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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】胎児超音波処理ユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/02 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B8/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021562379
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020061112
(87)【国際公開番号】W WO2020216753
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】19170870.0
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フランク クリストフ フロリアン
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0158407(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276070(US,A1)
【文献】国際公開第2011/155168(WO,A1)
【文献】特開昭61-272035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したドップラー超音波データ内の個別の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングに使用する超音波処理ユニットであって、前記超音波処理ユニットは、
定義された高さ及び深度を有する、被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信し、
前記少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する前記入力ドップラー超音波データから超音波信号を抽出し、前記超音波信号の固有の統計的特性又は特徴に対応する前記超音波信号の統計的構造の定義された尺度を決定し、
胎児心拍数を測定するための超音波信号を収集する前記被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用し、前記選択アルゴリズムは、前記少なくとも1つのトライアル深度領域の統計的構造の決定された前記尺度に基づいて、また、前記新しい記録領域から取得される信号の統計的構造の前記尺度を最大化することに基づいて、前記新しい記録領域を選択する、超音波処理ユニット。
【請求項2】
前記選択アルゴリズムは、複数のトライアル深度領域から超音波信号を収集し、各トライアル領域信号について統計的構造の前記定義された尺度を決定することを含む、請求項1に記載の超音波処理ユニット。
【請求項3】
前記選択アルゴリズムは、各トライアル領域信号について導出された統計的構造の前記尺度の比較を含む、請求項2に記載の超音波処理ユニット。
【請求項4】
前記比較は、異なる超音波信号についての統計的構造の前記尺度を相互に比較することを含むか、及び/又は、各トライアル深度領域の統計的構造の前記尺度と基準深度領域信号について導出されたさらなる尺度とを比較することを含む、請求項3に記載の超音波処理ユニット。
【請求項5】
前記選択アルゴリズムは、連続するトライアル深度領域から信号を反復的に収集し、各々について統計的構造の尺度を導出し、導出された前記尺度と以前にトライアルされた1つ以上のウィンドウについて導出された尺度とを比較することを含む反復プロセスを含む、請求項2に記載の超音波処理ユニット。
【請求項6】
所与の信号の統計的構造の前記尺度は、前記信号の確率密度関数の1つ以上の特徴、前記信号のパワースペクトル密度関数の1つ以上の特徴、及び/又は前記信号の分散の非定常性の尺度を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波処理ユニット。
【請求項7】
統計的構造の前記尺度は、尖度若しくはその派生物、ネゲントロピー、自己共分散、自己共尖度のうちの1つ以上の近似値を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の超音波処理ユニット。
【請求項8】
使用中、前記ドップラー超音波データを取得するために、また、超音波トランスデューサユニットの取得設定を調整して、超音波信号が取得される深度領域を調整するために、前記超音波トランスデューサユニットに動作可能に結合可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波処理ユニット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波処理ユニットと、
前記超音波処理ユニットに動作可能に結合されて、前記超音波処理ユニットに前記ドップラー超音波データを提供する1つ以上の超音波トランスデューサと、
を含む、超音波装置。
【請求項10】
1つ以上の超音波トランスデューサは、取得される前記ドップラー超音波データの深度ウィンドウを決定するための調整可能な取得設定を有する、請求項9に記載の超音波装置。
【請求項11】
超音波プローブユニットを含み、前記超音波プローブユニットに、前記超音波処理ユニット及び前記1つ以上の超音波トランスデューサが組み込まれている、請求項9又は10記載の超音波装置。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波処理ユニットと、
使用中、超音波トランスデューサユニットに接続するための接続インターフェースと、
を含む、患者モニタリングシステム。
【請求項13】
前記接続インターフェースに結合された超音波トランスデューサユニットをさらに含む、請求項12に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項14】
使用中、接続された超音波トランスデューサユニットによる超音波データの取得を制御するコントローラをさらに含む、請求項12又は13に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項15】
受信したドップラー超音波データ内の個別の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングに使用する超音波処理方法であって、前記方法は、
定義された高さ及び深度を有する、被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信するステップと、
前記少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する前記入力ドップラー超音波データから超音波信号を抽出し、前記超音波信号の固有の統計的特性又は特徴に対応する前記超音波信号の統計的構造の定義された尺度を決定するステップと、
胎児心拍数を測定するための超音波信号を収集する前記被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用するステップと、
を含み、
前記選択アルゴリズムは、前記少なくとも1つのトライアル深度領域の統計的構造の決定された前記尺度に基づいて、また、前記新しい記録領域から取得される信号の統計的構造の前記尺度を最大化することに基づいて、前記新しい記録領域を選択する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ドップラー超音波データ内の個々の心拍数信号を特定するための超音波処理ユニットを提供する。
