(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)を培養して、アスタキサンチンを産生する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 23/00 20060101AFI20240807BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C12P23/00
C12N1/12 B
(21)【出願番号】P 2022516380
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2020116775
(87)【国際公開番号】W WO2021057709
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】201910900994.5
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC CCTCC M 2018809
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522098895
【氏名又は名称】バイオアルゴ(ダブリュエフ)カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522098909
【氏名又は名称】バイオアルゴ(シーワイ)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ユービン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ペイシン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シューアイシューアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フア
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ファンジエン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,シーイー
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-129504(JP,A)
【文献】特開2007-097584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0252391(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107365826(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第01229126(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/006068(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/085465(WO,A1)
【文献】東亜ディーケーケー株式会社,溶存酸素(DO)のはなし:溶存酸素について,オンライン検索日2023年2月10日,<URL:https://www.toadkk.co.jp/support/useful/useful041.html>
【文献】JOURNAL OF FERMENTATION AND BIOENGINEERING,1992年,Vol.74, No.1,pp.17-20
【文献】Bioresource Technology,1999年,Vol.68,pp.197-199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンを産生する方法であって、
(a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を得るステップであって、溶存酸素が
5~30%となるように制御され
、且つ、得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が、総細胞数のうちの少なくとも50%を占める、前記ステップ、
(b)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップであって、溶存酸素が
30~70%となるように制御され
、前記栄養欠損培養培地が窒素供給源を欠く、前記ステップ、並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収
するステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップ(a)における栄養細胞が
(i)培養温度が
15℃~25℃となるように制御される条件、及び/又は
(ii)pHが
6.0~9.0となるように制御される条件
における、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養、混合栄養培養、又は従属栄養培養により得られる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
培養温度が20℃~25℃となるように制御される、及び/又は
pHが7.0~8.0となるように制御される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)における栄養細胞が、
ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養又は混合栄養培養により得られる、
請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)における栄養細胞が、10~100μE/m
2
/秒の光強度における、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養又は混合栄養培養により得られる、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)における栄養細胞が、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ、溶存酸素が5~30%となるように制御される、
請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)で得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が、総細胞数のうちの
少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、又は
95%を占める、
請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)で得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が、総細胞数のうちの100%を占める、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)における栄養細胞が、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養により得られ
る、請求項1~5及び7~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
無機炭素供給源が、0.5~1.5%(v/v)の二酸化炭素を含有する混合空気を通気することによりもたらされ、且つ、ブロスのpHが二酸化炭素の含有量及び通気容量を調整することにより制御される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)における栄養細胞が有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地中のヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ
る、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
培養培地が、80~700mg/Lの炭素を含有する有機炭素供給源、及び40~800mg/Lの窒素を含有する窒素供給源を含有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
培養培地における炭素と窒素との質量比が、0.1~10:1である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)における栄養細胞がバッチ培養、流加培養、半連続培養、及び連続培養から選択される方式におけるヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ
る、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ヘマトコッカス・プルビアリス細胞が供給培養により培養され、供給溶液が、15~1050g/Lの酢酸又は酢酸塩、0.3~120g/Lの窒素を含有する窒素供給源、及び1~50倍濃縮培養培地を含有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
供給溶液が、60~300g/Lの酢酸又は酢酸塩を含有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
供給溶液における炭素と窒素との質量比が、1~50:1である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
窒素供給源が硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、含水アンモニウム、アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、ペプトン、酵母抽出物、タンパク質粉末、コーンスティープリカー、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される無機窒素供給源及び/又は有機窒素供給源を含有する、
請求項11~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
有機炭素供給源が酢酸、酢酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸塩、酪酸、酪酸塩、乳酸、乳酸塩、脂肪酸、脂肪酸塩、アミノ酸、メタノール、エタノール、グリセリン、クエン酸、クエン酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、グルコース、フルクトース、アラビノース、ラクトース、マンノース、ラムノース、リボース、及び廃水、加水分解物、前記有機炭素供給源(複数可)を含有する発酵液、並びにこれらの任意の組合せからなる群から選択され
る、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
有機炭素供給源が、酢酸又は酢酸塩である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
有機炭素供給源が、1~15.0g/Lの酢酸又は酢酸塩である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
栄養欠損培養培地が
リン供給源、硫黄供給源、マグネシウム供給源、カルシウム供給源、及び微量元素からなる群から選択される1つ以上の栄養元素を欠き
、微量元素が、Mn、Zn、B、I、Mo、Cu、Co、及びFeからなる群から選択される1つ以上である、
請求項1~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
栄養欠損培養培地が、リン供給源及び/又は微量元素を欠く、請求項22記載の方法。
【請求項24】
栄養欠損培養培地が、全ての栄養元素を欠く、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)が、
(i)培養培地が1~15g/Lの酢酸又は
酢酸塩を含有すること、
(ii)培養温度が
15℃~35℃となるように制御されること、
(iii)pHが
6.0~11.0となるように制御される
こと
のうちの1つ以上を含む、
請求項1~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
(i)酢酸塩が酢酸ナトリウムである、
(ii)培養温度が25℃~30℃となるように制御される、又は
(iii)pHが7.0~9.0となるように制御される、
請求項25記載の方法。
【請求項27】
ステップ(b)において、従属栄養培養がバッチ方式又は流加培養方式で実施され
る、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
ステップ(b)において、従属栄養培養が流加培養方式で実施され、供給溶液が、15~1050g/Lの酢酸若しくは酢酸塩を含有する栄養欠損培養培地であるか、又は酢酸である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ステップ(b)において、従属栄養培養が流加培養方式で実施され、供給溶液が、100~600g/Lの酢酸を含有する窒素欠損培養培地、又は酢酸である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
栄養細胞のうちの少なくとも60%が胞子細胞に変化した場合、及び/又はアスタキサンチンの含有量がもはや増大しない場合に、ステップ(b)が停止される、
請求項1~29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
培養培地が、
有機炭素供給源 80~700mg/L(炭素元素の含有量)、
窒素供給源 40~800mg/L(窒素元素の含有量)、
炭素と窒素との質量比 0.1~10:1、
リン酸二水素カリウム 0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム 50~500mg/L、
塩化カルシウム 5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム 0.5~6mg/L、
ホウ酸 0.5~5mg/L、
塩化第二鉄 100~1000μg/L、
塩化マンガン 10~100μg/L、
硫酸亜鉛 10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム 10~100μg/L、
塩化コバルト 5~50μg/L、
硫酸銅
10~100μg/L
を含む、
請求項1~30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
