(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20240807BHJP
B29D 11/00 20060101ALI20240807BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240807BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240807BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G02B30/56
B29D11/00
G02B5/00 Z
G02B5/02 B
G02B5/08 A
G02B5/08 C
(21)【出願番号】P 2021121748
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021497(WO,A1)
【文献】特開2019-133110(JP,A)
【文献】特開2020-074028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/136、30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置され、前記入光面から入射し、前記第1、第2の光反射面で1回ずつ全反射して、前記出光面から出射する光を結像させて空中像を表示する空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の一面側及び他面側にそれぞれ非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有するカバー材が覆設され、
該各カバー材は、透光性を有する基材と、該基材の一面側に積層され初期状態で非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有する接着層とを備えた二層構造であり、該各カバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域が加圧され
、前記各接着層の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域が、該各第1の帯状平面部及び該各第2の帯状平面部と接合され透明化して第1、第2の透光部が形成されることにより、
前記各接着層の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記各第2の直線溝と重なる領域にそれぞれ第1、第2の光遮蔽部が形成される第2工程とを有し、
前記各第1の直線溝の前記垂直面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造されることを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の空中像結像装置の製造方法において、
前記接着層は、硬化剤が封入されたマイクロカプセルが主剤の中に分散した状態で形成され、前記第2工程で加圧された領域の前記マイクロカプセルが割れ、前記主剤と前記硬化剤が反応して硬化が進行することにより、前記加圧された領域のみが透明化することを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項3】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置され、前記入光面から入射し、前記第1、第2の光反射面で1回ずつ全反射して、前記出光面から出射する光を結像させて空中像を表示する空中像結像装置であって、
透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝と、隣り合う前記第1の直線溝の間に形成され、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条とを有し、他面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝と、隣り合う前記第2の直線溝の間に形成され、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条とを有する成型体と、該成型体の一面側及び他面側にそれぞれ覆設されたカバー材とを備え、該各カバー材は、透光性を有する基材と、該基材の一面側に積層された接着層とを備え
た二層構造であり、該各接着層のうち、前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域は透光性を有し、第1、第2の透光部を構成し、前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記各第2の直線溝と重なる領域は非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有し、第1、第2の光遮蔽部を構成することを特徴とする空中像結像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが例えば所定間隔で平行配置される複数の帯状の第1、第2の光反射面(全反射面)が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面(対象物)から発せられる光(散乱光)を用いて、空中にその物体の立体像(空中像=実像)を結像させるものとして、例えば、特許文献1に記載の立体像結像装置(光学結像装置)が知られている。この結像装置は、2枚の透明平板の内部に、この透明平板の一方の面に垂直に多数かつ帯状の金属反射面からなる光反射面を一定のピッチで並べて形成した第1、第2の光制御パネルを有し、この第1、第2の光制御パネルのそれぞれの光反射面が直交するように、第1、第2の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。
しかし、特許文献1の光制御パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出す必要があり、作業性や製造効率が悪かった。
そこで、特許文献2では、透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された成型母材をプレス成型等で製造し、各溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成して、第1、第2の光制御パネルを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/131128号
