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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】池の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20240807BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
B01D21/01 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021048472
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147291
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信彦
(72)【発明者】
【氏名】三宅 彩香
(72)【発明者】
【氏名】臼井 啓皓
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-028638(JP,A)
【文献】特開2017-163938(JP,A)
【文献】特開昭63-130184(JP,A)
【文献】特開2001-121179(JP,A)
【文献】特開2003-117563(JP,A)
【文献】特開2016-078021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/56
C02F 1/58- 1/64
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/28
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/70- 1/78
B01D 21/01
B01D 20/00-20/28
B01D 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物プランクトンによって濁度が高くなっている池に、上記植物プランクトンを沈降させるための沈降用物質を供給して、上記池の濁度を低下させる沈降用物質供給工程と、
上記沈降用物質を供給した時から少なくとも5日間を経過した後に、上記池に、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給して、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大を抑制する粉末供給工程、
を含むことを特徴とする池の浄化方法。
【請求項2】
上記沈降用物質供給工程と上記粉末供給工程の間に、
上記池の濁度が低下した後、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大が生じていることを確認し、上記粉末供給工程における上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給すべき時期を決定する粉末供給時期決定工程、
を含む請求項1に記載の池の浄化方法。
【請求項3】
上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質が、除藻剤、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末、または、コンクリートスラッジ再生粉末である請求項1又は2に記載の池の浄化方法。
【請求項4】
上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質が、除藻剤であり、かつ、上記粉末供給工程で用いられる上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末が、多孔質ケイ酸カルシウム水和物からなる、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が10質量%以上の粉末である請求項3に記載の池の浄化方法。
【請求項5】
上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質、及び、上記粉末供給工程で用いられる上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末が、多孔質ケイ酸カルシウム水和物からなる、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が10質量%以上の粉末である請求項3に記載の池の浄化方法。
【請求項6】
上記池が、ゴルフ場の人工池である請求項1~5のいずれか1項に記載の池の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場の人工池は、ゴルフの難易度を調整するためのコースの設計手段の一つである。
また、ゴルフ場の人工池は、芝生に散水するための水を貯めるという役割や、ゴルフ場に優れた景観を与える役割なども有する。
しかし、ゴルフ場の人工池は、植物プランクトン(例えば、緑藻、ラン藻等)等によって、緑色を呈することがある。この場合、景観性が悪化するので、人工池の水を浄化する必要が生じる。
【0003】
ゴルフ場の池の浄化システムとして、例えば、特許文献1に、ゴルフ場に設けられた鑑賞池の水を浄化するゴルフ場の浄化システムにおいて、前記鑑賞池の水を取り込んで浄化した後、前記鑑賞池に戻して、この鑑賞池の所定部分に、浄化した水の領域を作る浄化装置、を備えたことを特徴とするゴルフ場の浄化システムが、記載されている。
一方、水質浄化材として、ケイ酸カルシウム含有材料を含む水質浄化材が知られている。
例えば、特許文献2に、ケイ酸カルシウム含有材料とゼオライトを含む水質浄化材であって、塩基置換容量及びリン酸吸収係数の各々が、特定の数値範囲内である水質浄化材が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-275186号公報
【文献】特開2020-157247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているゴルフ場の浄化システムは、浄化装置を必要とするものである。この浄化装置の導入や維持管理には、多くのコスト、及び、少なからぬ手間を要する。
