(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光拡散フィルム、光拡散フィルムの製造方法、光学部材、画像表示装置用表示パネルおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240807BHJP
B05D 5/02 20060101ALI20240807BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240807BHJP
B05D 7/04 20060101ALI20240807BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240807BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240807BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240807BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240807BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B05D5/02
B05D5/06 D
B05D7/04
B05D7/24 303H
B32B7/023
B32B27/20
B32B27/30 A
G09F9/00 324
G09F9/00 336Z
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2021512312
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015250
(87)【国際公開番号】W WO2020204148
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-31
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019071238
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴之
(72)【発明者】
【氏名】済木 雄二
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】廣田 健介
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031766(WO,A1)
【文献】特開2014-26123(JP,A)
【文献】特許第5488430(JP,B2)
【文献】特許第5120490(JP,B2)
【文献】特開2009-204837(JP,A)
【文献】特開2009-205150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/02
G09F9/00
B32B7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材(A)の少なくとも一方の側に光拡散層(B)が積層された光拡散フィルムであって、
前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸形状が下記数式(1)および(2)を満たし、
前記光拡散層(B)が、フィラーを含み、
前記フィラーが粒子であり、
前記粒子の重量平均粒子径(D)が、2~10μmであり、
下記数式(3)で表される前記光学拡散フィルムの全体ヘイズ値が、10~40%である、
画像表示装置用表示パネルにおける視認背面側に用いることを特徴とする光拡散フィルム。
0.110≦Sm (1)
-0.200≦Rsk≦0.200 (2)
全体ヘイズ値(%)=Td/Tt×100 (3)
前記数式(1)において、Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状の平均凹凸間距離(mm)であり、
前記数式(2)において、Rskは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状のスキューネス
であり、
前記数式(3)において、Tdは、拡散透過率であり、Ttは、全光線透過率である。
【請求項2】
波長380~780nmにおける視感透過率損失率が3.0%以下である請求項1記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
前記光拡散層(B)における前記透明基材(A)と反対側の面上に、さらに、前記透明基材(A)および前記光拡散層(B)以外の他の層が積層されている請求項1または2記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
透明基材(A)の少なくとも一方の側に光拡散層(B)が積層され、前記光拡散層(B)における前記透明基材(A)と反対側の面上に、さらに、前記透明基材(A)および前記光拡散層(B)以外の他の層が積層された光拡散フィルムであって、
前記他の層の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸形状が下記数式(1)および(2)を満たし、
前記光拡散層(B)が、フィラーを含み、
前記フィラーが粒子であり、
前記粒子の重量平均粒子径(D)が、2~10μmであり、
下記数式(3)で表される前記光学拡散フィルムの全体ヘイズ値が、10~40%である、
画像表示装置用表示パネルにおける視認背面側に用いることを特徴とする光拡散フィルム。
0.110≦Sm (1)
-0.200≦Rsk≦0.200 (2)
全体ヘイズ値(%)=Td/Tt×100 (3)
前記数式(1)において、Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状の平均凹凸間距離(mm)であり、
前記数式(2)において、Rskは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状のスキューネス
であり、
前記数式(3)において、Tdは、拡散透過率であり、Ttは、全光線透過率である。
【請求項5】
前記透明基材(A)が、アクリル樹脂を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
前記透明基材(A)が、アクリルフィルムである請求項1から5のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項7】
前記光拡散層(B)が、バインダー樹
脂を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項8】
前記粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差が0.200以下である請求項
7記載の光拡散フィルム。
【請求項9】
前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との間に、前記透明基材(A)由来の樹脂と、前記光拡散層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有する請求項1から
8のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項10】
前記透明基材(A)上に、前記光拡散層(B)を形成する光拡散層(B)形成工程と、
前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に、前記数式(1)および(2)を満たすように前記凹凸を形成する凹凸形成工程とを含み、
前記光拡散層(B)形成工程が、前記透明基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、樹脂と、
粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記光拡散層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含む請求項
10記載の製造方法。
【請求項12】
前記溶媒が、トルエンおよびシクロペンタノンを含む請求項
10または
11記載の製造方法。
【請求項13】
前記透明基材(A)上に、前記光拡散層(B)を形成する光拡散層(B)形成工程と、
前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に、前記数式(1)および(2)を満たすように前記凹凸を形成する凹凸形成工程とを含み、
前記光拡散層(B)形成工程が、前記透明基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記凹凸形成工程が、前記光拡散層(B)上に前記他の層を形成する他の層形成工程を含み、
前記塗工液が、樹脂と、
粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項3または4記載の光拡散フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の光拡散フィルムを含む光学部材。
【請求項15】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の光拡散フィルムを含む画像表示装置用表示パネル。
【請求項16】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の光拡散フィルム、請求項
14記載の光学部材、または請求項
15記載の画像表示装置用表示パネルを含む画像表示装置。
【請求項17】
請求項
15記載の画像表示装置用表示パネルと、画像表示装置用バックライトとを含む請求項
16記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散フィルム、光拡散フィルムの製造方法、光学部材、画像表示装置用表示パネルおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライトを用いた画像表示装置等において、画面全体の光量を均一化して表示ムラを低減するために、光拡散フィルムが用いられることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光拡散フィルムにおいて、光拡散性を高めようとすると、光透過率が低下しやすくなる問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、光拡散性と光透過率の両立が可能な光拡散フィルム、光拡散フィルムの製造方法、光学部材、画像表示装置用表示パネルおよび画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の光拡散フィルムは、
透明基材(A)の少なくとも一方の側に光拡散層(B)が積層された光拡散フィルムであって、
前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸形状が下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
0.110≦Sm (1)
Rsk≦0.200 (2)
前記数式(1)において、Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状の平均凹凸間距離(mm)であり、
前記数式(2)において、Rskは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状のスキューネスである。
【0007】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、
前記透明基材(A)上に、前記光拡散層(B)を形成する光拡散層(B)形成工程と、
前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に、前記数式(1)および(2)を満たすように前記凹凸を形成する凹凸形成工程とを含み、
前記光拡散層(B)形成工程が、前記透明基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、樹脂と、溶媒とを含むことを特徴とする、前記本発明の光拡散フィルムを製造する方法である。
【0008】
本発明の光学部材は、本発明の光拡散フィルムを含む光学部材である。
【0009】
本発明の画像表示装置用表示パネルは、画像表示装置用表示パネルにおける視認背面側に用いる本発明の光拡散フィルムを含む画像表示装置用表示パネルである。
【0010】
本発明の画像表示装置は、本発明の光拡散フィルム、本発明の光学部材、または本発明の画像表示装置用表示パネルを含む画像表示装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光拡散性と光透過率の両立が可能な光拡散フィルム、光拡散フィルムの製造方法、光学部材、画像表示装置用表示パネルおよび画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の光拡散フィルムの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0014】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、波長380~780nmにおける視感透過率損失率が3.0%以下であってもよい。
【0015】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)における前記透明基材(A)と反対側の面上に、さらに、他の層が積層されていてもよい。
【0016】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、透明基材(A)の少なくとも一方の側に光拡散層(B)および他の層が積層された光拡散フィルムであって、
前記他の層の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸形状が下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする光拡散フィルムであってもよい。
0.110≦Sm (1)
Rsk≦0.200 (2)
前記数式(1)において、Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状の平均凹凸間距離(mm)であり、
前記数式(2)において、Rskは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状のスキューネスである。
【0017】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記透明基材(A)が、アクリル樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記透明基材(A)が、アクリルフィルムであってもよい。
【0019】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)が、バインダー樹脂およびフィラーを含んでいてもよい。また、例えば、前記フィラーが粒子であってもよい。また、例えば、前記粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差が0.200以下であってもよい。
【0020】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との間に、前記透明基材(A)由来の樹脂と、前記光拡散層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有していてもよい。
【0021】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、画像表示装置用表示パネルにおける視認背面側に用いる光拡散フィルムであってもよい。
【0022】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、例えば、前記光拡散層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、例えば、前記溶媒が、トルエンおよびシクロペンタノンを含んでいてもよい。
【0024】
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、例えば、前記光拡散フィルムが、前記他の層を含む光拡散フィルムであり、前記凹凸形成工程が、前記光拡散層(B)上に前記他の層を形成する他の層形成工程を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の画像表示装置は、例えば、本発明の画像表示装置用表示パネルと、画像表示装置用バックライトとを含む画像表示装置であってもよい。
【0026】
[1.光拡散フィルム]
本発明の光拡散フィルムは、前述のとおり、透明基材(A)の少なくとも一方の側に光拡散層(B)が積層された光拡散フィルムであって、前記光拡散フィルムにおける前記光拡散層(B)側の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸形状が下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
0.110≦Sm (1)
Rsk≦0.200 (2)
前記数式(1)において、Smは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状の平均凹凸間距離(mm)であり、
前記数式(2)において、Rskは、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される、前記凹凸形状のスキューネスである。
【0027】
