(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/566 20230101AFI20240807BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240807BHJP
H04W 28/10 20090101ALI20240807BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20240807BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20240807BHJP
【FI】
H04W72/566
H04W84/12
H04W28/10
H04W72/0453 110
H04W72/0446
(21)【出願番号】P 2023022633
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2018158572の分割
【原出願日】2018-08-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佑生
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523329(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178417(WO,A1)
【文献】特開2017-055311(JP,A)
【文献】国際公開第2017/196658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.11規格シリーズに準拠する通信装置であって、
複数の他の通信装置のそれぞれから送信データ
のアクセスカテゴリに関する情報を取得する取得手段と、
前記取得した情報に基づいて、第1の送信機会を与える2以上の通信装置を決定する決定手段と、
前記決定した2以上の通信装置に、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)のRU(リソースユニット)を割り当てることにより、前記決定した2以上の通信装置に第1の送信機会を与える第1のトリガーフレームを送信する送信手段と、
を有し、
前記取得した情報に基づいて前記第1の送信機会を与えると決定されなかった別の
2以上の通信装置であって、前記取得した情報に基づいて送信すべきデータを保持していると判断される前記別の
2以上の通信装置に対しては、前記第1のトリガーフレームより後に送信される別のトリガーフレームにより送信機会が与えられる、ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記複数の他の通信装置に含まれる第1の他の通信装置に前記第1の送信機会を与えるように決定し、前記第1の他の通信装置への無線リソースの割り当てにより、第1の送信機会に割り当て可能なOFDMAの無線リソースの最大数を超える場合に、第2の送信機会が第1のトリガーフレームに続く第2のトリガーフレームによって少なくとも第2の他の通信装置に与えられる、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の他の通信装置への無線リソースの割り当てにより、前記第1の送信機会に割り当て可能なOFDMAの無線リソースの最大数を超えない場合に、前記第2の他の通信装置に第1の送信機会が与えられる、ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記決定手段で決定した2以上の通信装置それぞれからOFDMAを用いて送信された信号を受信する受信手段をさらに有し、
前記受信手段で受信する信号はIEEE802.11シリーズ規格に準拠する信号である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記取得手段は、他の通信装置から送信されるBSR(Buffer Status Report)によって、当該他の装置の送信データ
のアクセスカテゴリについての情報を取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記取得手段は、他の通信装置から送信されるデータフレームにおけるQoS ControlフィールドまたはHT Controlフィールドから、当該他の装置の送信データ
のアクセスカテゴリについての情報を取得することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記取得手段
は、他の通信装置から送信されるデータフレームにおける前記HT Controlフィールドに含まれるACI Bitmapフィールドから、当該他の通信装置の送信データのアクセスカテゴリについての情報を取得することを特徴とする請求項
6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記取得手段
は、他の通信装置からさらにデータのサイズの情報
を取得することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記取得手段が取得する情報を所定の記憶領域に記憶する記憶手段と、
前記第1のトリガーフレームを送信した後に、送信データに関する新たな情報を外部から受信した場合に、前記所定の記憶領域に記憶された情報を前記新たな情報に基づいて更新する更新手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記取得手段が取得する情報に基づいて、前記複数の他の通信装置をグループ化するグループ化手段をさらに有し、
前記決定手段は前記グループ化手段によって得られた優先度の高いグループから順に前記OFDMAのRUを割り当てることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信装置は、
他の通信装置のそれぞれから送信データのアクセスカテゴリに関する情報を取得する前に、アクセスカテゴリに関する情報を送信するように要求する信号を送信することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記通信装置は、IEEE802.11ax規格に準拠したアクセスポイントであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項13】
IEEE802.11規格シリーズに準拠する通信装置が実行する制御方法であって、
複数の他の通信装置のそれぞれから送信データ
のアクセスカテゴリに関する情報を取得する取得工程と、
前記取得した情報に基づいて、第1の送信機会を与える2以上の通信装置を決定する決定工程と、
前記決定した2以上の通信装置にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)のRU(リソースユニット)を割り当てることにより、前記決定した2以上の通信装置に第1の送信機会を与える第1のトリガーフレームを送信する送信工程と、
を含み、
前記取得した情報に基づいて前記第1の送信機会を与えると決定されなかった別の
2以上の通信装置であって、前記取得した情報に基づいて送信すべきデータを保持していると判断される前記別の
2以上の通信装置に対しては、前記第1のトリガーフレームより後に送信される別のトリガーフレームにより送信機会が与えられる、ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
コンピュータを請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置として動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の無線リソース割当技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、限られた周波数帯域を有効に活用するために、時間、周波数、電力、符号、空間等の様々な次元での多重化など、様々な技術が利用される。無線LANでは、変調方式の多値化、チャネルボンディング、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)等を導入することにより、通信容量の拡大が試みられている。
【0003】
IEEE(米国電気電子技術者協会)では、高効率な次世代の無線LAN規格として、IEEE802.11ax規格の標準化活動が行われている。IEEE802.11ax規格では、周波数帯域を従来の20MHzより小さいサイズで割り当て可能とすることにより、多数の端末が無線リソースを同時に使用可能とする。このような無線リソースの割り当ては、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用いて行われる。IEEE802.11ax規格では、例えば20MHzの帯域幅を、周波数軸上で互いに重なり合わない26本のサブキャリア(tone)を有する9個のブロックに分割して、ブロック単位で端末への無線リソースの割り当てが行われる。この割り当て単位のブロックをResource Unit(RU)と呼び、RUの大きさは、周波数帯域幅と無線リソースの割り当てを受ける端末の数に応じて定めることができる。なお、RUの大きさは、toneの数を単位として表現され、例えば、26、52、106、242、484、996、2×996を利用可能であるが、20MHz帯域幅では、これらのうち、242以下の値を利用可能である。1つの端末に対して20MHzの帯域幅の全てを割り当てる場合は、最大で242toneを割り当てることができる。一方、例えば20MHzの帯域幅を9つの端末が同時に使用する場合、それらの端末に対して26toneが割り当てられる。このように、周波数帯域を最小の割り当て単位である26toneごとに分割することによって、20MHzの帯域幅を使用して、同時に9個の端末が通信を行うことができる。同様に、40MHz、80MHz、及び160MHz幅の周波数帯域が使用される場合には、それぞれ、最大18、37、及び74個の端末が同時に通信を行うことができるようになる。
