧縮バネは、スプリングワッシャである、請求項1~のいずれか一項記載の加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体を加圧して保持する加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板等に使用される積層体を、加圧した状態で保持する加圧装置が知られている。この種の加圧装置では、加圧する積層体を上下の板材で挟み、更に、上方の板材をコイルスプリングで押圧することで積層体を保持している(特許文献1、2、3参照)。加圧装置は、例えば、加熱炉に供給されて積層体の接合等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-23899号公報
【文献】特開2012-200730号公報
【文献】特開2013-71880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加圧装置において、積層体への加圧はコイルスプリングの圧縮によって行われている。加圧の強度は、コイルスプリングの弾性係数に委ねられるため、加圧力の調整は困難であり、積層体への加圧が不適切になってしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、積層体の適切な加圧が可能であり、更に、適切な加圧状態を安定的に維持できる加圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、積層体を加圧して保持する加圧装置であって、積層体が載置される土台部と、土台部に対向して配置され、土台部との間で積層体を挟持するカバー部と、カバー部上に載置された圧縮バネと、圧縮バネに対し、カバー部の反対側に配置された支持部と、支持部に設けられて圧縮バネに加圧力を付与する加圧調整部と、を備え、加圧調整部は、加圧力を調整可能に支持部に取り付けられている。
【0007】
この加圧装置によれば、加圧調整部によって圧縮バネに付与する加圧力を調整できるので、積層体の適切な加圧が可能である。また、接合等の事後処理によって、積層体の厚み等が変化して寸法変化が生じても、その寸法変化分の誤差(ゆるみ)は圧縮バネの弾性変形によって吸収されるため、積層体の適切な加圧状態を安定的に維持できる。
【0008】
上記の加圧装置において、加圧調整部は、圧縮バネの弾性限度を超えて圧縮バネに加圧力を付与可能である。この加圧装置によれば、圧縮バネの線形加圧領域を超えて圧縮バネに加圧力を付与できるので、より大きな加圧力を付与して積層体を保持することができる。
【0009】
上記の加圧装置において、圧縮バネは複数設けられており、カバー部との間で複数の圧縮バネを挟持している蓋部を更に備え、加圧調整部は、蓋部を介して圧縮バネに加圧力を付与していてもよい。蓋部を介して複数の圧縮バネに一律に加圧力を付与できるので、圧縮バネに加圧力を安定して付与する上で有利である。
【0010】
上記の加圧装置は、圧縮バネと支持部との間に配置された上段カバー部と、上段カバー部と支持部との間に配置された複数の上段圧縮バネと、を更に備え、加圧調整部は、上段圧縮バネに加圧力を付与することで、間接的に圧縮バネに加圧力を付与してもよい。圧縮バネに対して更に上段圧縮バネを配置することにより、ゆるみに対して、より強い加圧力を維持した状態で対応できる。
【0011】
上記の加圧装置において、加圧調整部は、支持部から圧縮バネに向けて突出する突出部を備え、加圧調整部は、突出部の突出量を調整可能に支持部に取り付けられていてもよい。突出量の調整により、加圧力を容易に調整できる。
【0012】
上記の加圧装置において、加圧調整部は、支持部に螺合して貫通する軸部を備えており、突出部は軸部の一部である。軸部により、加圧力をトルク管理しながら調整できる。
【0013】
上記の加圧装置において、土台部に立設された複数の柱部と、支持部を柱部に着脱自在に固定する支持部取付構造と、を更に備え、複数の柱部は、積層体を囲むように配置されていてもよい。積層体を囲むように複数の柱部を配置することにより、積層体に対して偏りなく加圧力を付与するのに有利になる。また、支持部は柱部から離脱させることができるので、積層体を土台部に載置する際、あるいは、土台部から取り除く際に支持部が邪魔にならず、取り扱い易くなる。
