(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】超音波画像における反響アーチファクトの低減並びに関連するデバイス、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240807BHJP
A61B 8/12 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2022529492
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020082413
(87)【国際公開番号】W WO2021099320
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シーラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ‐ダルヴォー シャルル
(72)【発明者】
【氏名】ロウパス タナシス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルス アリソン アーデン
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244501(JP,A)
【文献】特開2013-027454(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/126675(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための装置であって、前記装置は、
超音波トランスデューサと通信するプロセッサ回路であって、前記プロセッサ回路は、
それぞれの複数のパルス繰り返し間隔を使用して複数の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
前記複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算することと、
前記複数の超音波画像の各々における前記反響アーチファクト量に基づいてパルス繰り返し間隔を選択することと、
前記パルス繰り返し間隔を選択することに応じて、選択された前記パルス繰り返し間隔において反響低減超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
前記反響低減超音波画像を前記プロセッサ回路と通信するディスプレイに出力することと
を行うプロセッサ回路
を備える、装置。
【請求項2】
前記プロセッサ回路は、
前記複数の超音波画像の各々の組織部分と非組織部分とを特定することと、
前記複数の超音波画像の各々の前記非組織部分について強度値を計算することと、
前記複数の超音波画像の前記非組織部分の計算された前記強度値に基づいて、前記複数の超音波画像の各々における前記反響アーチファクト量を求めることと
を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサ回路は、それぞれの超音波画像の焦点の近くの前記それぞれの超音波画像の第1の領域に、前記それぞれの超音波画像の前記焦点から離間した前記それぞれの超音波画像の第2の領域よりも大きな重みが割り当てられるように、重み付けアルゴリズムを使用して前記複数の超音波画像の各々の前記非組織部分についての前記強度値を計算する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサ回路は、
前記複数の超音波画像の各々における前記反響アーチファクト量を閾値と比較することと、
前記閾値と前記反響アーチファクト量との前記比較に基づいて前記パルス繰り返し間隔を選択することと
を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサ回路は、前記複数のパルス繰り返し間隔のうちの最大パルス繰り返し間隔に関連付けられた前記複数の超音波画像のうちの1つの超音波画像における前記反響アーチファクト量に基づいて前記閾値を決定する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサ回路は、
前記閾値と前記反響アーチファクト量との前記比較と、
所定の最大パルス繰り返し間隔と
に基づいて前記パルス繰り返し間隔を選択する、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサ回路は、
所与の場所において複数の受信ラインを取得するようにマルチパルスシーケンスを実施することによって前記複数の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
前記複数の受信ラインを非コヒーレントに加算することと、
前記複数の受信ラインの非コヒーレント加算に基づいて前記反響アーチファクト量を求めることと
を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の受信ラインは、第1の受信ラインと第2の受信ラインとを含み、前記プロセッサ回路は、
前記第1の受信ラインのための第1のエンベロープと、
前記第2の受信ラインのための第2のエンベロープと
を計算することと、
前記第1のエンベロープを第1の加算重みによって、及び、
前記第2のエンベロープを第2の加算重みによって
重み付けすることと、
重み付けされた前記第1のエンベロープと重み付けされた前記第2のエンベロープとを非コヒーレントに加算することと
を行うことによって、前記複数の受信ラインを非コヒーレントに加算する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の受信ラインは第1の振幅を有する第1の送信パルスに対応し、
前記第2の受信ラインは第2の振幅を有する第2の送信パルスに対応し、
前記第1及び第2の加算重みは、前記第1の送信パルスの前記第1の振幅と前記第2の送信パルスの前記第2の振幅との比に基づいて選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための
装置の作動方法であって、
前記装置は、超音波トランスデューサと通信するプロセッサ回路を備え、前記
作動方法は、
前記プロセッサ回路が、それぞれの複数のパルス繰り返し間隔を使用して複数の超音波画像を取得するように
前記超音波トランスデューサを制御するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の各々における計算された前記反響アーチファクト量に基づいてパルス繰り返し間隔を選択するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記パルス繰り返し間隔を選択するステップに応じて、選択された前記パルス繰り返し間隔において反響低減超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記反響低減超音波画像を
前記プロセッサ回路と通信するディスプレイに出力するステップと
を有する、
作動方法。
【請求項12】
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の各々の組織部分と非組織部分とを特定するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の各々の前記非組織部分について強度値を計算するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の前記非組織部分の計算された前記強度値に基づいて、前記複数の超音波画像の各々における前記反響アーチファクト量を計算するステップと
を更に有する、請求項11に記載の
作動方法。
【請求項13】
前記複数の超音波画像の各々の前記非組織部分について前記強度値を計算するステップは、
前記プロセッサ回路が、それぞれの超音波画像の焦点の近くの前記それぞれの超音波画像の第1の領域に、前記それぞれの超音波画像の前記焦点から離間した前記それぞれの超音波画像の第2の領域よりも大きな重みが割り当てられるように、重み付けアルゴリズムを使用して前記複数の超音波画像の各々の前記非組織部分についての前記強度値を計算するステップを有する、請求項12に記載の
作動方法。
【請求項14】
前記プロセッサ回路が、前記複数の超音波画像の各々における前記反響アーチファクト量を閾値と比較するステップを更に有し、
前記パルス繰り返し間隔を前記選択するステップは、
前記プロセッサ回路が、前記閾値と前記反響アーチファクト量との前記比較に基づいて前記パルス繰り返し間隔を選択するステップを有する、請求項11に記載の
作動方法。
【請求項15】
前記プロセッサ回路が、前記複数のパルス繰り返し間隔のうちの最大パルス繰り返し間隔に関連付けられた前記複数の超音波画像のうちの1つの超音波画像における前記反響アーチファクト量に基づいて前記閾値を決定するステップを更に有する、請求項14に記載の
作動方法。
【請求項16】
前記パルス繰り返し間隔を前記選択するステップは、
前記プロセッサ回路が、
前記閾値と前記反響アーチファクト量との前記比較と、
所定の最大パルス繰り返し間隔と
に基づいて前記パルス繰り返し間隔を選択するステップを有する、請求項14に記載の
作動方法。
【請求項17】
前記複数の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを前記制御するステップは、
前記プロセッサ回路が、所与の場所において複数の受信ラインを取得するようにマルチパルスシーケンスを実施する
ことによって前記複数の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の受信ラインを非コヒーレントに加算するステップと、
前記プロセッサ回路が、前記複数の受信ラインの非コヒーレント加算に基づいて前記反響アーチファクト量を求めるステップと
を有する、請求項11に記載の
作動方法。
【請求項18】
前記複数の受信ラインは、第1の受信ラインと第2の受信ラインとを含み、前記複数の受信ラインを非コヒーレントに加算するステップは、
