(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】駆動装置、リソグラフィ装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/032 20160101AFI20240807BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02P29/032
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021172655
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 伸司
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-330545(JP,A)
【文献】特開昭63-283493(JP,A)
【文献】特開2011-199951(JP,A)
【文献】特開2002-369579(JP,A)
【文献】特開2002-281609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/032
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ及びモータドライバを含む駆動部に電力を供給する電源部と、
前記電源部からの電力及び前記駆動部からの回生電力を蓄電可能なキャパシタと、
前記電源部と前記キャパシタとの間に設けられ、前記電源部と前記キャパシタとの間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするか、の切り替えを行うための切替部と、
前記切替部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記モータの駆動条件に基づいて、前記モータを駆動するために前記モータドライバが必要とする第1電圧値、及び、前記モータの駆動によって変動する前記キャパシタの第2電圧値を予測し、
前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づいて、前記切替部による前記切り替えを制御することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動部に電力を供給して前記モータを動作させる前に、前記切替部による前記切り替えを制御することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1電圧値と前記第2電圧値とを比較し、前記第1電圧値と前記第2電圧値との大小関係に応じて、前記切替部による前記切り替えを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも大きい場合には、前記電源部と前記キャパシタとの間の状態が非接続状態となるように、前記切替部による前記切り替えを制御し、
前記第1電圧値が前記第2電圧値よりも大きい場合には、前記電源部と前記キャパシタとの間の状態が接続状態となるように、前記切替部による前記切り替えを制御することを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記電源部と前記キャパシタとの間の状態が非接続状態である場合には、前記電源部からの電力が前記駆動部に供給されず、前記キャパシタに蓄電されている電力が前記駆動部に供給され、且つ、前記駆動部からの回生電力が前記キャパシタに蓄電され、
前記電源部と前記キャパシタとの間の状態が接続状態である場合には、前記キャパシタに蓄電されている電力が前記駆動部に供給されず、前記電源部からの電力が前記駆動部及び前記キャパシタに供給され、且つ、前記駆動部からの回生電力が前記キャパシタに蓄電されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動条件は、前記モータの駆動位置、駆動速度及び駆動加速度のうち少なくとも1つ、前記モータの抵抗及びインダクタンス、並びに、前記キャパシタのキャパシタンスを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの駆動位置、駆動速度及び駆動加速度のうち少なくとも1つと、前記モータの抵抗及びインダクタンスとに基づいて、前記第1電圧値を予測することを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1電圧値として、逆起電圧を含む、前記モータで発生する電圧の最大値を予測することを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記キャパシタのキャパシタンスに基づいて、前記第2電圧値を予測することを特徴とする請求項6乃至8のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記キャパシタのキャパシタンスから求まる、前記キャパシタに入力される電圧と、前記駆動部に出力される電圧との差分に基づいて、前記第2電圧値を予測することを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記キャパシタの電圧を計測する計測部を更に有し、
