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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20240807BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240807BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20240807BHJP
【FI】
A01G31/04 B
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
A01G9/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021005573
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110280
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594178147
【氏名又は名称】山本 公義
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 公義
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3214287(JP,U)
【文献】特開昭58-198232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/04
A01G 31/00
A01G 7/00
A01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内において無端状紐部材を回転可能に支持する支持機構と、
前記無端状紐部材に、回転方向に所定間隔で取り付けられた複数個の栽培容器と
前記複数個の栽培容器に培養液を供給する液供給装置と、
前記液供給装置による前記複数個の栽培容器への培養液の供給を制御する制御手段と、
を備えた水耕栽培装置であって、
前記ハウジングの側壁に形成された、前記栽培容器が出入可能な開口部と、
前記開口部に対して開閉可能に取り付けられた扉部材と、
を有し、
前記扉部材が内側面に係合部材を有し、前記栽培容器が被係合部材を有し、
前記扉部材が閉位置のときに、前記扉部材と対向する位置の前記栽培容器の被係合部材と前記扉部材の係合部材とが係合し、
前記扉部材の開閉動作によって前記栽培容器が前記開口部から出入する
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記複数個の栽培容器が、前記複数個の栽培容器に対応して、前記無端状紐部材に揺動自在に軸支された複数個の枠体に、前記枠体から外方に略水平に移動可能に取り付けられた請求項1記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
栽培に必要な光を発する発光部材が前記栽培容器又は前記枠体に設けられている請求項記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記複数個の栽培容器の各々には、栽培植物の生育状態を映す撮影手段が設けられ、
前記制御手段は、前記発光部材の発光量及び/又は発光波長をも制御し、
前記撮影手段の画像データに基づいて前記発光部材の発光量及び/又は発光波長を制御する請求項記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記制御手段から前記発光部材への制御信号が電力線通信によって行われる請求項記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記扉部材が、前記開口部の下縁部に略水平に設けられた開閉軸を中心として開閉する請求項1~のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項7】
前記複数個の栽培容器の各々が、前記液供給装置からの培養液を受け入れるための供給口と、前記栽培容器内の培養液を排出するための排出口とを有し、
前記制御手段が、前記栽培容器への培養液の供給及び/又は前記栽培容器からの培養液の排出を制御し、前記複数個の栽培容器内の培養液量によって前記複数個の栽培容器の質量バランスを変化させて前記無端状紐部材を回転させる請求項1~のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項8】
