(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】シラザン系化合物、これを含むコーティング用組成物、コーティング層を有する光透過性フィルム、及び光透過性フィルムを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
C08G 77/60 20060101AFI20240807BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240807BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C08G77/60
B32B27/00 101
B05D7/24 302Y
(21)【出願番号】P 2022578859
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 KR2021007829
(87)【国際公開番号】W WO2021261889
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0078314
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080579
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(73)【特許権者】
【識別番号】522492185
【氏名又は名称】イ,グン ス
【氏名又は名称原語表記】LEE, Geun Su
【住所又は居所原語表記】(Hillstate Gwanggyo, Ha-dong)101-3803, 6, Central park-ro, Yeongtong-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do 16514, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,グン ス
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ハク-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジョン ヒョン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181334(JP,A)
【文献】国際公開第2003/087228(WO,A1)
【文献】特開2002-293941(JP,A)
【文献】特表2004-532318(JP,A)
【文献】特開平09-092034(JP,A)
【文献】特開平05-238827(JP,A)
【文献】特開2005-036089(JP,A)
【文献】国際公開第2020/120006(WO,A1)
【文献】LO,Tien N.H.et al.,Facile Synthesis of Fluorinated Polysilazanes and Their Durable Icephobicity on Rough Al Surfaces,Polymers,2022年01月14日,2022, Vol.14, 330,p.3,doi.org/10.3390/ polym14020330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるシラザン系化合物:
上記化学式1で、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~18のアリール基、炭素数3~20のアルキルアクリレート基、炭素数4~20のアルキルメタクリレート基、炭素数3~20のアルキルビニル基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
21は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
22は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり
、
m及びnはそれぞれ、5~150の整数であり、
m/(m+n)は、0.2~0.98であり、
yは、0~2の整数であり、
上記化学式1の“A”は、下記化学式2で表現される:
上記化学式2で、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1~4のアルキル基から選ばれるいずれか一つであり、
RBは、環状基を有する2価の化合物基であ
って、下記化学式3~化学式12のいずれか一つで表現され、
R
3
は、下記化学式32~38のいずれか一つで表現され、
ここで、p1は、1~10の整数であり、
p2、p3、p4、q1、q2及びq3は、それぞれ独立に、0~6の整数であり、
p5、p6、p7、q4、q5及びq6は、それぞれ独立に、1~6の整数であり、
R
31
及びR
32
は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、
R
31
及びR
32
のうち少なくとも一つは、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項2】
前記化学式1の前記Aは、下記化学式13~化学式22のいずれか一つで表現される、請求項1に記載のシラザン系化合物。
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式23~31のいずれか一つで表現される、請求項1に記載のシラザン系化合物。
【請求項4】
500~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載のシラザン系化合物。
【請求項5】
下記化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むコーティング用組成物:
上記化学式1で、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~18のアリール基、炭素数3~20のアルキルアクリレート基、炭素数4~20のアルキルメタクリレート基、炭素数3~20のアルキルビニル基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
21は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
22は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり
、
m及びnはそれぞれ、5~150の整数であり、
m/(m+n)は、0.2~0.98であり、
yは、0~2の整数であり、
上記化学式1の“A”は、下記化学式2で表現される:
上記化学式2で、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1~4のアルキル基から選ばれるいずれか一つであり、
RBは、環状基を有する2価の化合物基であ
って、下記化学式3~化学式12のいずれか一つで表現され、
R
3
は、下記化学式32~38のいずれか一つで表現され、
ここで、p1は、1~10の整数であり、
p2、p3、p4、q1、q2及びq3は、それぞれ独立に、0~6の整数であり、
p5、p6、p7、q4、q5及びq6は、それぞれ独立に、1~6の整数であり、
R
31
及びR
32
は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、
R
31
及びR
32
のうち少なくとも一つは、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項6】
支持層;及び
前記支持層上の第1コーティング層;を含み、
前記第1コーティング層は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物を含む、光透過性フィルム:
上記化学式1で、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~18のアリール基、炭素数3~20のアルキルアクリレート基、炭素数4~20のアルキルメタクリレート基、炭素数3~20のアルキルビニル基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
21は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、
R
22は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり
、
m及びnはそれぞれ、5~150の整数であり、
m/(m+n)は、0.2~0.98であり、
yは、1~5の整数であり、
上記化学式1の“A”は、下記化学式2で表現される:
上記化学式2で、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1~4のアルキル基から選ばれるいずれか一つであり、
RBは、環状基を有する2価の化合物基であ
って、下記化学式3~化学式12のいずれか一つで表現され、
R
3
は、下記化学式32~38のいずれか一つで表現され、
ここで、p1は、1~10の整数であり、
p2、p3、p4、q1、q2及びq3は、それぞれ独立に、0~6の整数であり、
p5、p6、p7、q4、q5及びq6は、それぞれ独立に、1~6の整数であり、
R
31
及びR
32
は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、
R
31
及びR
32
のうち少なくとも一つは、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【請求項7】
前記シラザン系化合物は、500~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項
6に記載の光透過性フィルム。
【請求項8】
前記第1コーティング層は、0.02~10μmの厚さを有する、請求項
6に記載の光透過性フィルム。
【請求項9】
1.5以下の黄色度を有する、請求項
6に記載の光透過性フィルム。
【請求項10】
前記支持層上の第2コーティング層をさらに含み、
前記第2コーティング層は、下記化学式39で表現される化合物及び下記化学式40で表現される化合物の反応物を含む、請求項
