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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240807BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240807BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61F13/49 315Z
A61F13/49 410
A61F13/53 100
A61F13/532 200
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021007460
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111797
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079058(JP,A)
【文献】特開2002-102282(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130510(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088718(US,A1)
【文献】特開2004-290646(JP,A)
【文献】特開2002-360629(JP,A)
【文献】特開2003-102780(JP,A)
【文献】特開平06-063074(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02268389(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部、背側部及びその間に位置する股下部を有し、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを備え、該腹側部の両側部と該背側部の両側部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている吸収性物品であって、
吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、
前記吸収体は、前記股下部における縦方向中央線の両側それぞれに、前記縦方向に延びる低坪量部を有しており、
一対のレッグ開口部それぞれにレッグ弾性部材が配されており、前記レッグ弾性部材は、前記腹側部に外方端、前記股下部に内方端を有する腹側弾性部材と、前記背側部に外方端、前記股下部に内方端を有する背側弾性部材とを含んでおり、
前記吸収性物品は、前記腹側弾性部材と前記背側弾性部材との交差部を一つ又は複数有し、該交差部のうち少なくとも一つが前記吸収体における前記低坪量部と重なる位置に配されており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部において、前記縦方向中央線に対する傾斜角度が5度以上90度未満であり、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されており、
前記腹側弾性部材の前記内方端は、前記低坪量部よりも前記横方向内方に位置しており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分、該低坪量部と重なる部分、該低坪量部よりも該横方向内方に位置する部分の順に伸長率が低くなっている、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する側部領域と、該低坪量部どうしの間に位置する中央領域とを有し、
前記側部領域は、前記中央領域に比して坪量が低い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記腹側弾性部材を複数本有しており、
前記横方向における前記吸収体の端縁よりも該横方向外方に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離が、前記低坪量部と重なる位置に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離よりも小さい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記腹側弾性部材を複数本有しており、
前記吸収体よりも前記横方向外方において、複数本の前記腹側弾性部材のうち少なくとも2本が互いに接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記低坪量部が平面視三日月形状を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
複数本の前記腹側弾性部材を有しており、
前記腹側弾性部材と前記背側弾性部材との前記交差部のうち、最も前記横方向外方に配されている交差部が前記低坪量部と重なる位置に配されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートを有し、
前記吸収体は、吸収性コアと該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部と重なる位置において、前記コアラップシートと前記表面シートとが接合している、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記横方向における前記吸収体の側部に、前記縦方向に延びる弾性部材が配されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、吸収性コアと該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記コアラップシートが不織布により構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部が前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する横方向中央線よりも前記腹側部側に配されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記低坪量部と前記背側弾性部材とが交差しており、
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部における前記腹側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度が、該交差部における前記背側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度よりも大きい、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記背側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されており、
前記背側弾性部材は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分、該低坪量部と重なる部分、該低坪量部よりも該横方向内方に位置する部分の順に伸長率が低くなっている、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体は吸収性ポリマーを含んでおり、
