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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】麦芽発酵飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 12/00 20060101AFI20240807BHJP
   C12C 12/02 20060101ALI20240807BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20240807BHJP
   C12C 7/04 20060101ALI20240807BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240807BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240807BHJP
【FI】
C12C12/00
C12C12/02
C12C5/02
C12C7/04
C12G3/06
A23L2/38 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021041293
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141125
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 央行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠一
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽平
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-103245(JP,A)
【文献】特開2012-125205(JP,A)
【文献】特開2020-167955(JP,A)
【文献】特開平09-094085(JP,A)
【文献】特開2018-007605(JP,A)
【文献】特開2018-186776(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102311897(CN,A)
【文献】橋本直樹,ビールの匂い,香料,1975年09月,No.112,pp.23-39
【文献】醸造物の成分,日本醸造協会編,1999年12月10日,pp.210-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23L 2/
C12C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽比率が10質量%以上、プリン体の含有量が2.0mg/100ml未満、及び原麦汁エキス濃度が5.0質量%以上であり、
糖質含有量が、1.5g/100ml以下であり、
プロリンの含有量が、80mg/L以上であり、
アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有し、
アセトアルデヒドの含有量(X)が0.1質量ppm以上25.0質量ppm以下であり、
酢酸エチルの含有量(Y)が1.0質量ppm以上40質量ppm以下であり、
アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸エチルの含有量(Y)(単位:質量ppm)の比〔(Y)/(X)〕が1.5~40.0である、麦芽発酵飲料。
【請求項2】
プロリンの含有量が、100mg/L以上である、請求項1に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項3】
糖化工程でリパーゼをpH4.4以上5.5未満の条件下で作用させて製造された飲料を除く、請求項1又は2に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項4】
アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸エチルの含有量(Y)の合計含有量が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、1.1~60質量ppmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項5】
さらに酢酸イソアミルを含有し、アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸イソアミルの含有量(Z)(単位:質量ppm)の比〔(Z)/(X)〕が0.1~8.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項6】
さらに酢酸イソアミルを含有し、酢酸イソアミルの含有量(Z)が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、0.1~10.0質量ppmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項7】
アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸イソアミルの含有量(Z)の合計含有量が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、0.2~30質量ppmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項8】
発酵液を、モンモリロナイトを主要成分とする吸着剤により処理して製造された飲料を除く、請求項1~7のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項9】
麦芽使用比率が20%以上、プリン体含量が1.0mg/100ml未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項10】
蒸留酒を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項11】
前記比〔(Y)/(X)〕が2.1~40.0である、請求項1~10のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【請求項12】
前記比〔(Y)/(X)〕が6.0~40.0である、請求項1~10のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦芽発酵飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なビールや発泡酒のような麦芽発酵飲料には、プリン体が含まれている。プリン体は、肝臓で代謝されて尿酸となるが、その尿酸は、結晶化して関節にたまり痛風になる要因となる。そのため、プリン体を低減させた麦芽発酵飲料が望まれている。
例えば、特許文献1には、原料に占める麦芽使用比率が高いにも拘わらず、プリン体含有量が非常に少ないビール様発泡性飲料を製造する方法、及び当該方法を用いて製造されたビール様発泡性飲料に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-64503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において、プリン体の含有量を低減させた麦芽発酵飲料は様々検討されているが、プリン体の含有量を低減しつつも、更なる改良がなされた麦芽発酵飲料(例えば、ビールテイスト飲料らしい味わいを有し、不適な香りが抑制された麦芽発酵飲料)が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、麦芽比率、プリン体の含有量、及び原麦汁エキス濃度を所定の範囲に調整しつつ、アセトアルデヒド及び酢酸エチルを所定の割合で含有する、麦芽発酵飲料を提供する。具体的には、本発明は下記態様[1]~[13]を提供する。
[1]
麦芽比率が10質量%以上、プリン体の含有量が2.0mg/100ml未満、及び原麦汁エキス濃度が5.0質量%以上であり、
アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有し、
アセトアルデヒドの含有量(X)が25.0質量ppm以下であり、
アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸エチルの含有量(Y)(単位:質量ppm)の比〔(Y)/(X)〕が1.5~40.0である、麦芽発酵飲料。
[2]
アセトアルデヒドの含有量(X)が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、0.1~25.0質量ppmである、上記[1]に記載の麦芽発酵飲料。
[3]
酢酸エチルの含有量(Y)が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、1.0~70質量ppmである、上記[1]又は[2]に記載の麦芽発酵飲料。
[4]
アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸エチルの含有量(Y)の合計含有量が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、1.1~100質量ppmである、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[5]
さらに酢酸イソアミルを含有し、アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸イソアミルの含有量(Z)(単位:質量ppm)の比〔(Z)/(X)〕が0.1~8.0である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[6]
さらに酢酸イソアミルを含有し、酢酸イソアミルの含有量(Z)が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、0.1~10.0質量ppmである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[7]
アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸イソアミルの含有量(Z)の合計含有量が、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、0.2~30質量ppmである、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[8]
糖質含有量が、1.5g/100ml以下である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[9]
麦芽使用比率が20%以上、プリン体含量が1.0mg/100ml未満である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
[10]
蒸留酒を含む、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の麦芽発酵飲料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の麦芽発酵飲料は、例えば、プリン体の含有量を低減しつつも、ビールテイスト飲料らしい味わいを有し、不適な香りが抑制された飲料となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.麦芽発酵飲料
本明細書において、「麦芽発酵飲料」とは、少なくとも麦芽及び水を原料とし、原料として酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいう。
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、アルコール度数が1(v/v)%以上のアルコール含有麦芽発酵飲料であってもよく、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコール麦芽発酵飲料であってもよい。なお、ノンアルコール麦芽発酵飲料は、酵母を用いた発酵工程を経た後、当該発酵工程で生じたアルコールを除去して製造してもよく、もしくは、酵母を用いた発酵工程をアルコール度数が1(v/v)%未満の段階で停止して製造してもよい。
【0008】
また、本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、ビール様の風味を有するアルコール含有又はノンアルコールの炭酸飲料であるビールテイスト飲料であることが好ましく、大麦麦芽使用ビールテイスト飲料であることがより好ましい。
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、上面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたエールビールテイスト飲料であってもよく、下面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたラガービールテイスト飲料であってもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、ビールであってもよく、ビールではない麦芽発酵飲料(発泡酒等)であってもよい。なお、本明細書において、「ビール」とは、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいい、具体的には、平成30年4月1日が施行日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達で定義されたものを意味する。
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、スピリッツ、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒を含有する、蒸留酒含有麦芽発酵飲料であってもよい。なお、蒸留酒含有麦芽発酵飲料の中でも、スピリッツを含む麦芽発酵飲料が好ましく、小麦スピリッツを含む麦芽発酵飲料がより好ましい。
【0010】
本発明の麦芽発酵飲料は、麦芽比率が10質量%以上、プリン体の含有量が2.0mg/100ml未満、及び原麦汁エキス濃度が5.0質量%以上であって、アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有し、アセトアルデヒドの含有量(X)が25.0質量ppm以下であり、アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸エチルの含有量(Y)(単位:質量ppm)の比〔(Y)/(X)〕が1.5~40.0である。
このように調整した麦芽発酵飲料とすることで、プリン体の含有量を2.0mg/100ml未満と低減した飲料にも拘わらず、ビールテイスト飲料らしい味わいを良好としつつ、ビールテイスト飲料として不適な香りの抑制効果が高い飲料とすることができる。
【0011】
本発明の麦芽発酵飲料において、麦芽比率は、ビールテイスト飲料らしい味わいに優れた麦芽発酵飲料とする観点から、10質量%以上であるが、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは22質量%以上、更に好ましくは24質量%以上、より更に好ましくは28質量%以上であり、さらに、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上としてもよく、また、100質量%以下であるが、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下としてもよい。
本明細書において、「麦芽比率」とは、平成30年4月1日が施行日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。
