(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】核燃料集合体底端部分デブリフィルタおよびこのようなデブリフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/30 20060101AFI20240807BHJP
G21C 3/322 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G21C3/30 130
G21C3/322
(21)【出願番号】P 2022520366
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2020077656
(87)【国際公開番号】W WO2021064171
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-18
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593128105
【氏名又は名称】フラマトム
【氏名又は名称原語表記】FRAMATOME
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ブラヴィウス,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ラム,マティアス
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-503771(JP,A)
【文献】特開平09-043375(JP,A)
【文献】特開平09-166675(JP,A)
【文献】特開平11-133176(JP,A)
【文献】特開2001-116873(JP,A)
【文献】特開2002-323585(JP,A)
【文献】Amy B. Hull,Review of Additive Manufacturing for Reactor Materials & Components,Workshop on Vendor Oversight 2018 Conference,米国,United States Nuclear Regulatory Commission,2018年06月13日,https://www.nrc.gov/reactors/new-reactors/how-we-regulate/oversight/quality-assurance/vendor-oversight/past/2018/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/30
G21C 3/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ノズル(8)およびこの下部ノズル(8)によって支持されたデブリフィルタ(18)を含む核燃料集合体底端部分用のデブリフィルタにおいて、入口面(18A)およびこの入口面(18A)と反対側の出口面(18B)を有するデブリフィルタであって、前記デブリフィルタ(18)が、前記デブリフィルタ(18)の前記入口面(18A)上に突出する複数の濾過構造(50)を含み、各濾過構造(50)が、構造軸(A)に沿って離隔された構造基部(52)および構造頂部(54)を有し、各々の濾過構造(50)が、前記構造軸(A)の周りで円周方向に分布したブレード(56)を含み、各ブレードが、前記構造基部(52)に連結された一端部と前記構造頂部(54)に連結された一端部とを有し、各ブレード(56)が、同じ濾過構造(50)の各近接ブレード(56)と共にスロット(58)を境界画定し
、ブレードが、側方で捕捉用体積を境界画定し、デブリフィルタの出口面には、冷却材流体がデブリフィルタから退出できるようにするための出口開口部が具備され、ブレード間で境界画定されたスロットは、冷却材流体が濾過構造の内側に進入できるようにしており、出口面内に設けられた出口開口部は、冷却材流体が濾過構造から、ひいてはデブリフィルタから退出できるようにしている、デブリフィルタ。
【請求項2】
各ブレード(56)が、同じ濾過構造(50)の各近接ブレード(56)と円周方向に重複している、請求項1に記載のデブリフィルタ。
【請求項3】
各濾過構造(50)の各ブレード(56)が、前記濾過構造(50)の前記構造軸(A)の周りで螺旋状に延在している、請求項1または2に記載のデブリフィルタ。
【請求項4】
各濾過構造(50)が、前記濾過構造(50)を通って流れる流体に対して、前記構造軸(A)の周りでサイクロン効果または渦を発生させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一つに記載のデブリフィルタ。
【請求項5】