前記プロセッサ回路が、
前記第1の受信ラインのための第1のエンベロープと、
前記第2の受信ラインのための第2のエンベロープと
を計算するステップと、
前記プロセッサ回路が、
前記第1のエンベロープを第1の加算重みによって、及び、
前記第2のエンベロープを第2の加算重みによって
重み付けするステップと、
前記プロセッサ回路が、重み付けされた前記第1のエンベロープと重み付けされた前記第2のエンベロープとを非コヒーレントに加算するステップと
を有する、請求項17に記載の
作動方法。
【請求項19】
前記第1の受信ラインは第1の振幅を有する第1の送信パルスに対応し、
前記第2の受信ラインは第2の振幅を有する第2の送信パルスに対応し、
前記第1及び第2の加算重みは、前記第1の送信パルスの前記第1の振幅と前記第2の送信パルスの前記第2の振幅との比に基づいて選択される、請求項18に記載の
作動方法。
【請求項20】
反響低減アーチファクトに関連付けられたパルスシーケンスを選択するための装置であって、前記装置は、超音波トランスデューサと通信するプロセッサ回路を備え、前記プロセッサ回路は、
第1のパルスシーケンスを使用して第1の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
第2のパルスシーケンスを使用して第2の超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
前記第1の超音波画像及び前記第2の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算することと、
前記第1の超音波画像及び前記第2の超音波画像の前記反響アーチファクト量を比較することと、
前記反響アーチファクト量の前記比較に基づいてパルスシーケンスを選択することと、
選択された前記パルスシーケンスを使用して反響低減超音波画像を取得するように前記超音波トランスデューサを制御することと、
前記反響低減超音波画像を前記プロセッサ回路と通信するディスプレイに出力することと
を行う、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、一般に、超音波画像の取得及び処理に関し、特には、超音波撮像デバイスによって取得された超音波画像における反響アーチファクトを低減するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 超音波撮像は、患者の内部解剖学的構造の画像を取得するために頻繁に使用される。超音波システムは、典型的には、プローブ筐体に結合されたトランスデューサアレイを含む超音波トランスデューサプローブを備える。トランスデューサアレイは、患者の解剖学的組織内に超音波エネルギーを送信し、次いで、患者の解剖学的組織によって反射又は後方散乱された超音波エコーを受信して画像を生成するために、超音波周波数で振動するように作動される。このようなトランスデューサアレイは、印加された電圧に応じて振動して所望の圧力波を生む圧電材料によるものなどの様々なレイヤを含む。これらのトランスデューサは、身体の様々な組織を通過していくつかの超音波圧力波を連続して送信及び受信するために使用される。様々な超音波応答は、身体の様々な構造及び組織を表示するように超音波撮像システムによって更に処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] 超音波トランスデューサプローブは、標準的なBモード撮像、高調波撮像、及びコントラスト撮像などの様々な撮像モードにおいて超音波画像を取得するために使用される。超音波画像を閲覧及び分析する際の臨床医にとっての課題の一つは、アーチファクト又は画像クラッタを表す画像の部分を実際の組織構造から区別することである。超音波撮像において生じ得るアーチファクトの1つのタイプは反響である。いくつかの反響アーチファクトは、パルス繰り返し間隔(PRI)と称される送信イベント間の周期が、以前のパルスによって誘起された内部振動の沈静化又は散逸を可能とするには短すぎるせいで、以前の送信イベントによって誘起された撮像野における構造からの振動が後続の受信ラインに干渉するときに生じる。いくつかの超音波撮像システムは、PRIを手作業で調節することを可能としている。しかしながら、反響を低減させるためにPRIを増加させる(又は、その逆に、パルス繰返し周波数(PRF)を減少させる)ことは、フレームレートが低くなり、パルス間の組織運動からのブラー又はクラッタが増加するという代償を伴う。反響を低減させるための別の技術は、反響をサンプリングし、取り去るために追加的な送信及び/又は受信イベントを導入することであり、これはPRIを変更する必要はないが、ラインごとの送信/受信イベントの総数が増加するので、同様にフレームレートを低減させる。故に、反響アーチファクトを低減させることと高い時間分解能を維持することとの間にはトレードオフが存在する。更に、いくつかのシステムはPRIの調節を可能とするが、一般に、よく訓練された臨床医でさえも、しばしば、PRI制御について理解しておらず、又はPRIを操作することを好まない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 本開示の態様は、超音波画像において検知された反響量に基づいてPRI又は送信/受信構成などの撮像設定を自動的に変更することによって、超音波画像における反響アーチファクトの低減を提供する超音波システム及びデバイスを提供する。例示的な実施形態において、装置は、超音波プローブと通信し、複数の異なるPRIを使用して取得された複数の超音波画像を取得するように構成されたプロセッサ回路を含む。プロセッサ回路は、フレームレートを許容可能レベルに維持することも試みつつ反響アーチファクトを低減させるPRIを選択するために、各画像における反響アーチファクト量を計算し、比較する。PRIなどの撮像パラメータを自動的に決定及び/又は調節することは、ユーザがワークフローを向上させ、取得された超音波画像の医師の分析における信頼性を上昇させるので有利である。
【0005】
[0005] 別の例示的な実施形態において、装置は、超音波プローブと通信し、少なくとも2つの異なる超音波パルスシーケンスを使用して取得された超音波画像を比較するように構成されたプロセッサ回路を含み、少なくとも2つの異なる超音波パルスシーケンスのうちの一方は、反響を低減させるように構成される。反響アーチファクトとフレームレートにおける損失とのバランスをとるためにどのシーケンスが使用されるべきかを選択するために、プロセッサ回路は、現在のパルスシーケンスと反響を低減させるように構成されたパルスシーケンスとの間の反響の程度を計算し、比較する。パルスシーケンスを自動的に決定及び/又は調節することは、ユーザがワークフローを向上させ、取得された超音波画像の医師の分析における信頼性を上昇させるので有利である。
【0006】
[0006] 一実施形態において、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための装置は、超音波トランスデューサと通信するプロセッサ回路であって、プロセッサ回路は、それぞれの複数のパルス繰り返し間隔を使用して複数の超音波画像を取得するように、プロセッサ回路と通信する超音波トランスデューサを制御することと;複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算することと;複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量に基づいてパルス繰り返し間隔を選択することと;パルス繰り返し間隔を選択することに応じて、選択されたパルス繰り返し間隔において反響低減超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御することと;反響低減超音波画像をプロセッサ回路と通信するディスプレイに出力することとを行うように構成されたプロセッサ回路を備える。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、複数の超音波画像の各々の組織部分と非組織部分とを特定することと;複数の超音波画像の各々の非組織部分について強度値を計算することと;複数の超音波画像の非組織部分の計算された強度値に基づいて、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を求めることとを行うように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、それぞれの超音波画像の焦点の近くのそれぞれの超音波画像の第1の領域にそれぞれの超音波画像の焦点から離間したそれぞれの超音波画像の第2の領域よりも大きな重みが割り当てられるように、重み付けアルゴリズムを使用して複数の超音波画像の各々の非組織部分についての強度値を計算するように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を閾値と比較することと;閾値との反響アーチファクト量の比較に基づいてパルス繰り返し間隔を選択することとを行うように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、複数のパルス繰り返し間隔のうちの最大パルス繰り返し間隔に関連付けられた複数の超音波画像のうちの1つの超音波画像における反響アーチファクト量に基づいて閾値を決定するように構成される。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、閾値との反響アーチファクト量の比較と;所定の最大パルス繰り返し間隔とに基づいてパルス繰り返し間隔を選択するように構成される。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態において、装置は、超音波トランスデューサを更に含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、所与の場所において複数の受信ラインを取得するようにマルチパルスシーケンスを実施することによって複数の超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御することと;複数の受信ラインを非コヒーレントに加算することと;複数の受信ラインの非コヒーレント加算に基づいて反響アーチファクト量を求めることとを行うように構成される。