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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240807BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/17 203
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023113679
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2020060234の分割
【原出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2023126358
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 優介
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
(72)【発明者】
【氏名】溝口 翔
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 明
(72)【発明者】
【氏名】松本 達夫
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0299993(US,A1)
【文献】特開2008-201021(JP,A)
【文献】特開2000-229419(JP,A)
【文献】国際公開第2019/234965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたインクを粒子化して噴出するノズル、前記ノズルから噴出されたインク粒子を帯電させる帯電電極、前記帯電電極で帯電された前記インク粒子を偏向する偏向電極、および印字に使用されない不使用インクを回収するガターを有する印字ヘッドと、
インク容器内のインクを前記印字ヘッドに供給するためのインク供給経路、印字に使用しない前記インクを前記インク容器内に回収するためのインク回収経路、溶剤容器内の溶剤を前記インク容器に供給するための溶剤供給経路を備える本体と、
前記印字ヘッドの動作を制御する本体制御部と、
前記印字ヘッドを装着するためのヘッド装着部、洗浄に使用した溶剤を収容する回収容器を備えるヘッド装着ユニットと、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記ヘッド装着ユニットは、前記印字ヘッドの先端部を収容し、前記印字ヘッドの先端部を洗浄するための前記溶剤が流入する洗浄ベース部を有し、
前記印字ヘッドは、前記ヘッド装着部に装着された状態で、前記溶剤によって洗浄され、
前記洗浄ベース部は、前記印字ヘッドの先端部を収容し、かつ前記溶剤の流入が可能な収容部を有し、
前記溶剤は、前記印字ヘッドの前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極および前記ガターの少なくとも一つを洗浄した後に流下して前記収容部に流入し、
前記印字ヘッドの先端部は、前記収容部に流入した前記溶剤により洗浄され、
前記洗浄ベース部は、前記印字ヘッドの先端部を洗浄した前記溶剤を下方に流すための液抜穴と、前記液抜穴に向けて形成された傾斜面と、を有し、
前記液抜穴は、前記収容部に流入した前記溶剤が所定時間だけ前記収容部内に溜まることを可能とする大きさであり、
前記印字ヘッドの先端部は、前記収容部内に前記所定時間だけ溜められた前記溶剤により洗浄される第1の過程と前記傾斜面に沿って前記液抜穴から流出する前記溶剤により洗浄される第2の過程を介して前記収容部に流入した前記溶剤により洗浄されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記洗浄ベース部は、前記印字ヘッドをヘッド装着ユニットにセットした時に前記印字ヘッドの先端部を覆うように形成された側壁部を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記第2の過程では、前記溶剤が前記液抜穴から流出する途中において前記溶剤の流動を生じさせることにより前記印字ヘッドの先端部が洗浄されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項に記載のインクジェット記録装置において、前記収容部に流入した前記溶剤が前記所定時間だけ前記収容部内に溜まることを可能とする前記液抜穴の大きさは、前記溶剤が前記液抜穴から流れ出る流量より前記収容部に流入する前記溶剤の流量の方が多くなるような大きさに設定されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されたインクジェット記録装置において、前記ヘッド装着ユニットは、洗浄ノズルを有し、前記洗浄ノズルに溶剤を供給し、前記印字ヘッドを洗浄することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載されたインクジェット記録装置において、前記ヘッド装着ユニットはエアを供給するエアノズルを有し、前記本体は前記エアノズルに前記エアを供給するエア供給部を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、製品の生産ラインにおいて製品への印字に使用する等、産業用として広く使用されている。インクジェット記録装置の印字ヘッドは、印字を行う場合にノズルから噴出したインク粒子の跳ね返り等により、ヘッド内部およびヘッド先端面を汚す恐れがある。この状態で印字を続けると印字品質が低下する可能性がある。また、印字動作を停止する時間が長くなると、印字ヘッドのノズル、印字ヘッド先端の開口部付近の汚れが固着する等の不具合が発生し、正常なインク粒子噴出ができなくなり印字品質が低下する。そのため、印字ヘッドを適切に洗浄する必要がある。しかし、この印字ヘッドの洗浄を作業者が手作業で行うのは煩雑であるばかりでなく、作業者の熟練度により洗浄作業に要する作業時間や溶剤の使用量、インク汚れ除去の程度が変わってしまうという問題があった。そのような課題を解決するために、WO2019/234965A1公報(特許文献1)の技術が知られている。
【0003】
この特許文献1には、印字ヘッド全体を自動的に洗浄する洗浄ユニットを備えたインクジェット記録装置を開示している。洗浄ユニットは、印字ヘッドを収容する洗浄槽と、この洗浄槽に挿入(収容)された印字ヘッドに対し洗浄液を噴出する洗浄ノズルと、乾燥用のエアノズルと、洗浄後の洗浄液を回収する回収容器とで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2019/234965A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、印字ヘッド全体を洗浄ユニットの内部に挿入した状態で、高圧の洗浄液を洗浄ノズルから噴出することで、印字ヘッドの内部の構成機器(ノズル、帯電電極、偏向電極、ガター等)の洗浄を自動化することができる。
【0006】
しかし、この特許文献1の技術は、主に印字ヘッドの内部の構成機器の自動洗浄には適しているが、インク粒子が被印字物に対して噴出する印字ヘッドカバー先端に開口された開口部の洗浄を行うには不十分であった。そのため、ヘッド先端部の洗浄は、作業者が手作業で洗浄する必要があり、完全な洗浄自動化という点で課題が残っている。
【0007】
そこで、本発明は、印字ヘッドの先端部も自動的に洗浄することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、インクの供給を受け印字を行う印字ヘッドと、前記インクを前記印字ヘッドに供給する本体と、前記印字ヘッドを挿入する洗浄槽を有し洗浄ノズルから洗浄液を前記印字ヘッドに噴射して洗浄を行う洗浄ユニットと、を有するインクジェット記録装置であって、前記洗浄槽内に、前記印字ヘッドの先端部を収容し前記洗浄液の流入が可能な収容部を有する洗浄ベース部を設けたインクジェット記録装置である。
【0009】
また、本発明の他の一例を挙げると、インクの供給を受け印字を行う印字ヘッドと、前記インクを前記印字ヘッドに供給する本体と、前記印字ヘッドを収容する洗浄槽を有し洗浄ノズルから洗浄液を前記印字ヘッドに噴射して洗浄を行う洗浄ユニットとを有するインクジェット記録装置の洗浄方法であって、前記印字ヘッドの先端部を収容するとともに前記洗浄液の流入が可能な収容部を有する洗浄ベース部を設け、前記印字ヘッドの先端部を前記収容部に収容し、前記洗浄液により前記印字ヘッドの先端部の洗浄を行うインクジェット記録装置の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘッド先端部の自動洗浄を行うことができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例におけるインクジェット記録装置の使用状況を示す図である。
図2】実施例におけるインクジェット記録装置の全体経路構成を示す図である。