前記無端状紐部材の回転を停止させるストッパー機構を有し、
前記ストッパー機構は、前記複数個の栽培容器のうちの一つを前記扉部材と対向する位置に停止させる請求項1~のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項9】
前記複数個の栽培容器の各々には、培養液の液量及び/又は液温の検知手段、栽培植物の生育状態を映す撮影手段の少なくとも一つの手段が設けられ
前記制御手段は、前記検知手段の検知データ及び/又は前記撮影手段の画像データに基づき前記複数個の栽培容器への培養液の供給を制御する請求項1~のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項10】
前記検知手段の検知データ及び/又は前記撮影手段の画像データが電力線通信によって前記制御手段に送信される請求項記載の水耕栽培装置。
【請求項11】
前記ハウジングの上部に排気口が設けられ、前記ハウジングの下部に給気口が設けられている請求項1~10のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【請求項12】
店舗に隣接して設置され、
前記扉部材が店舗内に露出し、店舗内において前記栽培容器が前記開口部から出入可能である請求項1~11のいずれかに記載の水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水耕栽培装置に関し、より詳細には、複数個の栽培容器を循環公転させる水耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
栽培面積の増大や作業性の改善、日当たりの均一化等を目的として、水平軸を中心として公転する支持枠に複数個の栽培容器を公転方向に所定間隔で取り付け、上部に位置する栽培容器に培養液を供給して栽培容器の重量を増加させて、上部に位置する栽培容器を順次下方に移動させて支持枠を公転させる栽培方法が提案されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-130318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記提案の栽培方法によれば所期の効果はある程度得られると推測されるものの、栽培容器への苗の植え付けや播種、そして栽培した植物の収穫における作業性は考えられていない。
【0005】
そこで本発明の目的は、複数個の栽培容器を循環公転させる水耕栽培装置において、栽培容器への苗の植え付けや播種、及び栽培した植物の収穫における作業性を向上させることにある。
【0006】
また本発明の他の目的は、植物の栽培地と販売地とを接近させて梱包や輸送を可能な限り不要にすることにある。
【0007】
また本発明の他の目的は、電力線通信(PLC:Power Line Communications)を用いて植物の栽培管理を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明に係る水耕栽培装置は、ハウジングと、前記ハウジング内において無端状紐部材を回転可能に支持する支持機構と、前記無端状紐部材に、回転方向に所定間隔で取り付けられた複数個の栽培容器と、前記複数個の栽培容器に培養液を供給する液供給装置と、前記液供給装置による前記複数個の栽培容器への培養液の供給を制御する制御手段とを備えた水耕栽培装置であって、前記ハウジングの側壁に形成された、前記栽培容器が出入可能な開口部と、前記開口部に対して開閉可能に取り付けられた扉部材とを有し、前記扉部材の開閉動作によって前記栽培容器のうちの一つが前記開口部から出入することを特徴とする。
【0009】
前記構成の水耕栽培装置において、前記複数個の栽培容器が、前記複数個の栽培容器に対応して、前記無端状紐部材に揺動自在に軸支された複数個の枠体に、前記枠体から外方に略水平に移動可能に取り付けられた構成であってもよい。
【0010】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記扉部材が内側面に係合部材を有し、前記栽培容器が被係合部材を有し、前記扉部材が閉位置のときに、前記扉部材と対向する位置の前記栽培容器の被係合部材と前記扉部材の係合部材とが係合し、前記扉部材の開閉動作によって前記栽培容器が前記開口部から出入する構成であってもよい。
