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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】電磁ポンプおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/04 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
F04B17/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021069245
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022164034
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】飯村 奨太
(72)【発明者】
【氏名】笠井 信吾
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋也
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-258976(JP,A)
【文献】特開昭51-116970(JP,A)
【文献】特開昭55-067112(JP,A)
【文献】特開昭59-177904(JP,A)
【文献】特開2002-343633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/04
F23K 5/04
H01F 7/06
H01F 7/11
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生する電磁コイルと、
磁束を伝達する固定子と、
磁束によって移動する可動子と、を備え、
磁束が通過する磁路の少なくとも一部に鋼細線の集合体が設けられ
前記鋼細線の集合体は、第1直径を有する第1鋼細線および、第1直径より小さい第2直径を有する第2鋼細線を含む、電磁ポンプ。
【請求項2】
前記固定子および前記可動子の少なくとも一方は、鋼細線の集合体で構成される、請求項1に記載の電磁ポンプ。
【請求項3】
前記固定子は、折り曲げられた鋼細線の集合体で構成され、
前記集合体の端面が前記可動子に向いている、請求項2に記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
前記可動子は、折り曲げられた鋼細線の集合体で構成され、
前記集合体の端面が前記固定子に向いている、請求項2に記載の電磁ポンプ。
【請求項5】
前記集合体の端面は、鋼細線の長手方向に対して傾斜した平面形状または階段形状を有する、請求項3または4に記載の電磁ポンプ。
【請求項6】
前記鋼細線の表面には、電気絶縁膜が設けられる、請求項1~5のいずれかに記載の電磁ポンプ。
【請求項7】
前記鋼細線の少なくとも一部は、正多角形の断面形状を有する、請求項1~6のいずれかに記載の電磁ポンプ。
【請求項8】
請求項1に記載の電磁ポンプを製造する方法であって、
枠部材の中に前記鋼細線を詰め込んで、束状の集合体を形成するステップを含む製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の電磁ポンプを製造する方法であって、
接着剤雰囲気中で前記鋼細線をプレスした後に乾燥させるステップを含む製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の電磁ポンプを製造する方法であって、
前記鋼細線を金型に対してプレスして曲げ加工を行うステップを含む製造方法。
【請求項11】
前記鋼細線は、前記金型からの距離に応じて異なる長さを有する、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油、ガソリン、灯油などの燃料または各種液体を送給する電磁ポンプおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁ポンプは、磁束を発生する電磁コイルと、磁束を伝達する固定子と、磁束によって移動する可動子と、可動子を付勢するスプリングなどで構成される。電磁コイルに交流を印加すると、可動子は往復運動する。
【0003】
下記特許文献1では、電磁コイルの駆動周波数を変えずに、電圧のデューティ比を変化させることによって、可動子のストロークを変更し、吐出流量を制御している。下記特許文献2では、電磁コイルを複数に分割して付勢スプリングを省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-47035号公報
【文献】特開平5-79452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電磁ポンプでは、固定子および可動子は磁性材料からなるバルク形状であるため、磁束の周囲に渦電流が発生しやすくなり、損失の増大、応答性の悪化をもたらす。
【0006】
本発明の目的は、渦電流損失を低減でき、応答性を改善できる電磁ポンプを提供することである。また本発明の目的は、こうした電磁ポンプを効率的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る電磁ポンプは、
磁束を発生する電磁コイルと、
磁束を伝達する固定子と、
磁束によって移動する可動子と、を備え、