図3】実施例における印字ヘッドの構成図である。
図4】実施例における洗浄ユニットの構成図である。
図5】印字ヘッドをセットした状態における洗浄ユニットの断面図である。
図6】洗浄ベース部の構成例を示す図である。
図7】実施例における洗浄ベース部の構成を示す図である。
図8】洗浄ベース部の他の構成例を示す図である。
図9】洗浄ベース部の他の構成例を示す図である。
図10】印字ヘッド洗浄機能の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施例を図1図10を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、以下の各図において、同一機器には同一番号(符号)を付し、原則として、すでに説明した機器の説明を省略する。
【0013】
(実施例におけるインクジェット記録装置の使用状態)
最初に、本発明の実施例におけるインクジェット記録装置100の基本構成および使用状態について説明する。図1は、本実施例におけるインクジェット記録装置100の使用状態を示す図である。
【0014】
まず、図1に示すように、本実施例に係るインクジェット記録装置100は、本体1と、本体1と導管5(印字ヘッド用)を介して接続された印字ヘッド2と、本体1と洗浄ユニット用の導管6により接続された洗浄ユニット3とを備える。
【0015】
インクジェット記録装置100は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据付けられる。本体1は、印字ヘッド2に印字用のインクを供給するとともに、印字ヘッド2で使用しなかったインクを回収する機能を有する。また、本体1は、インクを収容するインク容器、インク容器内のインクが印字に使用されて少なくなった場合にインクをインク容器に補充するための補助インク容器などを備え、またインクや溶剤の供給や回収を行うための経路と、その経路途中に設けた開閉弁群(電磁弁群)やポンプ群などを内蔵している。更に、本体1は、印字ヘッドにより印字を制御すること、インクや溶剤の供給、回収等を制御すること等のための制御部と、インクジェット記録装置の各種状態を表示する操作表示部8とを備えている。本体1は定期的な保守作業などに必要なスペースが確保可能な場所に設置されている。
【0016】
印字ヘッド2は、ベルトコンベア11の近傍に設置された印字ヘッド固定用金具13に固定され、ベルトコンベア11上を矢印Xの方向に給送される印字対象物12A、12Bに印字するために近接して設置されている。なお、印字対象物12Aは印字前の印字対象物を示し、印字対象物12Bは印字後の印字対象物を示す。また、印字ヘッド2は、ヘッドベース16上に、ノズル、帯電電極、偏向電極等(図1では図示せず)の部品を装備している。また、印字ヘッド2は、これらの部品を保護する目的でヘッドカバー17が取付けられている。
【0017】
印字ヘッド2を洗浄するために設けられた洗浄ユニット3は、固定用治具92と、固定用治具92を篏合するための篏合部93により、ベルトコンベア11の近傍に取付けられている。なお、洗浄ユニット3は、洗浄槽71と、洗浄槽内にセットされた印字ヘッド2を洗浄するための洗浄ノズル(図1では図示せず)と、洗浄液を回収する回収容器4等を含む。導管6は、本体1から洗浄液を洗浄ユニット3に供給するための導管である。
【0018】
(全体経路構成)
次に、本発明の実施例におけるインクジェット記録装置100の経路構成について説明する。図2は、本実施例におけるインクジェット記録装置の全体経路構成を示す図である。
【0019】
図2において、インクジェット記録装置100は、本体1と、印字ヘッド2と、洗浄ユニット3と、それらを結ぶ導管5,6とを備えている。本体1と印字ヘッド2との間は、導管5により接続される。本体1と洗浄ユニット3との間は導管6により接続される。
【0020】
〔印字ヘッドへのインク供給〕
まず、本体1から印字ヘッド2に対してインクを供給するインク供給用の経路(経路801~803)について説明する。図2において、本体1には、循環するインク68Aを保持するインク容器31が備えられている。
【0021】
インク容器31は、インク68Aに浸漬している部分で経路801に接続されている。経路801の途中には、粘度測定器45と、インク供給のための経路の開閉を行う電磁弁49が設置されている。粘度測定器45は、インクの粘度を測定するために設けられている。
【0022】