前記制御部は、前記計測部で計測される前記キャパシタの初期電圧と、前記キャパシタのキャパシタンスから求まる前記駆動部に出力される電圧との差分に基づいて、前記第2電圧値を予測することを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記電源部は、定電圧電源を含むことを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記切替部は、前記電源部と前記キャパシタとの間の接続を制御するスイッチング素子を含むことを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項14】
基板にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を駆動する請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の駆動装置と、
を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項15】
原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系を更に有することを特徴とする請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項16】
リソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有し、
前記リソグラフィ装置は、前記パターンを形成する工程において前記基板を駆動するためのモータ及びモータドライバを含む駆動部に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力及び前記駆動部からの回生電力を蓄電可能なキャパシタと、前記電源部と前記キャパシタとの間に設けられ、前記電源部と前記キャパシタとの間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするか、の切り替えを行うための切替部と、を含み、
前記モータの駆動条件に基づいて、前記モータを駆動するために前記モータドライバが必要とする第1電圧値、及び、前記モータの駆動によって変動する前記キャパシタの第2電圧値を予測する工程と、
前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づいて、前記切替部による前記切り替えを制御する工程と、
を更に有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、リソグラフィ装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子などの製造工程であるリソグラフィ工程では、原版(マスク又はレチクル)のパターンを、投影光学系を介して、基板(ウエハなど)に転写する露光装置が用いられている。原版と基板とを走査しながら原版のパターンを基板に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(スキャナー)では、走査露光中、原版ステージや基板ステージが加速、低速、反転、加速を繰り返すように駆動される。このようなステージの駆動には、回転型モータやリニアモータなどのアクチュエータを含むモータ駆動装置が用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
モータ駆動装置の電源は、一般的に、モータの最大出力時のパワーにあわせて設計される。このように、最もパワーを必要とする区間(期間)にあわせてモータ駆動装置の電源を設計すると、かかる電源が大型化してしまうため、露光装置の容積、重量、コストなどの点で不利となる。
【0004】
そこで、モータ駆動装置にキャパシタを設けて、モータの加速駆動時に必要な電流の一部をキャパシタからも供給(給電)することで、電源(定電圧電源)の小型化を実現する技術が提案されている。また、モータの減速駆動時において、モータドライバからの回生電力をキャパシタに蓄電して再利用することで、省エネを実現する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、電源とキャパシタが常時接続されているため、モータを駆動する際に、電源及びキャパシタの両方から給電が行われる。電源からの給電量とキャパシタからの給電量との比率は、電源の出力インピーダンスやキャパシタの出力電圧などから決まるため、モータを加速駆動した際に、キャパシタの電荷が十分に消費されない場合もある。キャパシタが満充電に近い状態でモータが減速駆動されると、モータドライバからの回生電力の全てをキャパシタで蓄電することができないため、電力の無駄が発生してしまう。