(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】IgEのリバースLFIA
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240807BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 Q
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2022519709
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 US2020054027
(87)【国際公開番号】W WO2021086544
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2019-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522122499
【氏名又は名称】チャン,ケ
【氏名又は名称原語表記】Zhang,Ke
【住所又は居所原語表記】2010 Malcolm Avenue, Los Angeles, CA 90025-6304 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ケ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06528325(US,B1)
【文献】国際公開第2010/112934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgEのリバースラテラルフローイムノアッセイ(IgE R-LFIA)であって、それは、ラテラルフローイムノアッセイ形式で体液サンプルの臨床的アレルギー反応の原因となる高親和性のアレルゲン特異的ヒトIgEを選択的に検出するために特別に設計された方法であり、以下のユニークな部材、特徴及び手順を有し、
a.IgER-LFIA試験装置は、コンジュゲートゾーンの上流に位置し、前記体液サンプルとランニング緩衝液を受容するためのサンプルゾーンと、液体によって移動できるアレルゲンにコンジュゲートした
ナノ粒子を有するコンジュゲートゾーンと、前記コンジュゲートゾーンの下流に位置し、前記体液サンプル中のコンジュゲートされたアレルゲン及びヒトlgEを含む複合体に結合し得る固定化タンパク質を有する試験ゾーンと、前記試験ゾーンの下流に位置し、前記試験ゾーンシグナルレベル対前記対照ゾーンシグナルレベルの比率を計算することによって前記アレルゲン特異的IgEレベルを定量化するために、残りの前記コンジュゲートされたアレルゲンに結合し得る固定化抗アレルゲン抗体を有する対照ゾーンとを含み、
b.最適な接合のために、5.0~6.5の規定されたPH範
囲を有する溶液でナ
ノ粒子にアレルゲンを直接結合することにより、アッセイ接合体を調製し、
c.ヒトIgEに強く結合し得るタンパク質を、前記IgE R-LFIAのアッセイ読み出しとして接合体と複合した前記形成済みのアレルゲン特異的IgEを捕捉する試薬として、試験ストリップの試験線の位置に事前に分注し、
d.抗アレルゲ
ン抗体を、アッセイ性能を検証する方法、及び前記試験線シグナルレベル対対照線シグナルレベルの比率を計算することによって前記アレルゲン特異的IgEレベルを正規化及び定量化するための内部アッセイ対照として残りの前記接合体を捕捉する試薬として、前記試験ストリップの前記対照線の位置に事前に分注する。実際には、前記対照線の抗体は、ナノ粒子にコンジュゲートされ、人工対照線形成のために前記アッセイ接合体に組み込まれた任意の抗原又はタンパク質に対する非アレルゲン特異的抗体であり得、
e.前記臨床的アレルギー反応の原因となる高親和性(低親和性ではない)の前記アレルゲン特異的IgEを選択的に検出するために、前記サンプルをサンプルポートに追加してからサンプルフローが前記試験線の位置に到達するまでの時間を合計12秒未満に制御し、
