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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】バルブの耐圧検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20240807BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20240807BHJP
   G01M 13/003 20190101ALI20240807BHJP
【FI】
G01M3/04 H
G01M3/20 B
G01M13/003
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021524933
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022344
(87)【国際公開番号】W WO2020246592
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019106832
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】吉良 直樹
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0260722(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109297652(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104236803(CN,A)
【文献】中国実用新案第204085875(CN,U)
【文献】中国実用新案第205691302(CN,U)
【文献】特開昭58-146828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/04
G01M 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査スペース内の上部に供試弁の耐圧検査を実施するチャンバが設けられ、このチャンバは、供試弁の検査部位を包囲するカバー本体と、このカバー本体を前記検査スペース内で少なくとも上下方向に移動する吊下げ部とを備え、前記カバー本体は、ガスセンサが装着された被検査空間と、下部が開放された半開放型に形成されて前記検査部位を包囲する開口部と、この開口部に形成されて内側に向けてエアを吹き出し可能な開口縁とを有し、ボデーの軸筒部にステムを挿着した半完成状態の前記供試弁をクランプ治具で前記検査スペースの下部に固定し、前記吊下げ部を下降して、検査対象部位となるステム軸シール部位を、前記開口部を有する前記カバー本体で覆って非密封状態に包囲すると共に、前記開口縁からのエアにより前記カバー本体の外部環境領域と前記カバー本体の被検査空間とが連通する連通領域を区画形成するエアカーテンが構成され、このエアカーテンで前記開口部を塞ぐことにより外部と前記被検査空間とを遮断して外部環境領域の雰囲気ガスの影響を受けないようにしつつ、サーチガスを封入した前記供試弁の前記検査部位からのサーチガスの漏れの有無を検知可能に設けることにより、クラスやサイズが異なる前記供試弁でも、検査対象部位となるステム軸シール部位を連続的に耐圧予備検査することを可能としたことを特徴とするバルブの耐圧検査装置。
【請求項2】
前記カバー本体における前記被検査空間内をエアパージするためのエアパージ流路が設けられた請求項1に記載のバルブの耐圧検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの耐圧検査装置に関し、特に、耐圧検査用の被検査空間を外部から隔てることにより被検査空間への影響を抑えたバルブの耐圧検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査体を耐圧検査する装置として、例えば、特許文献1の漏れ検出装置が開示されている。この装置は、車体の漏れにより耐圧検査するものであり、車体内にサーチガスが注入された状態で試料採取器が車体表面を移動し、車体に生じた漏れ流路からの漏れをガスセンサで検出するようになっている。この場合、サーチガスとして一般に用いられる水素ガスやヘリウムガスは拡散性が高いことから、試料採取器から流出させた空気を車両表面に当ててこれらの間に環状のエアカーテンを作り、このエアカーテンの内側に設けた試料採取空間で漏れ流路からのサーチガスを検出している。このように、試料採取空間と外部雰囲気とをエアカーテンで隔てることで、試料採取空間を小さく設定して拡散性の高いサーチガスの検出を容易にしつつ、検査空間への外気の浸入を防いで試料採取空間内のサーチガスの漏れを正確に検出しようとするものである。
【0003】
特許文献2の漏れ検出器は、原動機付車両の車体表面からの信号ガスの漏れを検出する耐圧検査用の装置である。この装置では信号ガス(ヘリウムガス)を検出する検出ヘッドが走査可能に設けられ、この検出ヘッドにはバリヤガスのカーテン(エアカーテン)を構成する環状開口部に加えて、この環状開口部の外周部には複数のオリフィスが形成される。これにより、オリフィスを通して等しい質量流量のエアを環状に流し、局部的なエアの吐出を防いた状態で均等なエアカーテンを設け、このエアカーテンにより検査空間を構成して外気の影響を防ごうとするものである。