【背景技術】
【0002】
電子胎児モニタリング(EFM)は、妊娠中及び陣痛中の胎児の脈拍数などのバイタルサインを記録するさまざまな方法を含む。EFMシステムで一般的に使用される方法は、ドップラー超音波による胎児心拍数(FHR)の検出である。
【0003】
これは、通常、母体腹部にドップラー超音波トランスデューサを配置し、トランスデューサが放出する超音波パルスによって覆われるボリューム内に胎児脈拍数のソース(胎児心臓又は大きな胎児動脈など)があるようにトランスデューサの位置を調整することによって行われる。送信された超音波パルスは、動く内部構造から反射される。反射信号の周波数シフト(ドップラーシフト)を検出することによって、胎児脈拍信号が生成される。これは次にEFMシステムによって分析され、検出された胎児脈拍数が表示及び/又は記録され得る。
【0004】
この目的に使用される超音波(US)ドップラートランスデューサは、通常、合焦されていない、ほぼ円筒形の超音波ビーム照射野を使用する。ビームボリュームの範囲は、特性受信時間ウィンドウによって画定される。USトランスデューサは、このウィンドウ中に、任意の動く解剖学的構造から反射信号を取得するように設定されている。
【0005】
特に、通常、超音波トランスデューサは、超音波パルスを生成する送信モードと、前に放出された超音波パルスの反射を受信する受信モードとの2つのモードを素早い連続で切り替える。待ち時間又は中断期間が間にあってもよい。
【0006】
送信フェーズの終了から受信フェーズの開始までの待ち時間を修正することによって、及び、送信フェーズ又は受信フェーズの持続時間を修正することによって、反射超音波の受信を特定の深度範囲に限定することができる。これは、例えば、受信を1つ以上の脈拍信号ソースを含む深度に限定し、脈拍信号ソースを含まないが、記録信号のノイズレベルに影響する深度範囲を除外するために使用できる。
【0007】
信号が記録される深度範囲は、「ウィンドウ」とも呼ばれる。ウィンドウは通常、トランスデューサが信号を受信できる全深度範囲(「全超音波視野」)のサブセットである。
【0008】
図1に深度ウィンドウの調整プロセスが示されている。図1には、さまざまな深度での胎児領域のUS観察が概略的に描かれている。図1(a)には、深い観察領域が概略的に描かれ、図1(b)には、浅い観測領域が描かれている。図1(a)では、超音波トランスデューサ12の受信ウィンドウのタイミング及び持続時間は、より高い深度からUS反射が検出されるように、US送信のタイミング及び持続時間に関連して調整されている。結果として、より深い観測ボリューム14が得られる。逆に、図1(b)では、受信ウィンドウは、より浅い深度からのUS反射が検出されるように調整され、より浅い深度のボリューム14がもたらされる。
【0009】
通常、超音波ウィンドウのサイズ及び深度を調整するためのアルゴリズムは、受信ウィンドウが小さいほど、記録信号のノイズが少なくなるため、ウィンドウのサイズをできるだけ小さくしようとする。例えば、米国特許第4984576号に1つのそのような深度選択アルゴリズム例が説明されている。
【0010】
このような従来技術のEFMユニットは、反復的なアプローチを使用して、使用する最適な深度範囲を決定する。特に、反復的なアプローチでは、最大量の信号強度を含む深度範囲を探す一方で、ノイズの原因となる領域や信号成分が弱い領域は除外される。図1では、例えば、図1(b)のより浅い深度範囲は、胎児心臓を包含しているためより強い信号を提供し、胎児心臓の下の深度に存在し得るノイズは除外される。
【0011】
反復アプローチでは、典型的に、開始深度と停止深度とを独立して調整できる2つの別個の受信ウィンドウを使用し得る。実際の信号取得には、1つのウィンドウが使用される。もう1つのウィンドウは、より広い深度範囲を含めることで信号強度が増加するかどうか、及び/又は深度範囲を減少させると信号強度が大幅に低下するかどうかを調べるために使用される。典型的には、ウィンドウが小さいほど、ノイズが減少するので、多くの場合、できるだけ小さい受信ウィンドウ範囲が好まれる。
【0012】
これらのような従来技術の深度選択アルゴリズムは、全超音波視野内に1つの脈拍数ソースしかない場合は最適に機能する。しかしながら、ビーム照射野の向き及びサイズによっては、2つ以上の脈拍信号ソース(1つは母体脈拍数に対応し、もう1つ(複数の妊娠の場合は複数)は胎児脈拍数ソースに対応する)が視野に存在する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の反復的なアプローチでは、トランスデューサユニットの視野内で捕捉された異なる脈拍信号ソース(例えば2つの胎児心臓、又は母体心臓と胎児心臓)を区別することができない。むしろ、典型的には、計算にすべての検出可能な脈拍数ソースを含めて、これらすべてを選択した深度ウィンドウ内に組み込もうとする。結果として、調整手順によって、2つ以上の脈拍数ソースの混合体であるドップラー超音波信号が取得され得る。この混合体は、特に2つの脈拍数ソースの振幅又は電力が類似している場合は分析が困難である。これにより、胎児心拍数の記録のドロップアウトや誤った心拍数の記録がもたらされる可能性がある。
【0014】
胎児心拍数(FHR)値の可用性が少ないことやFHR値の誤りにより、胎児の健康状態が損なわれていることの診断の遅延や、そのような状態の誤った診断がもたらされる可能性がある。
【0015】
したがって、入力データ内の異なる心拍数ソースを区別できる改良されたドップラー超音波処理アプローチを提供することが利点となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0017】
本発明の一態様による例では、受信したドップラー超音波データ内の個々の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングにおいて使用する超音波処理ユニットが提供されている。ユニットは、
定義された高さ及び深度を有する被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信し、
少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する超音波データから超音波信号を抽出し、信号の統計的構造の特定の尺度を決定し、
胎児心拍数を測定するために超音波信号を収集する被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用する。選択アルゴリズムは、トライアル領域の統計的構造の決定された尺度に基づいて、また、新しい記録領域から取得される信号の統計的構造の尺度を最大化することに基づいて、ウィンドウを選択する。これにより、このアルゴリズムは、単一の(胎児)心拍数ソースのみを含む新しい記録深度領域を選択しようとする。
【0018】
本発明の実施形態は、統計的信号処理における技術の使用に基づいている。実施形態は、信号の1つ以上の統計的特性の分析に基づいて、超音波(US)信号を収集する記録深度ウィンドウを調整することに基づいている。
【0019】
統計的構造の尺度は、好ましくは超音波信号の固有の統計的特性又は特徴に対応している。
【0020】
統計的信号処理は、信号を確率過程として扱い、それらの統計的特性を利用して信号処理タスクを行ったり、情報を導出したりするアプローチである。統計的技術は、信号処理応用で広く使用されている。例えば、画像処理の異なる分野では、画像の撮影時に発生するノイズの確率分布をモデル化し、このモデルに基づいて作成された技術を使用して、結果の画像のノイズを低減する。例えば、次を参照されたい。Scharf,Louis L.(1991)。Statistical signal processing:detection,estimation,and time series analysis。ボストン:Addison‐Wesley。
