(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】養殖時に魚の骨格変形を予防する及び/又は魚の骨の強度を増加するための昆虫粉末
(51)【国際特許分類】
A23K 10/20 20160101AFI20240807BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20240807BHJP
A23K 20/20 20160101ALI20240807BHJP
A01K 61/13 20170101ALI20240807BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20240807BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240807BHJP
A61K 35/64 20150101ALI20240807BHJP
【FI】
A23K10/20
A23K20/158
A23K20/20
A01K61/13
A23K50/80
A61P19/00
A61K35/64
(21)【出願番号】P 2021519852
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 FR2019052423
(87)【国際公開番号】W WO2020074844
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517227839
【氏名又は名称】インセクト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】コンスタン モット
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン アルマンジョン
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506273(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1750766(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第2848129(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/134524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/20-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖時に魚の骨格変形を避けることにおいて使用するための昆虫粉末であって、前記昆虫粉末が鞘翅目の種類に属する昆虫の種から得られ、そして、前記魚がサケ科に属する、昆虫粉末。
【請求項2】
養殖時に魚の骨の堅さを補強することにおいて使用するための昆虫粉末であって、前記昆虫粉末が鞘翅目の種類に属する昆虫の種から得られ、そして、前記魚がサケ科に属する、昆虫粉末。
【請求項3】
前記魚がサケ科の標準属、イワナ属、オンコリンクス属、及び/又はイトウ属に属する、請求項1又は2に記載の使用するための昆虫粉末。
【請求項4】
前記魚が以下の種:大西洋サケ、ブラウントラウト、アルプスイワナ、ギンザケ、マスノスケ、及びニジマスから選択される、請求項3に記載の使用するための昆虫粉末。
【請求項5】
昆虫粉末の総重量に対して、少なくとも68重量%のタンパク質を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用するための昆虫粉末。
【請求項6】
昆虫粉末の総重量に対して、5から20重量%の脂質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用するための
昆虫粉末。
【請求項7】
昆虫粉末の総重量に対して、1から10重量%の灰質を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用するための
昆虫粉末。
【請求項8】