いくつかの実施形態において、複数の受信ラインは、第1の受信ラインと第2の受信ラインとを含み、プロセッサ回路は、第1の受信ラインのための第1のエンベロープと;第2の受信ラインのための第2のエンベロープとを計算することと;第1のエンベロープを第1の加算重みによって;及び、第2のエンベロープを第2の加算重みによって重み付けすることと;重み付けされた第1のエンベロープと重み付けされた第2のエンベロープとを非コヒーレントに加算することとを行うことによって、複数の受信ラインを非コヒーレントに加算するように構成される。いくつかの実施形態において、第1の受信ラインは第1の振幅を有する第1の送信パルスに対応し、第2の受信ラインは第2の振幅を有する第2の送信パルスに対応し、第1及び第2の加算重みは、第1の送信パルスの第1の振幅と第2の送信パルスの第2の振幅との比に基づいて選択される。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態において、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための方法は、それぞれの複数のパルス繰り返し間隔を使用して複数の超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御するステップと;複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算するステップと;複数の超音波画像の各々における計算された反響アーチファクト量に基づいてパルス繰り返し間隔を選択するステップと;パルス繰り返し間隔を選択するステップに応じて、選択されたパルス繰り返し間隔において反響低減超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御するステップと;反響低減超音波画像をディスプレイに出力するステップとを有する。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、方法は、複数の超音波画像の各々の組織部分と非組織部分とを特定するステップと;複数の超音波画像の各々の非組織部分について強度値を計算するステップと;複数の超音波画像の非組織部分の計算された強度値に基づいて、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算するステップとを更に有する。いくつかの実施形態において、複数の超音波画像の各々の非組織部分について強度値を計算するステップは、それぞれの超音波画像の焦点の近くのそれぞれの超音波画像の第1の領域にそれぞれの超音波画像の焦点から離間したそれぞれの超音波画像の第2の領域よりも大きな重みが割り当てられるように、重み付けアルゴリズムを使用して複数の超音波画像の各々の非組織部分についての強度値を計算するステップを有する。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態において、方法は、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を閾値と比較するステップを更に有し、パルス繰り返し間隔を選択するステップは、閾値との反響アーチファクト量の比較に基づいてパルス繰り返し間隔を選択するステップを有する。いくつかの実施形態において、方法は、複数のパルス繰り返し間隔のうちの最大パルス繰り返し間隔に関連付けられた複数の超音波画像のうちの1つの超音波画像における反響アーチファクト量に基づいて閾値を決定するステップを更に有する。いくつかの実施形態において、パルス繰り返し間隔を選択するステップは、閾値と反響アーチファクト量との比較と所定の最大パルス繰り返し間隔とに基づいてパルス繰り返し間隔を選択するステップを有する。いくつかの実施形態において、複数の超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御するステップは、所与の場所において複数の受信ラインを取得するようにマルチパルスシーケンスを実施するステップと;複数の受信ラインを非コヒーレントに加算するステップと;複数の受信ラインの非コヒーレント加算に基づいて反響アーチファクト量を求めるステップとを有する。いくつかの実施形態において、複数の受信ラインは、第1の受信ラインと第2の受信ラインとを含み、複数の受信ラインを非コヒーレントに加算するステップは、第1の受信ラインのための第1のエンベロープと;第2の受信ラインのための第2のエンベロープとを計算するステップと;第1のエンベロープを第1の加算重みによって;及び、第2のエンベロープを第2の加算重みによって重み付けするステップと;重み付けされた第1のエンベロープと重み付けされた第2のエンベロープとを非コヒーレントに加算するステップとを有する。いくつかの実施形態において、第1の受信ラインは第1の振幅を有する第1の送信パルスに対応し、第2の受信ラインは第2の振幅を有する第2の送信パルスに対応し、第1及び第2の加算重みは、第1の送信パルスの第1の振幅と第2の送信パルスの第2の振幅との比に基づいて選択される。
【0012】
[0012] 別の実施形態において、反響低減アーチファクトに関連付けられたパルスシーケンスを選択するための装置は、超音波トランスデューサと通信するプロセッサ回路であって、プロセッサ回路は、第1のパルスシーケンスを使用して第1の超音波画像を取得するように、プロセッサ回路と通信する超音波トランスデューサを制御することと;第2のパルスシーケンスを使用して第2の超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御することと;第1の超音波画像及び第2の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算することと;第1の超音波画像及び第2の超音波画像の反響アーチファクト量を比較することと;反響アーチファクト量の比較に基づいてパルスシーケンスを選択することと;選択されたパルスシーケンスを使用して反響低減超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御することと;反響低減超音波画像をプロセッサ回路と通信するディスプレイに出力することとを行うように構成されたプロセッサ回路を含む。
【0013】
[0013] 本開示の追加的な態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0014】
[0014] 添付の図面を参照して、本開示の例示的な実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】[0015] 本開示の実施形態による、超音波撮像システムの模式的な図である。
【
図2】[0016] 本開示の実施形態による、プロセッサ回路の模式的な図である。
【
図3】[0017] 本開示の態様による、患者の身体の領域の超音波画像の図であり、超音波画像が反響アーチファクトを含む図である。
【
図4】[0018] 本開示の態様による、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための方法を示すフロー図である。
【
図5】[0019] 本開示の態様による、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための方法を示すフロー図である。
【
図6】[0020] 本開示の態様による、複数のパルス繰り返し間隔を使用して取得された超音波画像のセットの図である。
【
図7】[0021] 本開示の態様による、
図6において図示された複数のパルス繰り返し間隔において取得された超音波画像における定量化された反響アーチファクトのグラフである。
【
図8A】[0022] 本開示の態様による、患者の身体の領域の元の超音波画像の図であり、超音波画像が反響アーチファクトを含む図である。
【
図8B】[0023] 本開示の態様による、患者の身体の領域の反響低減超音波画像の図であり、反響低減超音波画像が反響アーチファクトを低減させるための方法を使用して選択されたPRIを使用して取得された図である。
【
図9】[0024] 本開示の態様による、振幅変調マルチパルス超音波撮像シーケンスにおける反響の概略的な図である。
【
図10】[0025] 本開示の態様による、振幅変調パルス反転マルチパルス超音波撮像シーケンスにおける反響の概略的な図である。
【
図11】[0026] 本開示の態様による、パルス反転マルチパルス超音波撮像シーケンスにおける反響の概略的な図である。
【
図12】[0027] 本開示の態様による、超音波画像における反響アーチファクト量を求めるための方法を示すフロー図である。
【
図13】[0028] 本開示の態様による、マルチパルスシーケンスを使用して取得され、定量化された反響アーチファクトを示すためにフィルタリングされた超音波画像の図である。
【
図14】[0029] 本開示の態様による、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0030] 本開示の原理の理解を促進する目的のために、図面に示される実施形態が参照され、これを説明するために特定の用語が使用される。しかしながら、本開示の範囲に対する限定が意図されるものではないことが理解される。説明されるデバイス、システム、及び方法に対する任意の変更及び更なる修正、並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示が関連する技術分野の当業者には通常想起されるように、完全に企図され、本開示内に含まれる。特には、本開示の一実施形態に関して説明される特徴、構成要素、及び/又はステップは、他の実施形態に関して説明される特徴、構成要素、及び/又はステップと組み合わされ得ることが完全に企図される。しかしながら、簡潔さのために、これらの組み合せの多くの繰り返しは、個別には説明されない。
