(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20240807BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K19/10 Z
(21)【出願番号】P 2021042880
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】米澤 紀男
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏之
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 大和
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0036331(US,A1)
【文献】特開2010-045919(JP,A)
【文献】特開2016-171625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0165661(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110932442(CN,A)
【文献】西独国特許出願公開第03446190(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/14
H02K 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステータスロットを有するステータコアと、ステータスロットに配置される3相コイルを有し、所定の磁界を形成するステータと、
内径部に所定数の内ロータ磁極が形成され、外径部に内径部とは異なる数の外ロータ磁極が形成されるロータと、
前記ステータコアおよび前記ロータの側方に位置する界磁ヨークと、
前記ロータと前記ステータと前記界磁ヨークにより形成される経路を周回する界磁磁束を発生させる界磁コイルと、
を有し、
界磁コイルに一方向の直流電流を流すことで内ロータ磁極からの磁界を打ち消し、界磁コイルに他方向の直流電流を流すことで外ロータ磁極からの磁界を打ち消して、ロータの磁極数を切り換え可能とする、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ロータは、外径部に円周方向に第1の間隔をおいて配置した永久磁石と永久磁石間に形成された突極を有し、内径部に円周方向に第2の間隔をおいて配置した永久磁石と永久磁石間に形成された突極を有する、
回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記第1の間隔が、前記第2の間隔より狭く、外径部の磁極数が内径部の磁極数より大きい、
回転電機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の回転電機であって、
前記ステータによって、基本波と、高調波が生成され、前記内ロータ磁極または外ロータ磁極の一方の磁極数が基本波による磁極数に対応し、前記内ロータ磁極または外ロータ磁極の他方の磁極数が高調波の磁極数に対応している、
回転電機。
【請求項5】
請求項
4に記載の回転電機であって、
低速域では、
前記界磁コイルに一方向の直流電流を流すことで、前記内ロータ磁極または前記外ロータ磁極の内で磁極数が基本波による磁極数に対応しているロータ磁極からの磁界を打ち消し、高調波が大きくなるよう
に調整し、
高速域では、
前記界磁コイルに他方向の直流電流を流すことで、前記内ロータ磁極または前記外ロータ磁極の内で磁極数が高調波による磁極数に対応しているロータ磁極からの磁界を打ち消し、基本波が大きくなるよう
に調整する、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁極数(極数)切り換えが可能な回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ極数を増加し、磁気ギア効果によって、トルクを増加する表面磁石バーニアモータが知られている。このモータは、3相コイルが生成する基本波回転磁界ではなく、スロット数と極数に応じた高調波回転磁界を活用する。高調波回転磁界は、回転速度が遅いため、基本波回転磁界を活用するモータに比べると、3相コイルに通電する電流の駆動周波数を増加させる必要がある(5次高調波を活用する場合、駆動周波数は5倍)。その結果、低速域でトルクが増加できるが、駆動周波数の限界から、高速回転できず出力増加に限界がある。