【0011】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記扉部材が、前記開口部の下縁部に略水平に設けられた開閉軸を中心として開閉する構成であってもよい。
【0012】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記複数個の栽培容器の各々が、前記液供給装置からの培養液を供給するための供給口と、前記栽培容器内の培養液を排出するための排出口とを有し、前記制御手段が、前記栽培容器への培養液の供給及び/又は前記栽培容器からの培養液の排出を制御し、前記複数個の栽培容器内の培養液量によって前記複数個の栽培容器の質量バランスを変化させて前記無端状紐部材を回転させる構成であってもよい。
【0013】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記無端状紐部材の回転を停止させるストッパー機構を有し、前記ストッパー機構は、前記複数個の栽培容器のうちの一つを前記扉部材と対向する位置に停止させる構成であってもよい。
【0014】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記複数個の栽培容器の各々には、培養液の液量及び/又は液温の検知手段、栽培植物の生育状態を映す撮影手段の少なくとも一つの手段が設けられ、前記制御手段は、前記検知手段の検知データ及び/又は前記撮影手段の画像データに基づき前記複数個の栽培容器への培養液の供給を制御する構成としてもよい。
【0015】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記検知手段の検知データ及び/又は前記撮影手段の画像データが電力線通信によって前記制御手段に送信される構成としてもよい。
【0016】
また前記構成の水耕栽培装置において、栽培に必要な光を発する発光部材が前記栽培容器又は前記枠体に設けられている構成であってもよい。
【0017】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記制御手段は、前記発光部材の発光量及び/又は発光波長をも制御し、前記撮影手段の画像データに基づいて前記発光部材の発光量及び/又は発光波長を制御する構成としてもよい。
【0018】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記制御手段から前記発光部材への制御信号が電力線通信によって行われる構成としてもよい。
【0019】
また前記構成の水耕栽培装置において、前記ハウジングの上部に排気口が設けられ、前記ハウジングの下部に給気口が設けられている構成としてもよい。
【0020】
また前記構成の水耕栽培装置が、店舗に隣接して設置され、前記扉部材が店舗内に露出し、店舗内において前記栽培容器が前記開口部から出入可能である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る水耕栽培装置では、ハウジングの側壁に形成された開口部の扉部材を開閉することによって栽培容器が開口部から出入するので、例えば開口部が使用者の腰の辺りの高さ位置に設けられていると、使用者は起立状態で、栽培した植物の栽培容器からの収穫、そして栽培容器への苗の植え付けや播種などの作業が行え従来に比べて作業性が格段に改善される。
【0022】
また、水耕栽培装置が販売店舗に隣接して設置され、扉部材が店舗内に露出し、店舗内において栽培容器が前記開口部から出入可能であると、従来のような収穫した植物を梱包して産地から販売地まで輸送する必要がなくなり、多くの作業労力およびコストを削減することができる
【0023】
また、培養液の液量や液温の検知データ、栽培植物の生育状態を映す撮影手段の画像データを電力線通信によって制御手段に送信可能とすれば、従来のような多くのデータ送信専用線を用いる必要がなくなり、装置の付帯装備の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る水耕栽培装置の一例を示す前面図である。
図2】本発明に係る水耕栽培装置の一例を示す右側面図である。
図3】中央軸部の概説図である。
図4】栽培容器が枠体から引き出された引出状態を示す斜視図である。
図5】栽培容器が枠体に収納された収納状態を示す斜視図である。
図6】栽培容器及び枠体の構造を示す概説図である。
図7】扉部材が閉位置のときの概説図である。
図8】扉部材が開位置のときの概説図である。
