(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】虚血性疾患または虚血性損傷を処置するための心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスおよびその注射可能製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/33 20150101AFI20240807BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240807BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240807BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240807BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240807BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61K35/33
A61K9/08
A61K9/10
A61K38/18
A61K47/42
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016215
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2017562744の分割
【原出願日】2016-06-03
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2015-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】シュムック エリック
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァル アーミッシュ
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0059006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0014773(US,A1)
【文献】国際公開第2008/088030(WO,A1)
【文献】特表2018-521018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/33
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 38/18
A61K 47/42
A61P 9/10
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血性肢損傷を治療するための
注射可能な組成物であって、
(a) 構造タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス
(CF-ECM)の1つまたは複数のフラグメントであって、
前記改変された
CF-ECMに存在している前記構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンであり、
前記1つまたは複数のフラグメントが、18ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるに十分小さい1つまたは複数のフラグメント、および
(b) 水性で注射可能な薬学的に許容可能な担体であって、前記1または複数のフラグメントが該担体中に懸濁されて、注射可能な懸濁液を形成する、水性で注射可能な薬学的に許容可能な担体、
を含むことを特徴とする
注射可能
な組成物。
【請求項2】
前記改変された
CF-ECMの前記構造タンパク質が、化学的に架橋されていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記注射可能な懸濁液が、前記1つまたは複数のフラグメントを含む凍結乾燥粉末を、前記担体中に懸濁することにより調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記改変された
CF-ECMが、マトリックス細胞タンパク質として、潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質転換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の外因性非細胞治療剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つまたは複数の外因性非細胞治療剤が、1つまたは複数の成長因子を含む、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つまたは複数の成長因子が、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、間質由来因子-1(SDF-1)およびケラチノサイト成長因子(KGF)からなる群から選択される、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つまたは複数のフラグメントが、27ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるに十分小さい、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
20~500μmの厚さを有しかつ構造タンパク質として、フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含
む改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(
CF-ECM)であって、前記改変されたCF-ECMに存在している前記構造タンパク質の60%~90%が、フィブロネクチンである、改変された
CF-ECMの、虚血性肢損傷を
示す対象の治療のための医薬組成物の製造のための使用であって、
前記改変されたCF-ECMをフラグメント化して、生成したフラグメントを、18ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるに十分小さくすることを含み、前記改変されたCF-ECMのフラグメントを含む医薬組成物が、前記対象の組織に注射されるものであり、そして、
前記医薬組成物が、
前記虚血性肢損傷の重症度を軽減することを特徴とする、使用。
【請求項10】
前記改変された
CF-ECMが、マトリックス細胞タンパク質として、潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質転換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
前記虚血性肢損傷を示す前記対象の組織を、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤と接触することをさらに含む、請求項
9に記載の使用。
【請求項12】
前記1つまたは複数の
外因性非細胞治療剤が、1つまたは複数の成長因子を含む、請求項
11に記載の使用。
【請求項13】
前記1つまたは複数の成長因子が、間質由来因子-1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)およびケラチノサイト成長因子(KGF)からなる群から選択される、請求項
12に記載の使用。
【請求項14】
前記虚血性肢損傷が、アテローム性動脈硬化の結果である、請求項
9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体があたかも説明されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれている、2015年6月3日出願の米国仮特許出願第62/170,324号の利益を主張する。
連邦政府により支援を受けた研究開発に関する記述
本発明は、米国国立衛生試験所により授与されたDK080345およびHHSN268201000010Cで、政府の支援により行われたものである。米国政府は、本発明におけるある種の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
虚血は、組織、器官または末端への動脈流の遮断である。虚血は、細胞の代謝に必要な酸素およびグルコースの欠乏を引き起こし、こうして、組織の障害または死亡(虚血性損傷)に至らしめる恐れがある。
心筋梗塞となる恐れのある心筋虚血は、心筋(心臓筋肉)が不十分な血流量を受けると発生する。心臓への虚血性損傷は、世界中の入院および死亡の主な原因であり、患者の転帰を改善するために、心臓の虚血性損傷に対する新規で一層有効な処置が必要とされている。
心筋虚血とは区別される病因論および標準処置レジメンを有する虚血肢は、四肢への血流の不足の結果である。米国では、毎年、約2百万人が虚血肢に罹患している。発症してしまうと、これらの患者の60%には、利用可能な、良好な処置選択肢がない。虚血性肢損傷(ischemic limb injury)の共通の形態である虚血性潰瘍は、感染を繰り返す傾向がある、慢性で非治癒性の、痛みを伴う創傷である。多くの場合、虚血性肢損傷を首尾良く処置することができる投薬は存在しない。組織の再血管新生化および/または様々な代替皮膚の使用が一般的な処置であるが、これらの処置は、損傷した四肢を治すのに必ずしも十分ではなく、唯一の利用可能な処置選択肢である切断となる。
【0003】
