(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】マイクロ波熱分解反応炉
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20240807BHJP
F27D 11/12 20060101ALI20240807BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240807BHJP
B09B 3/50 20220101ALI20240807BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B01J19/12 A
F27D11/12
F27D21/00 A
B09B3/50
C08J11/10
(21)【出願番号】P 2021560462
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 IB2020053190
(87)【国際公開番号】W WO2020202089
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521442279
【氏名又は名称】パイロウェーブ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PYROWAVE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーセ,ジョスリン
(72)【発明者】
【氏名】ラビオレット,ジャン-フィリップ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-518782(JP,A)
【文献】特開平01-126597(JP,A)
【文献】国際公開第2013/016866(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0295717(US,A1)
【文献】米国特許第4900411(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101342475(CN,A)
【文献】特表2022-502520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00-32
B09B 3/50
F23G 5/027
F27D 11/12
F27D 21/00-04
H01P 5/00
H05B 6/64-80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波熱分解
システムであって、
マイクロ波反応炉を含み、前記マイクロ波反応炉は、
下端部と上端部との間に延在し、内部キャビティを定めている細長い中空体と、
前記細長い中空体の前記下端部に固定された下部本体と、
前記細長い中空体の前記上端部に固定された上部本体と
を備えており、
前記細長い中空体ならびに前記下部
本体および
前記上部本体は、下部に熱分解されるべき生成物を充てんレベルまで受け入れるためのエンクロージャを形成し、前記充てんレベルは、前記
マイクロ波反応炉内の前記生成物の最小高さを定めており、
前記細長い中空体は、前記充てんレベルよりも下方
に位置したマイクロ波注入開口部を備え、前記マイクロ波注入開口部は、前記エンクロージャの前記下部におけるマイクロ波の伝播を可能にするようなサイズおよび形状であ
り、
前記マイクロ波熱分解システムはさらに、前記マイクロ波注入開口部の全表面が前記生成物で覆われることを確実にするために、前記マイクロ波反応炉に注入された前記生成物の上面が前記充てんレベルに実質的に整列するようにまたは前記充てんレベルと実質的に同一平面上に位置するように、前記マイクロ波反応炉に注入される前記生成物の流れを制御するためのコントローラを含む、マイクロ波熱分解
システム。
【請求項2】
前記マイクロ波注入開口部は、円形である、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項3】
前記マイクロ波注入開口部の直径は、マイクロ波の波長以上である、請求項2に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項4】
前記細長い中空体は、前記内部キャビティに面する内面と、前記内面の反対側の外面との間に延在する細長い壁を備え、前記内面と前記外面との間の距離が、前記細長い壁の厚さを定め、前記細長い壁は、前記
マイクロ波反応炉に受け入れられた前記生成物の温度を制御するために、温度制御流体を受け入れるための入口と出口との間に延在する少なくとも1つの流体受け入れ空洞を備え、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、少なくとも前記下部本体に隣接する前記細長い壁の下部内に延在し、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記
細長い壁の前記厚さよりも小さい幅を有する、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項5】
少なくとも前記細長い壁の前記下部は、二重壁構造を備え、前記二重壁構造は、ギャップによって隔てられた内壁および外壁を備え、前記ギャップは、前記ギャップ内に前記温度制御流体を伝播させるために前記入口および前記出口に流体接続され、前記ギャップは、前記
少なくとも1つの流体受け入れ空洞に相当する、請求項4に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項6】
前記ギャップに挿入され、前記入口および前記出口に流体接続された少なくとも1つの管をさらに備える、請求項5に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの管は、前記内壁および前記外壁に物理的に接触している、請求項6に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項8】
前記細長い中空体は、管状であり、前記少なくとも1つの管は、前記細長い中空体の円周を巡って延在する、請求項6に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの管は、蛇行形状およびらせん形状の一方を有する、請求項8に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記入口と前記出口との間に流体接続された少なくとも1つの運河を形成する、請求項
4に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの運河は、真っ直ぐな形状、U字形、蛇行形状、およびらせん形状のうちの1つを有する、請求項10に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項12】
前記入口および前記出口の少なくとも一方は、前記細長い中空体上に位置する、請求項4に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項13】
前記下部本体および前記上部本体の少なくとも一方は、前記細長い中空体に取り外し可能に固定される、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項14】
前記エンクロージャは、
反応した生成物の少なくとも一部を抽出するための抽出開口部、
前記
マイクロ波反応炉からガスを抽出するためのガス開口部、
前記
マイクロ波反応炉を過圧から保護するための圧力逃がし開口部、および
少なくとも1つのセンサを前記
マイクロ波反応炉へと挿入するための少なくとも1つのセンサ開口部、
のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項15】
前記マイクロ波反応炉は、前記
マイクロ波反応炉内の前記生成物を混合するための攪拌装置をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【請求項16】
前記細長い中空体は、管状であり、前記マイクロ波の波長以上である内径を備える、請求項1に記載のマイクロ波熱分解
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、熱分解の分野に関し、より詳細には、マイクロ波熱分解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
バイオマスおよびプラスチックなどの生成物の熱分解は、通常は、反応炉内で、嫌気性の条件下、すなわち酸素がない雰囲気において、エネルギーを加えることによって行われる。通常は、3つの反応生成物、すなわち油、ガス、およびカーボンブラックが存在する。ほとんどの場合、熱分解プロセスは、油の収率を最大にするように調整され、なぜならば、通常は油が化学物質または燃料の供給源として最も価値があるからである。
【0003】
熱分解のための従来からの熱源は、通常は、火炎および高温燃焼ガスをもたらすための燃料ガスの燃焼、または抵抗電気加熱素子を含む。このような従来からの熱分解システムにおいては、反応炉の外面が加熱され、熱を熱分解されるべき生成物へと反応炉の壁を介する熱伝導によって伝達することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来からの熱分解システムの少なくとも一部は、以下の欠点のうちの少なくともいくつかを抱える。
【0005】
従来からの熱分解システムの少なくとも一部においては、熱分解されるべき生成物の加熱速度が比較的低く、結果として油の収率が低くなるという理由で、油の収率が低い。これは、生成物の加熱速度が、容器の壁の温度によって決定され、すなわち容器の壁温度が高いほど、生成物の加熱速度が高くなるという事実に起因する。容器の壁の最大加熱速度、したがって生成物の最終温度は、通常は、容器の熱慣性、熱源の出力、熱損失、容器の壁の合金の選択、表面積、および熱伝達係数によって決定される。これらの制約のすべてが、原料の加熱速度を制限する。しかしながら、高温に耐えることができる合金(Inconel(商標)またはチタンなど)を選択すると、システムの資本コストが高くなる。
【0006】
さらに、生成物の最終温度が低い(すなわち、反応温度が低い)と、反応速度が低くなり、反応の動態にも悪影響がある。また、反応炉の壁は、熱分解されるべき生成物よりも高い温度に加熱されるため、生成物は、反応炉の壁から出るときに温度の上昇を被り、これが生成物の劣化を引き起こす可能性がある。
【0007】
従来からの熱分解システムの上述の欠点の少なくともいくつかを克服するために、マイクロ波熱分解システムが開発されている。このようなマイクロ波熱分解システムは、反応炉に入れられた熱分解されるべき生成物を加熱するためにマイクロ波を使用する。
【0008】
従来からの熱分解システムに対するマイクロ波熱分解システムの主要な利点の一部として、加熱速度が高く、したがって油の収率が高くなること、反応部位の温度が高く、したがって反応速度の向上および動態の改善につながること、環境温度が低く、したがって熱分解反応の生成物の劣化を回避できることが挙げられる。
【0009】