昆虫粉末の総重量に対して、2から15重量%のキチンを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用するための
昆虫粉末。
【請求項9】
チャイロコメノゴミムシダマシ種から得られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用するための昆虫粉末。
【請求項10】
操作前の10日間、前記昆虫粉末が魚に投与され
、前記操作がワクチン接種及び/又は淡水から海水への移動である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用するための昆虫粉末。
【請求項11】
前記昆虫粉末が前記魚の餌の総量に対して、少なくとも5重量%を構成する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の使用するための昆虫粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水産養殖(又は養魚)分野、そしてより具体的には、水産養殖において使用するための昆虫粉末に関する。
【0002】
水産養殖は、魚の通常の操作を含む。例えば、閉鎖した場所(タンク、囲い、又はケージ)における養殖の場合に、例えば、それらの閉鎖した場所からの魚の収集、一つの閉鎖した場所から別の場所への魚の移動、又は魚にワクチン接種することに向けた操作のような操作がある。
【0003】
「魚」とは、その発達の任意の段階で、例えば稚魚、幼魚、又は成魚で、任意の魚を意味する。
【0004】
注意して、かつ、適正規範に従って、これらの様々な操作が行われるとしても、それらはその魚が十分に強くない場合に、骨格変形をもたらしうる。驚くべきことに、本出願人は、魚への昆虫粉末の投与が前記の魚の骨格変形を防ぐことを、特に骨の堅さを補強することによって、可能にしたことを述べた。
【0005】
本発明は、それゆえ、養殖時に魚の骨格変形を防ぐことにおいて使用するための昆虫粉末に関する。
【0006】
より具体的に、それは、養殖時の魚の骨の堅さを補強することにおいて使用するための昆虫粉末に向けられる。
【0007】
「昆虫粉末」とは、昆虫から単独で、及び任意に水から調製される、粒子の形態における、組成物を意味する。
【0008】
その昆虫粉末における残留含水量には、2から5%、好ましくは3から8%、より好ましくは3から6%を含む。その含水量は例えば、ECの規則番号152/2009の27-01-2009(103℃/4時間)から由来する方法に従って決定されうる。
【0009】
本出願の文脈中に、別段の定めがある場合を除き、指示される値の範囲は含まれることを理解されることが認められるだろう。
【0010】
全体の出願を通して、規制、規格、指令のデータがない場合には、出願日に施行されている規制、規格又は指令を使用している。
【0011】
ヒト又は動物の栄養摂取に許容可能な粒子サイズに粉砕される場合に、後者は「昆虫食」として称されうる。「ヒト又は動物の栄養摂取に許容可能な粒子サイズ」とは、100μmから1.5mmの間、好ましくは300μmから1mmの間を、より好ましくは、500μmから800μmを含む粒子サイズを意味する。
【0012】
「昆虫」とは、特に、鞘翅目、双翅目、鱗翅目、直翅目、膜翅目、防翅目、特にゴキブリ亜目のグループ、例えば等翅目、及び蟷螂目、ナナフシ目、半翅目、異翅目、カゲロウ目、及び長翅目、又はそれらの混合、好ましくは、鞘翅目、双翅目、鱗翅目、直翅目、又はその混合、より好ましくは鞘翅目を意味する。
【0013】
好ましくは、双翅目はハエ亜目に属する。
【0014】
好ましくは、鱗翅目は二門亜目に属し、より好ましくは、メイガ上科に属する。
【0015】
好ましくは、鞘翅目はヒラタムシ下目、特にゴミムシダマシ科、テントウムシ科、カミキリムシ科、オサゾウムシ科、又はそれらの混合に属する。
【0016】
より好ましくは、鞘翅目は、チャイロコメノゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、巨大ゴミムシダマシ甲虫類、コメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ、ヤシオオオサゾウムシ、及びそれらの混合、さらにより好ましくは、チャイロコメノゴミムシダマシより選択される。
