(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】バイポーラ集電体、電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/70 20060101AFI20240807BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240807BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240807BHJP
【FI】
H01M4/70 A
H01M4/66 A
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2022565719
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020099422
(87)【国際公開番号】W WO2022000308
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張益博
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109994740(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109980234(CN,A)
【文献】特開2013-101919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0237819(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109786755(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108365227(CN,A)
【文献】中国実用新案第2588551(CN,Y)
【文献】中国特許出願公開第108390068(CN,A)
【文献】特開2010-257712(JP,A)
【文献】特開2010-073500(JP,A)
【文献】特開2005-100804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/80
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ集電体であって、
多孔質基体と、第1金属Mと、第2金属Nと、を含み、前記多孔質基体の一方の面に前記第1金属Mが存在し、他方の面に前記第2金属Nが存在し、前記多孔質基体の内部に前記第1金属Mおよび前記第2金属Nのうちの少なくとも1種が存在し、
前記多孔質基体の材料は、炭素材料、高分子材料、および第3金属のうちの少なくとも1種を含み、
前記多孔質基体の空隙率は、20%~90%であり、
前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は、2.00×10
-10Ω・cm~2.00×10
-4Ω・cmであり、
前記Z方向における電子抵抗率は、前記バイポーラ集電体の両面を規定面積の固定板で固定し、抵抗値を測定し、その後、厚さで割り、板面積を掛けて求められる、
バイポーラ集電体。
【請求項2】
前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブフィルム、多層カーボンナノチューブフィルム、カーボンフェルト、多孔質炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項3】
前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項4】
前記第3金属、前記第1金属M、および前記第2金属Nは、それぞれ独立してCu、Al、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、およびステンレス鋼のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項5】
前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さは、0.95μm~900μmであり、前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さは、0.95μm~900μmである、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項6】
前記バイポーラ集電体の厚さは、2μm~1000μmである、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項7】
前記バイポーラ集電体の表面粗さは、0.05μm~10μmである、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項8】
前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さと前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さとの比は、0.05~20である、
請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項9】
前記バイポーラ集電体は、
a)前記バイポーラ集電体の厚さは5μm~50μmであることと、
b)前記バイポーラ集電体の表面粗さは0.2μm~5μmであることと、
c)前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さと前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さとの比は0.2~5であることと、
d)前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は2.00×10
-10Ω・cm~2.00×10
-6Ω・cmであることと、
e)前記多孔質基体の空隙率は40%~70%であることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項10】
前記バイポーラ集電体は、
a)前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さは0.40μm~13.33μmであり、前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さは0.40μm~13.33μmであることと、
b)前記バイポーラ集電体の厚さは5μm~20μmであることと、
c)前記バイポーラ集電体の表面粗さは0.5μm~2μmであることと、
d)前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は2.00×10
-10Ω・cm~2.00×10
-8Ω・cmであることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、請求項1に記載のバイポーラ集電体。
【請求項11】
少なくとも2つの電極組立体と、請求項1~10のいずれか1項に記載のバイポーラ集電体と、を備え、前記バイポーラ集電体は2つの電極組立体の間に位置している、
電気化学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学装置を備える、
電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池分野に関し、具体的には、バイポーラ集電体、該バイポーラ集電体を備える電気化学装置および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、体積や質量エネルギー密度が大きく、サイクル寿命が長く、公称電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、軽量である等の多くの利点を有しており、コンシューマ電子機器分野で幅広く応用されている。近年の電気自動車や携帯電子機器の急速な発展に伴い、電池のエネルギー密度、安全性、サイクル性能等に対する要求はますます高まっており、総合性能を全面的に向上させた新型リチウムイオン電池の開発が求められている。
【0003】