【0004】
一方、特許文献3のガス漏洩検知装置は、半導体製造設備に設けられた空圧バルブからの漏洩ガスを検知して耐圧検査をおこなうために用いられ、円筒状のケースからなる捕集部を用いて外部へのガスの漏洩を防ぐ構造に設けられている。捕集部は、下端の開口部からバルブが装入されてバルブを上方から覆うように取付けられ、開口部には蓋部材が取付けられる。蓋部材は略半円形状に形成され、その内周側にはバルブの外周面に当接可能な溝が形成される。この溝と、蓋部材の一外縁部には接着剤が塗布され、溝がバルブ外周面、一外縁部が捕集部の開口部にそれぞれ結合されることにより、開口部が蓋部材で閉鎖される。これによって、外部へのガス漏れを阻止しつつ、所定の容積の捕集部内でバルブから漏れ出たガスを検知してバルブの破損を探すようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表昭58-500672号公報
【文献】特開昭60-73329号公報
【文献】特表2016-536623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2は、検出側から吐出させた空気を車両表面に当ててこれら検出側と車両表面の間にエアカーテンを設けるようにしたものであり、被検査対象である車両表面が略フラット面であって、この略フラット面の一部の表面からの漏れを検査する場合に用いられる。これらの装置では、凹凸形状のバルブとの間に検査領域を隔てるエアカーテンを設けることが難しく、バルブを耐圧検査することは困難である。
これらの装置では、検出部が車体の表面を移動して漏れを検出するものであるため、車両の一部又は全部の耐圧検査を一度に実施することができず、車両全体を検査するためには多大な時間を要することになる。
【0007】
一方、特許文献3のガス漏洩検知装置は、半導体製造設備の流路に接続された各バルブに固定して取付け、各バルブから発生する漏れを据え置きの状態で検知するものである。そのため、この検査装置を用いて異なる供試弁の耐圧検査を連続的に実施することは難しい。この装置は、捕集部内に装入されたバルブ全体からのガス漏れを検知するものであり、バルブの一部分からの漏れを検査することはできない。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、漏れを検査する空間を小さく設定してサーチガスの検知を容易にしつつ、この空間への外気の浸入を防ぐことにより供試弁の一部又は全部からの漏れを短時間で一度に正確に検査でき、異なる供試弁を連続して耐圧検査することが可能なバルブの耐圧検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、検査スペース内の上部に供試弁の耐圧検査を実施するチャンバが設けられ、このチャンバは、供試弁の検査部位を包囲するカバー本体と、このカバー本体を検査スペース内で少なくとも上下方向に移動する吊下げ部とを備え、カバー本体は、ガスセンサが装着された被検査空間と、下部が開放された半開放型に形成されて検査部位を包囲する開口部と、この開口部に形成されて内側に向けてエアを吹き出し可能な開口縁とを有し、ボデーの軸筒部にステムを挿着した半完成状態の供試弁をクランプ治具で検査スペースの下部に固定し、吊下げ部を下降して、検査対象部位となるステム軸シール部位を、開口部を有するカバー本体で覆って非密封状態に包囲すると共に、開口縁からのエアによりカバー本体の外部環境領域とカバー本体の被検査空間とが連通する連通領域を区画形成するエアカーテンが構成され、このエアカーテンで開口部を塞ぐことにより外部と被検査空間とを遮断して外部環境領域の雰囲気ガスの影響を受けないようにしつつ、サーチガスを封入した供試弁の検査部位からのサーチガスの漏れの有無を検知可能に設けることにより、クラスやサイズが異なる供試弁でも、検査対象部位となるステム軸シール部位を連続的に耐圧予備検査することを可能としたバルブの耐圧検査装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、カバー本体における被検査空間内をエアパージするためのエアパージ流路が設けられたバルブの耐圧検査装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、カバー本体により検査スペース内に設置された供試弁の一部の検査部位を 下部が開放された半開放型の開口部より非密封状態に包囲することで被検査空間の容積を小さく設定し、カバー本体内において供試弁から漏れ出たサーチガスが検査時間内にガスセンサに到達する程度の気流の流れを許容できるようにしてサーチガスの検知を容易にしつつ、カバー本体の外部環境領域と被検査空間との連通空間をエアカーテンで区画形成することにより、被検査空間を囲むようにして供試弁の検査部位を外部から隔てて外部環境領域の雰囲気ガスの浸入を防いでその影響を抑制できる。これにより、エアカーテンで隔たれた小さい容積の被検査空間に供試弁からのサーチガスを拡散させた後に滞留させ、この供試弁からの漏れをガスセンサで一度に検知してごくわずかなサーチガスの漏れであっても短時間で高精度に耐圧検査を実施できる。しかも、被検査空間から外部環境領域へのサーチガスの漏洩を防ぎ、外部の設備等に悪影響を及ぼすおそれがない。