【0017】
本発明が向けられる昆虫粉末は、それゆえ、好ましくは、鞘翅目の粉末であり、そしてより好ましくはチャイロコメノゴミムシダマシの粉末である。
【0018】
都合よく、その昆虫粉末は上述の昆虫種の幼生期から得られる。
【0019】
養殖とは、産生に続いて、稚魚の段階から成魚の段階へ、魚の維持及び生育を意味する。
【0020】
より具体的には、本発明が向けられる養殖は、商用目的によって養殖され、魚の集中的な生産、例えば閉鎖した場所における養殖を可能にする。
【0021】
魚の骨格は、頭蓋骨及び脊柱とも呼ばれる中骨を含む。この中骨は推骨を含み、推骨はそれらの横方向への発達のおかげで、肋骨を支える。
【0022】
「骨」とは、魚の中骨、推骨及び/又は肋骨、好ましくは中骨を意味する。
【0023】
「魚の骨格変形」とは、前記魚の通常の形の頭蓋骨及び/又は骨の任意の変化を意味する。
【0024】
「魚の骨の堅さを補強すること」とは、その骨の強度における改善を意味し、この強度は、針がその骨を通過するために必要とされる総仕事量(N.s)によって測定されうる。例えば、その骨の前記強度が、その皮膚、その筋肉、及びその椎骨の中へ、そして中を通って一定の速度(例えば1mm/s)で、ニードルプローブ(例えばStable Micro Systems Ltd.によって設計された、P/2N)を加圧することで、テクスチャーアナライザー(例えばStable Micro Systems Ltd.によって設計されたTA-XT2)を用いて決定されうる。その測定は、背びれDFの最後部と垂直に並んだ、魚の側線L上の点Aで行われうる(
図1参照)。
【0025】
都合よく、魚の骨の堅さの補強は、魚、特に成長しきっていない魚の骨格変形を防げる又は制限することを可能にする。
【0026】
都合よく、養殖中の魚の昆虫粉末の投与は、昆虫粉末が投与された魚の骨の堅さに関連して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも100%の堅さを補強することを可能にする。
【0027】
「投与」とは、魚に摂取する又は魚に餌を与えることを意味する。
【0028】
好ましくは、上記の使用するための昆虫粉末はその魚の操作前に投与される。
【0029】
「操作」とは、ヒト又は機械の介在によって行われる魚の任意の移動を意味する
【0030】
都合よく、その昆虫粉末を、魚を操作する前の10日間に魚に投与する。
【0031】
好ましくは、その昆虫粉末を、魚の操作前の15日間、より好ましくは20日間、さらにより好ましくは30日間、投与する。
【0032】
都合よく、その昆虫粉末を、魚の操作前後の上記の日中に投与する。
【0033】
都合よく、その昆虫粉末を、毎日、好ましくは1日に数回投与する。
【0034】
例えば、その魚の操作は、そのワクチン接種及び/又は淡水から海水へのその移動から生じる。
【0035】
ワクチン接種目的のための魚の操作前に、魚の任意の骨格変形を避ける及び/又は骨を補強するために、その昆虫粉末を養殖場に滞在する時、好ましくは養殖場に入れた時に、より好ましくは、孵化場の時に(孵化時に)魚に投与する。
【0036】
淡水から海水(又は塩水)への移動の目的のための魚の操作前に、魚の任意の骨格変形を避ける及び/又は骨を補強するために、淡水から海水へ移動する前の10日間、好ましくは15日間、より好ましくは20日間、さらにより好ましくは30日間、その昆虫粉末を魚に投与する。
【0037】
本発明が向けられるその魚は、それゆえ好ましくは、その/それらの養殖時に、淡水から海水に移動されるようになっている。
【0038】
その魚は、それゆえ、より具体的には野生状態におけるその/それらの一生の間に、淡水から海水に移動する魚である。
【0039】
より具体的には、本発明は淡水において繁殖し、主なその/それらの成長が海水内である魚に向けられる。この種類の魚は一般的に遡河魚と呼ばれている。
【0040】
都合よく、本発明に従い、魚の養殖時に、昆虫粉末を用いてサケ科に属する魚の骨の堅さを補強する。好ましくは、その魚はサケ科の標準属、イワナ属、オンコリンクス属、及び/又はイトウ、より好ましくは、サケ科に属する。
【0041】
