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特許7535038コア繊維をプリントするためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】コア繊維をプリントするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20240807BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240807BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240807BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240807BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240807BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240807BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/106
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021515140
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CA2019051338
(87)【国際公開番号】W WO2020056517
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】62/733,548
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517440553
【氏名又は名称】アスペクト バイオシステムズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ベイヤー
(72)【発明者】
【氏名】タマー モハメド
(72)【発明者】
【氏名】アナス ブソウル
(72)【発明者】
【氏名】ション パン
(72)【発明者】
【氏名】サム ワズワース
(72)【発明者】
【氏名】バレリオ ルッソ
(72)【発明者】
【氏名】スレシャ マハデバ
(72)【発明者】
【氏名】コンラード ウルス
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン ホー
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/197999(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106671408(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288414(US,A1)
【文献】特開2011-104807(JP,A)
【文献】特表2016-530874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B29C 48/00 - 48/96
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造を作製するためのプリントヘッドであって、
第1の直径を有する近位端及び第2の直径を有する遠位端を備える分注チャネルと、
前記分注チャネルの前記遠位端に配置された分注オリフィスと、
前記分注チャネルの前記近位端で前記分注チャネルと収束する第3の直径を有するコアチャネルであって、前記コアチャネルの前記第3の直径は前記分注チャネルの前記第1の直径及び前記第2の直径よりも小さい、前記コアチャネルと、
前記分注チャネルの前記近位端にある第1の流体集束交差点で前記コアチャネル及び前記分注チャネルと収束する第1のシェルチャネルであって、第1のシェルチャネルは、プリントヘッド内に配置された第1の流体集束チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数のサブチャネルを含み、そして第1の流体集束チャンバは、分注チャネルに向かって流体を集束するように構成された円錐台形状からなる、第1のシェルチャネルと、
前記第1の流体集束交差点と前記分注チャネルの前記遠位端との間に配置されたシース流体交差点で前記分注チャネルと収束するシース流チャネルであって、前記シース流チャネルは、シース流体チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数のシース流サブチャンネルを含み、シース流体チャンバは、分注チャネルに向かって流体を集中させるように構成された円錐台形状を含み、前記第2の直径は、シース流体チャンバの出口における円錐台形状の最小直径に等しい、シース流チャネルと
前記分注チャネルの直径は前記第1の直径から前記第2の直径に増大する、前記シース流チャネルと、
を備え、
前記コアチャネル、前記第1のシェルチャネル、及び前記シース流チャネルは、前記分注チャネルと流体連通している、
前記プリントヘッド。
【請求項2】
前記プリントヘッドは、前記少なくとも1本のコアチャネルを通して非架橋性材料を分注するように構成される、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1の流体集束交差点から前記シース流体交差点までの前記分注チャネルの前記第1の直径は、前記第1の流体集束交差点の直径とほぼ同一である、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記第1の直径は、前記第1の流体集束チャンバの出口における前記円錐台の最小直径とほぼ同一である、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記第1の流体集束交差点と前記シース流体交差点との間に配置された第2の流体集束交差点で前記分注チャネルと収束する第2のシェルチャネルをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
前記シース流チャネルは、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、
前記プリントヘッドは、前記シース流チャネルを通してシース流体を分注するように構成されることが好ましい、請求項1~5のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記シース流体は、化学架橋剤を含む、請求項6に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記プリントヘッドは、少なくとも2本のコアサブチャネルを備え、これらは収束して前記第3の直径を有する第1の流体集束入口を形成する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記第1のコアサブ-チャネルは、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、
前記第2のコアサブ-チャネルは、緩衝液投入オリフィス及び制御バルブを備える、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記第1のシェルチャネルは、前記コアチャネルの遠位端の周りに同心円状に配置される、請求項2~7のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記コアチャネルの前記遠位端は、前記プリントヘッドの前記第1のシェルチャネル内に配置された管を備える、請求項10に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
繊維構造を作製するためのシステムであって、
請求項1~11のいずれか1項に記載のプリントヘッドと、
3D空間内で前記プリントヘッドの前記分注オリフィスの位置を決定するための位置決め構成要素であって、前記プリントヘッドに動作可能に接続された、前記位置決め構成要素とを備え、ここで、前記システムは、プリントヘッドと流体連通する1つ以上の流体リザーバと、位置決め部材を制御し、プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能な制御プロセッサとをさらに備える、前記システム。
【請求項13】
前記プリントヘッドから分注された過剰流体を除去するように構成された流体除去構成要素をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記流体除去構成要素は、前記過剰流体の通過を可能にするように構成された多孔質膜を含む、あるいは吸収性材料を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記流体除去構成要素は、前記過剰流体を吸引するように構成された真空を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記プリントヘッドを通る前記1つ以上の流体の前記流量を調整するように構成された圧力制御構成要素をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
中空繊維構造を生成するための方法であって、
繊維構造を作製するためのシステムを提供することであって、
前記システムは、
請求項1~11のいずれか1項に記載のプリントヘッドであって、前記コアチャネルを通して非架橋性材料を分注し、前記第1のシェルチャネルを通して第1の投入材料を分注し、前記シース流チャネルを通してシース液を分注するように構成された前記プリントヘッドと、
前記プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受け取る受け面と、
3D空間内で前記プリントヘッドの前記分注オリフィスの位置を決定するための位置決め構成要素であって、前記プリントヘッドに動作可能に接続された前記位置決め構成要素と、
前記位置決め構成要素を制御するため、及び前記プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能制御プロセッサと、
緩衝液を含む第1の流体リザーバと、
架橋性材料液を含む第2の流体リザーバと、
シース液を含む第3の流体リザーバと、
を備え、
前記流体リザーバは、前記プリントヘッドと流体連通しており;
該方法が、緩衝液および/またはシース流体をコアチャネルを通して、架橋性材料液を含む1つ又は複数の入力材料を1つまたは複数のシェルチャネルを通して、そしてシース流体をシース流チャネルを通して同時に分注することを含み、固化した中空繊維構造を生成することと、
前記固化した中空繊維構造を前記プリントヘッドの前記分注オリフィスから分注することと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記分注チャネル内で、前記架橋性材料液と前記シース流体を接触させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プログラム可能制御プロセッサを、プリントする平面構造でエンコードし;そして
前記受け面に前記固化中空繊維構造の第1の層を堆積させて、前記平面構造をプリントすること
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プログラム可能制御プロセッサを、プリントする3D構造でエンコードし、そして
前記平面構造の上部に前記固化中空繊維構造の後続層を堆積させて、3D構造をプリントすることと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記コアチャネル内の前記非架橋性材料は緩衝液を含み、前記シース流チャネル内の前記シース流体は化学架橋剤を含み、
前記シース流体交差点で前記接触が起こり、前記分注チャネル内で前記1つ又は複数の入力材料の前記架橋性材料の流れの外面を固化させる、請求項120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記コアチャネル内の前記非架橋性材料は化学架橋剤を含み、前記シース流チャネル内の前記シース流体は水性溶媒を含み、
前記第1の流体集束交差点で前記接触が起こり、前記分注チャネル内で前記1つ又は複数の入力材料の前記架橋性材料の流れの内面を固化させる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記コアチャネル内の前記非架橋性材料は化学架橋剤を含み、前記シース流チャネル内の前記シース流体は化学架橋剤を含み、
前記第1の流体集束交差点で前記接触が起こり、前記1つ又は複数の入力材料の前記架橋性材料の流れの内面を固化させ、前記シース流体交差点で接触が起こり、前記分注チャネル内で前記架橋性材料の流れの外面を固化させる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
繊維構造を生成するための方法であって、該方法は以下の:
繊維構造を生成するためのシステムであって、以下の:
請求項1~11のいずれか一項に記載のプリントヘッドであって、該プリントヘッドが、コアチャネルを通して架橋性材料を、第1のシェルチャネルを通して第1の入力材料を、そしてシース流チャネルを通してシース流体を分注するように構成されている、プリントヘッド;
プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受けるための受け面;
前記プリントヘッドの分注オリフィスを、3次元空間内に位置決めするための位置決め部品であって、該位置決め部品が該プリントヘッドに動作可能に結合されている、位置決め部品;及び
位置決め部品を制御し、プリントヘッドを通る1つまたは複数の流体の流量を制御するためのプログラム可能な制御プロセッサ
を備えるシステムを提供することを含み、ここで前記方法は
(i)コアチャネルを通して架橋性材料を分注する工程;
(ii)シェルチャネルを通して架橋性材料を分注する工程であって、コアチャネル中の架橋性材料は、シェルチャネル中の架橋性材料と同じであるか、または異なる、前記分注する工程;
(iii)固体のコア-シェル繊維を形成するように、シースチャネルを通してシース流体を分注する工程;および
(iv)固化した繊維構造をプリントヘッドの分注オリフィスから分注する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/733,548号の出願日の優先権利益を主張し、その出願の開示は、その全てを参照することにより本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、中実または中空コア繊維構造を作製するためのシステム及び方法、並びにデジタルファイルからのこのような構造の3次元(3D)プリントに関する。いくつかの実施形態では、プリントされる繊維は生細胞を含む。
【背景技術】
【0003】
組織工学の技術は、無数の材料及び方法を使用して、生体の器官及び組織を模倣及び/または置き換えることができる実行可能な合成構造を作製することを長い間追求してきた。事前にパターン形成された血管系の欠如は、現在の生体組織工学戦略の成功を制限する主な要因のうちの1つであり、宿主組織と統合できる内在性の人工血管系または栄養導管を含む厚い組織構築物を作製する能力が現在ないことは、より大きく、生存可能であり、及び/または代謝的に活性である組織を生成すること及び/または移植することを妨げる主な技術的障害物である。
【0004】
積層造形の一形態である3Dプリントは、デジタルファイルから直接三次元オブジェクトを作成するために適用されており、オブジェクトは、層ごとに構築され、所望の三次元構造が実現する。これらの3Dプリント技法を中空脈管パターン形成に適応させるための初期の取り組みでは、主にプリント及びその後の犠牲材料の除去に集中してきた。例えばBertassoniらは、gelMAなどの光架橋アクリル化ヒドロゲルの周囲のキャストから、テンプレート化されたアガロースを除去する物理的方法を使用した(Lab Chip 14:2202(2014))。プリントされたアガロース繊維のGelMAへの結合は最小限であったが、残念なことに手動で除去する必要があり、これは時間がかかり、困難であり、またキャストのヒドロゲルがアガロース繊維よりも強固である必要がある。
