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特許7535064心肺機能蘇生デバイス、制御方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】心肺機能蘇生デバイス、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61H31/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021565797
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020061571
(87)【国際公開番号】W WO2020224998
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】19172788.2
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ビアード ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ライト クリストファー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ダフィー デイヴィッド
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528722(JP,A)
【文献】特開2015-221159(JP,A)
【文献】特表2015-530186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0092804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への心肺機能蘇生(CPR)の供与を増強するためのCPRデバイスであって、
前記患者の胸部と係合するための患者側と、
前記患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側と
アクチュエータのアレイとを備え、
前記患者側の表面及び前記ユーザ側の表面のうちの1つ以上の表面が、前記ユーザによって前記CPRデバイスに加えられる力であって、前記CPRデバイスを通じて前記患者へと伝達される力からの、前記患者側の前記表面及び前記ユーザ側の前記表面のうちの前記1つ以上の表面における横方向力分布プロファイルを、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化すべく調整するように前記アクチュエータのアレイにより制御される可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成されている、CPRデバイス。
【請求項2】
前記ユーザによって前記CPRデバイスに加えられる力から、前記患者側の前記表面及び前記ユーザ側の前記表面のうちの前記1つ以上の表面においてターゲット横方向力分布プロファイルを与えるように、前記材料の前記可変接触特性を制御するコントローラを備える、請求項1に記載のCPRデバイス。
【請求項3】
前記可変接触特性は、摩擦及び吸着のうちの1つ以上である、請求項2に記載のCPRデバイス。
【請求項4】
前記CPRデバイスは、前記CPRデバイスに加えられる力の力センサデータを取得する力センサを備え、
前記コントローラは、前記力センサデータに従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2又は3に記載のCPRデバイス。
【請求項5】
前記CPRデバイスは、前記患者の状態に関係する患者センサデータを収集する患者センサと通信可能に結合されており、
前記CPRデバイスは、前記患者センサから前記患者センサデータを受信し、
前記コントローラは、前記患者センサデータに従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から4のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項6】
前記CPRデバイスは、前記ユーザの状態に関係するユーザセンサデータを収集するユーザセンサと通信可能に結合されており、
前記CPRデバイスは、前記ユーザセンサから前記ユーザセンサデータを受信し、
前記コントローラは、前記ユーザセンサデータに従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から5のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項7】
前記CPRデバイスは、メモリと通信可能に結合されており、
前記CPRデバイスは、前記メモリから前記患者に関する情報を取得し、
前記コントローラは、前記患者に関する前記情報に従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から6のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項8】
前記CPRデバイスは、メモリと通信可能に結合されており、
前記CPRデバイスは、前記メモリから前記ユーザに関する情報を取得し、
前記コントローラは、前記ユーザに関する前記情報に従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から7のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項9】
前記可変接触特性を有する材料から形成されている前記患者側の前記表面及び前記ユーザ側の前記表面のうちの前記1つ以上の表面が、複数の材料セクションに分離され、
前記コントローラは、前記複数の材料セクションのうちの1つの材料セクションの材料の前記可変接触特性を、前記複数の材料セクションのうちの他の材料セクションのうちの1つ以上とは無関係に制御する、請求項2から8のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項10】
前記コントローラは、
電子吸着、
超音波、及び
表面設計のうちの1つ以上を使用して、前記材料の前記可変接触特性を制御する、請求項2から9のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項11】
前記可変接触特性を有する材料から形成されている前記患者側の前記表面及び前記ユーザ側の前記表面のうちの前記1つ以上の表面が、複数の材料セクションに分離され、
複数の材料セクションのうちの1つの材料セクションの材料は、前記複数の材料セクションのうちの他の材料セクションのうちの1つ以上の材料とは異なる、請求項2から10のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項12】
前記CPRデバイスは、前記患者の前記胸部上に位置付けられた前記CPRデバイスの画像データを取得するカメラと通信可能に結合されており、
前記CPRデバイスは、前記カメラから前記画像データを受信し、
前記コントローラは、前記患者の前記胸部に対する前記CPRデバイスの位置を決定し、前記患者の前記胸部に対する前記CPRデバイスの位置に従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から11のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項13】
前記CPRデバイスの前記患者側に配置されており、各々が、前記CPRデバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得する複数の圧力センサを備え、
前記コントローラは、取得されている前記圧力センサデータを使用して前記患者の前記胸部に対する前記CPRデバイスの位置を決定し、前記患者の前記胸部に対する前記CPRデバイスの位置に従って前記ターゲット横方向力分布プロファイルを決定する、請求項2から12のいずれか一項に記載のCPRデバイス。
【請求項14】
コンピューティングデバイス上で実行されると、患者への心肺機能蘇生(CPR)の供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法を実行するためのコンピュータプログラムであって、前記CPRデバイスが、前記患者の胸部と係合するための患者側と、前記患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とアクチュエータのアレイとを備え、前記患者側の表面及び前記ユーザ側の表面のうちの1つ以上の表面が、前記ユーザによって前記CPRデバイスに加えられる力であって、前記CPRデバイスを通じて前記患者へと伝達される力からの、前記患者側の前記表面及び前記ユーザ側の前記表面のうちの前記1つ以上の表面における横方向分布プロファイルを、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化すべく調整するように前記アクチュエータのアレイにより制御される可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成されており、前記制御方法は、
以下のデータタイプ、すなわち、
前記CPRデバイスに加えられる力の力データ、
前記患者の状態に関係する患者センサデータ、
前記ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、
前記患者に関する情報、
前記ユーザに関する情報、
前記患者の前記胸部上に位置付けられた前記CPRデバイスの画像データ、及び
前記CPRデバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、
取得されている前記データタイプのうちの1つ以上に従って、前記ユーザによって前記CPRデバイスに加えられる力から、前記表面においてターゲット横方向力分布プロファイルを与えるように、前記材料の前記可変接触特性を制御するステップとを有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、心肺機能蘇生(CPR)に関し、CPRの患者への供与を増強するためのデバイス、当該デバイスの制御方法及び対応するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一般的な背景は、心肺機能蘇生(CPR)の患者への供与を補助するためのCPRデバイスにある。CPRは、ユーザ(救助者)が、酸素化された血液を脳に手動で圧送するように、患者に胸部圧迫を加えることを伴う。CPR中に供与される胸部圧迫の有効性は、複数の要因に応じて変化する。例えば、圧迫力を加えるために最適な位置は、個々の患者間で変化する。適切な圧迫を与えるのに必要な力も変化し得る。
【0003】
CPRデバイスは、ユーザがCPRを患者に供与するのを補助するために使用され、患者に対するCPRの有効性を増大させる。そのようなデバイスは、CPRを与えるユーザの手と、CPRを受ける患者との間で試用するために提供される。ユーザから患者への力の伝達は、試用されているCPRデバイスの特性及び加えられる力を含む、複数の要因に依存する。
【0004】
CPRの供与が不十分であると、心停止患者への重大な損傷を引き起こす可能性があり、損傷は、最初の圧迫からでも生じる可能性がある。同様に、圧迫の深さが浅すぎる場合、これは損傷が生じる可能性が低いという点ではより安全であるが、血流が不十分になり、結果として、例えば神経学的状態など、患者の転帰がより低くなる。したがって、CPRの供与中に加えられる胸部圧迫の深さが適切であること、及び、したがって、ユーザから患者へと適切な力が伝達されることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CPRがより効果的になり、患者に対するCPRの利得が増大されるように、ユーザへのCPRの供与を増強することが望ましい。CPRの供与中に患者及び/又はユーザへの損傷の危険性を最小限に抑えることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の実施形態によれば、CPRデバイスに、1つ以上の可変特性が与えられ、結果、ユーザから患者への力の伝達が、デバイスの1つ以上の可変特性によって変化する。本発明の態様の実施形態はまた、デバイス態様に対応する方法態様、及び、コンピューティングデバイス上で実行されると方法を実行するコンピュータプログラム態様にも及ぶ。
【0007】
一態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスであって、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に非ニュートン流体から形成され、当該非ニュートン流体の粘度が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からのデバイスの力分布プロファイルを調整するように、エネルギーが加わることに応答して変化するように構成されている、CPRデバイスが提供される。
【0008】
したがって、本発明の本態様の実施形態によれば、デバイスは、少なくとも部分的に、非ニュートン流体(NNF)、すなわち、応力とは無関係の一定の粘度を有しない流体から形成される。したがって、NNFの粘度は、NNFに加えられるエネルギーに応答して変化する。エネルギーは、力、応力及び/又は刺激である。例えば、エネルギーは、CPRの胸部圧迫の供与中にユーザによってユーザ側においてデバイスに加えられる力であり、NNFの粘度は、デバイスに加えられる力が変化するにつれて変化する。
【0009】
CPRデバイスの少なくとも一部分を形成するNNFの可変粘度によって、エネルギーがNNFに加えられ、NNFの粘度が変化するときに変化する、デバイスの力分布プロファイルがもたらされることが分かる。力分布プロファイルは、デバイスによる力の分布と考えられ、デバイスが患者の胸部に位置付けられる場合、患者側、特に患者の胸部における患者に対する力の分布と考えられる。患者側が少なくとも部分的にNNFから形成される場合、デバイスから患者の胸部への力は、NNFの粘度が変化し、患者側の剛性が変化するにつれて変化することが理解されよう。同様に、ユーザ側が少なくとも部分的にNNFから形成される場合、ユーザ側において加えられる力からの、デバイスによって吸収される力、又は、デバイスを通じて伝達される力は、NNFの粘度が変化するにつれて変化し、したがって、デバイスから患者の胸部への力も変化する。したがって、デバイスの力分布プロファイルは、NNFの変化する粘度によって調整される。
【0010】
力分布プロファイルを調整することによって、CPR供与の有効性が制御され、最大化される。すなわち、CPRの供与中に患者に加えられる胸部圧迫の有効性は、患者に対する最大の肯定的影響を有し、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザへの損傷を最小限に抑えるように、調整される。これは、デバイスが患者に伝達される力を適切に適合させ、制御することを可能にする、NNFの可変粘度に起因する。したがって、可変粘度を有するNNFは、例えば、患者へのCPRの供与中の胸部圧迫など、パックのユーザ側に力が加えられ、患者に伝達されるときに、患者の血行動態活性を調整する。すなわち、NNFによるデバイスの力分布プロファイルの調整によって、患者の血行動態活性が改善される。
【0011】
デバイス内のNNFの位置に応じて、デバイスは、患者の胸部上に位置付けられるときに患者の胸部に適合し、及び/又は、ユーザの手の形状に適合する。例えば、患者側が(少なくとも部分的に)NNFから形成される場合、患者側は、NNFの粘度が低いとき、患者の胸部の形状に適合する。同様に、ユーザ側が(少なくとも部分的に)NNFから形成される場合、ユーザ側は、ユーザがデバイスに接触し、NNFの粘度が低いとき、ユーザの手の形状に適合する。したがって、デバイスと患者及び/又はユーザとの間の接触が増大される。患者側及びユーザ側の各々が、少なくとも部分的に、非ニュートン流体から形成される。
【0012】
例えば、ユーザがCPR中に患者に胸部圧迫を供与するためにデバイスを押し付けるときなど、NNFにエネルギーが加えられるとき、NNFの粘度が変化する。例えば、デバイスの少なくとも一部分の剛性が増大し、デバイスを通じたエネルギーの伝達が増大されるように、粘度が増大する。すなわち、デバイスがより堅固になり、より大量の力がデバイスを通じて患者に伝達されるように、NNFの粘度が増大する。代替的に、NNFの粘度は、デバイスに力が加えられるときに低減する。NNFによるエネルギーへの応答は、NNFのタイプに依存する。
【0013】
力が増大するにつれてNNFの粘度が増大する例を考えると、デバイスに力がほとんど又はまったく加えられないとき、NNFの粘度は低く、結果としてのデバイスの剛性も低いため、デバイスは(少なくとも部分的に)患者の胸部及び/又はユーザの手の形状に適合する。デバイスに加えられる力が増大すると、NNFの粘度は増大し、デバイスは(少なくとも部分的に)より剛性になる。したがって、粘度が低いままであった場合よりも多くの力がデバイスを通じて患者に伝達され、結果としての患者の胸部への圧迫は、デバイスの剛性が低いままであった場合よりも深くなる可能性が高い。したがって、NNFは、デバイスが、CPR供与の種々の段階において適合性であるとともに剛性であることを可能にする。したがって、少なくとも部分的にNNFから形成されるCPRデバイスは、他の様態では達成が困難である、適合性と剛性とのバランスを達成し、デバイスは、十分な圧迫効率をも有しながら、デバイスの使用の快適性を改善する。
【0014】
CPRデバイスは、ユーザによってデバイスに加えられる力から、ターゲット力分布プロファイルを患者に与えるように、非ニュートン流体にエネルギーを加えることによって、非ニュートン流体の粘度を制御するように構成されているコントローラを備える。すなわち、デバイスの力分布プロファイルがコントローラによってターゲット力分布プロファイルを達成又は近似するように調整されるように、粘度が、ユーザによってデバイスに加えられる力とは無関係に、コントローラによって制御される。したがって、デバイスが、NNFの粘度がユーザによって加えられる圧力のみに応答して変化する受動的状態と、NNFがコントローラによって加えられるエネルギーにも応答して変化する能動的状態とを有することが分かる。コントローラは、プロセッサとして参照される。
【0015】
コントローラは、患者における所望の血行動態活性を達成するか又は達成する可能性が高いターゲット力分布プロファイルに対応するデバイスの力分布プロファイルを与えるように、NNFの可変粘度を制御する。コントローラは、ターゲット力分布プロファイルを決定し、次いで、デバイスの力分布プロファイルが決定されているターゲット力分布プロファイルに一致するか又は少なくとも一致に向かうように、NNFにエネルギーを加える。したがって、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に、コントローラによって動的に制御されるように構成されている可変粘度を有する非ニュートン流体から形成される。
【0016】
デバイスは、デバイスに加えられる力の力データを取得するように構成されている力センサを備え、コントローラは、力データに従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、デバイスに加えられる力の測定に従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0017】
力センサは、力センサデータとして、例えば、CPR胸部圧迫の供与中にユーザによってデバイスに加えられる力などの、CPRデバイスに加えられる力を測定する。力センサは、横力、縦力及び垂直(法線)力のうちの1つ以上を測定するように構成されている。力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、デバイスに加えられる力を連続的に測定する。力センサは、力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、力センサデータは、測定された力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0018】
力センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の力センサが利用されてもよく、各力センサは、別の力センサと異なるタイプ又は同じタイプの力を測定する。力センサは、圧力センサと考えられてもよい。
【0019】
コントローラは、最近取得された力センサデータを使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、より最近のデータに基づいて、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザに対する損傷を最小限に抑えるように、デバイスに加えられる力に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。例えば、力センサは、胸部圧迫中にデバイスに加えられる力を測定し、コントローラは、力が同様である可能性が高い後続の胸部圧迫が、患者に対して最大の肯定的影響を有するように、NNFの粘度を変化させる。たとえば、測定された力がコントローラによって相対的に低いと決定される場合、コントローラは、NNFに粘度を増大させるエネルギーを加え、結果、デバイスの剛性が増大され、より多くの力が患者に伝達される。逆に、測定された力がコントローラによって相対的に高いと決定される場合、コントローラは、NNFに粘度を低減するエネルギーを加え、結果、患者及び/又はユーザに対する傷害の危険性を最小限に抑えるように、デバイスの剛性が低減され、より少ない力が患者に伝達される。
【0020】
デバイスは、患者の状態に関係する患者センサデータを収集するように構成されている患者センサと通信可能に結合される。デバイスは、患者センサから患者センサデータを受信するように構成されている。コントローラは、患者センサデータに従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、患者センサデータが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の状態を示すデータに基づいて非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。患者センサデータは、患者の状態を表す、示す、及び/又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0021】
患者センサは、患者センサデータとして、患者の状態を示す患者のパラメータ又は兆候を測定する。例えば、患者センサは、患者の以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、水和、油性及び弾性などの皮膚状態、冠動脈かん流圧(CPP)、脳への血液の供与、身体を巡る注入されている治療の供与、内出血又は外出血の検出及び分析、皮下軟部組織及び骨の損傷の検出、並びに、血行動態挙動のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。したがって、患者の血行動態活性は、患者センサによって監視されるべき患者の状態である。
【0022】
患者センサは、心筋及び隣接する血管系の活動をイメージング及び決定するための標準的な超音波イメージング又はUWB(超広帯域)レーダを含む。患者センサは、患者の血圧を測定するための超音波イメージングを含む。付加的に又は代替的に、患者センサは、CPRデバイス上の圧力プロファイルに対する変化を介して検出される、例えば、肋骨などの骨の損傷を決定するための1つ以上の圧力センサを含む。患者センサは、血行動態挙動を測定し、当該挙動から循環系を巡る注入されている治療の供与を予測する。患者センサは、患者の皮膚の水和を決定するための静電容量測定、患者の皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、患者の皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。患者センサは、患者の画像をキャプチャするように構成されているカメラを含み、コントローラは、キャプチャされた画像を分析することによって患者の状態を決定するように構成されている。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。
【0023】
患者センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者パラメータ又は兆候を連続的に測定する。患者センサは、患者センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。患者センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、患者センサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0024】
コントローラは、最近取得された患者センサデータを使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者の現在の状態に基づいて、患者にとって最も有益になる力分布プロファイルを供与するように、患者の状態に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。
【0025】
患者センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の患者センサが利用されてもよく、各患者センサは、別の患者センサと異なる又は同じである患者のパラメータ又は兆候を測定する。
【0026】
デバイスは、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータを収集するように構成されているユーザセンサと通信可能に結合される。デバイスは、ユーザセンサからユーザセンサデータを受信するように構成されている。コントローラは、ユーザセンサデータに従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、ユーザセンサデータが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザの状態を示すデータに基づいて非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。ユーザセンサデータは、ユーザの状態を表す、示す、及び/又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0027】
ユーザセンサは、ユーザセンサデータとして、ユーザの状態を示すユーザのパラメータ又は兆候を測定する。例えば、ユーザセンサは、ユーザの以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、皮膚状態、身体の動き、感情状態、呼吸速度、身体形状、及び身体位置のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。
【0028】
ユーザセンサは、ユーザによって装着され、身体の動き、形状及び/又は位置付けを決定するために使用されるウェアラブルセンサを含む。ユーザセンサは、心臓不整脈及び/又は血圧を決定するためのセンサを有するスマートデバイスを含む。ユーザセンサは、ユーザの画像をキャプチャし、ユーザの状態を決定するためのカメラを備える。例えば、状態は、取得された画像内で呼吸速度及び/又は顔の表情の不快感を分析することによって決定される。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。ユーザセンサは、ユーザの皮膚の水和を決定するための静電容量測定、ユーザの皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、ユーザの皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの手がユーザ側に接触するときにユーザの心拍を決定するためにデバイスのユーザ側に位置付けられた圧力センサ又は光センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの音響データをキャプチャするように構成されているマイクロフォン含み、コントローラは、キャプチャされた音響データを分析して患者の状態を決定するように構成されている。ユーザセンサは、ユーザの心拍を測定するように構成されている心拍センサを含む。
【0029】
ユーザセンサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、ユーザパラメータ又は兆候を連続的に測定する。ユーザセンサは、ユーザセンサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。ユーザセンサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、ユーザセンサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0030】
コントローラは、最近取得されたユーザセンサデータを使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、ユーザの現在の状態に基づいて、患者及び/又はユーザにとって最も有益になる力分布プロファイルを供与するように、ユーザの状態に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。
【0031】
ユーザセンサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のユーザセンサが利用されてもよく、各ユーザセンサは、別のユーザセンサと異なる又は同じであるユーザのパラメータ又は兆候を測定する。
【0032】
デバイスは、患者に関する情報を記憶するように構成されているメモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリから患者に関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、患者に関する情報に従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。
【0033】
患者に関する情報は、患者の年齢、患者の健康状態、患者のバイタルサイン、患者の医療診断、及び、患者へのCPRの過去の供与に関係する履歴患者データのうちの1つ以上を含む。したがって、患者に関する情報が取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者に関する情報に基づいて非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0034】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、患者に関する情報を記憶する。
【0035】
デバイスは、ユーザに関する情報を記憶するように構成されているメモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリからユーザに関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、ユーザに関する情報に従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。
【0036】
ユーザに関する情報は、ユーザの年齢、ユーザの身元、ユーザの健康状態、ユーザのバイタルサイン、ユーザの医療診断、CPRの過去の供与に関係する履歴ユーザデータ、ユーザの身体寸法、ユーザの体重、ユーザの医師免状、ユーザの医学訓練、及びユーザの健康レベルのうちの1つ以上を含む。したがって、ユーザに関する情報が取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザに関する情報に基づいて非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0037】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、ユーザに関する情報を記憶する。さらに、患者に関する情報は、ユーザに関する情報と同じメモリ又は異なるメモリに記憶される。
【0038】
非ニュートン流体から形成されている患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、複数の流体セクションに分離される。コントローラは、複数の流体セクションのうちの1つの流体セクションの非ニュートン流体の粘度を、複数の流体セクションのうちの他の流体セクションのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。したがって、デバイスは、他のセクション又はセル内のNNFとは無関係に制御されるNNFを各々が含む複数のセクション又はセルを含む。したがって、流体セクションは、NNFから形成されている患者側及びユーザ側のうちの1つ以上にわたる画素化制御を可能にする。各セクションにおける圧縮力が個別に制御され、コントローラは、複数の流体セクションに従ってターゲット力分布プロファイルを決定する。
【0039】
非ニュートン流体は、せん断増粘流体、せん断減粘流体、及びレオペクシー流体のうちの1つである。流体のタイプ又は流体のせん断増粘動態は、CPR中に存在する力の範囲に対して設計及び最適化される。
【0040】
胸部の最適な圧迫深度に必要な特定の力は、個人間の差に起因して患者間で異なるが、範囲が、異なる群(例えば、成人、子ども、幼児、男性、女性など)について特定されている。例えば、男性及び女性に必要な力はそれぞれ、320N±80N及び270N±70Nの範囲内である。したがって、デバイスが使用されることを意図されている患者群、及び、患者群に対する所望の力に基づいて、NNFのタイプが決定される。
【0041】
非ニュートン流体から形成される患者側及びユーザ側のうちの1つ以上は複数の流体セクションに分離され、複数の流体セクションのうちの1つの流体セクションの非ニュートン流体は、複数の流体セクションのうちの他の流体セクションのうちの1つ以上の非ニュートン流体とは異なってもよい。
【0042】
コントローラによって加えられるエネルギーは、非ニュートン流体に加えられる電場、非ニュートン流体に加えられる超音波、非ニュートン流体に加えられる磁場、及び、非ニュートン流体に加えられる振動のうちの1つ以上である。したがって、上記の刺激のうちの1つ以上を使用して、NNFの粘度が制御される。使用される刺激のタイプは、NNFの特性及び/又はCPRデバイスの用途によって決定される。例えば、ユーザによってデバイスに加えられる力とは無関係にNNFの剛性を調節するために、超音波トランスデューサが使用される。デバイスは、複数の流体セクションを備え、1つの流体セクションにおいてNNFを制御するのに使用されるエネルギーは、別の流体セクションにおいてNNFを制御するのに使用されるエネルギーと同じであるか、又は、異なる。流体セクションのうちの1つ以上が各々、超音波トランスデューサを提供される。
【0043】
せん断増粘流体(STF)は、せん断力が加わることに基づいてその特性が変化する非ニュートン流体である。せん断増粘流体は、低レベルの力においては柔軟で適合性であるが、高いレベルの力が加わると、剛性になり、より固体のように振る舞う。STFの形成は、粘度、臨界せん断速度、貯蔵弾性率、及び/又は損失弾性率を含む、流体の特性を調整するために調節される。STFの特性は、例えば、電場、磁場及び/又は振動を使用して動的に変化される。
【0044】
レオペクシー流体は、より多くのせん断力が加えられるにつれて粘度が経時的に増大する非ニュートン流体である。これは、例えば、デバイスがユーザ及び患者に経時的に適合し、たとえ力が除去されても、そのカスタマイズされた形状を維持することを可能にする。非ニュートン流体の粘度は、経時的に変化するように構成されており、結果、第1の時点における非ニュートン流体の粘度は、第1の時点の後に発生する第2の時点における非ニュートン流体の粘度とは異なる。
【0045】
せん断減粘流体は、せん断歪みの下で流体の粘度が低減する非ニュートン流体である。過圧をもたらす可能性が高い力が加わるときに、流体の粘度、したがって、デバイスの剛性が低減するため、これは、例えば、過圧の危険性を低減する。
【0046】
デバイスは、アクチュエータを備え、コントローラは、非ニュートン流体に力を加え、非ニュートン流体の粘度を制御するようにアクチュエータを動作させるように構成されている。アクチュエータは、ソフトアクチュエータであってもよい。アクチュエータは、NNFに対して圧力を加え、圧力を解放するために拡張及び収縮するように、コントローラによって作動及び停止される。デバイスは、異なる位置において異なる圧力をNNFに加えるように、独立して制御される複数のアクチュエータを備える。非ニュートン流体から形成されている患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、複数の流体セクションに分離され、流体セクションのうちの1つ以上の各々にアクチュエータが設けられる。
【0047】
デバイスは、複数の時点におけるデバイスの加速度を測定することによって加速度を取得するように構成されている加速度計を備える。コントローラは、加速度データから、デバイスに力が加わるときにデバイスが動く距離を決定し、当該距離に従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成されている。したがって、力が加わるときにデバイスが動く距離を決定し、したがって、胸部圧迫の深度を決定するために、加速度が測定及び分析される。次いで、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、CPR供与中に加えられる胸部圧迫の決定された圧迫深度及びターゲット圧迫深度に従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0048】
コントローラは、最近取得された加速度データ、したがって、最近決定された圧迫深度を使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、より最近のデータに基づいて、患者に供与される後続の胸部圧迫の有効性を最大化するように、圧迫深度に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。
【0049】
CPR中で、且つユーザによって患者の胸部に力が加えられている間に、圧迫サイクルは、胸部に力が加えられていない状態で開始し、最大圧迫深度に達するまで加えられる力が増大されながら継続し、次いで、力が解放されると、開始点に戻る。したがって、圧迫サイクルは、加速度データから決定される。例えば、圧迫サイクルを実施するのにかかっている時間は、経時的な加速度の変化を観察することによって決定される。すなわち、加速度の増大及び変化が使用されて、圧迫サイクルが開始するとき、最大圧迫深度に達するとき、及び、圧迫サイクルが終了するときが決定される。圧迫深度は、例えば、加速度計データを二重積分して、圧迫サイクルの最上位置と最下位置との間で移動した距離、したがって、最大圧迫深度を決定することによって決定される。
【0050】
加速度計は、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、デバイスの加速度を連続的に測定する。加速度計は、加速度データを取得し、そのデータをコントローラに提供する。加速度データのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、加速度データは、測定された加速度が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された加速度が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0051】
デバイスは、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データを取得するように構成されているカメラと通信可能に結合される。デバイスは、カメラから画像データを受信するように構成されている。コントローラは、画像データを使用して患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、画像データが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の胸部に対するデバイスの位置が特定される画像データに従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0052】