リチウムイオン電池の出力電圧を向上させるために、リチウムイオン電池を直列接続する技術を採用している。前記技術の一つの形態において、2つの電極組立体を密閉チャンバ内に配置し、2つの電極組立体からそれぞれタブを引き出し、タブを直列接続することで出力電圧を高める。別の形態において、2つの電極組立体の間にセパレータを設置し、2つの電極組立体からそれぞれタブを引き出し、タブを直列接続することで出力電圧を高める。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、電気化学装置の出力電圧を向上させることができる、バイポーラ集電体、電気化学装置および電子装置を提供することである。
【0005】
本発明の第一の態様は、多孔質基体と、第1金属Mと、第2金属Nと、を含み、前記多孔質基体の一方の面に前記第1金属Mが存在し、他方の面に前記第2金属Nが存在し、前記多孔質基体の内部に前記第1金属Mおよび前記第2金属Nのうちの少なくとも1種が存在し、
前記多孔質基体の材料は、炭素材料、高分子材料、および第3金属のうちの少なくとも1種を含み、
前記多孔質基体の空隙率は、20%~90%である、バイポーラ集電体を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブフィルム、多層カーボンナノチューブフィルム、カーボンフェルト、多孔質炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性グラファイト、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基体に用いられた前記第3金属、第1金属M、および第2金属Nは、それぞれ独立してCu、Al、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、ステンレス鋼、及びそれらの合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さは、0.95μm~900μmであり、前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さは、0.95μm~900μmである。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体の厚さは、2μm~1000μmである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体の表面粗さは、0.05μm~10μmである。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さと前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さとの比は0.05~20である。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は、2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-4Ω・cmである。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体は、
a)前記バイポーラ集電体の厚さは5μm~50μmであることと、
b)前記バイポーラ集電体の表面粗さは0.2μm~5μmであることと、
c)多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さと前記多孔質基体の表面に第2金属Nによって形成される層の厚さとの比は0.2~5であることと、
d)前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-6Ω・cmであることと、
e)前記多孔質基体の空隙率は40%~70%であることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体は、
a)多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さは0.40μm~13.33μmであり、前記多孔質基体の表面に第2金属Nによって形成される層の厚さは0.40μm~13.33μmであることと、
b)前記バイポーラ集電体の厚さは5μm~20μmであることと、
c)前記バイポーラ集電体の表面粗さは0.5μm~2μmであることと、
d)前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-8Ω・cmであることと、
のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0016】
本発明の第二の態様は、少なくとも2つの電極組立体と、上記任意の実施形態に記載のバイポーラ集電体と、を備え、前記バイポーラ集電体は2つの電極組立体の間に位置している、電気化学装置を提供する。
【0017】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様に記載の電気化学装置を備える、電子装置を提供する。
【0018】
本発明は、バイポーラ集電体を提供し、バイポーラ集電体は、多孔質基体と、第1金属と、第2金属と、を含み、多孔質基体の一方の面に第1金属が存在し、他方の面に第2金属が存在し、多孔質基体の内部に第1金属および第2金属のうちの少なくとも1種が存在する。多孔質材料は、耐酸化、耐還元、イオン絶縁の利点があり、且つ一定の機械的強度を有する。また、バイポーラ集電体の金属層は電子伝導性およびイオン絶縁性に優れ、機械的強度が高く、熱安定性に優れているという利点がある。そして、バイポーラ集電体の両面は一定の粗度を有する。そのため、本発明は、両側の正極膜および負極膜と複合バイポーラ集電体との界面結合を最適化することができ、膜の接着力を高めることができる。本発明のバイポーラ集電体の両面には、それぞれ正極活物質と負極活物質を塗布することができ、隣接する電池組立体と共に電気化学セルを形成し、電気化学装置のエネルギー密度と出力電圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明と従来技術の技術的解決策をより明確に説明するために、以下では実施例及び従来技術を説明するために必要な図面を簡単に紹介する。以下に説明する図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力なしで、これらの図面から他の技術的解決策を更に導き出すことができることが明らかである。
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる集電体の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる電気化学装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかる複合集電体の製造フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、以下では図面および実施例を参照し、さらに本発明を詳しく説明する。説明された実施例は、すべての実施例ではなく、本発明実施例の一部にすぎないことが明らかである。当業者であれば、創造的な労力なしで、本発明の実施例に基づいて得られた他の全ての実施例が本発明の保護範囲に含まれる。
【0022】
新型リチウムイオン電池であるバイポーラリチウムイオン電池は、複数の電池セルを直列接続して1つのリチウムイオン電池を構成することにより、リチウムイオン電池の出力電圧を高める。このリチウムイオン電池に使用されている集電体はバイポーラ集電体である。バイポーラ集電体は、一方側が正極活物質に接触し、他方側が負極活物質に接触するため、耐酸化や耐還元が求められる。そのため、バイポーラ集電体は、通常、アルミニウム/銅複合箔などの金属箔である。しかし、従来のバイポーラリチウムイオン電池には、通常、アルミニウム/銅複合箔の金属間の界面結合が悪いためバイポーラリチウムイオン電池のサイクル安定性に不利であり、金属箔は高価であるためバイポーラリチウムイオン電池の製造コストが増加するという問題がある。
【0023】
また、従来のバイポーラ集電体は、通常、Cu箔とAl箔を直接に複合して得られた多層金属複合集電体も含んでもよい。この集電体は一定の耐酸化性や耐還元性を有するが、金属間の界面結合が悪く、集電体の薄型化が困難であるなどの問題がある。
【0024】
上記に鑑み、
図1に示すように、本発明は、多孔質基体1と、第1金属Mと、第2金属Nと、を含み、前記多孔質基体の一方の面に第1金属Mが存在し、他方の面に第2金属Nが存在し、多孔質基体の内部に第1金属Mおよび第2金属Nのうちの少なくとも1種が存在し、前記多孔質基体の材料は、炭素材料、高分子材料、および第3金属のうちの少なくとも1種を含み、前記多孔質基体の空隙率は20%~90%であり、好ましくは、40%~70%である、バイポーラ集電体を提供する。