【0005】
代替的な手法は、可溶化または液化により後で除去することができる材料から犠牲繊維のネットワークをプリントすることを含む。例えばWuらは、プルロニックF127-ジアクリレートゲルリザーバ内に犠牲プルロニックF127フィラメントを押し出すことで、3D灌流可能血管樹をプリントして、プリント中の支援を行った(Adv Mater. 2011;23:H178-183)。周囲のアクリレート変性プルロニックF127-ジアクリレートを光硬化した後、温度をプルロニックF127の臨界ミセル温度より低くすることにより、非変性プルロニックF127導管を液化して、灌流可能な導管を残すことができる。同様の手法で、Leeらは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含むゼラチンの周りに、コラーゲン支持マトリックスの層を堆積させた(Biomaterials. 2014;35:8092-8102)。プリント後、ゼラチンは溶けて、周りのコラーゲンへのHUVECの細胞播種を「活性化」するのに役立った。Millerらが犠牲材料として採用した「炭水化物ガラス」を含む他の様々な犠牲材料もプリントされており、その後の中空ネットワークの灌流が示されている(Nat Mater. 2012;11:768-774)。
【0006】
しかし、これまでのところ、プルロニックF127は、その低温液化特性により最も一般的に使用される犠牲材料となり、Koleskyらは、これを様々な支持材料と共に使用して、厚い血管化組織構築物を作成することに成功した。(Adv Mater. 2014;26:3124-3130)(co-printing channel structures of Pluronic F127 and cell-loaded gelatin-methacrylate (GelMA);Proc Natl Acad Sci U S A. 2016;113:3179-3184)(トロンビンと混合したプルロニックF127は、細胞搭載ゼラチン-フィブリノゲンバイオインク内で犠牲導管の間接プリント用の「血管インク」に指定された)。しかし、特にプルロニックF127などの犠牲材料は、高濃度で細胞毒性があり、液化したプルロニックは中空導管から完全に除去される可能性が低く、液化したプルロニックが組織の周囲領域に与える影響は不明である。
【0007】
犠牲中空繊維パターン形成のより最近の代替案では、レーザー光の集束ビームを使用して、成形済み(またはプリント済み)組織構造内の領域が熱焼灼される。レーザービームが移動すると中空トンネルが残り、本技法は比較的高速であり得、分岐した中空管を高解像度の3Dでパターン形成でき、直径10~20umの毛細血管までパターン形成できる可能性がある。ビームの侵入深度は、2光子レーザー光を使用することにより増加され得、これは、集束光の外側の強度を低減するのにも役立ち、よって焼灼される導管の外側領域への光毒性が低減される。
【0008】
より大きい組織内の中空管の直接バイオプリントも試みられた。例えばGaoらは、同軸針を使用して、アルギン酸繊維のコアに塩化カルシウム架橋溶液を用いて中空のアルギン酸繊維を生成しプリントすることができることを実証した。プリントノズルは、カルシウム溶液の内部流並びにアルギン酸塩溶液(すなわちバイオインク)の外部流により、内在性の灌流可能なマイクロ導管を有する構造を作成するように構成された。この手法では、中空マイクロ導管はステージ上にプリントされ、ステージはカルシウム浴液の中へ徐々に下降して、二次架橋が行われた。(Biomaterials. 2015;61:203-215.)。Hintonらにより液体浸水プリントの代替案が開発され、様々なヒドロゲルを使用して、架橋を容易にする犠牲ゼラチン微粒子浴で支持された直接構造プリントを行う押出方法が採用された。(Sci Adv. 2015;1:e1500758)。
【0009】
しかし残念なことに、中空繊維ネットワークの従来の3Dバイオプリントに使用される上記のシステム、デバイス、及び材料は、それらのより実践的かつ効果的かつ広範囲にわたる実施を妨げる多くの欠点に苛まれている。上記の犠牲物質の手動(物理的)除去は、非実用的で、一貫性がなく、時間がかかり、小さい脈管では恐らく不可能である。さらに、犠牲材料により血管をパターン形成することは、中空導管を取り囲む軸状に細胞及び/または生体材料をパターン形成する能力を制限する。この技法を使用して、例えば、内皮細胞の内層を取り囲む平滑筋細胞を有する本物の細動脈の構造を模倣するパターン形成された導管ネットワークを作製する様子を想像することは困難である。
【0010】
レーザー焼灼では、侵入深度はわずか1~2mmに制限され、ビームを散乱しない光学的に透明な材料が必要であるが、ほとんどの細胞化組織は、不透明であり光を散乱する。最後に、犠牲材料の押出プリントでは、犠牲繊維の直径(及びその後の導管の内径)は、押出針の直径により決定される。この直径は固定であるため、組織の様々な領域で導管の管腔直径を動的に変更する機会はない。
【0011】
よって、血管形成促進バイオインク及び様々なタイプの細胞を中空導管に対し軸方向かつ平行に正確に配置することで、3D組織内に中空導管を分注しパターン化することができるシステム及びデバイスが求められている。求められる技術は、細胞の生存能力と適合する必要があり、プリントされる導管の内径は、単一の組織構築物内で毛細血管から大きな脈管に至るまで動的に変更可能でなくてはならない。例えば、灌流デバイスが取り付けられた組織の開口部では直径の大きい脈管を有し、次に組織の内側では管腔直径を縮小して小さい脈管をモデル化することが、望ましくあり得る。脈管直径の変更はまた、アテローム性動脈硬化症などの疾患において、流れの変化及び制限を調整するための有用なツールとなり得る。本発明は、これら及び他の満たされていないニーズに対処する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の態様は、中実または中空繊維構造を作製するため、及びデジタルファイルから3次元(3D)構造を作製するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態では、プリントされる繊維は生細胞を含む。本明細書で初めて実証されるコアシェル手法を使用した中空繊維の直接プリントは、様々な直径並びに複数のシェルを有する中空繊維を生成することができ、様々なシェルに様々なタイプの細胞を軸方向及び平行に正確に配置して搭載することで、複数の細胞層を有する中空脈管を生成することができる。さらに、脈管壁の組成(細胞タイプ及び生体材料組成)は、連続的にプリントを行いながら、導管の長さに沿って変更することができる。
【0013】
本発明の態様は、繊維構造を作製するためのプリントヘッドを含み、プリントヘッドは、第1の直径を有する近位端及び第2の直径を有する遠位端を備える分注チャネルと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束する第3の直径のコアチャネルであって、コアチャネルの第3の直径は分注チャネルの第1の直径及び第2の直径よりも小さい、当該コアチャネルと、分注チャネルの近位端にある第1の流体集束交差点でコアチャネル及び分注チャネルと収束する第1のシェルチャネルと、第1の流体集束交差点と分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差点で分注チャネルと収束するシース流チャネルであって、シース流体交差点で分注チャネルの直径は当該第1の直径から当該第2の直径に増大する、当該シース流チャネルと、を備え、コアチャネル、第1のシェルチャネル、及びシース流チャネルは、分注チャネルと流体連通している。
【0014】
好ましい実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネルを通して非架橋性材料を分注するように構成される。代替的な実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネルを通して架橋性材料を分注して、中実繊維を作成するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネルは、プリントヘッド内に配置された第1の流体集束チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数(例えば2、3、4本以上)の第1のシェルサブチャネルを備える。一実施形態では、第1の流体集束交差点からシース流体交差点までの分注チャネルの第1の直径は、第1の流体集束交差点の直径とほぼ同一である。好ましい実施形態では、第1の流体集束チャンバは、分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有し、第1の直径は、第1の流体集束チャンバの出口における円錐台の最小直径とほぼ同一である。
【0016】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドはさらに、第1の流体集束交差点とシース流体交差点との間に配置された第2の流体集束交差点で分注チャネルと収束する第2のシェルチャネルを少なくとも備える。いくつかの実施形態では、第2のシェルチャネルは、第2の流体集束チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数の第2のシェルサブチャネルを備える。好ましい実施形態では、第2の流体集束チャンバは、分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有し、第1の直径は、第2の流体集束チャンバの出口における円錐台の最小直径とほぼ同一である。
【0017】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドはさらに、第2の流体集束交差点とシース流体交差点との間に配置された第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束交差点で分注チャネルと収束する第3、第4、第5、及び/または第6のシェルチャネルを備える。いくつかの実施形態では、第3、第4、第5、及び/または第6のシェルチャネルはそれぞれ、第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数のサブチャネルを備える。好ましい実施形態では、第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束チャンバは、分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有し、第1の直径は、チャンバの出口における円錐台の最小直径と等しい。
【0018】
いくつかの実施形態では、シース流チャネルは、シース流体チャンバを介して分注チャネルに向かって収束する複数のシース流サブチャネルを備える。一実施形態では、シース流体交差点から分注オリフィスまでの分注チャネルの第2の直径は、シース流体チャンバの直径とほぼ同一である。好ましい実施形態では、シース流体チャンバは、分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有し、第2の直径は、チャンバの出口における円錐台の最小直径と等しい。
【0019】
一実施形態では、シース流チャネルは、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、プリントヘッドはシース流チャネルを通してシース流体を分注するように構成されることが好ましい。いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒を含む。
【0020】
一実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも2本のコアサブチャネルを備え、これらは収束して第3の直径を有する流体集束入口を形成する。例示的な実施形態では、第1のコアサブチャネルは、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、第2のコアサブチャネルは、緩衝液投入オリフィス及び制御バルブを備える。
【0021】
一実施形態では、第1のシェルチャネルは、コアチャネルの周りに同心円状に配置される。例示的な実施形態では、コアチャネルの遠位端は、プリントヘッドの第1のシェルチャネル内に配置された管(例えばプラスチック製、ガラス製、または金属製)を備える。いくつかの実施形態では、コアチャネルの遠位端は、第1のシェルチャネルの一部に適合するように構成された外部と、コアチャネルと整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)とを有する管を備える。
【0022】
別の実施形態では、本発明のプリントヘッドは、第1の直径を有する近位端及び第2の直径を有する遠位端を備える分注チャネルと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束する第3の直径のコアチャネルであって、コアチャネルの第3の直径は分注チャネルの第1の直径及び第2の直径よりも小さい、当該コアチャネルと、コアチャネルの遠位端の周りに同心円状に配置されたシェルチャネルであって、分注チャネルの近位端にある流体集束チャンバでコアチャネル及び分注チャネルと収束する当該シェルチャネルと、シース流体チャンバで分注チャネルと収束する複数のシース流サブチャネルを備えるシース流チャネルであって、分注チャネルの直径は、シース流体チャンバで当該第1の直径から当該第2の直径に増大する、当該シース流チャネルと、を備え、コアチャネル、第1のシェルチャネル、及びシース流チャネルは、分注チャネルと流体連通している。例示的な実施形態では、コアチャネルの遠位端は、プリントヘッドの第1のシェルチャネル内に配置された管を備える。
【0023】
好ましい実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネルを通して非架橋性材料を分注するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドはさらに、分注チャネルの一部に適合するように構成された外部と、分注チャネルと整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)とを有する管を含む延長先端部を備える。
【0025】
例示的な一実施形態では、第3の直径は、約0.1~2mmであり、より好ましくは約0.4~1.0mmであり、最も好ましくは約0.7mmである。例示的な実施形態では、第1の直径は、約0.2~3mmであり、より好ましくは約1~2mmであり、最も好ましくは約1.5mmである。例示的な実施形態では、分注チャネルの第2の直径は、約0.3~3.5mmであり、より好ましくは約1.5~2.5mmであり、最も好ましくは約2mmである。従って、例示的な一実施形態では、直径は、流体集束入口での約0.7mmから、分注チャネルの近位端での約1.5mm、そして分注チャネルの遠位端での約2.0mmまで、徐々に増大する。
【0026】
別の例示的な実施形態では、第3の直径は、約0.4~1mmであり、より好ましくは約0.6~0.8mmであり、最も好ましくは約0.7mmである。例示的な実施形態では、第1の直径は、約1~2mmであり、より好ましくは約1.3~1.7mmであり、最も好ましくは約1.5mmである。例示的な実施形態では、分注チャネルの第2の直径は、約1.5~2.5mmであり、より好ましくは約1.8~2.2mmであり、最も好ましくは約2mmである。従って、例示的な一実施形態では、直径は、流体集束入口での約0.7mmから、分注チャネルの近位端での約1.5mm、そして分注チャネルの遠位端での約2.0mmまで、徐々に増大する。
【0027】