本発明の光拡散フィルムは、前記Smが大きくて前記Rskが小さい。すなわち、本発明の光拡散フィルムは、前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状がなだらかである。これにより、本発明の光拡散フィルムは、高い光拡散性と高い光透過率の両立が可能である。
【0028】
一般的な光拡散フィルムは、例えば、光拡散性のために、表面の凹凸形状における山と山との間隔が短く、表面高さの中心線に対して、谷の成分が多く、凹凸が大きい。そして、これにより、光の損失が大きく、光透過率が低くなる。これに対し、本発明者らは、前記Smを前記数式(1)の範囲内とし、かつ、前記Rskを前記数式(2)の範囲内とすることで、光拡散性と光透過率の両立が可能であることを見出した。本発明の光拡散フィルムは、前記Smが0.110以上と大きく、すなわち、表面の凹凸形状における山と山との間隔が長い。また、前記Rskが0.200以下と小さく、これは、後述するように、前記表面の凹凸形状における山と谷との成分が均等に近いことを意味する。このように前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状がなだらかであることにより、前記凹凸形状の表面積を小さくして裏面反射を抑制が出来るため、光損失が少なくなり、光透過率が大きくなると考えられる。
【0029】
図1の断面図に、本発明の光拡散フィルムの構成の一例を示す。図示のとおり、この光拡散フィルム10は、透明基材(A)11の一方の面に、光拡散層(B)12が積層されている。光拡散層(B)12は、樹脂層12a中に粒子12bおよびチキソトロピー付与剤12cが含まれている。樹脂層12aは、バインダー樹脂により形成されている。粒子12bおよびチキソトロピー付与剤12cは、フィラーである。光拡散層(B)12における透明基材(A)11と反対側の表面には凹凸が形成されている。この凹凸形状は、前記数式(1)(0.110≦Sm)および前記数式(2)(Rsk≦0.200)を満たす。ただし、本発明の光拡散フィルムは、これに限定されない、例えば、粒子12bおよびチキソトロピー付与剤12cは、それぞれ、あっても無くてもよい。
【0030】
また、本発明の光拡散フィルムは、前述のとおり、前記光拡散層(B)における前記透明基材(A)と反対側の面上に、さらに、他の層が積層されていてもよい。ただし、前記他の層は、存在しても存在しなくてもよい。前記他の層が存在する場合、前記他の層は、例えば、粘着剤層、接着剤層、低屈折率層、高屈折率層、導電層、UV吸収層、防汚層、高硬度層、応力緩和層、プライマー層等であってもよい。前記他の層は、一層でも複数の層でもよく、複数の場合は、一種類でも複数種類でもよい。例えば、前記他の層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものであってもよい。
【0031】
なお、本発明の光拡散フィルムにおいて、「光拡散層(B)側の最表面」は、前記光拡散層(B)側の最も外側の表面である。具体的には、「光拡散層(B)側の最表面」は、前記他の層が存在しない場合(例えば
図1)は、前記光拡散層(B)における前記透明基材(A)と反対側の表面である。また、「光拡散層(B)側の最表面」は、前記他の層が存在する場合(図示せず)は、前記他の層における前記透明基材(A)と反対側の最も外側の表面である。
【0032】
本発明において、前記数式(1)のSmは、基準長さにおいて、輪郭曲線要素の長さの平均を表す量である。前記数式(1)のSmは、前述のとおり、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される量であり、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0033】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状のSmは、前記数式(1)に示すとおり0.110以上であり、例えば、0.120以上、0.130以上または0.140以上であってもよい。前記Smの上限値は特に限定されないが、例えば、0.200以下である。
【0034】
本発明において、前記数式(2)のRsk(スキューネス)は、二乗平均平方根高さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の三乗平均を表す。また、スキューネスとは歪度(わいど)を意味し、平均線を中心としたときの山部と谷部の対称性を表す。Rsk=0ならば平均線に対して対称(正規分布)であり、Rsk>0ならば平均線に対して下側に偏っており、Rsk<0ならば平均線に対して上側に偏っていることになる。前記数式(2)Rskは、前述のとおり、JIS B0601(1994年版)にしたがって測定される量であり、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0035】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状のRskは、前記数式(2)に示すとおり、0.200以下であり、例えば、0.180以下、0.160以下または0.120以下であってもよい。前記Rskの下限値は特に限定されないが、例えば、-0.200以上である。
【0036】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状の十点平均粗さ(十点平均高さともいう)Rzは、例えば、1.700以下、1.200以下、1.000以下、または0.900以下であってもよい。前記Rzの下限値は特に限定されないが、例えば、0.200以上であってもよい。前記Rzが小さいことで、さらに高い光透過率が得やすくなる。前記Rzは、例えば、後述する実施例に記載の測定方法で測定することができる。前記Rzは、例えば、基準長さにおいて、輪郭曲線の最大の山高さから5番目までの平均と、最深の谷深さから5番目までの平均との和で表すことができる。
【0037】
本発明において、光拡散フィルムの光透過率は、例えば、前記視感透過率損失率(波長380~780nmにおける視感透過率損失率)で表すことができる。前記視感透過率損失率は、光透過性基材に対する視感透過率損失率として表すことができる。前記光透過性基材は、例えば、透明プラスチックフィルム基材であり、本発明の光拡散フィルムでは透明基材(A)である。前記視感透過率損失率は、前記光透過性基材のみの視感透過率YをY1とし、光拡散フィルムの視感透過率YをY2として、下記数式に基づき算出できる。また、前記視感透過率損失率は、例えば、後述する実施例に記載の測定方法および算出方法により測定および算出できる。また、前記視感透過率損失率は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり3.0%以下であってもよく、2.5%以下、または2.0%以下であってもよい。前記視感透過率損失率の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%でもよく、0%を超える数値であってもよい。
視感透過率損失率(%)=(Y1-Y2)/Y1×100
【0038】
本発明の光拡散フィルムにおいて、全体へイズ値は、特に限定されないが、例えば、10%以上、15%以上、18%以上、または20%以上であってもよく、例えば、40%以下、35%以下、32%以下、または28%以下であってもよい。全体ヘイズ値が高いと、光拡散性が高くなりやすい。全体ヘイズ値が低いと、光透過率が高くなりやすい。なお、ヘイズ値とは、光学フィルム等の透明性に関する指標で、濁度(曇度)を表す。また、ヘイズ値は、拡散透過光の全光線透過光に対する割合から算出可能であり、表面の粗さ等に影響を受ける。本発明の光拡散フィルムにおいて、全体へイズ値は、例えば、下記数式で定義することが可能であり、また、例えば、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
全体ヘイズ値(%)=Td/Tt×100
Td:拡散透過率
Tt:全光線透過率
【0039】
以下、前記透明基材(A)、前記光拡散層(B)および前記他の層のそれぞれについて、さらに例を挙げて説明する。
【0040】
前記透明基材(A)は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008-90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース(DAC)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等があげられる。また、前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等もあげられる。さらに、前記透明プラスチックフィルム基材の形成材料としては、例えば、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等もあげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の光拡散フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、前記光拡散層(B)および前記低反射層(C)が、保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、光拡散フィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0041】
