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特許7535043ホルムアルデヒド放出量を低減するための塗型組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒド放出量を低減するための塗型組成物
(51)【国際特許分類】
   B22C 3/00 20060101AFI20240807BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B22C3/00 D
B22C1/22 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021528495
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070249
(87)【国際公開番号】W WO2020021096
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】102018118291.0
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591194322
【氏名又は名称】ヒュッテネス-アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Wiesenstrasse 23,D-40549 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ラデグルディー ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ドナー ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ジーガー クラウス
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298200(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217365(US,A1)
【文献】国際公開第2018/028125(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105728640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分
(a)1種以上の耐火物の粒子と、
(b)
- レゾルシノール
グリシン及び
- リグニン
からなる群から選択される1種以上の化合物であって、化合物(b)の総質量は、前記耐火物の前記粒子(a)の総質量を基準として0.1質量%~10質量%である、化合物とを含む、組成物の、
加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上に塗型を作製するための使用であって、前記塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する前記鋳型又は中子の表面を形成する、前記使用。
【請求項2】
前記組成物がさらに(c)水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
- 前記化合物(b)は、レゾルシノール、グリシン、並びに、水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体に可溶なリグニンからなる群から選択され、
且つ/又は
- 前記耐火物(a)は:
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる
群から選択される1種以上の耐火物
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種以上の耐火物
を含み、
且つ/又は
- 前記組成物が担体液体(c)を含む場合、前記担体液体(c)は、水、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択され、
且つ/又は
- 前記組成物は、
(d)湿潤剤、
(e)レオロジー添加剤、
(f)結合剤、
(g)懸濁助剤、
(h)殺生物剤、
からなる群から選択される1種以上の更なる構成要素を含む、
請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記鋳型又は中子の前記本体は、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤で結合されている造型材料混合物から形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記結合剤は、:
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン
- ホルムアルデヒド縮合樹脂、
からなる群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
-前記担体液体(c)の総質量は、各場合における前記組成物の総質量を基準として、40質量%~65質量%である、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項7】
前記担体液体(c)の総質量は、前記組成物の総質量を基準として、60質量%~80質量%である、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項8】
加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上に塗型を作製するための組成物であって、前記塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する前記鋳型又は中子の表面を形成し、前記組成物は、
(a)1種以上の耐火物の粒子と、
(b)
- レゾルシノール
グリシン、及び
- リグニン
からなる群から選択される1種以上の化合物であって、
化合物(b)の総質量は、前記耐火物の前記粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%である、化合物と、
(c)水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体であって、前記担体液体(c)の総質量は、前記組成物の総質量を基準として40質量%~80質量%である、担体液体(c)と、
を含み、
前記リグニンは、担体液体(c)に可溶なリグニンからなる群から選択される、前記組成物。
【請求項9】
- 前記化合物(b)は、レゾルシノール、グリシン、並びに前記担体液体(c)に可溶なリグニンからなる群から選択され、
且つ/又は
- 前記耐火物(a)は:
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種以上の耐火物、
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種以上の耐火物、
を含み、
且つ/又は
- 前記担体液体(c)は、水、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
且つ/又は
- 前記組成物が、
(d)湿潤剤
(e)レオロジー添加剤
(f)結合剤
(g)懸濁助剤
(h)殺生物剤
からなる群から選択される1種以上の構成要素を更に含む、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
