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特許7535158抗ヒトパピローマウイルス16 E7 T細胞受容体
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  • 特許-抗ヒトパピローマウイルス16  E7  T細胞受容体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】抗ヒトパピローマウイルス16 E7 T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20240807BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240807BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240807BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240807BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240807BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240807BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61K35/12
C12N5/10
A61K38/17
C07K14/725
C12N15/12 ZNA
A61P35/00
A61P31/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023091878
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2021203953の分割
【原出願日】2015-05-29
(65)【公開番号】P2023110036
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】62/004,335
(32)【優先日】2014-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリッチス、クリスチャン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エイ.
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505734(JP,A)
【文献】国際公開第2007/131092(WO,A2)
【文献】Clin. Immunol., 2005, Vol.114, p.119-129
【文献】BMC Bioinformatics, 2013, Vol.14 (Suppl 2), S13 (p.1-12)
【文献】J. Biol. Chem., 2010, Vol.285, No.38, p.29608-29622
【文献】Front. Immunol., 2011, Vol.2, Article 75 (p.1-26)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のα鎖相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び、配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含み、且つ、配列番号2のヒトパピローマウイルス(HPV)16 E7 11-19 に対する抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現する単離された細胞の集団を含む、哺乳動物における状態の治療又は予防用医薬組成物であって、ここで、該単離された細胞の集団が該哺乳動物に対して同種又は自己の細胞であり、且つ、状態が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である、医薬組成物。
【請求項2】
前記TCRが、
(a)配列番号9及び
(b)配列番号10(2位のXはAla又はGlyである)
のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記TCRが、
(a)配列番号16(
(i)48位のXはThr又はCysであり;
(ii)112位のXは、Ser、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;
(iii)114位のXは、Met、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり;及び
(iv)115位のXは、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである);並びに
(b)配列番号18(56位のXはSer又はCysである)
のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記TCRが、
(a)配列番号14、17、21、24、及び25のいずれか1;及び
(b)配列番号15、19、及び23のいずれか1
のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記TCRが、
(a)(i)配列番号12、(ii)配列番号22、(iii)配列番号26、(iv)配列番号9及び24、(v)配列番号9及び16、又は(vi)配列番号9及び17;並びに
(b)(i)配列番号10及び18、又は(ii)配列番号13、20及び27のいずれか1
のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記TCRが、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項7】
配列番号2のHPV 16 E7 11-19 に対する抗原特異性を有するTCRの機能的部分を含むポリペプチドを発現する単離された細胞の集団を含む、哺乳動物における状態の治療又は予防用医薬組成物であって、ここで、該機能的部分が、配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び、配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含み、
ここで、該単離された細胞の集団が該哺乳動物に対して同種又は自己の細胞であり、且つ、
ここで、状態が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である、医薬組成物。
【請求項8】
前記機能的部分が、
(a)配列番号9、(b)配列番号10、又は(c)配列番号9及び10(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである)、のアミノ酸配列を含む、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記機能的部分が、
(a)(i)配列番号9及び24;(ii)配列番号9及び17;(iii)配列番号9及び16;(iv)配列番号10及び18;若しくは(v)配列番号12、13、20、22、26、27、29及び30のいずれか1;
(b)配列番号12及び13;
(c)配列番号20及び22;
(d)配列番号26及び27;
(e)配列番号9、24、及び27;
(f)配列番号9、17及び20;又は
(g)配列番号9、10、16及び18、
のアミノ酸配列を含む、請求項7又は8記載の医薬組成物。
【請求項10】
タンパク質を発現する単離された細胞の集団を含む、哺乳動物における状態の治療又は予防用医薬組成物であって、ここで、該タンパク質が配列番号2のHPV 16 E7 11-19 に対する抗原特異性を有するTCRの機能的部分を含み、
ここで、該機能的部分が、配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、及び、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び、配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み、
ここで、該単離された細胞の集団が該哺乳動物に対して同種又は自己の細胞であり、且つ、
ここで、状態が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である、医薬組成物。
【請求項11】
前記タンパク質が、
配列番号9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び、
配列番号10のアミノ酸配列(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである)を含む第二のポリペプチド鎖、
を含む、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記タンパク質が、
(i)配列番号12、(ii)配列番号22、(iii)配列番号26、(iv)配列番号9及び16、(v)配列番号9及び17、又は(vi)配列番号9及び24、のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、且つ、
(i)配列番号10及び18、又は(ii)配列番号13、20及び27のいずれか1、のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、
を含む、請求項10又は11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記単離された細胞の集団が前記哺乳動物に対して同種の細胞である、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記単離された細胞の集団が前記哺乳動物に対して自己の細胞である、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記状態が、がんである、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2014年5月29日出願の米国仮特許出願第62/004,335号(参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され、且つ、以下の通り識別されるコンピューター可読のヌクレオチド/アミノ酸の配列表が、本明細書中、参照によりその全体が組み込まれる:2015年5月28日付ファイル名「720940_ST25.TXT」、78,607バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
例えば、子宮頸がん等のいくつかのがんのタイプの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染である。化学療法等の治療における進歩にもかかわらず、HPV関連のがんを含む多くのがんの予後は不良であり得る。従って、がん、特にHPV関連のがんの、さらなる治療に関する、満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
発明の要旨
本発明の一実施形態は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E7に対する抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。
【0005】
本発明の別の実施形態は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むTCR、又は該TCRの機能的変異体であって、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E7に対する抗原特異性を有する、TCR及び機能的変異体を提供する。
【0006】
本発明は、関連するポリペプチド及びタンパク質並びに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞及び細胞集団を更に提供する。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)に関連する抗体、又はその抗原結合部分、及び医薬組成物が、本発明によって更に提供される。
【0007】
哺乳動物における状態の存在を検出する方法、及び、哺乳動物における状態の治療又は予防の方法であって、状態が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である、方法が、本発明によって更に提供される。哺乳動物における状態の存在を検出する本発明の方法は、(i)該状態の細胞を含む試料と、本明細書に記載される本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部分、又は医薬組成物のいずれかとを接触させることによって、複合体を形成すること、及び(ii)複合体を検出することを含み、該複合体の検出は、哺乳動物における状態の存在を表し、状態は、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である。
【0008】
哺乳動物における状態を治療又は予防する本発明の方法は、哺乳動物に、本明細書に記載されるTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載されるTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む、任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は、本明細書に記載されるTCR(その機能的
部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは宿主細胞集団を、哺乳動物における状態を治療又は予防するのに有効な量で投与することを含み、状態は、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、キメラ抗HPV16 E7 TCR(陰影の付いた棒)をコードするヌクレオチド配列で形質導入した末梢血リンパ球(PBL)によって、標的の、HPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E6をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、HPV16 E7をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Alb細胞、Panc1細胞、又はSiHa細胞との共培養に際して分泌されたインターフェロン(IFN)-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。各標的細胞によるHLA-A2及びHPV-16 E7の発現を図1の下部に示す(「+」は発現について陽性であることを示し、「-」は発現について陰性であることを示す)。非形質導入細胞(陰影のない棒)をネガティブコントロールとして用いた。
図2図2A~2Rは、以下:HLA-A2/E711-194量体/m TRBC(左上象限)、HLA-A2/E711-194量体/m TRBC(右上象限)、HLA-A2/E711-194量体/m TRBC(左下象限)及びHLA-A2/E711-194量体/m TRBC(右下象限)を発現した、表1に記載の組換え発現ベクターの1つで形質導入した(B~I及びK~R)、第1ドナー(A~I)又は第2ドナー(J~R)からの細胞のパーセンテージを示すドットプロットである。各象限についての百分率の数値を、各ドットプロットの上に提供する。非形質導入細胞(A及びJ)をネガティブコントロールとして用いた。
図3図3A及び3Bは、表1に記載の組換え発現ベクターの1つで形質導入したドナー1(A)又はドナー2(B)由来のエフェクター細胞による、標的の624、CaSki、SCC90、又はSCC152細胞との共培養に際してのIFN-γ分泌を示すグラフである。各標的細胞株について、陰影の付いた棒(左から右へ)は、以下のベクター:キメラ抗HPV16 E7 TCR(α/β)、Cys改変TCR(α/β)、LVL改変TCR(α/β)、LVL-Cys改変TCR(α/β)、キメラ抗HPV16 E7 TCR(β/α)、Cys改変TCR(β/α)、LVL改変TCR(β/α)、又はLVL-Cys改変TCR(β/α)で形質導入したエフェクター細胞に対応する。非形質導入細胞(陰影のない棒)をネガティブコントロールとして用いた。
図4図4は、LVL改変TCR(β/α)をコードするレトロウイルスベクター(配列番号37)で形質導入したPBL(陰影の付いた棒)によって、標的の、HPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E6をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、HPV16 E7をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Ane細胞、Alb細胞、Panc1細胞、又はSiHa細胞との共培養に際して、分泌されたIFN-γ(pg/mL)を示すグラフである。各標的細胞によるHLA-A2及びHPV-16 E7の発現を図4の下部に示す(「+」は発現について陽性を示し、「-」は発現について陰性を示す)。非形質導入細胞(陰影のない棒)を、ネガティブコントロールとして用いた。