6に記載の光透過性フィルム。
上記化学式39で、R
5は、エポキシ基、アクリル基及びイソシアネート基のうち少なくとも一つを含む線状、分枝状、脂環式及び芳香族有機化合物のいずれか一つから誘導され、
上記化学式39のR
6及び上記化学式40のR
7はそれぞれ、C
1~C
8の線状、分枝状又は脂環式ヘテロアルキル基であり、
化学式40のMは、金属元素であり、
化学式39のkは、1~3の整数であり、
化学式40のjは1~10の整数である。
【請求項11】
表示パネル;及び
前記表示パネル上に配置された、請求項
6~
10のいずれか一項の光透過性フィルム;を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラザン系化合物、シラザン系化合物を含むコーティング用組成物、シラザン系化合物を含むコーティング層を有する光透過性フィルム、及びこのような光透過性フィルムを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ディスプレイとして、撓めたり曲げたりできるフレキシブル表示装置が注目を受けている。フレキシブル表示装置は、撓めたり曲げたりできる表示パネル、及び表示パネルを保護するためのカバーウィンドウを含む。カバーウィンドウは、表示パネルに配置された素子を保護するために、優れた硬度、低い透湿性、耐化学性及び優れた光透過度を有する必要がある。
【0003】
フレキシブル表示装置のカバーウィンドウ用素材として様々な透明プラスチックフィルムが検討されている。透明プラスチックのうち、例えば、硬度の高いポリイミド系フィルムがフレキシブル表示装置のカバーウィンドウ用素材として研究されている。
【0004】
ポリイミド系フィルムは、薄い厚さで高硬度の具現が可能であるという長所がある。しかしながら、ポリイミド系フィルム自体の光学的及び機械的物性は、様々なフレキシブル表示装置で要求する物性要件を満たさない場合がある。したがって、ポリイミド系フィルムの物性を向上させるために、モノマーと添加剤が開発されており、様々なコーティング層が研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施例は、光透過性フィルムの物性改善に使用可能なシラザン系化合物を提供しようとする。
【0006】
本発明の他の実施例は、シラザン系化合物を含むコーティング用組成物を提供しようとする。
【0007】
本発明のさらに他の実施例は、シラザン系化合物を含むコーティング用組成物によって形成されたコーティング層を有する光透過性フィルムを提供しようとする。
【0008】
本発明のさらに他の実施例は、このような光透過性フィルムを含む表示装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施例は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物を提供する。
【0010】
[化学式1]
【0011】
【0012】
上記化学式1で、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~18のアリール基、炭素数3~20のアルキルアクリレート基、炭素数4~20のアルキルメタクリレート基、炭素数3~20のアルキルビニル基及びビニル基から選ばれるいずれか一つである。
【0013】
R21は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つであり、R22は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つである。
【0014】
R3は、単一結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数2~20の置換されたアルキレン基、炭素数7~19の置換されたアリーレン基、炭素数3~20のアルキレンビニル基、ビニル基及び炭素数1~10のヘテロアルキレン基から選ばれるいずれか一つである。
【0015】
m及びnはそれぞれ、5~150の整数であり、m/(m+n)は、0.2~0.98である。
【0016】
yは、0~2の整数である。
【0017】
上記化学式1の“A”は、下記化学式2で表現されてよい。
【0018】
[化学式2]
【0019】
【0020】
上記化学式2で、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1~4のアルキル基から選ばれるいずれか一つであり、RBは、環状基を有する2価の化合物基である。
【0021】
前記RBは、下記化学式3~化学式12のいずれか一つで表現されてよい。
【0022】
[化学式3]
【0023】
【0024】
[化学式4]
【0025】
【0026】
[化学式5]
【0027】
【0028】
[化学式6]
【0029】
【0030】
[化学式7]
【0031】
【0032】
[化学式8]
【0033】
【0034】
[化学式9]
【0035】
【0036】
[化学式10]
【0037】
【0038】
[化学式11]
【0039】
【0040】
[化学式12]
【0041】
【0042】
上記化学式1の前記Aは、下記化学式13~化学式22のいずれか一つで表現されてよい。
【0043】
[化学式13]
【0044】
【0045】
[化学式14]
【0046】
【0047】
[化学式15]
【0048】
【0049】
[化学式16]
【0050】
【0051】
[化学式17]
【0052】
【0053】
[化学式18]
【0054】
【0055】
[化学式19]
【0056】
【0057】
[化学式20]
【0058】
【0059】
[化学式21]
【0060】
【0061】
[化学式22]
【0062】
【0063】
上記化学式1は、下記化学式23~31のいずれか一つで表現されてよい。
【0064】
[化学式23]
【0065】
【0066】
[化学式24]
【0067】
【0068】
[化学式25]
【0069】
【0070】
[化学式26]
【0071】
【0072】
[化学式27]
【0073】
【0074】
[化学式28]
【0075】
【0076】
[化学式29]
【0077】
【0078】
[化学式30]
【0079】
【0080】
[化学式31]
【0081】
【0082】
前記R3は下記化学式32~38のいずれか一つで表現されてよい。
【0083】
[化学式32]
【0084】
【0085】
[化学式33]
【0086】
【0087】
[化学式34]
【0088】
【0089】
[化学式35]
【0090】
【0091】
[化学式36]
【0092】
【0093】
[化学式37]
【0094】
【0095】
[化学式38]
【0096】
【0097】
ここで、p1は、0~10の整数であり、p1が0である場合に、化学式32は単一結合を表し、p2、p3、p4、p5、p6、p7、q1、q2、q3、q4、q5及びq6は、それぞれ独立に、0~6の整数である。R31及びR32は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、R31及びR32のうち少なくとも一つは、炭素数1~5のアルコキシ基である。
【0098】
前記シラザン系化合物は、500~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0099】
本発明の他の実施例は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むコーティング用組成物を提供する。
【0100】
[化学式1]
【0101】
【0102】
本発明のさらに他の実施例は、支持層及び前記支持層上の第1コーティング層を含み、前記第1コーティング層は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物を含む、光透過性フィルムを提供する。
【0103】
[化学式1]
【0104】
【0105】
前記第1コーティング層は、0.02~10μmの厚さを有することができる。
【0106】
前記光透過性フィルムは、1.5以下の黄色度も有することができる。
【0107】
前記光透過性フィルムは、前記支持層上の第2コーティング層をさらに含み、前記第2コーティング層は、下記化学式39で表現される化合物及び下記化学式40で表現される化合物の反応物を含むことができる。
【0108】
[化学式39]
【0109】
【0110】
[化学式40]
【0111】
【0112】
上記化学式39で、R5は、エポキシ基、アクリル基及びイソシアネート基のうち少なくとも一つを含む線状、分枝状、脂環式及び芳香族有機化合物のいずれか一つから誘導され、上記化学式39のR6及び上記化学式40のR7はそれぞれ、C1~C8の線状、分枝状又は脂環式ヘテロアルキル基であり、化学式40のMは金属元素であり、化学式39のkは1~3の整数であり、化学式40のjは1~10の整数である。
【0113】
本発明のさらに他の実施例は、表示パネル及び前記表示パネル上に配置された前記光透過性フィルムを含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0114】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、光透過性フィルムの物性改善用コーティング用組成物に使用され、光透過性フィルムの物性を改善することができる。本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、例えば、ポリイミド系フィルムのような透明プラスチックフィルムのコーティング層に使用され、ポリイミド系フィルムのような透明プラスチックフィルムの接着性及び光学的特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】本発明の一実施例に係る光透過性フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の他の実施例に係る光透過性フィルムの断面図である。
【
図3】本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルムの断面図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルムの断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施例に係る表示装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
