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特許7535047トリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】トリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240807BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240807BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240807BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240807BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61K31/713
A61K48/00
A61P43/00 105
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/60
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/18
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021534224
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2019061241
(87)【国際公開番号】W WO2020123083
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】62/778,759
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521359667
【氏名又は名称】ディセルナ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DICERNA PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ボブ デール
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500027(JP,A)
【文献】国際公開第2017/160983(WO,A1)
【文献】特表2012-504389(JP,A)
【文献】国際公開第2006/125977(WO,A2)
【文献】Molecular Therapy-Nucleic Acids,2014年,Vol.2,e141 (pp.1-12,Supplementary Figure)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖核酸インヒビター分子であって、
20~65のヌクレオチドを含み、かつ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有するセンス鎖;
15~40のヌクレオチドを含むアンチセンス鎖であって、前記センス鎖及びアンチセンス鎖が別々の鎖である前記アンチセンス鎖;及び
前記センス鎖の第1の領域及び前記アンチセンス鎖により形成され、15~40塩基対の長さを有する第1の二本鎖(D1)
を含み;
前記センス鎖の第2の領域が、第1のサブ領域(S1)と、第2のサブ領域(S2)と、前記第1及び第2のサブ領域を結合するトリループ(triL)とを含み、前記第1及び第2のサブ領域が、第2の二本鎖(D2)を形成しており、前記トリループが、GAAのヌクレオチド配列を有する、二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項2】
前記センス鎖が、22~65、25~39、または27~35のヌクレオチドを有する、請求項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖が、20~24または20~22のヌクレオチドを有する、請求項1または2に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項4】
前記トリループの5’末端に直接隣接しているヌクレオチドが、Cであり、前記トリループの3’末端に直接隣接しているヌクレオチドが、Gである、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖が、その3’末端に1~4のヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項6】
前記一本鎖オーバーハングが、2ヌクレオチド長さである、請求項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項7】
前記第1の二本鎖が、18~30、18~24、または20~22塩基対の長さを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項8】
前記第2の二本鎖が、2~6塩基対の長さを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項9】
前記第2の二本鎖が、2または3塩基対の長さを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項10】
前記センス鎖の第1の領域が、20ヌクレオチド長さであり、前記センス鎖の第2の領域が、7~15ヌクレオチド長さであり;
前記センス鎖の第1の領域及び前記アンチセンス鎖により形成される第1の二本鎖が、20塩基対の長さを有し;
前記センス鎖の第2の領域の第1及び第2の核酸により形成される第2の二本鎖が、2~6塩基対の長さを有し;かつ
前記アンチセンス鎖が、22ヌクレオチド長さであり、かつその3’末端に2つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項11】
前記第2の二本鎖が、6塩基対の長さを有する、請求項10に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項12】
前記第2の二本鎖が、次のうちの1つまたは複数:
から選択される少なくとも1つの二環式ヌクレオチドを含む[式中、Bは、核酸塩基であり、R2は、HまたはCH3であり、かつWa及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、リン部分、または前記二環式ヌクレオチドを別のヌクレオチドに、もしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbの少なくとも一方は、前記二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]、請求項1~11のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項13】
前記第2の二本鎖が、フラノシルである第1の環と、前記フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋とを含む少なくとも1つの二環式ヌクレオチドを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項14】
前記フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋が:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、Rは、Hまたは1~C12アルキルである);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(CH22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtとしても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知);
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’;
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’;
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’;
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’;ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2
からなる群から選択される、請求項13に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項15】
前記トリループが、少なくとも1つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項16】
前記トリループが、少なくとも2つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項17】
ガンドが、GalNAcである、請求項15または16に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項18】
前記GalNAcが、糖部分の2’-位で、前記ヌクレオチドにコンジュゲートしている、請求項17に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項19】
前記センス鎖及び/または前記アンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣体をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項20】
脂質ナノ粒子を用いて製剤化されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項21】
前記脂質ナノ粒子が、コア脂質及びエンベロープ脂質を含み、前記コア脂質が、第1のカチオン性脂質及び第1のペグ化脂質を含み、前記エンベロープ脂質が、第2のカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び第2のペグ化脂質を含む、請求項20に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項22】
前記第1のカチオン性脂質が、DL-048であり、前記第1のペグ化脂質が、DSG-MPEGであり、前記第2のカチオン性脂質が、DL-103であり、前記中性脂質が、DSPCであり、前記ステロールが、コレステロールであり、かつ前記第2のペグ化脂質が、DSPE-MPEGである、請求項21に記載の二本鎖核酸インヒビター分子。
【請求項23】
治療有効量の、請求項1~22のいずれか1項に記載の二本鎖核酸インヒビター分子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項24】
対象において標的遺伝子の発現を減少させるための、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
静脈内、筋肉内、または皮下で投与されるものである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記対象が、ヒトである、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に援用される2018年12月12日出願の米国特許仮出願第62/778,759号の利益を請求し、かつその出願日に基づく。
【0002】
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド(RNA、DNA及びそれらの類似体)のポリマー配列である。核酸インヒビター分子は、細胞内RNAレベルを調節するオリゴヌクレオチドであり、がん、ウイルス感染症及び遺伝性障害の処置において当初の期待を実証している。核酸インヒビター分子は、RNA干渉(RNAi)を含む多様な機構セットを介して、RNA発現を調節し得る。
【0003】
RNAiは、多くの真核生物において見出されている保存経路であり、その場合、二本鎖RNA分子(dsRNA)が、dsRNAに対して相補的な配列を有する標的遺伝子の発現を阻害する。典型的なRNAi経路では、長いdsRNA分子がダイサー酵素により切断されて、低分子干渉RNA(「siRNA」)と呼ばれる短いRNA二本鎖になる。siRNAは、ダイサー、トランス-活性化応答RNA結合タンパク質(TRBP)、及びアルゴノート2(「Ago2」)と会合して、RNA誘導型サイレンシング複合体(「RISC」)と時に称される複合体を形成することが示されている。いったん活性化されたAgo2は、RISC複合体の配列特異性を標的mRNAの切断へと向けるためにsiRNAのアンチセンス鎖(ガイド鎖とも呼ばれる)を使用して標的mRNAを切断するエンドヌクレアーゼである。
【0004】
様々な二本鎖RNAiインヒビター分子構造が、長年にわたって開発されている。例えば、RNAiインヒビター分子についての当初の研究は、天然siRNAを模倣し、その際、各鎖が、19~25ヌクレオチドのサイズを、1~5つのヌクレオチドからなる少なくとも1つの3’-オーバーハングと共に有する二本鎖核酸分子に集中した(例えば、米国特許第8,372,968号を参照されたい)。続いて、RNAiインヒビター分子を活性化するためにダイサー酵素によりin vivoでプロセシングされる長い二本鎖RNAiインヒビター分子が開発された(例えば、米国特許第8,883,996号を参照されたい)。後の研究により、鎖のうちの1本が熱力学的安定化テトラループ構造を含む構造を含めて、少なくとも1本の鎖の少なくとも1つの末端がその分子の二本鎖標的領域を超えて伸長されている、伸長された二本鎖核酸インヒビター分子が開発された(例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,513,207号、米国特許第8,927,705号、WO2010/033225、及びWO2016/100401を参照されたい)。
【0005】
ある特定の事例では、in vivo投与後に経験される条件のような特異的な条件下で望まれ得る特性を導入するために、化学修飾ヌクレオチドが核酸インヒビター分子に導入されている。そのような化学修飾ヌクレオチドには、例えば、オリゴヌクレオチドの構造もしくは活性を分解する、もしくはそれに干渉するヌクレアーゼもしくは他の酵素に対して安定化するように、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを増加させるように、またはオリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するように設計されたものが含まれる。
【0006】
しかしながら、新たな二本鎖核酸インヒビター分子を開発する、及び/またはそのような核酸インヒビター分子に所望の特性を付与するために化学修飾ヌクレオチドを導入するという要望を、構造及び/または化学修飾ヌクレオチドが核酸インヒビター分子活性に対して及ぼし得るであろう何らかのマイナスの影響を最小限にする(例えば、遺伝子標的ノックダウンの効力または持続期間の何らかの減少を最小限にする)という競合する要望と釣り合わせなければならない。
【発明の概要】
【0007】
ステムループ構造を有するセンス鎖と、別のアンチセンス鎖とを有し、その際、ステムループ構造のループ部分がトリループを含む二本鎖核酸インヒビター分子を本明細書では開示する。例に示されているとおり、トリループを含む二本鎖核酸インヒビターは安定していて、用量依存的にin vivo標的mRNA発現を減少させる。このトリループ構造が、その天然に存在する状況から取り出されて、化学合成二本鎖核酸インヒビター分子に組み込まれた場合に、熱力学的に安定な立体配置を維持し得ることは意外であった。GalNAcなどのリガンドとトリループ中のヌクレオチドとのコンジュゲートがトリループの熱力学的に安定な立体配置を破壊しないこと、及び2つのGalNAcとトリループとのコンジュゲートが、3つのGalNAcがテトラループにコンジュゲートしているテトラループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と比較して、肝細胞における効力の減少をもたらさず、ある特定の事例では実際に、効力の改善をもたらすことが見出されたことも意外であった。
【0008】
加えて、トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、二環式ヌクレオチドをステムループ構造のステム部分に組み込むことができる。国際公開WO2019/200124において既に実証されているとおり、Tm-上昇ヌクレオチドのステム二本鎖への組み込みは、一部では、in vivo標的mRNAノックダウンの持続期間の増強により証明されるとおり、安定性の上昇をテトラループ含有二本鎖核酸インヒビター分子に付与し得る。
【0009】
さらに、テトラループの代わりにトリループを使用すること、及びステムループ構造のステム部分への二環式ヌクレオチドの導入は、それを含む二本鎖核酸インヒビター分子の効力を低下させることなく、より短いセンス鎖の使用を可能にする。より短いセンス鎖の使用は、時間及び経費の両方を削減するという製造プロセス上の利点をもたらす。これはまた、投与において利点をもたらし、それというのも、その低い分子量により、分子ベースでより多くのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を投与することが可能であるためである。
【0010】
上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖(S)の第1の領域(R1)とアンチセンス鎖(AS)との間の第1の二本鎖(D1)及びセンス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間の第2の二本鎖(D2)を含有し、その際、S1及びS2が、トリループ(triL)により結合している。図1A~Dを参照されたい。加えて、ステムループ構造のステム部分は、ある特定の実施形態では、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチド、例えば、4~12のTm-上昇ヌクレオチド、例えば、2~6のTm-上昇ヌクレオチド塩基対、または1~6の非対合Tm-上昇ヌクレオチドを含有し得る。上記ステムループ構造は、センス鎖の5’末端または3’末端に位置し得る。
【0011】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、
20~65のヌクレオチドを含み、かつ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有するセンス鎖;
15~40のヌクレオチドを含むアンチセンス鎖であって、上記センス鎖及びアンチセンス鎖が別々の鎖であるアンチセンス鎖;
上記センス鎖の第1の領域及び上記アンチセンス鎖により形成され、15~40塩基対の長さを有する第1の二本鎖(D1)
を含み;
その際、上記センス鎖の第2の領域(R2)が、第1のサブ領域(S1)と、第2のサブ領域(S2)と、上記第1及び第2の領域を結合するトリループ(triL)とを含み、上記第1及び第2の領域が、第2の二本鎖(D2)を形成している。
【0012】
ある特定の実施形態では、上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。
【0013】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、22~65のヌクレオチドを有する。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、25~39のヌクレオチドを有する。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、27~35のヌクレオチドを有する。
【0014】
ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~24のヌクレオチドを有する。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~22のヌクレオチドを有する。
【0015】
ある特定の実施形態では、上記トリループの5’末端に直接隣接しているヌクレオチドは、Cであり、上記トリループの3’末端に直接隣接しているヌクレオチドは、Gである。
【0016】
ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、その3’末端に1~4のヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。ある特定の実施形態では、上記一本鎖オーバーハングは、2ヌクレオチド長さである。
【0017】
ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、18~30塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、18~24塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第1の二本鎖(D1)は、20~22塩基対の長さを有する。
【0018】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖は、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有せず、かつある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖は、4~10のTm-上昇ヌクレオチドを含有し、かつ2~5塩基対の長さを有する。
【0019】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、25~39ヌクレオチド長さであり、上記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さであり、上記第1の二本鎖は、18~24ヌクレオチドの長さを有し、かつ上記第2の二本鎖は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、27~35ヌクレオチド長さであり、上記アンチセンス鎖は、20~22ヌクレオチド長さであり、上記第1の二本鎖は、18~22塩基対の長さを有し、かつ上記第2の二本鎖は、2~3塩基対の長さを有する。
【0020】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、3塩基対の長さを有する。
【0021】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖の第1の領域(R1)は、20ヌクレオチド長さであり、上記センス鎖の第2の領域(R2)は、7~9ヌクレオチド長さであり;
その際、上記センス鎖の第1の領域及び上記アンチセンス鎖により形成される第1の二本鎖(D1)は、20塩基対の長さを有し;
上記センス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)及びサブ領域(S2)により形成される第2の二本鎖(D2)は、2または3塩基対の長さを有し、かつ上記第2の二本鎖は、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチドを含有し;
上記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチド長さであり、かつその3’末端に2つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し;かつ
上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。ある特定の実施形態では、R2は、7ヌクレオチド長さであり、かつD2は、2塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、R2は、9ヌクレオチド長さであり、かつD2は、3塩基対の長さを有する。
【0022】
ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)中の各ヌクレオチドは、Tm-上昇ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)以外には、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
【0023】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、G-クランプ及びその類似体、ヘキシトールヌクレオチド、ならびに修飾ヌクレオチドからなる群から選択され、その際、上記修飾ヌクレオチドは、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない。ある特定の実施形態では、上記修飾ヌクレオチドは、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル-修飾ピリミジン、2-アミノアデニン、2-チオウリジン、5Me-チオウリジン、またはシュードウリジンである。
【0024】
上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子が少なくとも1つの二環式ヌクレオチドを含む、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式I、II、III、IV、Va、またはVbの構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、またはIfのうちの1つまたは複数の構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIa、IIb、IIc、またはIIdのうちの1つまたは複数の構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIIa及び/またはIIIbの構造を有する。ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IVa及び/またはIVbの構造を有する。
【0025】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、次のうちの1つまたは複数:




である[式中、Bは、核酸塩基であり、R2は、HまたはCH3であり、かつWa及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または二環式ヌクレオチドを別のヌクレオチドに、もしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、ここで、WaまたはWbの少なくとも一方は、二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0026】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは:

であり、この際、B、Wa、及びWbは、上記のとおりであり、かつR2は、CH3である。
【0027】
ある特定の実施形態では、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、フラノシルである第1の環、ならびにフラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、上記フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋は:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで、Rは、H、C1~C12アルキル、または例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNANCとしても公知)もしくは4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]としても公知)を含む保護基である);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(CH22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtとしても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知)、及びその類似体;
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体;
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体;
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体;
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体;ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体
からなる群から選択される。
【0029】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖以外に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
【0030】
ある特定の実施形態では、上記トリループは、少なくとも1つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記トリループは、2つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記トリループは、3つのリガンドコンジュゲートしたヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記リガンドは、GalNAcである。ある特定の実施形態では、上記GalNAcは、糖部分の2’-位で、上記ヌクレオチドにコンジュゲートしている。
【0031】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子はさらに、上記センス鎖及び/または上記アンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣体を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を、脂質ナノ粒子を用いて製剤化する。ある特定の実施形態では、上記脂質ナノ粒子は、コア脂質及びエンベロープ脂質を含み、その際、上記コア脂質は、第1のカチオン性脂質及び第1のペグ化脂質を含み、上記エンベロープ脂質は、第2のカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び第2のペグ化脂質を含む。ある特定の実施形態では、上記第1のカチオン性脂質は、DL-048であり、上記第1のペグ化脂質は、DSG-mPEGであり、上記第2のカチオン性脂質は、DL-103であり、上記中性脂質は、DSPCであり、上記ステロールは、コレステロールであり、かつ上記第2のペグ化脂質は、DSPE-mPEGである。
【0033】
別の態様は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を対象とする。
【0034】
別の態様は、対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子または医薬組成物を、上記標的遺伝子の発現を減少させるために十分な量で投与することを含む上記方法を対象とする。ある特定の実施形態では、上記投与ステップは、静脈内、筋肉内、または皮下投与を含む。ある特定の実施形態では、上記対象は、ヒトである。
【0035】
本明細書に援用され、かつその一部を構成する添付の図面は、ある特定の実施形態を説明するものであり、かつ文書による説明と一緒に、本明細書に開示の組成物及び方法のある特定の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】アンチセンス鎖(「AS」)及びセンス鎖(「S」)を含み、その際、上記センス鎖がステムループ構造を含み、上記ループがトリループである、例示的な二本鎖核酸インヒビター分子の図が示されている。
図1B図1Aと同じ例示的な図が示されている。図1Bでは、上記センス鎖がさらに、上記アンチセンス鎖(AS)と共に二本鎖を形成する第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するトリループ(triL)を含む第2の領域(R2)とに区分されており、その際、S1及びS2は、本明細書において「ステム」または「ステム二本鎖」と称される二本鎖を形成するために相互に十分に相補的である。
図1C図1A及び1Bと同じ例示的な図が図示されている。図1Cの図は、上記核酸インヒビター分子中の第1の二本鎖(D1)及び第2の二本鎖(D2)を図示している。上記第1の二本鎖(D1)は、上記センス鎖の第1の領域(R1)と上記アンチセンス鎖(AS)との間に形成される。上記第2の二本鎖(D2)または「ステム」は、上記センス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間に形成される。
図1D】上記第2の二本鎖(D2)が図1Cに図示されている第2の二本鎖よりも短い例示的な二本鎖核酸インヒビター分子が図示されている。
図2A】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト1」)の構造が図示されている。コンストラクト1のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。テトラループの4つのヌクレオチドのうちの3つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2B】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト2」)の構造が図示されている。コンストラクト2のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。コンストラクト2の構造は、コンストラクト1の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト1のように4つのうちの3つではなく、テトラループの4つのヌクレオチドのうちの2つのみが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2C】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト3」)の構造が図示されている。コンストラクト3のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。コンストラクト3の構造は、コンストラクト2の構造と同一であるが、ただし、ステムループのループ部分が、テトラループの代わりに、トリループである。
図2D】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト4」)の構造が図示されている。コンストラクト4のセンス鎖は、ステム二本鎖中のヌクレオチドのそれぞれが二環式ヌクレオチドである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。上記トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図2E】実施例1に論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト5」)の構造が図示されている。コンストラクト5のセンス鎖は、ステム二本鎖中のヌクレオチドのそれぞれがLNAである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。上記トリループの3つのヌクレオチドのうちの2つが、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図3A】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1(図2Aを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Aにおいて示されているとおり、有効な用量(ED50)は、0.5726mg/kgであると計算された。
図3B】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト2(図2Bを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Bにおいて示されているとおり、ED50は、0.3604mg/kgであると計算された。
図3C】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト3(図2Cを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Cにおいて示されているとおり、ED50は、0.3144mg/kgであると計算された。
図3D】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト4(図2Dを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Dにおいて示されているとおり、ED50は、0.3012mg/kgであると計算された。
図3E】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト5(図2Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示すグラフである。図3Eにおいて示されているとおり、ED50は、0.2325mg/kgであると計算された。
図4】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1~5(図2A~Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを重ね合わせて示すグラフである。
図5】CD-1マウスに様々な投薬量のコンストラクト1~5(図2A~Eを参照されたい)を、実施例1において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントを示す棒グラフである。
図6A】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト6」)の構造が図示されている。コンストラクト6のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。上記テトラループの4つのヌクレオチドのうちの2つは、単一のGalNAc分子にコンジュゲートしている。
図6B】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト7」)の構造が図示されている。コンストラクト7のセンス鎖は、6塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト7の構造は、コンストラクト6の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト7は、テトラループの代わりに、トリループを含む。
図6C】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト8」)の構造が図示されている。コンストラクト8のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである3塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6D】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト9」)の構造が図示されている。コンストラクト9のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである3塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト9の構造は、コンストラクト8の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト9は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図6E】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト10」)の構造が図示されている。コンストラクト10のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである2塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6F】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト11」)の構造が図示されている。コンストラクト11のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中の各ヌクレオチドがBNAである2塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト11の構造は、コンストラクト10の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト11は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図6G】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト12」)の構造が図示されている。コンストラクト12のセンス鎖は、ステムループ構造のステム部分中のヌクレオチドが両方ともBNAである1塩基対のステム二本鎖と、テトラループとを含む。
図6H】実施例2において論述されているとおりの、目的の遺伝子配列を標的とする例示的な二本鎖核酸インヒビター分子(「コンストラクト13」)の構造が図示されている。コンストラクト13のセンス鎖は、上記ステムループ構造のステム部分中のヌクレオチドが両方ともBNAである1塩基対のステム二本鎖と、トリループとを含む。コンストラクト13の構造は、コンストラクト12の構造と同一であるが、ただし、コンストラクト13は、テトラループの代わりにトリループを含有する。
図7】コンストラクト1(図2Aを参照されたい)及びコンストラクト6~13(図6A~Hを参照されたい)をCD-1マウスに、実施例2において説明されているとおりに投与してから4日後に残留している標的遺伝子mRNAのパーセントが示されている。コンストラクト7、9、及び11中にトリループが含まれることは、それぞれテトラループコンストラクト1、6、8、及び10と比較した場合に、遺伝子ノックダウンの効力を有意に低下させず、ある特定の事例では実際に、効力を向上させた。標的mRNA発現の強力な減少を示したテトラループとステム二本鎖中の二環式ヌクレオチドの単一の塩基対とを含むコンストラクト12とは対照的に、トリループと、ステム二本鎖中の二環式ヌクレオチドの単一の塩基対とを含有するコンストラクト13は、標的mRNA発現を減少させなかった。
図8】上記二本鎖核酸インヒビター分子を製剤化するために使用することができる脂質ナノ粒子(LNP)の非限定的実施形態の1つを示している。上記LNPは、次のコア脂質:DL-048(カチオン性脂質)及びDSG-mPEG(ペグ化脂質)と、次のエンベロープ脂質:DL-103(カチオン性脂質)、DSPC、コレステロール、及びDSPE-mPEG(ペグ化脂質)とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本開示をより容易に理解するために、ある特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義を、本明細書を通して記載することもある。以下に記載の用語の定義が、参照により援用される出願または特許における定義と矛盾する場合、本出願に記載の定義を使用して、その用語の意味を理解されたい。
【0038】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他の意味を示さない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載の、及び/または本開示などを読むことで当業者に明らかになるであろう種類の1つまたは複数の方法、及び/またはステップを含む。
【0039】
投与する:本明細書で使用される場合、対象に組成物を「投与すること」とは、その組成物を上記対象に与えること、適用することまたは接触させることを意味する。投与は、例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内及び皮内を含む多くの経路のいずれかにより達成され得る。
【0040】
アシル:本明細書で使用される場合、「アシル」という用語は、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル及びアリールカルボニル部分を指す。
【0041】
アルコキシ:本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して分子部分に結合するアルキル基を指す。
【0042】
アルケニル:本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素間二重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。「置換アルケニル」は、さらに1個または複数の置換基を有するアルケニル基を指す。本明細書で使用される場合、「低級アルケニル」は、2~約6個の炭素原子を有するアルケニル部分を指す。
【0043】
アルキル:本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1個~最大約20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。本明細書に出現する場合は常に、数値範囲、例えば、「C1~C6アルキル」は、アルキル基が1個の炭素原子のみ、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、6個を含めた最大6個の炭素原子を含み得ることを意味するが、「アルキル」という用語は、炭素原子の数値範囲が指定されていない場合も含む。例えば、「アルキル」という用語は、C1~C10の部分範囲(例えば、C1~C6)を指し得る。「置換アルキル」は、置換基を有するアルキル部分を指す。本明細書で使用される場合、「低級アルキル」は、1~約6個の炭素原子を有するアルキル部分を指す。
【0044】
アルキニル:本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素間三重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。「置換アルキニル」は、さらに1個または複数の置換基を有するアルキニル基を指す。本明細書で使用される場合、「低級アルキニル」は、約2~約6個の炭素原子を有するアルキニル部分を指す。
【0045】
アンチセンス鎖:二本鎖核酸インヒビター分子は、2本のオリゴヌクレオチド鎖、すなわち、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。アンチセンス鎖またはその領域は、標的核酸の対応する領域に、部分的に、実質的にまたは完全に相補的である。加えて、上記二本鎖核酸インヒビター分子またはその領域のアンチセンス鎖は、その二本鎖核酸インヒビター分子またはその領域のセンス鎖に、部分的に、実質的にまたは完全に相補的である。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、標的核酸配列に非相補的なヌクレオチドも含み得る。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補性配列のいずれかの側にあっても、または上記相補性配列の両側にあってもよい。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖またはその領域が上記センス鎖またはその領域に部分的または実質的に相補的である場合、上記非相補的ヌクレオチドは、1つまたは複数の相補性領域の間に位置し得る(例えば、1つまたは複数のミスマッチ)。二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖は、ガイド鎖とも称される。
【0046】
およそ:本明細書で使用される場合、1つまたは複数の目的の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、述べられた参照値と同様の値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段に述べられていない限り、または別段に文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超えるであろう場合を除く)、述べられた参照値のいずれかの方向(上回る、または下回る)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に該当する値の範囲を指す。
【0047】
アリール:本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、5個~最大19個の範囲の炭素原子を有する芳香族単環式または多環式基を指す。「置換アリール」は、さらに1個または複数の置換基を有するアリール基を指す。
【0048】
二環式ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「二環式ヌクレオチド」という用語は、二環式糖部分を含むヌクレオチドを指す。
【0049】
二環式糖部分:本明細書で使用される場合、「二環式糖部分」という用語は、4~7員環(フラノシルを含むが、これに限定されない)を含み、その4~7員環の2個の原子を連結して第2の環を形成する架橋を含むことにより、二環式構造をもたらす修飾糖部分を指す。典型的には、上記4~7員環は糖である。一部の実施形態では、上記4~7員環はフラノシルである。ある特定の実施形態では、上記架橋は、上記フラノシルの2’-炭素と4’-炭素とを連結する。
【0050】
相補的:本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、2つのヌクレオチドが相互に塩基対を形成することを可能にする2つのヌクレオチド間の構造的関係(例えば、2つの相対する核酸または単一の核酸鎖の相対する領域での)を指す。例えば、相対する核酸のピリミジンヌクレオチドと相補的なある核酸のプリンヌクレオチドは、互いに水素結合を形成することにより、塩基対合し得る。一部の実施形態では、相補的ヌクレオチドは、ワトソン-クリック様式で、または安定な二本鎖の形成を可能にする任意の他の様式で塩基対合する場合もある。「完全に相補的」または100%の相補性は、第1のオリゴヌクレオチド鎖または第1のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各ヌクレオチドモノマーが、第2のオリゴヌクレオチド鎖または第2のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各ヌクレオチドモノマーと共に塩基対を形成することができる状況を指す。100%未満の相補性は、2つのオリゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖の2つのセグメント)のヌクレオチドモノマーのすべてではなく一部が相互に塩基対を形成することができる状況を指す。「実質的相補性」は、相互に90%以上の相補性を示す2つのオリゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖のセグメント)を指す。「十分に相補的」は、標的mRNAによりコードされるタンパク質の量に低下が生じるような標的mRNAと核酸インヒビター分子との間の相補性を指す。
【0051】
相補鎖:本明細書で使用される場合、「相補鎖」という用語は、他方の鎖に部分的に、実質的にまたは完全に相補的な二本鎖核酸インヒビター分子の鎖を指す。
【0052】
シクロアルキル:本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、例えば、3~6個の炭素を含む環式(すなわち、環を含む)炭化水素基を指す。「置換シクロアルキル」は、さらに1個または複数の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0053】
デオキシリボフラノシル:本明細書で使用される場合、「デオキシリボフラノシル」という用語は、下に図示するとおりの、天然に存在するDNAにおいて見出され、2’-炭素に水素基を有する、以下に示すとおりのフラノシルを指す。
【0054】
デオキシリボヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「デオキシリボヌクレオチド」という用語は、糖部分の2’位に水素基を有する天然ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0055】
dsRNAiインヒビター分子:本明細書で使用される場合、「dsRNAiインヒビター分子」という用語は、センス鎖(パッセンジャー)及びアンチセンス鎖(ガイド)を有し、その際、上記アンチセンス鎖または上記アンチセンス鎖の一部が、標的mRNAの切断においてアルゴノート2(Ago2)エンドヌクレアーゼにより使用される、二本鎖核酸インヒビター分子を指す。
【0056】
二本鎖:本明細書で使用される場合、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)に関する「二本鎖」という用語は、ヌクレオチドの2つの逆平行配列の相補的塩基対合を通して形成される構造を指す。
【0057】
賦形剤:本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、組成物に含まれ、例えば、所望の粘稠度または安定効果をもたらす、またはこれに寄与し得る非治療薬を指す。
【0058】
フラノシル:本明細書で使用される場合、「フラノシル」という用語は、4個の炭素原子及び1個の酸素原子を有する5員環を含む構造を指す。
【0059】
ハロ:本明細書で使用される場合、「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、互換的であり、かつフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される原子を指す。
【0060】
複素環:本明細書で使用される場合、「複素環」または「複素環式」という用語は、その環構造の一部として1個または複数のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含有し、かつ3個~最大14個の範囲の炭素原子を有する非芳香族環式(すなわち、環を含む)基を指す。「置換複素環式」または「置換複素環」は、さらに1個または複数の置換基を有する複素環式基を指す。
【0061】
ヌクレオチド間結合基:本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド間結合基」または「ヌクレオチド間結合」という用語は、2つのヌクレオシド部分を共有結合することが可能な化学基を指す。典型的には、上記化学基は、ホスホまたはホスファイト基を含むリン含有結合基である。ホスホ結合基は、ホスホジエステル結合、ホスホロジチオアート結合、ホスホロチオアート結合、ホスホトリエステル結合、チオノアルキルホスホナート結合、チオンアルキルホスホトリエステル結合、ホスホラミダイト結合、ホスホナート結合及び/またはボラノホスファート結合を含むことを意図している。例えば、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;同第5,194,599号;同第5,565,555号;同第5,527,899号;同第5,721,218号;同第5,672,697号及び同第5,625,050号に開示のとおり、多くのリン含有結合が当技術分野で周知である。他の実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、リン原子を含まない1個または複数のヌクレオチド間結合基、例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオチド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオチド間結合、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオチド間結合を含み、これらには、これに限定されないが、シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート及びスルホンアミド骨格;ならびにアミド骨格を有するものが含まれる。例えば、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;同第5,792,608号;同第5,646,269号及び同第5,677,439号に開示のとおり、非リン含有結合が当技術分野で周知である。
【0062】
ループ:本明細書で使用される場合、「ループ」という用語は、一本鎖の核酸によって形成される構造を指し、その際、特定の一本鎖ヌクレオチド領域に隣接する相補性領域は、その相補性領域間の一本鎖ヌクレオチド領域が、二本鎖形成またはワトソン-クリックの塩基対合から除外されるような様式でハイブリッド形成する。ループは、任意の長さの一本鎖ヌクレオチド領域である。ループの例には、ヘアピン、テトラループ、及びトリループなどの構造に存在する非対合ヌクレオチドが含まれる。
【0063】
融解温度:本明細書で使用される場合、「融解温度」または「Tm」は、二本鎖核酸の2本の鎖が別々になる温度を意味する。Tmは多くの場合に、相補性核酸またはその一部の2本の鎖の二本鎖安定性または結合親和性の尺度として使用される。Tmは、UVスペクトラムを使用してハイブリダイゼーションの形成及び分解(融解)を決定することにより、測定することができる。ハイブリダイゼーション中に起こる塩基スタッキングは、UV吸収の減少(淡色性)を随伴する。その結果、UV吸収の減少は、より高いTmを示す。
【0064】
修飾核酸塩基:本明細書で使用される場合、「修飾核酸塩基」という用語は、天然核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基ではない、任意の核酸塩基を指す。適切な修飾核酸塩基には、ジアミノプリン及びその誘導体、アルキル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、チオラート化プリンまたはピリミジンなどが含まれる。他の適切な修飾核酸塩基には、プリン及びピリミジンの類似体が含まれる。適切な類似体には、これに限定されないが、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、8-ブロモアデニン、2-チオシトシン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、5-エチルシトシン、4-アセチルシトシン、1-メチルグアニン、2-メチルグアニン、7-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、8-ブロモグアニン、8-クロログアニン、8-アミノグアニン、8-メチルグアニン、8-チオグアニン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、5-エチルウラシル、5-プロピルウラシル、5-メトキシウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-(メチルアミノメチル)ウラシル、5-(カルボキシメチルアミノメチル)-ウラシル、2-チオウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-(2-ブロモビニル)ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、1-メチルシュードウラシル、キュエオシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2-アミノプリン、6-ヒドロキシアミノプリン、ニトロピロリル、ニトロインドリル及びジフルオロトリル、6-チオプリン及び2,6-ジアミノプリンニトロピロリル、ニトロインドリル及びジフルオロトリルが含まれる。典型的には、核酸塩基は窒素塩基を含む。ある特定の実施形態では、上記核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。
【0065】
修飾ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオシド」という用語は、リン酸基または修飾リン酸基(本明細書で定義するとおり)に結合しておらず、修飾核酸塩基(本明細書で定義するとおり)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義するとおり)または修飾糖部分(本明細書で定義するとおり)のうちの1つまたは複数を含む、糖(例えば、デオキシリボースもしくはリボースまたはその類似体)とのN-グリコシド結合中の複素環式窒素塩基を指す。上記修飾またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも称される)は一般に、ヌクレオシドの糖部分の1’位に位置し、1’位のアデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシル以外の核酸塩基を指す。ある特定の実施形態では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形態では、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、上記修飾ヌクレオチドは、核酸塩基を含まない(非塩基性)。本開示の状況で適切な修飾もしくはユニバーサル核酸塩基または修飾糖は、本明細書に記載されている。
【0066】
修飾ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「修飾ヌクレオチド」という用語は、リン酸基または修飾リン酸基(本明細書で定義するとおり)に結合しており、修飾核酸塩基(本明細書で定義するとおり)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義するとおり)または修飾糖部分(本明細書で定義するとおり)のうちの1つまたは複数を含む、糖(例えば、リボースもしくはデオキシリボースまたはその類似体)とのN-グリコシド結合中の複素環式窒素塩基を指す。上記修飾またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも称される)は一般に、ヌクレオシド糖部分の1’位に位置し、1’位のアデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシル以外の核酸塩基を指す。ある特定の実施形態では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形態では、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、核酸塩基を含まない(非塩基性)。本開示の状況で適切な修飾もしくはユニバーサル核酸塩基、修飾糖部分、または修飾リン酸基は、本明細書に記載されている。
【0067】
修飾リン酸基:本明細書で使用される場合、「修飾リン酸基」という用語は、天然ヌクレオチドで生じないリン酸基の修飾を指し、リン原子を含むリン酸模倣体、及びリン酸を含まないアニオンリン酸模倣体(例えば、酢酸)を含む、本明細書に記載のとおりの天然に存在しないリン酸模倣体を含む。修飾リン酸基は、本明細書に記載のとおり、例えばホスホロチオアートを含むリン含有ヌクレオチド間結合基、及び非リン含有結合基の両方を含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基も含む。
【0068】
修飾糖部分:本明細書で使用される場合、「修飾糖部分」は、置換糖部分(本明細書で定義するとおり)または糖類似体(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0069】
天然核酸塩基:本明細書で使用される場合、「天然核酸塩基」という用語は、5つの主要な天然に存在するRNA及びDNAの複素環核酸塩基、すなわち、プリン塩基:アデニン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基:チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)を指す。
【0070】
天然ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「天然ヌクレオシド」という用語は、リン酸基に結合していない天然糖部分(本明細書で定義するとおり)とのN-グリコシド結合中の天然核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0071】
天然ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「天然ヌクレオチド」という用語は、リン酸基に結合している天然糖部分(本明細書で定義するとおり)とのN-グリコシド結合中の天然核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0072】
天然糖部分:本明細書で使用される場合、「天然糖部分」という用語は、リボフラノシル(本明細書で定義するとおり)またはデオキシリボフラノシル(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0073】
核酸インヒビター分子:本明細書で使用される場合、「核酸インヒビター分子」という用語は、オリゴヌクレオチド分子が標的遺伝子mRNA中の配列を特異的に標的とする領域を含む、標的遺伝子の発現を減少させる、または除去するオリゴヌクレオチド分子を指す。典型的には、核酸インヒビター分子の標的領域は、特定した標的遺伝子に核酸インヒビター分子の効果を向けるために、標的遺伝子mRNA上の配列と十分に相補的である配列を含む。上記核酸インヒビター分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、及び/または修飾ヌクレオチドを含んでよい。
【0074】
核酸塩基:本明細書で使用される場合、「核酸塩基」という用語は、天然核酸塩基(本明細書で定義するとおり)、修飾核酸塩基(本明細書で定義するとおり)またはユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0075】
ヌクレオシド:本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、天然ヌクレオシド(本明細書で定義するとおり)、または修飾ヌクレオシド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0076】
ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、天然ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0077】
オーバーハング:本明細書で使用される場合、「オーバーハング」という用語は、二本鎖核酸インヒビター分子のいずれかの鎖のいずれかの末端の末端非塩基対ヌクレオチド(複数可)を指す。ある特定の実施形態では、上記オーバーハングは、第1の鎖または領域が二本鎖を形成している相補鎖の末端を越えて伸びている、1本の鎖または領域から生じる。塩基対の水素結合により二本鎖を形成し得る2つのオリゴヌクレオチド領域の一方または両方は、2つのポリヌクレオチドまたは領域が共有する相補性の3’末端及び/または5’末端を越えて伸びる、5’末端及び/または3’末端を有し得る。二本鎖の3’末端及び/または5’末端を越えて伸びる一本鎖領域が、オーバーハングと称される。
【0078】
医薬組成物:本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬理学的に有効な量の二本鎖核酸インヒビター分子及び薬学的に許容可能な賦形剤(本明細書で定義するとおり)を含む。
【0079】
薬学的に許容可能な賦形剤:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、その賦形剤が、合理的なベネフィット/リスク比に相応して、過度に有害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)を伴わずに、ヒト及び/または動物での使用に適しているものであることを意味する。
【0080】
リン酸模倣体:本明細書で使用される場合、「リン酸模倣体」という用語は、リン酸基の静電特性及び立体特性を模倣するオリゴヌクレオチドの5’末端の化学部分を指す。オリゴヌクレオチドの5’末端に結合し得る多くのリン酸模倣体が開発されてきた(例えば、米国特許第8,927,513号(Prakash et al.Nucleic Acids Res.2015,43(6):2993-3011)を参照されたい)。典型的には、これらの5’リン酸模倣体は、ホスファターゼ耐性結合を含む。適切なリン酸模倣体は、国際公開第WO2018/045317号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されているとおり、5’ホスホナート(例えば、5’メチレンホスホナート(5’MP)及び5’-(E)-ビニルホスホナート(5’VP))、ならびにオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースもしくはデオキシリボース、またはその類似体)の4’炭素に結合する4’リン酸類似体(例えば、4’-オキシメチルホスホナート、4’-チオメチルホスホナートまたは4’-アミノメチルホスホナート)を含む。ある特定の実施形態では、上記4’-オキシメチルホスホナートは、式-O-CH2-PO(OH)2または-O-CH2-PO(OR)2により表され、ここで、Rは独立に、H、CH3、アルキル基または保護基から選択される。ある特定の実施形態では、上記アルキル基はCH2CH3である。より典型的には、Rは独立に、H、CH3またはCH2CH3から選択される。オリゴヌクレオチドの5’末端について、他の修飾が開発されている(例えば、WO2011/133871を参照されたい)。
【0081】
保護基:本明細書で使用される場合、「保護基」という用語は、所望の反応の特定の条件下で官能基を可逆的に非反応性にする基として、従来の化学的意味で使用される。所望の反応の後、保護基を、保護した官能基を脱保護するために除去することができる。すべての保護基は、合成されている分子の大部分を分解しない条件の下で、除去可能でなければならない。
【0082】
減少させる(低下させる):本明細書で使用される場合、「減少させる(低下させる)」という用語は、当技術分野で一般に受け入れられている、その意味を指す。核酸インヒビター分子に関して、上記用語は一般に、核酸インヒビター分子の非存在下で観察されるものを下回る、遺伝子の発現の減少、あるいはRNA分子または1つもしくは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードする同等のRNA分子のレベルの低下、あるいは1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットの活性の低下を指す。
【0083】
リボフラノシル:本明細書で使用される場合、「リボフラノシル」という用語は、天然に存在するRNAで見出され、かつ2’炭素に水素基を有する、下に図示するとおりのフラノシルを指す。
【0084】
リボヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語は、糖部分の2’位にヒドロキシル基を有する、天然ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義するとおり)を指す。
【0085】
センス鎖:二本鎖核酸インヒビター分子は、2つのオリゴヌクレオチド鎖、すなわち、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。上記センス鎖またはその領域は部分的に、実質的に、または完全に、二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖またはその領域と相補的である。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、上記アンチセンス鎖に非相補的であるヌクレオチドを含んでよい。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補性配列の片側にあってもよいし、または相補性配列の両側にあってもよい。上記センス鎖またはその領域が部分的にもしくは実質的に、アンチセンス鎖またはその領域と相補的である、ある特定の実施形態では、上記非相補的ヌクレオチドは、1つまたは複数の相補性領域の間に位置していてよい(例えば、1つまたは複数のミスマッチ)。上記センス鎖は、パッセンジャー鎖とも呼ばれる。
【0086】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、マウス、ウサギ、及びヒトを含む、任意の哺乳類を意味する。一実施形態では、上記対象はヒトである。「個体」または「患者」という用語は、「対象」と互換的であることが意図されている。
【0087】
置換基または置換(されている):本明細書で使用される場合、「置換基」または「置換(されている)」という用語は、所与の構造中の水素ラジカルを置換基のラジカルで置き換えることを指す。任意の所与の構造の2つ以上の位置が2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、別段に示されていない限り、あらゆる位置で同じでも異なってもよい。本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、有機化合物に適合するすべての許容される置換基を含むことが企図される。許容される置換基は、非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物の置換基を含む。本開示は、いかなる方法によっても有機化合物の許容される置換基により制限されることを意図されない。
【0088】
置換糖部分:本明細書で使用される場合、「置換糖部分」には、1つまたは複数の修飾を含むフラノシルが含まれる。典型的には、上記修飾は、糖の2’、3’、4’または5’炭素位置で生じる。ある特定の実施形態では、上記置換糖部分は、フラノシルの2’-炭素を4-炭素と連結する架橋を含む二環式糖部分である。
【0089】
糖類似体:本明細書で使用される場合、「糖類似体」という用語は、フラノシルを含まず、ヌクレオチドの天然に存在する糖部分を置き換えることができる構造を指し、その結果得られるヌクレオチドは(1)オリゴヌクレオチドへの組み込み及び(2)相補的ヌクレオチドへのハイブリッド形成ができることとなる。そのような構造は典型的には、フラノシルに対する比較的単純な変化、例えば、異なる数の原子を含む環(例えば、四員、六員または七員環);非酸素原子(例えば、炭素、硫黄または窒素)とフラノシルの酸素の置換;または原子の数の変化及び酸素の置換の両方を含む。そのような構造は、置換糖部分について記載したものに対応する置換を含むこともできる。糖の類似体は、より複雑な糖置換(例えば、ペプチド核酸の非環式系)も含む。糖類似体には、限定ではないが、モルホリノ、シクロヘキセニル及びシクロヘキシトールが含まれる。
【0090】
糖部分:本明細書で使用される場合、「糖部分」という用語は、天然の糖部分またはヌクレオチドもしくはヌクレオシドの修飾糖部分を指す。
【0091】
標的部位:本明細書で使用される場合、「標的部位」「標的配列」「標的核酸」「標的領域」「標的遺伝子」という用語は互換的に使用され、例えば、部分的に、実質的にもしくは完全に、または十分にその標的配列に相補的である、そのガイド/アンチセンス領域内の配列を含有する、RNAiインヒビター分子により媒介される切断について「標的化される」RNAまたはDNA配列を指す。
【0092】
テトラループ:本明細書で使用される場合、「テトラループ」という用語は、隣接するワトソン-クリックのハイブリッド形成ヌクレオチドの安定性に寄与する安定な二次構造を形成するループ(一本鎖領域)を指す。理論に拘束されるものではないが、テトラループは、スタッキング相互作用により、隣接するワトソン-クリック型塩基対を安定させ得る。加えて、テトラループにおけるヌクレオチド間の相互作用には、これに限定されないが、非ワトソン-クリック型塩基対合、スタッキング相互作用、水素結合、及び接触相互作用が含まれる(Cheong et al.,Nature,1990,346(6285):680-2、Heus and Pardi,Science,1991,253(5016):191-4)。テトラループは、ランダムな塩基からなる単純モデルループ配列から予測されるよりも高い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたらす。例えば、テトラループは、少なくとも2塩基対長さの二本鎖を含むヘアピンに対して、10mM NaHPO4中で少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、または少なくとも75℃の融解温度を与え得る。テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、テトラループは、4つのヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態では、テトラループは、5つのヌクレオチドからなる。
【0093】
RNAのテトラループの例には、UNCGファミリーのテトラループ(例えば、UUCG)、GNRAファミリーのテトラループ(例えば、GAAA)、及びCUUGのテトラループを含むCUYGファミリーのテトラループが含まれる(Woese et al.,PNAS,1990,87(21):8467-71、Antao et al.,Nucleic Acids Res.,1991,19(21):5901-5)。RNAテトラループの他の例には、GANC、A/UGNN、及びUUUMテトラループファミリー(Thapar et al.、WILEY INTERDISCIP. REV RNA、2014、5(1):1-28)ならびにGGUG、RNYA、及びAGNNテトラループファミリー(Bottaro et al.、BIOPHYS J.、2017、113:257-67)が含まれる。DNAのテトラループの例には、d(GNNA)ファミリーのテトラループ(例えば、d(GTTA)、d(GNRA))ファミリーのテトラループ、d(GNAB)ファミリーのテトラループ、d(CNNG)ファミリーのテトラループ、及びd(TNCG)ファミリーのテトラループ(例えば、d(TTCG))が含まれる(Nakano et al.Biochemistry,2002,41(48):14281-14292.Shinji et al.,Nippon Kagakkai Koen Yokoshu,2000,78(2):731)。
【0094】