本発明の態様は繊維構造を作製するためのシステムを含み、システムは、第1の直径を有する近位端及び第2の直径を有する遠位端を含む分注チャネルを備えるプリントヘッドと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束する第3の直径のコアチャネルであって、コアチャネルの第3の直径は分注チャネルの第1の直径及び第2の直径よりも小さい、当該コアチャネルと、分注チャネルの近位端にある第1の流体集束交差点でコアチャネル及び分注チャネルと収束する第1のシェルチャネルと、第1の流体集束交差点と分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差点で分注チャネルと収束するシース流チャネルであって、シース流体交差点で分注チャネルの直径は当該第1の直径から当該第2の直径に増大する、当該シース流チャネルと、を備え、コアチャネル、第1のシェルチャネル、及びシース流チャネルは、分注チャネルと流体連通している。
【0028】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネルを通して非架橋性材料を分注するように構成され、受け面は、プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受け取り、位置決め構成要素は、3D空間内でプリントヘッドの分注オリフィスの位置を決定し、位置決め構成要素は、プリントヘッドに動作可能に接続される。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、位置決め構成要素を制御するため、及びプリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能制御プロセッサを備える。いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドから分注された過剰流体を除去するように構成された流体除去構成要素を備える。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、過剰流体の通過を可能にするように構成された多孔質膜を含む。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、吸収性材料を含む。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、過剰流体を吸引するように構成された真空を含む。いくつかの実施形態では、真空は、受け面の下に適用される。いくつかの実施形態では、真空は、受け面の上に適用される。いくつかの実施形態では、真空は、プリントヘッド上の1本以上の真空チャネルを介して適用される。いくつかの実施形態では、1本以上の真空チャネルは、プリントヘッド上の分注オリフィス近くに配置される。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を調整するように構成された圧力制御構成要素を備える。いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドと流体連通している1つ以上の流体リザーバを備える。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、シース液を含む。いくつかの実施形態では、シース液は、投入材料を固化するように構成された架橋液を含む。いくつかの実施形態では、架橋液は、二価カチオンを含む。いくつかの実施形態では、二価カチオンはCa++である。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、投入材料との混和性を有する。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、投入材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、架橋性材料、例えばヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはアルギン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩は、解重合されたアルギン酸塩である。いくつかの実施形態では、投入材料は、1つ以上の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、細胞外基質材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、活性剤を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネルを通る一定の質量流量を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、システムはさらに、架橋構成要素を備える。いくつかの実施形態では、架橋構成要素は、UVランプを備える。いくつかの実施形態では、架橋構成要素は、分注オリフィスに隣接して配置される。
【0032】
本発明の態様は、固化繊維構造を生成するための方法を含み、方法は、繊維構造を作製するためのシステムを提供することを含み、システムは、第1の直径を有する近位端及び第2の直径を有する遠位端を含む分注チャネルを備えるプリントヘッドと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束する第3の直径のコアチャネルであって、コアチャネルの第3の直径は分注チャネルの第1の直径及び第2の直径よりも小さい、当該コアチャネルと、分注チャネルの近位端にある第1の流体集束交差点でコアチャネル及び分注チャネルと収束する第1のシェルチャネルと、第1の流体集束交差点と分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差点で分注チャネルと収束するシース流チャネルであって、シース流体交差点で分注チャネルの直径は当該第1の直径から当該第2の直径に増大する、当該シース流チャネルと、を備え、コアチャネル、第1のシェルチャネル、及びシース流チャネルは、分注チャネルと流体連通している。
【0033】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネルを通して非架橋性材料を分注するように構成され、受け面は、プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受け取り、位置決め構成要素は、3D空間内でプリントヘッドの分注オリフィスの位置を決定し、位置決め構成要素は、プリントヘッドに動作可能に接続され、プログラム可能制御プロセッサは、位置決め構成要素を制御し、並びにプリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御し、第1の流体リザーバは第1の投入材料を含み、第2の流体リザーバは緩衝液を含み、第3の流体リザーバはシース液を含み、シース液は架橋液を含み、流体リザーバはプリントヘッドと流体連通しており、第1の投入材料は分注チャネルに通され、第1の投入材料は架橋成分により架橋されて、固化繊維構造が生成され、固化繊維構造はプリントヘッドの分注オリフィスから分注される。
【0034】
好ましい実施形態では、方法は、プリントされる繊維内に中空コアを形成するために、コアチャネルを通して緩衝液及び/またはシース流体を、1本以上のシェルチャネルを通して1つ以上の投入材料を、シース流チャネルを通してシース流体を、同時に分注することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は緩衝液を含み、シース流チャネル内のシース流体は化学架橋剤を含み、シース流体交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0036】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル内のシース流体は水性溶媒を含み、第1の流体集束交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化する。
【0037】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル内のシース流体は化学架橋剤を含み、第1の流体集束交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化し、シース流体交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、プログラム可能制御プロセッサを、プリントする平面構造で符号化することと、受け面上に固化繊維構造の第1の層を堆積させて、平面構造をプリントすることと、を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、プログラム可能制御プロセッサを、プリントする3D構造で符号化することと、平面構造の上部に固化繊維構造の後続層を堆積させて、3D構造をプリントすることと、を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、第2の投入材料を含む第4の流体リザーバを備え、方法は、第2の投入材料を含む固化繊維構造を生成することを含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、第1の投入材料及び第2の投入材料を同時に分注して、第1の投入材料及び第2の投入材料の混合物を含む固化繊維構造を生成することを含む。
【0041】
代替的な実施形態では、中実コアシェル繊維は、コアチャネル及びシェルチャネルのそれぞれにおいて同一の架橋性材料または異なる架橋性材料を使用して、作成され得る。前者の実施形態では、架橋剤は拡散によりコア材料を架橋し得、例えばアルギン酸ヒドロゲルは1つ以上の架橋剤により架橋され、あるいは光の存在下で架橋され得る。後者の実施形態では、コアチャネルは、プリントヘッドから分注された後しばらくして固化し得る架橋性材料を含み、一方シェルチャネルは、プリント時に固化する別の架橋性材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明のプリントヘッド設計の水平方向の実施形態における流れパターンの例示である。
図2】本発明のプリントヘッド設計の水平方向の実施形態におけるマイクロ流体経路の主要な構成要素を例示して識別する。
図3】本発明のプリントヘッド設計の垂直方向の実施形態における流れパターンの例示である。
図4】本発明のプリントヘッド設計の垂直方向の実施形態におけるマイクロ流体経路の主要な構成要素を例示して識別する。
図5】本発明のプリントヘッド設計の代替的な水平方向の実施形態における流れパターンの例示である。
図6】本発明のプリントヘッド設計の代替的な実施形態におけるマイクロ流体経路の主要な構成要素を例示して識別する。
図7】複数のシェルチャネルを備える本発明のプリントヘッド設計の代替的な垂直方向の実施形態における流れパターンの例示である。
図8】複数のシェルチャネルを備える本発明のプリントヘッド設計の代替的な垂直方向の実施形態におけるマイクロ流体経路の主要な構成要素を例示して識別する。
図9】組み込まれたコアシェルチャネルを備える本発明のプリントヘッド設計の代替的な垂直方向の実施形態におけるマイクロ流体経路の主要な構成要素を例示して識別する。
図10】組み込まれたコアシェルチャネルを備える本発明のプリントヘッド設計の分解図を例示する。
図11A】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中空繊維を例示し、マンドレルに巻き付けられた中空繊維を例示する。
図11B】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中空繊維を例示し、マンドレルに巻き付けられた流体充填状態の中空繊維を例示する。
図11C】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中空繊維を例示し、プリントされた中空繊維の端面図である。
図11D】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中空繊維を例示し、単一の連続中空繊維を使用してプリントされた大きな構造であって、構造のシェルは透明であり、コアは着色された溶液で充填されている構造を例示する。
図11E】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中空繊維の顕微鏡画像である。
図11F】本明細書に説明される方法、組成、及び/またはデバイスの実施形態により作製された中実繊維の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の態様は、繊維構造を作製するため、及びデジタルファイルから3次元(3D)構造を作製するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態では、プリントされる繊維は生細胞を含む。
【0044】
定義
本明細書を解釈する目的において、下記の定義が適用され、適当と認められる場合は、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に援用されるいずれかの文献と矛盾する場合には、下記に記載される定義が優先されるものとする。
【0045】
本明細書で使用される用語「変位」は、第1の材料または流体が第2の材料または流体を所与の位置から移動させる能力を指す。例えば、いくつかの実施形態では、緩衝液は、投入材料を分注チャネル内の位置から(例えば分注チャネルの近位端から)変位させるように構成される。いくつかの実施形態では、変位は、約1秒未満、例えば約900、800、700、600、500、400、300、200、または100ミリ秒以下で起こる瞬間的な変位である。
【0046】
本明細書で使用される用語「混和性」は、2つの異なる液体が、組み合わされた時に均質な混合物を形成する能力を指す。
【0047】
本明細書で使用される用語「質量流量」は、単位時間当たりに所与の位置を通過する物質の質量を指す。本明細書で使用される用語「一定の質量流量」は、単位時間あたり一定のままである質量流量を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「固化」は、堆積時にその形状忠実度及び構造的完全性を維持する材料の固体状態または半固体状態を指す。本明細書で使用される用語「形状忠実度」は、材料が、著しく広がることなくその三次元形状を維持する能力を意味する。いくつかの実施形態では、固化材料は、約30秒以上、例えば約1、10、または30分以上、例えば約1、10、24、または48時間以上の期間にわたり、その三次元形状を維持する能力を有するものである。本明細書で使用される用語「構造的完全性」は、材料が、破損または屈曲に抵抗しながら、自重を含む荷重下で結合状態を保つ能力を意味する。
【0049】
いくつかの実施形態では、固化組成物は、約5、10、15、20、または25キロパスカル(kPa)より大きい、より好ましくは約30、40、50、60、70、80、または90kPaより大きい、さらにより好ましくは約100、110、120、または130kPaより大きい弾性率を有するものである。好ましい弾性率の範囲には、約5、10、15、20、25、または50Paから、約80、100、120、または140kPaまでが含まれる。本発明によれば、投入材料の弾性率は、投入材料の意図する機能に応じて、有利に変化させることができる。いくつかの実施形態では、細胞の成長及び移動を支援するために、より低い弾性率が使用され、他の実施形態では、はるかに高い弾性率が使用され得る。
【0050】
本明細書で使用される用語「天然アルギン酸塩ポリマー」は、1つ以上の天然源(例えば1つ以上の種の褐色海藻また海草)から単離され精製されたアルギン酸塩ポリマーを指す。
【0051】
本明細書で使用される用語「解重合」は、ポリマー鎖をモノマーまたは他のより小さな単位に分解することを指す。
【0052】
本明細書で使用される用語「ヒドロゲル」は、水と、親水性であるポリマー鎖のネットワークまたは格子を含む組成物とを指す。
【0053】
