(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ヒト胚性幹細胞の分化
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240807BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240807BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240807BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20240807BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/39
A61P3/10
C12N5/0735
(21)【出願番号】P 2022109280
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2019004483の分割
【原出願日】2011-05-11
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2010-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジーン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0263896(US,A1)
【文献】国際公開第2009/132083(WO,A2)
【文献】特開2008-212150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0170198(US,A1)
【文献】Nature Chemical Biology,2009年,Vol.5, No.4,pp.258-265
【文献】Nature Biotechnology,2008年,Vol.26, No.4,pp.443-452
【文献】Nature Biotechnology,2006年,Vol.24, No.11,pp.1392-1401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
PubMed
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する単離されたヒト細胞集団であって、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート及びBMP阻害能を有する因子を追加した培地の中で胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を培養することにより得られるものであり、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の80%超の細胞が、PDX1及びNKX6.1を共発現する膵臓内胚葉細胞であり、前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞が多能性幹細胞に由来するものであ
り、単離後に精製することなく得られる、細胞集団。
【請求項2】
前記集団の90%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、請求項
1に記載の単離された細胞集団。
【請求項3】
前記培地が、TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤が更に追加されたものである、請求項1または2に記載の単離された細胞集団。
【請求項4】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の80%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する膵臓内胚葉細胞である、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する前記細胞集団を生成する方法であって、該方法は、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する前記細胞集団を、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート及びBMP阻害能を有する因子を追加した培地の中で、前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、を含
み、
前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の精製を含まない、方法。
【請求項5】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の80%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する膵臓内胚葉細胞である、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する前記細胞集団を生成する方法であって、
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート及びBMP阻害能を有する因子を追加した培地の中で、前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程を含
み、
前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の精製を含まない、方法。
【請求項6】
プロテインキナーゼC活性化因子を追加した前記培地が、TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤が更に追加されたものである、請求項
4または
5に記載の方法。
【請求項7】
前記TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤がALK5阻害剤である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ALK5阻害剤がALK5阻害剤IIである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記培地が、線維芽細胞増殖因子が更に追加されたものである、請求項
5または
6に記載の方法。
【請求項10】
前記線維芽細胞増殖因子がFGF7である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記線維芽細胞増殖因子がFGF10である、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
請求項
4または
5に記載の方法により得られる、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する、単離された未精製の細胞集団。
【請求項13】
膵臓内胚葉細胞を膵臓内分泌細胞に分化させる工程をさらに含む、請求項
4または
5に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
3及び
12に記載の細胞集団を含む、糖尿病の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年5月12日に出願された、米国特許仮出願シリアル番号61/3
33,831号の利益を主張するものであり、当該出願を本明細書にその全容において、
かつあらゆる目的について援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、多能性幹細胞からのインスリン産生細胞への分化を促進させるための方法を
提供する。特に、本発明は、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団であっ
て、その集団の50%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、細胞集団を産
生する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
I型糖尿病の細胞置換療法の進歩及び移植可能なランゲルハンス島の不足により、生着
に適したインスリン産生細胞即ちβ細胞の供給源の開発に注目が集まっている。1つの手
法として、例えば、胚性幹細胞のような多能性幹細胞から機能性のβ細胞を生成すること
がある。
【0004】
脊椎動物の胚発生において、多能性細胞は、原腸形成として公知のプロセスにおいて、
3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、及び内胚葉)を含む細胞のグループを生じる。例えば、甲
状腺、胸腺、膵臓、腸、及び肝臓等の組織は、内胚葉から中間段階を経て発達する。この
プロセスにおける中間段階は、胚体内胚葉(definitive endoderm)の形成である。胚体
内胚葉細胞は、HNF-3 β、GATA4、MIXL1、CXCR4、及びSOX17
などの多くのマーカーを発現する。
【0005】
膵臓の形成は、胚体内胚葉の膵臓内胚葉への分化により起こる。膵臓内胚葉細胞は膵臓
-十二指腸ホメオボックス遺伝子、PDX1を発現する。PDX1が存在しない場合、膵
臓は、腹側芽及び背側芽の形成を越えて発達しない。したがって、PDX1の発現は、膵
臓器官形成において重要な工程に格付けされる。成熟した膵臓は、他の細胞型の中でも、
外分泌組織及び内分泌組織を含む。外分泌組織及び内分泌組織は、膵臓内胚葉の分化によ
って生じる。
【0006】
島細胞の特徴を保持する細胞がマウスの胚細胞から誘導されたことが報告されている。
例えば、Lumelskyら(Science 292:1389、2001年)は、マ
ウスの胚幹細胞の、膵島と同様のインスリン分泌構造への分化を報告している。Sori
aら(Diabetes 49:157,2000)は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病
のマウスにおいて、マウスの胚性幹細胞から誘導されたインスリン分泌細胞が糖血症を正
常化することを報告している。
【0007】
一例において、Horiら(PNAS 99:16105,2002)は、ホスホイノ
シチド3-キナーゼ(LY294002)の阻害剤でマウス胚性幹細胞を処理することに
より、β細胞に類似した細胞が生じたことを開示している。
【0008】
他の例では、Blyszczukら(PNAS 100:998、2003年)が、P
ax4を構成的に発現するマウス胚幹細胞からのインスリン産生細胞の生成を報告してい
る。
【0009】
Micallefらは、レチノイン酸が、胚幹細胞のPDX1陽性膵臓内胚葉の形成に
対する関与を調整することができることを報告している。レチノイン酸は、胚における原
腸形成の終了時に対応する期間中の、胚性幹細胞分化の4日目に培養液に添加すると、P
dx1発現の誘発に最も効果的である(Diabetes 54:301、2005年)
。
【0010】
Miyazakiらは、Pdx1を過剰発現するマウス胚幹細胞株を報告している。こ
の結果は、外因性のPdx1発現が、得られた分化細胞内でインスリン、ソマトスタチン
、グルコキナーゼ、ニューロゲニン3、p48、Pax6、及びHnf6遺伝子の発現を
明らかに増加させたことを示している(Diabetes 53:1030,2004)
。
【0011】
Skoudyらは、マウス胚性幹細胞内で、アクチビンA(TGF-βスーパーファミ
リーのメンバー)が、膵臓外分泌遺伝子(p48及びアミラーゼ)、並びに内分泌遺伝子
(Pdx1、インスリン及びグルカゴン)の発現を上方制御することを報告している。最
大作用は1nMアクチビンAを使用して観察された。Skoudyらは、インスリン及び
Pdx1 mRNAの発現レベルはレチノイン酸の影響を受けないが、3nM FGF7
で処理することによりPdx1の転写レベルが増加したことも観察している(Bioch
em.J.379:749,2004)。
【0012】
Shirakiらは、胚幹細胞のPDX1陽性細胞への分化を特異的に高める増殖因子
の効果を研究した。シラキらは、TGF-β2によってPDX1陽性細胞が高い割合で再
現可能に得られたことを観察している(Genes Cells.2005 Jun;1
0(6):503~16.)。
【0013】
Gordonらは、血清の非存在下、かつアクチビンとWntシグナル伝達阻害剤の存
在下での、マウス胚性幹細胞からの短尾奇形[陽性]/HNF-3 β[陽性]内胚葉細
胞の誘導を示した(米国特許出願公開第2006/0003446(A1)号)。
【0014】
Gordonら(PNAS,Vol 103,page 16806,2006)は、
「Wnt及びTGF-β/nodal/アクチビンの同時シグナル伝達が前原始線条の形
成には必要であった」と述べている。
【0015】
しかしながら、胚幹細胞発達のマウスモデルは、例えば、ヒト等のより高等な哺乳動物
内の発達プログラムを正確に模倣しない恐れがある。
【0016】
Thomsonらは、ヒト胚盤胞から胚幹細胞を単離した(Science 282:
114、1998年)。これと同時に、Gearhart及び共同研究者は、胎児生殖腺
組織から、ヒト胚生殖(hEG)細胞株を誘導した(Shamblott et al.