以前の特許(すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号)および刊行物(参照により本明細書に組み込まれている、Schmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131)において、Schmuckらは、損傷した心臓組織または罹患している心臓組織に治療的細胞を移入するためのプラットフォームとして使用することができる、改変された(engineered)心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスから作製された生体足場(bioscaffold)を記載している。この生体足場には、損傷した心臓組織または罹患した心臓組織への治療的細胞を送達するための機構として、治療的細胞が播種される。この治療法は、侵襲的で潜在的にリスクの高い手術を行って、損傷した心臓の表面に細胞-播種パッチを置くことを必要とする。さらに、この治療法は、患者に内因性ではない治療的細胞の使用を必要とし、さらなる複雑さ、潜在的リスクおよびさらなる規制上のハードルが加わる。最後に、この治療法は、心臓組織の損傷および疾患に特有であり、虚血性肢損傷によるなどの、非心臓組織に発生する損傷に作用することは予期されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの理由のために、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスから作製された以前に開示されている生体足場を使用する新規組成物および方法が非常に望まれていると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、米国特許第8,802,144号に記載されている改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスから作製された注射可能組成物を作製し、心臓に送達することができることを本明細書において実証する。さらに、本発明者らは、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスは、治療的細胞が播種されているか否かにかかわらず、虚血性肢損傷を効果的に処置することができることを本明細書において実証する。最後に、本発明者らは、治療的細胞の非存在下でさえも、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスは、虚血性心臓損傷および虚血性肢損傷のどちらも効果的に処置することができることを本明細書において実証する。
【0006】
したがって、第1の態様では、本開示は、心疾患、心臓損傷または虚血性損傷を処置するための注射可能組成物を包含する。本組成物は、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスの1つまたは複数のフラグメントを含み、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%は、フィブロネクチンである。1つまたは複数のフラグメントは、18ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるほど十分に小さい。さらに、本製剤は、注射可能な薬学的に許容される担体を含む。
一部の実施形態では、改変された心臓細胞外マトリックスの構造タンパク質は、化学的に架橋されていない。
一部の実施形態では、1つまたは複数のフラグメントは、20~500μmの厚さを有する。
一部の実施形態では、1つまたは複数のフラグメントは、凍結乾燥粉末の形態にある。
【0007】
一部の実施形態では、改変された心臓細胞外マトリックスは、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換(latent transforming)成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1またはビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む。
一部の実施形態では、本製剤は、無傷の(intact)心臓線維芽細胞を本質的に含まない。
一部のこのような実施形態では、本製剤は細胞を完全に含まない。
【0008】
一部の実施形態では、本組成物は、心疾患、心臓損傷または虚血性損傷のための、1つまたは複数の治療的細胞をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の細胞は、骨格筋芽細胞、胚性幹(ES)細胞またはその誘導体、人工多能性幹(iPS)細胞またはその誘導体、多能性成体生殖幹(maGCS)細胞、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア(cardiosphere)由来細胞(CDC)、多能性Isl1+心血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系間質細胞またはそれらの組合せを含むことができる。
【0009】
一部の実施形態では、本組成物は、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤は、1つまたは複数の成長因子を含んでもよい。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の成長因子は、間質細胞由来因子1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)またはケラチノサイト成長因子(KGF)を含むことができる。
一部の実施形態では、1つまたは複数のフラグメントは、27ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるほど十分に小さい。
第2の態様では、この開示は、心疾患、心臓損傷、または虚血性疾患もしくは虚血性損傷を有する対象を処置する方法を包含する。本方法は、上記の有効量の製剤を対象に注射し、それにより、心疾患、心臓損傷、または虚血性疾患もしくは虚血性損傷の重症度が軽減する工程を含む。
一部の実施形態では、心疾患、心臓損傷、または虚血性疾患もしくは虚血性損傷は、急性心筋梗塞、心不全、ウイルス感染、細菌感染、先天性欠損、脳卒中、糖尿病性足潰瘍、末梢動脈疾患(PAD)、PAD関連潰瘍または虚血肢によって引き起こされる。
【0010】
第3の態様では、本開示は、注射可能組成物を調製する方法を包含する。本方法は、(a)20~500μmの厚さを有しており、かつ構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む改変された、脱細胞化心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを得る工程であって、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンである、工程、(b)(i)改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを18ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けることが可能なほど十分に小さいフラグメントに小さく切断するか、または(ii)改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを粉末に凍結乾燥するかのどちらかの工程、および(c)小さく切断したまたは凍結乾燥した改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを注射可能な薬学的に許容される担体と混合する工程を含む。
【0011】
一部の実施形態では、本方法は、0.60mm2未満の最小流下断面を有する1つまたは複数の経路に得られた組成物を通す工程をさらに含む。「最小流下断面」とは、本発明者らは、経路の流れ方向に垂直な断面上で測定される、経路の最小横断面積を意味する。例えば、経路が標準皮下注射針である場合、最小流下断面は、皮下注射針の内部表面の断面積を画定する円の面積になると思われる。0.838mmの内径を有する標準の18ゲージ皮下注射針は、円の公式(断面積=πr2)の面積に基づいて、0.552mm2の最小流下断面を有することになる。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の経路のうちの少なくとも1つは、0.040mm2未満の最小流下断面を有する。
【0012】
一部の実施形態では、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを得る工程は、(a)心臓組織から心臓線維芽細胞を単離するまたは人工多能性幹(iPS)細胞から心臓線維芽細胞を誘導する、(b)1~15の継代を行うため、培養物中で心臓線維芽細胞を拡張する、および(c)拡張した心臓線維芽細胞を1cm2あたり100,000~500,000個の細胞の細胞密度を有する培養物にプレート培養することにより行われる。これらの工程を行う際、心臓線維芽細胞は、20~500μmの厚さを有する三次元の心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)を分泌する。一部のこのような実施形態では、この工程は、CF-ECMに脱細胞化剤を接触させて、それにより、心臓細胞外マトリックスが脱細胞化される工程をさらに含む。
【0013】
一部の実施形態では、本方法は、心疾患、心臓損傷または虚血性損傷のための、1つまたは複数の治療的細胞を注射可能組成物に添加する工程をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の細胞は、骨格筋芽細胞、胚性幹(ES)細胞もしくはその誘導体、人工多能性幹(iPS)細胞もしくはその誘導体、多能性成体生殖幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Isl1+心血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系間質細胞またはそれらの組合せを含むことができる。
一部の実施形態では、本方法は、1つまたは複数の非細胞治療剤を注射可能組成物に添加する工程をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の非細胞治療剤は、1つまたは複数の成長因子を含んでもよい。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の成長因子は、間質細胞由来因子1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)またはケラチノサイト成長因子(KGF)を含むことができる。