図5図5は、LVL-Cys改変TCR(β/α)をコードするレトロウイルスベクター(配列番号38)で形質導入したPBLによって、抗体なし(黒色の棒)での、又は抗MHCクラスI(灰色の棒)抗体若しくは抗MHCクラスII抗体(陰影のない棒)の存在下での、標的の624細胞、SCC90細胞、又はCaSki細胞との共培養に際して、分泌されたIFN-γ(pg/mL)を示すグラフである。コントロールとして、PBLにDMF5 TCRで形質導入し、624細胞と、又は抗MAGE A3 TCRで形質導入し、526-CIITA細胞と、抗体なしで、又は抗MHCクラスI抗体若しくは抗MHCクラスII抗体の存在下で、共培養した。
図6図6A~6Dは、LVL-Cys改変TCR(β/α)をコードするレトロウイルスベクター(配列番号38)で形質導入したエフェクター細胞(四角)と、種々のエフェクター:標的比で共培養した標的細胞CaSki(A)、SCC90(B)、SCC152(C)、又は624細胞(D)の特異的溶解(%)を示すグラフである。非形質導入細胞(丸)をネガティブコントロールとして用いた。
図7図7A及び7Bは、LVL-Cys改変TCR(β/α)(配列番号38)(陰影の付いた棒)又は抗HPV16 E6 TCR DCA2E6(陰影のない棒)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入したPBLによって、様々な濃度のHPV16 E711-19ペプチド(A)又はHPV16 E629-38ペプチド(B)でパルスした標的細胞との共培養に際して分泌されたIFN-γ(pg/mL)を示すグラフである。
図8A図8Aは、LVL-Cys改変TCR(β/α)(配列番号38)(黒色の棒)又はDC2E6 TCR(灰色の棒)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入したPBLによって、標的の624細胞、Caski細胞、SCC90細胞、又はSCC152細胞との共培養に際して分泌されたIFN-γ(pg/mL)を示すグラフである。非形質導入細胞(陰影のない棒)をネガティブコントロールとして用いた。
図8B図8Bは、Cys改変TCR(β/α)(黒色の棒)又はDCA2E6 TCR(灰色の棒)をコードするレトロウイルスベクターで形質導入したPBLによって、標的の、HPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Ane細胞、Alb細胞、Panc1細胞、又はSiHa細胞との共培養に際して分泌されたIFN-γ(pg/mL)を示すグラフである。非形質導入細胞(陰影のない棒)をネガティブコントロールとして用いた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E7に対する抗原特異性を有する、単離又は精製されたT細胞受容体(TCR)を提供する。
【0011】
HPV16は、悪性腫瘍と最も一般的に関連しているHPVのサブタイプである。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、HPV16は、少なくとも部分的にRbの不活性化を介して、細胞分裂周期においてがん細胞を活性に保つがんタンパク質E7の作用を介してがんを引き起こすと考えられている。HPV16 E7は、がん細胞で構成的に発現し、正常な未感染ヒト組織では発現しない。HPV16 E7は、子宮頸部、口腔咽頭部、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部、陰茎のがんが挙げられるが、これらに限定されない様々なヒトのがんで発現する。
【0012】
本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、任意のHPV16のE7タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対する抗原特異性を有し得る。本発明の実施形態においては、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、配列番号1、を含むか、からなるか、又はから実質的になる、HPV16 E7タンパク質に対する抗原特異性を有する。本発明の好ましい実施形態においては、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、YMLDLQPET(配列番号2)、を含むか、からなるか、又はから実質的になる、HPV16 E711-19ペプチドに対する抗原特異性を有する。
【0013】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI依存的様態でHPV16 E7
を認識することができる。本明細書で用いる場合、「MHCクラスI依存的様態」とは、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)が、MHCクラスI分子との関連の中で、HPV16 E7への結合に際し免疫反応を引き起こすことを意味する。MHCクラスI分子は、当該技術分野で公知の任意のMHCクラスI分子(例、HLA-A分子)であり得る。本発明の好ましい実施形態においては、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子である。
【0014】
本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、養子細胞移入のために用いられる細胞により発現する場合を含め、多くの利点を提供する。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、HPV16 E7は、複数のタイプのがんのHPV16感染細胞で発現するので、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、好都合なことに、複数のタイプの、HPV16に関連するがんの細胞を破壊する能力を提供し、従って、複数のタイプの、HPV16に関連するがんを治療又は予防すると考えられている。更に、特定の理論又はメカニズムには縛られないが、HPV16 E7タンパク質は、がん細胞でのみ発現するので、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、好都合なことに、正常で非がん性の細胞の破壊を最小限に抑えるか、又は排除しながら、がん細胞の破壊を標的にし、それによって、毒性を、例えば、最少化又は、除去することによって、低減すると考えられている。その上、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、好都合なことに、例えば、化学療法単独、手術、又は放射線等の他のタイプの治療により反応しないHPV陽性がんの治療又は予防に成功し得る。更に、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、好都合なことに、未操作の腫瘍細胞(例、インターフェロン(IFN)-γで処理されていない、HPV16 E7及びHLA-A2の一方又は両方をコードするベクターでトランスフェクトされていない、E711-19ペプチドでパルスされていない、又はそれらの組み合わせの、腫瘍細胞)を認識する能力をもたらし得る、HPV16 E7の非常に活発な認識をもたらす。
【0015】
フレーズ「抗原特異性」は、本明細書で用いる場合、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)が、HPV16 E7に、高い結合活性をもって、特異的に結合でき、且つこれらを免疫学的に認識できることを意味する。低濃度のHPV16 E7ペプチド(例、約0.05ng/mL~約5ng/mL、0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.5ng/mL、1ng/mL、又は5ng/mL)でパルスされた、抗原陰性のHLA-A2標的細胞と共培養した際、TCR(又はその機能的部分又は機能的変異体)を発現するT細胞が、少なくとも約200pg/mL以上(例、200pg/mL以上、300pg/mL以上、400pg/mL以上、500pg/mL以上、600pg/mL以上、700pg/mL以上、1000pg/mL以上、5,000pg/mL以上、7,000pg/mL以上、10,000pg/mL以上、又は20,000pg/mL以上)のIFN-γを分泌する場合、例えば、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、HPV16 E7に対して「抗原特異性」を有するとみなされ得る。代替的に、又は追加的に、低濃度のHPV16 E7ペプチドでパルスされた、抗原陰性のHLA-A2標的細胞と共培養した際、TCR(又はその機能的部分又は機能的変異体)を発現するT細胞が、非形質導入末梢血リンパ球(PBL)のIFN-γバックグラウンドレベルの少なくとも2倍のIFN-γを分泌する場合、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、HPV16 E7に対して「抗原特異性」を有するとみなされ得る。本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)を発現する細胞はまた、より高濃度のHPV16 E7ペプチドでパルスされた抗原陰性のHLA-A2標的細胞と共培養した際、IFN-γを分泌し得る。
【0016】
本発明は、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖又はそれらの組み合わせ等の、2のポリペプチド(即ち、
ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRがHPV16 E7に対する抗原特異性を有するならば、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0017】
本発明の一実施形態においては、TCRは2のポリペプチド鎖を含み、その各々はTCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を含むヒト可変領域を含む。本発明の一実施形態においては、TCRは、配列番号3のアミノ酸配列(α鎖のCDR1)を含むCDR1、配列番号4のアミノ酸配列(α鎖のCDR2)を含むCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列(α鎖のCDR3)を含むCDR3を含む第1のポリペプチド鎖並びに、配列番号6のアミノ酸配列(β鎖のCDR1)を含むCDR1、配列番号7のアミノ酸配列(β鎖のCDR2)を含むCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列(β鎖のCDR3)を含むCDR3を含む第2のポリペプチド鎖を含む。これに関して、本発明のTCRは、配列番号3~8からなる群から選択される1以上の任意のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、TCRは、配列番号3~5又は配列番号6~8を含む。特に好ましい実施形態においては、TCRは、配列番号3~8のアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明の一実施形態においては、TCRは、上記のCDRを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含み得る。これに関して、TCRは、配列番号9(ヒトα鎖の可変領域);配列番号10(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである)(β鎖の可変領域);配列番号9及び10の両方(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである);配列番号11(ヒトβ鎖の可変領域);又は配列番号9及び11の両方のアミノ酸配列を含み得る。配列番号10は、配列番号10の2位のXがGlyである場合、配列番号11に相当する。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号9及び10の両方(配列番号10の2位のXはAlaである)のアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明のTCRは、ヒト又はマウス等(例)の、任意の好適な種に由来する定常領域を更に含み得る。本発明の実施形態においては、TCRは、ヒトの定常領域を更に含む。これに関して、TCRは、配列番号14(ヒトα鎖の定常領域)、配列番号15(ヒトβ鎖の定常領域)、又は配列番号14及び15の両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0020】
本発明の実施形態においては、本発明のTCRは、可変領域及び定常領域の組み合わせを含み得る。これに関して、TCRは、配列番号9(ヒトα鎖の可変領域)及び配列番号14(ヒトα鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むアルファ鎖;配列番号11(ヒトβ鎖の可変領域)及び配列番号15(ヒトβ鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖;配列番号10(配列番号2の2位のXはAla又はGlyである)(β鎖の可変領域)及び配列番号15(ヒトβ鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖;配列番号9、11、14、及び15の全てのアミノ酸配列;又は配列番号9、10、14及び15の全てのアミノ酸配列を含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態においては、本発明のTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のそれぞれは、独立に、任意のアミノ酸配列を含み得る。これに関して、本発明のTCRのα鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。このタイプのα鎖は、TCRの任意のβ鎖と対になり得る。これに関して、本発明のTCRのβ鎖は、配列番号13のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のTCRは、配列番号12、配列番号13、又は配列番号12及び13の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号12及び13の両方のアミノ酸配列を含むヒトTCRである。
【0022】
本発明の別の実施形態は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRか、又は該TCRの機能的変異体であって、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E7に対する抗原特異性を有するTCR及び機能的変異体を提供する。キメラTCR、又はその機
能的変異体は、本明細書中に、本発明の他の態様に関して記載した通りの、いずれかのCDR領域を含み得る。本発明の別の実施形態においては、キメラTCR、又はその機能的変異体は、本明細書中に、本発明の他の態様に関して記載した、いずれかの可変領域を含み得る。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「マウス(murine)」又は「ヒト(human)」とは、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領域、アルファ鎖及び/又はベータ鎖)に関する場合、それぞれ、マウス又はヒトに由来するTCR(又はその構成要素)、すなわち、それぞれ、マウスT細胞又はヒトT細胞が起源であったか、又はかつてマウスT細胞又はヒトT細胞により発現されたTCR(又はその構成要素)を意味する。
【0024】
本発明の一実施形態においては、本発明のキメラTCRは、マウス定常領域を含む。これに関して、TCRは、配列番号17(マウスα鎖の定常領域)、配列番号19(マウスβ鎖の定常領域)、又は配列番号17及び19の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましい実施形態においては、本発明のTCRは、ヒト可変領域及びマウス定常領域の両方を含むキメラTCRである。
【0025】
本発明の実施形態においては、本発明のキメラTCRは、可変領域及び定常領域の組み合わせを含み得る。これに関して、TCRは、配列番号9(ヒトα鎖の可変領域)及び配列番号17(マウスα鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むアルファ鎖;配列番号11(ヒトβ鎖の可変領域)及び配列番号19(マウスβ鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖;配列番号10(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである)(β鎖の可変領域)及び配列番号19(マウスβ鎖の定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖;配列番号9、11、17及び19の全てのアミノ酸配列;又は配列番号9、10、17及び19の全てのアミノ酸配列を含み得る。一実施形態においては、本発明のキメラTCRは、配列番号20を含む全長ベータ鎖を含む。これに関して、TCRは、配列番号9、17及び20の全てを含み得る。
【0026】