,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998)。単
に白血病抑制因子(LIF)と共に培養すれば分化が阻止され得るマウス胚幹細胞とは異
なり、ヒト胚性幹細胞は、非常に特殊な条件下で維持する必要がある(米国特許第6,2
00,806号、国際公開WO 99/20741号;同WO 01/51616号)。
【0017】
ダムールら(D’Amour)は、高濃度のアクチビン及び低血清の存在下で、ヒト胚
性幹細胞由来の胚体内胚葉の濃縮化された培養物が調製されたことを述べている(Nat
ure Biotechnology 2005)。これらの細胞を、マウスの腎臓皮膜
下で移植することにより、いくつかの内胚葉性器官の特徴を有する、より成熟した細胞へ
の分化が見られた。ヒト胚性幹細胞由来の胚体内胚葉細胞は、FGF-10の添加後、P
DX1陽性細胞に更に分化することができる(米国特許出願公開2005/026655
4(A1)号)。
【0018】
D’Amourら(Nature Biotechnology-24,1392~1
401(2006))は、「我々はヒト胚性幹(hES)細胞を、膵臓ホルモンインスリ
ン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド及びグレリンを合成できる内分泌細
胞へと変換する分化プロセスを開発した。このプロセスは、胚体内胚葉、腸管内胚葉、膵
臓内胚葉及び内分泌前駆体が、内分泌ホルモンを発現する細胞へと向かう段階に類似した
段階を通して細胞を指向させることにより、インビボでの膵臓器官形成を模倣する。」と
述べている。
【0019】
別の例において、Fiskらは、ヒト胚幹細胞から膵島細胞を産生するシステムを報告
している(米国特許出願公開2006/0040387(A1)号)。この場合、分化経
路は3つの段階に分割された。先ず、ヒト胚性幹細胞を、酪酸ナトリウムとアクチビンA
の組み合わせを用いて内胚葉に分化した。次に、細胞をノギンなどのTGF-βアンタゴ
ニストとEGF又はベータセルリンとの組み合わせと培養して、PDX1陽性細胞を生成
する。最終分化は、ニコチンアミドにより誘発された。
【0020】
一例において、Benvenistryらは、「我々は、PDX1の過剰発現が、膵臓
に豊富に存在する遺伝子の発現を上昇させたことを結論付ける。インスリン発現の誘導に
は、インビボでのみ存在する更なるシグナルを必要とする可能性がある。」と述べている
(Benvenistryら、Stem Cells 2006;24:1923~19
30)。
【0021】
他の例では、Grapin-Bottonらは次のように記載している:「Ngn3を
初期活性化させると、ほぼ例外なくグルカゴン+細胞を誘導し、膵臓前駆細胞プールを枯
渇させた。El1.5からPDX1前駆細胞は形質転換受容性になり、インスリン[陽性
]でPP[陽性]の細胞へと分化した」(Johansson KA et al.、D
evelopmental Cell 12,457~465,March 2007)
。
【0022】
例えば、Diezらは、「9~10週齢において、グルカゴン陽性細胞のほとんどはイ
ンスリンを共発現するが、個別のインスリンのみの細胞はこの段階で明らかに検出可能で
あったと述べている。インスリン及びグルカゴンを共発現する細胞は、全試験期間中(9
~21週)に観察されたが、全インスリン及びグルカゴン発現細胞のごく一部に相当する
にすぎなかった」(J Histochem Cytochem.2009 Sep;5
7(9):811~24.2009 Apr 13)。
【0023】
一例として、Chenらは、「(-)-インドラクタムV[(ILV)]は、プロテイ
ンキナーゼCシグナル伝達を活性化し、内胚葉系に既に拘束(commit)されたhESCの
膵臓特殊化に向かわせる...ILV及びレチノイン酸は、関連メカニズムを介して機能
する...ILVは、レチノイン酸よりも、高いPDX-1発現細胞誘導(PDX-1を
発現する細胞の割合)を示す」(Nature Chemical Biology 5
,195~196(April 2009)doi:10.1038/nchembio
0409~195)と述べている。
【0024】
Lyttleらは、「NKX6-1がインスリン細胞のみと共局在したことは、NKX
6-1がヒトβ細胞発生に独占的に関与することを示す」(Diabetologia
2008 Jul:51(7):1169~80,2008)と述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、β細胞に更によく類似する機能性インスリン発現細胞を生成するための、
インビトロ法開発の必要性が今も大いに求められているままである。本発明は、細胞集団
の50%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマ
ーカーを発現する細胞集団を生成することにより、ヒト胚性幹細胞からの、インスリンを
発現する細胞への分化効率を改善させるという代替アプローチを用いた。
【課題を解決するための手段】
【0026】
一実施形態において、本発明は、細胞集団の50%超の細胞がPDX1及びNKX6.
1を共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。
【0027】
一実施形態において、本発明は、多能性幹細胞集団を、膵臓内分泌系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞集団へと分化させる方法を提供し、この方法は以下の工程、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.多能性幹細胞集団を、胚体内胚葉系(definitive endoderm lineage)に特徴的な
マーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、
c.胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団をプロテインキナーゼC活性
化因子を追加した培地で処理することにより、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現す
る細胞集団を膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と
、を含む。
【0028】
一実施形態において、本発明の方法によって産生された膵臓内胚葉系に特徴的なマーカ
ーを発現する細胞集団の中の50%を超える細胞は、PDX-1及びNKX6.1を共発
現する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】実施例1に概説される分化プロトコルのステージ4の4日目におけるPDX1及びNKX6.1の発現を示す。
【
図1B】実施例1に概説される分化プロトコルのステージ4の4日目におけるNKX6.1及びISL-1の発現を示す。
【
図2A】IN Cell Analyzer 1000で分析した、PKC活性化因子処理が、PDX1、NKX6.1、及びCDX2を発現する細胞の割合に与える影響を示す。
【
図2B】IN Cell Analyzerによる様々なPKC活性化因子とそれらがPDX1及びNKX6.1発現細胞の割合に与える影響の比較を示す。
【
図3A】本発明の細胞を、腎臓皮膜の下に受けた場合のSCID-beigeマウスにおける循環Cペプチドを示す。Cペプチドレベルは記載の時点で検出した。
【
図3B】本発明の細胞を、皮下に移植されたTheracyte社製デバイスの中で受けた場合のSCID-beigeマウスにおける循環Cペプチドを示す。Cペプチドレベルは記載の時点で検出した。
【
図3C】細胞を腎臓皮膜の下に受けた群と、Theracyte社製デバイスの中で細胞を皮下に受けた群との間の、移植後12週間後に観察されたCペプチドレベルの比較を示す。
【
図4A】実施例3に記載の方法に従って処理された細胞における、PKC活性化因子処理がPDX1、NKX6.1、NGN3、及びPTF1 α発現の発現に与える影響を示す。
【
図4B】実施例3に記載の方法に従って処理された細胞における、PKC活性化因子処理がPDX1、NKX6.1、NGN3、及びPTF1 α発現の発現に与える影響を示す。
【
図4C】実施例3に記載の方法に従って処理された細胞における、PKC活性化因子処理がPDX1、NKX6.1、NGN3、及びPTF1 α発現の発現に与える影響を示す。
【
図4D】実施例3に記載の方法に従って処理された細胞における、PKC活性化因子処理がPDX1、NKX6.1、NGN3、及びPTF1 α発現の発現に与える影響を示す。
【
図5A】実施例4に記載の方法に従って処理された細胞における、FGF7がNKX6.1、PDX1、PTF1 α、及びCDX2の発現に与える影響を示す。
【
図5B】実施例4に記載の方法に従って処理された細胞における、FGF7がNKX6.1、PDX1、PTF1 α、及びCDX2の発現に与える影響を示す。
【
図5C】実施例4に記載の方法に従って処理された細胞における、FGF7がNKX6.1、PDX1、PTF1 α、及びCDX2の発現に与える影響を示す。
【
図5D】実施例4に記載の方法に従って処理された細胞における、FGF7がNKX6.1、PDX1、PTF1 α、及びCDX2の発現に与える影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
開示を分かりやすくするため、限定を目的とすることなく、「発明を実施するための形
態」を本発明の特定の特徴、実施形態、又は用途を、説明又は例示する下記の小節に分割
する。
【0031】
定義
幹細胞は、単独の細胞レベルで自己複製し分化して子孫細胞を生成するという、これら
の両方の能力で定義される未分化細胞であり、子孫細胞には、自己複製前駆細胞、非再生
前駆細胞、及び最終分化細胞が含まれる。幹細胞はまた、インビトロで複数の胚葉(内胚
葉、中胚葉及び外胚葉)から様々な細胞系の機能的細胞へと分化する能力によって、また
移植後に複数の胚葉の組織を生じさせ、胚盤胞への注入後、全てではないとしても殆どの
組織を提供する能力によっても、特徴付けられる。
【0032】
幹細胞は、発生能によって、(1)全ての胚種及び胚体外細胞型を生じさせ得る能力を
意味する全能性、(2)全ての胚細胞型を生じさせ得る能力を意味する多能性、(3)細