しかしながら、マイクロ波熱分解システムには、いくつかの問題が存在する。これらの問題のうちの1つは、マイクロ波電力を反応炉へとデリバリするための手段に関する。電力のデリバリにおける課題は、高強度の電界の存在および化学反応炉内の汚染物質の存在にある。
【0010】
通常は、マイクロ波熱分解システムは、マイクロ波発生器が発生させたマイクロ波を熱分解が生じる反応炉まで伝播させるためのマイクロ波導波路を含む。通常の導波路は、マイクロ波の波長/周波数によって寸法が設定される矩形の管であり、マイクロ波反応炉は、一般に、導波路の内部寸法よりも大きい内部寸法を有する。したがって、マイクロ波の電力密度は、一般に、マイクロ波反応炉よりも導波路(体積がより小さい)の内部においてより大きい。
【0011】
反応炉および導波路の内部の所与の位置において、時間につれて振動する電位および磁位が存在すると考えられる。電位が媒体の絶縁破壊電圧を超えて上昇すると、電気アークが形成される。電気アークは、ガスの温度を上昇させ、プラズマを生じさせる。プラズマは導電性であり、振動する電界が電気アークを維持し、電気アークは、最も高い電力密度の方向、すなわちマイクロ波発生器の方向に移動する。マイクロ波発生器に向かって進むにつれて、アークは、アークに触れる金属の表面および境界を損傷させ、すなわちアークは金属上に鋭いエッジを生じさせる。マイクロ波の注入を停止することで、アークを消滅させることができる。マイクロ波の注入が再開されると、以前のアークによって生じた鋭いエッジの存在が、電界強度の高い地点を生じさせ、これが媒体の絶縁破壊電圧を超えるリスクを高め、別のアークの発生を促進する。したがって、アークの発生は、アーク放電の蓋然性を高めることにつながる。導波路の内部の電力密度が、通常はマイクロ波反応炉と比較して高いため、導波路の内部におけるアーク放電のリスクは、反応炉と比べて高い。したがって、導波路環境を充分に管理しなければならない(清浄度、高い絶縁破壊電圧、汚染がないこと、滑らかな表面、鋭いエッジがないこと、など)。
【0012】
熱分解は、通常は、カーボンブラック粒子を生じさせる副反応を伴う。これらの粒子は、導電性の微細な固体粒子である。ガス中に浮遊している場合、カーボンブラック粒子の存在は、ガスの絶縁破壊電圧を低下させ、アーク放電を促進する。反応によって生じた他のガスおよび/または液体の存在も、媒体の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。
【0013】
金属表面への汚染物質の付着も、ホットスポットおよびアーク放電をもたらす可能性がある。例えば、付着したカーボンブラック粒子において、振動する電界が電流を生じさせる。カーボンブラック粒子の電気抵抗はゼロではないため、抵抗損失によってカーボンブラック粒子が発熱する。したがって、ホットスポットが金属表面上に生じる可能性があり、これが、表面の損傷、表面の溶融、鋭いエッジ、および/またはアーク放電につながる可能性がある。
【0014】
通常のマイクロ波熱分解システムにおいて使用されるカプラに関して、いくつかの問題がさらに存在する。通常は、カプラは物理的障壁を備えるが、そのような物理的障壁は、マイクロ波エネルギーが熱へと消えてしまうことがないように、誘電損失が小さくなければならない。したがって、プロセスの効率が低下し、バリアが温度上昇によって損傷する可能性がある(例えば、高温によるバリアの溶融および熱衝撃による故障)。
【0015】
いくつかの通常のカプラは、物理的障壁を形成するために、導波路から反応炉への不活性ガス(例えば、チッ素)の流れを使用する。そのような物理的障壁は、カプラがガス媒体内に配置される反応炉について使用することができ、そうでない場合、液体または固体が導波路に流入する。このような不活性ガスによる障壁は、大量のガス流を必要とし、ガス製造のコストを追加し、熱分解生成物からの下流での分離も必要になる。さらに、反応炉内の圧力変動によって汚染物質が導波路へと運ばれる可能性があるため、汚染物質の導波路への進入を防止することが困難になり得る。
【0016】
いくつかの他の通常のカプラは、260℃の典型的な動作温度を有する物理的障壁としてテフロン(商標)窓を使用する。この比較的低い動作温度は、テフロン(商標)の適用を低温の化学プロセスに限定する。さらに、テフロン(商標)窓にカーボンブラック粒子などの汚染物質が付着すると、テフロン(商標)窓の表面上にホットスポットが生じ、テフロン(商標)窓の溶融および損傷の可能性がある。テフロン(商標)窓の損傷は、導波路への汚染物質の進入を防止するという物理的障壁の能力を危うくする。さらに、テフロン窓の損傷は、固体汚染物質がより蓄積しやすい領域を生み、固体汚染物質が導電経路を形成する可能性ゆえに、テフロン窓におけるさらなるホットスポットおよびアーク放電につながる。
【0017】
別の種類のカプラは、石英窓を使用する。石英は、1400℃の範囲の動作温度を有する。しかしながら、アークの場合に、石英窓はアークの高温に耐えることができず、したがって損傷する可能性がある。この損傷の影響は、テフロン(商標)についての上述の損傷と同じである。
【0018】
従来からのマイクロ波熱分解システムは、矩形の断面形状を有するマイクロ波導波路を使用する。そのような矩形のマイクロ波導波路において、最高の電界強度は、導波路の長辺の中央に位置する。これは、矩形の導波路の支配的なモードであるTE10伝送モードに対応する。この場合、汚染物質の付着は、金属上のホットスポット、金属の損傷、鋭いエッジの生成物、および/またはアーク放電につながる可能性がある。
【0019】
さらに、マイクロ波システムにおけるインピーダンス整合が、通常は、マイクロ波発生器から反応炉へと伝送される電力を最大にし、反射される電力を最小にするために必要とされる。インピーダンス整合は、通常は、アイリスまたはスタブチューナを使用して実行される。アイリスは、有孔板であり、そのインピーダンスは、孔のサイズおよび形状の関数である。サイズおよび形状の両方が固定されているため、アイリスのインピーダンスは固定されており、反応炉へのマイクロ波注入の最中にリアルタイムで変更することはできない。したがって、アイリスは、静的なインピーダンス整合システムである。
【0020】
スタブチューナは、通常は、円柱形のスタブ(通常は、3つのスタブ)またはプランジャが長辺に沿って挿入された導波路部分で構成される。挿入深さを変化させて、チューナの特性インピーダンスを変化させることができる。大部分のスタブチューナは、マイクロ波注入の最中にリアルタイムで各々の個別のスタブの挿入深さを変更することを可能にする。したがって、スタブチューナは、動的なインピーダンス整合システムである。
【0021】
スタブがマイクロ波場に挿入されると、スタブは電界および磁界に曝され、したがってスタブ表面に電流が誘導される。スタブの材料は電気抵抗がゼロではない(スタブは、通常はアルミニウムまたは銅で作られる)ため、抵抗熱損失がスタブにおいて生じる。或る程度の抵抗損失が導波路の壁においても生じるが、スタブにおける損失と比べて無視することができる。スタブにおけるこれらの抵抗損失により、スタブは発熱し、その温度が上昇する。スタブの温度が上昇するにつれて、スタブは熱膨張し、その長さおよび直径が増加する。熱膨張のために、スタブは、スタブケーシングの内部で圧迫され、もはやチューナにおける出入りが不可能になり得る。結果として、システムは、チューナのインピーダンスを変更する能力を失う。さらに、スタブを無理に動かし、あるいは押し出そうとすることで、スタブおよびスタブケーシングに機械的損傷が生じる可能性がある。
【0022】
したがって、先行技術のシステムの上記の欠点の少なくとも一部を克服する改善されたマイクロ波熱分解システムについて、ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の概要
広い態様によれば、マイクロ波熱分解反応炉が提供され、このマイクロ波熱分解反応炉は、下端部と上端部との間に延在し、内部キャビティを定めている細長い中空体と、前記細長い中空体の前記下端部に固定された下部本体と、前記細長い中空体の前記上端部に固定された上部本体とを備えており、前記細長い中空体ならびに前記下部および上部本体は、熱分解されるべき生成物を受け入れるためのエンクロージャを形成し、前記エンクロージャは、前記反応炉内にマイクロ波を伝播させるためのマイクロ波注入開口部を備え、前記細長い中空体は、前記内部キャビティに面する内面と、前記内面の反対側の外面との間に延在する細長い壁を備え、前記内面と前記外面との間の距離が、前記細長い壁の厚さを定め、前記細長い壁は、前記エンクロージャに受け入れられた前記生成物の温度を制御するために、温度制御流体を受け入れるための入口と出口との間に延在する少なくとも1つの流体受け入れ空洞を備え、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、少なくとも前記下部本体に隣接する前記細長い壁の下部内に延在し、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記壁の前記厚さよりも小さい幅を有する。
【0024】
一実施形態において、少なくとも前記細長い壁の前記下部は、二重壁構造を備え、前記二重壁構造は、ギャップによって隔てられた内壁および外壁を備え、前記ギャップは、前記ギャップ内に前記温度制御流体を伝播させるために前記入口および前記出口に流体接続され、前記ギャップは、前記流体受け入れ空洞に相当する。
【0025】
一実施形態において、このマイクロ波熱分解反応炉は、前記ギャップに挿入され、前記入口および前記出口に流体接続された少なくとも1つの管をさらに備える。
【0026】
一実施形態において、前記少なくとも1つの管は、前記内壁および前記外壁に物理的に接触している。
【0027】
一実施形態において、前記細長い中空体は、管状であり、前記少なくとも1つの管は、前記細長い中空体の円周を巡って延在する。
【0028】
一実施形態において、前記少なくとも1つの管は、蛇行形状およびらせん形状の一方を有する。
【0029】
一実施形態において、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記入口と前記出口との間に流体接続された少なくとも1つの運河を形成する。
【0030】
一実施形態において、前記少なくとも1つの運河は、真っ直ぐな形状、U字形、蛇行形状、およびらせん形状のうちの1つを有する。
【0031】
一実施形態において、前記入口および前記出口の少なくとも一方は、前記細長い中空体上に位置する。
【0032】
一実施形態において、前記マイクロ波注入開口部は、前記細長い中空体上に設けられる。
【0033】
一実施形態において、前記マイクロ波注入開口部は、円形である。
一実施形態において、前記マイクロ波注入開口部は、この反応炉内の前記生成物の最小高さを定める充てんレベルよりも下方において、前記細長い中空体の前記下端部に隣接して位置する。
【0034】
一実施形態において、前記下部本体および前記上部本体の少なくとも一方は、前記細長い中空体に取り外し可能に固定される。
【0035】
一実施形態において、前記エンクロージャは、反応した生成物の少なくとも一部を抽出するための抽出開口部、この反応炉からガスを抽出するためのガス開口部、この反応炉を過圧から保護するための圧力逃がし開口部、および少なくとも1つのセンサをこの反応炉へと挿入するための少なくとも1つのセンサ開口部のうちの少なくとも1つをさらに備える。
