(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ダウン症候群特異的な後成的マーカーを利用したダウン症候群診断方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240807BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240807BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20240807BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALN20240807BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6883 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2022581674
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 KR2021005717
(87)【国際公開番号】W WO2022005010
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0081685
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ヒュン ミー
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジ ヒェ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517789(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051522(WO,A1)
【文献】特表2009-535050(JP,A)
【文献】特表2018-533953(JP,A)
【文献】Clinical Epigenetics,2019年,Vol. 11, Article No. 180,pp. 1-11,https://doi.org/10.1186/s13148-019-0756-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウン症候群診断のための情報を提供する方法であって、
(a)胎児から単離された生物学的試料から、ダウン症候群バイオマーカーのメチル化レベルを測定する段階であって、前記バイオマーカーは、ホモサピエンスゲノム(UCSC hg19)に整列された、21番染色体に存在する下記表1からなる群から選択される少なくとも1つの第1バイオマーカー、21番染色体以外の染色体に存在する下記表2からなる群から選択される少なくとも1つの第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせ
であり、
前記バイオマーカーは、下記表1に示す遺伝子または下記表2に示す遺伝子であり、
前記バイオマーカーのメチル化レベルは、下記表1の染色体内領域の塩基配列のメチル化レベルまたは表2の染色体内領域の塩基配列のメチル化レベルである、段階と、
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
(b)前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、
正常母体の血液から単離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー、前記第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせのメチル化レベルと比較する段階と、
(c)前記メチル化レベルを比較することによって、
以下の場合:
(i)前記胎児から単離された前記生物学的試料の前記第1バイオマーカーのメチル化レベルと、前記
正常母体の血液から単離された前記生物学的試料の
前記第1バイオマーカーのメチル化レベルとの差が10%以上である場合
であり、
前記第1バイオマーカーが、CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、C21orf2、TRPM2、TSPEAR、LINC00162、SSR4P1、SLC19A1、LOC100129027、MCM3AP、YBEY及びPRMT2からなる群から選択される一以上の遺伝子である場合に、前記胎児から単離された生物学的試料における前記第1バイオマーカーのメチル化レベルが、前記正常母体の血液から単離された生物学的試料における前記第1バイオマーカーのメチル化レベルより高く、かつ、
前記第1バイオマーカーがITSN1遺伝子である場合に、前記胎児から単離された生物学的試料における前記第1バイオマーカーのメチル化レベルが、前記正常母体の血液から単離された生物学的試料における前記第1バイオマーカーのメチル化レベルより低い場合、または
(ii)前記胎児から単離された前記生物学的試料の前記第2バイオマーカーのメチル化レベルと、前記
正常母体の血液から単離された前記生物学的試料の
前記第1バイオマーカーのメチル化レベルとの差が30%以上である場合
であり、
前記第2バイオマーカーが、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、LOC101928483、EGFL7、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B及びGPR143からなる群から選択される一以上の遺伝子である場合に、前記胎児から単離された生物学的試料における前記第2バイオマーカーのメチル化レベルが、前記正常母体の血液から単離された生物学的試料における前記第2バイオマーカーのメチル化レベルより高く、かつ、
前記第2バイオマーカーがIGHMBP2及びMRGPRD遺伝子である場合に、前記胎児から単離された生物学的試料における前記第2バイオマーカーのメチル化レベルが、前記正常母体の血液から単離された生物学的試料における前記第2バイオマーカーのメチル化レベルより低い場合に、
ダウン症候群の存在または発症リスクを決定する段階と、
を含む、ダウン症候群診断のための情報を提供する方法。
【請求項2】
前記段階(b)が、前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、正常対照群から単離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー、前記第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせのメチル化レベルと比較することをさらに含み、
前記段階(c)が、前記メチル化レベルを比較することによって、前記胎児から単離された前記生物学的試料の前記第1バイオマーカーのメチル化レベルと、前記正常対照群の
前記第1バイオマーカーのメチル化レベルとの差が10%以上である場合、または前記胎児から単離された前記生物学的試料の前記第2バイオマーカーのメチル化レベルと、前記正常対照群の
前記第2バイオマーカーのメチル化レベルとの差が30%以上である場合、ダウン症候群の存在または発症リスクを決定することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メチル化レベルの測定は、PCR、メチル化特異的PCR、リアルタイムメチル化特異的PCR、メチル化DNA特異的結合タンパク質を利用したPCR、定量PCR、メチル化特異的なPNAを利用するPCR、融解曲線解析、DNAチップ、パイロシークエンシング、ビスルファイトシークエンシング、及びメチル化次世代塩基配列シークエンシングからなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの方法を使用することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記胎児に由来する生物学的試料は、胎盤に由来する、組織、細胞または細胞遊離DNAを含み、及び前記
正常母体の血液に由来する生物学的試料は、血液細胞または細胞遊離DNAを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウン症候群疾患特異的後成的マーカー、及びそれを利用したダウン症候群診断のための情報を提供する方法、並びにダウン症候群診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染色体の構造異常による突然変異は、非正常的な発達及び胚芽の死亡をもたらす。しかしながら、最も一般的な染色体異常によって示される疾病の一種類であるダウン症候群(DS:down syndrome)の場合、胚芽が生存する。世界保健機関(WHO)によれば、発達障害の最も一般的な遺伝的原因であるダウン症候群の発病率は、大体のところ、全世界1,100名のうち1~100名の間である。ダウン症候群は、精神遅滞、顔構造上の特徴、劣悪な筋肉発達、及び短身長を含む80種以上の臨床特徴を示し、先天性心臓疾患、糖尿病、白血病、及びその他疾病の危険性増大と関連性がある。
【0003】