f.試験結果を、視覚的に、又はアレルゲン特異的IgEレベルの定性的、半定量的、若しくは定量的測定が可能な設計されたラテラルフローリーダによって決定する、方法。。
【請求項2】
前記接合体は、中間の架橋リンカー又はステップなしで、前記アレルゲン特異的IgEを高感度及び高特異性で効果的に検出するためのPH依存性吸収プロセスを介してアレルゲンを前記ナ
ノ粒子に結合することによって直接調製される、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項3】
前記ナ
ノ粒子は、直径100nm未
満のサイズのコロイド金ナノ粒子、及び銀ナノ粒子、磁性ナノ粒子、蛍光標識ナノ粒子を含
む請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項4】
前記試験線において高親和性でヒトIgEに強く結合し得る前記タンパク質は、IgEに対して高親和性を有する可溶型受容体(FceRIa)と、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、ラット、ウサギ、ニワトリ、馬、ウシ、ラクダ科の動物、リャマ、軟骨魚類、ファージディスプレイ、ヒト、ヒト化及び組み換え体に由来するポリクローナル及びモノクローナル抗ヒトIgE抗体とを含み、前記タンパク質は、個別に又は組み合わせて適用し得る、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項5】
IgEに対して高親和性を有する前記可溶型受容体(FceRIa)は、細菌、酵母、昆虫及び哺乳類細胞から、ヒト又はマウスIgGのFc部分と結合した融合タンパク質などの組み換えタンパク質又は融合タンパク質として発現されたFceRIaの細胞外ドメインである、請求項4に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項6】
ヒトIgEへの強い結合能力を有する前記タンパク質は、ヒトIgEへの親和性が10-8M
超のタンパク質である、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項7】
前記対照線における抗アレルゲン抗体は、マウス、ウサギ、ラット、ハムスター、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ラクダ科の動物、リャマ、軟骨魚類、ヒト、ヒト化及び組み換え体に由来するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項8】
前記臨床的アレルギー反応の原因となる高親和性の前記アレルゲン特異的IgEは、それらの対応するアレルゲンに対して10-8M超、又は10-9M超、又は10-10M超、又は10-11M超の親和性を有するアレルゲン特異的IgEである、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項9】
前記体液サンプルは、抗凝固剤を含む又は含まない全血、血清、血漿、母乳、涙、唾液、喀痰を含む、請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。。
【請求項10】
前記アレルゲンは、食物アレルゲン、環境アレルゲン、病原性アレルゲン、及び自己アレルゲンを含
む請求項1に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項11】
前記食物アレルゲンは、ピーナッツ、牛乳、卵白、貝類、魚、木の実、肉、小麦、大豆、ゴマを含
む請求項10に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項12】
前記環境アレルゲンは、イエダニ、花粉、ゴキブリ、ペットの鱗屑、カビ、及びハナバチ、カリバチ、スズメバチ、黄蜂、ヒアリの毒などの昆虫アレルゲンを含
む請求項10に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項13】