【0012】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、プロリンの含有量としては、好ましくは25mg/L以上、より好ましくは30mg/L以上、更に好ましくは35mg/L以上、より更に好ましくは40mg/L以上、特に好ましくは50mg/L以上であり、さらに、60mg/L以上、70mg/L以上、80mg/L以上、90mg/L以上、又は100mg/L以上としてもよく、また、400mg/L以下、350mg/L以下、320mg/L以下、300mg/L以下、280mg/L以下、250mg/L以下、220mg/L以下、210mg/L以下、200mg/L以下、190mg/L以下、180mg/L以下、170mg/L以下、160mg/L以下、又は150mg/L以下としてもよい。
なお、プロリンは、麦芽等の麦に比較的多く含まれており、発酵工程の前後においても含有量があまり変化しないアミノ酸の一種である。そのプロリンの含有量が上記範囲であれば、味わいがより良好な麦芽発酵飲料とすることができる。
なお、本明細書において、プロリンの含有量は、例えば、株式会社日立製作所製のアミノ酸自動分析装置L-8800A型等を用いて測定することができる。
【0013】
本発明の麦芽発酵飲料において、プリン体の含有量は、2.0mg/100mL未満であるが、好ましくは1.5mg/100mL以下、より好ましくは1.2mg/100mL以下、更に好ましくは1.0mg/100mL以下であり、さらに、1.0mg/100mL未満、0.8mg/100mL以下、0.7mg/100mL以下、0.6mg/100mL以下、0.5mg/100mL以下、又は0.5mg/100mL未満としてもよく、また、0.00mg/100mL超、0.01mg/100mL以上、0.05mg/100mL以上、0.1mg/100mL以上、0.15mg/100mL以上、又は0.2mg/100mL以上としてもよい。
【0014】
なお、本明細書において、「プリン体」とは、アデニン、キサンチン、グアニン、及びヒポキサンチンのプリン体塩基4種を意味する。
なお、プリン体の定量では、アデニル酸及びアデノシンは「アデニン」と区別して定量することが困難であり、また、グアニル酸及びグアノシンも「グアニン」と区別して定量するが困難である。そのため、「アデニン」には、アデニン塩基と、アデニル酸及びアデノシンとが含まれる。また、「グアニン」には、グアニン塩基と、グアニル酸及びグアノシンとが含まれる。
【0015】
そして、麦芽発酵飲料中のプリン体の含有量は、上述のプリン体塩基4種の合計含有量であって、過塩素酸処理後にLC-MS/MSを用いて検出する方法(「酒類のプリン体の微量分析のご案内」、財団法人日本食品分析センター、インターネット(https://www.jfrl.or.jp/storage/file/news_vol4_no23.pdf、平成27年8月検索)により測定した値を意味する。
【0016】
本発明の麦芽発酵飲料において、原麦汁エキス濃度は、ビールテイスト飲料らしい味わいに優れた麦芽発酵飲料とする観点から、5.0質量%以上であるが、好ましくは6.0質量%以上、より好ましくは6.5質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、より更に好ましくは8.0質量%以上、特に好ましくは8.5質量%以上であり、また、ビールテイスト飲料らしい爽やかな香り及び甘い香りが引き立つ麦芽発酵飲料とする観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下、更に好ましくは15.0質量%以下、より更に好ましくは14.0質量%以下、特に好ましくは13.0質量%以下である。
【0017】
なお、本明細書において、「原麦汁エキス濃度」は、「オリジナルエキス濃度」と同義である。また、本明細書における「オリジナルエキス濃度」は、アルコール度数が1(v/v)%以上であるアルコール含有飲料においては、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15℃の時において原容量100cm中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。また、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコール飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める分析法(BCOJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2013年増補改訂版))に従い測定したエキス値(質量%)をいう。
【0018】
本発明の麦芽発酵飲料は、アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有し、アセトアルデヒドの含有量(X)が25.0質量ppm以下であり、アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸エチルの含有量(Y)(単位:質量ppm)の比〔(Y)/(X)〕が1.5~40.0となるように調整している。
本発明のように、プリン体の含有量を低減した麦芽発酵飲料において、アセトアルデヒドはビールテイスト飲料らしい味わいの向上に寄与し、酢酸エチルは、ビールテイスト飲料として不適な香りを抑制してビールテイスト飲料らしい爽やかな香りの向上に寄与する。そして、本発明の麦芽発酵飲料では、これらをバランス良く向上させた麦芽発酵飲料とするために、アセトアルデヒドの含有量(X)を25.0質量ppm以下とし、且つ、前記比〔(Y)/(X)〕を1.5~40.0としている。
【0019】
本発明の麦芽発酵飲料において、ビールテイスト飲料として不適な香りをより抑制してビールテイスト飲料らしい爽やかな香りを良好とした麦芽発酵飲料とする観点から、アセトアルデヒドの含有量(X)は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、25.0質量ppm以下であるが、好ましくは20質量ppm以下、より好ましくは15質量ppm以下、更に好ましくは11質量ppm以下、より更に好ましくは8.5質量ppm以下、特に好ましくは7.8質量ppm以下であり、さらに、7.5質量ppm以下、7.0質量ppm以下、6.5質量ppm以下、又は6.0質量ppm以下としてもよい。
また、本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、ビールテイスト飲料らしい味わいをより向上させた麦芽発酵飲料とする観点から、アセトアルデヒドの含有量(X)は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量ppm以上、より好ましくは0.6質量ppm以上、更に好ましくは0.8質量ppm以上、より更に好ましくは1.0質量ppm以上、特に好ましくは1.3質量ppm以上であり、さらに、1.5質量ppm以上、2.0質量ppm以上、2.3質量ppm以上、又は2.5質量ppm以上としてもよい。
【0020】
本発明の麦芽発酵飲料において、ビールテイスト飲料らしい味わいと、ビールテイスト飲料として不適な香りを抑制したビールテイスト飲料らしい爽やかな香りとをよりバランス良く向上させた麦芽発酵飲料とする観点から、前記比〔(Y)/(X)〕は、1.5~40.0であるが、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.5以上、より更に好ましくは3.0以上、特に好ましくは3.5以上であり、さらに、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、又は7.0以上としてもよく、また、好ましくは35.0以下、より好ましくは30.0以下、更に好ましくは25.0以下、より更に好ましくは22.0以下である。
【0021】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、ビールテイスト飲料として不適な香りをより抑制してビールテイスト飲料らしい爽やかな香りをより向上させた麦芽発酵飲料とする観点から、酢酸エチルの含有量(Y)は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.0質量ppm以上、より好ましくは3.0質量ppm以上、更に好ましくは5.0質量ppm以上、より更に好ましくは7.0質量ppm以上、特に好ましくは10.0質量ppm以上であり、さらに、12.0質量ppm以上、13.5質量ppm以上、15.0質量ppm以上、又は16.5質量ppm以上としてもよい。