【0036】
一実施形態において、このマイクロ波熱分解反応炉は、この反応炉内の前記生成物を混合するための攪拌装置をさらに備える。
【0037】
一実施形態において、前記細長い中空体は、管状であり、前記マイクロ波の波長以上である内径を備える。
【0038】
第2の広い態様によれば、マイクロ波熱分解反応炉が提供され、このマイクロ波熱分解反応炉は、下端部と上端部との間に延在し、内部キャビティを定めている細長い中空体と、前記細長い中空体の前記下端部に固定された下部本体と、前記細長い中空体の前記上端部に固定された本体壁とを備えており、前記細長い中空体ならびに前記下部および上部本体は、下部に熱分解されるべき生成物を充てんレベルまで受け入れるためのエンクロージャを形成し、前記充てんレベルは、前記反応炉内の前記生成物の最小高さを定めており、前記細長い中空体は、前記充てんレベルよりも下方において前記細長い中空体の前記下部壁に隣接して位置したマイクロ波注入開口部を備え、前記マイクロ波注入開口部は、前記エンクロージャの前記下部におけるマイクロ波の伝播を可能にするようなサイズおよび形状である。
【0039】
一実施形態において、前記マイクロ波注入開口部は、円形である。
一実施形態において、前記マイクロ波注入開口部の直径は、マイクロ波の波長以上である。
【0040】
一実施形態において、前記細長い中空体は、前記内部キャビティに面する内面と、前記内面の反対側の外面との間に延在する細長い壁を備え、前記内面と前記外面との間の距離が、前記細長い壁の厚さを定め、前記細長い壁は、前記反応炉に受け入れられた前記生成物の温度を制御するために、温度制御流体を受け入れるための入口と出口との間に延在する少なくとも1つの流体受け入れ空洞を備え、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、少なくとも前記下部本体に隣接する前記細長い壁の下部内に延在し、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記壁の前記厚さよりも小さい幅を有する。
【0041】
一実施形態において、少なくとも前記細長い壁の前記下部は、二重壁構造を備え、前記二重壁構造は、ギャップによって隔てられた内壁および外壁を備え、前記ギャップは、前記ギャップ内に前記温度制御流体を伝播させるために前記入口および前記出口に流体接続され、前記ギャップは、前記流体受け入れ空洞に相当する。
【0042】
一実施形態において、このマイクロ波熱分解反応炉は、前記ギャップに挿入され、前記入口および前記出口に流体接続された少なくとも1つの管をさらに備える。
【0043】
一実施形態において、前記少なくとも1つの管は、前記内壁および前記外壁に物理的に接触している。
【0044】
一実施形態において、前記細長い中空体は、管状であり、前記少なくとも1つの管は、前記細長い中空体の円周を巡って延在する。
【0045】
一実施形態において、前記少なくとも1つの管は、蛇行形状およびらせん形状の一方を有する。
【0046】
一実施形態において、前記少なくとも1つの流体受け入れ空洞は、前記入口と前記出口との間に流体接続された少なくとも1つの運河を形成する。
【0047】
一実施形態において、前記少なくとも1つの運河は、真っ直ぐな形状、U字形、蛇行形状、およびらせん形状のうちの1つを有する。
【0048】
一実施形態において、前記入口および前記出口の少なくとも一方は、前記細長い中空体上に位置する。
【0049】
一実施形態において、前記下部本体および前記上部本体の少なくとも一方は、前記細長い中空体に取り外し可能に固定される。
【0050】
一実施形態において、前記エンクロージャは、反応した生成物の少なくとも一部を抽出するための抽出開口部、この反応炉からガスを抽出するためのガス開口部、この反応炉を過圧から保護するための圧力逃がし開口部、および少なくとも1つのセンサをこの反応炉へと挿入するための少なくとも1つのセンサ開口部のうちの少なくとも1つをさらに備える。
【0051】
一実施形態において、このマイクロ波熱分解反応炉は、この反応炉内の前記生成物を混合するための攪拌装置をさらに備える。
【0052】
一実施形態において、前記細長い中空体は、管状であり、前記マイクロ波の波長以上である内径を備える。
【0053】
別の広い態様によれば、生成物を熱分解するための方法が提供され、この方法は、初期生成物の熱分解を開始させることによって、部分的に熱分解された生成物を得るステップと、前記部分的に熱分解された生成物の一部を抽出するステップと、前記抽出された部分的に熱分解された生成物と、熱分解されるべきさらなる生成物とを混ぜ合わせることによって、混合された生成物を得るステップと、前記混合された生成物を熱分解することによって、最終生成物を得るステップとを含む。
【0054】
一実施形態において、前記初期生成物の熱分解を開始させるステップは、前記初期生成物をマイクロ波熱分解反応炉に挿入するステップと、第1のマイクロ波を前記マイクロ波熱分解反応炉へと伝播させて、前記初期生成物を加熱するステップとを含み、前記混合された生成物を熱分解するステップは、第2のマイクロ波を前記反応炉へと伝播させて、前記混合された生成物を加熱するステップを含む。
【0055】
一実施形態において、この方法は、マイクロ波吸収粒子を注入するステップをさらに含む。
【0056】
一実施形態において、前記マイクロ波吸収粒子を注入するステップは、前記第1のマイクロ波を伝播させるステップよりも前に実行される。
【0057】
一実施形態において、前記混合された生成物は、スラリー相を含む。
一実施形態において、この方法は、前記混合された生成物を熱分解するステップの最中に前記スラリー相の一部を連続的に抽出するステップをさらに含む。
【0058】
一実施形態において、この方法は、前記マイクロ波吸収粒子と前記スラリー相との間の温度差を監視し、前記混合された生成物において所望の反応を得るために、前記温度差を所与の値に調節するステップをさらに含む。
【0059】
一実施形態において、前記温度差を調節するステップは、以下のパラメータ、すなわち前記マイクロ波吸収粒子の質量、前記マイクロ波吸収粒子の比表面積、前記マイクロ波熱分解反応炉の内部の流体力学的状況、および前記第2のマイクロ波の電力のうちの少なくとも1つの値を調節することによって実行される。
【0060】
一実施形態において、この方法は、マイクロ波吸収粒子の正味表面積に対する前記第2のマイクロ波の電力の比を調節して、前記スラリー相内で生じる反応の速度を変更するステップをさらに含む。
【0061】
一実施形態において、この方法は、前記混合された生成物を熱分解するステップにおいて生じるガスの流量を検知するステップをさらに含み、前記流量に基づいて前記反応の速度が割り出される。
【0062】
一実施形態において、この方法は、前記マイクロ波熱分解反応炉内の前記スラリー相のレベルを監視するステップをさらに含む。
【0063】
一実施形態において、前記スラリー相のレベルを監視するステップは、前記マイクロ波熱分解反応炉内の圧力の差を監視し、前記圧力の差に基づいて前記スラリー相のレベルを割り出すことによって実行される。
【0064】
一実施形態において、この方法は、前記混合された生成物を熱分解するステップにおいて生じたガスを抽出するステップと、前記抽出されたガスを凝縮させ、凝縮したガス相を得るステップと、前記凝縮したガス相を前記反応炉に再循環させるステップとをさらに含む。
【0065】
一実施形態において、この方法は、前記第1のマイクロ波を伝播させるステップに先立って、前記マイクロ波熱分解反応炉を予熱するステップをさらに含む。
【0066】
一実施形態において、この方法は、前記抽出された部分的に熱分解された生成物を、前記混ぜ合わせるステップに先立ってろ過するステップをさらに含む。
【0067】
一実施形態において、この方法は、前記混合された生成物を熱分解するステップの最中に前記混合された生成物を攪拌するステップをさらに含む。
【0068】
一実施形態において、前記混合された生成物を攪拌するステップは、機械的に実行される。
【0069】
一実施形態において、前記混合された生成物を攪拌するステップは、前記混合された生成物へと不活性ガスを注入するステップを含む。
【0070】
マイクロ波は、電磁波であり、磁場に垂直な移動電界である。加熱の用途に使用されるマイクロ波は、2.45GHz(15kW未満の低電力)および915MHz(100kWもの高電力)の周波数を有し、これらの周波数は国際規制によって固定および決定されている。
【0071】
図面の簡単な説明
本発明のさらなる特徴および利点が、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】第1の実施形態によるマイクロ波熱分解反応炉、カプラ、およびチューナを含むマイクロ波熱分解システムの断面図である。
【
図2】
図1のマイクロ波熱分解反応炉の別の図を示している。
【
図3】
図1のマイクロ波熱分解反応炉の別の図を示している。
【
図4】
図1のマイクロ波熱分解反応炉の別の図を示している。
【
図5】
図1のマイクロ波熱分解反応炉の別の図を示している。
【
図6】一実施形態によるマイクロ波吸収粒子を示している。
【
図7】一実施形態による、反応物粒子の加熱を示している。
【
図8】一実施形態による攪拌装置を備えたマイクロ波熱分解反応炉を示している。
【
図9】一実施形態による生成物を熱分解するための方法のフローチャートである。
【
図10】一実施形態による
図8の方法を実施するための混合タンクを備えるマイクロ波熱分解システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0073】
添付の図面を通して、同様の特徴は同様の参照番号によって識別されることに留意されたい。
【0074】
詳細な説明
図1が、反応炉または容器12と、カプラ14と、チューナ16とを備えるマイクロ波熱分解システム10の一実施形態を示している。チューナ16を、直接またはマイクロ波導波路を介して、マイクロ波の供給源またはマイクロ波発生器(図示せず)に接続できることを理解できるであろう。図示の実施形態において、チューナ16は、マイクロ波発生器によって放射されたマイクロ波をカプラ14まで案内するために使用される。さらに、チューナ16を、カプラ1
4、したがって反応炉12へともたらされるマイクロ波の電力または振幅を調節するために使用することができる。カプラ14は、チューナ16から到来するマイクロ波を反応炉12へと伝播させるために使用される。反応炉12は、マイクロ波加熱によって加熱される熱分解されるべき生成物を内部に受け入れるように構成される。
【0075】
図2~
図5を参照すると、反応炉12の一実施形態が示されている。反応炉12は、マイクロ波エネルギーの作用下で内部において化学反応および/または物理的反応を実行するように構成される。
【0076】