本発明に従う特に好ましい種類は、サケ科(大西洋サケ)、Salmo trutta(ブラウントラウト)、アルプスイワナ(ホッキョクイワナ)、ギンザケ(太平洋サケ)、マスノスケ(チヌークサケ)及びOncorynchus mykiss(ニジマス)である。
【0042】
好ましくは、この魚への昆虫粉末の投与は、上記に示されるようにその/それらの養殖時に淡水から海水(塩水)への移動前にそれゆえ行われる。
【0043】
好ましくは、本発明に従って用いられる昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、少なくとも68重量%のタンパク質を含む。
【0044】
より好ましくは、その昆虫粉末は、少なくとも69重量%の粗タンパク質を、さらにより好ましくは、少なくとも70重量%の粗タンパク質を含み、重量%は昆虫粉末の総重量に対して与えられている。
【0045】
「タンパク質」とは、粗タンパク質の量を意味する。粗タンパク質の定量化方法は当業者に周知である。例えば、デュマ法又はケルダール法が言及されうる。好ましくは、規格NF EN ISO 16634-1(2008)に対応するデュマ法を用いる。
【0046】
そのような粉末の例示は、以下の実施例1及び2に記載される。
【0047】
都合よく、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、68から75重量%の、好ましくは69から72重量%の、より好ましくは約70重量%のタンパク質を含む。
【0048】
好ましくは、また、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、2から15重量%の、より好ましくは、4から12重量%の、さらにより好ましくは、6から10%のキチンを含む。
【0049】
本発明に従い、「キチン」とは、任意の種類のキチン誘導体、すなわち、N-アセチル-グルコサミン単位及びD-グルコサミン単位を含む任意の種類の多糖類誘導体、特に(時々、「キチン/ポリペプチド複合体」と称される)キチンポリペプチドコポリマーを意味する。また、これらのコポリマーは、往々にしてメラニン型の、顔料に組み合わせられうる。
【0050】
キチンは、セルロースに続いて、生物界で二番目に最も合成されているポリマーと考えられている。実際に、キチンは生物界における多数の種によって合成されている。キチンは、甲殻類及び昆虫の外骨格、並びに菌類を取り囲み、保護する外側壁を部分的に構成する。より具体的には、昆虫において、キチンはそれゆえ3から60%の外骨格を構成する。
【0051】
キチンの含量はその抽出物によって決定される。そのような方法はAOAC991.43法でありうる。
【0052】
(脂質含量とも呼ばれる)この昆虫粉末の脂肪含量は、昆虫粉末の総重量に対して、好ましくは5から20重量%を、より好ましくは9から17重量%を、さらにより好ましくは11から15重量%を含む。
【0053】
都合よく、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、13重量%の脂質を含む。
【0054】
好ましくは、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、少なくとも1重量%の、より好ましくは少なくとも2重量%の、さらにより好ましくは少なくとも3重量%のオレイン酸を含む。
【0055】
好ましくは、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、少なくとも1重量%の、より好ましくは少なくとも2重量%の、さらにより好ましくは少なくとも3重量%のリノール酸を含む。
【0056】
都合よく、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、オレイン酸を1重量%から6重量%の間で、より好ましくは、2重量%から5重量%の間で、さらにより好ましくは、2.5重量%から3.5重量%を含む。
【0057】
都合よく、その昆虫粉末は、昆虫粉末の総重量に対して、リノール酸を1重量%から6重量%の間で、より好ましくは、2重量%から5重量%の間で、さらにより好ましくは、2.5重量%から3.5重量%の間で含む。