本発明において、前記透明基材(A)の厚みは、特に制限されないが、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、例えば、10~500μm、20~300μm、または30~200μmの範囲である。前記透明基材(A)の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0042】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前述のとおり、前記透明基材(A)が、アクリル樹脂を含んでいてもよい。
【0043】
また、本発明の光拡散フィルムは、例えば、前述のとおり、前記透明基材(A)が、アクリルフィルムであってもよい。この場合において、前記透明基材(A)を形成するアクリルフィルムが、アクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。前記透明基材(A)に含まれるアクリル樹脂の含有率は、特に限定されないが、例えば、80質量%以上、85質量%以上、または90質量%以上であってもよく、上限値は特に限定されないが、例えば、100質量%以下、95質量%以下であってもよい。
【0044】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)が、樹脂(バインダー樹脂)およびフィラーを含んでいてもよい。前記フィラーが、粒子およびチキソトロピー付与剤(thixotropic agent)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0045】
例えば、前記光拡散層(B)が、粒子を含まずチキソトロピー付与剤を含むことにより、前記SmおよびRskが小さくて前記最表面の凹凸がなだらかである本発明の光拡散フィルムとすることができる。また、前記光拡散層(B)が、チキソトロピー付与剤および粒子径が小さい粒子を含むことによっても、同様に、前記SmおよびRskが小さくて前記最表面の凹凸がなだらかである本発明の光拡散フィルムとすることができる。
【0046】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)に含まれる前記樹脂が、アクリレート樹脂(アクリル樹脂ともいう)を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)に含まれる前記樹脂が、ウレタンアクリレート樹脂を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)に含まれる前記樹脂が、硬化型ウレタンアクリレート樹脂および多官能アクリレートの共重合物であってもよい。
【0049】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記光拡散層(B)が、樹脂およびフィラーを含む光拡散層形成材料を用いて形成されており、前記光拡散層(B)が、前記フィラーが凝集することによって、前記光拡散層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有していてもよい。また、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記光拡散層(B)の面方向における一方向に複数集まった状態で存在していてもよい。本発明の画像表示装置は、例えば、前記フィラーが複数集まった一方向と、ブラックマトリックスパターンの長辺方向とが一致するように、前記本発明の光拡散フィルムが配置されていてもよい。
【0050】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記チキソトロピー付与剤は、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。また、前記チキソトロピー付与剤は、例えば、増粘剤であってもよい。
【0051】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記光拡散層(B)の前記樹脂100重量(質量)部に対し、例えば、前記チキソトロピー付与剤が0.2~5重量部の範囲で含まれていてもよい。
【0052】
本発明の光拡散フィルムにおいて、前記光拡散層(B)の前記樹脂100重量部に対し、前記粒子は、例えば、0.2~12重量部または0.5~12重量部の範囲で含まれていてもよい。
【0053】
本発明の光拡散フィルムの製造方法において、さらに、前記光拡散層形成材料中における前記樹脂100重量部に対する前記粒子の重量部数を調整することにより、前記光拡散フィルムの表面形状を調整してもよい。
【0054】
粒子を凝集させた凝集部を有することで、例えば、光拡散フィルムの凹凸形状がなだらかである本発明の光拡散フィルムとすることができる。また、例えば、前記凝集部を有することで、前記光拡散層(B)表面の平均凹凸間距離Sm(mm)が大きくなる。このような表面形状を有する光拡散フィルムは、蛍光灯等の映り込みを、効果的に防止することが可能である。ただし、本発明の光拡散フィルムは、これに限定されない。
【0055】
前記光拡散層(B)は、例えば、後述するように、前記樹脂、前記フィラーおよび溶媒を含む塗工液を、前記透明基材(A)の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、次いで、前記塗膜から前記溶媒を除去することで形成される。前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0056】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、光拡散層(B)の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記光拡散層(B)を形成するための粒子は、形成される光拡散層(B)表面を凹凸形状にして光拡散性を付与し、また、前記光拡散層(B)のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記光拡散層(B)のヘイズ値は、前記粒子と前記樹脂との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記粒子と前記樹脂との屈折率差は、特に限定されないが、例えば、前述のとおり0.200以下であってもよく、0.150以下、0.100以下、または0.050以下であってもよく、例えば、0以上であってもよく、0を超える数値であってもよく、0.010以上、0.020以上、または0.030以上であってもよい。前記粒子としては、例えば、無機粒子と有機粒子とがある。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0059】
前記粒子の粒子径(D)(重量平均粒子径)は、特に限定されないが、例えば、2~10μmの範囲内である。前記粒子の重量平均粒子径を、前記範囲とすることで、例えば、より光拡散性に優れ、かつ映り込みが抑制された光拡散フィルムとすることができる。斜め方向からの映り込み抑制の観点からは、前記粒子の重量平均粒子径が小さすぎないことが好ましい。正面方向からの映り込み抑制の観点からは、前記粒子の重量平均粒子径が大きすぎないことが好ましい。前記粒子の重量平均粒子径は、例えば、2.2μm以上、2.3μm以上、2.5μm以上、または3.0μm以上であってもよく、9.0μm以下、8.0μm以下、7.0μm以下、または6.0μm以下であってもよい。前記粒子の重量平均粒子径は、例えば、2.2μm以上9.0μm以下、2.2μm以上8.0μm以下、2.2μm以上7.0μm以下、2.2μm以上6.0μm以下、2.3μm以上9.0μm以下、2.3μm以上8.0μm以下、2.3μm以上7.0μm以下、2.3μm以上6.0μm以下、2.5μm以上9.0μm以下、2.5μm以上8.0μm以下、2.5μm以上7.0μm以下、2.5μm以上6.0μm以下、3.0μm以上9.0μm以下、3.0μm以上8.0μm以下、3.0μm以上7.0μm以下、または3.0μm以上6.0μm以下であってもよい。なお、前記粒子の重量平均粒子径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、粒子が前記細孔を通過する際の粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒子径を算出する。
【0060】
前記粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。