m-上昇ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「Tm-上昇ヌクレオチド」という用語は、そのTm-上昇ヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチド二本鎖と比較して、オリゴヌクレオチド二本鎖の融解温度(Tm)を上昇させるヌクレオチドを指す。Tm-上昇ヌクレオチドには、これに限定されないが、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、G-クランプ及びその類似体、ならびにヘキシトールヌクレオチドが含まれる。修飾糖部分または修飾核酸塩基を有するある特定の修飾ヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド二本鎖のTmを上昇させるために使用することもできる。本明細書で使用される場合、「Tm-上昇ヌクレオチド」という用語は特異的に、糖部分の2’-位において、2’-OMeまたは2’-Fで修飾されているヌクレオチドを除外する。
【0095】
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」または「薬理学的に有効な量」は、意図されている薬理学的、治療的または予防的結果を生成するために有効な二本鎖核酸インヒビター分子の量を指す。
【0096】
トリループ:本明細書で使用される場合、「トリループ」という用語は、隣接するワトソン-クリックのハイブリッド形成ヌクレオチドの安定性に寄与する安定な二次構造を形成し、かつ3つのヌクレオチドからなるループ(一本鎖領域)を指す。理論に限定されるものではないが、トリループは、そのトリループ内のヌクレオチドの非ワトソン-クリック型塩基対合及び塩基スタッキング相互作用により安定され得る(Yoshizawa et al.,Biochemistry 1997;36,4761-4767)。トリループはまた、ランダムな塩基からなる単純モデルループ配列から予測されるよりも高い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたらし得る。トリループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含み得る。トリループの例には、GNAファミリーのトリループ(例えば、GAA、GTA、GCA、及びGGA)が含まれる(Yoshizawa 1997)。ある特定の実施形態では、上記トリループは、GAAのヌクレオチド配列を有する。
【0097】
ユニバーサル核酸塩基:本明細書で使用される場合、「ユニバーサル核酸塩基」は、天然に存在する核酸に典型的に見出される塩基の2つ以上と対合することができるので、二本鎖においてそのような天然に存在する塩基を置換することができる塩基を指す。上記塩基は、天然に存在する塩基のそれぞれと対合可能である必要はない。例えば、ある特定の塩基は、唯一もしくは選択的にプリンと、または唯一もしくは選択的にピリミジンと対合する。上記ユニバーサル核酸塩基は、ワトソン-クリックまたは非ワトソン-クリック相互作用(例えば、フーグスティーン相互作用)を介した水素結合を形成することにより塩基対合し得る。代表的なユニバーサル核酸塩基には、イノシン及びその誘導体が含まれる。
【0098】
詳細な説明
本出願は、ステムループ構造を有するセンス鎖と、アンチセンス鎖とを有し、その際、上記ステムループ構造のループ部分がトリループである二本鎖核酸インヒビター分子を提供する。上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖(S)の第1の領域(R1)とアンチセンス鎖(AS)との間の第1の二本鎖(D1)及びセンス鎖の第2の領域(R2)の第1のサブ領域(S1)と第2のサブ領域(S2)との間の第2の二本鎖(D2)を含有し、その際、S1及びS2は、トリループ(triL)により結合している。図1A~Dを参照されたい。加えて、ステムループ構造のステム部分は、ある特定の実施形態では、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチド、例えば、4~12のTm-上昇ヌクレオチド、例えば、2~6のTm-上昇ヌクレオチド塩基対を含有し得る。上記ステムループ構造は、センス鎖の5’末端または3’末端に位置し得る。本明細書に開示のとおり、トリループを含有する二本鎖核酸インヒビター分子は、標的遺伝子発現の減少において活性である。さらに、ある特定の実施形態では、トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、それらのテトラループ含有カウンターパートと比較して、標的遺伝子発現の効力を上昇させ得る。
【0099】
疾患を処置するための方法及び組成物を含めて、in vitroまたはin vivoで標的遺伝子のレベルまたは発現を減少させるために、本明細書に開示のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子及びそれを含む組成物を使用する方法も提供する。
【0100】
トリループ含有核酸インヒビター分子
本出願は、ステムループ構造を有するセンス鎖と、アンチセンス鎖とを有し、その際、上記ステムループ構造のループ部分がトリループであり、かつ上記センス鎖及びアンチセンス鎖が、それぞれ5’末端及び3’末端を有し、したがって、隣接オリゴヌクレオチドを形成しない別々の鎖である二本鎖核酸インヒビター分子を開示する。典型的なステム/ループ含有二本鎖核酸インヒビター分子が、上記センス鎖(「S」)及びアンチセンス鎖(「AS」)が強調されている図1Aに示されている。
【0101】
上記センス鎖をさらに、図1B及び1Cに示されているとおり、アンチセンス鎖(AS)と共に第1の二本鎖(D1)を形成する第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するループ(triL)を含む第2の領域(R2)とに区分することができる。S1及びS2は、第2の二本鎖(D2)を形成するために相互に十分に相補的であり、ステムまたはステム二本鎖とも称される。例えば、図1C及び1Dを参照されたい。本明細書に記載のとおり、上記ループは、トリループである。典型的には、上記トリループは、配列GAAを有するが、ランダムな塩基からなる単純モデルループ配列から予測されるよりも高い、隣接する二本鎖の融解温度(Tm)の上昇をもたらす他のトリループ配列を使用してもよい。上記第2の二本鎖(D2)は、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチドを含んでよく、かつある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)中のヌクレオチドのすべてが、Tm-上昇ヌクレオチドであってもよい。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、上記第2の二本鎖(D2)以外には、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸分子は、dsRNAiインヒビター分子である。
【0102】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス鎖は、少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチド及びトリループ(triL)を含有するステム二本鎖(D2)を含有し、20~65ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記ステム二本鎖は、2~6塩基対長さである。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、15~40ヌクレオチド長さである。
【0103】
ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、ステム二本鎖(D2)及びトリループ(triL)を含み、20~65ヌクレオチド長さであり、かつ上記アンチセンス鎖は、15~40ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記ステム二本鎖(D2)及び上記トリループ(triL)を含むセンス鎖の伸長部分は、上記鎖の3’末端にある。ある特定の他の実施形態では、上記ステム(D2)及び上記トリループ(triL)を含むセンス鎖の伸長部分は、上記鎖の5’末端にある。
【0104】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は、別々の鎖であり、かつ18~24塩基対の第1の二本鎖(D1)を形成し、その際、上記センス鎖は、第2の二本鎖(D2)及びトリループ(triL)を含み、かつ27~35ヌクレオチド長さであり、上記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、27~35ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、27~33ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、29~31ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、4塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、5塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、6塩基対の長さを有し、かついずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、1、2、3、または4つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを、その3’末端に有する。典型的には、上記アンチセンス鎖の3’末端にある一本鎖オーバーハングは、2つのヌクレオチドからなる。
【0105】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は、別々の鎖であり、かつ18~22塩基対、例えば、20のヌクレオチドの第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス鎖は、第2の二本鎖(D2)及びトリループ(triL)を含み、かつ27~35ヌクレオチド長さであり、上記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さ、例えば、22ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、D1は、19~21塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、20~22ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記センス鎖は、29~33ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、4塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、5塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さを有し、かついずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、1~5つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを、その3’末端に有する。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、1、2、3、または4つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングをその3’末端に有する。典型的には、上記アンチセンス鎖の3’末端にある一本鎖オーバーハングは、2つのヌクレオチドからなる。
【0106】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は別々の鎖であり、かつ19~21塩基対の第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス鎖は、19~21のヌクレオチドの第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するトリループ(triL)を含む7~15のヌクレオチドの第2の領域(R2)とを有し、S1及びS2のそれぞれは、2~6ヌクレオチド長さであり、かつ第2の二本鎖(D2)を形成するために相互に十分に相補的であり、かつ上記アンチセンス鎖は、20~24ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、上記アンチセンス鎖は、2つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングをその3’末端に有する。ある特定の実施形態では、S1及びS2のそれぞれは、2~5ヌクレオチド長さである。ある特定の実施形態では、D2は、2塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、3塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、4塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、5塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さを有し、かつTm-上昇ヌクレオチドを含まない。
【0107】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、その際、上記センス及びアンチセンス鎖は別々の鎖であり、かつ20塩基対の第1の二本鎖(D1)を形成し、上記センス鎖は、20のヌクレオチドの第1の領域(R1)と、第1のサブ領域(S1)を第2のサブ領域(S2)に結合するトリループ(triL)を含む7~9のヌクレオチドの第2の領域(R2)とを有し、上記アンチセンス鎖は、22ヌクレオチド長さであり、かつ2つのヌクレオチドの一本鎖オーバーハングをその3’末端に有し、かつS1及びS2のそれぞれは、二環式ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、S1及びS2のそれぞれは、3ヌクレオチド長さであり、かつ3塩基対の第2の二本鎖(D2)を形成する。ある特定の実施形態では、S1及びS2のそれぞれは、2ヌクレオチド長さであり、かつ2塩基対の第2の二本鎖(D2)を形成する。ある特定の実施形態では、第2の二本鎖(D2)中の各ヌクレオチドは、Tm-上昇ヌクレオチドであり、かつ上記二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)以外に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。
【0108】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、2~6塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、2~4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、2塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、3塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、5塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6塩基対の長さを有する。
【0109】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、第2の二本鎖(D2)は、4~10のTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ2~5塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6~8つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ3~4塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、6つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ3塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2は、4つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、2塩基対の長さを有する。ある特定の実施形態では、D2中の各ヌクレオチドは、Tm-上昇ヌクレオチドである。
【0110】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記第2の二本鎖(D2)は、単一のTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ2~6塩基対の長さを有する。本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、第2の二本鎖(D2)は、2~6つの単一Tm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ2~6塩基対の長さを有し、その際、D2中のTm-上昇ヌクレオチドのいずれも、塩基対を形成しない。例えば、D2は、2つのTm-上昇ヌクレオチドを含んでよく、かつ2~6塩基対の長さを有し、その際、その2つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は、3つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ3~6塩基対の長さを有してもよく、その際、その3つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は、4つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ4~6塩基対の長さを有してもよく、その際、その4つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は、5つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ5~6塩基対の長さを有してもよく、その際、その5つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。D2は、6つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ6塩基対の長さを有してもよく、その際、その6つのTm-上昇ヌクレオチドは、塩基対を形成しない。
【0111】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖またはアンチセンス鎖の第1の領域(R1)中に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含まない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)以外に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)中に、いずれのTm-上昇ヌクレオチドも含有しない。
【0112】
上記トリループ含有二本鎖核酸分子の第2の二本鎖(D2)中の1つまたは複数のTm-上昇ヌクレオチドは、本明細書に記載の、または別段に当技術分野で利用可能なTm-上昇ヌクレオチドのいずれであってもよい。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸分子は、第2の二本鎖(D2)中に少なくとも2つのTm-上昇ヌクレオチドを含み、かつ第2の二本鎖中のそれぞれのTm-上昇ヌクレオチドは、同じである。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸分子は、第2の二本鎖(D2)中に、少なくとも2つの異なるTm-上昇ヌクレオチドを含む。
【0113】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸分子のいずれでも、上記1つまたは複数のTm-上昇ヌクレオチドは、本明細書に記載の、または別段に当技術分野で利用可能な二環式ヌクレオチドのいずれであってもよい。本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸分子のいずれでも、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、二環式糖部分を含み、その際、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋を含む置換フラノシルである。
【0114】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子のいずれでも、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式I、II、III、IV、Va、またはVbの構造を有する。例えば、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Iの構造を有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIIの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IVの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Vaの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Vbの構造も有し得る。
【0115】
上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、またはIfのうちの1つまたは複数の構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIa、IIb、IIc、またはIIdのうちの1つまたは複数の構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IIIa及び/またはIIIbの構造も有し得る。上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、式IVa及び/またはIVbの構造も有し得る。
【0116】
本明細書に記載のトリループ含有二本鎖核酸分子のいずれでも、上記第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチド(BN)は、次のうちの1つまたは複数である:(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN;(d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはcETとしても公知)、(f)メチレン-チオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メチル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BN。一実施形態では、上記少なくとも1つのBNは、(a)メチレンオキシBNまたは(d)オキシアミノBN)であり、ここで、R2は、CH3である。例えば、D2中の少なくとも1つのBNは、オキシアミノBN(d)であり、ここで、R2は、CH3である。
【0117】
二環式ヌクレオチド
本明細書に開示のトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、かつある特定の実施形態では、少なくとも1つの二環式ヌクレオチドを、センス鎖中に存在するステムループ構造のステム部分に含み得る。二環式ヌクレオチドは典型的には、4~7員環(フラノシルを含むが、これに限定されない)を含み、その4~7員環の2個の原子を連結して第2の環を形成する架橋を含むことにより、二環式構造をもたらす糖部分を有する。ある特定の実施形態では、上記架橋は、第1の環の2’-炭素と4’-炭素とを連結して、第2の環を形成する。そのような二環式ヌクレオチドは、それぞれ二環式核酸及びロック核酸についてBNA及びLNAを含む様々な名称を有する。二環式ヌクレオチドの合成及び核酸化合物へのそれらの組み込みは、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に援用されるSingh et al.,Chem.Commun.,1998,4,455-456;Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630;Wahlestedt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97,5633-5638;Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222;Singh et al.,J.Org.Chem.,1998,63,10035-10039;米国特許第7,427,672号、同第7,053,207号、同第6,794,499号、同第6,770,748号、同第6,268,490号及び同第6,794,499号;米国出願公開第20040219565号、同第20040014959号、同第20030207841号、同第20040192918号、同第20030224377号、同第20040143114号及び同第20030082807号を含む文献にも報告されている。
【0118】
典型的には、上記架橋は、2~8個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、3個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、4個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、5個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、6個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、7個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、8個の原子を含む。ある特定の実施形態では、上記架橋は、8個超の原子を含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む置換フラノシルである。ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式Iの構造:


を有する
[式中、
Bは、核酸塩基であり;
Gは、H、OH、NH2、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、置換C1~C6アルキル、置換C2~C6アルケニル、置換C2~C6アルキニル、アシル、置換アシル、置換アミド、チオール、または置換チオであり;
Xは、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;かつ
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式Iにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1個は、式Iにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0120】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、NR1であり、ここで、R1は、ベンゼンまたはピレンである。式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、Sである。
【0121】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、Oである:

【0122】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、Hであり、かつXは、NR1であり、ここで、R1は、H、CH3、またはOCH3である:

【0123】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、OHまたはNH2であり、かつXは、Oである。
【0124】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、OHであり、かつXは、Oである:

【0125】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、NH2であり、かつXは、Oである:

【0126】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH3またはCH2OCH3であり、かつXは、Oである。式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH3であり、かつXは、Oである:

【0127】
式Iのある特定の実施形態では、Gは、CH2OCH3であり、かつXは、Oである:

【0128】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IIの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
1は、CH2またはOであり;
Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
1がOである場合、Xは、CH2であり;
1がCH2である場合、Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IIにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、かつWaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式IIにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0129】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、Oであり、かつXは、CH2である。

【0130】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、Oである:

【0131】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、NR1であり、ここで、R1は、H、CH3またはOCH3である:
【0132】
式IIのある特定の実施形態では、Q1は、CH2であり、かつXは、NHである:

【0133】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IIIの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
2は、OまたはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
Xは、CH2、O、S、またはNR1であり、ここで、R1は、H、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、ベンゼンまたはピレンであり;
2がOである場合、Xは、NR1であり;
2がNR1である場合、Xは、OまたはSであり;
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IIIにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、かつWaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式IIIにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0134】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1である。式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1であり、ここで、R1は、C1~C6アルキルである。式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1であり、かつR1は、HまたはCH3である。
【0135】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、Oであり、かつXは、NR1であり、かつR1は、CH3である:

【0136】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、NR1であり、かつXは、Oである。式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、NR1であり、ここで、R1は、C1~C6アルキルであり、かつXは、Oである。
【0137】
式IIIのある特定の実施形態では、Q2は、NCH3であり、かつXは、Oである:

【0138】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式IVの構造を有する:


[式中、
Bは、核酸塩基であり;
1及びP3は、CH2であり、P2は、CH2またはOであり、かつP4は、Oであり;かつ
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IVにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式IVにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である]。
【0139】
式IVのある特定の実施形態では、P1、P2及びP3は、CH2であり、かつP4は、Oである:

【0140】
式IVある特定の実施形態では、P1及びP3は、CH2であり、P2は、Oであり、P4は、Oである:

【0141】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチドは、式VaまたはVbの構造を有する:

[式中、
Bは、核酸塩基であり;
r1、r2、r3、及びr4はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C1~C12アルキル、置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル;置換C2~C12アルキニル;C1~C12アルコキシ;置換C1~C12アルコキシ、OT1、ST1、SOT1、SO21、NT12、N3、CN、C(=O)OT1、C(=O)NT12、C(=O)T1、O─C(=O)NT1T2、N(H)C(=NH)NT12、N(H)C(=O)NT12またはN(H)C(=S)NT12であり、ここで、T1及びT2のそれぞれは独立に、H、C1~C6アルキル、または置換C1~C16アルキルであるか;または
r1及びr2またはr3及びr4は一緒に、=C(r5)(r6)であり、ここで、r5及びr6はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C1~C12アルキル、または置換C1~C12アルキルであり;かつ
a及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式Vにより表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、式Vにより表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である。
【0142】
ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分は、そのフラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む置換フラノシルであり、その際、フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋には、これに限定されないが:
a) 4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(ここで、Rは、H、C1~C12アルキル、または例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNANCとしても公知)、4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]としても公知)を含む保護基である)(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,427,672号に記載のとおり);
b) 4’-CH2-2’;4’-(CH22-2’;4’-(CH23-2’;4’-(CH2)-O-2’(LNAとしても公知);4’-(CH2)-S-2’;4’-(CH22-O-2’(ENAとしても公知);4’-CH(CH3)-O-2’(cEtとしても公知);及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても公知)、及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,399,845号に記載のとおり);
c) 4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,278,283号に記載のとおり);
d) 4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,278,425号に記載のとおり);
e) 4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許公開第2004/0171570号に記載のとおり);
f) 4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用されるChattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-34に記載のとおり);ならびに
g) 4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体(その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,278,426号に記載のとおり)
が含まれる。
【0143】
ある特定の実施形態では、上記二環式ヌクレオチド(BN)は、下に示されているとおりの(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN;(d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはcETとしても公知)、(f)メチレン-チオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メチル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BNのうちの1つまたは複数である。