【0004】
特許文献1には、IEEE802.11ax規格において、APがTrigger frame(TF)と呼ばれるフレームを送信し、各端末が、それに反応する形で上りリンク(UL)フレームを送信することが記載されている。また、特許文献1には、TFにおいて、優先すべきアクセスカテゴリ(AC)が指定されている。端末は、その指定されたAC以上の優先順位に対応する送信対象データを有する場合にはその送信対象データを送信し、そのようなデータを有しない場合は指定されたACより優先順位の低い送信対象データを送信する。なお、ACは、優先順位が低い順に、AC_BK(バックグラウンド)、AC_BE(ベストエフォート)、AC_VI(ビデオ)、AC_VO(音声)によって指定されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最大ユーザ数を超える数の端末が1つのアクセスポイント(AP)に接続する場合、APは、一度に各端末への無線リソースの割当を行うことができない。このため、APは、別のタイミングで、例えば一度目に無線リソースが割り当てられなかった端末に対して、RUの割当を再度実行することとなる。このような無線リソースの割当では、優先順位が高い送信対象データを有する端末が、すぐにその送信対象データを送信することができない場合がある。特許文献1に記載の技術では、端末が、無線リソースが割り当てられた際に送信対象データのうちの優先順位の高いデータを送信するが、APによって無線リソースが割り当てられないことにより、そのようなデータを送信することができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、送信対象データの優先順位に応じて適切に無線リソースを割り当てる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る通信装置は、IEEE802.11規格シリーズに準拠する通信装置であって、複数の他の通信装置のそれぞれから送信データのアクセスカテゴリに関する情報を取得する取得手段と、前記取得した情報に基づいて、第1の送信機会を与える2以上の通信装置を決定する決定手段と、前記決定した2以上の通信装置に、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)のRU(リソースユニット)を割り当てることにより、前記決定した2以上の通信装置に第1の送信機会を与える第1のトリガーフレームを送信する送信手段と、を有し、前記取得した情報に基づいて前記第1の送信機会を与えると決定されなかった別の2以上の通信装置であって、前記取得した情報に基づいて送信すべきデータを保持していると判断される前記別の2以上の通信装置に対しては、前記第1のトリガーフレームより後に送信される別のトリガーフレームにより送信機会が与えられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信対象データの優先順位に応じて適切に無線リソースを割り当てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】Trigger frameを用いた上りリンクのマルチユーザ通信の基本的な流れを示す図である。
【
図5】APがSTAへ送信するTrigger frameの構成例を示す図である。
【
図6】各STAがAPに送信するULデータフレームまたはBSRの構成例を示す図である。
【
図7】20MHzにおけるtoneサイズの割り当て例を示す図である。
【
図8】APによる無線リソースの割り当ての流れの第1の例を示す図である。
【
図9】ULデータ受信処理の流れの第1の例を示す図である。
【
図10】ULデータ受信処理の流れの第2の例を示す図である。
【
図11】ULデータ受信処理の流れの第3の例を示す図である。
【
図12】APによる無線リソースの割り当ての流れの第2の例を示す図である。
【
図13】ACとtoneサイズとの対応関係の例を示す図である。
【
図14】APによる無線リソースの割り当ての流れの第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0012】
(無線通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。
図1では、無線通信システムが、10個の端末(STA101~STA110)と1つのアクセスポイント(AP100)とを含んでいる構成を示している。なお、STA101~STA110は、IEEE802.11ax規格に準拠して動作可能なHE(High Efficiency) STAであるものとする。また、AP及びSTAの台数は一例に過ぎず、例えば9個以下または11個以上のSTAが存在してもよいし、2つ以上のAPが存在してもよい。また、ここでは、上述のように、各STAがHE STAであるものとするが、IEEE802.11axには準拠していないが、他のIEEE802.11規格シリーズに準拠したSTAが存在してもよい。なお、IEEE802.11ax規格に準拠するSTAを含んだ無線通信システムは一例であり、IEEE802.11ax規格と同様の特徴を有する他のIEEE802.11規格シリーズや任意の他の無線通信システムに以下の議論を適用することができる。範囲120は、APから送信された信号をSTAが受信可能な範囲を示しており、
図1の例では、AP100の送信する信号を全STA(STA101~STA110)が受信することができる状態を示している。また、以下の実施形態では、APと各STAとの間で認証が成功しており、互いにデータの送受信が可能な状態であるものとする。
【0013】
図1の例では、AP100との間で、STA101~STA110が、OFDMA(直交周波数分割多元接続)を用いて、複数の端末から並行して送信された信号を受信するUL(上りリンク) MU通信(マルチユーザ通信)を行う。なお上りリンクは、STAからAP100へ信号を送信する方向のリンクである。STA101~STA110は、それぞれが送信データを保持している。なお、これらの送信データは、アクセスカテゴリで定義される送信優先順位を有する。例えば、STA101はAC_VO、STA102~STA103はAC_VI、STA104~STA109はAC_BE、STA110はAC_BKのデータを保持しているものとする。なお、「AC」はアクセスカテゴリの頭字語であり、VOはVoice、VIはVideo、BEはBest Effort、BKはBackgroundを指す。優先順位は、AC_VOが最も高く、次いで、AC_VI、AC_BE、AC_BKの順で優先順位が低くなる。なお、この優先順位の順序は一例であり、場合によってはこの順序が変更されてもよい。
【0014】
本実施形態では、AP100が、各STAが有する送信対象データのアクセスカテゴリ(優先順位)の情報に基づいて、各STAへの無線リソース(Resource Unit、RU)の割当順序を決定する。すなわち、AP100は、各STAが有する送信対象データのアクセスカテゴリの情報を取得し、その情報に基づいて、優先順位の高い送信対象データが先に送信されるように、各STAに対する無線リソースの振り分けを行う。これによれば、優先順位の高い送信対象データを有するSTAは、優先的に無線リソースの割り当てを受けることができ、優先順位の高い送信対象データほど、先にAP100に届くようにすることができる。
【0015】
以下では、このような処理を行うAP100の構成例と、AP100によって実行される処理の流れの例について詳細に説明する。なお、以下では、AP100がIEEE802.11ax規格に従って動作するアクセスポイントであるものとして説明するが、これに限られない。例えば、アクセスカテゴリ又はそれに類する優先順位の概念を利用可能なIEEE802.11規格シリーズのいずれかの規格や、他の無線通信規格に従ってAP100が動作してもよい。
【0016】
(AP100の構成)
図2に、本実施形態に係るAP100のハードウェア構成を示す。AP100は、そのハードウェア構成として、例えば、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、及びアンテナ207を有する。なお、
図2の構成は一例であり、AP100は、
図2に示す構成の一部のみを有してもよいし、
図2に示される以外の構成を有してもよい。なお、STA101~STA110も同様の構成を有しうるが、ここでは説明を省略する。
【0017】