【0014】
第4の態様では、本開示は、虚血性疾患または虚血性損傷を有する対象を処置する方法を包含する。本方法は、虚血性疾患または虚血性損傷を示している対象の組織に、20~500μmの厚さを有しており、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む細胞不含の改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)を接触させる工程であって、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンであり、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス上に細胞が播種されていない工程を含む。本方法を行う結果として、虚血性疾患または虚血性損傷の重症度が軽減する。
【0015】
一部の実施形態では、細胞不含の、改変された心臓細胞外マトリックスは、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数を含む。
一部の実施形態では、細胞不含の改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスは、(a)心臓組織から心臓線維芽細胞を単離するまたは人工多能性幹(iPS)細胞から心臓線維芽細胞を誘導する工程、(b)1~15の継代を行うために、培養物中で心臓線維芽細胞を拡張する工程、(c)拡張した心臓線維芽細胞を1cm2あたり100,000~500,000個の細胞の細胞密度を有する培養物にプレート培養する工程であって、心臓線維芽細胞が、20~500μmの厚さを有する三次元の心臓細胞外マトリックスを分泌する工程、および(d)心臓細胞外マトリックスに脱細胞化剤を接触させて、それにより心臓細胞外マトリックスが脱細胞化される工程により得られる。
【0016】
一部の実施形態では、本方法は、虚血性疾患または虚血性損傷を示している対象の組織に、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤を接触させる工程をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の非細胞治療剤は、1つまたは複数の成長因子を含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の成長因子は、間質細胞由来因子1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)またはケラチノサイト成長因子(KGF)を含むことができる。
【0017】
一部の実施形態では、虚血性疾患または虚血性損傷は、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性足潰瘍、末梢動脈疾患(PAD)、PAD関連潰瘍または虚血肢によって引き起こされる。一部のこのような実施形態では、虚血性疾患または虚血性損傷は、虚血肢によって引き起こされる。一部のこのような実施形態では、虚血肢は、アテローム性動脈硬化または糖尿病の結果である。
第5の態様では、本開示は、虚血性肢損傷を有する対象を処置する方法を包含する。本方法は、虚血性肢損傷を示している対象の組織に、20~500μmの厚さを有しており、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)を接触させる工程であって、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンである工程を含む。本方法を行うことにより、虚血性肢損傷の重症度が軽減する。
【0018】
一部の実施形態では、改変された心臓細胞外マトリックスは、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1またはビグリカンのうちの1つまたは複数を含む。
一部の実施形態では、改変された心臓細胞外マトリックスには、虚血性肢損傷のための1つまたは複数の治療的細胞が播種される。一部のこのような実施形態では、虚血性肢損傷のための1つまたは複数の治療的細胞は、骨格筋芽細胞、胚性幹(ES)細胞もしくはその誘導体、人工多能性幹(iPS)細胞もしくはその誘導体、多能性成体生殖幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、脂肪由来幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系間質細胞またはそれらの組合せを含んでもよい。
【0019】
一部の実施形態では、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスは、(a)心臓組織から心臓線維芽細胞を単離するまたは人工多能性幹(iPS)細胞から心臓線維芽細胞を誘導する工程、(b)1~15の継代を行うため、培養物中で心臓線維芽細胞を拡張する工程、および(c)拡張した心臓線維芽細胞を1cm2あたり100,000~500,000個の細胞の細胞密度を有する培養物にプレート培養する工程であって、心臓線維芽細胞が、20~500μmの厚さを有する三次元の心臓細胞外マトリックスを分泌する工程により得られる。
【0020】
一部の実施形態では、本方法は、虚血性損傷を示している対象の組織に、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤を接触させる工程をさらに含む。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の非細胞治療剤は、1つまたは複数の成長因子を含んでもよい。一部のこのような実施形態では、1つまたは複数の成長因子は、間質細胞由来因子1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)またはケラチノサイト成長因子(KGF)を含むことができる。
一部の実施形態では、虚血性肢損傷は、アテローム性動脈硬化または糖尿病の結果である。
開示された組成物および方法は、以下にさらに詳述されている。
本発明は、以下のその詳細説明を考慮すると、よりよく理解され、上で説明されているもの以外の特徴、態様および利点が明確になろう。このような詳細説明は、以下の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】黒色組織色素により染色したフラグメント化CF-ECMを示す図である。このフラグメント化プロトコルは、不均質なCF-ECMフラグメントとなる。フラグメントは、CF-ECMの小さな「シート」として現われる。
【
図2】黒色組織色素により染色したフラグメント化CF-ECMを示す図である。
【
図3】黒色組織色素により染色したフラグメント化CF-ECMを示す図である。
【
図4】黒色組織色素により染色したフラグメント化CF-ECMを示す図である。
【
図5】黒色組織色素により着色された、ブタのLVに心臓カテーテルを介して注射されたCF-ECM注射可能製剤を示す図である。CF-ECMが、間質空間にどのように収まるかに留意されたい。
【
図6】心臓超音波検査によって測定される通り、MI後の様々な回数における、4つの異なる処置群の場合の駆出率の変化を示すグラフである。パッチのみの処置は、-10%で変化が安定化した。
【
図7】心臓超音波検査によって測定される通り、MI後の様々な回数における、4つの異なる処置群の場合の収縮末期容量(end ssystolic volume)を示すグラフである。
【
図8】4つの異なる処置群の場合の、MI後の28日目における、収縮末期容量の変化を示すグラフである。
【
図9】4つの異なる処置群の場合の断面の病理測定を示すグラフである。示された測定は、瘢痕厚さ(上部の左パネル)、ヒンジ部厚さ(上部の右パネル)、遠隔壁厚さ(下部の左パネル)、および梗塞した左心室%(下部の右パネル)である。
【
図10A】後肢虚血モデルにおける、4つの処置群に関する術後日数の関数としての潅流指標を示すグラフである。具体的には、マウスは、大腿動脈の二重ライゲーション後に、1.0x10
6GFP+MSCを搭載したCF-ECM、細胞を含まないCF-ECMのみ、筋肉内注射により送達されるGFP+MSCのみ、またはプラセボによる処置を受けた。潅流指標は、正常な四肢に対して、罹患した四肢において、血量を比較することにより、レーザードップラーイメージングを走査することにより算出される。CF-ECMにより処置された動物は、処置細胞およびプラセボ対照(p=0.003)よりもかなり多量の血流を有した。
【
図10B】後肢虚血モデルにおける、4つの処置群に関する、レーザードップラー走査の代表的な画像および対応する写真を示している図である。
【
図10C】後肢虚血モデルにおける、4つの処置群に関する術後日数の関数として、自然切断がないことを示しているグラフである。CF-ECM処置動物は、細胞およびプラセボ処置動物よりも足の維持は多かった。
【
図10D】後肢虚血モデルにおける、4つの処置群に関する術後日数の関数としての修正虚血指数のグラフである。修正虚血指数は、四肢の健康の総合的な評価となる。修正虚血指数は、細胞処置およびプラセボ対照と比べて、CF-ECM処置動物において、改善に強い傾向を示した。
【
図11A-J】各処置群に対する、罹患腓腹筋および大腿筋の代表的なヘマトキシリンおよびエオシン染色を示している。罹患組織の定量的組織学的点数化が、表1に示されている。
【
図12】マウスの後肢虚血モデルにおける、CF-ECMと共に移入されたGFP+間葉系幹細胞(MSC)のデータを示すグラフである。
【
図13】CF-ECMと共に移入されたGFP+MSCが、心筋梗塞(MI)リモデリング後に低下したことを実証しているグラフである。
【
図14】MIリモデリング後に、CF-ECMと共に移入されたGFP+MSCが低下したことを実証しているグラフである。
【
図15】MIリモデリング後に、CF-ECMと共に移入されたGFP+MSCが低下したことを実証しているグラフである。