特許文献2に記載されている水質浄化材は、エビ等の水棲生物の養殖池において、水棲生物の排泄物等によって、水質が悪化するという問題を解消するとともに、当該水質浄化材の優れたケイ酸供給能力による水中の珪藻の増殖の促進によって、珪藻を餌とするエビ等の水棲生物の成長を良好にするものである。この水質浄化材は、アンモニアやリン酸の濃度を低減させる点で、水質を浄化すると言えるものの、珪藻の増殖を促進する点で、養殖池の水の濁度等を低減させるものではない。
【0006】
本発明の目的は、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池(例えば、ゴルフ場における緑色を呈している人工池)の濁度を、池の色度の増大等の問題を生じさせずに、低コストでかつ簡易に、しかも短期間で低減させて、より良好な景観性を与えることのできる、池の浄化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池に、植物プランクトンを沈降させるための沈降用物質を供給した後、少なくとも5日間の時間を置いて、この池にケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給すれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
【0008】
[1] 植物プランクトンによって濁度が高くなっている池に、上記植物プランクトンを沈降させるための沈降用物質を供給して、上記池の濁度を低下させる沈降用物質供給工程と、上記沈降用物質を供給した時から少なくとも5日間を経過した後に、上記池に、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給して、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大を抑制する粉末供給工程、を含むことを特徴とする池の浄化方法。
[2] 上記沈降用物質供給工程と上記粉末供給工程の間に、上記池の濁度が低下した後、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大が生じていることを確認し、上記粉末供給工程における上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給すべき時期を決定する粉末供給時期決定工程、を含む上記[1]に記載の池の浄化方法。
[3] 上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質が、除藻剤、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末、または、コンクリートスラッジ再生粉末である上記[1]又は[2]に記載の池の浄化方法。
[4] 上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質が、除藻剤であり、かつ、上記粉末供給工程で用いられる上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末が、多孔質ケイ酸カルシウム水和物からなる、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が10質量%以上の粉末である上記[3]に記載の池の浄化方法。
[5] 上記沈降用物質供給工程で用いられる上記沈降用物質、及び、上記粉末供給工程で用いられる上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末が、多孔質ケイ酸カルシウム水和物からなる、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が10質量%以上の粉末である上記[3]に記載の池の浄化方法。
[6] 上記池が、ゴルフ場の人工池である上記[1]~[5]のいずれかに記載の池の浄化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池(例えば、ゴルフ場における緑色を呈している人工池)の濁度を、池の色度の増大等の問題を生じさせずに、低コストでかつ簡易に、しかも短期間で、低減させることができる。そして、このように濁度が低減された池は、より良好な景観性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の池の浄化方法は、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池に、上記植物プランクトンを沈降させるための沈降用物質を供給する沈降用物質供給工程と、上記沈降用物質を供給した時から少なくとも5日間を経過した後に、上記池に、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給して、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大を抑制する粉末供給工程、を含む。
本発明の池の浄化方法は、上記沈降用物質供給工程と上記粉末供給工程の間に、上記池の濁度が低下した後、上記植物プランクトンの死骸に起因する上記池の色度の増大が生じていることを確認し、上記粉末供給工程における上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給すべき時期を決定する粉末供給時期決定工程、を含むことができる。
以下、沈降用物質供給工程、粉末供給時期決定工程、粉末供給工程の順に、各工程を詳しく説明する。
【0011】
[沈降用物質供給工程]
沈降用物質供給工程は、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池に、植物プランクトンを沈降させるための沈降用物質を供給して、池の濁度を低下させる工程である。
本発明において、浄化の対象となる池は、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池である。
ここで、植物プランクトンの例としては、緑藻、ラン藻等が挙げられる。
なお、植物プランクトンによって濁度が高くなっている池は、通常、水底に沈んだ植物プランクトンの死骸から生じる物質によって、色度も高くなっている。
【0012】
池の例としては、ゴルフ場の人工池、公園の人工池、植物園の人工池等が挙げられる。
中でも、ゴルフ場の人工池は、池の面積や池の深さが本発明の方法を適用するのに好適である点で、好ましい。
浄化の対象となる池の濁度は、本発明の効果(濁度の低下)を十分に得る観点から、好ましくは20度以上、より好ましくは25度以上、特に好ましくは30度以上である。