図示の実施形態において、反応炉12は、第1の端部または下端部53aと第2の端部または上端部53bとの間を長手軸に沿って延びている管状の本体52と、下部本体またはフロア54と、上部本体またはカバー56とを備える。管状の本体52は、熱分解されるべき生成物を受け入れるキャビティ57を定める。下部本体54は、管状の本体52の下端部53aに取り外し可能に固定され、管状の本体52の下端部53aを閉じるようにキャビティ57の下端部の断面サイズに少なくとも等しいサイズを有する。上部本体56は、管状の本体52の上端部53bに取り外し可能に固定され、管状の本体52の上端部53bを閉じるようにキャビティ57の下端部の断面サイズに少なくとも等しいサイズを有する。下部本体54および上部本体56が管状の本体52に固定されると、このアセンブリは、熱分解されるべき生成物が配置されるエンクロージャを形成する。一実施形態において、管状の本体52と下部本体54および上部本体56との間の接続は、流体がエンクロージャを出ることができないように、実質的に気密である。例えば、エンクロージャが実質的に気密に閉じられることを保証するために、管状の本体52と下部本体54および上部本体56との間にガスケットを配置することができる。一実施形態において、下部本体54および上部本体56は、管状の本体52に固定的かつ気密に取り付けられる。例えば、下部本体54および上部本体56と管状の本体52とが、一体であってよい。
【0077】
反応炉12には、マイクロ波を反応炉12の内部空間、すなわちキャビティ57へと注入するための第1の開口部58が設けられている。マイクロ波の供給源に動作可能に接続されたマイクロ波案内装置を、マイクロ波の供給源からキャビティ57へとマイクロ波を伝播させるために、開口部58の周りの管状の本体52の外面に固定することができる。図示の実施形態においては、接続プレート60が、開口部58の周りの管状の本体52の外面から突出している。接続プレート60には、それぞれが接続プレート60から外側に突出する複数のボルトまたはロッド62が設けられている。この場合、マイクロ波案内装置に、接続プレート60と対をなす接続プレートが設けられ、この接続プレートには、マイクロ波案内装置を反応炉12に固定するために、それぞれのボルト62をそれぞれが受け入れる貫通孔が設けられる。
【0078】
一実施形態において、マイクロ波案内装置は、マイクロ波導波路である。別の実施形態において、マイクロ波案内装置は、カプラ14などのカプラである。
【0079】
一実施形態において、開口部58は、
図2に示されるように円形の形状を有する。別の実施形態において、開口部58は、正方形などの矩形の形状を備える。開口部58の形状が、マイクロ波を内部に伝播させるために反応炉12に取り付けられるマイクロ波案内装置に応じて選択されることを、理解すべきである。図示の実施形態においては、接続プレート60が環状の形状を有し、ロッド62が接続プレート60の周囲に均等に分布しているが、他の構成も可能であることを、理解できるであろう。
【0080】
一実施形態において、開口部58は、管状の本体52上に、管状の本体52の下端部に隣接して設けられる。反応炉12が液体またはスラリー生成物の熱分解に使用される実施形態などの一実施形態において、反応炉12には、反応炉12内に挿入されるべき生成物の所望のレベルまたは最小レベルを表す充てんレベル66が設けられる。この場合、開口部58の位置は、
図3に示されるように、充てんレベル66よりも下方であるように選択される。
【0081】
図1~
図5は、管状の本体52に設けられた開口部58を示しているが、当業者であれば、マイクロ波を反応炉12へと注入するための開口部が、下部本体54または上部本体56などの任意の他の適切な位置に設けられてもよいことを、理解できるであろう。
【0082】
一実施形態において、管状の本体52の少なくとも一部分は、反応炉12および/または反応炉12内に収容された生成物の温度を制御するために、内部に温度制御流体を受け入れて伝播させるように構成される。図示の実施形態においては、管状の本体52が、
図3に示されるように、管状の内壁70および管状の外壁72を備える。内壁70は、外壁72の内側に配置され、内壁70および外壁72は、二重壁構造を協働して形成するように、ギャップ73によって互いに隔てられている。したがって、ギャップ73は、管状の本体52内を周状に延在する内部空洞を形成する。2つの壁70および72の間のギャップ73は、管状の本体52の厚さよりも小さい幅を有し、温度制御流体を伝播させるために使用されてよい。図示の実施形態においては、外壁72が、外壁72を貫いて延びる入口74と、やはり外壁72を貫いて延びる出口76とを備える。図示の実施形態において、入口74は、管状の本体52の第1の側において管状の本体52の上端部53bに隣接して位置し、出口76は、第1の側とは反対側で管状の本体52の下端部53aに隣接して位置する。しかしながら、この構成が例示にすぎず、入口74および出口76の位置がさまざまであってよく、反応炉12上の任意の適切な位置に配置されてよいことを、当業者であれば理解できるであろう。入口74は、温度制御流体が入口を通って注入され、出口76を通って管状の本体52から出るように、温度制御流体の供給源(図示せず)に接続される。流体の供給源には、流体の温度を所望の温度に調節するための加熱/冷却装置が設けられる。所望の温度を、熱分解されるべき生成物が導入される前に反応炉12を加熱する、反応炉12におけるマイクロ波の伝播の最中に生成物の温度を制御する、などのために選択することができる。
【0083】
一実施形態において、入口74および出口76は、内壁70と外壁72との間のギャップ73内に延在する管(図示せず)を介して互いに流体接続される。例えば、管は、内壁72のほぼ全周にわたって延在でき、内壁72の周りに巻き付けられるようにコイルまたはらせんの形状を有することができる。別の例において、管は、蛇行の構成に従って管状の本体52の周囲を巡って内部ギャップ内に延在することができる。一実施形態において、管の外径は、管が内壁70および外壁72の両方に物理的に接触するように、内壁70と外壁72との間の距離に実質的に等しい。別の実施形態において、管の直径は、内壁70と外壁72との間の距離よりも小さい。管は、可撓性材料で製作されてよい。あるいは、管は、剛体材料で製作されてよい。
【0084】
複数の管を使用してもよいことを、理解できるであろう。その場合、すべての管が単一の入口と単一の出口との間に流体接続され、あるいは各々の管がそれぞれの入口とそれぞれの出口との間に流体接続され、各々の管は、内壁70と外壁72との間に形成された内部空洞内に延在する。
【0085】
図示の実施形態においては、管状の本体52がギャップ73によって隔てられた2つの別個の壁70および72を備えるが、管状の本体52は、単一の中実壁から形成されてもよく、運河または開口が、管状の本体52の少なくとも一部分に沿って入口74と出口76との間で中実壁の厚さを部分的に通って延在できる。次いで、運河は、反応炉12の温度を所望の温度に調節するために、温度制御流体を伝播させるために使用される。例えば、運河は、管状の本体52の長さの少なくとも一部に沿って管状の本体52の周囲を巡って延びる蛇行の形状を有することができる。別の実施形態において、運河は、コイルまたはらせんの形状を有し、管状の本体52の周囲を巡って延びてよい。一実施形態においては、管状の本体52に、温度制御流体を循環させるための複数の運河を設けてもよい。各々の運河が、それぞれの入口とそれぞれの出口との間に延在できる。別の例においては、運河を、単一の入口および単一の出口が存在できるように、互いに流体接続することができる。例えば、管状の本体52に、各々がそれぞれの入口とそれぞれの出口との間に延在する複数の運河を設けることができる。運河は、任意の適切な形状を有することができる。例えば、運河は、真っ直ぐな形状または直線状の形状を有することができる。別の例において、運河は、U字形を有することができる。
【0086】
一実施形態においては、管状の本体52の一部分のみが、温度制御流体を受け入れて伝播させるように構成される。例えば、管状の本体52の下部のみに二重壁を設けることができ、管状の本体52の残りの部分は、単一の中実壁を備える。結果として、温度制御流体の流れによって反応炉12の下部のみの温度を制御することができる。例えば、管状の本体52のうちの充てんレベル66よりも下方に位置する部分のみに、二重壁構造を設けることができる。同様に、管状の本体52が中実壁を備える場合、中実壁の一部分のみに、温度制御流体を伝播させるための少なくとも1つの運河を設けることができる。
【0087】
一実施形態において、反応炉12は、温度制御流体の温度を検知するための少なくとも1つの温度センサをさらに備える。同じ実施形態または別の実施形態において、反応炉12は、温度制御流体の流れを検知するための少なくとも1つの流量センサを備える。温度センサおよび/または流量センサを、当技術分野で知られているように、温度制御流体の温度および/または流量をそれぞれ測定するための任意の適切な位置に配置できることを、理解すべきである。
【0088】
一実施形態において、反応炉12は、反応炉12の内部に熱分解されるべき生成物を入力または注入するための開口部を備える。図示の実施形態においては、下部本体54に、熱分解されるべき生成物を反応炉12へと注入するために使用することができる開口部74が設けられている。
【0089】
一実施形態において、反応炉12は、
図1~
図5に示されるように、流体に関して相互接続された3つのポート/管78、80、および82を有するT字形コネクタ76をさらに備える。第1の管78は、反応炉12をコネクタ76に流体接続するように、開口部74の周囲で下部本体54に固定される。管80を、生成物を反応炉12へと注入するために、熱分解されるべき生成物の供給源に流体接続することができる。管82を、取り出しが必要とされる緊急事態の場合や、反応炉12の計画された排出の場合に、反応炉12に収容された生成物を排出するための排出ドレインとして使用することができる。管82の入口/出口に、反応炉12内の過圧を防止するために、圧力逃がし弁を設けてもよい。
【0090】
一実施形態において、反応炉12は、反応後の生成物の抽出、不純物の除去、などのための抽出開口部84を備える。図示の実施形態において、抽出開口部84は、管状の本体52において充てんレベル66よりも下方に位置する。抽出開口部84は、反応炉12における生成物の滞留時間の制御、あるいは反応後の生成物から不溶性不純物をろ過または除去する必要がある場合に、有用であり得る。さらに、抽出開口部84は、例えば特定の不純物の濃度を制御するために反応炉の内容物の一部をパージするために有用であり得る。
【0091】
一実施形態において、反応炉12は、熱分解反応において生じたガスを反応炉12の外部に排出することを可能にするためのガス開口部86を備える。一実施形態において、ガス開口部86は、上部本体56に配置される。一実施形態では、ガス開口部86は、反応炉12からもたらされるガスを凝縮させるための凝縮器に流体接続される。一実施形態においては、例えば凝縮器の管の閉塞または汚損を回避するために、反応炉12からの液体が凝縮器システムに取り込まれることを防止するためのガス/液体分離器が、ガス開口部86に挿入される。
【0092】
システムが凝縮器を備える実施形態においては、例えば管82を介して、凝縮させた気相の一部または全部を反応炉12に再び戻し、反応炉12における反応後の生成物の滞留時間を増加させることができる。
【0093】