以下、実施例を中心にして本発明を詳細に説明する。以下に説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的な目的で提示されるのみであり、本発明の範囲を限定しない。
【0117】
本発明の実施例を説明するための図面に開示された形状、大きさ、比率、角度、個数などは例示的なものであるので、本発明は図面に開示の事項に限定されない。明細書全体を通じて同一の構成要素は同一の参照符号で示されてよい。本発明を説明するにあたって、関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合に、その詳細な説明は省略される。
【0118】
本明細書において「含む」、「有する」、「なされる」などが使われる場合に、「~のみ」という表現が使われない限り、他の部分が追加されてもよい。構成要素が単数で表現された場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数をも含む。また、構成要素を解釈するときに、別の明示的記載がなくても、誤差範囲を含むものとして解釈する。
【0119】
位置関係に関する説明において、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などで両部分の位置関係が説明される場合に、「直ちに」又は「直接」という表現が使われない以上、両部分の間に一つ以上の他の部分が位置してもよい。
【0120】
空間的に相対的な用語である「下(below、beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図面に示されているように、一つの素子又は構成要素と他の素子又は構成要素との相関関係を容易に記述するために使われてよい。空間的に相対的である用語は、図面に示されている方向に加えて、使用時又は動作時に素子の互いに異なる方向を含む用語として理解されるべきである。例えば、図面に示されている素子をひっくり返す場合に、他の素子の「下(below又はbeneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に置かれてよい。したがって、例示的な用語である「下」は、下と上のいずれの方向も含むことができる。同様に、例示的な用語である「上」も、上と下のいずれの方向も含むことができる。
【0121】
時間関係に関する説明において、例えば、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などで時間的先後関係が説明される場合に、「直ちに」又は「直接」という表現が使われない以上、連続していない場合も含むことができる。
【0122】
第1、第2などが様々な構成要素を説明するために使われるが、これらの構成要素は当該用語によって限定されない。当該用語は、単に、一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使われる。したがって、以下に言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0123】
「少なくとも一つ」との用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組合せを含むものと理解されるべきである。例えば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも一つ」との意味は、第1項目、第2項目又は第3項目のそれぞれだけでなく、第1項目、第2項目及び第3項目のうち2項目以上から提示可能なあらゆる項目の組合せも意味できる。
【0124】
本発明の複数実施例のそれぞれの特徴が部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施例が互いに独立して実施されてもよく、関連付けられて共に実施されてもよい。
【0125】
本発明の一実施例は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物を提供する。
【0126】
[化学式1]
【0127】
【0128】
化学式1で、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~18のアリール基、炭素数3~20のアルキルアクリレート基、炭素数4~20のアルキルメタクリレート基、炭素数3~20のアルキルビニル基及びビニル基から選ばれるいずれか一つである。
【0129】
R21は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つである。R22は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~18のアリール基及びビニル基から選ばれるいずれか一つである。R21とR22は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0130】
R3は、単一結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数2~20の置換されたアルキレン基、炭素数7~19の置換されたアリーレン基、炭素数3~20のアルキレンビニル基、ビニル基及び炭素数1~10のヘテロアルキレン基から選ばれるいずれか一つである。
【0131】
本発明の一実施例によれば、アルキレン基は2価の炭化水素基である。アルキレン基は、例えば、アルキル基から誘導されてよく、2個の結合位置を有する。
【0132】
本発明の一実施例によれば、アリーレン基は、芳香族環を有する2価の炭化水素基である。アリーレン基は、例えば、アリール基から誘導されてよく、2個の結合位置を有する。
【0133】
本発明の一実施例によれば、置換されたアルキレン基は、アルキレン基の水素が他の官能基に置換された化合物基を表す。置換されたアルキレン基として、例えば、アルコキシ基に置換されたアルキレン基がある。
【0134】
本発明の一実施例によれば、置換されたアリーレン基は、アリーレン基の水素が他の官能基に置換された化合物基を表す。置換されたアリーレン基として、例えば、アルコキシ基に置換されたアリーレン基がある。
【0135】
本発明の一実施例によれば、アルキレンビニル基は、アルキレン基の一部がビニル基に置換された構造を有することができる。
【0136】
本発明の一実施例によれば、ヘテロアルキレン基は、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されたアルキレン基又はそのラジカルを表す。ヘテロ原子は、炭素の座を代替した炭素以外の原子を表す。ヘテロ原子は、例えば、O、S、N、P、B、Si、及びSeのうち少なくとも一つを含むことができる。より具体的に、ヘテロ原子は、O、S、及びNのいずれか一つを含むことができる。
【0137】
m及びnはそれぞれ、5~150の整数であり、m/(m+n)は、0.2~0.98である。化学式1のyは、0~2の整数である。より具体的に、yは、0又は1であってよい。
【0138】
化学式1で、“A”は、下記化学式2で表現されてよい。
【0139】
[化学式2]
【0140】
【0141】
化学式2で、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素及び炭素数1~4のアルキル基から選ばれるいずれか一つであり、“RB”は環状基を有する。
【0142】
本発明の一実施例によれば、化学式2の“RB”は、下記化学式3~化学式12のいずれか一つで表現されてよい。
【0143】
[化学式3]
【0144】
【0145】
[化学式4]
【0146】
【0147】
[化学式5]
【0148】
【0149】
[化学式6]
【0150】
【0151】
[化学式7]
【0152】
【0153】
[化学式8]
【0154】
【0155】
[化学式9]
【0156】
【0157】
[化学式10]
【0158】
【0159】
[化学式11]
【0160】
【0161】
[化学式12]
【0162】
【0163】
また、本発明の一実施例によれば、化学式1の“A”は、下記化学式13~化学式22のいずれか一つで表現されてよい。
【0164】
[化学式13]
【0165】
【0166】
[化学式14]
【0167】
【0168】
[化学式15]
【0169】
【0170】
[化学式16]
【0171】
【0172】
[化学式17]
【0173】
【0174】
[化学式18]
【0175】
【0176】
[化学式19]
【0177】
【0178】
[化学式20]
【0179】
【0180】
[化学式21]
【0181】
【0182】
[化学式22]
【0183】
【0184】
このように、化学式1の“A”は、芳香族化合物に由来する基又は脂環式化合物に由来する基を含むことができる。“A”が環状化合物を含む場合に、シラザン系化合物の主鎖が環状化合物のチェーンを含むことができる。その結果、シラザン系化合物の反復単位の長さが長くなり、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、優れた柔軟性を有することができる。
【0185】
本発明の一実施例によれば、化学式1は、下記化学式23~31のいずれか一つで表現されてよい。
【0186】
[化学式23]
【0187】
【0188】
[化学式24]
【0189】
【0190】
[化学式25]
【0191】
【0192】
[化学式26]
【0193】
【0194】
[化学式27]
【0195】
【0196】
[化学式28]
【0197】
【0198】
[化学式29]
【0199】
【0200】
[化学式30]
【0201】
【0202】
[化学式31]
【0203】
【0204】
このように、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、化学式23~31で表現されてよい。
【0205】
本発明の一実施例によれば、R3は、下記化学式32~38のいずれか一つで表現されてよい。
【0206】
[化学式32]
【0207】
【0208】
[化学式33]
【0209】
【0210】
[化学式34]
【0211】
【0212】