【0061】
前記光拡散層(B)における前記粒子の割合は、前記樹脂100重量部に対し、例えば、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、または0.5重量部以上であってもよく、10重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、または6重量部以下であってもよい。前記粒子の割合は、前記樹脂100重量部に対し、例えば、0.1重量部以上10重量部以下、0.1重量部以上8重量部以下、0.1重量部以上7重量部以下、0.1重量部以上6重量部以下、0.2重量部以上10重量部以下、0.2重量部以上8重量部以下、0.2重量部以上7重量部以下、0.2重量部以上6重量部以下、0.3重量部以上10重量部以下、0.3重量部以上8重量部以下、0.3重量部以上7重量部以下、0.3重量部以上6重量部以下、0.5重量部以上10重量部以下、0.5重量部以上8重量部以下、0.5重量部以上7重量部以下、または0.5重量部以上6重量部以下であってもよい。前記粒子の割合を前記範囲とすることで、例えば、前記凝集部を好適に形成することができ、例えば、より光拡散性に優れ、かつ映り込みが抑制された光拡散フィルムとすることができる。
【0062】
前記光拡散層(B)において、前記フィラーが、粒子およびチキソトロピー付与剤であってもよい。前記チキソトロピー付与剤は、単独で含んでいてもよいし、前記粒子に加え、さらに、前記チキソトロピー付与剤を含んでいてもよい。前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の凝集状態の制御を容易に行うことができる。前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレア等があげられる。
【0063】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した層状粘土であることが好ましい。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME-100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル株式会社製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN-400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも株式会社ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業株式会社製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0064】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200-20(商品名、楠本化成株式会社製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学株式会社製)等があげられる。
【0065】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0066】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0067】
前記光拡散層(B)における前記チキソトロピー付与剤の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.2~5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.4~4重量部の範囲である。
【0068】
前記光拡散層(B)の最大厚み(d’)は、特に制限されないが、3~12μmの範囲内にあることが好ましい。前記光拡散層(B)の最大厚み(d’)を、前記範囲とすることで、例えば、光拡散フィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記粒子の重量平均粒子径(D)は、前述のように、2~10μmの範囲内にあることが好ましい。前記光拡散層(B)の最大厚み(d’)と、前記粒子の重量平均粒子径(D)とが、前述の組み合わせであることで、光拡散性に優れる光拡散フィルムとすることができる。前記光拡散層(B)の最大厚み(d’)は、より好ましくは、3~8μmの範囲内である。
【0069】
前記光拡散層(B)の厚み(d’)と前記粒子の重量平均粒子径(D)との比D/dは、例えば、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、または0.6以下であってもよく、0.1以上、0.2以上、0.3以上、または0.4以上であってもよい。前記D/dは、例えば、0.1以上1以下、0.2以上1以下、0.3以上1以下、0.4以上1以下、0.1以上0.9以下、0.2以上0.9以下、0.3以上0.9以下、0.4以上0.9以下、0.1以上0.8以下、0.2以上0.8以下、0.3以上0.8以下、0.4以上0.8以下、0.1以上0.7以下、0.2以上0.7以下、0.3以上0.7以下、0.4以上0.7以下、0.1以上0.6以下、0.2以上0.6以下、0.3以上0.6以下、または0.4以上0.6以下であってもよい。このような関係にあることにより、より光拡散性に優れ、かつ映り込みが抑制された光拡散フィルムとすることができる。
【0070】
本発明における光拡散フィルムでは、例えば、前記光拡散層(B)は、前記フィラーが凝集することによって、前記光拡散層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記光拡散層(B)の面方向における一方向に、複数集まった状態で存在してもよい。これにより、例えば、蛍光灯の映り込み等を防止することができる。ただし、本発明の光拡散フィルムは、これに限定されない。
【0071】
また、本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との間に、前記透明基材(A)由来の樹脂と、前記光拡散層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有していてもよい。この中間層の厚みの制御により、前記光拡散層(B)の表面形状を制御することができる。例えば、前記中間層の厚みを大きくすると、前記SmおよびRskが大きくなりやすく、前記中間層の厚みを小さくすると、前記SmおよびRskが小さくなりやすい。なお、前記中間層の存在の確認は、例えば、光拡散フィルムの断面を顕微鏡で観察して行うことができる。また、前記中間層、前記透明基材(A)、および前記光拡散層(B)の厚みの測定は、例えば、同様に光拡散フィルムの断面を顕微鏡で観察し、前記透明基材(A)、前記中間層および前記光拡散層(B)の界面を特定して行うことができる。前記顕微鏡としては、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)が挙げられる。また、前記界面の特定には、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法等を用いてもよい。このような方法は、例えば、顕微鏡により界面が特定し難い場合に用いることができる。
【0072】
本発明において、前記中間層(浸透層、相溶層ともいう)が形成されるメカニズムは、特に限定されないが、例えば、本発明の光拡散フィルムの製造方法における前記乾燥工程で形成される。具体的には、例えば、前記乾燥工程において、前記光拡散層(B)形成用の塗工液が前記透明基材(A)に浸透し、前記透明基材(A)由来の樹脂と、前記光拡散層(B)由来の樹脂とを含む前記中間層が形成される。前記中間層に含まれる樹脂は、特に限定されず、例えば、前記透明基材(A)に含まれる樹脂と前記光拡散層(B)に含まれる樹脂とが単に混合(相溶)されたものでもよい。また、前記中間層に含まれる樹脂は、例えば、前記透明基材(A)に含まれる樹脂と前記光拡散層(B)に含まれる樹脂との、少なくとも一方が、加熱、光照射等により化学変化していてもよい。
【0073】
下記数式(5)で定義される前記中間層の厚み比率Rは、特に限定されないが、例えば、0.10~0.80であり、例えば、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.40以上、または0.45以上であってもよく、例えば、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.45以下、または0.30以下であってもよい。前記中間層は、例えば、光拡散フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
R=[DC/(DC+DB)] (5)
前記数式(5)において、DBは、前記光拡散性層(B)の厚み[μm]であり、DCは、前記中間層の厚み[μm]である。
【0074】