記憶部201は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方の、1以上のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ここで、ROMはRead Only Memoryの略であり、RAMはRandom Access Memoryの略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0018】
制御部202は、例えば、CPUやMPU等のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによりAP100の全体を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働によりAP100の全体を制御するようにしてもよい。
【0019】
また、制御部202は、機能部203を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、AP100が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、AP100がカメラである場合、機能部203は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、AP100がプリンタである場合、機能部203は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、AP100がプロジェクタである場合、機能部203は投影部であり、投影処理を行う。機能部203が処理するデータは、記憶部201に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部206を介してSTAと通信したデータであってもよい。
【0020】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、画面上への表示や、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0021】
通信部206は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。本実施形態では、通信部206は、少なくともIEEE802.11ax規格に準拠した処理を実行することができる。また、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。AP100は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。
【0022】
図3は、AP100の機能構成例を示すブロック図である。AP100は、その機能構成として、例えば、無線LAN制御部301、Trigger frame制御部302、受信フレーム解析部303、UI制御部304、記憶部305、及び帯域振分部306を有する。
【0023】
無線LAN制御部301は、他の無線LAN通信装置との間で無線信号の送受信を行うための制御を実行する。無線LAN制御部301は、例えば、無線LAN用のベースバンド回路やRF回路及びアンテナを制御するためのプログラムによって実現されうる。無線LAN制御部301は、IEEE802.11規格シリーズに従って、無線LANの通信制御を実行し、IEEE802.11規格シリーズに準拠したSTAとの間で無線通信を実行する。
【0024】
Trigger frame制御部302は、無線LAN制御部301を介して、認証に成功したSTAに対してTrigger frameを送信するための制御を行う。STAは、Trigger frameを受信すると、そのフレームへの応答として、上りリンク(UL)フレームを送信する。AP100は、無線LAN制御部301を介してULフレームを受信すると、受信フレーム解析部303において、受信したULフレームの内容の解釈を行う。例えば、受信したULフレームがACの情報を含んでいる場合、受信フレーム解析部303は、そのACの情報を解析によって取得し、そのULフレームの送信元のSTAが、どのACの送信対象データを有しているかを把握する。
【0025】
帯域振分部306は、受信フレーム解析部303において取得した情報に基づいて、各STAのデータ送信のために割り当てるべき周波数帯域の広さと周波数帯域の中心周波数、及び、周波数帯域を割り当てる時間を決定する。すなわち、帯域振分部306は、各STAに対して、どのタイミングでどの周波数範囲の無線リソースを割り当てるかを決定する。Trigger frame制御部302は、各STAに対して、Trigger frameを介して、帯域振分部306が決定した振り分けを示す情報を通知し、その振り分けに従ってULフレームを送信させる。
【0026】
UI制御部304は、AP100の不図示のユーザによるAP100に対する操作を受け付けるためのタッチパネル又はボタン等の、ユーザインタフェースに関するハードウェアを制御するプログラム等によって実現される。なお、UI制御部304は、例えば、画像等の表示、又は音声出力等の、情報をユーザに提示するための機能をも有しうる。記憶部305は、AP100が動作するプログラムおよびデータを保存するROMとRAM等によって構成されうる記憶機能である。
【0027】
(処理の流れ)
続いて、まず、ULでのマルチユーザ(MU)通信の基本的な流れについて
図4を用いて説明する。まず、AP100は、Trigger frame制御部302によって、Buffer Status Report Request(BSR Request)を送信する(S401)。このとき送信されるフレームの構成例を
図5に示す。なお、以下では、本実施形態での説明に関係しないフィールドについては説明を省略する。
【0028】
図5において、Frame Contorolフィールド501は、例えば、IEEE802.11axのTrigger frameであることを示す値が入るフィールドである。Common Infoフィールド505は、このTrigger frameの宛先である複数の端末に共通の情報を示すフィールドである。User Infoフィールド506-1~506-Kは、このTrigger frameの宛先に対する個別情報を示すフィールドである。Common Infoフィールド505は、Trigger typeサブフィールド511及びUL Lengthサブフィールド512を含む。Trigger typeサブフィールド511は、Triggerの種類を指定するのに使用される。例えば、S401で送信されるBSR Requestについては、Trigger typeサブフィールド511の値が4に設定される。UL Lengthサブフィールド512は、STAがTrigger frameへの返信をするときの、そのTrigger frameの送信元であるAPが希望するHE TB PPDUの長さを示す。なお、HE TB PPDUは、High Efficiency Trigger Based PLCP Protocol Data Unitの頭字語である。また、PLCPはPhysical Layer Convergence Protocolの頭字語である。User Infoフィールド506-1~506-Kは、AIDサブフィールド521と、RU Allocationサブフィールド522とを含む。これらのサブフィールドについては後述する。
【0029】
図4に戻り、各STAは、Buffer status report(BSP)を送信する(S402)。このとき送信されるULフレームの例を、
図6に示す。Frame Controlフィールド601は、フレームの種類を示す。例えば、Frame Controlフィールド601におけるTypeサブフィールド621及びSubTypeサブフィールド622の値を、それぞれ「11」及び「00」とすることにより、QoS Nullフレームであることが示される。また、QoS Controlフィールド608に含まれるTIDサブフィールド631は、送信元のSTAが保持している送信対象データのACを示し、Queue Sizeサブフィールド632は、その送信対象データのサイズを示す。Queue Sizeサブフィールド632で示される値は、STAがバッファリングしているTIDサブフィールド631で示されたACの送信対象データのサイズである。なお、Queue Sizeサブフィールド632に格納される値は、送信対象データのサイズ(量)が、256オクテットごとに1増加し、かつ切り上げで表現される。例えば、送信対象データのサイズが255オクテットまでは「1」、256オクテット~511オクテットまでは「2」のように表される。
【0030】
AP100は、各STAからのBSPを受信すると、その情報に基づいて、ULデータの送信を促すTrigger frameを送信する(S403)。このとき送信されるフレームも、例えば、
図5のフォーマットを有する。このとき、Trigger Typeサブフィールド511には「0」が格納される。また、UL Lengthサブフィールド512には全STA共通の通信期間に対応する値が格納され、この値によって、各STAが送信できるデータ量が示される。Trigger Typeサブフィールド511の値が「0」の場合、