[化学式35]
【0213】
【0214】
[化学式36]
【0215】
【0216】
[化学式37]
【0217】
【0218】
[化学式38]
【0219】
【0220】
化学式32で、p1は、0~10の整数である。p1が0である場合に、化学式32は単一結合を表す。
【0221】
p2、p3、p4、p5、p6、p7、q1、q2、q3、q4、q5及びq6は、それぞれ独立に、0~6の整数である。
【0222】
化学式35のR31及びR32は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1~5のアルコキシ基である。R31及びR32のうち少なくとも一つは、炭素数1~5のアルコキシ基である。化学式35は、アルコキシ基に置換されたアルキレン基を表示できる。
【0223】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、シラザン(-Si-N-)結合を有する。より具体的に、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、シラザン(-Si-N-)結合を含む主鎖を有する重合体である。シラザン結合を有することにより、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、高耐熱性の特性を有することができる。本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、重合体構造を有することから、“ポリシラザン系化合物”と呼ぶこともできる。
【0224】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物の主鎖は、環状化合物を含む。具体的に、化学式1の“A”は、環状化合物を含むことができる。主鎖が環状化合物のチェーンを含む場合に、反復単位の長さが長くなり得、その結果、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、優れた柔軟性を有することができる。
【0225】
また、側鎖にアルコキシシラン基を含むので、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、多重架橋に参加できる。その結果、発明の一実施例に係るシラザン系化合物によって形成された樹脂又はコーティング層は、優れた耐化学性を有することができる。
【0226】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、コーティング用組成物として用いられてよく、硬化によってコーティング層を形成することができる。
【0227】
化学式1で、mとnが5未満である場合に、シラザン系化合物の分子量が小さいため、シラザン系化合物を用いたコーティング層が形成し難くなることがある。一方、化学式1で、mとnが150を超える場合に、シラザン系化合物の分子量が増加し過ぎてしまい、シラザン系化合物を用いたコーティング層の形成過程において作業性が低下することがある。したがって、本発明の一実施例によれば、mとnがそれぞれ5~150の整数となるようにする。
【0228】
化学式1で、m/(m+n)は、0.2~0.98である。m/(m+n)が0.2未満である場合に、シラザン系化合物の柔軟性と溶解度が低下する問題点が発生し得る。m/(m+n)が0.98を超える場合に、主鎖にグラフト(graft)されたアルコキシシラン基の含有量が減少してしまい、シラザン系化合物によって形成されたコーティング層の耐化学性が低下することがある。
【0229】
本発明の一実施例によれば、シラザン系化合物は、500~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。より具体的に、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物の重量平均分子量は、500~40,000であってよく、2,000~20,000であってよく、3,000~18,000であってよく、5,000~15,000であってもよい。本発明の一実施例によれば、重量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いてゲル透過クロマトグラフィーによって測定されてよい。本発明の一実施例によれば、シラザン系化合物の重量平均分子量は、その硬化生成物がコーティングフィルムを形成できる程度の範囲に調整されてよい。
【0230】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、ハロゲン化シラン化合物、アミノアルキルトリアルコキシシラン化合物及びアミン系化合物の反応によって製造されてよい。
【0231】
例えば、本発明の一実施例に係るシラザン系化合物は、化学式41~44の化合物によって製造されてよい。
【0232】
[化学式41]
【0233】
【0234】
[化学式42]
【0235】
【0236】
[化学式43]
【0237】
【0238】
[化学式44]
【0239】
【0240】
化学式41~44で、R11、R12、R13、R14、R21、R21、R3、R41、R42及びRBは、既に説明された通りである。
【0241】
化学式41のX1とX2及び化学式42のX3とX4は、それぞれ独立に、フルオロ(F)、塩素(Cl)、ブローム(Br)及びヨード(I)から選ばれるハロゲン元素である。
【0242】
例えば、化学式41の化合物と化学式44の化合物との反応により、化学式45で表現される第1反復単位が形成されてよい。
【0243】
[化学式45]
【0244】
【0245】
例えば、化学式42の化合物と化学式43の化合物との反応により、化学式46で表現される第2反復単位が形成されてよい。
【0246】
[化学式46]
【0247】
【0248】
化学式41の化合物と化学式44の化合物とのモル比を1:1又はこれに近似するように調節し、化学式42の化合物と化学式43の化合物とのモル比を1:1又はこれに近似するように調節できる。このようにモル比を調節する場合に、残留単量体の含有量を最小化でき、製造されるシラザン系化合物の分子量を容易に調節することができる。
【0249】
シラザン系化合物の製造のための溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-ブチルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンのような非極性芳香族有機溶媒が使用されてよく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの非極性脂肪族有機溶媒が使用されてもよく、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテルのようなアルキルエーテルが使用されてもよい。溶媒は、溶媒中の反応物の全体濃度が約5~約40重量%、より具体的に、約5~約30重量%となるようにする範囲で使用されてよい。
【0250】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物の製造のために、まず、化学式41~44で表現される化合物を混合して反応を進行させることができる。化学式41~44で表現される化合物の添加順序に特に限定はない。例えば、化学式43の化合物と化学式44の化合物をまず反応溶媒中で投入して溶解させた後に、ここに、化学式41の化合物及び化学式42の化合物を徐々に滴加する方式で投入して反応速度を制御することができる。
【0251】
本発明の一実施例に係るシラザン系化合物の製造過程では激烈な反応がおきることがあるため、反応速度を調節する目的で窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)のような不活性雰囲気下で反応初期温度-20℃~0℃、より具体的に、-10℃~0℃で約1~約3時間反応が行われてよい。次に、不活性雰囲気下で反応温度を5℃~40℃程度に保ちながら3~約20時間後に重合を実施し、重合体形態を有する化学式1で表現されるシラザン系化合物の分子量を増加させ、重合体溶液性質を安定化させることができる。
【0252】
一方、化学式41の化合物と化学式44の化合物との縮合反応及び化学式42の化合物と化学式43の化合物との縮合反応によって発生するハロゲン化水素、例えば、塩化水素、ブローム化水素などを捕捉するための塩基性化合物の存在下で反応が行われてよい。塩基性化合物は、ハロゲン化水素と結合して塩を形成できるものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、塩基性化合物として、トリメチルアミン、トリエチルアミンのような3級脂肪族アミン化合物又はピリジンのような芳香族アミン化合物が使用されてよい。
【0253】
本発明の一実施例によれば、例えば、化学式47~49の化合物によってシラザン系化合物が製造されてよい。
【0254】
[化学式47]
【0255】
【0256】
[化学式48]
【0257】
【0258】
[化学式49]
【0259】
【0260】
この場合、化学式47の化合物が化学式41の化合物及び化学式42の化合物と同じ役割を担うことができる。
【0261】
本発明の他の実施例は、化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むコーティング用組成物を提供する。
【0262】
本発明の他の実施例に係るコーティング用組成物は、化学式1で表示されるシラザン系化合物及び溶媒を含む。
【0263】
例えば、本発明の他の実施例に係るコーティング用組成物は、添加剤を含まない場合に、化学式1で表示されるシラザン系化合物1~50重量%及び溶媒50~99重量%を含むことができる。
【0264】
添加剤を含む場合に、本発明の他の実施例に係るコーティング用組成物は、化学式1で表示されるシラザン系化合物1~50重量%、溶媒45~98.5重量%、及び0.1~5重量%の添加剤を含むことができる。
【0265】
溶媒の含有量がコーティング用組成物の全重量に対して45重量%未満の場合に、コーティング用組成物の塗布が均一になされず、コーティング用組成物によって形成されるコーティング層の表面に厚さの偏差が発生することがある。溶媒の含有量がコーティング用組成物の全重量に対して98.5重量%を超える場合に、高い表面張力によって濡れ性(ウェット性)が低下し、均一な膜が形成されないことがある。
