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特許7535108中赤外光透過ガラス用組成物およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】中赤外光透過ガラス用組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/10 20060101AFI20240807BHJP
   C03C 3/12 20060101ALI20240807BHJP
   C03B 19/02 20060101ALI20240807BHJP
   C03B 25/02 20060101ALI20240807BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C03C4/10
C03C3/12
C03B19/02 Z
C03B25/02
G02B1/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022528175
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2021005004
(87)【国際公開番号】W WO2021221376
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0050852
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515284009
【氏名又は名称】コリア フォトニクス テクノロジー インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チュ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イン、チョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン フン
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0057142(US,A1)
【文献】特開2016-088761(JP,A)
【文献】特開2016-088760(JP,A)
【文献】特開2007-008802(JP,A)
【文献】特表平07-508968(JP,A)
【文献】特開平05-229847(JP,A)
【文献】Y.Benmadani et al.,Erbium doped tellurite glasses with improved thermal properties as promising candidates for laser action and amplification,Optical Materials ,2013年,Vol.35,pp.2234-2240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3~5μmの波長帯域の光を60%以上透過させるガラス用組成物において、
TeOを70mol%、Laを10mol%、ZnOを5~15mol%、およびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dopant)を5~15mol%含み、
前記ドーパントは、Nb、であり、
前記ガラス用組成物の、結晶化温度とガラス転移温度との差である熱的安定性は、170℃以上であり、
前記ガラス用組成物の熱膨張係数は、15*10-6/K未満であることを特徴とするガラス用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中赤外線波長帯域の光を透過させるガラス用組成物およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記述された内容は単に本発明の一実施例に関する背景情報を提供するだけであり、従来技術を構成するものではない。
【0003】
中赤外線透過レンズは、主に、ミサイルの追跡などのための映像処理目的で軍需分野で主に用いられてきた。軍需分野で用いられる中赤外線透過レンズは高温の環境でも優れた性能を維持しなければならないため、ゲルマニウム(Germanium)などの結晶が1つずついちいちレンズの形状に成形されることにより製造された。このため、素材も高価であり、生産性も低くて、このような軍需用中赤外線透過レンズが民需分野に用いられるには困難があった。
【0004】
一方、民需分野においてもスマートフォンなどの小型端末に装着されて使用可能な外付け型赤外線レンズの需要が増加している。このため、従来の赤外線透過レンズはカルコゲナイド(Chalcogenide)素材で製造されて、赤外線を透過させなければならない多様な分野で用いられてきた。
【0005】
しかし、カルコゲナイドは中赤外線(3μm~5μm)と遠赤外線(15μm以上)を透過させることができるので、中赤外線透過レンズとしては可能な素材である。しかし、カルコゲナイドは350℃程度の著しく低いガラス転移温度を有するため、溶鉱炉、ガラス製造工場、高温工程を含む産業環境ではカルコゲナイドガラスレンズが使用できない。要約すれば、カルコゲナイド素材の赤外線透過レンズは、通常の温度環境では円滑に動作できるが、数百℃以上の高温環境ではレンズ形状および光学的特性が大きく変化して円滑に動作できない問題がある。例えば、高い温度の素材を処理する工場や溶鉱炉などでは前述した特性のため、従来の高価な結晶質素材を適用した赤外線透過レンズが用いられなければならない。このため、相対的に遠赤外線カメラに比べて高分解能の中赤外線カメラは軍需でのみ適用されてきており、民需市場への市場拡大が困難であった。
【0006】
したがって、民需分野の多様な環境でも適用できるように、既存のGe、ZnS、ZnSeまたは結晶質素材を代替することができ、モールド成形工程を適用して相対的に安価でありながらも、量産性に優れた中赤外線透過レンズに多くの需要が発生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施例は、優れた光学的特性を有すると同時に、優れた物理的特性をすべて確保するレンズとして製造できる中赤外光透過ガラス用組成物およびその製造方法を提供することを一つの目的とする。
【0008】
また、本発明の一実施例は、優れた光学的特性と物理的特性を有しながらもレンズとして量産できる中赤外光透過ガラス用組成物およびその製造方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、LaおよびZnOをそれぞれ既定の含有量だけ含むガラス用組成物を提供する。
【0010】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを55~80mol%だけ、Laを5~10mol%だけ、ZnOを10~40mol%だけ含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、LaおよびBaOをそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物を提供する。
【0012】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを70~80mol%だけ、Laを10mol%だけ、BaOを10~20mol%だけ含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、BaOおよびZnOをそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物を提供する。
【0014】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを50~70mol%だけ、BaOを5~20mol%だけ、ZnOを20~30mol%だけ含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、ZnO、Laおよびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物を提供する。
【0016】
本発明の一側面によれば、前記ドーパントは、Nb、MoOまたはZnFであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを65~70mol%だけ、ZnOを5~20mol%だけ、Laを10mol%だけ、前記ドーパントを5~15mol%だけ含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、BaO、ZnOおよびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物を提供する。
【0019】
本発明の一側面によれば、前記ドーパントは、NbまたはMoOであることを特徴とする。
【0020】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを60mol%だけ、BaOを10mol%だけ、ZnOを20~25mol%だけ、前記ドーパントを5~10mol%だけ含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、TeO、BaO、Laおよびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物を提供する。
【0022】
本発明の一側面によれば、前記ドーパントは、NbまたはMoOであることを特徴とする。
【0023】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物は、TeOを70mol%だけ、BaOを5~15mol%だけ、Laを10mol%だけ、前記ドーパントを5~15mol%だけ含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の一側面によれば、中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物を製造する方法において、TeOを含む既定の原材料をそれぞれ既定の含有量だけ含んで混合する混合過程と、前記混合過程で混合された材料を第1既定温度で第1既定時間溶融する溶融過程と、前記溶融過程で溶融した材料を第1既定環境でモールドにアニーリングするアニーリング過程とを含むことを特徴とするガラス用組成物の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一側面によれば、前記ガラス用組成物の製造方法は、前記混合過程で混合された材料を既定の容器に装入して、第2既定環境に第2既定時間露出する露出過程をさらに含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の一側面によれば、前記既定の原材料は、La、BaOおよびZnOのいずれか2つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、優れた光学的特性を有すると同時に、優れた物理的特性をすべて確保するレンズとして製造できるというメリットがある。