【0017】
[0031]
図1において、本開示の実施形態による超音波システム100がブロック図の形態で図示されている。超音波プローブ10は、複数の超音波トランスデューサ要素又は音響要素を備えるトランスデューサアレイ12を有する。いくつかの場合において、アレイ12は任意の数の音響要素を含む。例えば、アレイ12は、2つの音響要素、4つの音響要素、36個の音響要素、64個の音響要素、128個の音響要素、300個の音響要素、812個の音響要素、3000個の音響要素、9000個の音響要素、30,000個の音響要素、65,000個の音響要素などの値、及び/又は、より大きい及びより小さい値の両方の他の値を含む、1つから100000個の間の音響要素を含み得る。いくつかの場合において、アレイ12の音響要素は、線形アレイ、平面アレイ、湾曲アレイ、曲線アレイ、円周アレイ、環状アレイ、位相式アレイ、マトリクスアレイ、1次元的(1D)アレイ、1.x次元的アレイ(例えば1.5Dアレイ)、又は2次元的(2D)アレイなどの任意の適切な構成で配置される。音響要素のアレイ(例えば、1つ又は複数の行、1つ又は複数の列、及び/又は1つ又は複数の向き)は、一律的に又は独立的に制御され得、作動され得る。アレイ12は、患者の解剖学的組織の1次元的、2次元的、及び/又は3次元的画像を取得するように構成され得る。
【0018】
[0032] 本開示は、外部超音波プローブを使用した合成開口外部超音波撮像に言及しているが、本開示の1つ又は複数の態様は、外部超音波プローブ及び管腔内超音波プローブなどの任意の適切な超音波撮像プローブ又はシステムにおいて実現され得ることは理解されよう。例えば、本開示の態様は、機械的スキャン式外部超音波撮像プローブ、心臓内心エコー検査(ICE)カテーテル及び/又は経食道心エコー検査(TEE)プローブ、回転式血管内超音波(IVUS)撮像カテーテル、位相式アレイIVUS撮像カテーテル、経胸郭心エコー検査(TTE)撮像デバイス、又は任意の他の適切なタイプの超音波撮像デバイスを使用した超音波撮像システムにおいて実現され得る。
【0019】
[0033] 再び
図1を参照すると、アレイ12の音響要素は、1つ又は複数の圧電/圧電抵抗要素、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、圧電性微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)要素、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)要素、及び/又は任意の他の適切なタイプの音響要素を備える。アレイ12の1つ又は複数の音響要素は、電子回路14と通信する(例えば、電気的に結合される)。
図1の実施形態などのいくつかの実施形態において、電子回路14は、マイクロビーム形成器(μBF)を備え得る。他の実施形態において、電子回路はマルチプレクサ回路(MUX)を備える。電子回路14は、プローブ10内に位置し、トランスデューサアレイ12に通信可能に結合される。いくつかの実施形態において、電子回路14の1つ又は複数の構成要素は、プローブ10内に位置付けられ得る。いくつかの実施形態において、電子回路14の1つ又は複数の構成要素は、コンピューティングデバイス又は処理システム28内に位置付けられ得る。コンピューティングデバイス28は、メモリと通信する1つ又は複数のプロセッサなどのプロセッサであるか、又はこれを含む。以下において更に説明されるように、コンピューティングデバイス28は、
図2において示されるプロセッサ回路を含む。いくつかの態様において、電子回路14のいくつかの構成要素はプローブ10内に位置付けられ、電子回路14の他の構成要素はコンピューティングデバイス28内に位置付けられる。電子回路14は、1つ又は複数の電気スイッチ、トランジスタ、プログラム可能論理デバイス、又は、複数の入力を組み合わせ及び/若しくは連続的に切り替えて、1つ又は複数の共通の通信チャンネルにわたって複数の入力の各々から信号を送信するように構成された他の電子的構成要素を備える。電子回路14は、複数の通信チャンネルによってアレイ12の要素に結合され得る。電子回路14は、超音波撮像データを含む信号をコンピューティングデバイス28に送信するケーブル16に結合される。
【0020】
[0034] コンピューティングデバイス28においては、信号はデジタル化され、各信号を適切に遅延させるシステムビーム形成器22のチャンネルに結合される。次いで、遅延された信号は、コヒーレントな、ステアリングされ、フォーカシングされた受信ビームを形成するために組み合わされる。システムビーム形成器は、電子的ハードウェア構成要素、ソフトウェアによって制御されたハードウェア、又はビーム形成アルゴリズムを実行するマイクロプロセッサを備える。この点に関して、ビーム形成器22は、電子回路として言及される。いくつかの実施形態において、ビーム形成器22は、
図1のシステムビーム形成器22のようなシステムビーム形成器であってよく、又は、超音波プローブ10内の回路によって実現されるビーム形成器であってよい。いくつかの実施形態において、システムビーム形成器22は、プローブ10内に配設されたマイクロビーム形成器(例えば、電子回路14)と連動して働く。ビーム形成器22は、いくつかの実施形態において、アナログビーム形成器であってよく、又は、いくつかの実施形態において、デジタルビーム形成器であってよい。デジタルビーム形成器の場合、システムは、アレイ12からのアナログ信号をサンプリングされたデジタルエコーデータに変換するA/Dコンバータを含む。ビーム形成器22は、概して、エコーデータをコヒーレントエコー信号データに処理するために、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、シフトレジスタ、及び/又はデジタル若しくはアナログメモリを含む。遅延は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、McKeighenらによる米国特許第4,173,007号において説明されているように、受信信号のサンプリングの時間、メモリに一時的に記憶されたデータの書込み/読取り間隔、又はシフトレジスタの長さ若しくはクロックレートによってなど、様々な手段によって実行される。追加的に、いくつかの実施形態において、ビーム形成器は、アレイ12によって生成された信号の各々に適切な重みを適用し得る。画像野からのビーム形成された信号は、画像ディスプレイ30上での表示のための2D又は3D画像を生むために、信号及び画像プロセッサ24によって処理される。信号及び画像プロセッサ24は、電子的ハードウェア構成要素、ソフトウェアによって制御されたハードウェア、又は画像処理アルゴリズムを実行するマイクロプロセッサを備える。信号及び画像プロセッサ24は、概して、スキャンコンバータなど、受信されたエコーデータを所望の表示フォーマットの画像のための画像データに処理する専用のハードウェア又はソフトウェアも含む。いくつかの実施形態において、ビーム形成機能は、異なるビーム形成構成要素間で分割され得る。例えば、いくつかの実施形態において、システム100は、プローブ10内に位置し、システムビーム形成器22と通信するマイクロビーム形成器を含み得る。マイクロビーム形成器は、受信信号をコンピューティングデバイス28に送信するために必要とされる通信チャンネルの数を減少させ得る予備的なビーム形成及び/又は信号処理を実施する。
【0021】
[0035] スキャンモード(例えば、Bモード、Mモード)、プローブ選択、ビームステアリング及びフォーカシング、並びに信号及び画像処理などの超音波システムパラメータの制御は、システム100の様々なモジュールに結合されたシステムコントローラ26の制御の下で行われる。システムコントローラ26は、特定用途向け集積回路(ASIC)又はマイクロプロセッサ回路、及びRAM、ROM、又はディスクドライブなどのソフトウェアデータ記憶デバイスによって形成される。プローブ10の場合、この制御情報のうちのいくつかは、コンピューティングデバイス28からケーブル16を介して電子回路14に提供され、特定のスキャン手順に必要とされるアレイの動作のために電子回路14を調整する。ユーザは、ユーザインタフェースデバイス20によってこれらの動作パラメータを入力する。
【0022】
[0036] いくつかの実施形態において、画像プロセッサ24は、更に分析されるべき又はディスプレイ30に出力されるべき異なるモードの画像を生成するように構成される。例えば、いくつかの実施形態において、画像プロセッサは、患者の解剖学的組織の、ライブBモード画像などのBモード画像をコンパイルするように構成され得る。他の実施形態において、画像プロセッサ24は、Mモード画像を生成又はコンパイルするように構成される。Mモード画像は、単一のスキャンラインに沿って撮像された解剖学的組織の時間的変化を示す画像として説明され得る。
【0023】
[0037] コンピューティングデバイス28は、コンピュータプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、キャパシタ、レジスタ、及び/又は他の電子デバイス、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合せなどのハードウェア回路を含んでよいことは理解されよう。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイス28は単一のコンピューティングデバイスである。他の実施形態において、コンピューティングデバイス28は互いに通信する別個のコンピュータデバイスを含む。
【0024】
[0038]
図2は、本開示の実施形態による、プロセッサ回路150の模式的な図である。プロセッサ回路150は、
図1のコンピューティングデバイス28、信号及び画像プロセッサ24、コントローラ26、及び/又はプローブ10において実現される。図示されるように、プロセッサ回路150は、プロセッサ160と、メモリ164と、通信モジュール168とを含む。これらの要素は、例えば1つ又は複数のバスを介して、互いに直接的に又は間接的に通信する。
