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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20240807BHJP
   F16K 17/196 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G05D16/06 R
F16K17/196 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021040856
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022140159
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】岩元 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 高弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信一
(72)【発明者】
【氏名】田口 二郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101946(JP,A)
【文献】特開2002-287830(JP,A)
【文献】特開2013-97712(JP,A)
【文献】米国特許第4171004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/06
F16K 17/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、ピストンヘッドの一次側通路内圧受圧面積Amm2と第1弁体の一次側通路内圧受圧面積Bmm2の差A-Bと第1弁体の一次側通路内圧受圧部周長Lmmの比(A-B)/Lが0<(A-B)/L≦0.15であることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
一次側通路が樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する弁体を備える減圧弁機構と、二次側通路の内圧である二次圧が所定値を超えると開弁して二次圧を外部環境に逃し、二次側通路に対峙するダイアフラム等を保護する逃し弁機構/とを備え、住宅等の給湯機に接続される減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成した減圧弁が、特許文献1に開示されている。
特許文献1の図1に示されているように、また本願の図1、2に示すように、特許文献1の減圧弁100は、減圧弁機構101、逃し弁機構102に加えて、減圧弁機構の閉弁時に一次側通路の内圧である一次圧が所定値を超えると開弁して一次圧を二次側通路へ逃すブローバルブ103を備えている。二次側通路へ逃された一次圧は、図2に示すように逃し弁機構102を介して外部環境へ逃されて、減圧弁100の一次通路側部分が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-101946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の減圧弁には、減圧弁機構101と逃し弁機構102とブローバルブ103とを備えるので構成が複雑であるという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ブローバルブの機能を維持しつつブローバルブを廃止した構成が簡素な減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を二次側通路の内圧に応じて可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、減圧弁機構の開弁時には閉弁し減圧弁機構の閉弁時に二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部を形成する接続部を介してボディに連結しボディの一部を形成するシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、小径部と大径部とを有し小径部の一端部が大径部の一端部に接続すると共にピストンヘッドの他端部に対峙し周壁に切欠が形成された大径部がシリンダに摺動可能に外嵌合する筒体と、前記筒体の小径部に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持し更に外部環境との連通穴が形成されたバネケースと、前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体小径部の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、ピストンヘッドの一次側通路内圧受圧面積Amm2と第1弁体の一次側通路内圧受圧面積Bmm2の差A-Bと第1弁体の一次側通路内圧受圧部周長Lmmの比(A-B)/Lが0<(A-B)/L≦0.15であることを特徴とする減圧弁を提供する。