【0021】
本発明の実施形態は、統計的構造の尺度を決定することを含む。統計的構造の尺度は、好ましくは超音波信号の固有の特性である。したがって、好ましくは、任意の外部エンティティ(例えば、任意の外部信号、情報、又は参照)を参照することなく、超音波信号のみを参照(その処理に基づくなど)して決定される。
【0022】
次に説明するように、採用される特定の尺度にはさまざまなオプションがある。一般に、統計的構造の尺度は、信号の統計的特性又は特徴を指す。これは、信号の統計的な構造性(statistical structuredness)(統計的構造の度合い)を指す。統計的構造の尺度は、基本的には信号の非ランダム性の尺度又は統計的パターニングの度合いを指す。例えば、信号の「統計的構造の尺度」という用語と「非ランダム性の尺度」という用語とは同じ意味で使用され得る。
【0023】
さらなる説明として、A.Hyvrainen、J.Karhunen、及びE.Ojaによる著書「Independent component analysis」では、例えば、信号の統計的な「構造」に関する3つの関連するが、同一ではない概念について説明されている。
【0024】
構造の第1の概念は、同じ平均及び分散を有する等価正規分布(又は「ガウス分布」)からの信号の確率分布関数の不同の度合いに関連する。このタイプの統計的構造は、「非ガウス性」と呼ばれ得る。
【0025】
統計的構造の第2の尺度は、時系列である信号、すなわち、既知の時点で取られていることから順序付けられているサンプルに適用される。この場合、統計的構造(又は非ランダム性)は、特定の点における値が、既知である前の値から少なくとも部分的に予測可能である度合いに対応する。構造のこの尺度は、「線形自己共分散によって与えられる」構造と呼ばれ得る。統計的構造のこの尺度はまた、例えば、パワースペクトル密度によっても捕捉される。
【0026】
統計的構造の第3の尺度も、時系列に対応する信号に適用されるが、特に、分散の非定常性を示す、すなわち、時間の経過とともに分散がゆっくりと変化する信号に適用される。ここでは、統計的構造の尺度は、前のサンプルグループに基づいて分散の変化を予測できる度合いに対応する。ここでは、1つの単一のサンプルの値を前の値から予測することはできないが、より大きな連続するサンプルグループを考慮することで、分散の変化を追跡できる。
【0027】
したがって、統計的構造のこれらの尺度は、それぞれ信号の統計的パターニング又は非ランダム性の度合いに関連する。しかしながら、それぞれは、実質的に他のものから独立している。統計的構造の各尺度は、他の尺度の存在を暗示するものでも、前提とするものでもない。信号は、一般に、1つ、2つ、又は3つのすべてのタイプの統計的構造を示し得る。
【0028】
特定の例では、信号構造の導出された尺度は、1つの主要なタイプの統計的構造に関連若しくは対応しているか、又は、例えば、信号に存在するすべてのタイプの構造に関連若しくは表現していてもよい。
【0029】
本発明は、信号の統計的構造の尺度によって、信号振幅/強度/電力よりも超音波受信ウィンドウ(深度領域)のパラメータがよりうまく決定されるやり方を提供し、電子胎児モニタリング(EFM)システムが、複数の独立した脈拍数ソースが可能な超音波視野に存在する場合でも、超音波受信ウィンドウには1つの脈拍信号ソースのみが含まれるように、深度ウィンドウの高さ及び深度のパラメータを調整することが可能になるという洞察に基づいている。
【0030】
信号の統計的構造は、信号の異なる特定の特性若しくは特徴、又は異なる表現の特徴で表すことができる。それは、例えば、確率密度関数、線形自己共分散、パワースペクトル密度関数、信号の分散の非定常性などで表すことができる。これらは例に過ぎず、さらなる例を以下に説明する。
【0031】
信号の強度ではなく、信号構造の統計的尺度に基づく基準を使用して、トライアル超音波受信ウィンドウ信号を分析することは、複数の独立した脈拍数ソースを含む深度ウィンドウを選択する傾向がある従来技術の選択アルゴリズムの上記の問題を解決する。前述のとおり、この問題は、既知のアルゴリズムが信号強度をキーパラメータとして使用し、そのため、信号強度が高いが、これはおそらく複数の脈拍ソースが存在することに起因しているウィンドウにつながることから発生する。
【0032】
この問題を回避するには、(好ましくは固有の)統計的特徴(特に、取得された信号の統計的構造又は非ランダム性の度合い)を代わりに使用する。これにより、電子胎児モニタリングシステムは、いくつかのソースが視野全体に存在していても1つの脈拍信号ソースのみが含まれるように超音波受信ウィンドウパラメータを設定し、あいまいさを伴わずに脈拍数を導出できるドップラー超音波信号を記録できる。
【0033】
選択アルゴリズムによって行われる手順にはさまざまなオプションが可能である。
【0034】
1つのセットの実施形態では、処理ユニットは、複数のトライアル深度領域から超音波信号を収集し、選択アルゴリズムは、それぞれについて統計的構造の尺度を決定する。
【0035】
処理ユニットは、新しい記録ウィンドウの高さ及び深さに到達するための比較プロセスを行う。各信号について統計的構造の同じ尺度が計算されるため、尺度を直接比較できる。
【0036】
比較プロセスは、さまざまな超音波信号の統計的構造の尺度を相互に比較することを含み得る。信号が最大値の尺度を有する深度領域が、新しい記録領域又はウィンドウとして選択され得る。
【0037】
あるいは、比較プロセスは、各尺度と、基準ウィンドウ信号について導出された尺度とを比較することを含んでもよい。ここでも、この比較に基づいて、基準と比較して信号が最大値の統計的構造の尺度を達成するウィンドウを新しい記録領域又はウィンドウとして選択できる。
【0038】
さらに又はあるいは、選択アルゴリズムは、連続するトライアル深度領域から信号を反復的に収集し、各々について統計的構造の尺度を導出し、導出された尺度と以前にトライアルされた1つ以上のウィンドウについて導出された尺度とを比較することを含む反復プロセスを行い得る。これは、信号が異なる深度領域から一度に1つずつ収集され、各々の収集後に分析が行われるという点で上記のアプローチとは異なる。上記のアプローチでは、異なる深度領域から複数の信号が収集された後に、例えば、グループ全体を使用して比較プロセスが行われる。
【0039】
選択アルゴリズムは、超音波データを収集する1つ以上のトライアル深度領域のうちから新しい記録領域を選択することを含み得る。
【0040】
上記の例では、複数のトライアル深度領域から超音波信号を収集することについて言及しているが、いくつかの場合では、新しい深度領域の選択は、1つのトライアル深度領域のみからのデータに基づいていてもよい。
【0041】
例えば、統計的構造の尺度の事前に定義された閾値が事前に記憶されていてもよい。少なくとも1つのトライアル深度領域について抽出された超音波信号について導出された統計的構造の尺度と、事前に定義された閾値とを比較できる。選択アルゴリズムは、トライアル深度領域の統計的構造の尺度が、事前に定義された閾値を満たすか、超えているか、又はその一部の定義された近接範囲内にあるかに応じて、トライアル深度領域を選択し得る。
【0042】
事前に定義された閾値は、超音波信号の統計的構造の尺度を最大化すると推定される閾値として予め計算されていてよい。つまり、トライアル深度領域の統計的構造の尺度が閾値を満たすか、その定義された近接範囲内にある場合、統計的構造の最大尺度であるか、それに近い可能性が高い。これは、例えば、経験的なテストに基づいていてもよい。