【0028】
また、本発明の一側面によれば、中赤外光透過ガラス用組成物がレンズに製造されるにあたり、量産性を確保できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を製造する方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す3成分系である。
図3】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図4】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、ピーク温度および熱的安定性を示すグラフである。
図6】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図7】本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す3成分系である。
図9】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図10】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図11】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、ピーク温度および熱的安定性を示すグラフである。
図12】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図13】本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
図14】本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図15】本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図16】本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図17】本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図18】本発明の第4実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図19】本発明の第4実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図20】本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図21】本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図22】本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図23】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図24】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図25】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図26】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図27】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図28】本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
図29】本発明の第7実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図30】本発明の第7実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図31】本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図32】本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図33】本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図34】本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図35】本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
図36】本発明の第9実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図37】本発明の第9実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図38】本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図39】本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
図40】本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図41】本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
図42】本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
図43】本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図44】本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図45】本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図46】本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
図47】本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図48】本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図49】本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図50】本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
図51】本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
図52】本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図53】本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図54】本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図55】本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
図56】本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
図57】本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
図58】本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
図59】本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は多様な変更が加えられて様々な実施例を有することができるが、特定の実施例を図面に例示して詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。各図面を説明するに際して、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。
【0031】
第1、第2、A、Bなどの用語は多様な構成要素を説明するのに使われるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、同様に、第2構成要素も第1構成要素と名付けられてもよい。および/またはという用語は、複数の関連する記載項目の組み合わせまたは複数の関連する記載項目のいずれかの項目を含む。
【0032】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いたり「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されていたり、または接続されていてもよいが、中間に他の構成要素が存在してもよいと理解されなければならない。これに対し、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いたり「直接接続されて」いると言及された時において、中間に他の構成要素が存在しないことが理解されなければならない。
【0033】
本出願で使った用語は単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0034】
他に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含む、ここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。
【0035】
一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0036】