マイクロ波吸収粒子を使用される実施形態(後述)において、反応炉12は、マイクロ波吸収粒子を反応炉12の内部に挿入するための開口部88が設けられる。一実施形態において、開口部88は、上部本体56に配置される。
【0094】
一実施形態では、反応炉12は、反応炉12を過圧から保護するための圧力逃がし開口部90が設けられる。圧力が所定の圧力を上回るときにガスを反応炉12から出すことができるように、圧力逃がし弁を開口部90に接続することができる。
【0095】
一実施形態において、反応炉12は、反応炉12への少なくとも1つのセンサの挿入を可能にするための少なくとも1つの開口部を備える。図示の実施形態において、反応炉12は、圧力センサを反応炉12に挿入するための圧力開口部92と、それぞれの温度センサを反応炉12にそれぞれ挿入するための2つの温度開口部94および96とを備える。図示の実施形態においては、温度開口部94を、下部本体54に隣接する反応炉12の下部の温度を検知するために使用することができる一方で、温度開口部96を、レベルライン66のすぐ下方の温度を測定するために使用することができる。
【0096】
図示の実施形態においては、各々の開口部86、88、90、92、94、および96にコネクタが組み合わせられる。各々のコネクタは、反応炉12の外面から突出する管を備える。各々の管は、それぞれの開口部の周りに固定された第1の端部と、第2の端部との間に延在する。各々の管の第2の端部の周囲に延在するフランジに、別の管の固定を可能にするための複数の孔が設けられている。管を、例えばボルトおよびナットを使用して互いに固定することができる。
【0097】
一実施形態において、下部本体54および上部本体56は、管状の本体52に取り外し可能に固定される。この場合、下部本体54および上部本体56を管状の本体52に取り外し可能に固定するための任意の適切な方法/システムを使用できることを、理解すべきである。図示の実施形態において、管状の本体52は、管状の本体52の下端部の周囲において半径方向に外側へと突出する下部フランジと、管状の本体52の上端部の周囲において半径方向に外側へと突出する上部フランジとを備える。両方のフランジの各々に、それぞれの厚さを貫通して延びる複数の孔が設けられている。下部本体54および上部本体56の各々に、それぞれの円周に沿って外側端に隣接して位置する孔が設けられている。したがって、ボルトおよびナットを使用して、下部本体54を下部フランジに固定し、上部本体56を上部フランジに固定することができる。
【0098】
一実施形態においては、下部本体54および上部本体56を、管状の本体52に気密かつ取り外し可能に固定することが可能である。この場合、少なくとも1つのガスケットを、下部本体54と下部フランジとの間、および上部本体56と上部フランジとの間に挿入することができる。
【0099】
別の実施形態において、下部本体54および/または上部本体56は、管状の本体52に固定的に取り付けられる。例えば、下部本体54を管状の本体52に溶接できる一方で、上部本体56を管状の本体52に取り外し可能に取り付けることができる。
【0100】
一実施形態において、開口部74、84、86、88、90、92、94、および96のうちの少なくともいくつかの開口部の位置は、
図1~
図5に示した位置と違ってもよい。開口部のうちのいくつかを、管状の本体52に位置させることができる一方で、他の開口部を、上部本体56または下部本体54に位置させることができる。
【0101】
一実施形態において、反応炉12は、反応中に内部に含まれる生成物を攪拌/混合するための攪拌装置をさらに備える。例えば、機械式の攪拌機を、下部本体54の上面に取り付けることができる。任意の適切な攪拌装置を使用することができ、反応炉12(下部本体54など)が、シャフトなどの攪拌装置の一部を延在させることができる開口部を備えてよいことを、理解できるであろう。
【0102】
別の例においては、不活性ガスなどのガスを、反応の最中にスラリー相材料へと反応炉12を貫く開口部を介して注入して、気泡を発生させることにより、スラリー相材料を混合/攪拌することができる。
【0103】
上述の反応炉12を、ガス生成物、液体生成物、または固体生成物を熱分解するために使用することができる。以下では、液体生成物の熱分解における反応炉12の動作を説明する。
【0104】
熱分解されるべき生成物は、例えば、コネクタ76のポート80および下部本体54に存在する開口部74を介して、反応炉12に注入される。反応炉12に注入される生成物の量は、開口部58の全表面が生成物で覆われることを確実にするために、反応炉12に注入された生成物の上面がレベルライン66に実質的に整列し、あるいはレベルライン66と実質的に同一平面上に位置するように選択される。
【0105】
次いで、マイクロ波が、開口部58を介して反応炉12に注入される。これにより、液体生成物がマイクロ波電界と相互作用して、液体生成物などの生成物がスラリー相に変換される。一実施形態において、生成物とマイクロ波との相互作用は、生成物がマイクロ波によって直接加熱されるように直接的である。別の実施形態において、生成物の加熱は、間接的である。この場合、マイクロ波吸収粒子が反応炉12に導入され、生成物と混合される。これにより、マイクロ波吸収粒子がマイクロ波を熱へと変換するために使用され、生成物が対流/伝導によって加熱され、スラリー相が生成される。
【0106】
一実施形態においては、反応が嫌気性条件を必要とする場合に、反応炉12にマイクロ波を伝播させる前に反応炉12をパージして、微量の酸素を除去することができる。この場合、チッ素などのガスまたは任意の適切なパージガスを、反応炉12へと導入することができる。
【0107】
一実施形態においては、液体生成物が、マイクロ波を反応炉12内に伝播させつつ、反応炉12へと連続的に導入される。この場合、反応炉12への液体生成物の供給速度は、開口部58がスラリー相で覆われ、等温状態がカプラ界面に存在することを確実にするために、反応炉12内の液体生成物の充てんレベル66が維持されるように選択される。
【0108】
反応の最中、すなわち反応炉12内にマイクロ波を伝播させている最中に、不純物を除去し、あるいは部分的に反応した生成物を抽出するために、スラリー相の一部を開口部84を通して反応炉12から連続的に抽出することができる。スラリー相材料の抽出は、反応炉12におけるスラリー相材料の滞留時間を制御する必要がある場合、不溶性不純物をスラリー相からろ過または除去する必要がある場合、特定の不純物の濃度を制御する必要がある場合、などに有用であり得る。
【0109】
一実施形態において、反応炉12内に含まれる生成物の温度は、入口74を介して管状の本体52の二重壁へと温度制御流体を注入することなどにより、反応炉12の温度を制御することによって制御される。反応炉12に含まれるスラリー相材料の温度を、管状の本体52の二重壁に注入される温度制御流体の温度および/または流量を適切に調節することによって、反応炉12内に等温状態をもたらす温度などの所望の温度に調節することができる。スラリー相材料の温度を、反応炉12の開口部94および96に挿入された温度センサを使用して割り出すことができることを、理解すべきである。一実施形態において、温度制御は、反応部位とスラリー相材料との間の温度勾配を維持し、所与の反応を他の反応よりも促進するために使用される。
【0110】
一実施形態においては、反応炉12内に液体材料を注入する前に、反応炉12を所望の温度に予熱することができる。
【0111】
一実施形態において、反応炉12は、所望に応じ、あるいは必要に応じて特定の反応選択性を有利にするために、大気圧、大気圧よりも高い圧力、または真空条件で動作することができる。
【0112】
一実施形態において、反応炉12は、ステンレス鋼で作られる。一実施形態において、反応炉12は、反応へと伝達されるエネルギー効率を低下させる可能性がある反応炉の容器における熱損失を防止するために、低い誘電損失および高い導電率を有する材料で作られる。
【0113】
熱分解されるべき生成物が液体である実施形態において、マイクロ波が反応炉12内を伝播するとき、スラリー相においていくつかの反応が生じ、スラリー相分子がより小さな分子へと熱分解され、反応炉の条件に応じてガス状生成物も発生する可能性がある。このガス発生は、スラリー相を通る気泡を生じさせ、スラリー相の混合を促進する。熱分解反応は、スラリー相の粘度も低下させ、これがスラリー相の混合をさらに促進する。このようにして得られるスラリー相の混合が、マイクロ波吸収を最大にするように、スラリー相中のマイクロ波吸収粒子の懸濁および反応炉12内の最良の抵抗条件を維持する。さらに、スラリー相の混合は、均質なスラリー相および反応部位への物質移動も促進する。
【0114】
スラリー相がマイクロ波エネルギーを部分的または全体的に吸収しない限り、反応は、通常は、マイクロ波吸収粒子の表面で生じる。マイクロ波吸収粒子は、化学的に不活性な炭素質材料、またはマイクロ波の作用下で所定の所望の反応を強化および促進するための化学的に活性な触媒材料で構成されてよい。粒子の表面は、通常は、スラリー相の温度よりも高い温度にあり、したがって、反応中に生成される生成物は、スラリー相の温度よりも高い温度で生成される。反応生成物を含むガスがスラリー相を通って発泡している場合、或る程度の熱がスラリー相へと放出され、発生したガスは、スラリー相の温度以上の温度へと急速に冷却される。ガスのこの急速な冷却は、望ましくない可能性がある副反応を停止させ、したがって所望の生成物へのより高い選択性を促進する。
【0115】
一実施形態において、反応炉12の内径dは、反応炉12へと注入されるマイクロ波の波長以上である。周波数fを有するマイクロ波の場合、反応炉12の内径dは、光速をcとしたとき、c/f以上である。典型的には、標準的な915MHzのマイクロ波の場合、反応炉12の内径は、0.32m以上である。
【0116】
一実施形態において、反応炉12は、マイクロ波電界を熱に変換する高い誘電損失を有する多量のマイクロ波吸収粒子mpを含む。これらの粒子は、反応中のガスの発生によって形成され、あるいは例えば再循環ポンプによってもたらされる強制対流によって形成される気泡の作用下で、スラリー相中を自由に移動する。
【0117】
マイクロ波吸収粒子は、自然対流または強制対流の下でスラリー相中を自由に流れ、結果として、反応炉12の内部において吸収粒子をより良好に分布させることができ、反応炉のインピーダンスの全体的な抵抗性を増加する。反応炉のインピーダンスの全体的な抵抗性の増加は、見返りとして、マイクロ波の供給源および反応炉12を備える共振システムの調整をより容易にする。例えば、粒子が自由には流れていないならば、システムの調整がより困難になり、したがって、反応炉への伝達エネルギーを減少させるインピーダンス不整合の結果として、反応炉のエネルギー性能が低下すると考えられる。さらに、大きな不整合を調整すると、チューナにおける抵抗損失も増加し、エネルギー(熱)が失われる。
【0118】
一実施形態において、マイクロ波吸収粒子は、反応炉12にマイクロ波を注入する前に反応炉12に添加される。一部のマイクロ波吸収粒子が、損耗、取り込み、またはパージの結果として反応炉12の動作中に失われる場合、必要に応じて反応の最中に追加のマイクロ波吸収粒子を添加することができる。
【0119】