前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する中央線よりも前記腹側部側における前記吸収体の飽和吸収容量の方が、該中央線よりも前記背側部側の前記吸収体の飽和吸収容量よりも大きい、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品として、着用者の腹側に配される腹側部、着用者の股間部に配される股下部及び着用者の背側に配される背側部を有し、吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、腹側部における外装体の両側縁部と背側部における外装体の両側縁部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
斯かるパンツ型使い捨ておむつにおいては、着用時に吸収体の側部が屈曲するようにすることにより、多量の尿が一度に排泄された場合であっても、一時的にストックできるようにすることが行われている(特許文献2~4参照)。
【0004】
特許文献2~4には、一対のレッグ開口部それぞれの開口周縁部に腹側弾性部材と背側弾性部材とを有しており、該腹側弾性部材と該背側弾性部材とが股下部において交差しているパンツ型使い捨ておむつが記載されている。特許文献2及び3のパンツ型使い捨ておむつにおいては、腹側弾性部材と背側弾性部材とは股下部において交差している。特許文献3のパンツ型使い捨ておむつにおいては、腹側弾性部材と背側弾性部材とは股下部において互いに重ね合わされている。
【0005】
特許文献2のパンツ型使い捨ておむつは、上部吸収層と下部吸収層とを有する吸収性コアを備えた吸収体を具備している。下部吸収層は、該下部吸収層の横方向のおける両側部に、該下部吸収層を貫通する側部非積繊部を有しており、これにより横方向の外方から内方に向かって応力が股下部において発生した場合に、下部吸収層の縦方向に沿う両側部の屈曲性が高まるようになっている。
【0006】
特許文献3のパンツ型使い捨ておむつでは、腹側及び背側弾性部材は、レッグ開口部の周縁に沿って配されたギャザー形成部と該ギャザー形成部からおむつ幅方向中央に向かって延出する延在部とを有しており且つおむつ幅方向中央に達しない位置に端部を有している。特許文献3のパンツ型使い捨ておむつでは、腹側及び背側弾性部材の股下部における終点に、着用中に引っ張り力が集中して加わるので、その近傍にある吸収体側部が着用者側に持ち上げられるようになっている。
【0007】
特許文献4のパンツ型使い捨ておむつでは、股下部における吸収体は、その長手方向の少なくとも一部において、腹側及び背側弾性部材により、各レッグ部弾性部材の配設位置よりも幅方向外方に位置する一対のレッグフラップ吸収体と、一対の該レッグフラップ吸収体間に位置する中央吸収体とに分画されている。腹側及び背側弾性部材により画成されたレッグフラップ吸収体は、着用時に、該弾性部材の弾性収縮力により、表面シート側を幅方向外側に向けるように屈曲するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-134482号公報
【文献】特開2018-79058号公報
【文献】特開2003-102780号公報
【文献】特開2002-360629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、着用時に吸収体の側部を屈曲させることについて何ら記載されておらず、同文献の吸収性物品は、排尿時に尿を一時的にストックできるものではない。
特許文献2~4の吸収性物品においては、排尿時に一時的にストックされた尿が、背側部側へ流れてしまう場合があった。尿が背側部側へ流れると、背側部側の吸収体が尿を吸収して膨潤することにより、背側部側の吸収体が便を保持しにくくなり、便が漏れやすくなってしまう場合がある。特許文献2~4の吸収性物品においては、一時的にストックされた尿が背側部側へ流れることを防ぎ、尿を効率的に吸収することに関し改善の余地があった。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、腹側部、背側部及びその間に位置する股下部を有し、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを備え、該腹側部の両側部と該背側部の両側部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている吸収性物品であって、
吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、
前記吸収体は、前記股下部における縦方向中央線の両側それぞれに、前記縦方向に延びる低坪量部を有しており、
一対のレッグ開口部それぞれにレッグ弾性部材が配されており、前記レッグ弾性部材は、前記腹側部に外方端、前記股下部に内方端を有する腹側弾性部材と、前記背側部に外方端、前記股下部に内方端を有する背側弾性部材とを含んでおり、
前記腹側弾性部材と前記背側弾性部材とは一又は複数の交差部を有し、該交差部のうち少なくとも一つが前記吸収体における前記低坪量部と重なる位置に配されており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部において、前記縦方向中央線に対する傾斜角度が5度以上90度未満であり、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されており、
前記腹側弾性部材の前記内方端は、前記低坪量部よりも前記横方向内方に位置しており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分、該低坪量部と重なる部分、該低坪量部よりも該横方向内方に位置する部分の順に伸長率が低くなっている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一時的にストックされた尿が背側部側へ流れることを防ぎ、尿を効率的に吸収することができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態の肌対向面側を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、図2の要部拡大図である。
図4図4は、図1に示す実施形態における腹側弾性部材と背側弾性部材との交差部を模式的に示す平面図である。
図5図5は、図1に示す実施形態における吸収体の側部領域が立ち上がった状態を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図1に示す実施形態の吸収性物品の着用時における腹側部を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、図1に示す実施形態における腹側弾性部材と背側弾性部材との交差部を模式的に示す平面図である。
図8図8は、図1に示す実施形態における着用時の状態を模式的に示す断面図である。
図9図9は、図1に示す実施形態の吸収性物品の着用時における背側部を模式的に示す斜視図である。
図10図10(a)及び(b)は、図1に示す実施形態の変形例を示す要部拡大図であり、図2相当図である。
図11図11(a)~(e)は、図1に示す実施形態に係る低坪量部の変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