ボデーの軸筒部にステムを挿着した半完成状態の供試弁をクランプ治具で検査スペースの下部に固定し、吊下げ部を下降して、検査対象部位となるステム軸シール部位を、開口部を有するカバー本体で覆って非密封状態に包囲し、その後、エアカーテンで外部環境領域の雰囲気ガスを遮断して耐圧予備検査する構成であることから、バルブの耐圧検査をおこなう場合には、供試弁に対してこの耐圧予備検査と、耐圧予備検査に続けて実施される耐圧本検査とに分けておこなうようにし、このうち、耐圧予備検査において、クラスやサイズが異なる供試弁でも、検査対象部位となるステム軸シール部位を連続的に耐圧検査することで、被検査空間の容積を小さくしてごくわずかなサーチガスの漏れであっても検知可能となり、サーチガスを短時間で高精度に検知して正確な耐圧検査を実施可能となる。そして、完全に組立てた状態の供試弁に対しておこなう耐圧本検査の前に、上記の耐圧予備検査を実施するようにすれば、供試弁全体を組立てることなく、各供試弁の欠陥や加工不良を早期に検出することが可能になる。耐圧予備検査後には、供試弁からカバー本体を上昇させ、アンクランプすることで供試弁を取り外しでき、続いて、同様にして供試弁をクランプ治具で固定し、カバー本体により漏れを検知させることで、自動化により連続して供試弁を耐圧予備検査することも可能になる。
さらに、供試弁の耐圧検査部位を部分的に耐圧検査することが可能になり、組立て途中の供試弁の一部を耐圧予備検査することが可能となる。しかも、所定広さの被検査空間で供試弁を包囲することで耐圧検査に要する時間を略一定にでき、被検査空間の容積を小さく設けるようにすれば検査時間の短縮化も可能になる。
【0015】
供試弁の突出部位を耐圧検査する場合であっても、開口部をエアカーテンにより確実に遮断し、被検査空間内への外部環境領域の雰囲気ガスの浸入を確実に防いでサーチガスを高精度に検知できる。
【0016】
供試弁のステム軸シール部などの突出部位を耐圧検査する場合であっても、開口部の開口縁から出るエアカーテンにより外部と被検査空間とを確実に遮断し、この被検査空間内への外部環境領域の雰囲気ガスの浸入を確実に防いでサーチガスを高精度に検知できる。
【0017】
カバー本体の開口縁から内側に向けて吹き出したエアが互いに衝突して開口部を塞ぐように包囲することにより、外部環境領域の雰囲気ガスをエアカーテンで遮断してカバー本体内への浸入を阻止し、供試弁全体からのカバー本体内への漏れを確実に検知できる。これにより、供試弁の種類やクラス、サイズが異なる場合であっても、この供試弁をカバー本体に収納した状態で外部の雰囲気ガスの影響を抑えつつ高精度な耐圧検査が実施可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、被検査空間内をエアパージするエアパージ流路を設けることで、このエアパージ流路を通して被検査空間内のサーチガスを迅速に排出でき、耐圧検査後に次の供試弁を短時間で耐圧検査可能となる。さらには、被検査空間への外部からの雰囲気ガスの浸入をエアカーテンで防ぐようにすれば、より早くサーチガスを排出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のバルブの耐圧検査装置の実施形態を示す概略断面図である。
図2】供試弁の耐圧検査状態を示す拡大断面図である。
図3】カバー本体の斜視図である。
図4】カバー本体の縦中央断面図である。
図5図4のA-A断面図である。
図6】カバー本体の底面図である。
図7】本発明の耐圧検査装置の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明におけるバルブの耐圧検査装置を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の耐圧検査装置(以下、装置本体1という)の実施形態、図2は耐圧検査装置の拡大断面図、図3はカバー本体を示している。
【0021】
図1に示した装置本体1は、被検査物である供試弁2にサーチガスを供給してこの供試弁2を耐圧検査可能に設けられ、枠体10、チャンバ11、ガスセンサ12、支持用治具13、クランプ治具14を有している。
【0022】
枠体10は、供試弁2を内側に装着可能な枠状に形成され、その内部には供試弁2の耐圧検査をおこなうための検査スペースRが設けられる。枠体10の一部には開放部20が設けられ、この開放部20より、図1における枠体10の右側あるいは手前側から供試弁2の脱着が可能になっている。図において、枠体10の奥側には一点鎖線で示した2つの排気ファン21が図示しない板材等を介して取付けられ、この排気ファン21の回転により検査スペースR内の排気が可能になっている。枠体10内部には、チャンバ11、支持用治具13、クランプ治具14が取付けられる。
【0023】
チャンバ11は、供試弁2の耐圧検査を実施するために設けられ、カバー本体30、吊下げ部31を有している。図2図6において、カバー本体30は略矩形状に形成され、その下部には開口部32が設けられる。このようにカバー本体30は、下部が開放された半開放型に設けられ、その内部が供試弁2の一部又は全部を包囲可能に設けられる。本例では、供試弁2の一部であるステム軸シール部位33を検査対象部位(耐圧検査部位)とし、カバー本体30の内部には耐圧検査部位33を包囲して耐圧検査可能な広さの被検査空間Sが設けられる。図1に示すように、チャンバ11における吊下げ部31は、カバー本体30の上部に取付けられ、この吊下げ部31を介してチャンバ11が検査スペースR内を前進・後退及び上昇・下降移動可能に設けられている。