【0058】
脂肪含量を決定するための方法は、当業者に周知である。例えば、そして好ましい方法において、この含量はECの規則番号152/2009の方法に従って決定されるだろう。
【0059】
好ましい態様に従い、その昆虫粉末は0.5から1.5の間の、好ましくは1に等しいオレイン酸/リノール酸比を有する。
【0060】
都合よく、本発明に従う昆虫粉末は、その昆虫粉末の総重量に対して、1から10重量%、好ましくは2から6重量%、例えば3から4%のオーダーの灰質を含む。
【0061】
灰質は本発明に従う組成物の燃焼から生じる残留物を構成し、主にリン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、及びカリウムからなる。本発明に従う昆虫粉末のこれらのミネラル類、特にリン及びカルシウムは高いバイオアベイラビリティを有する。
【0062】
その灰質の含量を決定する方法は、当業者に周知である。好ましくは、その灰質の含量をECの規則番号152/2009の27-01-2009によって設定された方法に従って決定された。
【0063】
都合よく、本発明に従う昆虫粉末は、その昆虫粉末の総重量に対して、2重量%未満のリンを含む。
【0064】
リン含量を決定する方法は当業者に周知である。好ましくは、そのリン含量を規格NF EN ISO/IEC 17025:2005に合う方法、例えば、(「誘導結合プラズマ重量分析装置」を表す)ICP-MSに従い決定した。
【0065】
都合よく、この昆虫粉末のタンパク質は、粗タンパク質の総重量に対して、80重量%以上の、好ましくは85重量%以上の消化性を有する。
【0066】
その消化性は、指令72/199/ECに記載される方法によって測定されるペプシン消化性である。
【0067】
より好ましくは、その消化性は、粗タンパク質の総重量に対して、86重量%以上、より好ましくは88重量%以上、例えば90%以上である。
【0068】
この昆虫粉末は以下の工程を含む方法によって調製されうる:
i)昆虫を殺虫すること、
ii)その昆虫の軟部から角皮を分離すること、
iii)その昆虫の軟部の成熟
iv)その昆虫の軟部を固形画分及び液体画分に分離すること、
v)工程iv)において得られた固形画分と工程ii)において得られた角皮を混合すること、
vi)工程v)において得られた混合物を乾燥し、乾燥混合物を得ること、並びに
vii)工程vi)において得られた混合物を粉砕すること。
【0069】
都合よく、殺虫する工程i)に続いて、その昆虫を直接的に用いて、その昆虫の軟部より角皮を分離することのii)工程を実行し、すなわちその昆虫が、工程i)と工程ii)との間に任意の処置、例えば、粉砕、凍結又は脱水を受けない。
【0070】
上述の方法の工程を以下の実施例1によりさらに十分に記載した。前記角皮はその昆虫の表皮によって分泌される外層(又は外骨格)である。それは、一般的に三つの層で構成される:上表皮、外表皮、及び内クチクラ。
【0071】
「軟部」とは、(特に筋肉及び内臓を含む)昆虫の肉及び(体液、水及び血リンパを含む)ジュースを意味する。特に、その軟部は昆虫のジュースからならない。
【0072】
その昆虫の軟部からの角皮を分離することをフィルタープレス又はベルトセパレーターを用いて、好ましくはベルトセパレーターを用いて実施しうる。
【0073】
「ベルトセパレーター」とは、絞りベルト(squeezing belt)及び多孔板ドラム(perforated drum)を含む装置を意味する。
【0074】
工程ii)で角皮を分離した後、それらを工程v)において固形画分と混合されるまで、これらは75~95℃、好ましくは80~90℃の温度で保持されうる。
【0075】
都合よく、本発明に従う昆虫粉末を鞘翅目の、好ましくは、チャイロコメノゴミムシダマシからの種類に属する昆虫種より得た。本発明に従う昆虫粉末はそれゆえ鞘翅目の粉末、好ましくはチャイロコメノゴミムシダマシの粉末である。
【0076】
本発明はそれゆえ、養殖中、魚の骨格変形を避けること及び/又は魚の骨の堅さを補強することにおいて使用するための、より具体的に鞘翅目、より好ましくはチャイロコメノゴミムシダマシの粉末に向けられる。
【0077】