図9】レバーが基準位置のときの概説図である。
図10】レバーが解除位置のときの概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る水耕栽培装置について図に基づいて説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、特に断り書きのない限り、本明細書における「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」は、図に示される前後方向、左右方向、上下方向を意味するものとする。
【0026】
図1は、本発明に係る水耕栽培装置Sの一例を示す前面図であり、図2は、図1の水耕栽培装置Sの右側面図である。これらの図に示す水耕栽培装置Sは、直方体形状のハウジングHと、ハウジングH内に左右方向に所定間隔隔てて対向するように設けられた一対の支持フレーム11a,11bと、一対の支持フレーム11a,11bの上部及び下部の前側と後側において一対の支持フレーム11a,11b間に水平に支持された4本の軸部12a,12b,12c,12dと、一対の支持フレーム11a,11bの前後方向略中央部で上下方向略中央部において、一対の支持フレーム11a,11b間に水平に支持された中央軸部15と、4本の軸部12a,12b,12c,12dの各々の左右両端に回転可能に支持された4対のスプロケット13a~13d,14a~14dと、右側の4つのスプロケット13a~13dと左側の4つのスプロケット14a~14dの各々に掛け渡された無端状紐部材としての一組のチェーンCh1,Ch2と、一組のチェーンCh1,Ch2間に間接的に支持された左右方向に略水平な複数個の支持棒91と、支持棒91に揺動自在に取り付けられた複数個の枠体6と、枠体6に対して水平前方に移動可能に取り付けられた栽培容器3とを備える。なお、本実施形態において支持フレーム11a,11bと、軸部12a,12b,12c,12dと、スプロケット13a~13d,14a~14dとが本発明の支持機構を構成する。
【0027】
(ハウジングH)
ハウジングHの左右方向の幅は、支持棒91に支持される栽培容器3の幅よりも広く、前後方向の幅は栽培容器3の前後方向の幅の3倍以上であるのが望ましい。ハウジングHの上部と下部には給気口92と排気口93が設けられている。また、後述するように、ハウジングHの前面壁には栽培容器3が出し入れ可能な開口部9と、開口部9に対して開閉可能な扉部材5が設けられている。ハウジングHの材質に特に制限はなく従来公知の材料を用いることができる。例えば、ハウジングHの材料を透明部材としてハウジングH内の栽培植物に日光が照射されるようにしてもよい。またハウジングH内の後壁上部には冷暖房機94が設けられている。冷暖房機94は、必要により、後述の制御手段CによってハウジングH内の温度が所望温度となるよう制御される。
【0028】
(支持機構)
一対の支持フレーム11a,11bは同一形状を有し、側面視において四角形状であって、左右方向に所定間隔を隔てて対向配置されている。一対の支持フレーム11a,11bの上部及び下部の前側と後側において、一対の支持フレーム11a,11b間に4本の軸部12a~12dが不図示の軸受を介して回転自在に支持されている。そして、4本の軸部12a~12dの各々の左右両端には4対のスプロケット13a~13d,14a~14dが固定されている。支持フレーム11a取り付けられた4つのスプロケット13a~13dと、支持フレーム11bに取り付けられた4つのスプロケット14a~14dの各々にはチェーンCh1,Ch2が掛け渡されている。このような構造により、左右のチェーンCh1,Ch2は同期して回転する。なお、本実施形態では無端状紐部材としてチェーンCh1,Ch2を使用しているがこれに限定されるものではなく、例えばベルトなど従来公知の部材を使用することができる。ただし、無端状紐部材の種類に対応して回転支持部材はプーリーなどを用いる必要がある。また、左右のチェーンCh1,Ch2間には所定間隔で複数の支持棒91が略水平に固定され、チェーンCh1,Ch2の回転と共に公転する。また支持棒91とチェーンCh1,Ch2との固定部分には荷重センサー95(図6に図示)が設けられ、荷重センサー95によって各栽培容器3の重さすなわち各栽培容器3内の培養液72が検知される。
【0029】
(中央軸部15)