なお、本実施形態においては、カバー本体30の寸法は、高さ50mm、長さ70mm、奥行40mmとコンパクトな構造となっている。
【0024】
図2において、カバー本体30の被検査空間Sは、供試弁2に供給されるサーチガスが拡散可能な空間をいい、外部から隔離された状態に設けられる。本実施形態における「外部から隔離された状態」とは、カバー本体30内が密封状態ではなく、いわゆる非密封状態となることを意味する。すなわち、カバー本体30で供試弁2の耐圧検査部位33を非密封状態で包囲したときに、被検査空間S内の供試弁2に外部の風などの影響が及ぶことを防止すると共に、カバー本体30内において供試弁2から漏れ出たサーチガスが検査時間内にガスセンサ12に到達する程度の、気体の流れを許容できる状態をいう。
【0025】
カバー本体30には、ガスセンサ12、エアパージ流路34が設けられる。
ガスセンサ12は、カバー本体30内の被検査空間Sにおいて、サーチガスが滞留しやすい所定の複数箇所、本例ではカバー本体30内側面の3箇所、カバー本体30内上面の1箇所に形成されたセンサ取付穴35にそれぞれ装着され、これら4箇所のガスセンサ12により、供試弁2内に供給されるサーチガスの耐圧検査部位33からの漏れを、被検査空間S内で確実に検知可能になっている。ガスセンサ12の数は任意に設定可能であり、その数を増やすようにすれば、検出能力を向上させて検出時間の短縮や自動化も可能になる。
【0026】
本実施形態におけるガスセンサ12は水素センサよりなり、この水素センサで供試弁2内に供給される後述の水素ガス(サーチガス)を検出可能になっている。水素センサを用いることにより、拡散性の気体である水素と窒素との混合気体中の水素の漏れを確実に検出可能となる。ガスセンサ12は、カバー本体30に対して位置を調整できるように移動可能に取付けられていてもよい。サーチガスとしては、ヘリウムガスを用いることもでき、この場合、ガスセンサとして気体熱伝導式センサを用いるようにすればよい。
【0027】
ガスセンサ12は、所定の電圧印加により、漏れ出した水素の濃度に応じた電圧を出力するモジュールからなっている。検査前には、抵抗調整用のボリュームにより出力電圧を変えて、ガスセンサ12の暖機状態や大気中の水素濃度の変化に応じて感度調整を精細におこなう必要がある。
【0028】
ガスセンサ12としては、アナログ信号(0-5V)を出力可能な、市販の半導体式センサが用いられ、例えば、熱線型半導体式水素センサが用いられる。このガスセンサ12は、酸化第二スズ(SnO)などの金属酸化物半導体表面での水素ガスの吸着による電気伝導度の変化を利用するセンサである。この場合、出力電圧が、ガス濃度に対して対数的になって、低濃度でも高感度の出力が可能になる。
【0029】
エアパージ流路34は、カバー本体30における被検査空間Sから外部に連通するように設けられ、このエアパージ流路34にはパージエア供給管36が接続される。図示しないコンプレッサによりパージエア供給管36からパージ用エアが供給されると、このエアがエアパージ流路34を通して被検査空間S内に供給され、被検査空間S内がエアパージされる。エアパージ流路34は、後述するエアカーテン40用のエア流路41とは別のエア流路か、或はエアカーテン用エア流路41と切り換え可能な流路に設けられていてもよい。
【0030】
図3図4図6において、カバー本体30の被検査空間Sの外側には、エアカーテン40を構成するための破線で示したエア流路41が被検査空間Sと非連通の状態で中空状に形成され、このエア流路41は、エア供給口42と分岐流路43とを有している。エア供給口42は、カバー本体30の上面側に形成され、図5においてこのエア供給口42から左右に分岐するように分岐流路43が形成される。分岐流路43は、カバー本体30の側面に沿って薄いスリット状(面状)にそれぞれ形成され、その下部に形成されるエアの吐出口である開口縁45が開口部32に沿うように左右にそれぞれ形成される。これらにより、各開口縁45から吐出されたエアが対向あるいは交差することでエアカーテンが構成される。
【0031】
図5の左右の各開口縁45は、カバー本体30の鉛直方向に対して所定の角度θで内側に向けて(内向きに)傾斜するように設けられる。エア供給口42からエアが供給されると、その分岐位置で各分岐流路43にエアが流れ込み、このスリット状分岐流路43を通過した後に開口縁45から吹き出される。エアは開口縁45から内側に向けて流れることで、左右からのエアが互いに衝突するように干渉し、被検査空間Sを囲むようにして開口部32の外周側に一点鎖線で示すエアカーテン40が構成される。
【0032】
ここで、エア供給口42の前段にあるスピコン(絞り弁:図示せず)に供給するエアの圧力を、略0.6MPaの大きさとした場合の開口縁45の望ましい角度θを詳述する。なお、0.6MPaのエア圧力は、エア駆動用途として一般に用いられる圧力である。
前記スピコンに供給されるエアは、スピコンによりエアの流量を略100mL/min~略300mL/minに調整されている。
【0033】
上記エアの流量において、開口縁45の鉛直方向からの角度θを略50°以上とした場合には、エアカーテン40とカバー本体30の底面側とにより囲まれる側面視略三角形状の領域の容積を小さくしつつ、開口縁45から吹き出されたエア同士を強く衝突させ、被検査空間Sに供試弁2から漏れ出たサーチガスの外部への流出を抑えることが可能となった。
【0034】