本明細書で使用される用語「シース流体」または「シース液」は、材料が流体チャネルを通過する時に材料を包むまたは「シース」するために少なくとも部分的に使用される流体を指す。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒、例えば水またはグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。架橋剤の非限定的な例には、二価カチオン(例えばCa2+、Ba2+、Sr2+など)、トロンビン、及び重曹などのpH修飾化学物質が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される用語「過剰シース流体」は、分注オリフィスから分注されたシース流体の一部であって、本明細書で提供されるシステムまたは方法の1つ以上の実施形態を使用してプリントされる繊維構造の一部を形成しない当該シース流体の一部を指す。例えば、過剰シース流体は、プリントヘッドの分注チャネルを通って分注オリフィスを通る材料(例えばヒドロゲル)の通過を潤滑化するのに有用であり得る。過剰シース流体は、分注オリフィスから分注されると、分注された材料の層の表面から受け面上に流出し得、受け面上に集まり得る、すなわち溜まり得る。
【0055】
本明細書で使用される用語「チャネル長」は、流体チャネルを第1の位置から第2の位置まで追跡する時に移動した直線距離を指す。
【0056】
本明細書で使用される用語「収束角度」は、収束する2本の流体チャネルの間に形成される角度を指す。
【0057】
プリントヘッド
本発明の態様は、1つ以上の中空繊維構造を作製するために使用することができるプリントヘッドを含む。本発明の実施形態によるプリントヘッドは、共通のハウジングまたはエンクロージャ内に複数の相互接続された流体チャネルを備え、1つ以上の投入材料を含む中空繊維構造を作製するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、固化した中空繊維構造を作製するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、生細胞を含む固化した中空繊維構造を作製するように構成される。
【0058】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、遠位端及び近位端を有する分注チャネルを備える。本発明の実施形態による分注チャネルは、約1mm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95mmのチャネル長を有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、分注チャネルは、分注オリフィスを備える。いくつかの実施形態では、分注オリフィスは、分注チャネルの遠位端に配置されている。本発明の実施形態による分注オリフィスは、約10μm~約5mmの範囲の直径、例えば約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100μm、あるいは例えば約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、または950μmの直径を有し得る。本発明の実施形態による分注オリフィスは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドはさらに、プリントヘッドから材料を分注するためのオリフィスを有する延長先端部を備える。このような延長先端部により、例えばマルチウェルプレート(例えば6、24、または96個以上のウェルを有する標準的なマイクロタイタープレート、マルチウェルプレート、またはマイクロプレート)内のウェル、またはペトリ皿などの限定領域における材料の正確な分注及びその堆積が容易となる。いくつかの実施形態では、延長先端部は、分注チャネルの一部に適合するように構成された外部と、分注チャネルと整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)とを有する管(例えばプラスチック製、ガラス製、または金属製)を備える。延長先端部は、分注チャネル内に挿入することができ、これにより分注チャネルの長さを延長して、ウェルプレートインサートまたはペトリ皿などの限定空間に、延長先端部のオリフィスから分注された材料を堆積させることが容易となる。
【0061】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、1本以上のコアチャネルを備える。特定の実施形態では、1本以上のコアチャネルは、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束する。いくつかの実施形態では、コアチャネルは、分注チャネルと、約0~180度の範囲の収束角度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175度の収束度で収束する。本発明の実施形態によるコアチャネルは、任意の好適なチャネル長を有し得る。いくつかの実施形態では、コアチャネルは、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるコアチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態による材料チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも2本のコアサブチャネルを備え、これらは収束して第3の直径を有する第1の流体集束入口を形成する。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、3~10本の範囲の複数のコアサブチャネル、例えば4、5、6、7、8、または9本の材料チャネルを備える。本発明の実施形態によるコアチャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネル(複数可)を通して非架橋性材料を分注するように構成される。
【0063】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、少なくとも第1のシェルチャネルを備える。特定の実施形態では、第1のシェルチャネルは、第1の流体集束交差点にて、分注チャネルの近位端で、コアチャネル及び分注チャネルと収束する。いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネルは、分注チャネルと、約0~180度の範囲の収束角度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175度の収束角度で収束する。本発明の実施形態によるシェルチャネルは、任意の好適な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、シェルチャネルは、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるシェルチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態によるシェルチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。本発明の実施形態によるシェルチャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0064】
特定の実施形態では、第1のシェルチャネルは、コアチャネルの遠位端の周りに同心円状に配置される。図9及び図10に示されるように、例示的な実施形態では、コアチャネルの遠位端は、プリントヘッドの第1のシェルチャネル内に配置された管を備える。このような管に好適な材料には、金属(例えばステンレス鋼、真鍮、チタン、及びインコネル)、ガラス、融解シリカ、及びプラスチック(例えばポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が含まれる。いくつかの実施形態では、コアチャネルの遠位端は、第1のシェルチャネルの一部に適合するように構成された外部と、コアチャネルと整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)とを有する管を備える。
【0065】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、シース流チャネルを備える。特定の実施形態では、シース流チャネルは、第1の流体集束交差点と分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差点で、分注チャネルと収束する。いくつかの実施形態では、シース流チャネルは、分注チャネルと、約0~180度の範囲の収束角度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175度の収束角度で収束する。いくつかの実施形態では、分注チャネルの近位端とシース流体交差点との距離は、約10μm~約100mmの範囲であり、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。いくつかの実施形態では、分注チャネルの遠位端とシース流体交差点との距離は、約10μm~約100mmの範囲であり、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。
【0066】
本発明の実施形態によるシース流チャネルは、任意の好適な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、シース流チャネルは、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。いくつかの実施形態では、シース流チャネルは、2本以上のシース流サブチャネルを備える。いくつかの実施形態では、シース流チャネルは、3~10本の範囲、例えば4、5、6、7、8、または9本の複数のシース流サブチャネルに分岐する。いくつかの実施形態では、2本以上のシース流サブチャネルは、シース流体交差点で分注チャネルと収束する。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0067】
本発明の実施形態による流体チャネルは一般に、1つ以上の投入オリフィスを含み、これを通して流体はチャネル内へ導入され得る。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、流体チャネルを通る流体の流れを調節するように構成された制御バルブを備える。いくつかの実施形態では、投入オリフィスと制御バルブとの間のチャネル長は、約100μm~約100mmの範囲であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。いくつかの実施形態では、制御バルブと、チャネルが分注チャネルと収束する位置との間のチャネル長は、約100μm~約100mmの範囲であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。
【0068】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、任意の好適な材料から作製され得、これは、プラスチック(例えばポリマー材料)、ガラス、金属、セラミック、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、光(例えば紫外線(UV)光)に対して少なくとも部分的に透明である材料を含む。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、全体的に透明な材料でできている。特定の実施形態では、分注チャネルを囲む、または分注チャネルに直接隣接するプリントヘッドの部分は、部分的にまたは完全に光を透過する材料を含む。このようなプリントヘッドは、光エネルギーにより架橋されるように構成された投入材料(例えば光架橋性投入材料)と併せて使用され得る。
【0069】
本発明の態様は、投入材料を架橋するために、光架橋性投入材料を電磁放射にさらすように構成された光モジュールを含む。本発明の実施形態による光モジュールは、プリントヘッドに統合され得る、またはプリントシステムの別個の構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、光モジュールは、分注チャネル内に投入材料が存在する間に、投入材料を感光させる。いくつかの実施形態では、光モジュールは、分注チャネルから投入材料が分注された後に、投入材料を感光させる。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、複数の光モジュールを備え、第1の光モジュールは、分注チャネル内に投入材料が存在する間に、投入材料を感光させるように構成され、第2の光モジュールは、分注チャネルから投入材料が分注された後に、投入材料を感光させるように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態では、光モジュールは、波長、強度、感光時間、またはこれらの任意の組み合わせに関して調整可能である。いくつかの実施形態では、光モジュールは、任意で係合された1つ以上の減衰フィルタを備え、減衰フィルタは、係合されると光強度を調節する。いくつかの実施形態では、光モジュールはUV光を放射するように構成され、モジュールから放射される光の波長は、約10nm~約400nmの範囲であり、例えば約20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、または375nmである。いくつかの実施形態では、好適なUV光源には、非限定的な例として、UVランプ、UV蛍光ランプ、UV LED、UVレーザー、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0071】
上記で概説されたように、本発明の態様は、分注チャネルを備えるプリントヘッドを含み、1本以上の材料チャネル及び緩衝液チャネルは、分注チャネルの近位端にて収束する。主題のプリントヘッドは、プリントされる繊維に中空コアを形成するために、緩衝液及び/またはシース流体を、1つ以上の架橋性材料と同時に分注するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネルを通る一定の質量流量を維持するように構成される。このようにして、主題のプリントヘッドは、1つ以上の投入材料(または1つ以上の投入材料の混合物)並びに緩衝液及び/またはシース流体が、分注チャネルを通して円滑かつ連続的に流れることを促進するように構成される。
【0072】
上記で概説されたように、本発明の付加的な態様は、分注チャネルを備えたプリントヘッドを含み、1本以上のシース流チャネルは、第1の流体集束交差点と分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差点で、分注チャネルと収束する。主題のプリントヘッドの使用時、分注チャネルを流れる投入材料は、コアチャネルを流れるシース流体により内側から、並びにシース流チャネルを流れるシース流体により外側からの両方で架橋され得る。
【0073】
好ましい実施形態では、プリントヘッドは、近位端及び遠位端を有する分注チャネルと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの遠位端で分注チャネルと収束する2本のシェルチャネルであって、各シェルチャネルは、約30~60度、より好ましくは約40~50度、最も好ましくは約45度の収束角度を有する、当該2本のシェルチャネルと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束するコアチャネルであって、コアチャネルは0度の収束角度を有する、当該コアチャネルと、2本のシース流サブチャネルに分岐するシース流チャネルであって、シース流サブチャネルは、シース流体交差点で分注チャネルと収束し、約30~60度、より好ましくは約40~50度、最も好ましくは約45度の収束角度を有する、当該シース流チャネルと、を備える。
【0074】
別の好ましい実施形態では、プリントヘッドは、近位端及び遠位端を有する分注チャネルと、分注チャネルの遠位端に配置された分注オリフィスと、分注チャネルの遠位端で分注チャネルと収束する4本のシェルチャネルであって、各シェルチャネルは、約20~90度の収束角度を有する、当該4本のシェルチャネルと、分注チャネルの近位端で分注チャネルと収束するコアチャネルであって、コアチャネルは0度の収束角度を有する、当該コアチャネルと、2本のシース流サブチャネルに分岐するシース流チャネルであって、シース流サブチャネルは、シース流体交差点で分注チャネルと収束し、約30~60度、より好ましくは約40~50度、最も好ましくは約45度の収束角度を有する、当該シース流チャネルと、を備える。