前記デブリフィルタ(18)が、前記入口面(18A)と前記出口面(18B)の間に向かって徐々にまたは段階的に増大する保持能力を有する濾過区分(18D)を含む、請求項1から4のいずれか一つに記載のデブリフィルタ。
【請求項6】
前記濾過区分(18D)が、前記入口面(18A)と前記出口面(18B)の間で上下に位置設定された複数の重ね合わせた濾過層(40、42、44)を含み、前記濾過層(40、42、44)が、異なる保持能力を有している、請求項5に記載のデブリフィルタ。
【請求項7】
前記入口面(18A)から前記出口面(18B)まで前記濾過層(40、42、44)を考慮した場合に、各々の先行する濾過層(40、42)が、次の濾過層(42、44)の保持能力よりも厳密に低い保持能力を有している、請求項6に記載のデブリフィルタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のデブリフィルタを含む底端部分を含む核燃料集合体。
【請求項9】
少なくとも部分的に付加製造によって前記デブリフィルタ(18)を製造するステップを含む、請求項1から7のいずれか一つに記載のデブリフィルタ(18)の製造方法。
【請求項10】
前記デブリフィルタ(18)が、少なくとも部分的に付加製造により下部ノズル(8)上に構築される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記デブリフィルタ(18)が、前記入口面(18A)と前記出口面(18B)の間に向かって徐々にまたは段階的に増大する保持能力を有する濾過区分(18D)を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記濾過区分(18D)が、前記入口面(18A)と前記出口面(18B)の間で上下に位置設定された複数の重ね合わせた濾過層(40、42、44)を含み、前記濾過層(40、42、44)が異なる保持能力を有している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記濾過層(40、42、44)のうちの少なくとも2つが、別個に製造され、共に組立てられて前記デブリフィルタ(18)が得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つの濾過層(40、42、44)が、付加製造によって単一の材料部片に一体的に作られる、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉内で使用するための核燃料集合体に関し、詳細には、軽水炉内で使用するための核燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉用の核燃料集合体は概して、支持構造によって離隔した関係で長手方向および横方向に支持されながら、長手方向軸に沿って延在する燃料棒の束を含む。
【0003】
使用中、複数の核燃料集合体は、原子炉容器内に垂直に位置付けされ並んで配設され、こうして炉心を形成しており、冷却材流体、例えば水が核燃料集合体を通って垂直方向に流される。冷却材流体は、核反応を加減し核燃料集合体の燃料棒から熱を回収する機能を有する。
【0004】
冷却材流体中に存在するデブリは、潜在的に核燃料集合体の燃料棒を損傷する可能性があり、このリスクを妨げるために、核燃料集合体には、例えば欧州特許出願公開第2204819号明細書および欧州特許出願公開第2164076号明細書中で開示されているように、冷却材流体流を受け入れるための下部ノズルおよびデブリフィルタを含む底端部分が具備され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2204819号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2164076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、低いまたは適応可能な圧力損失でデブリを効率良く捕捉する核燃料集合体底端部分デブリフィルタにおいて、好ましくは製造が容易であるデブリフィルタを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、下部ノズルおよびこの下部ノズルによって支持されたデブリフィルタを含む核燃料集合体底端部分用のデブリフィルタにおいて、入口面およびこの入口面と反対側の出口面を有するデブリフィルタであって、デブリフィルタの入口面上に突出する複数の濾過構造を含み、各濾過構造が、構造軸に沿って離隔された構造基部および構造頂部を有し、各々の濾過構造が、構造軸の周りで円周方向に分布したブレードを含み、各ブレードが、構造基部に連結された一端部と構造頂部に連結された一端部とを有し、各ブレードが、同じ濾過構造の各近接ブレードと共にスロットを境界画定している、デブリフィルタを提案する。
【0008】
構造軸の周りで円周方向に分布したブレードからなる濾過構造を含むデブリフィルタは、圧力損失を制限しながらデブリを効率良く捕捉するように構成され得る。