前記病原性アレルゲンは、蠕虫や他の寄生蠕虫などの寄生虫、細菌、真菌、新型コロナウイルス2019(SARS-CoV-2)スパイク及びヌクレオカプシドタンパク質などのウイルスのアレルゲンを含
む請求項10に記載のIgE R-LFIA方法。
【請求項14】
前記自己アレルゲンは、ヒト由来の可溶性タンパク質、ヒト細胞表面膜タンパク質、細胞内タンパク質、DNA、RNA、及びDNA/RNAとタンパク質との複合体を含
む請求項10に記載のIgE R-LFIA方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年10月27日に米国特許商標庁に出願された「抗原特異的IgEの測定のためのリバースラテラルフローイムノアッセイ方法」と題された米国仮特許出願第62/926,528号に基づき、その利益を主張し、その出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、IgEが特異的で反応性である抗原を着色ナノ粒子に結合する手順を使用するリバースラテラルフローイムノアッセイにより、生物学的サンプル中の抗原特異的免疫グロブリンE(IgE)を検出又は定量化する方法及び組成物に関する。ラテラルフローイムノアッセイ装置の試験線又は試験ストリップの領域に固定化抗IgE抗体によって形成済みの抗原特異的IgE-抗原-ナノ粒子複合体を捕捉及び検出する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年にわたって、免疫クロマトグラフィー装置に関連する多数の特許を取得する。これらの装置の標準機能は、
a.ラテラルフローアッセイの形で、吸湿性ストリップ上の反応領域の表示を可能にするプラスチック又は紙のハウジングと、
b.サンプル(尿、全血、血漿、血清、唾液、又は他の体液)を追加でき、ハウジングの一端にある開口部と、
c.抗原又は抗体と反応し得る固定化特異的結合部材を有する吸湿性材料と、
d.サンプルポートの反対側の一端で囲まれ、横に流れるサンプル、緩衝液及びコロイドを吸収するために使用される、吸収力のある吸湿性材料のパッド、例えば、吸収性パッドと、
e.適用されたサンプルを最初に吸収するためにサンプルポートの一端で使用される吸湿性材料のストリップと、
f.サンプルポート材料及びラテラルフローストリップと接触し、乾燥した着色固相試薬、抗体又は他のタンパク質でコーティングされた固相を含む、吸湿性材料のストリップとを含む。
【0004】
2種類のクロマトグラフィーイムノアッセイが一般的に説明され、そのうちの1種類では、体液(尿、全血、血漿、血清、唾液)に含まれる分析物(タンパク質、ハプテン又は小分子)が検出される。分析物は、hCG、FSH、TSH、トロポニン、ミオグロブリン、血清タンパク質、ウイルス又は細菌タンパク質、ハプテン、治療薬及び乱用薬物を含む。
【0005】
他の種類のクロマトグラフィーイムノアッセイでは、検出された分析物は、ウイルス若しくは細菌タンパク質(HIV、A型及びC型肝炎、ヘリコバクター・ピロリ、EBV、風疹、CMV、HSV、デング熱、ライム、シャーガス病、TB、トキソプラズマ、自己免疫抗原など)又はアレルゲン(花粉、カビ、ほこり/ダニ、食品、動物の上皮など)などの薬剤と特異的に反応する様々なクラスのヒト抗体(複数の抗体)である。抗体の検出に関しては、通常、以下の3つの形式が使用され、
1)着色固相又はナノ粒子は、ヒトIgG抗体と反応するタンパク質又はレクチン[タンパク質A、タンパク質G、レンチルレクチン、ジャカリン、コンカナビリンA、マンナン結合タンパク質、小麦胚芽レクチン、ピーナッツレクチンなど]とコンジュゲートされる。固相は、分析対象のサンプルに含まれるIgG、IgM及びIgAと特異的に反応する抗免疫グロブリンでコーティングされ得る。この場合、吸湿性ストリップは、サンプルに含まれる特定の抗体が反応する対象の分析物を含む。
【0006】