【0014】
上記の加圧装置において、支持部は、圧縮バネに対向する加圧面と、加圧面とは反対側である係止面とを備えており、支持部取付構造は、係止面に当接して支持部を固定する係止片と、支持部に設けられ、柱部が挿通されるガイド孔と、柱部に設けられ、係止片が挿通して保持される係合孔と、を備えていてもよい。支持部は、ガイド孔に柱部が挿通するように設置される。支持部は、圧縮バネの反力を受けながら柱部の下方に向けて押し下げられ、係止面が係合孔を超える位置まで達する。この状態で、係止片を係合孔に挿通して係止面に当接させることで支持部を所定位置に容易に固定できる。一方で、係止片を係合孔から引き抜くことで、支持部を柱部から容易に取り外しできる。
【0015】
上記の加圧装置において、圧縮バネは、スプリングワッシャであってもよい。スプリングワッシャを用いることで、安定した加圧力で積層体を保持するのに有利になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積層体の適切な加圧が可能であり、更に、適切な加圧状態を安定的に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る加圧治具の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る加圧治具を組み立てた状態の斜視図であり、部分的に破断して示している。
図3図3は、実施形態に係る加圧治具の断面図であり、図2の破断部分に対応している。
図4図4は、実施形態に係る加圧治具の模式的な側断面図である。
図5図5は、スプリングワッシャに付与する荷重と変位との関係を示すグラフである。
図6図6は、他の実施形態に係る加圧治具の模式的な側断面図である。
図7図7は、更に別の実施形態に係る加圧治具の模式的な側断面図である。
図8図8は、更に別の実施形態に係る加圧治具の模式的な側断面図である。
図9図9は、更に別の実施形態に係る加圧治具の模式的な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1図2図3及び図4に示されるように、実施形態に係る加圧治具1(加圧装置の一例)は、半導体の基板等に使用される積層体Bを加圧保持した状態で窒素連続炉等の加熱炉内に導入される。加熱炉内において、積層体Bは加熱され、ろう付けにより接合される。まず、図4を参照して積層体Bの一例について説明する。
【0020】
図4に示されるように、積層体Bは複数の基板ユニットBaを備えている。なお、図4は、最下段と最上段の基板ユニットBaの構造を詳しく示し、他の基板ユニットBaは、便宜的に省略して示している。複数の基板ユニットBaは、スペーサSを挟んで積層されている。また、接合前の状態において、基板ユニットBaは、セラミック板b2を一対の銅板b1で挟んで形成された積層体構造になっている。積層体Bは、例えば、複数の基板ユニットBa及び複数のスペーサSによって形成されている。本実施形態に係る積層体Bは平面視で矩形であるが、他の形状であってもよい。スペーサSは、基板ユニットBa同士の接合及び基板ユニットBaと加圧治具1との接合を阻止できればよく、本実施形態ではカーボンスペーサを利用している。
【0021】
加圧治具1は、積層体Bが載置される板状のベースプレート2(土台部の一例)と、ベースプレート2に対向して配置されたカバープレート3(カバー部の一例)とを備えている。カバープレート3は、ベースプレート2との間で積層体Bを挟持する。また、加圧治具1は、カバープレート3上に配置された複数のスプリングワッシャ4(圧縮バネの一例)と、複数のスプリングワッシャ4を覆うように被せられ、カバープレート3との間で複数のスプリングワッシャ4を挟持している蓋プレート5(蓋部の一例)と、を備えている。
【0022】