図5のフレームには、User Infoフィールド506-1~506-Kが追加される。User Infoフィールド506-1~506-Kでは、それぞれ、AIDサブフィールド521によってSTAが特定され、RU Allocationサブフィールド522によって、そのSTAに割り当てられるRUおよびtoneサイズが特定される。なお、toneサイズとは、各STAに割り当てることのできる周波数帯域の広さを示す値である。
図7に、20MHzにおけるtoneサイズと割り当てられる周波数帯域の広さの一例を示す。例えば、最上段の例では、20MHzの帯域幅がtoneサイズが26の9個の周波数帯域に分割され、この分割されたブロックを単位として周波数リソースの割り当てが行われうることが示されている。一方、最下段の例では、20MHzの帯域幅が分割されずに、toneサイズが242の1つのブロックを単位として1つのSTAに周波数リソースが割り当てられることが示されている。なお、40MHz、80MHzにおいても同様にtoneサイズを割り当てることができる。
【0031】
各STAは、Trigger frameを受信すると、Trigger frameのUL Lengthサブフィールド512によって定まるデータ量の範囲内で、ULのData frameを送信する(S404)。AP100は、各STAからPPDUを受信すると、受信確認としてMulti Block Ack(Multi BA)を送信する(S405)。
【0032】
なお、STAは、AP100に対して、任意のタイミングでBSRを送信してもよい。すなわち、ULデータとしてAP100に送信するデータフレームに、BSRで通知すべき情報を含めてもよい。また、AP100は、各STAから送信されるULデータに基づいて、BSRと同等のデータを読み取ってもよい。例えば、QoSを遵守するフレームは、
図6の形式でFrame bodyフィールド610にデータが格納されて送信される。このとき、QoS Controlフィールド608において、Frame bodyに格納したデータに対応するTIDと、STAが保持するQueue Sizeとが示される。AP100は、QoS Controlフィールド608のTIDサブフィールド631及びQueue Sizeサブフィールド632に格納された値を、BSRで得られる情報として取り扱いうる。
【0033】
また、他のフィールドを用いてBSRの情報が送信されてもよい。例えば、
図6のHT Controlフィールド609を用いて、BSRの情報が送信されうる。例えば、HT Controlフィールド609のうち、Versionサブフィールド641において、IEEE802.11axのフレームであることが示される。そして、HT Controlフィールド609のControl IDサブフィールド642の値が例えば「3」に設定されることにより、Controlの種別がBSR Controlであることが示される。Control Infromationサブフィールド643には、以下の情報が記述される。すなわち、ACI Bitmapサブフィールド651は、このフレームの送信元のSTAが保持するデータの全てのACを示す。Delta TIDサブフィールド652は、このフレームの送信元のSTAが保持するデータのTID数の合計を示し、ACI Highサブフィールド653は、最もQueue Sizeの大きなACを示す。Scaling Factorサブフィールド654は、Queue Sizeのスケールを示し、これにより、次のQueue Sizeで示すオーダーが定まる。Queue Size Highサブフィールド655及びQueue Size Allサブフィールド656は、それぞれ、Queue Sizeの大きなACのQueue Size値と、全てのデータを合わせたQueue Size値とを示す。このようにして、STAは、各ACについて、どの程度の量のデータを保持しているかをAPに伝えることができる。
【0034】
続いて、AP100によるいくつかの無線リソースの割り当て処理の例について説明する。
【0035】
<処理例1>
本処理例では、AP100は、複数のSTAが保持するデータのアクセスカテゴリの値に応じて、優先順位の高いSTAから順にRUを割り当てる。これにより、AP100は、優先順位の高いアクセスカテゴリのデータを優先的に受信することができる。なお、本処理は、例えば制御部202が、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0036】
図8は、AP100が、MU UL通信を実行するための処理の流れの例を示している。なお、この処理はAP100がMU UL通信を実行するときに開始され、シングルユーザの通信を行っている間には実行されない。ただし、これに限られず、例えばMU通信を行っていない間であっても、定期的にBSRを受信するなどの処理が実行されてもよい。
【0037】
まず、AP100は、各STAからBSRを受け取るためのトリガとして、BSR Requestを送信する(S801)。このとき送信するフレームは、例えば、上述のように、
図5に示されるフォーマットにおいて、BSR Requestであることが示されたフレームである。そして、AP100は、Trigger frameを受信したSTAから、BSRを受信する(S802)。このとき受信されるフレームは、上述のように、
図6に示されるフォーマットのフレームである。AP100は、受信フレーム解析部303を用いて、受信したBSRから、各STAが保持している送信対象データのACと、ACごとのQueue Sizeとを取得する(S803)。AP100は、このBSRによって取得した情報に基づいて、無線リソースの割り当てを実行する。なお、以下の説明では、Nをグループの番号とし、各STAに割り当てられるtoneサイズを26とし、RU indexが1から最大値までの値をとるものとする。なお、RU indexは、割り当てられるRUを指定する情報であり、各RU indexの値に対してそれぞれ異なるRUが対応付けられる。RU indexの最大値は、1回の送信機会で割り当て可能なRUの数であり、例えば20MHz帯域幅においてtoneサイズが26の場合、9である。またNによって示されるグループは、同じタイミングで無線リソースが割り当てられるSTAのグループを指す。すなわち、異なるNに属する2つのSTAは、互いに異なるタイミングでUL通信を行う。AP100は、無線リソースの割り当てに先立ち、グループの番号Nを0に、RU indexを1に、それぞれ初期化する(S804)。
【0038】
AP100は、まず、どのSTAに対してもRUが割り当てられておらず、グループ分けが終了していない状態で(S805でNO)、全STAのうち優先順位が最も高いACのデータを保持しているSTAを、RU index=1に割り当てる(S806)。これにより、このSTAに対して、N=0においてRU index=1のRUが割り当てられる。そして、RU indexをインクリメントしてRU index=2とし(S807)、次のSTAが存在する場合(S808でYES)、AP100は、インクリメントされたRU indexが最大値を超えたかを判定する(S809)。この時点では、RU index=2であり、最大値(20MHzの帯域が使用される場合に9)を超えないため(S809でNO)、処理をS806に戻す。S806では、RUの割り当てが完了していないSTA(残っているSTA)のうち、優先順位が最も高いACの送信対象データを保持しているSTAを、S807でインクリメントされたRU indexに割り当てる(S806)。なお、同じACの送信対象データを複数のSTAが有している場合には、それらのSTAの中からRUを割り当てるSTAが選択される。この選択は、例えば、STA自身の優先順位が高いもの、その複数のSTAのうちAIDが最も小さい/大きいもの、又はMACアドレスが最も小さい/大きいものが優先されるなど、所定のルールに従って行われてもよいが、ランダム選択が行われてもよい。
【0039】
このようにして、RUが割り当てられていないSTAが存在する間は、それらのSTAが、順に異なるRU indexに割り当てられていく。そして、AP100は、S807でインクリメントされたRU indexが最大値を超えると(S809でYES)、現在のグループでのRUの割り当てを終了する。また、RUの割り当てを行っている間に、RUが割り当てられていないSTAがなくなった場合(S808でNO)にも、現在のグループでのRUの割り当てを終了する。そして、AP100は、現在のグループでRUが割り当てられた1つ以上のSTAについて、Queue Sizeに基づいて通信期間をそれぞれ特定し、その特定された通信期間に応じて、このグループ内の全STAに共通の通信期間を設定する(S810)。例えば、AP100は、Queue Sizeで示される量のデータを受信完了するまでの通信期間を1つ以上のSTAのそれぞれについて特定し、特定された通信期間のうち、最大の通信期間を、全STAに共通の通信期間として設定しうる。その後、AP100は、グループの番号Nをインクリメントすると共にRU indexを1にリセットして(S811)、処理をS805に戻す。AP100は、S809でRUが割り当てられていないSTAが存在する状態でRU indexが最大値を超えたと判定した場合、次のグループで、上述の処理と同様にして、残りのSTAに対してRUを割り当てる。そして、AP100は、全てのSTAについてのRUの割り当てが完了すると(S805でYES)、その割り当てを通知するTrigger frameを送信することによって、各STAからのULデータを受信する(S812)。