2)着色固相は、ヒト免疫グロブリンが反応する分析物を含む。この場合、吸湿性ストリップは、サンプルに含まれる特定の抗体が反応する対象の分析物も含む。
【0007】
3)着色固相又はナノ粒子には、免疫グロブリンが反応する分析物を含む。吸湿性ストリップは、タンパク質A、タンパク質G、レクチン、レンチルレクチン、ジャカリン、コンカナビリンA、マンナン結合タンパク質、小麦胚芽レクチン、ピーナッツレクチン、又は免疫グロブリンクラスIgG、IgA、IgMに対する抗体の混合物などの様々なクラスの免疫グロブリン又は物質に対するタンパク質を含む。
【0008】
米国特許出願第6,528,325号(Hubscher et al)及びその後の補足版米国特許出願第6,528,325 B1号(Hubscher et al)は、抗原をクロマトグラフィー粒子に結合させるアプローチを使用し、抗原特異的IgM、IgG及びIgAを検出するためのラテラルフローベースの方法を主張し、IgM、IgG及びIgAを含む免疫複合体は、ニトロセルロース膜の試験線に分注された抗IgM、抗IgG及び抗IgA抗体によって捕捉される。同じ特許出願の別の実施形態では、本発明者らはまた、抗IgE抗体結合クロマトグラフィー粒子を使用してアレルゲン特異的IgEを検出する方法を主張する。このIgE検出法では、アレルゲンを吸湿性ニトロセルロース膜の試験線に固定化し、IgE含有複合体を検出する。従って、このような抗IgE抗体コンジュゲート粒子ベースのアレルゲン特異的IgE検出方法は、以下、「従来のラテラルフローイムノアッセイ」と呼ばれる。
【0009】
米国特許出願第7,629,127号(Hubscher)は、米国特許出願第6,528,325号(Hubscher et al)に記載のラテラルフローイムノアッセイの改良版を開示し、サンプルポートの上流に緩衝液ポートを設計し、サンプルポートでのサンプル適用に続いてこの緩衝液ポートにチェイス緩衝液を適用することにより、「二段階」アプローチを使用し、アレルゲン特異的IgE検出の読み出し及び検出感度を向上させる。この方法では、抗IgE抗体標識コンジュゲートを緩衝液ポートとサンプルポートとの間の位置で乾燥させる。従来のLFIAのこの「二段階」の代替形式では、アレルゲンをストリップの試験領域に固定化する。
【0010】
IgE検出のための「従来のラテラルフローイムノアッセイ」の代替形式は、欧州特許第1891447A1号(Rundstrom et al)であり、アレルゲン特異的IgEの検出を改善するために二段階アプローチが適用される。この「二段階」アッセイでは、IgEを含むサンプルを最初にサンプルポートに適用し、ウィッキングパッドに向かって流し、次にサンプルポートの上流に配置された緩衝液ポートにランニング緩衝液を適用する。乾燥した抗IgE抗体コンジュゲートを緩衝液ポートとサンプルポートとの間の位置に堆積させる。従来のLFIAのこの「二段階」の代替形式では、アレルゲンをストリップの試験領域に固定化する。
【0011】
感度及び/又は特異性の限界により、アレルゲン特異的IgE検出のための「従来のラテラルフローイムノアッセイ」の先行発明は、アレルギー診断、特に食物アレルギー診断に広く適用することができない。生物学的サンプル中のアレルゲン特異的IgEを検出及び定量化するための従来技術における低感度の問題を克服できる高感度且つ特異的なラテラルフローベースのアッセイを食物アレルギーを含むIgE媒介アレルギーを診断するための迅速なスクリーニング及び診断ツールとして有することが望ましい。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、アレルゲン及び抗原特異的IgEを迅速に高感度且つ特異的に検出し得る新規リバースラテラルフローイムノアッセイ(R-LFIA)プラットフォーム、並びにアレルギー性疾患及び自己免疫疾患を含むIgE媒介性疾患を診断するための診断ツールとしてのポイントオブケア設定に関するものである。
【0013】