金属鋳造用鋳型又は中子であって、
- 加熱されるとホルムアルデヒドを発生する本体と、
- 前記本体の上に設けられた、鋳造作業時に金属溶湯と接触する前記鋳型又は中子の表面を形成する塗型と、
を備え、前記塗型は:
(a)1種以上の耐火物の粒子、
(b)
- レゾルシノール
グリシン、及び
- リグニン
からなる群から選択される1種以上の化合物、
を含み、前記塗型中の遊離の前記化合物(b)と、反応生成物中でホルムアルデヒドと結合しているものとの総質量は、前記耐火物の前記粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%である、鋳型又は中子。
【請求項11】
- 前記耐火物(a)は:
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種以上の耐火物
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種以上の耐火物
を含み、
且つ/又は
前記鋳型又は中子の前記本体は、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤で結合されている造型材料混合物から形成されており、
且つ/又は
前記塗型の厚みは0.05mm~0.6mmの範囲にある、
請求項10に記載の鋳型又は中子。
【請求項12】
前記結合剤は、:
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン
- ホルムアルデヒド縮合樹脂
からなる群から選択される、請求項11に記載の鋳型又は中子。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の金属鋳造用鋳型又は中子を製造するためのプロセスであって、
- 前記本体を製造又は準備するステップと、
- 請求項7に記載の組成物を製造又は準備するステップと、
- 請求項7に記載の組成物を前記本体に適用し、次いで前記本体上に塗型が生成するように乾燥させるステップと、
を含み、前記塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する前記鋳型又は中子の表面を形成する、プロセス。
【請求項14】
前記鋳型又は中子の前記本体の前記製造は、次に示すステップ:
- 1種以上の鋳型基材及び加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤を含む造型材料混合物を製造又は準備するステップと、
- 前記造型材料混合物を成形するステップと、
- 前記鋳型又は中子の前記本体を形成するために前記成形された造型材料混合物中の前記結合剤を硬化させるステップと、
を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記結合剤は、
- ポリウレタンを形成するためのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分系
- ホルムアルデヒド縮合樹脂
からなる群から選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
- レゾルシノール
グリシン、及び
- リグニン
からなる群から選択される化合物(b)の、ホルムアルデヒド捕捉剤としての使用であって、
加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型若しくは中子の本体上の塗型であって鋳造作業時に金属溶湯と接触する前記鋳型若しくは中子の表面を形成する塗型中における使用、又は
前記塗型を製造するための組成物中における使用、又は
前記組成物を製造するための使用。
【請求項17】
請求項10~12のいずれか一項に記載の金属鋳造用鋳型又は中子を製造するためのキットであって、
(A)請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物、
(B)加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤、
を含み、構成要素(A)及び(B)は前記キット内で互いに分離されている、キット。
【請求項18】
前記結合剤は、
- ポリウレタンを生成するためのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分系
- ホルムアルデヒド縮合樹脂
からなる群から選択される、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上の塗型中におけるホルムアルデヒド捕捉剤としての特定の化合物の使用であって、この塗型は鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する、使用と、1種又は複数種のこれらの化合物を含む組成物の、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上の塗型を製造するための使用であって、この塗型は鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する、使用と、について述べる。対応する鋳型及び中子並びにこれらの製造についても述べる。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造用の鋳型及び中子は、鋳型の基材(例えば、砂)及び粘結剤を含む造型材料混合物を成形し、次いで成形した造型材料混合物を硬化させることにより製造される。これは多くの場合、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する有機粘結剤、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂をポリイソシアネートと重付加することにより形成されるポリウレタン、又はホルムアルデヒド縮合樹脂、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群からのホルムアルデヒド縮合樹脂を使用することを含む。
【0003】
鋳型は凹型であり、そこに含まれる空洞部に鋳込むことにより、製造すべき鋳物が得られる。鋳物の内側の輪郭は中子により形成することができる。鋳型を製造する際には、製造すべき鋳物の模型を用いて造型材料の内部に空洞部を成形することが可能である。中子は通常、中子取りで成形される。
【0004】
通常、造型材料混合物(上に述べたもの)を成形し、次いで成形した造型材料混合物を硬化させることによる、金属鋳造用鋳型及び中子の製造においては、まず鋳型又は中子の本体が形成される。これらは既に所要の鋳型の輪郭又は所要の中子の輪郭を有している。通常、特に鋼及び鉄鋳造の場合は、こうして形成される本体の上に塗型が作製される。この塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する。このような塗型は、通常、耐火性塗型と称される。本出願に関連する「鋳型」又は「中子」という語は、それぞれ、鋳型又は中子の本体及びこの本体の上に設けられた塗型(耐火性塗型)全体を指す。この塗型は、中子又は鋳型の本体と鋳造金属との間の境界及び/若しくは防壁層として作用し、特に、金属と中子/鋳型との境界における鋳造欠陥形成機構を抑制制御すること、又は冶金効果を利用することに役立つ。一般に、鋳造技術における耐火性塗型は、特に、当業者に知られている以下の機能を果たすべきである:
- 鋳肌の平滑性を向上する、並びに/又は