また、ビールテイスト飲料らしい味わいを良好とした麦芽発酵飲料とする観点から、酢酸エチルの含有量(Y)は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは70質量ppm以下、より好ましくは60質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、より更に好ましくは40質量ppm以下、特に好ましくは35質量ppm以下であり、さらに、30質量ppm以下、28質量ppm以下、27質量ppm以下、26質量ppm以下、又は25質量ppm以下としてもよい。
【0022】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、ビールテイスト飲料らしい味わいと、ビールテイスト飲料として不適な香りを抑制したビールテイスト飲料らしい爽やかな香りとをよりバランス良く向上させた麦芽発酵飲料とする観点から、アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸エチルの含有量(Y)との合計含有量は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.1質量ppm以上、より好ましくは1.6質量ppm以上、より好ましくは3.0質量ppm以上、更に好ましくは5.0質量ppm以上、より更に好ましくは7.0質量ppm以上、特に好ましくは10.0質量ppm以上であり、さらに、12.0質量ppm以上、13.5質量ppm以上、15.0質量ppm以上、17.5質量ppm以上、又は20.0質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは90質量ppm以下、より好ましくは80質量ppm以下、更に好ましくは70質量ppm以下、より更に好ましくは60質量ppm以下、特に好ましくは55質量ppm以下であり、さらに、50質量ppm以下、45質量ppm以下、40質量ppm以下、35質量ppm以下、又は30質量ppm以下としてもよい。
【0023】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに酢酸イソアミルを含有することが好ましい。
酢酸イソアミルを含有することで、アセトアルデヒドによるビールテイスト飲料らしい味わいの向上効果をより引き立たせることができる。また、ビールテイスト飲料として不適な香りを抑制してビールテイスト飲料らしい爽やかな香りをより向上させた麦芽発酵飲料とすることもできる。
【0024】
上記観点から、本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、アセトアルデヒドの含有量(X)(単位:質量ppm)に対する酢酸イソアミルの含有量(Z)(単位:質量ppm)の比〔(Z)/(X)〕は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.6以上であり、さらに、0.8以上、1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、又は2.0以上としてもよく、また、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.5以下、より更に好ましくは6.0以下、特に好ましくは5.5以下であり、さらに、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.7以下、3.5以下、3.2以下、又は3.0以下としてもよい。
【0025】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、酢酸イソアミルの含有量(Z)は、上記観点から、前記麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1質量ppm以上、より好ましくは0.3質量ppm以上、更に好ましくは0.5質量ppm以上、より更に好ましくは0.7質量ppm以上、特に好ましくは1.0質量ppm以上であり、さらに、1.2質量ppm以上、1.4質量ppm以上、1.6質量ppm以上、1.8質量ppm以上、又は2.0質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは10.0質量ppm以下、より好ましくは9.0質量ppm以下、更に好ましくは8.0質量ppm以下、より更に好ましくは7.0質量ppm以下、特に好ましくは6.0質量ppm以下であり、さらに、5.5質量ppm以下、5.0質量ppm以下、4.7質量ppm以下、4.5質量ppm以下、4.2質量ppm以下、4.0質量ppm以下、又は3.8質量ppm以下としてもよい。
【0026】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、アセトアルデヒドの含有量(X)と酢酸イソアミルの含有量(Z)の合計含有量は、前記麦芽発酵飲料の全量基準で、好ましくは0.2質量ppm以上、より好ましくは0.5質量ppm以上、更に好ましくは1.0質量ppm以上、より更に好ましくは1.5質量ppm以上、特に好ましくは2.0質量ppm以上であり、また、2.5質量ppm以上、3.0質量ppm以上、3.5質量ppm以上、4.0質量ppm以上、4.5質量ppm以上、又は5.0質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは30質量ppm以下、より好ましくは25質量ppm以下、更に好ましくは20質量ppm以下、より更に好ましくは15質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下であり、さらに、9.0質量ppm以下、8.5質量ppm以下、8.0質量ppm以下、7.5質量ppm以下、7.0質量ppm以下、6.5質量ppm以下、6.0質量ppm以下、又は5.5質量ppm以下としてもよい。
【0027】
なお、本発明の一態様において、アセトアルデヒドの含有量(X)、酢酸エチルの含有量(Y)、及び酢酸イソアミルの含有量(Z)は、例えば、各成分の添加量を調整するだけでなく、発酵条件等を適宜調整することによっても調整することができる。
【0028】
また、アセトアルデヒドの含有量(X)、酢酸エチルの含有量(Y)、及び酢酸イソアミルの含有量(Z)は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定することができる。
【0029】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、近年の健康志向に適合した麦芽発酵飲料とする観点から、糖質含有量は、1.5g/100ml以下、1.2g/100ml以下、1.0g/100ml以下、0.8g/100ml以下、0.7g/100ml以下、0.6g/100ml以下、0.5g/100ml以下、又は0.5g/100ml未満であってもよく、また、0.01g/100ml以上、0.05g/100ml以上、0.1g/100ml以上、又は0.2g/100ml以上としてもよい。
【0030】
なお、本明細書において、「糖質」とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号、一部改正平成25年9月27日消費者庁告示第8号)に基づく糖質をいい、具体的には、対象となる食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、アルコール分及び水分を除いたものを意味する。そのため、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除することにより算定することができる。
ここで、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定することができる。具体的には、タンパク質の量は窒素定量換算法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法で測定し、食物繊維の量はプロスキー法で測定し、灰分の量は直接灰化法で測定し、水分の量は減圧加熱乾燥法で測定することができる。