胞系の小集合を生じさせ得るが、全て特定の組織、器官、又は生理学的システム内で生じ
させ得る能力を意味する複能性(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSC(自己再生)
、血液細胞に限定された寡能性前駆細胞、並びに血液の通常の構成要素である全細胞型及
び要素(例えば、血小板)を含む子孫を産生できる)、(4)複能性幹細胞と比較して、
より限定された細胞系の小集合を生じさせる能力を意味する少能性、並びに(5)1つの
細胞系(例えば、精子形成幹細胞)を生じさせる能力を意味する単能性に分類される。
【0033】
分化は、特殊化されていない(unspecialized)(「未拘束の(uncommitted)」)又は
比較的特殊化されていない細胞が、例えば、神経細胞又は筋細胞などの特殊化された細胞
の特徴を獲得するプロセスである。分化細胞又は分化を誘導された細胞は、細胞系内でよ
り特殊化された(「拘束された」)状況を呈している細胞である。分化プロセスに適用し
た際の用語「拘束された」は、通常の環境下で特定の細胞型又は細胞型の小集合に分化し
続ける分化経路の地点に進行しており、かつ通常の環境下で異なる細胞型に分化し又はよ
り分化されていない細胞型に戻ることができない細胞を指す。脱分化は、細胞が細胞系内
で比較的特殊化されて(又は拘束されて)いない状況に戻るプロセスを指す。本明細書で
使用される場合、細胞系は、細胞の遺伝、即ちその細胞がどの細胞から由来したか、また
どの細胞を生じさせることができるかを規定する。細胞系は、発生及び分化の遺伝スキー
ム内にその細胞を位置付けるものである。系特異的マーカーとは、対象とする系の細胞の
表現型と特異的に関連した特徴を指し、拘束されていない細胞の対象とする系への分化を
評価するために使用することができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞」又は「
ステージ1細胞」又は「ステージ1」とは、以下のマーカー、即ち、SOX17、GAT
A4、HNF3 β、GSC、CER1、Nodal、FGF8、短尾奇形、Mix-様
ホメオボックスタンパク質、FGF4、CD48、eomesodermin(EOME
S)、DKK4、FGF17、GATA6、CXCR4、C-Kit、CD99、又はO
TX2のうちの少なくとも1つを発現する細胞を指す。胚体内胚葉系に特徴的なマーカー
を発現する細胞としては、原始線条前駆体細胞、原始線条細胞、中内胚葉細胞及び胚体内
胚葉細胞が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用するとき、「膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、
以下のマーカー、即ち、PDX1、NKX6.1、HNF1 β、PTF1 α、HNF
6、HNF4 α、SOX9、HB9、又はPROX1のうちの少なくとも1つを発現す
る細胞を指す。膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞としては、膵臓内胚葉細
胞、原腸管細胞、後部前腸細胞が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「胚体内胚葉」は、原腸形成中、胚盤葉上層から生じ、胃腸
管及びその誘導体を形成する細胞の特徴を保持する細胞を指す。胚体内胚葉細胞は、以下
のマーカーを発現する:HNF3 β、GATA4、SOX17、Cerberus、O
TX2、グースコイド、C-Kit、CD99、及びMIXL1。
【0037】
本明細書で使用するとき、「マーカー」は、対象とする細胞で差異的に発現される核酸
又はポリペプチド分子である。この文脈において、差異的な発現は、陽性マーカーのレベ
ルの増大及び陰性マーカーのレベルの減少を意味する。マーカー核酸又はポリペプチドの
検出可能なレベルは、他の細胞と比較して対象とする細胞において充分に高いか又は低い
ことから、当該技術分野において知られる各種の方法のいずれを用いても対象とする細胞
を他の細胞から識別及び区別することが可能である。
【0038】
本明細書で使用するとき、「膵臓内分泌細胞」又は「膵臓ホルモン発現細胞」又は「膵
臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞」とは、以下のホルモン、即ち、インスリ
ン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発現
することが可能な細胞を指す。
【0039】
多能性幹細胞の単離、増殖及び培養
多能性幹細胞の特徴付け
多能性幹細胞は、ステージ特異的胚抗原(SSEA)3及び4、並びにTra-1-6
0及びTra-1-81と呼ばれる抗体を使用して検出可能なマーカーのうちの1つ以上
を発現することができる(Thomson et al.、Science 282:1
145,1998)。インビトロで多能性幹細胞を分化させると、SSEA-4、Tra
-1-60、及びTra-1-81の発現が減少し(存在する場合)、SSEA-1の発
現が上昇する結果になる。未分化の多能性幹細胞は、典型的には、細胞を4%パラホルム
アルデヒドで固定した後、製造業者(Vector Laboratories(Bur
lingame Calif.))によって記載されるようにVector Redを基
質として現像することによって検出することができる、アルカリホスファターゼ活性を有
する。未分化の多能性幹細胞はまた、RT-PCRにより検出されるように、一般にOC
T4及びTERTも発現する。
【0040】
増殖させた多能性幹細胞の別の望ましい表現型は、3つの胚葉の全て、即ち、内胚葉、
中胚葉、及び外胚葉組織の細胞に分化し得るものである。多能性幹細胞の多能性は、例え
ば細胞を重症複合型免疫不全症(SCID)マウスに注入し、4%パラホルムアルデヒド
を使用して形成した奇形腫を固定した後、それらを3つの胚葉からの細胞型の痕跡に関し
て組織学的に検査することにより確認することができる。代替的に、多能性は、胚様体を
形成し、この胚様体を3つの胚葉に関連したマーカーの存在に関して評価することにより
決定することができる。
【0041】
増殖させた多能性幹細胞株は、標準的なGバンド法を使用し、対応する霊長類種の発表
されている核型と比較することで、核型を決定することができる。細胞は「正常な核型」
を有する細胞を獲得することが望ましく、「正常な核型」とは、細胞が正倍数体であり、
ヒト染色体が全て揃っておりかつ目立った変化のないことを意味する。
【0042】
多能性幹細胞の供給源
使用が可能な多能性幹細胞の種類としては、妊娠期間中の任意の時期(必ずしもではな
いが、通常は妊娠約10~12週よりも前)に採取した前胚性組織(例えば胚盤胞など)
、胚性組織又は胎児組織などの、妊娠後に形成される組織に由来する多能性細胞の樹立株
が含まれる。非限定的な例は、例えばヒト胚性幹細胞株H1、H7及びH9(WiCel
l)などのヒト胚性幹細胞又はヒト胚生殖細胞の樹立株である。更に、こうした細胞の初
期の株化又は安定化の際に本開示の組成物を使用することも考えられるが、その場合は、
供給源となる細胞は供給源の組織から直接採取される1次多能性細胞であろう。フィーダ
ー細胞の不在下で既に培養された多能性幹細胞集団から採取した細胞も好適である。例え
ば、BG01v(BresaGen,Athens,GA)等の変異ヒト胚性幹細胞株も
好適である。
【0043】
一実施形態において、ヒト胚性幹細胞は、Thomson et al.(米国特許第
5,843,780号;Science 282:1145,1998;Curr.To
p.Dev.Biol.38:133 ff.,1998;Proc.Natl.Aca
d.Sci.U.S.A.92:7844,1995)に記載の通りに調製される。
【0044】
多能性幹細胞の培養
一実施形態において、多能性幹細胞は、フィーダー細胞の層上で培養され、このフィー
ダー細胞は、多能性幹細胞を様々な方法で支持する。代替的に、多能性幹細胞は、本質的
にフィーダー細胞が存在しないにも関わらず、実質的な分化を受けないで多能性幹細胞の
増殖を支持する培養液システム中で培養される。無フィーダー培養液中での分化なしでの
多能性幹細胞の増殖は、以前に他の細胞型で培養することによって馴化された培地を使用
して支持される。代替的に、無フィーダー培養液中での分化なしでの多能性幹細胞の増殖
は、合成培地を使用して支持される。
【0045】
一実施形態において、多能性幹細胞は、Reubinoffら(Nature Bio
technology 18:399~404(2000))に開示されている方法に従
って、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞層上で培養されてもよい。あるいは、多能性
幹細胞は、Thompsonら(Science 6 November 1998:V
ol.282.no.5391,pp.1145~1147)に開示されている方法に従
って、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞層上で培養されてもよい。あるいは、多能性
幹細胞は、Richardsら(Stem Cells 21:546~556,200
3)に開示されているフィーダー細胞層の任意の1つの上で培養されてもよい。
【0046】
一実施形態において、多能性幹細胞は、Wangら(Stem Cells 23:1
221~1227,2005)に開示されている方法に従って、ヒトフィーダー細胞層の
上で培養されてもよい。代替実施形態において、多能性幹細胞は、Stojkovicら
(Stem Cells 2005 23:306~314,2005)に開示されてい
るヒトフィーダー細胞層の上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Miya
motoら(Stem Cells 22:433~440,2004)に開示されてい
るヒトフィーダー細胞層の上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Amit
ら(Biol.Reprod 68:2150~2156,2003)に開示されている
ヒトフィーダー細胞層の上で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、Inzun