- 造型材料混合物及び金属溶湯の構成成分間の化学反応を防止し、それにより鋳型/中子と鋳物との分離を容易にする、並びに/又は
- 鋳物の表面欠陥、例えば、気泡巣、差し込み、脈状ばり、及び/若しくはすくわれを防止する。
【0005】
鋳型及び中子本体の塗型用の即時使用可能な(ready-to-use)組成物は、通常、耐火性~高耐火性の無機材料(耐火物)の微細な粒子を担体液体(例えば、水、アルカノール、又はこれらの混合物)中に懸濁させた懸濁物であり、更なる構成成分がこの担体液体中に懸濁又は溶解していてもよい。耐火性塗型組成物を好適な方式で本体に適用し、次いで乾燥させることにより担体液体を除去し、本体上に塗型を形成する。通常、乾燥は40℃超、好ましくは50℃~200℃の間の温度で実施する。こうした温度において、鋳型又は中子の本体は、相当な量のホルムアルデヒドを放出する。このような放出物が作業場の汚染物質の大部分を構成する。
【0006】
独国特許出願公開第102008025311A1号明細書には、金属鋳造用の鋳造鋳型が開示されており、鋳造鋳型のガス排出領域の少なくとも一部に、汚染物質を吸収する材料の層が設けられている。ガス排出領域とは、鋳造鋳型の気体成分が鋳造作業中に鋳造鋳型から抜け出すことができる領域を意味すると理解される。ガス排出領域は鋳造鋳型の外面全体に相当することもある。或いは、鋳造鋳型の外面の一部のみを気体成分の放出に利用することも可能である。例えば、箱内(in-box)で金属鋳造を行う場合、鋳造鋳型を構築するために鋳造鋳型の下面及び側面を覆う箱が利用される。この場合、本質的に、鋳造鋳型の上面のみが気体成分の放出に利用可能である。鋳造鋳型の外面とは、鋳造作業中に発生したオフガスがそこを通じて鋳造鋳型から抜け出すことができる面を意味すると理解される。この外面は、鋳造鋳型を外側から見たときに視認でき、鋳造作業中に液体金属と接触しない。それとは対照的に、内面とは、例えば、鋳造鋳型で囲まれている鋳型の空洞部の表面を意味すると理解される。
【0007】
化学反応によりホルムアルデヒドと結合して不揮発性反応生成物を生成する物質は、独国特許出願公開第102008025311A1号明細書には開示されていない。
【0008】
欧州特許出願公開第0012169A1号明細書には、主としてアミノ樹脂を結合させたパーティクルボード又はファイバーボードが開示されており、これらは、ボードの一部の範囲、好ましくは、中間層の少なくとも一部が、アミノ樹脂の群に属さない粘結剤を含み、この粘結剤は、ホルムアルデヒド反応性物質と一緒に導入することができ、ホルムアルデヒド反応性物質の量は、特に水分及び/若しくは熱の作用下でホルムアルデヒドと反応する量、又は後にホルムアルデヒドと結合することができる物質を放出する量であることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する鋳型又は中子の耐火性塗型を乾燥させる際に放出されるホルムアルデヒドの放出量を、低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様において、この目的は、
(a)1種又は複数種の耐火物の粒子と、
(b)
- β-ジカルボニル化合物
- 2及び3価フェノール
- フェノール-ホルムアルデヒドノボラック及びレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック
- アミノ酸
- 1級及び2級アミノシラン
- メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、及びこれらの誘導体
- ヒドラジン及びカルボノヒドラジド並びにこれらの誘導体
- 1級及び2級アミン
- 樹脂、タンニン、及びリグニン
からなる群から選択される1種又は複数種の化合物であって、化合物(b)の総質量は、耐火物の粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%である、化合物と、
(c)任意選択的に、水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体と、
を含む組成物を、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上の塗型であって、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する塗型を製造するために使用することにより達成される。好ましくは、塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成するのみならず、これに加えて、鋳型又は中子の他の領域の上にも延在する。塗型は、好ましくは、鋳型又は中子の表面の50%以上、更に好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、特に95%以上の上に延在している。最も好ましくは、塗型は、鋳型又は中子の表面全体の上に延在している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】乾燥器の温度がホルムアルデヒド放出量に与える影響を示すものである。
図2】耐火性塗型の組成がホルムアルデヒド放出量に与える影響を示すものである。
図3】耐火性塗型組成物のレゾルシノール含有量がホルムアルデヒド放出量に与える影響を示すものである。
図4】耐火性塗型の組成がホルムアルデヒド放出量に与える影響を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における鋳型又は中子の本体は、通常、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する粘結剤で結合された造型材料混合物から形成され、この粘結剤は、好ましくは:
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン
- 好ましくは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択されるホルムアルデヒド縮合樹脂
からなる群から選択される。
【0013】
より好ましくは、鋳型又は中子の本体は、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する粘結剤で結合された造型材料混合物から形成されており、この粘結剤は:
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及び
- フラン-ホルムアルデヒド樹脂
からなる群から選択される。
【0014】
粘結剤は、鋳型又は中子の本体中に硬化した形態で存在する。
【0015】
驚くべきことに、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する鋳型及び中子に、上に定義した組成物を用いて耐火性塗型を作製すると、耐火性塗型を乾燥させる過程で環境中に放出されるホルムアルデヒドの量が明らかに低減されることが見出された。不揮発性反応生成物を生成する化学反応により化合物(b)がホルムアルデヒドと結合することができ、それにより、中子又は鋳型から環境中に放出されるホルムアルデヒドがより少なくなると、現時点においては考えられている。したがって化合物(b)は、本明細書においては、ホルムアルデヒド捕捉剤と称される。
【0016】