【0040】
例えば、上述のように、STA101はAC_VO、STA102~STA103はAC_VI、STA104~STA109はAC_BE、STA110はAC_BKのデータを保持しているとする。この場合、最も優先順位の高いACのデータを保持しているSTA101に対して、グループN=0において、RU index=1に対応するtoneサイズが26のRUが割り当てられる。そして、次に優先順位の高いACのデータを保持しているSTA102~STA103に対して、グループN=0において、RU index=2~3に対応するtoneサイズが26のRUが割り当てられる。同様にして、次に優先順位の高いACのデータを保持しているSTA104~STA109に対して、グループN=0において、RU index=4~9に対応するtoneサイズが26のRUが割り当てられる。一方、20MHz帯域幅が使用される場合、RU indexの最大値は9である。このため、最も優先順位の低いACのデータを保持しているSTA110に対しては、N=0のグループ内でRUが割り当てられず、次のグループ(N=1)において、RU index=1に対応するtoneサイズが26のRUが割り当てられる。
【0041】
AP100が実行するULデータの受信処理の例について
図9を用いて説明する。
【0042】
AP100は、まず、グループの番号を初期化して、N=0とする(S901)。そして、N=0のグループに属するSTAに対して、
図5のような形式でTrigger frameを送信する(S903)。なお、このときに送信されるTrigger frameには、N=0のグループに属するSTAを示すAIDと、そのSTAが使用すべきRUの位置を示すRU Allocationとが記述される。N=0のグループに属するSTAは、このTrigger frameで記述された割り当てに従って、データフレームを送信する。AP100は、各STAからデータフレームを受信すると(S904)、Multi Block Ack(Multi BA)を各STAに対して返信する(S905)。各STAは、Multi Block Ackを受信することにより、送信したデータフレームがAP100において正しく受信されたか否かを確認することができる。AP100は、N=0のグループに属する全てのSTAからデータフレームを受信した場合に(S906でYES)、Nをインクリメントして(S907)、次のグループに属するSTAに対して同様の処理を繰り返す。なお、インクリメントされたNについてのグループが存在しない場合、すなわち、全てのグループについてのULデータフレームの受信が完了した場合(S902でYES)、
図9の処理を終了する。一方、まだデータフレームの受信が完了していないグループが存在する場合(S902でNO)、AP100は、次のグループについてS903以降の処理を繰り返し実行する。
【0043】
なお、AP100は、あるグループに属する全てのSTAからのデータフレームの受信を終了していないと判定した場合(S906でNO)、そのグループについて、全てのSTAからのデータフレームの受信を終了するまでS903からの処理を繰り返しうる。なお、AP100は、あるグループに属する全てのSTAからのデータフレームの受信を終了していないと判定した場合(S906でNO)に、
図10のS1001のように、再度RUを割り当てる処理が実行されてもよい。S1001の再割り当て処理では、
図8の処理が再度実行される。これにより、AP100は、優先順位の高いACを有するデータの受信に失敗した場合に、そのまま優先順位の低いデータの受信を待つのではなく、優先順位の高いデータの再送のために無線リソースを割り当てることで、そのデータの再送を促すことができる。この結果、優先順位の高いACのデータを効率よく、確実に受信することができるようになる。このように、優先順位の高いACのデータを持ったSTAに基づいてRUの割り振りを決めることで、APは優先順位の高いACのデータを優先的に受信することが可能となる。
【0044】
また、AP100がBSRを受信してから、MU UL通信の処理を行っている間に、STAにおいて新たな送信対象データが生じる場合が想定される。この場合、BSRで受信したQueue Sizeと、受信したデータフレーム内のデータ量+QoSフィールドで示されるQueue Sizeの値とが異なる。このため、AP100は、
図11のように、これらの変化した情報に基づいて、再割り当て処理を実行してもよい。
【0045】
図11では、AP100は、グループNにおいて全てのSTAからデータフレームを受信した場合(S906でYES)に、各STAの送信したデータフレーム内のQoSフィールドを解析する。そして、AP100は、このQoSフィールドのQueue Sizeの値と、以前受け取ったQoSフィールドのQueue Sizeに受信したデータ量を加算した値とを比較する。AP100は、この比較によって2つの値が異なると判定した場合、STAにおいて送信対象データの量が変化したと判定し(S1101でYES)、BSRで受信した情報を、データフレームの解析で得られた情報によって上書きする。そして、AP100は、上書きされた情報に基づいて、再度、割り当て処理を実行する(S1001)。これにより、STAにおいて送信すべきデータ量に変化が生じたとしても、柔軟にRUの割り当てを実行することができる。なお、AP100は、送信対象データのACに基づいて、例えばAC_VOやAC_VIのデータが新たに発生した場合に、RUの再割り当てを行い、AC_BEやAC_BKのデータが新たに発生してもRUの再割り当てを行わないようにしてもよい。これによれば、AP100は、優先順位の高いデータが発生した場合に、そのデータを優先して送信するための再割り当てを行うことができる。一方、優先順位の低いデータが発生しても直ちに再割り当てを行わないことにより、再割り当てが頻繁に行われることを防ぎ、システムとしての安定性を向上させることができる。
【0046】
なお、AP100は、
図8の例において、全てのSTAに対してRUを割り当てた後にデータフレームの受信処理(
図9~
図11)を実行するものとしたが、これに限られない。AP100は、1つのグループについての割り当てが完了した時点(
図8でS811に進んだ時点)で、データフレームの受信処理(
図9~
図11)を実行してもよい。このような1つのグループについての割り当ての完了時点でデータフレームの受信処理を行うことと、
図10及び
図11のような再割り当て処理とを組み合わせることで、処理時間を短く抑えながら、RUの割り当てを柔軟に行うことが可能となる。
【0047】
また、上述の例ではtoneサイズが26に固定されている場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、toneサイズを52として割り当てが行われてもよい。この場合、20MHz帯域幅を用いるとすると、1つのグループに割り当てられるSTAの最大数は4台となる。このため、AP100は、自装置とデータ通信しているSTAの台数や、送信データを保持しているSTAの台数によって、toneサイズを変更してもよい。例えば、AP100は、送信データを保持しているSTAの数が8台のときはtoneサイズを52とし、送信データを保持しているSTAの数が9台に達した場合にtoneサイズを26とするようにしてもよい。これにより、帯域を効率的に使用しながら、各STAが、一度の送信機会においてより多くのデータをAP100へ送信することができるようになる。
【0048】
また、上述の例では、AP100は、全てのSTAのRU割り当てとデータフレームの受信とが完了するまで他の操作を行っていないが、他の操作が行われてもよい。例えば、これらの処理の間に別のフレームの送受信が行われてもよい。例えば、AC_VO、AC_VIのデータを保持するSTAを含むグループからのデータフレームの受信が完了したが、他のグループのデータフレームの受信が完了していない時点で、BSR Requestを送信するような処理としてもよい。これにより、AC_BEよりも優先して送るべきデータを保持しているSTAの存在をすばやく認識し、そのSTAによるそのデータの送信を促すことが可能になる。
【0049】
<処理例2>
本処理例では、AP100は、ACごとにtoneサイズを変更する。これにより、優先順位の高いACを有するデータの受信を、より早い時間に完了することができるようになる。
図12は、AP100が、MU UL通信を実行するための処理の流れの例を示している。なお、本処理では、まず、
図8のS801~S803の処理が実行されるが、ここではその図示を省略している。
【0050】
本処理例では、処理内でのパラメータとして、グループ番号、カテゴリ番号(category)、及びRU indexを使用する。グループ番号NとRU indexは、処理例1と同様である。一方、カテゴリ番号は、ACを示す番号であり、カテゴリ番号=1はAC_VOに、カテゴリ番号=2はAC_VIに、カテゴリ番号=3はAC_BEに、カテゴリ番号=4はAC_BKに、それぞれ対応する。そして、本処理例では、AP100は、このカテゴリごとにtoneサイズを定め、その定められたサイズのRUを割り当てる。カテゴリとtoneサイズとの関係の一例を