本発明における光拡散フィルムでは、例えば、前述のように、前記光拡散層(B)は、前記フィラーが凝集することによって、前記光拡散層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記光拡散層(B)の面方向における一方向に、複数集まった状態で存在してもよい。これにより、前記凸状部が、異方性を有するなだらかな形状となる。ただし、本発明の光拡散フィルムは、これに限定されない。
【0075】
光拡散層(B)の表面形状は、光拡散層形成材料に含まれるフィラーの凝集状態を制御することで、任意に設計することができる。前記フィラーの凝集状態は、例えば、前記フィラーの材質(例えば、粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。また、前記チキソトロピー付与剤により、前記粒子の凝集状態を精密にコントロールすることができる。この結果、本発明では、前記光拡散フィルムの表面形状を、広い範囲で制御(調整)することが可能であり、例えば、前記フィラーの凝集状態を前述のようにすることができ、前記凸状部を、なだらかな形状とすることができる。さらに、前述のように、前記光拡散層形成材料中における前記樹脂100重量部に対する前記粒子の重量部数を調整することにより、前記光拡散フィルムの表面形状を、より広い範囲で制御(調整)することもできる。
【0076】
なお、本発明の光拡散フィルムは、前記凸状部が、なだらかな形状となり、外観欠点となる光拡散層(B)表面の突起状物の発生を防止できるものであってもよいが、これに限定されない。また、本発明の光拡散フィルムは、例えば、光拡散層(B)の厚み方向に直接または間接的に重なる位置で、前記粒子が多少存在していてもよい。
【0077】
前記他の層は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、粘着剤層、接着剤層、低屈折率層、高屈折率層、導電層、UV吸収層、防汚層、高硬度層、応力緩和層、プライマー層等であってもよい。また、前記他の層は、一層でも複数の層でもよく、複数の場合は、一種類でも複数種類でもよい。例えば、前記他の層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものであってもよい。
【0078】
[2.光拡散フィルムの製造方法]
本発明の光拡散フィルムの製造方法は、特に制限されず、どのような方法で製造されてもよいが、前記本発明の光拡散フィルムの製造方法により製造することが好ましい。
【0079】
前記光拡散フィルムの製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0080】
まず、前記透明基材(A)上に、前記光拡散層(B)を、前記数式(1)および(2)を満たすように形成する(光拡散層(B)形成工程)。これにより、前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との積層体を製造する。前記光拡散層(B)形成工程は、前述のとおり、前記透明基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含む。また、例えば、前述のとおり、前記光拡散層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。
【0081】
前記塗工液は、前述のとおり、樹脂と、溶媒とを含む。前記塗工液は、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および前記溶媒を含む光拡散層形成材料(塗工液)であってもよい。
【0082】
前記塗工液は、チキソ性を示していることが好ましく、下記式で規定されるTi値が、1.3~3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.4~3.2の範囲であり、さらに好ましくは1.5~3の範囲である。
Ti値=β1/β2
上記式中、β1はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0083】
Ti値が、1.3以上であれば、外観欠点が生じたり、光拡散性、白ボケについての特性が悪化したりする問題が起こりにくい。また、Ti値が、3.5以下であれば、前記粒子が凝集せずに分散状態となる等の問題が起こりにくい。
【0084】
また、前記塗工液は、チキソトロピー付与剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、チキソトロピー付与剤を含む方が、チキソ性を示しやすいため好ましい。また、前述のように、前記塗工液が前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の沈降を防止する効果(チキソトロピー効果)が得られる。さらに、前記チキソトロピー付与剤自体のせん断凝集により、光拡散フィルムの表面形状を、さらに広い範囲で自在に制御することも可能である。例えば、前記塗工液が粒子を含まずチキソトロピー付与剤を含むことにより、前述のとおり、前記SmおよびRskが小さくて前記最表面の凹凸がなだらかである本発明の光拡散フィルムとすることができる。また、前記塗工液が、チキソトロピー付与剤および粒子径が小さい粒子を含むことによっても、同様に、前記SmおよびRskが小さくて前記最表面の凹凸がなだらかである本発明の光拡散フィルムとすることができる。
【0085】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の光拡散フィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率が存在する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がシクロペンタノンであってもよい。
【0086】
透明基材(A)として、例えば、アクリルフィルムを採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、アクリルフィルム(アクリル樹脂)に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、前述のとおり、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含む溶媒でもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、およびアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がシクロペンタノンであってもよい。
【0087】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤を含有する場合において光拡散層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0088】
前記光拡散層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、光拡散層(B)表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように低反射層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が光拡散層(B)上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。この場合、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0089】
前記レベリング剤の配合量は、特に限定されないが、前記樹脂100重量部に対して、好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは0.5~5重量部の範囲である。
【0090】
前記光拡散層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0091】
前記光拡散層形成材料には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0092】
前記塗工液を前記透明基材(A)上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0093】
つぎに、前述のとおり、前記塗膜を乾燥および硬化させ、光拡散層(B)を形成する。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0094】
前記光拡散層(B)形成用の塗工液の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0095】
前記塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される光拡散層(B)の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される光拡散層(B)の着色を防止することができる。