【0031】
なお、本発明の一態様の麦芽発酵飲料の糖質含有量は、水の添加量を調整するだけでなく、原麦汁エキス濃度を上記範囲に調整するために、酵素の種類、添加量、及び添加のタイミング、糖化液を調製する際の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵工程の諸条件(酵母の添加量及び添加のタイミング、発酵温度、発酵時間)等を適宜設定することでも調整することができる。
【0032】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の苦味価は、ビールテイスト飲料らしい飲料とする観点から、好ましくは60BUs未満、より好ましくは55BUs以下、更に好ましくは50BUs以下、より更に好ましくは45BUs以下、特に好ましくは40BUs以下であり、35BUs以下、30BUs以下、又は25BUs以下としてもよい。
なお、本発明の一態様の麦芽発酵飲料が原材料としてホップを用いた飲料である場合、当該飲料の苦味価は、5BUs以上、7BUs以上、10BUs以上、12BUs以上、又は15BUs以上としてもよい。
また、本発明の一態様の麦芽発酵飲料が原材料としてホップを用いない飲料である場合、当該飲料の苦味価は、5.0BUs未満、3.0BUs以下、2.0BUs以下、1.0BUs以下、0.5BUs以下、又は0.3BUs以下としてもよい。
なお、本発明の一態様の麦芽発酵飲料の苦味価は、イソフムロンを主成分とするホップ由来成分により与えられる苦味の指標であり、ホップまたはホップエキス等のホップ由来成分の使用量を適宜調整することにより制御できる。
また、本明細書において、飲料の「苦味価」は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載された測定法よって測定することができる。
【0033】
上述のとおり、本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、アルコール含有麦芽発酵飲料であってもよく、ノンアルコール麦芽発酵飲料であってもよい。
アルコール含有麦芽発酵飲料である場合における、本発明の一態様の麦芽発酵飲料のアルコール度数としては、爽快な刺激を感じることができる飲料とする観点から、1.0(v/v)%以上、1.5(v/v)%以上、2.0(v/v)%以上、2.5(v/v)%以上、3.0(v/v)%以上、3.5(v/v)%以上、4.0(v/v)%以上、4.5(v/v)%以上、5.0(v/v)%以上、5.4(v/v)%以上、又は5.7(v/v)%以上としてもよく、また、飲みやすい麦芽発酵飲料とする観点から、20.0(v/v)%以下、17.0(v/v)%以下、15.0(v/v)%以下、12.0(v/v)%以下、10.0(v/v)%以下、9.0(v/v)%以下、8.0(v/v)%以下、又は7.0(v/v)%以下としてもよい。
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率((v/v)%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0034】
なお、本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、アルコール度数を調製するために、アルコール成分として、さらに、蒸留酒を含有してもよく、また、穀物に由来するスピリッツを含有してもよい。
ここで、スピリッツとは、小麦、大麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。
これらの中でも、本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、良質な味わいを有する麦芽発酵飲料とする観点から、小麦スピリッツを含有することが好ましい。
【0035】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色や黄金色、黒ビールのような黒色、又は、無色透明であってもよく、あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。麦芽発酵飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
【0036】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料のpHは、特に限定されないが、微生物の発生を抑制する観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.7以下、更に好ましくは4.6以下、より更に好ましくは4.5以下であり、また、飲料の香味の向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.2以上、より更に好ましくは3.5以上であり、さらに、4.0以上、又は4.2以上としてもよい。
【0037】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、飲料が容器に詰められた態様であればよく、容器の例としては、例えば、ビン、ペットボトル、缶、又は樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビン、ペットボトルが好ましい。
【0038】
1.1 原材料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の主な原材料としては、水及び麦芽を用いる。さらに本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、原材料として、ホップを用いた飲料であってもよく、ホップを用いない飲料であってもよい。
その他に、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を用いてもよい。
【0039】
1.1.1 麦芽、麦芽以外の穀物
原材料として麦芽を用いる場合、当該麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。
本発明の一態様で用いる麦芽としては、大麦麦芽が好ましい。大麦麦芽は、日本の麦芽発酵飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0040】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物を用いてもよい。
そのような穀物としては、例えば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、及びそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。
【0041】
なお、麦芽を用いない場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の上述の穀物等のアミノ酸含有材料(例えば、大豆たんぱく等)としての窒素源を用いた麦芽発酵飲料が挙げられる。
【0042】
1.1.2 ホップ
本発明の一態様でホップを用いる場合、当該ホップの形態としては、例えば、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等のホップ加工品を用いてもよい。
本発明の一態様でホップを用いる場合、ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料の原材料の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0043】
また、原材料としてホップを用いた麦芽発酵飲料は、ホップに由来する成分であるイソα酸を含有した飲料となる。ホップを用いた麦芽発酵飲料のイソα酸の含有量としては、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm超であってもよく、1.0質量ppm超であってもよい。