カメラは、画像データとして、所与の期間にわたる、特定の時点における、又は所与の期間にわたる複数の時点における画像を連続的にキャプチャする。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。カメラは、画像データを取得し、そのデータをコントローラに提供する。画像データのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。コントローラは、画像データを取得し、画像処理を実施して、デバイス、患者、及び、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。ターゲット力分布プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。例えば、患者の胸部上の特定の位置は、より多くの力がデバイスを通じて患者に伝達されることを必要とし、特定の位置は、必要とする力がより少ない。
【0053】
カメラは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。各々が異なる角度から画像データを取得するように構成されている複数のカメラが利用されてもよい。
【0054】
コントローラは、最近取得された画像データを使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、デバイスのより最近の位置に基づいて、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、患者の胸部に対するデバイスの識別された位置に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。例えば、コントローラは、胸部圧迫中にデバイスの位置を決定し、コントローラは、後続の胸部圧迫が、決定された位置において患者に対して最大の肯定的影響を有するように、NNFの粘度を変化させる。たとえば、デバイスが患者の胸部上でより強固な骨のある位置に位置付けられていると決定される場合、コントローラは、NNFに粘度を増大させるエネルギーを加え、結果、デバイスの剛性が増大され、より多くの力が患者に伝達される。逆に、デバイスが、患者の胸部のより脆弱である位置に位置付けられていると決定される場合、コントローラは、NNFに粘度を低減するエネルギーを加え、結果、患者に対する傷害の危険性を最小限に抑えるように、デバイスの剛性が低減され、より少ない力が患者に伝達される。
【0055】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各圧力センサは、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、取得された圧力センサデータを使用して患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、デバイスに対する圧力の測定に従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0056】
圧力センサは、圧力センサデータとして、CPRデバイスの患者側の圧力を測定する。圧力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者側の圧力を連続的に測定する。圧力センサのすべてが同時にアクティブでなくてもよく、圧力センサは、1つ以上の群に分割されてもよく、各群が、圧迫サイクルの異なる時点又は異なる部分における圧力を測定する。圧力センサは、圧力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。圧力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、圧力センサデータは、測定された圧力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された圧力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0057】
コントローラは、圧力センサデータを取得し、圧力センサデータの分析を実施して、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。例えば、センサ上のより高い圧力読み値は、デバイスが、太陽神経叢及び肋骨などの骨構造上に位置付けられていることを示し、より低い圧力読み値は、肋骨と横隔膜の縁部との間の間隙などの軟組織上の位置を示す。ターゲット力分布プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。例えば、患者の胸部上の特定の位置は、より多くの力がデバイスを通じて患者に伝達されることを必要とし、特定の位置は、必要とする力がより少ない。
【0058】
非ニュートン流体から形成されている患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、複数の流体セクションに分離される。複数の流体セクションのうちの1つ以上が各々、圧力センサを提供される。コントローラは、複数の流体セクションのうちの1つの流体セクションの非ニュートン流体の粘度を、その流体セクションにおいて測定される圧力に基づいて、複数の流体セクションのうちの他の流体セクションのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。
【0059】
コントローラは、患者の胸部に対するデバイスのターゲット位置を決定する。コントローラは、ターゲット位置をデバイスの位置と比較して、ターゲット位置とデバイスの位置との間の差を決定するように構成されている。コントローラは、上記差に従って、上記差を最小化するように、ターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。すなわち、力がデバイスに加えられるときにデバイスをターゲット位置へと動かすか、又は、動かす可能性が高いターゲット力分布が決定される。
【0060】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各々が、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、複数の時点において圧力センサデータを監視するように構成されている。コントローラは、複数の時点のうちの第1の時点よりも遅い、複数の時点のうちの第2の時点における圧力センサデータの変化を決定する。コントローラは、圧力センサデータの変化に従ってターゲット力分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者側におけるデバイスに対する圧力の測定に従って非ニュートン流体の粘度を制御するように構成される。
【0061】
所定の閾値を超える圧力センサデータの変化が、患者の胸部に対する損傷を示す。すなわち、CPRデバイスの患者側上の圧力センサの圧力プロファイルに対する変化によって、例えば、患者の肋骨などの骨の損傷が検出される。
【0062】
コントローラは、最近取得された圧力センサデータを使用してターゲット力分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、デバイスの患者側においてより最近検出された圧力に基づいてNNF流体の粘度を動的に制御する。例えば、圧力センサは、患者側の圧力を測定し、コントローラは、測定された圧力に基づいて患者の胸部上のデバイスの位置を決定する。代替的に又は付加的に、コントローラは、測定された圧力を使用して、例えば、骨折などの患者に対する損傷を決定する。コントローラは、このとき、デバイスの位置及び/又は患者に対する損傷に適したターゲット力分布プロファイルを満たすように、NNFの粘度を変化させる。たとえば、測定された圧力が、患者に対する損傷がないことを決定づける場合、コントローラは、相対的に高い粘度をもたらすエネルギーをNNFに加え、結果、デバイスの剛性が増大され、より多くの力が患者に伝達される。逆に、測定された力から患者に対する損傷が決定される場合、コントローラは、NNFに粘度を低減するエネルギーを加え、結果、患者に対するさらなる傷害の危険性を最小限に抑えるように、デバイスの剛性が低減され、より少ない力が患者に伝達される。
【0063】
コントローラは、例えば、力センサ、患者センサ及びユーザセンサなどの複数のセンサからの情報に基づいて、ターゲット力分布プロファイルを決定し、NNFの可変粘度を制御する。例えば、複数のセンサからのセンサデータがコンパイルされて、ユーザ及び/若しくは患者の状態、並びに、胸部圧迫の品質及び/若しくは力が決定される。代替的に、最近取得されたセンサデータが使用されて、ターゲット力分布プロファイルが決定され、したがって、データのタイプにかかわらず、NNFの粘度が制御される。代替的に、いくつかのセンサは、他のセンサよりも正確で、信頼性があり、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザの状態をよく示すことが知られており、そのため、センサデータを分析し、ターゲット力分布プロファイルを決定するときに、これらのセンサからのセンサデータが、選好して重み付けされる。代替的に又は付加的に、センサはランク付けされ、ターゲット力分布プロファイルがそれについて決定されるセンサデータは、同位に又はより高くランク付けされたセンサからのより最近のデータが取得されるときにのみ置き換えられる。センサデータは、CPRの供与中に取得され、NNFの粘度は、取得されたデータに基づいて制御され、結果、粘度はCPRの供与中に動的に制御される。
【0064】
本発明は、デバイス態様に対応する方法態様に及ぶ。
【0065】
別の態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法であって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に非ニュートン流体から形成され、当該非ニュートン流体の粘度が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からのデバイスの力分布プロファイルを調整するように、エネルギーが加わることに応答して変化するように構成されており、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、複数の時点におけるデバイスの加速度の加速度データ、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、ユーザによってデバイスに加えられる力から、ターゲット力分布プロファイルを患者に与えるように、非ニュートン流体にエネルギーを加えることによって、非ニュートン流体の粘度を制御するステップとを有する、制御方法が提供される。
【0066】
したがって、一態様の一実施形態によれば、CPRデバイスの可変粘度を制御する方法も提供される。可変粘度は、CPRデバイスから及び/又はCPRデバイスを備えるシステムの要素から取得される1つ以上のデータタイプに基づいて制御される。
【0067】
デバイス態様の特徴及び部分特徴は方法態様に適用され、逆も真である。
【0068】
本発明は、コンピューティングデバイス上で実行されると、本発明の方法態様のいずれか又はその任意の組み合わせによる制御方法を実行するコンピュータプログラム態様に及ぶ。
【0069】
別の態様の一実施形態によれば、コンピューティングデバイス上で実行されると、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法を実行するコンピュータプログラムであって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に非ニュートン流体から形成され、当該非ニュートン流体の粘度が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からのデバイスの力分布プロファイルを調整するように、エネルギーが加わることに応答して変化するように構成されており、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、複数の時点におけるデバイスの加速度の加速度データ、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、ユーザによってデバイスに加えられる力から、ターゲット力分布プロファイルを患者に与えるように、非ニュートン流体にエネルギーを加えることによって、非ニュートン流体の粘度を制御するステップとを有する、コンピュータプログラムが提供される。
【0070】
別の態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスであって、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からの、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上における横方向分布プロファイルを調整するように制御されるように構成されている可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成されている、CPRデバイスが提供される。
【0071】
したがって、本発明の本態様の実施形態によれば、デバイスの表面は、少なくとも部分的に、可変接触特性を有する材料、すなわち、変化する接触特性を有する材料から形成される。接触特性は、患者側及び/又はユーザ側における横方向分布プロファイルが、例えば、胸部圧迫の力など、ユーザ側に加えられる力に応答して調整されるように、制御される。例えば、接触特性は、患者側におけるデバイスの横力が、横力を増減させることによって調整されるように、制御される。
【0072】
CPRデバイスの少なくとも一部分を形成する材料の可変接触特性によって、ユーザによってデバイスに力が加えられるときに制御される、当該材料を含む表面におけるデバイスの横方向分布プロファイルがもたらされることが分かる。横方向分布プロファイルは、デバイスによる横力の分布と考えられ、デバイスが患者の胸部に位置付けられ、患者側が少なくとも部分的に可変接触特性を有する材料から形成される場合、患者側における患者に対する横力の分布と考えられる。同様に、ユーザの手がデバイスのユーザ側と係合し、ユーザ側が少なくとも部分的に可変接触特性を有する材料から形成される場合、横方向分布プロファイルは、ユーザ側におけるユーザの手に対する横力の分布と考えられる。横力は、デバイスの表面又はデバイスが接触している表面に平行である力と考えられる。横力は、外側矢状面上の任意の方向にある。
【0073】
横方向分布プロファイルを調整することによって、CPR供与の有効性が制御され、最大化される。すなわち、CPRの供与中に患者に加えられる胸部圧迫の有効性は、患者に対する最大の影響を有し、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザへの損傷を最小限に抑えるように、調整される。したがって、可変接触特性を有する材料は、デバイスのユーザ側に力が加えられるときに、患者の血行動態活性を調整する。例えば、可変接触特性を有する材料を制御することによって、例えば、胸部圧迫がより効果的である患者の胸部上の位置にデバイスを位置付けるように、デバイスの位置が変更又は維持される。したがって、可変接触特性を有する材料によるデバイスの横方向分布プロファイルの調整によって、患者の血行動態活性が改善される。可変接触特性は、ユーザによってデバイスに力が加えられるときにデバイスを位置付けるように、特定の横方向においてデバイスの動きに抵抗するか又はこれを促進する。さらに、例えば、損傷し又は傷ついた皮膚及び擦り傷などの、患者及び/又はユーザへの損傷が、接触特性を制御することによって最小限に抑えられる。
【0074】
デバイスは、ユーザによってデバイスに加えられる力から、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上においてターゲット横方向分布プロファイルを与えるように、材料の可変接触特性を制御するように構成されているコントローラを備える。すなわち、デバイスの横方向分布プロファイルがコントローラによってターゲット横方向分布プロファイルを達成するように調整されるように、可変接触特性が、コントローラによって制御される。コントローラは、プロセッサとして参照される。
【0075】
コントローラは、患者における所望の血行動態活性を達成するか又は達成する可能性が高いターゲット横方向分布プロファイルに対応するデバイスの横方向分布プロファイルを与えるように、材料の可変接触特性を制御する。コントローラは、ターゲット横方向分布プロファイルを決定し、次いで、デバイスの横方向分布プロファイルが決定されているターゲット横方向分布プロファイルに一致するか又は少なくとも一致に向かうように、材料の可変接触特性を制御する。したがって、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に、コントローラによって動的に制御されるように構成されている可変接触特性を有する材料から形成される。
【0076】
接触特性は、摩擦及び吸着のうちの1つ以上である。すなわち、材料は可変摩擦特性及び/又は可変吸着特性を有すると考えられる。したがって、材料の摩擦及び/又は吸着が横方向分布プロファイルを変化させるように、材料の摩擦及び/又は吸着が制御及び変化される。材料の摩擦及び/又は吸着の増大が、結果として、上記表面において、その表面とデバイスが接触している表面との間で横力を増大させることが分かる。逆に、材料の摩擦及び/又は吸着の低減が、結果として、上記表面において、その表面とデバイスが接触している表面との間で横力を低減することが分かる。材料の摩擦及び/又は付着特性は、動的に制御される。
【0077】
患者側が少なくとも部分的に可変接触特性を有する材料から形成される場合、デバイスから患者の胸部への横力は、接触特性が制御されるときに変化することが理解されよう。同様に、ユーザ側が少なくとも部分的に可変接触特性を有する材料から形成される場合、ユーザの手とデバイスとの間の力は、接触特性が制御されるときに変化することが理解されよう。したがって、デバイスの横方向分布プロファイルは、摩擦及び/又は吸着などの、材料の接触特性を制御することによって調整される。
【0078】
デバイスは、デバイスに加えられる力の力センサデータを取得するように構成されている力センサを備える。コントローラは、力センサデータに従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、デバイスに加えられる力の測定に従って可変接触特性を制御するように構成される。
【0079】
力センサは、力センサデータとして、CPRの供与中にユーザによってデバイスに加えられる力などの、CPRデバイスに加えられる力を測定する。力センサは、横力、縦力及び垂直(法線)力のうちの1つ以上を測定するように構成されている。力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、デバイスに加えられる力を連続的に測定する。力センサは、力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、力センサデータは、測定された力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0080】
力センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の力センサが利用されてもよく、各力センサは、別の力センサと異なるタイプ又は同じタイプの力を測定する。力センサはまた、圧力センサと考えられてもよい。
【0081】
コントローラは、最近取得された力センサデータを使用してターゲット横方向分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザに対する損傷を最小限に抑えるように、デバイスに加えられる、より最近決定された力に基づいて材料の接触特性を動的に制御する。例えば、力センサは、胸部圧迫中にデバイスに加えられる力を測定し、コントローラは、力が同様である可能性が高い後続の胸部圧迫が、患者に対して最大の肯定的影響を有するように、接触特性を変化させる。