【0003】
基本波と高調波を切り換える、すなわち極数切り換えができれば、高トルクと高出力の両立が実現できる。そこで、極数切り換えができるモータについての提案があり、極数を変更する技術としていくつかの手法がある。
【0004】
特許文献1~3ではロータの着磁を変更し、特許文献4ではロータ磁石を機械的に移動し、特許文献5,6ではステータの相数を変更して、極数を切り換えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-163028号公報
【文献】特開2014-168320号公報
【文献】特開2014-168331号公報
【文献】特開2012-130223号公報
【文献】特開平8-223999号公報
【文献】特開2012-95410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロータの着磁を変更するためには、瞬間的なパルス電流を通電する必要があり、3相電流を供給するインバータが大型化する。
【0007】
ロータ磁石を機械的に移動させるためには、その移動機構およびアクチュエータが必要になり大型化する。
【0008】
ステータの相数変更のためには、3相以上の多相インバータが必要になるため、インバータが大型化する。
【0009】
本発明では、アクチュエータの追加や、3相電流を供給するインバータを大型化させずに、極数切り換えが実現できるモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る回転電機は、複数のステータスロットを有するステータコアと、ステータスロットに配置される3相コイルを有し、所定の磁界を形成するステータと、内径部に所定数の内ロータ磁極が形成され、外径部に内径部とは異なる数の外ロータ磁極が形成されるロータと、前記ステータコアおよび前記ロータの側方に位置する界磁ヨークと、前記ロータと前記ステータと前記界磁ヨークにより形成される経路を周回する界磁磁束を発生させる界磁コイルと、を有し、界磁コイルに一方向の直流電流を流すことで内ロータ磁極からの磁界を打ち消し、界磁コイルに他方向の直流電流を流すことで外ロータ磁極からの磁界を打ち消して、ロータの磁極数を切り換え可能とする。
【0011】
前記ロータは、外径部に円周方向に第1の間隔をおいて配置した永久磁石と永久磁石間に形成された突極を有し、内径部に円周方向に第2の間隔をおいて配置した永久磁石と永久磁石間に形成された突極を有するとよい。
【0012】
前記第1の間隔が、前記第2の間隔より狭く、外径部の磁極数が内径部の磁極数より大きいとよい。
【0013】
前記ステータによって、基本波と、高調波が生成され、前記内ロータ磁極または外ロータ磁極の一方の磁極数が基本波による磁極数に対応し、前記内ロータ磁極または外ロータ磁極の他方の磁極数が高調波の磁極数に対応しているとよい。
【0014】
低速域では、前記界磁コイルに一方向の直流電流を流すことで、前記内ロータ磁極または前記外ロータ磁極の内で磁極数が基本波による磁極数に対応しているロータ磁極からの磁界を打ち消し、高調波が大きくなるように調整し、高速域では、前記界磁コイルに他方向の直流電流を流すことで、前記内ロータ磁極または前記外ロータ磁極の内で磁極数が高調波による磁極数に対応しているロータ磁極からの磁界を打ち消し、基本波が大きくなるように調整するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、界磁コイルへ流す電流の方向を切り換えるだけで、ロータの極数切り換えが行える。従って、アクチュエータの追加や、3相電流を供給するインバータを大型化させずに、極数切り換えが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る回転電機(モータ)を含む回転電機システムを示す回路図である。
【
図2】モータ20についてその回転軸を通る面での断面図である。
【
図3】モータ20の分解図を含む全体構成を示す図である。
【
図4】モータ20についてその回転軸と直交する面での断面図である。
【
図5】ロータ40およびステータ22について周方向1/4の構成を示す図である。
【
図6】
図5に構成における、界磁電流磁束の状態を示す図である。
【
図7】
図5の構成において、界磁電流を0とした状態の磁束の状態を示す図である。
【
図8】ロータ40、ステータ22、および界磁ヨーク32の軸方向断面(半分)を示す図である。