zaら(Stem Cells 23:544~549,2005)に開示されているヒ
トフィーダー細胞層の上で培養されてもよい。
【0047】
一実施形態において、多能性幹細胞は、米国特許出願公開2002/0072117号
に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能
性幹細胞は、米国特許第6642048号に開示されている方法に従って誘導された培地
の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開特許WO2005014
799号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるい
は、多能性幹細胞は、Xuら(Stem Cells 22:972~980,2004
)に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多
能性幹細胞は、米国特許出願公開2007/0010011号に開示されている方法に従
って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許出願
公開2005/0233446号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培
養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許第6800480号に開示されて
いる方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、
国際公開特許WO2005065354号に開示されている方法に従って誘導された培地
の中で培養されてもよい。
【0048】
一実施形態において、多能性幹細胞は、Cheonら(BioReprod DOI:
10.1095/biolreprod.105.046870,October 19
,2005)に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あ
るいは、多能性幹細胞は、Levensteinら(Stem Cells 24:56
8~574,2006)に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されて
もよい。あるいは、多能性幹細胞は、米国特許出願公開2005/0148070号に開
示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹
細胞は、米国特許出願公開2005/0244962号に開示されている方法に従って誘
導された培地の中で培養されてもよい。あるいは、多能性幹細胞は、国際公開WO020
05086845号に開示されている方法に従って誘導された培地の中で培養されてもよ
い。
【0049】
多能性幹細胞は、好適な培養基質上で平板培養することができる。一実施形態において
、好適な培養基質は、例えば基底膜から誘導されたもの、又は接着分子受容体-リガンド
結合の一部を形成し得るもの等の細胞外マトリックス成分である。一実施形態において、
好適な培養培地は、MATRIGEL(登録商標)(Becton Dickenson
)である。MATRIGEL(登録商標)は、Engelbreth-Holm Swa
rm腫瘍細胞からの可溶性製剤であり、室温でゲル化して再構成基底膜を形成する。
【0050】
他の細胞外マトリックス成分及び成分混合物は代替物として好適である。増殖させる細
胞型に応じて、これは、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン
、ヘパラン硫酸塩等を、単独で又は様々な組み合わせで含み得る。
【0051】
多能性幹細胞は、細胞の生存、増殖、及び所望の特徴の維持を促進する培地の存在下、
基質上に好適な分布で平板培養されてもよい。これら全ての特徴は、播種分布に細心の注
意を払うことから利益が得られ、かつ当業者により容易に決定可能である。
【0052】
好適な培地は、以下の成分、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Gi
bco No.11965-092;ノックアウトダルベッコ変法イーグル培地(KO
DMEM)、Gibco No.10829-018;ハムF12/50% DMEM基
礎培地、200mM L-グルタミン、Gibco No.15039-027;非-必
須アミノ酸溶液、Gibco No.11140-050;β-メルカプトエタノール、
Sigma No.M7522;ヒト組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、
Gibco No.13256-029などから調製することができる。
【0053】
多能性幹細胞からの、膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞から、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発
現する細胞集団を産生するための方法を提供し、この方法は、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.多能性幹細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分
化させる工程と、
c.胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を、プロテインキナーゼC活
性化因子を追加した培地で処理することにより、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現
する細胞集団を膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程
と、を含む。
【0054】
本発明の一態様において、本発明は、集団の50%超の細胞がPDX-1及びNKX6
.1を共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代
替実施形態において、本発明は、集団の60%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を
共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施
形態において、本発明は、集団の70%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現
する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施形態に
おいて、本発明は、集団の80%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現する、
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施形態において
、本発明は、集団の90%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現する、膵臓内
胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。
【0055】
本発明の一態様において、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、膵
内臓分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を形成するために更に処理されてもよ
い。
【0056】
分化の効率は、所望の細胞型に特徴的なマーカーを発現する細胞によって発現されるタ
ンパク質マーカーを特異的に認識する作用剤(例えば、抗体など)に、処理した細胞集団
を暴露することにより測定することができる。
【0057】
培養又は単離された細胞中のタンパク質及び核酸マーカーの発現を評価する方法は、当
技術分野にて標準的である。これらには、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-P
CR)、ノーザンブロット法、インサイツハイブリダイゼーション(例えば、Curre
nt Protocols in Molecular Biology(Ausube
lら、eds.2001年付録)参照)、及び切片材料の免疫組織学的解析等の免疫測定
法、ウェスタンブロット、及び無傷細胞内に到達出来るマーカーに関して、フローサイト
メトリー分析(FACS)(例えば、Harlow及びLane、Using Anti
bodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク:Cold S
pring Harbor Laboratory Press(1998年)参照)が
含まれる。
【0058】
多能性幹細胞の特徴は当業者に周知であり、多能性幹細胞の更なる特徴は、継続して同
定されている。例えば多能性幹細胞マーカーとしては、以下のもののうちの1つ以上の発
現が挙げられる:ABCG2、CRIPTO、FOXD3、コネキシン(CONNEXIN)43
、コネキシン45、OCT4、SOX2、ナノグ(NANOG)、hTERT、UTF1、Z
FP42、SSEA-3、SSEA-4、Tra 1-60、又はTra 1-81。
【0059】
多能性幹細胞を本発明の方法で処理した後、処理した細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴
的なマーカーを発現する細胞により発現される、例えばCXCR4等のタンパク質マーカ
ーを特異的に認識する作用剤(例えば、抗体等)に暴露することにより、分化した細胞を
精製することができる。
【0060】
本発明における使用に好適な多能性幹細胞は、例えばヒト胚性幹細胞株H9(NIH
code:WA09)、ヒト胚性幹細胞株Hl(NIH code:WA01)、ヒト胚
幹細胞株H7(NIH code:WA07)、及びヒト胚性幹細胞株SA002(Ce
llartis,Sweden)を含む。多能性細胞に特徴的な以下のマ-カー、即ち、
ABCG2、CRIPTO、CD9、FOXD3、コネキシン43、コネキシン45、O
