(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
E01C19/26
(21)【出願番号】P 2021060222
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 理沙
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁則
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】竹田 奈美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅一
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190081(JP,A)
【文献】特開2018-111981(JP,A)
【文献】特開2016-010129(JP,A)
【文献】特開平11-203590(JP,A)
【文献】特開2016-126625(JP,A)
【文献】特開2001-067126(JP,A)
【文献】特開2018-192953(JP,A)
【文献】特開平10-219614(JP,A)
【文献】特開2006-177495(JP,A)
【文献】特開2017-019635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0078270(US,A1)
【文献】特開昭63-142106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/23
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント機体及びリア機体を含んで構成される機体と、
前記フロント機体に回転可能に取付けられた前輪と、
前記リア機体に回転可能に取付けられた後輪と、
前記機体に取付けられ、前記機体の周囲の障害物と前記機体との距離を検出するように構成された障害物検出センサと、
前記障害物検出センサによって検出された前記障害物と前記機体との距離情報に基づいて前記機体と前記障害物との距離を算出し、当該算出結果に応じた報知信号を送信するように構成された制御装置と、
前記機体に取付けられ、前記制御装置によって送信された前記報知信号に基づいて所定の色を報知するように構成された報知灯と、を備える転圧機械において、
前記機体の周囲を撮影する少なくとも一つのカメラを更に備え、
前記カメラは、該カメラの撮像範囲に前記報知灯を含むように前記機体に取付けられており、
前記制御装置は、前記カメラによって撮影された映像を外部のモニタに映し出すためのモニタ信号を送信するように構成されている、ことを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記カメラは、前記リア機体の前方に取付けられ、前記機体の前方を撮影するように構成されたフロントカメラ、及び、前記リア機体の後方に取付けられ、前記機体の後方を撮影するように構成されたリアカメラの少なくともいずれか一方を含んで構成されており、
前記報知灯は、前記フロントカメラを挟んで前記リア機体の前方に取付けられた一対のフロント報知灯、及び、前記リアカメラを挟んで前記リア機体の後方に取付けられた一対のリア報知灯の少なくともいずれか一方を含んで構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【請求項3】
前記リア機体に取付けられたフード部材を更に備え、
前記フード部材は、前記フロントカメラを覆うように構成されたフロントフード部材を含んで構成されており、
前記フロントフード部材は、前記フロントカメラの上方を覆うように左右方向に延在するフロント上方フード部と、該フロント上方フード部に接続されて前記フロントカメラの側方を覆うように上下方向に延在する一対のフロント側方フード部と、を含んで構成されており、
前記一対のフロント側方フード部は、前記フロント上方フード部から下方に離間した下側部分である第1先端部における前後方向長さが、前記フロント上方フード部と接続される上側部分である第1基端部における前後方向よりも短く形成されいる、ことを特徴とする請求項2記載の転圧機械。
【請求項4】
前記カメラは、前記リア機体の側方に取付けられ、前記機体の側方を撮影するように構成された一対のサイドカメラを含んで構成されており、
前記リア機体の側方において前記一対のサイドカメラの各々の下方に取付けられ、路面を照射するように構成された照明器具を更に備える、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【請求項5】
前記一対のサイドカメラの各々及び前記照明器具の各々は、上下方向において互いに整列するように配置されている、ことを特徴とする請求項4記載の転圧機械。
【請求項6】
前記フロント機体及び前記リア機体はアーティキュレート式に連結されており、
前記機体に取付けられ、前記機体の位置を検出するように構成された位置検出装置と、
前記機体に取付けられ、前記リア機体に対する前記フロント機体の転舵角度を検出するように構成された転舵角度検出センサと、
前記機体に取付けられ、前記リア機体に対し前記フロント機体を転舵させるように構成された転舵アクチュエータと、
前記機体に取付けられ、前記後輪を駆動するように構成された走行アクチュエータと、を更に備え、
前記制御装置は、前記位置検出装置によって検出された前記機体の位置情報に基づいて前記機体の現在位置を算出し、前記転舵角度検出センサによって検出された前記フロント機体の転舵角度情報に基づいて前記機体の現在転舵角度を算出し、前記機体の走行計画ラインと前記現在位置とを比較して算出された前記機体の修正位置に基づいて、前記現在転舵角度に対する修正転舵角度を算出し、前記修正転舵角度に基づいて、前記転舵アクチュエータを作動させつつ前記走行アクチュエータを作動させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【請求項7】
前記フロント機体及び前記リア機体はアーティキュレート式に連結されており、
前記機体に取付けられ、前記リア機体に対し前記フロント機体を転舵させるように構成された転舵アクチュエータと、
前記機体に取付けられ、前記後輪を駆動するように構成された走行アクチュエータと、
外部の無線リモコンと前記制御装置とを電気通信可能に接続する通信装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記通信装置を介して前記無線リモコンから前記フロント機体の目標転舵角度情報、及び、前記後輪の目標駆動情報を受信し、前記目標転舵角度情報に基づいて前記転舵アクチュエータを作動させ且つ前記目標駆動情報に基づいて前記走行アクチュエータを作動させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に関し、特に周囲を撮影するカメラを備える転圧機械に関する。
【背景技術】
【0002】
転圧機械は、車体上に設けられた運転席にオペレータが搭乗し、運転席近傍に設けられる操作装置を操作して、車体の前後に設けられた走行輪を兼ねた転圧輪により走行しながら、路面に敷き詰めた砂利やアスファルト等の舗装材を締め固める転圧作業に使用されるものである。例えば転圧機械にて歩道の縁石近傍の転圧作業を行う場合、オペレータは縁石近傍まで転圧機械を寄せたうえで、作業箇所を目視しつつ適宜軌道修正を行っている。この場合、転圧機械の進行方向への注意がおろそかになりやすく、転圧機械が周囲の作業者や障害物(以下、障害物等ともいう。)と接触するおそれがあった。
【0003】