化合物(b)を選択する際は、ホルムアルデヒドとの不揮発性反応生成物と不可逆的に結合する能力のみならず、多くの更なる判断基準に留意すべきである。例えば、化合物(b)自体は揮発性であってはならず、且つ中子及び鋳型の乾燥温度で分解してはならない。したがって、分解温度は鋳型及び中子の乾燥温度(50℃~200℃、好ましくは100℃~180℃)よりも高くなければならない。したがって、固体又は蒸気圧の低い高沸点液体である化合物(b)が好ましい。これに加えて、化合物(b)は、担体液体(c)中に充分な量が溶解しなければならない。
【0017】
更に化合物(b)は、可能な限り毒性を有しておらず、特定の職業防護及び安全対策を必要とせず、且つ許容可能な条件で、市場で確実に入手可能であるべきである。
【0018】
化合物(b)は、好ましくは、マロン酸のジアルキルエステル(特にマロン酸ジエチル)、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、グリシン、メラミン、尿素、カルボノヒドラジド、担体液体(c)に可溶なタンニン、及び担体液体(c)に可溶なリグニンからなる群から選択される。リグニン、メラミン、グリシン、及びレゾルシノールが特に好ましい。
【0019】
フェノール-ホルムアルデヒドノボラック及びレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラックも同様にホルムアルデヒド捕捉剤であるが、これらを使用することは一般に好ましくない。フェノール-ホルムアルデヒドノボラック又はレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラックは、エアロゲルの形態で使用しないことが好ましい。
【0020】
本発明に従い使用するための組成物において、化合物(b)の総質量は、耐火物の粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~9質量%、更に好ましくは0.1質量%~8質量%、更に好ましくは0.1質量%~7質量%、更に好ましくは0.1質量%~6質量%、特に好ましくは0.1質量%5質量%である。化合物(b)の量がそれよりも少ない場合、ホルムアルデヒド放出量の顕著な低減が達成されないであろう。化合物(b)の量がそれよりも多い場合、生成する塗型の品質に悪影響が及ぼされる可能性がある。
【0021】
当業者の典型的な理解によれば(DIN 51060:2000-06参照)、「耐火性」は、鉄溶湯、通常は鋳鉄を鋳造又は凝固させる際の熱応力に少なくとも短時間耐えることができる塊(mass)、材料、及び鉱物を指す。「高耐火性」は、溶鋼を鋳造する際の熱に短時間耐えることができる塊、材料、及び鉱物を指す。溶鋼の鋳造で発生し得る温度は、通常、鉄又は鋳鉄溶湯の鋳造で発生し得る温度よりも高い。耐火性の塊、材料、及び鉱物(耐火物)並びに高耐火性の塊、材料、及び鉱物は、例えばDIN 51060:2000-06から当業者に知られている。他に断りのない限り、粉末状耐火物は、平均粒径(好ましくはISO 13320:2009-10に準拠する光散乱により測定)が0.1~500μmの範囲、好ましくは1~200μmの範囲にある。好適な耐火物は、特に、融点が、それぞれの場合に使用される金属溶湯の温度より少なくとも200℃高く、及び/又は金属溶湯との反応に関与しない材料である。
【0022】
本明細書において使用する用語「耐火物」(a)は、高耐火性物質も包含する。
【0023】
耐火物(a)は、通常、耐火性塗型に使用される耐火物、例えば、石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される耐火物から選択される。
【0024】
好ましくは、耐火物(a)は、石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物を含む。
【0025】
より好ましくは、耐火物(a)は、
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物、
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物、
を含む。
【0026】
膨潤性層状ケイ酸塩は、レオロジー添加剤(無機増粘剤)としても作用する。膨潤性層状ケイ酸塩は、好ましくは、スメクタイト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、バーミキュライト、及びモンモリロナイトの群から選択される。
【0027】
ゼオライトは天然又は合成ゼオライトであってもよい。
【0028】
耐火物(i)対耐火物(ii)の質量比は、好ましくは20:1~5:1の範囲、より好ましくは15:1~7:1の範囲にある。
【0029】
例えば、耐火物(a)は、
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物、
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩の群から選択される1種又は複数種の耐火物、
を含む。
【0030】
例えば、耐火物(a)は、
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物、
並びに
(ii)ゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物、
を含む。
【0031】
より好ましくは、耐火物(a)は、
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物、
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩の群から選択される1種又は複数種の耐火物、及びゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物、
を含む。
【0032】
驚くべきことに、耐火物(a)が、上に定義した1種又は複数種の耐火物(i)に加えて、膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物(ii)も含む組成物であって、膨潤性層状ケイ酸塩は、好ましくは、スメクタイト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、バーミキュライト、及びモンモリロナイトの群から選択される組成物は、ホルムアルデヒド放出量を特に顕著に低減することが見出された。上述の耐火物(ii)の一部の代表的なものに関し現在までに説明されてきたことは全て、レオロジー添加剤としての機能であったため、これは予期せぬことであった。
【0033】
特定の場合において、又は特定の実験条件下では、上述の耐火物(i)及び(ii)の組合せを含み、上に定義した化合物(b)を含まない耐火性塗型組成物を用いてさえも、ホルムアルデヒド放出量を大幅に低減することが可能である。上述の耐火物(i)及び(ii)の組合せを含み、上に定義した化合物(b)を含まない比較用耐火性塗型組成物を使用した比較例を参照されたい。耐火物(i)対耐火物(ii)の質量比は、好ましくは、20:1~5:1の範囲、より好ましくは15:1~7:1の範囲にある。
【0034】
したがって本明細書においては、
(a)1種又は複数種の耐火物の粒子であって、耐火物(a)は:
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物、
並びに
(ii)膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物、
を含む、耐火物の粒子と、
(c)任意選択的に、水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体と、