【
図16】偽処置(sham treatment)に対するCF-ECM単独投与の効力を実証しているグラフである。
【
図17】偽処置に対するCF-ECM単独投与の効力を実証しているグラフである。
【
図18】注射可能なCF-ECMにMSCを1時間、播種した結果を示す図である。
【
図19】注射可能なCF-ECMにMSCを18時間、播種した図である。
【
図20】MSC単独の注射と比べ、注射可能なECMと組み合わせたMSCの注射の4時間後に細胞維持が向上していることを示している図である。青=MSC注射。黄色=注射可能なCF-ECM+MSC注射。
【
図21】注射可能なECMと組み合わせたMSCの注射の24および48時間後に細胞維持が向上していることを示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、様々な修正および代替形態に影響を受けやすいが、その具体的な実施形態は、例として図面に示されており、本明細書において詳述されている。しかし、具体的な実施形態の本明細書における説明は、本発明を開示されている特定の形態に限定することを意図するものではなく、それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の趣旨および範囲に収まる、すべての修正、等価物および代替物に及ぶことを理解すべきである。
本出願は、以前に開示されている改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)の注射可能製剤、ならびにそれを作製する方法およびそれを使用する方法を開示する。このような製剤は、心疾患または損傷、および他の虚血性損傷、こうした虚血性肢損傷を処置するために使用することができる。有利には、この製剤は、侵襲手術の必要なしに、注射によって標的組織に直接、送達することができる。
【0023】
本出願は、心疾患または損傷を処置するための治療的細胞が播種されていない、細胞を含まない改変されたCF-ECMの使用、および虚血性肢損傷を処置するための、播種された治療的細胞を含むかまたは含まないかのどちらかでの、CF-ECMの使用をさらに開示する。CF-ECMは、接着剤または縫合糸を必要としないで、標的組織に十分に粘着するパッチを形成し、柔軟に動き、標的組織への播種細胞の送達を首尾良く容易にする。
改変されたCF-ECMは、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含み、他の構造タンパク質も同様に含むことができる。一部の実施形態では、改変されたCF-ECMは、構造タンパク質コラーゲンタイプVを含む。
好ましくは、フィブロネクチン分子は、改変されたCF-ECM中に存在している構造タンパク質分子の60%~90%を構成する。一部の実施形態では、フィブロネクチン分子は、ECM中に存在している構造タンパク質分子の70%~90%を構成する。一部の実施形態では、フィブロネクチン分子は、改変されたCF-ECM中に存在している構造タンパク質分子の80%~90%を構成する。
【0024】
改変されたCF-ECMは、フラグメント化または凍結乾燥される前に、20~500μmの厚さを有する。一部の実施形態では、フラグメント化されていないCF-ECMは、30~200μmまたは50~150μmの厚さ範囲を有する。一部の実施形態では、存在している構造タンパク質分子の80%以上がフィブロネクチン分子である。
好ましくは、改変されたCF-ECMの構造タンパク質は、化学的に架橋されていない。
【0025】
構造タンパク質に加えて、心臓ECMは、成長因子およびサイトカインなどの1つまたは複数のマトリックス細胞タンパク質、ならびに他の物質を含んでもよい。心臓ECMにおいて見いだすことができる他のタンパク質の非限定例は、潜在型形質変換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1、タンパク質-リシン6-オキシダーゼおよびビグリカンを含む。一部の実施形態では、ECMは、形質転換成長因子ベータ1(TGFB-1)、形質転換成長因子ベータ3(TGFB-3)、上皮成長因子様タンパク質8、成長/分化因子6、グラニュリン、ガレクチン3結合タンパク質、ニドゲン1、ニドゲン2、デコリン、プロラルギン、血管内皮細胞成長因子D(VEGF-D)、フォンヴィレブランド因子A1、フォンヴィレブランド因子A5A、マトリックスメタロプロテアーゼ14、マトリックスメタロプロテアーゼ23、血小板因子4、プロトロンビン、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、およびグリア由来ネキシンのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0026】
改変されたCF-ECMは、脱細胞化されており、したがって、無傷の心臓線維芽細胞を本質的に含まなくてもよい。一部の実施形態では、CF-ECMに、当分野において公知の方法を使用して、心疾患または損傷のための1つまたは複数の治療的細胞が播種されてもよい。生体足場に播種するために使用することができる治療的細胞のタイプの例には、非限定的に、骨格筋芽細胞、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPS)、多能性成体生殖幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Isl1+心血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、ヒト間葉系幹細胞(iPS細胞もしくはES細胞に由来する)、ヒト間葉系間質細胞(iPS細胞もしくはES細胞に由来する)またはそれらの組合せが含まれる。これらの細胞タイプのすべてが、当分野において周知である。
改変されたCF-ECMを作製する方法、ならびにその構造に関する一層の情報および組成物は、参照により本明細書において組み込まれている、米国特許第8,802,144号に開示されている。
【0027】
開示された注射可能組成物は、注射可能な薬学的に許容される担体に加えて、改変されたCF-ECMの1つまたは複数のフラグメントを含み、このフラグメントは、皮下注射針の開口部を自由に通過することができるほど十分に小さい。一部の実施形態では、フラグメントは、0.838mmの名目内径を有するゲージ18の皮下注射針の開口部を通過するほど、十分に小さい。他の実施形態では、フラグメントは、ゲージ19(名目内径0.686mm)、ゲージ20(名目内径0.603mm)、ゲージ21(名目内径0.514mm)、ゲージ22(名目内径0.413mm)、ゲージ23(名目内径0.337mm)、ゲージ24(名目内径0.311mm)、ゲージ25(名目内径0.260mm)、ゲージ26(名目内径0.260mm)および/またはゲージ27(名目内径0.210mm)の皮下注射針の開口部を通過するのに十分に小さい。
非限定例では、フラグメントは、例えば、カミソリ刀、外科用メスまたははさみにより、改変されたCF-ECMを小さく切断することにより形成することができる。これらのフラグメントは、一旦生成したら、懸濁して、1回または複数回、皮下注射針に通してもよい。
別の非限定例では、フラグメントは、改変されたCF-ECMを凍結乾燥(凍結乾燥および粉末化)することにより形成することができる。凍結乾燥は、医薬組成物を調製するために使用される周知の技法である。一部の場合、凍結乾燥は、フラグメントサイズを制御するために使用される。
【0028】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」とは、好適な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤またはアジュバント(まとめて、「薬学的に許容される担体」)と一緒にしたCF-ECMフラグメントの治療有効量を意味する。本明細書で使用する場合、用語「有効量」および「治療有効量」とは、深刻な毒性、深刻な刺激または深刻なアレルギー反応などの有害な過度の副作用なしに、所望の治療的応答をもたらすのに十分な活性治療剤の量を指す。具体的な「有効量」は、処置される特定の状態、患者の身体的状態、処置される動物のタイプ、処置期間、同時治療(ある場合)の性質、ならびに使用される具体的な製剤および化合物またはその誘導体の構造などの要因により明らかに様々となろう。最適有効量は、型通りの実験を使用して、当業者によって容易に決定することができる。
さらに、本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、当業者に周知であり、以下に限定されないが、0.01~0.1Mおよび好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液または0.9%の生理食塩水を含む。さらに、このような薬学的に許容される担体は、水溶液または非水溶液、懸濁液およびエマルションとすることができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、以下に限定されないが、生理食塩水および緩衝化媒体を含めた、水、アルコール/水溶液、エマルションまたは懸濁液を含む。
【0029】
非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび不揮発油が含まれる。静脈内ビヒクルには、リンゲルのデキストロースなどに基づくものなどの、流体および栄養素補給物、電解質補給物が含まれる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、コレーティング剤(collating agent)、不活性ガスなどの、保存剤および他の添加物も、存在していてもよい。
【0030】