また、本発明の各実施例に含まれた各構成、過程、工程または方法などは、技術的に相互矛盾しない範囲内で共有できる。
【0037】
図1は、本発明の一実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を製造する方法を示すフローチャートである。
【0038】
ガラス用組成物は、後述する製造工程を経て中赤外光透過ガラスに製造される。中赤外光透過ガラスは、特に、入射する光のうち中赤外線波長帯域の光に対しては既定の基準値以上の透過率を有する。中赤外光透過ガラスは、軍需分野だけでなく、化学ガス、霧、海霧が濃くて肉眼では物体の識別が困難な環境や、工場または溶鉱炉のように高温の物体が漏れるか否かなどを監視しなければならない環境などの民需分野においても多様な形態で採用されて使用可能である。この時、中赤外光透過ガラスが各分野で使用されるためには、ガラス自体としても使用できるが、ガラスにおいてレンズなどの光学部品に成形されて用いられる場合がより多い。このため、本発明の一実施例による中赤外光透過ガラス用組成物それぞれが既定の比率だけ混合されて後述する製造過程を経ることにより、優れた光学的特性とともに、優れた物理的特性も確保した中赤外光透過レンズとして量産できる。
【0039】
既定の原材料をそれぞれ既定の含有量だけ含んで混合する(S110)。
【0040】
ガラス用組成物を構成する原材料は、主成分と、ドーパント(Dophant)とを含む。主成分は、原材料が中赤外光透過ガラス用組成物または中赤外光透過ガラスに製造されるために必須に含まれるべき成分である。主成分としてTeOは必須に含まれ、Zno、BaoおよびLaのいずれか2つが選択的に含まれる。選択される成分によって、各主成分の含まれる含有量が可変する。主成分としてTeO、LaおよびZnOが含まれる場合、TeOは55~80mol%の範囲内で、Laは5~10mol%の範囲内で、ZnOは10~40mol%の範囲内でそれぞれ含まれる。主成分としてTeO、LaおよびBaOが含まれる場合、TeOは70~80mol%の範囲内で、Laは10mol%だけ、BaOは10~20mol%の範囲内でそれぞれ含まれる。主成分としてTeO、BaOおよびZnOが含まれる場合、TeOは50~70mol%の範囲内で、BaOは5~20mol%だけ、ZnOは20~30mol%の範囲内でそれぞれ含まれる。選択された成分が前述した含有量通り原材料の主成分として含まれることにより、ガラス形成領域を確保することができる。また、選択された成分の含有量が適宜調整される場合、最終的に製造される中赤外光レンズは、優れた中赤外光透過率、熱的安定性または屈折率などの光学的特性を確保することができる。屈折率が増加するほど、中赤外光レンズは薄い厚さに設計可能で、薄型構造の光学系に作製できる。また、レンズの面の深さ(形状)が小さく設計可能で、レンズの作製歩留まりが向上できる。
【0041】
ガラス用組成物を構成する原材料として、主成分とともに、ドーパントも追加的に含まれる。ドーパントは、製造される中赤外光透過レンズの光学的特性は阻害することなく、ガラスが所望する物理的特性、例えば、硬度などを追加的に具備できるようにする成分である。ドーパントとしては、ZnF、MoOまたはNbのいずれか1つが含まれる。主成分として選択された成分と各成分の含有量に応じて、適切なドーパントが適切な含有量だけ選択されて添加される。適切なドーパントが適切な含有量だけ選択されて添加される場合、製造される中赤外光透過レンズの光学的特性は阻害することなく、ガラスが所望する物理的特性が向上できる。
【0042】
主成分、または主成分とドーパントとを含む各原材料は混合される。混合においてはボールミル機(Ball-Milling)が利用可能である。各原材料は、容器、例えば、ナルゲン瓶(Nalgene Bottle)に入り、一定の素材量と一定の体積を有するジルコニアボールによって混合される。原材料は前述した混合過程を経ることができ、既定時間(例えば、1時間)混合される。
【0043】
混合された材料を容器に装入して、第1既定環境で第1既定時間露出する(S120)。
【0044】
前述した過程によって混合された原材料は既定の容器に装入される。ここで、既定の容器は、基準値以上の大きさを有する白金ルツボであってもよい。特に、白金ルツボは、基準値、例えば、2,000cc以上の大きさを有する。原材料がガラス用組成物やガラスに製造されるにあたり、製造されたガラス粒子が一定の大きさ以上大きくなってこそ(バルクアップ)、ガラスを用いて光学部品に成形するに際しても歩留まりに優れることができる。しかし、混合された原材料が一定の基準値(大きさ)以下の容器に装入されて後述する工程を経る場合、製造されるガラス粒子が過度に微細になる。このように製造されたガラス用組成物やガラスは、光学部品への成形に不適であるので、混合された材料は既定の容器に装入される。
【0045】
混合された材料が容器に装入された後、第1既定環境で第1既定時間露出する。第1既定環境は、窒素雰囲気下、300℃前後の温度を有することができる。例えば、このような環境は、原材料が装入された容器(白金ルツボ)が窒素雰囲気の電気炉に装着され形成される。このように、原材料が第1既定環境に露出し、表面水が除去される。原材料中に含まれたOH基は、中赤外線波長帯域の光を吸収する性質を有して、製造されたガラスまたはそれから成形された光学部品の中赤外線透過率を低下させる問題を起こす。このため、容器に装入された原材料が第1既定環境に露出し、原材料中のOH基が除去される。原材料中のOH基が十分に除去できるように、原材料は、第1既定環境で第1既定時間(例えば、1時間)露出する。
【0046】
混合された材料を第1既定温度で第2既定時間溶融する(S130)。表面水の除去過程を経た材料は、第1既定温度、例えば、900℃前後で第2既定時間、例えば、2時間~4時間溶融する。
【0047】
溶融した材料をモールドに成形した後、第2既定環境でアニーリングする(S140)。溶融した材料はモールドにキャスティング(Casting)された後、プレッシング(Pressing)などの成形過程を経る。成形過程を経た材料は、第2既定環境でアニーリングされ、中赤外光透過ガラスに製造される。この時、溶融した材料は急冷工程を経てガラス化になるが、急冷工程で内部に応力が発生する。溶融した材料は、第2既定環境でアニーリングされ、応力を解消する。ここで、第2既定環境は、原材料に含まれた主材料によるガラス転移温度(Tg)から既定温度(例えば、10~20度またはそれ以上)以上の温度を有する。溶融した材料は、第2既定環境の温度から室温(Room Temperature)までアニーリングされ、中赤外光透過ガラス用組成物または中赤外光透過ガラスに製造される。
【0048】
図2は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す3成分系である。
【0049】
本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第1組成物」と略称する)は、原材料としてTeO、LaおよびZnOを含んで製造される。第1組成物の製造のために、TeO、LaおよびZnOは、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:80mol%、La:10mol%、ZnO:10mol%
2)TeO:70mol%、La:10mol%、ZnO:20mol%
3)TeO:60mol%、La:10mol%、ZnO:30mol%
4)TeO:55mol%、La:5mol%、ZnO:40mol%
【0050】
各第1組成物を製造するにあたり、ZnOの含有量を可変し、ZnOの含有量の変化に伴い、TeO、またはTeOとLaの含有量をともに可変した。
【0051】
各原材料を前述した含有量分ずつ含む第1組成物で実現されたガラスは、図3に示されている。
【0052】
図3は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0053】
図3の(a)~(d)は、各第1組成物で実現されたガラスを示す。図3の(a)~(d)を参照すれば、各第1組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0054】
図4は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。第1組成物および以下に言及される組成物の透過率はFTIR/UV-VIS Spectrometerで測定された。
【0055】
各第1組成物は、図4に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第1組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に70%以上の高い透過率を示した。このため、各第1組成物は、中赤外光透過ガラスに実現されるのに適した性質を有する。さらに、各第1組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティング(AR:Anti-Reflection)が行われる。各第1組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、より優れた中赤外光透過率を確保することができる。
【0056】
図5は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、ピーク温度および熱的安定性を示すグラフである。第1組成物および以下に言及される組成物のガラス転移温度およびピーク温度は、パウダーの試験片サイズでTG-DTA(STA409PC、NETZSCH)で測定された。
【0057】
熱的安定性は、結晶化温度(T)とガラス転移温度(T)との差で演算される因子であって、製造されたガラスが光学部品に成形されるに際して結晶化が進行するか否かを判別できる因子である。ガラスは再加熱されて軟化した後、モールディングなどを経て、所望の形態(例えば、レンズ形態)に冷却して光学部品に成形される。この過程でガラスを形成する組成物の熱的安定性が低ければ、軟化した後、冷却される過程でガラスに結晶化が発生する。結晶化は入射する光を分散させて、ガラスの透過度を低下させる原因になる。
【0058】
このため、熱的安定性が高くてこそ、組成物で実現されたガラスが光学部品に成形されるに際して結晶化なしに優れた光学的特性を有することができ、量産性にも優れることができる。通常、熱的安定性が100℃以上であれば、光学部品への成形過程で結晶化がうまく行われず、当該組成物は熱的安定性があると判断される。さらに、熱的安定性が130℃以上であれば、当該組成物は熱的安定性が非常に優れていると判断される。