このため、転圧機械に障害物検出装置を設け、転圧機械と障害物等との接触を回避することが行われていた(例えば特許文献1)。特許文献1には、距離画像センサと、当該距離画像センサの測定データに基づいて障害物等の有無を判定する制御装置とを備える転圧機械が記載されている。当該転圧機械は、制御装置によって検知範囲に障害物等があると判定されたとき、転圧機械にブレーキをかけるブレーキ手段や音等で周囲に警報を出す警報手段を含んで構成されている。ここで、特許文献1に記載の転圧機械は、車体上の運転席に搭乗したオペレータによって操作されるものであり、障害物等の検出により作動する警報手段は運転席に搭乗したオペレータを対象に報知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、作業機械の分野において、人手不足や労働環境の改善を目的に自動運転や遠隔運転の技術を採用することが増えている。このような自動運転や遠隔運転の技術を転圧機械に用いた場合、オペレータは車体上の運転席に搭乗せずに離れた場所で転圧機械を操作することになる。このため、特許文献1に記載の転圧機械では、車体の動作状況や障害物等の警報の状況等を直接把握することが難しくなると想定される。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、周囲作業者が転圧機械と障害物等との接触などの状況を確実に確認でき、安全性向上を図る転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の転圧機械は、フロント機体及びリア機体を含んで構成される機体と、前記フロント機体に回転可能に取付けられた前輪と、前記リア機体に回転可能に取付けられた後輪と、前記機体に取付けられ、前記機体の周囲の障害物と前記機体との距離を検出するように構成された障害物検出センサと、前記障害物検出センサによって検出された前記障害物と前記機体との距離情報に基づいて前記機体と前記障害物との距離を算出し、当該算出結果に応じた報知信号を送信するように構成された制御装置と、前記機体に取付けられ、前記制御装置によって送信された前記報知信号に基づいて所定の色を報知するように構成された報知灯と、を備える転圧機械において、前記機体の周囲を撮影する少なくとも一つのカメラを更に備え、前記カメラは、該カメラの撮像範囲に前記報知灯を含むように前記機体に取付けられており、前記制御装置は、前記カメラによって撮影された映像を外部のモニタに映し出すためのモニタ信号を送信するように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の転圧機械は、機体の周囲を撮影する少なくとも一つのカメラを備える。そして、当該カメラは、カメラの撮像範囲に報知灯を含むように前記機体に取付けられており、制御装置は、カメラによって撮影された映像を外部のモニタに映し出すためのモニタ信号を送信するように構成されている。このため、転圧機械の周囲で作業する作業者は、制御装置によって送信されたモニタ信号を例えば手元のタブレット等で受信し、当該タブレット等でカメラ映像を視認することができる。その一方で、報知灯は、障害物と機体との距離に応じた色を例えば点灯又は点滅により周囲に報知する。このため、作業者は、タブレット等で障害物と報知灯の色とを同時に視認することができる。したがって、作業者は、手元のタブレット等を介して転圧機械と障害物等との接触などの状況を速やかに確認でき、転圧機械による転圧作業の安全性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る転圧機械の概略構成を示す前方斜視図である。
【
図4】
図1に示す転圧機械のリア機体の前側部分を拡大して示す一部拡大斜視図である。
【
図5】
図1に示す転圧機械の左側部分を拡大して示す一部拡大側面図である。
【
図6】
図1に示す転圧機械のフロントカメラで撮影された映像の一例を示すタブレットの画面である。
【
図7】
図1に示す転圧機械のフロントカメラの撮像範囲を説明する正面図であり、左側に
図4に示すフード部材を取り付けた場合の撮像範囲を示し、右側に別の態様によるフード部材を取付けた場合の撮像範囲を示す。
【
図8】
図1に示す転圧機械に搭載される制御装置の機器構成を概略的に示すものであり、(a)は制御装置によって無人運転制御を行う場合に使用される機器構成を示し、(b)は制御装置によってサイトセーフティ制御を行う場合に使用される機器構成を示す。
【
図9】
図1に示す転圧機械に取付けられた操作盤の構成を説明する概略図である。
【
図10】
図1に示す転圧機械の遠隔操作を行う場合に使用される無線リモコンの構成を説明する概略図である。
【
図11】
図1に示す転圧機械に取付けられたLED表示器の表示内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る転圧機械1の概略構成を示す前方斜視図である。
図2は、
図1に示す転圧機械1の後方斜視図である。
図3は、
図1に示す転圧機械1の左側面図である。
図4は、
図1に示す転圧機械1のリア機体40の前側部分を拡大して示す一部拡大斜視図である。
図5は、
図1に示す転圧機械1の左側部分を拡大して示す一部拡大側面図である。
図6は、
図1に示す転圧機械1のフロントカメラ82aで撮影された映像の一例を示すタブレット102の画面である。
図7は、
図1に示す転圧機械1のフロントカメラ82aの撮像範囲を説明する正面図であり、左側に
図4に示すフード部材84を取り付けた場合の撮像範囲を示し、右側に別の態様によるフード部材を取付けた場合の撮像範囲を示す。
図8は、
図1に示す転圧機械1に搭載される制御装置90の機器構成を概略的に示すものであり、(a)は制御装置90によって無人運転制御を行う場合に使用される機器構成を示し、(b)は制御装置90によってサイトセーフティ制御を行う場合に使用される機器構成を示す。
図9は、
図1に示す転圧機械1に取付けられた操作盤86の構成を説明する概略図である。
図10は、
図1に示す転圧機械1の遠隔操作運転を行う場合に使用される無線リモコン100の構成を説明する概略図である。
図11は、
図1に示す転圧機械1に取付けられたLED表示器96の表示内容の一例を示す図である。
【0012】
なお、説明の便宜上、転圧機械1において転圧輪22(前輪)が設けられている側を「前」、タイヤ24(後輪)が設けられている側を「後」、後方から前方を見た状態を基準として「左」、「右」を定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は、転圧機械1の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は転圧機械1の左右(車幅)方向を示し、矢印「上」及び「下」は転圧機械1の上下方向を示している。
【0013】
<転圧機械の全体構成>
図1から
図5に示すように、転圧機械1は、アスファルト路面の転圧施工等に使用されるアーティキュレート式(関節式)の土工振動ローラであって、機体10と車輪20とを含んでいる。機体10は、フロント機体30とリア機体40とから構成されている。フロント機体30及びリア機体40は、連結ピン機構15を介してアーティキュレート式に互いに連結されている。車輪20は、フロント機体30に回転可能に取付けられた転圧輪22(前輪)と、リア機体40に回転可能に取付けられたタイヤ24(後輪)とから構成されている。
【0014】
転圧機械1の基本動作は、振動動作、走行動作、転舵動作、及び締固め動作から構成され、これらの基本動作を適宜組み合わせることで転圧作業が行われる。振動動作は、転圧輪22に内蔵された振動アクチュエータ120(
図8)を振動させることで、転圧輪22を振動させる動作である。走行動作は、エンジン及び油圧ポンプ(いずれも図示せず)を用いてタイヤ24を回転させて転圧機械1を走行させる動作である。なお、転圧作業中は、路面の締固め度合いを一定にするため、転圧機械1を一定速度で走行することが望ましい。転舵動作は、上記エンジン及び油圧ポンプを用いて、転舵アクチュエータ116(
図8)を作動させてリア機体40に対しフロント機体30を屈曲させる動作である。締固め動作は、転圧機械1を走行させながら、当該転圧機械1の自重、及び必要に応じて追加される転圧輪22の振動によって、転圧輪22及びタイヤ24を介して路面に荷重を加える動作である。
【0015】
<転圧輪、フロント機体>
図1及び
図2に示すように、転圧輪22はドラム形に形成されており、フロント機体30の枠体の内部に収容されている。転圧輪22の左右両側に位置する各端壁は、例えば防振ゴムを内蔵した支持ユニットを介して、後述する一対のサイドフレーム32に回転可能に支持されている。このようにして、転圧輪22はフロント機体30に弾性支持される。この転圧輪22内には、当該転圧輪22を振動させる例えば振動モータ等の振動アクチュエータ120が内蔵されており、当該振動アクチュエータ120を駆動することで、転圧輪22を振動させている。