図1に本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ(以下、「おむつ」と言う。)1を示す。おむつ1は、図1に示すとおり、着用時に着用者の腹側にはいされる腹側部A、該着用者の背側に配される背側部B及びその間に位置する股下部Cを有する。またおむつ1は、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延びる縦方向Xと該縦方向Xに直交する横方向Yとを備える。
【0014】
おむつ1は、図1及び図2に示すとおり、吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に配された外装体4とを備えている。外装体4は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける縦方向Xに沿う両側縁部AS,BSどうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。これによりおむつ1には、一対のサイドシール部S,S並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部(図示せず)及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部(図示せず)が形成されている。
【0015】
吸収性本体2は吸収体23を含む。おむつ1は、吸収体23との非肌対向面側に配された外装体4とを備えている。吸収性本体2は、図2に示すとおり、吸収体23、該吸収体23の肌対向面側に配された表面シート21及び該吸収体23の非肌対向面側に配された裏面シート22を有する。
吸収体23は、吸収性本体2と同様に、おむつ1の長手方向Xに長い形状を有しており、表面シート21と裏面シート22との間に介在配置されている。
【0016】
「肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材(例えば吸収体23)に着目したときに、おむつ1の着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、おむつ1の着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。また「着用時」及び「着用状態」は、おむつ1の適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0017】
吸収体23は、図2に示すとおり、吸収性コア24と該吸収性コア24を被覆するコアラップシート25とからなる。吸収体23は、股下部Cにおける縦方向中央線CLxの両側それぞれに、縦方向Xに延びる低坪量部23aを有している。縦方向中央線CLxは、おむつ1を横方向に二等分するように縦方向Xに沿って延びている。吸収体23は、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する側部領域23Eと、該低坪量部23aどうしの間に位置する中央領域23Cとを有する。
【0018】
低坪量部23aの平面視形状は制限されず、矩形形状(図11(a)参照)、楕円形状(図11(b)参照)、欠円形状(図11(c)参照)、三日月形状(図11(d)参照)及び弓状形状(図11(e)参照)等が挙げられ、これらの中でも、吸収体23の側部領域23Eを立ち上がりやすくする観点から、三日月形状及び弓状形状のような、幅方向Y内方側の縁である内縁が幅方向Y方に向かって凸の湾曲線であり、幅方向Y外方側の縁である外縁が、幅方向Y内方に向かって凸の湾曲線である形状が好ましい。
【0019】
低坪量部23aの横方向Yの全幅H1に対する縦方向Xの全長H2の比H2/H1が、吸収体23の側部領域23Eを立ち上がりやすくする観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上であり、吸収容量確保及び、吸収体壊れ防止の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは1.2以上50以下、より好ましくは2以上30以下である(図3及び図11参照)。
【0020】
本明細書において「低坪量部」は、吸収性コア24を形成する吸収性材料の坪量が50g/m以下の部分であり、吸収性コア24の吸収性材料が存在しない部分である非積繊部も含む。低坪量部23aとしては、吸収性コア24を貫通するスリット等が挙げられる。吸収性材料は後述する親水性繊維、吸収性ポリマー等である。
【0021】
吸収性本体2は、図2に示すとおり、該吸収性本体2の肌対向面における縦方向Xに沿う左右両側部に一対の防漏カフ3,3を備えていてもよい。防漏カフ3は縦方向Xに沿って延びている。防漏カフ3は、図2に示すとおり、横方向Yの一端側が他の構成部材、例えば表面シート21に固定されて固定端部3aとされている。また防漏カフ3は、横方向Yの他端側が他の構成部材に非固定の自由端部3bとされている。防漏カフ3の自由端部3bには、糸状又は帯状の弾性部材31が縦方向Xに沿って伸長状態で配置されている。防漏カフ3は、伸長状態で配された弾性部材31が、おむつ1の着用状態において収縮することによって少なくとも股下部Cで起立し、それによって尿等の排泄物の横方向Yの外方への流出が阻止するようになっている。
【0022】
外装体4は、図2に示すとおり、内層シート41と、該内層シート41の非肌対向面側に配された外層シート42と、内層シート41及び外層シート42の間に配された複数本の弾性部材とを有している。おむつ1では、外層シート51と内層シート52との間が、所定部位において接着剤又はヒートシール等(図示せず)によって接合されている。
【0023】
弾性部材は、ウエスト開口部の周縁部WEに配されたウエスト弾性部材43と、着用者の胴回りに配される領域に配された胴回り弾性部材44と、レッグ弾性部材45,46とを含んでいる。レッグ弾性部材45,46は、一対のレッグ開口部それぞれの周縁部LEに沿って配されている。レッグ弾性部材45,46は、図1及び図3に示すとおり、腹側弾性部材45と背側弾性部材46とを含んでいる。
【0024】
腹側弾性部材45は、図3に示すとおり、腹側部Aに外方端5aを有し、股下部Cに内方端5bを有する。腹側弾性部材45の内方端5bは、低坪量部23aよりも横方向Y内方に位置している。腹側弾性部材45は、最も腹側部A側に配された第1腹側弾性部材45aと、最も背側部B側に配された第3腹側弾性部材45cと、第1腹側弾性部材45a及び第3腹側弾性部材45cの間に配された第2腹側弾性部材45bとを有する。
【0025】
背側弾性部材46は、図3に示すとおり、背側部Bに外方端6aを有し、股下部Cに内方端6bを有する。背側弾性部材46の内方端6bは、低坪量部23aよりも横方向Y内方に位置している。背側弾性部材46は、最も背側部B側に配された第1背側弾性部材46aと、最も腹側部A側に配された第3背側弾性部材46cと、第1背側弾性部材46a及び第3背側弾性部材46cの間に配された第2背側弾性部材46bとを有する。
【0026】
おむつ1は、腹側弾性部材45と背側弾性部材46との交差部7を一つ又は複数有する。本実施形態のおむつ1は、交差部7を複数有する。具体的には、図3に示すとおり、第1ないし第3腹側弾性部材45a~45cそれぞれと、第1ないし第3背側弾性部材46a~46cそれぞれとが交差しており、合計9個の交差部7が形成されている。複数の交差部7はいずれも股下部Cに位置している。
【0027】