【0025】
多孔質基体の材料は、高い耐酸化性、高い耐還元性、高いイオン絶縁性、高い機械的強度、薄い厚さ、および高い熱安定性という利点がある。熱安定性が300℃を超える場合、PVD(Physical Vapor Deposition,物理気相堆積)法によってその表面に金属層を形成することができる。多孔質基体の材料には細孔を有するため、金属材料は多孔質基体の材料に浸透し、他方側に堆積した金属材料と互いに接触して電子伝導性を与えることができる。バイポーラ集電体の両側のPVD法によって得られた金属層の表面は、一定の粗度を有するため、バイポーラ集電体とその両側の表面にそれぞれ塗布された正極活物質または負極活物質との界面結合を高めることができ、バイポーラ集電体と正負極膜との接着力を高めることができる。本発明において、前記多孔質基体はグリッド状であってもよい。
【0026】
本発明において、第1金属と第2金属は、多孔質基体の両側の表面に位置してもよく、多孔質基体の細孔に浸透してもよく、かつ、浸透後の第1金属と第2金属は互いに接触することができる。
【0027】
上記の第1金属および第2金属は、高い耐酸化性、高い耐還元性、高いイオン絶縁性、高い機械的強度、高い熱安定性、および薄い厚さという利点を有する。第1金属および第2金属は、それぞれ正極活物質および負極活物質と接触する必要があるため、第1金属および第2金属は、正極活物質および負極活物質とコンパチビリティーを有する必要がある。
【0028】
本発明のバイポーラ集電体の厚さは、従来のCu/Al箔集電体材料の厚さ以下であり、産業上に大規模に製造することができる。本発明のバイポーラ集電体は、従来常用しているステンレス鋼箔およびTi箔と比較して低コストの利点があり、低コストの導電性材料/高分子複合体と比較して、高い電子伝導性、優れたレート特性、薄い厚さという利点がある。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記炭素材料は、単層カーボンナノチューブフィルム、多層カーボンナノチューブフィルム、カーボンフェルト、多孔質炭素膜、カーボンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記高分子材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリスルホン、およびそれらの誘導体のうちの少なくとも1種を含む。
【0031】
バイポーラ集電体の基体が高分子材料である場合、高分子材料の密度は一般的に使用される金属集電体材料の密度よりも低いため、不活性物質の重量を低減することができ、電池セルの質量エネルギー密度を高めることができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記第3金属、第1金属M、および第2金属Nは、それぞれ独立してCu、Al、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、ステンレス鋼及びそれらの合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0033】
前記第1金属Mと前記第2金属Nは、同一であってもよく、異なってもよいが、それらの表面に塗布された正極活物質または負極活物質とコンパチビリティーを有するべきであり、十分な耐酸化性または耐還元性を有する。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さは0.95μm~900μmであり、0.40μm~13.33μmであることが好ましく、前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さは0.95μm~900μmであり、0.40μm~13.33μmであることが好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体の厚さは、2μm~1000μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましい。バイポーラ集電体の厚さが大きすぎると、電気化学装置内の不活性材料の割合が増加し、エネルギー密度が低下する。厚さが小さすぎると、機械的強度が不足し、破損しやすくなる。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体の表面粗さは、0.05μm~10μmであり、0.2μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~2μmであることがより好ましい。バイポーラ集電体の表面粗さが小さすぎると、その表面に塗布された電極活物質との接着力が不十分であり、バイポーラ集電体の表面粗さが大きすぎると、接着効果を改善しないだけでなく、有効物質の重量分布の変動を引き起こし、リチウムの局所的な析出のリスクを増加する可能性がある。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記多孔質基体の表面に前記第1金属Mによって形成される層の厚さと前記多孔質基体の表面に前記第2金属Nによって形成される層の厚さとの比は0.05~20であり、0.2~5であることが好ましい。この厚さの比率は選択されたMとNの材料の種類によって変化する。一般的には、低密度、低コスト、高い製造効率を有する金属層は比較的厚く、それと逆の場合、金属層は比較的薄いため、ED(Energy Density,エネルギー密度)を高め、コストを低減することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率は、2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-4Ω・cmであり、2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-6Ω・cmであることが好ましく、2.00×10-10Ω・cm~2.00×10-8Ω・cmであることがより好ましい。前記Z方向は、前記バイポーラ集電体の厚さ方向、即ちサイズが最も小さい方向を指す。本発明において、良好な電子伝導性を与えるために、バイポーラ集電体のZ方向における電子抵抗率が小さいことが望まれている。
【0039】
本発明は、少なくとも1つの本発明に係るバイポーラ集電体を備える電気化学装置をさらに提供し、前記バイポーラ集電体は電気化学装置の外装と密閉的に接続し、前記バイポーラ集電体の両側に2つの独立した密閉チャンバが形成され、各密閉チャンバ内に1つの電極組立体と電解液を有して、独立した電気化学セルが形成される。ここで、前記バイポーラ集電体の両面にそれぞれ反対の極性を持つ電極活物質を塗布する。隣接する電気化学セルの間は、本発明のバイポーラ集電体を備えるバイポーラ電極を介して内部直列接続し、より高い動作電圧を有するバイポーラリチウムイオン電池を形成する。
【0040】
本発明の一実施形態において、2つの隣接する電極組立体からそれぞれ1つのタブを引き出すことができ、該2つの電極組立体のタブの極性は逆であり、例えば、バイポーラ集電体の電極組立体Aに隣接する一側面に正極活物質が塗布され、電極組立体Bに隣接する一側面に負極活物質が塗布される場合、電極組立体Aから負極タブを引き出し、電極組立体Bから正極タブを引き出す。この場合、2つのタブ間の出力電圧は、2つの電気化学セルの出力電圧の合計である。
【0041】
本発明の一実施形態において、2つの隣接する電極組立体からそれぞれ2つのタブを引き出すことができ、例えば、バイポーラ集電体の電極組立体Aに隣接する一側面に正極活物質が塗布され、電極組立体Bに隣接する一側面に負極活物質が塗布される場合、電極組立体Aの正極タブと電極組立体Bの正極タブは直列に接続し、電極組立体Aの負極タブと電極組立体Bの正極タブは出力タブであり、出力電圧は2つの電気化学セルの出力電圧の合計である。この場合、2つの隣接する電気化学セルの間にはバイポーラ集電体を介した内部直列接続と、タブを介した外部直列接続が同時に存在する。
【0042】
本発明の一実施形態において、リチウムイオン電池の動作状態を監視するために、バイポーラ集電体から1つのタブを引き出すことができる。
【0043】