本発明はさらに、養殖中、特に、例えば魚の操作前に、魚の骨格変形を避けること及び/又は魚の骨の堅さを補強することのための、昆虫粉末、例えば鞘翅目、好ましくはチャイロコメノゴミムシダマシの粉末の使用に関する。
【0078】
その昆虫粉末及びその投与又は使用方法は、それらが上記に記載されるのと同じ好ましい態様及び特徴を有する。
【0079】
特に、例えば、その昆虫粉末を、魚の操作前の10日間、本発明に従って用いる。
【0080】
好ましくは、その昆虫粉末を魚の操作前の15日間、より好ましくは20日間、さらにより好ましくは30日間用いる。
【0081】
都合よく、その昆虫粉末を魚の操作前後、上述の日間用いる。
【0082】
都合よく、その昆虫粉末を毎日、好ましくは1日あたり数回用いる。
【0083】
また、本発明は、魚を養殖する方法に向けられる。
【0084】
より具体的に、魚を養殖する方法は、前記魚に昆虫粉末を投与することを含む、養殖時に魚の骨格変形を避けること及び/又は魚の骨の堅さを補強することに向けられる方法である。
【0085】
都合よく、本発明に従い魚を養殖する方法は、その操作前の10日間に昆虫粉末を魚に投与することを含む。本発明に従う養殖する方法が向けられる魚は、上記の好ましいそれらであり、その昆虫粉末は都合よく上記の特徴を有し、特に例えば、その昆虫粉末は都合よく鞘翅目の粉末、好ましくはチャイロコメノゴミムシダマシの粉末である。
【0086】
前記昆虫粉末を投与すること又は使用することの方法は、上記のそれらと同じ好ましい態様及び特徴を有する。
【0087】
特に、その昆虫粉末を魚の操作前の15日間、より好ましくは20日間、さらにより好ましくは30日間投与する。
【0088】
都合よく、その昆虫粉末を、魚の操作前後で上述の日間投与する。
【0089】
都合よく、その昆虫粉末を魚に毎日、好ましくは1日あたり数回投与する。
【0090】
例えば、その魚の操作はそのワクチン接種及び/又は淡水から海水への移動より生じる。
【0091】
ワクチン接種の目的のための手技の前に、任意の骨格変形を予防する及び/又は魚の骨を補強するために、その昆虫粉末を、養殖場における滞在の時に、好ましくは養殖場に入れた時に、より好ましくは孵化場の時に(孵化の時に)、魚に投与する。
【0092】
淡水から海水(塩水)へ魚の移動目的のためのその操作前に、任意の骨格変形を防止する及び/又は魚の骨を補強するために、その昆虫粉末を淡水から海水へ移動する前の10日間、好ましくは、15日間、より好ましくは20日間、さらにより好ましくは30日間魚に投与する。
【0093】
より具体的に、魚に投与される昆虫粉末は、それらの餌の総重量に対して、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、さらにより好ましくは少なくとも20重量%を構成する。本出願における「餌」は、与えられる比率において、魚へ投与される全ての構成物を意味し、それは構成物を併用又は単独投与することを可能にする。
【0094】
本発明に従う昆虫粉末は、例えば、魚の餌において一般的に投与される魚粉の代替手段として用いられうる。
【0095】
それは、部分的に又は全体的に魚粉に取って代わる。好ましくは、その昆虫粉末は魚粉の25重量%以上、好ましくは、魚粉の50重量%以上に取って代わる。
【0096】
その昆虫粉末による魚粉の置換は、養殖時に魚の骨格変形を避けること及び/又は魚の骨の堅さ補強することを可能にする。
【0097】
好ましくは、その昆虫粉末は、一般的に魚に投与される魚粉の50%に取って代わる。
【0098】
また、その昆虫粉末は、魚に一般的に投与される魚粉の全体に取って代わる。
【0099】
餌の他の構成物は、魚粉、大豆ミール、エンドウ、小麦、トウモロコシ、小麦グルテン、トウモロコシグルテン、植物性タンパク質の濃縮物、例えば、大豆、大豆レシチン、油(特に、例えば魚、ナタネ)、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤、自然食品の顔料、特に、例えば、アスタキサンチンのようなカロテノイド、メチオニン、リシン、トレオニンのようなアミノ酸、及び/又は増粘剤(グァーガム)のような添加物、及びモノナトリウムリン酸塩より都合よく選択される。