【0075】
プリントシステム
本発明の態様は、主題の方法を実行するために主題のプリントヘッドと連動して作動するように構成されたプリントシステム及び関連構成要素を含む。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、本明細書で説明される単一のプリントヘッドを備える。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、複数のプリントヘッド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の本明細書で説明される個別のプリントヘッドを備える。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、プリントシステムから流体的に隔離され、従って、プリントプロセスに関わる全ての流体は、プリントヘッド内で隔離された状態に保たれ、プリントプロセス中にプリントシステムの受け面とのみ接触する(下記に説明)。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、プリントプロセスに関わる流体をプリントシステムの構成要素と接触させることなく、プリントシステムに動作可能に接続されるように構成される。いくつかの実施形態では、1つ以上のプリントヘッドは、プリントプロセスの前、間、及び/または後に、プリントシステムからの取り外し、及び/またはプリントシステムへの追加を行うことができる。従って、いくつかの実施形態では、主題のプリントヘッドは、主題のプリントシステムのモジュール式構成要素である。
【0076】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリントヘッドの分注オリフィスから分注された材料の第1の層が堆積される受け面を備える。いくつかの実施形態では、受け面は固体材料を含む。いくつかの実施形態では、受け面は多孔質材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、多孔質材料は、流体が多孔質材料を通過できるのに十分な多孔性を有する。いくつかの実施形態では、受け面は、略平面であり、これにより、分注された材料の第1の層を堆積させることができる平坦な表面が提供される。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントする三次元構造に対応する形状を有し、これにより、非平面の第1の層を有する三次元構造のプリントが容易になる。
【0077】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上の真空源から受け面に対し吸引を適用するように構成された真空構成要素を備える。いくつかの実施形態では、受け面は、受け面に対し吸引を適用するように構成された1本以上の真空チャネルを備える。いくつかの実施形態では、真空構成要素を備えた受け面は、プリントプロセスの実行の前、間、及び/または後に、受け面から過剰流体を吸引するように構成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、受け面は、細胞毒性のない表面であり、この上に、プリントシステムは1つ以上の繊維構造を分注する。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリンタステージを備える。いくつかの実施形態では、受け面は、プリンタステージの表面である。いくつかの実施形態では、受け面は、プリンタステージとは別個の構成要素であるが、プリンタステージに取り付けられた、またはプリンタステージにより支持された構成要素である。いくつかの実施形態では、受け面は、平坦またはほぼ平坦である。いくつかの実施形態では、受け面は、滑らかまたはほぼ滑らかである。いくつかの実施形態では、受け面は、ほぼ平坦かつほぼ滑らかである。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントされる構造の形状、サイズ、質感、または幾何学形態に対応するように構成される。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントされる構造のサイズ、形状、質感、または幾何学形態を制御する、またはこれらに影響を与える。
【0079】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上のモジュラー式構成要素を備え、これは、プリントシステムに動作可能に接続されるように構成されるが、プリントシステムから分離可能である。いくつかの実施形態では、受け面は、使い捨ての受け面である。いくつかの実施形態では、受け面は、滅菌用に構成される。いくつかの実施形態では、プリントシステムの流体経路全体が使い捨てであり、これは、プリントプロセスに関わる1つ以上の流体と接触するプリントシステムの全ての構成要素が使い捨てであり、プリントシステムから取り外して、清潔な構成要素と交換することができることを意味する。
【0080】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上の異なる受容容器に動作可能に結合されるように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、受け面は、円形の受容容器(例えばペトリ皿)に動作可能に結合されるサイズの円形部分を有する。いくつかの実施形態では、受け面は、正方形または長方形の受容容器(例えばマルチウェルプレート(例えば6ウェルプレート))に動作可能に結合されるサイズの正方形または長方形部分を有する。本発明の実施形態による受け面は、好適な受容容器を収容するために、任意の好適なサイズまたは幾何学形態を有することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、受け面の温度を調節するように構成された温度調節構成要素を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、受け面の温度を周囲温度に調整及び/または維持する。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、プリントヘッド、プリンタステージ、受け面、投入材料、及び/または流体(例えばシース液及び/または緩衝液)の温度を調整及び/または維持する。
【0082】
いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、加熱素子を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、ヒーターを備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、放射ヒーター、対流ヒーター、導電性ヒーター、ファンヒーター、熱交換器、またはこれらの任意の組み合わせを備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、冷却素子を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、冷却材、冷却液、氷、またはこれらの任意の組み合わせの容器を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、放射冷却器、対流冷却器、導電性冷却器、ファン冷却器、またはこれらの任意の組み合わせを備える。
【0083】
いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、約0~約90℃の範囲の設定点、例えば約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85℃に、温度を調整するように構成される。
【0084】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリンタステージに対して、またはプリント材料を受け取るように適合された受け面に対して、プリントヘッドを移動させることにより、特定の幾何学形態を実現する。別の実施形態では、プリントシステムは、プリントヘッドに対して、プリンタステージまたは受け面を移動させることにより、特定の幾何学形態を実現する。特定の実施形態では、プリントシステムの少なくとも一部は、無菌環境(例えばバイオセーフティキャビネット(BSC)内)に維持される。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、全体的に無菌環境内に適合するように構成される。
【0085】
いくつかの実施形態では、受け面は、分注オリフィスから分注された過剰流体(例えば過剰シース流体及び/または過剰緩衝液)、及び分注オリフィスから分注された材料の1枚以上の層から流出する過剰流体を受け取る。
【0086】
いくつかの実施形態では、システムは、プリントヘッドのオリフィスから分注された繊維構造が堆積された受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体(例えば過剰シース流体及び/または過剰鑑賞液)を除去するための構成要素を備える。プリント中に、過剰流体は、受け面上または分注された繊維構造の表面上に集まる、すなわち「溜まる」可能性がある。このような貯留は、堆積プロセスを妨げ得る。例えば、貯留したシース流体が原因で、分注された繊維が、プリントされている3D構造内の目的の位置から滑り落ちる場合がある。従って、いくつかの実施形態では、流体除去構成要素により、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰シース流体を除去することは、三次元構造の積層造形を向上させ得る。
【0087】
受け面から、または分注された繊維の1枚以上の層の表面から過剰流体を除去することは、これらの表面から流体を引き抜くことにより、これらの表面から流体の蒸発を可能にするまたは促進することにより、実行され得、または受け面が多孔質の実施形態では、過剰流体は、多孔質表面を通して引き抜くことにより、除去され得る。いくつかの実施形態では、受け面は、多孔質材料を有し、細孔は、流体が細孔を通過しやすいサイズに決定され、細孔上に堆積された繊維構造の1枚以上の層を支持するサイズに決定される。
【0088】
いくつかの実施形態では、マルチウェルプレートまたはペトリ皿に材料を分注するように構成されたシステムには、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去するための構成要素が含まれ得る。いくつかの実施形態では、プリント台上の受け面は、受け面からの過剰流体の吸収を促進する吸収性材料を有する、または吸収性材料に隣接して配置される。例えば、多孔質膜材料または任意の他の多孔質膜基板で作られたベースを有するウェルプレートインサートは、例えばスポンジなどの吸収性材料の上に、または吸収性材料に隣接して、配置され得る。吸収性材料は、受け面から過剰流体を引き離すように作用する。多孔質の受け面の下に吸収性材料が配置された実施形態では、受け面上の過剰流体は、多孔質の受け面を通って吸収性材料へ引き抜かれ、これにより、受け面上の過剰流体の貯留が防がれる。受け面の一部のすぐ横または上に(例えば分注された材料の堆積を妨げないように受け面の周辺に)吸収性材料が配置された実施形態では、過剰シース流体は、受け面から吸収性材料へ引き抜かれ得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、受け面は、真空源と流体連結された1本以上の管を備え、真空源は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去するための吸引を提供し得る。このような実施形態では、中実または多孔質の受け面も使用され得る。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、1本以上の真空チャネルをさらに備えるように構成され、1本以上の真空チャネルはそれぞれ、分注オリフィスの近くに(すなわち隣接して)配置されたオリフィスを有する。1本以上の真空チャネルはそれぞれ、1つ以上の真空との流体連通を促進するように構成された入口を有する。プリントヘッドが真空と流体連通している場合、1本以上の真空チャネルは、分注オリフィスから材料が分注されているまたは分注された受け面の領域に対し、及び/または分注された繊維構造の表面領域の一部に対し、負圧をかけ、これにより、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体が吸い上げられ、これにより、受け面及び/または分注された繊維構造上の流体の貯留が除去される。
【0090】
いくつかの実施形態では、1本以上の真空管は、プリントヘッドから突出する1つ以上の延長部に少なくとも部分的に設けられ、当該延長部は、分注オリフィス及び分注チャネルを備える延長部と同じ全体的方向に突出する。このような実施形態では、真空管を備える1つ以上の延長部は、分注プロセスを妨げないように、分注オリフィス及び分注チャネルを備える延長部を越えて延在しない。
【0091】
いくつかの実施形態では、流体除去機能は、流体組成物自体の機能であり得る。例えば、シース流体組成物及び/または緩衝液組成物は、分注オリフィスから分注された後に蒸発するように設計され得、これにより、受け面上または分注された繊維構造の表面上の過剰流体の貯留が除去される。例えば、シース流体は、分注される前は液体状態を保持するが、分注された後は蒸発に至る沸点を有することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリントされる材料を受け取る表面を有するプリント台の上の三次元空間において、プリントヘッド及び分注オリフィスの位置を決定するための3本のアームを有する3Dモーター駆動ステージを備える。一実施形態では、3Dモーター駆動ステージ(すなわち位置決めユニット)は、プリントヘッドのオリフィスが下向きになるように、3Dモーター駆動ステージのz軸に沿って伸びる垂直アームの位置を決定するように制御され得る。モーター駆動ステージのx軸に沿って伸びる第1の水平アームは、不動のベースフラットフォームに固定される。モーター駆動ステージのy軸に沿って伸びる第2の水平アームは、第1の水平アームの長手方向及び第2の水平アームの長手方向が互いに対して直角となるように、第1の水平アームの上面に移動可能に結合される。アームに関して上記で使用される用語「垂直」及び「水平」は、プリントヘッドの動き方を説明することを意味し、必ずしもアーム自体の物理的配向を制限するものではないことが理解されよう。
【0093】
いくつかの実施形態では、受け面は、プラットフォームの上部に配置され、プラットフォームは、第2の水平アームの上面に結合される。いくつかの実施形態では、3Dモーター駆動ステージアームは、3つの対応するモーターによりそれぞれ駆動され、コンピュータなどのプログラム可能な制御プロセッサにより制御される。好ましい実施形態では、プリントヘッド及び受け面は、3Dモーター駆動ステージによりデカルト座標系の3つの主軸全てに沿って集合的に移動可能であり、ステージの移動は、コンピュータソフトウェアを使用して定義される。本発明は、説明された位置決めシステムのみに限定されず、他の位置決めシステムも当技術分野では知られていることが理解されよう。プリントヘッド上の分注オリフィスから材料が分注される時、位置決めユニットは、ソフトウェアにより制御されたパターンで移動し、これにより、受け面上に分注された材料の第1の層が作成される。次に、分注された材料の追加の層が積み重ねられ、その結果、分注された材料の層の最終的3D幾何学形態は通常、ソフトウェアにより提供された3D幾何学形態設計図の複製となる。3D設計図は、当技術分野で知られているように、典型的な3D CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアを使用して作成され得る、またはデジタル画像から生成され得る。さらに、ソフトウェアにより生成される幾何学形態が、使用する特定の材料に関する情報を含む場合、本発明の一実施形態によれば、異なる幾何学的位置に特定の投入材料のタイプを割り当てることが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、プリントされる3D構造は、2つ以上の異なる投入材料を含むことができ、各投入材料は、異なる特性を有する(例えば各投入材料は、異なる細胞タイプ、異なる細胞濃度、異なるECM組成などを有する)。