CT4、SOX2、ナノグ、hTERT、UTFI、ZFP42、SSEA-3、SSE
A-4、Tra 1-60及びTra 1-81のうちの少なくとも1つを発現する細胞
も本発明での使用に適している。
【0061】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーは、SOX17、GATA4、HNF3 β、GSC
、CER1、ノーダル(Nodal)、FGF8、短尾奇形、Mix様ホメオボックスタンパ
ク質、FGF4、CD48、エオメソダーミン(EOMES)、DKK4、FGF17、
GATA6、CXCR4、C-Kit、CD99、及びOTX2からなる群から選択され
る。胚体内胚葉系に特徴的なマーカーのうちの少なくとも1つを発現する細胞は本発明で
の使用に好適である。本発明の一態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する
細胞は、原始線条前駆細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発
現する細胞は、中内胚葉細胞である。別の態様では、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを
発現する細胞は、胚体内胚葉細胞である。
【0062】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーは、PDX1、NKX6.1、HNF1 β、PTF
1 α、HNF6、HNF4 α、SOX9、HB9、及びPROX1からなる群から選
択される。膵内胚葉系に特徴的なこれらのマーカーのうちの少なくとも1つを発現する細
胞が本発明における使用に適している。本発明の一態様では、膵内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞は、膵内胚葉細胞である。
【0063】
膵臓内分泌系に特徴的なマーカーは、NGN3、ニューロD(NeuroD)、NKX2.2
、PDX1、NKX6.1、PAX4、及びPAX6からなる群から選択される。一実施
形態では、膵臓内分泌細胞は、以下のホルモン:インスリン、グルカゴン、ソマトスタチ
ン、及び膵臓ポリペプチドのうちの少なくとも1つを発現することができる。膵臓内分泌
系の特徴を示すマーカーを少なくとも1つ発現する細胞は、本発明での使用に好適である
。本発明の一態様において、膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、膵臓内
分泌細胞である。膵臓内分泌細胞は、膵臓ホルモン発現細胞であってよい。また、膵臓内
分泌細胞は膵臓ホルモン分泌細胞であってもよい。
【0064】
本発明の一態様では、膵臓内分泌細胞は、β細胞系統に特徴的なマーカーを発現する細
胞である。β細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、以下の、PDX1、NGN3
、NKX2.2、NKX6.1、ニューロD、ISL1、HNF3 β、MAFA、PA
X4、及びPAX6の転写因子の少なくとも1つとを発現する。本発明の一態様では、β
細胞系に特徴的なマーカーを発現する細胞は、β細胞である。
【0065】
多能性幹細胞の、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞への分化
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の形成は、以下の特定のプロトコルの
前後に、マーカーの存在に関して試験することにより判定することができる。多能性幹細
胞は、典型的にはそのようなマーカーを発現しない。したがって、多能性細胞の分化は、
細胞がそれらの発現を開始した際に検出されることになる。
【0066】
多能性幹細胞は、当技術分野における任意の方法により、又は本発明で提案される任意
の方法により、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化され得る。
【0067】
例えば、多能性幹細胞は、D’Amourらの、Nature Biotechnol
ogy 23、1534~1541(2005年)に開示されている方法に従って、胚体
内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化され得る。
【0068】
例えば、多能性幹細胞は、Shinozakiらの、Development 131
、1651~1662(2004年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系に特
徴的なマーカーを発現している細胞に分化され得る。
【0069】
例えば、多能性幹細胞は、McLeanらの、Stem Cells 25、29~3
8(2007年)に開示されている方法に従って、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発
現する細胞に分化され得る。
【0070】
例えば、多能性幹細胞は、D’Amourらの、Nature Biotechnol
ogy 24、1392~1401(2006年)に開示されている方法に従って、胚体
内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞に分化され得る。
【0071】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号11/736,908号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0072】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号11/779,311号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0073】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号60/990,529号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0074】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号61/076,889号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0075】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号61/076,900号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0076】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号61/076,908号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0077】
例えば、多能性幹細胞は、米国特許出願シリアル番号61/076,915号に開示さ
れる方法に従って、多能性幹細胞を処理することによって、胚体内胚葉系に特徴的なマー
カーを発現する細胞へと分化させることができる。
【0078】
胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカー
を発現する細胞への分化
一実施形態では、本発明は、多能性幹細胞から、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発
現する細胞集団を産生するための方法を提供し、この方法は、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.多能性幹細胞集団を、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分
化させる工程と、
c.胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を、プロテインキナーゼC活
性化因子を追加した培地で処理することにより、胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現
する細胞集団を、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工
程と、を包む。
【0079】
本発明の一態様において、本発明は、集団の50%超の細胞がPDX-1及びNKX6
.1を共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代
替実施形態において、本発明は、集団の60%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を
共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施
形態において、本発明は、集団の70%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現
する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施形態に
おいて、本発明は、集団の80%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現する、
膵臓内胚葉系統に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。代替実施形態におい
て、本発明は、集団の90%超の細胞がPDX-1及びNKX6.1を共発現する、膵臓
内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を提供する。
【0080】
一実施形態では、プロテインキナーゼC活性化因子は、(2S,5S)-(E,E)-
8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ
(pentadiemoylamino))ベンゾラクタム、インドラクタムV(ILV)、ホルボール-
12-ミリステート-13-アセテート(PMA)、及びホルボール-12,13-ジブ
チレート(PDBu)からなる群から選択される。一実施形態では、プロテインキナーゼ