【0059】
ただし、組成物の熱分析時、結晶化温度が明らかでない場合、ピーク温度(T)とガラス転移温度との差を利用して相対的な組成間の熱的安定性が評価される。
【0060】
図5に示されたグラフを参照すれば、第1組成物中にZnOの含有量が少ないほど、(ピーク温度とガラス転移温度との差を利用して演算された)熱的安定性が高くなる傾向を有する。特に、組成物にZnOが20mol%以下で含有された時、150℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができた。
【0061】
図6は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0062】
軟化温度とは、ガラス(ガラス用組成物)が成形のために、固形物であるガラス(第1組成物)が熱によって変形して軟化を起こし始める温度である。組成物の軟化温度が過度に高ければ、ガラス用組成物で実現されたガラスを光学部品に成形するに際して困難がありうる。このため、ガラスの光学部品としての量産性が低下する。また、軟化温度が過度に高い場合、ガラスの成形のために熱を加えて軟化させる過程でガラスに結晶化が進行してもよい。したがって、ガラス用組成物は、一定の基準値以下の軟化温度を有することが好ましい。ここで、基準値は、520℃であってもよい。
【0063】
図6に示されたグラフを参照すれば、第1組成物中にZnOがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値より著しく低い軟化温度を有し、特に、組成物にZnOが20mol%以下、または40mol%だけ含有された時、相対的により低い軟化温度を有することを確認することができた。
【0064】
図7は、本発明の第1実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。第1組成物および以下に言及される組成物の硬度は、マイクロビッカース硬度計(Mitutoyo、HM-220B)を用いて測定された。
【0065】
図7を参照すれば、第1組成物で実現されたガラスは、ZnOの含有量が増加するほど、硬度が硬くなる傾向を有する。ZnOの含有量が30mol%の場合、最も硬い硬度を有することを確認することができ、含有量に関係なく、第1組成物で実現されたガラスは335KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。
【0066】
各第1組成物が前述した含有量通り含まれてガラスに製造される場合、図4~7を参照して説明したように、優れた光学的特性と物理的特性を確保することを確認することができた。
【0067】
図8は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す3成分系である。
【0068】
本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第2組成物」と略称する)は、原材料としてTeO、LaおよびBaOを含んで製造される。第2組成物の製造のために、TeO、LaおよびBaOは、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:80mol%、La:10mol%、BaO:10mol%
2)TeO:70mol%、La:10mol%、BaO:20mol%
【0069】
各第2組成物を製造するにあたり、Baoの含有量を可変し、BaOの含有量の変化に伴い、TeOの含有量をともに可変した。
【0070】
各原材料を前述した含有量分ずつ含む第2組成物で実現されたガラスは、図9に示されている。
【0071】
図9は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0072】
図9の(a)および(b)は、各第2組成物で実現されたガラスを示す。図9の(a)および(b)を参照すれば、各第2組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0073】
図10は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0074】
各第2組成物は、図10に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第2組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に72%以上の高い透過率を示した。このため、各第2組成物は、中赤外光透過ガラスに実現されるのに適した性質を有する。さらに、各第2組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第2組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、ガラスは前述した透過率以上の中赤外光透過率を確保することができる。
【0075】
図11は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、ピーク温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0076】
図11に示されたグラフを参照すれば、第2組成物は、BaOの含有量に関係なく、すべて100℃以上の熱的安定性を有することを確認することができた。特に、第2組成物中にBaOの含有量が多ければ多いほど、組成物は高い熱的安定性を有する。
【0077】
図12は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0078】
図12に示されたグラフを参照すれば、第2組成物中にBaOがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(550℃)より著しく低い軟化温度を有することを確認することができた。第2組成物中にBaOの含有量が少ないほど、組成物はより低い軟化温度を有する。
【0079】
図13は、本発明の第2実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
【0080】
図13を参照すれば、第2組成物で実現されたガラスは、BaOの含有量が減少するほど、硬度が硬くなる傾向を有する。含有量に関係なく、第2組成物で実現されたガラスは320KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。
各第2組成物が前述した含有量通り含まれてガラスに製造される場合、図10~13を参照して説明したように、優れた光学的特性と物理的特性を確保することを確認することができた。
【0081】
図14は、本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0082】
本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第3組成物」と略称する)は、原材料としてTeO、BaOおよびZnOを含んで製造される。第3組成物の製造のために、TeO、BaOおよびZnOは、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:65mol%、BaO:5mol%、ZnO:30mol%
2)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:30mol%
3)TeO:55mol%、BaO:15mol%、ZnO:30mol%
4)TeO:50mol%、BaO:20mol%、ZnO:30mol%
5)TeO:70mol%、BaO:10mol%、ZnO:20mol%
【0083】
各第3組成物を製造するにあたり、ZnOの含有量を20~30mol%の範囲で可変し、ZnOの含有量の変化に伴い、TeOの含有量を50~70mol%の範囲で、Laの含有量を5~20mol%の範囲でともに可変した。ただし、ZnOの含有量が10mol%まで減少する場合、ガラスの製造過程で結晶化が発生する。
【0084】
各原材料を前述した含有量分ずつ含む第3組成物で実現されたガラスは、図15に示されている。
【0085】
図15は、本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0086】
図3の(a)~(e)は、各第3組成物で実現されたガラスを示す。図3の(a)~(e)を参照すれば、各第3組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0087】
図16は、本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0088】
図16に示されたグラフを参照すれば、第3組成物は、BaOの含有量に関係なく、すべて100℃以上の熱的安定性を有することを確認することができた。特に、第3組成物中にBaOの含有量が多ければ多いほど、組成物は高い熱的安定性を有する。
【0089】
図17は、本発明の第3実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0090】
図17に示されたグラフを参照すれば、第3組成物中にBaOがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(550℃)より著しく低い軟化温度を有することを確認することができた。第3組成物中にBaOの含有量が少ないほど、より低い軟化温度を有する。
【0091】
図18は、本発明の第4実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0092】
本発明の第4実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第4組成物」と略称する)は、原材料としてTeO、BaOおよびWOを含んで製造される。第4組成物の製造のために、TeO、BaOおよびWOは、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:80mol%、BaO:10mol%、WO:10mol%
2)TeO:70mol%、BaO:10mol%、WO:20mol%
3)TeO:60mol%、BaO:10mol%、WO:30mol%
【0093】