【0009】
このような複雑な形状を有するデブリフィルタは、少なくとも部分的に付加製造によって製造され、これによりデブリフィルタはなおも容易に製造可能である。
【0010】
具体的実施形態において、デブリフィルタは、単独でまたは技術的に実現可能な任意の組合せで取上げられる、以下の任意の特徴のうちの単数または複数のものを含む:
- 各ブレードは、同じ濾過構造の各近接ブレードと円周方向に重複している;
- 各濾過構造の各ブレードは、前記濾過構造の構造軸(A)の周りで螺旋状に延在している;
- 各濾過構造は、濾過構造を通って流れる流体に対して、構造軸の周りでサイクロン効果または渦を発生させるように構成されている;
- デブリフィルタは、入口面と出口面の間に向かって徐々にまたは段階的に増大する保持能力を有する濾過区分を含む;
- 濾過区分は、入口面と出口面の間で上下に位置設定された複数の重ね合わせた濾過層を含み、濾過層は、異なる保持能力を有している;
- 入口面から出口面まで濾過層を考慮した場合に、各々の先行する濾過層は、次の濾過層の保持能力よりも厳密に低い保持能力を有している。
【0011】
本発明は同様に、以上で定義されている通りのデブリフィルタを含む底端部分を含む核燃料集合体にも関する。
【0012】
本発明は同様に、少なくとも部分的に付加製造によってデブリフィルタを製造するステップを含む、以上で定義された通りのデブリフィルタの製造方法にも関する。
【0013】
具体的実施形態において、該製造方法は、単独でまたは技術的に実現可能な任意の組合せで取上げられる、以下の任意の特徴のうちの単数または複数のものを含む:
- デブリフィルタは、少なくとも部分的に付加製造により下部ノズル(8)上に構築される;
- デブリフィルタの濾過層のうちの少なくとも2つは、別個に製造され、共に組立てられてデブリフィルタが得られる;
- デブリフィルタの少なくとも2つの濾過層は、付加製造によって単一の材料部片に一体的に作られる。
【0014】
別の態様によると、本発明は同様に、下部ノズルによって支持されたデブリフィルタが具備された、下部ノズルを含む核燃料集合体の底端部分用のデブリフィルタの製造方法において、デブリフィルタが入口面およびこの入口面と反対側の出口面を有し、少なくとも部分的に付加製造によってデブリフィルタを製造するステップを含む方法に関する。
【0015】
具体的実施形態において、該製造方法は、単独でまたは技術的に実現可能な任意の組合せで取上げられる、以下の任意の特徴のうちの単数または複数のものを含む:
- デブリフィルタは、少なくとも部分的に、付加製造により下部ノズル上に構築される;
- デブリフィルタは、入口面から出口面まで徐々にまたは段階的に増大する保持能力を有する少なくとも1つの濾過区分を含む;
- デブリフィルタは、入口面と出口面の間で上下に位置設定された複数の重ね合わせた濾過層を含み、濾過層は、異なる保持能力を有している;
- 入口面から出口面まで濾過層を考慮した場合に、各々の先行する濾過層は、次の濾過層の保持能力よりも厳密に低い保持能力を有している;
- 濾過層のうちの少なくとも2つは、別個に製造され、共に組立てられてデブリフィルタが得られる;
- 少なくとも2つの濾過層は、付加製造によって単一の材料部片に一体的に作られる;
- デブリフィルタは、デブリフィルタの入口面上に突出する複数の濾過構造を含み、各濾過構造は、構造軸に沿って離隔された構造基部および構造頂部を有し、各々の濾過構造は、構造軸の周りで円周方向に分布したブレードを含み、各ブレードは構造基部に連結された一端部と構造頂部に連結された一端部とを有し、各ブレードは、同じ濾過構造の各近接ブレードと共にスロットを境界画定している;
- 各ブレードは、同じ濾過構造の各近接ブレードと円周方向に重複している;
- 各ブレードは、構造軸の周りで螺旋状に延在している。
【0016】
本発明およびその利点は、単なる一例として提供され、添付図面を参照してなされている以下の説明を読むことで、より良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】別の実施形態に係る底端部分の断面図である。
【
図5】
図4のV-Vに沿って切り取った
図4のデブリフィルタの濾過構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に例示されている核燃料集合体2は、長手方向軸Lに沿った細長いものである。使用中、核燃料集合体は、長手方向軸Lが実質的に垂直方向に延在し、核燃料集合体が下部炉心板上に載置されている状態で、原子炉炉心内に位置付けされている。
【0019】
以下では、別段の規定の無い限り、「長手方向」、「横断方向」、「垂直方向」、「水平方向」、「最上部」、「底部」、「上部」および「下部」なる用語は、核燃料集合体2の使用位置を基準にして使用される。