【0096】
以上のようにして、前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との積層体を製造できる。この積層体を、そのまま本発明の光拡散フィルムとしてもよいし、例えば、前記光拡散層(B)上に前記他の層を形成して本発明の光拡散フィルムとしてもよい。前記他の層の形成方法は特に限定されず、例えば、一般的な光学層等の形成方法と同様またはそれに準じた方法で行うことができる。
【0097】
以上のようにして、前記透明基材(A)の少なくとも一方の面に、前記光拡散層(B)が積層された本発明の光拡散フィルムを製造できる。なお、本発明の光拡散フィルムは、前述のとおり、前記透明基材(A)および前記光拡散層(B)以外の他の層を含んでいてもよい。
【0098】
また、本発明の反射防止フィルムの製造工程において、前記透明基材(A)および前記光拡散層(B)の少なくとも一方に対し表面処理を行うことが好ましい。前記透明基材(A)表面を表面処理すれば、前記光拡散層(B)または偏光子若しくは偏光板との密着性がさらに向上する。また、前記光拡散層(B)表面を表面処理すれば、例えば、前記他の層との密着性がさらに向上する。
【0099】
[3.光学部材および画像表示装置]
本発明の光学部材は、特に限定されないが、例えば、偏光板であってもよい。前記偏光板も、特に限定されないが、例えば、本発明の光拡散フィルムおよび偏光子を含んでいてもよいし、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。前記偏光板の各構成要素は、例えば、接着剤または粘着剤等により貼り合わせられていてもよい。
【0100】
本発明の画像表示装置も特に限定されず、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置等があげられる。
【0101】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前述のとおり、画像表示装置用表示パネルにおける視認背面側に用いてもよい。具体的には、例えば、画像表示装置用表示パネルの視認背面側に本発明の光拡散フィルムを接着剤または粘着剤等により貼付してもよい。この場合において、本発明の光拡散フィルムは、例えば、単独で用いてもよいし、他の構成要素を含む本発明の光学部材(例えば、前記偏光板等)として用いてもよい。また、本発明の画像表示装置は、例えば、前記画像表示装置用表示パネルと、画像表示装置用バックライトとを含んでいてもよい。具体的には、例えば、前記画像表示装置用表示パネルの視認背面側に本発明の光拡散フィルムまたは本発明の光学部材が貼付され、前記画像表示装置用表示パネルの視認背面側に前記画像表示装置用バックライトが配置されていてもよい。本発明の光拡散フィルムは、前述のとおり、前記光拡散層(B)側の最表面における前記凹凸形状がなだらかである。このため、本発明の光拡散フィルムによれば、例えば、前記凹凸形状による前記画像表示装置用バックライト表面の傷つきを抑制または防止できる。ただし、本発明の画像表示装置は、これに限定されない。
【0102】
本発明の画像表示装置は、例えば、本発明の光拡散フィルムを視認側表面に有する画像表示装置であって、前記画像表示装置がブラックマトリックスパターンを有していてもよい。
【0103】
本発明の光拡散フィルムは、例えば、前記透明基材(A)側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記透明基材(A)表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。前述のとおり、本発明の光拡散フィルムの製造方法によれば、光拡散フィルムの表面形状を広い範囲で自在に制御可能である。このため、前記光拡散フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて他の光学部材と積層することによって得ることができる光学特性は、前記光拡散フィルムの表面形状に対応した広い範囲にわたる。
【0104】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0105】
前記光拡散フィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記光拡散フィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記光拡散フィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0106】
本発明の画像表示装置は、前記光拡散フィルムを配置する以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0107】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0108】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。
【0109】
[実施例1]
バインダー樹脂としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;大阪有機化学社製、商品名「ビスコート♯300」)60重量部およびウレタンアクリレートプレポリマー(新中村化学工業社製、商品名「UA-53H-80BK」)40重量部と、シリコーン粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130」、重量平均粒径:3μm、|D90-D50|:2.5μm)4重量部と、有機粘土である合成スメクタイト(クニミネ工業株式会社製、商品名「スメクトンSAN」)2.5重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)5重量部と、レベリング剤(DIC社製、商品名「PC4100」、固形分10%)1.0重量部とを混合し、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比トルエン/シクロペンタノン=70/30)で希釈して、固形分濃度31.5重量%の光拡散層形成用組成物Iを調製した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6重量%になるよう希釈して用いた。
【0110】
さらに、透明プラスチックフィルム基材(アクリルフィルム、東洋鋼鈑(株)製、商品名「HX-40UC」、厚さ:40μm、屈折率:1.50、単体の視感透過率94.0%)に、上記光拡散層形成用組成物Iをワイヤーバーを用いて塗布し、90℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにして、透明基材(A)の一方の面に光拡散層(B)(厚み5.7μm)が積層されるとともに、前記透明基材(A)と前記光拡散層(B)との間に、前記透明基材(A)由来の樹脂と、前記光拡散層(B)由来の樹脂とを含む中間層が形成された光拡散フィルムを得た。なお、本実施例と、以下の全ての実施例および比較例とにおいて、中間層が形成されていることは、光拡散フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)により観察して確認した。
【0111】
[実施例2]
光拡散層を、厚みが6.3μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0112】
[実施例3]
光拡散層を、厚みが6.9μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0113】
[実施例4]
光拡散層を、厚みが7.3μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0114】
[実施例5]
光拡散層形成用組成物I塗工後の加熱時間を1分間から30秒間に変更したこと以外は実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0115】
[実施例6]
光拡散層を、厚みが6.3μmとなるように形成したこと以外は実施例5と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0116】
[実施例7]
光拡散層を、厚みが6.9μmとなるように形成したこと以外は実施例5と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0117】
[実施例8]
光拡散層を、厚みが7.3μmとなるように形成したこと以外は実施例5と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0118】
[実施例9]
透明プラスチックフィルム基材(透明基材(A))として、実施例1の前記アクリルフィルムに代えて、PETフィルム(KOLON INDUSTRIES社製、商品名「ASTROLL CE900」、厚さ:38μm、屈折率:1.64、単体の視感透過率88.3%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0119】