各第4組成物を製造するにあたり、WOの含有量を可変し、WOの含有量の変化に伴い、TeOの含有量をともに可変した。ただし、WOの含有量が30mol%を超えるか、BaOの含有量が10mol%を超える場合、ガラスの製造過程で結晶化が発生する。
【0094】
各原材料を前述した含有量分ずつ含む第4組成物で実現されたガラスは、図19に示されている。
【0095】
図19は、本発明の第4実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0096】
図19の(a)~(c)は、各第4組成物で実現されたガラスを示す。図19の(a)~(c)を参照すれば、各第4組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0097】
図20は、本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0098】
本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第5組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてMoOを含んで製造される。第5組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびMoOは、それぞれ70:(20-x):10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、ZnO:15mol%、La:10mol%、MoO:5mol%
2)TeO:70mol%、ZnO:10mol%、La:10mol%、MoO:10mol%
3)TeO:70mol%、ZnO:5mol%、La:10mol%、MoO:15mol%
【0099】
各第5組成物を製造するにあたり、MoOの含有量を可変し、MoOの含有量の変化に伴い、ZnOの含有量をともに可変した。
【0100】
図21は、本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0101】
図21の(a)~(c)は、各第5組成物で実現されたガラスを示す。図21の(a)~(c)を参照すれば、各第5組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0102】
図22は、本発明の第5実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0103】
各第5組成物は、図22に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第5組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長で平均的に75%以上の高い透過率を示した。第5組成物にはドーパントが追加的に含まれることにより、組成物の光学的性質のうち透過率が、相対的にドーパントが追加されない組成物に比べて優れていることを確認することができた。
【0104】
さらに、各第5組成物で実現されたガラスも同じく、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第5組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、組成物が前述した透過率以上の中赤外光透過率(例えば、94%)を確保することを確認することができる。
【0105】
図23は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0106】
本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第6組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてNbを含んで製造される。第6組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびNbは、それぞれ70:(20-x):10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、ZnO:15mol%、La:10mol%、Nb:5mol%
2)TeO:70mol%、ZnO:10mol%、La:10mol%、Nb:10mol%
3)TeO:70mol%、ZnO:5mol%、La:10mol%、Nb:15mol%
【0107】
各第6組成物を製造するにあたり、Nbの含有量を可変し、Nbの含有量の変化に伴い、ZnOの含有量をともに可変した。
【0108】
図24は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0109】
図24の(a)~(c)は、各第6組成物で実現されたガラスを示す。図24の(a)~(c)を参照すれば、各第6組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0110】
図25は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0111】
各第6組成物は、図25に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第6組成物は、中赤外線波長帯域である2~5μmの波長では、平均的に71%以上の高い透過率を示した。このため、各第6組成物は、中赤外光透過ガラスに実現されるのに適した性質を有する。すなわち、ドーパントとしてNbが含まれていても、ガラスの光学的性質を阻害しないことを確認することができた。さらに、各第6組成物で実現されたガラスも同じく、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第6組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、前述した透過率以上の中赤外光透過率を確保することができる。
【0112】
図26は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0113】
図26に示されたグラフを参照すれば、第6組成物は、Nbの含有量に関係なく、すべて170℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第6組成物中にNbの含有量が減少するほど、高い熱的安定性を有する。ドーパントであるNbが主材料とともに含まれることにより、組成物の熱的安定性に優れていることを確認することができる。
【0114】
図27は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0115】
図27に示されたグラフを参照すれば、第6組成物中にNbがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(550℃)より低い軟化温度を有することを確認することができた。第6組成物中にNbの含有量が少ないほど、組成物がより低い軟化温度を有する。
【0116】
図28は、本発明の第6実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
【0117】
熱膨張係数(CTE:Coefficient of thermal expansion)は、物体の温度が変化する時、物体の体積が変化する程度を意味する。ガラス用組成物またはガラスの熱膨張係数が高いという意味は、当該ガラスや当該ガラスで成形された光学部品が温度変化の多い環境に露出した場合、体積が意味のある水準まで変化できることを表す。ガラス用組成物またはガラスは温度の変化に鈍いことが好ましいので、ガラス用組成物またはガラスの熱膨張係数は一定の基準値以下であることが好ましい。ここで、基準値は、15(*10-6/K)であってもよい。
【0118】
図28に示されたグラフを参照すれば、第6組成物中にNbがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(15*10-6/K)より著しく低い熱膨張係数を有することを確認することができた。第6組成物中にNbの含有量が多いほど、組成物はより低い熱膨張係数を有する。
【0119】
図29は、本発明の第7実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0120】
本発明の第7実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第7組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、BaOおよびZnOを含み、ドーパント(Dophant)としてMoOを含んで製造される。第7組成物の製造のために、TeO、BaO、ZnOおよびMoOは、それぞれ60:10:(30-x):xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:25mol%、MoO:5mol%
2)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:22.5mol%、MoO:7.5mol%
3)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:20mol%、MoO:10mol%
【0121】
各第7組成物を製造するにあたり、MoOの含有量を可変し、MoOの含有量の変化に伴い、ZnOの含有量をともに可変した。
【0122】
図30は、本発明の第7実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0123】
図30の(a)~(c)は、各第7組成物で実現されたガラスを示す。図30の(a)~(c)を参照すれば、各第7組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0124】
図31は、本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0125】
本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第8組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、BaOおよびZnOを含み、ドーパント(Dophant)としてNbを含んで製造される。第8組成物の製造のために、TeO、BaO、ZnOおよびNbはそれぞれ60:10:(30-x):xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:25mol%、Nb:5mol%