【0082】
デバイスは、患者の状態に関係する患者センサデータを収集するように構成されている患者センサと通信可能に結合される。デバイスは、患者センサから患者センサデータを受信するように構成されている。コントローラは、患者センサデータに従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、患者センサデータが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の状態を示すデータに基づいて材料の接触特性を制御するように構成される。患者センサデータは、患者の状態を表す、示す、又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0083】
患者センサは、患者センサデータとして、患者の状態を示す患者のパラメータ又は兆候を測定する。例えば、患者センサは、患者の以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、水和、油性及び弾性などの皮膚状態、冠動脈かん流圧(CPP)、脳への血液の供与、身体を巡る注入されている治療の供与、内出血又は外出血の検出及び分析、皮下軟部組織及び骨の損傷の検出、並びに、血行動態挙動のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。
【0084】
患者センサは、心筋及び隣接する血管系の活動をイメージング及び決定するための標準的な超音波イメージング又はUWBレーダを含む。患者センサは、患者の血圧を測定するための超音波イメージングを含む。付加的に又は代替的に、患者センサは、CPRデバイス上の圧力プロファイルに対する変化を介して検出される、例えば、肋骨などの骨の損傷を決定するための1つ以上の圧力センサを含む。患者センサは、血行動態挙動を測定し、当該挙動から循環系を巡る注入されている治療の供与を予測する。患者センサは、患者の皮膚の水和を決定するための静電容量測定、患者の皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、患者の皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。
【0085】
患者センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者パラメータ又は兆候を連続的に測定する。患者センサは、患者センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。患者センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、患者センサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0086】
コントローラは、最近取得された患者センサデータを使用してターゲット横方向分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者及び/又はユーザにとって最も有益になる横方向分布プロファイルを供与するように、患者の状態に基づいて材料の接触特性を動的に制御する。
【0087】
患者センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の患者センサが利用されてもよく、各患者センサは、別の患者センサと異なる又は同じである患者のパラメータ又は兆候を測定する。
【0088】
デバイスは、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータを収集するように構成されているユーザセンサと通信可能に結合される。デバイスは、ユーザセンサからユーザセンサデータを受信するように構成されている。コントローラは、ユーザセンサデータに従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、ユーザセンサデータが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザの状態を示すデータに基づいて材料の接触特性を制御するように構成される。ユーザセンサデータは、ユーザの状態を表す、示す、又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0089】
ユーザセンサは、ユーザセンサデータとして、ユーザの状態を示すユーザのパラメータ又は兆候を測定する。例えば、ユーザセンサは、ユーザの以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、皮膚状態、身体の動き、感情状態、呼吸速度、並びに身体形状及び位置のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。
【0090】
ユーザセンサは、ユーザによって装着され、身体の動き、形状及び/又は位置付けを決定するために使用されるウェアラブルセンサを含む。ユーザセンサは、心臓不整脈及び/又は血圧を決定するためのセンサを有するスマートデバイスを含む。ユーザセンサは、ユーザの画像をキャプチャし、ユーザの状態を決定するためのカメラを備える。例えば、状態は、取得された画像内で呼吸速度及び/又は顔の表情の不快感を分析することによって決定される。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。ユーザセンサは、ユーザの皮膚の水和を決定するための静電容量測定、ユーザの皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、ユーザの皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの手がユーザ側に接触するときにユーザの心拍を決定するためにデバイスのユーザ側に位置付けられた圧力センサ又は光センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの音響データをキャプチャするように構成されているマイクロフォン含み、コントローラは、キャプチャされた音響データを分析して患者の状態を決定するように構成されている。ユーザセンサは、ユーザの心拍を測定するように構成されている心拍センサを含む。
【0091】
ユーザセンサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、ユーザパラメータ又は兆候を連続的に測定する。ユーザセンサは、ユーザセンサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。ユーザセンサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、ユーザセンサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0092】
コントローラは、最近取得されたユーザセンサデータを使用してターゲット横方向分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者及び/又はユーザにとって最も有益になる横方向分布プロファイルを供与するように、ユーザの状態に基づいて材料の接触特性を動的に制御する。
【0093】
ユーザセンサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のユーザセンサが利用されてもよく、各ユーザセンサは、別のユーザセンサと異なる又は同じであるユーザのパラメータ又は兆候を測定する。
【0094】
デバイスは、メモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリから患者に関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、患者に関する情報に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。
【0095】
患者に関する情報は、患者の年齢、患者の健康状態、患者のバイタルサイン、患者の医療診断、及び、患者へのCPRの過去の供与に関係する履歴患者データのうちの1つ以上を含む。したがって、患者に関する情報が取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者に関する情報に基づいて材料の接触特性を制御するように構成される。
【0096】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、患者に関する情報を記憶する。
【0097】
デバイスは、メモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリからユーザに関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、ユーザに関する情報に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。
【0098】
ユーザに関する情報は、ユーザの年齢、ユーザの身元、ユーザの健康状態、ユーザのバイタルサイン、ユーザの医療診断、CPRの過去の供与に関係する履歴ユーザデータ、ユーザの身体寸法、ユーザの体重、ユーザの医師免状、ユーザの医学訓練、及びユーザの健康レベルのうちの1つ以上を含む。したがって、ユーザに関する情報が取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザに関する情報に基づいて材料の接触特性を制御するように構成される。
【0099】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、ユーザに関する情報を記憶する。さらに、患者に関する情報は、ユーザに関する情報と同じメモリ又は異なるメモリに記憶される。
【0100】
可変接触特性を有する材料から形成されている患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、複数の材料セクションに分離される。コントローラは、複数の材料セクションのうちの1つの材料セクションの材料の可変接触特性を、複数の材料セクションのうちの他の材料セクションのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。したがって、デバイスは、他のセクション又はセル内のとは無関係に制御される可変接触特性を有する材料から各々が形成されている複数のセクション又はセルを含む。
【0101】
各セクションにおける摩擦及び/又は吸着が個別に制御され、コントローラは、複数の材料セクションに従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定する。したがって、材料セクションは、可変接触特性を有する材料から形成されている患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上にわたる画素化制御を可能にする。例えば、皮膚が損傷した領域におけるセルの摩擦/吸着が低減されると同時に、デバイスが一定の位置から滑り落ちるか又は動くことを防止するのに十分な摩擦/吸着が、損傷していない皮膚領域において材料セクションに加えられる。
【0102】
コントローラは、電子吸着、超音波、及び表面設計のうちの1つ以上を使用して、材料の可変接触特性を制御するように構成されている。したがって、上記の刺激のうちの1つ以上を使用して、材料の接触特性が制御される。使用される刺激のタイプは、材料の特性及び/又はCPRデバイスの用途によって決定される。
【0103】
可変接触特性を有する材料から形成されている患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、複数の材料セクションに分離される。複数の材料セクションのうちの1つの材料セクションの材料は、複数の材料セクションのうちの他の材料セクションのうちの1つ以上の材料とは異なってもよい。
【0104】
デバイスは、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データを取得するように構成されているカメラと通信可能に結合される。デバイスは、カメラから画像データを受信するように構成されている。コントローラは、患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、画像データが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の胸部に対するデバイスの位置を特定する画像データに従って材料の接触特性を制御するように構成される。
【0105】
カメラは、画像データとして、所与の期間にわたる、特定の時点における、又は所与の期間にわたる複数の時点における画像を連続的にキャプチャする。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。カメラは、画像データを取得し、そのデータをコントローラに提供する。画像データのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。コントローラは、画像データを取得し、画像処理を実施して、デバイス、患者、及び、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。ターゲット横方向分布プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。例えば、ユーザがデバイスに力を加えるときにデバイスが患者の胸部上のターゲット位置に向かって動くか、又は、ターゲット位置に向かって動く可能性が高いように、材料の摩擦及び/又は吸着が増減される。
【0106】
カメラは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。各々が異なる角度から画像データを取得するように構成されている複数のカメラが利用されてもよい。
【0107】
コントローラは、最近取得された画像データを使用してターゲット横方向分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザに対する損傷を最小限に抑えるように、患者の胸部に対するデバイスの特定されている位置に基づいて材料の接触特性を動的に制御する。例えば、コントローラは、胸部圧迫中にデバイスの位置を決定し、コントローラは、後続の胸部圧迫が、決定された位置において患者に対して最大の肯定的影響を有するか、又は、患者及び/又はユーザに対する損傷が最小になるように、材料の摩擦及び/又は吸着を変化させる。
【0108】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各々が、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、取得された圧力センサデータを使用して患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者側におけるデバイスに対する圧力の測定に従って材料の接触特性を制御するように構成される。
【0109】
圧力センサは、圧力センサデータとして、CPRデバイスの患者側の圧力を測定する。圧力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者側の圧力を連続的に測定する。圧力センサのすべてが同時にアクティブでなくてもよく、圧力センサは、1つ以上の群に分割されてもよく、各群が、圧迫サイクルの異なる時点又は異なる部分における圧力を測定する。圧力センサは、圧力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。圧力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、圧力センサデータは、測定された圧力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された圧力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0110】
コントローラは、圧力センサデータを取得し、圧力センサデータの分析を実施して、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。例えば、センサ上のより高い圧力読み値は、デバイスが、太陽神経叢及び肋骨などの骨構造上に位置付けられていることを示し、より低い圧力読み値は、肋骨と横隔膜の縁部との間の間隙などの軟組織上の位置を示す。ターゲット横方向分布プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。
【0111】
可変接触特性を有する材料から形成されている患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、複数の材料セクションに分離される。コントローラは、複数の材料セクションのうちの1つの材料セクションの材料の可変接触特性を、その材料セクションにおいて測定される圧力に基づいて、複数の材料セクションのうちの他の材料セクションのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。
【0112】
コントローラは、患者の胸部に対するデバイスのターゲット位置を決定する。コントローラは、ターゲット位置をデバイスの位置と比較して、ターゲット位置とデバイスの位置との間の差を決定するように構成されている。コントローラは、上記差に従って、上記差を最小化するように、ターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。すなわち、力がデバイスに加えられるときにデバイスをターゲット位置へと動かすか、又は、動かす可能性が高いターゲット横方向分布が決定される。
【0113】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各々が、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、複数の時点において圧力センサデータを監視するように構成されている。コントローラは、複数の時点のうちの第1の時点よりも遅い、複数の時点のうちの第2の時点における圧力センサデータの変化を決定する。コントローラは、圧力センサデータの変化に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者側におけるデバイスに対する圧力の測定に従って材料の接触特性を制御するように構成される。
【0114】
所定の閾値を超える圧力センサデータの変化が、患者の胸部に対する損傷を示す。すなわち、CPRデバイスの患者側上の圧力センサの圧力プロファイルに対する変化によって、例えば、患者の肋骨などの骨の損傷が検出される。したがって、コントローラは、例えば、損傷している者として識別される位置に配置されている材料の摩擦及び/又は吸着を低減する。
【0115】
コントローラは、最近取得された圧力センサデータを使用してターゲット横方向分布プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザに対する損傷を最小限に抑えるように、デバイスの患者側において検出される圧力に基づいて材料の接触特性を動的に制御する。
【0116】
コントローラは、例えば、デバイスのサイズ及び/又は形状などの、デバイスに関する情報に従ってターゲット横方向分布プロファイルを決定するように構成されている。デバイスに関する情報は、メモリ上に存在し、及び/又は、メモリから取得される。したがって、コントローラは、所望の位置に達するまで、圧迫サイクル中に力を加えることによって、CPRデバイスが制御された様式で横に動くように、デバイスの形状及び/又はサイズとともに可変接触特性を制御する。
【0117】