おむつ1では、交差部7は低坪量部23aと重なる位置に配されている。本実施形態のように複数の交差部7を有する場合、複数の交差部7のうち、少なくとも一つの交差部7が低坪量部23aと重なる位置に配されていることが好ましい。複数の交差部7の全てが低坪量部23aと重なる位置に配されていてもよい。本実施形態においては、図3に示すとおり、第2腹側弾性部材45bと第3背側弾性部材46cとの交差部7bと、第3腹側弾性部材45cと第2背側弾性部材46bとの交差部7cと、第1腹側弾性部材45aと第3背側弾性部材46cとの交差部7dと、第2腹側弾性部材45bと第2背側弾性部材46bとの交差部7eと、第3腹側弾性部材45cと第1背側弾性部材46aとの交差部7fとが低坪量部23aと重なる位置に配されている。本明細書においては、低坪量部23aと重なる位置に配されている交差部7b,7c,7d,7e,7fを、低坪量部内交差部とも言う。
【0028】
第3腹側弾性部材45cと第3背側弾性部材46cとの交差部7aは、低坪量部23aよりも横方向Y外方に配されている。第1腹側弾性部材45aと第2背側弾性部材46bとの交差部7gと、第1腹側弾性部材45aと第1背側弾性部材46aとの交差部7hと、第2腹側弾性部材45bと第1背側弾性部材46aとの交差部7iとは、低坪量部23aよりも横方向Y内方に配されている。
【0029】
左右一対の腹側弾性部材45及び背側弾性部材46は、それぞれ股下部Cを横方向Yに横断させて配した弾性部材をおむつの横方向Y中央部において切断分割して設けられている。切断により生じた内方端5b,6bの近傍は、外方端5a,6aに比して弾性伸縮性が弱くなっている。腹側弾性部材45及び背側弾性部材46は、低坪量部23aと重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されている。
【0030】
図4に示すとおり、腹側弾性部材45は、低坪量部内交差部において、縦方向中央線CLxに対する傾斜角度αが5度以上90度未満となっている。低坪量部内交差部における縦方向中央線CLxに対する腹側弾性部材45の傾斜角度αは、低坪量部内交差部における腹側弾性部材45の接線TLaと、縦方向中央線CLxとのなす角とすることができる(図4参照)。前記傾斜角度αを上述の範囲内とすることで、腹側弾性部材45が、吸収体23の側部領域23Eに対して斜めに交差する。これにより、おむつ1の着用時に腹側弾性部材45が収縮することにより、図5及び図6に示すとおり、吸収体23の側部領域23Eが斜めに立ち上がり、おむつ1の腹側部A側に尿を一時的にストックすることができる腹側ポケット部Paが形成されるようになる。排尿時に腹側ポケット部Paに尿を一時的にストックすることができることにより、尿が背側部B側に流れることを防ぐことができ、腹側部A側の吸収体23によって尿をより効率的に吸収できる。本実施形態のように低坪量部内交差部を複数有する場合、上述した効果が奏されるためには、少なくとも一つの低坪量部内交差部における前記傾斜角度αが上述の範囲内となればよく、全ての低坪量部内交差部における前記傾斜角度αが上述の範囲内となることが好ましい。
【0031】
前記傾斜角度αは、腹側ポケット部Paを形成されやすくし、腹側部A側の吸収体23によって尿をより確実に吸収できるようにする観点から、好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上、更に好ましくは15度以上であり、腹側ポケット部Paの容積を確保するという観点から、好ましくは89度以下、より好ましくは85度以下、更に好ましくは80度以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは5度以上89度以下、より好ましくは10度以上85度以下、更に好ましくは15度以上80度以下である。
【0032】
低坪量部内交差部が複数ある場合、複数の低坪量部内交差部のうち、少なくとも一つの低坪量部内交差部において前記傾斜角度αが上述の範囲内であることが好ましい。
【0033】
腹側弾性部材45は、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する部分45A、該低坪量部23aと重なる部分45B、該低坪量部23aよりも該横方向Y内方に位置する部分45Cの順に伸長率が低くなっている。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eが一層立ち上がりやすくなる。これにより、腹側ポケット部Paを容易に形成することができるようになる。腹側弾性部材45を複数本有する場合、低坪量部内交差部を有する腹側弾性部材45において、伸長率が上述の関係となっていることが好ましい。低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する部分45Aは、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の全体であってもよいし、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の一部であってもよい。低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の一部は、吸収体23と重なっている部分であってもよいし、吸収体23の側縁より横方向Y外方に位置する部分であってもよい。腹側弾性部材45の伸長率は以下の方法により測定することができる。
【0034】
<弾性部材の伸長率の測定方法>
先ず、自然状態において、外装体を構成するシート上から弾性部材に油性ペンを用いて、該伸縮方向に一定間隔L0(例:100mm)をあけて2つの印を付ける。この際、油性ペンのインクが、シートから浸みこむため、弾性部材に前記印を付すことができる。次いで、前記印を付した弾性部材から、前記2つの印間を切り出す。この切り出した弾性部材の長さL1を非伸長状態で測定する。次いで、下記式〔A〕により、伸長率を求める。
伸長率(%)=(L0/L1)×l00・・・〔A〕
弾性部材が複数ある場合、全ての弾性部材について伸長倍率を求め、それらの平均値を「伸長率」とする。
【0035】
腹側弾性部材45における、低坪量部23aと重なる部分45Bの伸長率Rbに対する、該低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する部分45Aの伸長率Raの比Ra/Rbは、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.15以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.8以下であり、好ましくは1.05以上2.0以下、より好ましくは1.1以上1.9以下、更に好ましくは1.15以上1.8以下である。
腹側弾性部材45における、低坪量部23aよりも該横方向Y内方に位置する部分45Cの伸長率Rcに対する、該低坪量部23aと重なる部分45Bの伸長率Rbの比Rb/Rcは、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.15以上、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.8以下であり、好ましくは1.05以上2.0以下、より好ましくは1.1以上1.9以下、更に好ましくは1.15以上1.8以下である。
【0036】
前記伸長率Raは、「前記伸長率Ra>前記伸長率Rb>前記伸長率Rc」の関係を満たすことを条件として、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.9以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、更に好ましくは3.5以下であり、好ましくは1.5以上4.0以下、より好ましくは1.7以上3.8以下、更に好ましくは1.9以上3.5以下である。