【0094】
主題のプリントシステムの態様は、特定の繊維の平面または3D構造を形成するために、特定のパターンで特定の位置に主題の投入材料を堆積させることを促進するように構成されたソフトウェアプログラムを含む。このような構造を作製するために、主題のプリントシステムは、主題の投入材料を、受け面上の正確な位置(二次元または三次元の位置)に堆積させる。いくつかの実施形態では、プリントシステムが材料を堆積させる位置は、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、コンピュータコードは、特定のタスクを実行するように書かれた、デジタル処理装置の中央処理装置(CPU)で実行可能な一連の命令を含む。いくつかの実施形態では、プリントされる繊維の寸法、ポンプ速度、プリントヘッド位置決めシステムの移動速度、及び架橋剤の強度または濃度を含むがこれらに限定されないプリントパラメータは、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、プリントパラメータは、ユーザ入力により直接定義されずに、コンピュータコードにより他のパラメータ及び条件から導出される。
【0095】
本発明の態様は、組織構築物、組織、及び器官を作製するための方法を含み、方法は、コンピュータモジュールにより、所望の組織構築物の視覚的表現の入力を受信することと、コンピュータモジュールにより、視覚的表現に基づき、かつ主題のプリントシステムにより読み取り可能な一連のコマンドを生成することと、コンピュータモジュールにより、一連のコマンドをプリントシステム提供することと、プリントシステムにより、コマンドに従って、1つ以上の投入材料を堆積させて、定義された幾何学形態を有する構築物を形成することと、を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、プリントシステムが投入材料を堆積させる位置は、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるデバイス、システム、及び方法はさらに、コンピュータ可読プログラムコードで符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体または記憶媒体を含む。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、バイオプリンタ(もしくはその構成要素)またはバイオプリンタ(もしくはその構成要素)に接続されたコンピュータなど、デジタル処理装置の有形構成要素である。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は任意で、デジタル処理装置から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体には、非限定的な例として、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートメモリ、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、並びにクラウドコンピューティングシステム及び/またはサービスなどが挙げられる。いくつかの事例では、プログラム及び命令は、記憶媒体上では、永久的、ほぼ永久的、半永久的、または非一時的に、符号化される。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるデバイス、システム、及び方法は、ソフトウェア、サーバ、及びデータベースモジュールを含む。いくつかの実施形態では、「コンピュータモジュール」は、より大きなコンピュータシステムと相互作用するソフトウェア構成要素(コードセクションを含む)である。いくつかの実施形態では、ソフトウェアモジュール(またはプログラムモジュール)は、1つ以上のファイルの形式で提供され、通常、より大きなソフトウェアシステム内の特定のタスクを処理する。
【0098】
いくつかの実施形態では、モジュールは、1つ以上のソフトウェアシステムに含まれる。いくつかの実施形態では、モジュールは、1つ以上の他のモジュールと統合されて、1つ以上のソフトウェアシステムとなる。コンピュータモジュールは、任意でスタンドアローンのコードセクションであり、または任意で個別に識別できないコードである。いくつかの実施形態では、モジュールは、単一のアプリケーション内に存在する。別の実施形態では、モジュールは、複数のアプリケーション内に存在する。いくつかの実施形態では、モジュールは、1台のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、複数のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、1つの場所で複数のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、複数の場所で複数のマシン上でホストされる。本発明の実施形態によるコンピュータモジュールにより、エンドユーザは、コンピュータを使用して、本明細書で説明される方法の1つ以上の態様を実行することが可能となる。
【0099】
いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を備える。本明細書で使用される「グラフィカルユーザインターフェース」は、アプリケーションの入力及び出力と、情報が格納される階層的または他のデータ構造との画像表現並びにテキスト表現を使用するユーザ環境を意味する。いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を備える。さらなる実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を介して、2次元GUIを提示する。いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を介して、仮想現実環境などの三次元GUIを提示する。いくつかの実施形態では、表示画面は、タッチスクリーンであり、インタラクティブGUIを提示する。
【0100】
本発明の態様は、1つ以上のプリントされる繊維が好適な特性を確実に有するように、主題のプリントシステムの1つ以上のパラメータを監視及び/または調整するように構成された1つ以上の品質管理構成要素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、堆積プロセスの進行が速すぎる場合、プリントされる繊維構造は、分注チャネル内に、または分注された後に分注チャネルの外側に、コイル状の構造を形成し始め得る。いくつかの実施形態では、品質管理構成要素は、カメラを備え、カメラは、プリントされる繊維構造の1つ以上の画像を収集することにより堆積プロセスを監視し、プリントされた繊維構造がコイル状の構造を形成したか否かを判定するように構成される。いくつかの実施形態では、品質管理構成要素は、プリントされた繊維構造によるコイル状構造の形成を減少または回避するために、堆積プロセスの1つ以上のパラメータを調節するように(例えば圧力を低下させる及び/または堆積速度を下げるように)構成される。
【0101】
本発明の態様は、1つ以上の流体リザーバを含み、流体リザーバは、流体を格納し、プリントシステムとリザーバとの流体連通を提供する1本以上の流体チャネルを通してプリントシステム(例えばプリントヘッド)に流体を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、流体チャネルと流体連通している1つ以上の流体リザーバを備える。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、流体チャネルの投入オリフィスに接続される。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、約100μL~約1Lの範囲の流体体積、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mL、あるいは例えば約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、または950mLの流体体積を保持するように構成される。
【0102】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、1つ以上のリザーバに流体連結された圧力制御ユニットを備える。圧力制御ユニットは、プリントシステムを通して1つ以上の流体を移動させる力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、圧力制御ユニットは、1本以上の接続管を介して1つ以上の流体に空気圧を供給する。加えられた圧力は、流体をリザーバから押し出し、それぞれの流体チャネルを介してプリントヘッドへ送り込む。いくつかの実施形態では、代替的な手段を使用して、チャネルを通して流体を移動させ得る。例えば、一連の電子制御シリンジポンプを使用して、プリントヘッドを通して流体を移動させる力が提供され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、材料を架橋するために、任意で光架橋性投入材料を露光させるための光モジュール(前述のような)を備える。本発明の実施形態による光モジュールは、プリントヘッドに統合され得る、またはプリントシステムの構成要素であり得る。
【0104】
投入材料
本発明の態様は、繊維構造をプリントするために使用され得る投入材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、ヒドロゲルを含む。ヒドロゲルの非限定的な例には、アルギン酸塩、アガロース、コラーゲン、フィブリノゲン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸ベースのゲル、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。様々な合成ヒドロゲルが知られており、本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態で使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のヒドロゲルは、プリントされる三次元構造の構造的基礎を形成する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、1つ以上のタイプの細胞の成長及び/または増殖を支援する能力を有し、1つ以上のタイプの細胞は、ヒドロゲル内に分散され得る、または三次元構成でプリントされた後のヒドロゲルに追加され得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、化学架橋剤により架橋可能である。例えば、アルギン酸塩を含むヒドロゲルは、二価カチオンの存在下で架橋可能であり得、キトサンを含むヒドロゲルは、トリポリリン酸ナトリウム(STP)などの多価アニオンを使用して架橋され得、フィブリノゲンを含むヒドロゲルは、トロンビンなどの酵素の存在下で架橋可能であり得、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、またはキトサンを含むヒドロゲルは、熱または塩基性溶液の存在下で架橋可能であり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル繊維は、投入材料と混和性のある架橋剤材料に投入材料をさらして、投入材料から溶剤を抽出することで達成される沈殿反応により、生成され得る。沈殿反応を介して繊維を形成する投入材料の非限定的な例には、コラーゲン及びポリ乳酸が挙げられる。沈殿媒介ヒドロゲル繊維形成を可能にする架橋材料の非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)及びアルギン酸塩が挙げられる。ヒドロゲルの架橋は、ヒドロゲルの硬度を高め、いくつかの実施形態では、固化したヒドロゲルの形成を可能にする。
【0105】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはアルギン酸塩を含む。アルギン酸塩は、二価カチオンと接触すると、固化したコロイドゲル(高含水ゲルまたはヒドロゲル)を形成する。アルギン酸塩を含む投入材料により、固化したヒドロゲルを形成するために、任意の好適な二価カチオンが使用され得る。アルギン酸イオン親和性系列Cd2+>Ba2+>Cu2+>Ca2+>Ni2+>Co2+>Mn2+では、アルギン酸ゲルを形成するのに、Ca2+が最適な特徴を有し、最もよく使用される(Ouwerx, C. et al., Polymer Gels and Networks, 1998, 6(5):393-408)。研究により、隣接するポリマー鎖上のポリGブロックによるCa2+イオンの協働的結合を介して、アルギン酸カルシウムゲル、いわゆる「エッグボックス」モデルが形成されることが示される(ISP Alginates, Section 3: Algin-Manufacture and Structure, in Alginates: Products for Scientific Water Control, 2000, International Specialty Products: San Diego, pp. 4-7)。Gリッチアルギン酸塩は、熱的に安定性があり、強いが脆いCaゲルを形成する傾向があり、一方Mリッチアルギン酸塩は、熱的安定性が低く、より弱いがより弾性のあるゲルを形成する傾向がある。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、米国仮特許出願第62/437,601号に記載される解重合アルギン酸塩を含み、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0106】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、フリーラジカル重合反応を使用して架橋可能であり、分子間に共有結合が生成される。フリーラジカルは、光重合開始剤を光(多くの場合紫外線)にさらすことにより生成され得る、または、それぞれ開始剤及び触媒としてN、N、N、N-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と組み合わせた過硫酸アンモニウム(APS)またはペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)などのフリーラジカルの化学源に、ヒドロゲル前駆体をさらすことにより生成され得る。光架橋性ヒドロゲルの非限定的な例には、ゼラチンメタクリレート(GEL-MA)またはポリエチレン(グリコール)ジアクリレートベース(PEG-DA)ヒドロゲルなどのメタクリレート化ヒドロゲルが挙げられ、これらは、UV光にさらされた後にフリーラジカルの存在下で架橋できるため、及び細胞に対して不活性であるため、細胞生物学に使用される。PEG-DAは、重合が室温で急速に発生し、必要なエネルギー投入が少なく、含水率が高く、弾性があり、様々な生体分子を含むようにカスタマイズできるため、組織工学においてスキャフォールドとして通常使用される。
【0107】
追加構成要素