【0020】
核燃料集合体2は、細長くかつ長手方向軸Lに沿って互いに平行に延在する燃料棒4の束を含む。
【0021】
各々の燃料棒4は、例えば管状クラッディング内に積重ねられる核燃料ペレットなどの核燃料を収容する管状クラッディング、および管状クラッディングの端部を閉じるエンドキャップを含む。
【0022】
核燃料集合体2は、長手方向および横断方向に燃料棒4を支持する支持構造6を含む。
【0023】
支持構造6は、横断方向に離隔した関係で燃料棒4を維持するように構成されている。燃料棒4は、例えば、仮想の網、好ましくは規則正しい網の結節点において格子状に配設される。燃料棒間の横断方向の離隔距離により、冷却材流体は燃料棒間で主として長手方向に流れることができる。
【0024】
核燃料集合体2の支持構造6は、下部ノズル8、上部ノズル10、および燃料棒4に沿って分布した支持グリッド12を含む。燃料棒4は、スペーサグリッド12を通過しながら下部ノズル8と上部ノズル10の間に延在する。スペーサグリッド12の機能は、燃料棒4を長手方向および横断方向で離隔した関係に維持することである。
【0025】
図1の核燃料集合体2は、沸とう水型原子炉(BWR)内で使用するためのものである。
【0026】
アーマチュア6は、格子の燃料棒4を交換することによって燃料棒4の束の内側に組込まれたウォータチャンネル14(または「ウォータロッド」)、および燃料棒4の束を取り囲む燃料チャンネル16を含む。
【0027】
ウォータチャンネル14および燃料チャンネル16は、下部ノズル8と上部ノズル10の間に延在して、下部ノズル8および上部ノズル10に連結されている。スペーサグリッド12は、ウォータチャンネル14に沿ってさまざまな位置に分布させられて、ウォータチャンネル14に取付けられている。
【0028】
使用中、核燃料集合体2は、下部炉心板の上に垂直方向に位置付けされており、下部ノズル8が、矢印Fで例示されているように、下部ノズル8を通って燃料棒4の束の中に移行する冷却材流体の流れを受け入れている。
【0029】
核燃料集合体2は、下部ノズル8の内側に位置付けされたデブリフィルタ18を含む。下部ノズル8およびデブリフィルタ18は、核燃料集合体2の底端部分20を共に画定している。
【0030】
デブリフィルタ18は、下部ノズル8を介して核燃料集合体2内に入る冷却材流体の中に存在するデブリを捕捉するように構成されている。
【0031】
図2に例示されているように、下部ノズル8は、下部タイプレート22とノズル部分24を含む。
【0032】
下部タイプレート22は、とりわけ、ウォータチャンネル14および燃料チャンネル16をそれに取付けるように構成されている。ノズル部分24は、冷却材流体流を収容しそれをウォータチャンネル14および燃料チャンネル16へと導くように構成されている。
【0033】
ノズル部分24は管状で、下部タイプレート22の周囲から下向きに延在する。ノズル部分24は、下部入口26と上部出口28を含む。
【0034】
下部タイプレート22は、ノズル部分24の上部出口28を横断して延在する。下部タイプレート22は、グリッドの形状を有する。下部タイプレート22は、冷却材流体が下部タイプレート22を通って流れるように、流体流開口部30を有する。
【0035】
ノズル部分24は、例えば、下部タイプレート22から下向きに延在する一定の断面の上部区分32、および下向きに先細になった円錐形状の下部区分34を有する。
【0036】
ノズル部分24は、内部空間36を画定する。内部空間36は、ノズル部分24の下部入口26と上部出口28の間で境界画定されている。
【0037】
デブリフィルタ18は、下部ノズル8の内側、より具体的にはここではノズル部分24の内側でかつ下部タイプレート22の下方に収納される。デブリフィルタ18は、使用中の冷却材流体流を考慮した場合、下部タイプレート22の上流側に位置設定される。デブリフィルタ18は、下部タイプレート22の下側と接触していてよい。代替的には、デブリフィルタ18と下部タイプレートの下側との間にわずかな間隙を設けることができる。
【0038】
デブリフィルタ18は好ましくは、少なくとも部分的に付加製造によって製造される。
【0039】
付加製造とは、すでに製造された部分に材料を付加することによって、デブリフィルタ18または少なくともデブリフィルタ18の一部分を漸進的に製造する製造方法を意味する。
【0040】
付加製造とは、詳細には、連続して製造層を漸進的に付加することによって、デブリフィルタの少なくとも一部分を漸進的に製造することを意味する。
【0041】
デブリフィルタ18は、例えば、以下の付加製造方法、すなわち粉末床付加製造、詳細には溶融、焼結または接着接合、堆積付加製造、詳細には粉末堆積付加製造またはワイヤ堆積付加製造、材料噴射付加製造および結合剤噴射付加製造のうちの1つまたはそれらの組合せを使用することによって、少なくとも部分的に付加製造により製造される。