磁束が通過する磁路の少なくとも一部に鋼細線の集合体が設けられる。前記鋼細線の集合体は、第1直径を有する第1鋼細線および、第1直径より小さい第2直径を有する第2鋼細線を含む。

【0008】
この態様において、前記固定子および前記可動子の少なくとも一方は、鋼細線の集合体で構成されてもよい。
【0009】
この態様において、前記固定子は、折り曲げられた鋼細線の集合体で構成され、
前記集合体の端面が前記可動子に向いてもよい。
【0010】
この態様において、前記可動子は、折り曲げられた鋼細線の集合体で構成され、
前記集合体の端面が前記固定子に向いてもよい。
【0011】
この態様において、前記集合体の端面は、鋼細線の長手方向に対して傾斜した平面形状または階段形状を有してもよい。
【0012】
この態様において、前記鋼細線の表面には、電気絶縁膜が設けられてもよい。
【0013】
この態様において、前記鋼細線の少なくとも一部は、正多角形の断面形状を有してもよい。
【0014】
上記の電磁ポンプを製造する方法は、枠部材の中に前記鋼細線を詰め込んで、束状の集合体を形成するステップを含む。
【0015】
上記の電磁ポンプを製造する方法は、接着剤雰囲気中で前記鋼細線をプレスした後に乾燥させるステップを含む。
【0016】
上記の電磁ポンプを製造する方法は、前記鋼細線を金型に対してプレスして曲げ加工を行うステップを含む。
【0017】
この態様において、前記鋼細線は、前記金型からの距離に応じて異なる長さを有してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、渦電流損失を低減でき、応答性を改善できる電磁ポンプを提供できる。また本発明によれば、こうした電磁ポンプを効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る電磁ポンプの構成の一例を示す縦断面図であり、図1(A)は通電オン状態を示し、図1(B)は通電オフ状態を示す。
図2】磁束の周囲に発生する渦電流の様子を示す断面図であり、図2(A)はバルクコア、図2(B)は電磁鋼板、図2(C)は本発明に係る電磁鋼細線の場合をそれぞれ示す。
図3図3(A)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図3(B)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線を正方格子構造で束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図3(C)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線を正三角格子構造で束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。
図4図4(A)は、異なる直径を有する円形断面の電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図4(B)は、異なる直径を有する六角形断面および円形断面の電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。
図5図5(A)は、可動子および固定子の形状の一例を示す断面図である。図5(B)は、磁束の流れを示す説明図である。
図6図6(A)は、可動子および固定子の形状の他の例を示す断面図である。図6(B)は、可動子の上端部と固定子の上端部が対向した状態での磁束の流れを示す説明図である。図6(C)は、可動子の下端部と固定子の下端部が対向した状態での磁束の流れを示す説明図である。
図7】可動子および固定子の形状のさらに他の例を示す断面図である。
図8図8(A)は、円形断面の電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図8(B)は、表面に電気絶縁膜が設けられた電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。
図9図9(A)(B)は、本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法の一例を示す断面図である。図9(C)は、電磁鋼細線を束ねた集合体を含むコアを示す斜視図である。
図10】本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法の他の例を示す断面図である。
図11】本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法のさらに他の例を示す断面図である。
図12】本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法のさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る電磁ポンプの構成の一例を示す縦断面図であり、図1(A)は通電オン状態を示し、図1(B)は通電オフ状態を示す。
【0022】
電磁ポンプ1は、可動子11と、逆止弁12と、シリンダ21と、スプリング23と、固定子24と、電磁コイル25などで構成される。可動子11は、磁性材料で形成され、中心線Zに沿って内部に流路を有する管状部材である。逆止弁12は、可動子11の上端部に設けられ、液体が上向きに逆流するのを防止し、下向きの流れだけに制限する機能を有する。可動子11の下端部には、出口孔13が設けられる。
【0023】