【
図9】
図6において、界磁電流+を流したことによる磁束の状態を矢印で示す図である。
【
図10】
図8の界磁電流+が流れた状態の磁束の状態を示す図である。
【
図11】
図8の界磁電流-が流れた状態の磁束の状態を示す図である。
【
図12】界磁電流-を流したことによる磁束の状態を示す図である。
【
図13】
図8の界磁電流-が流れた状態の磁束の状態を示す図である。
【
図14】シミュレーションにより、界磁電流を変化させたときの無負荷鎖交磁束の時間波形を示す図であり、(a)は界磁電流マイナス(-)、(b)は界磁電流0、(c)は界磁電流(+)を示す。
【
図15】
図14における基本波と5次高調波の振幅を示す図である。
【
図16】シミュレーションにより、基本波駆動と、5次高調波駆動についての、回転数-トルク特性を計算した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0018】
「システム構成」
図1は、実施形態に係る回転電機を含む回転電機システムを示す回路図である。なお、実施形態では、電気エネルギーと機械エネルギーの変換を行う回転電機についてモータと称する。
【0019】
直流電源10は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池であり、その出力は3相インバータ12に接続される。3相インバータ12は、モータ20に接続されている。このモータ20は、永久磁石モータであり、ステータ22はスター接続の3相ステータコイル24(24u,24v,24w)を有し、3相インバータ12の3つの出力がステータコイル24u,24v,24wの一端に接続されており、ステータコイル24u,24v,24wの他端は中性点で共通接続されている。3相インバータ12により所定の3相交流がステータコイル24u,24v,24wに供給され、これによって生じる回転磁界に応じてロータが回転する。
【0020】
そして、直流電源10には、界磁回路30を介し、界磁コイル34が接続されている。界磁回路30から供給される直流電流によって、界磁コイル34によって所定の磁界がステータおよびロータに印加され、これによって後述するようなロータの磁極数(以下、極数という)切り換えが行われる。
【0021】
「モータ20の構成」
図2は、モータ20についてその回転軸を通る面での断面図である。モータ20は、円筒状のロータ40と、ロータ40を、ギャップを介して取り囲むように配置された円環状のステータ22を有する。そして、ロータ40の中心には回転軸28がロータ40を貫通するように配置されている。
【0022】
ロータ40には、複数の永久磁石が周方向に離散的には配置されており、これによってその外周に沿って複数の磁極が形成されている。ステータ22は、ステータコア22aと、ステータコア22aのスロットに配置されて、スロット間のティースに巻回された複数相のステータコイル24を有している。図においては、ステータコイル24のコイルエンドが示してある。
【0023】
そして、本実施形態では、ロータ40と、ステータ22の軸方向の両側端面を覆うように界磁ヨーク32が設けられている。この界磁ヨーク32は、中央部が開いた円環状であり、かつステータコイル24のコイルエンドを避けるようにロータ40およびステータ22から離れる方向に向けて凹んだ円環状の凹部32aを有している。この凹部32aのステータコイル24のコイルエンドの径方向内側には、円環状に巻回された界磁コイル34が収容されている。
【0024】
図3は、モータ20の分解図を含む全体構成を示す図である。このように、ステータ22の軸方向の両側に界磁ヨーク32が配置される。界磁ヨーク32は、凹部32aを有しており、凹部32aの比較的内側に円環状に巻回された界磁コイル34が配置されている。
【0025】
図4は、モータ20についてその回転軸と直交する面での断面図である。この図においては、界磁ヨーク32は見えていない。ステータコア22aは、外周側のヨーク22a-1と、ヨーク22a-1から内方に周方向等間隔で突出するティース22a-2とを有する。隣接するティース22a-2の間がスロットであり、ここにステータコイル24が挿入されている。
【0026】
ロータ40には、磁極を構成するために、複数の永久磁石が配置されている。まず、外周部には、外ロータ磁極を構成する第1磁石42が等間隔(第1の間隔)で配置され、隣接する第1磁石42間が第1突極44となっている。この例では、20個の第1磁石42が設けられ、例えば第1磁石42がN極であればここがN極となり、第1磁石42間の第1突極44は界磁電流の正負に応じた極性(N,S)になる。