本発明の実施形態による投入材料は、例えばラミニン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリ(エチレン)グリコールベースゲル、ゼラチン、キトサン、アガロース、またはこれらの組み合わせを含む、生細胞の生存能力を支持する多種多様の天然ポリマーまたは合成ポリマーのうちのいずれかを含み得る。特に好ましい実施形態では、主題のバイオインク組成物は、生理学的に適合性があり、すなわち細胞の成長、細胞の分化、及び細胞間情報伝達を促進する。特定の実施形態では、投入材料は、1つ以上の生理学的マトリックス材料、またはこれらの組み合わせを含む。「生理学的マトリックス材料」は、天然の哺乳動物組織に見られる生物学的材料を意味する。このような生理学的マトリックス材料の非限定的な例には、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、グリコサミノグリカン(GAG)(例えばヒアルロン酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、またはケラタン硫酸)、デオキシリボ核酸(DNA)、接着糖タンパク質、及びコラーゲン(例えばコラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVI、またはコラーゲンXVIII)が挙げられる。
【0108】
コラーゲンは、ほとんどの組織に引張強度を与え、直径約100nmの複数のコラーゲン原線維は結合して、直径約10μmの強力な多重コイル繊維が生成される。特定の組織構築物の生体力学的機能は、コラーゲン繊維の整列を介して、配向される様式で与えられる。いくつかの実施形態では、投入材料は、コラーゲン原線維を含む。コラーゲン原線維を含む投入材料を使用して、組織構築物へと形成される繊維構造が作成され得る。繊維構造の直径を調節することにより、コラーゲン原線維の配向を制御して、所望の様式でのコラーゲン原線維の重合を指示することができる。
【0109】
例えば、以前の研究では、異なる直径のマイクロ流体チャネルは、コラーゲン原線維の重合を指示して、チャネルの長さに沿って配向された繊維を形成できるが、チャネルの直径は100μm以下であることのみが示された(Leeら, 2006)。これらの配向されたマトリックスで成長した一次内皮細胞は、コラーゲン繊維の方向に整列することが示された。別の研究では、Martinezらは、セルローズビーズスキャフォールド内の500μmチャネルが、コラーゲン及び細胞の整列を指示できることを実証した(Martinezら、2012)。いくつかの実施形態では、投入材料は、約20μm~約500μmの範囲の直径、例えば約50μm、約75μm、約100μm、約125μm、約150μm、約175μm、約200μm、約225μm、約250μm、約275μm、約300μm、約325μm、約350μm、約375μm、約400μm、約425μm、約450μm、または約475μmの直径を有する繊維構造へと形成され得る。繊維の直径を調節することにより、繊維構造内のコラーゲン繊維の配向が制御され得る。よって、繊維構造及びその中のコラーゲン繊維は、3Dプリントされる構造に対し所望の生体力学的特性を与えるために不可欠なコラーゲン繊維の所望の構成を有する組織構築物を作製するように、パターン化され得る。
【0110】
哺乳動物細胞タイプ
本発明の実施形態による投入材料は、任意の哺乳動物細胞タイプを包含することができ、哺乳動物細胞タイプは、幹細胞(例えば胚性幹細胞、成体幹細胞、誘導多能性幹細胞)、胚細胞、内胚葉細胞(例えば肺細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、胃腸管細胞、または尿生殖路細胞)、中胚葉細胞(例えば腎臓細胞、骨細胞、筋肉細胞、内皮細胞、または心臓細胞)、及び外胚葉細胞(皮膚細胞、神経系細胞、または眼細胞)、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態では、投入材料は、線維芽細胞、軟骨細胞、メニスカス線維軟骨細胞、幹細胞、骨髄間質(幹)細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、誘導多能性幹細胞、分化幹細胞、組織由来細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、筋芽細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0112】
細胞は、ドナー(異質遺伝子型)またはレシピエント(自家)から入手され得る。細胞はまた、樹立細胞培養株からのものであり得る、または所望の遺伝子型または表現型を得るために遺伝子工学及び/または遺伝子操作を受けた細胞であり得る。いくつかの実施形態では、組織片を使用することもでき、これは、同じ構造内にいくつかの異なる細胞タイプを提供し得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトまたは動物の好適なドナーから得られ得る、または細胞を移植する対象者から得られ得る。哺乳類動物種には、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、及びラットが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、細胞は、イヌ、ネコ、ウマ、サル、または任意の他の哺乳動物などの動物に由来し得る。
【0114】
哺乳動物細胞の好適な増殖条件は、当技術分野では周知のものである(Freshney, R. I. (2000) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique. Hoboken N.J., John Wiley & Sons;Lanza et al. Principles of Tissue Engineering, Academic Press;第2版2000年5月15日;及び Lanza & Atala, Methods of Tissue Engineering Academic Press;第1版2001年10月)。細胞培養培地は一般に、必須栄養素、及び任意で、培養される細胞タイプ(複数可)に応じて選択され得る成長因子、塩、ミネラル、ビタミンなどの追加要素を含む。細胞の成長、分化、特定のタンパク質分泌などを向上させるために、特定の成分が選択され得る。一般に、標準的な増殖培地には、110mg/Lのピルビン酸及びグルタミンを含み、10~20%のウシ胎児血清(FBS)または仔ウシ血清が追補されたダルベッコ変法イーグル培地、低グルコース(DMEM)が含まれ、100U/mlのペニシリンは、当技術分野で周知の他の様々な標準的培地と同様に好適である。増殖条件は、使用する哺乳動物細胞のタイプ及び所望する組織により異なる。
【0115】
いくつかの実施形態では、細胞タイプ特異試薬は、該当する細胞タイプと共に使用する主題の投入材料において、有利に利用され得る。例えば細胞外マトリックス(「ECM」)は、関心のある組織から直接抽出され、次いで可溶化され、投入材料に取り入れられ、プリントする組織のための組織特異的投入材料が生成され得る。このようなECMは、患者のサンプルから容易に入手でき、及び/またはzPredicta(rBone(商標)、zpredicta.com/home/productsにて入手可能)などのサプライヤから市販されている。
【0116】
活性剤
いくつかの態様では、本発明の実施形態による投入材料は、少なくとも1つの活性剤を含み得る。このような活性剤の非限定的な例として、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-12、BMP-13、塩基性線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子-1、線維芽細胞増殖因子-2、血小板由来増殖因子-AA、血小板由来増殖因子-BB、多血小板血漿、IGF-I、IGF-II、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-10、血管内皮細胞由増殖因子、プレイオトロフィン、エンドセリン、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド-I、グルカゴン様ペプチド-II、副甲状腺ホルモン、テネイシン-C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ラミニン、細胞結合ドメインを含む生物学的ペプチド及びヘパリン結合ドメインを含む生物学的ペプチド、治療剤、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0117】
本明細書で使用される用語「治療剤」は、対象者において局所的にまたは全身的に作用する生物学的、生理学的、または薬理学的に活性な物質である任意の化学的部分を指す。「薬物」とも称される治療剤の非限定的な例は、Merck Index、Physician’s Desk Reference、及びThe Pharmacological Basis of Therapeuticsなどのよく知られた文献に記載されており、これらには、薬、ビタミン、ミネラルサプリメント、病気または疾病の治療、予防、診断、治癒、または緩和に使用される物質、体の構造または機能に影響を与える物質、または生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性化するもしくはより活性化するプロドラッグが、非限定的に含まれる。いくつかの実施形態では、対象者への移植時に、本明細書に記載の投入材料から、隣接する組織または流体に放出することができる1つ以上の治療剤が使用され得る。治療剤の例には、抗生物質、麻酔薬、再生または組織治癒を促進する、または痛み、感染、もしくは炎症を軽減する任意の治療剤、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
追加の活性剤には、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはその断片もしくはその一部、抗原またはエピトープ、ホルモン、抗ホルモン物質、増殖因子または組換増殖因子並びにその断片及びその変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、抗炎症剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、小分子、薬物(例えば薬物、染料、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤)、あるいはこれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0119】
投入材料に含めるのに好適な抗生物質の非限定的な例には、アミノグリコシド(例えばネオマイシン)、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(例えばセファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフトビプロール)、グリコペプチド(例えばバンコマイシン)、マクロライド(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン)、モノバクタム、ペニシリン(例えばアモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン)、ポリペプチド(例えばバシトラシン、ポリミキシンB)、キノロン(例えばシプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシンなど)、スルホンアミド(例えばスルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール))、テトラサイクリン(例えばドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンなど)、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタンブトール、ムピロシン、メトロニダゾール、ピラジナミド、チアムフェニコール、リファンピシン、チアムフェニクル、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダゾール、リネゾリド、イソニアジド、フォスフォマイシン、フシジン酸、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0120】
抗体の非限定的な例には、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アルツモマブペンテテート、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファノレソマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オレゴボマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン、テフィバズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0121】
本明細書に説明される投入材料での使用に好適な酵素の非限定的な例には、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リン酸デヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、及びラッカーゼが挙げられる。
【0122】
主題の投入材料との使用に好適な活性剤の非限定的な追加例には、ダルベッコ変法イーグル培地、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、及び抗生物質などの細胞増殖培地と、線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子、血管内皮増殖因子、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、骨形態形成増殖因子、骨形態形成様タンパク質、神経増殖因子、及び関連タンパク質などの成長因子及び形態形成因子(増殖因子は当技術分野で既知のものであり、例えばRosen & Thies, CELLULAR & MOLECULAR BASIS BONE FORMATION & REPAIR, R.G. Landes Co., Austin, Tex., 1995を参照)と、エンドスタチン、及び他の天然由来タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質などの抗血管新生タンパク質と、多糖類、糖タンパク質、またはリポタンパク質と、抗生物質及び抗ウイルス剤、化学療法剤(すなわち抗癌剤)、拒絶反応抑制剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、抗炎症剤、ステロイド、またはこれらの任意の組み合わせなどの抗感染剤と、が挙げられる。
【0123】
付加的流体
本発明の態様は、1つ以上の緩衝液を含む。本発明の実施形態による緩衝液は、投入材料(例えばヒドロゲル)との混和性を有し、投入材料を架橋しない。いくつかの実施形態では、緩衝液は、水性溶媒を含む。緩衝液の非限定的な例には、ポリビニルアルコール、水、グリセロール、プロピレングリコール、スクロース、ゼラチン、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0124】
本発明の実施形態による緩衝液は、約1mPa・s~約5,000mPa・sの範囲の粘度、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,250、3,500、3,750、4,000、4,250、4,500、または4,750mPa・sの粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、緩衝液の粘度は、1つ以上の投入材料の粘度と一致するように調節され得る。
【0125】