を含む組成物の使用であって、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体上に、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する塗型を作製するための組成物の使用も記載する。
【0035】
担体液体(c)は、単にその中に懸濁及び溶解している物質を中子又は鋳型の本体に適用するための媒体の役割を果たすのみであり、乾燥の過程で除去される。この担体液体は標準条件(20℃及び1013.25hPa)下で液体であり、標準圧力(1013.25hPa)下では50℃~200℃の範囲の温度で揮発性を示すものである。担体液体(c)は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される。
【0036】
耐火性塗型を作製するための組成物は、多くの場合、
(d)湿潤剤、
(e)レオロジー添加剤、
(f)結合剤、
(g)懸濁助剤、
(h)殺生物剤、
等の構成要素を更に含む。
【0037】
好適な湿潤剤(d)、レオロジー添加剤(e)、結合剤(f)、懸濁助剤(g)、及び殺生物剤(h)、並びにこれらの機能及び効果は当業者に知られている。
【0038】
使用される湿潤剤(d)は、好ましくは、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤である。湿潤剤(d)は、好ましくは、界面活性剤の群から、より好ましくは、アルキンジオール及びその誘導体からなる群から選択される。
【0039】
使用されるレオロジー添加剤は、例えば、有機増粘剤である。これらは好ましくは、多糖類、タンパク質、及びセルロースエーテルからなる群から選択される。膨潤性粘土鉱物、例えば、二本鎖状ケイ酸塩(band silicate)、例えば、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、及びヒュームドシリカを含んでなる群からの無機増粘剤を使用することも可能である。上述の膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトはまた、無機増粘剤としても作用する。一方、この種の無機増粘剤は耐火物であり、したがって、濃度の数値に関しては、構成要素(a)に割り当てられる。
【0040】
使用される結合剤(f)は、空気中で自然硬化するか又は担体液体(c)を除去することにより乾燥する結合剤である。好ましい結合剤(f)は、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、上述のポリマーの共重合体、天然樹脂、デキストリン、デンプン、及びペプチドの群から選択される。
【0041】
懸濁助剤(g)は、好ましくは、担体液体(c)に可溶なアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、及びアルミニウムからなる群の金属の塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
本発明に従い使用するための組成物は、上に述べたように、即時使用可能な耐火性塗型組成物及び即時使用可能な耐火性塗型組成物を形成するための前駆体を含む。即時使用可能な耐火性塗型組成物は、担体液体の含有量が充分に高いので、本体に直接適用して塗型を形成することができる。即時使用可能な耐火性塗型組成物において、担体液体(c)の質量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは60質量%~80質量%である。即時使用可能な耐火性塗型組成物を製造するための前駆体は、担体液体(c)を含まない(固体混合物)か又は即時使用可能な耐火性塗型組成物と比較して明らかに少ない量の担体液体(c)を含む(濃縮物)。この濃縮物において、担体液体(c)の総質量は、それぞれの組成物の総質量を基準として40質量%~65質量%、好ましくは40質量%~59質量%である。
【0043】
即時使用可能な耐火性塗型組成物は、固体混合物を担体液体(c)中に懸濁させる(担体液体(c)に可溶な固体混合物の構成要素は溶解させる)か、又は濃縮物を担体液体(c)で希釈することにより得ることができる。濃縮物は、通常、濃縮物の担体液体(c)と同一組成を有する担体液体(c)を用いて希釈される。したがって、即時使用可能な耐火性塗型組成物は、
- 上に定義した固体混合物又は濃縮物を製造又は準備するステップと、
- 水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体(c)を添加するステップであって、添加される担体液体(c)の量は、結果として得られる組成物の総質量を基準として、担体液体(c)の総量が60質量%~80質量%となる組成物が生成する量である、ステップと、
を含むプロセスにより製造することができる。
【0044】
好適な及び好ましい構成要素(a)~(h)に関する上の記述は、濃縮物に関しても即時使用可能な耐火性塗型組成物に関しても適用可能である。固体混合物に関しては、好適な及び好ましい耐火物(a)に関する上の記述並びに好適な及び好ましい構成要素(b)及び(d)~(h)に関する上の記述を、これらが固体となる範囲で適用可能である。
【0045】
本発明の第2の態様は、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型又は中子の本体の上に塗型を作製するための組成物であって、塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する、組成物に関する。本発明の組成物は、
(a)1種又は複数種の耐火物の粒子と、
(b)
- β-ジカルボニル化合物
- 2価及び3価フェノール
- フェノール-ホルムアルデヒドノボラック及びレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック
- アミノ酸
- 1級及び2級アミノシラン
- メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、及びこれらの誘導体
- ヒドラジン及びカルボノヒドラジド並びにこれらの誘導体
- 1級及び2級アミン
- 樹脂、タンニン、及びリグニン
からなる群から選択される1種又は複数種の化合物であって、化合物(b)の総質量は、耐火物の粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~9質量%、更に好ましくは0.1質量%~8質量%、更に好ましくは0.1質量%~7質量%、更に好ましくは0.1質量%~6質量%、特に好ましくは0.1質量%~5質量%である、化合物と、
(c)水、アルカノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される担体液体であって、担体液体(c)の総質量は、組成物の総質量を基準として、40質量%~80質量%である、担体液体と、
を含む。
【0046】
上に定義した耐火物(a)、化合物(b)、担体液体(c)、並びに更なる構成要素(d)及び(h)の選択に関しては、本発明の第1の態様に関する上の記載と同じことが適用される。構成要素(a)~(h)が上の本発明の第1の態様に関し好ましいものとして特定された構成要素(a)~(h)から選択される組成物が好ましい。
【0047】
本発明の組成物は、即時使用可能な耐火性塗型組成物(本発明の第1の態様に関連して上に述べたもの)及び即時使用可能な耐火性塗型組成物を形成するための濃縮物(本発明の第1の態様に関連して上に述べたもの)を含む。