(A-B)/Lに一次側通路内圧を掛けると、第1弁体と第1弁座の当接部に働く単位周長当たりの閉弁方向の付勢力になる。従って、(A-B)/Lを調整することにより、第1弁体と第1弁座の当接部に働く単位周長当たりの閉弁方向の付勢力を調整して、減圧弁閉弁時の減圧弁の漏れ易さを調整することが可能である。この結果、減圧弁にブローバルブの機能を持たせ、減圧弁閉弁時に意図的に所定値を超える一次側通路内圧を二次側通路へ逃がし、逃し弁を介して外部環境へ逃がすことが可能になる。
本発明に好ましい態様においては、一次側通路は樹脂で形成されている。
ボディが樹脂で形成されている場合、ブローバルブ機能により樹脂製の一次側通路の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】従来の減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つブローバルブ閉弁時且つ逃し弁機構閉弁時の断面図である。
図2】従来の減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つブローバルブ開弁時且つ逃し弁機構開弁時の断面図である。
図3】本発明の実施例に係る減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つ逃し弁機構閉弁時の断面図である。
図4】本発明の実施例に係る減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つ逃し弁機構開弁時の断面図である。
図5】本発明の実施例に係る減圧弁の性能試験装置のブロック図である。
図6】本発明の実施例に係る減圧弁の性能試験結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る減圧弁を説明する。
図3、4に示すように、減圧弁1は樹脂製のボディ2を備えている。ボディ2は、一次側通路2aと二次側通路2bとが内部に形成されると共に、シリンダ2cとダイアフラムケース2dとを有している。シリンダ2cはボディ2の一部を形成する環状壁2eを介してボディ2に連結しボディ2の一部を形成している。一次側通路2aは図示しない配管を介して図示しない水道配管に接続され、二次側通路2bは図示しない配管を介して図示しない住宅用給湯機と吐水装置とに接続されている。
減圧弁1は、シリンダ2c内で往復摺動するピストンヘッド3と、ピストンヘッド3とシリンダ2c内周面との摺接部をシールするOリング4と、ピストンヘッド3の一端部から延びてシリンダ2cの一端部からシリンダ2c外の二次側通路2bへ突出するピストンロッド5と、シリンダ2cの前記一端部が形成する第1弁座6と、ピストンロッド5のシリンダ2c外へ突出した一端部に固定されて第1弁座6と対峙する第1弁体7と、シリンダ2c周壁のピストンロッド5に対峙する部位に形成された開口8と、第1弁体7に係合してピストンヘッド3を閉弁方向へ付勢する第1バネ9と、ボディ2に圧入固定されてボディ2の一部を形成し、第1バネ9を支持すると共に第1弁体7を摺動可能に案内するバネ押さえ2fとを備えている。
【0008】
減圧弁1は、小径部10aと大径部10bとを有し、小径部10aの一端部が大径部10bの一端部に接続すると共にシリンダ2c外へ突出したピストンヘッド3の他端部に対峙し、周壁に切欠10cが形成された大径部10bがシリンダ2cに摺動可能に外嵌合する筒体10を備えている。シリンダ2cの他端部から後述する感圧室12内へ突出するピストンヘッド3の他端部から径方向外方へ延びる複数の爪3aが筒体大径部10bの複数の切欠10cに進入している。切欠10cは筒体大径部10bの他端から筒体軸線方向へ延びる第1部位と前記第1部位の終端から周方向へ延びる第2部位とを有しており、爪3aは切欠10cの第1部位を経由して第2部位に進入し、第2部位内に止まっている。
【0009】
減圧弁1は、前記筒体の小径部10aに中心部が固定されたダイアフラム11と、ボディ2の一部により形成されダイアフラム11に対峙しダイアフラム11とシリンダ2cとピストンヘッド3と環状壁2eと協働して二次側通路2bに連通する感圧室12を形成する前述のダイアフラムケース2dと、ダイアフラム11を感圧室12側へ押圧する第2バネ13と、第2バネ13と前記筒体小径部10aの他端部とを収容すると共にダイアフラムケース2dと協働してダイアフラム11の周縁部を挟持するバネケース14と、バネケース14の一部を形成すると共に外部環境へ延びる排水筒14aと、筒体小径部10aの前記一端部に配設された第2弁座15と、ピストンヘッド3の他端部に配設され前記筒体小径部10aの前記一端部に配設された第2弁座15に対峙する第2弁体16と、第2弁体16を閉弁方向へ付勢する第3バネ17を備えている。第3バネ17のバネ定数は小さな値に設定されている。
【0010】
シリンダ2c、ピストンヘッド3、第1弁座6、第1弁体7、第1バネ9、ダイアフラム11、第2バネ13等によって減圧弁機構αが形成されている。