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のTCRの機能的変異体が含まれる。本明細書で用いる場合、用語「機能的変異体(functional variant)」とは、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と実質的又は顕著な配列同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプチド又はタンパク質であって、該機能的変異体がTCR、ポリペプチド又はタンパク質(該機能的変異体はその変異体である)の生物学的活性を保持するものを指す。機能的変異体は、例えば、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の(similar)程度に、同(same)程度に、又はより高い程度に、HPV16 E7(親TCRが抗原特異性を有するか、又は親ポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する)と特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に関連して、機能的変異体は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、アミノ酸配列において、例えば、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であり得る。
【0027】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1の保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野で公知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1のアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の、酸性の別のアミノ酸との置換(例、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸との置換
(例、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val等)、塩基性アミノ酸の、塩基性の別のアミノ酸との置換(Lys、Arg等)、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸との置換(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyr等)等であり得る。
【0028】
代替的に、又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1の非保存的アミノ酸置換を有する親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と比較して機能的変異体の生物学的活性が増加するように、機能的変異体の生物学的活性を増強する。
【0029】
本発明の実施形態においては、機能的変異体は、アルファ鎖又はベータ鎖の定常領域に、1、2、3又は4のアミノ酸置換(複数可)を伴う、本明細書に記載のTCRのいずれかのアミノ酸配列を含む。好ましくは、機能的変異体は、マウス定常領域に、1、2、3、又は4のアミノ酸置換(複数可)を伴う、本明細書に記載のマウス定常領域のいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、置換されたアミノ酸配列(複数可)を含むTCR(又はその機能的部分)は、非置換のアミノ酸配列を含む親TCRと比較して、好都合なことに、HPV16 E7標的の認識増加、宿主細胞による発現の増加、及び抗腫瘍活性の増大の1以上をもたらす。一般に、TCRのα鎖及びβ鎖のマウス定常領域の、置換されたアミノ酸配列である配列番号16及び18は、それぞれ、マウス定常領域の、置換されていないアミノ酸配列である配列番号17及び19の全て又は一部に、それぞれ相当し、配列番号16は、配列番号17と比較した場合に、1、2、3又は4のアミノ酸置換(複数可)を有し、配列番号18は、配列番号19と比較した場合に、1のアミノ酸置換を有する。これに関して、本発明の実施形態は、(a)配列番号16(アルファ鎖の定常領域)((i)48位のXはThr又はCys;(ii)112位のXは、Ser、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;(iii)114位のXは、Met、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrp;及び(iv)115位のXは、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである);並びに(b)配列番号18(ベータ鎖の定常領域)(56位のXはSer又はCysである)のアミノ酸配列を含むTCRの機能的変異体を提供する。本発明の一実施形態においては、配列番号16を含むTCRの機能的変異体は、配列番号17(マウスの、アルファ鎖の非置換定常領域)を含まない。本発明の一実施形態においては、配列番号18を含むTCRの機能的変異体は、配列番号19(マウスの、ベータ鎖の非置換定常領域)を含まない。
【0030】
本発明の実施形態においては、置換されたアミノ酸配列は、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域中にシステインの置換を含み、システインが置換されたTCRを提供する。α鎖及びβ鎖中の、対向するシステインは、置換TCRのα鎖及びβ鎖の定常領域を互いに連結し、ヒトの非置換定常領域又はマウスの非置換定常領域を含むTCR中には存在しない、ジスルフィド結合をもたらす。これに関して、TCRの機能的変異体は、配列番号17の天然のThr48及び配列番号19の天然のSer56の一方又は両方がCysで置換されていてもよい、システイン置換キメラTCRである。好ましくは、配列番号17の天然のThr48及び配列番号19の天然のSer56の両方がCysで置換されている。一実施形態においては、システイン置換キメラTCRは、配列番号16のアミノ酸配列(48位のXはCysであり、112位のXは天然のSerであり、114位のXは天然のMetであり、且つ115位のXは天然のGlyである)を含むアルファ鎖定常領域及び配列番号18のアミノ酸配列(56位のXはCysである)を含むベータ鎖定常領域を含む。好ましくは、システイン置換キメラTCRは、配列番号24のアミノ酸配列を含むアルファ鎖定常領域及び配列番号23のアミノ酸配列を含むベータ鎖定常領域を含む。
本発明のシステイン置換キメラTCRは、本明細書に記載のCDR及び/又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。これに関して、システイン置換キメラTCRは、(i)配列番号3~5及び24;(ii)配列番号9及び24;(iii)配列番号6~8及び23;(iv)配列番号10及び23(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである);(v)配列番号11及び23;(vi)配列番号9及び16;(vii)配列番号10及び18;(viii)配列番号11及び18;(ix)配列番号3~5及び16;又は(x)配列番号6~8及び18のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、システイン置換キメラTCRは、(i)配列番号3~8及び23~24;(ii)配列番号9~10及び23~24;(iii)配列番号9、11及び23~24;(iv)配列番号3~8、16及び18;(v)配列番号9~10、16、及び18;又は(vi)配列番号9、11、16、及び18のアミノ酸配列を含む。一実施形態においては、Cys置換キメラTCRは、配列番号27を含む全長ベータ鎖を含む。これに関して、Cys置換キメラTCRは、配列番号9及び24;配列番号27;又は配列番号9、24、及び27の全て、を含み得る。
【0031】
本発明の一実施形態においては、置換アミノ酸配列は、疎水性アミノ酸を含むα鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける1、2又は3アミノ酸の置換を含み、疎水性アミノ酸置換TCR(本明細書中、「LVL改変TCR」ともいわれる)を提供する。TCRのTMドメインにおける疎水性アミノ酸置換(複数可)は、TMドメインにおける疎水性アミノ酸置換(複数可)を欠くTCRと比較して、TCRのTMドメインの疎水性を増加させ得る。これに関して、TCRの機能的変異体は、配列番号17の天然のSer112、Met114、及びGly115の1、2又は3つ、が独立してGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpで;好ましくはLeu、Ile又はValで、置換され得る、LVL改変キメラTCRである。好ましくは、配列番号17の天然のSer112、Met114、及びGly115の3つ全てが、独立して、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpで;好ましくはLeu、Ile又はValで、置換され得る。一実施形態においては、LVL改変キメラTCRは、配列番号16のアミノ酸配列(48位のXは天然のThrであり、112位のXはSer、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、114位のXはMet、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、115位のXはGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである)を含むアルファ鎖定常領域及び配列番号19のアミノ酸配列を含むβ鎖定常領域を含み、配列番号16を含むLVL改変キメラTCRは、配列番号17(マウスの非置換アルファ鎖定常領域)を含まない。好ましくは、LVL改変キメラTCRは、配列番号21のアミノ酸配列を含むアルファ鎖定常領域及び配列番号19のアミノ酸配列を含むベータ鎖定常領域を含む。本発明のLVL改変キメラTCRは、本明細書に記載のCDR及び/又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。これに関して、LVL改変キメラTCRは、(i)配列番号3~5及び21;(ii)配列番号9及び21;(iii)配列番号6~8及び19;(iv)配列番号10及び19(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである);(v)配列番号11及び19;(vi)配列番号9及び16;(vii)配列番号3~5及び16;(x)配列番号6~8及び18;(viii)配列番号10及び18;又は(ix)配列番号11及び18を含み得る。好ましくは、システイン置換キメラTCRは、(i)配列番号3~8及び19及び21;(ii)配列番号9~10及び19及び21;(iii)配列番号9、11及び19及び21;(iv)配列番号3~8、16及び18;(v)配列番号9~10、16、及び18;又は(vi)配列番号9、11、16、及び18のアミノ酸配列を含む。一実施形態においては、LVL改変キメラTCRは、配列番号22のアミノ酸配列を含む全長アルファ鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む全長ベータ鎖を含む。これに関して、LVL改変キメラTCRは、配列番号20、配列番号22、配列番号29、又は配列番号20及び22の両方を含み得る。
【0032】
本発明の一実施形態においては、置換アミノ酸配列は、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域におけるシステイン置換を、α鎖及びβ鎖の一方又は両方の定常領域の膜貫通(TM)ドメインにおける、1、2又は3アミノ酸の、疎水性アミノ酸との置換(複数可)と組み合わせて含む(本明細書では「システイン置換LVL改変TCR」ともいわれる)。これに関して、TCRの機能的変異体は、配列番号17の天然のThr48がCysで置換され;配列番号17の天然のSer112、Met114、及びGly115のうち1、2又は3つが、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpで;好ましくはLeu、Ile又はValで独立に置換され;且つ配列番号19の天然のSer56がCysで置換されている、システイン置換LVL改変キメラTCRである。好ましくは、配列番号17の天然のSer112、Met114、及びGly115の3つ全てが、独立して、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpで、好ましくはLeu、Ile又はVal、で置換されていてもよい。一実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは、配列番号16(48位のXはCysであり、112位のXはSer、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpであり、114位のXはMet、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、又はTrpであり、且つ115位のXはGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met又はTrpである)のアミノ酸配列を含むアルファ鎖定常領域、及び配列番号18(56位のXはCysである)のアミノ酸配列を含むベータ鎖定常領域を含み、配列番号16を含むシステイン置換LVL改変キメラTCRは、配列番号17(マウスの非置換アルファ鎖定常領域)を含まない。好ましくは、システイン置換LVL改変キメラTCRは、配列番号25のアミノ酸配列を含むアルファ鎖定常領域及び配列番号23のアミノ酸配列を含むベータ鎖定常領域を含む。本発明のシステイン置換LVL改変キメラTCRは、本明細書に記載のCDR及び/又は可変領域のいずれかに加えて、置換定常領域を含み得る。これに関して、システイン置換LVL改変キメラTCRは、(i)配列番号3~5及び25;(ii)配列番号9及び25;(iii)配列番号6~8及び23;(iv)配列番号10及び23(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである);(v)配列番号11及び23;(vi)配列番号3~5及び16;(vii)配列番号9及び16;(viii)配列番号6~8及び18;(ix)配列番号10及び18;又は(x)配列番号11及び18を含み得る。好ましくは、システイン置換LVL改変キメラTCRは、(i)配列番号3~8及び23及び25;(ii)配列番号9~10及び23及び25;(iii)配列番号9、11及び23及び25;(iv)配列番号3~8、16及び18;(v)配列番号9、10、16、及び18;又は配列番号9、11、16、及び18のアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態においては、システイン置換LVL改変キメラTCRは、配列番号26のアミノ酸配列を含む全長アルファ鎖及び配列番号27のアミノ酸配列を含む全長ベータ鎖を含む。これに関して、Cys置換LVL改変キメラTCRは、配列番号26、配列番号27、配列番号30、又は配列番号26及び27の両方を含み得る。
【0033】
TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド、又はタンパク質は、TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド、又はタンパク質の他の構成要素(例、他のアミノ酸)が、TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド、又はタンパク質の生物学的活性を実質的に変化させないように、本明細書中に記載の特定のアミノ酸配列又はアミノ酸配列(複数)から実質的に成り得る。これに関して、本発明のTCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド、又はタンパク質は、例えば、配列番号12、13、20、22、26、27、29及び30のいずれかのアミノ酸配列から実質的に成り得る。また、例えば、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号9、10、11、14~19、21、23~25、配列番号9及び10の両方、配列番号9及び11の両方、配列番号14及び15の両方、配列番号16及び18の両方、配列番号17及び19の両方、配列番号23及び24の両方、配列番号19及び21の両方、又
は配列番号23及び25の両方のアミノ酸配列(複数可)から実質的に成り得る。更に、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号3(α鎖のCDR1)、配列番号4(α鎖のCDR2)、配列番号5(α鎖のCDR3)、配列番号6(β鎖のCDR1)、配列番号7(β鎖のCDR2)、配列番号8(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組み合わせ(例、配列番号3~5;6~8;又は3~8)のアミノ酸配列から実質的に成り得る。
【0034】
本明細書に記載されるいずれかのTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分を含むポリペプチドも、本発明によって提供される。用語「ポリペプチド」は、本明細書で用いる場合、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合によって接続される、一本鎖のアミノ酸のことを指す。