【0025】
[0039] プロセッサ160は、中央処置装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、コントローラ、FPGA、別のハードウェアデバイス、ファームウェアデバイス、又は本明細書において説明される動作を実施するように構成されたこれらの任意の組み合わせを含む。プロセッサ160は、コンピューティングデバイスの組み合わせとして、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連動する1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は任意の他のこのような構成として実現されてもよい。
【0026】
[0040] メモリ164は、キャッシュメモリ(例えば、プロセッサ160のキャッシュメモリ)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気抵抗RAM(MRAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、固体メモリデバイス、ハードディスクドライブ、他の形態の揮発性若しくは不揮発性メモリ、又は異なるタイプのメモリの組み合わせを含む。実施形態において、メモリ164は、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。メモリ164は、命令166を記憶する。命令166は、プロセッサ160によって実行されたときに、プロセッサ160に、プロセッサ28及び/又はプローブ10(
図1)を参照して本明細書において説明された動作を実施させる命令を含む。命令166は、コードとも称される。「命令」及び「コード」という用語は、任意のタイプのコンピュータ可読命令文を含むものとして広範に解釈されるべきである。例えば、「命令」及び「コード」という用語は、1つ又は複数のプログラム、ルーチン、サブルーチン、関数、手順などを指す。「命令」及び「コード」は、単一のコンピュータ可読命令文又は多くのコンピュータ可読命令文を含む。
【0027】
[0041] 通信モジュール168は、プロセッサ28、プローブ10、及び/又はディスプレイ30の間での直接的又は間接的なデータの通信を促進する任意の電子回路及び/又は論理回路を含み得る。この点に関して、通信モジュール168は、入力/出力(I/O)デバイスであってよい。いくつかの場合において、通信モジュール168は、プロセッサ回路150及び/又は処理システム106(
図1A)の様々な要素の間での直接的又は間接的な通信を促進する。
【0028】
[0042] 上に述べられたように、超音波画像は、反響アーチファクトなどのいくつもの不所望のアーチファクトを含むことがある。反響アーチファクトは、皮膚層の下の血流の視覚化が医師によって望まれるコントラスト撮像などの特定の超音波撮像モダリティにおいて特に望ましくない。多くの場合において、パルス繰り返し間隔(PRI)を最小化することによってできる限り最速のフレームレートで動作すること、及び、マルチパルスシーケンスにおいてできる限り少ないパルスを使用することが望ましい。画像におけるいくつかの反響アーチファクトの存在につながる1つの要因は、超音波画像の取得において使用されるパルスの間での不十分なPRIであり、これは、撮像領域よりも深い構造からのエコーが後の受信ラインで受信されることを許してしまう。音響反響は組織及び解剖学的構造における散逸に時間がかかるので、フレームレートを最大化する短いPRIは、撮像領域内に均等に間隔のあいたライン又は拡散ノイズとして現れる、超音波画像におけるアーチファクトをもたらす。これらのアーチファクトを低減する1つの方法は、フレームレートを犠牲にして単にPRIを増加させることである。いくつかのシステムはPRIを変更することができるが、PRIを調節することは、反響及びPRIの背後にある物理的原理を理解していないような医師にとっては複雑すぎる。故に、医師によっては、PRIの調節を避けることがある。医師は、PRIを変更せずに、超音波画像における本当の構造と反響アーチファクトとを区別しようとすることがあるが、これは、困難で不正確である。これらのアーチファクトを低減する別の方法は、反響をより良好にサンプリングし、消去するようにマルチパルスシーケンスを変えることであり、これは、しばしば、フレームレートを犠牲にして追加的な送信及び/又は受信イベントを導入することによって行われる。システムは、典型的には、反響に応じてユーザがパルス構成を変更することを許さないので、システムの設計者は、反響を許容してフレームレートを最大化するか、又は、反響を低減するが、その結果としての低フレームレートを許容するかのどちらかの好ましいシーケンスを選択する。
【0029】
[0043] それ故、本開示は、超音波画像における反響アーチファクトを低減するためにPRI及びパルスシーケンス構成などの撮像設定を自動的に調節するためのデバイス、システム及び方法を提供する。この点に関して、画像における反響アーチファクト量は、撮像シーケンスにおけるPRI又はパルス構成に関連する。故に、本出願は、反響アーチファクトの低減を具体的に達成するやり方でPRI及び/又はパルス構成を自動的に調節するためのシステム及び方法の実施形態を説明する。自動的な調節は、撮像シーケンスのフレームレートを、ユーザが許容可能な特定のレベル又はその上に維持するように実施される。この点に関して、本開示の実施形態は、1つ又は複数の超音波画像における反響を特定し、反響アーチファクトの特定に基づいて、PRIを自動的に選択し及び/又は代替的なパルスシーケンスに切り替えることを伴う。例えば、異なるPRIを使用して取得された超音波画像における反響アーチファクトを定量化し、各画像について定量化されたアーチファクトを分析して反響アーチファクトを低減するPRIを選択し、反響低減超音波画像を取得するために、選択されたPRIを使用して画像を取得するように超音波プローブを制御するデバイス、システム、及び方法が提供される。
【0030】
[0044]
図3は、外部超音波撮像システムによって取得された超音波画像である。患者の身体の解剖学的領域の画像200が取得され、これは、皮膚領域210と、皮膚領域に比べてより深くにある反響領域220とを示す。皮膚領域210は、非反響信号、すなわち皮膚及び/又は他の組織構造から反射された本当の信号に関連付けられる。これとは対照的に、反響領域220のうちのいくらか又は全ては音響反響に関連付けられ、従って、解剖学的組織における実際の組織構造を反映していない。反響領域220におけるアーチファクト及びクラッタは、解剖学的構造を視覚化し、診断を行う医師の能力に望ましくない影響を与える。それ故、診断における信頼性が低下する。
【0031】
[0045]
図4は、本開示の実施形態による、超音波画像における反響アーチファクトを低減させるための方法300を示すフローチャートである。方法300の1つ又は複数のステップは、例えば、
図1において図示された超音波撮像システム100及び/又は
図2において図示されたプロセッサ回路150によって実施されることは理解されよう。ステップ310において、超音波トランスデューサは、それぞれの複数のパルス繰り返し間隔(PRI)を使用して複数の超音波画像を取得するように制御される。いくつかの実施形態において、超音波トランスデューサは、超音波トランスデューサ要素のアレイを含む外部超音波プローブを備える。しかしながら、方法300は、血管内超音波(IVUS)デバイス、心臓内心エコー検査(ICE)カテーテル、経食道心エコー検査(TEE)プローブ、経胸郭心エコー検査(TTE)プローブ、又は任意の他の適切な超音波撮像デバイスなどの他のタイプの超音波トランスデューサによっても実施される。いくつかの実施形態において、システムは、マウス、キーボード、タッチスクリーン、及び/又は任意の他の適切なユーザ入力デバイスなどのユーザ入力デバイスを備える。方法300は、ユーザ入力デバイスを介してユーザによって開始される。例えば、いくつかの実施形態において、方法300は、ユーザがタッチスクリーンディスプレイ上のアイコンなどのボタン又はアイコンを押すこと又は選択することによって開始される。いくつかの実施形態において、方法300は、開始されると、方法300の各ステップを自動的に実施するように進む。いくつかの実施形態において、方法300の1つ又は複数のステップはバックグラウンドで実施され、方法300のこれらの1つ又は複数のステップはディスプレイに表示されない。いくつかの実施形態において、方法の1つ又は複数のステップは、ユーザ又はオペレータが方法300の進行を監視し得るようにディスプレイデバイスに表示される。
【0032】
[0046] 例示的な実施形態において、複数の超音波画像の各々が、異なるPRIを使用して取得される。例えば、PRIは、徐々に増加するように変化するPRIのセットを含む。任意の適切な数の超音波画像及び対応するPRI、例えば、撮像ウィンドウにおける音響波の標準的な往復移動時間(伝搬時間)に2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、30、50、又はより大きい及びより小さい両方の任意の他の適切な数のマイクロ秒を加えたものなどがステップ310において使用される。PRIは、時間(例えば、μs、ms)において、深さ又は距離(例えば、mm)において、ピクセルにおいて、又は任意の他の適切な測定の単位において表現又は測定される。いくつかの実施形態において、PRIは、最小PRIと最大PRIとの間で変化する。いくつかの実施形態において、最小PRIは0であり、効果的にはパルス間に音響波の標準的な往復移動時間を超えるようなギャップ又は静止時間が存在しない。いくつかの実施形態において、最小PRIは、受信から送信に切り替える超音波トランスデューサのハードウェア性能に基づく。いくつかの実施形態において、最小PRIは、組織及び/又は超音波トランスデューサにおける振動が、次のパルスを送信する前に散逸することを可能とする最小の時間量を表すように、プロセッサ回路及び/又は超音波トランスデューサの製造者によって予め定められている。いくつかの実施形態において、最大PRIは、使用される特定のスキャンシーケンス(例えば、マルチパルス、パルス反転、単一パルスなど)、所望の撮像深度又は焦点ゾーン、及び/又は最小フレームレートなどの様々な撮像要因に基づいてプロセッサ回路において予め定められ、選択され、又は他のやり方において構成される。いくつかの実施形態において、複数の超音波画像を取得するために使用される異なるPRIは、一定の増分で変化する。他の実施形態において、異なるPRIは、一定でない、又は非線形的な態様で変化する。いくつかの実施形態において、ステップ310において、各PRIについて1つの超音波画像だけが取得される。他の実施形態において、各PRIについて複数の画像が取得される。