【0100】
そのビタミン類及び/又はミネラル類は、例えば、予め混合されるように提供されうる。
【0101】
都合よく、魚に投与される餌は、餌の総重量に対して、少なくとも0.4重量%の、好ましくは少なくとも0.6重量%の、より好ましくは0.6重量%から2重量%のキチンを含む。
【0102】
都合よく、魚に投与される餌は、餌の総重量に対して、33から57重量%の、好ましくは38から52重量%の、例えば43から47%のオーダーの、タンパク質を含む。
【0103】
都合よく、魚に投与される餌は、餌の総重量に対して、13から38重量%の、好ましくは18から31重量%の、例えば22から26%のオーダーの、脂質を含む。
【0104】
都合よく、魚に投与される餌は、餌の総重量に対して、1から8重量%の、好ましくは2~7重量%の、例えば5~6%のオーダーの、灰質を含む。
【0105】
本発明の他の特徴及び利点は、参照によって、例示の方法によって与えられる、以下の実施例より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】魚の骨の機械的な特性の測定の位置を示した魚の図。
【0107】
【
図2】24日のコースの間、魚の餌A、B、又はCに従う魚の骨の強度(N.s)を例示する図。
【実施例】
【0108】
実施例1:昆虫粉末の調製のための方法
本発明に従う昆虫粉末を、チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫から調製し、これらの幼虫に、(小麦ふすまタイプの)穀物の副産物に基づく餌を与えた。幼虫を受け取ったら、殺虫する前に主な分解なく、それらの養殖タンク内でそれらを4℃で0~15日間保存しうる。
【0109】
工程1:前記昆虫のブランチング
(+4℃から+25℃で)生きた幼虫を、穿孔したコンベアベルト(1mm)上で、2から10cmの間を含む厚さを有する層においてブランチング槽へと運搬した。続いて、その昆虫を水中で(スプレーノズルで)92℃でブランチングした。ブランチング槽内の滞留時間は5分間である。
【0110】
ブランチング後の幼虫の温度は75℃から92℃の間を含む。
【0111】
工程2:前記昆虫の角皮から軟部を分離すること
ブランチング後、その幼虫をベルトセパレーター(Baader社からのベルトセパレーター601)の供給ホッパーへと運び、その幼虫の軟部から角皮を分離した。そのドラムの穿孔の直径は1.3mmである。
【0112】
その分離を、幼虫が環境温度へ冷える時間がないように、殺虫後すぐに実施する。
【0113】
その昆虫の軟部をタンクに収集し、角皮をスクレーパーブレードを用いて回収する。
【0114】
工程3:前記昆虫の軟部の成熟
その昆虫の軟部を、撹拌しながら約90℃の温度下で1時間、工程2の回収タンク内に置く。
【0115】
工程4:軟部の固形画分、水性画分及び脂質画分への分離
続いて、前記軟部を三相のデカンターを用いて3つの画分に分離した。用いられたデカンターはFlottwegからのTricanter(登録商標)Z23である。
分離条件:
流速:最大500kg/時間;
ボウルの回転速度:4806rpm(3000G);
ボウルとスクリューとの間の差動速度(Y分):5%(1.4r/mm)。
【0116】
3つの画分をこの分離工程の終わりに得た:脂肪画分、固体画分及び水性画分。
【0117】
工程5:角皮と固形画分との混合
工程2において回収した角皮の全部(100%)をそれらが工程4において得られる固形画分の全体と混合されるまで、すなわち、約5.7の固形画分/角皮(重量)比になるまで、80~90℃の温度で維持する。Vrieco-Nauta(登録商標)からのコニカルスクリューミキサーを用いた。
【0118】
工程6:前記混合物の乾燥
乾燥混合物を得るために、工程5において得られた混合物を、Haarslevからのディスクドライヤーを用いて乾燥する。
【0119】
工程7:粉砕
前記乾燥混合物を(8mmの厚さの-6つのリバーシブルな動作部位の)連続ハンマーミルを用いて最終的に粉末化した。その粉砕機は流量制御フラップを有するホッパーによって供給される(180kg/時間)。その穿孔処理した鉄板を用いて、アウトプットの粒子サイズを1.8mmであるように制御した。そのモーターの回転速度は3000rpm(電気モーター化、吸収電力4kW(5.5HP))である。