濁度の上限値は、特に限定されないが、本発明の効果(特に、浄化後における良好な景観性の確保)を十分に得る観点からは、好ましくは100度、より好ましくは80度、特に好ましくは60度である。
【0013】
本発明において、濁度とは、「上水試験方法 2011年版」(公益社団法人 日本水道協会)に「濁度の試験方法」として規定されている「透視比濁法」によって測定される値をいう。
本発明において、透視比濁法による濁度(単位:度)は、精製水1リットル中に、標準物質であるホルマジン1mgを含むときの濁りに相当するものを1度とするものである。
【0014】
浄化の対象となる池の色度は、濁度と共に色度も大幅に低下させて景観性の向上の効果を際立たせる観点から、好ましくは5度以上、より好ましくは7度以上、特に好ましくは9度以上である。
色度の上限値は、特に限定されないが、本発明の効果(より良好な景観性)を十分に得る観点からは、好ましくは30度、より好ましくは25度、特に好ましくは20度である。
本発明において、色度とは、「上水試験方法 2011年版」に「色度の試験方法」として規定されている「透過光測定法」によって測定される値をいう。ただし、色度の測定の際、池の水の中から、浮遊物質(懸濁物質;SS)を除去してなるものを用いるものとする。
透過光測定法は、水中に含まれる溶解性物質及びコロイド性物質が呈する類黄色ないし黄褐色の程度を、吸光光度法によって、波長390nm付近で吸光度を測定する方法である。
【0015】
沈降用物質の例としては、除藻剤、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末、コンクリートスラッジ再生粉末等が挙げられる。
除藻剤は、水中の植物プランクトンを死滅させるものである。死滅した植物プランクトンは、水底まで沈降する。
除藻剤としては、魚類に対して毒性がないもしくは毒性が弱いものが、好ましい。この観点から好ましい除藻剤の例として、「トルモアップ」(商品名;三明ケミカル社製;「トルモアップ」は登録商標である。)が挙げられる。
このような好ましい除藻剤を用いる場合、池に、鯉、鮒、メダカ等の魚を入れて、夏場におけるボウフラ及び蚊の発生を抑制することができる。
魚類に対する毒性が強い除藻剤を用いる場合、本発明の方法を適用する池には、魚等の水棲生物を入れないことが、望ましい。
【0016】
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末は、水中の植物プランクトンに付着し、植物プランクトンと共に、水底まで沈降するものである。沈降した植物プランクトンは、後に死滅する。
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を構成する材料の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、ウォラストナイト等が挙げられる。
中でも、入手の容易性および経済性の観点から、トバモライトが好適である。
【0017】
トバモライトは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物である。
トバモライトとしては、天然の鉱物を用いてもよいが、入手の容易性の観点から、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)を用いることが好ましい。
また、廃材の利用促進の観点から、軽量気泡コンクリートの製造工程や建設現場で発生する軽量気泡コンクリートの端材を用いることが、より好ましい。
軽量気泡コンクリートとは、トバモライト、および、未反応の珪石からなるものであり、かつ、80体積%程度の空隙率を有するものである。ここで、空隙率とは、コンクリートの全体積中の、空隙の体積の合計の割合をいう。
軽量気泡コンクリート中のトバモライトの割合は、軽量気泡コンクリートの内部の空隙部分を除く固相の全体を100体積%として、通常、65~80体積%程度である。
【0018】
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の粒度分布は、好ましくは、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が10質量%以上(好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上)のものである。該粒度が10μmを超えると、植物プランクトンを沈降させることが困難になる。該割合が10質量%未満であると、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の単位質量当たりの植物プランクトンの沈降量が少なくなる。
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の使用量は、池の面積10m当たり、好ましくは0.1~10kg、より好ましくは0.3~7kg、さらに好ましくは0.5~5kg、特に好ましくは1~3kgである。該量が0.1kg以上であると、沈降させて死滅させる植物プランクトンの量が、より多くなる。該量が10kg以下であると、本発明の方法で用いる材料のコストを削減することができ、また、粉末の使用量が多量であることによる池の水の濁度の一時的な過度の増大を避けることができる。
【0019】
コンクリートスラッジ再生粉末は、水中の植物プランクトンに付着し、植物プランクトンと共に、水底まで沈降するものである。沈降した植物プランクトンは、後に死滅する。
コンクリートスラッジ再生粉末は、コンクリートスラッジ(遠心成形等によるコンクリート製品の製造過程で生じる、廃棄物等として処理すべきもの)を水で希釈した後、フィルタープレスで固液分離を行い、得られた固形分を乾燥させた後、破砕または粉砕し、次いで、分級することによって、得ることができる。
コンクリートスラッジ再生粉末の好ましい粒度分布は、上述のケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の粒度分布と同じである。
コンクリートスラッジ再生粉末の市販品の例として、「PAdeCS」(商品名;日本コンクリート工業社製;「PAdeCS」は登録商標である。)が挙げられる。
沈降用物質の供給による池の濁度の低下の幅(換言すると、供給前の濁度の値から、供給後の濁度の値を差し引いた値)は、好ましくは8度以上、より好ましくは12度以上、特に好ましくは16度以上である。