一方で、ホップを用いない麦芽発酵飲料におけるイソα酸の含有量は、当該麦芽発酵飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm以下であってもよい。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を意味する。
【0044】
1.1.3 保存料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、保存料を配合してなる飲料であってもよい。
本発明の一態様で用いる保存料としては、例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩;パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;二炭酸ジメチル等が挙げられる。また、保存料としては、強力サンプレザー(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、安息香酸ナトリウムと安息香酸ブチルの混合物)等の市販の製剤を用いてもよい。
これらの保存料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において保存料を配合する場合、当該保存料の配合量は、好ましくは5~1200質量ppm、より好ましくは10~1100質量ppm、更に好ましくは15~1000質量ppm、より更に好ましくは20~900質量ppmである。
【0046】
1.1.4 甘味料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに甘味料を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様で用いる甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸又は酵素等で分解した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等の天然甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの甘味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、及び酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース及びこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース等が挙げられる。
【0047】
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリン又はポリデキストロースが好ましい。
【0048】
1.1.5 苦味料、苦味付与剤
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに苦味料及び苦味付与剤から選ばれる1種以上を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様の麦芽発酵飲料において、苦味は、ホップによって付与してもよく、ホップと共に下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。また、ホップを用いずに、ホップに代えて下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料又は苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与剤として用いられるものが使用でき、例えば、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、クワシン、カフェイン、アブシンチン、ナリンジン、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物等が挙げられる。
これらの苦味料及び苦味付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
1.1.6 酸化防止剤
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに酸化防止剤を配合してなる飲料としてもよい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びカテキン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
1.1.7 香料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに香料を配合してなる飲料としてもよい。
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香料は、ビール様の風味付けのために用いるものである。
ビール香料としては、エステルや高級アルコール等が挙げられ、具体的には、n-プロパノール、イソブタノール等が挙げられる。
これらの香料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
1.1.8 酸味料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに酸味料を配合してなる飲料としてもよい。
酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン又はそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酒石酸、リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酒石酸、リン酸、及び乳酸から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
1.1.9 塩類
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、さらに塩類を配合してなる飲料としてもよい。
塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
これらの塩類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様の麦芽発酵飲料に含まれる炭酸ガスは、麦芽発酵飲料の発酵工程にて生じた炭酸ガスをそのまま用いることができるが、適宜炭酸水を加えて、炭酸ガスの量を調製してもよい。
【0054】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の炭酸ガス濃度は、好ましくは0.30(w/w)%以上、より好ましくは0.35(w/w)%以上、更に好ましくは0.40(w/w)%以上で、より更に好ましくは0.42(w/w)%以上、特に好ましくは0.45(w/w)%以上であり、また、好ましくは0.80(w/w)%以下、より好ましくは0.70(w/w)%以下、更に好ましくは0.60(w/w)%以下、より更に好ましくは0.57(w/w)以下、特に好ましくは0.55(w/w)%以下である。
なお、本明細書において、炭酸ガス濃度は、対象となる飲料が入った容器を時々振りながら20℃の水槽に30分間以上浸して、当該飲料が20℃になるよう調整した後に、ガスボリューム測定装置(例えば、GVA-500(京都電子工業株式会社製)等)を用いて測定することができる。
【0055】
本発明の一態様の麦芽発酵飲料が容器詰め飲料である場合、容器詰め飲料の炭酸ガス圧は、上記の炭酸ガス濃度となる範囲で適宜調整すればよいが、5.0kg/cm以下、4.5kg/cm以下、又は4.0kg/cm以下としてもよく、また、0.20kg/cm以上、0.50kg/cm以上、又は1.0kg/cm以上としてもよい。なお、これらの上限及び下限のいずれを組み合わせてもよく、例えば、飲料の炭酸ガス圧は、0.20kg/cm以上5.0kg/cm以下、0.50kg/cm以上4.5kg/cm以下、または、1.0kg/cm以上4.0kg/cm以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0056】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、及び、コラーゲンペプチド等のペプチド含有物、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0057】