また、一対の支持フレーム11a,11bの前後方向略中央部で上下方向略中央部において一対の支持フレーム11a,11b間に中央軸部15が略水平に支持されている。図2に示すように、中央軸部15は、貯留槽71からポンプPによって送られてくる培養液72を所望の栽培容器3に分配供給すると共に、栽培容器3から排出された培養液72を集めて貯留槽71に戻す役割を奏する。また、中央軸部15は、各々の枠体6に取り付けられた発光部材としてのLED(Light Emitting Diode)81や撮影手段としてのカメラ82、制御バルブ83a,83b(以上、図6に図示)、その他のセンサーに電力を供給すると共に、各種センサーからの検知データやカメラ82の撮影データを制御手段Cに送信する役割も奏する。なお、各種センサーの検知データ及びカメラ82の画像データはPLCによって制御手段Cに送信されるのが好ましく、制御手段CからLED81や制御バルブ83a,83b等への制御信号もPLCによって送信されるのが好ましい。
【0030】
このような役割を果たす中央軸部15は、例えば図3に示すように、一対の支持フレーム11a,11b間に固定された円筒形状の固定軸部151と、固定軸部151の外周に回転自在に嵌め入れられた円筒形状の回転外側部152とを有する。固定軸部151の右側端面には、軸方向左方に向かって所定深さの2つの流通孔153aと流通孔153bが形成され、流通孔153aの底部近傍の内周壁には、半径方向外方に向かって固定軸部151の外周面に形成された周溝1511に貫通する貫通孔154が周方向に180°隔てて2つ形成されている。そして、流通孔153aには、一方端がポンプPに接続された供給用パイプ99aが接続され、流通孔153bには、一方端が貯留槽71内に挿入された排出用パイプ99b(図2に図示)が接続される。
【0031】
また、固定軸部151の左側端面には、軸方向右方に向かって所定深さの大穴155が形成されている。大穴155の内周面には固定軸部151の外周面に貫通する複数個の小孔156が周方向及び軸方向に所定間隔で形成されている。そして、大穴155および小孔156には各枠体6及び栽培容器3に設けられたLED81やカメラ82、制御バルブ83a,83b(以上、図6に図示)へ電力を供給するための電力線PLが配設される。
【0032】
このような中央軸部15の構造によって、貯留槽71からポンプPによって送られてきた培養液72は各栽培容器3に供給される。また、各栽培容器3に取り付けられたLED81やカメラ82、制御バルブ83a,83b(以上、図6に図示)へ電力が供給されると共に、PLCによって各種センサーの検知データ及びカメラ82の画像データが制御手段Cに送信され、制御手段CからLED81や制御バルブ83a,83b等へ制御信号が送信される。
【0033】
(枠体6)
図4に、栽培容器3が枠体6から引き出された引出状態を示す斜視図を示し、図5に、栽培容器3が枠体6に収納された収納状態を示す斜視図を示す。これらの図に示すように、枠体6は、上面及び前面が開口とされた直方体形状の本体部61と、本体部61の左右両側壁の上端の前後方向中央部から上方に延出する一対の支持腕部62a,62bとを有する。一対の支持腕部62a,62bの上部には左右方向に貫通した貫通孔621が形成され、貫通孔621に支持棒91が挿通される。貫通孔621の内径は支持棒91の外径よりもわずかに大きい。これにより、枠体6は、チェーン間に固定された支持棒91に揺動可能に取り付けられ、チェーンCh1,Ch2の回転と共に公転する。
【0034】
枠体6の本体部61には前面から出入可能に栽培容器3が収納される。具体的には、本体部61の左右両側壁の内側面の下部にスライドレール8のアウターレール81が取り付けられ、栽培容器3の左右両側壁の外側面の下部にはスライドレール8のインナーレール82が取り付けられている。これによって、栽培容器3は収納状態と引出状態とに移動可能とされている。
【0035】
また、枠体6の後側壁には左右方向に所定距離隔てて2つの貫通孔63a,63bが形成されている。図6に示すように、これらの貫通孔63a,63bに、栽培容器3に培養液72を供給するための供給ホース98aと栽培容器3から培養液72を排出するための排出ホース98bとが挿通される。供給ホース98aと排出ホース98bとは栽培容器3の枠体6からの出入に対応して引出し及び引込みが可能に設定されている。
【0036】