【0027】
また、ロータ40には、内ロータ磁極を構成する第2磁石46が等間隔(第2の間隔)で配置されている。この第2磁石46は、略円弧状(外向きのハの字状)の磁石孔46a,46bに挿入された複数(図においては2つ)の永久磁石から構成されている。円周方向に等間隔で4か所に設けられた第2磁石46によって、4つの磁極が形成され、周方向に隣接する第2磁石46間が4つの第2突極48となっている。例えば、第2磁石46による磁極がS極であればここがS極となり、第2突極48は界磁電流の正負に応じた極性(N,S)になる。
【0028】
「極数切り換え」
<界磁電流0>
図5は、ロータ40およびステータ22について周方向1/4の構成を示す図である。この場合電気角360度分であり、6個のティース22a-2に巻回される3相のステータコイル24u,24v,24wの1セットが設けられている。ロータ40は、5個の第1磁石42およびその間の第1突極44と、1つの第2磁石46およびその間の第2突極48が位置する。
【0029】
図6には、
図5に構成における、界磁電流磁束の状態を示してある。第1磁石42は、それぞれN極となり、その間の第1突極44が磁束0となる。また、第2磁石46はS極となり、その間の第2突極48は磁束0となる。
【0030】
図7には、
図5の構成において、界磁電流を0とした状態の磁束の状態を示してある。このように、5つの第1磁石42により、5つのN極が形成される。また、第2磁石46により、1つのS極が構成される。界磁電流が0でありその磁束がないため、第1磁石42と、第2磁石46の両方の磁束を足し合わした合計の磁束は、第1磁石42による磁束が第2磁石46による磁束によってシフトした形になる。
【0031】
<界磁電流+>
図8は、ロータ40、ステータ22、および界磁ヨーク32の軸方向断面(半分)を示す図である。界磁コイル34は、回転軸28を回る円環状であり、ここに界磁電流(界磁電流+)として一方向の直流電流が流れる。図における黒丸が紙面手前に向けて流れることを示し、×が紙面奥向きに流れることを示している。軸方向の両側の界磁コイル34において反対方向の電流が流れる。
【0032】
これによって、図に矢印で示すように、ロータ40から界磁ヨーク32、ステータ22を回ってロータ40に戻る界磁電流磁束が形成される。
【0033】
図9には、
図6において、界磁電流+を流したことによる磁束の状態を矢印で示してある。この場合、第1磁石42間の第1突極44を磁束が通過することになるが、第2突極48においては、第2磁石46がないので界磁電流磁束が比較的大きくなり、一方第2磁石46が配置された部分においては第2磁石46があるため磁束が通りにくく、その部分の磁束は小さくなる。
【0034】
図10には、
図8の界磁電流(界磁電流+)が流れた状態の磁束の状態を示してある。このように、5つの第1磁石42および1つ第2磁石46により形成される磁束は変化ないが、界磁電流磁束が新たに加わっている。
【0035】
この界磁磁束は、S極を形成するものであり、磁石の部分で通りにくいため、磁石のない第1突極44と第2突極48の両方を通る経路が最も磁束が大きくなる。次に、第1突極44と第2磁石46を通る経路、その次に第1磁石42と第2突極48を通る経路、そして一番小さいのが第1磁石42と第2磁石46を通る経路となる。
【0036】
そして、これらの磁束を合計すると、第1磁石42による磁束を大きく引き伸ばし、S側にシフトしたような磁束になる。
【0037】
<界磁電流->
図11は、
図8の界磁電流マイナス(-)が流れた状態の磁束の状態を示す図である。界磁電流―によって、
図8の場合とは反対方向(他方向)の界磁電流磁束が形成される。
【0038】
図12には、界磁電流-を流したことによる磁束の状態を矢印で示してある。この場合、
図9と磁束の方向は反対となるが、磁束の大きさについては、同じになる。
【0039】
図13には、
図8の界磁電流(界磁電流-)が流れた状態の磁束の状態を示してある。このように、5つの第1磁石42および1つ第2磁石46により形成される磁束は変化ないが、界磁電流磁束が
図10の場合とは反対方向になり、N極を形成する磁束になる。
【0040】
そして、これらの磁束を合計すると、第2磁石による磁束を大きく引き伸ばし、N側にシフトしたような磁束になる。
【0041】
<まとめ>