【0144】
上の(a)~(i)の二環式ヌクレオチドでは、Bは、核酸塩基であり、R2は、HまたはCH3であり、かつWa及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または二環式ヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbのうちの少なくとも1つは、二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である。
【0145】
オキシアミノBN(d)の一実施形態では、R2は、次のとおり、CH3(BNANC[NMe]としても公知)である:
【0146】
ある特定の実施形態では、二環式糖部分及びそのような二環式糖部分を組み込む二環式ヌクレオチドはさらに、異性配置により定義される。ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、α-L配置である。ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、β-D配置である。例えば、ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、α-L配置の2’O,4’-C-メチレン架橋(2’-O-CH2-4’)(α-L LNA)を含む。ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、R配置である。ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、S配置である。例えば、ある特定の実施形態では、上記二環式糖部分またはヌクレオチドは、S-配置の4’-CH(CH3)-O-2’架橋(すなわち、cEt)を含む。
【0147】
三環式ヌクレオチド
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、三環式ヌクレオチドであり得る。三環式ヌクレオチドの合成及び核酸化合物へのそれらの組み込みも、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に援用されるSteffens et al.,J.Am.Chem.Soc.1997;119:11548-11549;Steffens et al.,J.Org.Chem.1999;121(14):3249-3255;Renneberg et al.,J.Am.Chem.Soc.2002;124:5993-6002;Ittig et al.,NUCLEIC ACIDS RES.2004;32(1):346-353;Scheidegger et al.,Chemistry 2006;12:8014-8023;Ivanova et al.,OLIGONUCLEOTIDES 2007;17:54-65を含む文献において報告されている。
【0148】
ある特定の実施形態では、上記三環式ヌクレオチドは、例えば、それぞれ参照により本明細書に援用されるCJ,Bioorg.Med.Chem.2002;10:841-854ならびに米国特許出願公開第2015/0259681号及び同第2018/0162897号において論述されているとおりの、3’-炭素及び5’-炭素中心が、シクロプロパン環に縮合しているエチレンにより連結されているトリシクロヌクレオチド(トリシクロDNAとも呼ばれる)である。ある特定の実施形態では、上記三環式ヌクレオチドは、例えば、参照により本明細書に援用される米国出願公開第2015/0112055号において論述されているとおり、フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含み、かつ第3の縮合環が、5’-炭素を、フラノシルの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋のメチレン基に連結する基から生じている置換フラノシル環を含む。
【0149】
他のTm-上昇ヌクレオチド
二環式及び三環式ヌクレオチドに加えて、本明細書に記載の核酸インヒビター分子において、他のTm-上昇ヌクレオチドを使用することができる。例えば、ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、G-クランプ、グアニジンG-クランプもしくはその類似体(Wilds et al.,Chem,2002;114:123及びWilds et al.,Chim Acta 2003;114:123)、ヘキシトールヌクレオチド(Herdewijn,Chem.Biodiversity 2010;7:1-59)、または修飾ヌクレオチドである。上記修飾ヌクレオチドは、例えば、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル-修飾ピリミジン、または2-アミノアデニン(2,6-ジアミノプリンとも呼ばれる)(Deleavey et al.,Chem.& Biol.2012;19:937-54)または2-チオウリジン、5Me-チオウリジン、及びシュードウリジンを含む、本明細書に記載のとおりの修飾核酸塩基を有することができる。修飾ヌクレオチドはまた、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第8,975,389号に記載のとおり、または本明細書に記載のとおりであるが、ただし、上記Tm-上昇ヌクレオチドが糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない、修飾糖部分を有することができる。
【0150】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、三環式ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、G-クランプ、グアニジンG-クランプまたはその類似体である。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、ヘキシトールヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式または三環式ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、またはG-クランプ、グアニジンG-クランプもしくはその類似体である。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、G-クランプ、グアニジンG-クランプもしくはその類似体、またはヘキシトールヌクレオチドである。
【0151】
ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、上記核酸インヒビター分子の第2の二本鎖(D2)のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも2℃上昇させる。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、D2のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも3℃上昇させる。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、D2のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも4℃上昇させる。ある特定の実施形態では、上記Tm-上昇ヌクレオチドは、D2のTmを、1つの組み込みあたり少なくとも5℃上昇させる。
【0152】
他の修飾
本明細書に記載の二本鎖核酸インヒビター分子は、第2の二本鎖(D2)中の少なくとも1つのTm-上昇ヌクレオチドに加えて、他のヌクレオチド修飾を含むことができる。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子の複数のヌクレオチドを、ヌクレアーゼに対する抵抗性または免疫原性の低下などの分子の様々な特徴を改善するために修飾する。例えば、Bramsen et al.(2009)、Nucleic Acids Res.,37,2867-2881を参照されたい。多くのヌクレオチド修飾が、オリゴヌクレオチド分野では、特に核酸インヒビター分子のために使用されてきた。そのような修飾を、糖部分、ホスホジエステル結合、及び核酸塩基を含む、上記ヌクレオチドのいずれの部分でも作製することができる。ヌクレオチド修飾の典型的な例には、これに限定されないが、2’-F、2’-O-メチル(「2’-OMe」または「2’-OCH3」)、及び2’-O-メトキシエチル(「2’-MOE」または「2’-OCH2CH2OCH3」)が含まれる。修飾は、本明細書に記載のとおり、5’-炭素など、上記ヌクレオチドの糖部分の他の部分でも生じ得る。
【0153】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、当技術分野で公知のとおり、かつ本明細書に記載のとおり、1’-位にあるアデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシル以外に1つまたは複数の修飾核酸塩基も含み得る。ある特定の実施形態では、上記修飾またはユニバーサル核酸塩基は、窒素塩基である。ある特定の実施形態では、上記修飾核酸塩基は、窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。ある特定の実施形態では、上記修飾ヌクレオチドは、核酸塩基を含まない(非塩基性)。修飾核酸塩基の典型的な例は、5’-メチルシトシンである。
【0154】
天然に生じるRNA及びDNAのヌクレオチド間結合は、3’-と5’-とのホスホジエステル結合である。修飾ホスホジエステル結合は、当技術分野で公知のとおり、かつ本明細書に記載のとおり、リン原子を含有するヌクレオチド間結合及びリン原子を含有しないヌクレオチド間結合を含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基を含む。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、本明細書に記載のとおり、1つまたは複数のリン含有ヌクレオチド間結合基を含む。他の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチド間結合基の1つまたは複数は、本明細書に記載のとおり、非リン含有結合である。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、1つまたは複数のリン含有ヌクレオチド間結合基及び1つまたは複数の非リン含有ヌクレオチド間結合基を含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、少なくとも1個のホスホロチオアートヌクレオチド間結合基を含有する。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、10個未満、例えば、5個未満のホスホロチオアートヌクレオチド間結合基を含有する。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、4個のホスホロチオアートヌクレオチド間結合基を含有する。
【0156】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ヒドロキシルまたはリン酸基などの天然の置換基を含み得る。ある特定の実施形態では、ヒドロキシル基は、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端に結合している。ある特定の実施形態では、リン酸基は、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端に結合している。典型的には、ホスファートは、オリゴヌクレオチド合成の前に、モノマーに添加される。他の実施形態では、5’-リン酸化は、核酸インヒビター分子をサイトゾルに導入した後に、例えば、サイトゾルClp1キナーゼにより天然に達成される。一部の実施形態では、上記5’末端ホスファートは、リン酸基、例えば、5’-モノホスファート[(HO)2(O)P-O-5’]、5’-ジホスファート[(HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’]または5’-トリホスファート[(HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-0-5’]である。
【0157】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端も、修飾することができる。例えば、一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ホスホラミダート[(ΗΟ)2(O)Ρ-ΝΗ-5’,(ΗΟ)(ΝΗ2)(O)Ρ-O-5’]に結合している。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、リン酸模倣体に結合している。適切なリン酸模倣体には、5’-ホスホナート、例えば、5’-メチレンホスホナート(5’-MP)、5’-(E)-ビニルホスホナート(5’-VP)が含まれる。Lima et al.,Cell,2012,150-883-94;WO2014/130607。他の適切なリン酸模倣体には、その全体が参照により本明細書に援用される国際公開WO2018/045317に記載のとおり、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースまたはデオキシリボースまたはその類似体)の4’-炭素に結合している4-リン酸類似体が含まれる。例えば、一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、オキシメチルホスホナートに結合しており、その際、オキシメチル基の酸素原子は、糖部分またはその類似体の4’-炭素に結合している。他の実施形態では、リン酸類似体は、チオメチルホスホナートまたはアミノメチルホスホナートであり、その際、チオメチル基の硫黄原子またはアミノメチル基の窒素原子は、糖部分またはその類似体の4’-炭素に結合している。
【0158】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、1つまたは複数のデオキシリボヌクレオチドを含む。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、5つ未満のデオキシリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、1つまたは複数のリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドのすべては、リボヌクレオチドである。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のとおり、糖部分を含む上記二本鎖核酸インヒビター分子のステム(第2の二本鎖またはD2)以外の1つまたは複数のヌクレオチドは、これに限定されないが、二環式または三環式ヌクレオチド中に存在する修飾環構造を含む修飾環構造及びアンロック核酸(「UNA」)を有する(例えば、Snead et al.(2013),Molecular Therapy-Nucleic Acids、2,e103(doi:10.1038/mtna.2013.36)を参照されたい)。
【0160】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子の1つまたは2つのヌクレオチドは、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。典型的には、上記グルタチオン感受性部分は、上記糖部分の2’-炭素に位置しており、かつスルホニル基を含む。ある特定の実施形態では、その全体が参照により本明細書に援用される国際公開WO2018/045317に記載のとおり、上記グルタチオン感受性部分は、ホスホラミダイトオリゴヌクレオチド合成方法と適合性である。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子の2つよりも多いヌクレオチドが、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。ある特定の実施形態では、大部分のヌクレオチドが、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドのすべて、または実質的にすべてが、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。
【0161】
上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス及び/またはアンチセンス鎖の5’末端または3’末端ヌクレオチドに位置している。しかしながら、上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は、上記二本鎖核酸インヒビター分子中の目的のいずれのヌクレオチドにも位置していてよい。
【0162】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は完全に修飾されており、その際、上記センス鎖及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドが修飾されており;典型的には、すべてのヌクレオチドが、糖部分の2’-位において修飾されている。ある特定の実施形態では、上記完全修飾核酸インヒビター分子は、可逆的修飾を含まない。一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のセンス鎖の少なくとも1つ、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36のヌクレオチドが修飾されている。一部の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のアンチセンス鎖の少なくとも1つ、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24のヌクレオチドが修飾されている。
【0163】
ある特定の実施形態では、上記完全修飾核酸インヒビター分子は、1つまたは複数の可逆的なグルタチオン感受性部分で修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドの実質的にすべてが修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドの半分よりも多くが、可逆的修飾以外の化学修飾で修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子のヌクレオチドの半分未満が、可逆的修飾以外の化学修飾で修飾されている。修飾は、上記核酸インヒビター分子上の基で生じ得るか、または異なる修飾ヌクレオチドが散在し得る。
【0164】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、1つから全部のヌクレオチドが2’-炭素において修飾されている。ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、2’-F、2’-OMe、及び/または2’-MOEで部分的に、または完全に修飾されている。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、1つから全部のリン原子が修飾されており、かつ1つから全部のヌクレオチドが糖部分の2’-炭素において修飾されている。
【0165】
上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドは、糖部分の2’-炭素において修飾されている。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドは、上記センス鎖の第2の領域(R2)中のヌクレオチドを除いて、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されている。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドは、ステム(第2の二本鎖またはD2)中のTm-上昇ヌクレオチドを除いて、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されている。上記二本鎖核酸インヒビター分子のある特定の実施形態では、上記センス及びアンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドは、ステム(第2の二本鎖またはD2)中のTm-上昇ヌクレオチド及びリガンド部分、例えば、GalNAcにコンジュゲートしているトリループ中のヌクレオチドを除いて、糖部分の2’-炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されている。
【0166】
標的遺伝子発現を減少させる方法
本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、目的の任意の標的遺伝子の標的mRNA発現を減少させる方法において使用することができる。典型的には、mRNA発現を減少させる方法は、試料またはそれを必要とする対象に、本明細書に記載のとおりの二本鎖核酸インヒビター分子を、標的遺伝子のmRNA発現を減少させるために十分な量で投与することを含む。上記方法は、in vitroまたはin vivoで実施することができる。
【0167】
標的RNAのレベルまたは活性は、当技術分野で現在公知であるか、または後に開発される適切な方法により決定することができる。標的RNA及び/または標的遺伝子の「発現」を測定するために使用される方法は、標的遺伝子及びそのコードされるRNAの性質に依存し得ることは分かり得る。例えば、上記標的RNA配列がタンパク質をコードする場合、「発現」という用語は、標的遺伝子(ゲノム由来または外因性由来のいずれか)に由来するタンパク質または標的RNA/転写物を指し得る。そのような場合、標的RNAの発現は、標的RNA/転写物の量を直接的に測定することにより、または標的RNA/転写物によりコードされるタンパク質の量を測定することにより決定することができる。タンパク質は、タンパク質アッセイで、例えば、染色もしくは免疫ブロット法により、または、そのタンパク質が測定され得る反応を触媒する場合には、反応速度を測定することにより測定することができる。そのような方法はすべて、当技術分野で公知であり、かつ使用することができる。標的RNAレベルを測定すべき場合には、RNAレベルを検出するために当技術分野において承認されている方法を使用することができる(例えば、RT-PCR、ノーザンブロット法など)。上記の測定を、細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物または別の適切な原料物質で行うことができる。
【0168】
医薬組成物
本開示は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0169】
これらの医薬組成物を、慣例の減菌技術で滅菌してもよいし、または滅菌濾過してもよい。得られた水溶液を、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥することができ、その際、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水性賦形剤と組み合わせる。製剤のpHは典型的には、3~11、より好ましくは5~9または6~8、最も好ましくは7~8、例えば、7~7.5であろう。
【0170】
本開示の医薬組成物は、治療的使用に適用される。したがって、本開示の一態様は、これに限定されないが、疾患または状態に罹患したヒトが含まれる対象を、上記対象に治療有効量の本開示の医薬組成物を投与することにより処置するために使用することができる医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、上記疾患または状態は、本明細書に記載のとおりのがんである。
【0171】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療有効量の、本明細書に記載のとおりの医薬組成物を、それを必要とする対象を処置するための医薬品の製造のために使用することを特徴とする。ある特定の実施形態では、上記対象は、本明細書に記載のとおりのがんを有する。
【0172】
薬学的に許容可能な賦形剤
本開示において有用な薬学的に許容可能な賦形剤は典型的には、従来のものである。E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)によるRemington’s Pharmaceutical Sciencesは、1つまたは複数の治療用組成物の医薬送達に適した組成物及び製剤を記載している。薬学的に許容可能な賦形剤としての役割を果たし得る材料のいくつかの例には、糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;麦芽;ゼラチン;賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐剤用ワックス;油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリブ油、トウモロコシ油及びダイズ油;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(等張食塩水、リンゲル液);エチルアルコール;pH緩衝液;ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど;ならびに医薬製剤で使用される他の非毒性適合性物質が含まれる。
【0173】
剤形
上記医薬組成物を、普通の実施に従って選択され得る任意の意図された投与経路用の従来の賦形剤と共に製剤化することができる。