図6に示すように、枠体6の一対の支持腕部62a,62bの途中部には、栽培に必要な光を発する発光部材としてのLED81と、LED81からの光を栽培容器3の方向に反射する反射部材84とが設けられている。反射部材84は、前後方向に所定幅を有し左右方向に延在する長方形状の基部841と、基部841の前後方向両端から外方に向かって下方に傾斜した傾斜部842a,842bとを有する。反射部材84の基部841の左右方向に所定間隔でLED81が設けられている。また反射部材84の傾斜部842bの下面には栽培植物の生育状態を映す撮影手段としてのカメラ82が設けられている。カメラ82による画像データによって制御手段Cが栽培植物の生育状態を判断しLED81の発光量や発光波長を制御する。例えば、発芽を促進する場合には660nm付近の赤色が照射され、開花や葉の展開を誘起する場合には420nm周辺の青色が照射される。なお、本発明で使用する発光部材はLED81に限定されるものではなく、栽培に必要な光を発する限りにおいて従来公知の発光部材を使用できる。
【0037】
(栽培容器3)
図4及び図5に示すように、栽培容器3は上面開口の直方体形状を有する本体部31と、本体部31の内底面形状よりもわずかに小さい相似形状を有し、本体部31の上下方向途中部において本体部31の上面開口を封鎖するように取り付けられた定植パネル32とを有し、定植パネル32には左右方向に所定間隔で3つの植え付け穴321が形成されている。
【0038】
図6に示すように、本体部31の後側壁の定植パネル32よりも下方位置には、栽培容器3内に培養液72を供給するための供給口34と栽培容器3から培養液72を排出するための排出口35とが形成され、供給ホース98aと排出ホース98bとが開閉バルブ83a,83bを介して供給口34と排出口35とに接続される。なお、供給口34と排出口35とは上下方向同じ高さ位置に形成されているが、図6では、供給ホース98a、排出ホース98b、開閉バルブ83a,83bなどの説明のために供給口34と排出口35とを便宜的に上下方向に隔てて描いている。栽培容器3内の培養液72は、供給ホース98aと排出ホース98bとによって基本的に循環され、液面が定植パネル32を越えないように培養液72の供給と排出が制御手段Cによって制御される。
【0039】
栽培植物は、種又は苗の状態でスポンジなどの多孔質弾性体に固定されて植え付け穴321に充填される。植え付け穴321の大きさや個数、間隔などは栽培する植物の種類によって適宜決定される。なお、定植パネル32は本体部31に対して着脱可能であって、植え付ける植物の種類等によって定植パネル32は取り替え可能である。
【0040】
図4に示すように、栽培容器3の左右両側壁の外側面の下部には、前述のように、栽培容器3を枠体6から前方に引き出し可能とするためのスライドレール8のインナーレール82が取り付けられている。また、栽培容器3の左右両側壁の外側面の前方上部には、後述する扉部材5に設けられた係合円板(係合部材)53a,53b(図7に図示)が係合する被係合レール(被係合部材)33a,33bが長手方向が鉛直になるように設けられている。被係合レール33a,33bは四角筒形状で、右側の被係合レール33aは右側壁に、左側の被係合レール33bは左側壁に前後方向中央部に所定幅で上下方向に連続する切欠が形成されている。被係合レール33a,33bの前後方向の内部幅は係合円板53a,53bの外径よりもわずかに大きく、被係合レール33a,33bの切欠きの幅は、係合円板53a,53bを支持する軸部54の外径よりも大きく、係合円板53a,53bの外径よりも小さく設定されている。被係合レール33a,33bの上下方向(鉛直方向)の長さは、後述する扉部材5の開閉によって栽培容器3が収納状態と引出状態とに移動する際、扉部材5に設けられた係合円板53a,53bが被係合レール33a,33bから外れない長さに設定される。
【0041】
(扉部材5)
図7に扉部材5が閉位置のときの概説図、図8に扉部材5が開位置のときの概説図を示す。扉部材5は、ハウジングHに形成された開口部9よりもわずかに小さい四角形状の板状体であって、ハウジングHの開口部9の下縁部に設けられたヒンジ(開閉軸)50によって開口部9を封鎖する閉位置と、開口部9を開放する略水平状態な開位置とに回動可能に設けられている。
【0042】
扉部材5の外側面には、開閉軸と反対側(上部)に上面視でコ字状の取っ手51が設けられている。使用者は取っ手51を前方斜め下方向に引っ張ることによって、扉部材5はヒンジ50を中心として閉位置から開位置に回転して略水平な状態となる。
【0043】