従来には、ダウン症候群を診断する技術として、妊婦血漿に存在する非細胞性DNA切片あるcfDNAの量的差を分析する方法(NGS based NIPT)があり、該方法は、ダウン症候群に対する高い検出正確性を示し、いち早く臨床に適用されているが、高価な機器と、検査消耗品とが要求され、分析方法も複雑であり、一般検査室において適用し難く、高価な検査費用により、全ての妊婦に適用し難いという限界点がある。また、一塩基多型(SNP)を利用する方法(PCR based NIPT)があるが、それは、検査正確性に対する明確な根拠がなく、各機関で提示する特殊アルゴリズムを使用しなければならないので、汎用的使用に限界がある。すなわち、前述の染色体異常疾病につき、遺伝子分析を介し、事前に疾病いかんを知ることができる分析方法に係わる研究が活発に進められている(韓国公開特許10-2019-0003987)が、今のところ十分ではない実情である。
【0004】
そのような背景下において、本発明者らは、既存の高価な検査機器、または特殊アルゴリズムを活用する必要なしに、遺伝体のメチル化レベルの簡単な測定を介し、ダウン症候群を効果的に検査することができる本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、個体から分離された生物学的試料から、ダウン症候群バイオマーカーのメチル化レベルを測定する段階であり、前記バイオマーカーは、21番染色体に存在する第1バイオマーカー、21番染色体以外の染色体に存在する第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせを含むものである段階と、前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、正常対照群から分離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー及び前記第2バイオマーカーのメチル化レベルと比較する段階と、前記メチル化レベルを比較し、前記個体のダウン症候群存在または発病危険を決定する段階と、を含むダウン症候群診断のための情報を提供する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様は、個体から分離された生物学的試料から、ダウン症候群バイオマーカーのメチル化レベルを測定する段階であり、前記バイオマーカーは、21番染色体に存在する第1バイオマーカー、21番染色体以外の染色体に存在する第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせを含むものである段階と、前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、正常対照群から分離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー及び前記第2バイオマーカーのメチル化レベルと比較する段階と、前記メチル化レベルを比較し、前記個体のダウン症候群存在または発病危険を決定する段階と、を含むダウン症候群診断のための情報を提供する方法である。
【0007】
本明細書内の用語「ダウン症候群」は、先天性遺伝疾患の一種であり、21番染色体の部分あるいは全体が、正常より1個さらに多く存在して示される疾病を意味する。該ダウン症候群は、身体的発達の遅延を起こし、顔面奇形と知的障害とを伴いうる。ダウン症候群を有した親の染色体は、ほとんど正常であるが、妊娠時、生殖細胞の非分離現象による21番染色体が1個さらに存在してしまう。発病頻度は、20歳産婦において、0.1%を示すが、45歳産婦の場合、4%に急増し、産婦の年齢により、発病頻度が上昇する様相を示す。該ダウン症候群は、産婦が妊娠最中に、胎児産前診断を介して確認することができ、出産後、直接の遺伝子検査を介しても判別される。
【0008】
本明細書内の用語「診断」は、病理状態の存在または特徴を確認することを意味し、ダウン症候群疾患の発病いかん、または発病可能性いかんを確認することを含む意味でもある。
【0009】
本明細書内の用語「メチル化(methylation)」は、DNAのシトシン(cytosine)残基の5番目炭素に、メチル基が添加されることを意味し、DNAを構成する塩基に、メチル基が付着することを意味しうる。
【0010】
望ましくは、メチル化いかんは、特定遺伝子の特定CpG部位のシトシン残基の5番目炭素で起こるメチル化いかんを意味する。該メチル化が起こった場合、それにより、転写因子の結合が妨害を受けることになり、特定遺伝子の発現が抑制され、反対に、非メチル化または低メチル化が起こる場合、特定遺伝子の発現が増大されることになる。哺乳動物細胞のゲノムDNAには、A、C、G及びTに加え、シトシン環の5番目炭素にメチル基が付着された5-メチルシトシン(5-mC(5-methylcytosine))という5番目塩基が存在する。5-メチルシトシンのメチル化は、CpGと呼ばれるCGジヌクレオチド(5’-mCG-3’)のCでのみ起こり、CpGのメチル化は、aluまたはトランスポゾンと、ゲノムとの反復配列が発現されることを抑制する。また、前記CpGの5-mCが、自然に脱アミノ-化してチミン(T)になりやすいために、CpGは、哺乳動物細胞において、ほとんどの後成遺伝学的変化が折々起こる部位である。
【0011】
本明細書内の用語「メチル化レベル測定」は、ダウン症候群を診断するために、生物学的試料において、ダウン症候群関連遺伝子バイオマーカーのメチル化レベルの程度を測定することを含むものでもある。前記メチル化レベル測定は、CpG部位のメチル化レベルを測定するものであり、当業界のメチル化レベルを測定する公知の方法を制限なしに使用可能であるが、メチル化特異的なPCR、例えば、メチル化特異的PCR(MSP(methylation-specific polymerase chain reaction)、リアルタイムメチル化特異的PCR(real time methylation-specific polymerase chain reaction)、メチル化DNA特異的結合タンパク質を利用したPCR、定量PCR、メチル化特異的なPNAを利用するPCR、または融解曲線分析(melting curve analysis)などを介して測定することができる。または、DNAチップ、パイロシークエンシング、ビスルファイト(bisulfite)シークエンシング及びメチル化次世代塩基配列シークエンシング(MC-Seq(methyl-capture sequencing)のような自動塩基分析のような方法で測定することができるが、それらに制限されるものではない。
【0012】
本明細書内の用語「DMC(differentially methylated CpG site)(差別的にメチル化されたCpG位置)」とは、発生段階、組織の種類、疾患の有無によって異なるDNAメチル化状態を示すCpG位置を意味しうる。前記DMCが反復的に存在する遺伝体内の領域を、「DMR(differentially methylated CpG region(差別的にメチル化されたCpG領域))とすることができる。ほとんどのDNAメチル化は、CpG位置においてなされ、Cは、シトシンを示し、Gは、グアニンを示し、pは、シトシンとグアニンとの間にあるホスホジエステル結合を意味しうる。健常人の体細胞において、ハウスキーピング遺伝子プロモーター部位のCpGアイランドは、非メチル化されており、刷り込み(imprinted)遺伝子、及び非活性化状態のX染色体上の遺伝子のように、発達過程の間、発現されない遺伝子は、メチル化されている。
【0013】
前記メチル化レベルを測定する製剤は、遺伝子のメチル化存在いかんを確認するための製剤であり、メチル化された遺伝子の量を測定するためのものでもある。例えば、前記メチル化レベルを測定する製剤は、非メチル化されたシトシン塩基を変形させる化合物、あるいはメチル化特異的制限酵素(MSRE:methylation-specific restriction enzyme)、前記遺伝子のメチル化された配列に特異的なプライマー、及び非メチル化された配列に特異的なプライマーを含むものでもある。前記非メチル化されたシトシン塩基を変形させる化合物は、ビスルファイト(bisulfite)でもあるが、それに制限されるものではなく、望ましくは、ナトリウムビスルファイトである。そのようなビスルファイトを利用して非メチル化されたシトシン残基を変形させ、プロモーターのメチル化いかんを検出する方法は、当業界に周知されている。前記メチル化特異的制限酵素は、その制限部位のメチル化状態により、核酸を選択的に切断する酵素を意味するものである。該制限部位がメチル化されていないか、あるいは半メチル化された場合において、特異的に切断する制限酵素の場合、該制限部位がメチル化されれば、切断は、起こらないか、あるいはかなり低下された効率下に起こるであろう。該制限部位が、メチル化された場合、特異的に切断する制限酵素の場合、該制限部位がメチル化されなければ、切断は、起こらないか、あるいはかなり低下された効率下に起こるであろう。
【0014】
他の態様は、ダウン症候群診断のための、前記第1バイオマーカーの用途に係わるものである。
【0015】
前記第1バイオマーカーは、下記表1によってなる群のうちから選択された少なくとも1以上でもある。
【0016】
【0017】