従って、本発明の目的の1つは、可溶性IgE、食品アレルゲン、自己抗原、環境アレルゲン、昆虫抗原、寄生虫抗原、細菌及びウイルス抗原、並びにIgE媒介アレルギー性疾患、自己免疫疾患、及び他のIgE媒介性疾患の原因となる合成薬物抗原又はヘプテンを含むがそれらに限定されない様々な抗原及びアレルゲンに特異性を有するヒトIgEを検出し得る新規R-LFIAプラットフォームである。
【0014】
従って、本発明の別の1つの目的は、ピーナッツ、牛乳、卵、貝類、魚、木の実、赤身肉、小麦、大豆、ゴマなどの食物アレルギー、自己免疫に基づく肥満細胞、並びに慢性自発性蕁麻疹及び他の特発性急性と慢性蕁麻疹などの好塩基球の活性化に関与する自己抗原として機能する可溶性タンパク質、膜タンパク質、細胞内タンパク質、タンパク質-DNA複合体、タンパク質-RNA複合体の形態の自己抗原に対するIgE媒介性疾患、ダニ、ゴキブリ、花粉、ペットの鱗屑、カビなどの環境アレルゲン、ハナバチ、カリバチ、スズメバチ、黄蜂、ヒアリの毒などの昆虫アレルゲンに対するIgE、蠕虫、十二指腸虫、他の寄生虫などの寄生虫に対するIgE、及び合成薬、抗生物質、抗腫瘍薬に対するIgEを診断できることである。
【0015】
本発明の別の1つの目的は、ポイントオブケア設定で、サンプル中の1つ以上のアレルゲン又は抗原特異的IgEを定性的、半定量的、定量的、迅速に検出できる、試験ストリップ及び/又は試験ストリップを保持するためのカセットを含むリバースラテラルフローイムノアッセイ分析を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試験ストリップの一例の図である。
図1Aは、別個のサンプルパッドのない試験ストリップであり、
図1Bは、代替の設定形式として別個のサンプルパッドがあるものである。
【
図2】新規リバースラテラルフローイムノアッセイの機構図である。
図2Aは、ピーナッツアレルゲン特異的IgEを一例として使用した、陽性アレルゲン特異的IgE検出の図である。
図2Bは、ピーナッツアレルゲン特異的IgEを一例として使用した、陰性アレルゲン特異的IgE検出の図である。
図2Cは、R-LFIAによって検出されたピーナッツの陽性及び陰性の結果を示す実際のストリップの例である。
【
図3】リバースラテラルフローイムノアッセイ(R-LFIA)と従来のラテラルフローイムノアッセイ(C-LFIA)との比較である。
図3Aは、R-LFIAの機構図であり、
図3Bは、C-LFIAの機構図である。R-LFIAとC-LFIAの両方の対応する部材は、個別にラベル付けられ、
図3に示される。
【
図4】同じピーナッツアレルギー血漿サンプルを使用し、R-LFIAとC-LFIAとの間の感度比較を検出する例である。アスタリスク記号は、それぞれの方法で検出される最終希釈を表す。
【
図5】3つのピーナッツアレルギー血漿サンプルからR-LFIAによって検出された最終希釈の例である。比較には、ImmunoCAPメソッドで測定された対応する国際単位(IU)レベルが使用される。
【
図6】様々な量を適用した場合のR-LFIA検出結果の例である。
【
図7】既知のピーナッツアレルギーのないランダムな正規母集団からの代表的なR-LFIA検出結果の例である。
【
図8】ピーナッツアレルギー性IgEを特異的に検出するが、他のアレルゲンに特異的ではないR-LFIAを検出するピーナッツアレルギー性IgEの特異性の例である。
【
図9】好塩基球活性化試験で確認されたピーナッツアレルギー血清サンプルのR-LFIA試験結果の例である。
【
図10】予備的な診断カットオフ値決定のためのピーナッツの非アレルギー性及びアレルギー性サンプルの試験結果のまとめである。
【
図11】ImmunoCAPメソッド分類のクラス4よりも高いピーナッツアレルギーIgE値を持つ28個の血漿サンプルのR-LFIA試験結果の例である。
【
図12】3つのエビアレルギー血漿サンプルからR-LFIAによって検出された最終希釈の例である。比較には、ImmunoCAPメソッドで測定された対応するIUレベルが使用される。
【