【0048】
本発明の更なる態様は、金属鋳造用鋳型又は中子に関する。本発明の中子又は鋳型は:
- 加熱されるとホルムアルデヒドを発生する本体と、
- 本体上に設けられた塗型であって、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する塗型と、
を備え、塗型は:
(a)1種又は複数種の耐火物の粒子
(b)
- β-ジカルボニル化合物
- 2価及び3価フェノール
- フェノール-ホルムアルデヒドノボラック及びレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック
- アミノ酸
- 1級及び2級アミノシラン
- メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、及びこれらの誘導体
- ヒドラジン及びカルボノヒドラジド並びにこれらの誘導体
- 1級及び2級アミン
- 樹脂、タンニン、及びリグニン
からなる群から選択される1種若しくは複数種の化合物
並びに/又はそのホルムアルデヒドとの反応生成物を含み、
塗型中の遊離の化合物(b)と、ホルムアルデヒドとの反応生成物中で結合している化合物との総質量は、耐火物の粒子(a)の総質量を基準として、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~9質量%、更に好ましくは0.1質量%~8質量%、更に好ましくは0.1質量%~7質量%、更に好ましくは0.1質量%~6質量%、特に好ましくは0.1質量%~5質量%である。
【0049】
本発明の鋳型又は中子は、本体と、上記本体上に配置された、本発明の第1の態様において本発明に従い使用するための組成物の不揮発性構成要素を含む塗型と、を備える。上に定義した耐火物(a)及び化合物(b)の選択に関しては、本発明の第1の態様に関する上の記載と同じことが適用される。好ましくは、上に定義した塗型を有する鋳型及び中子の耐火物(a)及び化合物(b)は、本発明の第1の態様に関し好ましいものとして上に特定した構成要素(a)及び(b)から選択される。
【0050】
塗型は鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する。塗型の厚みは、好ましくは、0.05mm~0.6mmの範囲、より好ましくは0.05~0.4mmの範囲にある。
【0051】
好ましくは、塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成するのみならず、これに加えて、鋳型又は中子の他の領域に延在している。塗型は、好ましくは、鋳型又は中子の表面の50%以上、更に好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、特に95%以上の上に延在している。最も好ましくは、塗型は、鋳型又は中子の表面全体の上に延在している。
【0052】
本発明の鋳型又は中子の本体は加熱されるとホルムアルデヒドを発生する。本体から発生するホルムアルデヒドの少なくとも顕著な割合が、塗型中に存在する化合物(b)に結合して不揮発性反応生成物を形成する。したがって塗型は、化合物(b)(特に、乾燥させる前)及び/又はそのホルムアルデヒドとの反応生成物(乾燥時に形成されるもの)を含む。
【0053】
鋳型又は中子の本体は、通常、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤で結合された造型材料混合物から形成されている。結合剤は、鋳型又は中子の本体中に硬化した形態で存在する。結合剤の選択に関しては、本発明の第1の態様に関する上の記載と同じことが適用される。本発明の第1の態様に関し好ましいものと特定された上述の結合剤から選択される結合剤が好ましい。結合剤は、より好ましくは、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及び
- フラン-ホルムアルデヒド樹脂、
からなる群から選択される。
【0054】
本発明の第4の態様は、本発明の金属鋳造用鋳型又は中子を製造するためのプロセスに関する。本プロセスは、
- 本体を製造又は準備するステップと、
- 上に定義した即時使用可能な耐火性塗型組成物を製造又は準備するステップと、
- 即時使用可能な耐火性塗型組成物を本体に適用し、次いで本体上に塗型が生成するように乾燥させるステップと、
を含み、この塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する。
【0055】
本発明のプロセスにおいて、本発明の第1の態様において本発明に従い使用するための組成物の不揮発性構成要素を含む塗型は、鋳型又は中子の本体の上に作製される。この塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成する。
【0056】
好ましくは、塗型は、鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成するのみならず、これに加えて、鋳型又は中子の他の領域の上にも延在する。塗型は、好ましくは、鋳型又は中子の表面の50%以上、更に好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、特に95%以上の上に延在する。最も好ましくは、塗型は鋳型又は中子の表面全体の上に延在する。
【0057】
鋳型又は中子の本体の製造は、通常、次に示すステップ:
- 1種又は複数種の鋳型基材及び加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤を含む造型材料混合物を製造又は準備するステップと、
- 造型材料混合物を成形するステップと
- 成形された造型材料混合物中の結合剤を硬化させることにより鋳型又は中子の本体を形成するステップと、
を含む。
【0058】
対応する造型材料混合物、成形方法、及び硬化方法は当業者に知られている。
【0059】
造型材料混合物の結合剤は、好ましくは、
- ポリウレタンを形成するためのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分系
- 好ましくは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択されるホルムアルデヒド縮合樹脂、
からなる群から選択される。
【0060】
より好ましくは、結合剤は、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により形成されるポリウレタン、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及び
- フラン-ホルムアルデヒド樹脂、
からなる群から選択される。
【0061】
中子又は鋳型の本体をコールドボックス法により製造する本発明のプロセスが好ましい。コールドボックス法は当業者に知られている。このプロセスにおいては、結合剤としてのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分系が使用される。結合剤の成分は造型材料混合物を製造する過程では互いに接触するのみであり、成形された造型材料混合物中でポリウレタンを生成する。成形された造型材料混合物中の結合剤は、成形された造型材料混合物を3級アミンの気体又は2種以上の3級アミンの気体の混合物と接触させることにより硬化する。
【0062】