また、回生電力がキャパシタに蓄電されず、電源の出力段に戻ってしまうと、電源電圧の上昇を引き起こし、電源の故障の要因となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、省エネ化及び故障の抑制の点で有利な駆動装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての駆動装置は、モータ及びモータドライバを含む駆動部に電力を供給する電源部と、前記電源部からの電力及び前記駆動部からの回生電力を蓄電可能なキャパシタと、前記電源部と前記キャパシタとの間に設けられ、前記電源部と前記キャパシタとの間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするか、の切り替えを行うための切替部と、前記切替部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記モータの駆動条件に基づいて、前記モータを駆動するために前記モータドライバが必要とする第1電圧値、及び、前記モータの駆動によって変動する前記キャパシタの第2電圧値を予測し、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づいて、前記切替部による前記切り替えを制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、省エネ化及び故障の抑制の点で有利な駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるモータ駆動装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】第1実施形態における切替部による切り替えの制御を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態におけるモータ駆動装置を露光装置のステージの駆動装置として適用する場合を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態におけるモータ駆動装置を露光装置のステージの駆動装置として適用する場合を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態におけるモータ駆動装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図7】一般的なモータ駆動装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
まず、本発明を説明する前に、
図7(a)及び
図7(b)を参照して、比較例として、キャパシタが設けられた一般的なモータ駆動装置について説明する。一般的なモータ駆動装置では、
図7(a)に示すように、定電圧電源101と、モータ103を駆動するためのモータドライバ102との間に、キャパシタ104が設けられている。これにより、モータ103の駆動時、特に、加速駆動時に必要な電流の一部をキャパシタ104からも供給することができるため、定電圧電源101の小型化を実現することができる。また、モータ103の減速駆動時にモータ103で得られる回生電力を、モータドライバ102を介してキャパシタ104に蓄電することで、モータ103を駆動(加速駆動)する際の電力として再利用することが可能となり、省エネを実現することができる。
【0014】
一方、キャパシタ104が設けられたモータ駆動装置では、モータ103を駆動する際に、定電圧電源101及びキャパシタ104の両方から電力が供給されるため、キャパシタ104に蓄電されている電力が有効に再利用されていない場合がある。また、モータ103の減速駆動時にキャパシタ104が満充電に近い状態であると、
図7(b)に示すように、モータ103からの回生電力の全てをキャパシタ104で蓄電することができず、電力(回生電力)の無駄となってしまう。更に、モータ103からの回生電力がキャパシタ104ではなく、定電圧電源101の出力段に戻ると、定電圧電源101の電圧(電源電圧)の上昇を引き起こし、定電圧電源101の故障の要因となることもある。
【0015】
そこで、以下の第1実施形態及び第2実施形態では、モータ駆動装置に関する新たな技術、具体的には、モータからの回生電力をキャパシタに確実に蓄電して省エネ化を実現するとともに、電源電圧の上昇に起因する電源の故障を抑制するための技術を提供する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態におけるモータ駆動装置DRAの構成を示す概略ブロック図である。モータ駆動装置DRAは、例えば、リソグラフィ装置の1つである露光装置が有する原版ステージや基板ステージの駆動装置として好適である。モータ駆動装置DRAは、電源部1と、駆動部DUと、キャパシタ4と、切替部5と、制御部6とを有する。
【0017】
電源部1は、駆動部DUに電力を供給するユニットである。電源部1は、本実施形態では、駆動部DUに対して常に一定の電圧を供給(出力)する定電圧電源として構成されている。電源部1は、例えば、電力系統から供給される交流の電力を直流の電力に変換するAC-DCコンバータ、又は、直流電源などを含む。
【0018】
駆動部DUは、モータ3と、モータ3を駆動するためのモータドライバ2とを含む。モータ3は、電源部1からモータドライバ2を介して供給される電力によって駆動(回転)し、本実施形態では、回転型モータやリニアモータなどを含む直流モータで構成されている。
【0019】
キャパシタ4は、電源部1からの電力、及び、駆動部DUからの回生電力、即ち、モータ3の減速駆動時にモータ3で得られる回生電力を蓄電可能に構成されている。
【0020】
切替部5は、制御部6の制御下において、電源部1とキャパシタ4との間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするか、の切り替えを行うために、電源部1とキャパシタ4との間に設けられている。切替部5は、電源部1とキャパシタ4との間の接続(接続/非接続の切り替え)を、開閉により制御するスイッチング素子を含む。切替部5は、本実施形態では、FET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのパワー系の半導体素子を含む。