【0035】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、該機能的部分がHPV16 E7に特異的に結合するならば、それが一部であるTCR(又はその機能的変異体)の、連続するアミノ酸を含む任意の部分であり得る。用語「機能的部分」は、TCR(又はその機能的変異体)に関して用いられる場合、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の任意の部分又は断片を指し、その部分又は断片は、それが一部であるところのTCR(又はその機能的変異体)(その親TCR又は親の、その機能的変異体)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、HPV16 E7に特異的に結合する能力(例、HLA-A2依存的な様態で)か、又はがんを検出、治療、若しくは予防する能力を、親TCR(又はその機能的変異体)と類似の程度で、同程度で、又はより高い程度で保持するTCR(又はその機能的変異体)の部分を包含する。親TCR(又はその機能的変異体)に関して、機能的部分は、例えば、親TCR(又はその機能的変異体)の、約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0036】
機能的部分は、その部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端において、又は両方の末端において、親TCR又はその機能的変異体のアミノ酸配列には見受けられない追加のアミノ酸を含み得る。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物的機能(例、HPV16 E7に特異的に結合すること;及び/又はがんを検出し、がんを治療又は予防する等の能力を有すること等)を妨害しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親TCR又はその機能的変異体の生物活性と比較して、生物活性を増強させる。
【0037】
ポリペプチドは、本発明のTCR又はその機能的変異体のα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)のCDR1、CDR2及びCDR3のうち1以上を含む機能的部分等、本発明のTCR又はその機能的変異体のα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分を含み得る。本発明の実施形態においては、ポリペプチドは、配列番号3(α鎖のCDR1)、4(α鎖のCDR2)、5(α鎖のCDR3)、6(β鎖のCDR1)、7(β鎖のCDR2)、8(β鎖のCDR3)、又は、それらの組み合わせのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号3~5;6~8;又は配列番号3~8の全てを含む機能的部分を含む。より好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3~8の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。
【0038】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、例えば、上記のCDR領域の組み合わせを含む、本発明のTCR又はその機能的変異体の可変領域を含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号9(α鎖の可変領域)、配列番号10(配列番号10の2位のXはAla又はGlyである)(β鎖の可変領域)、配列番号11(β鎖の可変領域)、配列番号9及び10の両方、又は配列番号9及び11の両方、のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号9及び10の両方(配列番号10の2位のXはAlaである)のアミノ酸配列を含む。
【0039】
本発明のポリペプチドは、本明細書に記載の任意の好適な種(例、ヒト又はマウス等)に由来する定常領域、又は本明細書に記載の置換定常領域のいずれかを更に含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号14(ヒトα鎖の定常領域)、配列番号15(ヒトβ鎖の定常領域)、配列番号16(本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通り置換されたα鎖の定常領域)、配列番号17(マウスα鎖の定常領域)、配列番号18(本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通り置換されたβ鎖の定常領域)、配列番号19(マウスβ鎖の定常領域)、配列番号21(LVL改変α鎖の定常領域)、配列番号23(Cys置換β鎖の定常領域)、配列番号24(Cys置換α鎖の定常領域)、配列番号25(Cys置換LVL改変α鎖の定常領域)、配列番号14及び15の両方、配列番号16及び18の両方、配列番号17及び19の両方、配列番号19及び21の両方、配列番号23及び24の両方、又は配列番号23及び25の両方を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号14及び15の両方、配列番号16及び18の両方、配列番号17及び19の両方、配列番号19及び21の両方、配列番号23及び24の両方、又は配列番号23及び25の両方を含む。一実施形態においては、配列番号9及び11の一方又は両方のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、単離又は精製されている。
【0040】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、可変領域と定常領域との組み合わせを含み得る。これに関して、ポリペプチドは、配列番号9及び14の両方、配列番号9及び16の両方、配列番号9及び17の両方、配列番号9及び21の両方、配列番号9及び24の両方、配列番号9及び25の両方、配列番号10及び15の両方、配列番号10及び18の両方、配列番号10及び19の両方、配列番号10及び23の両方、配列番号11及び15の両方、配列番号11及び18の両方、配列番号11及び19の両方、配列番号11及び23の両方、配列番号3~5及び14の全て、配列番号3~5及び16の全て、配列番号3~5及び17の全て、配列番号3~5及び21の全て、配列番号3~5及び24の全て、配列番号3~5及び25の全て、配列番号6~8及び15の全て、配列番号6~8及び18の全て、配列番号6~8及び19の全て、配列番号6~8及び23の全て、配列番号3~8及び14~15の全て、配列番号3~8及び16及び18の全て、配列番号3~8及び17及び19の全て、配列番号3~8及び19及び21の全て、配列番号3~8及び23及び24の全て、配列番号3~8及び23及び25の全て、配列番号9~10及び14~15の全て、配列番号9~10及び16及び18の全て、配列番号9~10及び17及び19の全て、配列番号9~10及び19及び21の全て、配列番号9~10及び23及び24の全て、配列番号9~10及び23及び25の全て、配列番号9、11及び14~15の全て、配列番号9、11及び16及び18の全て、配列番号9、11及び17及び19の全て、配列番号9、11及び19及び21の全て、配列番号9、11及び23及び24の全て、又は配列番号9、11及び23及び25の全てを含み得る。配列番号16及び18は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りに置換され得る。一実施形態においては、(i)配列番号9及び14並びに(ii)配列番号11及び15の一方又は両方のアミノ酸配列を含むポリペプチドは単離又は精製されている。
【0041】
本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCR又はその機能的変異体のうちの1つのα鎖又はβ鎖の全長を含み得る。これに関して、本発明のポリペプチドは、(i)配列番号12、13、20、22、26、27、29、30のいずれか1;(ii)配列番号9、24及び27;(iii)配列番号9、17及び20;又は(iv)配列番号9、10、16、及び18、のアミノ酸配列を含み得る。配列番号16及び18は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載の通りに置換され得る。
【0042】
或いは、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCR又はその機能的変異体のα鎖及びβ鎖を含み得る。例えば、本発明のポリペプチドは、配列番号12及び13の両方;配列番号20及び22の両方;配列番号26及び27の両方;配列番号9、24、及び
27の全て;配列番号9、17及び20の全て;又は配列番号9、10、16、及び18の全てのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号12及び13の両方;配列番号20及び22の両方;配列番号26及び27の両方;配列番号9、24、及び27の全て;配列番号9、17及び20の全て;又は配列番号9、10、16、及び18の全てのアミノ酸配列を含む。配列番号16及び18は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通り置換され得る。一実施形態においては、配列番号12及び13の一方又は両方のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、単離又は精製されている。
【0043】
本発明は、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1を含むタンパク質を更に提供する。「タンパク質」により、1以上のポリペプチド鎖を含む分子が意味される。一実施形態においては、(a)配列番号9及び配列番号10(配列番号10の2位のXはGlyである)のアミノ酸配列の一方又は両方、又は(b)配列番号12及び13の一方又は両方、を含むタンパク質は単離又は精製されている。
【0044】
一実施形態においては、本発明のタンパク質は、配列番号3~5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号6~8のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得る。代替的に、又は追加的に、本発明のタンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖((i)配列番号10の2位のXはAla又はGlyであり、且つ(ii)配列番号9及び10を含むタンパク質(配列番号10の2位のXがGlyである)は単離又は精製されている)を含み得る。タンパク質は、例えば、(i)配列番号12、(ii)配列番号22、(iii)配列番号26、(iv)配列番号9及び16、(v)配列番号9及び17、又は(vi)配列番号9及び24のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、並びに(i)配列番号10及び18、又は(ii)配列番号13、20及び27のいずれか1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖を含み得、配列番号12及び13を含むタンパク質は単離又は精製され、且つ配列番号16及び18は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通り置換される。この場合、本発明のタンパク質はTCRであり得る。或いは、例えば、タンパク質が、配列番号12及び13の両方、配列番号20及び22の両方、配列番号26及び27、配列番号9、10、16及び18の全て、配列番号9、17及び20の全て、配列番号9、24及び27の全て、を含む単一のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第1及び/又は第2ポリペプチド鎖(複数可)が、他のアミノ酸配列(例、免疫グロブリン又はその一部をコードするアミノ酸配列)を更に含む場合、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。これに関して、本発明は、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、少なくとも1の、本明細書に記載の本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質も提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別個のポリペプチドとして存在し得るか、又は本明細書に記載の、本発明のポリペプチドの1つとインフレーム(タンデム)で発現されるポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子(例、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等)を含むが、これらに限定されない任意のペプチド性若しくはタンパク質性分子又はそれらの部分をコードし得る。
【0045】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー、及び/又は他のポリペプチドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドのコピーを1、2、3、4、5つ又はより多くを含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、組換え法が挙げられる。例えば、Choi et al.,Mol.Biotechnol.31:193-202(2005)参照。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明のTCR(並びにその機能的部分及び機能的変異体)、ポリペプチド及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプ
チドを含む単一のタンパク質として発現され得る。これに関して、配列番号12及び13の両方、配列番号20及び22の両方、配列番号26及び27、配列番号9、10、16及び18の全て、配列番号9、17、及び20の全て、配列番号9、24、及び27の全て、を含む、本発明のTCR(並びにその機能的変異体及び機能的部分)、ポリペプチド及びタンパク質は、リンカーペプチドを更に含み得る。好都合なことに、リンカーペプチドは、宿主細胞における組換えTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、及び/又はタンパク質の発現を促進し得る。リンカーペプチドは、任意の好適
なアミノ酸配列を含み得る。例えば、リンカーペプチドは、配列番号28を含み得る。本発明の一実施形態においては、アルファ鎖、ベータ鎖、及びリンカーを含むタンパク質は、配列番号29(LVL改変キメラTCR)又は配列番号30(Cys置換LVL改変キメラTCR)を含み得る。宿主細胞による、リンカーペプチドを含むコンストラクトの発現の際に、リンカーペプチドは切断され得、α鎖及びβ鎖が分離され得る。
【0047】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載される本発明のポリペプチドのうち少なくとも1つを含む組換え抗体であり得る。「組換え抗体」は、本明細書で用いる場合、本発明のポリペプチドのうち少なくとも1つ、及び抗体のポリペプチド鎖、又はその部分を含む組換え(例、遺伝子組換え)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド、又はその部分は、重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変領域若しくは定常領域、単鎖可変断片(scFv)、又は抗体のFc、Fab若しくはF(ab)’断片等であり得る。抗体のポリペプチド鎖、又はその部分は、組換え抗体の分離したポリペプチドとして存在し得る。或いは、抗体のポリペプチド鎖、又はその部分は、本発明のポリペプチドとインフレーム(タンデム)に発現するポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド、又はその部分は、本明細書に記載される抗体及び抗体断片のいずれかを含む、任意の抗体又は任意の抗体断片のポリペプチドであり得る。
【0048】
本発明のTCR、ポリペプチド、及びタンパク質(又はそれらの機能的変異体)は、該TCR、ポリペプチド、若しくはタンパク質(又はそれらの機能的変異体)が、それらの生物学的活性(例、HPV16 E7に特異的に結合する能力;哺乳動物においてがん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態を検出する能力;又は哺乳動物におけるがん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態を治療又は予防する能力等)を保持するならば、任意の長さであり得る(即ち、任意の数のアミノ酸を含み得る)。例えば、ポリペプチドは、長さ約50~約5000アミノ酸(長さ50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000アミノ酸又はそれを上回る等)の範囲内であり得る。これに関して、本発明のポリペプチドはまた、オリゴペプチドを含む。
【0049】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当該技術分野において公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチル
グリシンが挙げられる。
【0050】