【0043】
事前に定義された閾値は、基準深度領域について予め取得された統計的構造の尺度に基づいていてもよい。例えば、上記の基準深度領域は、統計的構造の尺度が予め決定されている領域であり、少なくとも1つのトライアル深度領域から導出された統計的構造の尺度をこの事前に記憶された尺度と比較して、新しい記録領域の深度及び高さが選択される。
【0044】
上記は、可能な例の非限定的な選択のみを表している。
【0045】
各信号について計算される統計的構造の測定には、さまざまなオプションが可能である。
【0046】
所与の信号の統計的構造の尺度には、その信号の確率密度関数の1つ以上の特徴、その信号の線形自己共分散の1つ以上の特徴、その信号のパワースペクトル密度関数の1つ以上の特徴、及び/又はその信号の分散の非定常性の尺度が含まれ得る。
【0047】
上記のオプションの各々について、次のセクションで詳しく説明する。
【0048】
統計的構造の尺度には、尖度若しくはその派生物、ネゲントロピー、自己共分散、自己共尖度のうちの1つ以上の近似値が含まれ得る。これらのオプションについて、次のセクションで詳しく説明する。
【0049】
超音波処理ユニットは、使用中、ドップラー超音波データを取得するために、また、トランスデューサユニットの取得設定を調整して、超音波信号が取得される深度領域を調整するために、超音波トランスデューサユニットに動作可能に結合可能であり得る。
【0050】
取得設定には、超音波トランスデューサユニットに含まれる超音波トランスデューサの送信パルスの開始タイミング及び停止タイミング、及び持続時間、並びに受信ウィンドウが含まれ得る。
【0051】
本発明のさらなる態様による例は、上記又は以下に説明されている例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項による超音波処理ユニットと、超音波処理ユニットに動作可能に結合されて、超音波処理ユニットにドップラー超音波データを提供し、任意選択で、取得される超音波データの深度ウィンドウを決定するための調整可能な取得設定を有する1つ以上の超音波トランスデューサとを含む超音波装置を提供する。
【0052】
あるいは、特定の深度ウィンドウを選択するためのデータのゲーティングは、超音波トランスデューサユニットにおいてローカルではなく、処理ユニットによって行われてもよい。
【0053】
装置は、超音波プローブユニットを含んでもよく、プローブユニットに、超音波処理ユニット及び1つ以上の超音波トランスデューサが組み込まれている。プローブユニットは、ハンドヘルド超音波プローブであってもよい。処理ユニットは、プローブ内に統合されているため、信号処理はプローブ内でローカルに行われる。
【0054】
プローブユニットは、例えば、ハウジングを有してもよく、超音波処理ユニット及び1つ以上の超音波トランスデューサはハウジング内に含まれている。
【0055】
本発明のさらなる態様による例は、上記又は以下に説明されている例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項による超音波処理ユニットと、使用中、超音波トランスデューサユニットと接続するための接続インターフェースとを含む患者モニタリングシステムを提供する。
【0056】
接続インターフェースは、有線コネクタであっても、無線超音波プローブに接続するための無線接続インターフェースであってもよい。
【0057】
患者モニタリングシステムはさらに、接続インターフェースに結合された超音波トランスデューサユニットを含み得る。
【0058】
トランスデューサユニットは、例えば超音波プローブである。
【0059】
超音波トランスデューサユニットは、送信/受信ユニットのみであってもよい。すなわち、超音波信号を送信及び検知するための1つ以上の超音波トランスデューサを含む。ここでは、超音波処理ユニットは、1つ以上の異なる深度領域の信号を分離するために、トランスデューサユニットから出力されたアナログ信号のデジタル化及び復調のための構成要素を含むすべての信号処理構成要素を含む。この場合、アナログ信号はトランスデューサユニットから超音波処理ユニットに通信インターフェースを介して通信される。
【0060】
他の例では、超音波トランスデューサユニットは、信号のデジタル化及び復調を行うためのローカル又はオンサイトの信号処理構成要素を追加で含んで、深度チャネルの分離を達成できる。この場合、分離された信号チャネルを表す結果として得られるデジタルデータが、超音波トランスデューサユニットから超音波処理ユニットに通信される。
【0061】
患者モニタリングシステムは、少なくとも、超音波トランスデューサユニット(例えば超音波プローブ)が接続可能であるベースステーション又はベースユニットを含み得る。ベースステーションは、超音波処理ユニットによって行われた処理の結果を表示するディスプレイを含み得る。
【0062】
患者モニタリングシステムはさらに、使用中、接続されたトランスデューサユニットによる超音波データの取得を制御するコントローラを含み得る。
【0063】
コントローラは、超音波トランスデューサユニットの送受信回路を制御して、さまざまな深度を表す超音波信号を取得できる。コントローラは、送信パルス及び受信ウィンドウの持続時間及びその間のタイミングを制御できる。コントローラは、定義された時間ウィンドウにわたる入力ドップラー信号データのゲーティングを制御して、これにより、被検体の組織内の1つ以上の異なる深度領域に対応する信号を分離できる。
【0064】
本発明のさらなる態様による例は、受信したドップラー超音波データ内の個別の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングにおいて使用する超音波処理方法を提供する。方法は、定義された高さ及び深度を有する、被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信するステップと、少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する超音波データから超音波信号を抽出し、信号の統計的構造の尺度を決定するステップと、胎児心拍数を測定するために超音波信号を収集する被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用するステップとを含み、選択アルゴリズムは、トライアル領域の統計的構造の決定された尺度に基づいて、また、新しい記録領域から取得される信号の統計的構造の尺度を最大化することに基づいてウィンドウを選択する。
【0065】
この方法は、例えば、適切なプロセッサ、コントローラ、又はコンピュータによる実施のためのコンピュータ実施方法である。
【0066】
統計的構造の尺度は、好ましくは信号の固有の統計的特性又は特徴に対応している。
【0067】
上記ステップの各々の実装オプション及び詳細は、本発明の装置態様(すなわち、超音波処理ユニット態様)によって行われるステップについて上で提供した説明及び記載に従って理解及び解釈され得る。
【0068】
本発明の装置態様に関して(超音波処理ユニットに関して)上記の例、オプション、若しくは実施形態の特徴又は詳細のいずれかを、本発明の本方法態様に適用する、組み合わせる、又は組み込むことができる。
【0069】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本発明をさらに深く理解し、それがどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0071】
図1図1は、取得信号の深度を繰り返し調整することに基づいて胎児心拍数データを取得するための既知のアプローチを示す。