【0021】
制御部6は、例えば、CPUやメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従ってモータ駆動装置DRAの各部を統括的に制御する。制御部6は、本実施形態では、切替部5を制御することで、切替部5による切り替え、即ち、電源部1とキャパシタ4との間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするかを制御する。また、制御部6は、駆動部DUに電力を供給してモータ3を動作させる前に、切替部5による切り替えを制御する。このような切替部5による切り替えの制御を実現するために、制御部6は、本実施形態では、設定部7と、第1予測演算部8と、第2予測演算部9と、比較部10とを含む。
【0022】
設定部7は、モータ3の駆動に関する条件(モータ駆動条件)を取得して設定する。ここで、モータ駆動条件は、モータ3の駆動位置、駆動速度及び駆動加速度のうち少なくとも1つ、モータ3の抵抗及びインダクタンス、並びに、キャパシタ4のキャパシタンスを含む。
【0023】
第1予測演算部8は、設定部7で設定されたモータ駆動条件に基づいて、モータ3を駆動するためにモータドライバ2が必要とする電圧(第1電圧値)Vdを予測(演算)する。
【0024】
第2予測演算部9は、設定部7で設定されたモータ駆動条件に基づいて、モータ3の駆動によって変動するキャパシタ4の電圧(第2電圧値)Vcを予測(演算)する。
【0025】
比較部10は、第1予測演算部8で予測された電圧Vdと第2予測演算部9で予測された電圧Vcとを比較し、その比較結果、即ち、電圧Vdと電圧Vcとの大小関係に応じて、切替部5による切り替えを制御する。
【0026】
このように、制御部6は、モータ駆動条件に基づいて、モータドライバ2が必要とする第1電圧値(ドライバ電圧予測値)、及び、モータ3の駆動によって変動するキャパシタ4の第2電圧値(キャパシタ電圧予測値)を予測する。そして、制御部6は、それらの電圧予測値に基づいて、切替部5による切り替えを制御する。
【0027】
図2(a)及び
図2(b)を参照して、切替部5による切り替え、即ち、電源部1とキャパシタ4との間の状態を、接続状態とするか、非接続状態とするかの制御について具体的に説明する。
図2(a)は、制御部6の動作(制御部6から切替部5へのスイッチ制御信号(ON/OFF))と、駆動部DU(モータ3)の各駆動期間でのドライバ電圧波形(ドライバ電圧予測値)及びキャパシタ電圧波形(キャパシタ電圧予測値)との関係の一例を示す。実際には、モータ3を正転駆動及び逆転駆動させるために正負の電源を設ける場合もあるが、ここでは、正側の電源(電圧)のみが設けられているものとして説明する。
【0028】
第1予測演算部8は、上述したように、設定部7で設定されたモータ駆動条件に基づいて、以下のステップを経て、モータドライバ2が必要とする電圧であるモータ駆動電圧Vdを予測する(即ち、ドライバ電圧予測値を演算する)。
【0029】
(ステップS1)
設定部7には、モータ3を駆動する前(動作させる前)に、モータ3を駆動するためのモータ駆動条件、具体的には、駆動位置pos(t)、駆動速度vel(t)、及び駆動加速度acc(t)のうち少なくとも1つに関する情報が設定される。ここで、駆動速度vel(t)は、駆動位置pos(t)を時間tに関して微分することにより算出されてもよいし、駆動加速度acc(t)は、駆動速度vel(t)を時間tに関して微分することにより算出されてもよい。また、駆動位置pos(t)は、駆動速度vel(t)を時間tに関して積分することにより算出されてもよいし、駆動速度vel(t)は、駆動加速度acc(t)を時間に関して積分することにより算出されてもよい。なお、以下のステップS2乃至S7は、第1予測演算部8の予測演算中に、電源部1からキャパシタ4に電流が流れ込んでキャパシタ4の電圧が変動することを抑制するために、切替部5(に含まれるスイッチング素子)を開いた状態で実施する。
【0030】
(ステップS2)
モータ3で必要な推力F(N)を、モータ3の可搬質量M(kg)、及び、モータ3の加速度acc(m/sec2)を用いて、以下の式(1)で求める。
【0031】
F=M×acc ・・・(1)
また、モータ3の電流値I(A)を、モータ3で必要な推力F(N)、及び、モータ3の推力定数Kf(N/A)を用いて、以下の式(2)で求める。
【0032】
I=F/Kf ・・・(2)
式(1)及び(2)から、負荷電流i(t)を、モータ3の可搬質量M(kg)、駆動加速度acc(t)、及び、モータ3の推力定数Kf(N/A)を用いて、以下の式(3)で求める。
【0033】
i(t)=M×acc(t)/Kf ・・・(3)
(ステップS3)
モータ3は、本実施形態では、巻線コイルによる誘導性負荷であるため、モータコイルの抵抗値R及びインダクタンス値Lを用いて、等価的な負荷モデルR+jωLを生成する。
【0034】
(ステップS4)
ステップS2で得られた負荷電流i(t)を、ステップS3で得られた負荷モデルに入力して、負荷電圧v(t)を、以下の式(4)で求める。
【0035】
v(t)=i(t)×(R+jωL) ・・・(4)
(ステップS5)