培養培地が、7.0~8.0のpHを有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ヘマトコッカス・プルビアリスが、ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809、AC136、AC143、AC587、AC588、ATCC 30453、ATCC 30402、CS-321、G 1002、ETTL 1958/3、TAKACOVAL 1983/1、PRIBYL 2005/4、PRIBYL 2008/3、CCCryo 188-04、CCCryo 189-04、CCCryo 190-04、SCCAP K-0084、IPPAS H-239、NIVA-CHL 9、FWAC 7072、FWAC 7039、CPCC 93、ACOI 816、ACOI 815、ACOI 276、ACOI 255、ACOI 133、ACOI 51、CCAP 34/1D、CCAP 34/1F、CCAP 34/6、CCAP 34/7、CCAP34/8、CCAP 34/12、CCAP 34/13、CCAP 34/14、NIES-144、NIES-2263、NIES-2264、NIES-2265、SAG 192.80、SAG 44.96、SAG 34-1a、SAG 34-1b、SAG 34-1c、CCAC 0055、CCAC 0125、CCAC 0129、CCAC 2072B、UTEX 2505、UTEX 16、UTEX B 294、CWU-MACC20、TISTR 8647、FACHB-712、FACHB-827、FACHB-797、FACHB-955、FACHB-1164、及びCCMP 3127からなる群から選択される、
請求項1~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
ステップ(c)が、アスタキサンチンを精製することをさらに含む、請求項1~33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
(a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスを、有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地中、流加培養方式で従属栄養的に培養して、栄養細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が酢酸又は
酢酸塩から選択されること、
・窒素供給源が硝酸又は
硝酸塩、尿素、トリプトン、又は酵母抽出物から選択されること、
・有機炭素供給源中の炭素元素の含有量が
150~300mg/Lであること、
・窒素元素の含有量が100~600mg/Lであること、
・培養培地中の炭素と窒素との質量比が
0.3~3:1であること、
・培養温度が20℃~25℃であること、
・溶存酸素が15~30%となるように制御されること、
・pHが7.5~8.0となるように制御されること、
・供給溶液が有機炭素供給源及び窒素供給源を含有し、炭素と窒素との質量比が
5~35:1であること、
・得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が総細胞数のうちの
少なくとも80%を占めること
のうちの
1つ以上を含むステップ、
(b)ステップ(a)で得られた栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中、流加培養方式で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が、
酢酸又は酢酸塩から選択されること、
・培養培地が(i)窒素供給源、(ii)窒素供給源及びリン供給源、又は(iii)全ての栄養元素を欠くこと、
・培養温度が
25℃~30℃であること、
・溶存酸素が45~70%となるように制御されること、
・pHが
7.5~8.0となるように制御されること、及び
・供給溶液が(i)有機炭素供給源を含有し、且つ窒素供給源及びリン供給源を欠く培養培地、又は(ii)有機炭素供給源を含有し、且つ全ての栄養を欠く
培養培地であること、並びに
・栄養細胞のうちの少なくとも90%、95%、又は100%が胞子細胞に変化する場合に、ステップ(b)を停止すること
のうちの
1つ以上を含むステップ、並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収
するステップ
を含む、
請求項1~8及び11~34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
(a)において、
酢酸塩が、酢酸ナトリウムである、
硝酸塩が、硝酸ナトリウムである、
有機炭素供給源中の炭素元素の含有量が、175~300mg/Lである、
培養培地中の炭素と窒素との質量比が、0.3~2.5:1である、
供給溶液における炭素と窒素との質量比が、5~33:1である、又は
得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が総細胞数のうちの100%を占める、
又は
(b)において、
酢酸塩が、酢酸ナトリウムである、
有機炭素供給源が、4.0~5.5g/Lのものである、
培養温度が、約30℃である、
pHが、約8.0となるように制御される、
供給溶液が、酢酸溶液である、又は
供給溶液が、60~300g/L又は180~300g/Lの濃度の酢酸溶液である、
又は
ステップ(c)が、アスタキサンチンを精製することをさらに含む、
請求項35記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを産生する分野、特に、ヘマトコッカス・プルビアリスを使用することによりアスタキサンチンを産生する方法、及び本方法で使用される培養培地に関する。
【背景技術】
【0002】
化学名を3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジケト-β-カロテンとし、分子式をC40H52O4とし、分子量を596.86とするアスタキサンチンはケトカロテノイドであり、強い抗酸化機能及び着色作用を有し、したがって、分野、例えば、機能食品、化粧品、食品添加物などにおいて広く使用されている。
【0003】
アスタキサンチンは化学合成を介して産生され得るが、その抗酸化活性及び生体安全性は天然アスタキサンチンほど良好ではない。ヘマトコッカス・プルビアリスは、最大で細胞乾燥重量の1.5~3%のアスタキサンチンを含む場合があり、その生体安全性により世界の主要国に受け入れられ、欧州連合FSA、米国FDA、及び中華人民共和国衛生部により、食品原料として承認されており、天然において天然アスタキサンチンを産生する最良の生物であると考えられている。
【0004】
適切な光及び温度を伴う栄養豊富な環境下では、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞は運動性緑色栄養細胞として存在し、不適切な条件下、例えば、高照度、高温、高塩で、栄養を欠く条件下では、細胞壁の厚い不動性細胞として存在するが、悪条件に対抗するように、大量のアスタキサンチンが蓄積される。その生理学的特徴に従い、現在のところ、緑色栄養細胞を拡大する第1のステップ、及びアスタキサンチンを誘導する第2のステップを含む、ヘマトコッカス・プルビアリスを培養してアスタキサンチンを産生する2ステップの方法が主に採用されている。米国ハワイ州の企業であるCyanotechは、独立栄養法を援用して、ヘマトコッカス・プルビアリス栄養細胞を、閉鎖型のフォトバイオリアクター内で培養し、次いで、アスタキサンチンの含有量が細胞乾燥重量の1.5%に達し得るように、開放型のランウェイポンドにおいて日光を利用して、細胞が赤色となるように誘導する。イスラエルのAlgatechologiesは、栄養細胞の培養及びアスタキサンチンの誘導のために、パイプライン型フォトバイオリアクターを使用し、3%のアスタキサンチン含有量をもたらしている。本発明の特許(PCT/CN2013/084262)は、ヘマトコッカス・プルビアリスを使用することによりアスタキサンチンを産生する方法であって、第1のステップにおいて、従属栄養培養により緑色栄養細胞を得、希釈のために培養培地を添加し、次いで、明所下における培養を介してアスタキサンチンを蓄積する結果として、2.3%のアスタキサンチン含有量をもたらすことを含む方法を開示する。
【0005】
現在のところ、高照度は高レベルのアスタキサンチンを得るための鍵となる因子であると一般に考えられている。高照度条件下で、藻類細胞は光合成を介して過剰反応性酸素系列(ROS)をもたらす。ヘマトコッカス・プルビアリスはアスタキサンチンの合成及び蓄積を介して、藻類細胞に対する反応性酸素系列による酸化損傷に抵抗する(Liら、2008、Consumption of oxygen by astaxanthin biosynthesis: a protective mechanism against oxidative stress in Haematococcus pluvialis (Chlorophyceae)、J. Plant Physiol. 165:1783~1797;及びLiら、2010、Effect of photon flux densities on regulation of carotenogenesis and cell viability of Haematococcus pluvialis (Chlorophyceae)、J. Appl. Phycol. 22:253~263)。したがって、ヘマトコッカス・プルビアリスの緑色栄養細胞が独立栄養培養を介して得られるのであれ、従属栄養培養を介して得られるのであれ、アスタキサンチンの誘導は明所条件下で実施されなければならず、藻類細胞に対する照度が高度であるほど、アスタキサンチンの含有量も増大する。しかし、光の透過は細胞密度と反比例するので、細胞密度を低減し、リアクターの比表面積を増大させ、リアクターの光路を低減し、人工光がアスタキサンチンの含有量を増大させる有効な手段となるが、問題、例えば、容量の減少、量の増大、面積の増大、費用の増大、及びリアクターのスケールアップの困難をもたらすであろう。加えて、生産費用を低減するために、ヘマトコッカス・プルビアリスの大スケール培養は日光下で実施されるが、自然光の持続時間及び強度は季節及び天候条件と共に変動するので、アスタキサンチンの含有量は不安定となる。
【0006】
文献では、以下のことが報告されている。高塩分刺激は、暗所条件下で、ヘマトコッカス・プルビアリスの、緑色栄養細胞から赤色胞子細胞への転換を誘導するが、アスタキサンチンの含有量は0.5%(細胞1個当たり30pg)に過ぎず、実際的な適用の価値を有さない(Kobayashiら、1997、Light-independent, astaxanthin production by the green microalga Haematococcus pluvialis under salt stress、Biotechnol Lett、19(6):507~509)。したがって、光の非存在下で、ヘマトコッカス・プルビアリスが、高レベルのアスタキサンチンを蓄積するように誘導する方法が開発されれば、自然条件に依存する農業的生産の現状を変化させ、工業化された生産を実現する一助となるであろう。
【0007】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び学術用語は当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、J. Wiley & Sons(New York、NY 1994);Sambrookら、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor、NY 1989)を参照されたい。
【発明の概要】
【0008】
本発明はヘマトコッカス・プルビアリスを暗所条件下で培養することにより、アスタキサンチンを産生する方法を提供する。
【0009】
ある実施形態では、本発明はアスタキサンチンを産生する方法であって、
(a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を得るステップ、
(b)栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップ、並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収し、任意選択でアスタキサンチンを精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0010】
本明細書で使用される場合、ヘマトコッカス・プルビアリスは緑藻植物門(Chlorophyta)、緑藻綱(Chlorophyceae)、オオヒゲマワリ目(Volvocales)、ヘマトコッカス科(Haematococaceae)、及びヘマトコッカス属(Haematococcus)に属する単細胞緑色藻類である。適切な環境及び栄養豊富な条件下で、ヘマトコッカス・プルビアリスは急速に増殖し、分裂し、繁殖し、鞭毛を伴う多数の運動性栄養細胞を産生する。環境条件が不適となると、運動性細胞は鞭毛を喪失し、不動性栄養細胞となる。連続的な悪環境条件、例えば、高照度、高塩、栄養飢餓などによる刺激下で、栄養細胞はもはや分裂せず、繁殖せず、細胞内に大量のアスタキサンチンを蓄積することにより悪環境条件に対して対抗し、赤色厚膜胞子となる。
【0011】
本明細書で使用される場合、アスタキサンチンを産生するための培養培地は、ヘマトコッカス・プルビアリスを培養して、これを増殖させ、繁殖させるのに使用され得る任意の培養培地であり得、通例、窒素供給源、リン供給源、硫黄供給源、マグネシウム供給源、カルシウム供給源、及び/又は微量元素を、当技術分野における知見及び慣行に基づき、当業者により決定され得る量で含有する。当技術分野では、特定の藻類に適する培養培地が公知であり、培地、例えば、BG-11、BBM、C培地、MCMなどを参照されたい。
【0012】
本発明による培養培地中で使用され得る「窒素供給源」とは、培養された藻類により利用され得る無機窒素供給源又は有機窒素供給源であって、例えば、硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、含水アンモニア、アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、ペプトン、酵母抽出物、タンパク質粉末、コーンスティープリカー、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない無機窒素供給源又は有機窒素供給源を指す。
【0013】
本発明による培養培地中で使用され得る「リン供給源」とは、培養された藻類により利用され得るリン供給源であって、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されないリン供給源を指す。
【0014】
本発明による培養培地中で使用され得る「硫黄供給源」とは、培養された藻類により利用され得る硫黄供給源であって、例えば、硫酸、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない硫黄供給源を指す。
【0015】
本発明による培養培地中で使用され得る「マグネシウム供給源」とは、培養された藻類により利用され得るマグネシウム供給源であって、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されないマグネシウム供給源を指す。