図2図2は、本発明の1つ以上の実施形態による例示的な処理ユニットによって行われるステップのブロック図である。
図3図3は、1つ以上の実施形態による例示的な超音波システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、図を参照して説明される。
【0073】
詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の記述、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は単なる概略図であり、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0074】
本発明は、超音波胎児モニタリングにおける使用のための超音波処理ユニット及び方法を提供する。処理ユニットは、胎児領域内の1つ以上の初期トライアル深度領域(深度ウィンドウ)に対応するドップラー超音波データを受信する。これらから、各トライアル深度領域の超音波信号が抽出される。深度信号ごとに、信号の統計的構造の少なくとも1つの特定の尺度が計算される。次に、新しいウィンドウから導出される超音波信号の統計的構造の尺度を最大化すると推定されるウィンドウを選択することに基づいて、胎児心拍数信号を取得するための新しい記録ウィンドウが選択される。
【0075】
本発明は、1つの胎児心拍数ソースのみを含む超音波信号を記録するための深度ウィンドウを特定することを目標としている。これにより、不正確さをもたらす複数の心拍数ソースの混合信号の捕捉が回避される。
【0076】
当技術分野において知られている従来のアプローチは、信号の振幅又は電力を最大化しようとすることに基づいて、深度ウィンドウを選択する。しかしながら、これは、複数のソースを有する領域はより高い強度の信号を生成する傾向があるため、これらの既知の選択アルゴリズムによって好まれる傾向があるため、1つの心拍数ソースを分離する目的ではうまくいかない。
【0077】
本発明は、信号の振幅ではなく、信号の統計的構造性の度合い(degree of statistical structuredness)(実際には、信号に起因する統計的な非ランダム性の度合い、又は信号内で特定可能な統計的パターニングの強度)に基づいて新しい深度ウィンドウを選択する点において異なる。1つの心拍数ソースは、心拍数信号の混合体よりも強く統計的に構造化された信号をもたらす。したがって、統計的構造、パターニング、又は非ランダム性の基準は、信号振幅又は電力よりも、心拍数ソースが分離される深度ウィンドウを選択するためのより効果的かつ信頼性の高い基準を提供する。
【0078】
本発明の第1の態様による一例は、受信したドップラー超音波データ内の個々の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングにおいて使用する超音波処理ユニットを提供する。処理ユニットは、使用中にいくつかのステップを行う。
【0079】
図2は、超音波処理ユニットによって行われるステップをブロック図に示している。これらについては、詳細に説明する前に、要点を述べる。
【0080】
超音波処理ユニットは、定義された高さ及び深度を有する被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信する(32)。
【0081】
さらに、超音波処理ユニットは、少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する超音波データから超音波信号を抽出し(34)、信号の統計的構造の定義された尺度を決定する(36)。
【0082】
さらに、処理ユニットは、被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用する(38)。新しい記録領域から胎児心拍数を測定するための超音波信号が収集される。新しい記録領域は、トライアル領域の一部を形成する。選択アルゴリズムは、トライアルウィンドウの統計的構造の導出された尺度に基づいて、また、収集された超音波信号が統計的構造の最大の尺度を持つと推定されるウィンドウを探すことに基づいて、新しい深度ウィンドウ(トライアル領域に対応する前のウィンドウのサブ部分に相当)を選択する。
【0083】
したがって、選択アルゴリズムは、新しい記録深度領域(通常はトライアル深度領域よりも小さい)の高さ及び深度パラメータを特定するために最大化手順を行うことができ、最大化手順は、ウィンドウから導出される信号の統計的構造の尺度を最大化する。これは、1つ以上のトライアル領域の統計的構造の計算された尺度に基づいて行われる。
【0084】
処理ユニットによって行われる方法は、1つ以上のトライアル深度領域の統計的構造の少なくとも1つの事前に定義されたメトリックを導出することに基づいている。これはまた、そこから導出されるUS信号の統計的構造のこの同じ尺度を最大化する記録深度領域を選択することにも基づいている。
【0085】
上で簡単に述べたように、採用される特定の尺度にはさまざまなオプションがある。一般に、統計的構造の尺度は、信号の統計的特性又は特徴を指す。これは、信号の統計的な構造性(統計的構造の度合い)を指す。統計的構造の尺度は、基本的には信号の非ランダム性の尺度又は統計的パターニングの度合いを指す。例えば、信号の「統計的構造の尺度」という用語と「非ランダム性の尺度」という用語とは同じ意味で使用され得る。
【0086】
1つのセットの非限定的な例によって、信号構造の統計的尺度は、歪度、尖度、若しくはその組み合わせなどの高次キュムラントであるか、ネゲントロピー若しくはその近似値などの非多項式量であるか、又は、自己共分散若しくは自己共尖度などの信号の時間構造に関連していてもよい。統計的構造の尺度を使用して、非構造化信号(例えばガウスノイズ又は時間構造のないノイズ)を、あまり構造化されていない信号(例えば脈拍数ソースの混合体)から、ひいては高度に構造化された信号(1つの脈拍数ソース)から区別できる。
【0087】
1つ以上のさらなる非限定的な例では、所与の信号の統計的構造の尺度には、信号の確率密度関数の1つ以上の特徴、信号のパワースペクトル密度関数の1つ以上の特徴、及び/又は信号の分散の非定常性の尺度が含まれ得る。
【0088】
統計的構造のこれらの例示的な尺度のいくつかについて、より詳細に説明する。
【0089】
尖度は、入力信号の確率密度関数から導出される特性である。長さNを有する信号xの尖度の推定値は、
【数1】
を計算することによって得られる。ここで、mは、xの平均値であり、σは、xの標準偏差である。ガウス分布を有する信号xでは、この推定値は、値3に近づくが、非ガウス分布を有する信号は、3よりも大きい又は小さい値を有する。
【0090】
したがって、推定値から3を減算してから2乗すると、ガウス分布を有する信号の場合はゼロの量、非ガウス分布を有するほとんどの信号の場合は非ゼロの量がもたらされる。したがって、この量は、信号の統計的構造の尺度として理解され得る。つまり、信号は、値が大きいほど、正規分布から逸脱しており、したがって、より非ランダムである、すなわち、統計的に構造化されている。
【0091】
文献では、[Kurtosis(x)-3]という用語は、「過剰尖度」と呼ばれることもある。しかし、この用語は、他の特定の文献では単に「尖度」と呼ばれることもある。
【0092】
この基準(尖度)は、信号xの確率密度関数に関連している。
【0093】
統計的構造のさらなる例示的な尺度としては、ネゲントロピーがある。ネゲントロピーもまた、信号の確率密度関数に関連している。信号xのネゲントロピーJの推定値は、
【数2】
を計算することによって得られる。
【0094】
この近似値は、例えば、A.Hyvrainen、J.Karhunen、及びE.Ojaによる著書「Independent component analysis」に記載されている。