本発明のプロセスに使用される即時使用可能な耐火性塗型組成物は、好ましくは、本発明の第1の態様において好ましい構成要素(a)~(c)と、任意選択的に、本発明の第1の態様において好ましい構成要素(d)~(h)と、を含む、即時使用可能な耐火性塗型組成物から選択される。
【0063】
即時使用可能な耐火性塗型組成物は、本体に、通常、吹付、浸漬、流し塗り、及び塗装(painting)からなる群から選択される処理、好ましくは浸漬により適用される。その理由は、このプロセスは、鋳型若しくは中子の表面全体又は鋳型若しくは中子の表面全体の少なくとも大部分の上に延在する塗型を形成するのに特に適しているためである。
【0064】
適用された耐火性塗型組成物は、40℃以上の温度、好ましくは50℃~200℃の範囲、好ましくは100℃~180℃の範囲の温度で乾燥される。
【0065】
鋳型又は中子の本体は乾燥させる際にホルムアルデヒドを放出する。本体から発生するホルムアルデヒドの少なくとも顕著な割合が、塗型中に存在する化合物(b)と結合して不揮発性反応生成物を形成し、それにより、鋳型又は中子を乾燥させる過程で環境中に放出されるホルムアルデヒドの量が大幅に低減される。
【0066】
本発明の第5の態様は、
- β-ジカルボニル化合物
- 2価及び3価フェノール
- フェノール-ホルムアルデヒドノボラック及びレゾルシノール-ホルムアルデヒドノボラック
- アミノ酸
- 1級及び2級アミノシラン
- メラミン、ベンゾグアナミン、尿素、及びこれらの誘導体
- ヒドラジン及びカルボノヒドラジド並びにこれらの誘導体
- 1級及び2級アミン
- 樹脂、タンニン、及びリグニン
からなる群から選択される化合物(b)の、ホルムアルデヒド捕捉剤としての使用であって、加熱されるとホルムアルデヒドを発生する金属鋳造用鋳型若しくは中子の本体上の塗型であって鋳造作業時に金属溶湯と接触する鋳型若しくは中子の表面を形成する塗型中における使用、又はこの種の塗型(本発明の第1の態様に関連し上に記載した即時使用可能な耐火性塗型組成物)を製造するための組成物中における使用、又はこの種の組成物を製造するための使用に関する。
【0067】
好ましくは、塗型は、鋳造作業中に金属溶湯と接触する鋳型又は中子の表面を形成するのみならず、これに加えて、鋳型又は中子の他の領域の上まで延在する。塗型は、好ましくは鋳型又は中子の表面の50%以上、更に好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、特に95%以上の上に延在する。最も好ましくは、塗型は、鋳型又は中子の表面全体の上に延在する。
【0068】
ホルムアルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒドと反応することにより不揮発性反応生成物を与えることができ、したがってホルムアルデヒドの環境中への放出量を低減する化合物を意味すると理解される。
【0069】
上に定義した化合物(b)の選択に関しては、本発明の第1の態様に関する上の記載と同じことが適用される。本発明の第1の態様に関し好ましいものと特定された上述の化合物(b)から選択される化合物(b)が好ましい。
【0070】
本発明の第5の態様において化合物(b)を使用する場合、塗型又はこの種の塗型を生成するための組成物は、
(i)石英、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、非膨潤性層状ケイ酸塩、ケイ酸ジルコニウム、かんらん石、滑石、雲母、黒鉛、コークス、長石、珪藻岩、カオリン、焼成カオリン、メタカオリナイト、酸化鉄、及びボーキサイトからなる群から選択される1種又は複数種の耐火物
(ii)任意選択的に、膨潤性層状ケイ酸塩及びゼオライトの群から選択される1種又は複数種の耐火物
を更に含むことが好ましい。
【0071】
耐火物(i)及び(ii)の選択に関しては、本発明の第1の態様に関する上の記載と同じことが適用される。
【0072】
本発明の第6の態様は、上に定義した本発明の第3の態様に従う金属鋳造用鋳型又は中子を製造するためのキットに関する。本発明のキットは、
(A)本発明の第1の態様に関し上に記載した組成物であって、好ましくは、本発明の第1の態様に関連して上に記載した固体混合物又は本発明の第1の態様に関連して上に記載した濃縮物である、組成物、
(B)加熱されるとホルムアルデヒドを発生する結合剤、
を含み、構成要素(A)及び(B)はキット内で互いに分離されている。
【0073】
本発明のキット内では、例えば、一方では構成品(A)が、他方では構成品(B)が、それぞれ別々の容器で提供されるか、又は一方で構成品(A)が、他方で構成品(B)が、それぞれ同じ容器の別々の室内で提供されるため、構成品(A)の構成要素が構成品(B)の構成要素と接触する可能性はない。
【0074】
本発明のキットにおいて、組成物(A)は、好ましくは、本発明の第1の態様において好ましい構成要素(a)及び(b)と、任意選択的に(c)~(h)とを含む固体混合物及び濃縮物から選択される。
【0075】
本発明のキットにおいて、結合剤(B)は、好ましくは、
- ポリウレタンを生成するためのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分系
- 好ましくは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フラン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択されるホルムアルデヒド縮合樹脂
からなる群から選択される。
【0076】
結合剤は、より好ましくは、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂とポリイソシアネートとの重付加により生成するポリウレタン、
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及び
- フラン-ホルムアルデヒド樹脂、
からなる群から選択される。
【0077】
以下、本発明を実施例により説明する。
【実施例
【0078】
鋳型基材としてのH32砂と、中子製造に慣用されている、ポリウレタンを形成するためのフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びポリイソシアネートを含む2成分結合剤系と、を含む造型材料混合物を、ブレーキディスク用中子の本体を成形するための中子ブロー造型機(shooting machine)を用いて一般的な方式で使用し、3級アミンを拡散させることによる一般的な方式で硬化させた(コールドボックス法)。次いでこうして製造した中子本体上に、本発明組成物(本発明の耐火性塗型組成物)又は本発明による使用のためのいずれの化合物(b)も含まない比較用組成物(比較用耐火性塗型組成物)を適用することにより塗型を作製する。この塗型が、鋳造作業時に金属溶湯と接触する中子の表面を形成する。次いで中子を乾燥キャビネット(Memmert UFP 700)で乾燥させた。乾燥中、乾燥器内の空気からプローブを用いて試料を特定の回数採取し、そのホルムアルデヒド含有量を社内の方法で測定した(詳細は後述する)。比較を行うために、塗型を使用せずに同様に製造した中子(耐火性塗型を有しない比較用中子)を乾燥キャビネットで乾燥させ、放出されたホルムアルデヒドの量を同様に測定した。
【0079】
第1の一連の試験においては、耐火性塗型を有しない比較用中子からのホルムアルデヒド放出量に乾燥温度が与える影響を調査した。この一連の試験のための中子の製造に使用する造型材料混合物は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂0.8質量%及びポリイソシアネート0.8質量%を含有するものとした。