本発明の一実施形態において、本発明の電気化学装置は、少なくとも1つのバイポーラ集電体を備え、前記バイポーラ集電体は外装と密閉的に接続し、バイポーラ集電体の両側にそれぞれ独立した密閉チャンバが形成され、各密閉チャンバ内に1つの電極組立体と電解液を有して1つの電気化学セルが形成される。ここで、前記バイポーラ集電体の一方側の面に電極活物質が塗布され、他方側の面が電極組立体の集電体と直接に接触して電気接続している。例えば、バイポーラ集電体の電極組立体Aに近づく一側面に正極活物質が塗布され、電極組立体Bに近づく一側面が電極組立体Bの負極集電体と直接に接触して電気接続している場合、電極組立体Aから1つの負極タブを引き出し、電極組立体Bから1つの正極タブを引き出すことができ、バイポーラ集電体を介して2つの電気化学セルを内部直列接続されることができ、または、電極組立体AとBからそれぞれ2つのタブを引き出し、電極組立体Aの正極タブと電極組立体Bの負極タブとを直列接続し、2つの電気化学セルは、バイポーラ集電体を介して内部直列接続され、且つタブを介して外部直列接続されている。また、リチウムイオン電池の動作状態を監視するために、バイポーラ集電体から1つのタブを引き出すことができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、本発明の電気化学装置は、少なくとも1つのバイポーラ集電体を備え、前記バイポーラ集電体は外装と密閉的に接続し、前記バイポーラ集電体の両側にそれぞれ独立した密閉チャンバが形成され、各密閉チャンバ内に1つの電極組立体と電解液を有して、1つの電気化学セルが形成される。ここで、前記バイポーラ集電体の一方側の面に電極活物質が塗布され、他方側の面が電極組立体のセパレータと接触して電気絶縁になっている。例えば、バイポーラ集電体の電極組立体Aに近づく一方側の面に正極活物質が塗布され、電極組立体Bに近づく一方側の面が電極組立体Bのセパレータと接触して電極組立体Bとの電気絶縁になっている。この場合、2つの電極組立体からそれぞれ2つのタブを引き出し、バイポーラ集電体から1つのタブを引き出し、該タブは、電極組立体Aの正極タブと並列接続し、そして電極組立体Bの負極タブと直列接続している。
【0045】
本発明の一実施形態において、本発明の電気化学装置は、少なくとも1つのバイポーラ集電体を備え、前記バイポーラ集電体は外装と密閉的に接続し、前記バイポーラ集電体の両側にそれぞれ独立した密閉チャンバが形成され、各密閉チャンバ内に1つの電極組立体と電解液を有して1つの電気化学セルが形成される。ここで、前記バイポーラ集電体の両面が隣接する電極組立体のセパレータと直接に接触して電気絶縁になっている。この場合、2つの電極組立体からそれぞれ2つのタブを引き出し、2つの電極組立体はタブを介して直列接続している。
【0046】
本発明の一実施形態において、バイポーラ集電体と電極活物質との間はアンダーコート層を含んでもよく、アンダーコート層は、バイポーラ集電体と活物質との間の接着性を改善し、バイポーラ集電体と活物質との間の電子伝導性を向上させる作用を果たす。前記アンダーコート層は、通常、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴム、および脱イオン水を混合して形成されたスラリーをバイポーラ集電体に塗布して乾燥させることによって得られ、かつ、バイポーラ集電体の両面のアンダーコート層は同一であってもよく、異なってもよい。正極活物質層、負極活物質層、正極アンダーコート層、および負極アンダーコート層の製造工程を以下に示す。
【0047】
図2は、本発明の一実施形態にかかる電気化学装置の模式図である。
図2に示すように、該電気化学装置は、バイポーラ集電体300によって2つの電極組立体、即ち第1の電極組立体100と第2の電極組立体200に分割される。ここで、第1の電極組立体100は、
図2の上から下へ向かって、負極101と、第1の負極活物質層102と、第1のセパレータ103と、第1の正極活物質層104と、バイポーラ集電体300の一部と、を順に含み、第2の電極組立体200は、
図2の上から下へ向かって、正極201と、第2の正極活物質層202と、第2のセパレータ203と、第2の負極活物質層204と、バイポーラ集電体300の別の部分と、を順に含む。加えて、電気化学装置を封止部材400で封止することもでき、それにより、該電気化学装置に2つの独立したチャンバ構造が形成され、2つのチャンバはそれぞれ第1の電極組立体100と第2の電極組立体200に対応する。
【0048】
本発明は、上記の実施形態にかかる電気化学装置を備える電子装置を提供する。
【0049】
本発明の電極組立体は、特に限定されず、本発明の目的を達成できる限り、従来技術でのいずれの電極組立体を使用することができ、例えば、積層型の電極組立体または巻回型の電極組立体を使用することができる。電極組立体は、通常、正極片と、負極片と、セパレータと、を含む。
【0050】
本発明における負極片は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、負極片は、通常、負極集電体と、負極活物質層と、を含む。ここで、負極集電体は特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、および複合集電体などの本分野で公知の任意の負極集電体を使用することができる。負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質は特に限定されず、本分野で公知の任意の負極活物質を使用することができる。例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン、ケイ素-炭素複合材料、チタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0051】
本発明における正極片は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、前記正極片は、通常、正極集電体と、正極活物質層と、を含む。ここで、前記正極集電体は特に限定されず、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、または複合集電体などの本分野で公知の任意の正極集電体を使用することができる。前記正極活物質は特に限定されず、従来技術での任意の正極活物質であってもよい。前記活物質は、NCM811、NCM622、NCM523、NCM111、NCA、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、またはチタン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0052】
本発明における電解液は特に限定されず、本分野で公知の任意の電解液を使用することができ、電解液は、例えば、ゲル状、固体状、および液体状のいずれか1種であってもよく、例えば、液体電解液はリチウム塩および非水溶媒を含むことができる。
【0053】
リチウム塩は、特に限定されず、本発明の目的を達成できる限り、本分野で公知の任意のリチウム塩を使用することができる。例えば、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムビス(オキサレート)ホウ酸LiB(C2O4)2(LiBOB)、またはジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBF2(C2O4)(LiDFOB)のうちの少なくとも1種を含んでもよい。例えば、リチウム塩はLiPF6を選択して使用することができる。
【0054】
非水溶媒は、本発明の目的を達成できる限り、特に限定されない。例えば、非水溶媒は、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、ニトリル化合物、または他の有機溶媒のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0055】
例えば、炭酸エステル化合物は、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、またはトリフルオロメチルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0056】
本発明のセパレータは、特に限定されないが、例えば、本発明の電解液に対して安定な材料からなるポリマー、無機物などを含む。セパレータは、通常にイオン伝導性と電子絶縁性を備えている必要がある。
【0057】