1.4 容器詰飲料
本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、缶、樽またはペットボトルが挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビンやペットボトルが好ましい。
【0058】
2.麦芽発酵飲料の製造方法
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の製造方法は、水及び麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する方法であればよいが、具体的には、下記工程(1)~(2)を有する方法が挙げられる。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程。
・工程(2):前記発酵前液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
【0059】
また、本発明の一態様の麦芽発酵飲料の製造方法において、プリン体の含有量を上述の範囲となるように調製する観点から、さらに下記工程(3)を有することが好ましい。
・工程(3):プリン体を除去する処理を行う工程。
【0060】
さらに、本発明の一態様の麦芽発酵飲料の製造方法において、さらに下記工程(4)を有することが好ましい。
・工程(4):アセトアルデヒドの含有量(X)及び酢酸エチルの含有量(Y)、並びに、必要に応じて酢酸イソアミルの含有量(Z)を、確認及び/又は調整する工程。
【0061】
なお、本発明の一態様の製造方法において、原材料として苦味価が5BUs以上の飲料を製造する場合には、ホップを添加する工程を有することが好ましい。また、原材料として苦味価が5BUs未満の飲料を製造する場合には、ホップを添加する工程を有しないことが好ましい。
【0062】
<工程(1)>
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程である。
例えば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水及び麦芽を含む各種原材料を仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じて、アミラーゼやプロテアーゼ等の酵素剤を添加する。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を加えてもよい。これらは、糖化処理を行う前に加えてもよく、糖化処理の途中で加えてもよく、糖化処理の終了後に加えてもよい。また、これらは、次工程のアルコール発酵後に加えてもよい。
【0063】
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。
糖化処理の温度及び時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水及び麦芽以外の原材料、使用する酵素の種類や量、最終的に得られる飲料のオリジナルエキス濃度等を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、本発明の一態様において、糖化処理の温度は55~75℃であり、糖化処理の時間は30~240分であることが好ましい。糖化処理後に、濾過を行い、糖化液が得られる。
【0064】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
煮沸処理終了後には、ワールプールに移送し、0~20℃に冷却して、冷却液とした後、凝固タンパク等の固形分の除去処理を行うことが好ましい。当該処理により、オリジナルエキス濃度を上述の範囲に調整することができる。このようにして、発酵前液が得られる。
【0065】
なお、上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等を加えて煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
【0066】
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0067】
<工程(2)>
工程(1)で得た発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。
本工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件等を考慮して適宜選択することができ、上面発酵酵母を用いてもよく、下面発酵酵母を用いてもよい。
【0068】
酵母は、酵母懸濁液のまま原材料に添加してもよいし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを発酵前液に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加してもよい。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5×10cells/mL~1×10cells/mL程度である。
【0069】
アルコール発酵を行う際の発酵温度および発酵期間等の諸条件は、適宜設定することができるが、アセトアルデヒドの含有量(X)及び酢酸エチルの含有量(Y)、並びに、酢酸イソアミルの含有量(Z)を調整する観点から、8~25℃、5~10日間の条件で発酵させてもよい。発酵工程の途中で発酵液の温度(昇温または降温)もしくは圧力を変化させてもよい。
また、本工程の終了後に、ろ過機等で酵母を取り除き、必要に応じて水や香料、酸味料、色素等の添加剤を加えてもよい。
【0070】
<工程(3)>
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の製造方法において、工程(3)として、プリン体を除去する処理を行う工程を実施することが好ましい。工程(3)を経ることで、プリン体の含有量を上述の範囲に低減させた麦芽発酵飲料とすることができる。
【0071】
プリン体を除去する処理としては、例えば、活性炭やゼオライトを用いてプリン体を吸着除去する吸着処理等が挙げられる。具体的な吸着処理の方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0072】
また、吸着処理を行う前にプリンヌクレオシダーゼ処理を行ってもよい。
プリンヌクレオシダーゼ処理では、予め、発酵前の発酵原料液又は発酵後の発酵液に対して、プリンヌクレオシダーゼを作用させることで、溶液中のアデノシン及びグアノシンを遊離プリン基に変換し、この遊離プリン基の少なくとも一部を酵母非資化性の遊離プリン基であるキサンチンに変換させることができる。
この処理を行った後に、吸着処理を行うことによって、プリン体の中でもキサンチンを優先的に吸着除去することができ、最終的に得られる麦芽発酵飲料中のプリン体の含有量を低減させることができる。
なお、プリンヌクレオシダーゼ処理は、吸着処理前であれば行う時期の制限はなく、工程(1)と同時に又は工程(1)の終了後、もしくは、工程(2)と同時に又は工程(2)の終了後に行ってもよい。
【0073】
<工程(4)>
本発明の一態様の麦芽発酵飲料の製造方法において、工程(4)として、アセトアルデヒドの含有量(X)及び酢酸エチルの含有量(Y)、並びに、必要に応じて、酢酸イソアミルの含有量(Z)を、確認及び/又は調整する工程を実施することが好ましい。
なお、工程(4)を行うタイミングは限定されず、工程(1)~(3)のいずれか1以上の工程と同時に行ってもよく、工程(1)と工程(2)の間、工程(2)と工程(3)の間、もしくは工程(3)の後に、別途行ってもよい。これらの中でも、工程(1)~(3)を経た後に、工程(4)を経ることが好ましい。
つまり、工程(1)~(3)を経て得られた飲料に対して、アセトアルデヒドの含有量(X)及び酢酸エチルの含有量(Y)を測定し、並びに、必要に応じて、酢酸イソアミルの含有量(Z)を、確認及び/又は調整することが好ましい。
【0074】