図13に示す。例えば、AP100は、カテゴリ番号が1(ACがAC_VO)のデータを保持するSTAに対して、toneサイズ=242のRUを割り当てる。また、AP100は、カテゴリ番号が2(ACがAC_VI)のSTAに対して、toneサイズ=106のRUを割り当てる。ただし、これらの値は一例に過ぎず、別のtoneサイズが用いられてもよい。例えば、AP100は、AC_VOのデータを有するにtoneサイズが106を割り振ってもよい。なお、このときに、
図13のように各カテゴリに対して定められるtoneサイズを超えない範囲のtoneサイズが用いられるようにしてもよい。
【0051】
本処理では、まず初期化処理において、N=0、カテゴリ番号=1、RU index=1とする(S1201)。そして、AP100は、RUが割り当てられていないSTAの中に、カテゴリ番号=1(AC_VO)のデータを保持するSTAがあるかどうかを確認する(S1203)。カテゴリ番号=1のデータを保持するSTAがない場合は(S1203でNO)、AP100は、カテゴリ番号をインクリメントしてターゲットのカテゴリ番号を変更する(S1204)。そして、AP100は、カテゴリ番号=2(AC_VI)のデータを保持するSTAがあるかを確認する。AP100は、ターゲットのカテゴリ番号のデータを保持しているSTAが存在すると判定するまで、この処理を繰り返す。AP100は、ターゲットのカテゴリ番号のデータを保持するSTAが存在すると判定した場合(S1203でYES)、そのSTAをRU indexに割り当て(S1205)、RU indexをインクリメントする(S1206)。そして、AP100は、ターゲットのカテゴリ番号のデータを有するSTAのうち、RU indexに割り当てられていないSTAが存在するかを判断する(S1207)。AP100は、このようなSTAが存在すると判定した場合(S1207でYES)、S1206でインクリメントされたRU indexが最大値を上回っているかを判定する(S1208)。なお、本処理例では、
図13に示すように、ターゲットのカテゴリ番号に対応するtoneサイズが定められているため、S1208の判定では、これに対応するRU indexの最大値が使用される。すなわち、AC_VOに対してRU indexの最大値を1、AC_VIに対してRU indexの最大値を2、AC_BEに対してRU indexの最大値を4、AC_BKに対してRU indexの最大値を9として、S1208の判定が行われる。
【0052】
AP100は、RU indexの値が最大値を超えていない場合(S1208でNO)、処理をS1205へ戻す。一方、AP100は、RU indexの値が最大値を超えている場合(S1208でYES)は、現在のグループにおけるRUの割り当てを終了し、そのグループ内で、通信期間の長いSTAに合わせて共通の通信期間を設定する(S1209)。そして、AP100は、グループ番号を1つ増加させると共に、RU indexを1に戻す(S1210)。これらの処理は、全てのSTAがいずれかのグループのRU indexに割り振られる(全てのSTAにRUが割り当てられる)まで繰り返される。AP100は、全てのSTAに対してRUの割り当てを行った後(S1202でYES)、ULデータ受信処理を行う(S1211)。なお、S1211の処理は、上述の
図9~
図11のようにして行われるが、ここでは説明は繰り返さない。
【0053】
本処理例では、例えば、グループN=0において、ACがAC_VOのデータを保持しているSTA101に対して、toneサイズが242のRUが割り当てられる。そして、グループN=1において、ACがAC_VIのデータを保持しているSTA102及びSTA103に対して、toneサイズが106のRUが割り当てられる。また、グループN=2において、ACがAC_BEのデータを保持しているSTA104~STA107に対して、toneサイズが52のRUが割り当てられる。そして、グループN=3において、同様にACがAC_BEのデータを保持しているSTA108及びSTA109に対してtoneサイズが52のRUが割り当てられる。最後に、グループN=4において、ACがAC_BKのデータを保持しているSTA110に対してtoneサイズが26のRUが割り当てられる。このように、異なるACのデータは異なる送信機会に送信される。これによれば、優先順位の高いACのデータに対して早期の送信機会が与えられ、AP100は、そのような優先順位の高いACのデータの受信を早期に完了することができる。
【0054】
本処理例では、AP100は、優先順位の高いACのデータの送信のために、より多くの帯域(より大きいtoneサイズ)を割り振るため、優先順位の高いACのデータの受信を、処理例1と比較して早く完了することができる。これにより、AP100は、STAからのデータを受信できなかった場合でも、
図10や
図11の処理を行うことにより、処理例1と比較して、より早く対象STAへ再送を促すことが可能となる。この結果、優先順位の高いACのデータを保持しているSTAについて、より早い時間に受信確認まで完了することが可能となる。
【0055】
なお、本処理例では、
図13に示すように、ACごとにtoneサイズを固定するものとしたが、このtoneサイズは可変であってもよい。例えば、AP100は、同じACのデータを保持するSTAの数に応じてtoneサイズを決定しうる。この場合、AP100は、AC_VOのデータを保持するSTAが2台存在する場合、これらのSTAに対してはtoneサイズが106のRUを割り当てて、1回の送信機会でこれらのSTAによるデータ送信を終了するようにしうる。同様に、AP100は、AC_VIのデータを保持するSTAが4台存在する場合、これらのSTAに対して、toneサイズが52のRUを割り当てうる。
【0056】
また、AP100は、RUを割り当てた際に、各グループでいずれのSTAにも割り当てられていないRUが生じた場合、ACの低いデータを保持するSTAに、このRUを割り当ててもよい。例えば、AC_VIのデータを保持するSTAが1台存在し、AC_BEのデータを保持するSTAが5台存在する場合を考える。このような場合に本処理例をそのまま適用すると、N=0においてAC_VIのデータを保持するSTAに対してtoneサイズが106のRUを割り当てられる。そして、AC_BEのデータを保持するSTAに対しては、N=1において4台のSTAにtoneサイズが52のRUが割り当てられ、N=2において1台のSTAにtoneサイズが52のRUが割り当てられる。しかしながら、この場合、N=0においてtoneサイズが106のRUが1つ余り、N=2においてtoneサイズが52のRUが3つ余ることになる。これに対して、N=0において、2台のSTAにtoneサイズが106のRUを割り当て、N=1において、4台のSTAにtoneサイズが52のRUを割り当てることで、より効率的に無線リソースを使用することが可能となる。また、AP100は、異なる種類のACのデータを保持する複数のSTAを、ACごとのtoneサイズを維持したまま同じグループで共存させてもよい。例えば、AC_VIのデータを保持するSTAが1台存在し、AC_BEのデータを保持するSTAが6台存在する場合について検討する。この場合に、AP100は、N=0において、AC_VIのデータを保持するSTAに対して、toneサイズが106のRUを割り当て、AC_BEのデータを保持するSTAのうちの2台のSTAに対して、toneサイズが52のRUを割り当てうる。そして、AP100は、N=1において、AC_BEのデータを保持するSTAのうちの4台に対して、toneサイズが52のRUを割り当てる。これらの処理によれば、優先順位の高いACのデータを保持するSTAに対して優先的に送信機会を与えながら、全体として周波数利用効率を十分に高く確保することができる。
【0057】
また、AP100は、割り当てられていないRUが存在する場合に、データ量の多いSTAに対して割り当てるtoneサイズを増加させてもよい。例えば、AC_BEのデータを保持しているSTA104に対しては、上述の例では割り当てられるtoneサイズは52であるが、そのQueueサイズが大きい場合、toneサイズを106に増加させてもよい。
【0058】
これらを組み合わせることで、上述の例において、グループN=2において、STA104及びSTA105に対してtoneサイズが52のRUを割り当て、STA106~STA110に対してtoneサイズが26のRUを割り当てうる。すなわち、AC_BEのデータを保持するSTA104~STA109に対して、同じグループでRUを割り当てるために、RUのtoneサイズを26とする。そして、この場合、RUは9個存在するため、STA104~STA109の6台にRUを割り当てることで、3つのRUが余る。このため、余ったRUのうちの1つを、AC_BKのデータを保持しているSTA110に割り当てる。それでも2つのRUが余るため、例えばデータ量が多いSTA104及びSTA105に対しては、toneサイズを26から52に変更してRUの割り当てを行う。これにより、優先順位の高いACのデータを有するSTAに対しては優先的に送信機会を提供しながら、システム全体としての周波数利用効率を改善することができる。
【0059】