シリンダ21は、磁性材料で形成され、内部に流路を有する管状部材である。シリンダ21の内径は、可動子11が円滑に往復移動可能なように、可動子11の外径より僅かに大きく設定される。シリンダ21の上端部には、入口孔22が設けられる。シリンダ21の内部空間および可動子11の内部空間は、送給対象の液体で予め充填されている。
【0024】
スプリング23は、シリンダ21の上端部と可動子11の上端部との間に設けられ、可動子11を常に下向きに付勢する機能を有する。そのため通電オフ状態では、可動子11は最も下側の位置で静止する。なお、スプリング23の代わりに、他の付勢手段(例えば、特許文献2のような第2電磁コイル)を使用することも可能である。
【0025】
電磁コイル25は、シリンダ21の周囲を導線が巻回するように設けられ、外部の駆動回路(不図示)からの通電により磁束を発生する機能を有する。固定子24は、磁性材料で形成され、電磁コイル25の外周を覆うように設けられる。磁束は、電磁コイル25→固定子24→可動子11→固定子24→電磁コイル25の順で通過し、閉じた磁路(磁気回路)を構成する。
【0026】
次に動作について説明する。図1(A)に示すように、通電オン状態では、固定子24から発生する磁束の吸引力がスプリング23の付勢力より大きいため、可動子11は最も上側の位置で静止する。このとき逆止弁12は開いた状態である。
【0027】
続いて電磁コイル25の通電がオフになると、図1(B)に示すように、固定子24は磁束の発生を停止し、スプリング23の付勢力が優勢になり、可動子11は下向きに移動する。このとき逆止弁12は閉じた状態になり、可動子11の内部空間にある液体も下向きに押し出される。同時にシリンダ21の内部空間にも入口孔22から新たな液体が供給される。
【0028】
続いて電磁コイル25の通電がオンになると(図1(A))、可動子11は上向きに移動する。このとき逆止弁12は開いた状態になり、シリンダ21の内部空間にある液体が可動子11の内部空間に供給される。
【0029】
続いて電磁コイル25の通電がオフになると(図1(B))、可動子11は下向きに移動する。このとき逆止弁12は閉じた状態になり、可動子11の内部空間にある液体も下向きに押し出される。
【0030】
こうして可動子11の往復移動に伴って、液体が入口孔22から供給され、出口孔13から送給される。液体の送給量は、電磁コイル25を通電する駆動信号の周波数、デューティ比などを調整することによって制御可能である。
【0031】
図2は、磁束の周囲に発生する渦電流の様子を示す断面図であり、図2(A)はバルクコア、図2(B)は電磁鋼板、図2(C)は本発明に係る電磁鋼細線の場合をそれぞれ示す。図2(A)に示すように、磁束がバルクコアを紙面垂直方向に通過すると、バルクコアの外周付近に沿って渦電流が発生する。渦電流が発生すると可動子に生じる磁束の応答性が悪くなり、結果として可動子ストローク量が小さくなり、応答性が低下してしまう。
【0032】
こうした渦電流対策として、図2(B)の電磁鋼板を使用することによって、渦電流損失を低減できる。この場合、周波数f、最大磁束密度Bm、電磁鋼板の厚さd、電磁鋼板の抵抗率ρを用いて、渦電流損失Pe=(π・f・Bm・d)/6ρで表される。さらに、図2(C)の電磁鋼細線を使用することによって、渦電流損失をより低減できる。この場合、電磁鋼細線の直径Dを用いて、渦電流損失Pe=(π・f・Bm・D)/16ρで表される。両者とも同じ材料でd=Dとすると、電磁鋼細線では約2.67倍の改善が得られる。
【0033】
図3(A)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。複数の電磁鋼細線51を束ねるための枠部材60が使用される。電磁鋼細線51の周囲は隙間が存在しており、一般には空気または接着剤で充填される。ここでは、コアが円環状の断面形状を有する場合を例示するが、任意の断面形状でも構わない。
【0034】
こうした電磁鋼細線51の集合体を含むコアは、図1に示す電磁ポンプの場合、磁束が通過する磁路、例えば、固定子24、シリンダ21、可動子11のいずれかに設けることが可能である。これにより渦電流損失を低減でき、応答性を改善できる。
【0035】
電磁鋼細線51は、磁気特性に優れた軟磁性材料、例えば、純鉄系、低炭素鋼、Si添加鋼などで形成されることが好ましく、特に純鉄系が最も好ましい。磁気特性に優れる材料として電磁ステンレス鋼も使用可能であるが、合金成分量が多く、硬く成型しにくい特性がある。具体的には、電磁鋼細線は、主成分の鉄(Fe)に、0.001質量%以上、0.01質量%以下の炭素(C)、0より多く、2.0質量%以下のシリコン(Si)、0.1質量%以上、0.5質量%以下のマンガン(Mn)、0より多く、0.03質量%以下のリン(P)、0より多く、0.02質量%以下の硫黄(S)、0より多く、0.1質量%以下の銅(Cu)、0より多く、0.1質量%以下のニッケル(Ni)、0より多く、0.04質量%以下のアルミニウム(Al)、及び、0より多く、0.007質量%以下の窒素(N)の各成分を含有することが好ましい。かかる電磁鋼細線51のミクロ組織は、フェライト結晶粒の大きさがフェライト結晶粒度番号で2以上、6以下であることが好ましい。
【0036】