【文献】国際公開第2018/138940号
【文献】国際公開第2018/138932号
【文献】特開2021-81451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のように、各溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成することは簡単ではなく、傾斜面に沿った方向から傾斜面が影になるようにして、垂直面に向けてスパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を行っても、溝の傾斜面及び底部(角部)の微小平面部、さらには凸条の頂部(角部)の微小平面部にも鏡面となる金属反射膜(金属被膜)が形成されることがある。そして、対象物から発せられて結像装置に入射する光の一部が、溝の垂直面以外に形成された金属反射膜で反射されると、結像に寄与する光の量が減少し、空中像が暗く、不鮮明になるという問題があった。また、観察者が空中像を観察する際に、結像装置の出光面側から結像装置に入射した光(太陽光、室内照明光等)の一部が、溝の垂直面以外に形成された金属反射膜で散乱又は反射することにより、空中像が白っぽくなり、鮮明性及び視認性が低下するという問題があった。これに対し、特許文献3では、溝の垂直面及び傾斜面に金属被膜を形成した後、傾斜面にレーザー光を照射して傾斜面に形成された金属被膜を除去することが提案されている。また、特許文献4では、凸条の頂部の微小平面部に付着した不要金属(金属被膜)を、剥離処理、研磨処理、又は溶解処理によって除去することが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献3では、除去することを前提として傾斜面に金属被膜を形成しており、材料の無駄が多く、製造工程も煩雑で製造コストが増大し、量産性に欠けるという課題があった。また、特許文献4では、微小平面部の面積が小さいため、不要金属の除去作業に手間が掛かる割に、空中像の鮮明化における改善効果が少なく、却ってコストアップに繋がるという課題があった。また、特許文献2~4のように、断面三角形の溝の垂直面を利用して光反射面(鏡面)を形成する場合、溝を残したままでは、溝の内部(空間部)に存在する空気の屈折率と、光制御パネルの基材となる透明樹脂の屈折率との違いから、溝の内部の空気と透明樹脂との界面(=境目、主に溝の傾斜面)で、光の散乱、光の屈折及び分光が発生し、空中像の結像が妨げられる。そのため、特許文献2~4では、溝の垂直面に光反射面を形成した後に、光制御パネルの基材となる透明樹脂の屈折率と同等の屈折率を有する透明樹脂を溝の内部に充填する必要があり、製造工程が増加し、量産性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、光の全反射を利用することにより、金属反射面(鏡面)を作成する必要がなく、製造工程が簡素で、量産性に優れると共に、空中像の結像に関与しない不要な光が遮蔽されることにより、製造コストが安価でありながら、鮮明な空中像を得ることが可能な空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る空中像結像装置の製造方法は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置され、前記入光面から入射し、前記第1、第2の光反射面で1回ずつ全反射して、前記出光面から出射する光を結像させて空中像を表示する空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の一面側及び他面側にそれぞれ非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有するカバー材が覆設され、該各カバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域が加圧されて前記各第1、第2の帯状平面部と接合され透明化して第1、第2の透光部が形成されることにより、該各カバー材の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記各第2の直線溝と重なる領域にそれぞれ第1、第2の光遮蔽部が形成される第2工程とを有し、
前記各第1の直線溝の前記垂直面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される。
【0008】
ここで、空中像には平面画像(二次元像)及び立体像(三次元像)が含まれ、対象物が、例えばディスプレイ等の画像表示手段に表示された画像であれば、その実像となる平面画像(二次元像)が空中像として結像し、対象物が、各種立体であれば、その実像となる立体像(三次元像)が空中像として結像する(以上、第2の発明において同じ)。
【0009】
第1の発明に係る空中像結像装置の製造方法において、前記各カバー材は、透光性を有する基材と、該基材の一面側に積層され初期状態で非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有する接着層とを備え、前記第2工程で、前記各カバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域が加圧され、前記各接着層の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域が、該各第1の帯状平面部及び該各第2の帯状平面部と接合され透明化して前記第1、第2の透光部が形成され、前記各接着層の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記各第2の直線溝と重なる領域が、前記第1、第2の光遮蔽部となることが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る空中像結像装置は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置され、前記入光面から入射し、前記第1、第2の光反射面で1回ずつ全反射して、前記出光面から出射する光を結像させて空中像を表示する空中像結像装置であって、