【0174】
一実施形態では、上記医薬組成物は、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を含有し、かつ例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による非経口投与に適している。典型的には、本開示の医薬組成物を、非経口投与のための液体形態で製剤化する。
【0175】
非経口投与に適した剤形は典型的には、例として、滅菌水溶液、生理食塩水、低分子量アルコール、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルなどを含む非経口投与に適した1種または複数のビヒクルを含む。上記非経口製剤は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、上記製剤を意図されているレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有し得る。適切な流動性は、例えば、界面活性剤の使用により維持することができる。上記二本鎖核酸インヒビターを含有する液体製剤を凍結乾燥し、滅菌注射用液剤で再構成する後の使用のために貯蔵することができる。
【0176】
上記医薬組成物はまた、周知の技術を使用して、局所または経皮投与、直腸もしくは膣内投与、眼内投与、経鼻投与、頬側投与、または舌下投与を含む他の投与経路のために製剤化することができる。
【0177】
送達剤
本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、例えば、リポソーム及び脂質、例えば、米国特許第6,815,432号、同第6,586,410号、同第6,858,225号、同第7,811,602号、同第7,244,448号及び同第8,158,601に開示のもの;ポリマー材料、例えば、米国特許第6,835,393号、同第7,374,778号、同第7,737,108号、同第7,718,193号、同第8,137,695号及び米国特許出願公開第2011/0143434号、同第2011/0129921号、同第2011/0123636号、同第2011/0143435号、同第2011/0142951号、同第2012/0021514号、同第2011/0281934号、同第2011/0286957号及び同第2008/0152661号に開示のもの;カプシド、カプソイド、または、摂取、分布もしくは吸収を助ける受容体標的分子を含む他の分子、分子構造または化合物の混合物に混合する、封入する、コンジュゲートさせる、または別段に会合させることができる。
【0178】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化する。脂質-核酸ナノ粒子は典型的には、脂質を核酸と共に混合すると自然に生じて複合体を形成する。所望の粒径分布に応じて、得られたナノ粒子混合物を、任意選択で、例えば、サーモバレル押し出し機、例えば、LIPEX(登録商標)押し出し機(Northern Lipids,Inc)を用いてポリカーボネート膜(例えば、カットオフ100nm)を通して押し出すことができる。治療的使用のための脂質ナノ粒子を調製するため、上記ナノ粒子を形成するために使用した溶媒(例えば、エタノール)を除去すること及び/または緩衝液を交換することが望ましい場合があり、これは、例えば、透析または接線流濾過により達成することができる。核酸干渉分子を含む脂質ナノ粒子を製造する方法は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374842号及び同第2014/0107178号に開示のとおり、当技術分野で公知である。
【0179】
ある特定の実施形態では、上記LNPは、カチオン性リポソーム及びペグ化脂質を含むコア脂質成分を含む。上記LNPは、さらに、1つまたは複数のエンベロープ脂質、例えば、カチオン性脂質、構造もしくは中性脂質、ステロール、ペグ化脂質、またはそれらの混合物を含み得る。
【0180】
LNPで使用するカチオン性脂質は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374842号及び同第2014/0107178号に論述されているとおり、当技術分野で公知である。典型的には、上記カチオン性脂質は、生理学的pHで正味の正電荷を有する脂質である。ある特定の実施形態では、上記カチオン性リポソームは、DODMA、DOTMA、DL-048、またはDL-103である。ある特定の実施形態では、上記構造または中性脂質は、DSPC、DPPCまたはDOPCである。ある特定の実施形態では、上記ステロールはコレステロールである。ある特定の実施形態では、上記ペグ化脂質は、DMPE-PEG、DSPE-PEG、DSG-PEG、DMPE-PEG2K、DSPE-PEG2K、DSG-PEG2K、またはDSG-mPEGである。一実施形態では、上記カチオン性脂質はDL-048であり、上記ペグ化脂質はDSG-mPEGであり、上記1つまたは複数のエンベロープ脂質は、DL-103、DSPC、コレステロール、及びDSPE-mPEGである。例えば、上記二本鎖核酸インヒビター分子を製剤化するために使用することができるLNPの1つの非限定的実施形態を示す図8を参照されたい。
【0181】
ある特定の実施形態では、上記トリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子は、上記オリゴヌクレオチドの送達を目的の組織へと向けるリガンドに共有結合でコンジュゲートされる。多くのそのようなリガンドが探索されている。例えば、Winkler,Ther.Deliv.4(7):791-809(2013)を参照されたい。例えば、上記二本鎖核酸インヒビター分子を1つまたは複数の糖リガンド部分(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))にコンジュゲートし、上記オリゴヌクレオチドの取り込みを肝臓に向けることができる。例えば、米国特許第5,994,517号;米国特許第5,574,142号;WO2016/100401を参照されたい。ある特定の実施形態では、上記1種または複数のリガンドを、上記二本鎖核酸インヒビター分子のトリループ中の1つまたは複数のヌクレオチドにコンジュゲートする。
【0182】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子は、上記トリループにおいて2つまたは3つの糖リガンド部分にコンジュゲートしている。一実施形態では、上記トリループ中のヌクレオチドのうちの2つが、糖リガンド部分にコンジュゲートしている。別の実施形態では、上記トリループ中のヌクレオチドのうちの3つが、糖リガンド部分にコンジュゲートしている。ある特定の実施形態では、上記糖リガンド部分は、GalNAcである。一実施形態では、上記糖リガンド部分は、GalNAcであり、かつ上記トリループ中のヌクレオチドのうちの2つにコンジュゲートしている。一実施形態では、GalNAcは、上記GAAトリループのAAヌクレオチドにコンジュゲートしている。使用することができる他のリガンドには、これに限定されないが、マンノース-6-ホスファート、コレステロール、ホラート、トランスフェリン、及びガラクトースが含まれる(他の具体的な例示的なリガンドについては、例えば、WO2012/089352を参照されたい)。
【0183】
上記リガンドは、上記オリゴヌクレオチドの送達を目的の組織に向けることができる限り、ヌクレオチドの任意の部分にコンジュゲートしていてよい。ある特定の実施形態では、上記リガンド(例えば、GalNAc)は、上記糖部分の2’-位で、ヌクレオチドにコンジュゲートしている。
【0184】
投与/処置方法
一実施形態は、障害を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子を含む医薬組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。
【0185】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、増殖性、炎症性、自己免疫性の神経、眼、呼吸、代謝、皮膚、聴覚、肝臓、腎臓疾患、または感染症に関連する症状を処置または予防するために有用であり得る。一実施形態は、増殖性、炎症性、自己免疫性の神経、眼、呼吸、代謝、皮膚、聴覚、肝臓、腎臓疾患、または感染症を処置する方法であって、対象に、治療有効量の本明細書に記載のとおりの二本鎖核酸インヒビター分子を含む医薬組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。
【0186】
ある特定の実施形態では、上記障害は、希少疾患、慢性肝疾患、慢性腎疾患、心臓血管疾患またはウイルス性感染症である。ある特定の実施形態では、上記障害は、原発性高シュウ酸尿症(PH1、PH2、またはPH3)または特発性高シュウ酸尿症を含む高シュウ酸尿症である。ある特定の実施形態では、上記障害は、慢性腎臓障害(CKD)である。ある特定の実施形態では、上記障害は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症である。ある特定の実施形態では、上記障害は、アルファ-1抗トリプシン(A1AT)不全症である。
【0187】
ある特定の実施形態では、上記障害は、がんである。そのようながんの非限定的例には、胆管癌、膀胱癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、脳癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、乳癌、化生性癌、子宮頸癌、子宮頸部扁平上皮癌、直腸癌、結腸直腸癌、結腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、結腸直腸腺癌、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮内膜癌、子宮内膜間質肉腫、食道癌、食道扁平上皮癌、食道腺癌、眼内黒色腫、ブドウ膜黒色腫、胆嚢癌、胆嚢腺癌、腎細胞癌、明細胞腎細胞癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、ウィルムス腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、肝臓癌、肝臓癌腫、肝細胞癌(hepatoma)、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)、胆管癌、肝芽腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前駆T細胞リンパ芽球性リンパ腫/白血病、末梢T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌(NPC)、神経芽細胞腫、口腔咽頭癌、口腔扁平上皮癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵管腺癌、偽乳頭状腫瘍、腺房細胞癌が含まれる。前立腺癌、前立腺腺癌、皮膚癌、黒色腫、悪性黒色腫、皮膚黒色腫、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌腫(gastric carcinoma)、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮癌、または子宮肉腫。典型的には、本開示は、治療有効量の本明細書に記載のとおりの医薬組成物を投与することにより、肝臓癌、肝臓癌腫、肝細胞癌(hepatoma)、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)、胆管癌及び肝芽腫を処置する方法を特徴とする。
【0188】
一部の実施形態では、本開示は、対象において標的遺伝子の発現を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、医薬組成物を、上記標的遺伝子の発現を減少させるために十分な量で投与することを含み、その際、上記医薬組成物が、本明細書に記載のとおりのトリループ含有二本鎖核酸インヒビター分子と、同じく本明細書に記載のとおりの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む上記方法を提供する。
【0189】
上記標的遺伝子は、任意の哺乳類からの標的遺伝子、例えば、ヒト標的遺伝子であり得る。任意の標的遺伝子を、本方法に従ってサイレンシングすることができる。ある特定の実施形態では、例えば、AGXT、GRHPR、HOGA1、HAO1、SERPINA1、またはLDHAを含む、上記標的遺伝子は、慢性肝疾患または慢性腎臓疾患と関連する。ある特定の実施形態では、例えば、HBV遺伝子またはHCV遺伝子を含む、上記標的遺伝子は、ウイルス性感染症と関連する。ある特定の実施形態では、例えば、APOC3またはPCSK9を含む、上記標的遺伝子は、心臓血管疾患と関連する。ある特定の実施形態では、例えば、ALDH2を含む、上記標的遺伝子は、アルコール代謝及び肝臓機能と関連する。
【0190】
他の例示的な標的遺伝子には、これに限定されないが、KRAS、VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA1、TTR、PDGFベータ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、ベータ-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIアルファ遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制因子遺伝子の変異、p53腫瘍抑制因子遺伝子、及びそれらの組合せが含まれる。
【0191】
投薬及びスケジュール
典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子を、非経口投与する(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下投与を介して)。他の実施形態では、上記医薬組成物を、局所投与または全身投与により送達する。しかしながら、本明細書に開示の医薬組成物を、例えば、頬側、舌下、直腸、膣、尿道内、局所、眼内、鼻腔内、及び/または耳内を含む当技術分野で公知の任意の方法により投与することもでき、その投与は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、水性懸濁剤、ゲル剤、噴霧剤、坐剤、軟膏剤(salves)、軟膏剤(ointments)などを含み得る。
【0192】
ある特定の実施形態では、上記二本鎖核酸インヒビター分子を、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり20マイクログラム~10ミリグラム、1キログラム当たり100マイクログラム~5ミリグラム、1キログラム当たり0.1ミリグラム~5.0ミリグラム、1キログラム当たり0.25ミリグラム~5.0ミリグラム、または1キログラム当たり0.2ミリグラム~3.0ミリグラムの投薬量で投与する。典型的には、上記二本鎖核酸インヒビター分子を、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり約0.25ミリグラム~2.0ミリグラム、例えば、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0.3ミリグラム、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0.5ミリグラム、または1日にレシピエントの体重1キログラム当たり1ミリグラムの投薬量で投与する。
【0193】
本開示の医薬組成物は、毎日、または断続的に投与することができる。例えば、上記二本鎖核酸インヒビター分子の断続的投与を、週に1~6日、月に1~6日、週1回、隔週1回、1か月に1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、または年に1回もしくは2回投与することができるか、または複数年、月、週、または1日用量に分割することができる。一部の実施形態では、断続的投薬は、初回の二本鎖核酸インヒビター分子投与、続く、最大1週間、最大1ヶ月、最大2ヶ月、最大3ヶ月または最大6ヶ月以上にわたる投与のない休息期間の周期での投与を意味し得るか、または1日おき、1週間おき、1ヶ月おき、または1年おきでの投与を意味し得る。
【0194】
上記二本鎖核酸インヒビター分子の治療有効量は、投与経路及び患者の身体的特徴、例えば、対象の体格及び体重、疾患の進行または侵入の程度、対象の年齢、健康状態、及び性別に依存し得、かつこれら及び他の要因に応じて、必要な場合には調節することができる。
【実施例
【0195】
実施例1:トリループ及びテトラループを含有する二本鎖核酸インヒビター分子のin vivo用量応答
様々なステム長さに加えて、テトラループ及びトリループを含有する二本鎖核酸インヒビター分子を用量反応研究において評価した。雌のCD-1マウスを研究群に分け、その群に割り当てられた試験核酸インヒビター分子を投与した。4匹の雌のCD-1マウスにそれぞれ、5種の試験核酸インヒビター分子のそれぞれを0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.4mg/kg、0.8mg/kg、1.6mg/kg、及び3.2mg/kgで投与した。加えて、4匹の対照CD-1マウスにプラセボ(PBS)を投与したので、総試料サイズはマウス124匹であった。投与は皮下及び単回用量であり、投与4日後にマウスを屠殺した。薬力学研究を行い、かつ肝臓試料をRT-qPCRのために採取した。組織試料をQIAzol(登録商標)Lysis試薬中で、TissueLyser II(Qiagen、Valencia、CA)を使用して均質化した。次いで、RNAを、製造者指示書(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)に従ってMagMAX技術を使用して精製した。高容量cDNA逆転写キット(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、cDNAを調製した。標的配列のためのプライマーをPCRのために、CFX384 Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)で使用した。
【0196】
実施例1において使用された5種の試験核酸インヒビター分子(コンストラクト1~5)は図2A~Eに示されている。GalNAc及び二環式ヌクレオチドにコンジュゲートしているループ中のヌクレオチドを除いて、試験核酸インヒビター分子中の他のすべてのヌクレオチドは、糖部分の2’-位において、2’-Fまたは2’-OMeのいずれかで修飾されている。上記試験核酸インヒビター分子は、次の点において異なった:ループ部分の長さ(テトラループ対トリループ);ステム部分の長さ(6塩基対対3塩基対);二環式ヌクレオチドの存在または非存在;及びループ中のGalNAcの数(2対3)。図2A~E中の核酸インヒビター分子を、次の表にまとめる:
表1:図1中の試験核酸インヒビター
【0197】
長ステム(6塩基対)テトラループコンストラクト1及び2は同一であり、唯一の差違は、ループ中のGalNAcの数(3対2)である。長ステムコンストラクト2は、長ステムコンストラクト3と同一であるが、ただし、コンストラクト2はテトラループを有する一方で、コンストラクト3はトリループを有する。長ステムコンストラクト3は、短ステム(3塩基対)コンストラクト4と同一であるが、ただし、コンストラクト3は、6塩基対のステム二本鎖を有し、二環式ヌクレオチドを有さない一方で、コンストラクト4は、3塩基対のステム二本鎖を有し、ステム二本鎖中のヌクレオチドのすべてが二環式ヌクレオチドである。短ステムコンストラクト4及び5は、同一であり、唯一の差違は、コンストラクト4のステムには6つのBNANC[NMe]が存在し、かつコンストラクト5のステムには6つのLNA二環式ヌクレオチドが存在することである。コンストラクト4中で使用される二環式ヌクレオチドはBNANC[NMe]であり、その際、二環式ヌクレオチドの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋は、4’-CH2-N(CH3)-O-2’である。コンストラクト5で使用される二環式ヌクレオチドはLNAであり、その際、二環式ヌクレオチドの2’-炭素及び4’-炭素を連結する架橋は、4’-(CH2)-O-2’である。
【0198】
非線形回帰分析(GraphPad Prismソフトウェア)を使用して、log[mg/kg]に関してPBSと比べて50%パーセントの標的遺伝子残留に基づき、有効用量(ED50)曲線を計算した。テトラループ長ステム(6塩基対)核酸分子を、トリループの長ステム核酸分子と比較した。加えて、BNANC[NMe]を含有するトリループ短ステム(3塩基対)核酸インヒビター分子を、LNAを含有する対応するトリループ短ステム核酸分子と比較した。これらをまた、二環式ヌクレオチドを含まないトリループ及びテトラループ長ステム(ステム中に6塩基対)核酸分子と比較した。図3及び4において示されているとおり、2つまたは3つのいずれかのGalNAcを含む対応するテトラループ核酸分子(コンストラクト1及び2)と比較して、トリループ長ステム核酸インヒビター分子(コンストラクト3)及び短ステム中に二環式ヌクレオチドを含むトリループ短ステム核酸分子(コンストラクト4及び5)の両方が、同様の効力の標的遺伝子ノックダウンを示した。
【0199】
実施例2:標的遺伝子ノックダウンについての、テトラループ及びトリループを含有する二本鎖核酸インヒビター分子のin vivo効力
雌のCD-1マウスを研究群に分け、その群に割り当てられた試験核酸インヒビター分子を投与した。実施例2で使用された試験核酸インヒビター分子(コンストラクト6~13)は、図6A~Hに示されている。コンストラクト1(図2Aを参照されたい)も使用した。GalNAc及び二環式ヌクレオチドにコンジュゲートしているループ中のヌクレオチドを除いて、試験核酸インヒビター分子中の他のすべてのヌクレオチドは、糖部分の2’-位において、2’-OMeまたは2’-Fのいずれかで修飾されている。上記試験核酸インヒビター分子は、次の点において異なった:ループ部分の長さ(テトラループ対トリループ);ステム部分の長さ(6塩基対、3塩基対、2塩基対、及び1塩基対);及び二環式ヌクレオチドの存在または非存在。図6A~H中の核酸インヒビター分子を次の表にまとめる:
表2:図6中の試験核酸インヒビター
【0200】
長ステム(6塩基対)コンストラクト6及び7は同一であり、唯一の差違は、ループ中のヌクレオチドの数(テトラループ対トリループ)である。コンストラクト1はコンストラクト6と同一であるが、ただし、コンストラクト1は、テトラループにコンジュゲートしている3つのGalNAcを含有する一方で、コンストラクト6は、テトラループにコンジュゲートしている2つのGalNAcを含有する。コンストラクト8(3塩基対ステム)は、コンストラクト9と同一であるが(3塩基対ステム)、ただし、コンストラクト8はテトラループを有する一方で、コンストラクト9はトリループを有する。コンストラクト10及び11(2塩基対ステム)は同一であり、唯一の差違は、コンストラクト10がテトラループを有する一方で、コンストラクト11がトリループを有することである。コンストラクト12及び13(1塩基対ステム)は同一であり、唯一の差違は、コンストラクト12がテトラループを有する一方で、コンストラクト13がトリループを有することである。コンストラクト8~13で使用される二環式ヌクレオチドは、BNANC[NMe]である。
【0201】
動物に、単回0.5mg/kg用量の、割り当てられた試験核酸インヒビター分子を皮下投与し、マウスを投与4日後に屠殺した。肝臓組織を、2つの4mmパンチの生検を採取することにより収集し、これを、後のmRNA分析のために、Invitrogen(商標)RNAlater(商標)溶液(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)中で貯蔵した。組織試料を、QIAzol(登録商標)Lysis試薬中で、TissueLyser II(Qiagen,Valencia,CA)を使用して均質化した。次いで、RNAを、製造者指示書(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)に従ってMagMAX技術を使用して精製した。高容量cDNA逆転写キット(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用して、cDNAを調製した。標的配列のためのプライマーをPCRのために、CFX384 Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)で使用した。
【0202】
トリループ試験核酸インヒビター分子(コンストラクト7、9、11、及び13)を、試験核酸分子の対応するテトラループバージョン(それぞれコンストラクト1、6、8、10、及び12)と比較した。図7で実証されているとおり、トリループを含有する試験核酸インヒビター分子は、6塩基対、3塩基対、及び2塩基対コンストラクトについて、対応するテトラループ試験核酸分子と比較して、標的遺伝子mRNAの同様のノックダウンを示した。2つのGalNAcにコンジュゲートしているトリループを含有し、かつステム中に2つの塩基対を有するコンストラクト11は、3つのGalNAcにコンジュゲートしているトリループを含有し、かつステム中に6つの塩基対を有するコンストラクト1よりも高い効力を有した。トリループをステム中の1塩基対と共に含むコンストラクト13は、標的遺伝子mRNAのノックダウンを示さなかったが、テトラループ及びステム中の1塩基対を含むコンストラクト12は、標的遺伝子mRNAの実質的なノックダウンを示した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8