前記伸長率Rbは、「前記伸長率Ra>前記伸長率Rb>前記伸長率Rc」の関係を満たすことを条件として、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.7以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、更に好ましくは3.0以下であり、好ましくは1.3以上3.5以下、より好ましくは1.5以上3.3以下、更に好ましくは1.7以上3.0である。
前記伸長率Rcは、「前記伸長率Ra>前記伸長率Rb>前記伸長率Rc」の関係を満たすことを条件として、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.3以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0037】
おむつ1では、吸収体23の側部領域23Eは中央領域23Cに比して坪量が低いことが好ましい。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eが一層持ち上がりやすくなるので、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、吸収体23の中央領域23Cの坪量に対する吸収体23の側部領域23Eの坪量の比は、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下であり、該側部領域23Eの坪量が低すぎると、吸収性本体2の側部域の剛性が下がりすぎ、吸収体23の側部領域23Eに多数の細かい皴が形成し、腹側ポケット部Paの容積が確保できないという観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、それらの両立の観点から、好ましくは0.1以上0.9以下、より好ましくは0.2以上0.8以下、更に好ましくは0.3以上0.7以下である。吸収体23の坪量は以下の方法により測定することができる。
【0038】
<吸収体の坪量の測定方法>
吸収体の中央領域及び側部領域それぞれから、フェザー安全剃刃株式会社製片刃剃刀を用いてサンプル片を切り出す。切断して得られた中央領域及び側部領域のサンプル片それぞれについて、質量を電子天秤(A&D社製電子天秤GR-300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定する。測定した質量を前記中央領域及び側部領域のサンプル片それぞれの面積で除して該サンプル片の坪量を算出する。算出された坪量を、中央領域及び側部領域の坪量とする。
【0039】
おむつ1では、吸収体23の側部領域23Eは、横方向Y内方に位置する部分が、該横方向Y外方に位置する部分よりも坪量が高いことが好ましい。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eにおける横方向Y外方に位置する部分が、該横方向Y外方に位置する部分よりも持ち上がりやすくなるので、吸収体23の側部領域23E全体も一層立ち上がりやすくなり、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、吸収体23の側部領域23Eにおける横方向Y外方位置する部分の坪量に対する該横方向Y内方に位置する部分の坪量の比は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下であり、横方向Y外方位置する部分の坪量が低すぎると、該部分が立ち上がりやすく腹側ポケット部Paは形成されやすいものの、該部分の剛性が低くなりすぎ細かな皴が発生してしまい、腹側ポケット部Paの容積が担保できなくなる。このような観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、それらの両立の観点から、好ましくは1.1以上4以下、より好ましくは1.2以上3以下、更に好ましくは1.3以上2以下である。より具体的には、吸収体23の側部領域23Eを横方向Yに二等分したときに、横方向Y内方に位置する部分の坪量が、該横方向Y外方に位置する部分の坪量よりも高いことが好ましい。
【0040】
また、吸収体23の側部領域23Eにおける横方向Y外方側ほど持ち上がりやすくし、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようにする観点から、側部領域23Eは、横方向Y内方から横方向Y外方に向かって坪量が漸次小さくなることが好ましい。
【0041】
おむつ1では、腹側弾性部材45どうし間の距離は、横方向Y外方に位置する部分の方が、該横方向Y内方側に位置する部分よりも小さいことが好ましい。こうすることで、外装体4における単位面積当たりの伸長応力が、横方向Y内方側に位置する部分に比して横方向Y外方に位置する部分の方が大きくなるので、吸収体23の側部領域23Eをより立ち上がりやすくすることができ、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、横方向Yにおける吸収体23の端縁よりも横方向Y外方に配されている腹側弾性部材45どうしの間の距離D1が、低坪量部23aと重なる位置に配されている腹側弾性部材45どうしの間の距離D2よりも小さいことが好ましい。具体的には、前記距離D2に対する前記距離D1の比D1/D2は、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。
【0042】
腹側弾性部材45どうし間の距離は、縦方向Xにおける腹側弾性部材45どうし間の距離を意味する。前記距離D1は、横方向Yにおける吸収体23の端縁よりも横方向Y外方の領域における腹側弾性部材45どうし間の距離のうち、最も狭いものとすることができる(図3参照)。前記距離D2は、低坪量部23aにおける横方向Y外方側の側縁と重なる位置における腹側弾性部材45どうし間の距離Pと、低坪量部23aにおける横方向Y内方側の側縁と重なる位置における腹側弾性部材45どうし間の距離Qとのうち、小さい方とすることができる(図3参照)。
【0043】
またおむつ1では、腹側弾性部材45を複数本有している場合、図10(a)及び(b)に示すように、吸収体23よりも横方向Y外方において腹側弾性部材45どうしが接していることも好ましい。こうすることで、外装体4における単位面積当たりの伸長応力を大きくすることができるので、吸収体23の側部領域23Eをより立ち上がりやすくすることができ、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。「腹側弾性部材どうしが接している」とは、複数本の腹側弾性部材45のうち、少なくとも2本が互いに接していることを意味する。複数本の腹側弾性部材45は、全ての腹側弾性部材45それぞれが、吸収体23よりも横方向Y外方において、いずれかの腹側弾性部材45と接していることが好ましい。全ての腹側弾性部材45それぞれが、いずれかの腹側弾性部材45と接している態様には、全ての腹側弾性部材45が互いに接している場合のみならず、一つの腹側弾性部材45に着目したときに、該一の腹側弾性部材45が、該一の腹側弾性部材45に隣り合う腹側弾性部材45とは接しているが、他の腹側弾性部材45とは接していない場合(図10(a)参照)も含まれる。また腹側弾性部材45どうしが接している態様には、平面視において接している場合のみならず、厚み方向に重なっている場合(図10(b)参照)も含まれる。
【0044】