【0016】
本発明による培養培地中で使用され得る「カルシウム供給源」とは、培養された藻類により利用され得るカルシウム供給源であって、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されないカルシウム供給源を指す。
【0017】
本発明による培養培地中で使用され得る「微量元素」とは、培養された藻類により利用され得る微量元素であって、例えば、Mn(例えば、塩化マンガン)、Zn(例えば、硫酸亜鉛)、B(例えば、ホウ酸)、I、Mo(例えば、モリブデン酸ナトリウム)、Cu(例えば、硫酸銅)、Co(例えば、塩化コバルト)、Fe(例えば、塩化第二鉄)のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない微量元素を指す。微量元素は本分野における常套的な知見に基づき決定される量で培養培地中に添加され得る。
【0018】
本発明による培養培地中で使用され得る「有機炭素供給源」とは、培養される標的微生物により利用され得る有機炭素供給源を指す。当業者は、例えば、酢酸、酢酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸塩、酪酸、酪酸塩、乳酸、乳酸塩、脂肪酸、脂肪酸塩、アミノ酸、メタノール、エタノール、グリセリン、クエン酸、クエン酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、グルコース、フルクトース、アラビノース、ラクトース、マンノース、ラムノース、リボース、又はこれらの有機炭素供給源を含有する廃水、加水分解物、発酵液、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない、どの有機炭素供給源が本発明による培養培地中で使用され得るのかを、当技術分野における技術的知見に基づき決定し得る。有機炭素供給源は全て当業者の技術的能力の内にある、本分野における常套的な知見及び藻類細胞の実際の増殖条件に従い決定される量で添加され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の接種密度は、アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の増殖及び繁殖に適する任意の密度であり得、当業者は当技術分野における自身の技術的知見及び経験に基づき、適切な接種密度を決定し得る。例えば、本発明によるアスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の接種密度は培養培地1ml当たり少なくとも細胞104個、例えば、培養培地1ml当たり細胞1~20×104個、例えば、培養培地1ml当たり細胞5、8、又は10×104個であり得る。代替的に、アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の接種密度は培養培地1L当たり少なくとも細胞0.5~2.0g、例えば、培養培地1L当たり少なくとも細胞約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0gであり得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「栄養欠損培養培地」とは栄養元素、例えば、窒素供給源、リン供給源、硫黄供給源、マグネシウム供給源、カルシウム供給源、及び微量元素の1つ以上であるか、なお又は全てを欠く培養培地を指す。
【0021】
一実施形態では、栄養欠損培養培地は窒素供給源、リン供給源、硫黄供給源、カルシウム供給源、マグネシウム供給源、及び/又は微量元素を欠く。
【0022】
一実施形態では、栄養欠損培養培地は窒素供給源を欠く。
【0023】
一実施形態では、栄養欠損培養培地は窒素供給源及びリン供給源を欠く。
【0024】
一実施形態では、栄養欠損培養培地は窒素供給源及び微量元素を欠く。
【0025】
一実施形態では、栄養欠損培養培地は上記の栄養全てを欠く培養培地である。一実施形態では、全ての栄養を欠く培養培地は酢酸又は酢酸塩溶液、例えば、酢酸ナトリウム溶液である。さらなる実施形態では、全ての栄養を欠く培養培地は例えば、60~1050g/L、例えば、約120、180、240、300、400、500、600、700、800、900、1000g/Lの濃度の酢酸溶液である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「暗所条件」とは光が存在しないか、又は光がヘマトコッカス・プルビアリスの独立栄養培養に不十分である条件を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「独立栄養」とは明所条件下における光合成を介する増殖及び繁殖のために無機炭素供給源、例えば、二酸化炭素、炭酸塩、又は重炭酸塩を使用する培養方式である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「混合栄養」とは明所条件下における増殖及び繁殖のために有機炭素供給源を使用する培養方式である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「従属栄養」とは暗所条件下における増殖及び繁殖のために有機炭素供給源を使用する培養方式である。
【0030】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞はアスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリス細胞を培養することにより得られる。当技術分野では、藻類細胞の増殖及び繁殖のための、多様な培養法、例えば、独立栄養、混合栄養、及び従属栄養培養が公知である。
【0031】
任意選択で、ステップ(a)においてヘマトコッカス・プルビアリス細胞を培養した後で、本方法は培養培地を除去するステップ、及び/又は栄養細胞を収集するステップ、並びに、任意選択で、栄養細胞を濃縮するステップを含み得る。培養培地の除去ステップ、栄養細胞を収集及び/又は濃縮するステップは当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、沈殿(自然沈降又は遠心分離)又は濾過(フィルター又は膜を使用する)を介して実施され得る。
【0032】
ステップ(a)における培養温度及びpHはヘマトコッカス・プルビアリス細胞の増殖及び繁殖に適する任意の温度又はpHであり得る。
【0033】
一実施形態では、ステップ(a)における培養は6.0~9.0、例えば、6.0~8.0、7.0~8.0、7.0~8.5、7.5~8.0、7.5~8.5、8.0~9.0、又は8.5~9.0、例えば、約6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、又は9.0のpH値で実施される。一実施形態では、ステップ(a)における培養は7.0~8.0の範囲のpH値で実施される。一実施形態では、ステップ(a)における培養は、独立栄養培養であり、二酸化炭素(例えば、0.5%~5%(v/v))を含有する混合空気はpHを制御するように通気され得る。一実施形態では、ステップ(a)における培養は、混合栄養培養及び従属栄養培養であり、酸(例えば、1L当たり0.1~10モルの塩酸、硫酸、及び酢酸)はpHを制御するのに使用され得る。
【0034】
一実施形態では、ステップ(a)における培養は15~25℃、好ましくは20~25℃、例えば、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、又は25℃の温度で実施される。
【0035】
一実施形態では、ステップ(a)において、少なくとも細胞(栄養細胞)約100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、1,500,000、2,000,000、2,500,000、3,000,000個以上/mlを含有する培養ブロスが得られる。
【0036】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞はヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養により得られる。ヘマトコッカス・プルビアリス細胞は、光を伴う増殖及び繁殖に適する任意の条件下で独立栄養的に培養され得る。一実施形態では、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞は、窒素供給源(例えば、硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム)を含有する培養培地に接種され、この中で培養される場合があり、光強度は、例えば、10~100、10~90、10~80、10~70、20~90、20~80、20~70、30~90、30~80、30~70、40~60μE/m2/秒、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、又は90μE/m2/秒であり得るがこれらに限定されない。独立栄養培養では、無機炭素供給源、例えば、0.5~1.5%(v/v)の二酸化炭素を含有する混合空気をもたらすように、二酸化炭素又は二酸化炭素を含有する混合ガスが通気される場合があり、通気容量は例えば、0.05~0.5vvm、例えば、0.1~0.5又は0.2~0.5vvm、例えば、約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5vvmであり得る。培養ブロスのpHは二酸化炭素の含有量及び通気容量を調整することにより調整され得る。
【0037】
一実施形態では、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞は、ステップ(a)において、混合栄養的に、又は従属栄養的に培養される。一実施形態では、ステップ(a)における混合栄養培養又は従属栄養培養のための培養培地は、好ましくは炭素と窒素との質量比を0.1~10:1、0.2~10:1、0.1~5:1、0.2~5:1、又は0.3~4.5:1、例えば、約0.3:1、0.5:1、1:1、1.4:1、1.5、1.8:1、2:1、2.4:1、3:1、4:1、4.5:1、5:1、6:1、7:1、8:1、又は9:1とする、80~700、90~600、90~500、90~400、100~600、100~500、100~400、100~350、又は120~350mg/Lの炭素を含有する有機炭素供給源と、40~800、40~700、40~600、50~800、50~700、50~600、60~800、60~700、60~600、70~800、70~700、70~600、80~600mg/Lの窒素を含有する窒素供給源とを含む。
【0038】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞はヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養により得られる。混合栄養培養とは明所条件下で培養培地中に含有される有機炭素供給源を利用することによるヘマトコッカス・プルビアリス細胞の増殖及び繁殖を指す。一実施形態では、混合栄養培養のために使用される培養培地は、好ましくは炭素と窒素との質量比を0.1~10:1、0.2~10:1、0.1~5:1、0.2~5:1、又は0.3~4.5:1、例えば、約0.3:1、0.5:1、1:1、1.4:1、1.5、1.8:1、2:1、2.4:1、3:1、4:1、4.5:1、5:1、6:1、7:1、8:1、又は9:1とする、有機炭素供給源(例えば、酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウム)、任意選択で、窒素供給源(例えば、硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム)を含有する。光強度は、例えば、10~100、10~90、10~80、10~70、20~90、20~80、20~70、30~90、30~80、30~70、40~60μE/m2/秒、例えば、約20、30、40、50、60、70、80、又は90μE/m2/秒であり得るがこれらに限定されない。ステップ(a)における混合栄養培養についてのある実施形態では、溶存酸素は1~50%、例えば、5~30%又は5~10%となるように制御され、溶存酸素は、例えば、通気容量(例えば、空気)及び攪拌速度を調整することにより制御され得る。例えば、通気容量は0.05~0.5又は0.05~0.1vvm、例えば、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5vvmである、及び/又は攪拌速度は1分間当たり回転数50~150又は50~80回、例えば、1分間当たり回転数約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150回である。
【0039】
一実施形態では、ステップ(a)において、混合栄養培養は、流加培養により実施され、この場合、供給溶液は、培養ブロスへと添加される。一実施形態では、供給溶液は有機炭素供給源(例えば、酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウム)と、任意選択で、窒素供給源(例えば、硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム)とを含有する培養培地を含有する。一実施形態では、供給溶液は6~420g/Lの炭素を含有する有機炭素供給源、及び0.3~120g/Lの窒素を含有する窒素供給源を含有し、好ましくは炭素と窒素との質量比は1~50:1、例えば、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、又は50:1である。一実施形態では、供給溶液は有機炭素供給源と、任意選択で窒素供給源とを含有する濃縮培養培地、例えば、5~50倍濃縮培養培地である。
【0040】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞はヘマトコッカス・プルビアリス細胞の従属栄養培養により得られる。従属栄養培養とはヘマトコッカス・プルビアリスが光を伴わないか、又は光が独立栄養培養に不十分である条件下における増殖及び繁殖のために、培養培地中の有機炭素供給源を利用する培養方式を指す。一実施形態では、ヘマトコッカス・プルビアリスは、好ましくは炭素と窒素との質量比を0.1~10:1、0.2~10:1、0.1~5:1、0.2~5:1、又は0.3~4.5:1、例えば、約0.3:1、0.5:1、1:1、1.4:1、1.5:1、1.8:1、2:1、2.4:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、又は9:1とする、有機炭素供給源(例えば、酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウム)と、任意選択で、窒素供給源(例えば、硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム)とを含有する培養培地中で従属栄養的に培養される。ある実施形態では、ステップ(a)における従属栄養培養時に、溶存酸素は1~50%、好ましくは5~30%、例えば、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%となるように制御され、溶存酸素は、例えば、通気容量(例えば、空気)及び攪拌速度を調整することにより制御され得る。例えば、通気容量は0.05~0.5vvm、例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5vvmである、及び/又は攪拌速度は1分間当たり回転数50~150回、例えば、1分間当たり回転数約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150回である。