コントローラは、例えば、力センサ、患者センサ及びユーザセンサなどの複数のセンサからの情報に基づいて、材料の接触特性を制御する。例えば、複数のセンサからのセンサデータがコンパイルされて、ユーザ及び/若しくは患者の状態、胸部圧迫の品質及び/若しくは力、並びに/又は、患者の胸部上のデバイスの位置が決定される。代替的に、最近取得されたセンサデータが使用されて、ターゲット横方向分布プロファイルが決定され、したがって、データのタイプにかかわらず、材料の接触特性が制御される。代替的に、いくつかのセンサは、他のセンサよりも正確で、信頼性があり、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザの状態をよく示すことが知られており、そのため、センサデータを分析し、ターゲット横方向分布プロファイルを決定するときに、これらのセンサからのセンサデータが、選好して重み付けされる。代替的に又は付加的に、センサはランク付けされ、ターゲット横方向分布プロファイルがそれについて決定されるセンサデータは、同位に又はより高くランク付けされたセンサからのより最近のデータが取得されるときにのみ置き換えられる。センサデータは、CPRの供与中に取得され、接触特性は、取得されたデータに基づいて制御され、結果、接触特性はCPRの供与中に動的に制御される。
【0118】
本発明は、デバイス態様に対応する方法態様に及ぶ。
【0119】
特に、別の態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法であって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からの、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上における横方向分布プロファイルを調整するように制御されるように構成されている可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成されており、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、ユーザによってデバイスに加えられる力から、表面においてターゲット横方向分布プロファイルを与えるように、材料の可変接触特性を制御するステップとを有する、制御方法が提供される。
【0120】
したがって、一態様の一実施形態によれば、CPRデバイスの可変接触特性を制御する方法も提供される。可変接触特性はデバイスから及び/又はCPRデバイスを備えるシステムの要素から取得される1つ以上のデータタイプに基づいて制御される。
【0121】
デバイス態様の特徴及び部分特徴は方法態様に適用され、逆も真である。
【0122】
本発明は、コンピューティングデバイス上で実行されると、本発明の方法態様のいずれか又はその任意の組み合わせによる制御方法を実行するコンピュータプログラム態様に及ぶ。
【0123】
特に、別の態様の一実施形態によれば、コンピューティングデバイス上で実行されると、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法を実行するコンピュータプログラムであって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側とを備え、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上が、ユーザによってデバイスに加えられデバイスを通じて患者へと伝達される力からの、患者側の表面及びユーザ側の表面のうちの1つ以上における横方向分布プロファイルを調整するように制御されるように構成されている可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成されており、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、ユーザによってデバイスに加えられる力から、表面においてターゲット横方向分布プロファイルを与えるように、材料の可変接触特性を制御するステップとを有する、コンピュータプログラムが提供される。
【0124】
別の態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスであって、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側と、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の形状プロファイルを調整するように、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の外形を少なくとも部分的に変化させるように構成されているアクチュエータとを備える、CPRデバイスが提供される。
【0125】
したがって、本発明の本態様の実施形態によれば、デバイスの外形は、少なくとも部分的に、デバイスの全体的な形状が変化されるように変化される。したがって、デバイスの形状プロファイルが、アクチュエータの動作によって調整される。患者側及び/又はユーザ側におけるデバイスの形状プロファイルを調整することによって、CPR供与の有効性が制御され、最大化される。すなわち、CPRの供与中に患者に加えられる胸部圧迫の有効性は、患者に対する最大の影響を有し、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザへの損傷を最小限に抑えるように、調整される。これは、ユーザによって加えられる力から、変化されるか、又は、デバイスを通じて伝達される力を変化させる、デバイスの可変形状に起因する。したがって、形状プロファイルを調整することによって、患者の血行動態活性/血行動態を最適化するように、ユーザによってデバイスに加えられ、デバイスを通じて患者に伝達される力から、デバイスの力分布プロファイルが調整される。したがって、アクチュエータによるデバイスの形状プロファイルの調整によって、患者の血行動態活性が改善される。
【0126】
デバイスの形状プロファイルは、デバイスの形状又は外側形態/外形と考えられる。したがって、形状プロファイルは、ユーザ側の外形及び患者側の外形を含む。したがって、アクチュエータは、デバイスの形状を変化させるように操作される。アクチュエータの動作が、少なくとも部分的に、デバイスの厚さを変化させることも理解される。
【0127】
デバイスは、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上のターゲット形状プロファイルを与えるように、アクチュエータを制御するように構成されているコントローラを備える。すなわち、デバイスの形状プロファイルがコントローラによってターゲット力分布プロファイルを達成するように調整されるように、アクチュエータが、コントローラによって制御される。コントローラは、プロセッサとして参照される。
【0128】
ターゲット形状プロファイルは、ターゲット力分布プロファイルに対応し、結果、コントローラは、デバイスに力が加えられるときにターゲット力分布プロファイルを与えるか又は与える可能性が高い形状プロファイルを与えるように、アクチュエータを動作させる。したがって、コントローラは、患者における所望の血行動態活性を達成するか又は達成する可能性が高いターゲット力分布プロファイルに対応するデバイスの力分布プロファイルを与えるように、アクチュエータを制御する。コントローラは、ターゲット力分布プロファイルを決定し、次いで、決定されているターゲット力分布プロファイルに一致するか又は少なくとも一致に向かう力分布プロファイルに対応する形状プロファイルを達成するように、アクチュエータを動作させる。したがって、デバイスの形状プロファイルが、コントローラによって動的に制御される。
【0129】
コントローラは、アクチュエータを収縮及び拡張するように、アクチュエータを作動及び停止させるように構成されている。すなわち、コントローラによってアクチュエータを動作させることによって、アクチュエータが収縮及び拡張する。デバイス内でのアクチュエータの位置付け及び向きに応じて、アクチュエータの収縮及び拡張は、ユーザ側又は患者側の外形の少なくとも一部分を、それぞれ収縮及び拡張させる。例えば、コントローラは、ユーザ側及び/又は患者側の一部分がその側の残りの部分の上方に突出するように、アクチュエータを拡張させる。
【0130】
デバイスは、デバイスに加えられる力の力データを取得するように構成されている力センサを備える。コントローラは、力データに従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、デバイスに加えられる力の測定に従ってアクチュエータを制御するように構成される。したがって、力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、デバイスに加えられる力の測定に従ってアクチュエータを制御するように構成される。
【0131】
力センサは、力センサデータとして、CPRの供与中にユーザによってデバイスに加えられる力などの、CPRデバイスに加えられる力を測定する。力センサは、横力、縦力及び垂直(法線)力のうちの1つ以上を測定するように構成されている。力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、デバイスに加えられる力を連続的に測定する。力センサは、力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、力センサデータは、測定された力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0132】
力センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の力センサが利用されてもよく、各力センサは、別の力センサと異なるタイプ又は同じタイプの力を測定する。力センサはまた、圧力センサと考えられてもよい。
【0133】
コントローラは、最近取得された力センサデータを使用してターゲット形状プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、並びに/又は、患者及び/若しくはユーザに対する損傷を最小限に抑えるように、デバイスに加えられる力に基づいてアクチュエータの動作を動的に制御する。例えば、力センサは、胸部圧迫中にデバイスに加えられる力を測定し、コントローラは、力が同様である可能性が高い後続の胸部圧迫が、患者に対して最大の肯定的影響を有するように、アクチュエータを変化させる。たとえば、測定された力が相対的に低い場合、コントローラは、デバイスのサイズが増大され、より多くの力が患者に伝達されるように、アクチュエータを拡張させる。逆に、測定された力が相対的に高い場合、コントローラは、患者及び/又はユーザに対する傷害の危険性を最小限に抑えるように、デバイスのサイズが低減され、より少ない力が患者に伝達されるように、アクチュエータを収縮させる。
【0134】
デバイスは、患者の状態に関係する患者センサデータを収集するように構成されている患者センサと通信可能に結合される。デバイスは、患者センサから患者センサデータを受信するように構成されている。コントローラは、患者センサデータに従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、患者センサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の状態を示すデータに基づいてアクチュエータを制御するように構成される。患者センサデータは、患者の状態を表す、示す、又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0135】
患者センサは、患者センサデータとして、患者の状態を示す患者のパラメータ又は兆候を測定する。例えば、患者センサは、患者の以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、水和、油性及び弾性などの皮膚状態、冠動脈かん流圧(CPP)、脳への血液の供与、身体を巡る注入されている治療の供与、内出血又は外出血の検出及び分析、皮下軟部組織及び骨の損傷の検出、並びに、血行動態挙動のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。
【0136】
患者センサは、心筋及び隣接する血管系の活動をイメージング及び決定するための標準的な超音波イメージング又はUWBレーダを含む。患者センサは、患者の血圧を測定するための超音波イメージングを含む。付加的に又は代替的に、患者センサは、CPRデバイス上の圧力プロファイルに対する変化を介して検出される、例えば、肋骨などの骨の損傷を決定するための1つ以上の圧力センサを含む。患者センサは、血行動態挙動を測定し、当該挙動から循環系を巡る注入されている治療の供与を予測する。患者センサは、患者の皮膚の水和を決定するための静電容量測定、患者の皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、患者の皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。患者センサは、患者の画像をキャプチャするように構成されているカメラを含み、コントローラは、キャプチャされた画像を分析することによって患者の状態を決定するように構成されている。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。
【0137】
患者センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者パラメータ又は兆候を連続的に測定する。患者センサは、患者センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。患者センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、患者センサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0138】
コントローラは、最近取得された患者センサデータを使用してターゲット形状プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者にとって最も有益になる形状プロファイルを供与するように、患者の状態に基づいてアクチュエータを動的に制御する。
【0139】
患者センサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数の患者センサが利用されてもよく、各患者センサは、別の患者センサと異なる又は同じである患者のパラメータ又は兆候を測定する。
【0140】
デバイスは、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータを収集するように構成されているユーザセンサと通信可能に結合される。デバイスは、ユーザセンサからユーザセンサデータを受信するように構成されている。コントローラは、ユーザセンサデータに従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、ユーザセンサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザの状態を示すデータに基づいてアクチュエータを制御するように構成される。ユーザセンサデータは、ユーザの状態を表す、示す、又は当該状態に関係するものと考えられる。
【0141】
ユーザセンサは、ユーザセンサデータとして、ユーザの状態を示すユーザのパラメータ又は兆候を測定する。例えば、ユーザセンサは、ユーザの以下のパラメータ、すなわち、心拍、血圧、皮膚状態、身体の動き、感情状態、呼吸速度、並びに身体形状及び位置のうちの1つ以上を示すセンサデータを取得する。
【0142】
ユーザセンサは、ユーザによって装着され、身体の動き、形状及び/又は位置付けを決定するために使用されるウェアラブルセンサを含む。ユーザセンサは、心臓不整脈及び/又は血圧を決定するためのセンサを有するスマートデバイスを含む。ユーザセンサは、ユーザの画像をキャプチャし、ユーザの状態を決定するためのカメラを備える。例えば、状態は、取得された画像内で呼吸速度及び/又は顔の表情の不快感を分析することによって決定される。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。ユーザセンサは、ユーザの皮膚の水和を決定するための静電容量測定、ユーザの皮膚の油性及び発赤を決定するための光センサ、並びに/又は、ユーザの皮膚の弾性を決定するための振動センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの手がユーザ側に接触するときにユーザの心拍を決定するためにデバイスのユーザ側に位置付けられた圧力センサ又は光センサを含む。ユーザセンサは、ユーザの音響データをキャプチャするように構成されているマイクロフォン含み、コントローラは、キャプチャされた音響データを分析して患者の状態を決定するように構成されている。ユーザセンサは、ユーザの心拍を測定するように構成されている心拍センサを含む。
【0143】
ユーザセンサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、ユーザパラメータ又は兆候を連続的に測定する。ユーザセンサは、ユーザセンサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。ユーザセンサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、ユーザセンサデータは、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定されたパラメータ若しくは兆候が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0144】
コントローラは、最近取得されたユーザセンサデータを使用してターゲット形状プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者及び/又はユーザにとって最も有益になる形状プロファイルを供与するように、ユーザの状態に基づいてアクチュエータを動的に制御する。
【0145】
ユーザセンサは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のユーザセンサが利用されてもよく、各ユーザセンサは、別のユーザセンサと異なる又は同じであるユーザのパラメータ又は兆候を測定する。
【0146】
デバイスは、患者に関する情報を記憶するように構成されているメモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリから患者に関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、患者に関する情報に従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。
【0147】
患者に関する情報は、患者の年齢、患者の健康状態、患者のバイタルサイン、患者の医療診断、及び、患者へのCPRの過去の供与に関係する履歴患者データのうちの1つ以上を含む。したがって、患者に関する情報が取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者に関する情報に基づいてアクチュエータを制御するように構成される。
【0148】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、患者に関する情報を記憶する。
【0149】
デバイスは、ユーザに関する情報を記憶するように構成されているメモリと通信可能に結合される。デバイスは、メモリからユーザに関する情報を取得するように構成されている。コントローラは、ユーザに関する情報に従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。
【0150】
ユーザに関する情報は、ユーザの年齢、ユーザの身元、ユーザの健康状態、ユーザのバイタルサイン、ユーザの医療診断、CPRの過去の供与に関係する履歴ユーザデータ、ユーザの身体寸法、ユーザの体重、ユーザの医師免状、ユーザの医学訓練、及びユーザの健康レベルのうちの1つ以上を含む。したがって、ユーザに関する情報が取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、ユーザに関する情報に基づいてアクチュエータを制御するように構成される。
【0151】