図13】ImmunoCAPメソッド分類のクラス4よりも高いエビアレルギーIgE値を持つ19個の血漿サンプルのR-LFIA試験結果の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の説明、特許請求の範囲及び添付の図面を参照することによって理解することができる。本発明の実装を実施できるために以下に示される実施形態のこの説明は、好ましい実施形態を限定することを意図するのではなく、その特定の例として役立つことを意図する。当業者は、本発明の同じ目的を実行するための他の方法及びシステムを修正又は設計するための基礎として開示された概念及び特定の実施形態を容易に使用できることを理解すべきである。当業者はまた、その同等のアセンブリが、その最も広い形態で本発明の精神及び範囲から逸脱しないことを理解すべきである。
【0018】
3,200万人以上のアメリカ人が、ピーナッツアレルギーなどの食物アレルギーに苦しんでいる。それらのいくつかは、現在の診断の高い偽陽性率を不必要に与える。従って、経口食品チャレンジ(OFC)は、食物アレルギーの確定診断の絶対的基準のままである。しかし、OFCは、設備の整った医療施設で厳重な監督を必要とするリスクの高いリソースを大量に消費する手順であるため、食物アレルギー患者の大部分が日常的に利用することはできない。アレルギー反応が偶然に起こるまで、多くは確定診断なしのままである。正確な食物アレルギー診断が緊急の医療ニーズであることは明白に合意される。
【0019】
フローイムノアッセイは、環境アレルギーを含む様々な疾患のポイントオブケア(POC)設定に適した安価な迅速診断として広く使用される。しかし、現在のC-LFIA形式では、多くのアレルギーの有意義な診断として機能するのに十分な高感度を達成できない。利用可能な全ての市販のアレルゲン特異的IgE試験の高い偽陽性とC-LFIAの低い感度の限界を考えると、アレルゲン特異的IgE検出のためのR-LFIAの本発明は、これらの問題を軽減するように設計される。
【0020】
ピーナッツアレルギーIgE試験用のR-LFIA形式は、低親和性の交差反応性IgEを除外することで高い特異性を示すだけでなく、C-LFIA形式の場合と比較してIgE検出感度を約30倍大幅に向上させ、従って、ピーナッツアレルギー診断のための臨床適用の閾値に達する。
【0021】
R-LFIA形式は、他の食品アレルギーIgEや、同じ又は同様の高感度及び特異性を持つ他の環境アレルゲン及び自己抗原特異的IgE試験にも適用できる。
【0022】
上記R-LFIAは、以下の特性を備えた以下の部材で構成された試験ストリップであり、
1.サンプルパッド、
2.コンジュゲートパッド、
3.代替としてサンプルパッドとコンジュゲートパッドとの両方の目的を果たす複合パッド(
図1A)、
4.コンジュゲートパッドまで乾燥された抗原又はアレルゲンと結合した金ナノ粒子を含むコンジュゲート、
5.試験線の位置に抗ヒトIgE抗体が事前に分注されたタンパク質結合膜、及び対照線の位置に事前に分注された抗抗原抗体、
6.吸収性パッド、
7.上記全ての部材は、裏当て支持体に取り付けられ、
8.サンプルパッドとコンジュゲートパッドとの間、コンジュゲートパッドとタンパク質結合膜との間、及びタンパク質結合膜と吸収性パッドとの間には重なりがある。
【0023】
上記リバースラテラルフローイムノアッセイのための前記試験手順は、
1.希釈又は非希釈の試験サンプルを、0.1uLから1uLの容量で、又は1uLから50uLの容量で、0.1uL間隔でサンプルポートに直接適用するステップと、
2.サンプルポートへのサンプルの追加に続いて、ランニング緩衝液をすぐに滴加し、又はサンプルポートに1秒間間隔で1秒間~60秒間、及び60秒間~120秒間の設計された時間枠を待つステップと、
3.あるいは、試験される様々な量のサンプル(希釈又は非希釈)をランニング緩衝液と事前に混合してから、ラテラルフロー装置のサンプルポートに適用し得るステップと、
4.サンプル中の分析物の濃度に応じて、色濃度で示される試験結果を、5秒間~10分間、又は10分間より長く視覚化し得るステップと、