【0041】
一実施形態では、ステップ(a)における従属栄養培養は、流加培養により実施され、この場合、供給溶液は、培養ブロスへと添加される。一実施形態では、供給溶液は有機炭素供給源(例えば、酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸)と、任意選択で、窒素供給源(例えば、硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム)とを含有する培養培地を含有する。一実施形態では、供給溶液は、好ましくは炭素と窒素との質量比を1~50:1、1~40:1、1~35:1、5~50:1、5~40:1、又は5~35:1、例えば、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、又は50:1とする、6~420g/Lの炭素を含有する有機炭素供給源、及び0.3~120g/Lの窒素を含有する窒素供給源を含有する。一実施形態では、供給溶液は有機炭素供給源と、任意選択で窒素供給源とを含有する濃縮培養培地、例えば、5~50倍濃縮培養培地である。
【0042】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞は有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地へと接種されたヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られる。好ましくは、培養培地は、好ましくは炭素と窒素との質量比を0.1~10:1とする、80~700mg/Lの炭素を含有する有機炭素供給源、及び40~800mg/Lの窒素を含有する窒素供給源を含む。
【0043】
一実施形態では、ステップ(a)における栄養細胞はバッチ培養、流加培養、半連続培養、及び連続培養からなる群から選択される方式におけるヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られる。ヘマトコッカス・プルビアリス細胞を流加培養により培養する場合、供給溶液は、好ましくは炭素と窒素との質量比を約1~50:1、1~40:1、1~35:1、5~50:1、5~40:1、又は5~35:1とする、好ましくは15~1050g/L、より好ましくは15~600又は60~300g/Lの酢酸又は酢酸塩、0.3~120g/Lの窒素を含有する窒素供給源、及び1~50倍濃縮培地を含有する。
【0044】
ステップ(b)において、ステップ(a)で得られたヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞は藻類細胞によるアスタキサンチンの産生を刺激するように、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中で従属栄養的に培養される。ステップ(b)における接種密度、培養温度、及びpHはヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞の従属栄養培養に適する任意の密度、温度、及びpH値であり得る。
【0045】
一実施形態では、ステップ(b)におけるヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞の接種密度は培養培地1L当たり少なくとも細胞0.5~2.0g、例えば、培養培地1L当たり細胞0.5~1.7g、例えば、培養培地1L当たり少なくとも細胞約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0gであり得る。
【0046】
一実施形態では、ステップ(b)における培養温度は15~35℃、20~30℃、又は25~30℃、例えば、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、又は34℃である。
【0047】
一実施形態では、ステップ(b)におけるpH値は6.0~11.0、7.0~10.0、7.0~9.0、又は7.5~9.0、例えば、約6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、又は10.5である。
【0048】
ある実施形態では、ステップ(b)において、溶存酸素は20~90%、好ましくは30~70%となるように制御される。例えば、溶存酸素は通気容量及び攪拌速度を調整することにより制御され、好ましくは通気容量は0.2~3.0vvm、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5vvmである、及び/又は好ましくは攪拌速度は1分間当たり回転数100~300回、例えば、1分間当たり回転数150、200、250回である。
【0049】
一実施形態では、ステップ(b)において、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中の有機炭素供給源中の炭素元素の含有量は少なくとも約200mg/L、例えば、少なくとも約250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、3000、4000、5000mg/Lである。一実施形態では、ステップ(b)において、栄養欠損培養培地中に含有される有機炭素供給源は例えば、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、2~10、2~9、2~8、3~8、3.5~8、4~8g/L、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14g/Lの酢酸又は酢酸塩である。一実施形態では、ステップ(b)における栄養欠損培養培地中に含有される有機炭素供給源は例えば、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、2~10、2~9、2~8、3~8、3.5~8、4~8g/L、例えば、約2、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、又は10g/Lの酢酸ナトリウムである。
【0050】
一実施形態では、ステップ(b)において、培養は、流加方式で実施され、この場合、好ましい供給溶液は酢酸又は酢酸塩(例えば、30~1050g/L、特に、30~600又は100~600g/L、例えば、約50、100、200、300、400、500、550、600、700、800、900、1000g/Lの)を含有する栄養欠損培養培地(例えば、窒素、リン、及び/若しくは微量元素を欠くか、又は全ての栄養を欠く)である。一実施形態では、供給溶液は例えば、60~600g/L、例えば、約60、120、180、240、300、400、550、560、565、570g/Lの濃度の酢酸溶液である。
【0051】
一実施形態では、ステップ(b)におけるpHは、例えば、1L当たり0.1~10モルの塩酸、硫酸、又は酢酸を添加することにより、7.0~8.5の範囲内にあるように制御される。
【0052】
一実施形態では、ステップ(a)及び/又は(b)はバイオリアクター内で実施され得る。バイオリアクターは多様な種類のフォトバイオリアクター、例えば、平板型バイオリアクター、カラム型バイオリアクター、ハンギングバッグ型バイオリアクター、チューブ型バイオリアクター、ランウェイポンド、及び発酵槽を含む。
【0053】
一実施形態では、栄養細胞のうちの少なくとも60%(例えば、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、又は100%)が胞子細胞となる場合、及び/又はアスタキサンチンの含有量がもはや増大しない場合に、ステップ(b)は停止される。
【0054】
ステップ(c)における藻類胞子細胞及び/又はアスタキサンチンの回収は藻類胞子細胞を回収する任意の公知の方法(例えば、沈降又は遠心分離)及び/又は細胞壁を破壊し(機械的方式、化学的方式、又は酵素的方式を介して)、アスタキサンチンを回収する任意の公知の方法、任意選択で、任意の適切な方法により、アスタキサンチンを分離及び/又は精製する任意の公知の方法により実施され得る。
【0055】
一実施形態では、本発明はヘマトコッカス・プルビアリスを暗所条件下で培養することにより、アスタキサンチンを産生する方法であって、
(a)例えば、独立栄養培養、混合栄養培養、又は従属栄養培養により、培養培地中でヘマトコッカス・プルビアリス細胞を培養するステップであって、好ましくは培養温度が15℃~25℃となるように制御され、pHが6.0~9.0となるように制御されるステップ、
任意選択で、例えば、自然沈降、遠心分離、又は濾過により、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞を回収し、好ましくは濃縮されたヘマトコッカス・プルビアリス細胞を得るステップ、
(b)有機炭素供給源を添加することにより、ステップ(a)において得られたヘマトコッカス・プルビアリス細胞を、例えば、バッチ培養、流加培養、半連続培養、又は連続培養による従属栄養培養を介して、暗所条件下、栄養欠損培養培地中で従属栄養的に培養するステップであって、好ましくは培養温度が15~35℃となるように制御されるか、pHが6.0~11.0となるように制御されるか、及び/又は溶存酸素が20~90%となるように制御されるステップ、並びに
(c)任意選択で藻類細胞を収集するか、及び/又はアスタキサンチンを回収し、任意選択でアスタキサンチンを精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0056】
一実施形態では、本発明による、ステップ(a)において使用され得るヘマトコッカス・プルビアリスの独立栄養培養のための培養培地は、
リン酸二水素カリウム:0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム:50~500mg/L、
塩化カルシウム:5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム:0.5~6mg/L、
ホウ酸:0.5~5mg/L、
塩化第二鉄:100~1000μg/L、
塩化マンガン:10~100μg/L、
硫酸亜鉛:10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム:10~100μg/L、
塩化コバルト:5~50μg/L、
硫酸銅:10~100μg/L、
及び、任意選択で、他の窒素供給源、例えば、硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウムであって、窒素の含有量が約40~800mg/Lである他の窒素供給源、
pH7.0~8.0(例えば、7.5)
を含むか、又はこれらからなる。
【0057】
一実施形態では、本発明による、ステップ(a)において使用され得るヘマトコッカス・プルビアリスの混合栄養培養及び従属栄養培養のための培養培地は、
有機炭素供給源:80~700mg/L(炭素元素の含有量)
窒素供給源:40~800mg/L(窒素元素の含有量)であって、炭素と窒素との質量比が0.1~10:1、例えば、0.2~10:1、0.1~5:1、0.2~5:1、好ましくは0.3~4.5:1である窒素供給源;
リン酸二水素カリウム:0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム:50~500mg/L、
塩化カルシウム:5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム:0.5~6mg/L、
ホウ酸:0.5~5mg/L、
塩化第二鉄:100~1000μg/L、
塩化マンガン:10~100μg/L、
硫酸亜鉛:10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム:10~100μg/L、
塩化コバルト:5~50μg/L、
硫酸銅:10~100μg/L、
pH7.0~8.0(例えば、7.5)
を含むか、又はこれらからなる。
【0058】
一実施形態では、培養培地は90~600、90~500、90~400、100~600、100~500、100~400、100~350、又は120~350mg/Lの有機炭素供給源、例えば、約90mg/L、100mg/L、110mg/L、120mg/L、130mg/L、140mg/L、150mg/L、200mg/L、210mg/L、220mg/L、230mg/L、240mg/L、250mg/L、260mg/L、270mg/L、280mg/L、290mg/L、300mg/L、又は350mg/Lの有機炭素供給源を含む。
【0059】
一実施形態では、培養培地中に含まれる有機炭素供給源は酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウム、グルコース、リボース、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない。
【0060】
一実施形態では、培養培地は40~800、40~700、40~600、50~800、50~700、50~600、60~800、60~700、60~600、70~800、70~700、70~600、80~600mg/Lの窒素供給源、例えば、約50mg/L、60mg/L、70mg/L、80mg/L、90mg/L、100mg/L、150mg/L、200mg/L、250mg/L、300mg/L、350mg/L、400mg/L、450mg/L、500mg/L、550mg/L、又は600mg/Lの窒素供給源を含む。
【0061】
一実施形態では、培養培地中に含まれる窒素供給源は硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、尿素、及びこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない。
【0062】
一実施形態では、培養培地中の炭素と窒素との質量比は約0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、6:1、7:1、8:1、又は9:1、例えば、1.4:1、1.8:1、2.4:1、4.4:1である。