おむつ1では、低坪量部内交差部と重なる位置において、コアラップシート25と表面シート21とが接合されていることが好ましい。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eがより立ち上がりやすくなり、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。コアラップシート25と表面シート21とを接合する方法は特に制限されず、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤により接合してもよいし、コアラップシート25と表面シート21とを超音波や熱等により融着させてもよい。
【0045】
本実施形態のように腹側弾性部材45と背側弾性部材46との交差部7が複数形成されている場合、複数の交差部7のうち、最も横方向Y外方に位置する交差部7aが低坪量部23aと重なる位置に配されていることが好ましい。換言すれば、複数の交差部7のうち、最も横方向Y外方に位置する交差部7aが低坪量部内交差部であることが好ましい。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eがより立ち上がりやすくなるので、腹側ポケット部Paを更に容易に形成することができるようになる。
【0046】
低坪量部内交差部は、おむつ1を縦方向Xに二等分する横方向中央線CLyよりも腹側部A側に配されていることが好ましい。横方向中央線CLyは、幅方向Yに沿って延びている。低坪量部内交差部が横方向中央線CLyよりも腹側部A側に配されていることにより、腹側弾性部材45が、着用者の鼠蹊部にフィットしやすくなるので、おむつ1のレッグ開口部と着用者の脚回りとの間に隙間ができることを防ぐことができる。低坪量部内交差部を複数有する場合、複数の低坪量部内交差部のうち、いずれか1つ以上が横方向中央線CLyよりも腹側部A側に配されていることが好ましい。
【0047】
おむつ1では、低坪量部内交差部における背側弾性部材46の縦方向中央線CLxに対する傾斜角度βが、低坪量部内交差部における腹側弾性部材45の縦方向中央線CLxに対する傾斜角度αよりも小さいことが好ましい。低坪量部内交差部における背側弾性部材46の縦方向中央線CLxに対する傾斜角度βは、低坪量部内交差部における背側弾性部材46の接線TLbと、縦方向中央線CLxとのなす角とすることができる(図7参照)。前記傾斜角度αと前記傾斜角度βとを上述のような関係とすることで、おむつ1の着用時に背側弾性部材46が収縮したときに、図8及び図9に示すとおり、吸収体23の側部領域23Eが斜めに立ち上がりやすくなり、おむつ1の背側部B側に便を一時的にストックすることができる背側ポケット部Pbが形成されやすくなる。図8において符号BLで示す一点鎖線は着用者の身体の外縁を表す。おむつ1に、腹側ポケット部Paに加えて、背側ポケット部Pbが形成されることにより、背側ポケット部Pbにストックされた便が腹側部A側へ拡散することをより効果的に防ぐことができるので、尿を吸収した腹側部側の吸収体23に便が付着することを防ぐことができる。その結果、便をふき取りにくくなってしまうことを防ぐことができ、着用者の肌荒れを防ぐことができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、前記傾斜角度αに対する前記傾斜角度βの比β/αは、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下である。また前記比β/αは、おむつ1の着用者の臀部の外形形状に背側ポケット部Pbがフィットしやすい観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.20以上である。また前記比β/αは、それらの両立の観点から、好ましくは0.1以上0.90以下、より好ましくは0.15以上0.85以下、更に好ましくは0.2以上0.80以下である。前記傾斜角度βは、前記傾斜角度αと同様にして測定することができる。
【0048】
前記傾斜角度βは、おむつ1の着用者の臀部の外形形状に背側ポケット部Pbがフィットしやすい観点から、好ましくは3度以上、より好ましくは8度以上、更に好ましくは10度以上であり、背側ポケット部Pbを形成しやすくし、便をふき取りにくくなってしまうことを防ぎ、着用者の肌荒れを防ぐ観点から、好ましくは85度以下、より好ましくは80度以下、更に好ましくは75度以下であり、それらの両立の観点から、好ましくは3度以上85度以下、より好ましくは8度以上80度以下、更に好ましくは10度以上75度以下である。
【0049】
背側弾性部材46は、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する部分46A、該低坪量部23aと重なる部分46B、該低坪量部23aよりも該横方向Y内方に位置する部分46Cの順に伸長率が低くなっていることが好ましい。こうすることで、吸収体23の側部領域23Eが一層立ち上がりやすくなる。これにより、腹側ポケット部Paを容易に形成することができるようになる。低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置する部分46Aは、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の全体であってもよいし、低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の一部であってもよい。低坪量部23aよりも横方向Y外方に位置している部分の一部は、吸収体23と重なっている部分であってもよいし、吸収体23の側縁より横方向Y外方に位置する部分であってもよい。背側弾性部材46の伸長率は、上述の<弾性部材の伸長率の測定方法>と同様の方法により測定することができる。
【0050】
次に、おむつ1の構成材料について説明する。
内層シート41及び外層シート42等の、外装体4を構成するシートとしては、各種製法による不織布を用いることができ、例えばスパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、メルトブローン不織布、又はこれらの積層不織布等が挙げられる。
【0051】
ウエスト弾性部材43、胴回り弾性部材44及びレッグ弾性部材45としては、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を糸状(糸ゴム等)又は紐状(平ゴム等)に形成したもの等を好ましく用いることができる。ウエスト弾性部材43、胴回り弾性部材44及びレッグ弾性部材45の断面は矩形、正方形、円形、楕円形、多角形状等であってもよい。
【0052】
表面シート21としては、例えば親水性を有する液透過性のシートや、不織布、穿孔フィルムなどを用いることもできる。表面シート21は、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シート21の肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シート21の肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シート21を形成することもできる。
【0053】
一方、裏面シート22としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。おむつの肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シート22の外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0054】