一方で、角度θを略75°以下とした場合には、開口縁45から吹き出されたエア同士が衝突して下方側に流れることで被検査空間S方向へのエアの拡散上昇を防ぎ、被検査空間Sへのエアの流入を防止することができた。
【0035】
これらのように、角度θを所定の大きさ以上(略50°以上)とすることで、被検査空間Sのサーチガスの滞留を維持して漏れを防ぎ、一方、角度θを所定の大きさ以下(略75°以下)とすることで、被検査空間Sへの外部雰囲気の浸入を確実に防止できることが確認された。これらのことから、本例では、開口縁45が、50°≦角度θ≦75°の範囲となるように形成し、これによってエアによる被検査空間への悪影響を回避し、耐圧検査の精度を一層向上させている。
本例では、前述の条件により角度θを上記の範囲内に設定したが、この角度θは、カバー本体30の大きさや形状、供試弁の態様等の各種条件に応じて最適な大きさに設定することが望ましい。
【0036】
また、エアの圧力も、カバー本体30の開口部32を塞ぎ、外部と被検査空間Sとが遮断される程度で良く、更には、カバー本体30の下方への流れを維持することにより、外部環境領域Tの雰囲気ガスを被検査空間Sから遠ざけることができる程度の圧力であれば、なおよい。
【0037】
開口縁45の幅寸法は適宜の大きさに設けることができ、この幅の大きさを変えることでエアの風量を変更可能になる。
【0038】
装置本体1は、エアカーテン40を備えていることで、カバー本体30の外部環境領域Tと、カバー本体30の被検査空間Sとが連通する開口部32付近の連通領域が区画形成され、外部(外気)と被検査空間Sとが遮断される。このため、カバー本体30の被検査空間S内では、外部環境領域Tの雰囲気ガスによるサーチガスへの影響を抑制可能となっている。
【0039】
図1図2において、支持用治具13は、供試弁2の両側付近が載置可能な所定間隔で枠体10に設けられて供試弁2を下方側から支持可能になっている。支持用治具13の上面側には載置面46が設けられ、この載置面46は、六角形や八角形などの多角形状である供試弁側部を保持可能なテーパ形状、或は円筒形状である供試弁側部を保持可能な円弧形状などの適宜形状に設けられる。
【0040】
クランプ治具14は、固定クランプ治具50、可動クランプ治具51を有している。
固定クランプ治具50は、供試弁2の一次側となる位置に固定用保持具52を介して配置され、この固定クランプ治具50の中央付近には供試弁2内部にサーチガスを供給するための一次側流路53が形成されている。固定クランプ治具50の供試弁2の一次側との対向面には、リング状のガスケットからなるシール部材54が装着され、このシール部材54により、供試弁2固定時においてこの供試弁2との圧接部分からの漏れが防がれる。
【0041】
可動クランプ治具51は、供試弁2の二次側に配置され、前記固定クランプ治具50とにより、供試弁2を保持可能に締付け方向に進退自在に取付けられる。
前述したカバー本体30の進退方向と、供試弁2のクランプ治具である可動クランプ治具51の進退方向とは、同一方向になるように配置されている。可動クランプ部材51の内部にはパージ流路となる二次側流路55が設けられ、供試弁2の耐圧検査後には、この二次側流路55を介して供試弁内のサーチガスが空気圧でパージされる。
【0042】
可動クランプ治具51の供試弁2の二次側との対向面には、固定クランプ治具50と同様にリング状のガスケットからなるシール部材54が装着される。このシール部材54により、供試弁2固定時における可動クランプ治具51との圧接部分からの漏れが防がれる。
【0043】
供試弁2はボールバルブからなり、このボールバルブ2の構成部品の一部を組立てた状態で装置本体1により耐圧検査が実施される。供試弁2は、鋳物部品であるボデー60を有し、このボデー60に形成された軸筒部61に回転操作用のステム62が挿着され、この上からパッキン押え63が螺着により取付けられ、ステム62が位置決め状態で回転可能に設けられる。ステム62外周にはOリング65が2箇所に装着され、これらOリング65によりステム軸シール部である耐圧検査部位33が設けられ、この耐圧検査部位33をカバー本体30で包囲して漏れを検出することで耐圧検査を実施する。
【0044】
上記供試弁2に対する耐圧検査用のサーチガスとしては、例えば、水素を含む気体が用いられ、このうち、拡散性を有するガスとして、5%水素と、不活性のガスである95%窒素をそれぞれ含有する混合気体の水素ガスが用いられる。この混合気体は、耐圧試験時に外部漏れがある場合には、ボデー60のステム軸シール部位33のパッキン押え63の螺着部付近から漏れ出す性質を有している。
【0045】
サーチガスである5%水素と95%窒素の混合気体は不燃性の高圧ガスであるため、安全に使用可能となる。サーチガスは、水素を含む気体以外のガスであってもよく、例えば、ヘリウムガス、メタンガスなどの各種ガスを用いることができる。サーチガスとして水素ガスを用いた場合には、前記ガスに比較して安価となる。一方、ヘリウムガスを用いた場合には、水素含有の混合気体と同様に拡散性が高くなる。
【0046】
なお、上記実施形態では、装置本体1を耐圧本検査前の耐圧予備検査用として用いているが、耐圧予備検査用としての使用に限られることはない。
【0047】