【0016】
フロント機体30は、転圧輪22の各端壁に沿って延びる一対のサイドフレーム32と、当該一対のサイドフレーム32の前側端部を転圧輪22の前方で接続する前側接続フレーム34と、当該一対のサイドフレーム32の後方端部を転圧輪22の後方で接続する後側接続フレーム36と、を含む。具体的には、一対のサイドフレーム32は、転圧輪22の左右方向(車幅方向)外側において、前後方向に延びる板状の部材である。また、前側接続フレーム34は、転圧輪22の前方において左右方向に延びる角柱状の部材である。そして、前側接続フレーム34の左右両端に、一対のサイドフレーム32の前側端部がボルト等の締結部材を介して固定されている。また、後側接続フレーム36は、転圧輪22の後方において左右方向に延びる角柱状の部材である。そして、後側接続フレーム36の左右両端に、一対のサイドフレーム32の後側端部がボルト等の締結部材を介して固定されている。フロント機体30は、一対のサイドフレーム32、前側接続フレーム34、及び後側接続フレーム36により、平面視四角形状を有する枠体に形成されている。また、フロント機体30の前側接続フレーム34には、転圧輪22の外周面に付着した泥等の付着物を掻き落とすためのスクレーパ装置38が取付けられている。
【0017】
<タイヤ、リア機体>
図1及び
図2に示すように、リア機体40は、リアフレーム50と、リアフレーム50の後端に取付けられたリアバンパー52と、リアフレーム50の前側部分に搭載された制御装置収容体60と、リアフレーム50の後側部分に搭載された駆動装置収容体70とを含んで構成されている。リアフレーム50には、タイヤ24が回転可能に取り付けられている。タイヤ24はリアフレーム50の左右に1つずつ取付けられている。つまり、リアフレーム50は、左右のタイヤ24の間に配置している。なお、本実施形態に係る転圧機械1において、リアフレームの50の上方には、いわゆる運転席(即ちキャビン)が設けられていない。
【0018】
制御装置収容体60は、後述する制御装置90を収容する筐体であり、略直方体状に形成されている。
図4に示すように、制御装置収容体60の上面(即ち天頂部分)には、後述するGNSSアンテナ98を固定するための土台105が取付けられている。具体的には、土台105は、後述するフロント上方フード部84aの上面に固定された一対の側方土台104と、一対の側方土台104に接続された上方土台106とにより構成されている。一対の側方土台104は、一端においてフロント上方フード部84aの上面に固定され、幅方向内側へ向かって斜め上方に延在する板材である。上方土台106は、一対の側方土台104の内側端部に接続されて左右方向に延在する板材である。
【0019】
駆動装置収容体70は、ディーゼルエンジン及び油圧ポンプを収容する筐体である。当該油圧ポンプはディーゼルエンジンによって駆動され、振動アクチュエータ120、タイヤ24を駆動するように構成された走行アクチュエータ118(例えば斜板式可変容量型の走行用モータ)、及びリア機体40に対しフロント機体30を転舵させるように構成された転舵アクチュエータ116(例えば油圧シリンダ)等の油圧機器に対して作動油を供給する。走行アクチュエータ118は機体10に取付けられており、圧油の押しのけ容積及び斜板の傾転方向を調整することで転圧機械1の走行速度及び前後進方向を制御している。
【0020】
図5に示すように、連結ピン機構15は、フロント機体30及びリア機体40をアーティキュレート式に互いに連結するものである。具体的には、フロント機体30の後側接続フレーム36及びリア機体40のリアフレーム50が、連結ピン機構15を介して回動可能に連結されている。転舵アクチュエータ116は、例えば一対の油圧シリンダと、当該一対の油圧シリンダ内に伸縮自在に収容された一対のピストンロッドとを含んで構成されている。一対の油圧シリンダはリア機体に相対回動可能に取付けられており、一対のピストンロッドはフロント機体30に相対回動可能に取り付けられている。油圧ポンプにより供給される圧油によって一対の油圧シリンダ内の油圧を変化させて一対のピストンロッドを伸縮させることにより、リア機体40に対してフロント機体30が回動し転舵動作が実現される。なお、転舵アクチュエータ116の構成は公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0021】
図1から
図8に示すように、転圧機械1は、更に、機体情報取得手段108と、カメラ82と、フード部材84と、操作盤86と、通信装置88と、制御装置90と、報知灯92と、照明器具94、LED表示器96とを含んで構成されている。
【0022】
<機体情報取得手段>
機体情報取得手段108は、後述する転圧機械1の自律運転に必要な機体10の種々様々な情報を取得して制御装置90に送信するように構成されたものであり、障害物検出センサ80と、GNSSアンテナ98(位置検出装置)と、転舵角度検出センサ110と、進行方向検出センサ112と、速度検出センサ114と、を含んで構成されている。
【0023】
障害物検出センサ80は、機体10に取付けられ、機体10の周囲の障害物と機体10との距離を検出するように構成されている。具体的には、
図1から
図3に示すように、障害物検出センサ80は、リア機体40の前側に取付けられたフロント距離センサ80aと、リア機体40の後側に取付けられたリア距離センサ80bとを含んで構成されている。障害物検出センサ80は、投射光を発光する発光部と、投射光が物体に当たった際の反射光を受光する受光部とを備え、投射光と反射光との時間差から障害物までの距離を測定するものである(所謂LiDAR)。
図8に示すように、障害物検出センサ80は、障害物と機体10との距離情報を制御装置90に送信するように構成されている。
【0024】
GNSSアンテナ98は、機体10の位置を検出するように構成されており、機体10に取付けられている。具体的には、
図4に示すように、GNSSアンテナ98は、上方土台106にボルト及びナットによって締結され、転圧機械1における最上部に配置されている。GNSSアンテナ98は、複数の測位衛星から信号を受信するものであり、地上における転圧機械1の現在位置を計測するためのアンテナである。
図8に示すように、GNSSアンテナ98は、転圧機械1の位置情報を制御装置90に送信するように構成されている。
【0025】
転舵角度検出センサ110は、フロント機体30に取付けられており、リア機体40に対するフロント機体30の転舵角度を検出するように構成されている。例えば、転舵角度検出センサ110は、図示しない回転軸の回転エンコーダによって電圧を出力して転舵角度を検出するように構成されたものである。具体的には、転舵アクチュエータ116におけるピストンロッドの伸縮動作によってフロント機体30がリア機体40に対して回動すると、これに応じて転舵角度検出センサ110の図示しない回転軸が回転する。転舵角度検出センサ110は、当該回転軸の回転量に応じた電圧変化を転舵角度情報として検出し、当該転舵角度情報を制御装置90に送信するように構成されている。なお、転舵角度検出センサ110は、リア機体40に対するフロント機体30の転舵角度を検出できるものであればよく、上述の回転エンコーダタイプのセンサに限定されるものではない。
【0026】
進行方向検出センサ112は、転圧機械1の進行方向(前進方向又は後進方向)を検出するセンサであり、例えばジャイロセンサや加速度センサである。また、速度検出センサ114は、転圧機械1が前後進する際の速度を検出するものであり、例えばタイヤ24に設けられた走行用モータの回転数を検出するロータリーエンコーダである。
図8に示すように、進行方向検出センサ112及び速度検出センサ114はそれぞれ、転圧機械1の進行方向情報及び速度情報を制御装置90に送信するように構成されている。
【0027】
<カメラ82>
カメラ82は、機体10の周囲を撮影するように構成されたものである。カメラ82は、当該カメラ82の撮像範囲に報知灯92を含むように機体10に取付けられている。具体的には
図1から