5.設計されたラテラルフローリーダによって色濃度を視覚化し又は読み取ることができるステップとを含む。
【0024】
試験サンプル中の抗原(以下、ピーナッツアレルゲンを一例として使用)特異的IgEは、コンジュゲートパッドまで乾燥された金ナノ粒子(GNP)に事前にコンジュゲートされたアレルゲンに結合し、他のIgEは結合されないままになる(
図2)。ピーナッツ特異的IgE-ピーナッツアレルゲン-GNP複合体は、吸収性パッドに向かって流れる時、試験線の位置に印刷された抗IgE抗体(Ab)によって捕捉され、視覚化可能/検出可能な試験線シグナルを形成する。IgEフリーのピーナッツアレルゲン-GNPコンジュゲートは試験線を通過するが、対照線に印刷された抗ピーナッツMAbによって捕捉され、対照線シグナルを形成する(
図2A)。非ピーナッツアレルギーの場合、ピーナッツアレルゲン-GNPと複合体を形成して抗IgE Abを試験線で捕捉するためにピーナッツ特異的IgEを利用することはできないため、試験線シグナルは表示/検出できない。しかし、ピーナッツアレルゲン-GNPコンジュゲートは、抗ピーナッツMAbによって捕捉され、対照線を形成する(
図2B)。ピーナッツの陽性及び陰性サンプルの実際の試験例は
図2Cに示される。
【0025】
R-LFIA形式では、アレルゲン特異的IgE及び他のIgアイソタイプは、GNPに結合したアレルゲンに結合するために直接競合する(
図3A)。アレルゲン特異的IgEを含むGNPは、試験線に固定化抗IgE抗体によって捕捉されるが、アレルゲン特異的IgEを含まないGNPは試験線を通過し、その後、対照線に固定化抗ピーナッツMAbによって捕捉される。従って、サンプル中の非アレルゲン特異的IgE(例えば、他のIgE)レベルは、理論的には、試験線への結合についてアレルゲン特異的IgEと競合する。しかし、固定化抗IgEAb量が非常に過剰であるため、血清IgEレベルが試験線の全てのIgE結合能力を飽和させることができないため、このような可能性はLFIA設定では問題にならない。
【0026】
従来のラテラルフローイムノアッセイ(C-LFIA)との比較である。C-LFIA(
図3B)の場合、抗IgE抗体はGNPにコンジュゲートされる。血漿からの総IgE、及びアレルゲン特異的IgEは、金ナノ粒子に結合した抗IgE MAb(抗IgE-金コンジュゲート)によって捕捉される。金ナノ粒子を含む複合体は、アレルゲン(従ってピーナッツアレルゲン)がコーティングされた試験線上を流れる場合、アレルゲン特異的IgEが試験線で複合体を固定化するためのブリッジとして機能するため、アレルゲン特異的IgEを運ぶ複合体のみが、コーティングされたアレルゲンによって捕捉され、視覚化可能(又は検出可能)なシグナルとして堆積するが、アレルゲン特異的IgE以外の総IgEを運ぶ金ナノ粒子複合体は、複合体が試験線を通過し、対照線でコーティングされた抗(抗IgE)MAbによって捕捉される。この形式では、サンプル中の総IgEレベルが金ナノ粒子に結合した抗IgEへの結合についてアレルゲン特異的IgEと直接競合するため、総IgE/アレルゲン特異的IgE比のレベルはアッセイ感度に影響を与える重要な変数になる。この形式では、アレルゲン特異的Ig(IgM、IgG及びIgA)レベルは、GNPに特異的に結合してアッセイ感度に影響を与えないため、無関係である。
【0027】
(実施例1)
同じピーナッツアレルギーサンプル(PL14231)を使用したR-LFIAとC-LFIAの検出感度の比較。アスタリスク記号は、それぞれの方法で検出される最終希釈を表す(
図4)。最適なドット条件で、R-LFIAは1:300希釈から陽性シグナルを検出することができるが、C-LFIAは1:10希釈で陽性シグナルを検出することができ、ピーナッツ特異的IgE検出に関してC-LFIAよりもR-LFIAの感度が30倍高いことを示す。
【0028】
(実施例2)