セパレータは、例えば、基材層と表面処理層とを含むことができる。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルム、または複合膜であってもよく、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリイミドから選択される少なくとも1種である。任意に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用することができる。任意に、基材層の少なくとも片面に表面処理層が設けられ、表面処理層は、ポリマー層または無機物層であってよく、ポリマーと無機物を混合して形成された層であってもよい。
【0058】
例えば、無機物層は、無機粒子と接着剤とを含み、前記無機粒子は特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムから選択される少なくとも1種である。前記接着剤は特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリヘキサフルオロプロピレンから選択される1種又は複数種の組み合わせである。ポリマー層はポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルの重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、またはポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0059】
図3に示すように、本発明は、上記いずれの実施形態にかかる前記複合バイポーラ集電体の製造方法を提供し、該製造方法は、
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板3の表面に高分子材料粒子コート層2を製造するステップと、
2)高分子材料粒子コート層2に対して軟化温度までに高温熱処理を行うステップと、
3)耐熱多孔質網目基体1のA面を高分子材料コート層の表面に貼り付けるステップと、
4)耐熱多孔質網目基体と高分子材料コート層を効果的かつ確実に結合させるように熱圧ロールでプレスするステップと、
5)室温まで冷却した後、耐熱多孔質網目基体/高分子材料コート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外すステップと、
6)耐熱多孔質網目基体/高分子材料コート層複合膜のB面に、PVD法によって一定の厚さの第2金属Nを製造するステップと、
7)A面の高分子コート層を有機溶剤で溶解および洗浄し、A面の耐熱多孔質網目基体を完全に露出させるステップと、
8)耐熱多孔質網目基体のA面に、PVD法によって一定の厚さの第1金属Mを製造するステップと、
9)A面とB面の金属MとNを密着するように熱圧ロールでプレスするステップと、
10)巻き取るステップと、を含む。
【0060】
当業者であれば理解できるように、本発明によるバイポーラ集電体は、上記例示した方法に限定されず、他の方法によっても製造できる。例えば、PVD法の代わりCVD(Chemical Vapor Deposition,化学気相堆積)法、メッキなどの他の方法によって行われることができる。
【0061】
PVD(Physical Vapor Deposition,物理気相堆積)とは、真空で低電圧、高電流のアーク放電技術を採用し、ガス放電を使用してターゲットを蒸発させ、蒸発した物質とガスをイオン化させ、電場の加速を利用することで蒸発した物質とその反応物をワークピースに堆積させる。CVDプロセスと比較して、PVDプロセスの処理温度が低く、フィルム内部応力状態は圧縮応力であり、PVDプロセスは環境に悪い影響を与えず、現代の環境に優しいという発展方向と一致する。
【0062】
なお、発明を実施するための形態では、電気化学装置としてリチウムイオン電池を例に挙げて説明するが、該電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されない。
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態についてより詳細に説明する。各実験および評価は、以下の方法で行う。なお、特に説明しない限り、「重量部」、「%」は重量基準である。
実施例1
【0064】
<バイポーラ極片の製造>
<バイポーラ集電体の製造>
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板の表面に厚さが45μmであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)粒子コート層を製造し、
2)PVDFコート層に対して軟化温度までに180℃での熱処理を行い、
3)厚さが140μmであるPI(ポリイミド)多孔質膜のA面をPVDFコート層の表面に貼り付け、ポリイミド多孔質膜の空隙率は60%であり、
4)PI多孔質膜とPVDFコート層を効果的かつ確実に結合させるように180℃の熱圧ロールでプレスし、
5)室温まで冷却した後、PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外し、
6)PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さ(L2')が95μmであるAlを製造し、
7)A面のPVDFをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で溶解および洗浄し、A面のPI多孔質膜基体を完全に露出させ、
8)PI多孔質膜のA面に、PVD法によって厚さ(L1')が45μmであるCuを製造し、
9)A面とB面の金属AlとCuを密着するように200℃の熱圧ロールでプレスし、複合集電体を総厚さが100μmになるまでプレスし、ここで、Al層の厚さは約66.66μmであり、Cu層の厚さは約33.33μmであり、
10)巻き取った。
【0065】
<バイポーラ極片の負極活物質層の製造>
負極活物質である黒鉛、Super P(導電性カーボンブラック)、SBR(スチレンブタジエンゴム)を96:1.5:2.5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が70%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。バイポーラ集電体の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが130μmである負極活物質層を得た。
【0066】
<バイポーラ極片の正極活物質層の製造>
正極活物質であるLiCoO2(コバルト酸リチウム)、導電性カーボンブラック、PVDFを97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、溶媒としてのNMP(N-メチルピロリドン)を加入し、固形分が75%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。バイポーラ集電体の他方側の面にスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、厚さが110μmである正極活物質層を得た。
【0067】
上記のステップを行ってバイポーラ極片を取得し、極片を41mm×61mm仕様にカットして用意する。
【0068】
<負極片の製造>
負極活物質である黒鉛、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴムを96:1.5:2.5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が70%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。厚さが10μmである銅箔の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、コート層の厚さが150μmである片面に負極活物質層を塗布した負極片を取得し、そして、該負極片の他方側の面に上記の塗布ステップを繰り返した。塗布した後、極片を41mm×61mm仕様にカットし、極片にタブを溶接して用意する。
【0069】
<正極片の製造>
正極活物質であるLiCoO2、導電性カーボンブラック、PVDFを97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、溶媒としてのNMPを加入し、固形分が75%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。厚さが12μmであるアルミ箔の一方側の面にスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、コート層の厚さが100μmである片面に正極活物質層を塗布した正極片を得た。そして、該正極片の他方側の面に上記ステップを繰り返した。塗布した後、極片を38mm×58mm仕様にカットし、極片にタブを溶接して用意する。