メモリは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。複数のメモリが利用されてもよく、各メモリは、別のメモリに記憶されている情報と異なる又は同じである、ユーザに関する情報を記憶する。さらに、患者に関する情報は、ユーザに関する情報と同じメモリ又は異なるメモリに記憶される。
【0152】
デバイスは、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データを取得するように構成されているカメラと通信可能に結合される。デバイスは、カメラから画像データを受信するように構成されている。コントローラは、画像データを使用して患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、画像データが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者の胸部に対するデバイスの位置を特定する画像データに従ってアクチュエータを制御するように構成される。
【0153】
カメラは、画像データとして、所与の期間にわたる、特定の時点における、又は所与の期間にわたる複数の時点における画像を連続的にキャプチャする。カメラは、個々のフレーム又は連続する複数のフレームをキャプチャする。カメラは、画像データを取得し、そのデータをコントローラに提供する。画像データのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。コントローラは、画像データを取得し、画像処理を実施して、デバイス、患者、及び、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。ターゲット形状プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。例えば、患者の胸部上の特定の位置は、より大きい外形を有するデバイスにより適しており、特定の位置は、より小さいデバイスにより適している。
【0154】
カメラは、CPRデバイスの一部分として提供され、又は、デバイスを備えるシステムの一部分として提供される。各々が異なる角度から画像データを取得するように構成されている複数のカメラが利用されてもよい。
【0155】
コントローラは、最近取得された画像データを使用してターゲット形状プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、患者の胸部に対するデバイスの識別された位置に基づいてアクチュエータを動的に制御する。例えば、コントローラは、胸部圧迫中にデバイスの位置を決定し、コントローラは、後続の胸部圧迫が、決定された位置において患者に対して最大の肯定的影響を有するように、アクチュエータを動作させる。
【0156】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各々が、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、取得された圧力センサデータを使用して患者の胸部に対するデバイスの位置を決定し、患者の胸部に対するデバイスの位置に従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者側におけるデバイスに対する圧力の測定に従ってアクチュエータを制御するように構成される。
【0157】
圧力センサは、圧力センサデータとして、CPRデバイスの患者側の圧力を測定する。圧力センサは、所与の期間にわたって、特定の時点において、又は所与の期間にわたる複数の時点において、患者側の圧力を連続的に測定する。圧力センサのすべてが同時にアクティブでなくてもよく、圧力センサは、1つ以上の群に分割されてもよく、各群が、圧迫サイクルの異なる時点又は異なる部分における圧力を測定する。圧力センサは、圧力センサデータを取得し、そのデータをコントローラに提供する。圧力センサデータのすべて又は一部のみが、コントローラに提供される。例えば、圧力センサデータは、測定された圧力が所定の閾値を超える場合、及び/又は、測定された圧力が所定量だけ変化した場合にのみ、コントローラに提供される。
【0158】
コントローラは、圧力センサデータを取得し、圧力センサデータの分析を実施して、患者の胸部に対するデバイスの位置を識別する。例えば、センサ上のより高い圧力読み値は、デバイスが、太陽神経叢及び肋骨などの骨構造上に位置付けられていることを示し、より低い圧力読み値は、肋骨と横隔膜の縁部との間の間隙などの軟組織上の位置を示す。ターゲット形状プロファイルは、少なくとも部分的に、デバイスの位置によって決定される。例えば、患者の胸部上の特定の位置は、少なくとも部分的に拡大された外形を必要とする。
【0159】
コントローラは、患者の胸部に対するデバイスのターゲット位置を決定する。コントローラは、ターゲット位置をデバイスの位置と比較して、ターゲット位置とデバイスの位置との間の差を決定するように構成されている。コントローラは、上記差に従って、上記差を最小化するように、ターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。すなわち、力がデバイスに加えられるときにデバイスをターゲット位置へと動かすか、又は、動かす可能性が高いターゲット形状プロファイルが決定される。
【0160】
デバイスは、デバイスの患者側に配置された複数の圧力センサを備え、各々が、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを取得するように構成されている。コントローラは、複数の時点において圧力センサデータを監視するように構成されている。コントローラは、複数の時点のうちの第1の時点よりも遅い、複数の時点のうちの第2の時点における圧力センサデータの変化を決定する。コントローラは、圧力センサデータの変化に従ってターゲット形状プロファイルを決定するように構成されている。したがって、圧力センサデータが取得及び分析されて、ターゲット形状プロファイルが決定され、結果、コントローラは、患者側におけるデバイスに対する圧力の測定に従ってアクチュエータを制御するように構成される。
【0161】
所定の閾値を超える圧力センサデータの変化が、患者の胸部に対する損傷を示す。すなわち、CPRデバイスの患者側上の圧力センサの圧力プロファイルに対する変化によって、例えば、患者の肋骨などの骨の損傷が検出される。
【0162】
コントローラは、最近取得された圧力センサデータを使用してターゲット形状プロファイルを定期的に決定し直すように構成されている。したがって、コントローラは、患者に供与される胸部圧迫の有効性を最大化するように、デバイスの患者側において検出された圧力に基づいてアクチュエータを動的に制御する。例えば、圧力センサは、患者側の圧力を測定し、コントローラは、測定された圧力に基づいて患者の胸部上のデバイスの位置を決定する。代替的に又は付加的に、コントローラは、測定された圧力を使用して、例えば、骨折などの患者に対する損傷を決定する。コントローラは、このとき、デバイスの位置及び/又は患者に対する損傷に適したターゲット形状プロファイルを満たすように、アクチュエータを動作させる。
【0163】
デバイスは、複数のアクチュエータを備えてもよい。コントローラは、複数のアクチュエータのうちの第1のアクチュエータを、複数のアクチュエータのうちの他のアクチュエータのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。したがって、デバイスは、複数のアクチュエータを備えてもよく、各アクチュエータが、他のアクチュエータとは無関係に制御される。したがって、個別にアクチュエータを動作させることによって、患者側及び/又はユーザ側にわたる画素化制御が可能になる。すなわち、ユーザ側及び/又は患者側の外形の一部分は、その側の別の部分とは無関係に変化される。したがって、外形の変化は、アクチュエータに対応する位置に局所化される。コントローラは、複数のアクチュエータに従ってターゲット形状プロファイルを決定する。
【0164】
デバイスは、各々が対応する圧力センサを設けられている複数のアクチュエータを備えてもよい。コントローラは、複数のアクチュエータのうちの第1のアクチュエータを、対応する圧力センサによって測定される圧力に基づいて、複数のアクチュエータのうちの他のアクチュエータのうちの1つ以上とは無関係に制御するように構成されている。
【0165】
アクチュエータは、液圧増幅自己修復静電アクチュエータであってもよい。デバイスは、ユーザ側及び患者側のうちの1つ以上に埋め込まれ、可撓性表面によって被覆される、液圧増幅自己修復静電(HASEL)アクチュエータのアレイを備える。可撓性表面は、例えば、せん断増粘流体などの非ニュートン流体によって充填される。1つのアクチュエータを電気的に作動させる結果として、隣接するアクチュエータに対して、そのアクチュエータの位置におけるデバイスの厚さが変化し、結果として、その表面は、アクチュエータ間に勾配を形成する。したがって、デバイスの形状プロファイル及び結果もたらされる力分布プロファイルが、アクチュエータを制御することによって調整される。
【0166】
コントローラは、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の一部分が、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の表面から突出するように、アクチュエータを制御するように構成されている。すなわち、アクチュエータは、ユーザ側及び/又は患者側の一区画を、その側の表面の残りの部分の上方に突出させるように、操作される。したがって、ユーザなどからデバイスに加えられる垂直力が、横成分及び垂直成分をも含むように変換される。したがって、デバイスの形状プロファイル及び結果もたらされる力分布プロファイルが、アクチュエータを制御することによって調整される。
【0167】
本発明は、デバイス態様に対応する方法態様に及ぶ。
【0168】
特に、別の態様の一実施形態によれば、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法であって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側と、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の形状プロファイルを調整するように、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の外形を少なくとも部分的に変化させるように構成されているアクチュエータとを備え、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、複数の時点におけるデバイスの加速度の加速度データ、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上のターゲット形状プロファイルを与えるように、アクチュエータを制御するステップとを有する、制御方法が提供される。
【0169】
したがって、一態様の一実施形態によれば、CPRデバイスの形状プロファイルを制御する方法も提供される。デバイスのアクチュエータは、デバイスから及び/又はCPRデバイスを備えるシステムの要素から取得される1つ以上のデータタイプに基づいて、CPRデバイスの外形を少なくとも部分的に変化させるように制御される。
【0170】
デバイス態様の特徴及び部分特徴は方法態様に適用され、逆も真である。
【0171】
本発明は、コンピューティングデバイス上で実行されると、本発明の方法態様のいずれか又はその任意の組み合わせによる制御方法を実行するコンピュータプログラム態様に及ぶ。
【0172】
特に、別の態様の一実施形態によれば、上で実行されると、患者への心肺機能蘇生CPRの供与を増強するためのCPRデバイスの制御方法を実行するコンピュータプログラムであって、デバイスが、患者の胸部と係合するための患者側と、患者にCPRを供与するユーザの手と係合するためのユーザ側と、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の形状プロファイルを調整するように、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上の外形を少なくとも部分的に変化させるように構成されているアクチュエータとを備え、方法が、以下のデータタイプ、すなわち、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、複数の時点におけるデバイスの加速度の加速度データ、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータのうちの1つ以上を取得するステップと、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上のターゲット形状プロファイルを与えるように、アクチュエータを制御するステップとを有する、コンピュータプログラムが提供される。
【0173】
上記態様は、CPRデバイスが2つ以上の可変特性を備えるように、他の態様のうちの1つ以上と組み合わされてもよく、制御方法態様も同様に組み合わされてもよい。したがって、本発明は、CPRデバイスが、可変粘度を有する材料から少なくとも部分的に形成され、及び/又は、可変接触特性を有する材料から少なくとも部分的に形成され、及び/又は、デバイスの外形を少なくとも部分的に変化させるように構成されているアクチュエータを備える、CPRデバイス及び対応する制御方法に及ぶ。様々な態様の特徴は、変更すべきところは変更して他の態様にも適用され、逆も真である。
【0174】
デバイスのユーザ側は、ユーザの手と係合するのに適しており、患者側は、患者の胸部と係合するのに適しており、結果、CPRデバイスは、CPRの供与中に患者の胸部とユーザの手との間に配置される。すなわち、CPRデバイスは、患者の胸部上に位置付けられ、CPRの供与中に胸部圧迫を与えるときに、ユーザは、CPRデバイスと係合する。
【0175】
患者という用語は、心停止、すなわち、心臓が実質的に圧送の機能を停止する結果としての血流の突然の喪失を患っている、又は、患っている疑いがある個人を表すために使用される。したがって、患者は、胸部圧迫を含む心肺機能蘇生(CPR)が施されている個人である。
【0176】
ユーザという用語は、患者にCPR(又は少なくともCPRの胸部圧迫)を供与する準備をしているか、又は、患者にCPR(又は少なくともCPRの胸部圧迫)を供与している個人又は救助者を表すために使用される。ユーザは、CPRデバイスを使用する個人であると考えられ、ユーザは、CPRを開始する前に、CPRデバイスを患者の胸部上に位置付ける。ユーザはまた、CPRの供与中に患者に胸部圧迫を与える機械であってもよく、CPRデバイスは、患者と胸部圧迫を供与する機械との間に位置付けられる。機械が利用される場合、コントローラは、供与される圧迫の力を示す機械データを機械から取得し、機械データに従ってCPRデバイスの1つ以上の可変特性を制御する。
【0177】
CPRデバイスのサイズ及び形状は多様であり、例えば、デバイスの意図される用途によって決定される。デバイスは、異なる群(子ども、成人又は高齢者など)に対して調整された特定の特性(サイズ、剛性など)を有して設計される。例えば、子どもに使用するように意図されたCPRデバイスのサイズ及び形状は、成人に使用するように意図されたCPRデバイスのサイズ及び形状とは異なる。同様に、デバイスの可変特性の変動も多様であり、意図される用途に従って変化する。例えば、子どもに使用するように意図されたデバイスを考えると、NNFの最大粘度は、成人に使用するように意図されたデバイスのものとは異なる。同様に、子どもに使用するように意図されたデバイスの可変接触特性は、成人に使用するように意図されたデバイスの可変接触特性とは異なり、結果、子どものデバイスの横方向分布プロファイルは、成人のデバイスの横方向分布プロファイルよりも大きさが小さい。最後に、可変形状プロファイルを有するCPRデバイスについて、デバイスの形状の変動の大きさは、子どもに使用するように意図されたデバイスでは、成人に使用するように意図されたデバイスのものよりも小さい。
【0178】
ユーザ側及び患者側を備えるCPRデバイスはまた、パック又はCPRパックとしても参照される。本発明の諸態様の実施形態によるCPRデバイスはまた、CPRデバイスと、CPRデバイスの制御を決定するために使用されるデータを取得するための関連デバイスとを備えるCPRシステムの一部分としても提供される。例えば、CPRシステムは、本発明の諸態様の実施形態によるCPRデバイスと、以下の要素、すなわち、力センサ、患者センサ、ユーザセンサ、メモリ、加速度計、イメージングデバイス及び圧力センサのうちの1つ以上とを備える。システムは、上記要素のうちの1つ以上を備える。
【0179】
したがって、本発明の実施形態は、CPRデバイス、並びに、CPRデバイスと、さらなる関連するデバイス及び/又は要素とを備えるシステムに及ぶ。デバイス態様の特徴は、変更すべきところは変更してシステム態様にも適用され、逆も真である。
【0180】
例えば、コントローラなどの本発明の態様は、デジタル電子回路において、又は、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、若しくはそれらの組み合わせにおいて実装される。本発明の態様は、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラムプロダクト、すなわち、1つ以上のハードウェアモジュールによる実行のために、又は、1つ以上のハードウェアモジュールの動作を制御するために、例えば、機械可読記憶デバイスなどの、情報担体内に有形に具現化されるコンピュータプログラムとして実装される。コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラム、コンピュータプログラム部分又は2つ以上のコンピュータプログラムの形態であり、コンパイラ型又はインタープリタ型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書かれ、スタンドアロンプログラムとして、又は、モジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくは、通信システム環境において使用するのに適した他のユニットとして、を含め、任意の形態で展開される。コンピュータプログラムは、1つのモジュール上で実行されるか、又は、1つの場所にあるか、若しくは、複数の場所にわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続される複数のモジュール上で実行されるように展開される。通信可能に結合されている要素は、同じネットワークに接続される。
【0181】
本発明の方法ステップの態様は、入力データに対して動作し、出力を生成することによって本発明の機能を実施するためのコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実施される。本発明の装置の態様は、プログラム化ハードウェアとして、又は、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)を含む専用論理回路として実装される。
【0182】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサの両方、並びに、任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、読み出し専用メモリ若しくはランダムアクセスメモリ又は両方から命令及びデータを受信する。コンピュータの必須の要素は、命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスに結合されている、命令を実行するためのプロセッサである。
【0183】
したがって、本発明の実施形態は、1つ以上の可変特性を有するCPRデバイス、及び、CPRデバイスの制御方法を提供することによって、CPRの患者への供与を増強するための手段を提供することが分かる。デバイスの1つ以上の特性は、CPRの患者への供与中に変化し、結果、デバイス及び患者並びに/又はデバイス及びユーザの間の相互作用がCPRの供与全体を通じて一貫しない。CPRデバイスの1つ以上の可変特性によって、CPRの供与中の患者及び/又はユーザへの傷害の危険性が低減する。
【0184】