筒体10、第2弁座15、第2弁体16、第3バネ17、ピストンヘッド3、第1バネ9等により逃し弁機構βが形成されている。
減圧弁機構αと逃し弁機構βとは中心軸線Xを共有するリフト弁機構である
後述するように、減圧弁機構αが開弁している時は、逃し弁機構βは閉弁しており、ピストンヘッド3と筒体10は一体となって往復移動する。減圧弁機構αが閉弁した後、二次側通路2bの内圧が上昇して所定値を超えると、筒体10がピストンヘッド3から離間して逃し弁機構βが開弁する。
ピストンヘッド3の一次側通路内圧受圧面積Amm2(シリンダ2c内壁面が形成する円の面積-ピストンロッド5最小断面積)と第1弁体7の一次側通路内圧受圧面積Bmm2(弁座6先端が形成する円の面積-ピストンロッド5最小断面積)の差A-Bと第1弁体の一次側通路内圧受圧部周長Lmm(弁座6先端が形成する円の周長)の比(A-B)/Lが0<(A-B)/L≦0.15に設定されている。
図2に示した従来のブローバルブ103は配設されていない。
【0011】
減圧弁1の作動を説明する。
二次側通路2bに図示しない配管を介して接続された図示しない吐水装置が閉鎖され、前記配管内の水流が停止している時は、図3に示すように、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは閉弁している。逃し弁機構βも二次側通路2bの内圧(以下二次圧と呼ぶ)が開弁圧に達していないかぎり、第1バネ9の付勢力を受けた第2弁体16が第2弁座15に当接して閉弁している。
二次側通路2bと感圧室12とは連通しているので、二次圧がダイアフラム11に印加される。一次側通路2aの内圧である一次圧はオーリング4がピストンヘッド3とシリンダ2cとの摺接部をシールすることにより、感圧室12には伝達されず、ダイアフラム11には印加されない。
【0012】
前記吐水装置が開放されると、二次圧が低下し、ダイアフラム11に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が減少して、第1弁体7が第1弁座6から離れ、減圧弁機構αは開弁する。第1弁体7と第1弁座6との間に形成された環状隙間を水道水が流れる際に圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
減圧弁機構αの作動時には、ピストンヘッド3の他端部に配設された第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部が、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部に、第1バネ9の付勢力で当接してピストンヘッド3と筒体10とが一体となって往復動する。
減圧弁機構αの作動中に、何らかの原因で二次圧が上昇すると、第2バネ13の付勢力に抗してダイアフラム11が第1弁座6から遠ざかる方向へ弾性変形し、ダイアフラム11に固定された筒体10がピストンヘッド3から遠ざかる方向へ移動し、第1バネ9の付勢力を受けたピストンヘッド3が、ひいては第1弁体7が筒体10に追随して移動し、第1弁体7が第1弁座6に接近する。この結果、第1弁座7と第1弁体6との間の環状隙間が狭まり、前記環状隙間を水道水が通過する際の圧力損失が増加する。この結果、二次圧が下降する。従って、減圧弁機構αにより、二次圧は所定の設定圧に維持される。
【0013】
減圧弁機構αの作動中に、二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧まで上昇すると、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは図3の閉弁状態になる。この時、第2弁体16とその周囲のピストンヘッド3他端部と、筒体10小径部10aの一端部に配設された第2弁座15とその周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部、との当接部には減圧弁機構α閉弁時の第1バネ9の付勢力から第1弁体7と第1弁座6の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力が作用している。
二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧を超えて更に上昇すると、ダイアフラム11が第1弁座6から遠ざかる方向へ更に弾性変形し、筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動する。筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動すると、第2弁体16周囲のピストンヘッド3他端部と第2弁座15周囲の筒体10小径部10aと大径部10bの接続部との当接部に働いていた押圧力が零になる一方、第1バネ9の残存付勢力である第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体16は、第2弁座15との間の押圧力を減少させつつ第2弁座15との当接状態を維持して筒体10の移動に追随し、逃し弁機構βの閉弁状態が維持される。その後、第2弁体16の逃し弁機構β閉弁方向への移動が図示しないストッパーによって阻止される。