2)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:22.5mol%、Nb:7.5mol%
3)TeO:60mol%、BaO:10mol%、ZnO:20mol%、Nb:10mol%
【0126】
各第8組成物を製造するにあたり、Nbの含有量を可変し、Nbの含有量の変化に伴い、ZnOの含有量をともに可変した。
【0127】
図32は、本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0128】
図32の(a)~(c)は、各第8組成物で実現されたガラスを示す。図32の(a)~(c)を参照すれば、各第8組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0129】
図33は、本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0130】
図33に示されたグラフを参照すれば、第8組成物は、Nbの含有量に関係なく、すべて190℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第8組成物中にNbの含有量が7.5mol%を基準として減少または増加するほど、高い熱的安定性を有する。ドーパントであるNbが主材料とともに含まれることにより、熱的安定性に優れていることを確認することができる。
【0131】
図34は、本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0132】
図34に示されたグラフを参照すれば、第8組成物中にNbがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(550℃)より著しく低い軟化温度を有することを確認することができた。第8組成物中にNbの含有量が7.5mol%だけ含まれた場合、最も低い軟化温度を有する。ドーパントであるNbが主材料とともに含まれることにより、軟化温度が非常に低くなったことを確認することができる。
【0133】
図35は、本発明の第8実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
【0134】
図35に示されたグラフを参照すれば、第8組成物中にNbがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(15*10-6/K)より著しく低い熱膨張係数を有することを確認することができた。第8組成物中にNbの含有量が多いほど、組成物はより低い熱膨張係数を有する。
【0135】
図36は、本発明の第9実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0136】
本発明の第9実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第9組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、BaOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてMoOを含んで製造される。第9組成物の製造のために、TeO、BaO、LaおよびMoOは、それぞれ70:(20-x):10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、BaO:15mol%、La:10mol%、MoO:5mol%
2)TeO:70mol%、BaO:10mol%、La:10mol%、MoO:10mol%
3)TeO:70mol%、BaO:5mol%、La:10mol%、MoO:15mol%
【0137】
各第9組成物を製造するにあたり、MoOの含有量を可変し、MoOの含有量の変化に伴い、BaOの含有量をともに可変した。
【0138】
図37は、本発明の第9実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0139】
図37の(a)~(c)は、各第9組成物で実現されたガラスを示す。図37の(a)~(c)を参照すれば、各第9組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0140】
図38は、本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0141】
本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第10組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、BaOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてNbを含んで製造される。第10組成物の製造のために、TeO、BaO、LaおよびNbは、それぞれ70:(20-x):10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、BaO:15mol%、La:10mol%、Nb:5mol%
2)TeO:70mol%、BaO:10mol%、La:10mol%、Nb:10mol%
3)TeO:70mol%、BaO:5mol%、La:10mol%、Nb:15mol%
【0142】
各第10組成物を製造するにあたり、Nbの含有量を可変し、Nbの含有量の変化に伴い、BaOの含有量をともに可変した。
【0143】
図39は、本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラスを示す図である。
【0144】
図39の(a)~(c)は、各第10組成物で実現されたガラスを示す。図39の(a)~(c)を参照すれば、各第10組成物はガラスに実現されるに際していずれも結晶化が進行していないことを確認することができた。
【0145】
図40は、本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0146】
図40に示されたグラフを参照すれば、第10組成物は、Nbの含有量に関係なく、すべて130℃以上の優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第10組成物中にNbの含有量が増加するほど、熱的安定性が高くなる傾向を示した。特に、Nbが10mol%だけ含まれた場合、組成物は200℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができる。
【0147】
図41は、本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度および軟化温度を示すグラフである。
【0148】
図41に示されたグラフを参照すれば、第10組成物中にNbがどれだけの含有量で含まれたとしても、すべて基準値(550℃)より低い軟化温度を有することを確認することができた。第10組成物中にNbの含有量が少ないほど、組成物はより低い軟化温度を有する。
【0149】
図42は、本発明の第10実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による熱膨張係数を示すグラフである。
【0150】
図42に示されたグラフを参照すれば、第10組成物中にNbが7.5mol%以上含まれる場合、基準値(15*10-6/K)より低い熱膨張係数を有することを確認することができた。第10組成物中にNbの含有量が多いほど、組成物はより低い熱膨張係数を有する。
【0151】
図43は、本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0152】
本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第11組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてZnFを含んで製造される。第11組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびZnFは、それぞれ70:(20-x):10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、ZnO:18.5mol%、La:10mol%、ZnF:1.5mol%
2)TeO:70mol%、ZnO:17.5mol%、La:10mol%、ZnF:2.5mol%
3)TeO:70mol%、ZnO:16.5mol%、La:10mol%、ZnF:3.5mol%
4)TeO:70mol%、ZnO:15mol%、La:10mol%、ZnF:5.0mol%
【0153】
各第11組成物を製造するにあたり、ZnFの含有量を可変し、ZnFの含有量の変化に伴い、ZnOの含有量をともに可変した。ただし、ZnFの含有量が5.0mol%を超える場合、ガラスの製造過程で結晶化が発生する。
【0154】
図44は、本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0155】
各第11組成物は、図44に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第11組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に69%以上の透過率を示した。このため、ドーパントとしてZnFが含まれていても、製造されるガラスの光学的特性は阻害しないことを確認することができた。さらに、各第11組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第11組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、組成物は前述した透過率以上の中赤外光透過率を確保することができる。
【0156】
図45は、本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0157】
図45に示されたグラフを参照すれば、第11組成物は、ZnFの含有量に関係なく、すべて150℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第11組成物中にZnFの含有量が増加するほど、熱的安定性が減少する傾向を示した。