モータ3では、速度に比例した逆起電圧vbがコイル電流を妨げる方向に発生する。また、逆起電圧係数Kv(v・m/s)は、モータ3の推力定数Kf(N/A)と同じ値になることが知られている。逆起電圧vb(t)を以下の式(5)で求めて、負荷電圧v(t)から減算することで、モータ駆動電圧Vd(t)を以下の式(6)で予測する。
【0036】
vb(t)=Kv×vel(t) ・・・(5)
Vd(t)=v(t)-vb(t) ・・・(6)
そして、本実施形態では、モータ駆動電圧Vd(t)の各駆動期間での最大の電圧値(最大値)を*Vdとして求める。
【0037】
第2予測演算部9は、上述したように、設定部7で設定されたモータ駆動条件に基づいて、以下のステップを経て、モータ3の駆動によって変動するキャパシタ4の電圧であるキャパシタ電圧Vcを予測する(即ち、キャパシタ電圧予測値を演算する)。
【0038】
(ステップS6)
キャパシタ4のキャパシタンスをC(F:ファラッド)とし、蓄積可能な電荷量をQ(C:クーロン)として、キャパシタ4の電荷と電極間の電圧Vとの関係を、以下の式(7)で求める。
【0039】
Q=C×V ・・・(7)
また、キャパシタ電圧Vc(t)は、キャパシタ4の電流i(t)の積分値に比例することから、以下の式(8)で求められる。
【0040】
Vc(t)=(1/C)×∫i(t)・dt ・・・(8)
(ステップS7)
図2(b)は、切替部5(に含まれるスイッチング素子)を開いた状態でのモータ駆動装置DRAの電気回路を示している。
図2(b)に示すように、モータ3の駆動時に、キャパシタ4のみからモータドライバ2に給電される(電力が供給される)場合、キャパシタ4から出力される電流は、式(3)に示す負荷電流i(t)と等価になる。従って、式(3)及び(8)から、キャパシタ電圧Vc0(t)を、以下の式(9)で予測することができる。また、モータ3の減速時には、回生電流ir(t)がキャパシタ4に戻る(入力される)ため、かかる回生電流ir(t)を、式(9)に加える。なお、回生電流ir(t)は、モータ3の減速時の駆動波形などを参照して予め求めておくとよい。
【0041】
Vc0(t)=(1/C)×∫((M×acc(t)/Kf)+ir(t))・dt ・・・(9)
モータ3を駆動する前(動作させる前)に、キャパシタ4が電源部1から供給される電力で十分に充電され、電源部1と同じ電圧Voとなっている場合、モータ3を駆動した後のキャパシタ電圧Vc(t)を、以下の式(10)で予測する。換言すれば、キャパシタ4に入力される電圧と、駆動部DUに出力される電圧との差分に基づいて、キャパシタ電圧Vc(t)を予測する。
【0042】
Vc(t)=Vo-Vc0(t) ・・・(10)
図2(a)に示すように、モータ3の加速期間では、キャパシタ電圧Vcは低下しているが、モータ3の減速期間では、回生電流がキャパシタ4に戻るため、キャパシタ電圧Vcは増加していることがわかる。本実施形態では、キャパシタ電圧Vc(t)の各駆動期間での最小の電圧値(最小値)を*Vcとして求める。
【0043】
次に、制御部6は、モータ3の加速期間、定速期間、減速期間ごとに、比較部10において、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdとキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vcとを比較し、その比較結果(大小関係)に応じて、切替部5を制御する。
【0044】
例えば、
図2(a)を参照するに、駆動期間DP1では、キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc1がモータ駆動電圧の最大の電圧値*Vd1よりも大きくなる(*Vd1<*Vc1)。このような場合には、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が非接続状態となるように、切替部5による切り替えを制御して、具体的には、切替部5を開いて、キャパシタ4から駆動部DUに対して給電を行うことでモータ3を駆動する。キャパシタ4のみから駆動部DUに対して給電を行う場合には、モータ3の減速時に回生電力がキャパシタ4に戻ってきても、消費電力以上の回生電力が戻ることはないため、モータ3からの回生電力を全てキャパシタ4に蓄電することができる。
【0045】
また、駆動期間DP2でも、キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc2がモータ駆動電圧の最大の電圧値*Vd2よりも大きくなる(*Vd2<*Vc2)。従って、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が非接続状態となるように、切替部5による切り替えを制御して、具体的には、切替部5を開いて、キャパシタ4から駆動部DUに対して給電を行うことでモータ3を駆動する。
【0046】
一方、駆動期間DP3では、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vd3がキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc3よりも大きくなる(*Vd3>*Vc3)ため、キャパシタ4からの給電だけでは、モータ3を駆動することができない。このような場合、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が接続状態となるように、切替部5による切り替えを制御して、具体的には、切替部5を閉じて、電源部1から駆動部DUに対して給電を行うことでモータ3を駆動する。この際、モータ3の減速時に回生電力がキャパシタ4に戻ってきても、キャパシタ4(電荷)は駆動期間DP1及びDP2で放電されているため、モータ3からの回生電力を全てキャパシタ4に蓄電することができる。