[実施例10]
透明プラスチックフィルム基材(透明基材(A))として、実施例1の前記アクリルフィルムに代えて、TAC(コニカミノルタ株式会社製、商品名「KC4UY」、厚さ:40μm、屈折率:1.50、単体の視感透過率92.4%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0120】
[比較例1]
バインダー樹脂としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;大阪有機化学社製、商品名「ビスコート♯300」)60重量部およびウレタンアクリレートプレポリマー(新中村化学工業社製、商品名「UA-53H-80BK」)40重量部と、有機粒子(積水化成品工業株式会社製、商品名「SSX1055QXE」、重量平均粒径:5.5μm)4重量部と、有機粘土である合成スメクタイト(クニミネ工業株式会社製、商品名「スメクトンSAN」)2.5重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)5重量部と、レベリング剤(DIC社製、商品名「PC4100」、固形分10%)1.0重量部とを混合し、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比トルエン/メチルエチルケトン=70/30)で希釈して、固形分濃度32重量%の光拡散層形成用組成物IIを調製した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6重量%になるよう希釈して用いた。
【0121】
さらに、実施例1と同じ透明プラスチックフィルム基材に、上記光拡散層形成用組成物IIをワイヤーバーを用いて塗布し、90℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにして、透明基材層と光拡散層(厚み5.7μm)とを有し、さらにそれらの間に中間層が形成された光拡散フィルムを得た。
【0122】
[比較例2]
光拡散層を、厚みが5.9μmとなるように形成したこと以外は比較例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0123】
[比較例3]
光拡散層を、厚みが6.2μmとなるように形成したこと以外は比較例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0124】
[比較例4]
光拡散層を、厚みが6.3μmとなるように形成したこと以外は比較例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0125】
[比較例5]
光拡散層を、厚みが6.5μmとなるように形成したこと以外は比較例1と同様にして光拡散フィルムを得た。
【0126】
[比較例6]
バインダー樹脂としてのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;大阪有機化学社製、商品名「ビスコート♯300」)50重量部およびウレタンアクリレートプレポリマー(新中村化学工業社製、商品名「UA-53H-80BK」)50重量部と、シリコーン粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「トスパール130」、重量平均粒径:3μm、|D90-D50|:2.5μm、屈折率:1.42)3.5重量部と、有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル社製、商品名「ルーセンタイトSAN」)2重量部と、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)3重量部と、レベリング剤(DIC社製、商品名「PC4100」、固形分10%)0.2重量部とを混合し、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比トルエン/シクロペンタノン=70/30)で希釈して、固形分濃度33重量%の光拡散層形成用組成物IIIを調製した。なお、有機粘土は、トルエンで固形分が6重量%になるよう希釈して用いた。
【0127】
つぎに、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタオプト社製、商品名「KC4UA」、厚み:40μm)に、上記光拡散層形成用組成物IIIをコンマコーター(登録商標)を用いて塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにして、透明基材層と光拡散層(厚み:6.3μm)とを備え、透明基材層と光拡散層との間に中間層が形成された光拡散フィルムを得た。
【0128】
以上のようにして製造した実施例および比較例の光拡散フィルムの特性を、以下のようにして測定した。
【0129】
[光拡散層表面の凹凸形状(Sm、Rsk、Rz)]
JIS B0601(1994年度版)に従って、平均凹凸間距離Sm(mm)スキューネスRsk、および十点平均表面荒さRz(μm)を測定した。具体的には、まず、前記各実施例または比較例における光拡散フィルムの透明基材の、光拡散層とは反対側の面に、ガラス板(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm、45×50mm)を粘着剤で貼り合わせ、試料を作製した。つぎに、先端部(ダイヤモンド)の曲率半径R=2μmの測定針を有する触針式表面粗さ測定器((株)小阪研究所製、高精度微細形状測定器、商品名「サーフコーダET4000」)を用い、走査速度1mm/秒、カットオフ値0.8mm、測定長12mmの条件で、前記試料における光拡散層の表面形状を一定方向に測定し、平均凹凸間距離Sm(mm)、十点平均表面粗さRz(μm)、およびスキューネスRskを算出した。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記各測定値を自動算出する。
【0130】
[視感透過率損失率]
日立ハイテク社製の分光光度計(商品名U-4100)を用いて、波長範囲380nm~780nmで、前記各実施例または比較例の光拡散フィルムの透過率スペクトルを測定し、視感透過率Yの自動算出を行った。また、透明プラスチックフィルム基材のみ(光拡散層および中間層を形成せず)に対し、同様に透過率スペクトルを測定し、視感透過率Yの自動算出を行った。透明プラスチックフィルム基材のみの視感透過率YをY1とし、前記各実施例または比較例の光拡散フィルムの視感透過率YをY2として、下記数式に基づき視感透過率損失率を算出した。
視感透過率損失率(%)=(Y1-Y2)/Y1×100
【0131】
[全体ヘイズ]
JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、商品名「HM-150」)を用いて測定した。
【0132】
以上のとおり測定した前記各実施例および比較例の光拡散フィルムの特性を、下記表1に示す。なお、下記表1において、平均凹凸間距離Smの単位はmm、スキューネスRskは無単位、十点平均表面荒さRzの単位はμm、全体ヘイズの単位は%である。
【0133】
【0134】
表1に示したとおり、実施例1~10の光拡散フィルムは、0.110≦SmおよびRsk≦0.200を両方満たしていた。これに対し、比較例1~5の光拡散フィルムは、いずれも0.110≦Smを満たさなかった。比較例1~4の光拡散フィルムについては、Rsk≦0.200も満たしていなかった。また、比較例6の光拡散フィルムは、0.110≦Smを満たすがRsk≦0.200を満たしていなかった。
【0135】
実施例1~10の光拡散フィルムは、いずれも視感透過率損失率が3.0%以下であり、光透過率が高いことが確認できた。なお、実施例1~10の光拡散フィルムは、全体ヘイズ値が適度な大きさ(高さ)を有していたことから、実用に適した光拡散性を有していたことが確認された。
【0136】
これに対し、比較例1~6の光拡散フィルムは、いずれも視感透過率損失率が3.0%を超えており、光透過率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上、説明したとおり、本発明によれば、光拡散性と光透過率の両立が可能な光拡散フィルム、光拡散フィルムの製造方法、光学部材、画像表示装置用表示パネルおよび画像表示装置を提供することができる。本発明の用途は特に限定されず、広範な用途に使用可能であり、例えば、任意の画像表示装置に適用できる。
【0138】
この出願は、2019年4月3日に出願された日本出願特願2019-071238を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0139】
10 光拡散フィルム
11 透明基材(A)
12 光拡散層(B)
12a 樹脂層
12b 粒子
12c チキソトロピー付与剤