アセトアルデヒドの含有量(X)、酢酸エチルの含有量(Y)、及び酢酸イソアミルの含有量(Z)は、工程(1)及び(2)において、酵母種や発酵条件等を適宜設定することによっても調整できる。そこで、工程(4)では、これらの成分の含有量を測定して上述の範囲内であるかを確認することが好ましい。そして、仮にこれらの成分の中で範囲外であった成分がある場合、その範囲外となる成分を添加することによる調整、もしくは水を加えて希釈による調整を行うことが好ましい。
また、原料に由来する各成分の抽出量によって、これらの成分の含有量が所望の範囲となった場合には、本工程において、これらの成分の含有量を調整する必要はない。
【0075】
これらの工程後、貯酒工程及びろ過工程等の当業者に周知の麦芽発酵飲料の製造で行われる工程を行ってもよい。
【0076】
本発明の一態様において、ノンアルコール麦芽発酵飲料を製造する場合には、さらに工程(5)及び(6)を行うことが好ましい。
・工程(5):工程(2)の後の発酵溶液からアルコール分を除去する工程。
・工程(6):工程(5)の後に炭酸ガスの量を調整する工程。
ノンアルコール麦芽発酵飲料を製造する場合において、工程(3)及び(4)は、工程(2)と工程(5)との間に行ってもよく、工程(5)と工程(6)との間に行ってもよく、工程(6)の後に行ってもよいが、少なくとも工程(5)の後に行うことが好ましい。
【0077】
工程(5)において、工程(2)の発酵工程によって生じたアルコール分を除去する方法としては、加熱処理により除去する方法が好ましい。加熱処理の条件としては、一般的なノンアルコール麦芽発酵飲料の製造方法と同様の条件を適用することができる。
また、工程(5)の後、溶液中からアルコール分が除去されると共に、炭酸ガスも除去されている。そのため、工程(6)によって、炭酸ガスの量を調整することが好ましい。
炭酸ガスの量を調整する方法としては、工程(5)を行った後の溶液と炭酸水との混和によって加えてもよく、または工程(5)を行った後の溶液に炭酸ガスを直接添加してもよい。
【0078】
このようにして得られた本発明の一態様の麦芽発酵飲料は、所定の容器に充填され、製品として市場に流通する。
麦芽発酵飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明の麦芽発酵飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、「1.4 容器詰飲料」に記載の容器が挙げられる。
【実施例
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0080】
実施例1~11、比較例1~12
粉砕した大麦麦芽等を含む穀物原料を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕を除去し、麦汁を得た。その後、当該麦汁を煮沸釜に投入し、麦芽比率が表1~3に記載の値になるように糖液を添加し、さらにホップを投入して、温水で100Lに調整して煮沸処理を行った。煮沸処理後に固液分離処理を行い、得られた清澄な麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液を得た。
【0081】
このようにして得られた発酵前液にビール酵母(下面発酵酵母)を添加して約1週間発酵させた後、さらに約1週間の熟成期間を経て、酵母をろ過で除去して、さらに、必要に応じてプリン体の吸着処理を行いつつ、エキス調整水、アセトアルデヒド、及び酢酸エチルを必要に応じて添加をして、表1~3に示す、プリン体の含有量、原麦汁エキス濃度、糖質含有量、アセトアルデヒドの含有量(X)、及び酢酸エチルの含有量(Y)を有する麦芽発酵飲料(ビールテイスト飲料)をそれぞれ調製した。
【0082】
得られた麦芽発酵飲料の評価は、日頃から訓練を受けた6人のパネラーが、各飲料の試飲をし、以下のように行ったところ、表1~3に示す結果となった。
【0083】
[ビールテイスト飲料らしい味わい]
4℃程度まで冷却した麦芽発酵飲料を、各パネラーが試飲し、「ビールテイスト飲料らしい味わい」をそれぞれ下記基準によって、3(最大値)~0(最小値)の範囲で、0.5刻みのスコアで評価した。なお、「ビールテイスト飲料らしい味わい」の評価前に、予め、スコアが「3」、「2」、「1」、「0」となるサンプルをそれぞれ用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。
・「3」:ビールテイスト飲料らしい味わいが強く感じられる。
・「2」:ビールテイスト飲料らしい味わいが感じられる。
・「1」:ビールテイスト飲料らしい味わいが少し感じられる。
・「0」:ビールテイスト飲料らしい味わいが感じられない。
そして、6人のパネラーのスコアの平均値を算出したものを「ビールテイスト飲料らしい味わい」の評価とした。当該評価が1.0超である飲料を合格とした。
【0084】
[ビールテイスト飲料として不適な香りの有無]
4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」をそれぞれ下記基準によって、3(最大値)~0(最小値)の範囲で、0.5刻みのスコアで評価した。なお、「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」の評価前に、予め、スコアが「3」、「2」、「1」、「0」となるサンプルをそれぞれ用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。
・「3」:ビールテイスト飲料として不適な香りを全く感じない。
・「2」:ビールテイスト飲料として不適な香りをほとんど感じない。
・「1」:ビールテイスト飲料として不適な香りを少し感じる。
・「0」:ビールテイスト飲料として不適な香りを強く感じる。
そして、6人のパネラーのスコアの平均値を算出したものを「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」の評価とした。当該評価が1.0超である飲料を合格とした。
【0085】
[ビールテイスト飲料の総合評価]
また、各パネラーが試飲した際の、「ビールテイスト飲料らしい味わい」および「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」に基づき総合評価を、下記基準によって3段階で評価した。
・「〇」:「ビールテイスト飲料らしい味わい」及び「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」の両者の評価が共に2.5以上。
・「△」:「○」および「×」に該当しない。
・「×」:「ビールテイスト飲料らしい味わい」及び「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」の少なくとも一方の評価が1.0以下。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表1~3より、実施例1~11で調製した麦芽発酵飲料は、プリン体の含有量を低減しつつも、ビールテイスト飲料らしい味わいを有し、不適な香りが抑制された飲料となり得る。一方で、比較例1~12で調製した麦芽発酵飲料は、プリン体の含有量を低減した際に、ビールテイスト飲料らしい味わい及び不適な香りの抑制効果の少なくとも一方が劣る結果となった。
【0090】
実施例12~19
実施例1~11と同様の手順を経て、必要に応じてプリン体の吸着処理を行いつつ、エキス調整水、アセトアルデヒド、酢酸エチル、及び酢酸イソアミルを必要に応じて添加をして、表4に示す、プリン体の含有量、原麦汁エキス濃度、糖質含有量、アセトアルデヒドの含有量(X)、酢酸エチルの含有量(Y)、及び酢酸イソアミルの含有量(Z)を有する麦芽発酵飲料(ビールテイスト飲料)をそれぞれ調製した。
そして、上記と同じ方法にて、得られた麦芽発酵飲料の「ビールテイスト飲料らしい味わい」及び「ビールテイスト飲料として不適な香りの有無」の評価を行ったところ、表4に示す結果となった。
【0091】
【表4】
【0092】
表4より、実施例12~19で調製した麦芽発酵飲料は、プリン体の含有量を低減しつつも、ビールテイスト飲料らしい味わいを有し、不適な香りが抑制された飲料となり得、特に、酢酸イソアミルを含有することで、両者がバランス良く向上し得る結果となった。