本明細書内の用語「CHODL」遺伝子は、コンドロレクチン(chondrolectin)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質の正確な機能は、知られているところがなく、マウスにおいて、迅速な運動ニューロンのマーカーであると明らかにされたところがある。
【0018】
本明細書内の用語「NCAM2」遺伝子は、神経細胞付着分子2(neural cell adhesion molecule 2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、プリオン病と関連していると知られている。
【0019】
本明細書内の用語「CYYR1」遺伝子は、システイン及びチロシン-豊富タンパク質1(CYYR1:cysteine and tyrosine-rich protein1)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質の機能は、具体的に知られているところがない。
【0020】
本明細書内の用語「GRIK1」遺伝子は、グルタメート受容体,イオン性,カイニン酸1(GRIK1:glutamate receptor, ionotropic, kainite 1)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、配位子ゲートイオンチャネルとして機能する多くのイオン性グルタメート受容体(GluR)サブユニットのうち一つをコーディングする。
【0021】
本明細書内の用語「OLIG2」遺伝子は、オリゴデンドロサイト転写因子(oligodendrocyte transcription factor)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の発現は、主に、中枢神経系に制限され、発達の他段階において、抗神経原及び神経原性因子のいずれにも作用し、前記遺伝子は、主に脳腫瘍と関連していると知られている。
【0022】
本明細書内の用語「CLIC6」遺伝子は、塩化物細胞内チャネルタンパク質6(chloride intracellular channel protein 6)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、ドーパミン受容体D3と相互作用すると知られている。
【0023】
本明細書内の用語「SIM2」遺伝子は、一偏同族体2(single-minded homolog 2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、顔及び頭の構成だけではなく、中枢神経系正中線の発達に重要な役割を行うと知られている。
【0024】
本明細書内の用語「HLCS」遺伝子は、完全カルボキシラーゼ合成酵素(holocarboxylase synthetase)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、卵の黄身、牛乳のような食品で発見されるビタミンB(ビオチン)を効果的に使用するのに重要な役割を行い、タンパク質、脂肪及び炭水化物の生産及び分解を含む多くの重要な細胞機能に関与すると知られている。
【0025】
本明細書内の用語「MX2」遺伝子は、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx2(interferon-induced GTP-binding protein Mx2)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、インターフェロン-アルファによって上向き調節されるが、類似したミクソウイルス耐性タンパク質1の抗ウイルス活性を含まないと知られている。
【0026】
本明細書内の用語「MX1」遺伝子は、インターフェロン誘導GTP結合タンパク質Mx1(interferon-induced GTP-binding protein Mx1)をコーディングする遺伝子を意味する。マウスにおけるインターフェロン誘導性Mxタンパク質は、インフルエンザウイルス感染に対する特定抗ウイルス状態と関連していると知られている。
【0027】
本明細書内の用語「TMPRSS2」遺伝子は、膜貫通プロテアーゼ,セリン2(transmembrane protease, serine 2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。セリンプロテアーゼは、多くの生理的及び病理学的な過程に関与すると知られており、前記遺伝子は、前立腺癌細胞において、アンドロゲンホルモンによって上向き調節され、アンドロゲン非依存性前立腺癌組織においては、下向き調節されると知られている。ただし、前記遺伝子の具体的な生物学的機能は、知られているところがない。
【0028】
本明細書内の用語「SLC37A1」遺伝子は、グルコース-6-ホスフェート交換体SLC37A1(glucose-6-phosphate exchanger SLC37A1)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、SLC37A4タンパク質と異なり、血糖恒常性には、関与しないようであるが、乳牛の牛乳において、燐酸塩レベルを調節し、生産される牛乳の量に影響を及ぼすと知られている。
【0029】
本明細書内の用語「PDE9A」遺伝子は、高親和性cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼ9A(high affinity GMP-specific 3’, 5’-cyclic phosphodiesterase 9A)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、cAMP及びcGMPの細胞内濃度を調節することにより、信号伝達に役割を行うと知られている。
【0030】
本明細書内の用語「CBS」遺伝子は、シスタチオニンベータ-合成酵素(cystathionine beta-synthase)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の欠陥は、シスタチオニンベータ-合成酵素欠乏症(CBSD:cystathionine beta-synthase deficiency)を誘発し、ホモシスチン尿症(homocystinuria)を誘発すると知られている。
【0031】
本明細書内の用語「CRYAA」遺伝子は、アルファ-クリスタリンA鎖(alpha-crystallin A chain)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の欠陥は、常染色体優性先天性白内障(autosomal dominant congenital cataract)を誘発すると知られている。
【0032】
本明細書内の用語「C21orf2」遺伝子は、繊毛関連及び鞭毛関連のタンパク質410(CFAP410:cilia and flagella associated protein 410)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、網膜栄養失調(retinal dystrophy)及び脊椎骨幹端異形成症(spondylometaphyseal dysplasia)と関連していると知られている。
【0033】
本明細書内の用語「TRPM2」遺伝子は、一時的受容体電位陽イオン性チャネル,サブファミリーM,メンバー2(transient receptor potential cation channel, subfamily M, member 2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の生理学的機能は、正確に知られているところがないが、インシュリン分泌に関与すると報告されたことがある。
【0034】
本明細書内の用語「TSPEAR」遺伝子は、トロンボスポンジンタイプラミニンGドメイン及びEAR反復(thrombospondin type laminin G domain and EAR repeats)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、難聴(deafness)及び外胚葉形成不全症(ectodermal dysplasia)と関連していると知られている。
【0035】
本明細書内の用語「LINC00162」遺伝子は、P38阻害された皮膚扁平細胞癌腫関連LincRNA(PICSAR:P38 inhibited cutaneous squamous cell carcinoma associated Linc RNA)遺伝子を意味する。前記遺伝子は、嗜眠症(narcolepsy)及び胚芽睾丸癌腫(embryonal testis carcinoma)と関連していると知られている。
【0036】
本明細書内の用語「SSR4P1」遺伝子は、信号配列受容体サブユニット4偽遺伝子1(signal sequence receptor subunit 4P seudogene 1)を意味する。前記遺伝子の機能につき、正確に知られているところがない。
【0037】