【0063】
一実施形態では、本発明による、ステップ(b)において使用され得るヘマトコッカス・プルビアリスの従属栄養培養のための培養培地は、
リン酸二水素カリウム:0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム:50~500mg/L、
塩化カルシウム:5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム:0.5~6mg/L、
ホウ酸:0.5~5mg/L、
塩化第二鉄:100~1000μg/L、
塩化マンガン:10~100μg/L、
硫酸亜鉛:10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム:10~100μg/L、
塩化コバルト:5~50μg/L、
硫酸銅:10~100μg/L、
pH7.0~8.0(例えば、7.5)
を含むか、又はこれらからなる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「栄養欠損培養培地」とは培養培地が栄養元素を含まないか、又は標的微生物の増殖に必要な量より少量の栄養元素を含む結果として、標的微生物の栄養元素の飢餓をもたらすことを意味する。一実施形態では、「栄養欠損培養培地」とは培養培地が栄養元素を含まないことを意味する。
【0065】
一実施形態では、本発明のステップ(b)において記載された栄養欠損培養培地はそれぞれの栄養元素を含有しない本発明による培養培地である。例として、窒素欠損培養培地はその組成が本明細書で記載されるが、窒素含有化合物(エデト酸二ナトリウム)を伴わない培養培地であり得る。別の例として、リン欠損培養培地はその組成が本明細書で記載されるが、リン含有化合物(リン酸二水素カリウム)を伴わない培養培地である。
【0066】
一実施形態では、本発明による培養培地は約0.05g/L、0.1g/L、0.2g/L、0.3g/L、0.4g/L、0.5g/L、0.6g/L、0.7g/L、0.8g/L、0.9g/L、又は1.0g/Lのリン酸二水素カリウムを含む。
【0067】
一実施形態では、本発明による培養培地は約50mg/L、100mg/L、150mg/L、200mg/L、250mg/L、300mg/L、350mg/L、400mg/L、450mg/L、又は500mg/Lの硫酸マグネシウムを含む。
【0068】
一実施形態では、本発明による培養培地は約5mg/L、10mg/L、11mg/L、12mg/L、13mg/L、14mg/L、15mg/L、20mg/L、25mg/L、27mg/L、30mg/L、35mg/L、36mg/L、40mg/L、45mg/L、又は50mg/Lの塩化カルシウムを含む。
【0069】
一実施形態では、本発明による培養培地は0.5~5.5mg/L、例えば、約0.5mg/L、1.0mg/L、1.5mg/L、2.0mg/L、2.5mg/L、3.0mg/L、3.5mg/L、4.0mg/L、4.5mg/L、5.0mg/L、又は5.5mg/Lのエデト酸二ナトリウムを含む。
【0070】
一実施形態では、本発明による培養培地は約0.5mg/L、1.0mg/L、1.5mg/L、1.6mg/L、1.7mg/L、1.8mg/L、1.9mg/L、2.0mg/L、2.5mg/L、3.0mg/L、3.5mg/L、4.0mg/L、4.5mg/L、又は5.0mg/Lのホウ酸を含む。
【0071】
一実施形態では、本発明による培養培地は100~950、100~900、又は120~900μg/L、例えば、約110μg/L、120μg/L、130μg/L、140μg/L、150μg/L、200μg/L、250μg/L、300μg/L、400μg/L、500μg/L、600μg/L、700μg/L、800μg/L、又は900μg/Lの塩化第二鉄を含む。
【0072】
一実施形態では、本発明による培養培地は15~100μg/L、例えば、15μg/L、20μg/L、25μg/L、30μg/L、35μg/L、40μg/L、50μg/L、60μg/L、70μg/L、72μg/L、80μg/L、90μg/L、又は100μg/Lの塩化マンガンを含む。
【0073】
一実施形態では、本発明による培養培地は10~100、10~90、又は14~90μg/L、例えば、約10μg/L、11μg/L、12μg/L、13μg/L、14μg/L、15μg/L、20μg/L、25μg/L、30μg/L、35μg/L、36μg/L、40μg/L、50μg/L、60μg/L、66μg/L、70μg/L、80μg/L、88μg/L、90μg/L、又は95μg/Lの硫酸亜鉛を含む。
【0074】
一実施形態では、本発明による培養培地は約10μg/L、15μg/L、20μg/L、25μg/L、30μg/L、35μg/L、40μg/L、45μg/L、50μg/L、60μg/L、70μg/L、80μg/L、87μg/L、90μg/L、又は100μg/Lのモリブデン酸ナトリウムを含む。
【0075】
一実施形態では、本発明による培養培地は約5μg/L、10μg/L、15μg/L、20μg/L、25μg/L、30μg/L、33μg/L、35μg/L、36μg/L、40μg/L、45μg/L、又は50μg/Lの塩化コバルトを含む。
【0076】
一実施形態では、本発明による培養培地は20~100μg/L、例えば、約21μg/L、22μg/L、25μg/L、30μg/L、35μg/L、40μg/L、45μg/L、50μg/L、55μg/L、60μg/L、65μg/L、70μg/L、75μg/L、79μg/L、80μg/L、85μg/L、90μg/L、95μg/L、又は100μg/Lの硫酸銅を含む。
【0077】
本発明はヘマトコッカス・プルビアリスを暗所条件下で培養することにより、アスタキサンチンを産生する方法であって、
(I)栄養細胞を培養するステップ:ヘマトコッカス・プルビアリスシードを、好ましくは15~25℃に制御された培養温度、及び6.0~9.0に制御されたpHで、独立栄養培養、混合栄養培養、又は従属栄養培養のための培養培地をロードされたバイオリアクターへと接種し、好ましくは、藻類細胞がもはや分裂せず、繁殖せず、緑色運動性細胞が緑色栄養細胞となったら、培養を停止するステップ、
(II)細胞を調製し、培養培地を除去し、例えば、ステップ(I)における藻類ブロスを、工程、例えば、自然沈降、遠心分離、濾過などにかけて培養培地を除去して、濃縮された藻類細胞を得るステップ、及び
(III)従属栄養誘導:有機炭素供給源を添加することにより、ステップ(II)の濃縮藻類細胞を、例えば、バッチ培養、流加培養、半連続培養、又は連続培養などの方式で、従属栄養培養のための栄養欠損培養培地をロードされたバイオリアクターへと接種するステップであって、培養温度が15~35℃となるように制御され、pHが6.0~11.0となるように制御され、溶存酸素が20~90%となるように制御されるステップ
を含む方法を提供する。好ましくは、培養するステップは藻類細胞が緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、アスタキサンチンの含有量がもはや増大しなくなったら停止される。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明はヘマトコッカス・プルビアリスを暗所条件下で培養することにより、アスタキサンチンを産生する方法であって、
(a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスを、有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地中、流加方式で従属栄養的に培養して、栄養細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから選択されること、
・窒素供給源が硝酸、硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム、尿素、トリプトン、及び酵母抽出物から選択されること、
・有機炭素供給源中の炭素の含有量が150~300mg/L、例えば、175~300mg/Lであること、
・窒素の含有量が100~600mg/Lであること、
・培養培地中の炭素と窒素との質量比が0.3~3:1、例えば、0.3~2.5:1であること、
・培養温度が20~25℃であること、
・溶存酸素が15~30%となるように制御されること、
・pHが7.5~8.0となるように制御されること、及び
・供給溶液液が有機炭素供給源及び窒素供給源を含有し、炭素と窒素との質量比が約5~35:1、例えば、5~33:1であること、
・得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が総細胞数のうちの少なくとも80%、好ましくは100%を占めること
のうちの1つ以上、好ましくは全てを含むステップ、
(b)ステップ(a)で得られた栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中、流加培養方式で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が、例えば、4.0~5.5g/Lの酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから選択されること、
・培養培地が、(i)窒素供給源、(ii)窒素供給源及びリン供給源、又は(iii)全ての栄養元素を欠き、
・培養温度が25~30℃、好ましくは約30℃であること、
・溶存酸素が45~70%となるように制御されること、
・pHが7.5~8.0、好ましくは約8.0となるように制御されること、及び
・供給溶液が(i)有機炭素供給源を含有し、窒素供給源及びリン供給源を欠く培養培地、又は(ii)有機炭素供給源を含有し、全ての栄養を欠く培養培地、好ましくは、例えば60~300g/L又は180~300g/Lの濃度の酢酸溶液であること、並びに
・栄養細胞のうちの少なくとも90%、95%、又は100%が胞子細胞となる場合に、ステップ(b)を停止すること
のうちの1つ以上、好ましくは全てを含むステップ、
並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収し、任意選択でアスタキサンチンを精製するステップ
を含む方法を提供する。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明による培養培地は、
リン酸二水素カリウム:0.1~0.5g/L、
硫酸マグネシウム:150~400mg/L、
塩化カルシウム:12~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム:1.0~3.5mg/L、
ホウ酸:2~4mg/L、
塩化第二鉄:150~500μg/L、
塩化マンガン:25~75μg/L、例えば、25~72μg/L、
硫酸亜鉛:20~50μg/L、
モリブデン酸ナトリウム:20~45μg/L、
塩化コバルト:10~35μg/L、例えば、10~33μg/L、
硫酸銅:30~65μg/L、
pH7.5~8.0
を含むか、又はこれらからなる。
【0080】
本発明では、アスタキサンチンの含有量は、以下の通りにアッセイされる:
(1)1mLの誘導された藻類ブロスを採取し、8000rpmで、5分間にわたり遠心分離し、上清を廃棄する;
(2)1mLのメタノール水酸化カリウム溶液(5%の水酸化カリウムと30%のメタノールとの混合物)を藻類細胞沈殿物へと添加し、70℃で、10分間にわたり水浴させ、この間に、何回かにわたりボルテックスで振盪し、8000rpmで、5分間にわたり遠心分離し、次いで、上清を除去する;
(3)45μLの氷酢酸及び1mLのDMSOを藻類細胞沈殿物へと添加し、次いで、70℃で、10分間にわたり水浴させ、この間に、何回かにわたりボルテックスで振盪し、8000rpmで、5分間にわたり遠心分離し、次いで、無菌の5mL遠心分離管内に上清を採取する;
(4)藻類の色が白色となるまで、ステップ(3)を2~3回にわたりを反復し、492nmの波長における吸光度値であるA492を測定する。
【0081】
ヘマトコッカス・プルビアリス中のアスタキサンチンの含有量は以下の式:(i)ヘマトコッカス・プルビアリスから抽出された全アスタキサンチンの濃度C
1(mg/mL)=
[式中、
である];(ii)ヘマトコッカス・プルビアリス中の全アスタキサンチンの抽出収率:ω(%)=(C
1×V)/M×100%[式中、V=DMSOの容量(mL)(希釈倍数×DMSOによる抽出回数)、M=1mLのヘマトコッカス・プルビアリスブロス中に含有される藻類細胞の乾燥重量(mg)である]に従い計算される。
【0082】
本明細書で記載されるヘマトコッカス・プルビアリスは例えば、ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809、ヘマトコッカス・プルビアリスAC136、AC143、AC587、AC588(Algobank-Caen Microalgal Culture Collection of University of Caen Basse-Normandie、France)、ヘマトコッカス・プルビアリスATCC 30453、ATCC 30402(American Type Culture Collection、USA)、ヘマトコッカス・プルビアリスCS-321(Australian National Algae Culture Collection、Australia)、ヘマトコッカス・プルビアリスG 1002(Culture Collection of Algae of Charles University、Czech Republic)、ヘマトコッカス・プルビアリスETTL 1958/3、TAKACOVAL 1983/1、PRIBYL 2005/4、PRIBYL 2008/3(Culture Collection of Autotrophic Organisms、Czech Republic)、ヘマトコッカス・プルビアリスCCCryo 188-04、CCCryo 189-04、CCCryo 190-04(Culture Collection of Cryophilic Algae、Germany)、ヘマトコッカス・プルビアリスSCCAP K-0084(Scandinavian Culture Collection of Algae and Protozoa at the University of Copenhagen、Denmark)、ヘマトコッカス・プルビアリスIPPAS H-239(Culture Collection of Microalgae、Institute of Plant Physiology、Russian Academy of Science、Russia)、ヘマトコッカス・プルビアリスNIVA-CHL 9(Norwegian Institute for Water Research Culture Collection of Algae、Norway)、ヘマトコッカス・プルビアリスFWAC 7072、FWAC 7039(Canadian Center for the Culture of Microorganisms、Canada)、ヘマトコッカス・プルビアリスCPCC 