本実施形態に係るカバープレート3と蓋プレート5とは、実質的に同一の形状、及び構造を備えている。具体的には、カバープレート3の上面には、座ぐり31が形成されている。座ぐり31は、スプリングワッシャ4の下部である一部分を収容している。蓋プレート5は、カバープレート3を反転させたような形態であり、蓋プレート5の下面には、座ぐり51が形成されている。蓋プレート5の座ぐり51は、スプリングワッシャ4の上部である一部分を収容している。スプリングワッシャ4を座ぐり31または座ぐり51に収めることにより、スプリングワッシャ4の位置決め、横方向へのずれ防止に有効である。
【0023】
カバープレート3の座ぐり31の深さと蓋プレート5の座ぐり51の深さとを合計した値は、スプリングワッシャ4の密着長よりも小さい。スプリングワッシャ4の密着長とは、基本的にコイルスプリングなどの圧縮バネの密着長に準ずる概念であり、スプリングワッシャ4を線形加圧領域の限界である弾性限度まで圧縮した場合における圧縮方向の長さ(高さ)を意味している。つまり、カバープレート3と蓋プレート5とによってスプリングワッシャ4を弾性限度まで圧縮したとしても、基本的にカバープレート3と蓋プレート5との間には隙間が生じることになる。
【0024】
加圧治具1は、スプリングワッシャ4に対し、カバープレート3の反対側に配置された支持プレート6(支持部の一例)を備えている。換言すると、支持プレート6は、スプリングワッシャ4及び蓋プレート5の上方に配置されている。支持プレート6は、スプリングワッシャ4に対向する下面61(加圧面)と、下面61とは反対側である上面62(係止面)とを備えている。なお、「スプリングワッシャ4に対向する」について、本実施形態のように支持プレート6の下面61とスプリングワッシャ4との間に蓋プレート5などの介在部材が存在する場合には、この介在部材を省略した場合に支持プレート6の下面61とスプリングワッシャ4とが対向する関係になることを意図している。また、仮に、介在部材が存在しない形態の場合には、支持プレート6の下面61とスプリングワッシャ4とが直接的に対向している関係を意味する。
【0025】
なお、本実施形態に係る加圧治具1は、蓋プレート5と支持プレート6との間に配置されたスペーサプレート7を備えている。スペーサプレート7は、積層体Bの厚みによって上下方向に生じる誤差空間を埋めるための部材である。例えば、厚みの異なる複数種類の積層体Bを想定している場合には、蓋プレート5から支持プレート6までの距離(高さ)が略一定となるように、異なる厚みの複数種のスペーサプレート7を準備しておき、積層体Bの厚みに応じて適宜に対応させることができる。スペーサプレート7は省略することができる。
【0026】
ベースプレート2は、例えば矩形状であり、平面視で積層体Bからはみ出た領域、つまり積層体Bに重なっていない張出領域2aを有する。ベースプレート2の張出領域2aには、ベースプレート2の短辺に沿うように複数(例えば、二本)の柱部8が立設されており、長辺に沿うように複数(例えば、二本)の柱部8が立設されている。複数の柱部8は、積層体Bを囲むように配置されている。
【0027】
加圧治具1は、支持プレート6を柱部8に着脱自在に固定する支持部取付構造9を備えている。支持プレート6は、支持部取付構造9により上方への移動を規制された状態で、柱部8に固定されており、柱部8の所定位置に保持されている。
【0028】
支持部取付構造9は、例えば、支持プレート6の上面62に当接して支持プレート6を固定する係止片90と、支持プレート6に設けられ、柱部8が挿通されるガイド孔63と、柱部8の上部に設けられ、係止片90が挿通して保持される係合孔8aと、を備えている。支持部取付構造9は、支持プレート6が下方からの押圧力(反力)を受けた際に係止片90が支持プレート6の上面62に干渉し、支持プレート6の上方への移動を規制する。一方で、係止片90を係合孔8aから抜くと、係止片90による支持プレート6の干渉が解かれ、支持プレート6の上方への移動が可能になり、支持プレート6を柱部8から取り外すことができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る係止片90は、二つ(複数)の係止部91と、係止部91を接続する連結部92を備えている。複数の係止部91は、それぞれ係合孔8aに挿通される。つまり、本実施形態では、単体の係止片90によって複数の係合孔8aのそれぞれを係止させることが可能になり、操作性が向上する。