本明細書内の用語「SLC19A1」遺伝子は、葉酸担体1(folate transporter 1)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、細胞内葉酸の濃度を維持するのに重要な役割を行うと知られている。
【0038】
本明細書内の用語「LOC100129027」遺伝子は、PCBP3アンチセンスRNA1(PCBP3-AS1:PCBP3 antisense RNA1)遺伝子を意味する。前記遺伝子の具体的な生物学的機能は、知られているところがない。
【0039】
本明細書内の用語「MCM3AP」遺伝子は、80kDa MCM3関連タンパク質(80kDa MCM3-associated protein)をコーディングする遺伝子を意味する。タンパク質を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、MCM3結合タンパク質であり、それは、リン酸化依存的なDNAプライマーゼ活性を有すると知られている。
【0040】
本明細書内の用語「YBEY」遺伝子は、YbeYメタロエンドリボヌクレアーゼ(YbeY metalloendoribonuclease)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、腸間膜リンパ節炎(mesenteric lymphadenitis)と関連していると知られている。
【0041】
本明細書内の用語「PRMT2」遺伝子は、タンパク質アルギニンN-メチルトランスフェラーゼ2(protein arginine N-methyltransferase 2)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、エストロゲン受容体アルファと相互作用すると知られている。
【0042】
本明細書内の用語「ITSN1」遺伝子は、インターセクチン-1(intersectin-1)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、種痘症(vaccinia)及び調絃病(schizophrenia 1)と関連していると知られている。
【0043】
他の態様は、ダウン症候群診断のための、前記第2バイオマーカーの用途に係わるものである。
【0044】
前記第2バイオマーカーは、下記表2によってなる群のうちから選択された少なくとも一つでもある。
【0045】
【0046】
本明細書内の用語「MXRA8」遺伝子は、マトリックスリモデリング関連8(matrix remodeling associated 8)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子、またはそれによってコーディングされるタンパク質は、筋層非浸潤性膀胱癌診断用バイオマーカーとして知られたところがある(韓国公開特許公報第10-2019-0089552号)。
【0047】
本明細書内の用語「MIB2」遺伝子は、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼ(MIB2:mindbomb E3 ubiquitin-protein ligase 2)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質MIB2は、アクチンタンパク質(アルファ1)と相互作用し、黒色腫浸潤を抑制すると知られたところがある。
【0048】
本明細書内の用語「KIF26B」遺伝子は、キネシンファミリーメンバー26B(KIF26B:kinesin family member 26B)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、微細小管に沿い、細胞小器官を運ぶ細胞内運動タンパク質であり、腎臓発達に必須であり、一部の乳癌及び大腸癌において、前記タンパク質の上昇されたレベルが観察されたところがある。
【0049】
本明細書内の用語「SP5」遺伝子は、Sp5転写因子(Sp5 transcription factor)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、Wnt媒介ベータカテニン信号伝逹、及び標的遺伝子転写の調節と関連していると知られたところがある。
【0050】
本明細書内の用語「ZIC4」遺伝子は、Zicファミリーメンバー4(ZIC4:Zic family member 4)タンパク質、具体的には、C2H2型ジンクフィンガータンパク質のZicファミリーメンバータンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、X関連内蔵錯位障害(X-linked visceral heterotaxy)及び全前脳症タイプ5(holoprosencephaly type 5)と関連していると知られている。
【0051】
本明細書内の用語「ENPEP」遺伝子は、グルタミルアミノペプチダーゼ(glutamyl aminopeptidase)をコーディングする遺伝子を意味する。該ENPEPは、絨毛癌(choriocarcinoma)及び妊娠絨毛疾患(gestational choriocarcinoma)と関連していると知られている。
【0052】
本明細書内の用語「PITX2」遺伝子は、ペアドライクホメオドメイン転写因子2(paired-like homeodomain transcription factor 2)または脳下垂体ホメオボックス2(pituitary homeobox 2)としても知られたタンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の突然変異は、アクセンフェルト・リーガー症侯群(Axenfeld-Rieger syndrome)、虹彩隅角異発生障害(iridogoniodysgenesis syndrome)と関連していると知られている。
【0053】
本明細書内の用語「SH3BP2」遺伝子は、4番染色体に位置する遺伝子に由来するSH3ドメイン結合タンパク質2(SH3BP2:SH3 domain-binding protein 2)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、チェルビズム(cherubism)と関連していると知られている。
【0054】
本明細書内の用語「SEPP1」遺伝子は、セレノプロテインP(selenoprotein P)をコーディングする遺伝子を意味する。前記セレノプロテインは、細胞外糖蛋白質であり、ポリペプチド当たり9個のSec残基を含む点において一般的な物ではなく、細胞外空間において、抗酸化剤として作用すると知られている。
【0055】
本明細書内の用語「FLJ32255」遺伝子は、特性化されていない(uncharacterized)LOC643977であり、IncRNAクラスと関連しているRNA遺伝子である。
【0056】
本明細書内の用語「SHROOM1」遺伝子は、SHROOM1ファミリーメンバー1、SHROOM1のタンパク質をコーディングする遺伝子を意味し、神経系と異なる組織の発達に重要な役割を行い、細胞伸長の間、微細小管構造に関与する。ダウン症候群の症状において、先天性心臓欠陥及び関節炎に関与する。
【0057】
本明細書内の用語「LINC00574」遺伝子は、長非暗号化RNA574(long intergenic non-protein coding RNA 574)であり、IncRNAクラスと関連しているRNA遺伝子である。LINC00574遺伝子は、乳癌と関連していると知られている。
【0058】
本明細書内の用語「LOC154449」遺伝子は、特性化されていない(uncharacterized)LOC154449であり、IncRNAクラスと関連しているRNA遺伝子である。
【0059】
本明細書内の用語「PRRT4」遺伝子は、プロリン豊富膜貫通タンパク質4(PRRT4:proline rich transmembrane protein 4)をコーディングする遺伝子であり、ツェルウェガー症侯群(Zellweger syndrome)と関連していると知られている。
【0060】
本明細書内の用語「TMEM176B」遺伝子は、膜貫通タンパク質176B(TMEM176B:transmembrane protein 176B)をコーディングする遺伝子であり、樹枝状細胞の成熟過程に関与すると知られている。
【0061】
本明細書内の用語「MNX1」遺伝子は、運動ニューロン、及び膵臓ホメオボックス1(MNX1:motor neuron and pancreas homeobox1)タンパク質またはホメオボックスHB9(HLXB9:homeobox HB9)としても知られたタンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の突然変異は、クラリーノ症侯群(Currarino syndrome)と関連していると知られている。
【0062】
本明細書内の用語「LOC101928483」遺伝子は、非翻訳RNA(ncRNA:non-coding RNA)であり、NALT1(NOTCH1 associated lncRNA in T cell acute lymphoblastic leukemia 1)遺伝子とも呼ばれる。
【0063】