図5に示すように、カメラ82は、リア機体40の前方に取付けられ、機体10の前方を撮影するように構成されたフロントカメラ82aと、リア機体40の後方に取付けられ、機体10の後方を撮影するように構成されたリアカメラ82bと、リア機体40の側方に取付けられ、機体10の側方を撮影するように構成された一対のサイドカメラ82cとを含んで構成されている。なお、
図4に示すように、フロントカメラ82aは、制御装置収容体60の前側部分において、前方に突出するように取付けられている。
図3に示すように、リアカメラ82bは、リアフレーム50においてリア距離センサ80bの下方に取付けられており、その一部がリアバンパー52より後側に配置されている。なお、リアカメラ82bの撮像範囲には、リア距離センサ80bは含まれない。
図1から
図5に示すように、一対のサイドカメラ82cはそれぞれ、後述する一対のフロント側方フード部84bに取付けられている。フロントカメラ82a、リアカメラ82b、及び一対のサイドカメラ82cはそれぞれ、リア機体40の前後左右に1つずつ設けられており、これにより機体10の周囲を全周に亘って撮影可能となっている。
【0028】
図6に示すように、フロントカメラ82aの撮像範囲には、後述する2つのフロント報知灯92aが含まれている。フロントカメラ82aの撮像範囲には、制御装置収容体60の一部、一対のサイドフレーム32、及び転圧輪22も含まれている。なお、図示しないが、リアカメラ82bの撮像範囲にも、後述する2つのリア報知灯92bが含まれている。また、一対のサイドカメラ82cの撮像範囲に、後述する一対のサイド報知灯92dが含まれてもよい。
【0029】
<フード部材>
図4及び
図5に示すように、フード部材84は、リア機体40に取付けられ、フロントカメラ82aを覆うように構成されたフロントフード部材84eを含んで構成されている。フード部材84は、リア機体40に取付けられることで、リア機体40の一部を構成するものである。フロントフード部材84eは、フロントカメラ82aの撮影機能を高めるために設けられたものであり、フロントカメラ82aに対する水滴や泥等の付着を抑制する役割を有する。フロントフード部材84eは、フロントカメラ82aの上方を覆うように左右方向に延在するフロント上方フード部84aと、当該フロント上方フード部84aに接続されてフロントカメラ82aの側方(左右両側)を覆うように上下方向に延在する一対のフロント側方フード部84bと、を含んで構成されている。フロント上方フード部84a及び一対のフロント側方フード部84bは板状部材によって形成されており、制御装置収容体60の前側から前方へ突出するように取付けられている。また、一対のフロント側方フード部84bは、フロント上方フード部84aから下方に離間した下側部分である第1先端部84cにおける前後方向長さL1が、フロント上方フード部84aと接続される上側部分である第1基端部84dにおける前後方向長さL2よりも短く形成されている。そして、一対のフロント側方フード部84bはそれぞれ、第1基端部84dから第1先端部84cにかけて部分的に後方に向かって湾曲するように形成されている。
【0030】
なお、フード部材84は、リア機体40に取付けられ、リアカメラ82bを覆うように構成されたリアフード部材(図示せず)を含んで構成されてもよい。リアフード部材は、フロントフード部材84eと同様の構成を有しており、具体的には、リアカメラ82bの上方を覆うように左右方向に延在するリア上方フード部(図示せず)と、当該リア上方フード部に接続されてリアカメラ82bの側方(左右両側)を覆うように上下方向に延在する一対のリア側方フード部(図示せず)と、を含んで構成される。リア上方フード部及び一対のリア側方フード部は板状部材によって形成され、駆動装置収容体70の後側から後方へ突出するように取付けられる。一対のリア側方フード部は、リア上方フード部から下方に離間した下側部分である第2先端部における前後方向長さが、リア上方フード部と接続される上側部分である第2基端部における前後方向よりも短く形成される。そして、一対のリア側方フード部は、第2基端部から第2先端部にかけて部分的に前方に向かって湾曲するように形成される。
【0031】
<操作盤>
図5に示すように、操作盤86は、リアフレーム50の左側に取付けられている。具体的には、操作盤86は、転圧輪22及びタイヤ24の間であって、LED表示器96の下方に設置されている。なお、操作盤86の設置場所はこれに限定されるものではなく、例えばタイヤ24の後方且つリアフレーム50の左側に設置されていてもよい。なお、操作盤86は、機体10の一部であるリアフレーム50の右側面に取付けられていてもよい。
【0032】
図9に示すように、操作盤86は、操作盤用モニタ86a、VDCスイッチ86b、ホーンスイッチ86c、キースイッチ86d、非常停止スイッチ86e、起動用スイッチ86f、無線許可スイッチ86g、ファン逆転スイッチ86h、SCR再生スイッチ86i、及び予備スイッチ86jを含んで構成されている。操作盤86は、上記各スイッチの操作に応じて、対応するスイッチ信号を制御装置90に送信するように構成されている。
【0033】
操作盤用モニタ86aは、例えばVDCスイッチ86bにより選択された項目や、転圧機械1のエラーコード、油量等の情報を表示するものであり、オペレータが転圧機械1の状態を視認するものである。VDCスイッチ86bは、オペレータが手で転がしながら操作するものであり、操作盤用モニタ86aに表示された種々様々な作業項目を選択し実行するものである。VDCスイッチ86bの構成及び機能は公知であるので、その詳細な説明を省略する。ホーンスイッチ86cは、例えば転圧機械1のエンジンを始動する前に、周囲作業者に注意を促すために使用される押しボタン式のスイッチである。キースイッチ86dは、電源オフ、アクセサリ電源ON、メイン電源ON、エンジン始動を切り換えるダイヤル式のスイッチである。非常停止スイッチ86eは、エンジンを強制停止させる押しボタン式のスイッチである。起動用スイッチ86fは、エンジンを始動するためのスイッチであり、当該起動用スイッチ86fを押しながらキースイッチ86dをエンジン始動位置まで回転させるすることでエンジンが始動する。無線許可スイッチ86gは、後述する無線リモコン100による転圧機械1の操作を許可する又は非許可とする押しボタン式のスイッチである。つまり、操作盤86の無線許可スイッチ86gを操作しない限り、後述する無線リモコン100による転圧機械1の遠隔操作を行うことができない。ファン逆転スイッチ86hは、転圧機械1に設けられたラジエータ用のファンを逆回転させる押しボタン式のスイッチであり、これによりラジエータに詰まったごみを吹き飛ばすことができる。SCR再生スイッチ86iは、マフラーに取付けられたSCR(選択式還元触媒)によって捕集されたPM(粒子状物質)を加熱して燃やし尽くすシステムを稼働するための押しボタン式のスイッチである。予備スイッチ86jは、必要に応じて後で種々様々なスイッチを追加するための空スイッチである。
【0034】
<通信装置>
図8に示すように、通信装置88は、制御装置90に搭載されるものであり、例えば携帯電話の通信規格(LTE)や無線LAN等により、外部の通信機器(タブレット102や無線リモコン100等)と双方向通信を可能とするものである。具体的には、通信装置88は、転圧機械1のオペレータや周囲作業者が保持するタブレット102、後述する無線リモコン100、及び施工現場の外部に設置されたホストコンピュータ(図示せず)を、制御装置90に双方向通信可能に接続するものである。
【0035】
<制御装置>
制御装置90は、制御装置収容体60の内部に搭載されている。制御装置90は、エンジンの運転制御をはじめとして総合的な制御を行うものであり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。以下、制御装置90について、無人運転制御を行う場合に使用される機器構成(
図8(a))、サイトセーフティ制御を行う場合に使用される機器構成(
図8(b))に分けて説明する。なお、無人運転制御は、後述する転圧機械1の自律運転モード及び遠隔操作運転モードを含む意味である。また、サイトセーフティ制御は、転圧機械1のオペレータや周囲作業者の安全性向上を図るために、報知灯92、LED表示器96、及びタブレット102を使用して実施される制御を意味する。