【0030】
加圧治具1は、支持プレート6に設けられてスプリングワッシャ4に加圧力を付与する加圧調整部10を備えている。加圧調整部10は、支持プレート6に設けられたネジ孔11と、ネジ孔11に螺合するボルト12とを備えている。ボルト12は頭部13と軸部14とを備えており、頭部13にはトルクレンチに係合する切り欠き13aが設けられている。ボルト12の軸部14は、ネジ孔11に螺合する雄ネジを形成する。軸部14の長さは、支持プレート6の厚みよりも長い。軸部14の先端14aを含む一部分は、支持プレート6から下方に向けて突き出している。軸部14の先端14aを含む一部分は、下方のスプリングワッシャ4に向けて突出する突出部15である。軸部14をネジ孔11に螺合する回転数により、突出部15の突出量を調整可能である。
【0031】
ボルト12を支持プレート6のネジ孔11にねじ込んでいくと、軸部14の先端14aは、スペーサプレート7に当接し、蓋プレート5を介してスプリングワッシャ4を押圧する。その結果、ボルト12はスプリングワッシャ4に対して加圧力を付与する。スプリングワッシャ4に付与される加圧力は、基本的に突出部15の突出量に依存する。但し、本実施形態では、弾性限度を超えてスプリングワッシャ4に加圧力を付与することを想定しており、ボルト12をトルク管理することによって加圧力の調整を行っている。
【0032】
具体的に説明すると、図5に示されるように、スプリングワッシャ4の線形加圧領域においては、変位X(突出量)に応じて一定のバネ定数で荷重F(加圧力)が増加する。例えば、突出部15がスプリングワッシャ4に加圧力を付与した位置を「0mm」とし、そこから弾性限度(線形加圧領域の限界)となる3mm分だけ突出すると、3kgの荷重が付与されたことになる。本実施形態では、この弾性限度を超えてスプリングワッシャ4に加圧力を付与する。つまり、トルク加圧領域においては、トルク値を測定しながらボルト12を螺合させ、所望圧になるまでスプリングワッシャ4に加圧力を付与する。所望圧とは、例えば、200kg~400kg程度の高圧である。積層体Bは、高圧の加圧力を受けた状態で、ベースプレート2とカバープレート3との間で挟持される。
【0033】
本実施形態では、積層体Bを200kg~400kg程度の高圧で挟持することを想定している。従って、ベースプレート2、カバープレート3、蓋プレート5、支持プレート6、柱部8等の荷重を受ける部分は、強度の高いカーボンコンポジットを使用することができる。なお、加圧の程度によってはカーボンを使用することも可能である。また、スプリングワッシャ4としては、例えば、インコネル750、インコネル718、カーボンコンポジット等を使用することができる。
【0034】
本実施形態に係る加圧治具1は、積層体Bを加圧保持した状態で窒素連続炉等の加熱炉内に導入される。加熱炉内において、積層体Bは加熱され、ろう付けにより接合される。積層体Bが接合される際、一部の接着剤が溶けるなどするため、積層体B全体での体積が減少してしまう可能性がある。この体積の減少により、所望のトルク値で挟持していた高圧の加圧力が解かれ、ゆるみにつながる可能性があるが、その際には、スプリングワッシャ4の弾性力が機能し、ゆるみの発生を防止する。
【0035】
次に、図6を参照し、他の実施形態に係る加圧治具1Aを説明する。本実施形態に係る加圧治具1Aは、第1の実施形態に係る加圧治具1と同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
加圧治具1Aは、スプリングワッシャ4と支持プレート6との間に配置された上段カバープレート31(上段カバー部の一例)と、上段カバープレート31と支持プレート6との間に配置された複数の上段スプリングワッシャ41(上段圧縮バネの一例)と、上段スプリングワッシャ41と支持プレート6との間に配置された上段蓋プレート51(上段蓋部の一例)とを備えている。より具体的に説明すると、上段カバープレート31は、蓋プレート5上に配置されており、上段カバープレート31上には、複数の上段スプリングワッシャ41が配置されており、複数の上段スプリングワッシャ41上には、上段蓋プレート51が配置されている。上段スプリングワッシャ41は、上段カバープレート31と上段蓋プレート51とによって挟持されている。