更に、経路801は、合流経路901を介して、経路802に設置されているポンプ34に接続されている。ポンプ34はインク68Aを吸引・圧送するものである。そして、ポンプ34の出力側において、インク68A中に混入している異物を除去するフィルタ39(インク供給用)に接続されている。
【0023】
フィルタ39は、ポンプ34から圧送されたインク68Aを印字するために適正な圧力に調整する調圧弁46に接続されている。調圧弁46はノズル21に供給されるインク68Aの圧力を測定する圧力センサ47に接続されている。圧力センサ47が配置された経路802は、導管5内を通過して印字ヘッド2に接続されている。具体的には、ノズル21にインク68Aを供給するかどうかを制御するための切替弁26に接続される。
【0024】
切替弁26は、経路803を介して、インク68Aを吐出する吐出口を備えたノズル21に接続されている。なお、切替弁26は三方型電磁弁である。切替弁26はインク供給用の経路802とノズル洗浄用の経路812とが接続されており、ノズル21に対してインク68Aと溶剤69Aの供給を切替えることができる。ノズル21の吐出口の直進方向には、ノズル21で粒子化されたインク粒子68Bに対して所定の電荷量を付加する(印字内容に対応して電荷量が付与する)ための帯電電極23、印字に使用するインク粒子68Bを帯電量に対応して偏向させるための偏向電極24、および印字に使用されないために帯電・偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子68Bを捕捉するためのガター25が配置されている。印字は、偏向電極24で偏向されたインク粒子68Bを被印字物に着弾させることで行われる。
【0025】
〔印字ヘッドからのインク回収〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100のインク回収経路(経路804)について説明する。図2において、ガター25は、経路804に接続されている。そして、経路804は、導管5内を通過し、本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ40(インク回収用)と接続され、フィルタ40は経路804の開閉を行う電磁弁50(インク回収用)に接続されている。さらに、電磁弁50は、ガター25により捕捉されたインク粒子68Bを吸引するポンプ35(インク回収用)と接続されており、ポンプ35がインク容器31と接続されている。このような構成において、ガター25により捕捉されたインク粒子68Bは、これらを介してインク容器31に回収される。また、インク容器31は、インク68Aに接触しない上部の空間にて、経路805と接続されていて、経路805は本体1の外部と連通した構成をとっている。
【0026】
〔溶剤補給経路〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100の溶剤補給経路(経路809~810)について説明する。図2において、本体1には、インク容器31への溶剤供給やノズル洗浄、ヘッド洗浄に使用するための溶剤69Aを保有(収容)する溶剤容器33が備えられている。溶剤容器33は、溶剤69Aに浸漬している部分で経路809に接続されており、経路809には溶剤を吸引、圧送するために使用されるポンプ37が配置されている。そして、ポンプ37は、目的に応じて溶剤69Aの供給先を変えるために分岐経路903に接続されている。分岐経路903は、溶剤補給経路においては経路810に配置された流路の開閉を行うための電磁弁53に接続されており、電磁弁53はインク容器31と経路により接続された構成となっている。
【0027】
このような構成において、溶剤69Aをインク容器31に供給するには、電磁弁53を開き、ポンプ37を駆動すれば良い。インク容器31への溶剤の供給(補給)は、粘度測定器45が検出するインク粘度が所定値よりも高い状態になった場合に、インク粘度を所定値範囲内の粘度に戻すために行われる。
【0028】
〔インク補給経路〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100のインク補給経路について説明する。図2において、本体1には、補充用のインク68Cを保持する補助インク容器32が備えられている。補助インク容器32は、インク68Cに浸漬している部分でインク補給のための経路811に接続されている。経路811は、経路の開閉を行う電磁弁54に接続されており、電磁弁54は合流経路901を介して、経路802に設置されてインク68Cを吸引、圧送するために使用するポンプ34に接続されている。そして、補助インク容器32内のインク68Cは、印字ヘッド2に送給され、ノズル21、ガター25を経由して、経路804、電磁弁50、ポンプ35からなるインク回収経路を通り、インク容器31に補充される。