【0033】
[0047] ステップ320において、複数の超音波画像は、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量を計算するために分析される。本開示のコンテキストにおいて、超音波画像を分析することは、トランスデューサアレイによって出力された電気信号に信号処理を実施すること、及び/又はトランスデューサアレイによって出力された電気信号から生成された画像データに画像処理を実施することを指す。いくつかの実施形態において、画像における反響アーチファクト量は、画像における組織を除去又は抑制し、画像における残余の信号又は強度を加算することによって定量化又は推定される。加算された残余の信号は、画像に存在する反響アーチファクト量を表し、又はこれと相互に関連し、他のアーチファクトも表すこともある。いくつかの実施形態において、各超音波画像の非組織部分についての強度の量、すなわち強度値が、重み付けアルゴリズムを使用して計算される。重み付けアルゴリズムは、超音波画像の特定の領域に、他の領域に比べて大きな重みが与えられるように適用される。例えば、いくつかの実施形態において、超音波トランスデューサの焦点の近くの超音波画像の領域における非組織信号強度は、焦点から離間した位置にある領域よりも大きな重みを与えられる。
【0034】
[0048] それ故、いくつかの実施形態において、複数の超音波画像は、複数の超音波画像の各々における組織部分と非組織部分とを区別するために分析される。次いで、各超音波画像は、残余の全体的強度値を計算するために分析される。反響アーチファクト量は、計算された強度値に基づいて、各超音波画像について求められる。他の実施形態において、反響アーチファクトと画像への他の寄与物とを区別するために反響検知アルゴリズムが使用され得る。超音波画像は異なるPRIを使用して取得されるので、反響アーチファクト量は、特定の画像に関連付けられたPRIに基づいて変化することが予期される。
【0035】
[0049] ステップ330において、複数の超音波画像の各々における反響アーチファクト量が、PRIを選択するために分析される。いくつかの実施形態において、反響アーチファクト量を分析するステップは、反響アーチファクト量を比較するステップを有する。例えば、各画像における反響アーチファクト量は、閾値と比較される。以下において更に説明されるように、閾値は、最小強度画像及び/又は最大PRI画像に基づいて決定される。他の実施形態において、各画像における反響アーチファクト量は、他の画像における反響アーチファクト量と比較される。比較及び/又は分析に基づいて、反響低減アーチファクトに関連付けられたPRIが選択される。例えば、選択されるPRIは、閾値に最も近いがこれを超えないPRIである。他の実施形態において、選択されるPRIは、平均値、中央値、統計的分布(例えば、ガウス分布)、又は複数の画像の強度値の比較に基づいて求められた任意の他の適切な統計的に顕著な値に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、PRIは、所定の最大PRIを超えないように選択される。所定の最大PRIは、製造者によって、超音波画像のフレームレートが下限を下回らないように定められる。いくつかの実施形態において、所定の最大PRIは、使用される撮像モダリティ、撮像深度、及び/又は他の撮像パラメータに基づいて変化する。
【0036】
[0050] 多くの場合において、反響低減アーチファクトに関連付けられた、選択されたPRIは、最初に使用されたPRIよりも高く、このことは、フレームレートの減少をもたらす。しかしながら、PRIが増加すると反響アーチファクトが減少するが、高すぎるPRIを選択し、結果としてフレームレートが不十分なものになることは望ましくない。上に述べられたように、いくつかの場合において、医師は、いくらかの反響アーチファクトが残されるとしても、フレームレートをある量よりも上に維持することを好む。それ故、PRIは、反響アーチファクトを低減することへの関心と高いフレームレートを維持することへの関心とのバランスをとるようなやり方で選択される。例えば、いくつかの態様において、システムは、所定の最大PRIであるか又はそれよりも小さいPRIだけを選択するように構成される。更に、システムは、複数の画像において検知された最小反響量に基づいて閾値を確立又は決定するように構成され、撮像アプリケーションにとって十分に高いフレームレートを維持するためにいくらかの満足な量の反響が許容される。
【0037】
[0051] ステップ340において、PRIを選択するステップに応じて、超音波トランスデューサは、選択されたPRIにおいて反響低減超音波画像を取得するように制御される。ステップ350において、反響低減超音波画像はディスプレイに出力される。方法300のステップは、反響低減超音波画像のライブビュー又はストリームを生み、表示するように反復して実施されることは理解されよう。更に、いくつかの実施形態において、方法300は、ユーザ入力デバイス上でユーザ入力を選択することによって、ユーザによって中断される。例えば、特定の撮像アプリケーション又はモダリティが反響を生みそうになかったならば、ユーザは方法300を終了し、PRIをデフォルト又は最初の値に戻してよい。
【0038】
[0052]
図5は、本開示の実施形態による、超音波画像における反響アーチファクトを低減するための方法400を示すフローチャートである。方法400の1つ又は複数のステップは、例えば、
図1において図示された超音波撮像システム100及び/又は
図2において図示されたプロセッサ回路150によって実施されることは理解されよう。いくつかの態様において、方法400の1つ又は複数のステップは、
図4において図示された方法300を実施する際に使用される。ステップ410において、プロセッサ回路又は処理システムは、それぞれの複数のPRIを使用して複数の組織抑制超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御する。いくつかの態様において、プロセッサ回路は、画像処理技術を使用して超音波画像における組織を抑制するように構成される。いくつかの態様において、プロセッサ回路は、ユーザ入力デバイスを介して、組織抑制プロトコルを開始させるユーザ入力を受信する。いくつかの実施形態において、組織抑制プロトコルは、反響低減プロトコルの一部として自動的に作動される。この点に関して、いくつかの実施形態において、方法400は、ユーザ入力によって開始され、方法400の各ステップを自動的に実施するように進む。いくつかの実施形態において、方法400の1つ又は複数のステップはバックグラウンドで実施され、方法400のこれらの1つ又は複数のステップはディスプレイに表示されない。
【0039】
[0053]
図6は、方法400のステップ410において取得された複数の超音波画像を含む。この点に関して、複数の組織抑制超音波画像412a~412fの各々は、それぞれのPRI414a~414fを使用して取得される。それぞれのPRI414a~414fは、連続する送信パルスの間の時間的間隔として示されている。
図6の実施形態において、各PRI414は、連続する送信パルスの開始点の間の間隔として示されている。しかしながら、他の実施形態において、PRI414は、例えば、連続する送信パルスの中央点又は終了点の間の距離によって定められてよい。
図6において、PRI414が増加すると、超音波画像412における全体的な強度又は明るい部分が減少することが分かる。超音波画像412において組織は抑制されているので、残余の部分は、反響アーチファクトなどの画像クラッタによるものである可能性が高いことが推定される。故に、PRIを増加させることによって、解剖学的組織における反響が散逸するためにより多くの時間が与えられ、視覚化される反響アーチファクトは少なくなる。それ故、最も大きなPRI414fを使用して取得された超音波画像412fでは、残余の反響アーチファクト量は最も少なくなる。
【0040】
[0054] 再び
図5を参照すると、ステップ420において、プロセッサ回路は、組織抑制超音波画像の残余の強度値を加算し、各超音波画像の加算された強度値を正規化する。プロセッサ回路は、複数の超音波画像のうちの最小強度画像の最小強度値に基づいて、加算された強度値を正規化するように構成される。しかしながら、他の実施形態において、プロセッサ回路は、最大強度値画像、平均加算強度値、又は所定の強度値などの他の値に正規化するように構成される。ステップ430において、閾値が、超音波画像の加算された強度値に基づいて選択又は決定される。例えば、閾値は、含まれる反響が最小である超音波画像に基づいて選択される。例えば、
図6を参照すると、閾値は、含まれる反響アーチファクト量が最も低い及び/又は含まれる全体的な残余の画像強度が最も低い超音波画像412fに基づいて選択される。他の実施形態において、閾値432は、最も大きなPRIに関連付けられた超音波画像に基づいて選択される。
【0041】
[0055] ステップ440において、望ましいPRIを選択するために、ステップ420において計算された各超音波画像についての正規化された強度値が閾値と比較される。この点に関して、
図7は、ステップ420~440の態様を示すグラフ500である。例えば、グラフ又はプロット500は、PRIをx軸として、閾値432に対する組織抑制画像412a~412fの加算及び正規化された強度値422a~422fを示す。