一実施形態においては、以下で説明されるように、マイクロ波吸収粒子とスラリー相との間の温度の勾配または差を制御することによって、所望の反応、したがって所望の最終結果の化学物質を達成することができる。スラリー相は低い熱伝導率kbを有するため、吸収粒子は、反応炉の残りの部分から部分的に断熱される。マイクロ波吸収粒子に連続的な熱流束をもたらす連続的なマイクロ波電力流束(P)の下で、マイクロ波吸収粒子がスラリー相から部分的に断熱されているため、マイクロ波吸収粒子の温度TPが上昇でき、マイクロ波吸収粒子とスラリーバルクとの間に温度の勾配または差ΔTが生じ、ここでΔT=TP-Tbであり、Tbはスラリーバルクの温度である。一実施形態においては、温度勾配ΔTの大きさを使用して、主要な化学物質の高い選択性が達成され、すなわち
・粒子表面の制御された反応温度が、所望の主要な化学物質を生成するための所望の反応を促進し、
・より低いスラリーバルク温度Tbは、所望の重要な化学物質の分解を回避するように、さらなる反応を抑える。
【0120】
温度勾配ΔTは、反応炉12におけるさまざまなパラメータを調節することによって、所望の値に調節することができる。
【0121】
反応炉がこの勾配をどのように制御するかを説明するために、マイクロ波吸収粒子におけるエネルギー収支を、
図6を参照して以下のように実行することができる。
【0122】
【0123】
式中、mpは粒子の質量(kg)であり、Cp,pはマイクロ波吸収粒子の比熱(J/kg-K)であり、Pはマイクロ波電力(W)であり、Aは吸収粒子の総表面積(m2)(A=mp×a)であり、a(m2/kg)は粒子の比表面積であり、rA(Tp,Reb)は粒子の表面で発生する反応速度(kg/m2-s)であり、これは、粒子温度(Tp)と、床レイノルズ数(Reb)の関数である粒子表面の境界層との関数である。ΔHR(Tp)は粒子表面温度Tpにおける反応熱(J/kg)であり、hp,bはマイクロ波吸収粒子とバルクとの間の対流熱伝達係数(W/m2-K)であり、σはボルツマン定数であり、
【0124】
【0125】
はマイクロ波吸収の放射率である。ほとんどの場合、スラリーバルクの放射率は低いため、熱伝達の放射部分は無視することができる。
【0126】
熱伝達係数hp,bは、スラリー相のヌセルト数(Nu)の関数である。無次元数が、
【0127】
【0128】
によって定義され、式中、dおよびkbは、それぞれバルクの特性寸法および熱伝導率である。通常の状況下などの一実施形態において、ヌセルト数は、スラリー相のレイノルズ数(Re)、すなわち
【0129】
【0130】
(ρb,vd、およびμbは、それぞれスラリー相の密度、特性速度、特性寸法、および動粘度)によって捕捉される流体力学的状況の関数として変化する。したがって、熱伝達係数は、スラリーバルクのレイノルズ数Reおよび無次元数Nuの関数である。結果として、hp,b=hp,b(Nub,Reb)である。
【0131】
反応炉12を定常状態の状況に保つために、マイクロ波吸収粒子の温度は、安定でなければならず、すなわち
【0132】
【0133】
でなければならない。したがって、式1を以下のように書き直すことができる。
【0134】
【0135】
次いで、マイクロ波吸収粒子とスラリーバルクとの間の温度勾配ΔTは、
【0136】
【0137】
によって与えられる。
式3から、当業者であれば、粒子の表面とスラリー相との間の温度勾配ΔTを、以下のパラメータの少なくとも1つを調節することによって所望の値に調節できることを、理解できるであろう。
・吸収粒子の質量(mp)。吸収粒子の質量を減らすと、温度勾配ΔTが大きくなる。
・粒子の比表面積(a)。粒子の比表面積を小さくすると、温度勾配ΔTが大きくなる。
・ポンプまたは発泡ガスで再循環を強制することによる反応炉内の流体力学的状況(hp,b(Nub,Reb)mp)。粒子とスラリー相との間の熱伝達係数を小さくすると、温度勾配ΔTが大きくなる。
・反応炉12にもたらされるマイクロ波電力(P)。より多くのマイクロ波電力がもたらされると、温度勾配ΔTが大きくなる。
【0138】
式2から、マイクロ波吸収粒子の正味の表面積に対するマイクロ波電力の比を変更することによって全体的な反応速度を変更することが可能であり得ることも、当業者であれば理解できるであろう。
【0139】
反応がきわめて速く、周囲の流体の熱伝導率がきわめて低い場合、rAmpaΔHR(Tp)≫hp,b(Nub,Reb)mpaΔTである。したがって、反応が支配的であり、周囲のバルクとの熱損失は、無視することができる。結果として、マイクロ波エネルギーの全てが反応によって消費されると仮定することができ、式2を以下のように書き直すことができる。
【0140】
【0141】
したがって、反応速度rAを、
【0142】
【0143】
と記述することができる。
したがって、比
【0144】
【0145】
を大きくすると、反応速度rA(kg/m2-s)が増加する。
同じ結論に到達する別の方法は、アレニウスの式に従う反応速度rA(Tp,Reb)から出発することである。
【0146】
【0147】
式中、A(Tp,Reb)は、スラリーバルク中の粒子温度およびレイノルズ数の関数である特定の速度定数であり、
【0148】
【0149】
は、種
【0150】
【0151】
の濃度の関数である動態モデルである。他のすべての動作パラメータが一定に保たれている場合、マイクロ波電力Pを増加させ、あるいは粒子の正味の面積(mpa)を減少させることで、粒子温度Tpが上昇する。
【0152】
【0153】
反応速度rAは粒子温度Tpにつれて指数関数的に変化するため、
【0154】
【0155】
の変化は粒子温度に影響を及ぼし、これも反応速度rAに影響を及ぼす。
反応炉12の温度を調節するために温度制御流体が使用される実施形態において、温度勾配ΔTを、温度制御流体によって制御することができる。
【0156】
さらに、反応炉12は、
図7に示されるように、反応生成物がマイクロ波吸収粒子の表面を離れた後に粒子の周囲のバルクスラリー相を通って発泡できるようにすることで、粒子温度における滞留時間をきわめて短くすることができる。第1のステップにおいて、スラリーバルクの温度T
bを有する反応物粒子が、反応物粒子の温度よりも高い温度T
Pを有するマイクロ波吸収粒子の表面に到達する。ステップ2において、反応物粒子の温度がマイクロ波吸収粒子の温度T
Pまで上昇し、反応が生じて、反応生成物が生成される。ステップ3において、反応生成物が放出され、その温度が低下して、スラリーのバルク温度T
bに達する。
【0157】
マイクロ波吸収粒子がバルクスラリー相よりも高い温度にあることに鑑み、特定の化学反応が促進され、マイクロ波吸収粒子の表面においてより速い速度で生じる。反応生成物は気相であり、気泡にて粒子の表面から離れる。生成物を含有する気泡が高温のマイクロ波吸収粒子の表面から離れると、反応粒子の温度は、熱をスラリー相へと放出することによって直ちに低下する。スラリー相に伝達される熱を、(ガスにおける相変化がないと仮定して)以下のように表すことができる。
【0158】
【0159】
式中、
【0160】
【0161】
はバルクスラリー相の質量であり、
【0162】
【0163】
はバルク相の比熱容量(J/kg-K)であり、
【0164】
【0165】
はバルクスラリー相の温度であり、
【0166】
【0167】
はガスの生成速度(kg/s)であり、
【0168】
【0169】
は気相の比熱容量(J/kg-K)であり、
【0170】
【0171】
は反応炉の出口におけるガスの温度であり、
【0172】
【0173】
はジャケットによる熱の除去である。一実施形態においては、
【0174】
【0175】
が最小化されるべきであり、したがって所望の目標は
【0176】
【0177】
である。
上記の式は、マイクロ波吸収粒子と床、すなわち周囲のスラリー相との間の伝導性熱伝達、ならびにスラリーバルクと反応炉12との間の放射および対流熱損失を無視することによって得られる。大部分のエネルギー伝達は、ガス放出に起因すると仮定される。
【0178】
一実施形態において、目的は、スラリーバルクとマイクロ波吸収粒子の表面との間の所望の温度勾配を維持するために、反応炉12内のバルクスラリー相の定常状態条件、すなわち、
【0179】
【0180】
を維持することである。この目的を達成するために、以下の式に従って反応炉から熱を除去しなければならない。
【0181】
【0182】
反応炉12から熱が除去されない場合、以下の状況が発生する。
【0183】
【0184】
式10はTp=Tgを意味する。最良の場合についてTg=Tbであるため、これは、反応炉12から熱を除去しない場合、Tp=Tbとなり、スラリーバルクとマイクロ波吸収粒子との間の勾配が消失することを意味する。
【0185】
したがって、粒子とスラリー相との間の温度勾配を所望の値に維持するために、反応炉12から熱を除去する必要がある。
【0186】
一実施形態において、上述のように、温度制御流体を管状の本体52の壁内で循環させることができる。
【0187】
同じ実施形態または別の実施形態において、反応炉12からさらにエネルギーを吸収することによって温度勾配を維持するために、適切な温度を有する水、または反応炉12によって生成されて再循環および冷却された液体生成物を、反応炉12へと注入することができる。
【0188】
上述したように、反応炉12の始動前および/または始動中に反応炉12を予熱するために、温度制御流体を管状の本体52の壁内に循環させることができる。この場合、温度制御流体は、スラリー相が反応炉12へと供給されたときに固化することがないように、管状の本体52の壁を反応温度に予熱することができる。例えば、スラリー相が約225℃の溶融温度を有する溶融プラスチックで構成される場合、反応炉12を225℃を上回る温度に予熱することができる。
【0189】
一実施形態において、反応炉12の管状の本体52の壁の冷却は、ホットスポットが反応炉12内に生じることがなく、反応炉の構成要素に機械的応力を引き起こすことがないことを保証する。マイクロ波加熱は大量のエネルギーを集中させることができるため、ホットスポットが反応炉の完全性に及ぼす影響を確実に制限することが、重要であり得る。
【0190】
反応炉12が、反応炉12からのガスの流出を可能にするためのガス出口86を備える実施形態においては、ガス流量センサをガス出口86に動作可能に接続して、反応速度の直接的な尺度であるガスの生成速度
【0191】
【0192】
を追跡することができる。ガス流量は、ピトー管またはベンチュリガス流量計などのガスの流量を測定するように構成された任意の適切な装置であってよい。
【0193】
温度制御流体が反応炉12の壁内を循環する実施形態において、少なくとも1つの温度センサおよび少なくとも1つの流量センサを使用して、反応の最中に温度制御流体によって捕捉される熱流束
【0194】
【0195】
を割り出すことができる。上記の熱平衡を使用して、この温度制御流体は、マイクロ波吸収粒子の温度を制御して最適な反応条件を確保することを可能にすることができる。マイクロ波吸収粒子の温度を、熱流束の測定値
【0196】
【0197】
およびガス流量
【0198】
【0199】
を使用して、以下の式に従って決定することができる。
【0200】
【0201】