また閉位置の扉部材5の内側面の上下方向中央部よりもやや上方において、左右方向に栽培容器3の左右方向長さよりも長い距離を隔てて細板状の一対の腕部52a(52b)が扉部材5に対して垂直に設けられている。一対の腕部52a(52b)の先端部の左右方向内側面には腕部52a(52b)に対して垂直に軸部54が突出し、軸部54には係合円板53a(53b)が回転自在に取り付けられている。一対の腕部52a,52bの扉部材5からの突出長さDは、栽培容器3に設けられた被係合レール33a(33b)の前後方向中央部の移動軌跡L上に、係合円板53a(53b)の軸中心Oが位置するよう設定される。係合円板53a(53b)の形状は、前述のように、被係合レール33a(33b)内に進入可能な寸法に設定されている。これにより、一対のチェーンCh2(Ch1)によって枠体6と共に栽培容器3が公転すると、係合円板53a(53b)は、栽培容器3に取り付けられた被係合レール33a(33b)に対して進入と退出を繰り返す。なお、本実施形態において扉部材5の一対の腕部52a(52b)と、軸部54と、係合円板53a(53b)とが本発明の係合部材を構成する。
【0044】
図7に示すような栽培容器3が引出可能位置に停止すると、扉部材5の係合円板53a(53b)は栽培容器3の被係合レール33a(33b)内に位置した係合状態となる。この状態で扉部材5が閉位置から開位置にされると、係合円板53a(53b)と被係合レール33a(33b)との係合によって、図8に示すように、栽培容器3はスライドレール8によって枠体6から完全に引き出され、ハウジングHの開口部9から前方に出た引出状態となる。栽培容器3が収納状態から引出状態となるまで係合円板53a(53b)は被係合レール33a(33b)内を上下に移動するが被係合レール33a(33b)から外れることはない。
【0045】
(ストッパー機構2)
後述するように、本実施形態の水耕栽培装置Sでは、制御手段Cは、荷重センサー95からの各栽培容器3の質量データに基づいて、図2において右列の栽培容器3の総質量が左列の栽培容器3の総質量よりも大きくなるように各栽培容器3内の培養液72量を調整して、栽培容器3が取り付けられたチェーンCh1,Ch2を時計回りに回転させる。ストッパー機構2は、栽培容器3を収納した枠体6が扉部材5と対向する位置で停止するようにチェーンCh2の回転を停止させる働きを有する。図9及び図10にストッパー機構2の一例を示す概説図を示す。ストッパー機構2は、略T字形状のレバー21と、レバー21の後端に設けられた2つの板状の当接部材22,23とを有する。レバー21は細長い板状のレバー本体部211と、レバー本体部211の後端からレバー本体部211に対して略垂直に上方及び下方に延出した突出部212,213とを有し、レバー本体部211の後端部が支持フレーム11bに取り付けられた揺動軸20を中心として回動自在に取り付けられている。レバー本体部211の前端部はハウジングHから前方に突出し、使用者がレバー21を作動させるための把持部が設けられている。レバー21の後端の突出部212,213はハウジングH内のチェーンCh2の近傍に位置し、2つの突出部212,213には板状の当接部材22,23がそれぞれ略水平に軸支されている。そして、レバー本体部211の長手方向略中央部と、レバー21よりも上方のハウジングH内側壁との間には、レバー21を常に上方位置(基準位置)方向に付勢する引張コイルバネSPが設けられている。
【0046】
図9に示すように、レバー21の前端部は、通常は、引張コイルバネSPの弾性力によって、揺動軸20の軸中心を通る水平線Lhよりも上方に位置している。このときレバー21の後端の突出部212は、揺動軸20の軸中心を通る鉛直線Lpよりも後方に位置する一方、突出部213は鉛直線Lpよりも前方に位置する。これによって突出部212に軸支されている当接部材22は、左右のチェーンCh2間に固定され枠体6を支持している支持棒91の移動軌道上に突出した位置となる一方、突出部213に軸支されている当接部材23は、支持棒91の移動軌道上から退避した位置となる。チェーンCh2と共に枠体6を軸支している支持棒91に時計回りに公転する力が加わっている場合、支持棒91が当接部材22の下面に当接して、支持棒91の公転、すなわち枠体6の公転は停止される。なお、当接部材22による枠体6の停止位置は、扉部材5の開閉操作によって栽培容器3が枠体6から引出可能となる位置に設定されている。
【0047】