図7において、追加的なPRI増分が、深さにおけるミリメートルの表現によって表されている。しかしながら、PRIについて、時間、ピクセル、又は任意の他の適切なタイプの測定の単位など、測定の他の単位が使用されてよい。図から分かるように、
図7においてはPRIの最小往復音響移動時間を超えた追加的な遅延を表すPRIは、50mmずつ徐々に増加する0mmから250mmの範囲で、超音波画像の正規化された強度値422a~422fに関連付けられる。換言すれば、
図7を参照すると、0mmのPRIは、音響パルスに関連付けられた往復音響移動時間を超える追加的な遅延又はバッファを有さない最小PRIを表す。他の実施形態において、複数のPRIは、
図7において図示されているように徐々に及び均一に間隔があいているわけではない。例えば、いくつかの実施形態において、PRIは、10mm、20mm、25mm、30mm、100mm及び/又はより大きい及びより小さい任意の他の適切な増分などの可変的な量だけ異なる。
【0042】
[0056]
図5~
図7を参照すると、閾値432は、412fなどの最小強度組織抑制超音波画像に基づいて決定される。閾値432は、最小強度超音波画像(例えば、412f)の正規化及び加算された強度のパーセンテージに基づいて決定される。例えば、
図7の実施形態において、閾値432は、超音波画像412fの正規化及び加算された強度の3%を加えることによって決定される。他の実施形態において、閾値432は、超音波画像の正規化及び加算された強度の1%、2%、5%、10%又はより大きい及びより小さい任意の他の適切なパーセンテージを加えることによって決定される。望ましいPRIは、閾値432に最も近いがこれを超えない正規化された強度値に関連付けられたPRIを特定することによって選択される。
図7において、望ましい又は選択されるPRIは150mmであり、これは正規化された強度値422dに関連付けられる。他の実施形態において、望ましいPRIは、それぞれのPRIが閾値432を超えていても超えていなくても、閾値432に最も近い正規化された強度値に関連付けられたPRIを特定することによって選択される。いくつかの実施形態において、望ましいPRIは、2つ以上のPRIの間の補間に基づいて求められる。いくつかの実施形態において、望ましいPRIは、正規化された強度値422のうちの2つ以上に最もフィットするライン又はカーブを計算し、閾値432と最もフィットするライン又はカーブとの交差ポイントを求めることによって選択される。
【0043】
[0057] ステップ450において、超音波トランスデューサは、選択されたPRIにおいて1つ又は複数の反響低減超音波画像を取得するように制御、設定、又は構成される。いくつかの実施形態において、方法400は、ステップ410において以前に低減、抑制、又は廃棄された組織特徴を保持するようにシステムを構成するステップを更に有する。いくつかの実施形態において、このことは、組織抑制機能を停止するステップを伴う。いくつかの実施形態において、組織抑制機能は、画像処理シーケンス又はコンピュータプログラムの一部である、メモリに記憶されたプロトコル又は命令のセットを含む。いくつかの実施形態において、組織抑制機能は自動的に停止され、超音波トランスデューサは、PRIを選択するステップに応じて、選択されたPRIで自動的に構成される。いくつかの実施形態において、オペレータが、組織抑制機能を停止する。ステップ460において、1つ又は複数の反響低減超音波画像は、ディスプレイに出力される。
【0044】
[0058]
図8A及び
図8Bは、超音波撮像手順における方法300及び/又は方法400の反響低減効果を示す。この点に関して、
図8Aは、反響低減技術を適用する前の画像402を図示する。この点に関して、
図8Aの画像402は、デフォルト又は最初のPRIを使用して取得される。画像402について、最初のPRIは、
図8Bにおいて使用されたものよりも著しく短く、画像402の領域442において著しい反響アーチファクト量が存在する。上に述べられたように、これらの反響アーチファクトは、領域442における血流を示し及び/又は定量化するために使用されるコントラスト撮像手順において特に望ましくない。
図8Bは、方法300及び/又は400に関して上に説明された反響技術を使用して取得された超音波画像452を図示する。この点に関して、
図8Bの画像452は、
図8Aにおいて図示される画像402と同一の画像特徴及び撮像領域を含むが、上述された方法300及び/又は400に従って自動的に選択及び設定された調節済みPRIで撮影されている。それ故、画像452の領域462においては、反響アーチファクトは著しく低減又は除去されているが、組織の特徴は存在したままである。
【0045】
[0059] コントラスト撮像、組織高調波などの、パルス間相殺に依存するいくつかの超音波撮像モダリティは、反響アーチファクトに特に影響されやすい。
図9~
図11は、反響が存在する様々なマルチパルス超音波撮像シーケンス610、620、630の概略的な図である。具体的には、
図9は振幅変調マルチパルスシーケンス610を図示し、
図10は振幅変調パルス反転(AMPI)マルチパルスシーケンス620を図示し、
図11はパルス反転シーケンス620を図示する。各シーケンスにおいて、複数の送信パルスが所与の場所(例えば、場所-1、場所0、場所1)について使用される。送信パルスは、振幅及び/又は位相において異なる。例えば、
図9において図示される振幅変調シーケンス610は、各場所について3つの送信パルスを含み、第1及び第3のパルスは0.5で重み付けされ、第2のパルスは1.0で重み付けされる。振幅変調においてパルスの個々のエコーが加算されると、エコー信号の線形周波数部分が相殺され、非線形部分が残される。しかしながら、再び
図9を参照すると、所与の場所においてシーケンス610における1つのパルスによって誘起された反響612が、同一の場所で他の受信ラインまで、又は後続の場所の受信ラインまで溢出している。故に標準的な3パルス振幅変調の実施態様は、静的な線形信号を効果的に相殺するが、反響によって起こった信号は相殺しないことがある。
図10及び
図11を参照すると、AMPIシーケンス620及びパルス反転シーケンス630などの他のマルチパルスシーケンスは、反響622、632によって起こったアーチファクトのうちのいくらかをより効果的に相殺するが、全てを相殺するわけでない。例えば、AMPI620及びパルス反転630において、もしも、(1)パルス間及びパルス内間隔が異り、反響事例が互いにオフセットしたり、(2)運動「フラッシュ」アーチファクトに対処するために3パルス反転スキームが使用されたり、(3)2セットのデータ(例えば、(パルス1+パルス2)及び(パルス1-パルス2))を生むためにパルス反転において差動高調波が使用された場合、反響アーチファクトが結果の画像に存在する。
【0046】
[0060] マルチパルスシーケンスが反響アーチファクトを生む間、シーケンスにおける個々のパルスの重み付け加算を使用して結果の画像における反響を検知するために反響技術が使用され得る。この点に関して、
図12は、マルチパルスシーケンスにおける反響を検知するための方法700のフロー図である。方法700の1つ又は複数のステップは、例えば、
図1において図示された超音波撮像システム100及び/又は
図2において図示されたプロセッサ回路150によって実施されることは理解されよう。いくつかの態様において、方法400の1つ又は複数のステップは、
図4において図示された方法300を実施するために使用される。例えば、いくつかの態様において、方法700のステップは、方法300のステップ310及び/又は320を実施する際に使用され得る。ステップ710において、プロセッサ回路又は処理システムは、所与の場所において複数の受信ラインを取得するようにマルチパルスシーケンスを実施するように超音波トランスデューサを制御する。受信ラインは、シーケンスのそれぞれの送信パルスによって誘起されたエコー信号を含む。いくつかの実施形態において、マルチパルスシーケンスの送信パルスは、0.5、1.0、-0.5、1.0、0.33の重み又はより大きい及びより小さい任意の他の適切な重みなど、異なった重み付けがなされる。例えば、-1.0の重みの付いたパルスは、1.0の重みの付いたパルスの波形の反転を表す。
【0047】
[0061] ステップ720において、プロセッサ回路は、受信ラインの各々のエンベロープを計算する。いくつかの態様において、受信ラインのエンベロープを計算するステップは、アナログ及び/又はデジタル関数又は演算を受信ラインに適用するステップを有する。例えば、いくつかの実施形態において、エンベロープを計算するステップは、信号ラインにヒルベルト変換を適用するステップを有する。いくつかの態様において、受信ラインのエンベロープを計算するステップは、受信ライン信号をサンプリング及び/又はデジタル化するステップを有する。いくつかの態様において、受信ライン信号は、エンベロープが計算される前にデジタル化される。
【0048】
[0062] ステップ730において、加算重みが、計算された第1及び第2のエンベロープに適用される。ステップ740において、加算された受信ラインを生むために、重み付けされたエンベロープが非コヒーレントに加算される。非コヒーレントな加算とは、加算において位相情報が存在する受信ラインのコヒーレントな加算とは対照的に、位相情報を失っているエンベロープの加算を指すことは理解されよう。いくつかの実施形態において、ステップ730において、組織信号などのエンベロープの非反響部分が相殺される一方でエンベロープの反響部分が残されるようにエンベロープに加算重みが適用される。例えば、いくつかの実施形態において、-1.0の第1の加算重みが第1のエンベロープに適用され、1.0の第2の加算重みが第2のエンベロープに適用される。符号が逆で大きさが等しい加算重みは各エンベロープに共通の信号部分を相殺し得るが、第1のエンベロープと第2のエンベロープとの間で異なる信号部分は残される。
【0049】
[0063] いくつかの態様において、ステップ720~740は、以下の式によって、3パルスシーケンスの所与の場所における反響を表す加算された受信ラインを生成するように実施される:
Reverb=SumWeight1(envelope(ReceiveLine1))
+SumWeight2(envelope(ReceiveLine2))
+SumWeight3(envelope(ReceiveLine3))、
ここで、SumWeight1、SumWeight2、及びSumWeight3は、対応する重み付けされた受信ラインのそれぞれの第1、第2、及び第3のエンベロープのための加算重みである。上の式は、所与の場所又はスキャンラインにおける反響の強度及び深度を計算する。超音波画像における各場所又はスキャンライン(例えば、
図9~
図11の場所-1、0.1)について反響を計算することによって、ステップ750において、超音波画像又は視野における反響量が求められ、計算され、推測され、及び/又はマッピングされる。この点に関して、
図13は、方法700及び上述された式を使用して、超音波画像における反響アーチファクトだけを表示するようにフィルタリングされたマップ又は画像800である。反響は画像のより深い部分においてより強く又はより強度が高いことが観察される。いくつかの実施形態において、方法700を使用して定量化された反響量は、画像における反響アーチファクト量を低減するために、PRIを自動的に制御するための又は超音波トランスデューサのパルスシーケンス又は構成を自動的に選択するための方法(例えば、
図4の方法300)において使用され得る。他の実施形態において、方法700は、画像における反響アーチファクトの場所及び量を特定し、PRIの調節又はパルスシーケンスの変更を行って、又はこれらを行わずに、反響アーチファクトを画像から取り去り又は除去するために使用される。
【0050】
[0064] 上に使用されたものと同様の式が、パルス反転など、より少ない又はより多いパルスを所与の場所において使用する他のマルチパルスシーケンスのために使用され得ることは理解されよう。例えば、上の等式は、所与の場所における反響量を計算するために第3の受信ライン及び第3の加算重みを含むように修正される。方法700及び/又は上に論じられた式は、
図9~
図11に示されたマルチパルスシーケンス610、620、及び630に対して使用される。例えば、第1、第2、及び第3の送信パルスに対応する第1、第2、及び第3の受信ラインを含む、
図9において示された振幅変調マルチパルスシーケンス610について、重み付けされた受信ラインの第2及び第3のエンベロープだけが考慮されるように加算重み(0、-1、2)をそれぞれ第1、第2、及び第3のエンベロープに対して使用して、上の式が適用される。或は、同様の結果を達成するために、加算重み(1、-1、1)も使用され得る。振幅変調シーケンス610と同様に、
図10において示されたAMPIシーケンス620について、加算重み(0、-1、2)を使用して、上の式が適用される。
図11において示されたPIシーケンス630について、加算重み(1、-1)を使用して、上の式が適用される。それ故、マルチパルスシーケンスにおける各受信ラインに適用される加算重みは、適用されるマルチパルスシーケンスのタイプ及び対応する送信パルスに適用される送信重みに基づいて選択又は構成される。いくつかの実施形態において、適用される加算重みは、異なる受信ラインの振幅の比に基づく。例えば、第1の送信パルスが第1の振幅を有し、第2の送信パルスが第2の振幅を有する2パルスシーケンスにおいて、第1の加算重みは第1の振幅に対する第2の振幅の比に基づいて決定又は選択され、第2の加算重みは第2の振幅に対する第1の振幅の比に基づいて決定される。更に、いくつかの実施形態において、異なる重みセットが、異なるメトリックの平均又は幾何平均など、反響のより堅牢な計算を生成するために組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、異なる受信重みが、エンベロープが計算される前又はその後に、受信ラインに適用される。例えば、受信重み及び/又は加算重みの異なる組み合わせが、異なるタイプのマルチパルスシーケンスに適応するために選択され、使用される。
【0051】
[0065]
図14は、異なる超音波パルスシーケンス又は構成の間で選択を行うことによって超音波画像における反響アーチファクトを低減させるように超音波トランスデューサを制御するための方法900を示すフロー図である。ステップ910において、プロセッサ回路は、第1のパルスシーケンスを使用して超音波画像を取得するとともに第2のパルスシーケンスを使用して超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御する。第1のパルスシーケンスと第2のパルスシーケンスとは異なり、単一パルスシーケンス、振幅変調、パルス反転、AMPI、又は任意の他の適切なパルスシーケンスのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、ステップ910は、単一パルス又は標準的な撮像シーケンスによって第1の超音波画像を取得するステップと、反響アーチファクトを自動的に低減するように構成されたマルチパルスシーケンスを使用して第2の超音波画像を取得するステップとを有する。ステップ920において、プロセッサ回路は、第1のパルスシーケンスを使用して取得された第1の超音波画像及び第2のパルスシーケンスを使用して取得された第2の超音波画像の正規化された強度値を計算するために、例えば、画像処理及び分析技術を使用して、取得された超音波画像を分析する。いくつかの実施形態において、正規化された強度値を計算するステップは、方法400に関して上述された組織抑制技術を使用するステップを有する。いくつかの実施形態において、正規化された強度値を計算するステップの代わりに、又はこれに加えて、各超音波画像における反響アーチファクト量を計算する方法700のステップが用いられてよい。
【0052】
[0066] ステップ930において、パルスシーケンス又は構成を選択するために第1及び第2の画像の強度値が比較される。いくつかの実施形態において、最も低い反響アーチファクト量又は正規化された強度値に関連付けられたパルスシーケンスが選択される。いくつかの実施形態において、強度値を比較するステップは、強度又は反響アーチファクト値を閾値と比較するステップを有する。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、閾値は方法400のステップに従って選択され、パルスシーケンス又は構成は、閾値との比較に基づいて選択される。いくつかの態様において、閾値は、現在のパルスシーケンス又は第1のパルスシーケンスからの反響アーチファクトにおける変化の程度を表す。もしも第2のパルスシーケンスからもたらされた反響アーチファクトにおける変化が閾値を超えないならば、たとえ第2のパルスシーケンスによって反響アーチファクトにおいていくらかの低減が生じたとしても、プロセッサ回路は現在の又は第1のパルスシーケンスを選択する。他の実施形態において、もしも第2のパルスシーケンスが反響アーチファクトの任意の低減につながるならば、プロセッサ回路は第2のパルスシーケンスを選択する。
【0053】
[0067] ステップ940において、プロセッサ回路は、選択されたパルスシーケンス又は構成を使用して反響低減超音波画像を取得するように超音波トランスデューサを制御する。ステップ950において、プロセッサ回路は反響低減超音波画像をディスプレイに出力する。いくつかの実施形態において、プロセッサ回路は、ユーザからの入力が殆どない状態で方法900のステップを自動的に実施してよいことは理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、ユーザはユーザ入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーンなど)を使用して方法を開始し、プロセッサ回路は、方法900のステップを行うようにコンピュータプログラムコードを実行する。いくつかの実施形態において、方法900の個々のステップの実施は、反響低減画像が表示されるまで、ユーザに対して視覚化(すなわち、ディスプレイへの出力)されない。他の実施形態において、プロセッサ回路は、方法900の個々のステップを示す1つ又は複数のグラフィカル表現を生成する。いくつかの実施形態において、マルチパルスシーケンスを選択するために使用される追加的な超音波画像を取得するために追加的なパルスシーケンスが実施される。例えば、反響アーチファクトの低減に関連付けられたパルスシーケンス及び/又は構成を選択するために、タイプが異なり、及び/又は異なる構成とパラメータとを有する2、3、4、5、10又はそれよりも多くのパルスシーケンスが使用される。
【0054】
[0068] 複数のPRI、パルスシーケンス及び/又は構成を使用して超音波画像を取得するようにアレイを制御するステップ、各超音波画像における反響アーチファクト量を計算するステップ、PRI、パルスシーケンス及び/又は構成を選択するステップ、又は、任意の他のステップなどの上述された方法300、400、700、900のステップのうちの1つ又は複数は、プロセッサ若しくはプロセッサ回路、マルチプレクサ、ビーム形成器、信号処理ユニット、画像処理ユニット、又はシステムの任意の他の適切な構成要素などの超音波撮像システムの1つ又は複数の構成要素によって実施されてよいことは理解されよう。例えば、上述された1つ又は複数のステップは、
図2に関して説明されたプロセッサ回路によって行われてよい。システムの処理構成要素は、超音波撮像デバイス内に一体化されてよく、外部コンソール内に収容されてよく、又は別個の構成要素であってよい。
【0055】
[0069] 上述された装置、システム、又は方法は、様々なやり方で修正され得ることを当業者は認識されよう。それ故、本開示に包含される実施形態は、上述された特定の例示的な実施形態に限定されるものではないことを当業者は理解されよう。この点に関して、例示的な実施形態が図示及び説明されたが、前述の開示において広範な修正、変更、代替が企図される。このような変形は、本開示の範囲から逸脱することなく、前述のものに対してなされ得ることが理解される。それ故、添付の特許請求の範囲は、広範に、本開示と矛盾しない態様で解釈されることが適切である。