【0029】
補助インク容器32内のインクをインク容器31に補充するタイミングは、インク容器31内のインクの液位を検出する液位検出装置31Aの液位検出値を利用して行う。すなわち、インク容器31には、インク容器31内のインクが適正な量である基準液位に達しているか否かを検出する液位検出装置31Aが備えられている。
【0030】
〔ノズル洗浄〕
次に、ノズル洗浄経路(経路809及び経路812)について説明する。図2において、経路809に配置されたポンプ37は、分岐経路903を介して経路812に接続されている。経路812は、流路の開閉を行うための電磁弁55(ノズル洗浄用)に接続されている。そして、電磁弁55は、溶剤69A中に混入している異物を除去するためのフィルタ41(ノズル洗浄用)に接続されている。フィルタ41は、導管5内を通る経路812の途中に設けられ、ノズル21に洗浄のための溶剤69Aを送るかどうかを制御するための切替弁26に接続された構成となっている。
【0031】
〔洗浄ユニット〕
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100の洗浄ユニット3の基本構成について説明する。
【0032】
図2において、印字ヘッド2を洗浄する洗浄ユニット3は、上面が開口し印字ヘッド2を挿入する(セットする)ための収容空間部を有する洗浄槽71と、洗浄槽71にセットされた印字ヘッド2を洗浄するために洗浄液を噴出する洗浄ノズル72と、洗浄後の印字ヘッド2を乾燥するために乾燥エアを噴出するエアノズル73とを有する。また、洗浄ノズル72から噴出された洗浄液の流入と印字ヘッド先端部を収納部を有した洗浄ベース部600と、洗浄槽71の底部に取付けられ洗浄槽の低部の開口から流出する洗浄液69Bを回収する回収容器4とを備えている。
【0033】
洗浄ユニット3において使用する洗浄液は、この実施例では溶剤容器33に保有されている溶剤69Aを使用する。そのため、溶剤容器33の溶剤69Aは、浸漬している部分で経路809と繋がっており、経路809途中に設けたポンプ37は、分岐経路903を介して経路821に接続されている。経路821は、洗浄ユニット3の洗浄ノズル72と接続されている。経路821には、流路の開閉を行うための電磁弁56が配置されている。この構成により、電磁弁56を開動作し、ポンプ37を駆動する制御を行うことにより、溶剤容器33内の溶剤69Aを、「洗浄液」として洗浄ユニット3内の洗浄ノズル72に供給することができる。なお、洗浄液は、本体1の溶剤容器の溶剤とは別に設けた、洗浄液供給装置から供給しても良い。
【0034】
また、印字ヘッドの洗浄後には、エアノズル73からエアを噴出させ、印字ヘッド2の乾燥を行う。エアノズル73は、経路825と接続されており、その経路825の途中に設けたポンプ38を駆動することによりエアをエアノズル73から洗浄槽71内に噴射することができる。なお、本体1と洗浄ユニットとの間は、導管6により接続される。回収容器4は、洗浄後の洗浄液69Bを収容するために設けられる。容器内の洗浄液69Bが一定以上の液位になった場合に、回収容器4を取外して洗浄液69Bを排出する。洗浄液69Bの排出により空になった回収容器4は、洗浄液69Bを収容するために、再び洗浄槽71の底部に取付ける。
【0035】
また、洗浄ユニット3の回収容器4に液位検出装置4Aが設けられている。液位検出装置4Aは、回収容器4内に液位に応じて上下に移動可能なフロート74と、このフロート74を保持するホルダー75とを備えている。また、回収容器4の外側には、フロート74が上下動することにより近接した場合に、液位検出信号を出力するセンサ76が設置される。ここで、センサ76は回収容器4の外部に設けられているので、回収容器4の取外しや取付けの支障にはならない。回収容器4内の洗浄液69Bが排出推奨の量まで溜まった場合、図示しない制御部がセンサ76は液位検出信号を入力し、図1に示す操作表示部8に警告を表示する。これにより、作業者はこの警告表示により回収容器4の廃液を行うタイミングを認識することができる。また、回収容器4の下部に逆止弁などを設けることで、洗浄槽71から取り外さずに洗浄液を排出することができるようにしても良い。
【0036】
(印字ヘッドの構成)