【0266】
本発明の他の実施例に係るコーティング用組成物は、1~50重量%の化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むことができる。また、コーティング用組成物を用いてコーティングを実施する時の作業性及び粘度を考慮して、本発明の他の実施例に係るコーティング用組成物は、1.5~30重量%の化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むことができる。
【0267】
コーティング用組成物製造のための溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、n-ブチルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はそれらの混合物が使用されてよい。
【0268】
コーティング用組成物は、硬化剤、離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属粒子、酸化物粒子及び窒化物粒子から選択された少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0269】
また、重合性及び架橋特性の向上のために、コーティング用組成物はアクリル系化合物をさらに含むことができる。
【0270】
硬化剤として、熱硬化剤が使用されてよく、低い温度では硬化が起きず、高温で硬化が起きる潜在性熱硬化剤が使用されてよい。潜在性熱硬化剤として、アミン型硬化剤、イミダゾール型硬化剤、ジヒドラジド型硬化剤又は有機過酸化物などがある。これらは1種単独で使用されてもよく、2種以上混合して使用されてよい。潜在性熱硬化剤は、一定温度以上で酸、塩基又はライカルを生成することができる。潜在性熱硬化剤が含まれる場合に、架橋サイトの中でも特にシリコンアルコキシ基において酸又は塩基によって架橋化が促進されてよい。
【0271】
硬化剤は、コーティング用組成物から溶媒を除外した成分(以下、“固形分”という。)の全重量に対して0.1~5重量%、より具体的に、0.5~3重量%の含有量で使用されてよい。硬化剤の含有量が0.1重量%未満である場合に、十分な硬化が進行されないことがあり、5重量%を超える場合には、貯蔵安定性の低下及び過硬化によってコーティング層に亀裂が発生することがある。
【0272】
本発明の他の実施例によれば、コーティング用組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤は、コーティング層形成用組成物の塗布性を向上させることができる。界面活性剤の種類に特に限定はない。界面活性剤として、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ヒドロキシ機能性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル-エステル変性ヒドロキシ機能性ポリジメチルシロキサン、アクリル機能性ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような非イオン系界面活性剤がある。界面活性剤は、コーティング層形成用組成物の全重量を基準に0.01~0.1重量%、より具体的に0.05~0.1重量%の含有量で使用されてよい。
【0273】
本発明のさらに他の実施例は、光透過性フィルム100を提供する。
【0274】
図1は、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム100の断面図である。
【0275】
本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム100は、支持層110、及び支持層110上の第1コーティング層210を含む。
【0276】
支持層110は光透過性を有する。また、支持層110はフレキシブル特性を有することができる。例えば、支持層110は、ベンディング(bending)特性、フォールディング(folding)特性及びローラブル(rollable)特性のうち少なくとも一つを有することができる。
【0277】
支持層110は、光透過性を有するプラスチックフィルムを含むことができる。支持層110として、例えば、ポリイミド系フィルムが使用されてよい。本発明のさらに他の実施例に係るポリイミド系フィルムは、ジアンヒドリド及びジアミンを含むモノマー成分から製造されてよい。より具体的に、本発明のさらに他の実施例に係るポリイミド系フィルムは、ジアンヒドリドとジアミンによって形成されたイミド反復単位を有することができる。
【0278】
しかし、本発明のさらに他の実施例がこれに限定されるものではなく、ポリイミド系フィルムは、ジアンヒドリド及びジアミンの他に、ジカルボニル化合物をさらに含むモノマー成分から製造されてよい。したがって、本発明のさらに他の実施例に係るポリイミド系フィルムは、イミド反復単位とアミド反復単位を有することができる。イミド反復単位とアミド反復単位を有するポリイミド系フィルムとして、例えば、ポリアミド-イミドフィルムがある。本発明のさらに他の実施例に係るポリイミド系フィルムは、ポリイミドフィルム及びポリアミド-イミドフィルムを含む。本発明のさらに他の実施例によれば、ポリアミド系フィルムが支持層110として使用されてよい。
【0279】
本発明の一実施例によって、支持層110として使用されるポリイミド系フィルムは、例えば、優れた耐熱性を有する。
【0280】
支持層110の厚さに特に限定はない。支持層110は、光透過性フィルム100が表示パネルを保護するに十分な程度の厚さを有することができる。例えば、支持層110は、10~100μmの厚さを有することができる。
【0281】
本発明のさらに他の実施例によれば、支持層110は、厚さ10~100μmを基準に、UV分光光度計で測定された可視光線領域において85%以上の平均光透過度、5以下の黄色度及びTMA法(Method)によって50~250℃で測定された50.0ppm/℃以下の平均線膨脹係数(CTE)を有することができる。
【0282】
第1コーティング層210は、前述のコーティング用組成物によって形成されてよい。
【0283】
本発明の一実施例によれば、第1コーティング層210は、下記化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物を含む。
【0284】
[化学式1]
【0285】
【0286】
化学式1で、R11、R12、R13及びR14、R2、R3、m、n及びoは、既に説明された通りである。化学式1で表現されるシラザン系化合物において、下記化学式45で表現される第1反復単位の比率が2%~98%であり、下記化学式46で表現される第2反復単位の比率が98%~2%であってよい。
【0287】
[化学式45]
【0288】
【0289】
[化学式46]
【0290】
【0291】
化学式1の“A”は、下記化学式2で表現されてよい。
【0292】
[化学式2]
【0293】
【0294】
化学式2で、R41及びR42は、既に説明された通りである。RBは、環状基を有する。RBは、化学式3~化学式12のいずれか一つで表現されてよい。
【0295】
また、化学式1の“A”は、化学式13~化学式22のいずれか一つで表現されてよい。
【0296】
本発明のさらに他の実施例に係るシラザン系化合物の硬化生成物は、化学式1で表示されるシラザン系化合物が硬化して作られてよい。
【0297】
本発明のさらに他の実施例によれば、シラザン系化合物の硬化生成物は、アミノアルキルトリアルコキシシラン化合物に由来する部分(moiety)のうち、アルコキシシリル基が縮合して形成された3次元の透明な硬化物を含む。
【0298】
化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物は、例えば、化学式50のような構造を有することができる。
【0299】
[化学式50]
【0300】
【0301】
化学式50は、化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物の3次元構造を2次元で表現したものである。
【0302】
化学式50を参照すると、化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化によって形成された硬化生成物は、シラザン構造、シルセスキオキサン構造及びシロキサン構造を全て含むことができる。具体的に、本発明のさらに他の実施例によれば、化学式1で表示されるシラザン系化合物の硬化生成物を含む第1コーティング層210は、シリコンカーバイド(Si-C)構造、シラザン(Si-N)構造、ポリシルセスキオキサン(-[RSiO1.5]n-)構造及びシロキサン(Si-O)構造を含み、多くの架橋サイトを有し、硬化によって優れた架橋構造を形成することができる。
【0303】
したがって、第1コーティング層210は、優れた透明性、耐溶剤性、水分遮断性及び膜安定性を有することができる。また、第1コーティング層210を含む光透過性フィルム100は、優れた透明性、耐溶剤性、耐化学性及び水分遮断性を有することができる。特に、第1コーティング層210は、光透過性フィルム100の黄色度を顕著に低下させることができる。
【0304】
本発明の他の実施例によれば、第1コーティング層210の形成過程中に、アルコキシ基又はOH基に起因する成分の揮発によって発生する膜収縮を最小限に制御し、第1コーティング層210にクラックができることを効果的に防止することができる。
【0305】
本発明のさらに他の実施例によれば、化学式1に含まれた第1反復単位(化学式45)と第2反復単位(化学式46)の比率を調節し、第1コーティング層210の形成過程における硬化条件を調節することによって、優れた耐化学性、安定性及び柔軟性を有し、クラック発生の防止された第1コーティング層210を形成することができる。
【0306】
本発明のさらに他の実施例によれば、第1コーティング層210が化学式1の“A”と表現される環状基を有する化合物の誘導体を含むので、第1コーティング層210は、シロキサン、シラザンのみからなるコーティング層に比べて、優れた柔軟性を有することができる。
【0307】
また、化学式1のA位置にフェニル(phenyl)基が存在する場合に、光透過性フィルム100の耐熱性が向上し得る。