なお、データ量の多いSTAへ割り当てるtoneサイズを多くする手法は、上述の処理例1にも適用することができる。すなわち、処理例1において、全STAに対するRUの割り当て後に周波数帯域が余る場合、送信対象データ量が多いSTAに対して大きいtoneサイズのRUが割り当てられるように、RUの再割り当てが行われてもよい。また、このとき、送信対象データ量が他のSTAより多いSTAについて、データを分割して送信することを前提に、2回以上の送信機会でRUの割り当てが行われてもよい。このようなデータの分割が行われることで、各送信機会の通信期間の短縮を図ることができ、全体としての通信期間をも短縮することができる。
【0060】
<処理例3>
本処理例では、異なる種類のACのデータを保持する複数のSTAを同じグループに共存させる場合に、優先順位の高いACのデータに合わせて通信期間を決定する。これにより、優先順位の高いデータを、AP100が受信完了するまでの時間を短縮することが可能となる。以下の例では、STA107~STA109が、BSRによって、STA101よりも多くのデータ量を保持していることをAP100に通知しているものとする。
図14は、本処理例において、AP100がMU通信を実行する際の処理の流れの例を示している。本処理は、
図8のS808でNOと判定された場合又はS809でYESと判定された場合、すなわち、グループNにおいてSTAのRUへの割り当てが終わった後に開始される。
【0061】
本処理では、AP100は、割り当てられたSTAが保持しているデータが同じACのデータであるか否かを確認する(S1401)。そして、AP100は、これらのデータのACが全て同じであると判定した場合(S1401でNO)、S810と同様に、通信期間の長いSTAに合わせて、グループ内の全てのSTAに共通の通信期間を設定する(S1402)。その後、AP100は、処理を
図8のS811へ進めて、次のグループについてのRUの割り当て処理を実行する。一方、AP100は、グループ内のいずれかのデータのACが他のデータのACと異なると判定した場合(S1401でYES)、優先順位が最も高いACのデータに着目して通信期間を設定する。すなわち、AP100は、優先順位が最も高いACのデータを保持するSTAの通信期間に合わせて、グループ内の全てのSTAに共通の通信期間を設定する(S1403)。なお、優先順位が最も高いACのデータを保持するSTAが複数存在する場合、それらのSTAのうち、最も通信期間の長いSTAに合わせて、グループ内の全STA共通の通信期間が設定されうる。
【0062】
本処理例では、
図14の処理が開始されるまでの
図8の処理により、グループN=0において、STA101~STA109に対してRUが割り当てられる。この場合、STA101が保持するデータはAC_VOのデータであり、他のSTAが保持するデータのACと異なる。このため、グループN=0の通信期間は、優先順位が最も高いAC_VOのデータを保持するSTA101の通信期間に合わせて共通の通信期間が設定される。
【0063】
S1403での通信期間の設定後、AP100は、グループ内のSTAのうち、予定していた通信期間が、S1403で設定された共通の通信期間よりも長いSTAが存在するか確認する(S1404)。そして、AP100は、共通の通信期間よりも長い通信期間のSTAが存在しないと判定した場合(S1404でNO)は、処理を
図8のS811へ進め、次のグループについてのRUの割り当て処理を実行する。一方、AP100は、共通の通信期間よりも長い通信期間のSTAが存在すると判定した場合(S1404でYES)、そのSTAの送信データを分割し、通信期間を超える分のデータを、次以降のグループで送信させる。このために、AP100は、このSTAを、RUが割り当てられていないSTA(残りのSTA)として扱う(S1405)。そして、AP100は、このSTAについてグループ分けが終了していないと判定し(S805でNO)、RU indexへの割り当てを行う(S806)。例えば、STA101~STA109にtoneサイズが26のRUが割り当てられる場合に、STA101の通信期間を、STA102~STA106の通信期間は超えず、STA107~STA109の通信期間が超えるものとする。この場合、グループN=0において、STA101~STA109にtoneサイズが26のRUが割り当てられるが、STA107~STA109の送信データが分割され、STA107~STA109へのRUの割り当てが完了していないものとして扱われる。このとき、STA107~STA109の送信データは、グループN=0における通信期間が、優先順位が最も高いACのデータを保持するSTA101の通信期間以下となるように分割される。その後、グループN=1において、STA107~STA110に対して、toneサイズが26のRUが割り当てられる。なお、このときに、STA107~STA109の残りのデータの送信のための通信期間がSTA110の通信期間より短い場合、STA110の送信対象データが分割されうる。しかしながら、この場合は、割り当てられていないRUが存在するため、STA110に対してtoneサイズの大きい(例えばtoneサイズが52の)RUが割り当てられてもよい。
【0064】
本処理例によれば、優先順位の高いデータのAP100における受信完了までの期間が短縮される点で効果的であるが、再割り当て処理を行う場合にさらに効果的である。優先順位の低いACのデータに合わせて通信期間が設定される場合、優先順位の低いACのデータ受信を完了するまで、AP100はMulti BAを送信することができない。すなわち、AP100は、優先順位の高いACのデータ受信に失敗したとしても、優先順位の低いACのデータの受信を完了するまで待たなければ、Multi BAを送信することができない。これに対して、優先順位の高いACのデータに合わせて通信期間を割り当てることにより、AP100は、優先順位の高いACのデータの受信に失敗した際にすぐにMulti BAを送信し、再送をより早く促すことができる。
【0065】
このように、本処理例では、AP100は、優先順位の高いACのデータを保持するSTAに優先的にRUを割り当てると共に、そのデータの受信後にすぐにMulti BAを送信できるように通信期間を設定する。これにより、AP100は、優先順位の高いACのデータの受信を迅速に終了させることができ、また、受信に失敗した場合の再送をより早く行わせることができる。
【0066】
なお、本処理例ではグループ内で最も優先順位の高いACのデータを保持するSTAに合わせて通信期間が設定されるが、これに限られない。場合によっては優先順位が2番目に高いACのデータの通信期間に応じて共通の通信期間が設定されるなどのように、通信期間設定の基準となるデータのACが所定の範囲から選択されるようにしてもよい。例えば、AC_VOのデータを保持するSTAとAC_VIのデータを保持するSTAとが同じグループに属する場合、これらのデータのうちの通信期間が長い方が、通信期間設定の基準として用いられうる。すなわち、例えばAC_VO、AC_VI、AC_BEのデータを有するSTAが同じグループに割り振られ、AC_BE、AC_VI、AC_VOのデータの順にデータ量が多い場合、AC_VIのデータの通信期間に応じて共通の通信期間が決定されうる。
【0067】
なお、
図14の例では、各STAに対してtoneサイズが26のRUが割り当てられるが、上述のように、例えばACに応じて、各STAに対して異なるtoneサイズが割り当てられてもよい。この場合、各STAが割り当てられるtoneサイズを用いてデータを送信する際の通信期間が算出され、その算出結果に応じて、最も優先順位の高いACのデータ又はそれに準ずるACのデータの通信期間に基づいて、共通の通信期間が設定されうる。なお、これによってデータが分割される場合、同じSTAに対してであっても、1回目のデータ送信と2回目のデータ送信とで、割り当てられるtoneサイズが異なりうる。すなわち、データが送信される2つのグループのそれぞれにおいて、割り当てられるRUのtoneサイズが独立に決定されうる。
【0068】
また、OFDMAのほか、MIMOのbeamformingを考慮に入れてtoneサイズが変更されてもよい。例えば、MIMOによって4つのビームの範囲に略均等に10個のSTAが存在する場合(1つのビームに収容されるSTAの数が4つ以下である場合)、toneサイズを52として、N=0のグループのみで通信することができる。なお、このときの通信期間は、最も優先順位の高いAC、又はそれに準ずるACのデータを持つSTAを基準としてもよい。
【0069】
上述の処理例では、STAが保持するデータのACが1つのみである場合について説明したが、STAは、複数の相異なるACのデータを保持していてもよい。例えば、STA101がAC_VOのデータとAC_BEのデータとを保持していてもよい。この場合、AP100は、STAに無線リソースを割り当てる際に、STAに着目して割り当てを行う方法と、STAおよびACに着目して割り当てを行う方法とを用いることができる。例えば、AP100は、グループNにおいて、最も高い優先順位のデータを有するSTA101に、STA101が有する全データのためのRUを割り当てうる。このときに処理例3を用いる場合、グループ内の全てのSTAに共通の通信期間を、STA101のAC_VOのデータ量の送信に足りる通信期間としうる。すなわち、STA101のAC_BEのデータに対応する通信期間が、AC_VOのデータに対応する通信期間より長い場合、STA101のAC_BEのデータは分割され、別のグループにおいても送信されうる。なお、優先順位の最も高いACのデータを有するSTA101を基準として、STA101が有するAC_VOのデータとAC_BEのデータとのうち通信期間が長い方に合わせて、グループ内で共通の通信期間が設定されてもよい。また、グループNにおいて、STA101に対して、最も優先順位の高いAC_VOのデータの送信のためにRUを割り当てる。そして、AC_VOやAC_VIのデータを有するSTAに対してRUが割り当てられた後に、STA101に対してAC_BEのデータの送信のためのRUが割り当てられうる。