注射可能組成物は、心疾患もしくは損傷、虚血性肢損傷、または組織への血液供給の遮断による他の損傷を処置するために使用することができる。一部の場合、注射可能組成物は、経心内膜送達のための任意の適切な手段を使用して、心室腔の心膜内壁に送達される。例えば、送達カテーテルは、心疾患または状態を処置するために、注射可能組成物を送達するために使用することができる。他の送達装置を使用して、本明細書に記載されている注射可能組成物の治療的送達または診断送達を実現することができる。例えば、注射可能組成物は、Myostar(Biosense Webster)、Helix(Biocardia)、Bullfrog(Mercator MedSystems)またはC-Cath(Cardio3Biosciences)などの心臓用針チップ型注射カテーテルを使用して送達することができる。有利なことに、本明細書に記載されている注射方法による注射可能組成物の送達は、最小限の侵襲であり、全身麻酔、体外循環(例えば、人工心肺装置を介した循環)、循環補助または開胸することなく実現することができる。したがって、患者への合併症の見込みおよびリスクは、実質的に一層低いものとなる。
【0031】
一部の場合、注射可能組成物は、心膜外送達を行うための任意の適切な手段を使用して、心臓の外側壁(心膜外)に送達される。例えば、本明細書に記載されている注射可能組成物の心外膜送達は、針および/またはシリンジを含む送達装置を使用して実現することができる。
本出願は、非限定的に、心疾患または損傷、虚血性肢損傷、または組織への血液供給の遮断による他の損傷を処置することを含めた、細胞不含の改変されたCF-ECMのための治療的使用をさらに開示している。
本出願は、虚血性肢損傷、および付随する、虚血性潰瘍を治癒することの困難を処置するため、播種した治療的細胞を使用するまたはこれを使用しないかのどちらかでの、改変されたCF-ECMに対する治療的使用をさらに開示している。
以下の例は、例示目的で提示されているに過ぎず、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。実際に、本明細書において示されているものおよび記載されているものに加えて、上述の説明および以下の例から本発明の様々な修正が当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に収まる。
【実施例】
【0032】
(例1)
改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスの注射可能製剤
この例では、本発明者らは、改変されたCF-ECMの注射可能製剤を作製するため、心臓線維芽細胞から改変されたECM、改変された脱細胞化ECM、および改変されたフラグメント化ECMを生成した。得られた製剤は、カテーテル注射を介して、ブタの心臓に首尾良く送達した。したがって、この例は、最小限の侵襲的な非外科的方法を使用して、心臓に送達することができる、改変されたCF-ECMの代替組成物となることを実証している。さらに、フラグメント化製剤は、送達された改変されたCF-ECMの表面積を大幅に増加させることになり、その結果、以前に開示されている心疾患または損傷への適用および本出願において最初に開示されている虚血性創傷への適用の両方によって、有益性が増大する。
【0033】
方法および結果
改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)。改変された線維芽細胞由来の細胞外マトリックスは、以前に記載されている方法を使用して製造した(それらの両方が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号、およびSchmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131を参照されたい)。手短に言えば、雄のLewisラット(260~400g)は、CO2での窒息により犠牲にし、迅速に心臓を切除し、心房を取り出し、心室を1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む氷冷PBSに入れた。心臓は、細かく切り、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、73U/mLのコラゲナーゼ2、2μg/mLのパンクレアチン(4x)中で消化し、37℃で65分間、撹拌しながらインキュベートした。消化組織は、70μmのセルストレーナーによりふるいにかけ、1000×gで20分間、4℃で遠心分離にかけた。細胞ペレットを再懸濁し、2つのT75培養フラスコにプレート培養した。細胞を標準培養条件下(37℃、5%CO2、100%湿度)下で2時間、接着させ、次に、PBSを用いて洗浄することにより非接着細胞を除去し、培養培地(DMEM、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を交換して、集密まで培養した。
【0034】
CF-ECM足場形成は、高グルコースDMEM+10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン中、1cm2あたり約1.1x105~2.2x105個の密度で、プレート培養した心臓線維芽細胞(継代2~3回)を培養することにより誘発し、37℃、5%CO2および100%湿度で7~15日間、培養した。線維芽細胞は、培地を除去することにより、培養皿からシートとして取り出し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により線維芽細胞をすすいだ。次に、この細胞シートが、プレート表面から持ち上げられるまで(約5分間)、それらをPBS溶液中、2mM EDTAを用いて、37℃でインキュベートした。
【0035】
最適化された改変されたCF-ECMの脱細胞化プロトコル。次に、得られた心臓線維芽細胞の細胞シートから細胞をはぎ取った。このシートは、回転子上、室温(RT)で、低張性/高張性Tris緩衝化生理食塩水(TBS)(低張、高張、低張、高張)を交互に15分間の洗浄を2回、受けた。高張性TBSは、500mMのNaCl/50mM Trisを含んでおり、7.6~8.0の塩基性pHを有した。低張性TBSは、10mM Tris(7.6~8.0の塩基性pH)しか含んでいないことを除いて、同様に調製した。
【0036】
次に、シートを、回転子上、室温で等張性TBS中、1%トリn-ブチルホスフェート(TnBP)を使用して、72時間、洗浄した。等張性Trisは、150mM NaCl/50mM Tris(7.6~8.0の塩基性pH)を含んだ。続いて、シートを、回転子上、37℃で、PBS中、2分間、すすぎ、次いで、低張性TBS中、90U/mL DNアーゼ(Qiagen)中、3時間、洗浄した。この後に低張性TBS中、2×2分間、すすぎ、その後、パッチを別の皿に動かした。この後に、回転子上、室温で、エタノール中での2×2分間の洗浄、および分子グレードH2O中、2時間の洗浄が続いた。得られた脱細胞化した改変されたCF-ECMは、使用の準備が整うまで、PBS中、4℃で保管した。
【0037】
注射可能なCF-ECMフラグメント化プロトコル。上記の通り調製したCF-ECMは、小さな(約2mm×2mm)フラグメントが生成するまで、カミソリ刀、外科用メスまたははさみを用いて小さく切断した。小さなCF-ECMフラグメントは1~5mLの等張性緩衝液(生理食塩水、PBS、TBS、PlasmalyteA)中に懸濁し、適切なサイズの管に移した。次に、CF-ECMフラグメントを含有しているこの懸濁液を、3~5mlのシリンジに装着した18ゲージの針に、15~20回、通した。続いて、得られたCF-ECM懸濁液を、3~5mのシリンジに装着した21ゲージの針に、15~20回、通した。得られたCF-ECM懸濁液を、3~5mのシリンジに装着した24ゲージの針に、15~20回、通した。得られたCF-ECM懸濁液を、3~5mのシリンジに装着した27ゲージの針に、15~20回、通した。次に、得られたCF-ECM懸濁液を、5000~10,000xgで10~15分間、遠心分離にかけた。
最終注射可能組成物を形成するため、フラグメント化CF-ECMを、注射(0.5~5mL)用の適切な体積中に、等張性注射可能溶液(通常の生理食塩水、PlasmalyteA)に懸濁した。フラグメント化CF-ECMは小さな、不均質なシート様フラグメントである(
図1~4を参照されたい)。
【0038】
注射可能なフラグメント化CF-ECM組成物の試験。
フラグメント化CF-ECMの注射可能組成物を、心臓注射カテーテル(27ゲージの針の先端のとがったカテーテル)において試験した。試験により、CF-ECMフラグメントは、1時間の滞留時間(カテーテル中に滞留している時間)にかかわらず、詰まりがなく、カテーテルを通過することができることが確認される。さらに、試験により、CF-ECMフラグメントは、細胞に容易に結合し、播種材料として依然として機能することができることが示された。1つの試験では、細胞を無傷CF-ECM足場に結合させて、次に、注射用にフラグメント化した。別の試験では、CF-ECM足場をフラグメント化し、次に、細胞をこのフラグメント混合物に結合させた。
CF-ECMフラグメントを含有している注射可能組成物は、注射カテーテルを介してブタの心室に注射した。さらに、試験により、CF-ECMフラグメントは、ブタの心臓に首尾良く送達されたことを示した。CF-ECMの注射可能組成物は、注射前にCF-ECMを黒く染色することにより、心室中で検出された。注射可能なCF-ECMは、左心室の間質空間で主に観察された(
図5を参照されたい)。
【0039】
結論
この例は、フラグメント化した改変されたCF-ECMを含有している本発明者らの注射可能製剤は、HelixまたはMyostarなどの、注射用心臓カテーテルによって、最小限の侵襲性で心臓に投与することができることを実証している。対照的に、以前に開示されているCF-ECM「パッチ」は、侵襲性の外科的手順を行うことにより、標的組織上にインプラントしなければならない。さらに、CF-ECMをフラグメント化することにより、使用されるCF-ECMの表面積の合計は、40倍超で向上し、結果として治療的有効性を潜在的に高める。
【0040】