本開示の実施形態は、様々な構成要素及び構成要素の構成並びに様々なステップ及びステップの構成の形態をとる。したがって、図面は、様々な実施形態を例示することを目的としており、実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。図面において、同様の参照符号は同様の要素を指す。加えて、図面は、原寸に比例して描かれていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0185】
図1】本発明の一般的な実施形態による心肺機能蘇生CPRデバイスのブロック図である。
図2】本発明の一般的な実施形態による心肺機能蘇生CPRデバイスの制御方法の流れ図である。
図3】本発明の一態様の一実施形態によるCPRシステムのブロック図である。
図4】本発明の一態様の一実施形態によるCPRシステムの制御方法のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態によるCPRデバイスの概略図である。
図6】本発明の一実施形態による、ユーザによって患者にCPRを供与している間の使用時のCPRデバイスの概略図である。
図7】本発明の一実施形態による、ユーザによって患者にCPRを供与している間の使用時のCPRデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0186】
本開示の実施形態並びにその様々な特徴及び利点が、非限定的な例を参照することによってより十分に説明される。当該例は、図面に記載及び/又は図解され、以下の説明において詳述される。図面に示されている特徴は必ずしも原寸に比例して描かれてはおらず、1つの実施形態の特徴は、たとえ本明細書において明示的に記載されていない場合であっても、当業者が理解するように他の実施形態によって利用されてもよいことに留意されたい。周知の構成要素及び処理技法の記述は、本開示の実施形態を不必要にあいまいにしないように、省かれている場合がある。本明細書において使用されている例は、本開示の実施形態が実践され得る方法の理解を促進し、さらに当業者がこれを実践することを可能にするようにのみ意図されている。したがって、本明細書における例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及び適用法令によってのみ規定される。
【0187】
本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコル、デバイス、装置、材料、用途などは変化する場合があるため、本開示の実施形態は、これらに限定されないことは理解されたい。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的として使用されており、特許請求されているものとしての実施形態の範囲の限定であるようには意図されないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形は、文脈が明らかに別様に規定しない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。
【0188】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示の実施形態が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は均等な任意の方法及び材料を、本発明を実践又は試験するのに使用することができるが、好ましい方法、デバイス、及び材料が記載されている。
【0189】
上述したように、CPRがより効果的になり、患者に対するCPRの利得が増大されるように、ユーザへのCPRの供与を増強することが望ましい。CPRの供与中に患者及び/又はユーザへの損傷の危険性を最小限に抑えることも望ましい。
【0190】
本発明の実施形態は、CPRデバイス、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。CPRデバイスは、CPRデバイスのプロファイルを調整するように変化される1つ以上の可変特性を備える。CPRの供与中、特に胸部圧迫の供与中に利用されるとき、1つ以上の可変特性が、刺激に応答して変化し、また、制御される。したがって、1つ以上の可変特性は、CPRの供与中のデバイスと患者及び/又はユーザとの相互作用を変化させ、CPRの患者への供与を増強する。デバイスの1つ以上の可変特性によって、CPRの供与中の患者及び/又はユーザへの損傷の危険性も最小限に抑えられる。これは、他の様態では達成することが困難である、CPR圧迫サイクル中の正確で一貫した深度及び完全な解放を維持することによって達成される。
【0191】
図1は、本発明の一般的な実施形態による心肺機能蘇生CPRデバイスのブロック図を示す。CPRデバイス1は、ユーザ側2及び患者側3を備える。患者側3は、患者の胸部と係合するのに適している。ユーザ側2は、患者にCPRを供与しているユーザの手と係合するのに適している。CPRデバイス1は、コントローラ(図示せず)をさらに備える。ユーザ側2及び患者側3のいずれか又は両方が、可変粘度を有する非ニュートン流体、可変接触特性を有する材料、又は、デバイスの外形を変化させるためのアクチュエータなどの、1つ以上の可変特性を与えられる。
【0192】
図2は、本発明の一般的な実施形態による心肺機能蘇生CPRデバイスの制御方法の流れ図を示す。ステップS21において、1つ以上のデータタイプが取得される。データタイプは、デバイスに加えられる力の力データ、患者の状態に関係する患者センサデータ、ユーザの状態に関係するユーザセンサデータ、患者に関する情報、ユーザに関する情報、複数の時点におけるデバイスの加速度の加速度データ、患者の胸部上に位置付けられたデバイスの画像データ、及び、デバイスに加えられる圧力の圧力センサデータを含む。ステップS22において、取得されているデータタイプのうちの1つ以上に従って、CPRデバイスの1つ以上の可変特性が制御される。可変特性は、可変粘度を有する非ニュートン流体、可変接触特性を有する材料、又は、デバイスの外形を変化させるためのアクチュエータである。
【0193】
NNFは、せん断増粘流体(STF)であってもよい。STFは、せん断力が加わることに基づいてその特性が変化する非ニュートン流体である。せん断増粘流体は、低レベルの力においては柔軟で適合性であるが、高いレベルの力が加わると、剛性になり、より固体のように振る舞う。STFの形成は、粘度、臨界せん断速度、貯蔵弾性率、及び損失弾性率を含む、流体の特性を調整するために調節される。付加的に、STFの理解が深まることによって、それらの特性が、例えば、電場、磁場又は振動を使用して動的に変化されることが可能になった。そのようなSTFは、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスに組み込まれる。すなわち、CPRデバイスのユーザ側は、調整及び制御される特性を有するSTFから少なくとも部分的に形成される。代替的に又は付加的に、患者側が、調整及び制御される特性を有するSTFから少なくとも部分的に形成される。
【0194】
可撓性センサは、例えば、圧力、光、温度及び慣性などの、適合性の表面上での様々な検知機能を可能にする。したがって、そのような可撓性センサは、患者、ユーザ及び/又はCPR供与から得られる測定のセンサデータを取得するように、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスに組み込まれる。その後、センサデータは、CPRデバイスの1つ以上の可変特性を制御するために使用される。
【0195】
上述したように、患者側及びユーザ側のうちの1つ以上が、少なくとも部分的に、可変接触特性を有する材料から形成される。電子吸着、超音波、及び新規の表面設計を含む、材料の吸着及び摩擦特定を動的に制御するための様々な方法が存在する。したがって、そのような方法は、その表面の少なくとも一部分上に可変接触特性を有するデバイスを達成するように、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスに組み込まれる。
【0196】
CPR、特に、CPRの供与中に患者に施される胸部圧迫の供与中に、胸部領域にわたる最適な圧迫力プロファイルは、個人差に起因して患者の間で大きく変化する。すなわち、最適な圧迫深度、したがって、その深度を達成するのに必要な力は、患者間で変化する。最適な圧迫深度に必要な特定の力は、個人間で異なるが、範囲が、異なる患者群(成人、子ども、幼児、高齢者、男性、女性など)について特定されている。例えば、男性及び女性に必要な力はそれぞれ、320±80N及び270±70Nの範囲内である。したがって、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスの1つ以上の可変特性の範囲は、デバイスが使用されるように意図されている患者群、及び、その患者群と関連付けられる所望の力に従って決定される。
【0197】
計算方法は、心筋及び隣接する血管系の活動が、例えば、超音波及び超広帯域(UWBレーダ)を使用してリアルタイムで分析されることを可能にする。血圧も、超音波を使用して測定される。そのような心筋及び血流の活動の分析は、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスによって、CPRデバイスの1つ以上の様々な特性が患者の状態に従って制御されるように、患者の状態を監視するために利用される。
【0198】
ウェアラブルレーダは、人工知能(AI)を使用して、微妙な身体の動きを識別する。スマートデバイス内のセンサは、心臓不整脈及び血圧を測定することが可能である。単純なセンサを用いて、皮膚状態が決定される。例えば、スマートフォンカメラ及び顔認識を使用して、感情が決定される。消費者グレードのウェアラブル及びスマートフォン技術を使用したそのような身体分析は、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスによって、CPRデバイスの1つ以上の可変特性がユーザの状態に従って制御されるように、ユーザの状態を監視するために利用される。
【0199】
例えば、形状、剛性及び吸着などの、本発明の態様の実施形態によるCPRデバイスの特性のうちの1つ以上は、ソフトアクチュエータ、電子吸着及び能動的せん断増粘流体を使用してリアルタイムで変化される。
【0200】
本発明の態様の実施形態によれば、動的に調整可能な特性(形状、剛性、摩擦及び吸着を含む)を有するCPRデバイスが提供される。これらの特性は、患者及び/又は救助者に対する損傷を最小限に抑えながら、例えば、血行動態活性などの所望のCPR品質を達成するように、個々の患者及び救助者(ユーザ)に対して、空間及び時間力供与プロファイルを最適化するために動的に調整される。特性は、救助者によってされる圧迫力に照らして動的に調節される。最適化は、変化している力プロファイル下での圧迫中の患者及び/又は救助者のリアルタイム分析に基づく。
【0201】
本発明の態様の実施形態による主なステップは、以下のように要約される。
【0202】
現在の圧迫に基づくCPR品質の分析。CPR品質測定は、患者の血行動態活性の分析を含む。
【0203】
CPRデバイスの下の皮膚状態を含む、患者状態の分析。
【0204】
任意選択的に、CPRデバイスと接触している皮膚状態を含む救助者状態、及び、救助者の疲労のレベルの分析。
【0205】
先行する分析に基づく、CPR品質を最適化し、患者及び/又は救助者の傷害を最小限に抑える患者の胸部に対する力プロファイルを作成するように設計されている、形状、剛性及び吸着/摩擦特性などのCPRデバイスパラメータのセットの選択。
【0206】
したがって、本発明の態様の実施形態は、以下に記載する特徴を提供する。
【0207】
個々の患者の所望の血行動態活性を達成するための最適な力プロファイルの評価に基づいて、胸部に加えられる力の、デバイスの力プロファイルを調節することによって、CPR中の患者の血行動態を制御するためのシステム。制御される活動は、以下を含む。
【0208】
脳への血液の供与。
【0209】
身体を巡る治療の供与。
【0210】
内出血又は外出血の検出、分析及び防止/低減。
【0211】
力分布入力に基づくが、これとは異なる力分布出力、すなわち、患者に出力される力をユーザによって入力される力から作成する能力を有する、形状、剛性及び吸着/摩擦を含む、CPRデバイスの1つ以上の特性を変更するためのCPRデバイスアクチュエータシステム。システムは、以下を含む。
【0212】
デバイスの形状を調整するためのアクチュエータを使用した形状制御。
【0213】
CPRを実施する救助者、又は、デバイス内の作動手段のいずれかによって加えられる力に応答して剛性になるせん断増粘材料などの非ニュートン流体を使用した剛性制御。
【0214】
CPRデバイスの定位置における位置付け及び維持を容易にするための、可変吸着特性を有する材料を使用した、吸着及び摩擦制御。
【0215】
患者及び/又は救助者に対するCPRの効果の監視、並びに、影響を低減するための形状、剛性及び吸着/摩擦を含むCPRデバイスの調整を介して患者及び/又は救助者への傷害を低減するためのシステム。これは例えば、摩擦又は反復的な歪みを低減するためのものである。システムは、手動CPR圧迫中に加えられる垂直力の時間的及び空間的制御を通じて、CPRの施与中の患者への傷害を低減する。
【0216】
所与の力入力について所望の血行動態結果を達成するために患者の胸部に適用するための最適なCPRデバイスパラメータを計算するための制御ユニット。すなわち、これは、救助者(ユーザ)によってデバイスに加えられる力からデバイスのターゲット出力力プロファイルを決定するためのものである。
【0217】
図3は、本発明の一態様の一実施形態によるCPRシステムのブロック図を示す。CPRシステム11は、救助者によって与えられる圧迫を所与として血行動態活性などのCPR品質画最適化されるように、救助者(ユーザ)から患者へのCPRデバイスの力伝達プロファイルを動的に調整することによって、心停止状態にある患者へのCPRの施与を補助するように設計されている。力プロファイルに対する調整は、形状プロファイル、剛性プロファイル及び吸着/摩擦プロファイルを含む、CPRデバイス内のパラメータ(「デバイスパラメータ」)を変更することによって行われる。
【0218】
CPRシステム11は、圧迫制御システム31と、吸着/摩擦制御システム32と、形状制御システム33と、患者監視装置34と、CPR監視装置35と、救助者(ユーザ)監視装置36と、CPRパラメータ設計アルゴリズム37と、プロファイル選択アルゴリズム38と、プロファイルデータベース39とを備える。
【0219】
圧迫制御システム31は、手動CPR圧迫中に加えられる垂直力の時間的及び空間的制御を可能にする。これは、デバイスを被覆し、患者の胸部及び救助者の手の形状に適合する、せん断増粘(STF)材料などの非ニュートン流体から構成される。STF、したがって、デバイスの剛性は、救助者から患者への力の効率的な伝達を保証するために、力を加えている間に変化する。
【0220】
デバイスは、胸部との接触領域にわたる画素化制御を可能にし、したがって、圧迫力の位置が圧迫毎に制御されることを可能にするために、各セルの剛性を独立して動的に制御することができるように、STFを含む複数のセルを備える。
【0221】
流体の剛性は、(超)音波、電気的又は磁気的刺激を含む様々な刺激を使用して制御され、刺激は、STFの特性に依存する。例えば、救助者によって加えられる力とは無関係にSTFの剛性を調節するために、各STFセル内に配置された超音波トランスデューサが作動される。刺激が一切ない場合、STFは、STFの特性に起因して、救助者によって適切な力が加えられることを受けて剛性になる。したがって、依然として、力がほとんど又はまったく加えられないときに、デバイスが患者の胸部及び救助者の手に適合することが依然として可能でありながら、救助者から患者への力の効率的な伝達が可能にされる。これは、デフォルトの挙動と考えられる。
【0222】
デフォルトの挙動を調整するために、追加の刺激が加えられる。例えば、追加の刺激が使用されて、圧迫サイクル中の異なる時点において、一部のセルにおいては剛性が増大され、他のセルにおいては剛性が低減される。これは、例えば、最適な圧迫深度に達したのを受けてデバイスを軟化させることによって、過剰な圧迫深度が回避されることを可能にする。
【0223】
例えば、異なる患者群に関して上述したように、流体のせん断増粘動態は、CPR中に存在する力の範囲に対して設計及び最適化される。付加的に、異なるデバイスが、異なる群(例えば、子ども、成人又は高齢者)に対して調整された特定の特性(サイズ、剛性など)を有して設計される。例えば、小児向けCPRデバイスは、成人向けデバイスよりも小さく、画素化制御のためのセルは比例してより小さい。STFは、子どもに対してCPRを実施するのに必要なものと合致して、成人向けデバイスにおいて使用されるSTFと比較して、より低い力において剛性になるように調整される。最大剛性も、成人向けデバイスよりも低く、これによって、力伝達効率と、患者快適性/傷害低減との間の平衡がもたらされる。
【0224】
吸着制御システム32は、患者の皮膚及び/又はユーザの皮膚に加えられている横力を変更する。横力を変更することによって、摩擦効果からの損傷が制御及び低減され、並びに/又は、意図的に若しくはCPR圧迫中にユーザによって供与される横力を使用して患者の胸部上のパック位置が制御される。吸着制御システム32は、動的に制御可能な摩擦及び吸着特性を有する材料を含む。
【0225】
摩擦(又は他の様態の力制御)は、患者検知及び摩擦調節システムの利用可能な分解能を所与として、画素化様式において能動的に制御される。例えば、皮膚が損傷した領域に対する摩擦を低減しながら、パックが滑り落ちるのを防止するのに十分な摩擦が、まだ損傷していない皮膚領域に加えられる。CPRデバイスの位置は、所望の位置に達するまで、圧迫サイクル中に力を加えることによって、CPRデバイスが制御された様式で横に動くように、デバイスの形状とともに吸着特性を動的に調整することによって制御される。
【0226】
システムは、皮膚/骨状態及びCPR有効性懸案事項を所与として所望のパック位置を決定するためのアルゴリズムであって、例えば、これは皮膚/骨の損傷した領域を回避するためにパックを1cm動かすためのものであってもよい、アルゴリズムと、水和、年齢、現在の損傷状態などのような患者の皮膚状態、及び、直接的に測定されるか、又は、以前の圧迫サイクルからのデータを使用して予測される、CPR圧迫サイクル中にパックに加えられる力、及び、所望のパック位置に基づいて、患者の皮膚に対して圧迫される表面に適用されるべき摩擦/吸着特性を決定するためのアルゴリズムとを含む。
【0227】
形状制御システム33は、CPRデバイスの形状を変更する。これは、デバイスの厚さを画素化様式で変化させるように独立して制御することができる、CPRデバイスにわたる複数のアクチュエータから構成される。例えば、液圧増幅自己修復静電(HASEL)アクチュエータのアレイが、デバイス内に埋め込まれ、付加的にSTFによって充填される可撓性表面によって被覆される。1つのアクチュエータを電気的に作動させる結果として、隣接するアクチュエータに対して厚さが変化し、結果として、その表面は、アクチュエータ間に勾配を形成する。したがって、形状制御を使用して、デバイスに加えられる垂直力が、患者の胸部に加えられる力の横成分及び垂直成分を含むように変換される。
【0228】
患者監視装置34は、患者の状態を決定する。これは、患者の生理学的パラメータ、及び患者の皮膚状態を監視することを含む。患者監視装置からのデータが収集される(「患者データ」)。様々なセンサが、患者の胸部に対する差し迫った傷害が検知又は予測されることを可能にし、システムは、傷害の危険性を低減するために、接触領域にわたる力プロファイルを調整する。
【0229】
CPRに関連する患者の生理学的パラメータは、限定ではないが、冠動脈かん流圧(CPP)、脳への血液の供与、身体を巡る注入されている治療の供与、内出血又は外出血の検出及び分析、並びに、皮下軟部組織及び骨の損傷の検出を含む。
【0230】