【0095】
この近似値及び上で概説された尖度の推定値は、計算における信号xの3又は4乗の使用による信号における外れ値に対してやや敏感であることに留意されたい。
【0096】
上記の式では、任意選択で初項を省略できる。これは、任意の対称確率分布の場合はゼロであるからである。これにより、過剰尖度の2乗値に基づいて1つの項がもたらされる。これは、ネゲントロピーの最も単純な推定量と考えられ、例示的な実施形態において統計的構造の尺度として使用され得る。
【0097】
ネゲントロピーには、ガウス分布を有する信号の場合はゼロであり、非ガウス分布を有する信号の場合はゼロより大きいという特性がある。さらに、その非ゼロ値は、信号xの確率分布がガウス分布から逸脱する度合いに直接関連して増加する。よって、この尺度は非ガウス性を直接定量化する。したがって、この尺度は信号の統計的構造の直接的な尺度を提供する。
【0098】
しかしながら、典型的には、ネゲントロピーは信号に対してのみ推定でき、直接計算できないことが多い。
【0099】
外れ値に対してより堅牢なネゲントロピーの推定量を構築することが可能である。そのような推定量を構築するための例示的な方法は、例えば、A.Hyvrainen、J.Karhunen、及びE.Ojaによる著書「Independent component analysis」に記載されている。
【0100】
例えば、ネゲントロピーの推定量J(x)の1つの単純な例は次のとおりである。
【数3】
【0101】
ネゲントロピーの推定量は任意に正確にすることができるが、精度の向上には複雑さの増加を伴う。したがって、応用に対して推定量を選択することは、典型的には、必要な精度と利用可能な計算能力との間のトレードオフになる。
【0102】
信号の統計的構造の別の例示的な尺度は、線形自己共分散である。
【0103】
線形自己共分散に基づく尺度の1つの単純な例は次のとおりである。
【数4】
【0104】
この式もまた、Oja他による著書「Independent component analysis」に記載されている(第18章「Methods using time structure」を参照)。
【0105】
この例では、尺度C(x)は、信号の隣接する2つのサンプルが相関されていない場合はゼロの値を有し、ある度合いの相関がある場合は非ゼロ値を有する。2つの入力信号チャネルを比較するために、2つの信号チャネルベクトルが最初に各々からそれぞれの平均を減算し、それぞれの標準偏差で除算することによって正規化される(これにより、C(x)の結果への各チャネルの乗数の影響が取り除かれる)。
【0106】
ソース心拍数信号の混合体を含む入力信号チャネルの場合、C(x)の絶対値は、個別の心拍数信号ソースのC(x)の最高絶対値より低くなる。
【0107】
本発明のコンテキストでは、選択アルゴリズムは、C(x)の最高絶対値を有する被検体内の記録領域を探すように構成することもできる。
【0108】
しかしながら、いくつかの心拍数ソースが存在し、対応するC(x)が同一である場合は(これらは互いに区別できないため)、この方法は十分に効果的ではないことに留意されたい。しかしながら、このような状況はたまにしか発生しないと予想される。
【0109】
統計的構造のさらなる例示的な尺度としては、信号の分散の非定常性がある。
【0110】
信号xの分散の非定常性は、次のように4次キュムラント(自己共尖度行列の一部)を使用して定量化できる。
【数5】
【0111】
この式の値は、区間Nにおいて分散の変化が大きい信号xの場合は大きくなり、分散が定数に近い場合は小さくなる。
【0112】
よって、この式は、信号のこの非定常性を定量化する。通常、心拍数信号ソースの混合体は、単独の個別の心拍数ソースよりも非定常性が少ない。したがって、分散の非定常性は信号の統計的構造の直接的な尺度を提供する。選択アルゴリズムは、例えば、領域から取得される信号が最大量の分散非定常性を示す被検体内の記録領域を探すことができる。
【0113】
異なる入力信号チャネルを比較するために、ここでも、最初に各信号xをサンプルの全範囲にわたってゼロ平均及び単位分散に正規化する必要がある。
【0114】
典型的には、式の初項は次の2つの項を支配するため、計算を単純化するために最後の2つの項を省略してもよい。
【0115】
この式もまた、A.Hyvrainen、J.Karhunen、及びE.Ojaによる著書「Independent component analysis」に記載されている(第18章「Methods using time structure」を参照)。
【0116】
説明として、確率過程は、その有限次元分布が時間の変換の下で不変である場合、定常していると言われる。このタイプの確率過程を使用して、定常状態にあるが不規則変動を依然として経験する物理システムを記述できる。定常性の概念は、時が過ぎても、定常確率過程の分布は変わらないというものである。
【0117】
これらの関数の正確な計算には、無数の信号サンプルが必要である。したがって、実際には、近似値が使用されるか、又は、基礎となる確率分布に関する何らかの情報を含む入手可能な数のサンプルを使用して量を計算してもよい。
【0118】
例示として提供されるさらなる非限定的な例として、ゼロ平均(すなわち、ゼロベースライン)を有するように事前処理され、単位分散(すなわち、1の振幅、すなわち、正規化された信号)の信号xの場合、信号の構造の統計的尺度の例としては次のものが挙げられる。
尖度:
【数6】
2乗尖度:
【数7】
ネゲントロピーの近似値:
【数8】
ネゲントロピーの別の近似値:
【数9】
ネゲントロピーのさらに別の近似値:
【数10】
ここで、E( )は、期待値演算子を表し、c1、c2は、xがガウス分布の場合に初項が有し得る値に対応する定数を表す。
【0119】
好ましくは、選択アルゴリズムは、複数のトライアル深度領域から超音波信号を収集し、各トライアル領域信号について統計的構造の少なくとも1つの尺度を決定することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、選択アルゴリズムは、各トライアル領域信号について導出された統計的構造の尺度を比較することを含み得る。さまざまなトライアル領域についての尺度を互いに比較しても、すべてを1つ以上の基準深度領域について導出された1つ以上の尺度に対して比較してもよい。
【0121】
超音波処理ユニットは、トライアル深度ウィンドウの統計的構造の尺度と基準深度ウィンドウの統計的構造の尺度とを比較することによって、記録ウィンドウ内の信号の統計的構造を最大化するために、トライアル領域の高さ及び深度パラメータをどの程度調整する必要があるかを決定できる。
【0122】
複数の深度領域がトライアルされ、それらの信号構造尺度が相互に比較される場合、これにより、さまざまな統計的構造値のスペクトルと、それらをもたらした対応する深度パラメータが提供される。これにより、統計的構造の尺度と、高さパラメータ及び深度パラメータの各々との関係を導出できる。この関係から、最大の信号構造を有する超音波信号をもたらす可能性のあるパラメータのセットを導出(例えば外挿又は補間)できる。
【0123】
あるいは、選択アルゴリズムは反復プロセスを含んでもよく、超音波信号は、連続するトライアル深度領域から1つずつ収集される。新しいトライアル深度領域ごとに、超音波信号の統計的構造の尺度が導出される。これは、次に、以前にトライアルされた1つ以上の深度領域の信号の統計的構造の尺度と比較される。アルゴリズムは、結果に基づいて、次のトライアル領域から導出される信号の統計的構造の尺度を増加させるために、当該次のトライアル領域について、高さ及び深度パラメータを調整する必要があるかどうか、また、どのようにして調整する必要があるかを決定する。