【0308】
また、化学式1のA位置に脂環式(cyclo-aliphatic)構造が存在する場合に、光透過性フィルム100の光透過度又は黄色度のような光学的特性が向上し得る。例えば、化学式1のA位置に脂環式(cyclo-aliphatic)構造が存在する場合に、第1コーティング層210を用いた光透過率が上昇し、光透過性フィルム100の全体光透過率が向上し得る。
【0309】
具体的に、脂環式構造は400~500nm波長帯の光を吸収しないので、第1コーティング層210が脂環式構造を有する場合に、400~500nmの短波長帯において光透過率が相対的に高くなり得る。その結果、化学式1のA位置に脂環式(cyclo-aliphatic)構造が位置する場合に、第1コーティング層210を通した短波長帯光透過率が上昇し、青色(blue)系列の透過光の強度が強化することにより、光透過性フィルム100の黄色度が低下し得る。
【0310】
また、第1コーティング層210は、光透過性フィルム100の表面特性を向上させることもできる。例えば、第1コーティング層210は支持層110上に配置され、支持層110に対するプライマー層の役割を担うこともできる。
【0311】
第1コーティング層210は、支持層110に比べて優れた接着性を有し、他の物質との作用性(interaction)に優れている。したがって、支持層110を単独で使用する場合に比べて、支持層110上に第1コーティング層210が配置される場合に、光透過性フィルム100の接着性が向上し、他の基材との作用性が向上する。その結果、光透過性フィルム100の使用性が向上する。
【0312】
本発明のさらに他の実施例によれば、第1コーティング層210は、帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤は、例えば、伝導性高分子、グラフェン、炭素ナノチューブ及び金属酸化物のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0313】
本発明の他の実施例によれば、第1コーティング層210は、紫外線(UV)吸収剤をさらに含むことができる。紫外線(UV)吸収剤として、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤及びトリアジン系UV吸収剤などがある。
【0314】
第1コーティング層210は、顔料又は染料を含むことができる。例えば、青色顔料又は青色染料は、第1コーティング層210の黄色度を低下させることがある。顔料又は染料として、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、フェリレン系の染料又は顔料が使用されてよい。
【0315】
優れた硬度特性、フレキシブル特性、光学特性、耐溶剤性及び水分遮断特性を確保するために、第1コーティング層210は、0.02~10μmの厚さを有することができる。
【0316】
第1コーティング層210の厚さが0.02μm未満である場合に、光透過性フィルム100の耐溶剤性及び水分遮断特性が低下することがある。一方、第1コーティング層210の厚さが10μmを超える場合に、光透過性フィルム100のフレキシブル特性及び光学特性が低下することがあり、光透過性フィルム100にカール(curl)が発生することもある。より具体的に、第1コーティング層210は0.02~2μmの厚さを有することができる。
【0317】
本発明のさらに他の実施例によれば、光透過性フィルム100は、ASTM E313測定基準に基づくCM-3700D分光光度計(spectrophotometer)によって測定された、2.5以下の黄色度を有することができる。より具体的に、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム100は、1.5以下の黄色度を有することができ、1.2以下の黄色度を有することができる。
【0318】
また、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム100は、可視光線領域で80~99%又は89~94%の平均光透過度を有することができる。
【0319】
第1コーティング層210は、化学式1で表示されるシラザン系化合物を含むコーティング用組成物によって作られてよい。コーティング用組成物は既に説明されており、重複を避けるために、コーティング用組成物に関する詳細な説明は省略する。
【0320】
本発明のさらに他の実施例によれば、コーティング用組成物が支持層110上に塗布されて硬化し、第1コーティング層210が作られてよい。
【0321】
コーティング用組成物を支持層110上に塗布する方法には、スプレー(Spray)コーティング、バー(Bar)コーティング、スピン(Spin)コーティング、ディップ(Dip)コーティングなどがある。支持層110上に塗布されたコーティング用組成物が乾燥することで、第1コーティング層210が形成される。
【0322】
乾燥後に、第1コーティング層210は、200~300℃の温度で熱処理されてよい。熱処理工程によって第1コーティング層210の膜構造がより強固になり、これによって、第1コーティング層210の耐化学性及び耐熱性が向上し得る。200℃未満の温度で熱処理がなされる場合に、十分な硬化がなされず、第1コーティング層210の耐化学性向上の程度が大きくないことがある。300℃を超える温度で熱処理がなされる場合に、黄色度(Y.I)が増加することがある。より具体的に、第1コーティング層210は、250~280℃の温度で熱処理されてよい。
【0323】
図2は、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200の断面図である。
【0324】
本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200は、支持層110上の第2コーティング層220をさらに含む。具体的に、
図2の光透過性フィルム200は、支持層110上の第1コーティング層210、及び支持層110上の第2コーティング層220を含む。
【0325】
図2を参照すると、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200は、第1コーティング層210の反対側の支持層110上に配置された第2コーティング層220を含む。
【0326】
以下、重複を避けるために、既に説明された構成要素に関する説明は省略する。
【0327】
本発明の他の実施例によれば、第2コーティング層220は、下記化学式39で表現される化合物及び下記化学式40で表現される化合物の反応物を含むことができる。
【0328】
[化学式39]
【0329】
【0330】
[化学式40]
【0331】
【0332】
化学式39で、R5は、エポキシ基、アクリル基及びイソシアネート基のうち少なくとも一つを含む線状、分枝状、脂環式及び芳香族有機化合物のいずれか一つから誘導された基である。化学式39のR6及び化学式40のR7はそれぞれ、C1~C8の線状、分枝状又は脂環式ヘテロアルキル基である。
【0333】
本発明のさらに他の実施例によれば、“ヘテロアルキル基”は、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されたアルキル基又はラジカルを表す。ヘテロ原子は、炭素の座を代替した炭素以外の原子を表す。ヘテロ原子は、O、S、N、P、B、Si、及びSeのうち少なくとも一つを含むことができる。より具体的に、ヘテロ原子は、O、S、及びNのいずれか一つを含むことができる。例えば、化学式39のR6及び化学式40のR7はそれぞれ、ヘテロ原子として酸素原子(O)及び窒素原子(N)のうち少なくとも一つを含むヘテロアルキル基である。
【0334】
化学式39のkは、1~3の整数であり、化学式40のjは、1~10の整数である。
【0335】
化学式40のMは、金属元素である。化学式40の金属元素Mとして、例えば、チタニウム(Ti)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)などがある。
【0336】
化学式39で表現される化合物及び化学式40で表現される化合物の反応物は、例えば、シロキサン樹脂である。本発明の一実施例によれば、第2コーティング層220はハードコーティング層である。第2コーティング層220によって、本発明の他の実施例に係る光透過性フィルム200の表面硬度及び耐スクラッチ性が向上し得る。
【0337】
第2コーティング層220の形成のためのシロキサン樹脂は、化学式39で表示されるアルコキシシラン化合物単独の重合反応から製造されてもよく、化学式39で表示されるアルコキシシラン化合物と化学式40で表現されるアルコキシ金属化合物の反応によって製造されてもよい。
【0338】
第2コーティング層220の製造のためのシロキサン樹脂の形成反応は、常温で行われてよいが、反応を促進するために50℃~120℃で行われてもよい。
【0339】
ハードコーティング層の役割を担う第2コーティング層220を含む光透過性フィルム200は、JIS K56000測定基準で4H~10Hの表面硬度を有することができ、より具体的に5H~10Hの表面硬度を有することができる。
【0340】
第2コーティング層220を有する、本発明の他の実施例に係る光透過性フィルム200は、優れた表面硬度特性を有しながらも、優れたフレキシブル特性を有することができる。
【0341】
第1コーティング層210が優れた光透過性及び低い黄色度を有するので、支持層110上に第2コーティング層220が配置されても、光透過性フィルム200の黄色度は大きく増加せずに済む。
【0342】
光透過性フィルム200は、低い水分透過度を有することができる。例えば、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200は、ASTM E96BW測定基準で0.001~10g/m2*dayの水分透過度を有することができ、又は0.001~3.1g/m2*dayの水分透過度を有することができる。
【0343】
本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200は低い水分透過度を有するので、光透過性フィルム200が表示装置又は電子機器のカバーウィンドウとして用いられる場合に、外部の湿っている環境から表示装置又は電子機器の内部部品を効果的に保護することができる。