また、電磁ポンプの場合、駆動周波数が高くなると鉄損における渦電流損失の割合が大きくなるため、周波数が高い場合は電磁鋼細線51の線径を小さくすることが有効である。また、線径が大きすぎると交流磁界を印加した際に表皮効果によって磁束が内部まで浸透せず、トルク不足になったり、渦電流損が増加して効率が低下したりするおそれがある。このため、電磁鋼細線の線径(断面が六角形の場合は対角長。断面が円形の場合は直径。)の上限は2.0mmがよく、好ましくは1.8mm、さらに好ましくは1.6mmとする。他方、線径が小さすぎると、電磁鋼細線における絶縁皮膜の占める割合が相対的に大きくなり、磁束密度の減少及びトルクの減少の原因となる。このような理由から電磁鋼細線51の線径の下限は0.3mmとするのがよく、好ましくは0.5mm、さらに好ましくは0.7mm以上とする。このように、電磁鋼細線51の線径は電磁ポンプの駆動条件(駆動周波数、必要トルク、効率)に応じて適切な範囲を選択する必要がある。
【0037】
図3(B)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線51を正方格子構造で束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。この場合、電磁鋼細線の占積率は約75%になる。図3(C)は、同じ直径を有する円形断面の電磁鋼細線51を正三角格子構造で束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。この場合、電磁鋼細線の占積率は約83%になる。電磁ポンプの場合、電磁鋼細線の占積率は75%以上が好ましい。
【0038】
図4(A)は、異なる直径を有する円形断面の電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図4(B)は、異なる直径を有する六角形断面および円形断面の電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。複数の電磁鋼細線51を束ねるための枠部材60が使用される。
【0039】
図4(A)において、電磁鋼細線51として、直径Daを有する円形断面の電磁鋼細線51aおよび、直径Daより小さい直径Dbを有する円形断面の電磁鋼細線51bを使用している。主要な電磁鋼細線51aは、2つの枠部材60の間の空間に正三角格子として配置される。そして電磁鋼細線51a同士の隙間および電磁鋼細線51aと枠部材60との隙間に、細い電磁鋼細線51bが配置される。さらに、残留する隙間を充填するために、電磁鋼細線51bより細い他の電磁鋼細線を使用してもよい。
【0040】
図4(B)において、電磁鋼細線51として、外接円直径Daを有する六角形断面の電磁鋼細線51aおよび、直径Daより小さい直径Dbを有する円形断面の電磁鋼細線51bを使用している。主要な電磁鋼細線51aは、2つの枠部材60の間の空間に正三角格子として配置され、いわゆるハニカム構造を形成する。そして電磁鋼細線51a同士の隙間および電磁鋼細線51aと枠部材60との隙間に、細い電磁鋼細線51bが配置される。さらに、残留する隙間を充填するために、電磁鋼細線51bより細い他の電磁鋼細線を使用してもよい。
【0041】
一般に、複数の電磁鋼細線51は、円形、半円形、正多角形(例えば、六角形、四角形または三角形)の断面形状を有し、直径Daを有する電磁鋼細線51aからなる第1グループと、円形、半円形、正多角形(例えば、六角形、四角形または三角形)の断面形状を有し、直径Daより小さい直径Dbを有する電磁鋼細線51bからなる第2グループとを含む。
【0042】
このように異なる直径を有する電磁鋼細線を使用することによって、最密充填に近い構造が得られる。その結果、コアの占積率が高くなり、磁気抵抗が減少する。
【0043】
図5(A)は、可動子11および固定子24の形状の一例を示す断面図である。図5(B)は、磁束の流れを示す説明図である。可動子11は、直線状の電磁鋼細線の集合体で構成される。固定子24は、折り曲げられた電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は可動子11に向いている。こうした形状により可動子11と固定子24の磁気結合効率が高くなり、しかも電磁コイル25に近い電磁鋼細線にも磁束が効率的に流れるようになる。
【0044】
図6(A)は、可動子11および固定子24の形状の他の例を示す断面図である。図6(B)は、可動子11の上端部と固定子24の上端部が対向した状態での磁束の流れを示す説明図である。図6(C)は、可動子11の下端部と固定子24の下端部が対向した状態での磁束の流れを示す説明図である。可動子11は、折り曲げられた電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は固定子24に向いている。固定子24も、図5(A)と同様に、折り曲げられた電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は可動子11に向いている。
【0045】
こうした形状により可動子11と固定子24の間の磁気回路が形成しやすくなり、可動子のさらなる応答性向上につながる。また、電磁コイル25に近い電磁鋼細線にも磁束が効率的に流れるようになる。
【0046】
図7(A)と図7(B)は、可動子11および固定子24の形状のさらに他の例を示す断面図である。図7(A)では、可動子11は、直線状の電磁鋼細線の集合体で構成される。固定子24は、折り曲げられた電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は、電磁鋼細線の長手方向に対して傾斜した平面形状を有し、可動子11に向いている。
【0047】