【0020】
[粉末供給時期決定工程]
粉末供給時期決定工程は、前工程(沈降用物質供給工程)で沈降用物質を供給した後の池について、池の濁度が低下した後、植物プランクトンの死骸に起因する池の色度の増大が生じていることを確認し、後工程(粉末供給工程)におけるケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給すべき時期を決定する工程である。
池の濁度は、前工程(沈降用物質供給工程)で植物プランクトンが水底に沈降するため、前工程の直後においては、前工程の前に比べて大幅に低下している。
しかし、沈降した植物プランクトンの死骸は、池の水を着色させる物質を溶出させる。
このため、池の色度は、植物プランクトンの死滅に伴って、増大する。
本工程では、このような植物プランクトンの死骸に起因する池の色度の増大を防止(好ましくは色度を低下)するために、後工程である粉末供給工程の時期を決定するものである。
【0021】
前工程(沈降用物質供給工程)で沈降用物質を供給した時から、後工程(粉末供給工程)で、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給するまでの期間は、5日間以上、好ましくは10日間以上、特に好ましくは15日間以上である。該期間が5日間未満であると、植物プランクトンの死骸に起因する池の色度の増大の程度が、わずかであるため、本発明の効果を十分に得ることができない。
上記期間の上限は、特に限定されないが、通常、50日間である。特に、夏季における上記期間の上限は、通常、30日間である。
【0022】
[粉末供給工程]
粉末供給工程は、沈降用物質供給工程で沈降用物質を供給した時から、上述のとおり少なくとも5日間を経過した後に、池に、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末を供給して、植物プランクトンの死骸に起因する池の色度の増大を抑制する工程である。
本工程で使用するケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末は、沈降用物質供給工程で使用する上述のケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末と同じである。
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の使用量は、池の面積10m当たり、好ましくは0.1~10kg、より好ましくは0.3~7kg、さらに好ましくは0.5~5kg、特に好ましくは1~3kgである。該量が0.1kg以上であると、池の色度の増大をより十分に抑制することができる。該量が10kg以下であると、本発明の方法で用いる材料のコストを削減することができ、また、粉末の使用量が多量であることによる池の水の濁度の一時的な過度の増大を避けることができる。
【0023】
本工程によるケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末の供給後の池の色度は、好ましくは9度以下、より好ましくは7度以下、さらに好ましくは5度以下、特に好ましくは3度以下である。
また、池の色度の低下の幅(換言すると、粉末の供給前の色度の値から、粉末の供給後の色度の値を差し引いた値)は、好ましくは2度以上、より好ましくは4度以上、さらに好ましくは5度以上、特に好ましくは6度以上である。
【実施例
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末(ALC粉末)
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粉末としては、軽量気泡コンクリート(ALC)の廃材を粉砕した後に、分級して得た粉末(ALC粉末)を用いた。
ALC粉末は、10μm以下の粒度を有する粉末の割合が30~40質量%程度の粉末であった。ALC粉末の最大粒度は、100μm以下であった。
(2)除藻剤
除藻剤としては、「トルモアップ」(商品名;三明ケミカル社製)を用いた。
【0025】
[実施例1]
ゴルフ場の人工池(植物プランクトンの存在によって緑色を呈している池)を対象にして、以下のとおり、本発明の方法を適用した。なお、実施例1は、6月下旬~7月下旬の夏季に行ったものである。
まず、ゴルフ場の人工池(濁度:30度;色度:9.0度)に、該池の単位質量1トン当たり6gの量(ただし、池の質量は、池の面積及び深さから推定したものである。)の除藻剤を散布した。
除藻剤の散布後に、池の色度が目視で明らかに低下したものの、その後、池の色度が目視で明らかに増大してきたため、上述の除藻剤の散布時から17日間を経過した時に、人工池に、該池の単位面積10m当たり2kgの量のALC粉末を散布した。
この際、ALC粉末の散布の直前に、池の濁度を測定したところ、濁度は、7.0度であった。また、この時の色度は、8.5度であった。
ALC粉末の散布後、8日間を経過したときに、池の色度を測定したところ、色度は、3.0度であった。また、この時の濁度は、6.5度であった。
【0026】
[実施例2]
実施例1とは別のゴルフ場の人工池(植物プランクトンの存在によって緑色を呈している池)を対象にして、以下のとおり、本発明の方法を適用した。なお、実施例2は、8月下旬~9月中旬に行ったものである。
まず、ゴルフ場の人工池(濁度:25度;色度:9.0度)に、該池の単位面積10m当たり2kgの量のALC粉末を散布した。
ALC粉末の散布後に池の色度が目視で明らかに低下したものの、その後、池の色度が目視で明らかに増大してきたため、上述のALC粉末の散布時から20日間を経過した時に、人工池に、該池の単位面積10m当たり2kgの量のALC粉末を再び、散布(2回目)した。
この際、ALC粉末の散布(2回目)の直前に、池の濁度を測定したところ、濁度は、8.0度であった。また、この時の色度は、8.5度であった。
ALC粉末の散布後、5日間を経過したときに、池の色度を測定したところ、色度は、3.0度であった。また、この時の濁度は、6.0度であった。
【0027】
実施例1~2に示すとおり、本発明の方法を用いることによって、濁度が25~30度でかつ色度が9.0度の池を、濁度が6.0~6.5度でかつ色度が3.0度の池に、1ヶ月に満たない短期間で変えることができた。
なお、本発明の方法によって浄化された池は、その後も、本発明の方法を繰り返すことによって、濁度及び色度を一定以下に維持することができる。