透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝と、隣り合う前記第1の直線溝の間に形成され、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条とを有し、他面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝と、隣り合う前記第2の直線溝の間に形成され、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条とを有する成型体と、該成型体の一面側及び他面側にそれぞれ覆設されたカバー材とを備え、該各カバー材は、透光性を有する基材と、該基材の一面側に積層された接着層とを備え、該各接着層のうち、前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記各第2の帯状平面部と重なる領域は透光性を有し、第1、第2の透光部を構成し、前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記各第2の直線溝と重なる領域は非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有し、第1、第2の光遮蔽部を構成する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る空中像結像装置の製造方法では、成型体の各第1、第2の直線溝の垂直面を選択的に光反射材料で覆う必要がなく、極めて簡素な製造工程で、全反射を利用する第1、第2の光反射面を形成することができ、省資源性及び量産性に優れる。
【0012】
第2の発明に係る空中像結像装置では、観察者が空中像を観察する際に、入光面側から空中像結像装置に入射する光のうち、空中像の結像に関与せず、各第1又は第2の直線溝の内部を通過して出光面側から出射しようとする光の一部が、非透光性を有する第1、第2の光遮蔽部で遮蔽され、外乱光が減少し、空中像の視認性を向上させることができる。また、第1、第2の光遮蔽部が光吸収性若しくは光拡散性を有することにより、観察者が空中像を観察する際に、出光面側から空中像結像装置に入射する太陽光又は室内照明光等の一部が第1、第2の光遮蔽部で遮られても、観察者に向かって反射されることなく、第1、第2の光遮蔽部で吸収又は拡散されるので、空中像の視認性に悪影響を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置を示す正断面図及び側断面図である。
【
図2】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第1工程を示す正断面図及び側断面図である。
【
図3】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第2工程を示す正断面図及び側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置10は、平行配置された入光面11と出光面12とを有する平板状に形成され、入光面11に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面13と、出光面12に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面14とを有し、第1の光反射面13と第2の光反射面14が、平面視して直交配置され、入光面11から入射し、第1、第2の光反射面13、14で1回ずつ全反射して、出光面から出射する光を結像させて空中像を表示するものである。
【0015】
この空中像結像装置10の製造にあっては、透明樹脂が成型(例えば、インジェクション成型、プレス成型又はロール成型等)されることにより、
図2(A)、(B)に示すように、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開する断面台形の複数の第1の直線溝18aが所定間隔で平行配置され、隣り合う第1の直線溝18aの間に、一面側に第1の帯状平面部19aを有する断面台形の第1の凸条20aが形成され、他面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として他面側に拡開する断面台形の複数の第2の直線溝18bが所定間隔で平行配置され、隣り合う第2の直線溝18bの間に、他面側に第2の帯状平面部19bを有する断面台形の第2の凸条20bが形成され、各第1の直線溝18aの垂直面16と、各第2の直線溝18bの垂直面16が、平面視して直交配置された板状の成型体21が形成される。
【0016】
第1、第2の直線溝18a、18bの開口部の幅(台形断面の上底の長さ)をa、第1、第2の直線溝18a、18bの底面22の幅(台形断面の下底の長さ)をb、第1、第2の直線溝18a、18bの深さ(台形断面の高さ)をh、第1、第2の直線溝18a、18bのピッチ(=凸条のピッチ)をpとすると、aはbの1.5~2倍程度、pはaの3~5倍程度、hはpの1~2倍程度であることが好ましい。また、各第1の直線溝18aの底面22と各第2の直線溝18bの底面22との間隔dは20~3000μm程度である。例えば、a=70μmの場合、b=40μm、p=250~300μm、h=300~400μmとすれば上記の関係を満たすが、これらに限定されるものではない。なお、第1、第2の直線溝18a、18bの垂直面16に対する傾斜面17の傾斜角度(垂直面17と傾斜面18とのなす角度)θは、例えば1~10度程度であるが、成型体21の脱型性を考慮して、適宜、選択される。
なお、本実施の形態では、第1、第2の直線溝18a、18bを断面台形としたが、底面22は空中像結像装置10に必須の構成ではないため、底面22の寸法が厳密に管理される必要はなく、第1、第2の直線溝が、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形に形成されてもよい。
【0017】
この成型体21の成型には、比較的融点が高く、透明度の高い熱可塑性樹脂が好適に使用される。具体的には、例えば、ゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度Tg=100~160℃、屈折率η1=1.535のシクロオレフィンポリマー)が用いられるが、この他に、例えばポリメチルメタルクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂が使用可能である。なお、この成型体21に対しては、成型後、アニーリング処理が行われ、残留応力等が除去されることが好ましい(以上、第1工程)。