本例では、小口径のねじ込み型ボールバルブを供試弁2としていることから、カバー本体30は、供試弁2のステム軸シール部位33を包囲可能な形状とし、このカバー本体30の長さ方向の両側のみにエア流路42の分岐流路43を設けるようにしているが、これ以外の態様のカバー本体30を設けるようにしてもよい。例えば、カバー本体30の長さ方向に加えて幅方向の両側にもスリット状の分岐流路を設け、この幅方向の分岐流路の開口縁からエアを吐出するようにしてもよい(図示せず)。この場合、各開口縁からエアが吐出されたときに、長さ方向及び幅方向のそれぞれで対向あるいは交差するようにして、開口部32を包囲するようなエアカーテンが構成される。なお、カバー本体30の長さ方向ではなく、幅方向の両側のみにスリット状の分岐流路を設け、この幅方向の分岐流路の開口縁からエアを吐出するようにしてもよい(図示せず)。
【0048】
また、例えば、大口径のボールバルブを供試弁とする場合には、このボールバルブのステム軸シール部位を包囲可能な矩形状或は円筒状等にカバー本体を形成し、このカバー本体の開口部の全周に渡って開口縁を設けるようにすればよい(図示せず)。この場合、開口縁から吹き出されるエアにより被検査空間を全周側から包囲するようにエアカーテンを構成し、外部環境領域に対する被検査空間の遮断性を一層向上できる。そのため供試弁が大型であっても耐圧検査の精度を維持可能となる。
【0049】
カバー本体による検査対象部位は、供試弁のステム軸シール部位に限らず、供試弁の各種部位とすることができる。これにより、供試弁全体を検査対象部位とし、供試弁全体から生じる漏れを検知することも可能となる。さらに、供試弁はボールバルブに限ることはなく、グローブバルブやゲートバルブなどの各種バルブを対象とすることもでき、これらバルブの一部や全体を検査対象部位として耐圧検査を実施できる。
【0050】
このとき、カバー本体は矩形状に限られることはなく、検査対象部位の大きさや形状に応じて、その外観形状や大きさ、被検査空間Sの容積を任意に設定することができ、この被検査空間S内に供試弁の被検査対象部位を包囲して耐圧検査を実施可能となる。検査対象部位(被検査対象)を供試弁(バルブ)以外とすることもでき、この検査対象部位としては、例えば、各種アクチュエータ、圧力容器、ポンプなどの機器、又は、管などの流体輸送用の部品などがあり、これら機器や部品の軸シール部位や、或は漏れの生じるおそれがある部位(圧力検査を必要とする部位)を必要な容積に形成した被検査空間S内で耐圧検査することが可能である。
【0051】
開口部32の開口縁45は、必ずしもカバー本体30の鉛直方向に対して傾斜するように形成する必要は無く、開口部32から鉛直方向に設けられていてもよい(図示せず)。この場合、エアが分岐流路43の開口縁から真下方向に流れ、このエアにより被検査空間Sを囲むようにエアカーテンを構成できるため、傾斜した開口縁45を設けた場合と同様に外部(外気)を遮断可能となる。
【0052】
次いで、上記実施形態の装置本体1による耐圧検査の手順並びに作用を説明する。本例におけるバルブの耐圧検査は、例えば、JIS B 2003(バルブの検査通則)に規定される弁箱耐圧検査の各空気圧試験に準じて実施するものとする。この場合、供試弁2に対して耐圧予備検査と耐圧本検査とに分けて耐圧検査をおこない、このうち、耐圧予備検査において、前述した装置本体1により供試弁2の構成部分の部分的な耐圧検査を実施する。耐圧本検査は、耐圧予備検査に続けて、供試弁2全体や各シール部分の全体的な検査をおこなうために実施される。
【0053】
耐圧予備検査をおこなう場合には、ボデー60、ステム62、Oリング65、パッキン押え63を一体に組立てて供試弁2を半完成状態としたものを検査対象とする。この供試弁2の一次側を固定クランプ治具50のシール部材54に当接させつつ供試弁2を支持用治具13に載置し、この状態で可動クランプ治具51を供試弁2の二次側から保持方向に移動させてクランプする。このとき、供試弁2の一次、二次側端部にそれぞれシール部材54、54がシールし、供試弁2の一次、二次側開口側の漏れを防いだ状態で、固定クランプ治具50の一次側流路53と可動クランプ治具51の二次側流路55とが連通した状態となる。
【0054】
この場合、図1に示すように、チャンバ11は、供試弁2のクランプ位置から退避された位置にあり、この退避位置でパージエア供給管36からエアパージ流路34を通して被検査空間S内にパージエアを供給することで、図4に示すように被検査空間Sが二点鎖線で示したエアの流れによりエアパージされる。また、このとき、エア供給口42から微弱なエアを供給してエアカーテン40を設けるようにしてもよい。
【0055】
上記チャンバ11を前進・下降させて、供試弁2のステム軸シール部位33をカバー本体30で覆うようにすることで、図2に示すように、耐圧検査部位であるステム軸シール部位33を、被検査空間Sに非密封状態で包囲した状態となる。
【0056】
続いて、供試弁2内に一次側流路53からサーチガス(水素ガス)を供給してボデー60内に封入させた状態で加圧すると共に、エア供給口42からエアを供給する。このエアは、エア供給口42から分岐流路43に流れ込み、各分岐流路43を通過した後に開口縁45から吹き出される。これらのエアは、内側に向けて傾斜した開口縁45により衝突するように干渉することで、開口縁45に沿ってエアカーテン40が設けられる。このエアカーテン40でカバー本体30の外部環境領域Tと被検査空間Sとの連通領域を区画形成することにより、外部と被検査空間Sとが遮断される。そのため、供試弁2から漏れ出るサーチガスへの外部環境領域Tの雰囲気ガスの影響が抑制され、この状態で被検査空間S内の水素ガスの漏れの有無及び漏れ量などを高精度に検出して耐圧検査を正確に実施可能となる。