本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、(例、ジスルフィド架橋を介して)環化され、若しくは、酸付加塩に変換され得、且つ/又は、必要に応じて、二量体化若しくは重合され、又はコンジュゲート化され得る。
【0051】
本発明のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、当該技術分野において公知の方法によって得られ得る。ポリペプチド及びタンパク質をde novo合成する好適な方法は、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2005;Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000;Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press, Oxford,United Kingdom,2000;及び米国特許番号第5,449,752号等の参考文献に記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を用いて、本明細書に記載される核酸を用いて組換えで産生され得る。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,4th ed.,Cold
Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY 2012;及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994参照。更に、本発明のTCR、ポリペプチド及びタンパク質(それらの機能的変異体を含む)のいくつかは、植物、バクテリア、昆虫、哺乳動物(例、ラット、ヒト等)等のソースから、単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は、当該技術分野において周知である。或いは、本明細書に記載されるTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(それらの機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin,CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg,MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego,CA)等の企業により商業的に合成され得る。この点において、本発明のTCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製されたものであり得る。
【0052】
本発明の範囲には、本発明のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(それらの機能的変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含むコンジュゲート(例、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲートと、一般的にコンジュゲートを合成する方法とは、当該技術分野において公知である(例えば、Hudecz,F.,Methods Mol.Biol.298:209-223(2005)、及び、Kirin et al.,Inorg Chem.44(15):5405-5415(2005)参照)。
【0053】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の、TCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列を提供する。本明細書で用いる場合、「核酸」により、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般にDNA又はRNAの重合体を意味し、これは一本鎖の又は二本鎖の、合成された又は天然の供給源から得た(例、単離及び/又は精製された)ものであり得、天然、非天然又は改変された(altered)ヌクレオチドを含有し得、修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見いだ
されるホスホジエステルの代わりに、天然の、非天然の、又は改変された、ヌクレオチドの結合(例えば、ホスホロアミデート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合等)を含有し得る。1実施形態においては、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。一般に、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まないことが好ましい。しかし、本明細書中で検討する通り、ある場合には、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが好適である場合がある。
【0054】
好ましくは、本発明の核酸は、組換え体である。用語「組換え体」は、本明細書で用いる場合、(i)天然又は合成の核酸セグメントを、生細胞中で複製し得る核酸分子に連結することによって、生細胞外で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子を指す。本明細書における目的のためには、複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0055】
核酸は、当該技術分野において公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green and Sambrook
et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は、分子の生物学的安定性を増加させるように、又はハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて、化学的に合成され得る。核酸を生成するために用いられ得る修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6-ジアミノプリンが挙げられるが、これらに限定されない。或いは、本発明の核酸の1以上が、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)等の企業から購入され得る。
【0056】
核酸は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、又はそれらの機能的変異体のいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、ヌクレオチド配列は、配列番号31(ヒトアルファ鎖、野生型TCR)、配列番号32(ヒトベータ鎖、野生型TCR)、配列番号33(LVL改変キメラTCRのアルファ鎖)、配列番号34(キメラTCRのベータ鎖)、配列番号35(Cys置換LVL改変キメラTCRのアルファ鎖)、配列番号36(Cys置換キメラTCRのベータ鎖)、配列番号31及び32の両方、配列番号33及び34の両方、又は配列番号35及び36の両方のいずれか、を含み得るか、から成り得るか、又はから実質的になり得る。
【0057】
本発明の実施形態においては、核酸は、非天然のヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチ
ド配列が天然に見出されない場合、該ヌクレオチド配列は、「非天然」であるとみなされ得る。いくつかの実施形態においては、ヌクレオチド配列は、コドンが最適化され得る。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を増大させると考えられている。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然のコドンを、同じアミノ酸をコードするが、細胞内でより容易に利用可能であるtRNAにより翻訳され得る、別のコドンに置換し、それによって翻訳効率を増大させることを含み得る。ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳を妨害するmRNA二次構造も減少させ、従って翻訳効率を上昇させ得る。本発明の一実施形態においては、コドン最適化ヌクレオチド配列は、配列番号33~36のいずれか1、配列番号33及び34の両方、又は配列番号35及び36の両方、を含み得るか、から成り得るか、又は、から実質的に成り得る。
【0058】
本発明はまた、本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に対し、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、核酸を提供する。
【0059】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で標的配列(本明細書中に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件としては、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は散らばったミスマッチを少しだけ含有するポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチしたいくつかの小領域(例、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から識別する条件が挙げられる。かかる相補的な小領域は、14~17又はそれより多い塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらが容易に識別可能となる。比較的高ストリンジェンシーの条件としては、例えば、低塩及び/又は高温条件(約0.02~0.1MのNaCl又は等価物によって、約50~70℃の温度で提供される等)が挙げられる。かかる高ストリンジェンシー条件は、許容したとしても、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖若しくは標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容せず、本発明のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかの発現を検出するのに特に好適である。条件は、漸増量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが、一般的に理解される。
【0060】
本発明はまた、本明細書に記載される核酸のいずれかと、少なくとも約70%以上(例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0061】
本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組み込まれ得る。これに関して、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の一実施形態においては、組換え発現ベクターは、α鎖、β鎖及びリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、一実施形態においては、組換え発現ベクターは、配列番号39(キメラα鎖及びβ鎖である配列番号20及び22を、それらの間に位置するリンカーと共にコードし、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列が、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する)又は配列番号40(キメラα鎖及びβ鎖である配列番号26及び27を、それらの間に位置するリンカーと共にコードし、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列が、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する)を含むコドン最適化ヌクレオチド配列を含む。
【0062】
本明細書の目的に関して、用語「組換え発現ベクター」とは、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味し、この場合、コンストラクトは、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターは、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させられる。本発明のベクターは、全体としては天然には存在しない。しかし、ベクターの一部は天然に存在し得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNA(一本鎖又は二本鎖であり得、合成されるか、又は一部を天然のソースから得られ得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含有し得る)を含む(がこれらに限定されない)、任意のタイプのヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方のタイプの結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合が、ベクターの転写や複製を妨害しない。
【0063】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために用いられ得る。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等の繁殖及び増幅のため、若しくは発現のため、又は両方のために設計されたベクターが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)からなる群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも用いられ得る。植物発現ベクターの例として、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例、レトロウイルスベクター)である。特に好ましい実施形態においては、組換え発現ベクターはMSGV1ベクターである。
【0064】
好ましい実施形態においては、組換え発現ベクターは、本明細書に記載のTCR(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかのα鎖及びβ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む(ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列が、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する)。これに関して、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列は、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列の3’に位置し得る。特定の理論又はメカニズムには縛られないが、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列は、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列と比較して、HPV16 E7標的の認識の増加、宿主細胞による発現上昇、抗腫瘍活性の増加のいずれか1以上をもたらし得ると考えられる。あまり好ましくない実施形態においては、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列は、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する。これに関して、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列は、ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置し得る。一実施形態においては、配列番号20及び22を含む、本発明のLVL改変キメラTCRをコードする、コドン最適化ヌクレオチド配列を含むMSGV1ベクター(ベータ鎖をコードするヌクレオチド配列が、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する)は、配列番号37を含む。別の実施形態においては、配列番号26及び27を含む、本発明のCys置換LVL改変キメラTCRをコードする、コドン最適化ヌクレオチド配列を含むMSGV1ベクター(ベータ鎖をコードする
ヌクレオチド配列が、アルファ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する)は、配列番号38を含む。
【0065】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、Green and Sambrook et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)に記載されている標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は線状の発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能する複製系を含有するように調製され得る。複製系は、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス等(例)に由来し得る。