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置100の印字ヘッド2の構成について図3を用いて説明する。図3は本実施例における印字ヘッドの外観斜視図である。図3の(A)は印字ヘッド2の外観斜視図を示し、(B)はヘッドカバー17を外した状態の印字ヘッド2の斜視図である。
【0037】
図3(A)において、印字ヘッド2は、ヘッドベース16と、本体1と印字ヘッド2を接続した導管(印字ヘッド用)5と、ヘッドベース16に設置された切替弁26(不図示)を保護する目的で組付けられた保護カバー18と、固定ノブ19により保護カバー18に組付けられたヘッドカバー17と、印字に使用するインク粒子が通過するための印字用開口部28Aを形成した、ヘッド先端部28とを備えている。このようなヘッドカバー17が組み付けられた状態であれば、ヘッドベース16とヘッドカバー17、ヘッド先端部28で囲われた空間は、メンテナンス時の衝撃等から保護される。このヘッドカバー17で囲われた部品については、日常作業する作業員がメンテナンスする空間となっている。また、ヘッドベース16と保護カバー18で囲まれた内部エリアが、いわゆるサービス員がメンテナンスするエリアとなっている。
【0038】
次に図3(B)のヘッドカバー17が取り外されている状態の印字ヘッド2について説明する。ヘッドベース16にはノズル21と、帯電電極23と、偏向電極24と、ガター25とヘッド先端部28とが備え付けられている。また、ノズル21には、耐溶剤性のある材料で形成されたチューブ(供給用)802Aと、チューブ(洗浄用)812Aとが接続されている。
【0039】
また、印字ヘッド2には、ヘッドカバー17が取り外された状態であっても、保護カバー18の内側が露出しないように、ヘッドベースの保護カバー18の間に仕切り部材20が組みつけられている。また、仕切り部材20には、ヘッドカバー17が取り付けられているか、および印字ヘッド2が洗浄ユニット3に取り付けられたかを検知できるセンサ27が組み付けられている。
なお、ヘッド先端部28はノズル21のメンテナンス作業性を向上させるために、取り外しが可能な構造になっていてもよい。
【0040】
(洗浄ユニットの具体的な構成)
次に、洗浄ユニット3の具体的な構成について図4を用いて説明する。
図4において、洗浄槽71の上部には蓋ブロック81が設置される。蓋ブロック81は、印字ヘッドの挿入部81Aを有し、この挿入部81Aにより印字ヘッド2を挿入することができる。挿入部81Aの下面には、蓋部材83が設けられており、蓋ヒンジ82のバネ力により通常は閉じられている。この構造はゴミ等が洗浄槽71内に入るのを防ぐためである。85は配管部分を保護するカバーである。
【0041】
印字ヘッド2を洗浄する場合、作業者は挿入部81Aから印字ヘッド2を洗浄槽71に挿入する。この際、蓋ヒンジ82によるバネ力で閉じられた蓋部材83が回動し、印字ヘッド2が洗浄槽71内にセットされる。このとき、挿入部81A近くに設置された近接センサ86によって印字ヘッド2が洗浄ユニット3に挿入されたかを検知する。経路822により送られる洗浄液は、液継手84を介して洗浄ノズル72に流入する。フィルタ43は、洗浄液内のごみを除去するために経路822の途中に設けられている。洗浄ノズル72は、洗浄するために挿入(収容)された印字ヘッド2の洗浄部位に対応して洗浄液を噴射するために、この実施例における洗浄ノズル72は、2つの液吐出穴72Aおよび72Bを有している。また、洗浄後の印字ヘッド2を乾燥させるために設けたエアノズル73にも、2つのエア吐出穴73Aおよび73Bが設けられている。回収容器4は、洗浄槽71の下部にネジ構造の取付部71Aにより取付けられており、取付と取外しが可能な構成になっている。回収容器4内には、液位検出装置4Aが設けられ液位を検出する。この液位検出装置4Aは、ホルダー75内に、フロート74が配置され、このフロート74の位置をセンサ76が検知し、その検知信号は電線76Aにより、図示しない制御部に送信する。
【0042】
また、図4において、600は洗浄ベース部である。洗浄ベース部600は、洗浄槽71内に配置されている。この洗浄ベース部により印字ヘッド2の先端部の洗浄を実施する。この例では、洗浄ベース部600は支持部材である支持棒78により吊り下げられる構造になっている。なお、洗浄ベース部600が洗浄槽71内に配備できれば、支持構造はどのような構造でも良い。洗浄ベース部600には、印字ヘッド2の先端部を収容し、かつ洗浄液の流入が可能な収容部602を有する。また、収容部602の底部は傾斜面となっており、底面の最下部には液抜穴604が形成されている。洗浄ノズル72から噴出された洗浄液は、印字ヘッド2の内部構成機器(内部パーツ)を洗浄した後、流下する(流れ落ちる)ことにより、この収容部602に流入する。印字ヘッド2の先端部は、この収容部602に流入した洗浄液により洗浄される。そして、収容部602に溜められた洗浄液は、液抜穴604から下方に流出する。この洗浄ベース部600の具体的な構成の詳細については、図7により後に説明する。