【0014】
二次側機器の故障や水撃等によって二次圧が更に上昇して所定値を超えると、筒体10がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動し、第1バネ9の残存付勢力である第3バネ17の付勢力が零になり、第2弁体16と第2弁座15との間の押圧力が零になり、図4に示すように、第2弁座15が第2弁体16から離れ、逃し弁機構βが開弁する。感圧室12が、ひいては二次側通路2bが、筒状部材10の大径部10bに形成された切欠10cと、第2弁座15と第2弁体16の間の隙間と、筒状部材10の小径部10aと、バネケース14の内部空間と、排水筒14aと、を介して外部環境に連通する。この結果、感圧室12内、ひいては二次側通路2b内の流体がバネケース14の内部空間へ流入し、排水筒14aを介して外部環境に放出され、二次圧が低下して、二次側通路2bに接続された水回り機器と減圧弁1の損傷が防止される。
二次圧が所定値まで低下すると逃し弁機構βが閉弁して、図3に示す状態に復帰し、更に減圧弁閉弁圧よりも低下すると、第1弁体7が第1弁座6から離れて減圧弁機構αが開弁する。
【0015】
減圧弁機構αの閉弁時に一次圧が上昇すると、第1弁体7と第1弁座6の当接部を介して一次圧が僅かずつ二次側通路2bへ漏れ、従来のブローバルブの設定圧近傍まで一次圧が上昇すると漏れ量が急増して、二次圧が急増し逃し弁機構βが開弁する。この結果、一次圧が外部環境へ逃がされて、減圧弁1の樹脂製の一次側通路の損傷が防止される。
【0016】
減圧弁1の性能試験を行った。試験の内容及び結果を以下に説明する。
(1)供試減圧弁諸性能:
一次圧(水道圧):0~750kPa
設定圧(減圧弁が閉弁する二次圧):175kPa
逃し弁開弁圧: 192kPa
ブローバルブ開弁圧(従来の減圧弁が備えていたブローバルブの開弁圧):約2.0MPa
(2)供試減圧弁の(A-B)mm2/Lmmの数値
(1)0.31(従来のブローバルブ付き減圧弁の値)
(2)0.15(Aを(1)の試供品と同一数値に固定し、第1弁座6の径を微調整してBとLを微調整した)
(3)0.08(同上)
(3)試験装置及び試験手順
図5に示す装置を用い、以下の手順で試験を行った。
(1)開閉弁を開き、圧力源から水道圧100kPaを通水させる。
(2)開閉弁を閉じ配管内を水で満たす。二次圧が設定圧未満なので減圧弁機構αは開いており、一次圧、二次圧共に100kPaになる。
(3)圧力源から手押しポンプを用いて一次圧を上昇させる。二次圧が設定圧に達するまでは減圧弁機構αは開いており、一次圧と二次圧とは同一値を維持する。二次圧が設定圧に達すると減圧弁機構αが閉じる。
(4)一次圧が200kPaに達した時点で、圧力計を用いて一次圧と二次圧の計測を始める。一次圧が200kPaに達した時点では減圧弁機構αは既に閉じており、一次圧と二次圧とは異なる値になる。
(5)一次圧を上昇させつつ、一次圧と二次圧とを計測する。
(4)試験結果
(A-B)/Lが0.31(従来品に相当)、0.15、0.08の3つの試供品について一次圧と二次圧の相関線を図6に示す。
図6から分かるように、(A-B)/Lが0.31の従来品に相当する試供品では、一次圧が上昇しても二次圧は上昇せず逆に僅かに減少することがわかる。これは、減圧弁機構αの漏れがなく、第1弁体7が第1弁座6に食い込んで二次側通路2bの体積が僅かに増大したことを意味している。
一方(A-B)/Lが0.15、0.08の試供品では、一次圧が減圧弁の通常使用域0~750kPaにある時は二次圧の上昇は僅かであり、一次圧が通常使用域を超えた後に二次圧の上昇が増大して、一次圧が従来のブローバルブの開弁圧である2MPaの近傍、1.5~2.0MPaに達した時点で、二次圧が逃し弁機構βの開弁圧に達していることが分かる。これは、減圧弁が従来のブローバルブの機能を奏し、過大な一次圧を二次側通路と逃し弁機構βを介して外部環境に逃がしていることを意味している。
減圧弁の機能を担保する観点から一般にA>Bに設定されているので、(A-B)/Lはプラスの値になる。従って、上記試験結果から、(A-B)/Lを0<(A-B)/L≦0.15とすることにより、従来のブローバルブを減圧弁に代替させ、従来のブローバルブを廃止できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、逃し弁機構を備える減圧弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 減圧弁
2 ボディ
2a 一次側通路
2b 二次側通路
2c シリンダ
2d ダイアフラムケース
3 ピストンヘッド
6 第1弁座
7 第1弁体
9 第1バネ
10 筒体
11 ダイアフラム
12 感圧室
13 第2バネ
14 バネケース
15 第2弁座
16 第2弁体
14a 排水筒
α 減圧弁機構
β 逃し弁機構
103 ブローバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6