図7(B)では、可動子11は、直線状の電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は、電磁鋼細線の長手方向に対して傾斜した階段形状を有し、左半分は左側の固定子24に向き、右半分は右側の固定子24(不図示)に向いている。固定子24は、折り曲げられた電磁鋼細線の集合体で構成され、集合体の端面は、電磁鋼細線の長手方向に対して傾斜した平面形状を有し、可動子11に向いている。
【0048】
こうした形状により可動子11と固定子24の間の磁気回路が形成しやすくなり、可動子のさらなる応答性向上につながる。また、電磁コイル25に近い電磁鋼細線にも磁束が効率的に流れるようになる。
【0049】
図8(A)は、円形断面の電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。図8(B)は、表面に電気絶縁膜53が設けられた電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す断面図である。こうした電気絶縁膜53により電磁鋼細線51同士が電気絶縁されるため、渦電流が流れにくくなる。その結果、渦電流損失をより低減でき、応答性をより改善できる。
【0050】
(実施形態2)
次に、電磁ポンプを製造する方法について説明する。図9(A)(B)は、本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法の一例を示す断面図である。図9(C)は、電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアを示す斜視図である。
【0051】
最初に、図9(A)に示すように、コアの外形を規定するための枠部材60を用意する。ここでは、可動子11として円筒状のコアを形成するために、二重パイプ構造の枠部材60を用意している。枠部材60として、例えば、合成樹脂や非磁性材料で形成されたパイプ、熱収縮チューブなどが使用できる。
【0052】
次に、図9(B)に示すように、枠部材60の中に多数の電磁鋼細線51を詰め込んで、束状の集合体を形成する。こうして図9(C)に示すように、電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアが効率的に製造できる。枠部材60はそのまま利用してもよく、あるいは、集合体を接着剤で固定した後、枠部材60だけを除去してもよい。
【0053】
図10(A)(B)は、本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法の他の例を示す断面図である。
【0054】
最初に、図10(A)に示すように、コアの外形を規定するための金型75を用意する。ここでは、可動子11として円筒状のコアを形成するために、内側に円柱状の金型75を用意し、外側に円筒状金型を等角度で分割した外側金型(不図示)を用意する。続いて金型75と外側金型の間に多数の電磁鋼細線51を充填する。そして、接着剤雰囲気中で外側金型を半径内向きにプレスし、電磁鋼細線51同士を接着する。
【0055】
次に、図10(B)に示すように、金型から電磁鋼細線51を取り出して、乾燥させる。こうして電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアが効率的に製造できる。
【0056】
図11(A)(B)は、本実施形態に係る電磁ポンプの製造方法のさらに他の例を示す断面図である。
【0057】
最初に、図11(A)に示すように、コアの外形を規定するための金型75を用意する。ここでは、固定子24として断面U字状のトロイダルコアを形成するために、内側に円柱状の金型75を用意し、外側に円筒状金型を等角度で分割した外側金型(不図示)を用意する。続いて金型75と外側金型の間に多数の電磁鋼細線51を充填する。そして、外側金型を半径内向きにプレスし、そして金型75から上下に飛び出した電磁鋼細線51は金型75の上面および下面に向けて折り曲げ加工を行う。
【0058】
次に、図11(B)に示すように、電磁鋼細線51を接着剤で固定する。接着剤の硬化後に金型75および外側金型を取り外す。こうして電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアが効率的に製造できる。ここでは、電磁鋼細線51の長さが等しいため、金型75から遠い電磁鋼細線51の端面は中心から後退してしまう。
【0059】
この対策として、図12(A)に示すように、電磁鋼細線51は、金型75からの距離に応じて異なる長さを有するようにし、金型75から遠い電磁鋼細線51ほど長くしておく。続いて、外側金型を半径内向きにプレスし、そして金型75から上下に飛び出した電磁鋼細線51は金型75の上面および下面に向けて内向きに折り曲げる。次に、図12(B)に示すように、電磁鋼細線51を接着剤で固定する。接着剤の硬化後に金型75および外側金型を取り外す。こうして電磁鋼細線51を束ねた集合体を含むコアが効率的に製造できる。また、コア端面を任意の形状に設計できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る電磁ポンプおよびその製造方法は、渦電流損失を低減でき、応答性を改善できる点で産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 電磁ポンプ
11 可動子
12 逆止弁
13 出口孔
21 シリンダ
22 入口孔
23 スプリング
24 固定子
25 電磁コイル
51,51a,51b 電磁鋼細線
60 枠部材
75 金型
図1
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図12