【0057】
このとき、エア供給口42が左右の分岐流路43の略中央位置に設けられていることで、エア供給口42から供給されたエアは左右の分岐流路43に略均等に流れ、これらスリット状の各分岐流路43を進んだエアが開口縁45から均一に吹き出される。これによって、全体に渡って略均一の風量のエアカーテン40が被検査空間Sの下方に設けられる。
【0058】
上記のように、供試弁2のステム軸シール部位33を非密封状態でカバー本体30により包囲することで被検査空間Sの容積を小さくし、この被検査空間Sにステム軸シール部位33から漏れ出したサーチガスが拡散して滞留することで、ごくわずかなサーチガスの漏れであってもガスセンサ12で検知可能となる。しかも、ガスセンサ12のガス検出部位を供試弁2に近接して配置することで、より正確に検知できる。
【0059】
このとき、カバー本体30の外部環境領域Tと被検査空間Sとの連通領域をエアカーテン40により区画形成しているので、このエアカーテン40でカバー本体30の開口部32を塞ぐように包囲して、耐圧検査後の残留ガスや排気ガス等の外部環境領域Tの雰囲気ガスが開口部32から被検査領域S内に浸入することを防止する。また、被検査領域S内に滞留するサーチガスの外部への漏れをエアカーテン40で防止可能となる。
【0060】
これらにより、供試弁2の耐圧検査部位33から被検査空間S内に漏れ出たサーチガスを短時間で高精度に検知して正確な耐圧検査を実施可能になる。その際、エア供給口42から微弱なエアを供給してエアカーテン40を設けることにより、この微弱のエアカーテン40によりサーチガスの被検査空間S内でも拡散を抑えつつ外部への漏れを防ぎ、検査精度への影響を最小限に抑えることができる。
【0061】
耐圧検査の実施後には、エアパージ流路34からパージエアを供給することで、被検査空間S内のサーチガスを開口部32から検査スペースRに排出する。この場合、エアパージ流路34をエアカーテン40用のエア流路41と別の流路で設けるようにすれば、エアカーテン40で被検査空間Sを包囲した状態でパージでき、より迅速にサーチガスを排出可能となる。検査スペースRに排出されたサーチガスは、排気ファン21により外部に排出されることで、被検査空間S及び検査スペースRへのサーチガスの残留が防止される。
【0062】
サーチガスを排出した後には、供試弁2の検査対象部位33からカバー本体30を上昇・後退させ、可動クランプ治具51を供試弁2から離間させる方向に移動してアンクランプし、供試弁2を装置本体1から取り外すようにする。
続いて、異なる供試弁2の耐圧予備検査を実施する場合には、前記した検査の手順と同じように実施するようにすればよい。
【0063】
異なる供試弁2を連続して耐圧予備検査するときには、エア供給口から連続してエアを供給し、エアカーテン40を常時発生させるようにしてもよい。この場合には、供試弁2の検査終了後にエアカーテン40が外部環境領域Tである枠体10内に残存するおそれのあるサーチガスを拡散し、排気ファン21による外部への排出を促進して検査スペースR内へのサーチガスの滞留をより確実に防止することができる。
【0064】
上述したように、耐圧検査時以外にも被検査空間Sをエアパージするようにすれば、耐圧検査後の残留ガスを確実に除去し、次の供試弁2の耐圧検査を正確に実施できる。
また、エア供給口42から少量のエアを常時供給するようにすれば、微弱なエアカーテン40によって外部(外部環境領域T)と被検査空間Sとを遮断し、例えば、検査現場に配置されたフォークリフト等の機器の排気ガスや直前の検査された供試弁2の残留ガスなどが開口部32から浸入することを常に阻止し、耐圧検査時の誤判定を防いで正確な検知結果を得ることができる。
【0065】
耐圧予備検査後には、上記の一部組み立て状態の供試弁2に対して、図示しない弁体、ボールシート、キャップなどの全ての構成部品を組み込んで一体化する。さらに、ステム62上部には、図示しない座金、ナットを介してハンドルを固定し、完全に組み立てた状態の供試弁を設け、この供試弁に対して引き続き耐圧本検査をおこなうようにする。
【0066】
耐圧本検査では、図示しない大検査装置内の大検査空間に供試弁をクランプ治具で保持し、全体が覆われた状態で検査を実施する。この場合、供試弁を半開状態にした状態でサーチガスを封入し、このサーチガスの漏れの有無をガスセンサで検出する。
【0067】
前述した耐圧予備検査と、この耐圧本検査との双方の耐圧検査に合格した供試弁が合格品となる。耐圧本検査において不合格と判定されたときには、耐圧予備検査で合格したシール部位を除いた箇所を確認すればよいため、原因箇所の特定を迅速化できる。耐圧検査後には、供試弁内部をパージして残留ガスを排出し、その後、クランプ治具を緩めて供試弁を取り外すようにする。
【0068】
上記のように、耐圧本検査前に耐圧予備検査を実施するようにすれば、供試弁全体を組み立てることなく、各供試弁の欠陥や加工不良を早期に検出することが可能になる。
【0069】
図7においては、本発明の耐圧検査装置の他の実施形態を示している。なお、この実施形態において前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態の装置本体70は、供試弁71の全部(全体)を耐圧検査可能にしたものであり、前述した耐圧予備検査後の耐圧本検査にも用いることができる。