【0066】
望ましくは、組換え発現ベクターは、適宜、ベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞のタイプ(例、バクテリア、真菌、植物、又は動物)に特異的な、転写、並びに翻訳開始及び終了コドン等の調節配列を含む。
【0067】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする、1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性(例、抗生物質、重金属などに対する耐性)、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主細胞における補完等を含む。本発明の発現ベクターに好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0068】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(それらの機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列に、又は、TCR、ポリペプチド、又はタンパク質(それらの機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列に相補的であるか、又はハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に結合した天然の、又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーターの選択(例、強力なプロモーター、弱いプロモーター、誘導プロモーター、組織特異的プロモーター、発生特異的(developmental-specific)プロモーター)は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組み合わせることもまた、当業者の通常の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター、又はウイルスプロモーター(例、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルス末端の長い反復において見受けられるプロモーター)であり得る。
【0069】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定した発現のため、又はその両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現のため、又は誘導性発現のために作製され得る。更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。
【0070】
用語「自殺遺伝子」は、本明細書で用いる場合、自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、その遺伝子を発現する細胞に対し物質(例、薬物)に対する感受性を付与し、細胞が該物質と接触したとき又は該物質に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野において公知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ、プリ
ンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0071】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を更に提供する。用語「宿主細胞」は、本明細書で用いる場合、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の型の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞(例、植物、動物、真菌又は藻類)であり得、又は、原核細胞(例、バクテリア若しくは原生動物)であり得る。宿主細胞は、培養細胞、又は、初代細胞であり得、即ち、生物(例、ヒト)から直接単離され得る。宿主細胞は、接着細胞、又は、浮遊細胞、即ち、懸濁物中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は、当該技術分野において公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞(例、DH5α細胞)である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は任意の型の細胞であり得、任意の型の組織由来であり得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核球(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0072】
本明細書中の目的のためには、T細胞は、任意のT細胞(培養T細胞(例、初代T細胞)、若しくは培養T細胞株(例、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞等)であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液が含まれるが、これらに限定されない)から得られ得る。T細胞はまた、富化又は精製され得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、T細胞は、ヒトから単離されたT細胞である。T細胞は、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得る(CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞(例、Th及びTh細胞)、CD4T細胞、CD8T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0073】
本発明はまた、本明細書中に記載される少なくとも1の宿主細胞を含む細胞集団も提供する。細胞集団は、少なくとも1の他の細胞(例、組換え発現ベクターをいずれも含まない宿主細胞(例、T細胞)又はT細胞以外の細胞(例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、該集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例、組換え発現ベクターを含む宿主細胞から実質的になる)。集団は細胞のクローン集団でもあり得、該集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、本明細書中に記載される通りの組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0074】
本発明の一実施形態においては、集団中の細胞数は急速に増幅され得る。T細胞数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開第2012/0244133号;Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003);及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990).に記載の通りの、当該技術分野で既知の多くの方法のいずれかによって達成され得る。
【0075】
本発明は、本明細書に記載のTCR(又はその機能的変異体)のいずれかの機能的部分
に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分を更に提供する。好ましくは、機能的部分は、がん抗原に特異的に結合する(例、アミノ酸配列、配列番号3(α鎖のCDR1)、4(α鎖のCDR2)、5(α鎖のCDR3)、6(β鎖のCDR1)、7(β鎖のCDR2)、8(β鎖のCDR3)、配列番号9(α鎖の可変領域)、配列番号10(β鎖の可変領域)、配列番号11(β鎖の可変領域)、又はそれらの組み合わせ(例、3~5;6~8;3~8;9;10;11;9~10;又は9及び11)を含む機能的部分)。より好ましくは、機能的部分は、配列番号3~8;配列番号9及び10;又は配列番号9及び11のアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態においては、抗体又はその抗原結合部分は、6のCDR(α鎖のCDR1~3及びβ鎖のCDR1~3)全てによって形成されるエピトープに結合する。抗体は、当該技術分野で公知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM等)のものであり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例、哺乳動物(例、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等)から単離及び/又は精製された抗体であり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体(例、ヒト化抗体又はキメラ抗体)であり得る。抗体は、モノマー又はポリマー形態であり得る。また、抗体は、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分に対し、任意のレベルの親和性又は結合活性を有し得る。望ましくは、抗体は、他のペプチド又はタンパク質と交差反応性が最小限であるように、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分に対し特異的である。
【0076】
本発明のTCRの任意の機能的部分又は機能的変異体と結合する能力について、抗体を試験する方法が当該技術分野において公知であり、任意の抗原抗体結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ等)が挙げられる(例、Janeway et al.(下記)、及び米国特許出願公開番号第2002/0197266 A1号参照)。
【0077】
抗体を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、Koehler and Milstein,Eur.J.Immunol.,5,511-519(1976),Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988),及びC.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology、8thEd.,Garland Publishing,NewYork,NY(2011)(例))に記載されている。或いは、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer,J.Immunol.Methods、74(2),361-67(1984)、及びRoder et al.,Methods Enzymol.,121、140-67(1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例、Huse et al.,Science,246,1275-81(1989)参照)等、他の方法が当該技術分野において公知である。更に、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号及び第5,714,352号、並びに米国特許出願公開番号第2002/0197266A1号(例)に記載されている。
【0078】
更に、ファージ提示法が、本発明の抗体を生成するために用いられ得る。これに関して、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーは、標準的な分子生物学及び組換えDNA技術(例、Green and Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning,A Laboratory Manual,4thEdition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York (2012)参照)を使って生成され得る。所望の特異性を伴う可変領域をコードするファージは、所望の抗原への特異的結合に関して選択され、完全又は部分的抗体は、選択された可変ドメインを含むように再構成
される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、ハイブリドーマ産生に用いられる骨髄腫細胞等、好適な細胞株へと導入され、その結果、モノクローナル抗体の特性を有する抗体が細胞によって分泌される(例、Janeway et al.(上記)、Huse
et al.(上記)、及び米国特許第6,265,150号参照)。
【0079】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び第5,569,825号、並びに、Janeway et al.(上記)に記載されている。
【0080】
ヒト化抗体を生成する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Janeway et al.(上記)、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号及び第5,693,761号、欧州特許番号第0239400 B1号、並びに英国特許番号第2188638号において、詳細に記載されている。ヒト化抗体は、例えば、米国特許第5,639,641号及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.,235,959-973(1994)に記載されている抗体リサーフェシング(resurfacing)技術を用いても、生成され得る。
【0081】
本発明は、本明細書に記載される抗体のいずれかの抗原結合部分も提供する。抗原結合部分は、Fab、F(ab’)、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabodies)及びトリアボディ(triabodies)等、少なくとも1の抗原結合部位を有する任意の部分であり得る。
【0082】
単鎖可変領域断片(sFv)抗体断片(これは、合成ペプチドを介して抗体軽鎖のVドメインに連結された抗体重鎖の可変(V)ドメインを含む、切断型Fab断片から成る)は、慣用的な組換えDNAテクノロジー技術を用いて生成され得る(例、Janeway
et al.,(上記)参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域断片(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例、Reiter et al.,Protein Engineering,7,697-704(1994)参照)。しかしながら、本発明の抗体断片は、これらの例示的な抗体断片の型に限定されない。
【0083】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、蛍光色素分子(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等)を含むように修飾され得る。
【0084】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(それらの機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、並びに抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離及び/又は精製され得る。用語「単離された」は、本明細書で用いる場合、その自然環境から取り出されたことを意味する。「精製された」という用語は、本明細書で用いる場合、純度が増したことを意味するが、「純度」は、相対的な用語であって、必ずしも絶対的純度として解釈されるべきでない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、90%、95%を超え得、又は100%であり得る。
【0085】
本発明のTCR、ポリペプチド、タンパク質(それらの機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)は、これら全てが、本文以下、「本発明のTCR材料」と総称されるものであるが、医薬組成物等、組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明は、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれか、並びに医
薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含有する本発明の医薬組成物は、1を超える本発明のTCR材料(例、ポリペプチド及び核酸)又は2以上の異なるTCR(その機能的部分及び機能的変異体)を含み得る。或いは、医薬組成物は、化学療法剤等、別の医薬的に活性な物質(複数可)又は薬剤(複数可)(例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキサート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)など)と組み合わせて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0086】