【0036】
図8(a)に示すように、制御装置90の入力側には、機体情報取得手段108が例えばCANを介して電気通信可能に接続されている。これにより、制御装置90は、GNSSアンテナ98から受信した位置情報に基づいて転圧機械1の現在位置を算出し、進行方向検出センサ112から受信した進行方向情報に基づいて転圧機械1の進行方向(前進又は後進)を算出し、転舵角度検出センサ110から受信した転舵角度情報に基づいて転圧機械1の現在転舵角度を算出し、速度検出センサ114から受信した速度情報に基づいて転圧機械1の走行速度を算出し、障害物検出センサ80から受信した距離情報に基づいて障害物と転圧機械1との距離を算出することが可能となる。また、制御装置90の入力側には、操作盤86が電気通信可能に接続されている。これにより、制御装置90は、オペレータや周囲作業者による操作盤86の操作内容に基づく操作情報(例えば無線許可スイッチ86gの操作に基づく無線操作許可情報)を受信し、当該操作内容に応じた処理(例えば無線リモコン100への無線操作許可信号の送信)を行う。また、制御装置90には、通信装置88を介して無線リモコン100が双方向通信可能に接続されている。
【0037】
図8(a)に示すように、制御装置90の出力側には、走行アクチュエータ118、転舵アクチュエータ116、振動アクチュエータ120、LED表示器96、ホーン122、及び左右ウィンカー124が電気通信可能に接続されている。走行アクチュエータ118は、制御装置90からの走行制御信号を受信し、当該走行制御信号に基づいて、油圧ポンプから供給される圧油の押しのけ容積及び斜板の傾転方向を調整し、これにより転圧機械1の走行速度及び前後進方向を調整する。また、転舵アクチュエータ116は、制御装置90からフロント機体30の修正転舵角度信号を受信し、当該修正転舵信号に基づいて、油圧ポンプから供給される油の圧力を調整し、リア機体40に対するフロント機体30の転舵角度を調整する。ここで、修正転舵角度信号は、制御装置90に予め格納された転圧機械1の走行計画ラインと転圧機械1の現在位置とを比較し、当該比較結果に基づいて転圧機械1の現在転舵角から算出されるものである。なお、転圧機械1の走行計画ラインは、転圧機械1の外部にあるホストコンピュータに予め格納されていてもよい。この場合、修正転舵角度はホストコンピュータにて算出され、当該ホストコンピュータから送信された修正転舵角度情報が、通信装置88を介して転圧機械1の制御装置90にて受信される。振動アクチュエータ120は、制御装置90から振動開始信号を受信し、当該振動開始信号に基づいて、油圧ポンプから供給される圧油を調整し、所定の振幅で転圧輪22を振動させる。また、ホーン122及び左右ウィンカー124は、制御装置90から所定の信号を受信し、当該信号に基づいて作動するように構成されている。LED表示器96は、制御装置90から所定の表示信号を受信し、当該表示信号に基づいて後述する所定の情報を表示するように構成されている。なお、LED表示器96の構成については後述する。
【0038】
図8(b)に示すように、制御装置90の入力側には、カメラ82及び障害物検出センサ80が例えばCANにより電気通信可能に接続されている。さらに、制御装置90の出力側には、報知灯92及びLED表示器96が電気通信可能に接続されている。タブレット102は、通信装置88を介して制御装置90と双方向通信可能に接続されている。
【0039】
サイトセーフティ制御が行われる場合、制御装置90は、障害物検出センサ80によって検出された障害物と機体10との距離情報に基づいて機体10と障害物との距離を算出し、当該算出結果に応じた報知信号を送信するように構成されている。具体的には、制御装置90は、障害物と機体10との距離を例えば3段階に分類し、当該距離が長距離であると判定したときには青色報知信号を送信し、当該距離が中距離であると判定したときには黄色報知信号を送信し、当該距離が近距離であると判定したときには赤色報知信号を送信するように構成されている。なお、障害物と機体10との距離分類(長距離、中距離、近距離)は、適宜変更可能なものである。制御装置90によって送信された報知信号は、報知灯92及びLED表示器96にて受信され、当該報知信号に応じた色(青色、黄色、赤色)が点滅又は点灯により報知される。なお、赤色報知信号は、障害物に接近して機体10が急停車をした場合や機体10が故障して運転に支障がある場合などに制御装置90によって送信されるものであってもよい。また、黄色報知信号は、機体10に異常が発生した場合などに、オペレータ並びに周囲作業者に注意喚起を行うために制御装置90によって送信されるものであってもよい。また、青色報知信号は、機体10に異常がなく通常の正常運転をしている場合に制御装置90によって送信されるものであってもよい。
【0040】
また、制御装置90は、カメラ82によって撮影された映像を外部のタブレット102(モニタ)に映し出すためのモニタ信号を送信するように構成されている。具体的には、当該モニタ信号は、通信装置88を介して制御装置90からタブレット102に送信される。そして、当該モニタ信号を受信したタブレット102には、カメラ82によって撮影された映像の全体が表示される。フロントカメラ82a、リアカメラ82b、及び一対のサイドカメラ82cによって撮影された映像は、タブレット102の画面を分割することで同時に表示可能である。なお、カメラ82によって撮影された映像は、制御装置90を介して、施工現場から離れた管理事務所のモニタ(図示せず)に送信されてもよい。管理事務所のモニタも、制御装置90と双方向で通信可能である。
【0041】
ここで、
図6に示すように、フロントカメラ82aの撮像範囲には、後述する2つのフロント報知灯92aが含まれており、これにより、オペレータや周囲作業者は、手元のタブレット102を介して、フロントカメラ82aによって撮影されたフロント報知灯92a及び障害物Pを同時に視認することができる。フロントカメラ82aの撮像範囲には、制御装置収容体60の一部、一対のサイドフレーム32、及び転圧輪22も含まれている。なお、図示しないが、リアカメラ82bの撮像範囲にも、後述する2つのリア報知灯92bが含まれており、オペレータや周囲作業者は、手元のタブレット102を介して、リアカメラ82bによって撮影されたリア報知灯92b及び障害物を同時に視認することができる。また、一対のサイドカメラ82cの撮像範囲に、後述する一対のサイド報知灯92dが含まれてもよい。
【0042】
<報知灯>
図1から
図5に示すように、報知灯92は、機体10に取付けられ、制御装置90によって送信された報知信号に基づいて所定の色を報知するように構成されている。具体的には、報知灯92は、フロントカメラ82aを挟んでリア機体40の前方に取付けられた一対のフロント報知灯92a、及び、リアカメラ82bを挟んでリア機体40の後方に取付けられた一対のリア報知灯92bを含んで構成されている。
図4に示すように、一対のフロント報知灯92aはそれぞれ、フロントカメラ82aの左右両側において当該フロントカメラ82aよりも下側に配設されている。
図2に示すように、一対のリア報知灯92bはそれぞれ、リアカメラ82bの左右両側において当該リアカメラ82bよりも下側に配設されている。なお、報知灯92は、1つのフロント報知灯及び1つのリア報知灯を含むものであってもよく、その数が特に限定されるものではない。また、
図1から
図4に示すように、報知灯92は、一対の側方土台104にそれぞれ設置される一対の上方報知灯92c、及び、一対のフロント側方フード部84bにそれぞれ設置される一対のサイド報知灯92dを含んで構成されている。一対の上方報知灯92cは、幅方向外側に斜め上方を向いて設置されている。一対のサイド報知灯92dはそれぞれ、一対のサイドカメラ82cの上方に配置されてもよいし、一対のサイドカメラ82cの下方に配置されてもよい。例えば、一対のサイド報知灯92dはそれぞれ、一対のサイドカメラ82cの斜め下方に配置されてもよい。一対のフロント報知灯92a、一対のリア報知灯92b、一対の上方報知灯92c、及び一対のサイド報知灯92dは、制御装置90によって送信された報知信号に応じた色(青色、黄色、赤色)を点滅又は点灯により報知するように構成されている。