【0070】
装置本体70は、円筒状のカバー本体72を有し、このカバー本体72は供試弁71の全部(全体)を収納可能な大きさに形成される。カバー本体72の下部の開口部72aには円板74が取付けられ、この円板74の上面の中央位置には供試弁71をクランプする固定クランプ治具75が取付けられている。
【0071】
一方、カバー本体72の上部の開口部72bには環状板76が取付けられ、この環状板76の上面に可動クランプ治具77が装着可能になっている。
可動クランプ治具77は、取付板80、操作杆81、可動クランプ板82を有し、取付板80を介して環状板76に固定可能に設けられる。取付板80には図示しない複数の連通孔が形成され、これらの各連通孔にはそれぞれ操作杆81が挿入されている。操作杆81の先端側には供試弁71をクランプする可動クランプ板82が取付けられ、この可動クランプ板82は、操作杆81により上下に昇降動可能に設けられている。
【0072】
カバー本体72の円板74、環状板76は、カバー本体72よりも大径に形成され、円板74には外部から供給されるエアを下方に向けて吹き出し可能な複数のエア供給口84が所定間隔で連通して設けられている。一方、カバー本体72の外周の所定位置には、カバー本体72内に設けられる被検査空間S1に連通するように複数のガスセンサ85が取付けられ、これらガスセンサ85により供試弁71内に供給したサーチガスの漏れが検知される。
【0073】
供試弁71の耐圧検査をおこなう場合には、組立てた供試弁71の下部側のフランジ面を固定クランプ治具75上に載置しつつカバー本体72内に収納し、環状板76の上面に取付板80を載置させるようにしてカバー本体72に可動クランプ治具77を装着する。
【0074】
続いて、可動クランプ板82を操作杆81により下降させ、この可動クランプ板82で供試弁71の上部側のフランジ面を押圧することで、この供試弁71をカバー本体72内の所定位置に配置する。このとき、取付板80の連通孔と操作杆81との間に隙間が設けられていることで、カバー本体72内に非密封状態で供試弁71の全部(全体)を包囲した状態となる。
【0075】
上記の固定クランプ治具75と可動クランプ治具77とにより供試弁71をクランプした状態でこの供試弁71内にサーチガスを供給すると共に、それぞれのエア供給口84からエアを供給する。このとき、エア供給口84の吐出側から二点鎖線の矢印で示す方向にエアが吹き出され、このエアが円板74の外周縁近傍に衝突することにより、上部の環状板76と下部の円板74との間に一点鎖線で示すエアカーテン90を環状に構成でき、このエアカーテン90によってカバー本体72の外周囲を包囲可能となる。これにより、カバー本体72内の被検査空間S1が、カバー本体72の外側の外部環境領域T1の雰囲気ガスの影響を受けないようにしている。
【0076】
この装置本体70では、外部環境領域T1で発生する排気ガス等が可動クランプ治具77の隙間から被検査空間S1に浸入することをエアカーテン90により確実に阻止し、これによって検査時の誤判定を防止する。このため、可動クランプ治具77側の隙間を無くして被検査空間Sを密閉状態とすることなくサーチガスへの影響を抑制できる。このことから、可動クランプ治具77、固定クランプ治具75の構造が複雑化することが無いため、費用を抑えつつ供試弁71の一部又は全体の耐圧検査を実施可能になる。
【0077】
図に示した矢印では、エア供給口84から直線状にエアが吹き出されているが、この矢印はエアの吹き出し方向を示すものであり、実際にはエア供給口84から吹き出し方向に進むにつれて放射状に拡散するようにエアが吹き出されているとよい。この場合、隣接するエア供給口84から吹き出されるエアが互いに衝突することで、円板74と環状板76(取付板80)との間に円周状のエアカーテン90を構成できる。これにより、被検査空間S1の外部環境領域T1からの遮断性を高めることができ、被検査空間S1から外部環境領域T1へのサーチガスの漏れをより確実に防ぐと同時に、外部環境領域T1による影響を最小限に抑えることができる。
【0078】
図示しないが、前記実施形態と同様に、装置本体70にエアパージ流路を設けるようにしてもよい。この場合、エアパージ流路を通してパージエアを被検査空間S1に供給することで被検査空間S1内を効率的にエアパージできる。
【0079】
また、図示しないが、環状板76もしくは取付板80の外周側に、エア供給口84を設けるようにしてもよい。この場合、被検査空間S1から外部環境領域T1までの距離が長くなるので、外部環境領域T1による影響を最小限に抑えることができる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。例えば、本発明は、バルブ以外の各種配管機器などにも適用でき、例えば、空気圧式アクチュエータなどの各種の圧力機器の耐圧検査にも利用できる。耐圧検査の実施時には、サーチガスの漏れの有無に代え、漏れ量を測定することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1、70 装置本体
2、71 供試弁
12、85 ガスセンサ
30、72 カバー本体
32 開口部
33 耐圧検査部位(ステム軸シール部位)
34 エアパージ流路
40、90 エアカーテン
45 開口縁
S、S1 被検査空間
T、T1 外部環境領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7