【0344】
本発明のさらに他の実施例によれば、優れた表面硬度、耐衝撃性及び耐化学性を確保するために、第2コーティング層220は、1~30μmの厚さを有することができる。第2コーティング層220の厚さが1μm未満である場合に、強度、表面硬度、耐衝撃性及び耐化学性が確保されないことがある。第2コーティング層220の厚さが30μmを超える場合に、ベンディング状態又は撓み状態で過度なストレス又は硬直性が発生し、特にベンディング特性が低下することがある。より具体的に、第2コーティング層220は、2~10μmの厚さを有することができる。
【0345】
図3は、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム300の断面図である。
【0346】
図3を参照すると、第2コーティング層220は、第1コーティング層210上に配置されてよい。具体的に、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム200は、第1コーティング層210上の第2コーティング層220を含む。
【0347】
図3に示す第2コーティング層220は、
図2に示す第2コーティング層220と同一になされてよい。
【0348】
図3を参照すると、支持層110と第2コーティング層220との間に配置された第1コーティング層210は、支持層110と第2コーティング層220との間で緩衝層の役割を担う。その結果、第2コーティング層220のフレキシブル特性が補完され、支持層110と第2コーティング層220との接着性及びコーティング性を向上させる。これにより、光透過性フィルム200がベンディング、フォールディング又はローリングされても、第2コーティング層220にクラックや亀裂ができることを防止することができる。
【0349】
図4は、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム400の断面図である。
【0350】
図4を参照すると、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム400は、ブラックマトリックス250を含む。
【0351】
具体的に、本発明のさらに他の実施例に係る光透過性フィルム400は、支持層110、支持層110の一面上の第1コーティング層210、第1コーティング層210上のブラックマトリックス250、及び支持層110の他面上の第2コーティング層220を含む。
【0352】
ブラックマトリックス250は、光を遮断する遮光層の役割を担うことができる。ブラックマトリックス250は、例えば、表示装置のベゼル部に対応するように配置され、ベゼル部の内部の配線などが外部から視認されることを防止できる。
【0353】
図4を参照すると、ブラックマトリックス250は、第1コーティング層210上に配置される。その結果、ブラックマトリックス250は、安定した付着状態を保持できる。
【0354】
図5は、本発明のさらに他の実施例に係る表示装置500の一部を示す断面図であり、
図6は、
図5の“P”部分を示す拡大断面図である。
【0355】
図5を参照すると、本発明のさらに他の実施例に係る表示装置500は、表示パネル501及び表示パネル501上の光透過性フィルム200を含む。
図5には、
図2の光透過性フィルム200を含む表示装置500が開示されている。しかし、本発明のさらに他の実施例がこれに限定されるものではなく、
図1による光透過性フィルム100、
図3による光透過性フィルム300、及び
図4による光透過性フィルム400も、本発明のさらに他の実施例に係る表示装置500に適用されてよい。
【0356】
図5及び
図6を参照すると、表示パネル501は、基板510、基板510上の薄膜トランジスターTFT、及び薄膜トランジスターTFTと連結された有機発光素子570を含む。有機発光素子570は、第1電極571、第1電極571上の有機発光層572、及び有機発光層572上の第2電極573を含む。
図5及び
図6に開示された表示装置500は、有機発光表示装置である。
【0357】
基板510はプラスチックで作られてよい。具体的に、基板510は、ポリイミド系樹脂又はポリイミド系フィルムで作られてよい。
【0358】
図示してはいないが、基板510上にバッファー層が配置されてよい。
【0359】
薄膜トランジスターTFTは、基板510上に配置される。薄膜トランジスターTFTは半導体層520、半導体層520と絶縁して半導体層520の少なくとも一部と重なるゲート電極530、半導体層520と連結されたソース電極541、及びソース電極541と離隔して半導体層520と連結されたドレイン電極542を含む。
【0360】
図6を参照すると、ゲート電極530と半導体層520との間にゲート絶縁膜535が配置される。ゲート電極530上に層間絶縁膜551が配置され、層間絶縁膜551上にソース電極541及びドレイン電極542が配置されてよい。
【0361】
平坦化膜552は、薄膜トランジスターTFT上に配置され、薄膜トランジスターTFTの上部を平坦化させる。
【0362】
第1電極571は、平坦化膜552上に配置される。第1電極571は、平坦化膜552に備えられたコンタクトホールを通じて薄膜トランジスターTFTのドレイン電極542と連結される。
【0363】
バンク層580は、第1電極571及び平坦化膜552上に配置され、画素領域又は発光領域を定義する。例えば、バンク層580が複数の画素間の境界領域にマトリックス構造で配置されることにより、バンク層580によって画素領域が定義されてよい。
【0364】
有機発光層572は、第1電極571上に配置される。有機発光層572はバンク層580上にも配置されてよい。有機発光層572は、一つの発光層を含んでもよく、上下に積層された2個以上の発光層を含んでもよい。このような有機発光層572では、赤色、緑色及び青色のいずれか一つの色を有する光が放出されてよく、白色(White)光が放出されてもよい。
【0365】
第2電極573は、有機発光層572上に配置される。
【0366】
第1電極571、有機発光層572及び第2電極573が積層されて有機発光素子570がなされてよい。
【0367】
図示してはいないが、有機発光層572が白色(White)光を発光する場合に、個別画素は、有機発光層572から放出される白色(White)光を波長別にフィルタリングするためのカラーフィルターを含むことができる。カラーフィルターは、光の移動経路上に形成される。
【0368】
第2電極573上に薄膜封止層590が配置されてよい。薄膜封止層590は、少なくとも一つの有機膜及び少なくとも一つの無機膜を含むことができ、少なくとも一つの有機膜及び少なくとも一つの無機膜が交互に配置されてよい。
【0369】
以上に説明された積層構造を有する表示パネル501上に、光透過性フィルム200が配置される。光透過性フィルム100は、支持層110、支持層110上の第1コーティング層210、及び第1コーティング層210の反対側の支持層110上の第2コーティング層220を含む。
【0370】
光透過性フィルム200は、表示パネル501の発光面をカバー及び保護するカバーウィンドウとして用いられる。
【0371】
以下、例示的な製造例及び実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下に説明される製造例又は実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0372】
<製造例1>
【0373】
-5℃の窒素雰囲気下で、トルエン1Lを含む反応容器にジクロロジエチルシラン1モル、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モル、及びトリエチルアミン2モルを投入して溶解させた。この混合物を-5℃で約30分間撹拌して第1溶液を製造した。
【0374】
トルエン1Lを含むさらに他の反応容器に、-5℃の窒素雰囲気下で、ジクロロジエチルシラン1モルとトリエチルアミン2モルを溶解させ、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン1モルを1時間にわたって徐々に投入した。この混合物を-5℃で約30分間撹拌し、第2溶液を製造した。
【0375】
第1溶液に第2溶液を-5℃の窒素雰囲気下で2時間にわたって徐々に添加し、反応容器内の温度を30℃まで2時間にわたって昇温後に、4時間さらに撹拌した。反応容器内の温度を10℃に下げ、1日間撹拌した。反応中に生成される塩素(Cl)はトリエチルアミンと共に塩(salt)の形態で沈殿し、真空濾過で除去された。
【0376】
その後、無水プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し、真空蒸留してトルエンを除去した。その結果、化学式51で表現されるシラザン系化合物が製造された。
【0377】
[化学式51]
【0378】
【0379】
<製造例2>
【0380】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン1モルを使用する代わりに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式52で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0381】
[化学式52]
【0382】
【0383】
<製造例3>
【0384】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン1モルを使用する代わりに、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式53で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0385】
[化学式53]
【0386】
【0387】
<製造例4>
【0388】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モルを使用する代わりに、p-フェニレンジアミン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式54で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0389】