【0043】
<LED表示器>
図1から
図5に示すように、LED表示器96は、制御装置収容体60の側面(左右両側面)であって操作盤86の上方にそれぞれ配置されている。
図11に示すように、LED表示器96は、左側に記号表示部96a、中央に文字表示部96b、右側に報知灯連動部96cが設けられており、転圧機械1の状態を色、文字、記号で表示するものである。なお、LED表示器96における記号表示部96a、文字表示部96b、及び報知灯連動部96cの並び順は一例であり、これに限定されるものではない。
【0044】
記号表示部96aは、例えば駐車ブレーキの作動/解除、エンジン停止、機体10の故障等、転圧機械1の状態を記号により表示するものである。
図11には、機体10に何らかの故障が生じていることを示す記号が一例として記載されている。この場合、オペレータや周囲作業者は、操作盤86のVDCスイッチ86bを操作して操作盤用モニタ86aを視認することで、具体的な故障内容を把握することができる。
【0045】
文字表示部96bは、手動操作モード、遠隔操作モード、自律運転モード、故障モード、終了モード等、転圧機械1の状態を文字で表示するものである。なお、手動操作モードはオペレータや周囲作業者が操作盤86を操作する状態を意味し、遠隔操作モードは後述する無線リモコン100により転圧機械1を操作する状態を意味し、自律運転モードは転圧機械1が予め準備された走行計画ラインに沿って自動運転する状態を意味し、故障モードは転圧機械1に異常がある状態を意味し、終了モードはエンジンが切られた状態を意味する。
図11には、遠隔操作モードの英語表記が示されている。なお、これらの各モードは一例であり、適宜追加修正可能なものであり、日本語表記でも英語表記でもよい。
【0046】
報知灯連動部96cは、報知灯92と連動して、報知灯92にて報知される色と同じ色を表示するものである。つまり、報知灯連動部96cは、制御装置90によって送信された報知信号に応じた色(青色、黄色、赤色)を点滅又は点灯により報知するように構成されている。なお、報知灯連動部96cは、報知灯92と異なる態様で色を表示するものであってもよい。つまり、報知灯連動部96cの点灯又は点滅は、報知灯92の点灯又は点滅と連動してもよいし、連動していなくてもよい。このように、報知灯92とLED表示器96の報知灯連動部96cは連動して同じ色を表示するので、前後左右4方向で転圧機械1の状態が表示され、オペレータや周囲作業者の作業位置に関わらず転圧機械1の状態を確実に把握できる。これにより、転圧機械1の作業に伴うオペレータや周囲作業者の安全性の向上を図ることができる。
【0047】
<照明器具>
図4及び
図5に示すように、照明器具94は、リア機体40の側方において一対のサイドカメラ82cの各々の下方に取付けられ、路面を照射するように構成されている。より具体的には、一対のサイドカメラ82cの各々及び照明器具94の各々は、一対のフロント側方フード部84bに取付けられ、上下方向において互いに整列するように配設されている。つまり、サイドカメラ82c及び照明器具94は、上方にサイドカメラ82cが位置し、下方に照明器具94が位置し、互いに上下縦方向で直線上に配置されている。
【0048】
<無線リモコン>
図8(a)に示すように、無線リモコン100は、通信装置88を介して制御装置90と双方向通信可能に接続されており、転圧機械1のオペレータにて保持されるものである。無線リモコン100は、操作盤86に設置された無線許可スイッチ86gが操作されることで、転圧機械1の制御装置90と通信可能となるものである。無線リモコン100を操作することで、運転室(キャブ)が設けられていない転圧機械1の遠隔操作が可能となり、例えば、転圧機械1の保管場所から施工現場まで転圧機械1を安全に移動させることができる。また施工現場において、転圧機械1の自律運転による転圧作業が難しい細かな部分等、適宜無線リモコン100により転圧作業を実施することができる。
【0049】
図8(a)に示すように、無線リモコン100から送信された操作信号は、通信装置88を介して制御装置90にて受信される。そして、制御装置90は、当該操作信号を所定の出力信号に変換して各出力対象(例えば、走行アクチュエータ118等)に送信する。具体的には、
図10に示すように、無線リモコン100は、第1ジョイスティック100a、第2ジョイスティック100b、運転モード切替スイッチ100c、非常停止スイッチ100d、駐車ブレーキスイッチ100e、エンジン回転数選択スイッチ100f、走行速度決定スイッチ100g、及び、振動振幅決定スイッチ100hを含んで構成されている。
【0050】
第1ジョイスティック100aは、その中立位置を基準に左右に操作することでリア機体40に対するフロント機体30の転舵動作を実行するものである。また、第1ジョイスティック100aを押下することで、ホーン122を作動させることができる。第2ジョイスティック100bは、その中立位置を基準に前後に操作することで転圧機械1の前後進動作を実行するものである。また、第2ジョイスティック100bを押下することで、振動アクチュエータ120を作動させることができる。
【0051】
運転モード切替スイッチ100cは、その中立位置を基準に左右に操作することで、転圧機械1の自律運転モード、無線リモコン100による遠隔操作モード、及び転圧機械1の手動操作モードを切り替えるものである。例えば、運転モード切替スイッチ100cを左側に操作したときに自律運転モードに切り替わり、右側に操作したときに遠隔運転モードに切り替わり、中立位置において手動操作モードに切り替わるように構成されている。無線リモコン100を用いて自律運転モードに切り替える場合、最初に操作盤86の無線許可スイッチ86gの操作が必要となるため、悪意の第三者によるハッキングを防止することができる。
【0052】
非常停止スイッチ100dは、押しボタン式のスイッチであり、無線リモコン100を介してエンジンを強制停止させるものである。駐車ブレーキスイッチ100eは、その中立位置を基準に前後に操作することで、転圧機械1の駐車ブレーキの作動/解除を切り換えるものである。例えば、駐車ブレーキスイッチ100eを前方に操作すると駐車ブレーキが作動し、駐車ブレーキスイッチ100eを後方に操作すると駐車ブレーキが解除される。駐車ブレーキスイッチ100eの操作状態は、LED表示器96の記号表示部96aに表示される。エンジン回転数選択スイッチ100fは、その中立位置を基準に前後に操作することで、転圧機械1のエンジン回転数を所定値に設定するものである。例えば、エンジン回転数選択スイッチ100fを前方に操作するとエンジン回転数がある値(例えば1800rpm)に設定され、エンジン回転数選択スイッチ100fを後方に操作するとエンジン回転数が別の値(例えば1000rpm)に設定される。なお、エンジン回転数選択スイッチ100fによって設定可能な回転数大きさ及び数は適宜変更可能である。走行速度決定スイッチ100gは、ダイヤル式の無段階スイッチであり、例えばその開始位置を基準に右方向に回転させることで転圧機械1の最高走行速度が設定されるものである。振動振幅決定スイッチ100hは、2段階で操作可能なスイッチであり、例えばその開始位置を基準に前方向に1段階操作することで振動アクチュエータ120の振幅を小さく設定し、更に前方向に1段階操作することで振動アクチュエータ120の振幅を大きく設定するものである。振動アクチュエータ120の振幅は、制御装置90に予め記憶されているものであり、具体的な振幅は適宜変更可能である。
【0053】
次いで、転圧機械1の各動作モードについて説明する。
<手動操作モード>
手動操作モードは、転圧機械1のオペレータや周囲作業者が操作盤86を操作する状態を意味する。手動操作モードは、主として転圧機械1の起動時、メンテンナンス時に選択されるものであり、手動操作モードにおいて無線リモコン100を介して転圧機械1を操作することはできない。例えば、転圧機械1の起動時、オペレータは、操作盤86のキースイッチ86dを操作してメイン電源ONまで回転させてホーンスイッチ86cを押下する。その後、起動用スイッチ86fを押しながらキースイッチ86dをエンジン始動位置に回転させることでエンジンを起動させる。エンジンが起動した後、オペレータは、無線許可スイッチ86gを押下して、無線リモコン100による転圧機械1の遠隔操作を許可する。また、転圧機械1のメンテンナンス時、オペレータや周囲作業者は、ファン逆転スイッチ86hを操作して、ラジエータに詰まったごみを吹き飛ばすことができる。更に、SCR再生スイッチ86iを操作することで、SCR(選択式還元触媒)に捕集されたPM(粒子状物質)を燃やし尽くすことができる。