【0047】
ここで、モータ駆動装置DRAを、露光装置が有する原版ステージや基板ステージの駆動装置として適用する場合について考える。露光装置では、
図3に示すように、原版ステージや基板ステージの駆動するために用いられるモータ3を同一のモータ駆動条件で繰り返し駆動しながら、原版のパターンを基板に投影して基板を走査露光する。この場合、1回のモータ3の駆動(1つのショット領域の走査露光に要するモータ3の駆動)におけるキャパシタ4の電圧低下ΔVcは、全ての駆動期間で同じになる。また、モータ駆動条件が同一であることから、モータ3の駆動に必要なモータ駆動電圧Vdの予測値(ドライバ電圧予測値)も全ての駆動期間で同じになる。従って、上述したステップS1乃至S7の処理(演算)は、駆動期間DP11の前に、1回だけ行えばよく、2回目以降の処理(に要する時間)が不要となるため、ステップS1乃至S7の処理がスループットに与える影響は小さい。
【0048】
図3を参照するに、駆動期間DP11、DP12及びDP13では、キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc11、*Vc12及び*Vc13が、それぞれ、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdよりも大きくなる。このように、*Vd<*Vc11、*Vd<*Vc12、*Vd<*Vc13となる場合、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が非接続状態となるように、切替部5を開いて、キャパシタ4から駆動部DUに対して給電を行うことでモータ3を駆動する。
【0049】
一方、駆動期間DP14では、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdがキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc14よりも大きくなる(*Vd>*Vc14)。このような場合、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が接続状態となるように、切替部5を閉じて、電源部1から駆動部DUに対して給電を行う。これにより、モータ3の駆動に必要な電圧を確保し、モータ3の駆動が可能となる。
【0050】
また、
図4(a)に示すように、駆動期間DP14において、電源部1は、駆動部DUに対して給電を行うと同時に、キャパシタ4に対しても給電を行うため、キャパシタ4の電圧増加ΔVcuが生じる。
図4(b)は、切替部5(に含まれるスイッチング素子)を閉じた状態でのモータ駆動装置DRAの電気回路を示している。上述したように、電源部1は、本実施形態では、定電圧電源として構成され、その出力電圧をVo、出力インピーダンスをR(Ω)とし、また、キャパシタ4のキャパシタンスをC(ファラッド)、キャパシタ4の初期電圧をVc0とする。この場合、電源部1からキャパシタ4への給電による、時間t(sec)の経過後のキャパシタ4の電圧増加Vcc(t)は、以下の式(11)で表される。
【0051】
Vcc(t)=(Vo-Vc0)(1-exp(-t/(C×R))) ・・・(11)
更に、モータ3の減速時には、回生電流ir(t)によってキャパシタ4が充電され、回生電流ir(t)による、キャパシタ4の電圧増加Vcr(t)は、以下の式(12)で表される。
【0052】
Vcr(t)=(1/C)×∫ir(t)・dt ・・・(12)
式(11)及び(12)から、切替部5を閉じている駆動期間におけるキャパシタ電圧Vc(t)は、以下の式(13)となる。
【0053】
Vc(t)=Vcc(t)+Vcr(t) ・・・(13)
本実施形態において、制御部6は、切替部5を閉じている駆動期間DP14でのキャパシタ4の電圧増加をΔVcuとして求める。切替部5を閉じている時間を管理すれば、式(13)から、キャパシタ電圧Vc(キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc)を予測することができる。
【0054】
駆動期間DP15でも、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdがキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc15よりも大きくなる(*Vd>*Vc15)。従って、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が接続状態となるように、切替部5を閉じて、電源部1から駆動部DUに対して給電を行うため、駆動期間DP15においても、キャパシタ4の電圧増加ΔVcuが生じる。
【0055】
駆動期間DP16では、キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc16がモータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdよりも大きくなる(*Vd<*Vc16)。従って、制御部6は、電源部1とキャパシタ4との間が接続状態となるように、切替部5を閉じて、電源部1から駆動部DUに対して給電を行うことでモータ3を駆動する。