本明細書内の用語「EGFL7」遺伝子は、EGF類似ドメイン含有タンパク質7(EGF-like domain-containing protein 7)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の発現は、生理学的条件において、内皮細胞特異的や、ヒト癌において、腫瘍細胞によって非正常的に発現されると知られている。
【0064】
本明細書内の用語「NACC2」遺伝子は、NACCファミリーメンバー2タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、側壁心筋梗塞(lateral myocardial infarction)及び肝細胞心筋炎(interstitial myocarditis)と関連していると知られている。
【0065】
本明細書内の用語「C9orf69」遺伝子は、膜貫通タンパク質250(transmembrane 250)をコーディングする遺伝子を意味し、TMEM250とも呼ばれる。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、細胞周期において、S期への進行を促進し、細胞増殖に重要な役割を行うことができると知られている。
【0066】
本明細書内の用語「TLX1」遺伝子は、T細胞白血病ホメオボックスタンパク質1(TLX1:T-cell leukemia homeobox protein 1)をコーディングする遺伝子を意味し、HOX11とも呼ばれる。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、PPP1CC(serine/threonine-protein phosphatase PP1-gamma catalytic subunit)、PPP2CB(serine/threonine-protein phosphatase 2A catalytic subunit beta isoform)及びPPP2CA(serine/threonine-protein phosphatase 2A catalytic subunit alpha isoform)と相互作用すると知られている。
【0067】
本明細書内の用語「FGF8」遺伝子は、線維芽細胞成長因子8(FGF8:fibroblast growth factor 8)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、乳腺腫瘍細胞のアンドロゲンとアンカレッジとの独立的成長を支持し、その遺伝子の過発現は、腫瘍成長及び血管形成を増大させると知られている。
【0068】
本明細書内の用語「TACC2」遺伝子は、変形された酸性コイルドコイル含有タンパク質2(TACC2:transforming acidic coiled-coil-containing protein 2)をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、細胞周期にわたり、中心体に濃縮されるタンパク質をコーディングし、前記遺伝子は、腫瘍形成と関連している染色体領域内に存在する。前記遺伝子の発現は、乳房腫瘍の進行に影響を及ぼすと知られている。
【0069】
本明細書内の用語「CPXM2」遺伝子は、カルボキシペブチダーゼX,M14ファミリーメンバー2(CPXM2:carboxypeptidase X, M14 family member 2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。
【0070】
本明細書内の用語「NKX6-2」遺伝子は、NK6ホメオボックス2(NKX6-2)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、強直性運動失調症(spastic ataxia)及び常染色体劣性疾患(autosomal recessive)と関連していると知られている。
【0071】
本明細書内の用語「TLX1NB」遺伝子は、TLX1近隣(TNX1 neighbor)RNA遺伝子であり、IncRNAクラスに属する。
【0072】
本明細書内の用語「IQSEC3」遺伝子は、IQモチーフ及びSec7ドメイン3として知られたヒト遺伝子を意味し、KIAA1110とも呼ばれる。前記遺伝子は、脳において、特に、扁桃体(amygdala)において高く発現し、学習に重要な役割を行うと知られている。
【0073】
本明細書内の用語「PCDH8」遺伝子は、プロトカデリン-8(PCDH8:protocadherin-8)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、CNS特異的な方式でもって、細胞付着において機能する見られる内在性膜タンパク質をコーディングする。
【0074】
本明細書内の用語「F7」遺伝子は、止血に必須なビタミンK依存的な因子である凝固因子VIIをコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、VII因子欠乏症(factor VII deficiency)及び心筋梗塞と関連していると知られている。
【0075】
本明細書内の用語「SOX9」遺伝子は、転写因子SOX-9タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の突然変異は、骨格奇形症侯群(skeletal malformation syndrome)及び屈肢異形成症(campomelic dysplasia)と関連していると知られている。
【0076】
本明細書内の用語「PNMAL2」遺伝子は、PNMAファミリーメンバー8B(PNMA8B:PNMA family member 8B)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味し、前記遺伝子の重要なパラログ(paralog)は、PNMA8Aである。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、傍腫瘍性抗原類似タンパク質8B(paraneoplastic antigen-like protein 8B)を意味する。
【0077】
本明細書内の用語「THBD」遺伝子は、トロンボモジュリン(thrombomodulin)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、血管の内皮細胞に由来するタンパク質であり、他の因子と協働して血管内血栓が生ずることを防止する役割を行う。
【0078】
本明細書内の用語「MAPK8IP2」遺伝子は、C-jun-アミノ-末端キナーアゼ相互作用タンパク質2(C-jun-amino-terminal kinase-interacting protein 2)をコーディングする遺伝子を意味し、IB2(islet-brain-2)とも呼ばれる。前記遺伝子によってコーディングされるタンパク質は、脳において高く発現され、フェラン-マクダーミド症侯群(Phelan-McDermid syndrome)においては、ほとんど常時欠失されていると知られている。
【0079】
本明細書内の用語「KLHDC7B」遺伝子は、ケルチドメイン含有7B(Kelch domain containing 7B)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、クラミジア肺炎(chlamydia pneumonia)と関連していると知られている。
【0080】
本明細書内の用語「GPR143」遺伝子は、G-タンパク質共役受容体143(G-protein coupled receptor 143)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子は、小眼球症(microphthalmia)関連転写因子によって調節されると知られている。
【0081】
本明細書内の用語「IGHMBP2」遺伝子は、兔疫グロブリンヘリカーゼμ-結合タンパク質2(IGHMBP2:immunoglobulin helicase μ-binding protein 2)、心臓転写因子1(CATF1:cardiac transcription factor 1)またはDNA結合タンパク質SMUBP-2として知られたタンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。前記遺伝子の突然変異は、末梢脊椎筋萎縮症タイプ1(distal spinal muscular atrophy type 1)を誘発すると知られている。
【0082】
本明細書内の用語「MRGPRD」遺伝子は、Mas関連G-タンパク質結合受容体メンバーD(Mas-related G-protein coupled receptor member D)タンパク質をコーディングする遺伝子を意味する。大腿部癌(femoral cancer)及び肝横紋筋肉腫(liver rhabdomyosarcoma)と関連していると知られている。
【0083】
前記胎児の第1バイオマーカーのメチル化レベル、または第2バイオマーカーのメチル化レベルを、正常対照群のメチル化レベルと比較し、前記胎児のダウン症候群存在または発病危険を決定することができる。
【0084】