93(Canadian Phycological Culture Centre of University of Waterloo、Canada)、ヘマトコッカス・プルビアリスACOI 816、ACOI 815、ACOI 276、ACOI 255、ACOI 133、ACOI 51(Coimbra Culture Collection of Algae、Portugal)、ヘマトコッカス・プルビアリスCCAP 34/1D、CCAP 34/1F、CCAP 34/6、CCAP 34/7、CCAP 34/8、CCAP 34/12、CCAP 34/13、CCAP 34/14(Culture Collection of Algae and Protozoa of the Centre for Hydrology and Ecology、UK)、ヘマトコッカス・プルビアリスNIES-144、NIES-2263、NIES-2264、NIES-2265(Microbial Culture Collection of National Institute for Environmental Studies、Japan)、ヘマトコッカス・プルビアリスSAG 192.80、SAG 44.96、SAG 34-1a、SAG 34-1b、SAG 34-1c(Culture Collection of Algae at University of Goettingen、Germany)、ヘマトコッカス・プルビアリスCCAC 0055、CCAC 0125、CCAC 0129、CCAC 2072B(Culture Collection of Algae at the University of Cologne、Germany)、ヘマトコッカス・プルビアリスUTEX 2505、UTEX 16、UTEX B 294(University of Texas Culture Collection of Algae、USA)、ヘマトコッカス・プルビアリスCWU-MACC20(Herbarium of Kharkov University-MicroAlgae Cultures Collection、Ukraine)、ヘマトコッカス・プルビアリスTISTR 8647(Thailand Institute of Scientific and Technological Research Culture Collection、Thailand)、ヘマトコッカス・プルビアリスFACHB-712、FACHB-827、FACHB-797、FACHB-955、FACHB-1164(Freshwater Culture Algae Collection at Institute of Hydrobiology、The Chinese Academy of Sciences、China)、及びヘマトコッカス・プルビアリスCCMP 3127(Provasoli-Guillard National Centre for Marine Algae and Microbiota、USA)を含むがこれらに限定されないヘマトコッカス・プルビアリスの任意の種であり得る。
【0083】
ヘマトコッカス・プルビアリスAQHP0は2018年11月21日において、受託番号:CCTCC M 2018809下で、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)(Wuhan University、Wuhan、China、430072)に寄託された。
【0084】
文脈により指定されない限りにおいて、「又は」という語は「及び」を含むことを意図する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」とは、この語の後に記載される事象又は状況の発生又は非発生を指し、記載は事象若しくは状況が生じる条件又は事象若しくは状況が生じない条件を含む。例えば、「任意選択で」含まれるステップとはステップの存在又は非存在を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定値を含む値の範囲を指し、これは、特定値と同様であることが当業者により妥当に理解される。一部の実施形態では、「約」という用語は当技術分野において一般に許容される測定の標準誤差内にあることを意味する。例えば、一部の実施形態では、「約」とは指定値の±10%又は5%を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、記載における特色について、特定値又は比が与えられる場合、これはまた任意の2つの値又は比により規定される範囲も対象とする。例えば、数1、2、3、及び4が列挙される場合、範囲1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、及び3~4もまた対象とされる。
【0088】
先行技術と比較して、本発明は以下の利点及び効果を有する。
(1)本発明はヘマトコッカス・プルビアリスを培養して、アスタキサンチンを産生する方法であって、従来のスキームにおける光に対する高度の要件を克服し、完全な暗所条件下で、高レベルのアスタキサンチンの蓄積を達成し得る方法を提供する。一部の実施形態では、ヘマトコッカス・プルビアリス中のアスタキサンチンの含有量はアスタキサンチン誘導の終了時において、2.5%なお又は3.21%に達し得る。
【0089】
(2)本発明はもはや光に依拠しないので、リアクターのデザインは因子、例えば、比表面積及び光路を考慮する必要がない。大容量のバイオリアクター、例えば、発酵槽はリアクターの数を低減し、これにより生産費用を低減するのに使用され得る。
【0090】
(3)本発明はヘマトコッカス・プルビアリスの従来の大スケール培養の、気候、季節、及び地勢に対する依存を廃し、これにより従来の農業的培養方式の、工業化された大スケール生産への転換を促進するであろう。
以下、本発明の実施形態を示す。
[1]アスタキサンチンを産生する方法であって、
(a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を得るステップ、
(b)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップ、並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収し、任意選択でアスタキサンチンを精製するステップ
を含む方法。
[2]ステップ(a)における栄養細胞が
(i)培養温度が15℃~25℃、例えば、20℃~25℃となるように制御される条件、及び/又は
(ii)pHが6.0~9.0、好ましくは7.0~8.0となるように制御される条件
における、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養、混合栄養培養、又は従属栄養培養により得られる、[1]に記載の方法。
[3]ステップ(a)における栄養細胞が、好ましくは10~100μE/m
2
/秒の光強度における、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養又は混合栄養培養により得られる、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]ステップ(a)における栄養細胞が、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ、溶存酸素が1~50%、好ましくは5~30%となるように制御される、[1]から[3]のいずれか一に記載の方法。
[5]ステップ(a)で得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が、総細胞数のうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%、好ましくは100%を占める、[1]から[4]のいずれか一に記載の方法。
[6]ステップ(a)における栄養細胞が、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞の独立栄養培養により得られ、好ましくは無機炭素供給源が、0.5~1.5%(v/v)の二酸化炭素を含有する混合空気を通気することによりもたらされ、且つ、ブロスのpHが二酸化炭素の含有量及び通気容量を調整することにより制御される、[1]から[5]のいずれか一に記載の方法。
[7]ステップ(a)における栄養細胞が有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地中のヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ、好ましくは培養培地が80~700mg/Lの炭素を含有する有機炭素供給源、及び40~800mg/Lの窒素を含有する窒素供給源を含有し、好ましくは炭素と窒素との質量比が、0.1~10:1である、[1]から[6]のいずれか一に記載の方法。
[8]ステップ(a)における栄養細胞がバッチ培養、流加培養、半連続培養、及び連続培養から選択される方式におけるヘマトコッカス・プルビアリス細胞の混合栄養培養又は従属栄養培養により得られ、ヘマトコッカス・プルビアリス細胞を供給培養により培養する場合、供給溶液が、好ましくは15~1050g/L、より好ましくは60~300g/Lの酢酸又は酢酸塩、0.3~120g/Lの窒素を含有する窒素供給源、及び1~50倍濃縮培養培地を含有し、好ましくは炭素と窒素との質量比が、1~50:1である、[1]から[7]のいずれか一に記載の方法。
[9]窒素供給源が硝酸、硝酸塩、亜硝酸塩、含水アンモニウム、アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、ペプトン、酵母抽出物、タンパク質粉末、コーンスティープリカー、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される無機窒素供給源及び/又は有機窒素供給源を含有する、[7]又は[8]に記載の方法。
[10]有機炭素供給源が酢酸、酢酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸塩、酪酸、酪酸塩、乳酸、乳酸塩、脂肪酸、脂肪酸塩、アミノ酸、メタノール、エタノール、グリセリン、クエン酸、クエン酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、グルコース、フルクトース、アラビノース、ラクトース、マンノース、ラムノース、リボース、及び廃水、加水分解物、前記有機炭素供給源(複数可)を含有する発酵液、並びにこれらの任意の組合せからなる群から選択され、好ましくは酢酸又は酢酸塩、例えば、1~15.0g/Lの酢酸又は酢酸塩である、[1]から[9]のいずれか一に記載の方法。
[11]栄養欠損培養培地が窒素供給源、リン供給源、硫黄供給源、マグネシウム供給源、カルシウム供給源、及び微量元素からなる群から選択される1つ以上の栄養元素を欠き、より好ましくは窒素供給源及び/又はリン供給源及び/又は微量元素を欠き、より好ましくは全ての栄養元素を欠き、微量元素が、Mn、Zn、B、I、Mo、Cu、Co、及びFeからなる群から選択される1つ以上である、[1]から[10]のいずれか一に記載の方法。
[12]ステップ(b)が、
(i)培養培地が1~15g/Lの酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムを含有すること、
(ii)培養温度が15℃~35℃、好ましくは25℃~30℃となるように制御されること、
(iii)pHが6.0~11.0、好ましくは7.0~9.0となるように制御されること、及び
(iv)溶存酸素が20~90%、好ましくは30~70%となるように制御されること
のうちの1つ以上を含む、[1]から[11]のいずれか一に記載の方法。
[13]ステップ(b)において、従属栄養培養がバッチ方式又は流加培養方式で実施され、流加培養では、好ましくは供給溶液が、15~1050g/Lの酢酸若しくは酢酸塩を含有する栄養欠損培養培地であるか、又は酢酸であり、例えば、100~600g/Lの酢酸を含有する窒素欠損培養培地、又は酢酸である、[1]から[12]のいずれか一に記載の方法。
[14]栄養細胞のうちの少なくとも60%が胞子細胞に変化した場合、及び/又はアスタキサンチンの含有量がもはや増大しない場合に、ステップ(b)が停止される、[1]から[13]のいずれか一に記載の方法。
[15]培養培地が、
有機炭素供給源 80~700mg/L(炭素元素の含有量)、
窒素供給源 40~800mg/L(窒素元素の含有量)、
炭素と窒素との質量比 0.1~10:1、
リン酸二水素カリウム 0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム 50~500mg/L、
塩化カルシウム 5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム 0.5~6mg/L、
ホウ酸 0.5~5mg/L、
塩化第二鉄 100~1000μg/L、
塩化マンガン 10~100μg/L、
硫酸亜鉛 10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム 10~100μg/L、
塩化コバルト 5~50μg/L、
硫酸銅 10~100μg/L、
任意選択で、7.0~8.0のpH
を含む、[1]から[14]のいずれか一に記載の方法。
[16]ヘマトコッカス・プルビアリスが、ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809、AC136、AC143、AC587、AC588、ATCC 30453、ATCC 30402、CS-321、G 1002、ETTL 1958/3、TAKACOVAL 1983/1、PRIBYL 2005/4、PRIBYL 2008/3、CCCryo 188-04、CCCryo 189-04、CCCryo 190-04、SCCAP K-0084、IPPAS H-239、NIVA-CHL 9、FWAC 7072、FWAC 7039、CPCC 93、ACOI 816、ACOI 815、ACOI 276、ACOI 255、ACOI 133、ACOI 51、CCAP 34/1D、CCAP 34/1F、CCAP 34/6、CCAP 34/7、CCAP34/8、CCAP 34/12、CCAP 34/13、CCAP 34/14、NIES-144、NIES-2263、NIES-2264、NIES-2265、SAG 192.80、SAG 44.96、SAG 34-1a、SAG 34-1b、SAG 34-1c、CCAC 0055、CCAC 0125、CCAC 0129、CCAC 2072B、UTEX 2505、UTEX 16、UTEX B 294、CWU-MACC20、TISTR 8647、FACHB-712、FACHB-827、FACHB-797、FACHB-955、FACHB-1164、及びCCMP 3127からなる群から選択される、[1]から[15]のいずれか一に記載の方法。