以下の例において示されている通り、治療的細胞の非存在下でさえも、損傷を受けた心臓組織または虚血性肢損傷の処置において、無傷のCF-ECM足場を治療剤として使用することができる。したがって、注射可能なCF-ECMフラグメント化製剤は、独立治療法として使用することができるか、または移植のための治療的細胞を上記のフラグメント化製剤に播種することができる。治療的細胞送達プラットフォームとしての使用では、CF-ECMフラグメントは、任意の粘着細胞タイプと対を形成することができる。粘着細胞は、迅速にCF-ECMに結合し、針およびシリンジ、または針付きカテーテルによって、罹患した心筋(または、任意の器官/組織)に送達することができ、標的組織において細胞維持が増大する。
【0041】
(例2)
改変されたCF-ECM「パッチ」は、播種細胞の非存在下でさえも、ラット心筋梗塞モデルにおいて治療効果を示す。
改変されたCF-ECMは、損傷を受けた心臓組織または罹患心臓組織に治療的細胞を送達するためのプラットフォームとして以前に開示された(例えば、それらの両方が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号;Schmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131を参照されたい)。この例では、本発明者らは、改変されたCF-ECM「パッチ」が、心筋梗塞(MI)のラットモデルにおいて実証されている通り、治療的細胞の非存在下でさえも、治療効果を有するという驚くべき知見を報告する。
【0042】
方法および結果
改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)。改変された線維芽細胞由来の細胞外マトリックスは、以前に記載されている方法を使用して製造した(それらの両方が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号、およびSchmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131を参照されたい)。手短に言えば、雄のLewisラット(260~400g)は、CO2での窒息により犠牲にし、迅速に心臓を切除し、心房を取り出し、心室を1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む氷冷PBSに入れた。心臓は、細かく切り、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、73U/mLのコラゲナーゼ2、2μg/mLのパンクレアチン(4x)中で消化し、37℃で65分間、撹拌しながらインキュベートした。消化組織は、70μmのセルストレーナーによりふるいにかけ、1000×gで20分間、4℃で遠心分離にかけた。細胞ペレットを再懸濁し、2つのT75培養フラスコにプレート培養した。細胞を標準培養条件下(37℃、5%CO2、100%湿度)下で2時間、接着させ、次に、PBSを用いて洗浄することにより非接着細胞を除去し、培養培地(DMEM、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を交換して、集密まで培養した。
【0043】
ラットのLADの常設ライゲーションモデル。左前下行枝のライゲーションにより、心筋梗塞を12週齢の雄のLewisラットに誘発させた(LAD常設ライゲーションモデル;Kumar D. et al., Coron Artery Dis. 2005 Feb;16(1):41-44を参照されたい)。LADをライゲーションし、胸を閉じて、心筋梗塞(MI)をモデル化した。MIの48時間後、開胸し、4つの異なる処置の1つを実施した:(1)細胞のないCF-ECMパッチを、梗塞領域に置いた(パッチのみ);(2)ラットの間葉系幹細胞(MCS)を2時間、播種したCF-ECMパッチを、梗塞の領域に置いた(播種パッチ);(3)ラット間葉系幹細胞(MSC)を、CF-ECMパッチなしで、梗塞領域に置いた(細胞のみ);および(4)細胞またはCF-ECMパッチを、梗塞領域に置かなかった(偽(sham))。
【0044】
心臓超音波検査。一連の心臓超音波検査を、MI後、0日目、7日目、14日目、21日目および28日目に各ラットに実施した。MIにより、進行性の有害な左心室拡張が引き起こされる。駆出率(
図6)および収縮末期容量(
図7および8)の変化によって測定される通り、播種パッチとパッチの両方が、偽手順(sham procedure)と比べて、測定可能な治療効果を生じた。
断面病理。ラットを犠牲にし、断面病理を梗塞心臓に行った。具体的には、瘢痕厚さ、ヒンジ部厚さ、遠隔壁厚さおよび梗塞した左心室組織%を測定した。播種パッチとパッチのみの処置のどちらも、偽処置と比べて、ヒンジ部厚さ、瘢痕厚さおよび遠隔壁厚さが向上した(
図9)。
結論
まとめると、これらの結果は、心疾患または損傷を処置するための治療剤として、播種細胞の非存在下で、細胞不含のCF-ECMパッチを使用することができることを驚くべきことに示している。
【0045】
(例3)
改変されたCF-ECM「パッチ」は、播種細胞の存在下または非存在下の両方で、マウス虚血肢モデルにおいて治療効果を示す。
改変されたCF-ECMは、損傷を受けた心臓組織または罹患心臓組織に治療的細胞を送達するためのプラットフォームとして以前に開示された(例えば、それらの両方が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号;Schmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131を参照されたい)。この例では、本発明者らは、改変されたCF-ECM「パッチ」が、パッチ上に播種された治療的細胞を使用する場合、またはこれを使用しない場合の両方の虚血性肢損傷のモデルにおいて、治療効果を有するという驚くべき知見を報告する。
【0046】
方法
線維芽細胞由来細胞外マトリックス。改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス(CF-ECM)は、以前に記載されている方法を使用して製造した(それらの両方が、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第8,802,144号、およびSchmuck, E.G., et al., Cardiovasc Eng Technol 5(1) (2014): 119-131を参照されたい)。手短に言えば、雄のLewisラット(260~400g)は、CO2での窒息により犠牲にし、迅速に心臓を切除し、心房を取り出し、心室を1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む氷冷PBSに入れた。心臓は、細かく切り、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、73U/mLのコラゲナーゼ2、2μg/mLのパンクレアチン(4x)中で消化し、37℃で65分間、撹拌しながらインキュベートした。消化組織は、70μmのセルストレーナーによりふるいにかけ、1000×gで20分間、4℃で遠心分離にかけた。細胞ペレットを再懸濁し、2つのT75培養フラスコにプレート培養した。細胞を標準培養条件下(37℃、5%CO2、100%湿度)下で2時間、接着させ、次に、PBSを用いて洗浄することにより非接着細胞を除去し、培養培地(DMEM、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を交換して、集密まで培養した。
【0047】
CF-ECM足場形成は、高グルコースDMEM+10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン中、1cm2あたり約1.1x105~2.2x105個の密度で、プレート培養した心臓線維芽細胞(継代2~3回)を培養することにより誘発し、37℃、5%CO2および100%湿度で10~14日間、培養した。線維芽細胞は、37℃において2mM EDTA溶液を用いてインキュベートすることにより、培養皿からシートとして取り出した。次に、得られた線維芽細胞シートを、分子グレード水によりインキュベートすることにより細胞をはぎ取り、次いで、一定の撹拌により、4℃で24~48時間、0.15%過酢酸とインキュベートした。次に、得られたマトリックスを、滅菌水により繰り返しすすぎ、次いで、PBSによりすすいだ。
得られたCF-ECM足場は、容易に取り扱われる約16mmの直径で200μmの半透明の厚みのある足場であり、組織に自然と接着して、縫合糸または接着剤を必要としない。
【0048】
GFP+胚性幹細胞由来の間葉系幹細胞。ヒトESC系H9 Cre-LoxP(構成的EGFP発現)は、継代22でWiCell(Madison、WI)から得た。細胞は、分化した領域を除去することなく、3~4の継代を行うためMatrigel(登録商標)(BD Biosciences)によりコーティングされているフラスコ上で、mTeSR(商標)1培地(StemCell Technologies)中で培養した。分化細胞を単離し、すべての細胞が、線維芽細胞様形態を有するまで、組織培養用プラスチック上、MSC成長培地(10%MSCを特徴とするFBS、MEM非必須アミノ酸、アルファ-MEM)中で培養した。これらの細胞は、以下のフローサイトメトリープロファイルを示した:CD14-、CD31-、CD34-、CD45-、CD73+、CD90+およびCD105+。7.5x105GFP+のMSCを使用して、埋め込み前の2時間、線維芽細胞の細胞外マトリックス足場上に播種するか、または注射用のPBS500μl中で懸濁した。
【0049】
インビトロ試験をこれらの細胞に行い、MSC表現型であることを確認した。脂肪細胞分化および骨分化の場合、MSCは、24-ウェルプレートにプレート培養して、集密になるまで成長させた。脂肪細胞分化および骨分化培地(Miltenyi Biotech、Auburn、CA)を加え、合計で21日間、3~4日毎に交換した。脂肪細胞脂質滴は、オイルレッドO染色(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)によって検出した。骨芽細胞の石灰化は、アリザリンレッドS染色(Sigma-Aldrich)によって検出した。軟骨分化の場合、2.5x105個の細胞をディープウェル型96ウェルプレートに入れ、遠心分離にかけてペレットを作製した。培地は、合計24日間、3~4日毎に交換した。軟骨細胞は、グルコースアミノグリカンを染色する、アルシアンブルーにより染色した軟骨細胞ペレットのパラフィンに包埋した区域を使用して検出した。