【0158】
図46は、本発明の第11実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
【0159】
図46に示されたグラフを参照すれば、ドーパントとしてZnFが含まれた組成物(TZL-ZF(A))は、ドーパントが添加されず、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含む組成物(TZL)より、屈折率は減少し分散値は増加した光学的特性(アッベ数減少)を示した。ドーパントの添加の有無に関係なく、すべての組成物は中赤外線波長帯域(3~5μm)で屈折率1.9以上の優れた光学的特性を有する。このため、第11組成物は、薄い厚さを有するレンズに設計可能で、薄型構造の光学系に作製できる。また、レンズの面の深さ(形状)が小さく設計可能で、第11組成物がレンズに作製される時、作製歩留まりが向上できる。
【0160】
図47は、本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0161】
本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第12組成物」と略称する)も、第11組成物と同じく、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてZnFを含んで製造される。ただし、第11組成物と異なり、第12組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびZnFは、それぞれ(70-x):20:10:xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:68.5mol%、ZnO:20mol%、La:10mol%、ZnF:1.5mol%
2)TeO:67.5mol%、ZnO:20mol%、La:10mol%、ZnF:2.5mol%
3)TeO:66.5mol%、ZnO:20mol%、La:10mol%、ZnF:3.5mol%
4)TeO:65mol%、ZnO:20mol%、La:10mol%、ZnF:5.0mol%
【0162】
各第12組成物を製造するにあたり、ZnFの含有量を可変し、ZnFの含有量の変化に伴い、TeOの含有量をともに可変した。ただし、ZnFの含有量が5.0mol%を超える場合、ガラスの製造過程で結晶化が発生する。
【0163】
図48は、本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0164】
各第12組成物は、図48に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第12組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に70%以上の透過率を示した。このため、当該主成分の組み合わせにドーパントとしてZnFが含まれていても、製造されるガラスの光学的特性は阻害しないことを確認することができた。
【0165】
さらに、各第12組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第12組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、前述した透過率以上の中赤外光透過率(例えば、86%以上)を確保することを確認することができる。
【0166】
図49は、本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0167】
図49に示されたグラフを参照すれば、第12組成物は、ZnFの含有量に関係なく、すべて100℃以上の熱的安定性を有することを確認することができた。第12組成物中にZnFの含有量が増加するほど、組成物の熱的安定性が減少した。
【0168】
図50は、本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
【0169】
図50に示されたグラフを参照すれば、ドーパントとしてZnFが含まれた組成物(TZL-ZF(B))は、ドーパントが添加されず、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含む組成物(TZL)より、屈折率は減少し分散値は増加した光学的特性(アッベ数減少)を示した。特に、ZnFが5mol%だけ添加された組成物の場合、他の組成物に比べて相対的に屈折率が増加し分散値は減少する光学的特性(アッベ数増加)を示した。ドーパントの添加の有無に関係なく、すべての組成物は中赤外線波長帯域(3~5μm)で屈折率1.9以上の優れた光学的特性を有する。このため、第12組成物も、第11組成物と同様のメリットを有することができる。
【0170】
また、分散値が減少するほど、当該光学構成は、波長に応じた焦点距離の偏差が小さくなって、色収差を補正する上で有利である。当該光学構成が色収差の補正において有利であるので、優れた映像(イメージ)解像力を有することができる。このため、相対的に分散値が減少した特性を有する組成物で作製された光学構成は、優れた映像(イメージ)解像力を確保することができる。
【0171】
図51は、本発明の第12実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
【0172】
図51を参照すれば、第11組成物で実現されたガラスは、ZnFの含有量が減少するほど、硬度が硬くなる傾向を示し、第12組成物で実現されたガラスは、ZnFの含有量が増加するほど、硬度が硬くなる傾向を示した。ZnFの含有量が1.5mol%の場合、第11組成物で実現されたガラスは最も硬い硬度を有することを確認することができ、含有量に関係なく、第11組成物で実現されたガラスは355KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。一方、ZnFの含有量が5.0mol%の場合、第12組成物で実現されたガラスは最も硬い硬度を有することを確認することができ、含有量に関係なく、第12組成物で実現されたガラスは355KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。
【0173】
また、ドーパントとしてZnFが含まれない組成物で実現されたガラスに比べて、ドーパントとしてZnFが含まれた組成物で実現されたガラスは、平均的に一定の水準以上の硬度をすべて有することを確認することができた。
【0174】
図52は、本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0175】
本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第13組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてMoOを含んで製造される。第13組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびMoOは、それぞれ60:30:(10-x):xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:60mol%、ZnO:30mol%、La:8.0mol%、MoO:2.0mol%
2)TeO:60mol%、ZnO:30mol%、La:7.0mol%、MoO:3.0mol%
3)TeO:60mol%、ZnO:30mol%、La:6.0mol%、MoO:4.0mol%
4)TeO:60mol%、ZnO:30mol%、La:5.0mol%、MoO:5.0mol%
【0176】
各第13組成物を製造するにあたり、MoOの含有量を可変し、MoOの含有量の変化に伴い、Laの含有量をともに可変した。
【0177】
図53は、本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0178】
各第13組成物は、図53に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第13組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に70%以上の透過率を示した。特に、MoOが2.0mol%または3.0mol%だけ含まれた組成物のような場合、76%以上の非常に優れた中赤外光透過率を示した。このため、各第13組成物は中赤外光透過ガラスに実現されるのに適した性質を有する。
【0179】
さらに、各第13組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第13組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、ガラスは前述した透過率以上の中赤外光透過率(例えば、94%以上)を確保することを確認することができる。
【0180】
図54は、本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0181】
図54に示されたグラフを参照すれば、第13組成物は、MoOの含有量に関係なく、すべて175℃以上の非常に優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第13組成物中にMoOの含有量が増加するほど、熱的安定性が増加する傾向を示した。ドーパントであるMoOが含まれることにより、組成物の熱的安定性が非常に優れていることを確認することができる。
【0182】
すなわち、ドーパントとしてMoOが含まれていても、組成物の光学的特性を阻害しないことはもちろん、組成物の光学的特性が当該ドーパントが含まれない組成物のそれより優れていることを確認することができた。
【0183】
図55は、本発明の第13実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による屈折率を示すグラフである。
【0184】
図55に示されたグラフを参照すれば、ドーパントとしてMoOが含まれた組成物(TZL-Mo(A))は、ドーパントが添加されず、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含む組成物(TZL)より、屈折率は減少し分散値は増加した光学的特性(アッベ数減少)を示した。また、ドーパントの添加の有無に関係なく、すべての組成物は中赤外線波長帯域(3~5μm)で屈折率1.9以上の優れた光学的特性を有する。このため、第13組成物も、第12組成物や第11組成物と同様のメリットを有することができる。