前記第1バイオマーカーにおいて、CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、C21orf2、TRPM2、TSPEAR、LINC00162、SSR4P1、SLC19A1、LOC100129027、MCM3AP、YBEY及びPRMT2の遺伝子は、正常胎児を妊娠した母体の血液、または正常胎児の胎盤に比べ、ダウン症候群胎児の胎盤において、過メチル化(hyper-methylation)されており、ITSN1遺伝子は、低メチル化(hypo-methylation)されている。
【0085】
前記第2バイオマーカーにおいて、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、LOC101928483、EGFL7、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B及びGPR143の遺伝子は、正常胎児を妊娠した母体の血液、または正常胎児の胎盤に比べ、ダウン症候群胎児の胎盤において、過メチル化され手織り、IGHMBP2及びMRGPRDの遺伝子は、低メチル化されている。
【0086】
本明細書内の用語「過メチル化(hyper-methylation)」は、メチル化レベル測定結果、対照群に比べ、実験群のメチル化レベルが高く示される状態を意味しうる。本明細書内の用語「低メチル化(hypo-methylation)」は、メチル化レベル測定結果、対照群に比べ、実験群のメチル化レベルが低く示される状態を意味しうる。
【0087】
前述の胎児で測定された第1バイオマーカーのメチル化レベルが、正常胎児を妊娠した母体の血液、または正常胎児胎盤で測定されたメチル化レベルと比較し、10%ないし30%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されている場合、前記胎児は、ダウン症候群が存在するか、あるいはその発病危険が高いと決定することができる。一具体例において、正常胎児胎盤で測定された第1バイオマーカーのメチル化レベルは、正常母体血液で測定されたメチル化レベルと比較し、10%ないし20%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されているということを確認し、前記第1バイオマーカーは、組織(胎盤)特異的なマーカーであるということを確認した。また、一具体例において、ダウン症候群胎児胎盤で測定された第1バイオマーカーのメチル化レベルは、正常胎児胎盤で測定されたメチル化レベルと比較し、10%ないし20%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されているということを確認し、前記第1バイオマーカーは、疾患(ダウン症候群)特異的なマーカーであるということを確認した。
【0088】
前述の胎児で測定された第2バイオマーカーのメチル化レベルが、正常胎児を妊娠した母体の血液、または正常胎児胎盤で測定されたメチル化レベルと比較し、30%ないし50%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されている場合、前記胎児は、ダウン症候群が存在するか、あるいはその発病危険が高いと決定することができる。一具体例において、正常胎児胎盤で測定された第1バイオマーカーのメチル化レベルは、正常母体血液で測定されたメチル化レベルと比較し、10%ないし20%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されているということを確認し、前記第2バイオマーカーは、組織(胎盤)特異的なマーカーであるということを確認した。また、一具体例において、ダウン症候群胎児胎盤で測定された第2バイオマーカーのメチル化レベルは、正常胎児胎盤で測定されたメチル化レベルと比較し、30%ないし50%以上、低メチル化されているか、あるいは過メチル化されているということを確認し、前記第1バイオマーカーは、疾患(ダウン症候群)特異的なマーカーであるということを確認した。
【0089】
本明細書内の用語「生物学的試料」は、胎児の体外に分離された組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、喀痰、脳脊髄液、尿のような試料などを含み、細胞核内に存在せず、血液内に遊離されたDNAである細胞遊離DNAを含むものでもある。前記生物学的試料は、胎盤に由来するものでもある。
【0090】
前記用語「胎盤」は、胎児と母体との間において、胎児の成長と生存とに必要な物質交換を媒介する構造物であり、胎児を外から覆い包んでいる腸膜の一部が母体の子宮内膜に接着して形成される。前記胎盤は、絨毛膜を含むものでもある。前記用語「絨毛膜」は、子宮内で羊水を包んでいる膜である脱落膜、絨毛膜、羊膜のうち、中間層に該当する。該絨毛膜は、受精卵で生じ、卵膜の一部を構成し、前面には、無数の突起である絨毛膜絨毛が密生し、子宮内壁に受精卵を侵入させる役割を行う。例えば、前記生物学的試料は、絨毛膜絨毛細胞に由来するものでもある。望ましくは、該絨毛膜絨毛細胞に由来する母体血液内細胞遊離DNAを意味しうる。
【0091】
他の態様は、個体から分離された生物学的試料から、ダウン症候群バイオマーカーのメチル化レベルを測定する段階であり、前記バイオマーカーは、21番染色体に存在する第1バイオマーカー、21番染色体以外の染色体に存在する第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせを含むものである段階と、前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、正常対照群から分離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー及び前記第2バイオマーカーのメチル化レベルと比較する段階と、前記メチル化レベルを比較し、前記個体のダウン症候群存在または発病危険を決定する段階と、を含むダウン症候群診断方法である。
【0092】
前記診断方法の各段階の細部的な内容は、前記ダウン症候群診断のための情報提供方法に記載した内容と同一である。
【発明の効果】
【0093】
一態様による方法は、遺伝子メチル化レベルの簡単な測定を介し、ダウン症候群を効率的に診断することができる効果がある。また、正常対照群(例えば、正常胎児を妊娠した母体の血液、または正常胎児の胎盤)で測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを比較することにより、胎児のダウン症候群存在または発病危険を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】正常母体血液(NB)、正常胎児胎盤組織(NT)、ダウン症候群胎児胎盤組織(T21T)に係わる染色体21番のメチル化レベル分析を介する65種バイオマーカーのグループ間平均メチル化レベルを比較した結果である。
【0095】
【
図2】正常母体血液(NB)、正常胎児胎盤組織(NT)、ダウン症候群胎児胎盤組織(T21T)に係わる遺伝体のメチル化レベル分析を介する33種のバイオマーカーのグループ間メチル化レベルを比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0097】
実施例1:母体血液と胎盤組織とにおけるDNA分離
第一病院臨床試験審査委員会からの承認下に実施された(#CGH-IRB-2016-5)。2015年6月から2017年5月まで、第一病院産婦人科において、産婦人科診療を受けた単胎妊婦を対象に、本実験を実施した。IRBの承認を受けた全ての患者から書面同意書が作成された。
胎盤組織は、絨毛膜絨毛検査に利用された絨毛膜絨毛細胞であり、妊娠初期(妊娠12週ないし13週)に採取され、分析されるまで、液体窒素に保存された。各胎児の妊娠年齢は、超音波検査によって決定された。胎児絨毛膜絨毛細胞の核型を決定するために、GTGバンディング方法を使用した染色体分析を行った。全てのダウン症候群(DS:down syndrome)群の胎盤組織は、HSA21(47、XX、+21または47、XY、+21)の完全な追加写本(extra copy)であり、全ての対照群(N(normal))の胎盤組織は、正常核型(46、XXまたは46、XY)を示した。胎児性別の比率は、実験群(ダウン症候群胎児群)と対照群(正常胎児群)とを一致させた。業者の指示により、QIAamp DNAミニキット(カタログ番号51304(Qiagen))を使用し、絨毛膜絨毛細胞から各サンプルのゲノムDNAを抽出した。母体血液は、絨毛膜絨毛検査前に採血された後、直ちに業者の指示により、QIAamp DNAミニキット(カタログ番号51304(Qiagen))を使用し、ゲノムDNAを抽出し、分析されるまで超低温冷凍庫に保存された。
下記表3に示されているように、絨毛膜絨毛細胞の採取において、母体年齢、妊娠年齢、半透明度、及び胎児性別の比率と係わり、実験群と対照群との間に有意な違いは、なかった(P>0.05)。
【0098】
【0099】
実施例2:MC-seqを使用した高効率メチロームプロファイリング(methylome profiling)