【0050】
マウスの後肢虚血モデルおよび治療的送達。手順はすべて、UW-Madison institutional animal care and use committeeのポリシーおよび指針に従って実施した。後肢虚血モデルは、以前に記載されている通り作製した(Westvik TS, Fitzgerald TN, Muto A, Maloney SP, Pimiento JM, Fancher TT, et al. Limb ischemia after iliac ligation in aged mice stimulates angiogenesis without arteriogenesis. Journal of vascular surgery. 2009;49:464-473)。手短に言うと、体重18.1+/-1.4gである雌の免疫適格Balb/Cマウスに、2~5%の吸入イソ-フルオランにより麻酔をかけた。動物を剣状突起のレベルから尾部、尾部から膝まで毛をはぎ取り、次に、加熱した水のブランケット上に背臥位で置き、1~3%の吸入イソフルオランで維持した。中線切開によって、総腸骨動脈に接近した。鈍的切開を使用して、左の総腸骨動脈を露出し、静脈および周囲組織から分離し、次に、6-0シルクを用いて約3mm離して二重ライゲーションした。ライゲーション後、腹壁および皮膚を閉じた。鼠蹊部の切開によって、左の大腿動脈に接近した。大腿動脈は、上記の通り単離し、膝窩動脈の近位端部の鼡径靱帯の遠位を露出した。最後に、大腿動脈を6-0シルクにより二重ライゲーションし、これらのライゲーション間を二等分した。次に、検討薬剤を皮下または経筋肉(以下を参照されたい)のどちらかに適用し、皮膚を閉じて動物を回復させた。
【0051】
マウスは、4つの処置群に分けた:群A:1.0×106GFP+MSCを搭載したCF-ECMは、内転筋上の皮下に送達した。群B:細胞を含まないCF-ECMのみを、内転筋上の皮下に送達した。群C:GFP+MSCのみを、内転筋に筋肉内注射により送達した。群D:対照群は、内転筋に筋肉内注射により送達される生理食塩水からなる。筋肉内注射は、27Gの針および1mLのシリンジを使用して行い、大腿部ライゲーション周辺に分布している約4箇所において外転筋に注射した。CF-ECMは、細胞の側面を下に向かせ、大腿部ライゲーションを均一に覆うよう広げた。
【0052】
エンドポイント。4つの群すべての動物は、処置後、35日目まで生存し、次に、犠牲にした。組織壊死および後肢潅流は、デジタル写真、縦方向レーザードップラーアッセイおよび半定量的組織病理学を使用して測定した。さらに、以前に定義されている(Westvik TS, Fitzgerald TN, Muto A, Maloney SP, Pimiento JM, Fancher TT, et al. Limb ischemia after iliac ligation in aged mice stimulates angiogenesis without arteriogenesis. Journal of vascular surgery. 2009;49:464-473を参照されたい)、修正虚血(MII)指標点数を算出した。
【0053】
レーザードップラー潅流の走査。レーザードップラー走査は、Moor Instruments Ltd(Millwey Axminster、Devon、英国)によるmoorLDIレーザードップラーイメージャーを使用して、術後2日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目に実施した。手短に言えば、マウスを2~5%の吸入イソフルオランにより麻酔にかけ、走査の間、1.5%イソフルランで維持した。マウスは、ドップラースキャナー領域(6.0cmx3.2cm)内に含まれている下肢の腹面で背臥位に固定した。マウスは、10ms/ピクセルの解像度で走査した。室温は24.4±1℃であった。時間点あたり動物あたり3つの走査を行い、最終的な測定値のため平均した。分析は、moorLDIイメージソフトウェアを使用して実施した。分析は、2mmの対象とする円領域を使用して、第1指からちょうど遠位にある足の腹面の中央で実施した。
組織病理学。後肢を脊柱から骨盤を脱臼させることによって単離した。次に、適切な固定化を可能にするよう、尾部側の足の皮膚を内側面まで切開した。組織は、サージパスデカルシファイアI(Leica)中で24時間、脱灰し、次に、10%ホルマリン中に固定化した。組織は、大腿部および腓腹で、横断して切り、パラフィンに包埋し、10μmの区分に切断し、ヘモトキシリンおよびエオシンにより染色した。定量的点数システムは、核中央化、脂肪の浸潤、骨髄壊死、線維症および筋繊維不均質化を評価するために、獣医病理学者によって開発されたものである。
【0054】
結果
CF-ECM上に送達されたGFP+ESC由来のMSCは、重症な虚血肢のマウスモデルにおける、潅流の劇的な改善をもたらす。重症な後肢虚血を、26匹のBalb/Cマウスにおいて、腸骨大腿骨ライゲーションにより首尾良く誘発した。モデル生成時に、マウスは、4つの群の1つに無作為化した;プラセボ注射、hMSC注射、CF-ECM足場のみ、およびhMSCを播種したCF-ECM足場。マウスはすべて、手術および処置に生存し、細胞のみの注射群における2匹のマウスは、細胞生存率があまりに悪いために、分析から除外した。
【0055】
重症な虚血が、レーザードップラー走査によって術後2日目に確認された(
図10A)。35日間の実験の過程にわたり、プラセボ注射およびhMSC注射に比べて、CF-ECMのみ、およびhMSCを播種したCF-ECMにおいて、潅流に対する十分な時間処置相互作用(p=0.03)があった(
図10A~10B)。hMSCを播種したCF-ECMにより処置された動物は、自動脱落の速度が最も遅かった(
図10C)。修正虚血指数点数は、プラセボ注射およびhMSC注射と比べて、CF-ECMだけ、およびhMSCを播種したCF-ECM群において最高であった(
図10D)。
【0056】
定量的組織学的分析。虚血性腓腹(IC)および大腿部(IT)の定量的組織学的点数化は、承認を受けた獣医病理学者(DS)により実施した(表1)。骨髄壊死、すなわち重症な虚血の指標は、すべての群で深刻であると採点された。筋繊維の不均質性である、再生マーカーは、プラセボ注射(IC=2.+/-0.3、IT=2.1+/-0.2)およびhMSC注射(IC=3.0+/-0.4、IT=2.6+/-0.2)群のみ(p=0.04)に比較して、CF-ECM(IC=3.7+/-0.3;IT=3.0+/-0.2)およびhMSCを播種したCF-ECM(IC=3.8+/-0.3、IT=3.2+/-0.2)群においてかなり向上した。核中央化(IC p=0.35、IT p=0.59)、脂肪の浸潤(IC p=0.37、IT p=0.63)、骨髄壊死(IC p=0.32、IT p=0.64)および線維症(IC p=0.62、IT p=0.64)に総合的に差異はなかった。IC(p=0.60)またはIT(p=0.97)(
図11)における高出力場あたりの筋細胞数は、処置により影響を受けなかったが、筋細胞領域は、IC(p=0.0001)およびIT(0.0004)におけるすべての処置においてかなり低下した。
【0057】
表1は、罹患組織の定量的組織学的点数化を示している。大腿部(p=0.0035)および腓腹(p=0.05)の両方における、処置細胞および偽対照と比べて、CF-ECM処置動物では、筋細胞の不均質性が有意に増加したことに留意されたい。筋細胞の不均質性は、筋再生のマーカーである。
結論
この例は、改変されたCF-ECM「パッチ」は、虚血肢を効果的に処置するために使用することができることを示している。このパッチは、細胞不含治療法として使用されてもよく、または潜在的な治療的細胞を播種することができる。
【0058】
【0059】
(例4)
改変されたCF-ECMシートは、播種細胞の非存在下でさえも治療効果を示す。
ラットの心筋梗塞モデルを使用して、播種細胞を使用する、およびこれを使用しないCF-ECM効力を評価した。ラットMSC(rMSC)がCF-ECMと共に移入されると、MI後のデルタ駆出率(delta ejection fraction)は維持され(
図12)、収縮末期容量は増加し(
図13)、MI後のリモデリングは低下した(
図14および15)。CF-ECM+MSCの組合せにより、収縮末期容量、駆出率、ヒンジ部厚さおよび瘢痕厚さが改善した。播種細胞の非存在下でさえも、CF-ECM単独で、駆出率、ヒンジ部厚さおよび瘢痕厚さが改善された。
図16および17に示されている通り、CF-ECMの単独投与は、偽処置と比べて、収縮末期容量(ESV)を低下させて、駆出率を向上するのに有効であった。
まとめると、これらのアッセイにより、CF-ECM単独の投与は、駆出率、収縮末期容量、収縮末期圧、拡張末期容積および収縮末期圧容積関係(ESPVR)を改善するのに十分であることが実証された。したがって、CF-ECMの単独投与は有益であった。
【0060】
(例5)
間葉系幹細胞(MSC)注射および維持アッセイ
注射可能なCF-ECMは、臨床的用途にいくつかの利点をもたらす。例えば、CF-ECMの注射は、最小限の侵襲であり、心臓切開手術を必要としないで心臓の再生治療を行うために送達することができる。これは、心臓の細胞療法が有益になると思われる多数の人が、心臓切開手順を受けるには具合があまりに悪いので重要である。注射可能なCF-ECMの最小限の侵襲的な注射は、心臓の細胞療法を受けることができる患者予備軍(pool)を増加させると思われる。注射可能なCF-ECMは、移植した細胞を有益となるよう配置するための細胞移動を必要としない、心臓壁への直接送達を含めて、心臓のより多くの領域に供給することができる。
CF-ECMに、1時間および18時間、GFP
+MSCを播種した。それぞれ、
図18および19に示されている通り、MSCは、CF-ECM材料の凝集物に移動した。
【0061】