3個(PA2、PA3、PA6)のピーナッツアレルギー血漿サンプルからR-LFIAによって検出された最終希釈。ImmunoCAPメソッドで測定された対応するIUレベルは、R-LFIA感度限界を決定するための比較に使用される(
図5)。一連の2倍希釈試験により、R-LFIAはImmunoCAP(0.35IU/ml、又は0.35kU
A/L)の感度限界と同等又はそれ以下のシグナルレベルを検出できることが明らかになり、ImmunoCAPIgE試験と同等又はそれ以上の感度を示す。
【0029】
(実施例3)
様々な量のピーナッツアレルギー血漿を使用したR-LFIA検出結果。わずか0.5lのPA3サンプルは、R-LFIAで測定された視覚化可能な陽性シグナルを十分にもたらす(
図6)。従って、サンプル量を0.5ul~9ulに段階的に増やすと、特にAU値が正規化された場合、陽性シグナルレベルがほぼ直線的に増加する。これらのデータにより、R-LFIAは高感度、診断試験用の幅広いサンプル量に対応できる実用的に柔軟なPA診断ツールであることを示す。
【0030】
(実施例4)
既知のピーナッツアレルギーのないランダムな正規母集団におけるピーナッツ特異的IgEレベル。90%のランダムな正規母集団では、検出可能なピーナッツ特異的IgEは示されないが、約10%は、AU<6.0の弱い陽性を示す(例えば、サンプルNS45、
図7)。これらの弱陽性サンプルは、1lの100g/ml粗ピーナッツ抽出物によって完全に阻害され得、R-LFIAがランダム集団から低レベルのピーナッツ特異的IgEを検出することを示す。
【0031】
(実施例5)
ピーナッツ特異的IgE検出のためのR-LFIAの特異性。ピーナッツIgER-LFIAは、Ara h1及びAra h2に特異的な組み換えIgEとのみ反応するが、100IU/mlのアレルゲン特異的IgEと牛乳(Bos d5及びBos d8)、エビ(Pen a1)、卵(Gal d1)、魚(Gad m1)、樺花粉(Bet v1)及びハウスダニ(Der p1)と交差反応しない。陽性対照として、PAサンプルPL 26259は強い陽性反応性を示す(
図8)。
【0032】
(実施例6)
R-LFIA IgE試験結果と好塩基球活性化試験(BAT)の結果との相関。BATで確認された11個のピーナッツアレルギーサンプルは全てピーナッツIgE R-LFIAを使用して高いAUレベルを示す(
図9)。
【0033】
(実施例7)
ピーナッツIgER-LFIAの診断カットオフ値。この予備研究から得られたデータを使用し、カットオフ値がAU=6に設定される場合、R-LFIAはピーナッツアレルギー診断に対して100%(11/11)の陽性の予測値と100%(251/251)の陰性の予測値を表す(
図10)。
【0034】
(実施例8)
ピーナッツ特異的IgEレベルが17.5IU/mlを超える血漿サンプルのR-LFIAIgE試験結果(ImmunoCAP分類のクラスIV以上)(
図11)。これらのデータは、ImmunoCAPによって決定されたクラスIVレベルのPS-IgEのサンプルの21.5%(6/28)に、R-LFIAで測定されたAUが含まれないか非常に低いことをまとめて示す。
【0035】
(実施例9)
3つのエビアレルギー血漿サンプルからR-LFIAによって検出された最終希釈。ImmunoCAPメソッドで測定された対応するIUレベルは、R-LFIA感度限界を決定するための比較に使用される(
図12)。一連の2倍希釈試験により、R-LFIAはImmunoCAP(0.35IU/ml、又は0.35kUA/L)の感度限界と同等又はそれ以下のシグナルレベルを検出できることが明らかになり、ImmunoCAPIgE試験と同等又はそれ以上の感度を示す。
【0036】
(実施例10)
エビ特異的IgEレベルが17.5IU/mlを超える血漿サンプルのR-LFIAIgE試験結果(ImmunoCAP分類のクラスIV以上)(
図13)。これらのデータは、ImmunoCAPによって決定されたクラスIVレベルのPS-IgEのサンプルの15.8%(3/19)に、R-LFIAで測定されたAUが含まれないか非常に低いことをまとめて示す。