実施例1で採取された正常母体血液、正常胎児胎盤組織、ダウン症候群胎児胎盤組織のDNAサンプルを基に、MC-seqを使用し、多様なCpG部位において、DNAメチル化を定量化し、メチロームプロファイリングを実施した。
【0100】
標準DNAメチル化領域捕獲ライブラリーは、3μgゲノムDNAを有するペアドエンドシークエンシングライブラリー(ver.B.3、2015年6月(Illumina))に係わるSureSelect Methyl-Seq Target Enrichmentプロトコル(Agilent)を使用して生成された。SureSelect Human Methyl-Seqプローブセット(カタログ番号5190-4662((Agilent)))を使用した。DNA定量及びDNA品質は、それぞれPicoGreen分析キット(カタログ番号P7589(Thermo Fisher Scientific))及びNanoDrop分光光度計(カタログ番号ND-2000(NanoDrop Technologies))で測定して遂行した。3μgのゲノムは、超音波粉砕装置(AFA(カタログ番号500219)(Covaris))を使用し、DNA150-200bpの標的サイズに断片化された。簡略には、8個のマイクロチューブストリップを超音波器のチューブホルダにローディングし、以下の設定を使用し、DNAを剪断させた(モード:周波数スウィーピング;デューティサイクル:10%;強度:5;バースト当たりサイクル数:200;持続時間:60秒×6サイクル;温度:4℃~7℃)。断片化されたDNAが修復され、「A」が3’末端に連結され、SureSelect Methyl-Seq Methylated Adapterが断片に連結された。結紮が評価されれば、アダプダ結紮された生成物をPCRで増幅させた。
【0101】
次に、メチル化されたアダプダ結紮されたDNAのような最終精製された生成物を、qPCR定量化プロトコルガイドによって定量化し、TapeStation DNAスクリーンテープD1000(カタログ番号5067-5582(Agilent))を使用して検証した。DNAメチル化領域キャプチャの場合、標準SureSelect Methyl-Seq Target Enrichmentプロトコル(Agilent)により、350ngのDNAライブラリーを、ハイブリッド化バッファ、ブロッキングミックス、RNaseブロック、及び5μlのSureSelect All DNAメチル化領域キャプチャライブラリーと混合した。キャプチャベイトに対する混成化は、PCR機械を使用し、105℃において24時間加熱された熱サイクルロリードオプションを使用し、65℃で行った。標的キャプチャされたDNAを、EZDNAメチル化ゴールドキット(カタログ番号D5005(Zymo Research))を使用し、ビスルファイトで処理し、アダプダ添加断片を豊富化させるための8個のPCRサイクル及び多重化バーコードを追加するための6個のPCRサイクルを遂行した。捕獲されたDNAを増幅させた。最終精製された生成物を、前述のqPCR定量化プロトコルガイドを使用して定量化し、TapeStation DNAスクリーンテープD1000(カタログ番号5067-582(Agilent))を使用して検証した。シークエンシングは、HiSeq(商標) 2500プラットホーム(カタログ番号SY-401-2501(Illumina))を使用して行った。
【0102】
実施例3:データ加工及びメチル化プロファイル
実施例2でメチル化された最終生成物に対するデータ加工及びメチル化プロファイル分析を実施した。
【0103】
シークエンシングで生成されたペアドエンドデータ(paired end raw reads)の品質を、FastQCソフトウェア(バージョン0.11.5)を使用して確認した。分析を始める前、Trimmomatic(バージョン0.32)を使用し、最終データから、基本品質が3以下であるアダプダシーケンス及び塩基を除外した。また、スライディングウィンドウトリム方法を使用し、ウィンドウサイズ=4、平均品質=15を満足しない塩基を除外した。整理されたデータを生成するために、最小長が36bpであるデータが除去された。洗浄された判読物は、単方向オリゴ整列プログラム(SOAP)を基とするビスルファイトシークエンシングMAPpingプログラム(;バージョン2.90(媒介変数set-n1-r0)(BSMAP))を使用し、ホモサピエンスゲノム(UCSC hg19)に整列され、それは、独特にデータにマッピングされた。SAMファイル形式のマッピングされたデータは、SAMtools(バージョン1.2)を使用し、整列及びインデクシングされた。Sambamba(バージョン0.5.9)でもってPCR複製物を除外した。メチル化レベルは、BSMAPプログラムにおいて、methratio.py特徴でもって測定された。Agilent SureSelectターゲット領域に位置した全ての単一シトシンの10CT数より高いメチル化の比率は、一般的なメチル化が完了したものと見ることができる。判読対の両末端で覆われた領域の場合、メチル化を呼び出すために、ただ1つの判読だけが使用された。結果適用範囲プロファイルは、次のように要約された:# of C/3つのシーケンスコンテクストそれぞれに係わる実質的なCT数(CG、CHG及びCHH)。
【0104】
メチル化レベルを判読した後、DMCsとDMRsとを識別するために、CpGの各塩基におけるメチル化レベルを、中間スケーリング標準化で標準化した。5個の比較対につき、2つのグループ間のメチル化差の有意性を評価するために、独立したT検定を使用した。P値は、Benjamini・Hochberg FDR(false discovery rate)方法を使用して修正し、さまざまなテストにおいて、誤探知結果を制御した。主要成分分析は、以前研究のように、疾病状態(正常またはDS)を基とするが、胎児の性別に基づいていないサンプルの分離を示した。DMCは、|delta_mean|≧0.1、独立したT検定p値<0.05、及びFDR<0.05と係わる各領域をフィルタリングして決定された。DMRは、≧3DMCを含む任意長の連続領域と定義された。階層的群集分析は、さらに1以上の比較対を満足する有意なCpGに係わるサンプルのメチル化レベルを表示するための類似性の尺度として、完全な連結、及びユークリッド距離を使用して行われた。ヒートマップは、類似性メトリックの中心絶対相関を使用し、中心連結により、自動的にフローティングされた。差別的にメチル化された結果の全てのデータ分析及び視覚化は、R3.3.1(www.r-project.org)及びStatistical Package for Social Sciences 12.0(SPSS Inc.)を使用して行われた。
【0105】
実施例4:ダウン症候群胎児の胎盤における特異的な後成的マーカーの発掘
実施例1で得られた正常胎児を有した母体の血液、正常胎児の胎盤、ダウン症候群胎児の胎盤それぞれ5個のサンプルから、実施例2の方法を利用し、遺伝体メチル化様相を、CpGサイトレベルで比較分析した。その場合、各CpGサイトのメチル化レベル(%)は、0ないし100で表現され、0は、非メチル化、100は、完全なメチル化を意味する。比較分析されたメチル化レベルの差により、過メチル化されたり、低メチル化されたりするバイオマーカーを発掘した。
【0106】
4-1.21番染色体におけるメチル化レベル比較
ダウン症候群の目的染色体である21番染色体を基準に、同一形態の後成的特性が、連続して3個以上ある部位として、CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、TRPM2、C21orf2、TSPEAR、LINC00162、SSR4P1、SLC19A1、LOC100129027、MCM3AP、YBEY、PRMT2及びITSN1の遺伝子領域を選定した。選定された65個遺伝子領域の具体的な情報を、下記表4に示した。
【0107】
【表4-1】
【表4-2】
正常母体血液、正常胎児胎盤及びダウン症候群胎児胎盤における、前述の選定された遺伝子領域のメチル化程度(メチル化レベル(%)を100で除した値)を、下記表5、及び
図1に示した。
【0108】
【0109】
正常胎児胎盤と母体血液細胞とのメチル化レベル差、及びダウン症候群胎児胎盤と正常胎児胎盤とのメチル化レベル差を比較した。
【0110】
その結果、表3及び
図1に示されているように、CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、TRPM2、C21orf2、TSPEAR、SSR4P1、LINC00162、MCM3AP、YBEY及びPRMT2(NONE)の遺伝子領域において、胎児胎盤、特に、ダウン症候群胎児の胎盤において、過メチル化されることを確認した。具体的には、前述の遺伝子の正常胎児胎盤と母体血液細胞とのメチル化レベル差は、10ないし55であり、母体血液に比べ、胎児胎盤において過メチル化され、組織(胎盤)特異的なバイオマーカーであることを確認した。また、前述の遺伝子のダウン症候群胎児胎盤と正常胎児胎盤とのメチル化レベル差は、10ないし20であり、正常胎児に比べ、ダウン症候群胎児において、過メチル化されたバイオマーカーとして、疾患(ダウン症候群)特異的なバイオマーカーであることを確認した。ダウン症候群胎児胎盤と、他の2グループ(正常胎児胎盤及び母体血液)とのメチル化レベル差は、いずれも統計的に有意であった(P<0.05)。