【0070】
上述の処理例では、STAが保持するデータのACのみに注目してSTAにRUを割り当てたが、ACのほかに、Queue Sizeをも考慮してSTAへのRUの割り当てが行われてもよい。例えば、STA104及びSTA105が保持するデータのACが共にAC_BEである場合を考える。このとき、STA104のQueue SizeがSTA105のQueue Sizeの2倍である場合、STA104に対して優先してRUを割り当ててもよい。これに処理例3を適用すると、STA104の送信するデータが分割されたとしても、次のグループでSTA104が送信するデータ量を抑えることができ、全体として通信期間を短く抑えることができる。
【0071】
なお、各STAが属すべきグループNを定める条件として、STAのDevice Classを加えてもよい。Device Classは、STAの絶対送信電力の精度とRSSI(受信信号強度インジケータ)測定の精度とによって定まるクラスである。STAは、Class AとClass Bの2種類に分類される。Class AのSTAは、絶対送信電力の精度とRSSI測定の精度を、共に±3dB以内とする能力を有する。一方、Class BのSTAは、送信電力の感度を±9dB、RSSI測定の精度を±5dB、相対送信電力の精度を±3dBとする能力を有する。なお、IEEE802.11ax規格では、STAは自身のDevice ClassをAPに通知する。そして、APは、この通知に応じてSTAを分類しうる。なお、この通知は、Probe RequestやAssociation Requestなどのマネジメントフレーム内のHE PHY Capabilities情報要素を用いて行われる。このようなSTAが存在する環境において、Class Bのような送信電力の精度が良くないSTAの信号をOFDMA方式によって多重させると、APにおいて、各STAからの受信電力に大きな差が発生する場合がありうる。この受信電力差により、OFDMAの直交性が崩れ、強いキャリア間干渉を発生させうる。このようなキャリア間干渉は、小さい電力で信号が受信される場合に影響が大きく、このような場合のAPにおける受信性能を大幅に劣化させうる。
【0072】
このため、AP100は、OFDMA多重通信のためのグループを定める際に、Class AのSTAとClass BのSTAとを区別して対応しうる。例えば、AP100は、Class AのSTAとClass BのSTAとを別のグループに割り当てうる。これにより、Class BのSTAが送信した信号によるClass AのSTAが送信した信号への干渉が発生するのを防ぐことができる。また、AP100は、Class BのSTAのtoneサイズをClass AのSTAのtoneサイズより小さくしうる。これによれば、Class BのSTAからの信号の送信電力を抑制し、低い精度によって送信電力が高くぶれたとしても、Class AのSTAが送信した信号に与える干渉電力を抑制することができる。また、AP100は、Class BのSTAを含んだグループの通信期間を長めに設定しうる。これにより、Class BのSTAが送信した信号の受信電力が低くても、その信号の復調に成功する確率が高くなるため、その信号の送信電力を低くするようにそのSTAに指示することができる。これにより、Class AのSTAが送信した信号に対するClass BのSTAが送信した信号の干渉電力を低く抑えることができるようになる。このように、これらの処理によって、Class BのSTAから送信された信号がClass Aから送信された信号に強く干渉するのを防ぐことができる。
【0073】
例えば、
図8のS806の処理において、AP100は、優先順位の高いACのデータを保持するSTAが複数存在する場合、Class AのSTAに対して優先してRU indexを割り当てうる。この場合、AP100は、例えば、AC_VIのClass AのSTAのグループ、AC_VIのClass BのSTAのグループ、AC_BEのClass AのSTAのグループ、・・・のように、STAをグループ化して無線リソースを割り当てうる。また、AP100は、Class AのSTAとClass BのSTAとで別々に
図8、
図12、
図14等の処理を行いうる。ここで、例えば、Class AのSTAについて割り当てられた1つ以上のグループをN1群、Class BのSTAについて割り当てられた1つ以上のグループをN2群と定義する。この場合、例えば、N1群に属する1つ以上のグループに通信期間が割り当てられた後に、N2群に属する1つ以上のグループに通信期間が割り当てられる。なお、N1群のうちの最初のグループの通信期間の後にN2群のうちの最初のグループの通信期間が設定され、その後にN1群のうちの2番目のグループの通信期間が設定されるなど、別の方法で通信期間が設定されてもよい。
【0074】
なお、Class A及びClass Bへの分類は一例であり、例えば送信電力の精度と受信信号強度の測定精度との一方のみに従うSTAの分類など、他の基準で分類が行われてもよい。また、3段階以上のClassへの分類が行われてもよい。すなわち、任意の分類に従って、例えばClassごとの無線リソースの割り当てや、1つのClassのSTAに割り当てられるRUのtoneサイズを、他のClassのSTAに割り当てられるRUのtoneサイズより小さくするなどの処理が行われうる。また、例えば複数のClassのうち所定のグループ内のClassのSTAに対して、優先的にRUを割り当てるようにしうる。例えば、Class 1~3のように3段階の分類が行われる場合、Class 1~2のSTAに対して優先的にRUを割り当てる、などの割り当てが行われうる。また、Classの情報を、ACより優先的に取り扱ってもよい。すなわち、例えば上述のClass AでAC_BEのデータを保持しているSTAに対して、Class BでAC_VIのデータを保持しているSTAより優先的にRUを割り当てるようにしてもよい。
【0075】
上述の実施形態は、IEEE802.11ax規格の専門用語を用いて説明を行ったが、これらは発明の理解を促進するためのものであり、発明を限定するためのものではない。すなわち、上述の手法は、IEEE802.11ax規格のみならず、その後継規格や他のIEEE802.11規格シリーズにおいて適用されてもよく、また、IEEE802.11規格シリーズ以外の無線通信規格にも適用されうる。すなわち、各端末が保持しているデータの優先順位を示す情報を取得し、上述のようにして、この優先順位に従って各端末に無線リソースを割り当てる通信装置が、任意の無線通信システムで採用されうる。
【0076】
なお、無線リソースの割り当ては、優先順位の情報に加えて、例えば送信対象データのサイズに基づいて行われてもよい。すなわち、大きいサイズの送信対象データを保持しているSTAに対して、優先的に無線リソースを割り当てるようにしてもよい。すなわち、例えば優先順位の低いACのデータを有するSTAであっても、そのデータのサイズが(例えば所定値より)大きい場合に、優先的にRUが割り当てられてもよい。AP100は、例えば、Queue Sizeの情報に基づいて、データサイズが所定値を超えるSTAについて、ACを考慮せずに無線リソースの割り当てを行いうる。また、AP100は、この場合に、データサイズが所定値を超えない場合には、上述のようにACによって無線リソースの割り当てを行いうる。そして、サイズが所定値を超える優先順位の低いACのデータは、例えば上述の処理例3のようにして分割されて送信されうる。これによれば、単純に優先順位の低いACのデータを有するSTAに対して相対的に後のタイミングで送信機会が与えられる場合では、そのデータの送信開始が遅いことにより、システム全体としての送信期間が長期化するが、これを防ぐことができる。
【0077】
また、各STAからの信号(例えばBSR等)の受信電波強度に基づいて、RUが割り当てられてもよい。例えば、AP100は、受信電波強度が所定値以上のSTAに対して、その保持しているデータのACによらずに、優先的にRUを割り当ててもよい。なお、AP100は、この場合に、受信電波強度が所定未満のSTAについては、上述のようにACに基づいて無線リソースを割り当てうる。このようにすることで、優先的にRUが割り当てられたSTAについて再送が発生する確率を低減することができ、無線リソースの再割り当て処理が実行される頻度を抑制することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0079】
201:記憶部、202:制御部、206:通信部、207:アンテナ、301:無線LA制御部、302:Trigger frame制御部、303:AC解析部、304:UI制御部、305:記憶部、306:帯域振り分け部