【0124】
選択アルゴリズムは、新しいトライアル領域ごとに、1つ以上の以前の領域との比較に基づいて、現在の領域が統計的構造の最大化された尺度を有しているかどうかを決定できる。これは、例えば、統計的構造の尺度の現在進行中の変化を、トライアル領域インデックスの増分に応じてプロットする、さもなければ計算することに基づく。統計的構造の尺度が変わり点(例えば、前述の計算関数の二次導関数がゼロ又はほぼゼロである)に達したことが検出されると、選択アルゴリズムは、新しい記録領域に、現在のトライアル深度領域の高さ及び深度パラメータを使用するだけでよい。
【0125】
あるいは、選択アルゴリズムは、新しいトライアル領域ごとに、領域の統計的構造の尺度が以前のトライアル領域の統計的構造の尺度の閾値近接内にあるかどうかを検出でき、この場合、新しい領域の高さ及び深さパラメータが、最終の記録深度領域に選択される。
【0126】
本発明の実施形態は、超音波信号がそこから抽出される被検体内の深度領域の制御を伴う。これを行うための一般的な手順について簡単に説明する。
【0127】
超音波トランスデューサユニットを使用してドップラー超音波データが得られる。これは超音波処理ユニットによって制御されても、独立して行われてもよい。好ましい例では、本発明の超音波処理ユニットは、使用中、超音波処理ユニットと動作可能に結合可能であり、超音波データを取得するためにトランスデューサユニットを制御する。処理ユニットは、好ましくは、超音波信号が取得される深度領域を調整するために、超音波トランスデューサユニットの取得又は他の音響設定を調整するように動作可能である。
【0128】
トランスデューサユニットは、複数の超音波トランスデューサ又は1つのトランスデューサを含み得る。典型的には、受信した超音波データは、標的体内の複数の異なる深度を表す。このデータから、スキャンした体内の1つ以上の特定の深度の信号に対応する1つ以上の信号チャネルが抽出され得る。
【0129】
より詳細には、動作中、超音波受信/送信ユニットによって、超音波パルスがプローブ対象の体(すなわち、被検体の子宮領域)内へ送信される。パルスは、定義された送信ウィンドウ又は送信ウィンドウの反復セットを介して、定義された周波数で送信される。受信/送信ユニットは、超音波信号を生成及び検知するための1つ以上の超音波トランスデューサを含む。これは、超音波トランスデューサユニットの一形態であるが、信号処理構成要素は含まない(この例ではユニットの外部で含まれている)。
【0130】
反射された超音波信号は、次に、超音波受信-送信ユニットで受信される。反射は、信号の反射元の深度に応じて、異なる時点で受信/送信ユニットで受信される。組織内の超音波の伝播速度(約1000メートル/秒)が既知であるため、送信と受信との間の遅延時間は、超音波パルスが移動した距離にマッピングできる。この距離は深度に比例する。
【0131】
いくつかの例では、信号は単一方向に送信され、結果として得られる単一の円筒ビーム照射野内の異なる深度に対応する超音波信号が受信及びゲーティングされる。
【0132】
さらなる例では、超音波トランスデューサユニットは、個別の超音波送信器からなるアレイを含んでもよい。この場合、制御手段が、生成された超音波ビームの方向性を制御するために、アレイを使用してビームフォーミングを適用する。
【0133】
いずれの場合も、結果として得られる超音波データは増幅器によって増幅され、被検体内の異なる深度領域に対応する複数の信号チャネルに分割される。あるいは、1つの深度領域のみを検索する場合は、その1つの深度領域に対応するチャネルがチャネルのセットから抽出されてもよい。
【0134】
異なる深度に対応する信号は、例えば、異なる時間受信ウィンドウにわたって入来信号をゲーティングすることによって分離できる。ゲーティングされた各信号は、異なる深度に対応する異なる入力信号チャネルを提供する。
【0135】
いくつかの例では、特定の所望の深度からの受信信号が得られるように、送信パルス及び受信ウィンドウの持続時間及びそれらの間のタイミングが調整される。これらは適切な時間ウィンドウを介してゲーティングされて、深度チャネルごとに異なる深度信号が提供される。
【0136】
任意選択で、受信-送信(又は超音波トランスデューサ)ユニットに含まれるデジタルロジック(例えばマイクロコントローラ、FPGA)によってチャネルのゲーティングパルスが生成できる。ゲーティングされた信号は、その後アナログ-デジタル変換器でサンプリングできる。比較的低いサンプリングレートが使用され得る(例えば数百~数千Hz)。
【0137】
当業者であれば、プローブされた体内のさまざまな深さに対応するチャネルを抽出するために信号をゲーティングするためのさまざまなアプローチを認識するであろう。
【0138】
1つ以上のゲーティングされた深度信号は、各々、それぞれの入力信号チャネル(又は「深度チャネル」)を提供する。
【0139】
1つ以上の深度信号チャネルの各々に前処理ステップが適用される。これらは、異なる入力信号チャネルを分離した後又はその前に適用されてもよい。
【0140】
特に、各入力信号チャネルの入力信号に、復調及び信号統合が適用され得る。復調により、元の送信信号と比較して、測定ドップラー信号のドップラー(周波数)シフトに等しい周波数の信号が生成される。
【0141】
各深度信号チャネルにバンドパスフィルタリングが適用されてもよい。フィルタリングは、胎児心拍数測定で予測される周波数範囲内の入来信号の周波数成分を選択するように構成されている。これにより、データの関連する周波数成分のみが保持され、全体的なノイズが低減される。
【0142】
いくつかの例(図示せず)では、エンベロープ復調器が追加で適用されてもよい。これは、深度信号チャネルごとに、選択された(フィルタリングされた)周波数範囲について、時間の関数として信号の強さ(例えば強度又は分散)の変化に対応するエンベロープ信号を抽出する。
【0143】
特定の例では、復調機能は、超音波トランスデューサユニット内に含まれているデジタルマイクロプロセッサに組み込まれていてもよい。この場合、送信パルスの反射は、アナログ-デジタル変換器を用いて高いサンプリングレート(送信超音波パルスの周波数の数倍、例えば数MHz)でサンプリングされ、トランスデューサユニット内のデジタルロジック又はソフトウェアが、受信信号を復調し、各深度チャネルの信号値を計算できる。これにより、ゲーティングパルス及びアナログ復調回路が不要になる。
【0144】
信号取得と同期した処理を提供するために所望の解像度及び速度でアナログからデジタルへの変換が可能なデジタルマイクロプロセッサを提供することは、現在のマイクロプロセッサ技術では困難な場合がある。別の例では、超音波トランスデューサユニットに含まれている専用アナログ-デジタル(A/D)変換器を使用して、深度チャネルの分割を行うこともできる。この場合、A/D変換器は同期して動作する。つまり、超音波周波数はA/D変換周波数と一致している(同一であることが好ましい)ことを意味する。
【0145】
超音波処理ユニットの1つの例示的な実施形態について簡単に説明する。
【0146】
上記のように超音波処理ユニットが提供され、使用中、超音波トランスデューサユニットと動作可能に結合可能である。超音波処理ユニットは、トランスデューサユニットと組み合わせて、所与の被検体内の少なくとも2つの深度領域からのドップラー超音波信号を記録するように動作可能である。深さ領域には、調整可能な高さ及び深度パラメータか、又は、固定の高さ及び深度パラメータがある。
【0147】