【0070】
<電解液の調製>
乾燥アルゴンガス雰囲気において、まず、有機溶媒であるEC(エチレンカーボネート)、EMC(メチルエチルカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)を、EC:EMC:DEC=30:50:20の重量比で混合し、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)を有機溶媒中に加入して溶解し、均一に混合させ、リチウム塩の濃度が1.15Mである電解液を得た。
【0071】
<電極組立体の製造>
セパレータとして厚さが15μmであるPE(ポリエチレン)膜を使用し、負極片の両面にそれぞれ正極片一枚を配置し、正極片と負極片との間にセパレータを配置し、積層体を形成し、その後、積層体構造全体の四隅を固定し、電極組立体Aを得た。
【0072】
セパレータとして厚さが15μmであるPE膜を使用し、正極片の両面にそれぞれ負極片一枚を配置し、正極片と負極片との間にセパレータを配置し、積層体を形成し、その後、積層体構造全体の四隅を固定し、電極組立体Bを得た。
【0073】
<バイポーラリチウムイオン電池の製造>
<バイポーラ電極組立体の製造>
ピットパンチング(pit punching)成形による厚さが90μmである外装膜(アルミラミネートフィルム)をそのピットが上に向かうように組立治具内に配置し、その後、電極組立体Aをその正極片が上に向かうようにピット内に配置し、両面塗布のバイポーラ極片を負極コート層が下に向かうように電極組立体Aの上に配置して、電極組立体Aの正極片がバイポーラ極片の負極活物質の塗布領域に合わせ、外力を加えて押し付けた。
【0074】
上記の組立半製品をバイポーラ極片の正極面が上に向かうように別の組立治具内に配置し、電極組立体Bの負極がバイポーラ極片の正極活物質層に合わせるように電極組立体Bをバイポーラ集電体の上に配置し、その後、ピットパンチング成形による厚さが90μmであるアルミラミネートフィルムをそのピット面が下に向かうように電極組立体Bを被覆し、そして、電極組立体Aと電極組立体Bをバイポーラ極片によって分離させるようにホットプレスで2つのアルミラミネートフィルムをヒートシールし、バイポーラ電極組立体を得た。該バイポーラ電極組立体は、2つの独立したチャンバを有し、ここで、電極組立体Aは第1のチャンバに対応し、電極組立体Bは第2のチャンバに対応した。
【0075】
<電極組立体の注液と封止>
バイポーラ電極組立体の2つのチャンバにそれぞれ電解液を注入し、該2つのチャンバを封止し、各電極組立体から1つのタブを引き出し、第1のチャンバの電極組立体と第2のチャンバの電極組立体とをバイポーラ集電体によって内部直列接続して導通させ、バイポーラリチウムイオン電池を得て、該バイポーラリチウムイオン電池の2つのチャンバの間にイオン交換は行われなかった。
実施例2
【0076】
<バイポーラ集電体の製造>を以下のように行うこと以外は、実施例1と同じであった。
<バイポーラ集電体の製造>
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板の表面に厚さが9μmであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)粒子コート層を製造し、
2)PVDFコート層に対して軟化温度までに180℃での熱処理を行い、
3)厚さが28μmであるPI(ポリイミド)多孔質膜のA面をPVDFコート層の表面に貼り付け、ポリイミド多孔質膜の空隙率は60%であり、
4)PI多孔質膜とPVDFコート層を効果的かつ確実に結合させるように180℃の熱圧ロールでプレスし、
5)室温まで冷却した後、PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外し、
6)PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さが19μmであるAlを製造し、
7)A面のPVDFをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で溶解および洗浄し、A面のPI多孔質膜基体を完全に露出させ、
8)PI多孔質膜のA面に、PVD法によって厚さが9.00μmであるCuを製造し、
9)A面とB面の金属AlとCuを密着するように200℃の熱圧ロールでプレスし、複合集電体を総厚さが20μmになるまでプレスし、ここで、Al層の厚さは約13.33μmであり、Cu層の厚さは約6.67μmであり、
10)巻き取った。
実施例3
【0077】
<バイポーラ集電体の製造>において、ステップ9の熱圧ロールの温度を220℃に調整し、バイポーラ集電体の表面粗さを0.2μmにすること以外は、実施例2と同じであった。
実施例4
【0078】
<バイポーラ集電体の製造>において、ステップ9の熱圧ロールの温度を230℃に調整し、バイポーラ集電体の表面粗さを0.05μmにすること以外は、実施例2と同じであった。
実施例5
【0079】
<バイポーラ集電体の製造>において、PVD法によって厚さが26.67μmであるAlを製造し、厚さが1.33μmであるCuを製造し、熱圧ロールによるプレス後の、Alの厚さが19.05μmになり、Cuの厚さが0.95μmに変更すること以外は、実施例2と同じであった。
実施例6
【0080】
<バイポーラ集電体の製造>において、PVD法によって厚さが5.60μmであるAlを製造し、厚さが22.40μmであるCuを製造し、熱圧ロールによるプレス後の、Alの厚さが4.00μmになり、Cuの厚さが16.00μmに変更すること以外は、実施例2と同じであった。
実施例7
【0081】
<バイポーラ集電体の製造>において、PVD法によって厚さが1.33μmであるAlを製造し、厚さが26.67μmであるCuを製造し、熱圧ロールによるプレス後の、Alの厚さが0.95μmになり、Cuの厚さが19.05μmに変更すること以外は、実施例2と同じであった。
実施例8
【0082】
<バイポーラ集電体の製造>において、B面にTiを製造し、A面にTiを製造し、PI多孔質膜の空隙率は20%にすること以外は、実施例5と同じであった。
実施例9
【0083】
<バイポーラ集電体の製造>において、PI多孔質膜の空隙率は40%になり、Z方向における電子抵抗率を2.00×10-7Ω・cmに調整すること以外は、実施例6と同じであった。
実施例10
【0084】
<バイポーラ集電体の製造>において、PI多孔質膜の代わりに空隙率が90%であるNi多孔質基体に変更し、(6)Ni多孔質基体-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さが14.00μmであるAgを製造し、
(8)Ni多孔質基体のA面に、PVD法によって厚さが14.00μmであるAgを製造する、こと以外は、実施例2と同じであった。
実施例11
【0085】
<バイポーラ集電体の製造>において、PI多孔質膜の代わりにカーボンフェルト多孔質基体に変更すること以外は、実施例6と同じであった。
実施例12
【0086】
<バイポーラ集電体の製造>において、PI多孔質膜の代わりにPET(ポリエチレンテレフタレート)多孔質基体に変更すること以外は、実施例6と同じであった。
実施例13
【0087】
<バイポーラ集電体の製造>において、PI多孔質膜の代わりにステンレス鋼多孔質基体に変更すること以外は、実施例6と同じであった。
実施例14
【0088】
<バイポーラ集電体の製造>において、A面にNiを製造すること以外は実施例6と同じであった。
実施例15
【0089】
<バイポーラ集電体の製造>において、A面にTiを製造すること以外は実施例6と同じであった。
実施例16
【0090】
<バイポーラ集電体の製造>において、B面にNiを製造すること以外は実施例6と同じであった。
実施例17
【0091】
<バイポーラ集電体の製造>において、B面にTiを製造すること以外は実施例6と同じであった。
実施例18
【0092】
<バイポーラ集電体の製造>を以下のように行うこと以外は、実施例1と同じであった。
<バイポーラ集電体の製造>
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板の表面に厚さが450μmであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)粒子コート層を製造し、