好ましくは、担体は医薬的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮中の特定の本発明のTCR材料のために従来用いられているもののいずれかであり得る。かかる医薬的に許容可能な担体は、当業者に周知であり、公衆にとって容易に入手可能である。医薬的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0087】
担体の選択は、特定の本発明のTCR材料によって、そして本発明のTCR材料を投与するために用いられる特定の方法によってある程度決定される。従って、多様な、本発明の医薬組成物の好適な製剤がある。好適な製剤としては、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内及び腹腔内投与のための、いずれかの製剤が挙げられ得る。本発明のTCR材料を投与するために、1を超える経路が用いられ得、特定の例においては、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ効果的な反応をもたらし得る。
【0088】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射により、静脈内(例)に投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCR(又はその機能的変異体)を発現する宿主細胞である場合には、注射用の細胞のための医薬上許容される担体は、任意の等張性の担体、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液等が挙げられ得る。一実施形態においては、医薬上許容される担体には、ヒト血清アルブミン(albumen)が補充される。
【0089】
本発明の目的のためには、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例、本発明のTCR材料が1以上の細胞の場合、細胞数)は、例えば、被験者又は動物において、適切な期間にわたって治療的又は予防的応答(例)をもたらすのに十分であるべきである。例えば、本発明のTCR材料の用量は、がん抗原と結合するのに、又は、投与時から約2時間以上、例、12~24時間以上という期間でがんを検出、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。特定の実施形態においては、期間は、もっと長くなり得る。用量は、特定の本発明のTCR材料の有効性、及び動物(例、ヒト)の状態と、治療する動物(例、ヒト)の体重とによって決定される。
【0090】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当該技術分野において公知である。本発明の目的のために、標的細胞が溶解される程度、又は、それぞれが異なる用量のT細胞を与えられた哺乳動物1セットのうち、1匹の哺乳動物へ所与の用量のかかるT細胞を投与した際の、本発明のTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)、ポリペプチド又はタンパク質を発現するT細胞によってIFN-γが分泌される程度を比較するこ
とを含むアッセイを用いて、哺乳動物に投与する開始用量を決定し得る。一定用量の投与の際の、標的細胞が溶解する程度、又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野において公知の方法によってアッセイされ得る。
【0091】
本発明のTCR材料の用量はまた、特定の本発明のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によって決定される。典型的には、主治医が、年齢、体重、全般的健康、食習慣、性別、投与する本発明のTCR材料、投与経路、治療されている状態の重篤度等、様々な要因を考慮に入れて、個々の患者を治療するための本発明のTCR材料の用量を決定する。本発明のTCR材料が細胞集団である実施形態においては、注入あたりで投与される細胞の数は、約1×10から約1×1012細胞又はより多く(例)まで変わり得る。特定の実施形態においては、1×10未満の細胞が投与され得る。
【0092】
本発明のTCR材料の治療効力又は予防効力を修飾によって増大させるために、本発明のTCR材料(inventive TCR materials of the invention)が、いくつもの形に修飾され得ることを、当業者は容易に理解する。例えば、本発明のTCR材料は、直接的又は標的化部分への架橋物(bridge)によって間接的にコンジュゲート化され得る。化合物(例、本発明のTCR材料)を標的化部分にコンジュゲート化する実務は、当該技術分野において公知である。例えば、Wadwa
et al.,J.Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号参照。用語「標的化部分」は、本明細書で用いる場合、細胞表面受容体を特異的に認識し、これに結合する任意の分子又は物質を指し、標的化部分は、かかる表面受容体が発現する細胞の集団への、本発明のTCR材料の送達を指令する。標的化部分としては、細胞表面受容体(例、上皮成長因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来成長因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)等)に結合する抗体又はその断片、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び他の任意の天然リガンド又は非天然リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。用語「架橋物」は、本明細書で用いる場合、本発明のTCR材料を標的化部分に連結させる任意の物質又は分子を指す。当業者は、本発明のTCR材料の機能には必要でない、本発明のTCR材料における部位が、架橋物及び/又は標的化部分を結合させるのに理想的な部位であると認識する(但し、架橋物及び/又は標的化部分は、本発明のTCR材料に結合して、本発明のTCR材料の機能(すなわち、HPV16 E7に結合する能力;又はがん、HPV16感染、若しくはHPV陽性の前がん状態を検出、治療若しくは予防する能力)を妨害しないものとする)。
【0093】
本発明の医薬組成物、TCR(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態の治療又は予防の方法において用いられ得ることが検討される。特定の理論には縛られないが、本発明のTCR(及びその機能的変異体)は、HPV16 E7に特異的に結合すると考えられ、その結果、TCR(又は関連する本発明のポリペプチド又はタンパク質及びそれらの機能的変異体)が、細胞によって発現されると、HPV16 E7を発現する標的細胞に対する免疫反応を仲介することができる。これに関して、本発明は、哺乳動物における状態の治療又は予防の方法であって、本明細書に記載される医薬組成物、TCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質のいずれか、本明細書に記載されるTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む、任意の核酸又は組換え発現ベクター、或いは本明細書に記載されるTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質のいずれかをコードする発現ベクターを含む任意の宿主細胞又は細胞集団を、哺乳動物における状態を治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含み、状
態が、がん、HPV16感染、又はHPV陽性の前がん状態である、方法を提供する。
【0094】
用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、本明細書で用いる場合、100%の、又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、任意のレベルの任意の量の、哺乳動物における状態の治療又は予防を提供し得る。更に、本発明の方法が提供する治療又は予防は、治療又は予防されている1以上の状態又は状態の症状(例、がん)の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退行を促進することを含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、状態の発症、又はその症状若しくは状態を遅延させることを包含し得る。
【0095】
哺乳動物における状態の存在を検出する方法も提供される。該方法は、(i)哺乳動物由来の1以上の細胞を含む試料と、本明細書に記載の、本発明のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部分、又は医薬組成物のいずれかとを接触させ、それによって複合体を形成すること、及び該複合体を検出することを含み、該複合体の検出が哺乳動物における状態の存在を示し、状態が、がん、HPV16感染、HPV陽性の前がん状態である。
【0096】
哺乳動物における状態を検出する本発明の方法に関して、細胞の試料は、全細胞、その溶解物又は全細胞溶解物の画分(例、核画分又は細胞質画分、全タンパク質画分、又は核酸画分)を含む試料であり得る。
【0097】
本発明の検出方法の目的のために、哺乳動物にin vitro又はin vivoの接触を行うことがあり得る。好ましくは、接触はin vitroである。
【0098】
また、複合体の検出は当該技術分野で公知の、任意の数の方法によって起こり得る。例えば、本明細書中に記載の、本発明のTCR(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、蛍光色素分子(例、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識で標識され得る。
【0099】
宿主細胞又は細胞集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物に対して同種又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0100】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔、又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、大腸がん、食道がん、子宮頸がん、胃腸カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、口腔咽頭がん、卵巣がん、陰茎のがん、膵臓がん、腹膜がん、大網がん及び腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん及び膀胱がんを含む、任意のがんであり得る。好ましいがんは、子宮頸部、口腔咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰又は陰茎のがんである(is cancer is cancer)。特に好ましいがんは、HPV16陽性がんである。HPV16感染に最も一般的に関連す
るがんとしては、子宮頸部、口腔咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰及び陰茎のがんが挙げられる(include cancer is cancer of)が、本発明の方法は、任意のHPV16陽性がん(他の解剖学的領域で生じるものを含む)を治療するために用いられ得る。
【0101】
本発明の方法において哺乳動物というのは、任意の哺乳動物であり得る。用語「哺乳動物」は、本明細書で用いる場合、マウス及びハムスター等、ネズミ目の哺乳動物、及びウサギ等、ウサギ目の哺乳動物を含む任意の哺乳動物を指すが、これらに限定されない。哺乳動物が、ネコ科の動物(ネコ)及びイヌ科の動物(イヌ)を含むネコ目由来であることが好ましい。哺乳動物が、ウシ属の動物(ウシ)及びイノシシ属の動物(ブタ)を含むウシ目、又はウマ属の動物(ウマ)を含むウマ目(Perssodactyla)由来であることが、より好ましい。哺乳動物が、霊長目、セボイド(Ceboids)目若しくはシモイド(Simoids)目(サル)又は、類人(Anthropoids)目(ヒト及び類人猿)であることが、最も好ましい。特に好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【0102】
以下の実施例は、本発明を更に説明しているが、当然ながら、多少なりともその範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【0103】
実施例1
本実施例では、新生物からのヒト抗HPV16 E7 TCRの単離を実例で示す。
【0104】
HPV16陽性の子宮頸部上皮内新生物(CIN)II/III由来のリンパ球サンプルを、14人の患者から得た。患者は、以前にHPV16 E7を標的とする様々なワクチンを受けていた。前述(Dudley et al.J.Immunother.26:332-42(2003)及びRiddell et al.J.Immunol.Methods 128:189-201(1990))のように、子宮頸部浸潤リンパ球(CIL)数を、急速増幅プロトコル(Rapid Expansion Protocol)(REP)を用いて増幅した。簡潔には、TILは、30ng/mLの抗CD3抗体及び6000IU/mLのIL-2を含む完全培地(CM)中の、放射線照射(40Gy)した同種末梢血単核「フィーダー」細胞と共に培養した。CILを、数を増幅して、gp100ペプチド、11アミノ酸残基が重複した、15merのE6ペプチドのプール(HPV16 E6の全長に及ぶ)、11アミノ酸残基が重複した、15merのE7ペプチドのプール(HPV16 E7の全長に及ぶ)、又はOKT3でパルスした自己樹状細胞(DC)との共培養後に、インターフェロン(IFN)-γ分泌を測定することにより、HPV16 E7反応性についてスクリーニングした。1患者(5048)のCD8CILが、HPV16 E7反応性を有すると判定した。患者5048が、HLA-A02:01を発現することも判明した。
【0105】
HLA-A02:01/E711-19の4量体を用いて、エピトープHPV16 E711-19を標的とする、患者5048由来のT細胞の存在を判定した。4量体結合細胞を、抗PE抗体を用いた磁気ビーズ分離を用いて単離し、限界希釈クローニングを行った。T細胞クローンを4量体結合についてスクリーニングし、高結合性クローンを同定した。
【0106】
HLA-A2/E711-194量体と結合したクローンのTCRのアルファ鎖及びベータ鎖の可変領域を単離し、cDNA末端の5’迅速増幅(RACE)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて配列決定した。配列番号9を含む野生型ヒトα鎖の可変領域をコードするcDNAを含むヌクレオチド配列を、TRAV1-201/TRAJ701から得た。配列番号11を含む野生型ヒトβ鎖の可変領域をコードするcDNAを含むヌクレオチド配列を、TRBV5-601/TRBJ2-1/TRBD2から得た。
【0107】
実施例2
本実施例では、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラ抗HPV16 E7 TCRを発現するように形質導入した末梢血T細胞が、HLA-A2/E711-19 4量体に対する、CD8非依存的結合を示し、HLA-A2HPV-16腫瘍株を認識することを実例で示す。
【0108】
実施例1の野生型ヒトTCR由来のヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラ抗HPV16 E7 TCRをコードするヌクレオチド配列を含むMSGV1組換え発現ベクターを以下の通り調製した。組換え発現ベクター中のヌクレオチド配列は、実施例1のTCRのα鎖の可変領域及びβ鎖の可変領域をコードした(組換え発現ベクター中のNcoI制限部位及びKozak配列を提供するために、β鎖(リーダー配列)の可変領域の2位において、天然のグリシンがアラニンで置換されていたことを除く)。キメラTCRをコードするヌクレオチド配列を提供するために、α鎖及びβ鎖のマウス定常領域(それぞれ配列番号17及び19)をコードするヌクレオチド配列をそれぞれのヒト定常領域の代わりにベクターに挿入した。ピコルナウイルス2Aペプチド(配列番号28)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列をα鎖とβ鎖との間に配置した。キメラのα鎖及びβ鎖並びにリンカーをコードするヌクレオチド配列は、ヒト組織における発現のために、コドンを最適化した。
【0109】
末梢血細胞を、キメラTCRをコードするMSGV1組換え発現ベクター又は完全にマウスの抗HPV16 E7 TCRをコードするベクターからのレトロウイルスで形質導入した。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。形質導入した細胞を抗CD8及び抗TRBC(マウス定常領域)抗体で標識し、フローサイトメトリーによりHLA-A2/E711-194量体への結合について試験した。非形質導入細胞(CD8及びCD8の両方)及び以前の実験において同定されたコントロールのマウス抗HPV16 E7 TCRを発現するように形質導入した細胞(CD8及びCD8の両方)は、4量体と結合しなかった。キメラHPV-16 E7 TCRで形質導入したCD8細胞及びCD8細胞の両方が、4量体と結合した。従って、キメラTCRで形質導入したPBLは、CD8非依存的様態で、HLA-A2/E711-194量体と結合した。また、キメラTCRのβ鎖を発現する、形質導入したT細胞の約50%が、4量体に結合しないことが観察された。