【0018】
次に、
図3(A)、(B)に示すように、成型体21の一面側及び他面側にそれぞれカバー材24が覆設される。カバー材24は、透光性の基材(例えば透明なPET等の合成樹脂製シート)25の裏面に、初期状態で非透光性及び光吸収性を有する接着層25aが形成されることにより、全体として、非透光性及び光吸収性を有するものである。接着層として、初期状態では例えば黒色(不透明)で非透光性及び光吸収性を有しているが、加圧されることにより接着(硬化)が進行すると共に透明化する性質を備えたものが好適に用いられる。例えば、硬化剤が封入されたマイクロカプセルが主剤の中に分散した状態で形成された接着層は、加圧された領域のマイクロカプセルが割れ、主剤と硬化剤が反応して接着(硬化)が進行することにより、加圧された領域のみが透明化する。従って、
図3(A)、(B)に示すように、成型体21の一面側及び他面側にそれぞれカバー材24が積層された状態で両面からローラー等で挟まれて加圧されると、
図1(A)、(B)に示したように、各カバー材24(具体的には、接着層25a)の各第1の帯状平面部19aと重なる領域及び各第2の帯状平面部19bと重なる領域が、それぞれ各第1、第2の帯状平面部19a、19bと接合され透明化して第1、第2の透光部26a、26bが形成されることにより、各カバー材24(具体的には、接着層25a)の各第1の直線溝18aと重なる領域及び各第2の直線溝18bと重なる領域がそれぞれ第1、第2の光遮蔽部27a、27bとなる。
【0019】
以上のようにして、各第1の直線溝18aの垂直面16を第1の光反射面13とし、各第2の直線溝18bの垂直面16を第2の光反射面14とする空中像結像装置10が製造される。なお、カバー材は初期状態で非透光性及び光吸収性又は光拡散性を有し、加圧された領域のみが選択的に透明化する機能を有するものであればよく、その構成は、本実施の形態の構成に限定されることなく、適宜、選択される。例えば、カバー材として、透光性の基材の裏面に、初期状態では例えば白色若しくは乳白色で非透光性及び光拡散性を有する接着層が形成されており、加圧された領域の接着層のみが選択的に透明化するものが用いられてもよい。この場合、表面及び/又は裏面に凹凸が形成され、初期状態では光が拡散されて白色若しくは乳白色に見える接着層が、選択的に加圧され凹凸が潰されて平坦状になることにより透明化して透光部が形成され、加圧されなかった領域は初期状態の非透光性及び光拡散性を維持して光遮蔽部となる(以上、第2工程)。
【0020】
以上の工程により、
図1(A)、(B)に示したように、透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面台形の複数の第1の直線溝18aと、隣り合う第1の直線溝18aの間に形成され、一面側に第1の帯状平面部19aを有する断面台形の第1の凸条20aとを有し、他面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として他面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面台形の複数の第2の直線溝18bと、隣り合う第2の直線溝18bの間に形成され、他面側に第2の帯状平面部19bを有する断面台形の第2の凸条20bとを有する成型体21と、成型体21の一面側及び他面側にそれぞれ覆設されたカバー材24とを備え、各カバー材24は、透光性を有する基材25と、基材25の一面側に積層された接着層25aとを備え、各接着層25aのうち、各第1の帯状平面部19aと重なる領域及び各第2の帯状平面部19bと重なる領域は透光性を有し、第1、第2の透光部26a、26bを構成し、各第1の直線溝18aと重なる領域及び各第2の直線溝18bと重なる領域は非透光性及び光吸収性若しくは光拡散性を有し、第1、第2の光遮蔽部27a、27bを構成する空中像結像装置10が得られる。
【0021】
この空中像結像装置10の動作について説明すると、
図1(A)、(B)において、図示しない対象物から発せられる光のうち、光L1は、入光面11(ここでは、成型体21の一面側(下側)の表面)上のP1から空中像結像装置10の内部(成型体21)に入射し、第1の光反射面13上のP2で反射して、成型体21の内部を進み、第2の光反射面14上のP3で反射して、出光面12(ここでは、成型体21の他面側(上側)の表面)上のP4から空中に出て行く。
このようにして、対象物から発せられ、空中像結像装置10の第1の光反射面13及び第2の光反射面14で1回ずつ全反射する無数の光が空中で結像することにより、空中像結像装置10を挟んで対象物と対称となる位置に、対象物の実像となる空中像(図示せず)が得られる。このとき、全反射の条件を満たさず、第1の光反射面13及び/又は第2の光反射面14を通過した光は、空中像の結像には関与しない。
【0022】
なお、光L1は、入光面11のP1及び出光面12のP4で屈折しているが、入光面11及び出光面12となるカバー材24の基材25は均質であり、空中像の結像に関与する全ての光が、入射位置及び出射位置によらず、光L1と同様に、入光面11及び出光面12において一定(同一)の角度で屈折するため、これらの屈折が結像に影響を与えることはない。また、各カバー材24の基材25及び接着層25aの透光部26aの屈折率が成型体21の屈折率と異なる場合、厳密には、各カバー材24の基材25と接着層25aの透光部26aとの界面及び各カバー材24の接着層25aの透光部26aと成型体21との界面でも屈折が起こるが、これらも光の通過位置によらず一定(同一)の角度で発生するため、結像に影響を与えることはない。従って、各カバー材24の基材25及び接着層25aの透光部26aの屈折率は成型体21の屈折率と同等でも異なっていてもよい。
【0023】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は何ら上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10:空中像結像装置、11:入光面、12:出光面、13:第1の光反射面、14:第2の光反射面、16:垂直面、17:傾斜面、18a、18b:第1、第2の直線溝、19a、19b:第1、第2の帯状平面部、20a、20b:第1、第2の凸条、21:成型体、22:底面、24:カバー材、25:基材、25a:接着層、26a、26b:第1、第2の透光部、27a、27b:第1、第2の光遮蔽部