【0056】
このように、本実施形態では、ドライバ電圧予測値(モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vd)とキャパシタ電圧予測値(キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc)とを順次比較し、その比較結果に応じて、切替部5(による切り替え)を制御する。これにより、モータ3の減速時には、モータ3からの回生電力をキャパシタ4に確実に蓄電することが可能となるため、モータ駆動装置DRAの省エネ化を実現するとともに、電源電圧の上昇に起因する電源部1の故障を抑制することができる。
【0057】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態におけるモータ駆動装置DRBの構成を示す概略ブロック図である。モータ駆動装置DRBは、例えば、リソグラフィ装置の1つである露光装置が有する原版ステージや基板ステージの駆動装置として好適である。モータ駆動装置DRBは、モータ駆動装置DRAの構成(電源部1、駆動部DU、キャパシタ4、切替部5、制御部6)に加えて、電圧計測部11を更に有する。
【0058】
電圧計測部11は、キャパシタ4の電圧(キャパシタ電圧Vc)を計測して、その計測結果を第2予測演算部9に入力する。電圧計測部11は、例えば、高電圧プローブなどの専用のセンサを含む。
【0059】
第1予測演算部8は、第1実施形態と同様に、設定部7で設定されたモータ駆動条件に基づいて、上述したステップS1乃至S5を経て、モータドライバ2が必要とする電圧であるモータ駆動電圧Vdを予測する(即ち、ドライバ電圧予測値を演算する)。そして、モータ駆動電圧Vd(t)の各駆動期間での最大の電圧値(最大値)を*Vdとして求める。
【0060】
第2予測演算部9は、設定部7で設定されたモータ駆動条件と、電圧計測部11から入力された計測結果とに基づいて、以下のステップを経て、キャパシタ電圧Vcを予測する(即ち、キャパシタ電圧予測値を演算する)。
【0061】
(ステップS16)
第1実施形態と同様に、キャパシタ4のキャパシタンスをC(F:ファラッド)とし、蓄積可能な電荷量をQ(C:クーロン)として、キャパシタ4の電荷と電極間の電圧Vとの関係を、以下の式(7)で求める。
【0062】
Q=C×V ・・・(7)
また、キャパシタ電圧Vc(t)は、キャパシタ4の電流i(t)の積分値に比例することから、以下の式(8)で求められる。
【0063】
Vc(t)=(1/C)×∫i(t)・dt ・・・(8)
(ステップS17)
キャパシタ4のみからモータドライバ2に給電される(電力が供給される)場合、キャパシタ4から出力される電流は、式(3)に示す負荷電流i(t)と等価になる。従って、式(3)及び(8)から、キャパシタ電圧Vc(t)を、以下の式(9’)で予測することができる。また、モータ3の減速時には、回生電流ir(t)がキャパシタ4に戻るため、かかる回生電流ir(t)を、式(9’)に加える。なお、回生電流ir(t)は、モータ3の減速時の駆動波形などを参照して予め求めておくとよい。
【0064】
Vc(t)=(1/C)×∫((M×acc(t)/Kf)+ir(t))・dt ・・・(9’)
本実施形態では、モータ3を駆動する前のキャパシタ4の初期電圧は、電圧計測部11で計測される電圧値Vcoを用いる。モータ3を駆動した後のキャパシタ電圧Vc(t)を、以下の式(14)で予測する。換言すれば、電圧計測部11で計測されるキャパシタ4の初期電圧と、駆動部DUに出力される電圧との差分に基づいて、キャパシタ電圧Vc(t)を予測する。
【0065】
Vc(t)=Vco-Vc(t) ・・・(10)
そして、キャパシタ電圧Vc(t)の各駆動期間での最小の電圧値(最小値)を*Vcとして求める。
【0066】
次に、制御部6は、モータ3の加速期間、定速期間、減速期間ごとに、比較部10において、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdとキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vcとを比較し、その比較結果(大小関係)に応じて、切替部5を制御する。
【0067】
例えば、
図4(a)を参照するに、駆動期間DP14において、電源部1は、駆動部DUに対して給電を行うと同時に、キャパシタ4に対しても給電を行うため、キャパシタ4の電圧増加ΔVcuが生じる。第1実施形態では、キャパシタ4の電圧増加ΔVcuを式(11)乃至(13)から求めている。一方、本実施形態では、電圧計測部11によって、モータ3を駆動する前のキャパシタ4の電圧値Vco(初期電圧)を直接計測することができるため、キャパシタ電圧Vcの予測精度を向上させることができる。
【0068】
また、駆動期間DP15では、電圧計測部11で直接計測された電圧値Vco(初期電圧)に対する電圧低下ΔVcを求めて、モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vdとキャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc15とを比較する。
【0069】