[化学式54]
【0390】
【0391】
<製造例5>
【0392】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モルを使用する代わりに、3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式55で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0393】
[化学式55]
【0394】
【0395】
<製造例6>
【0396】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モルを使用する代わりに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式56で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0397】
[化学式56]
【0398】
【0399】
<製造例7>
【0400】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モルを使用する代わりに、4,4’-オキシジアニリン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式57で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0401】
[化学式57]
【0402】
【0403】
<比較製造例1>
【0404】
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)1モルを使用する代わりに、アニリン1モルを使用する以外は、製造例1と同じ方法により、化学式58で表現されるシラザン系化合物を製造した。
【0405】
[化学式58]
【0406】
【0407】
<比較製造例2:ポリシロキサン溶液製造>
【0408】
反応容器中にメチルトリメトキシシラン0.19モル、ビニルトリメトキシシラン0.19モル及びテトラエトキシシラン0.19モルを入れた。この混合物を25℃で60分間撹拌した。
【0409】
その後、超純水(Specific Resistivity:18MΩ・cm以上)2.55モルを10分にわたって前記混合物に徐々に添加した。添加が完了すると、反応容器内の温度を30℃まで約10分にわたって昇温させ、2時間さらに撹拌して反応物を水和させた。その後、反応容器内の温度を80℃まで約30分にわたって昇温させ、3時間さらに撹拌した。
【0410】
反応物を30℃まで約20分にわたって冷却させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し真空蒸留して、反応副産物であるアルコールを除去した。その結果、化学式59で表現される反復単位を有するシラザン系化合物が製造された。
【0411】
[化学式59]
【0412】
【0413】
化学式59で、a1、a2及びa3はそれぞれ、反復単位の反復回数を表す。a1、a2及びa3は実質的に同一であってよい。
【0414】
<製造例8:ポリイミド系フィルム製造>
【0415】
1-1:ポリイミド系粉末の製造
【0416】
反応器として、撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を付着している1L反応器に窒素を通過させながら、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを満たし、反応基の温度を25℃に合わせた後、2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここに、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入後に、一定時間撹拌して溶解及び反応させた。この時、溶液の温度は25℃に維持した。そして、テレフタロイルクロリド(TPC)20.302g(0.1mol)を添加し、固形分の濃度は13重量%であるポリアミド酸溶液を得た。
【0417】
前記ポリアミド酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌後に、再び70℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕後に100℃で真空で6時間乾燥させ、111gの固形分粉末状態のポリイミド系樹脂を得た。得られたポリイミド系樹脂粉末は、ポリアミド-イミド樹脂粉末である。
【0418】
1-2:ポリイミド系フィルム製造
【0419】
前記得られた固形分粉末のポリイミド系樹脂100gを取って、670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かし、13wt%のポリイミド系樹脂溶液を得た。得られた溶液をステンレス基板に塗布後に340μmにキャスティングし、130℃の熱風で30分間乾燥後に、フィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0420】
フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで2時間徐々に加熱してから徐々に冷却させてフレームから分離し、ポリイミド系フィルムを得た。また、ポリイミド系フィルムを300℃で30分間熱処理した。このように製造されたポリイミド系フィルムはポリアミド-イミドフィルムであり、厚さは50μmであり、平均光透過度は88%であり、黄色度は3.7であり、TMA法によって50~250℃で測定した平均線膨脹係数(CTE)は20ppm/℃であった。
【0421】
<実施例1>
【0422】
製造例1で製造されたシラザン系化合物を、溶媒である無水プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに混合してコーティング用組成物を製造した。この時、固形分であるシラザン系化合物の含有量は、コーティング用組成物全重量に対して1.5重量%にした。支持層110として、製造例8で製造されたポリイミド系フィルムを用いて、光透過性フィルム100を製造した。
【0423】
具体的に、前記製造されたコーティング用組成物を、厚さワイヤーコーティング法によって、製造例8で製造されたポリイミド系フィルムに塗布した後、80℃の温度で乾燥させ、250℃の温度で熱処理して、厚さ0.01μmの第1コーティング層210を形成した。その結果、ポリイミド系フィルムからなる支持層110及び第1コーティング層210を含む光透過性フィルム100が製造された。
【0424】
<実施例2~7>
【0425】
製造例2~7でそれぞれ製造されたシラザン系化合物を用いて、実施例1と同じ方法でコーティング用組成物を、実施例1と同じ方法で光透過性フィルムを製造し、それらをそれぞれ実施例2~7とした。
【0426】
<比較例1及び2>
【0427】
比較製造例1及び2でそれぞれ製造されたシラザン系化合物を用いて、実施例1と同じ方法でコーティング用組成物を、実施例1と同じ方法で光透過性フィルムを製造し、それらをそれぞれ比較例1及び2とした。
【0428】
<比較例3>
【0429】
何にもコーティングされていない、製造例8で製造されたポリイミドフィルム自体を光透過性フィルムとして使用した。
【0430】
<測定例>
【0431】
実施例1~7及び比較例1~3で製造された光透過性フィルムに対して次のように物性を測定した。
【0432】
(1)光透過度(%):標準規格ASTM E313に従ってスペクトロフォトメーター(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて、波長360~740nmにおける平均光学透過度を測定した。
【0433】
(2)黄色度:標準規格ASTM E313に従ってスペクトロフォトメーター(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて黄色度を測定した。
【0434】
(3)熱分解温度:ISO 11358に従って熱重量分析機(製造社:TA instruments、製品番号:SDT Q600)を用いて25~400℃の測定範囲において分当たりに10℃の昇温速度で熱分解温度を測定した。何にもコーティングされていない比較例3の光透過性フィルムに対する、実施例1~7及び比較例1~2で製造された光透過性フィルムの重量減少率を測定し、重量減少率の差が1%を超える地点の温度を熱分解温度として採択した。
【0435】
(4)クロスハッチ付着力(Crosshatch adhesion):ASTM D3359-02の付着力試験方法によって試験した。本方法によって、定められた空間のクロスハッチパターンにおいてフィルムを通じて切り、切った領域をテープでテーピングした後、テープを速かに除去した。テープ除去後に、切った領域を観察し、コーティング層が剥がれたり除去された程度を観察及び決定し、当該領域に評点を与えた。5Bの評点は、コーティング層が全く除去されないことを要求する完璧な評点である。0Bの評点は、コーティング層の65%以上が除去され、その結果、コーティング層の付着力が不良であることを示す。
【0436】
(5)撓み特性:光透過性フィルムを横100mm×縦100mmのサイズに切断してサンプルを準備した。直径2mmの円形ツールを中央に置いて光透過性フィルムのサンプルを10cm/sの速度で巻いてから伸ばすことを200,000回反復し、コーティング層の割れの有無を肉眼及び顕微鏡で観察した。コーティング層に割れ現象が少しでもあれば‘Failed’と表示し、割れ現象がなければ‘OK’と表示した。
【0437】
測定結果は、下記表1の通りである。
【0438】
【0439】
表1を参照すると、実施例1~7で製造された光透過性フィルムは、1.5以下の黄色度及び89%以上の光透過度を有することが確認できる。
【0440】
また、実施例1~7で製造された光透過性フィルムにはコーティング層が配置されているにもかかわらず、光透過性フィルムを巻いてから伸ばすことを200,000回反復する撓み特性測定の結果、コーティング層に割れ現象が発見されないことが確認できる。
【符号の説明】
【0441】
100,200,300,400:光透過性フィルム
110:支持層
210:第1コーティング層
220:第2コーティング層