C活性化因子は、(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル
)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ(pentadiemoylamino))ベンゾラクタ
ムである。(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェ
ニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ(pentadiemoylamino))ベンゾラクタムは、
約20nM~約500nMの濃度で使用することができる。(2S,5S)-(E,E)
-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミ
ノ(pentadiemoylamino))ベンゾラクタムは、本明細書で「TPB」と称される。
【0081】
一実施形態において、プロテインキナーゼC活性化因子を追加した培地は、BMP阻害
能を有する因子、TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤、及び線維芽細胞増殖因子からなる
群から選択される少なくとも1つの因子が追加される。
【0082】
一実施形態では、BMP阻害能を有する因子はノギンである。ノギンは、約50ng/
mL~約500μg/mLの濃度で使用することができる。一実施形態では、ノギンは1
00ng/mLの濃度で使用される。
【0083】
一実施形態では、TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤は、ALK5の阻害剤である。一
実施形態では、ALK5の阻害剤は、ALK5阻害剤IIである。ALK5阻害剤IIは
、約0.1μM~約10μMの濃度で使用されてもよい。一実施形態では、ALK5阻害
剤IIは1μMの濃度で使用される。
【0084】
一実施形態において、線維芽細胞増殖因子はFGF7である。代替実施形態では、線維
芽細胞(fibpoblast)増殖因子はFGF10である。
【0085】
一実施形態において、線維芽細胞増殖因子は、約50pg/mL~約50μg/mLの
濃度で使用されてもよい。一実施形態では、線維芽細胞増殖因子は50ng/mLの濃度
で使用される。
【0086】
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞の、膵臓内分泌系のマーカーを発現す
る細胞への分化
一実施形態において、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団は、当技術
分野における任意の方法により、膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団に
更に分化される。
【0087】
例えば、D’ Amour et al,Nature Biotechnology
,2006に開示されている方法に従って、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する
細胞集団を処理することによって、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団
を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団に更に分化してもよい。
【0088】
例えば、D’Amour et al,Nature Biotechnology,
2006に開示されている方法に従って、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細
胞集団を処理することによって、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を
膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団に更に分化してもよい。
【0089】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を米国特許出願シリアル
番号11/736,908号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団へと更に分化させてもよい。
【0090】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を米国特許出願シリアル
番号11/779,311号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団へと更に分化させてもよい。
【0091】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を米国特許出願シリアル
番号60/953,178号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団へと更に分化させてもよい。
【0092】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を米国特許出願シリアル
番号60/990,529号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団へと更に分化させてもよい。
【0093】
例えば、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を米国特許出願シリアル
番号61/289,671号に開示された方法に従って処理することで、膵臓内胚葉系に
特徴的なマーカーを発現する細胞集団を膵臓内分泌系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団へと更に分化させてもよい。
【0094】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定さ
れるものではない。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
本発明の細胞集団の形成
ヒト胚性幹細胞株Hl細胞を、0.2%のFBS+100ng/mLのアクチビンA(
PeproTech;カタログ#120-14)+20ng/mLのWNT-3a(R&
D Systems;カタログ# 1324-WN/CF)を追加したRPMI培地(I
nvitrogen;カタログ#:22400)を有する、MATRIGEL(登録商標
)(1:30希釈)(BD Biosciences;カタログ# 356231)をコ
ーティングしたディッシュ上で1日培養した後で、0.5%のFBS+100ng/mL
のアクチビンAを追加したRPMI培地で更に2日間にわたって処理し(ステージ1)、
次いで、
a.2%のFBS及び50ng/mLのFGF7を添加したDMEM/F12で3日間
にわたって処理し(ステージ2)、次いで
b.1%のB27+0.25μMのシクロパミン-KAAD+2μMのレチノイン酸(
RA)+100ng/mLのノギンを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわた
って処理し(ステージ3)、次いで
c.処理1:1%のB27を添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処
理する(ステージ4-基本培地-BM)、若しくは
d.処理2:1%のB27+100ng/mLのノギン+1μMのALK5阻害剤II
を添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理する(ステージ4)、又は
e.処理3:1%のB27+100ng/mLのノギン+1μMのALK5阻害剤II
+20nMのホルボール-12,13-ジブチレート(PDBu)(Calbioche
m、カタログ#524390)を添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって
処理した(ステージ4)。
【0096】
ステージ4の4日目に培養液を2回サンプリングし、IN Cell Analyze
r 1000(GE Healthcare)を用いて撮像した。ウェルあたり100視
野の撮像を得て、バイオアッセイ及び続く染色手順の間の任意の細胞ロスを補正した。I
N Cell Developer Toolbox 1.7(GE Healthca
re)ソフトウェアを用いて、各ウェルから総細胞数、総PDX1発現細胞、総NKX6
.1発現細胞及び総CDX-2発現細胞の測定値を得た。各複製データセットについて平
均及び標準偏差を算出した。総PDX1、NKX6.1及びCDX-2の発現細胞を、全
細胞集団中の割合として報告した。
【0097】
図2Aに示されるように、ステージ4(4日目)、の終了時の全ての実験集団において
、細胞集団のおよそ92%±4%がPDX1を発現した。しかしながら、PDBu(プロ
テインキナーゼC活性化因子)による処理は、基本培地(処理1)、又はALK5阻害剤
II+ノギン(処理2)のいずれかで処理された細胞集団と比較して、PDX1発現集団
におけるNKX6.1発現細胞の割合に顕著な増加を引き起こした(
図2A)。PDBu
で処理された群では、全集団の88%±4.2%がNKX6.1を発現し、処理2を受け
た細胞の62%±8%はNKX6.1を発現し、処理1を受けた細胞の46.7±0.2
%はNKX6.1を発現した。ステージ4のNKX6.1発現細胞のほとんどは、PDX
1も発現した。これらの観察結果は、所与の細胞集団から得たPDX1発現とNKX6.
1発現との画像をオーバーレイすることによって確認された(
図1A)。これらのデータ
は、プロテインキナーゼC活性化因子を追加した培地で細胞を処理することによって、膵
臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団においてPDX1及びNKX6.1を
共発現する細胞の割合が増加したことを示している。
【0098】
処理1を受けた細胞集団では、細胞の10%がCDX2(腸マーカー)を発現した(図
2A)。処理2又は3のいずれかを受けた細胞集団では、細胞の5%未満がCDX2を発
現した。いずれの場合にも、CDX2発現細胞のほとんどは、PDX1及びNKX6.1
を共発現しなかった。
【0099】