【0080】
乾燥中に、乾燥器内の空気から試料を特定の回数採取し、ホルムアルデヒド含有量を測定した。この目的のために、乾燥開始から最初の測定までの期間(1分間)と、それぞれの測定時から次回の測定(乾燥時間5、10、15、20、25、及び30分)までの期間に、ポンプXact 5000(Draeger)を使用し、プローブを介して乾燥器から空気1.5Lをホルムアルデヒド(0.2~5ppm)用の即時検知管(fast detector tube)(Draeger)に抜き取り、ホルムアルデヒド濃度を確認した。
【0081】
乾燥中に特定の時点で確認したホルムアルデヒド含有量(ppm単位)を、次表に報告する。
【0082】
【表1】
【0083】
この一連の試験から、ホルムアルデヒド放出量は乾燥温度の上昇と共に増加することが示される(図1)。
【0084】
第2の一連の試験においては、耐火性塗型の組成(本発明の耐火性塗型組成物を有する中子E1及び比較用耐火性塗型組成物を有する中子V2)が、乾燥(180℃で30分間)時のホルムアルデヒド放出量に与える影響を調査した。この一連の試験に用いる中子を製造するために使用した造型材料混合物は、それぞれの鋳型基材(H32砂)の質量を基準として、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂0.8質量%及びポリイソシアネート0.8質量%を含有するものとした。本発明の耐火性塗型組成物は、化合物(b)としてレゾルシノールを含有するものとした。比較用として、耐火性塗型を有しない比較用中子V1を同一条件下で乾燥させた。
【0085】
比較用耐火性塗型の組成は次の通りである:
【0086】
【表2】
【0087】
本発明の耐火性塗型組成物は、比較用耐火性塗型100質量部にレゾルシノール3質量部を添加することにより製造した。
【0088】
乾燥中に特定の時点でホルムアルデヒド含有量(ppm単位)を上に述べたように確認した。次表に報告する。
【0089】
【表3】
【0090】
発明外の耐火性塗型から形成された塗型を有する比較用中子V2を乾燥させる際に放出されるホルムアルデヒドの量は、既に、耐火性塗型を有しない比較用中子V1を乾燥させる際の放出量を下回っている。しかしながら、本発明の中子E1(本発明の耐火性塗型組成物から形成された塗型を有する)を乾燥させる際に放出されるホルムアルデヒドの量はやはり大幅に低下する(図2)。
【0091】
第3の一連の試験において、本発明に従い使用される化合物(b)としてのレゾルシノールの量が、乾燥(180℃で30分間)時間(分)中のホルムアルデヒド放出量に与える影響を調査した。この一連の試験に用いる中子の製造に使用する造型材料混合物は、それぞれの鋳型基材(H32砂)の質量を基準として、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂1.0質量%及びポリイソシアネート1.0質量%を含有するものとした。中子E2及びE3は、それぞれ、レゾルシノールの比率が異なる耐火性塗型を有するものとした。比較用として、耐火性塗型を有しない比較用中子V3及び発明外の耐火性塗型から形成した塗型を有する比較用中子V4を、同一条件下で乾燥させた。
【0092】
比較用耐火性塗型の組成は上に指定した通りである。本発明の耐火性塗型組成物は、比較用耐火性塗型100質量部にそれぞれレゾルシノール0.8質量部(中子E2)又はレゾルシノール3質量部(中子E3)を添加することにより製造した。
【0093】
乾燥中に特定の時点でホルムアルデヒド含有量(ppm単位)を上に述べたように確認した。次表に報告する。
【0094】
【表4】
【0095】
発明外の耐火性塗型から形成された塗型を有する比較用中子V4を乾燥させる際に放出されるホルムアルデヒドの量は、既に、耐火性塗型を有しない比較用中子V3を乾燥させる際の放出量を下回っている。本発明の中子E2及びE3を乾燥させる際に放出されるホルムアルデヒドの量はそれを大幅に下回り、本発明の耐火性塗型組成物のレゾルシノール含有量が増加するにつれて低下する(図3)。
【0096】
第4の一連の試験においては、耐火性塗型の組成(中子E4;比較用耐火性塗型組成物、中子E5~E7;様々な本発明の耐火性塗型組成物)が、200℃での乾燥中に放出されるホルムアルデヒドの量に与える影響を、35分間に亘り監視した。この一連の試験に用いる中子の製造に使用する造型材料混合物は、それぞれの鋳型基材(H32砂)の質量を基準として、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂1質量%及びポリイソシアネート1質量%を含有するものとした。比較用として、耐火性塗型を有しない比較用中子を同一条件下で乾燥させた。
【0097】
比較用耐火性塗型の組成は上に指定した通りである。本発明の耐火性塗型組成物は、比較用耐火性塗型100質量部にそれぞれリグニン0.9質量部(中子E5)又はメラミン0.9質量部(中子E6)又はレゾルシノール3質量部(中子E7)を添加することにより製造した。
【0098】
乾燥中に特定の時点でホルムアルデヒド含有量(mg/cm3単位)を上に述べたように確認した。次表に報告する。
【0099】
【表5】
【0100】
本発明の中子E4~E7は全て、乾燥時に放出するホルムアルデヒドの量が、比較用中子の場合に比べて大幅に下回っている(図4)。
【0101】
化合物(b)としてグリシンを添加した場合も、同様の結果が得られた。
【0102】
更なる一連の試験において、ホルムアルデヒド捕捉剤としてのグリシンが乾燥時(180℃で30分間)のホルムアルデヒド放出量に与える影響を調査した。この目的のために、それぞれ鋳型基材(H32砂)の質量を基準として、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂1質量%及びポリイソシアネート1質量%を含有する造型材料混合物を使用し、中子ブロー造型機を用いて試験片(ブレーキディスク製造用中子)を一般的な方式で製造し、これを3級アミンを拡散させることにより一般的な方式で硬化させた(コールドボックス法)。これらの試験片に浸漬によって耐火性塗型を設けた(本発明の耐火性塗型組成物を有する試験片E8又は比較用耐火性塗型組成物を有する試験片V5)。比較用耐火性塗型の組成は上に指定した通りである。本発明の耐火性塗型組成物は、比較用耐火性塗型100質量部にグリシン1質量部を添加することにより製造した。
【0103】
耐火性塗型を有する試験片を、予熱したElpoからの乾燥器(内部温度170℃)に導入した。乾燥器の乾燥室から乾燥時間10分間の間に排出される空気の体積は267m3である。乾燥器の空気中のホルムアルデヒド濃度の測定を、試験片を乾燥器に導入し、乾燥器の扉を閉めてから1分後に開始した。試料採取のために棒状プローブを乾燥器のオフガス管に導入した。Draeger Xact 5000ポンプを利用して、10分間の乾燥時間の間に空気を乾燥室から流量1.5L/分で抜き出し、抜き出した試料体積をLpDNPHカートリッジ(SupelcoからのLpDNPH Cartridge S10)に誘導した。分析を、HPLCを用いてDIN 16000-3と同様に実施した。
【0104】
【表6】
【0105】
本発明の試験片E8(本発明の耐火性塗型組成物から形成された塗型を有する)を乾燥させる際に乾燥器から排出される空気中のホルムアルデヒド濃度は、発明外の耐火性塗型から形成された塗型を有する比較用試験片V5と比較して、3分の1を超えて低下した。
図1
図2
図3
図4