【0042】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、部分的にのみ付加製造によって製造される。
【0043】
一実施例では、デブリフィルタ18の第1の部分が製造され、デブリフィルタ18の第2の部分が付加製造により第1の部分上に構築される。
【0044】
第1の部分は好ましくは、付加製造方法ではない製造方法を用いて製造される。第1の部分は、例えば鍛造金属板の従来のフライス加工または鋳造によって製造される。
【0045】
別の実施例では、デブリフィルタ18の第1の部分および第2の部分が別個に製造され、第1の部分および第2の部分の各々が、付加製造によってそれぞれに製造され、第1の部分および第2の部分はその後共に組立てられて、デブリフィルタ18が得られる。
【0046】
以上の実施例において、第1の部分は例えば金属製である。第2の部分は、例えば金属製である。第1の部分の金属と第2の部分の金属は、同じ金属または異なる金属である。
【0047】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、全体が付加製造によって製造される。したがって、デブリフィルタは、付加製造によって得られる単一の材料部片に一体的に作られる。
【0048】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、下部ノズル8とは別個に製造され、その後下部ノズル8に組立てられる。
【0049】
例えば、底端部分20を製造する方法には、ノズル部分24、下部タイプレート22およびデブリフィルタ18を別個に製造するステップと、その後それらを組立てるステップが含まれる。
【0050】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、付加製造により下部ノズル8上に構築される。
【0051】
製造方法には、例えば、下部タイプレート22を製造するステップ、その後付加製造により下部タイプレート22上にデブリフィルタ18を構築するステップ、そして次に下部タイプレート22にノズル部分24を組立てるステップが含まれる。
【0052】
代替的には、製造方法には、例えばノズル部分24を製造するステップ、その後付加製造によりノズル部分上にデブリフィルタ18を構築するステップ、そして次に下部タイプレート22をノズル部分24に組立てるステップが含まれる。
【0053】
図2に例示されているように、一実施形態において、デブリフィルタ18は、長手方向軸Lに沿ってノズル部分24の内部空間36の広がりEの大部分にわたり、長手方向軸Lに沿って延在する。
【0054】
少なくとも部分的に付加製造によりデブリフィルタ18を製造することにより、デブリフィルタ18を通って流れる冷却材流体の圧力損失を制限しながら、濾過効率を改善するための厚いデブリフィルタ18を提供することが可能になる。
【0055】
ノズル部分24は、ここでは上部区分32と下向きに先細になった下部区分34を含む。
【0056】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、ノズル部分24の上部区分32内で、少なくともノズル部分24の下部区分34まで下へ、延在している。
【0057】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、ノズル部分24の上部区分32内そして下部区分34の少なくとも一部分の中に延在する。
【0058】
図2に例示されている具体的実施形態において、デブリフィルタ18は、ノズル部分24の下部入口26と上部出口28の間の下部ノズル8の内部空間36を完全に占有している。
【0059】
デブリフィルタ18は、入口面18A、および入口面18Aと反対側の出口面18Bを含む。使用中、冷却材流体は、入口面18Aを介してデブリフィルタ18内に進入し、出口面18Bを介してデブリフィルタから退出する。入口面18Aは、ノズル部分24の下部入口26に近接しており、出口面18Bは下部タイプレート22に面している。
【0060】
デブリフィルタ18は、多孔質であるかまたは透かし加工を有し、冷却材流体内に含まれるデブリを保持する一方で、冷却材流体がデブリフィルタを通過できるようにする。デブリフィルタ18は、冷却材流体が入口面18Aから出口面18Bまでデブリフィルタ18を通って流れることができるようにするための流れ開口部を含む。流れ開口部の寸法よりも大きい寸法を有するデブリが、デブリフィルタ18によって保持されることになる。
【0061】
デブリフィルタ18は、デブリフィルタ18が保持できる最小デブリのサイズに対応する保持能力を有する。保持能力が高くなればなるほど、デブリフィルタ18によって保持される最小デブリのサイズは小さくなる。
【0062】