このように、界磁コイル34に界磁電流+を流すことで、第1磁石42の磁束と同様の磁束が得られ、界磁コイル34に界磁電流-を流すことで、第2磁石46の磁束と同様の磁束が得られる。
【0042】
従って、界磁コイル34に流す直流電流の方向により、ロータにおける極対数を5×4=20(40極)と、1×4=4(8極)に切り換えることができる。
【0043】
図2~4に示すステータ22は、24スロットで、8極の基本波回転磁界と40極の高調波回転磁界を生成する3相コイルと、環状の界磁コイル34を有する。ロータ40は40極を形成する第1磁石42と、8極を形成する第2磁石46を有する。そして、界磁電流磁束が流れることで磁化される第1突極44をロータ40表面に有し、界磁電流が流れることで磁化される第2突極48をロータ40の内径部に有する。
【0044】
従って、ステータ22において、8極の基本波回転磁界と40極の高周波回転磁界を生成し、界磁電流マイナス(-)を界磁コイル34に流すことで、ロータ極数8極での基本波駆動が行え、界磁電流プラス(+)を界磁コイル34に流すことでロータ極数40極での5次高調波駆動を行うことができる。
【0045】
すなわち、界磁コイル34に流す直流電流の方向を切り換えることで、ロータ40の極数を、基本波駆動と5次高調波駆動の極数に切り換えることができ、それぞれの回転磁界でトルクを発生できる。
【0046】
「鎖交磁束波形」
図14は、シミュレーションにより、界磁電流を変化させたときの無負荷鎖交磁束の時間波形を示す図であり、(a)は界磁電流マイナス(-)、(b)は界磁電流0、(c)は界磁電流(+)を示す。また、
図15は、そのときの基本波と5次高調波の振幅を示す図であり、図中丸印●は、界磁電流マイナス(-)、四角印□は、界磁電流プラス(+)を示す。
【0047】
このように、界磁コイル34に界磁電流マイナス(-)を流すと、基本波が増加してその波形が主となり、界磁電流プラス(+)の界磁電流を流すと5次高調波が増加してその波形は主となる。
【0048】
「極数について」
上述の実施形態では、ステータ22のスロットで8極の3相コイル(ステータコイル24)に対して、ロータ40を8極(基本波)と40極(5次高調波)の極数切り換えをしたが、スロット数、3相コイルの極数とロータの極数が以下の関係を満たせば、上述した極数切り換えを行うことができる。
Z2=Z1±p
Z1: ステータスロット数
Z2: ロータ外径部の極対数
p : 3相コイルの極対数(ロータ内径部の極対数)
【0049】
上述の実施形態は、Z1=24,Z2=20,p=4であり、界磁電流によりZ2とpとの切り換えが可能になっている。
【0050】
「出力トルクについて」
図16は、シミュレーションにより、基本波駆動と、5次高調波駆動についての、回転数-トルク特性を計算した結果を示す図であり、界磁電流マイナス(-)を流し、3相コイルにロータ回転と同期する駆動周波数の3相電流を流したときの特性(基本波駆動)と、界磁電流プラス(+)を流し、3相コイルにロータ回転に対し5倍の駆動周波数の3相電流を流したときの特性(5次高調波駆動)である。
【0051】
これより、界磁電流の電流方向の切り換えにより、低速域での高トルクと、高速域での高出力が両立できることが確認できる。
【0052】
「その他」
ここで、5次高調波回転磁界の回転方向は、基本波回転磁界の回転方向(ロータ回転方向と一致)とは逆になるため、5次高調波駆動の電流指令値の回転方向は、基本波駆動時の回転方向とは逆方向である。また、基本波駆動における最高回転数における駆動周波数を、駆動周波数の上限とすると、5次高調波駆動の場合には、基本波駆動に対して1/5の回転数までしか駆動できない。
【0053】
「本実施形態の効果」
本実施形態によれば、界磁コイル34の界磁電流を調整する(方向を切り換える)ことで、ロータ40の作る磁束のギャップ中の磁束密度分布について、基本波と高調波(例えば5次高調波)を切り換えることができる。
【0054】
従って、高調波を増加させ、ステータコイル24の駆動電流の周波数をロータ同期周波数に対して増加させることで、磁気ギア効果により高トルクにできる。一方、基本波を増加させることで、ステータコイル24の駆動電流の周波数がロータ同期周波数になるので、高速回転でき、高出力にできる。
【符号の説明】
【0055】
10 直流電源、12 3相インバータ、20 モータ、22 ステータ、24 ステータコイル、28 回転軸、30 界磁回路、32 界磁ヨーク、34 界磁コイル、40 ロータ、42 第1磁石、44 第1突極、46 第2磁石、48 第2突極。