【0043】
(洗浄ユニットにおける洗浄動作)
次に、図4に示す洗浄ユニット3による印字ヘッド2の洗浄動作を、図5を用いて説明する。図5は洗浄ユニット3に印字ヘッド2をセットした状態の洗浄ユニットの断面図である。印字ヘッド2を洗浄する際には、印字ヘッド2を洗浄ユニット3にセット(挿入)する。セット時には印字ヘッド2のヘッドカバー17は外す。
【0044】
洗浄は印字ヘッド2がセットされた後に、洗浄ノズル72から洗浄液を噴出することにより開始される。洗浄ノズル72は矢印J、Kで示すように洗浄液を印字ヘッドに噴出する。洗浄液は印字ヘッド2に組み付けられたノズル21や帯電電極23、偏向電極24、ガター25を洗浄しながら、矢印Lで示すように重力で下方に垂れていく。その後、洗浄液は洗浄ベース部600の収容部602に流入し溜められる。収容部602に溜められた洗浄液は、収容部内に留まって印字ヘッド2のヘッド先端部28を洗浄する。その後、洗浄液は収容部602の内面を流れていき、底面に設けた液抜穴604から流出するが、その際にも洗浄液が印字ヘッド2のヘッド先端部28を洗浄する。ヘッド先端面を洗浄後の洗浄液は、矢印Mに示したように収容部602から回収容器4に向かって流出し、回収容器4の内部に収容される。印字ヘッドの洗浄が終了すると、洗浄ノズル72は洗浄液の噴出を停止する。この停止により、エアノズル73からエアが噴出を開始し、印字ヘッド2を乾燥させる。
このようにして、印字ヘッドの先端部も含めた洗浄ユニットによる洗浄が自動的に実施される。
【0045】
(洗浄ベース部)
次に、印字ヘッド2の先端部を洗浄する際に使用される洗浄ベース部600の具体的な構造およびその作用について説明する。ここでは、洗浄ベース部600の構造として、4例を説明するが、本発明に使用可能な洗浄ベース部は、ここで説明したものに限るものではない。
【0046】
〔1番目の洗浄ベース部〕
まず、1番目の洗浄ベース部の構造について図6を用いて説明する。図6における(A)は液溜方式の洗浄ベース部600を洗浄ユニット3の上方から見た場合の平面図であり、(B)は(A)のX-X断面図を示す。
【0047】
図6において、2個の穴601は支持棒78を取付ける穴であり、この穴に支持棒78を取付けることにより、洗浄ベース部600を洗浄槽内に支持する。洗浄ベース部600の中央部分には、所定の深さを有する収容部602が設けられる。この収容部602には、印字ヘッド2の先端部が収容されるとともに、落下してくる洗浄液がこの内部に溜められるようになっている。この溜められた洗浄液により、ヘッド先端部28の洗浄が行われる。なお、洗浄効果を促進させるために、洗浄ベース部600に振動子を組み込み、洗浄液に振動を与えて洗浄するのも効果的である。
【0048】
この方式の場合、印字ヘッド2の洗浄動作が終了すると、ヘッド先端部28が洗浄液に浸ったままになるので乾燥ができない。そのため、この構造の洗浄ベース部600では、洗浄終了後に、支持棒78を下方に移動させて印字ヘッドの先端部を洗浄液から引き離して乾燥動作を行う。すなわち、図示しない駆動部によって、支持棒78を下方に移動させ、ヘッド先端部28が収容部602内の洗浄液面から抜け出るようにする。この移動の後、エアノズル73からエアを噴出し、印字ヘッド2の乾燥を行う。なお、図6に示す収容部602は、洗浄ベース部600の中央部分をくり抜いて凹部空間を作り液溜めを行う構造にしたが、後述する洗浄ベース部のように、洗浄ベース部600の中央部の四方に壁を設けて収容部602を構成するようにしても良い。
【0049】
〔2番目の洗浄ベース部〕
次に、図7により、2番目の洗浄ベース部600の構造について説明する。この図7に示す洗浄ベース部600は、上述した図4に示した洗浄ベース部600の詳細な構造である。図7の(A)は、収容部602に液抜穴を有する洗浄ベース部600の平面図であり、(B)は(A)のX-X断面図を示す。
【0050】