デブリフィルタ18は、流れ開口部の寸法よりも大きい寸法を有するデブリを保持することになる。流れ開口部の寸法が小さくなればなるほど、デブリフィルタ18の保持能力は高くなる。
【0063】
一実施形態において、デブリフィルタ18は、入口面18Aから出口面18Bまで変動する保持能力、より具体的には、デブリフィルタ18の入口面18Aから出口面18Bまで漸増する能力を有する。
【0064】
デブリフィルタ18の厚みを通って保持能力を漸増させることを考慮して、デブリフィルタ18は、例えば、デブリフィルタ18の入口面18Aから出口面18Bまでデブリフィルタ18を通って漸減する寸法を有する流れ開口部を有する。
【0065】
保持能力の漸増に伴って、最大のデブリは、デブリフィルタ18の入口面18Aに近接して保持され、最小のデブリ18は、デブリフィルタ18内に進入するもののデブリフィルタ18の出口面に近接して保持される。
【0066】
このような構成の1つの利点は、より低い保持能力および/またはより大きい寸法の流れ開口部を伴うデブリフィルタの層または部分に、より高い保持能力および/またはより小さい寸法の流れ開口部を伴うデブリフィルタの層または部分に比べて、機械的により高い強度を持たせることができる、ということにある。より高い保持能力を伴う層には、流れ開口部の数を最大にし、デブリフィルタ18を通した圧力損失を制限するためにより低い保持能力を伴う層の壁よりも薄い壁を具備することができる。
【0067】
デブリフィルタ18の付加製造は、デブリフィルタ18の保持能力を容易に調整すること、および特に、入口面18Aから出口面18Bまで変動する保持能力、詳細には入口面18Aから出口面18Bまで徐々にまたは段階的に増大する保持能力を伴うデブリフィルタ18を、製造コストの制限および圧力損失の制限をしながら提供すること、を可能にする。
【0068】
デブリフィルタ18の保持能力は、例えば、デブリフィルタ18の入口面18Aから出口面18Bまで徐々にまたは段階的に増大する。例えば、デブリフィルタ18は、デブリフィルタ18の入口面18Aから出口面18Bまで徐々にまたは段階的に変動する寸法を有する流れ開口部を有する。
【0069】
図2に例示されている実施例において、デブリフィルタ18は、入口面18Aから出口面18Bまで段階的に増大する保持能力を有する。例えば、デブリフィルタ18は、入口面18Aから出口面18Bまで段階的に変動する寸法を有する流れ開口部を有する。
【0070】
デブリフィルタ18は、例えば入口面18Aから出口面18Bまで複数の濾過層40、42、44を有し、入口面18Aから出口面18Bまでの濾過層を考慮した場合、各々の後続層は先行層に比べより高い保持能力を有している。
【0071】
各々の濾過層40、42、44は、例えば、この濾過層40、42、44の厚みを通して一定の保持能力を有する。
【0072】
入口面18Aから出口面18Bまでの濾過層を考慮した場合に、各々の後続する濾過層は例えば、先行する濾過層のものに比べてより小さい寸法の流れ開口部を有する。
【0073】
こうして、デブリフィルタ18は少なくとも、より低い保持能力を有する入口面18Aに近接する入口濾過層40と、デブリフィルタ18の出口面18Bに近接する出口濾過層44とを有する。入口濾過層40は、例えば、出口濾過層44の流れ開口部よりも大きい寸法の流れ開口部を有する。
【0074】
一実施形態において、デブリフィルタは、正確に2つの濾過層、すなわち入口濾過層40と出口濾過層44を有する。
【0075】
別の実施形態において、デブリフィルタ18は、入口濾過層40と出口濾過層44の間に置かれた少なくとも1つの中間濾過層42を有する。
【0076】
図2に示されている実施例において、デブリフィルタ18は、正確に1つの中間濾過層42を有する。変形形態において、デブリフィルタ18は、3つ以上の中間濾過層と4つ以上の濾過層を有する。
【0077】
製造方法の一実施形態において、異なる保持能力を伴うデブリフィルタ18の濾過層40、42、44は、付加製造によって1つの材料部片に一体的に製造される。この場合、デブリフィルタ18は、付加製造によって1つの材料部片に一体的に製造される。
【0078】
別の実施形態において、少なくとも2つの濾過層40、42、44は、別個に製造され、その後少なくとも2つの濾過層40、42、44は共に組立てられて、デブリフィルタ18が得られる。組立ては、例えば、溶接、ボンディング、ネジ留め、リベット留めなどで行なわれる。
【0079】
図3に示されているように、一実施形態において、デブリフィルタ18は、徐々に増大する保持能力を有する。
【0080】
徐々に増大する保持能力を伴うデブリフィルタ18は、入口面18Aから出口面18Bまでの保持能力の勾配を示す。デブリフィルタ18の流れ開口部は、例えば、入口面18Aから出口面18Bまで減少する寸法の勾配を示す。
【0081】
付加製造によるデブリフィルタ18の製造は、デブリフィルタを通した圧力損失を制限させる一方で、濾過を改善し得る複雑な3次元形状をデブリフィルタ18に付与することを可能にする。