【0120】
実施例2:実施例1において得られた昆虫粉末の特性評価
実施例1において調製した昆虫粉末を以下の方法を用いて特性評価した:
タンパク質:デュマ法と称される方法、そして規格NF EN ISO 16634-1(2008)に対応している。
脂質:EC規制番号152/2009の方法
含水量:2009年1月27日付のEC規制番号152/2009(103℃/4時間)に準拠した方法。
灰質:2009年1月27日付のEC規制番号152/2009の方法
リン:規格NF EN ISO 17025:2005に準拠した(「誘導結合プラズマ重量分析装置」を表す)ICP-MS
カルシウム:規格NF EN ISO 17025:2005に準拠した(「誘導結合プラズマ重量分析装置」を表す)ICP-MS
キチン:AOAC991.43法を用いて食物繊維を投与する(これらは、昆虫の餌において大部分がキチンで構成されているため、そのようにして得られたキチンの値は、若干過大評価されている)。
1.8mmスクリーンによる残留物:1.8mm未満の粒子サイズを有する昆虫粉末の構成物の量を構成する。
腸内細菌:規格NF ISO 2128-2(2004年12月)に準拠した方法、30℃及び37℃。
サルモネラ菌:方法:IRIS Salmonella(登録商標)認証BKR23/07-10/11
ペプシン消化性:指令72/199/ECにおいて記載される方法。
【0121】
昆虫粉末の組成物を以下の表1に詳述し、示されるパーセンテージは、昆虫粉末の総乾燥重量に対する重量パーセンテージである。
【0122】
【0123】
前記灰質は特定のカルシウム及びリンを含み、そしてその昆虫粉末は0.06重量%のカルシウム、及び0.67重量%のリンを含み、これらのパーセンテージは昆虫の総乾燥重量に対する、重量パーセンテージである。さらに、その昆虫粉末は85%以上のペプシン消化性を有する。
【0124】
実施例3:実施例1において得られた前記昆虫粉末の魚の骨の堅さの補強効果
【0125】
1.材料及び方法
本実施例で用いられる魚は、60gの初期重量を有する大西洋サケ(Salmo salar)である。
【0126】
これらの魚は、0%の昆虫粉末(餌A)、50%の昆虫粉末(餌B)、又は100%の昆虫粉末(餌C)によって置き換えられる魚粉を含む3つの異なる餌から選択される餌を受ける。
【0127】
これらの餌を以下の表2に詳述し、示されるパーセンテージは餌の総重量に対して、重量パーセンテージである。
【0128】
【0129】
4月に24日間(4月5日から4月28日まで)魚を3つの水槽において12℃の淡水で養殖した。
【0130】
続けて、それらの中骨の機械的な特性を評価するまで、それらを+3℃で冷凍した。
【0131】
養殖の条件は以下の表3に示されており、その魚は満腹に餌を与えられている:
【0132】
【0133】
その骨の機械的な特性を、背びれDFの最後部と垂直に並んだ、魚の側線L上の点A(
図1)でその皮膚、その筋肉、及びその椎骨の中へ、そして中を通って一定の速度(例えば1mm/s)で、ニードルプローブ(P/2N型)を押し当てることによって、テクスチャーアナライザー(Stable Micro System Ltd.によって設計されたTA-XT2参照)を用いて決定した。骨に十分に到達できなかった試験を統計から除外した(表4)。その骨の強度は、針が椎骨を通過するために必要とされる総仕事量(N.s)によって測定された。
【0134】
【0135】
2.結果
餌Aを与えられた魚の中骨の強度の強さは餌B又はCを与えられた魚のそれよりも著しく低かった(
図2)。
【0136】
実際に、餌B又はCを与えられた魚はそれぞれ約24N.s又は32N,sのそれらの骨の強度を有し、一方で、餌Aを与えられたそれらは、約15N.sのそれらの骨の強度を有した。
【0137】
それゆえ、餌Aを与えた魚と比較して、餌Bを与えた魚について60%まで、餌Cを与えた魚について113%まで、骨の強度の強さを改善した。
【0138】
従って、昆虫粉末の、より具体的には、実施例1において調製した粉末の使用は、魚の骨の堅さを補強することを可能にする。