吸収性コア24は例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。
【0055】
吸収性コア24が吸収性ポリマーを含む場合、横方向中央線CLyよりも腹側部A側よりも、該横方向中央線CLyよりも背側部B側の方が吸収体23の飽和吸収容量が小さいことが好ましい。おむつ1においては、腹側部A側に比して背側部B側には尿が到達しにくくなっている。吸収体23の飽和吸収容量を上述のようにすることにより、過剰な尿が背側ポケット部Pbに流入しにくくなるので、背側ポケット部Pbにおいて吸収体23が膨潤して該背側ポケット部Pbが埋まってしまうことを防ぐことができる。以上のことから、便が漏れることを防ぐことができる。
吸収体23の飽和吸収容量は以下の方法により測定することができる。
【0056】
<吸収体の飽和吸収容量の測定方法>
飽和吸収容量の測定は、JISK7223(1996)に準拠して行う。具体的には、まず、ナイロン製の織布(メッシュ開き250、三力製作所販売、品名:ナイロン網、規格:250×メッシュ巾×30m)を幅50cm、長さ80cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、幅方向の両端を1cm幅でヒートシールして幅50cm(内寸49cm)、長さ40cmのナイロン袋を作製する。次に、おむつ1を横方向中央線CLyに沿って切断し、腹側部A側及び背側部B側それぞれから吸収体を取り出す。取り出した吸収体を測定対象試料とする。吸収体がコアラップシートを有する場合、該吸収体はコアラップシートを有する状態で取り出す。そして、腹側部A側及び背側部B側から取り出した測定対象試料をそれぞれ、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。その後、測定対象試料の入ったナイロン袋を試験液に1時間浸漬させる。試験液は、ドイツ硬度4°dHの水又は生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)である。ナイロン袋を試験液に1時間浸漬させた後、ナイロン袋を試験液から取り出し、1時間垂直状態に吊るして液切りした後、該ナイロン袋の重量を測定する。目的とする飽和吸収容量は次式から算出される。
飽和吸収容量(g/g)=(a-b-c)/c
式中、aは、試験液に浸漬させた後に1時間液切りした後の測定対象試料及びナイロン袋の総質量(g)、bは、試験液に浸漬させる前(乾燥時)のナイロン袋の質量(g)、cは、試験液に浸漬させる前(乾燥時)測定対象試料の質量(g)を表す。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を、吸収体の飽和吸収容量とする。
【0057】
コアラップシート25としては、紙、不織布、スパンレース等が挙げられ、これらの中でも不織布を用いることが好ましい。コアラップシート25として不織布を用いることにより、おむつ1を縦方向Xに折り曲げたときに、吸収体23に幅方向Yに沿う皺ができにくく、腹側ポケット部Paの形状を良好なものとすることができる。また、コアラップシート25が濡れた場合であっても、吸収性コア24の非肌対向面側を覆うコアラップシート25と、該コアラップシート25の非肌対向面側にある部材、例えば裏面シート22との接着強度が低下することがないため、長時間おむつ1を装着した場合であっても吸収体23が裏面シート22等から剥がれてしまうことを防ぐことができる。このようなことから、腹側ポケット部Paの形状を良好なものとすることができる。
【0058】
以上、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の吸収性物品は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の吸収性物品は、乳幼児又は成人用の展開型使い捨ておむつ等であってもよい。
また、本実施形態のおむつ1は、腹側弾性部材45と背側弾性部材46との交差部7を複数有していたが、おむつ1は、該交差部7を一つのみ有していてもよい。
【0059】
本発明は更に以下の付記を開示する。
<1>
腹側部、背側部及びその間に位置する股下部を有し、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを備え、該腹側部の両側部と該背側部の両側部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている吸収性物品であって、
吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、
前記吸収体は、前記股下部における縦方向中央線の両側それぞれに、前記縦方向に延びる低坪量部を有しており、
一対のレッグ開口部それぞれにレッグ弾性部材が配されており、前記レッグ弾性部材は、前記腹側部に外方端、前記股下部に内方端を有する腹側弾性部材と、前記背側部に外方端、前記股下部に内方端を有する背側弾性部材とを含んでおり、
前記腹側弾性部材と前記背側弾性部材とは一又は複数の交差部を有し、該交差部のうち少なくとも一つが前記吸収体における前記低坪量部と重なる位置に配されており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部において、前記縦方向中央線に対する傾斜角度が5度以上90度未満であり、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されており、
前記腹側弾性部材の前記内方端は、前記低坪量部よりも前記横方向内方に位置しており、
前記腹側弾性部材は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分、該低坪量部と重なる部分、該低坪量部よりも該横方向内方に位置する部分の順に伸長率が低くなっている、吸収性物品。
<2>
前記腹側弾性部材における、前記低坪量部と重なる部分の伸長率Rbに対する、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分Raの伸長率の比Ra/Rbが、好ましくは1.05以上2.0以下、より好ましくは1.1以上1.9以下、更に好ましくは1.15以上1.8以下である、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記腹側弾性部材における、前記低坪量部よりも前記横方向内方に位置する部分の伸長率Rcに対する、前記低坪量部と重なる部分の伸長率Rbの比Rb/Rcが、1.05以上2.0以下、好ましくは1.1以上1.9以下、より好ましくは1.15以上1.8以下である、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記傾斜角度が、5度以上89度以下、好ましくは10度以上85度以下、より好ましくは15度以上80度以下である、前記<1>~<3>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<5>
前記吸収体は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する側部領域と、該低坪量部どうしの間に位置する中央領域とを有し、
前記側部領域は、前記中央領域に比して坪量が低い、前記<1>~<4>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<6>