これらのパラメータは、CPRデバイスの内部又は外部の機器を監視することによって測定される。監視機器は、患者センサは、心筋及び隣接する血管系の活動をイメージング及び分析し、血圧を測定するための標準的な超音波イメージング又はUWBレーダ及び処理ユニットを含む。すなわち、計算方法は、心筋及び隣接する血管系の活動が、例えば、超音波及びUWBレーダを使用してリアルタイムで分析されることを可能にし、血圧も、超音波を使用して測定される。付加的に、CPRデバイス上の圧力センサの圧力プロファイルに対する変化を介して、肋骨などの骨の損傷が検出される。血行動態挙動が測定される場合、循環系を巡る注入されている治療の供与が予測される。血行動態挙動及び血圧の予期せぬ変化は、出血を示す可能性がある。この知識を使用して、出血していると予測される血管に対する圧力を最小限に抑えるように、力プロファイルを調整することができる。
【0231】
CPRデバイスの下の患者の皮膚状態は、デバイス内の又はデバイスに接続されているセンサを使用して様々な様式で監視される。皮膚水和は、静電容量測定を介して監視され、皮膚の油性及び発赤は、光センサを介して監視され、皮膚の弾性は、振動センサを介して監視される。
【0232】
CPR監視装置35は、CPR活動を監視する。CPR監視装置からのデータが様々なセンサを使用して収集される(「CPRデータ」)。これらは、圧迫サイクルを実施するのにかかる時間を決定するために、加速度計から、例えば、経時的な加速度の変化を観測することによって決定される圧迫速度、圧迫サイクルの上と下との間で移動した距離を決定するために、例えば、加速度計データの二重積分によって決定される、圧迫深度、例えば、デバイスの救助者(ユーザ)側上の圧力センサを介して決定される、救助者によってCPRデバイスに加えられる力の空間的及び時間的プロファイル、並びに、CPRデバイス位置を含む。患者に向けられたカメラが利用可能であり、システムによってアクセス可能である場合、デバイス位置は、患者の胸部上のCPRデバイス位置を決定するための画像認識技法を使用して決定される。付加的に、CPRデバイスの下側(患者側)上の圧力センサのアレイが使用されて、圧力プロファイルからデバイスの位置が推定される。例えば、センサ上のより高い圧力読み値は、太陽神経叢及び肋骨などの骨構造を示す可能性が高く、より低い圧力読み値は、肋骨と横隔膜の縁部との間の間隙などの軟組織を示す可能性が高い。
【0233】
救助者(ユーザ)監視装置36は、任意選択的に、救助者の状態を監視する。データは、収集され(「救助者データ」)、上述したような、デバイスの救助者側上のセンサを使用して様々な様式で監視することができる、CPRデバイスと接触している手の皮膚状態、及び、救助者の疲労のレベルを決定するために使用される救助者の生理学的パラメータ、及び、救助者の識別情報を含む。救助者は、CPR中に代わる場合があり、これによって、使用されるべき最適なCPRデバイスパラメータが変化する。救助者の交代は、例えば、身体形状の変化、又は、利用可能な場合は顔認識を使用して、救助者監視装置によって認識される。
【0234】
救助者の生理学的パラメータは、例えば、救助者の手と接触している圧力又は光センサを使用して決定される心拍、ユーザの労作又は冷静さのレベルを示す呼吸速度、身体形状及び位置、特に腕の位置付け、並びに、上述したように、救助者が向き合っているカメラ、及び、利用可能な場合は顔認識から決定される、救助者の感情状態を含む。カメラが利用可能である場合(例えば、隣接する除細動器(AED)上、救急車内、又は病室内にある)これは、例えば、呼吸速度、及び、顔の表情における不快感などの、救助者状態に関するデータを提供する。
【0235】
救助者の皮膚が損傷しすぎているか、又は、救助者が疲弊しすぎている場合、CPRの品質が低下する(又は完全に停止する)可能性が高いため、救助者状態を監視することは重要である。したがって、たとえ引き換えにCPR品質がわずかに低くなるとしても、救助者の福利を促進するCPRデバイス設定が、全体としてはより良好な患者結果をもたらす。救助者の福利を促進するデバイス設定の例は、救助者の手に対する圧力プロファイルを変更するか、又は、異なる腕位置を推奨するための選択的軟化、又は、形状若しくは吸着点の変更を含む。
【0236】
したがって、システムは、CPRの供与中の救助者の快適性を増大させる。デバイスの救助者側の材料の剛性は、快適性を最大化し、反復的な圧力関連傷害の危険性を低減するために、救助者の手の下で画素化様式で調整される。救助者の手と接触しているCPRデバイス表面の吸着及び摩擦特性は、擦過によって引き起こされる傷害を低減するために画素化様式で動的に変化させることができる。様々なセンサが、救助者の快適性が測定されることを可能にし、システムは、快適性を増大させるために力プロファイルを調整する。
【0237】
CPRパラメータ設計アルゴリズム37は、CPR品質に関するCPRデバイスパラメータの異なるセットの効果を評価するための試験を設計する。CPR品質の影響へのCPRデバイスパラメータのマッピングが、「CPRデバイスプロファイル」である。したがって、デバイスパラメータのセットの、例えば、患者の状態に対する影響が決定され、効果がデバイスパラメータにリンクされる。プロファイル選択アルゴリズム38は、進行中のCPRに関係する特定の目標を達成するための特定のCPRデバイスプロファイルを選択する(「目標」)。プロファイルデータベース39は、CPRデバイスプロファイルを記憶する。これらは、決定された効果と関連付けて記憶される。
【0238】
したがって、コントローラは、デバイスの1つ以上の可変特性を設定し、次いで、患者及び/又はユーザに対する特性設定の効果を監視する。コントローラは、特性設定を、結果もたらされる効果と共にデータベースに記憶する。コントローラは更に、患者、ユーザ及び/又はCPR供与の状態を監視し、CPR目標を決定する。コントローラは、次いで、CPR目標を、データベースに記憶されている複数のデバイス特性設定の効果と比較する。コントローラは、CPR目標と同じか又は類似する効果を達成する、データベースに記憶されている設定の効果に一致するように、デバイスの特性設定を設定する。
【0239】
したがって、CPR供与の結果としての患者損傷が、患者組織/骨状態の測定値及び他のCPR懸案事項に基づいてCPR圧迫力伝達動態を変化させる材料特性の制御を通じて低減される。したがって、損傷は、力を加えることの空間及び時間動態の調整を通じて制御又は防止される。デバイスの横(せん断)力及び垂直力が制御されると考えられる。
【0240】
システムは、CPR圧迫の品質を増大させる。圧迫の深度は、最適な圧迫深度に達したことを受けて胸部に対する力を低減するために材料の剛性を低減することによって、CPR圧迫サイクル中の患者胸部上の力を加える領域にわたる力の動的変更を通じ手制御され、したがって、過圧の危険性が最小限に抑えられる。圧迫の品質は、力を最適な位置に直接的に供与するために、患者側と救助者側の両方においてデバイスによって被覆される領域にわたる力の分布を調整することによって増大される。圧迫サイクルの上り行程中の圧力の解放が、圧力が低減するのを受けてSTF材料が自然に軟化することを通じて促進される。様々なセンサが、CPR品質が測定されることを可能にし、システムは、品質を増大させるために力プロファイルを調整する。
【0241】
図4は、本発明の一態様の一実施形態によるCPRシステムの制御方法のフローチャートを示す。ステップS41において、CPRデバイスが、デバイスパラメータの初期セットによって構成される。ステップS42において、CPRが患者に対して実施されるときに、CPRデバイスが、データを収集し、ステップS43において、CPRパラメータ設計アルゴリズムが、CPRデバイスパラメータの異なるセットを使用してCPR品質に対するそれらの効果を決定する試験を実行する。ステップS44において、プロファイル選択アルゴリズムが、CPRデバイスパラメータの異なるセットを使用してCPR品質に対するそれらの効果を決定する試験を実行し、ステップS45において、CPRデバイスが、選択されたデバイスパラメータによって構成される。
【0242】
デバイスパラメータは、圧迫制御システム;、吸着制御システム、及び形状制御システムを構成する。CPRデバイスは、CPRが実施されるときにデータを収集する。データは、患者監視装置、CPR監視装置、及び救助者監視装置から収集される。
【0243】
CPRパラメータ設計アルゴリズムが、CPRデバイスパラメータの異なるセットを使用してCPR品質に対するそれらの効果を決定する試験を実行し、プロファイルデータベースにデータ投入する。アルゴリズムは、患者データ、CPRデータ及び任意選択的に救助者データを入力として取得し、CPRデバイスパラメータのセット、及び、CPRの全体的な品質がこれらのパラメータ下でどのように影響を受けるかに関する関連データを出力する。これらのプロファイルは、プロファイルデータベースに記憶される。このプロセスは、「設計手順」と考えられる。
【0244】
上記アルゴリズムの例示的な実施態様を説明する。設計手順が開始されると、CPRデバイスが、CPRデバイスパラメータの初期セットによって構成される。これは、例えば、能動的制御が有効化されていない、CPRデバイスのデフォルト状態である。デバイスパラメータは、時間的に変化し、結果、それらは、圧迫サイクルの過程中に変化する。これによって、例えば、胸部上の、したがって、心臓に対する変化する角度及び位置において力が加えられることが可能になる。
【0245】
圧迫サイクルが実施されると、アルゴリズムは、これらのパラメータ設定下で患者データ、CPRデータ及び救助者データを受信し、データのセットの各々のスコア(「プロファイルスコア」)を提供する。
【0246】
これらのスコアの例示的な計算は、以下を含む。
【0247】
理想値のパーセンテージとしての達成されるCPR、又は、理想値のパーセンテージとしての脳への血液の供与などの、所定の理想値(例えば、以前のCPP研究によって決定される)と比較した状態に基づく血行動態スコア。
【0248】
CPR速度スコア:1-|現在のCPR速度-最適なCPR速度|/最適なCPR速度
【0249】
CPR深度スコア:1-|現在のCPR深度-最適なCPR深度|/最適なCPR深度
【0250】
患者皮膚影響スコア:デバイスの制御可能な各画素について、画素の下の患者の皮膚に対する可能性の高い影響が、摩擦/吸着特性、並びに、加えられる力の大きさ及び方向に基づいて推定される。これは、以前のCPRセッションから収集されるデータに基づくルックアップテーブルとして実装される。
【0251】
救助者皮膚影響スコア:デバイスの制御可能な各画素について、画素の下の救助者の皮膚に対する可能性の高い影響が、摩擦/吸着特性、並びに、加えられる力の大きさ及び方向に基づいて推定される。これは、以前のCPRセッションから収集されるデータに基づくルックアップテーブルとして実装される。
【0252】
これらのスコアは、現在アクティブなCPRデバイスパラメータのセットと共に、CPRデバイスプロファイルデータベースに記憶される。いくつかの圧迫サイクルの後、CPRデバイスパラメータが調整され、先行する2つのステップが繰り返される。パラメータ調整間の圧迫サイクルの数は、固定であるか、又は、例えばスコアが安定化することが確認されるときに基づく。
【0253】
調整は、代表的な範囲の形状、圧迫及び吸着/摩擦設定を周期的に繰り返すように予め決定されるか、又は、CPR性能を改善する可能性が高いものの予測に基づいて動的に決定される。例えば、患者の心臓の左心室(LV)の圧迫が不十分であると観察される場合、左心室の圧迫を増大させると予測される、CPRデバイスの位置、形状及び圧迫特性に対する変更が選択される。この予測は、以前に実行された試験、又は、以前のCPR研究から導出される規則のセットから導出される。例えば、LVの真上に最大の力が現在直接的に加えられていない場合、最大の力がLVの真上にあるように、デバイスの形状/位置が変更される。パラメータを変更することによって、CPRデバイス位置も変化する。デバイス位置データは、CPRデバイスプロファイルの一部分として記憶される。
【0254】
CPRデバイスパラメータのいくつかのセットが試験されると、設計手順は終了する。セットの数は、代表的な範囲の形状、圧迫及び吸着/摩擦設定を提供するように予め決定されるか、又は、スコアの特定のセットが達成されるのを受けて、又は、固定時間量後に終了する。
【0255】
設計手順の実行又は再実行をトリガする条件は、
CPRデータから決定される、CPRが開始されるとき、
救助者データから決定される、救助者が代わるとき、及び、新たな救助者に関係するデータがプロファイルデータベース内でもう利用可能でないかどうか、
CPRデバイスデバイスが動かされており、新たな位置において利用可能なプロファイルデータがないかどうか、例えば、経時的な患者の胸部の弛緩、肋骨骨折又は新たな出血などの、何らかの根底にある変化を示す、CPRデバイスパラメータの所与のセットの下で測定されている患者、CPR及び救助者データがプロファイルデータから予測されるものから大きく逸脱しているかどうか、並びに
所定の時間量の後を含む。
【0256】
プロファイル選択アルゴリズムは、規定の目標を達成するためのCPRデバイスパラメータのセットを選択する。アルゴリズムは、CPRプロファイルデータ、患者データ、CPRデータ及び救助者データを入力として取得し、CPRデバイスを構成するために使用されるCPRデバイスパラメータの選択されたセットを出力する。目標は、
他のすべてを上回る脳血流又はCPPの最大化、
患者及び救助者に対する傷害を最小限に抑えながら十分な脳血流又はCPPを達成すること、身体を巡る注入されている治療の供与を達成すること、及び
検出されている出血を考慮に入れて最適な血行動態を達成することを含む。
【0257】
目標選択は、予め決定されるか、CPRの開始時に選択されるか、又は、CPR中に変更される。一次目標が選択され、任意選択的に、一次目標が達成された場合にアクティブになる二次目標が選択される。目標選択の例は以下を含む、すなわち、患者が、病院など、複数の救助者が対応できる制御された環境にいる場合、目標(i)が選択され、患者が病院の外にいて、対応できる救助者が1人だけであり、追加の救助が到着する時間が分からない場合、救助者がCPRを継続する機会を最大化するために目標(ii)が好ましく、治療が患者に注入される場合、目標(iii)が一時的に好ましい。
【0258】
上記アルゴリズムの例示的な実施態様を与える。最初に、血行動態スコア、患者皮膚状態、任意選択的に救助者皮膚状態、及び、任意選択的に救助者疲労状態を決定するために、利用可能なデータが評価される。次いで、上記の選択された目標及び計算されたスコアに基づいて、目標を最良に達成すると予測されるプロファイルが選択される。皮膚損傷画目標に含まれる場合、皮膚に対するプロファイルの効果は、現在の測定されている皮膚状態及びプロファイルの皮膚影響スコアから予測することができる。これは、以前のCPRセッションからの観測に基づくルックアップテーブルとして実装される。最後に、データは定期的に再評価され、プロファイル選択が、必要に応じて変更される。
【0259】
CPRデバイスが、選択されたデバイスパラメータによって構成される。
【0260】
図5は、本発明の一実施形態によるCPRデバイスの概略図を示す。CPRデバイス1は、調整可能な摩擦/吸着特性を有する表面51と、形状が変化するアクチュエータのアレイ52と、調整可能なせん断増粘材料53と、電力及び制御システム54と、音波アクチュエータ55と、センサ56とを備える。
【0261】
形状が変化するアクチュエータのアレイ53は、デバイス1の形状の画素化制御を可能にし、例えば、HASELである。センサ56は、例えば、圧力、光、容量、加速度などのセンサである。音波アクチュエータ55は、超音波アクチュエータであってもよく、調整可能なせん断増粘材料53に振動又は機械的刺激を与えてその粘度を変化させるように動作される。
【0262】
図6は、本発明の一実施形態による、ユーザによって患者にCPRを供与している間の使用時のCPRデバイスの概略図を示す。この図は、患者の胸部7に胸部圧迫を加えているユーザの手6を示し、デバイス1が、ユーザの手6と患者7との間に配置されている。デバイスは、患者の心臓71の上方で患者7の胸部上に位置付けられている。圧迫の力81がデバイス1に入力され、デバイスは、力出力82を患者7に出力する。
【0263】
CPRデバイス1の特性は、CPRデバイス1が、患者の胸部7及びユーザの手6に適合する様に調整される。デバイス1の形状及び他の特性は、点91に示すように調整される。例えば、点92における吸着は、一定の角度における力伝達を促進する。
【0264】
図7は、本発明の一実施形態による、ユーザによって患者にCPRを供与している間の使用時のCPRデバイスの概略図を示す。図6と比較すると、デバイス1の形状及び位置が異なるように、デバイス1の特性画調整されていることが分かる。パック特性が異なることに応答した血行動態の差が測定され、それに応じてデバイス(パック)1の特性が変化される。
【0265】
上記から分かるように、本発明の実施形態は、CPRデバイス、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。CPRデバイスは、CPRデバイスのプロファイルを調整するように変化される1つ以上の可変特性を備える。CPRデバイスは、CPRシステムの一部分として提供される。本発明の実施形態は、上述した従来技術の欠点を克服する。
【0266】
患者内の血行動態活性などのCPR品質が、救助者の所与のCPR性能に対して最適化される。これは、形状、剛性及び吸着/摩擦を含むCPRデバイスの特性を、これらの特性が動的に調整されることを可能にする材料及びアクチュエータを使用することを通じて調整することによって達成される。これは、最適な結果のためにデバイス特性の選択を可能にするために患者に対するCPR有効性を監視するための技法と結合される。
【0267】
本発明の態様の実施形態は、CPRデバイスの1つ以上の特性の調整を通じて患者の胸部に加えられる力プロファイルを調整することによって、所与の救助者CPR性能についての、心停止患者における最適化された血行動態活性を提供する。
【0268】
本発明の態様の実施形態は、摩擦皮膚損傷、並びに、(例えば、過圧迫によって引き起こされる)皮下軟組織及び骨への圧力関連損傷を最小限に抑えるために、CPRデバイスによって患者の胸部に加えられる垂直力及び横力の空間的及び時間的調整によって、CPRに起因する患者への傷害を低減することを可能にする。
【0269】
本発明の態様の実施形態は、摩擦皮膚損傷、圧力関連損傷及び反復的応力関連損傷を最小限に抑えるために、CPRデバイスから救助者の手が受ける垂直力及び横力の空間的及び時間的調整によって、救助者の傷害の低減及び快適性の増大を可能にする。
【0270】
いくつかの例示的な実施形態のみが上記で詳細に説明されたが、本開示の実施形態の新規の教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正が例示的な実施形態において可能であることが、当業者には容易に理解されよう。本発明の上述した実施形態葉有利には、いかなる他の実施形態からも独立して、又は、1つ以上の他の実施形態との任意の実現可能な組み合わせにおいて使用される。
【0271】
したがって、すべてのそのような修正が、添付の特許請求の範囲において規定されているものとしての本開示の実施形態の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクション節は、本明細書に記載されている構造を、記載されている機能を実施するものとして、構造的均等物だけでなく、等価な構造をもカバーするように意図されている。
【0272】
加えて、1つ以上の請求項において括弧内に配置されている任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備えている」及び「備える」などの単語は、任意の請求項又は本明細書全体に列挙されているもの以外の要素又はステップが存在することを除外するものではない。要素の単数形が参照されている場合、これは、そのような要素の複数の参照を除外するものではなく、逆も真である。実施形態のうちの1つ以上は、いくつかの個別の要素を備えるハードウェアによって実装される。いくつかの手段を列挙しているデバイス又は装置請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、まったく同一のハードウェア物品によって具現化されてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているというだけのことは、これらの方策の組み合わせを好都合に使用することができないということを示すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7