【0037】
加圧治具1Aの加圧調整部10は支持プレート6のネジ孔11に螺合するボルト12を備えている。図6において加圧治具1Aではスペーサプレート7は省略されているが、スペーサプレート7を備えていてもよい。ボルト12の軸部14の先端14aは、下方に向けて突出し、上段蓋プレート51に直接、または間接に当接する。これは、軸部14の先端14aが、下方に配置されたスプリングワッシャ4に向けて突出していることを意味する。
【0038】
次に、図7を参照し、更に別の実施形態に係る加圧治具1Bを説明する。加圧治具1Bは、加圧治具1や加圧治具1Aと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
加圧治具1Bは、スプリングワッシャ4の数に対応して同数のボルト12を備えている。複数のボルト12は、複数のスプリングワッシャ4のそれぞれに対応し、上下方向で重なるように配置されている。ボルト12の軸部14の先端14aは、スペーサプレート7やカバープレート3を介在させることなく、直接にスプリングワッシャ4に当接し、スプリングワッシャ4を押圧している。
【0040】
次に、図8を参照し、更に別の実施形態に係る加圧治具1Cを説明する。加圧治具1Cは、加圧治具1や加圧治具1A、1Bと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
加圧治具1Cのボルト12の軸部14の先端14aは、スペーサプレート7やカバープレート3を介在させることなく、直接にスプリングワッシャ4に当接し、スプリングワッシャ4を押圧している。但し、加圧治具1Cは、加圧治具1Bとは異なり、一のボルト12は、複数のスプリングワッシャ4に当接可能となる幅寸法を備え、また、複数のスプリングワッシャ4に当接可能となるように配置されている。
【0042】
次に、図9を参照し、更に別の実施形態に係る加圧治具1Dを説明する。加圧治具1Dは、加圧治具1や加圧治具1A~1Cと同様の構造や要素を備えている。以下の説明では、相違点を中心に説明し、共通の構造や要素については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
加圧治具1Dの加圧調整部10は、カバープレート3のネジ孔11に螺合する寸切ボルト状の軸部16と、軸部16の先端16aに固定された押圧プレート部17とを備えている。軸部16の押圧プレート部17とは反対側の端部(基端16b)には、トルクレンチが係合する切り欠き(図示省略)が形成されている。軸部16の先端16a側の一部分は突出部15に相当する。軸部16は、支持プレート6の下面61側から装着される。この装着の際、軸部16は、基端16bからネジ孔11に差し込まれ、ネジ孔11に螺合される。軸部16の先端16aに固定された押圧プレート部17は、スペーサプレート7やカバープレート3を介在させることなく、直接に複数のスプリングワッシャ4に当接し、スプリングワッシャ4を押圧している。
【0044】
上記の各実施形態に係る加圧治具1、1A~1Dによれば、加圧調整部10によってスプリングワッシャ4に付与する加圧力を調整できるので、積層体Bの適切な加圧が可能である。また、接合等の事後処理によって、積層体Bの厚み等が変化して寸法変化が生じても、その寸法変化分の誤差(ゆるみ)はスプリングワッシャ4の弾性変形によって吸収されるため、積層体Bの適切な加圧状態を安定的に維持できる。
【0045】
また、加圧調整部10は、スプリングワッシャ4の弾性限度を超えてスプリングワッシャ4に加圧力を付与可能である。従って、加圧治具1、1A~1Dによれば、スプリングワッシャ4の線形加圧領域を超えてスプリングワッシャ4に加圧力を付与できるので、より大きな加圧力を付与して積層体Bを保持することができる。
【0046】