【0054】
<無人運転制御:遠隔操作モード>
遠隔操作モードは、無線リモコン100により転圧機械1を操作する状態を意味する。オペレータは、無線リモコン100の運転モード切替スイッチ100cを操作することで、無線リモコン100による遠隔操作モードを選択することができる。遠隔操作モードにおいて、制御装置90は、通信装置88を介して無線リモコン100からフロント機体30の目標転舵角度情報、及び、タイヤ24の目標駆動情報を受信し、当該目標転舵情報に基づいて転舵アクチュエータ116を作動させ且つ目標駆動情報に基づいて走行アクチュエータ118を作動させるように構成されている。ここで、目標転舵角度情報とは、無線リモコン100の第1ジョイスティック100aの操作量に対応して制御装置90に送信されるもので、フロント機体30の転舵角度を決定する情報である。制御装置90は、無線リモコン100から受信した上記目標転舵情報に基づいて、転舵アクチュエータ116を作動させてリア機体40に対してフロント機体30を転舵する。また、目標駆動情報とは、無線リモコン100の第2ジョイスティック100bの操作量に対応して制御装置90に送信されるもので、タイヤ24の回転速度及び回転方向を決定する情報である。制御装置90は、無線リモコン100から受信した目標駆動情報に基づいて、走行アクチュエータ118を作動させてタイヤ24を所定回転数で所定方向に駆動する。
【0055】
遠隔操作モードにおいて、制御装置90は、非常停止スイッチ100dの操作に応じた非常停止信号を受信し、当該非常停止信号に基づいてエンジンを強制停止させる。また、制御装置90は、駐車ブレーキスイッチ100eの操作位置に応じた駐車ブレーキ信号を受信し、当該駐車ブレーキ信号に基づいて転圧機械1の駐車ブレーキを作動/解除させる。また、制御装置90は、エンジン回転数選択スイッチ100fの操作位置に応じたエンジン回転数信号を受信し、当該エンジン回転数信号に基づいて転圧機械1のエンジン回転数を所定値に設定する。また、制御装置90は、走行速度決定スイッチ100gの操作量に応じた最高走行速度信号を受信し、当該最高走行速度信号に基づいて、転圧機械1の最高走行速度を設定する。この場合、制御装置90は、転圧機械1の走行速度が設定された最高走行速度を超えないように、エンジン、油圧ポンプ、走行アクチュエータ118の動作を制御する。更に、制御装置90は、振動振幅決定スイッチ100hの操作位置に応じた振動振幅信号を受信し、当該振動振幅信号に基づいて振動アクチュエータ120を所定の振幅で振動する。
【0056】
<無人運転制御:自律運転モード>
自律運転モードは、転圧機械1が予め準備された走行計画ラインに沿って自動運転する状態を意味する。自律運転モードにおいて、転圧機械1は、例えば走行計画ライン情報、転圧エリア情報、転圧条件情報に基づいて転圧作業を行う。走行計画ライン情報には、転圧路を特定するための座標、及び転圧路の幅等が含まれている。転圧エリア情報には、転圧エリア数、及び各転圧エリアを特定するための座標等が含まれる。例えば、矩形の転圧エリアの場合、各転圧エリアを特定するための座標として転圧エリアの四隅の座標が与えられる。転圧条件情報には、転圧輪22の振動振幅、各転圧路における転圧回数、転圧エリアへの進入点の座標、及び転圧エリアからの退出点の座標等が含まれる。なお、走行計画ライン情報、転圧エリア情報、及び転圧条件情報は、転圧機械1の制御装置90に予め格納されていてもよいし、施工現場から離れたホストコンピュータ等に格納されていてもよい。
【0057】
オペレータは、無線リモコン100の運転モード切替スイッチ100cを操作することで転圧機械1の自律運転モードを選択することができる。これにより、オペレータが機体10から離れた位置で自律運転を開始させることができ、転圧機械1が急に動いたとしても転圧機械1とオペレータとの接触を回避することができる。自律運転モードにおいて、制御装置90は、GNSSアンテナ98によって検出された機体10の位置情報に基づいて当該機体10の現在位置を算出するとともに、転舵角度検出センサ110によって検出されたフロント機体30の転舵角度情報に基づいて機体10の現在転舵角度を算出する。更に、制御装置90は、算出した現在位置と、自身に格納された機体10の走行計画ライン情報とを比較して機体10の修正位置を算出する。なお、走行計画ライン情報は、転圧機械1の外部にあるホストコンピュータに予め格納されていてもよい。この場合、制御装置90で算出された現在位置情報は通信装置88を介してホストコンピュータに送信され、当該ホストコンピュータにおいて修正位置情報が算出される。そして、当該ホストコンピュータから送信された修正位置情報は、通信装置88を介して転圧機械1の制御装置90にて受信される。次いで、制御装置90は、修正位置に基づいて、現在転舵角度に対する修正転舵角度を算出する。なお、走行計画ライン情報があるホストコンピュータに予め格納されていている場合、修正転舵角度はホストコンピュータにて算出されてもよい。この場合、ホストコンピュータから送信された修正転舵角度情報は、通信装置88を介して転圧機械1の制御装置90にて受信される。そして、制御装置90は、修正転舵情報に基づいて、転舵アクチュエータ116を作動させつつ走行アクチュエータ118を作動させる。
【0058】
自律運転モードにおいて、制御装置90は、障害物検出センサ80から受信した距離情報に基づいて障害物と転圧機械1との距離を算出し、当該算出結果に基づいて、転舵アクチュエータ116及び走行アクチュエータ118を作動させてもよい。これにより、障害物との接触を回避しつつ自律運転モードを実行可能となる。また、制御装置90は、進行方向検出センサ112及び速度検出センサ114のそれぞれから受信した進行方向情報及び速度情報に基づいて転圧機械1の進行方向及び現在走行速度を算出し、当該算出結果に基づいて、走行アクチュエータ118を作動させてもよい。これにより、転圧条件情報に応じ、転圧機械1を一定速度で走行させることができる。更に、制御装置90は、転圧条件情報の振動振幅情報に対応して、振動アクチュエータ120を作動させて転圧輪22を振動させることができる。
【0059】
<サイトセーフティ制御>
サイトセーフティ制御は、転圧機械1のオペレータや周囲作業者の安全性向上を図るために、報知灯92、LED表示器96、及びタブレット102を使用して実施される制御である。サイトセーフティ制御は、上述した自律運転モード及び遠隔操作モードの実施とともに実行される。サイトセーフティ制御では、オペレータや周囲作業者は、手元のタブレット102を介して、フロントカメラ82aによって撮影されたフロント報知灯92a及び障害物Pを同時に視認することができる。また、当該制御では、報知灯92とLED表示器96の報知灯連動部96cは連動して同じ色を表示するので、前後左右4方向で転圧機械1の状態が表示され、オペレータや周囲作業者の作業位置に関わらず転圧機械1の状態を確実に把握できる。このため、転圧機械1の無人運転制御において、転圧機械1の作業に伴うオペレータや周囲作業者の安全性の向上を図ることができる。
【0060】
次いで、本発明の実施形態に係る転圧機械1の作用、効果について説明する。
【0061】