ステージ3の細胞の並列集団を、上記処理3におけるPDBuの代わりに、次のプロテ
インキナーゼC活性化因子、20nMの濃度のホルボール-12-ミリステート-13-
アセテート(PMA)(Calbiochem #524400)、又は50nMの濃度
の[(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル(
pheny))-2,4-ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタム](TPB)(Calb
iochem #565740)で同様に処理した。
【0100】
ステージ4の終了時に(4日目)、PMAで処理された細胞集団の91%が、及びTP
Bで処理された細胞集団の90%が、NKX6.1を発現した。これら処理の全てにおけ
る総PDX1発現細胞に有意差は観察されなかった。
図2Bを参照。
【0101】
この例は、プロテインキナーゼC活性化因子を比較的低濃度で使用して、NKX6.1
発現の上方調節を容易にし、かつ膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団内
におけるPDX1及びNKX6.1を共発現する細胞の割合を増加させることができるこ
とを示している。
【0102】
(実施例2)
重症複合免疫不全(SCID)-beige(Bg)マウスへの、本発明の細胞の移植
ヒト胚性幹細胞株H1細胞を、0.2%のFBS+100ng/mLのアクチビンA+
20ng/mLのWNT-3aを添加したRPMI培地を有する、MATRIGEL(登
録商標)(1:30希釈)をコーティングしたディッシュ上で1日培養し、次いで0.5
%のFBS+100ng/mLのアクチビンAを添加したRPMI培地で更に2日間にわ
たって処理し(ステージ1)、次いで
a.2%のFBS+50ng/mLのFGF7を添加したDMEM/F12で3日間に
わたって処理し(ステージ2)、次いで
b.1%のB27+0.25μMのシクロパミン-KAAD+2μMのレチノイン酸(
RA)+100ng/mLのノギンを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわた
って処理し(ステージ3)、次いで
c.1%のB27+100ng/mLのノギン+1μMのALK5阻害剤II+50n
MのTPBを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理した(ステージ
4)。
【0103】
5~6週齢のオスのSCID-beigeマウス(C.B-Igh-1b/GbmsT
ac-Prkdcscid-LystbgN7)をTaconic Farmsより購入した。
滅菌した餌と水を自由に利用できるような状態で、マウスをmicroisolator
ケージ内に収容した。外科手術を準備するため、マウスをイヤータグで同定し、体重を測
定し、手持ち式glucometer(LifeScan;OneTouch)を用いて
血糖を測定した。
【0104】
マウスにイソフルラン(isolflurane)と酸素の混合物で麻酔をかけ、手術部位を小動
物用はさみで剪毛した。マウスには手術前に皮下に0.1mg.kg Buprenex
を投与した。70%のイソプロピルアルコール及び10%のポビドンヨウ素で連続的に洗
浄することで手術部位を準備した。
【0105】
ステージ4の終了時に、1mLのガラス製ピペットを用いて細胞を機械的に回収し、続
いて非接着性プレートに移し一晩培養した。マウスの手術前準備の間に、細胞を1.5m
L遠心管で遠心し、次いで細胞ペレットを回収するのに必要最低限を残しつつほとんどの
上清を除去した。細胞をRainin製Pos-Dポジティブディスプレイスメント式ピ
ペットに回収し、ピペットを反転させて重力により細胞を沈降させた。移植用に充填した
細胞調製物を残して過剰な培地を除去した。
【0106】
移植用に24G×1.9cm(3/4”)のI.V.カテーテルを用い、腎臓皮膜を貫
通させ、針を除去した。次いで腎臓被膜下でカテーテルを腎臓の遠位極まで前進させた。
Pos-Dピペットチップをカテーテルのハブにしっかりと取り付け、腎臓皮膜下でカテ
ーテルを通してピペットから5百万個の細胞を分配し、腎臓の遠位極に供給した。腎臓皮
膜を低温焼灼でシールし、腎臓を解剖学的な元の位置に戻した。並行して、Post-D
ピペットチップを用い、5百万個の細胞を含有している細胞凝集物を50μLデバイスに
充填した。50μLデバイスはTheraCyte,Inc(Irvine,CA)から
購入した。細胞充填後にデバイスを医療用接着剤silicone type A(Do
w Corning,カタログ#129109)によりシールし、SICD/Bgマウス
(動物番号3及び4)の皮下に移植した。5~0 vicrylを用いて連続縫合するこ
とで筋を縫合し、皮膚を創傷クリップにより閉じた。マウスには手術後に1.0mg.k
g Metacamを皮下投与した。マウスを麻酔から覚めさせ、完全に回復させた。
【0107】
移植後に、マウスを週に1回計量し、週に2回血糖を測定した。移植に続き、マウスに
は様々な間隔で3g/kgグルコースを腹腔内投与し、グルコース注入の60分後に、ヘ
パリンを少量含有している遠心管に後眼窩静脈洞から血液を吸引した。血液を遠心分離し
、2本目の遠心管中に血漿を配置し、ドライアイス上で凍結させ、その後、ヒトC-ペプ
チドアッセイを実施するまでの間-80℃で保管した。製造者による取扱説明書に従い、
Mercodia/ALPCO Diagnotics Ultrasensitive
C-peptide ELISA(Cat No.80-CPTHU-E01,Alp
co Diagnostics,NH)を用いてヒトCペプチドレベルを測定した。
【0108】
移植後4~6週で早くも、腎臓皮膜群及びTheracyte社製デバイスを受けた群
の両方の動物血清中でヒトCペプチドが検出され、時間経過に伴って増加した(
図3A及
び
図3B)。3ヵ月の終わりに、腎臓皮膜及びTheracyte社製デバイスを移植さ
れた群の両方の動物の100%において、グルコース投与に応答して顕著な量の循環ヒト
Cペプチドを検出することができた。3ヵ月後の腎臓皮膜群におけるグルコース刺激され
たヒトCペプチドの血中濃度は1.7±0.5ng/mLであり(n=4)、Thera
cyte社製デバイス移植群では1±0.5ng/mL(n=2)であった(
図3C)。
【0109】
この実施例は、プロテインキナーゼC活性化因子によって生成されるPDX1及びNK
X6.1共発現細胞集団が、インビボでインスリン分泌細胞に更に分化する能力を有する
ことを示している。インスリン分泌細胞への更なる分化の可能性は、局所環境に依存しな
い。本発明者らは、腎臓皮膜及び皮下部位の中の免疫保護デバイス内の両方において、P
DX1及びNKX6.1共発現細胞がインスリン分泌細胞へと更に分化し得ることを示し
ている。
【0110】
(実施例3)
本発明の細胞集団を形成するための代替方法
ヒト胚性幹細胞株H1細胞を、0.2%のFBS+100ng/mLのアクチビンA(
PeproTech;カタログ#120-14)+20ng/mLのWNT-3a(R&
D Systems;カタログ# 1324-WN/CF)を添加したRPMI培地(I
nvitrogen;カタログ#:22400)を有する、MATRIGEL(登録商標
)(1:30希釈)(BD Biosciences;カタログ# 356231)をコ
ーティングしたディッシュ上で1日培養した後で、0.5%のFBS+100ng/mL
のアクチビンAを追加したRPMI培地で更に2日間にわたって処理し(ステージ1)、
次いで、
a.2%のFBS+50ng/mLのFGF7を添加したDMEM/F12で3日間に
わたって処理し(ステージ2)、次いで
b.1%のB27+0.25μMのシクロパミン-KAAD+2μMのレチノイン酸(
RA)+100ng/mLのノギンを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわた
って処理し(ステージ3)、続いて又は
c.処理4:1%のB27+20nMのPDBu+100ng/mLのノギンを添加し
たDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理する(ステージ4)、又は
d.処理5:1%のB27+100ng/mLのノギン+1μMのALK5阻害剤II
+20nMのPDBuを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理する
(ステージ4)、又は
e.処理6:1%のB27+50ng/mLのFGF10+20nMのPDBuを添加
したDMEM(高グルコース)で4日間処理する(ステージ4)。
【0111】
プロテインキナーゼC活性化因子によって媒介されるPDX1及びNKX6.1を共発
現する細胞の割合の増加に与える追加因子の影響を調べた。ステージ4の4日目に培養液
を2回サンプリングし、上の実施例1に記載の通りに画像解析を行った。ISL1及びN
EUROD1の発現も記録した。
【0112】
この研究では、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団の大部分は、PD
X1の発現に陽性であった。PDX1発現細胞のほとんどもまたNKX6.1に共陽性で
あった。表1に示されるように、PKC活性化因子のみの追加は、膵臓内胚葉系に特徴的
なマーカーを発現する細胞集団におけるNKX6.1発現細胞の形成を促進した。ステー
ジ4の4日目までに、全集団の93%はNKX6.1陽性であり、NKX6.1発現細胞
のほとんど全てはPDX1の発現に陽性であった。
【0113】
プロテインキナーゼC活性化因子を追加した培地へのALK5阻害剤IIの添加(処理
5)は、観察されたNKX6.1発現の増加に影響を与えなかった。細胞集団の57.1
%はニューロD1を発現し、細胞集団の52.4%はISL1を発現し、この処理の後に
内分泌前駆体細胞集団の割合が増加したことを示唆している。表1を参照されたい。
【0114】
この実施例から得たサンプルのPCR分析は、PDX1、NKX6.1、及びPTF1
αの発現が、処理5を受けた細胞と比べて、処理4を受けた細胞集団で増加したことを
明らかにした。
図4A~
図4D参照。その一方で、NGN3の発現の顕著な増加が、AL
K5阻害剤2及びPDBuを与えられた(処理5)細胞で観察された。