【0082】
図4~6は、付加製造により得ることのできる複雑な3次元形状を伴うデブリフィルタ18の一実施例を示している。
【0083】
図4~6に示されているように、デブリフィルタ18は、入口面18Aおよび出口面18Bを有する。
【0084】
デブリフィルタ18にはその入口面18A上に、複数の突出する濾過構造50が具備されている。各濾過構造50は、冷却材流体が、デブリを捕捉しながら濾過構造50を通って流動できるようにするために構成されている。
【0085】
各々の濾過構造50は、中空である。各濾過構造50は、構造軸Aに沿って離隔された構造基部52と構造頂部54、および、間に画定用スロット58を伴い構造軸Aの周りで円周方向に分布した複数のブレード56を有する。各ブレード56は、構造基部52に連結された一端部と、構造頂部54に連結された一端部を有する。各ブレード56は、2つの近接するブレード56の各々とそれぞれのスロット58を画定しながら、2つの近接するブレード56間で円周方向に位置設定される。
【0086】
各ブレード56は、自由である2つの側方縁部を有する。各ブレード56は、それぞれ構造基部52および構造頂部54に連結されたその2つの端部の間でブリッジのように延在する。
【0087】
各濾過構造50は、構造基部52から構造頂部54まで先細になっている全体的形状を有する。構造軸Aに対して横断方向に取った、各濾過構造50の横断方向寸法は、構造基部52から構造頂部54まで構造軸Aに沿って漸減する。各濾過構造50は例えば、全体的にオジーブ形状を有する。
【0088】
複数の濾過構造50の構造軸Aは、好ましくは平行である。各濾過構造50の構造軸Aは、好ましくは、デブリフィルタ18の出口面18Bに対して実質的に直交している。各濾過構造50の構造軸Aは好ましくは、デブリフィルタ18が上に組付けられた時点で、核燃料集合体2の長手方向軸に対して平行である。
【0089】
濾過構造50の構造基部52は、共に連結されている。構造基部52は、デブリフィルタ18の出口面18Bを画定するデブリフィルタ18の出口部分60を共に画定している。
【0090】
濾過構造50は、デブリフィルタ18の入口面18Aに対して3次元形状を付与する。デブリフィルタ18の出口面18Aは、例えば実質的に平担である。デブリフィルタの出口面18Aには、冷却材流体がデブリフィルタ18から退出できるようにするための出口開口部62が具備されている。
【0091】
各々の濾過構造50は、構造基部52および構造頂部54により構造軸Aに沿って境界画定されかつブレード56によって側方で境界画定されている捕捉用体積を、境界画定している。
【0092】
ブレード56間で境界画定されたスロット58は、冷却材流体が濾過構造50の内側に進入できるようにしており、出口面18B内に設けられた出口開口部62は、冷却材流体が濾過構造50から、ひいてはデブリフィルタ18から退出できるようにしている。
【0093】
デブリフィルタ18の出口面18Bは、例えば、異なる横断方向に延在する複数の細長い出口開口部62を提示している。有利には、
図5に示されているように、各々の濾過構造50のブレード56は、近接するブレード56間に円周方向の重複部分を伴って、構造軸Aの周りに分布させられている。
【0094】
各ブレード56は、
図5上で矢印Vによって例示されているように、構造軸Aとの関係において半径方向である方向で見た場合に、各々の近接するブレード56と重複している。換言すると、スロット58は、構造軸Aとの関係において半径方向である方向で見た場合に、見通せるものではない。
【0095】
好ましくは、各々の濾過構造50は、濾過構造50を通って流れる冷却材流に対して、濾過構造50の構造軸Aの周りでサイクロン効果または渦を発生させるように構成される。
【0096】
このような濾過構造50は、フレッティングメカニズムのため核燃料集合体2にとって非常に危険である小さなワイヤの形状のデブリを捕捉するのに、特に効率的である。サイクロン効果のため、このようなデブリは、濾過構造50内に押圧され、こうして濾過構造50から退出しないよう防止される可能性が高い。
【0097】
1つの例示的実施形態において、各濾過構造50のブレード56は、冷却材流に対して、濾過構造50の構造軸Aの周りでサイクロン効果または渦を発生させながら、循環効果を生成するように構成されている。
【0098】
図4を見れば分かるように、有利には、各々の濾過構造50のブレード56は、構造軸Aの周りで螺旋状に延在している。これにより、デブリフィルタ18の入口面に達した時点での長手方向に方向づけされた細長いデブリの捕捉が改善される。
【0099】
螺旋構造は、サイクロンのように作用し、デブリを濾過構造50内へと外向きに投出する。
【0100】