このように、本実施形態では、ドライバ電圧予測値(モータ駆動電圧の最大の電圧値*Vd)とキャパシタ電圧予測値(キャパシタ電圧の最小の電圧値*Vc)とを順次比較し、その比較結果に応じて、切替部5(による切り替え)を制御する。これにより、モータ5の減速時には、モータ3からの回生電力をキャパシタ4に確実に蓄電することが可能となるため、モータ駆動装置DRBの省エネ化を実現するとともに、電源電圧の上昇に起因する電源部1の故障を抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、モータ3の駆動中に、電圧計測部11でキャパシタ電圧Vcを常時計測することで、キャパシタ電圧Vcがドライバ電圧Vdを下回るようなことがあっても、電源部1からモータ3に給電されるように切替部5を制御することが可能である。これにより、モータ3の駆動を継続することができる。
【0071】
<第3実施形態>
第1実施形態で説明したモータ駆動装置DRAや第2実施形態で説明したモータ駆動装置DRBは、上述したように、露光装置が有する原版ステージや基板ステージを駆動する駆動装置として好適である。
図6は、基板ステージを駆動する駆動装置としてモータ駆動装置DRAを適用した露光装置EXAの構成を示す概略図である。
【0072】
露光装置EXAは、例えば、各種デバイスなどのリソグラフィ工程に用いられ、基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置EXAは、原版Rを介して基板Wを露光する。露光装置EXAは、本実施形態では、原版Rと基板Wとを走査方向に相対的に走査しながら基板Wを露光(走査露光)して、原版Rのパターンを基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式(走査型)の露光装置(スキャナー)である。
【0073】
露光装置EXAは、
図6に示すように、ステージ定盤692と、基板ステージ600と、鏡筒定盤696と、ダンパ698と、投影光学系697と、照明光学系699と、原版定盤694と、原版ステージ695とを有する。本実施形態では、
図6の紙面に垂直な方向を走査方向とし、
図6の紙面内の水平方向をステップ方向とする。また、走査方向をY軸とし、走査方向に交差する方向、特に、走査方向に直交するステップ方向をX軸とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸とする座標系を定義する。
【0074】
ステージ定盤692は、マウント(不図示)を介して、床691に支持されている。ステージ定盤692の上には、基板Wを保持する基板保持部としての基板ステージ600が設けられている。また、基板ステージ600(に保持された基板W)を駆動する駆動装置として、モータ駆動装置DRAが設けられている。鏡筒定盤696は、ダンパ698を介して、床691に支持されている。鏡筒定盤696には、投影光学系697及び原版定盤694が設けられている。原版定盤694の上には、原版Rを保持する原版保持部としての原版ステージ695が駆動可能(滑動自在)に設けられている。なお、上述したように、原版ステージ695(に保持された原版R)を駆動する駆動装置として、モータ駆動装置DRAやモータ駆動装置DRBを適用することが可能である。原版ステージ695の上方には、照明光学系699が設けられている。
【0075】
露光において、光源(不図示)から発せられた光は、照明光学系699により原版Rを照明する。原版Rのパターンは、投影光学系697により基板Wに投影(結像)される。この際、原版ステージ695及び基板ステージ600のそれぞれは、原版Rと基板Wとを走査方向に相対的に走査する。露光装置EXAが用いる基板ステージ600には、その駆動装置として、上述したモータ駆動装置DRAが設けられている。従って、露光装置EXAは、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子などの物品)を提供することができる。
【0076】
なお、本発明は、リソグラフィ装置を露光装置に限定するものではなく、例えば、インプリント装置や描画装置にも適用することができる。インプリント装置は、基板上に供給(配置)されたインプリント材と型(原版)とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。描画装置は、荷電粒子線(電子線)やレーザビームで基板に描画を行うことにより基板上にパターン(潜像パターン)を形成する。また、本発明は、搬送装置、工作装置、生産装置、精密加工装置、精密計測装置などのモータ駆動装置を用いる装置に適用することができる。
【0077】
<第4実施形態>
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置EXAを用いて、基板にパターンを形成する工程と、パターンが形成された基板を処理する工程と、処理された基板から物品を製造する工程と、を含む。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0078】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0079】
DRA、DRB:モータ駆動装置 DU:駆動部 1:電源部 2:モータドライバ 3:モータ 4:キャパシタ 5:切替部 6:制御部 7:設定部 8:第1予測演算部 9:第2予測演算部 10:比較部