また、加圧治具1は、カバープレート3との間で複数のスプリングワッシャ4を挟持している蓋プレート5を更に備え、加圧調整部10は、蓋プレート5を介してスプリングワッシャ4に加圧力を付与している。したがって、蓋プレート5を介して複数のスプリングワッシャ4に一律に加圧力を付与できるので、スプリングワッシャ4に加圧力を安定して付与する上で有利である。
【0047】
また、加圧治具1Aは、スプリングワッシャ4と支持プレート6との間に配置された上段カバープレート31と、上段カバープレート31と支持プレート6との間に配置された複数の上段スプリングワッシャ41と、を備えている。そして、加圧治具1Aの加圧調整部10は、上段スプリングワッシャ41に加圧力を付与することで、間接的に下段のスプリングワッシャ4に加圧力を付与している。加圧治具1Aのように、下段のスプリングワッシャ4に対して更に上段スプリングワッシャ41を配置することにより、ゆるみに対して、より強い加圧力を維持した状態で対応できる。
【0048】
また、加圧治具1、1A~1Dの加圧調整部10は、突出部15の突出量を調整可能に支持プレート6に取り付けられている。従って、突出部15の突出量の調整により、加圧力を容易に調整できる。
【0049】
また、加圧治具1、1A~1Dの加圧調整部10は、支持プレート6のネジ孔11に螺合する軸部14、16を備え、軸部14、16により、加圧力をトルク管理しながら調整できる。
【0050】
また、加圧治具1、1A~1Dは、ベースプレート2に立設された複数の柱部8と、支持プレート6を柱部8に着脱自在に固定する支持部取付構造9と、を備えている。複数の柱部8は、積層体Bを囲むように配置されており、積層体Bに対して偏りなく加圧力を付与するのに有利になる。また、支持プレート6は柱部8から離脱させることができるので、積層体Bをベースプレート2に載置する際、あるいは、ベースプレート2から取り除く際に支持プレート6が邪魔にならず、取り扱い易くなる。
【0051】
また、加圧治具1、1A~1Dにおいて、支持プレート6は、ガイド孔63に柱部8が挿通するように設置される。支持プレート6は、スプリングワッシャ4の反力を受けながら柱部8の下方に向けて押し下げられ、上面62が係合孔8aを超える位置まで達する。この状態で、係止片90を係合孔8aに挿通して上面62に当接させることで支持プレート6を所定位置に容易に固定できる。一方で、係止片90を係合孔8aから引き抜くことで、支持プレート6を柱部8から容易に取り外しできる。
【0052】
また、加圧治具1、1A~1Dでは、圧縮バネとしてスプリングワッシャ4を用いており、その結果、安定した加圧力で積層体Bを保持するのに有利になる。
【0053】
以上、各実施形態に係る加圧治具に基づいて、加圧装置を説明したが、本発明は、これらの実施形態のみには限定されない。例えば、圧縮バネは、スプリングワッシャに限定されず、コイルスプリングや板バネ等のその他の弾性体であってもよい。また、土台部、カバー部、支持部、蓋部等はプレート状(板状)の部材に限定されず、ブロック状、その他の形状であってもよい。また、加圧調整部は、支持部に螺合して貫通する軸部を備えた形態に限定されず、圧縮バネに加圧力を付与可能であり、その加圧力を調整可能であれば他の形態であってもよい。
【0054】
また、積層体としては半導体の基板等に使用される積層体に限定されず、他の積層体、例えば、ヒートシンクとセラミック基板とを積層した接合物等であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B,1C,1D…加圧治具(加圧装置)、2…ベースプレート(土台部)、3…カバープレート(カバー部)、31…上段カバープレート(上段カバー部)、4…スプリングワッシャ(圧縮バネ)、41…上段スプリングワッシャ(上段圧縮バネ)、5…蓋プレート(蓋部)、6…支持プレート(支持部)、61…下面(加圧面)、62…上面(係止面)、8…柱部、8a…係合孔、9…支持部取付構造、10…加圧調整部、14,16…軸部、15…突出部、63…ガイド孔、90…係止片、B…積層体。
図1
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図9