【0110】
別の実験では、末梢血リンパ球(PBL)を、約50%の形質導入効率を有する、キメラTCRをコードするMSGV1組換え発現ベクターで形質導入した。蛍光活性化細胞選別(FACS)によりHLA-A2/E711-194量体結合を測定し、25%の細胞が、刺激後8日目に4量体と結合することが判明した。形質導入した細胞と、標的の、HPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞(コントロール)、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E6をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、HPV16 E7をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Alb細胞、Panc1細胞、又はSiHa細胞とを、刺激の10日後に共培養した。非形質導入細胞をコントロールとして用いた。IFN-γを測定した。結果を図1に示す。図1に示す通り、キメラTCRをコードするMSGV1組換え発現ベクターで形質導入したPBLは、HLA-A2拘束性の様態で、HPV16 E7陽性腫瘍細胞株及び他のHLA-A2HPV16 E7標的を特異的に認識した。別のドナーの細胞で得られた結果は同様であった。
【0111】
実施例3
本実施例では、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラ抗HPV16 E7 T
CR(該TCRのα鎖の定常領域の膜貫通(TM)領域の天然の3アミノ酸残基は、それぞれ疎水性アミノ酸残基で置換される)を作製する方法を実例で示す。
【0112】
ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラTCRをコードするヌクレオチド配列であって、TCRのα鎖の定常領域の膜貫通領域の天然の3アミノ酸残基が、それぞれ疎水性アミノ酸残基で置換されている配列を、以下の通り調製した。実施例2のキメラTCRのα鎖及びβ鎖をコードするヌクレオチド配列を、β鎖をコードするヌクレオチド配列が、α鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置し、且つピコルナウイルス2Aペプチド(配列番号28)をコードするヌクレオチド配列が、α鎖とβ鎖との間に位置する状態で、単一ヌクレオチド配列にクローニングした。野生型α鎖マウス定常領域の配列番号17を参照して、α鎖のTM領域における天然の3アミノ酸残基(すなわち、それぞれ、位置112、114及び115のSer、Met及びGlyを、Leu、Ile、及びValに、それぞれ、置換した。組み合わせたヌクレオチド配列を、ヒト組織における発現のためにコドンを最適化し、ベクターインサート(配列番号39)を提供した。ベクターインサートを、MSGV1発現ベクターにクローニングし、配列番号37を得た。ベクターによってコードされるTCRは、配列番号22を含むアミノ酸配列を含むα鎖及び、配列番号20を含むアミノ酸配列を含むβ鎖を含んだ(「LVL改変「TCR」又は「LVL
TCR」)。
【0113】
実施例4
本実施例では、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラ抗HPV16 E7 TCR(β鎖及びα鎖中の天然の1のアミノ酸残基を、それぞれ1のシステイン残基で置換する)を作製する方法を実例で示す。
【0114】
実施例2のTCRを、以下の通り、α鎖及びβ鎖のそれぞれの定常領域にCys置換を含むように改変した。実施例2のTCRのα鎖の定常領域(アミノ酸配列番号17)をコードするヌクレオチド配列を改変して、48位の天然のThrをCysで置換した。実施例2のTCRのβ鎖の定常領域(配列番号19)をコードするヌクレオチド配列を改変して、56位の天然SerをCysで置換した。α及びβ鎖をコードするヌクレオチド配列を、β鎖をコードするヌクレオチド配列が、α鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置し、且つピコルナウイルス2Aペプチド(配列番号28)をコードするヌクレオチド配列がα鎖とβ鎖との間に位置する状態で、単一ヌクレオチド配列にクローニングした。組み合わせたヌクレオチド配列を、ヒトの組織における発現のためにコドンを最適化し、ベクターインサートを提供した。ベクターインサートをMSGV1発現ベクターにクローニングした。ベクターにコードされるTCRは、配列番号9及び24を含むアミノ酸配列を含むα鎖及び配列番号27を含むアミノ酸配列を含むβ鎖を含んだ(「Cys改変TCR」又は「Cys TCR」)。
【0115】
実施例3のTCR(LVL改変TCR)を更に改変して、以下の通り、α鎖及びβ鎖のそれぞれの定常領域にCys置換を含めた。実施例3のLVL改変TCRのα鎖の定常領域(アミノ酸配列番号21)をコードするヌクレオチド配列を改変して、48位の天然のThrをCysで置換した。実施例3のLVL改変TCRのβ鎖の定常領域(配列番号19)をコードするヌクレオチド配列を改変して、56位の天然のSerをCysで置換した。α鎖及びβ鎖をコードするヌクレオチド配列を、β鎖をコードするヌクレオチド配列が、α鎖をコードするヌクレオチド配列の5’に位置し、且つピコルナウイルス2Aペプチド(配列番号28)をコードするヌクレオチド配列が、α鎖とβ鎖との間に位置する状態で、単一ヌクレオチド配列にクローニングした。組み合わせたヌクレオチド配列を、ヒトの組織における発現のためにコドンを最適化し、ベクターインサート(配列番号40)を提供した。ベクターインサートをMSGV1発現ベクターにクローニングして、配列番号38を得た。ベクターによってコードされるTCRは、配列番号26を含むアミノ酸配
列を含むα鎖及び配列番号27を含むアミノ酸配列を含むβ鎖を含んだ(「LVL-Cys改変TCR」又は「LVL-Cys TCR」)。
【0116】
実施例5
本実施例では、実施例2のキメラ抗HPV16 E7 TCRをコードする組換え発現ベクターの改変がHPV16E711-194量体結合を向上させ、HPV16腫瘍細胞株の認識を向上させることを実証する。
【0117】
2人のドナーからのPBLを、表1に記載の、組換え発現ベクターの1つで形質導入した。
【0118】
【表1】
【0119】
2人の正常ドナーからの形質導入PBLを、刺激後8日目に、抗HPV16 E711-194量体及び抗マウス(m)TRBC抗体を用いたフローサイトメトリーにより、HPV16 E711-194量体結合について試験した。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。結果を図2A~2Rに示す。各象限で検出された染色細胞のパーセンテージを各グラフの上に示す。図2A~2Rに示す通り、β鎖がα鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞は、α鎖がβ鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞と比較して、4量体結合の向上を実証した。やはり図2A~2Rに示す通り、Cys改変TCR、LVL改変TCR、又はLVL-Cys改変TCRで形質導入した細胞は、それぞれ実施例2のTCRで形質導入した細胞と比較して、4量体結合の向上を実証した。
【0120】
別の実験においては、形質導入した細胞を、刺激の11日後に、624細胞、CaSki細胞、Scc90細胞、又はScc152細胞と共培養し、IFN-γ分泌を測定した。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。結果を図3A及び3Bに示す。図3A及び3Bに示す通り、Cys改変TCR、LVL改変TCR、又はLVL-Cys改変TCRで形質導入した細胞は、それぞれ、実施例2のTCRで形質導入した細胞と比較して、HPV16腫瘍株の認識の向上を実証した。やはり図3A~3Bに示す通り、β鎖がα鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞は、概して、α鎖がβ鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞と比較して、HPV16腫瘍株の認識の向上を実証した。
【0121】
β鎖がα鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞は、フローサイトメトリーにより測定した場合、α鎖がβ鎖の5’に位置する組換え発現ベクターで形質導入した細胞と比較して、発現の向上も実証した。
【0122】
実施例6
本実施例では、LVL-Cys改変TCR(β/α)をコードする組換え発現ベクターで形質導入したT細胞が、HPV-16 E711-194量体のCD8非依存的結合を示したことを実証する。
【0123】
末梢血細胞を、実施例4のLVL-Cys改変TCR(β/α)をコードするMSGV1組換え発現ベクターで形質導入した。形質導入細胞を、抗CD8抗体、抗TRBC(マウス定常領域)抗体及びHLA-A2/E711-194量体で標識し、フローサイトメトリーで解析した。両方のドナーからのCD8形質導入細胞及びCD8形質導入細胞は両方とも4量体と結合し、これによりCD8非依存的結合が実証された。
【0124】
実施例7
本実施例では、LVL改変TCR(β/α)を発現するように形質導入した末梢血T細胞が、HPV16 E711-19ペプチド及びHPV16腫瘍細胞株を特異的に認識することを実証する。
【0125】
PBLを、実施例3のLVL改変TCR(β/α)をコードする組換え発現ベクター(配列番号37)で形質導入した。前述(Dudley et al.J.Immunother.26:332-42(2003)及びRiddell et al.J.Immunol.Methods 128:189-201(1990))の通りの急速増幅プロトコル(REP)を用いて、細胞数の急速な増幅を行った。簡潔には、TILを、30ng/mLの抗CD3抗体及び6000IU/mLのIL-2を含む完全培地(CM)中、放射線照射(40Gy)した同種末梢血単核「フィーダー」細胞と共に培養した。増幅した形質導入細胞と、標的の、HPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞(コントロール)、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、HPV16 E6をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、HPV16 E7をコードするプラスミドで形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Alb細胞、Panc1細胞、Ane細胞又はSiHa細胞とを共培養した。IFN-γを測定した。結果を図4に示す。図4に示す通り、LVL改変TCR(β/α)をコードする組換え発現ベクターで形質導入したPBLは、HLA-A2拘束性の様態で、HPV16 E7陽性腫瘍細胞株及び他のHLA-A2HPV16 E7標的を特異的に認識した。別のドナーの細胞により得た結果は、同様であった。
【0126】
実施例8
本実施例では、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するように形質導入した末梢血T細胞が、HPV16腫瘍細胞株を特異的認識すること、及びこの認識が、抗MHCクラスI抗体により阻止されることを実例で示す。本実施例では、これらの形質導入T細胞が、HPV16HLA-A2腫瘍細胞株を特異的に殺傷することも実例で示す。
【0127】
PBLを、LVL-Cys改変TCR(β/α)をコードする組換え発現ベクター(配列番号38)で形質導入した。実施例7に記載した通り、REPを用いて細胞数の急速増幅を行った。形質導入した細胞を、抗体なし(黒色の棒)、又は抗MHCクラスI抗体(灰色の棒)若しくは抗MHCクラスII抗体(陰影のない棒)の存在下で、標的の624細胞、SCC90細胞、又はCaSki細胞と共培養した。コントロールとして、PBLにDMF5 TCRで形質導入し、624細胞と、又は抗MAGE A3 TCRで形質導入し、526-CIITA細胞と、抗体なしで、又は抗MHCクラスI抗体若しくは抗MHCクラスII抗体の存在下で、共培養した。IFN-γを測定した。結果を図5に示す。図5に示す通り、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するように形質導入し
た末梢血T細胞は、HPV16腫瘍細胞株を特異的に認識し、この認識は抗MHCクラスI抗体により阻止された。
【0128】
別の実験においては、形質導入したエフェクター細胞を、様々なエフェクター:標的比で、標的のCaSki細胞、SCC90細胞、SCC152細胞、又は624細胞と共培養した。非形質導入エフェクター細胞をネガティブコントロールとして用いた。結果を図6A~6Dに示す。図6A~6Dに示す通り、LVL-Cys改変TCR(β/α)をコードする組換え発現ベクター(配列番号38)で形質導入したPBLは、HPV16HLA-A2腫瘍株の特異的死滅を実証した。
【0129】
実施例9
本実施例では、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するよう形質導入した末梢血T細胞が、抗HPV16 E6 TCR DCA2E6と同様の機能的結合活性を有することを実証する。本実施例では、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するよう形質導入した末梢血T細胞が、CaSki細胞及びSCC152細胞との共培養の際、DCA2E6 TCRで形質導入した細胞と比較して、より高いIFN-γ産生を示したが、SCC90細胞との共培養の際はそうではなかったことも実証する。
【0130】
PBLを、LVL-Cys改変TCR(β/α)(配列番号38)又はDCA2E6をコードする組換え発現ベクターで形質導入した。形質導入した細胞を、ペプチド無し又は1μM~1pMの範囲の濃度のHPV16 E711-19ペプチド若しくはHPV16
E629-38ペプチドでパルスしたT2細胞と共培養した。IFN-γを測定した。結果を図7A及び7Bに示す。図7A及び7Bに示す通り、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するように形質導入したPBLは、抗HPV16 E6 TCR DCA2E6と同様の機能的結合活性を有する。別のドナー由来の細胞により得られた結果は同様であった。
【0131】
別の実験においては、PBLを、LVL-Cys改変TCR(β/α)(配列番号38)又はDCA2E6を発現するよう形質導入した。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。細胞を、標的の624細胞、Caski細胞、SCC90細胞、又はSCC152細胞と共培養した。IFN-γを測定した。結果を図8Aに示す。図8Aに示す通り、LVL-Cys改変TCR(β/α)を発現するように形質導入した末梢血T細胞は、CaSki細胞及びSCC152細胞との共培養の際、DCA2E6 TCRで形質導入した細胞と比較して、より高いIFN-γ産生を示したが、SCC90細胞との共培養の際はそうではなかった。
【0132】
別の実験においては、PBLを、Cys改変TCR(β/α)(配列番号9、24及び27)又はDCA2E6を発現するよう形質導入した。非形質導入細胞をネガティブコントロールとして用いた。細胞を、標的のHPV16 E629-38ペプチドでパルスした293-A2細胞(コントロール)、HPV16 E711-19ペプチドでパルスした293-A2細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、Alb細胞、Ane細胞、Panc1細胞、又はSiHa細胞と共培養した。IFN-γを測定した。結果を図8Bに示す。図8Bに示す通り、Cys改変TCR(β/α)を発現するよう形質導入した末梢血T細胞は、CaSki細胞及びSCC152細胞との共培養の際、DCA2E6 TCRで形質導入した細胞と比較して、より高いIFN-γ産生を示したが、SCC90細胞との共培養の際はそうではなかった。
【0133】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中
に組み込まれる。
【0134】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1の(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1の」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1の」)は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項(A若しくはB)から選択された1の事項又は列挙した事項(A及びB)のうち2以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0135】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書中に特記しない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
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