本発明の態様は、1つ以上のシース流体を含む。本発明の実施形態によるシース流体は、少なくとも部分的に、分注チャネルから分注される投入材料を包むまたは「シース」するために使用することができる流体である。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒を含む。シース流体の非限定的な例には、ポリビニルアルコール、水、グリセロール、プロピレングリコール、スクロース、ゼラチン、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。本発明の実施形態によるシース流体は、約1mPa・s~約5,000mPa・sの範囲の粘度、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,250、3,500、3,750、4,000、4,250、4,500、または4,750mPa・sの粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、シース流体の粘度は、1つ以上の投入材料の粘度と一致するように調節され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。いくつかの実施形態において、化学架橋剤は、二価カチオンを含む。二価カチオンの非限定的な例には、Cd2+、Ba2+、Cu2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、またはMn2+が含まれる。好ましい実施形態では、Ca2+が二価カチオンとして使用される。いくつかの実施形態では、シース流体中の二価カチオンの濃度は、約80mM~約140mMの範囲、例えば約90、100、110、120、または130mMである。
【0127】
使用方法
本発明の態様は、線形繊維構造、1つ以上の繊維構造を含む平面構造、または平面構造の2枚以上の層を含む三次元(3D)構造をプリントする方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は最初に、プリントする平面または3D構造の設計図を提供することを含む。設計図は、市販のCADソフトウェアを使用して作製され得る。いくつかの実施形態では、設計図は、プリントする構造(複数可)内の特定の場所に割り当てる特定の材料に関する情報を含む(例えば複数の材料を含む異質構造の場合)。
【0128】
いくつかの実施形態では、方法は、3Dプリンタの使用を含み、プリンタは、プリントヘッドと、プリントヘッドが分注する材料を受け取る受け面と、受け面に動作可能に接続された位置決めユニットであって、受け面上の三次元空間内の位置にプリントヘッドを位置決めする当該位置決めユニットと、を備える。例えば、本明細書で提供されるプリントシステムの様々な実施形態は、平面または3D構造をプリントする方法で使用され得る。
【0129】
方法の態様は、プリントヘッドが分注する1つ以上の投入材料を提供することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞タイプは、投入材料と適合性があり、任意で投入材料内に調合される。いくつかの実施形態では、シース流体は、プリントヘッド内での投入材料の動きを潤滑する潤滑剤として機能する。いくつかの実施形態では、シース流体は、ヒドロゲルがプリントヘッドから分注される前または分注されている間に、ヒドロゲルの少なくとも一部を固化する架橋剤を含む。
【0130】
方法の態様は、設計図を3Dプリンタに通信することを含む。いくつかの実施形態では、通信は、例えばプログラム可能な制御プロセッサにより実現され得る。いくつかの実施形態では、方法は、三次元空間におけるプリントヘッド及び受け面の相対的位置決めを制御することと、同時に、プリントヘッドからシース流体及び投入材料を単独でまたは組み合わせて分注することを含む。いくつかの実施形態では、プリントヘッドから分注される材料は、シース流体が投入材料を包むように、同軸状に分注される。このような同軸構成により、シース流体中の架橋剤は投入材料を固化することが可能となり、これにより、固化した繊維構造が生成され、プリントヘッドから分注される。
【0131】
いくつかの実施形態では、方法は、分注された繊維構造の第1の層を受け面上に堆積させることであって、第1の層は設計図により指定された繊維構造の構成を有する、堆積させることと、第1の層及び後続の層の上に後続の繊維構造を堆積させる堆積ステップを繰り返すことであって、これにより、3D構造を作製するために設計図により指定された幾何学構成で、分注された繊維構造の層の上に層を堆積させる、堆積ステップを繰り返すことと、を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、複数の投入材料、例えば、少なくともいくつかが1つ以上の細胞タイプを含む複数のヒドロゲルは、制御された順序で堆積され、これにより、堆積させる投入材料及び細胞タイプを、設計図により指定された幾何学構成で制御して配置することが可能となる。
【0133】
いくつかの実施形態では、方法は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去することを含む。例えば、過剰流体の除去ステップは、プリントプロセス全体を通して連続的に行うことができ、これにより過剰流体は除去されるが、過剰流体は、除去ステップを行わなかった場合、設計図により提供される幾何学構成で分注された繊維構造を積層することを妨げ得る。あるいは、過剰流体の除去ステップは、1つ以上の堆積ステップと連続して、または同時に、プリントプロセス全体を通して断続的に行うことができる。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、流体を引き抜くことにより達成される。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、流体の通過を可能にするサイズの細孔を有する受け面を通して過剰流体を引き抜くことにより、達成される。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、分注オリフィスから分注された後に蒸発する流体を提供することにより達成される。
【0134】
本発明の態様は、1つ以上の投入材料を含む3D構造を作製する方法を含む。3D構造は、対象者の損傷したまたは罹患した組織の少なくとも一部を修復及び/または交換するのに利用される。
【0135】
前述のように、Cd2+、Ba2+、Cu2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、またはMn2+を含むがこれらに限定されない任意の好適な二価カチオンは、化学架橋性投入材料を固化するために、主題の方法と併せて使用され得る。好ましい実施形態では、Ca2+が二価カチオンとして使用される。好ましい一実施形態では、化学架橋性投入材料は、Ca2+を含む溶液と接触して、固化した繊維構造を形成する。いくつかの実施形態では、シース液中のCa2+の濃度は、約80mM~約140mMの範囲、例えば約90、100、110、120、または130mMである。
【0136】
特定の実施形態では、投入材料は、約5秒未満で、例えば約4秒未満、約3秒未満、約2秒未満、または約1秒未満で、固化する。
【0137】
本発明の態様は、ソフトウェアツールを使用して、パターン化された方法で1つ以上の投入材料を堆積させて、多層3D組織構造へと形成される固化構造の層を形成する方法を含む。いくつかの実施形態では、多層3D組織構造は、複数の哺乳動物細胞を含む。有利なことに、主題の投入材料の成分(例えば哺乳動物細胞タイプ、細胞密度、マトリックス成分、活性剤)を調節することにより、主題の方法を使用して、多層3D組織構造を作成することができ、多層3D組織構造は、3次元空間内の任意の特定の位置に、正確に制御された組成を有する。よって、主題の方法は、複雑な三次元組織構造の生成を容易にする。
【0138】
いくつかの実施形態では、方法は、プリントされる繊維内に中空コアを形成するために、コアチャネルを通して緩衝液及び/またはシース流体を、1本以上のシェルチャネルを通して1つ以上の投入材料を、シース流チャネルを通してシース流体を、同時に分注することを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は緩衝液を含み、シース流チャネル内のシース流体は化学架橋剤を含み、シース流体交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0140】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル内のシース流体は水性溶媒を含み、第1の流体集束交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化する。
【0141】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル内のシース流体は化学架橋剤を含み、第1の流体集束交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化し、シース流体交差点で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0142】
代替的な実施形態では、中実コアシェル繊維は、コアチャネル及びシェルチャネルのそれぞれにおいて同一の架橋性材料または異なる架橋性材料を使用して、作成され得る。前者の実施形態では、架橋剤は拡散によりコア材料を架橋し得、例えばアルギン酸ヒドロゲルはCa2+イオンにより架橋され、あるいは光の存在下で架橋され得る。後者の実施形態では、コアチャネルは、プリントヘッドから分注された後しばらくして固化し得る架橋性材料(例えばコラーゲン、ラミニン、フィブリノゲン、キトサン、エラスチン、マトリゲル、メタクリレート化ゼラチン、PEGジアクリレートなど)を含み、一方シェルチャネルは、プリント時に(例えば化学物質または光を介して)固化する別の架橋性材料を含む。
【0143】
例示的な実施形態では、異なる濃度の同一の架橋性材料(例えばアルギン酸塩)を用いて、シェルチャネルには高濃度を使用し、コアチャネルには低濃度を使用することができ、シース流チャネルには両方の層を架橋するように機能する同じ架橋剤(例えばCa2+)が使用される。この実施形態では、Ca2+イオンは、架橋性コア材料を架橋する前に、最初に架橋性シェル材料を通って拡散する。
【0144】
別の例示的な実施形態では、化学架橋性材料(例えばアルギン酸塩)がシェルチャネルに使用され得、熱で架橋される別の材料(例えばコラーゲン)がコアチャネルに使用され得、シース流チャネル内の化学架橋剤により、液体コアを有する中実繊維をプリントすることが可能となり、液体コアを有する中実繊維は次に、コア材料の後続架橋を行うために、インキュベータまたは他の熱源へと移動され得る。
【0145】
実用性
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシステム及び方法を使用して生成される構造は、例えば様々な化合物及び組成物に対する細胞応答を特定することが重要である創薬の分野において、有用であり得る。本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態を使用して作製される平面及び3Dの細胞培養物の使用は、従来の2D細胞培養物と比較して、生体内の細胞及び組織条件により酷似する実験条件を提供することができる。細胞の3D構成は、生体内の細胞間相互作用及び外部刺激に対する応答をより厳密に模倣でき、本明細書で提供されるシステム及び方法を使用して生成できる3D構造の混成性質により、組織及び潜在的に器官の研究が可能となる。本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態を使用して作製される3D細胞含有構造は、化粧品を試験するための代替手段を提供することにより、化粧品業界に同様の利益を提供することができると考えられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシステム及び方法の様々な態様は、標準的なウェルプレート技術との適合性を有する。ウェルプレートまたはウェルプレートインサートは、本明細書で提供される方法及びシステムにおいて、プリントベッドと共に、またはプリントベッドの一部として、使用され得る。従って、本明細書で提供されるシステム及び方法の様々な実施形態は、ウェルプレートを利用する機器及び行為との適合性を有するため、既存のプロセスストリームに容易に統合されることが可能である。
【0147】
いくつかの実施形態では、主題のプリントヘッド内の1本以上の流体チャネルは、他のマイクロ流体モジュールとの適合性を有する。例えば、既知のマイクロ流体モジュールが、分注オリフィスの上流で、本明細書で提供されるシステムのプリントヘッドに含まれ得る。このようなモジュールには、例えば、細胞係数モジュール、細胞選別モジュール、細胞分析モジュール、及び/または濃度勾配生成モジュールが含まれ得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、3Dプリントのスループットは、システムに追加のプリントヘッドを並列に追加することにより、向上させることができる。各プリントヘッドは、マルチ材料構造をプリントするのに必要な要素の全てを備えているため、システムに追加のプリントヘッドを含めることにより、いくつかの3D構造を同時にプリントすることが可能となる。
【0149】
本明細書において言及される全ての特許及び特許公開は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0150】
上記の発明は、理解を明確にするために例示及び実施例を用いて詳細に説明してきたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、これらにある変更及び修正を加え得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0151】
LOP(商標)は複数の材料の切り替えを可能にするため、脈管壁の組成(細胞タイプ及び生体材料組成)は、連続的にプリントを行いながら、導管の長さに沿って変更することができる。この一例として、尿細管の生物学的構造及び機能の再現があり、近位端の壁の組成は、遠位端の壁の組成とは異なる。または、プリントした灌流可能な3D肝臓組織の場合、脈管のより大きな開口端部では、低透過性の門細動脈内皮細が脈管壁に裏打ちされ、類洞を形成するために導管が狭くなる脈管のさらに奥では、より透過性の高い類洞内皮細胞が脈管壁に裏打ちされ得る。肝臓組織と同様に、灌流導管の内容物と、外殻のうちの1つ以上における導管の外側の異なる間質細胞タイプとの相互作用を調査することが望ましい。これは、毒性とせん断流の影響と組み合わせ多組織モデルを生成するために適用することができる。単一の組織を、その長さに沿って繊維の殻の細胞内容物を切り替えてプリントして、様々な器官タイプに対応する様々な領域でコード化された中空繊維を生成することができる。このシェル内容物の切り替えは、非マイクロ流体シリンジベースのシステムでは不可能である。
【0152】
従って、上記は、本発明の原理を単に例示したものに過ぎない。当業者であれば、本明細書では明示的に説明または図示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することができるであろうことが理解されよう。さらに、本明細書中に列挙された全ての実施例及び条件付き言語は、主に、本発明の原理、及び本技術を促進するために本発明者らが寄与する概念への読者の理解を支援することを意図したものであり、そのような具体的に列挙された実施例及び条件に限定されるものではないと解釈すべきである。さらに、本発明の原理及び態様、並びにその特定の実施例を列挙する本明細書中の全ての記述は、その構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物は、現在既知の均等物及び将来開発される均等物の両方、すなわち構造にかかわらず同じ機能を実行するように開発された任意の要素を含むことを意図している。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明された例示的な態様に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具現化される。
図1
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