[17](a)アスタキサンチン産生ヘマトコッカス・プルビアリスを、有機炭素供給源及び窒素供給源を含有する培養培地中、流加培養方式で従属栄養的に培養して、栄養細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから選択されること、
・窒素供給源が硝酸又は硝酸塩、例えば、硝酸ナトリウム、尿素、トリプトン、又は酵母抽出物から選択されること、
・有機炭素供給源中の炭素元素の含有量が150~300mg/L、例えば、175~300mg/Lであること、
・窒素元素の含有量が100~600mg/Lであること、
・培養培地中の炭素と窒素との質量比が0.3~3:1、例えば、0.3~2.5:1であること、
・培養温度が20℃~25℃であること、
・溶存酸素が15~30%となるように制御されること、
・pHが7.5~8.0となるように制御されること、
・供給溶液が有機炭素供給源及び窒素供給源を含有し、炭素と窒素との質量比が5~35:1、例えば、5~33:1であること、
・得られた栄養細胞中の不動性栄養細胞が総細胞数のうちの少なくとも80%、好ましくは100%を占めること
のうちの1つ以上、好ましくは全てを含むステップ、
(b)ステップ(a)で得られた栄養細胞を、暗所条件下、有機炭素供給源を含有する栄養欠損培養培地中、流加培養方式で従属栄養的に培養して、胞子細胞を得るステップであって、
・有機炭素供給源が、例えば、4.0~5.5g/Lの酢酸又は酢酸塩、例えば、酢酸ナトリウムから選択されること、
・培養培地が(i)窒素供給源、(ii)窒素供給源及びリン供給源、又は(iii)全ての栄養元素を欠くこと、
・培養温度が25℃~30℃、好ましくは約30℃であること、
・溶存酸素が45~70%となるように制御されること、
・pHが7.5~8.0、好ましくは約8.0となるように制御されること、及び
・供給溶液が(i)有機炭素供給源を含有し、且つ窒素供給源及びリン供給源を欠く培養培地、又は(ii)有機炭素供給源を含有し、且つ全ての栄養を欠く培養培地、好ましくは、例えば60~300g/L又は180~300g/Lの濃度の酢酸溶液であること、並びに
・栄養細胞のうちの少なくとも90%、95%、又は100%が胞子細胞に変化する場合に、ステップ(b)を停止すること
のうちの1つ以上、好ましくは全てを含むステップ、並びに
(c)胞子細胞及び/又はアスタキサンチンを回収し、任意選択でアスタキサンチンを精製するステップ
を含む、[1]から[16]のいずれか一に記載の方法。
[18]有機炭素供給源 80~700mg/L(炭素元素の含有量)、
窒素供給源 40~800mg/L(窒素元素の含有量)、
炭素と窒素との質量比 0.1~10:1、
リン酸二水素カリウム 0.05~1g/L、
硫酸マグネシウム 50~500mg/L、
塩化カルシウム 5~50mg/L、
エデト酸二ナトリウム 0.5~6mg/L、
ホウ酸 0.5~5mg/L、
塩化第二鉄 100~1000μg/L、
塩化マンガン 10~100μg/L、
硫酸亜鉛 10~100μg/L、
モリブデン酸ナトリウム 10~100μg/L、
塩化コバルト 5~50μg/L、
硫酸銅 10~100μg/L、
任意選択で、7.0~8.0のpH
を含む培養培地。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】暗所条件下、バッチ方式における独立栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図2】暗所条件下、流加培養方式における混合栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図3】暗所条件下、流加培養方式における酢酸ナトリウム及び硝酸ナトリウムを伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図4】暗所条件下、流加培養方式における酢酸ナトリウム及び硫酸アンモニウムを伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図5】暗所条件下、流加培養方式における酢酸ナトリウム及び尿素を伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図6】暗所条件下、流加培養方式におけるグルコース及び硝酸ナトリウムを伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図7】暗所条件下、流加培養方式における酢酸ナトリウム、リボース、及び硝酸ナトリウムを伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【
図8】暗所条件下、流加培養方式における酢酸ナトリウム、酵母抽出物、及びペプトンを伴う従属栄養培養により得られた藻類細胞を従属栄養的に誘導することによるアスタキサンチンの産生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
[実施例]
本発明の技法及び方法は、一般に、当技術分野で周知であり、本明細書において引用される参考文献において記載されている従来の方法に従い実行される。本発明は以下の実施例によりさらに例示される。しかし、このような実施例は例示的目的のものであり、任意の例又はこれらの組合せは本発明の範囲又は実施形態を限定するものとして理解されるべきではないことを理解されたい。本発明の範囲は付属の特許請求の範囲により規定される。本明細書及び当技術分野において一般的な知見と組み合わせて、当業者は特許請求の範囲により規定される範囲を明確に理解することができる。本発明の精神及び範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者は本発明の技術的解決に対して任意の改変又は変化を施すことができ、このような改変及び変化もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0093】
[実施例1]
基礎培養培地は1.0g/Lのリン酸二水素カリウム、500mg/Lの硫酸マグネシウム、36mg/Lの塩化カルシウム、5mg/Lのエデト酸二ナトリウム、4.5mg/Lのホウ酸、900μg/Lの塩化第二鉄、100μg/Lの塩化マンガン、88μg/Lの硫酸亜鉛、90μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、50μg/Lの塩化コバルト、及び79μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.5へと調整した。
【0094】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809(China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託されている)を、1.5g/Lの硝酸ナトリウムを含有する滅菌基礎培養培地へと接種し細胞50,000個/mLの初期細胞数で、ハンギングバッグ式薄膜型フォトバイオリアクターに入れ、リアクターの光路を6cmとし、容量を5Lとし、ローディング容量を70%とし、培養温度を22℃とした。これを、光強度を60μE/m2/秒として、24時間にわたる、白色蛍光灯下、片側における連続照射にかけ、通気容量を0.2~0.5vvmとして、0.5~1.5%(v/v)の二酸化炭素を含有する混合空気を通気し、攪拌した。二酸化炭素の含有量及び通気容量を調整することにより、ブロスのpHを7.5となるように制御した。独立栄養培養の240時間後、藻類細胞はもはや分裂せず、繁殖しなかった。不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの90%を占め、総細胞数は細胞110万個/mLに達した。
【0095】
藻類ブロスを収集し、遠心分離機内、3000rpmで、5分間にわたり遠心分離した。上清を除去した後で、濃縮された藻類細胞を、0.51g/Lの接種濃度で、8.2g/Lの酢酸ナトリウムを含有する窒素欠損基礎培養培地へと接種し、0.5Lのエアリフトカラムリアクターに入れ、ローディング容量を50%とし、通気容量を1.0vvmとし、溶存酸素を30~40%とし、培養温度を25℃とした。1L当たり0.5モルの希硫酸を添加することにより、pHを8.5となるように制御した。光の非存在下における従属栄養培養の192時間後、藻類細胞のうちの80%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は1.58g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は1.78%(
図1に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0096】
[実施例2]
基礎培養培地は0.05g/Lのリン酸二水素カリウム、50mg/Lの硫酸マグネシウム、5mg/Lの塩化カルシウム、0.5mg/Lのエデト酸二ナトリウム、1.9mg/Lのホウ酸、120μg/Lの塩化第二鉄、15μg/Lの塩化マンガン、14μg/Lの硫酸亜鉛、10μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、5μg/Lの塩化コバルト、及び22μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.0へと調整した。
【0097】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞80,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を1.8/1とする、0.5g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を146mg/Lとする)及び0.5g/Lの硝酸ナトリウム(窒素含有量を82mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を20℃として、5Lのガラス製発酵槽に入れた。これを、光強度を40μE/m2/秒として、24時間にわたる、白色蛍光灯下、片側における連続照射にかけた。通気速度を0.05~0.1vvmに調整し、攪拌速度を50~80rpmに調整することにより、溶存酸素を5~10%となるように制御した。600g/Lの酢酸及び70g/Lの硝酸ナトリウムを含有する50倍濃縮基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを7.0に維持し、流加培地中の炭素と窒素との比を20.8/1とした。混合栄養培養の240時間後、不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの85%を占め、総細胞数は細胞300万個/mLに達した。
【0098】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.21g/Lの接種濃度で、6.1g/Lの酢酸ナトリウムを含有する窒素欠損基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を25℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.2~1.0vvmに調整し、攪拌速度を100~150rpmに調整することにより、溶存酸素を30~40%となるように制御した。565g/Lの酢酸を含有する窒素欠損基礎培地を供給することにより、ブロスのpHを9.0に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の336時間後、藻類細胞のうちの70%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は5.93g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.02%(
図2に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0099】
[実施例3]
培養培地は0.5g/Lのリン酸二水素カリウム、200mg/Lの硫酸マグネシウム、12mg/Lの塩化カルシウム、3mg/Lのエデト酸二ナトリウム、3mg/Lのホウ酸、500μg/Lの塩化第二鉄、72μg/Lの塩化マンガン、50μg/Lの硫酸亜鉛、45μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、33μg/Lの塩化コバルト、及び65μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により8.0となるように調整した。
【0100】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞100,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を2.4/1とする、0.8g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を234mg/Lとする)及び0.6g/Lの硝酸ナトリウム(窒素含有量を99mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を20℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.1~0.4vvmに調整し、攪拌速度を50~100rpmに調整することにより、溶存酸素を15~20%となるように制御し、60g/Lの酢酸及び5g/Lの硝酸ナトリウムを含有する5倍濃縮基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持し、流加培地中の炭素と窒素との比を29.1/1とした。従属栄養培養の360時間後、藻類細胞はもはや分裂せず、繁殖しなかった。不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの100%を占め、総細胞数は細胞290万個/mLに達した。
【0101】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.71g/Lの接種濃度で、4.1g/Lの酢酸ナトリウムを含有する窒素欠損基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を30℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を1.0~3.0vvmに調整し、攪拌速度を100~200rpmに調整することにより、溶存酸素を50~70%となるように制御した。全ての栄養を欠き、180g/Lの酢酸を含有する培養培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持した。従属栄養培養の384時間後、光の非存在下における、藻類細胞の100%は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は7.87g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は3.21%(
図3に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0102】