図4A~
図4D参
照。
【0115】
プロテインキナーゼC活性化因子を追加した(処理6)培地に対するFGF10の添加
の影響もまた調べた。PDBuと組み合わせた50ng/mLの濃度でのFGF10の添
加(処理6)は、細胞集団の90%がNKX6.1を発現する膵臓内胚葉系に特徴的なマ
ーカーを発現する細胞集団を生成したが、NKX6.1発現細胞の多くはCDX2陽性で
もあった。表1参照。PDX1、NKX6.1及びPTF1 αのmRNAレベルは、P
DBu及びノギンで処理された細胞で観察されるレベルよりも増加しなかった。
図4A~
図4Dされたい。
【0116】
この実施例は、比較的低濃度(約20nM)のプロテインキナーゼC活性化因子とBM
P阻害剤の組み合わせを使用して、細胞の90%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を
共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成することができ
ることを示している。
【0117】
【0118】
(実施例4)
本発明の細胞集団を形成するための代替方法
ヒト胚性幹細胞株H1細胞を、0.2%のFBS+100ng/mLのアクチビンA(
PeproTech;カタログ#120-14)+20ng/mLのWNT-3a(R&
D Systems;カタログ# 1324-WN/CF)を添加したRPMI培地を(
Invitrogen;カタログ#:22400)有する、MATRIGEL(登録商標
)(1:30希釈)(BD Biosciences;カタログ# 356231)をコ
ーティングしたディッシュ上で1日培養した後で、0.5%のFBS+100ng/mL
のアクチビンAを追加したRPMI培地で更に2日間にわたって処理し(ステージ1)、
次いで、
a.2%のFBS+50ng/mLのFGF7を添加したDMEM/F12で3日間に
わたって処理し(ステージ2)、次いで
b.処理7(T7):1%のB27+0.25μMのシクロパミン-KAAD+2μM
のレチノイン酸(RA)+100ng/mLのノギンを添加したDMEM(高グルコース
)で4日間にわたって処理する(ステージ3)、又は
c.処理8(T8):1%のB27+0.25μMのシクロパミン-KAAD+2μM
のレチノイン酸(RA)+100ng/mLのノギン+50ng/mLのFGF7を添加
したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理する(ステージ3)、次いで
d.処理9(T9):1%のB27+100ng/mLのノギン+1μMのALK5阻
害剤II+20nMのPDBuを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって
処理する(ステージ4)、又は
e.処理10(T10):1%のB27+50ng/mLのFGF10+20nMのP
DBuを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理する(ステージ4)
、又は
f.処理11(T11):1%のB27+20nMのPDBu+100ng/mLのノ
ギンを添加したDMEM(高グルコース)で4日間にわたって処理した(ステージ4)。
【0119】
ステージ4の4日目に培養液を2回サンプリングし、IN Cell Analyze
r 1000(GE Healthcare)を用いて撮像した。ウェルあたり100視
野の撮像を得て、バイオアッセイ及び続く染色手順の間の任意の細胞ロスを補正した。I
N Cell Developer Toolbox 1.7(GE Healthca
re)ソフトウェアを用いて、各ウェルから総細胞数、総PDX1発現細胞、総NKX6
.1発現細胞、及び総CDX2発現細胞の測定値を得た。各複製データセットについて平
均及び標準偏差を算出した。総PDX1、NKX6.1及びCDX-2の発現細胞は、全
細胞集団の割合として報告された。
【0120】
T7培地及びその後のT9培地で処理された細胞集団では、細胞集団の約80%がNK
X6.1を発現した。これについては、表2を参照されたい。T7培地及びその後のT1
0培地で処理された細胞集団では、細胞の90%がNKX6.1を発現したが、この処理
ではより多くのCDX2発現細胞が観察された。表2を参照されたい。T7培地及びその
後のT11培地で処理された細胞集団は、細胞集団の93%がNKX6.1を発現する、
膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成した。その集団におけるほと
んどのNKX6.1発現細胞は、PDX1も発現した。
【0121】
T8培地及びその後のT9培地で処理された培養液は、細胞集団の56.7%がNKX
6.1を発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団を生成した。表
2を参照されたい。T8培地及びその後のT10培地で処理された培養液は、細胞集団の
63.5%がNKX6.1を発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞
集団を生成し、本発明者らはこの処理の後により多くのCDX2発現細胞を観察した。表
2を参照されたい。T8培地及びその後のT11培地で処理された培養液は、細胞集団の
74%がNKX6.1を発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団
を生成した。表2を参照されたい。NKX6.1発現細胞のほとんどはPDX1も発現し
た。
【0122】
ステージ3でレチノイン酸、シクロパミン、及びノギンで処理した後、ステージ4でP
KC活性化因子を加えることにより、ステージ4の4日目までにNKX6.1及びPTF
1 αのmRNAレベルの上昇がもたらされた(
図5A~
図5D)という点で、PCR分
析はIN Cell analysisも支持した。
【0123】
【0124】
本明細書の全体を通じて引用した刊行物は、その全体を参照により本明細書に組み込むものとする。以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適宜解釈される以下の特許請求の範囲によって定義されるものである点は認識されるであろう。
本発明は次の実施態様を含む。
(1)膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団であって、前記集団の50%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、細胞集団。
(2)前記集団の60%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、上記(1)に記載の細胞集団。
(3)前記集団の70%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、上記(1)に記載の細胞集団。
(4)前記集団の80%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、上記(1)に記載の細胞集団。
(5)前記集団の90%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、上記(1)に記載の細胞集団。
(6)細胞集団の50%超の細胞がPDX1及びNKX6.1を共発現する、膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する前記細胞集団を生成する方法であって、該方法は、
a.多能性幹細胞集団を培養する工程と、
b.前記多能性幹細胞集団を、胚体内胚葉系(definitive endoderm lineage)に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、
c.前記胚体内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する前記細胞集団を、プロテインキナーゼC活性化因子を追加した培地の中で、前記膵臓内胚葉系に特徴的なマーカーを発現する細胞集団へと分化させる工程と、を含む方法。
(7)前記プロテインキナーゼC活性化因子が、(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタム、インドラクタムV、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート、及びホルボール-12,13-ジブチレートからなる群から選択される、上記(6)に記載の方法。
(8)前記プロテインキナーゼC活性化因子が、(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタムである、上記(6)に記載の方法。
(9)前記(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタムが、約20nM~約500nMの濃度で使用される、上記(8)に記載の方法。
(10)プロテインキナーゼC活性化因子を追加した前記培地が、BMP阻害能を有する因子、TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤、及び線維芽細胞増殖因子からなる群からの少なくとも1つの因子を更に追加される、上記(6)に記載の方法。
(11)BMP阻害能を有する前記因子がノギンである、上記(10)に記載の方法。(12)ノギンが、約50ng/mL~約500μg/mLの濃度で使用される、上記(11)に記載の方法。
(13)ノギンが約100ng/mLの濃度で使用される、上記(11)に記載の方法。(14)前記TGFβ受容体シグナル伝達阻害剤がALK5阻害剤である、上記(10)に記載の方法。
(15)前記ALK5阻害剤がALK5阻害剤IIである、上記(14)に記載の方法。(16)ALK5阻害剤IIが、約0.1μM~約10μMの濃度で使用される、上記(15)に記載の方法。
(17)ALK5阻害剤IIが約1μMの濃度で使用される、上記(16)に記載の方法。
(18)前記線維芽細胞増殖因子がFGF7である、上記(10)に記載の方法。
(19)前記線維芽細胞増殖因子がFGF10である、上記(10)に記載の方法。
(20)前記線維芽細胞増殖因子が、約50pg/mL~約50μg/mLの濃度で使用できる、上記(10)に記載の方法。