反応炉12がマイクロ波カプラ14に接続された円形のマイクロ波入口58を備える実施形態において、高温シールによって封止された界面を使用して導波路/カプラにおけるスラリーの逆流を防止することができる。一実施形態において、マイクロ波入口58の直径dは、以下の式d≧c/fを満たし、式中、cは光速であり、fはマイクロ波の周波数である。典型的には、標準的な915MHzのマイクロ波の場合、反応炉の直径はd≧0.32mである。一実施形態において、マイクロ波入口58の円形の形状は、円形のシールによるより良好な封止を可能にし、これは、入口58が非円形の形状を有する場合には、より困難になると考えられる。さらに、界面の円形の形状は、表面電界を下げ、界面に接触する材料の電気絶縁破壊を下回る値にすることも可能にする。例えば、矩形の形状は、界面により高い電界値をもたらし、アーク放電および/またはプラズマを引き起こす可能性があり、最終的に界面に熱衝撃を与え、その後の破壊につながる可能性がある。
【0202】
一実施形態において、マイクロ波入口58は、反応炉12の内部を貫通し、固体の蓄積を防止するように設計された界面の前の特定の領域98を出る。次いで、このマイクロ波入口58は、マイクロ波カプラ界面の表面上の等温状態を確実にするために、充てんレベル66よりも下方のスラリー相の内部に沈められる。一実施形態において、充てんレベル66よりも下方に配置された沈められたマイクロ波入口58は、気泡によってマイクロ波吸収粒子がカプラの界面へと運ばれることを回避し、したがって熱衝撃を防止するため、スラリー相よりも上方に配置された入口よりも好ましい。カプラ界面が気相領域内でスラリー相よりも上方にあり、吸収粒子を運んでいる液体の気泡がカプラの界面の表面に衝突する場合、マイクロ波吸収粒子は、マイクロ波の供給源により近いことによってより多くの熱を吸収でき、運ばれた液体を通常の反応経路に従って分解できるが、気泡によって運ばれた液体が尽きると、もはや周囲を囲む反応物質が存在しないため、マイクロ波吸収粒子の温度が急上昇する可能性がある。これは、マイクロ波カプラ界面に熱衝撃を生じさせ、界面の系統的な故障を引き起こす可能性がある。
【0203】
一実施形態において、カプラの界面を反応スラリー相の充てんレベル66よりも下方に沈めることにより、マイクロ波吸収粒子がカプラの界面に衝突するときに、マイクロ波吸収粒子が実質的に常に反応物質によって取り囲まれ、したがってカプラの界面に衝突するマイクロ波吸収粒子の温度が急上昇して界面に熱衝撃を引き起こすことがないことを保証にすることができる。
【0204】
一実施形態において、マイクロ波入口58の角度は、カプラ界面の表面上へのマイクロ波吸収粒子および気泡の蓄積を回避するように選択される。マイクロ波入口58は、カプラ界面の表面が管状の本体52に平行になり、したがって粒子および気泡の蓄積のリスクが最小限に抑えられるように、管状の本体52に直交してもよい。
【0205】
一実施形態において、界面がスラリー相に近いほど、システムの調整が容易になる。さらに、高いマイクロ波エネルギー密度はアーク放電につながる可能性があるため、界面をスラリーにより近くすると、高いエネルギー密度の領域を最小限に抑えられる。したがって、カプラ侵入領域98を最小限に抑えることが重要になり得る。いくつかの実施形態において、カプラ侵入領域98は、カプラの界面の前方の固体の蓄積を防止するように設計される。例えば、界面入口の周りの45°の面取りが、カプラの界面の周りの固体の蓄積を防止するうえで充分であり得る。
【0206】
一実施形態において、マイクロ波吸収粒子および気泡が蓄積してホットスポットを形成し得る表面を排除するために、カプラは、カプラ侵入領域98の反応炉内壁と同一平面上にあってよい。
【0207】
一実施形態において、反応は、液化されない固体副生成物を生成する可能性がある。さらに、供給組成物が、反応炉内で増大し得る材料の蓄積を引き起こす可能性がある。したがって、反応炉における不溶性固体の蓄積を防止するために、ろ過または遠心分離システムが、スラリーを再循環させて固体微粒子を除去することができる。反応炉12のスラリー抽出ポート84が、スラリー相に懸濁したマイクロ波吸収粒子が抽出されてフィルタによって除去されることを防止するスクリーンを含む。スクリーンのメッシュサイズが、バルク中に懸濁したマイクロ波吸収粒子のサイズよりも小さくなければならないことを、理解すべきである。一実施形態において、反応炉の直径は、最大で約18インチに等しくてよく、ガス出口86の直径は、固体副生成物粒子がガスによって反応炉12から運ばれることを促進するために、約3インチに抑えられてよい。
【0208】
一実施形態において、反応は、スラリー相内に可溶性の副生成物を生じさせる可能性がある。さらに、供給組成物が、スラリー相に可溶であり、化学反応の最中に液化しない物質を含む可能性があり、そのような物質が反応炉12内に蓄積し得る。反応炉における可溶性成分の蓄積を防止するために、パージ流が、反応炉内の可溶性汚染物質のレベルを制御するために、一定の流量のスラリー相を引き出すことができる。このパージラインを、必要に応じて反応炉12を空にするために使用することもできる。また、特定の滞留時間が必要とされる場合に、スラリー相の滞留時間を制御するために使用することもできる。
【0209】
反応炉12においてスラリー相の充てんレベルを維持すべき実施形態において、スラリー相のレベル、すなわちスラリー相の上面の位置を、反応炉12の上部と反応炉12の下部との間の差圧を測定することによって明らかにすることができる。
【0210】
一実施形態において、反応によって生じたガスは、段階凝縮システムにおいて冷却され、凝縮システムの第1段階において揮発性の低い留分の選択的凝縮が行われ、凝縮システムの第2段階において揮発性の高い留分のさらなる凝縮が行われる。凝縮システムにおける段階の数がさまざまであってよいことを、理解すべきである。一実施形態においては、選択的な留分を反応炉12へと再循環させて、反応炉12における滞留時間を長くし、あるいは反応炉12を複数回通過させることで、所望の生成物の全体的な収率を高めることができる。
【0211】
一実施形態において、反応炉は、ガス中の重質留分を反応炉により容易に再び還流させるために、反応炉12の上部に設置できる部分還流システムを備える。
【0212】
一実施形態において、反応炉12は、導波路における可燃性ガスの蓄積を防止するために、始動前の反応炉内およびカプラ内に閉じ込められた空気を除去するためのさまざまなチッ素パージを備える。
【0213】
一実施形態において、反応炉12は、過圧保護システムを備える。一実施形態において、反応炉は、より小さい通気装置の使用を可能にするために、動作温度において100 psigの定格である。
【0214】
上述したように、反応炉12に攪拌装置を設けることができる。
図8が、機械式の攪拌装置102を備えた反応炉100の一実施形態を示している。反応炉100は、マイクロ波エネルギーの作用下で内部において化学反応および/または物理的反応を実行するように構成され、その構造および構成は、反応炉12の構造および構成と同様である。
【0215】
反応炉100は、第1の端部または下端部106と第2の端部または上端部108との間を長手軸に沿って延びている管状の本体104と、下部本体またはフロア110と、上部本体またはカバー112とを備える。管状の本体104は、熱分解されるべき生成物を受け入れるキャビティ114を定める。下部本体110は、管状の本体104の下端部106に固定され、管状の本体104の下端部106を閉じるようにキャビティ114の下端部の断面サイズに少なくとも等しいサイズを有する。上部本体112は、管状の本体104の上端部108に固定され、管状の本体104の上端部108を閉じるようにキャビティ114の下端部の断面サイズに少なくとも等しいサイズを有する。下部本体110および上部本体112が管状の本体104に固定されると、このアセンブリは、熱分解されるべき生成物が配置されるエンクロージャを形成する。
【0216】
攪拌装置102は、シャフト120と、第1の1対のブレード122と、第2の1対のブレード124と、モータ126とを備える。第1の1対のブレード122および第2の1対のブレード124は、シャフトの長さにおける異なる位置で、シャフトに固定されている。シャフト120は、反応炉100を長手方向に貫いて延び、モータ126は、反応炉100の上部本体112の上部に取り付けられている。シャフト120の下端部は、下部本体110に回転可能に固定され、シャフト120の上端部は、モータ126に動作可能に接続され、したがってモータ126の動作によって長手軸を中心とするシャフト120の回転が始まる。シャフト120の回転が、反応炉100内に存在するスラリー相を攪拌するために、ブレード122および124の回転を生じさせる。
【0217】
図示の実施形態において、下部本体110および上部本体112の各々は、それぞれのシャフト受け入れ開口部を備える。シャフト120の下端部は、下部本体110のシャフト受け入れ開口部を通って延び、固定体128を介して下部本体110に回転可能に固定される。シャフト120の上部は、上部本体112に存在するシャフト受け入れ開口部を通って延び、シャフト120の上端部は、モータ126に動作可能に固定される。キャビティ114が気密に閉じられ、流体が下部本体110および上部本体112のシャフト受け入れ開口部を介して反応炉100から出ることができないように、下部本体110および上部本体112の各々のシャフト受け入れ開口部に少なくとも1つの第1のシールを配置して、シャフト120を下部本体110および上部本体112に密封の様相で接続できることを、理解すべきである。
【0218】
一実施形態において、シャフト120の長さにおける第1の1対のブレード122の位置は、シャフト120が反応炉100に固定されたときにブレード122が反応炉100内に存在するスラリー相に物理的に接触するように選択される。同様に、シャフト120の長さにおける第2の1対のブレード124の位置も、ブレード124が反応炉100内に存在するスラリー相に物理的に接触するように選択される。一実施形態において、反応炉100は、反応炉100内の生成物の所望のレベルまたは生成物の最小レベルを表す充てんレベルを備える。この場合、シャフト120の長さにおける第1および第2のブレード122および124の位置を、第1および第2のブレードが充てんレベルよりも下方、すなわち充てんレベルと下部本体110との間に位置するように選択することができる。
【0219】
反応炉12の場合、熱分解されるべき物質を反応炉12へと注入するための入口74は、下部本体54に配置されているが、反応炉100は、物質を反応炉100へと注入するための入口129を、管状の本体104の壁に配置して備えている。反応炉100が充てんレベルを備える実施形態において、入口129の位置は、充てんレベルよりも下方となるように選択されてよい。
【0220】
攪拌装置102が、さらなる構成要素を備えてよいことを、理解すべきである。例えば、
図8に示されるように、攪拌装置102は、シャフト受け入れ開口部の周りで上部本体112の上面に固定され、上部本体112から遠ざかるように延在する管状体130を備えることができる。この管状体130の上端に、モータ126が固定される。シャフト120は、管状体130によって定められた空洞内に延在し、上端部がモータ126に接続される。例えば、攪拌装置102は、シャフトを受けるために管状体130内に配置された少なくとも1つの軸受132をさらに備えることができる。