一方、図10に示すように、レバー21の把持部に下方に力が加えられて、引張コイルバネSPの弾性力に抗して揺動軸20を中心として反時計回りにレバー21が回転して、レバー本体部211が揺動軸20の軸中心を通る水平線Lhよりも下方位置(解除位置)に押し下げられると、レバー21の後端の突出部212は、揺動軸20の軸中心を通る鉛直線Lpよりも前方に退避する一方、突出部213は鉛直線Lpよりも後方に位置するようになる。これによって突出部212に軸支されている当接部材22は、支持棒91の移動軌道上に退避した位置となる一方、突出部213に軸支されている当接部材23は、支持棒91の移動軌道上に突出した位置となる。当接部材22が退避位置となったことによって、当接部材22の下面に当接していた支持棒91は移動可能となって支持棒91と共に枠体6は上方に移動する。そして、支持棒91よりも公転方向下流側に位置していた次の支持棒91が上方に移動する。
【0048】
レバー21には引張コイルバネSPによって常に基準位置の方向に付勢されているので、レバー21が解除位置に押し下げられた後、レバー21に加えられていた力が除かれるとレバー21は引張コイルバネSPの弾性力によって解除位置から基準位置に戻り、上方に移動してきた次の支持棒91は、突出部212に軸支されている当接部材22の下面に当接して枠体6の公転は停止され、枠体6の位置は栽培容器3が枠体6から引出可能となる位置になる。
【0049】
また、仮にレバー21が解除位置となってから基準位置に戻るまでの時間が、上方に移動してきた次の支持棒91が、栽培容器3が枠体6から引出可能となる位置に到達する時間よりも長くかかった場合であっても、突出部213に軸支されている当接部材23が支持棒91の移動軌道上に位置しており、上方に移動してきた次の支持棒91は当接部材23の下面に当接して枠体6の公転は停止される。つまり、当接部材22及び当接部材23の少なくとも一方が常に支持棒91の移動軌道上に位置することで支持棒91は引出可能位置に必ず一旦停止することになる。そしてその後、レバー21が解除位置から基準位置に戻されると、当接部材23が退避位置となる一方、当接部材22は移動軌道上に位置し、当接部材23の裏面に当接していた支持棒91は若干上方に移動して当接部材22の裏面に当接し枠体6の公転は停止し、枠体6の位置は栽培容器3が枠体6から引出可能となる位置になる。
【0050】
このような構成の水耕栽培装置では、レバー2を操作して枠体6と共に栽培容器3を公転させた後、ハウジングHの側壁に形成された開口部9の扉部材5を開閉することによって栽培容器3が開口部9から出入するので、栽培した植物の栽培容器3からの収穫、そして栽培容器3への苗の植え付けや播種が従来に比べて容易になる。特に開口部が使用者の腰の辺りの高さ位置に設けられていると、使用者は起立状態で栽培植物の収穫、苗の植え付けなどの作業が行え従来に比べて作業性が格段に改善される。また、例えば本発明に係る水耕栽培装置を野菜等の販売店舗に併設し、水耕栽培装置の扉部材5の設けられた開口部9を販売店舗内壁に露出するように設けると、販売店舗を訪れた顧客が扉部材5を開けることで栽培容器3から栽培植物を直接収穫(購入)することも可能となる。これにより、収穫した植物を梱包して産地から販売地まで輸送する必要がなくなり、多くの作業労力およびコストの削減が図れる。
【0051】
またハウジングHの販売店舗内に面する位置に給気口が設けられていると、販売店舗内の二酸化炭素がハウジングH内に供給されて栽培植物の光合成を促進させることが期待できる。なお、二酸化炭素は空気よりも重いので給気口はハウジングHの下部に設けるのが好ましい。また、販売店舗内の温度管理によって同時にハウジングH内の温度管理も行うことができ効率的でもある。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る水耕栽培装置では、ハウジングHの側壁に形成された開口部9の扉部材5を開閉することによって栽培容器3が開口部9から出入するので、栽培した植物の栽培容器3からの収穫、そして栽培容器3への苗の植え付けや播種が従来に比べて容易になり有用である。
【符号の説明】
【0053】
2 ストッパー機構
3 栽培容器
5 扉部材
6 枠体
9 開口部
C 制御手段
H ハウジング
P ポンプ
S 水耕栽培装置
21 レバー
33a,33b 被係合レール
34 供給口
35 排出口
50 ヒンジ
53a,53b 係合円板
71 貯留槽
72 培養液
81 LED(発光部材)
82 カメラ(撮影手段)
92 給気口
93 排気口
94 冷暖房機
95 荷重センサー
Ch1,Ch2 チェーン(無担状紐部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10