2)PVDFコート層に対して軟化温度までに180℃での熱処理を行い、
3)厚さが1400μmであるPI(ポリイミド)多孔質膜のA面をPVDFコート層の表面に貼り付け、ポリイミド多孔質膜の空隙率は60%であり、
4)PI多孔質膜とPVDFコート層を効果的かつ確実に結合させるように180℃の熱圧ロールでプレスし、
5)室温まで冷却した後、PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外し、
6)PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さが280μmであるAlを製造し、
7)A面のPVDFをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で溶解および洗浄し、A面のPI多孔質膜基体を完全に露出させ、
8)PI多孔質膜のA面に、PVD法によって厚さが1120μmであるCuを製造し、
9)A面とB面の金属AlとCuを密着するように200℃の熱圧ロールでプレスし、複合集電体を総厚さが1000μmになるまでプレスし、ここで、Al層の厚さは約200.00μmであり、Cu層の厚さは約800.00μmであり、
10)巻き取った。
実施例19
【0093】
<バイポーラ集電体の製造>を以下のように行うこと以外は、実施例1と同じであった。
<バイポーラ集電体の製造>
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板の表面に厚さが4.5μmであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)粒子コート層を製造し、
2)PVDFコート層に対して軟化温度までに180℃での熱処理を行い、
3)厚さが14μmであるPI(ポリイミド)多孔質膜のA面をPVDFコート層の表面に貼り付け、ポリイミド多孔質膜の空隙率は60%であり、
4)PI多孔質膜とPVDFコート層を効果的かつ確実に結合させるように180℃の熱圧ロールでプレスし、
5)室温まで冷却した後、PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外し、
6)PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さが2.80μmであるAlを製造し、
7)A面のPVDFをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で溶解および洗浄し、A面のPI多孔質膜基体を完全に露出させ、
8)PI多孔質膜のA面に、PVD法によって厚さが11.20μmであるCuを製造し、
9)A面とB面の金属AlとCuを密着するように200℃の熱圧ロールでプレスし、複合集電体を総厚さが10μmになるまでプレスし、ここで、Al層の厚さは約2.00μmであり、Cu層の厚さは約8.00μmであり、
10)巻き取った。
実施例20
【0094】
<バイポーラ集電体の製造>を以下のように行うこと以外は、実施例1と同じであった。
<バイポーラ集電体の製造>
1)静電スプレー法によってステンレス鋼製基板の表面に厚さが0.9μmであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)粒子コート層を製造し、
2)PVDFコート層に対して軟化温度までに180℃での熱処理を行い、
3)厚さが0.28μmであるPI(ポリイミド)多孔質膜のA面をPVDFコート層の表面に貼り付け、ポリイミド多孔質膜の空隙率は60%であり、
4)PI多孔質膜とPVDFコート層を効果的かつ確実に結合させるように180℃の熱圧ロールでプレスし、
5)室温まで冷却した後、PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜をドクターブレードでステンレス鋼製基板から取り外し、
6)PI多孔質膜-PVDFコート層複合膜のB面に、PVD法によって厚さが0.56μmであるAlを製造し、
7)A面のPVDFをDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で溶解および洗浄し、A面のPI多孔質膜基体を完全に露出させ、
8)PI多孔質膜のA面に、PVD法によって厚さが2.24μmであるCuを製造し、
9)A面とB面の金属AlとCuを密着するように200℃の熱圧ロールでプレスし、複合集電体を総厚さが2μmになるまでプレスし、ここで、Al層の厚さは約0.40μmであり、Cu層の厚さは約1.60μmであり、
10)巻き取った。
実施例21
【0095】
バイポーラ極片に負極アンダーコート層と正極アンダーコート層を配置すること以外は実施例19と同じであった。詳細なデータは表1、2に示した。
【0096】
<バイポーラ極片の負極アンダーコート層の製造>
導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴムを95:5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が80%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。複合バイポーラ集電体のA面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが5μmである負極アンダーコート層を得た。
【0097】
<バイポーラ極片の負極活物質層の製造>
負極活物質である黒鉛、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴムを96:1.5:2.5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が70%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。負極アンダーコート層にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが120μmである負極片を得た。
【0098】
<バイポーラ極片の正極アンダーコート層の製造>
導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴムを97:3の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が85%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。複合バイポーラ集電体のB面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが3μmである正極アンダーコート層を得た。
【0099】
<バイポーラ極片の正極活物質層の製造>
正極活物質であるLiCoO2、導電性カーボンブラック、PVDFを97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、溶媒としてのNMPを加入し、固形分が75%であるスラリーを調製し、均一に撹拌した。正極アンダーコート層にスラリーを均一に塗布し、90℃で乾燥させ、厚さが100μmである正極片を得た。
実施例22
【0100】
以下の事項以外は、実施例21と同じであった。
<バイポーラ極片の負極アンダーコート層の製造>において、Ppy(ポリピロール)、スチレンブタジエンゴムを95:5の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が80%であるスラリーを調製し、均一に撹拌し、複合バイポーラ集電体のA面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが3μmである負極アンダーコート層を得た。
【0101】
<バイポーラ極片の正極アンダーコート層の製造>において、Ppy(ポリピロール)、スチレンブタジエンゴムを97:3の重量比で混合し、溶媒としての脱イオン水を加入し、固形分が85%であるスラリーを調製し、均一に撹拌し、複合バイポーラ集電体のB面にスラリーを均一に塗布し、110℃で乾燥させ、厚さが3μmである正極アンダーコート層を得た。
実施例23
【0102】
以下の事項以外は、実施例19と同じであった。
<電極組立体の製造>
両面塗布の負極片、セパレータ、両面塗布の正極片を順に積層して積層体に形成し、そして、積層体全体を巻回し、負極片を最外側に配置した。ここで、セパレータとして厚さが15μmであるポリエチレン(PE)膜を用いた。
【0103】
<バイポーラリチウムイオン電池の製造>