細胞維持アッセイは、健常なラット(心筋梗塞がない。n=5)を使用して実施した。心臓に、以下を注射した:(1)QTRACKER(商標)525プローブが標識されている1x10
6rMSC;(2)QTRACKER(商標)655プローブが標識されており、注射可能なCF-ECMに播種した1x10
6rMSC。以下の時間点において、データを収集した。4時間、24時間、48時間、6日および7日。細胞維持は、3Dクライオ-イメージング(cryo-imaging)を使用して評価した。
図20に示されている通り、注射可能なCF-ECMは、注射の4時間後に、細胞維持が向上した。
図21に示されている通り、注射可能なCF-ECMは、注射の24時間および48時間後に、細胞維持が向上した。4時間の時間点において観察された、CF-ECMに結合しているrMSCへの同様の分布を考慮すると、QTRACKER(商標)655プローブは失われ、余分のGFPシグナルが、「裸の」rMSCとして誤って解釈されている可能性が高い。
【0062】
これらのデータにより、CF-ECMの注射可能製剤は、針付き心臓カテーテルを使用して送達することができること、およびCF-ECMは、MSCの「裸の」注射(すなわち、注射可能なCF-ECMなしの注射)と比べて、4時間時に心臓壁において細胞維持を劇的に向上させたことが実証される。eGFPを発現する細胞株を利用すると、4時間の時間の時点の後に、データの解釈が困難になった。例えば、QTRACKER(商標)655プローブリポーターの発現を、24時間後に検出するのは困難であった。
【0063】
要約すると、CF-ECMは、シートまたは注射可能製剤として製造することができる。どちらの製剤も、細胞の標的送達が可能である。治療的細胞維持は、シートと注射可能製剤のどちらを使用してもかなり改善された。さらに、本発明者らは、CF-ECMが生来の生物活性を単独で有することを実証した。
【0064】
本出願において列挙されている参照文献はすべて、すべての目的のため、参照により組み込まれている。開示されている主題の特定の実施形態および例が、本明細書において議論されているが、これらの例は例示であり、限定ではない。多くの改変が、本明細書および以下の特許請求の範囲を吟味すると、当業者に明白となろう。
本発明の好ましい態様は、以下の通りである。
1. (a) 構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスの1つまたは複数のフラグメントであって、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンであり、18ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるに十分小さい1つまたは複数のフラグメント、および
(b) 注射可能な薬学的に許容される担体
を含む、心疾患、心臓損傷または虚血性損傷を処置するための注射可能組成物。
2.改変された心臓細胞外マトリックスの構造タンパク質が化学的に架橋されていない、上記1に記載の組成物。
3.1つまたは複数のフラグメントが、20~500μmの厚さを有する、上記1に記載の組成物。
4.1つまたは複数のフラグメントが、凍結乾燥粉末の形態にある、上記1に記載の組成物。
5.改変された心臓細胞外マトリックスが、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む、上記1に記載の組成物。
6.無傷の心臓線維芽細胞を本質的に含まない、上記1に記載の組成物。
7.細胞不含である、上記6に記載の組成物。
8.心疾患、心臓損傷または虚血性損傷のための治療用の1つまたは複数の細胞をさらに含む、上記1に記載の組成物。
9.心疾患、心臓損傷または虚血性損傷のための治療用の1つまたは複数の細胞が、骨格筋芽細胞、胚性幹(ES)細胞もしくはその誘導体、人工多能性幹(iPS)細胞もしくはその誘導体、多能性成体生殖幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Isl1+心血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系間質細胞およびそれらの組合せからなる群から選択される、上記8に記載の組成物。
10.1つまたは複数の外因性非細胞治療剤をさらに含む、上記1に記載の組成物。
11.1つまたは複数の外因性非細胞治療剤が、1つまたは複数の成長因子を含む、上記10に記載の組成物。
12.1つまたは複数の成長因子が、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、間質由来因子-1(SDF-1)およびケラチノサイト成長因子(KGF)からなる群から選択される、上記11に記載の組成物。
13.1つまたは複数のフラグメントが、27ゲージの皮下注射針の注射開口部を通り抜けるに十分小さい、上記1に記載の組成物。
14.心疾患、心臓損傷、虚血性疾患または虚血性損傷を有する対象に、有効量の上記1に記載の組成物を注射し、それにより、心疾患、心臓損傷、虚血性疾患または虚血性損傷の重症度が軽減される工程を含む、前記対象を処置する方法。
15.心疾患、心臓損傷、虚血性疾患または虚血性損傷が、急性心筋梗塞、心不全、ウイルス感染、細菌感染、先天性欠損、脳卒中、糖尿病性足潰瘍、末梢動脈疾患(PAD)、PAD関連潰瘍または虚血肢によって引き起こされる、上記14に記載の方法。
16.虚血性疾患または虚血性損傷を有する対象を治療する方法であって、虚血性損傷を示す対象の組織を、20~500μmの厚さを有し、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む細胞不含の改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスと接触させる工程を含み、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%が、フィブロネクチンであり、改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックス上に細胞が播種されず、
それにより虚血性疾患または虚血性損傷の重症度が軽減されることを特徴とする方法。
17.細胞不含の改変された心臓細胞外マトリックスが、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む、上記16に記載の方法。
18.虚血性疾患または虚血性損傷を示す対象の組織を、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤と接触させる工程をさらに含む、上記16に記載の方法。
19.1つまたは複数の非細胞治療剤が、1つまたは複数の成長因子を含む、上記18に記載の方法。
20.1つまたは複数の成長因子が、間質由来因子-1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)およびケラチノサイト成長因子(KGF)からなる群から選択される、上記19に記載の方法。
21.虚血性疾患または虚血性損傷が、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病性足潰瘍、末梢動脈疾患(PAD)、PAD関連潰瘍または虚血肢によって引き起こされる、上記16に記載の方法。
22.虚血肢が、アテローム性動脈硬化または糖尿病の結果である、上記21に記載の方法。
23.虚血性肢損傷を示している対象の組織に、20~500μmの厚さを有しており、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプIIIおよびエラスチンを含む改変された心臓線維芽細胞由来細胞外マトリックスを接触させる工程であって、改変された細胞外マトリックスに存在している構造タンパク質の60%~90%がフィブロネクチンであり、
それにより虚血性肢損傷の重症度が軽減される工程を含む、虚血性肢損傷を有する対象を処置する方法。
24.改変された心臓細胞外マトリックスが、マトリックス細胞タンパク質の潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質変換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性かつシステインリッチな分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスglaタンパク質(MGP)、硫酸化グリコプロテイン1およびビグリカンのうちの1つまたは複数をさらに含む、上記23に記載の方法。
25.改変された心臓細胞外マトリックスに、虚血性肢損傷のための1つまたは複数の治療的細胞が播種される、上記23に記載の方法。
26.虚血性肢損傷のための1つまたは複数の治療的細胞が、骨格筋芽細胞、胚性幹(ES)細胞もしくはその誘導体、人工多能性幹(iPS)細胞もしくはその誘導体、多能性成体生殖幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、血管内皮前駆細胞(EPC)、脂肪由来幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系幹細胞、iPS細胞もしくはES細胞に由来するヒト間葉系間質細胞およびそれらの組合せからなる群から選択される、上記25に記載の方法。
27.虚血性疾患を示している対象の組織に、1つまたは複数の外因性非細胞治療剤を接触させる工程をさらに含む、上記23に記載の方法。
28.1つまたは複数の非細胞治療剤が、1つまたは複数の成長因子を含む、上記27に記載の方法。
29.1つまたは複数の成長因子が、間質由来因子-1(SDF-1)、上皮成長因子(EDF)、形質転換成長因子-α(TGF-α)、肝細胞成長因子(HGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子1(FGF-1)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、形質転換成長因子-β(TGF-β)およびケラチノサイト成長因子(KGF)からなる群から選択される、上記28に記載の方法。
30.虚血性肢損傷がアテローム性動脈硬化の結果である、上記23に記載の方法。