前記中央領域の坪量に対する前記側部領域の坪量の比が、0.1以上0.9以下、好ましくは0.2以上0.8以下、より好ましくは0.3以上0.7以下である、前記<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記側部領域の前記横方向の外方に位置する部分の坪量に対する前記横方向の内方に位置する部分の坪量の比が、1.1以上4以下、好ましくは1.2以上3以下、より好ましくは1.3以上2以下である、前記<5>又は<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記腹側弾性部材を複数本有しており、
前記横方向における前記吸収体の端縁よりも該横方向外方に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離が、前記低坪量部と重なる位置に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離よりも小さい、前記<1>~<7>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<9>
前記低坪量部と重なる位置に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離に対する、前記横方向における前記吸収体の端縁よりも該横方向外方に配されている前記腹側弾性部材どうしの間の距離の比が、0.9以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下である、前記<8>に記載の吸収性物品。
<10>
前記腹側弾性部材を複数本有しており、
前記吸収体よりも前記横方向外方において、複数本の前記腹側弾性部材のうち少なくとも2本が互いに接している、前記<1>~<9>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<11>
前記低坪量部が平面視三日月形状を有している、前記<1>~<10>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<12>
前記低坪量部の前記横方向の全幅に対する前記縦方向の全長の比が、1.2以上50以下、より好ましくは2以上好ましくは30以下である、前記<11>に記載の吸収性物品。
<13>
複数本の前記腹側弾性部材を有しており、
前記腹側弾性部材と前記背側弾性部材との前記交差部のうち、最も前記横方向外方に配されている交差部が前記低坪量部と重なる位置に配されている、前記<1>~<12>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<14>
前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートを有し、
前記吸収体は、吸収性コアと該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部と重なる位置において、前記コアラップシートと前記表面シートとが接合している、前記<1>~<13>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<15>
前記横方向における前記吸収体の側部に、前記縦方向に延びる弾性部材が配されている、前記<1>~<14>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<16>
前記吸収体は、吸収性コアと該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有し、
前記コアラップシートが不織布により構成されている、前記<1>~<15>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<17>
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部が前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する横方向中央線よりも前記腹側部側に配されている、前記<1>~<16>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<18>
前記低坪量部と前記背側弾性部材とが交差しており、
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部における前記腹側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度が、該交差部における前記背側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度よりも大きい、前記<1>~<17>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<19>
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部における前記腹側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度に対する、該交差部における前記背側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度の比が、0.1以上0.90以下、より好ましくは0.15以上0.85以下、更に好ましくは0.2以上0.80以下である、前記<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記低坪量部と重なる位置に配された前記交差部における前記背側弾性部材の前記縦方向中央線に対する傾斜角度が、3度以上85度以下、より好ましくは8度以上80度以下、更に好ましくは10度以上75度以下である、前記<18>又は<19>に記載の吸収性物品。
<21>
前記背側弾性部材は、前記低坪量部と重なる位置において弾性伸縮性を発現するように配されており、
前記背側弾性部材は、前記低坪量部よりも前記横方向外方に位置する部分、該低坪量部と重なる部分、該低坪量部よりも該横方向内方に位置する部分の順に伸長率が低くなっている、前記<1>~<20>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<22>
前記吸収体は吸収性ポリマーを含んでおり、
前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する中央線よりも前記腹側部側における前記吸収体の飽和吸収容量の方が、該中央線よりも前記背側部側の前記吸収体の飽和吸収容量よりも大きい、前記<1>~<21>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0060】
1 吸収性物品
2 吸収性本体
21 表面シート
22 裏面シート
23吸収体
23a 低坪量部
3 防漏カフ
4 外装体
41 内層シート
42 外層シート
43 ウエスト弾性部材
44 胴回り弾性部材
45,45a,45b,45c 腹側弾性部材
5a 腹側弾性部材の外方端
5b 腹側弾性部材の内方端
46,46a,46b,46c 背側弾性部材
6a 背側弾性部材の外方端
6b 背側弾性部材の内方端
7, 腹側弾性部材と背側弾性部材との交差部
CLx 縦方向中央線
CLy 横方向中央線
A 腹側部
B 背側部
C 股下部
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11