<バイポーラ電極組立体の製造>
ピットパンチング成形によるアルミラミネートフィルムをそのピット面が上に向かうように組立治具内に配置し、電極組立体Aをピット内に配置し、バイポーラ集電体の正極活物質を含む面が下に向かうように電極組立体Aの上に配置し、活物質の塗布領域同士が対応し、外力を加えて押し付けて組立半製品を得た。
【0104】
組立半製品をバイポーラ集電体の負極活物質を含む面が上に向かうように別の組立治具内に配置し、活物質の塗布領域同士が対応するように電極組立体Bをバイポーラ集電体上に配置して、外力を加えて押し付け、その後、ピットパンチング成形によるアルミラミネートフィルムをそのピット面が下に向かうように電極組立体Bを被覆し、ホットプレスでアルミラミネートフィルムの周囲をヒートシールし、組立電極組立体を得た。
比較例1
【0105】
バイポーラ集電体としてCu/Al複合箔集電体を使用すること以外は、実施例1と同じであった。
【0106】
Cu/Al複合集電体の厚さは、20μmであった。
比較例2
【0107】
バイポーラ集電体としてステンレス鋼箔集電体を使用すること以外は、実施例1と同じであった。
【0108】
ステンレス鋼集電体の厚さは、20μmであった。
比較例3
【0109】
バイポーラ集電体は、ゼロ次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合化することによって得られること以外は、実施例1と同じであった。
【0110】
バイポーラ集電体では、ゼロ次元構造の導電性材料はドット状のカーボンブラック粒子であり、高分子基材はPET基材であり、ドット状のカーボンブラック粒子は3次元分布の基体内に均一かつ無配向に分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmであった。
比較例4
【0111】
バイポーラ集電体は、1次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合化することによって得られること以外は、実施例1と同じであった。
【0112】
バイポーラ集電体では、1次元構造の導電性材料はMWCNTであり、高分子基材はPET基材であり、MWCNTは3次元分布の基体内に均一かつ無配向に分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmである。
比較例5
【0113】
バイポーラ集電体は、2次元構造の導電性材料と高分子基材とを複合化することによって得られること以外は、実施例1と同じであった。
【0114】
バイポーラ集電体では、2次元構造の導電性材料はグラフェンであり、高分子基材はPET基材であり、グラフェンは3次元分布の基体内に均一かつ無配向に分散し、バイポーラ集電体の厚さは約50μmである。
【0115】
<性能テスト>
下記の方法を使用して、各実施例および各比較例で製造されたバイポーラ集電体、バイポーラリチウムイオン電池に対してテストを行う。
【0116】
材料の表面粗さのテスト
接触式測定方法であって、測定器の触針を被測定表面に接触させ、触針がその表面を軽くなぞることで表面粗さを測定する測定法である。非常に鋭い触針を被測定表面に垂直に置き、横方向に移動させる。作業面は粗いため、触針は被測定表面の輪郭に沿って垂直に上下に移動する。この微小な変位を回路で電気信号に変換し、その電気信号を増幅、ディジタル化の処理を行って、ワークの表面粗さのパラメータ値を得ることができる。また、記録装置で表面輪郭図形を描画し、データ処理を行って表面粗さのパラメータ値を得ることもできる。
【0117】
当該方法は、0.02μm~160μmの範囲の表面粗さRzの測定に適合する。
【0118】
複合バイポーラ集電体の厚さ方向におけるM層とN層の比率のテスト
試料の断面試料を用意し、SEM(Scanning Electron Microscope,走査型電子顕微鏡)で測定し、かつ元素分析を行い、MとNとの間の界面を求め、界面からM層の外縁までの距離をL1とし、界面からN層の外縁までの距離をL2とし、L1とL2の比をM層とN層の比率とする。
【0119】
バイポーラ集電体の層厚をHとする。
【0120】
Z方向における電子抵抗率Rのテスト
複合バイポーラ集電体の両面を規定面積の固定板で固定し、抵抗値を測定し、その後、厚さで割り、板面積を掛けて電子抵抗率を求めることができる。
【0121】
膜とバイポーラ集電体との接着力のテスト
1)充放電サイクルを行っていない電極組立体、すなわち新しい電極組立体から極片を取り出し、幅3cm、長さ10~16cmの短冊状に切断する。
2)鋼板の表面に幅2cm、長さ9~15cmの専用の強力両面テープを貼る。
3)切断した極片試料をそのテスト面が下に向かうように両面テープの上に貼って、極片と同じ幅で、極片の長さより8~20cm長い紙テープを極片の一方の端の下に挿入し、クレープペーパーテープで固定する。
4)鋼板の極片を付かない一端を治具で固定し、鋼板を縦に置き、紙テープを上に折り曲げ、アッパークランプで固定する。
5)紙テープを5cm/分の速度で垂直上方に引っ張り、テープおよびテープに粘着された膜の塗布部分を集電体から引き離し、引き離したときの力を測定し、測定した力と上部の極片の幅との比を算出し、複数回を測定して、得られた値の平均値を接着力とする。
【0122】
バイポーラ集電体と正極片との接着力はF+であり、バイポーラ集電体と負極片との接着力はF-である。
【0123】
放電エネルギー密度EDのテスト
リチウムイオン電池を常温で30分間静置し、0.05Cの充電レートで定電流で8.8V(定格電圧)まで充電した後、電気化学装置を0.05Cのレートで6.0Vまで放電し、上記の充電/放電のサイクルを3回繰り返して、テスト対象の電気化学装置のフォーメーションを完了する。電気化学装置のフォーメーションが完了した後、0.1Cの充電レートで定電流で8.8Vの電圧まで充電した後、電気化学装置を0.1Cの放電レートで6.0Vまで放電し、その放電容量を記録し、その後、0.1Cでの放電中のエネルギー密度を算出する。
質量エネルギー密度(Wh/kg)=放電エネルギー(Wh)/リチウムイオン電池の重量(kg)
【0124】
50回サイクル後の放電容量/初回放電容量Q50/Q0(%)
25℃のテスト温度で、0.5Cで定電流で8.8Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cで6.0Vまで放電し、この段階で得られた容量を初期容量とし、そして、0.5C充電/0.5C放電を50回サイクルした後、初期容量に対するリチウムイオン電池の容量の比を算出する。
【0125】
【0126】
【0127】
表1、2に示すように、比較例1および比較例2、すなわち、通常のCu/Al複合箔集電体および通常のステンレス鋼箔集電体のリチウムイオン電池と比較して、本発明の実施例にかかるリチウムイオン電池のエネルギー密度、初回放電容量に対する50回サイクル後の放電容量の比、膜とバイポーラ集電体との接着力はいずれも向上する。
【0128】
比較例3~5と比較して、本発明の実施例にかかるリチウムイオン電池のエネルギー密度はほとんど変化せず、本発明の実施例1~2、6、9~23では、初回放電容量に対する50回サイクル後の放電容量の比が大きくなり、本発明の実施例における膜とバイポーラ集電体との接着力も大きくなる。
【0129】
実施例1~4から分かるように、バイポーラ集電体の表面粗さが大きくなるにつれて、バイポーラ集電体と正負極片との接着力は大きくなる傾向がある。実施例5~7からか分かるように、バイポーラ集電体の厚さ方向の比率が大きくなるにつれて、リチウムイオン電池の質量エネルギー密度は減少する傾向があり、初回放電容量に対する50回充放電サイクル後の放電容量の比率は最初に増加し、次に減少する。総合的に考えると、厚さ方向の比率は大きすぎても小さすぎてもいけない。実施例17~20から分かるように、バイポーラ集電体の厚さが大きくなるにつれて、リチウムイオン電池の質量エネルギー密度は減少し、初回放電容量に対する50回充放電サイクル後の放電容量の比率は最初に増加し、次に減少する。総合的に考えると、バイポーラ集電体の厚さは大きすぎても小さすぎてもいけない。
【0130】
以上のように、本発明の実施例にかかるリチウムイオン電池の性能は、比較例よりも優れている。
【0131】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の主旨および原理の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換、改善などは、本発明の保護範囲内に含まれる。