さらに、このようなデブリ構造50は、デブリフィルタ18の下流側の冷却材流に対して横断方向速度を付与しながら冷却材流を偏向させる傾向を有する。こうして、冷却材流体と核燃料棒4の間の熱交換を促進することができる。
【0101】
デブリフィルタ18は、圧力損失を制限しながらデブリを濾過するのに非常に効率が良い。デブリフィルタは、複雑な形状を有するが、付加製造によって容易に製造可能である。
【0102】
少なくとも濾過構造50は、付加製造によって製造される。一実施形態において、デブリフィルタ全体は、付加製造によって製造される。別の実施形態では、プレート形状の部分60が提供され、その後、濾過構造50の残りの部分が、付加製造によりプレート形状の部分50の上に構築される。
【0103】
図7に示されている1つの例示的実施形態において、デブリフィルタ18は、
図4および5に関連して説明した通り、デブリフィルタ18の入口面18A上で濾過構造50を組合わせることができ、保持能力は、濾過構造50とデブリフィルタ18の出口面18Bとの間で徐々にまたは段階的に増大している。
【0104】
このようなデブリフィルタ18は、例えば、入口面18Aから突出する濾過構造50により画定された濾過入口区分18C、および濾過構造50と出口面との間に延在する濾過出口区分18Dを含み、出口面18Bに向かって徐々にまたは段階的に増大する保持能力を示す。
【0105】
出口区分18Dは、例えば濾過構造50の入口区分18Cと出口面18Bの間に位置設定された単数または複数の濾過層を含み、これらが、例えば徐々に増大する保持能力の1つの濾過層、または漸進的に増大する保持能力の複数の重ね合わせた濾過層を画定し、出口区分18Dまで段階的に増大する保持能力を付与している。
【0106】
さらに、デブリフィルタは、濾過構造50とは異なる、上流側または下流側に位置設定された別の濾過区分と結び付けられた徐々にまたは段階的に増大する保持能力を示す濾過区分を有することができる。概して、デブリフィルタ18は、入口面18Aの側から出口面18Bの側まで徐々にまたは段階的に増大する保持能力を示す濾過区分を少なくとも含むことができる。
【0107】
本発明は、以上で説明し例示した実施例に限定されない。他の実施例も、企図することができる。
【0108】
特定のデブリ設計(増大する保持能力および/または、ブレードおよび/またはサイクロン効果を伴う濾過構造)を伴う、以上で説明し例示したデブリフィルタ18は、付加製造が関与しない他の従来の製造方法を用いて製造することができる。その上、本発明は、BWR核燃料集合体に限定されない。より一般的には、これは、軽水炉(LWR)核燃料集合体に適用可能である。詳細には、加圧水型原子炉(PWR)核燃料集合体に適用可能である。
【0109】
図1のものと同一のまたは類似の要素に対する参照番号が同じである
図7は、PWR核燃料集合体を例示している。
【0110】
核燃料集合体は、長手方向軸Lに沿って延在する燃料棒4の束および燃料棒4を維持するアーマチュア6を含む。
【0111】
アーマチュア6は、長手方向軸Lに沿って離隔された下部ノズル8と上部ノズル10、下部ノズル8および上部ノズル10に連結されたガイド管63、およびガイド管63に取付けられた状態でガイド管63に沿って分布させられたスペーサグリッド12を含む。
【0112】
下部ノズル8には、デブリフィルタ18が具備されている。下部ノズル8は、エッグクレートプレート64およびエッグクレートプレート64のコーナから下向きに延在する脚部66を有する。使用中、核燃料集合体2は、脚部66を介して下部炉心板上に載置される。
【0113】
デブリフィルタ18は、エッグクレートプレート64の下方で下部ノズル8に取付けられる。デブリフィルタ18はこうして、エッグクレートプレート64の上流側に位置設定される。デブリフィルタ18は、脚部66の間に位置設定される。
【0114】
デブリフィルタ18は、BWR核燃料集合体に関連して説明された実施例の通りであり得る。
【0115】
以上で説明した、少なくとも部分的に付加製造によってデブリフィルタ18を製造する方法、および例示的実施形態および変形形態(下部ノズル上への付加製造、付加製造によって得られ組立てられるか、または付加製造によって一体的に形成される層など)は、デブリフィルタの形状とは無関係に有利である。
【0116】
したがって、概して、本発明は、下部ノズルによって支持されたデブリフィルタが具備された下部ノズルを含む核燃料集合体の底端部分のためのデブリフィルタを製造する方法において、デブリフィルタが入口面および入口面とは反対側の出口面を有しており、少なくとも部分的に付加製造によってデブリフィルタを製造するステップを含む方法にも関する。
【符号の説明】
【0117】
2 核燃料集合体
4 燃料棒
8 下部ノズル
18 デブリフィルタ
18A 入口面
18B 出口面
40、42、44 濾過層
50 濾過構造
52 構造基部
54 構造頂部
56 ブレード
58 スロット
A 構造軸