【0221】
ブレード122および124の数、形状、およびシャフト120の長さにおける位置が、さまざまであってよいことを理解すべきである。例えば、ブレード122またはブレード124が省略されてもよい。別の例において、攪拌装置102は、シャフト120に固定された単一のブレードを備えてもよい。
【0222】
以下で、生成物を熱分解するための方法150を説明する。この方法を、マイクロ波熱分解反応炉などの任意の適切な熱分解反応炉を使用して実施することができる。しかしながら、方法150が、マイクロ波熱分解反応炉における使用に限定されないことを、理解すべきである。
【0223】
ステップ152において、生成物の熱分解が開始され、これにより、部分的に熱分解された生成物が得られる。生成物が熱分解反応炉に導入され、熱分解プロセスを開始させるために加熱される。例えば、熱分解されるべき生成物を反応炉12または100などのマイクロ波熱分解反応炉に導入し、マイクロ波を発生させて、マイクロ波熱分解反応炉に結合させ、熱分解プロセスを開始させる。
【0224】
ステップ154において、部分的に熱分解された生成物の一部が、反応炉から抽出される。ステップ156において、抽出された部分的に熱分解された生成物が、熱分解されるべき追加の生成物と混合されることにより、混合された生成物が得られる。例えば、抽出された生成物および熱分解されるべき追加の生成物を、混合タンクに注入することができる。次いで、混合された生成物がステップ158において熱分解され、最終生成物が得られる。混合された生成物は、熱分解反応炉に注入され、加熱によって熱分解される。
【0225】
一実施形態において、方法150は、混合ステップ156において、部分的に熱分解された生成物と熱分解されるべき生成物との混合物を所望の温度に加熱することをさらに含む。所望の加熱温度を、混合された生成物の所望の粘度の関数として選択することができる。
【0226】
一実施形態において、熱分解方法150は、マイクロ波を使用して熱分解プロセスを実行し、熱分解されるべき生成物はポリマーを含む。したがって、方法150は、マイクロ波熱分解プロセスの性能の改善を可能にする。
【0227】
一実施形態において、方法150は、例えば汚染物質を除去するために、抽出ステップ154の後かつ混合ステップ156の前に、抽出された部分的に熱分解された生成物をろ過するステップをさらに含む。
【0228】
既存のポリマー溶解システムは、ポリマーを選択的に溶解させるために溶媒を使用する。溶液をろ過して未溶解物(例えば、汚染物質)を除去する。ろ液を回収し、溶媒を除去して、回収されたポリマーを沈殿させる。溶媒が一部の汚染物質を溶解させ、これらがポリマーと共に沈殿する可能性がある。これらの汚染物質を、何らかの他の方法によってポリマーから除去する必要がある。あるいは、汚染物質は、ポリマーと共に保持されてもよいが、回収されたポリマーの最終用途に悪影響を及ぼす。例えば、回収されたポリマーの食品等級の用途における使用が、妨げられる可能性がある。
【0229】
溶媒の除去工程の最中に、汚染物質も除去され、回収された溶媒に混ざる可能性がある。この場合、例えば蒸留塔を使用して溶媒を精製する必要がある。
【0230】
方法150の混合ステップ156を伴わずにマイクロ波熱分解反応炉を使用する場合、ポリマーは、マイクロ波熱分解反応炉に注入され、解重合を被る。注入されたポリマーの高い粘度が、スラリー相の反応炉内に高い粘度および大きい粘度勾配の領域をもたらす可能性がある。高い粘度は、物質移動および熱伝達を制限し、結果としてマイクロ波カプラにおけるホットスポットおよび熱衝撃をもたらす可能性がある。熱衝撃は、マイクロ波カプラの故障につながる可能性がある。熱分解プロセスから生じる溶媒にポリマーを可溶化させることによってポリマーを事前に調整する方法150の使用は、注入されるポリマーの粘度を低下させることによって、反応炉内に存在するスラリー相におけるホットスポットのリスクを最小化し、最終生成物の品質を改善する。さらに、より低い粘度は、スラリーの注入およびろ過により安価な機器を使用できるようにする。
【0231】
図10が、方法150を実行するための1つの例示的な熱分解システム170を示している。熱分解システム170は、マイクロ波反応炉100と、反応炉100に流体接続された混合タンクと、熱流体の第1の供給源174と、熱流体の第2の供給源176とを備える。第1の流体接続が、マイクロ波反応炉100に含まれるスラリー相の一部を抽出し、抽出したスラリー相を混合タンク172に注入するために、マイクロ波反応炉100と混合タンク172との間に延在する。さらに、第2の流体接続が、混合タンク172に含まれる混合物をマイクロ波反応炉100に注入するために、マイクロ波反応炉100と混合タンク172との間に延在する。
【0232】
熱流体の第1の供給源は、所望の温度に加熱された熱流体を混合タンク172へともたらすことによって混合タンク172の壁の温度を制御するために使用される。熱流体の第2の供給源は、所望の温度に加熱された熱流体をマイクロ波反応炉100へともたらすことによってマイクロ波反応炉100の壁の温度を制御するために使用される。
【0233】
図11および
図12は、混合タンク17
0、ならびに混合タンク170とマイクロ波反応炉100との間の流体接続を示している。
【0234】
システム170におけるマイクロ波反応炉100の使用が例示にすぎないことを理解すべきである。例えば、反応炉12をシステム170において使用することができる。タンク172における混合は、攪拌機(図示せず)および再循環ポンプ182を使用して促進される。反応炉100内に含まれる部分的に熱分解された生成物の一部が、流体接続184を介して混合タンク172に注入される。熱分解されるべき生成物が、ポート180を通って混合タンク172に注入される。部分的に熱分解された生成物および熱分解されるべき生成物は、攪拌機によって一緒に混合される。混合タンク172は、ジャケット付き(すなわち、流体を流すことができる二重壁を備える)であり、断熱されている。供給源174からもたらされる熱流体が、混合タンク172内の混合物の温度を制御するために、ポート186および188を介して混合タンクのジャケットを通って循環する。反応炉100からもたらされる部分的に熱分解された生成物の流れをろ過して、粒子および/または汚染物質を除去することができる。
【0235】
混合された生成物は、流体接続190を介して反応炉100に注入される前に、未溶解および固体の汚染物質を除去するために、フィルタ189によってろ過される。フィルタケーシングの容積およびメッシュサイズが、ろ過されるべき汚染物質の質量分率および物理的サイズに基づいて選択されることを、理解すべきである。
【0236】
一実施形態において、混合タンク内のスラリー粘度は、攪拌機のモータ(図示せず)および再循環ポンプのモータ192が消費する電力を監視することによって測定される。スラリー試料を、オフライン粘度測定のためにポート194を介して抽出することもできる。インライン粘度測定装置を再循環パイプに設置して、スラリー粘度をインラインで測定することも可能である。
【0237】
一実施形態において、混合タンク172内の生成物のレベルは、ポート196において静水圧を測定することによって測定される。注入を、弁198および200を或る程度閉じ、再循環ポンプ182の下流および反応炉供給接続190の上流の圧力を高めることによって行うことができる。別の実施形態においては、接続190に接続された別個のポンプを使用して注入を行うことも可能である。
【0238】
混合タンク172は、排出ポート202を開くことによって完全に空にすることができる。あるいは、再循環ポンプ182を逆モードで動作させ、弁204を閉じ、ポート200を通って排出することによって、混合タンク172を空にすることができる。
【0239】
例えば、システム170を、ポリスチレンを熱分解するために使用することができる。この場合、ポリスチレンは、スチレンオリゴマーと混合される。スチレンオリゴマーは、反応炉100内で生成され、約250~300oCの温度で混合タンク172に注入される。ポリスチレンが、スチレンオリゴマースラリーと混合され、溶解する。混合タンク172内のスラリーの温度は、スチレンオリゴマーの融合温度(すなわち、80~100℃)よりも高い約150℃の温度に維持される。さらに、温度は、迅速なポリスチレンの溶解速度および所望の溶解選択性を有するように制御される。解重合の反応炉から混合タンクへのスチレンオリゴマーの質量流量は固定され、混合タンクの上流の遠心分離機および/またはフィルタを用いて粒子(カーボンブラック粒子など)を除去するためにろ過される。混合タンクへのポリスチレンの質量流量は、混合タンク内の特定のスラリー粘度およびスラリー粘度の特定の増加速度を維持するように制御される。
【0240】
混合タンク攪拌機および再循環ポンプの設計および速度は、デッドゾーンを排除し、均一な混合を促進するように設定される。
【0241】
ポリスチレンは、特定のスラリー粘度および粘度上昇速度を維持する速度で混合タンクに注入される。注入を手動で、または供給システムを用いて自動で行うことができる。注入されるポリスチレンは、固体および溶融形態であってよい。
【0242】
熱流体を、スチレンオリゴマーが液体のままであるように、スラリー温度をスチレンオリゴマーの溶融温度よりも高く維持するために使用される。さらに、スラリー温度は、ポリスチレンの溶解速度を高め、溶解選択性を調整するように制御される。
【0243】
一実施形態において、混合タンク内のスラリーは、混合タンク172内の一定の液体レベルを維持するように制御された速度で反応炉100に注入される。
【0244】
一実施形態において、熱分解システム170は、システム170のさまざまな要素間のポンプを介した生成物の流れを制御するためのコントローラ(図示せず)をさらに備える。
【0245】
上記の説明は、マイクロ波と相互作用してスラリー相を加熱するためにスラリー相内で移動しない少なくとも1つの吸収粒子に言及しているが、吸収粒子は、マイクロ波吸収材料で作られ、反応炉内で固定位置を有する少なくとも1つの物体によって置き換えられてもよい。吸収物体の数、形状、寸法、および位置がさまざまであってよいことを、理解すべきである。例えば、少なくとも1つの吸収ロッドを、反応炉内の固定位置に固定してもよい。吸収ロッドの近位端が反応炉内の下部本体に固定され、反応炉の上部本体に向かって長手方向に延びることができる。吸収ロッドの長さを、吸収ロッドの遠位端が反応炉の充てんレベルに整列するか、あるいは反応炉の充てんレベルよりも下方に位置するように選択することができる。
【0246】
一実施形態において、吸収物体は、ホットスポットによってカプラ界面を損傷させる可能性がないようにカプラから離される。
【0247】
一実施形態において、固定位置の吸収物体の使用は、スラリー相内の攪拌を減少させ、より高い反応温度に達することを可能にできる。
【0248】
上述の本発明の実施形態は、あくまでも例示を意図しているにすぎない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定されるように意図されている。