【0111】
また、ITSN1遺伝子領域は、ダウン症候群胎児の胎盤において、低メチル化されることを確認した。具体的には、母体血液細胞において、ITSN1遺伝子領域のメチル化レベルは、90以上であり、正常胎児胎盤におけるメチル化レベルは、65以上と、過メチル化された一方、ダウン症候群胎児胎盤におけるメチル化レベルは、40以下と、低メチル化されることを確認した。グループ間のメチル化レベル差は、25以上であった。その場合にも、ダウン症候群胎児胎盤と、他の2グループ(正常胎児胎盤及び母体血液)とのメチル化レベル差は、いずれも統計的に有意であった(P<0.05)。
【0112】
4-2.21番染色体を除いた、他の染色体におけるメチル化レベル比較
同一形態の後成的特性が、連続して2個以上ある部位として、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、LOC101928483、EGFL7、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B、GPR143、IGHMBP2及びMRGPRDの遺伝子内領域を選定した。選定された33個遺伝子領域の具体的な情報を、下記表6に示した。
【0113】
【0114】
正常母体血液、正常胎児胎盤及びダウン症候群胎児胎盤における、前述の選定された遺伝子領域のメチル化程度(メチル化レベル(%)を100で除した値)を、下記表7、及び
図2に示した。
【0115】
【0116】
正常胎児胎盤と母体血液細胞とのメチル化レベル差、及びダウン症候群胎児胎盤と正常胎児胎盤とのメチル化レベル差を比較した。
【0117】
その結果、表5及び
図2に示されているように、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、EGFL7、LOC101928483、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B及びGPR143の遺伝子領域において、胎児胎盤、特に、ダウン症候群胎児の胎盤において過メチル化されることを確認した。具体的には、前述の遺伝子の正常胎児胎盤と母体血液細胞とのメチル化レベル差は、10ないし50であり、母体血液に比べ、胎児胎盤において過メチル化され、組織(胎盤)特異的なバイオマーカーであることを確認した。また、前述の遺伝子のダウン症候群胎児胎盤と正常胎児胎盤とのメチル化レベル差は、25ないし50であり、正常胎児に比べ、ダウン症候群胎児において、過メチル化されたバイオマーカーとして、疾患特異的であることを確認した。ダウン症候群胎児胎盤と、他の2グループ(正常胎児胎盤及び母体血液)とのメチル化レベル差は、いずれも統計的に有意であった(P<0.05)。
【0118】
また、IGHMBP2遺伝子領域及びMRGPRD遺伝子領域において、ダウン症候群胎児の胎盤において、低メチル化されることを確認した。正常胎児胎盤及び母体血液細胞において、IGHMBP2遺伝子領域及びMRGPRD遺伝子領域のメチル化レベルは、75以上と、過メチル化された一方、ダウン症候群胎児胎盤におけるメチル化レベルは、15以下と、低メチル化されたことを確認した。その場合にも、ダウン症候群胎児胎盤と、他の2グループ(正常胎児胎盤及び母体血液)とのメチル化レベル差は、いずれも統計的に有意であった(P<0.05)。
【0119】
前述の実施例4の結果を総合すれば、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、LOC101928483、EGFL7、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B、GPR143、IGHMBP2、MRGPRD;及び21番染色体内CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、C21orf2、TRPM2、TSPEAR、LINC00162、SSR4P1、SLC19A1、LOC100129027、MCM3AP、YBEY、PRMT2、ITSN1の遺伝子は、母体及び正常胎児と比較し、ダウン症候群胎児において、有意的な後成的特徴を示すバイオマーカーになりうることを確認することができる。
【0120】
具体的には、21番染色体に存在するダウン症候群特異的バイオマーカーのDNAメチル化レベルは、「正常母体血液:正常胎児胎盤:ダウン症候群胎児胎盤=0ないし10:20:40」であり、疾患によるメチル化レベルの差は、約20%であり、21番目的染色体の数的増加を反映させれば、最終的に、メチル化レベルの差は、約30%であることを確認することができる。また、21番染色体を除いた他の染色体に存在するダウン症候群特異的バイオマーカーのDNAメチル化レベルは、「正常母体血液:正常胎児胎盤:ダウン症候群胎児胎盤=0ないし10:30:70」であり、疾患によるメチル化程度の差は、約40%であることを確認することができる。
【0121】
すなわち、前述の結果を介し、前記バイオマーカー遺伝子のDNAメチル化レベル測定により、ダウン症候群胎児を診断することができる、母体または正常胎児のDNAメチル化レベルとの具体的な比較基準を確認することができる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[1]ダウン症候群診断のための情報を提供する方法であって、
(a)胎児から単離された生物学的試料から、ダウン症候群バイオマーカーのメチル化レベルを測定する段階であって、前記バイオマーカーは、21番染色体に存在する下記表1からなる群から選択される少なくとも1つの第1バイオマーカー、21番染色体以外の染色体に存在する下記表2からなる群から選択される少なくとも1つの第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせを含み、
前記バイオマーカーは、下記表1に示す遺伝子または下記表2に示す遺伝子であり、
前記バイオマーカーのメチル化レベルは、下記表1の染色体内領域の塩基配列のメチル化レベルまたは表2の染色体内領域の塩基配列のメチル化レベルである、段階と、
【表8-1-1】
【表8-1-2】
【表8-2】
(b)前記測定されたバイオマーカーのメチル化レベルを、母体の血液から単離された生物学的試料または正常対照群から単離された生物学的試料の前記第1バイオマーカー、前記第2バイオマーカー、またはそれらの組み合わせのメチル化レベルと比較する段階と、
(c)前記メチル化レベルを比較することによって、前記胎児から単離された生物学的試料の第1バイオマーカーのメチル化レベルと、前記正常対照群のメチル化レベルとの差が10%ないし30%以上である場合、または前記胎児から単離された生物学的試料の第2バイオマーカーのメチル化レベルと、前記正常対照群のメチル化レベルとの差が30%ないし50%以上である場合、ダウン症候群の存在または発症リスクを決定する段階と、を含む、ダウン症候群診断のための情報を提供する方法。
[2]ダウン症候群の目的染色体である21番染色体内の前記第1バイオマーカーにおいて、CHODL、NCAM2、CYYR1、GRIK1、OLIG2、CLIC6、SIM2、HLCS、MX2、MX1、TMPRSS2、SLC37A1、PDE9A、CBS、CRYAA、C21orf2、TRPM2、TSPEAR、LINC00162、SSR4P1、SLC19A1、LOC100129027、MCM3AP、YBEY及びPRMT2の遺伝子は、母体の血液から単離された生物学的試料及び正常対照群から単離された生物学的試料に比べ、ダウン症候群胎児から単離された生物学的試料において、過メチル化されており、及びITSN1遺伝子は、低メチル化されている、[1]に記載の方法。
[3]21番染色体以外の染色体に存在する前記第2バイオマーカーにおいて、MXRA8、MIB2、KIF26B、SP5、ZIC4、ENPEP、PITX2、SH3BP2、SEPP1、FLJ32255、SHROOM1、LINC00574、LOC154449、PRRT4、TMEM176B、MNX1、LOC101928483、EGFL7、NACC2、C9orf69、TLX1、FGF8、TACC2、CPXM2、NKX6-2、TLX1NB、IQSEC3、PCDH8、F7、SOX9、PNMAL2、THBD、MAPK8IP2、KLHDC7B及びGPR143の遺伝子は、母体の血液から単離された生物学的試料及び正常対照群から単離された生物学的試料に比べ、ダウン症候群胎児から単離された生物学的試料において、過メチル化されており、並びにIGHMBP2及びMRGPRDは、低メチル化されている、[1]に記載の方法。
[4]前記メチル化レベルの測定は、PCR、メチル化特異的PCR、リアルタイムメチル化特異的PCR、メチル化DNA特異的結合タンパク質を利用したPCR、定量PCR、メチル化特異的なPNAを利用するPCR、融解曲線解析、DNAチップ、パイロシークエンシング、ビスルファイトシークエンシング、及びメチル化次世代塩基配列シークエンシングからなる群から選択されるいずれか1つの方法を使用することによって行われる、[1]に記載の方法。
[5]前記胎児に由来する生物学的試料は、胎盤に由来する、組織、細胞または細胞遊離DNAを含み、及び前記母体の血液に由来する生物学的試料は、血液細胞または細胞遊離DNAを含む、[1]に記載の方法。