本発明の転圧機械1によれば、機体10の周囲を撮影するカメラ82は、当該カメラ82の撮像範囲に報知灯92を含むように機体10に取付けられている。そして、制御装置90は、カメラ82によって撮影された映像を外部のタブレット102に映し出すためのモニタ信号を送信するように構成されている。より具体的には、カメラ82は、リア機体40の前方に取付けられ、機体10の前方を撮影するように構成されたフロントカメラ82a、及び、リア機体40の後方に取付けられ、機体10の後方を撮影するように構成されたリアカメラ82bを含んで構成されている。更に、報知灯92は、フロントカメラ82aを挟んでリア機体40の前方に取付けられた一対のフロント報知灯92a、及び、リアカメラ82bを挟んでリア機体の後方に取付けられた一対のリア報知灯92bを含んで構成されている。このため、転圧機械1の障害物検出センサ80によって障害物が検出され、例えば一対のフロント報知灯92a及び一対のリア報知灯92bが黄色に点滅している場合、フロントカメラ82aは一対のフロント報知灯92aと機体10前方の障害物Pとを同時に撮影することができる。よって、転圧機械1のオペレータや周囲作業者は、手元のタブレット102でその映像を視認することができ、転圧機械1と障害物Pとの接触等の状況を確実に確認することができ、転圧作業における安全性向上を図ることができる。また、フロントカメラ82aによって撮影された映像は遠隔地の管理事務所のモニタでも視認することができるので、遠隔地にいる施工管理者も接触の危険を認識でき、現場のオペレータや周囲作業者への回避方法を指示することができる。なお、リアカメラ82bと一対のリア報知灯92bとによって奏される作用効果は、フロントカメラ82aと一対のフロント報知灯92aとによって奏される上記作用効果と同様である。
【0062】
又、本発明の実施形態に係る転圧機械1によれば、フロントフード部材84eは、フロントカメラ82aの上方を覆うように左右方向に延在するフロント上方フード部84aと、当該フロント上方フード部84aに接続されてフロントカメラ82aの側方(左右両側)を覆うように上下方向に延在する一対のフロント側方フード部84bと、を含んで構成されている。そして、一対のフロント側方フード部84bは、フロント上方フード部84aから下方に離間した下側部分である第1先端部84cにおける前後方向長さL1が、フロント上方フード部84aと接続される上側部分である第1基端部84dにおける前後方向長さL2よりも短く形成されている。このため、
図7の左側に示すように、フロントカメラ82aの左右方向への撮像範囲が一対のフロント側方フード部84bによって遮蔽されることなく、フロントカメラ82aの左右方向への撮像範囲をより広角なものとすることができる。したがって、フロントカメラ82aの撮像範囲が広がり、死角となる領域が減少するので、オペレータや周囲作業者の安全性を更に向上させることができる。これに対し、
図7の右側には、一対のフロント側方フード部において、第1先端部84cにおける前後方向長さL1と第1基端部84dにおける前後方向長さL2とを同じに設定した例が示されている。この場合、一対のフロント側方フード部によってフロントカメラ82aの左右方向への撮像範囲が一旦遮断され、フロントカメラ82aの左右方向への撮像範囲は、当該フード部がなくなった下方部で再度視野が広がることになる。この結果、フロントカメラ82aの左右方向への撮像範囲は、
図7の右側斜線部のような段差を持った範囲となる。これにより、フロントカメラ82aの撮像範囲の死角が発生してしまう。
【0063】
又、本発明の実施形態に係る転圧機械1によれば、照明器具94は、リア機体40の側方において一対のサイドカメラ82cの各々の下方に取付けられ、路面を照射するように構成されている。より具体的には、一対のサイドカメラ82cの各々及び照明器具94の各々は、一対のフロント側方フード部84bに取付けられ、上下方向において互いに整列するように配設されている。このように一対のサイドカメラ82cと照明器具94を配置したことにより、照明器具94の照射光が一対のサイドカメラ82c等によって遮られることがなく、明るく発色の良い映像を一対のサイドカメラ82cで撮影することができる。これにより、夜間の施工においても鮮明な映像で作業状況の把握ができ、施工現場における施工管理の効率化を図ることができる。これに対し、一対のサイドカメラ82cと照明器具94の位置関係を上下反対にした場合、照明器具94の照射光が一対のサイドカメラ82cの一部(例えばカバー部)を照らしてしまうので、映像にその影が映ってしまい、鮮明な映像を撮影することができない。また、一対のサイドカメラ82cと照明器具94とを水平方向に配置した場合でも、同様にカメラの一部が影を作り、鮮明な映像を撮影することができない。
【0064】
又、本発明の実施形態に係る転圧機械1によれば、自律運転モードにおいて、制御装置90は、GNSSアンテナ98によって検出された機体10の位置情報に基づいて当該機体10の現在位置を算出し、転舵角度検出センサ110によって検出されたフロント機体30の転舵角度情報に基づいて機体10の現在転舵角度を算出し、算出した現在位置と自身に格納された機体10の走行計画ライン情報とを比較して機体10の修正位置を算出し、算出した修正位置と現在転舵角度とを比較して修正転舵角度を算出し、修正転舵角度に基づいて、転舵アクチュエータ116を作動させつつ走行アクチュエータ118を作動させる。また、転圧機械1によれば、遠隔操作モードにおいて、制御装置90は、通信装置88を介して無線リモコン100からフロント機体30の目標転舵角度情報、及び、タイヤ24の目標駆動情報を受信し、当該目標転舵情報に基づいて転舵アクチュエータ116を作動させ且つ目標駆動情報に基づいて走行アクチュエータ118を作動させる。このように、転圧機械1は、自律運転モード又は遠隔操作モードによって転圧作業を実行することができるので、リア機体40の上に運転室(キャビン)を設ける必要がない。このため、オペレータは転圧機械1に乗降する必要がなく、乗降の際の安全性を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に係る転圧機械1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0066】
例えば、上記実施形態では、運転室(キャビン)を有さないタイプの転圧機械1について説明したが、転圧機械は、運転室を有する有人タイプのものであってもよい。また、転圧機械1が土工振動ローラである場合について説明したが、転圧機械はいわゆるタイヤローラ、マカダムローラ等であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、一対のサイドカメラ82cに対応してサイド報知灯92dが1つずつ設けられている場合について説明したが、サイド報知灯92dはそれぞれ、サイドカメラ82cを挟んで2つ設けられてもよい。また、上記実施形態では、照明器具94及びサイドカメラ82cが上下方向に整列する場合を説明したが、照明器具94は、サイドカメラ82cに対して前後方向にオフセットして設置されてもよい。また、上記実施形態では、転圧機械1の位置情報を取得するためにGNSSアンテナ98を用いる場合を説明したが、転圧機械1の位置情報を取得する手段としては例えばトータルステーション等の測位システムを用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、フロントカメラ82a、リアカメラ82b、及び一対のサイドカメラ82cが全て設けられている場合を説明したが、転圧機械1では、フロントカメラ82a、リアカメラ82b、及び一対のサイドカメラ82cは少なくともいずれか一つ設けられていてもよい。また、上記実施形態では、一対のフロント側方フード部84b及び一対のリア側方フード部が部分的に湾曲した形状である場合を説明したが、その形状は湾曲形状に限定されるものではなく、例えば直線状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 転圧機械
10 機体
20 車輪
22 転圧輪(前輪)
24 タイヤ(後輪)
30 フロント機体
40 リア機体
80 障害物検出センサ
82 カメラ
82a フロントカメラ
82b リアカメラ
82c 一対のサイドカメラ
84 フード部材
84a フロント上方フード部
84b 一対のフロント側方フード部
84c 第1先端部
84d 第1基端部
84e フロントフード部材
88 通信装置
90 制御装置
92 報知灯
92a 一対のフロント報知灯
92b 一対のリア報知灯
94 照明器具
98 GNSSアンテナ(位置検出装置)
100 無線リモコン
102 タブレット(モニタ)
110 転舵角度検出センサ
116 転舵アクチュエータ
118 走行アクチュエータ
L1 先端部の前後方向長さ
L2 基端部の前後方向長さ
P 障害物