[実施例4]
基礎培養培地は0.3g/Lのリン酸二水素カリウム、300mg/Lの硫酸マグネシウム、27mg/Lの塩化カルシウム、4mg/Lのエデト酸二ナトリウム、3.5mg/Lのホウ酸、700μg/Lの塩化第二鉄、80μg/Lの塩化マンガン、90μg/Lの硫酸亜鉛、87μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、40μg/Lの塩化コバルト、及び100μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.5へと調整した。
【0103】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞100,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を4.4/1とする、1.2g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を351mg/Lとする)及び0.38g/Lの硫酸アンモニウム(窒素含有量を81mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を25℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.1~0.3vvmに調整し、攪拌速度を50~80rpmに調整することにより、溶存酸素を10~15%となるように制御し、180g/Lの酢酸及び11.5g/Lの硫酸アンモニウムを含有する20倍濃縮基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを7.5に維持し、流加培地中の炭素と窒素との比を29.5/1とした。従属栄養培養の312時間後、藻類細胞はもはや分裂せず、繁殖しなかった。不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの100%を占め、総細胞数は細胞100万個/mLに達した。
【0104】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.68g/Lの接種濃度で、全ての栄養が存在せず、6.8g/Lの酢酸ナトリウムを含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を30℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.5~1.5vvmに調整し、攪拌速度を100~150rpmに調整することにより、溶存酸素を35~50%となるように制御した。120g/Lの酢酸を含有する窒素欠損基礎培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の336時間後、藻類細胞のうちの90%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は10.7g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.29%(
図4に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0105】
[実施例5]
基礎培養培地は0.2g/Lのリン酸二水素カリウム、400mg/Lの硫酸マグネシウム、50mg/Lの塩化カルシウム、3.5mg/Lのエデト酸二ナトリウム、4mg/Lのホウ酸、200μg/Lの塩化第二鉄、35μg/Lの塩化マンガン、25μg/Lの硫酸亜鉛、35μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、20μg/Lの塩化コバルト、及び45μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により8.0へと調整した。
【0106】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞80,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を2.0/1とする、1.0g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を293mg/Lとする)及び0.31g/Lの尿素(窒素含有量を145mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を23℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.1~0.4vvmに調整し、攪拌速度を50~100rpmに調整することにより、溶存酸素を20~25%となるように制御し、120g/Lの酢酸及び3.1g/Lの尿素を含有する10倍濃縮基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持し、流加培地中の炭素と窒素との比を33.2/1とした。従属栄養培養の240時間後、藻類細胞はもはや分裂せず、繁殖しなかった。不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの100%を占め、総細胞数は細胞270万個/mLに達した。
【0107】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.31g/Lの接種濃度で、全ての栄養が存在せず、4.5g/Lの酢酸ナトリウムを含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を30℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を1.0~2.0vvmに調整し、攪拌速度を100~200rpmに調整することにより、溶存酸素を45~60%となるように制御した。全ての栄養が存在せず、300g/Lの酢酸を含有する基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の384時間後、藻類細胞のうちの95%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は9.60g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.88%(
図5に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0108】
[実施例6]
基礎培養培地は0.6g/Lのリン酸二水素カリウム、100mg/Lの硫酸マグネシウム、10mg/Lの塩化カルシウム、2mg/Lのエデト酸二ナトリウム、0.5mg/Lのホウ酸、600μg/Lの塩化第二鉄、20μg/Lの塩化マンガン、36μg/Lの硫酸亜鉛、25μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、45μg/Lの塩化コバルト、及び80μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.5へと調整した。
【0109】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞40,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を0.5/1とする、0.3g/Lのグルコース(炭素含有量を120mg/Lとする)及び1.5g/Lの硝酸ナトリウム(窒素含有量を247mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を100mlとして、250mLの三角フラスコに入れた。これを、培養温度を20℃とし、100rpmで振盪しながら培養した。従属栄養培養の120時間後、不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの70%を占め、総細胞数は細胞250,000個/mLに達した。
【0110】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.37g/Lの接種濃度で、窒素及びリンを欠き、3.7g/Lの酢酸ナトリウムを含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を30℃として、1Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.5~1.5vvmに調整し、攪拌速度を100~200rpmに調整することにより、溶存酸素を45~55%となるように制御した。全ての栄養が存在せず、400g/Lの酢酸を含有する基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを7.5に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の384時間後、藻類細胞のうちの85%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は10.54g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.39%(
図6に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0111】
[実施例7]
基礎培養培地は0.8g/Lのリン酸二水素カリウム、250mg/Lの硫酸マグネシウム、40mg/Lの塩化カルシウム、5.5mg/Lのエデト酸二ナトリウム、5mg/Lのホウ酸、400μg/Lの塩化第二鉄、90μg/Lの塩化マンガン、66μg/Lの硫酸亜鉛、100μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、36μg/Lの塩化コバルト、及び90μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.5へと調整した。
【0112】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞40,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を1.4/1とする、0.4g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を117mg/Lとする)、0.3g/Lのリボース(炭素含有量を120mg/Lとする)及び1.0g/Lの硝酸ナトリウム(窒素含有量を165mg/Lとする)を含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を100mlとして、250mLの三角フラスコに入れた。これを、培養温度を20℃とし、100rpmで振盪しながら培養した。従属栄養培養の120時間後、不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの60%を占め、総細胞数は細胞300,000個/mLに達した。
【0113】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.24g/Lの接種濃度で、窒素及び微量元素を欠き、5.3g/Lの酢酸ナトリウムを含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を25℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.5~1.0vvmに調整し、攪拌速度を100~150rpmに調整することにより、溶存酸素を30~40%となるように制御した。窒素及び微量元素を欠き、240g/Lの酢酸を含有する基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを7.0に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の384時間後、藻類細胞のうちの80%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は13.34g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.00%(
図7に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【0114】
[実施例8]
基礎培養培地は0.1g/Lのリン酸二水素カリウム、150mg/Lの硫酸マグネシウム、15mg/Lの塩化カルシウム、1mg/Lのエデト酸二ナトリウム、2mg/Lのホウ酸、150μg/Lの塩化第二鉄、25μg/Lの塩化マンガン、20μg/Lの硫酸亜鉛、20μg/Lのモリブデン酸ナトリウム、10μg/Lの塩化コバルト、及び30μg/Lの硫酸銅の配合を有する。調製時に、pHを希硫酸又は水酸化ナトリウム溶液により7.5へと調整した。
【0115】
ヘマトコッカス・プルビアリスCCTCC M2018809を、細胞800,000個/mLの初期細胞数で、炭素と窒素との比を0.3/1とする、0.6g/Lの酢酸ナトリウム(炭素含有量を176mg/Lとする)、4.0g/Lのトリプトン(窒素含有量を400mg/Lとする)及び2.0g/Lの酵母抽出物(窒素含有量を200mg/Lとする)を含有する滅菌基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を25℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を0.2~0.5vvmに調整し、攪拌速度を80~150rpmに調整することにより、溶存酸素を25~30%となるように制御し、15g/Lの酢酸、8.0g/Lのトリプトン、及び4.0g/Lの酵母抽出物を含有する30倍濃縮基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを7.5に維持し、流加培地中の炭素と窒素との比を5.0/1とした。従属栄養培養の240時間後、不動性栄養細胞の数は総細胞数のうちの80%を占め、総細胞数は細胞280万個/mLに達した。
【0116】
通気及び攪拌を停止し、自然な沈降の後で上清を除去し、濃縮された藻類細胞を、1.55g/Lの接種濃度で、窒素及びリンを欠き、4.9g/Lの酢酸ナトリウムを含有する基礎培養培地へと接種し、ローディング容量を70%とし、培養温度を30℃として、5Lの発酵槽に入れた。通気容量を1.0~2.0vvmに調整し、攪拌速度を100~250rpmに調整することにより、溶存酸素を50~70%となるように制御した。窒素及びリンを欠き、60g/Lの酢酸を含有する基礎培養培地を供給することにより、ブロスのpHを8.0に維持した。光の非存在下における従属栄養培養の360時間後、藻類細胞のうちの90%を超える細胞は緑色栄養細胞から赤色胞子細胞へと変化し、藻類細胞密度は12.91g/Lに達し、アスタキサンチンの含有量は2.65%(
図8に示される)に達した。アスタキサンチンの含有量は上記で記載した方法を介して決定した。
【受託番号】
【0117】
CCTCC M 2018809