【0185】
図56は、本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物を構成する成分の含有量を示す図である。
【0186】
本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物(以下、「第14組成物」と略称する)は、主材料としてTeO、ZnOおよびLaを含み、ドーパント(Dophant)としてMoOを含んで製造される。ただし、第13組成物と異なり、第14組成物の製造のために、TeO、ZnO、LaおよびMoOは、それぞれ70:20:(10-x):xの比率で含まれ、それぞれ次の含有量分ずつ含まれる。
1)TeO:70mol%、ZnO:20mol%、La:8.0mol%、MoO:2.0mol%
2)TeO:70mol%、ZnO:20mol%、La:7.0mol%、MoO:3.0mol%
3)TeO:70mol%、ZnO:20mol%、La:6.0mol%、MoO:4.0mol%
4)TeO:70mol%、ZnO:20mol%、La:5.0mol%、MoO:5.0mol%
【0187】
各第13組成物を製造するにあたり、MoOの含有量を可変し、MoOの含有量の変化に伴い、Laの含有量をともに可変した。
【0188】
図57は、本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の波長別透過率を示すグラフである。
【0189】
各第14組成物は、図57に示されたグラフのような光透過率を有する。ここで、各第14組成物は、中赤外線波長帯域である3~5μmの波長では、平均的に65%以上の透過率を示した。特に、MoOが5.0mol%だけ含まれた組成物を除いた残りの組成物の場合、平均的に69%以上の優れた中赤外光透過率を示した。このため、当該主成分の組み合わせにドーパントとしてMoOが含まれていても、製造されるガラスの光学的特性は阻害しないことを確認することができた。さらに、各第14組成物で実現されたガラスは、離型性に優れて表面に反射防止コーティングが行われる。各第14組成物で実現されたガラスの表面に反射防止コーティングが行われた場合、前述した透過率以上の中赤外光透過率を確保することができる。
【0190】
図58は、本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成によるガラス転移温度、結晶化温度および熱的安定性を示すグラフである。
【0191】
図58に示されたグラフを参照すれば、第14組成物は、MoOの含有量に関係なく、概ね130℃以上の優れた熱的安定性を有することを確認することができた。第13組成物中にMoOの含有量が増加するほど、熱的安定性が減少する傾向を示し、MoOの含有量が3.0mol%だけ含まれた組成物で最も優れた熱的安定性を示した。ドーパントであるMoOが含まれることにより、熱的安定性に優れていることを確認することができる。
【0192】
図59は、本発明の第14実施例による中赤外光透過ガラス用組成物の組成による硬度を示すグラフである。
【0193】
図59を参照すれば、第13組成物で実現されたガラスは、MoOの含有量が4.0mol%から減少または増加するほど、硬度が硬くなる傾向を示し、第14組成物で実現されたガラスは、MoOの含有量が減少するほど、硬度が硬くなる傾向を示した。MoOの含有量が5.0mol%の場合、第13組成物で実現されたガラスは最も硬い硬度を有することを確認することができ、含有量に関係なく、第13組成物で実現されたガラスは330KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。一方、MoOの含有量が2.0mol%の場合、第14組成物で実現されたガラスは最も硬い硬度を有することを確認することができ、含有量に関係なく、第14組成物で実現されたガラスは340KgF/mm以上の硬度を有することを確認することができた。
【0194】
図1では、各過程を順次に実行するものとして記載しているが、これは、本発明の一実施例の技術思想を例示的に説明したに過ぎないものである。つまり、本発明の一実施例の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の一実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲で各図面に記載された順序を変更して実行するか、各過程中の1つ以上の過程を並列的に実行するものに多様に修正および変形して適用可能なため、図1は、時系列的な順序に限定されるものではない。
【0195】
一方、図1に示された過程は、コンピュータ可読記録媒体にコンピュータ可読コードとして実現することが可能である。コンピュータ可読記録媒体は、コンピュータシステムによって読出されるデータが格納されるすべての種類の記録装置を含む。すなわち、コンピュータ可読記録媒体は、マグネチック記憶媒体(例えば、ROM、フロッピーディスク、ハードディスクなど)および光学的読取媒体(例えば、CD-ROM、DVDなど)のような記憶媒体を含む。また、コンピュータ可読記録媒体は、ネットワークで連結されたコンピュータシステムに分散して分散方式でコンピュータ可読コードが格納および実行可能である。
【0196】
以上の説明は、本実施例の技術思想を例示的に説明したに過ぎないものであって、本実施例の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能であろう。したがって、本実施例は本実施例の技術思想を限定するためではなく説明するためであり、このような実施例によって本実施例の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施例の保護範囲は以下の特許請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等範囲内にあるすべての技術思想は本実施例の権利範囲に含まれると解釈されなければならない。
【0197】
関連出願との相互参照
本特許出願は、2020年4月27日付で韓国に出願した特許出願番号第10-2020-0050852号に対して米国特許法119(a)条(35U.S.C§119(a))により優先権主張し、そのすべての内容は参照文献として本特許出願に組み込まれる。同時に、本特許出願は、米国以外の国に対しても上記と同じ理由により優先権主張し、そのすべての内容は参照文献として本特許出願に組み込まれる。
[態様1]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、
TeO 、La およびZnOをそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物。
[態様2]
前記ガラス用組成物は、
TeO を55~80mol%だけ、La を5~10mol%だけ、ZnOを10~40mol%だけ含むことを特徴とする態様1に記載のガラス用組成物。
[態様3]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、
TeO 、La およびBaOをそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物。
[態様4]
前記ガラス用組成物は、
TeO を70~80mol%だけ、La を10mol%だけ、BaOを10~20mol%だけ含むことを特徴とする態様3に記載のガラス用組成物。
[態様5]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、
TeO 、ZnO、La およびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物。
[態様6]
前記ドーパントは、
Nb 、MoO またはZnF であることを特徴とする態様5に記載のガラス用組成物。
[態様7]
前記ガラス用組成物は、
TeO を65~70mol%だけ、ZnOを5~20mol%だけ、La を10mol%だけ、前記ドーパントを5~15mol%だけ含むことを特徴とする態様5に記載のガラス用組成物。
[態様8]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、
TeO 、BaO、ZnOおよびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物。
[態様9]
前記ドーパントは、
Nb またはMoO であることを特徴とする態様8に記載のガラス用組成物。
[態様10]
前記ガラス用組成物は、
TeO を60mol%だけ、BaOを10mol%だけ、ZnOを20~25mol%だけ、前記ドーパントを5~10mol%だけ含むことを特徴とする態様8に記載のガラス用組成物。
[態様11]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物において、
TeO 、BaO、La およびガラスの光学的特性を可変するためのドーパント(Dophant)をそれぞれ既定の含有量だけ含むことを特徴とするガラス用組成物。
[態様12]
前記ドーパントは、
Nb またはMoO であることを特徴とする態様11に記載のガラス用組成物。
[態様13]
前記ガラス用組成物は、
TeO を70mol%だけ、BaOを5~15mol%だけ、La を10mol%だけ、前記ドーパントを5~15mol%だけ含むことを特徴とする態様11に記載のガラス用組成物。
[態様14]
中赤外線波長帯域の光を既定の基準値以上透過させるガラス用組成物を製造する方法において、
TeO を含む既定の原材料をそれぞれ既定の含有量だけ含んで混合する混合過程と、
前記混合過程で混合された材料を第1既定温度で第1既定時間溶融する溶融過程と、
前記溶融過程で溶融した材料を第1既定環境でモールドにアニーリングするアニーリング過程と
を含むことを特徴とするガラス用組成物の製造方法。
[態様15]
前記混合過程で混合された材料を既定の容器に装入して、第2既定環境に第2既定時間露出する露出過程をさらに含むことを特徴とする態様14に記載のガラス用組成物の製造方法。
[態様16]
前記既定の原材料は、
La 、BaOおよびZnOのいずれか2つを含むことを特徴とする態様14に記載のガラス用組成物の製造方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59