超音波処理ユニットは、各深度領域からのドップラー超音波信号を記録し、各々の統計的構造の尺度を計算する。処理ユニットは、各信号の値の比較に基づいて、記録された深度領域のサイズ及び深度パラメータ(又は、対応して、開始深度と終了深度と)を調整して、胎児心拍数(FHR)信号が取得される最終記録ウィンドウの構造の度合いを高める。あるいは、ユニットは、利用可能な深度ウィンドウチャネルのうちから、FHR計算用の信号を収集するための新しい記録ウィンドウとして使用する統計的構造の尺度が最も大きい深度ウィンドウチャネルを単に選択することもできる。
【0148】
超音波処理ユニットは、正規化された尖度やネゲントロピーなどの信号構造基準(又は上記の他のいずれかの基準)を使用して、異なる深度信号チャネルを比較できる。これらの尺度は、信号の(平均)振幅の影響を受けない。この理由から、1つの独立した脈拍数信号のみを含むチャネル又はほとんどが1つの独立した脈拍数信号であるチャネルを、脈拍数信号の混合体を含むか又は脈拍数信号がまったくないチャネルから区別するために使用できる。
【0149】
一例として、選択アルゴリズムは、深度チャネル信号の近似ネゲントロピーの最大化を求めるために、1つの独立した脈拍数信号のみが記録されるまでウィンドウサイズ及び深度位置を調整する作用を有する。
【0150】
本発明のさらなる態様による例は、上記又は以下に説明されている例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項による超音波処理ユニットと、超音波処理ユニットに動作可能に結合されて、超音波処理ユニットにドップラー超音波データを提供し、任意選択で、取得される超音波データの深度ウィンドウを決定するための調整可能な取得設定を有する1つ以上の超音波トランスデューサ76とを含む超音波装置を提供する。
【0151】
装置は、例えば、超音波プローブユニットを含み、当該プローブユニットに、超音波処理ユニット及び1つ以上の超音波トランスデューサが組み込まれている。例えば、プローブは、1つ以上の超音波トランスデューサ及び超音波処理ユニットが組み込まれているハウジングを含む。
【0152】
本発明のさらなる態様による例は、患者モニタリングシステムを提供する。図3に、1つ以上の実施形態による例示的な患者モニタリングシステム70が示されている。
【0153】
患者モニタリングシステム70は、上記又は以下に説明されている例若しくは実施形態による、又は本出願の任意の請求項による超音波処理ユニットを含む。この例では、超音波処理ユニットは、ベースステーションユニット72内に組み込まれている。しかしながら、他の例では、超音波処理ユニットは、ベースステーションユニットが接続されている又は接続可能である超音波トランスデューサユニット76内にローカルに組み込まれていてもよい。
【0154】
患者モニタリングシステム70はさらに、使用中、入力ドップラー超音波データ又はそこから導出されるデータを受信するために超音波トランスデューサユニット76に接続するための入力コネクタポート74の形式の接続インターフェースを含む。図3に、使用中、ベースステーションに接続するための例示的な超音波トランスデューサユニット76が示されている。トランスデューサユニットは、ベースステーションの入力コネクタ74に係合するように成形された出力コネクタ78を含む。
【0155】
超音波処理ユニットがベースステーション72に含まれている場合は、入力コネクタ74は、受信した超音波データを転送するために超音波処理ユニットに結合され得る。
【0156】
図3では、コネクタ74は有線コネクタポートとして示されている。他の例では、コネクタは、無線超音波プローブに接続するための無線接続インターフェースを含んでいてもよい。
【0157】
患者モニタリングシステム70はさらに、当該入力コネクタに結合された超音波トランスデューサユニット76を含み得る。トランスデューサユニットは、例えば超音波プローブである。
【0158】
本例における患者モニタリングシステムはさらに、行われた分析手順の結果を表示するために、例えば、1つ以上の第2の出力信号の視覚的表現を表示するために、ベースステーション72の超音波処理ユニットに動作可能に接続されたディスプレイ80を含む。
【0159】
患者モニタリングシステム70はさらに、使用中、接続されたトランスデューサユニットによる超音波データの取得を制御するコントローラを含み得る。
【0160】
コントローラは、超音波トランスデューサユニットの送受信回路を制御して、さまざまな深度を表す超音波信号を取得できる。コントローラは、送信パルス及び受信ウィンドウの持続時間及びその間のタイミングを制御できる。コントローラは、定義された時間ウィンドウにわたる入力ドップラー信号データのゲーティングを制御して、これにより、被検体の組織内の1つ以上の特定の深度に対応する異なる入力信号チャネルを分離又は抽出できる。
【0161】
いくつかの例では、当該コントローラは、超音波トランスデューサユニット内に含まれていてもよく、又は、それによって行われる制御ステップは、超音波トランスデューサユニットにおいてローカルで行われてもよい。
【0162】
前述のように、超音波トランスデューサユニットは超音波処理ユニットを含んでいてもよい。それは、例えば、1つ以上の超音波トランスデューサと超音波処理ユニットとを組み込み、処理ユニットと動作可能に結合されている超音波プローブユニットであってよい。超音波トランスデューサユニットは、上記の超音波データの前処理ステップ及び/又は制御ステップのうち少なくともサブセットをローカルで行うことができる。
【0163】
患者モニタリングシステムは、上記とは異なる形態をとってもよい。例えば、患者モニタリングシステムは、ディスプレイを含み、超音波トランスデューサユニットと接続可能であるモニタリングステーション(例えばトロリータイプのモニタリングステーション)を含む。
【0164】
いずれの例でも、患者モニタリングシステムは、同じ患者又は異なる患者をモニタリングするために任意の数のさらなるセンサ又はデータソースに接続可能である。
【0165】
本発明のさらなる態様による例は、受信したドップラー超音波データ内の個別の心拍数ソースを分離するために、胎児モニタリングにおいて使用する超音波処理方法を提供する。方法は、
定義された高さ及び深度を有する被検体の子宮領域内の少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する入力ドップラー超音波データを受信するステップ32と、
少なくとも1つのトライアル深度領域に対応する超音波データから超音波信号を抽出するステップ34と、信号の統計的構造の定義された尺度を決定するステップ36と、
胎児心拍数を測定するために超音波信号を収集する被検体内の新しい記録領域の深度及び高さを決定するために選択アルゴリズムを適用するステップ38とを含み、選択アルゴリズムは、トライアル領域の統計的構造の決定された尺度に基づいて、また、新しい記録領域から取得される信号の統計的構造の尺度を最大化することに基づいてウィンドウを選択する。
【0166】
開示された実施形態の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、「含む」という語は、他の要素やステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。コンピュータプログラムが上で説明される場合、それは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの任意の適切な媒体に格納/配布することができるが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。「~するように適応される」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応される」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3