図7において、3個の穴601は支持棒78が取り付けられる箇所である。穴601に支持棒78を取付けることにより洗浄ベース部600が支持される。図7における収容部602は、4方に設けた壁602A~602Dにより形成されている。なお、この収容部602は、この壁によらず、図6のようにベース部をくり抜いて形成しても良い。収容部602の内側の空間603に、印字ヘッド2の先端部が収容され、かつ印字ヘッド2の内部パーツを洗浄した洗浄液が流入して溜められる。この空間603にはヘッド先端部28が浸るくらいまで洗浄液が溜められる。その洗浄液によって、ヘッド先端部に付着したインク等の汚れが洗浄される。
【0051】
洗浄液が溜められることによりヘッド先端部28の洗浄が行われることは、図6の場合と同様であるが、図7の洗浄ベース部600は、収容部602の底部605に洗浄液を流出させるための液抜穴604を形成している。622は、底部605の液抜穴604上部に取り付けられたフィルタである。このフィルタ622により、洗浄液に含まれるゴミ等の不純物を除去する。また、収容部602の低部は、図7の(B)から分かるように、底面はその液抜穴604に向けて傾斜面が形成されている。このような構造により、一旦溜められた洗浄液は、ヘッド先端部28を洗浄するとともに、液抜穴604から流出する。この流出する途中の洗浄液は、その流動作用によりヘッド先端部28を洗浄する。そのため、図6の場合よりも洗浄性能が向上する。
【0052】
このように、図7の液抜穴604は、洗浄ノズルが洗浄液を噴出しているときに、一定時間だけ洗浄液を溜めて液溜めによる洗浄を行うとともに、洗浄液が底面の液抜穴604から流出する途中において、洗浄液の積極的な流動を生じさせて洗浄するので、洗浄性能は高くなる。また、傾斜があることにより、この流動性が高まるので、洗浄性性能を上げるために好ましい。そのような作用を生じさせるために、液抜穴604の大きさは、洗浄液が液抜穴604から流れ出る流量より、空間603に入ってくる流量の方が多くなるような大きさとしている。
【0053】
洗浄動作が終了し、洗浄ノズル72から洗浄液の噴出が停止されると、収容部602内に溜まった洗浄液が自然落下で液抜穴604を通過して回収容器4へ流れ落ちる。また、底部605は傾斜を設けているので、洗浄液を空間603に残らず回収容器4に流しきることができる。その洗浄液がなくなったタイミングで、エアノズル73からエアを噴出させ、印字ヘッド2の乾燥を行う。
【0054】
なお、洗浄液を所定時間だけ溜める方法としては、液抜穴604を設けることに限定されない。例えば、一定量の液量が溜まると開閉する蓋を設けても良い。また、電磁弁を設けて電気的に洗浄液の流出を制御しても良い。また、洗浄液は複数回に分けて噴出することで、洗浄性を向上させることができる。
【0055】
〔3番目の洗浄ベース部〕
次に、図8により、3番目の洗浄ベース部600の構造について説明する。図8の(A)は、収容部602に液抜き穴を有する洗浄ベース部600の平面図であり、(B)は(A)のX-X断面図を示す。
【0056】
図8に示す洗浄ベース部600は、基本的に図7に示す洗浄ベース部600の構造に類似している。違いは、液抜穴604の大きさである。すなわち、図8の液抜穴604の大きさは、収容部602に流入する洗浄液が、収容部602に溜まることなく、そのまま液抜穴604に向けて流動する大きさとしている。ヘッド先端部28は、この洗浄液の流動により行われる。つまり、図7の場合には、洗浄液の液溜めによる洗浄と液流れによる洗浄を併せ持った洗浄方式の構造であったが、図8の場合は液溜めによる洗浄をほぼ無くし、液流れによる洗浄を主とした洗浄方式の構造となっている。このような構成の洗浄ベース部600は、洗浄液が収容部602内に溜まることがほとんどないので、洗浄ユニット3による洗浄終了後、直ちにエアノズルによる乾燥動作を開始することができる。
【0057】
〔4番目の洗浄ベース部〕
次に、図9により、4番目の洗浄ベース部600の構造について説明する。図9の(A)は、第1ベース部と第2ベース部の2つのパーツに分割した構造にした洗浄ベース部600を示す洗浄ベース部600の平面図であり、(B)は(A)のX-X断面図を示す。
【0058】
図9の洗浄ベース部600は、基本的に図7に示す洗浄ベース部と同様である。しかし、図9の洗浄ベース部600は、第1ベース部である液溜パーツ610と、第2ベース部である液抜パーツ620の2部品構成となっている。液溜パーツ610と液抜パーツ620とは、容易に着脱可能な構造で接続されている。
【0059】
液溜パーツ610は、穴601、収容部602(壁602A~壁602Dで構成される)内に、印字ヘッド2の位置決めを行うボス611を設け、更に、液抜パーツ620の上部621およびフィルタ622が入る穴612で構成されている。ボス611は上部が斜面になっている。これにより、印字ヘッド2は洗浄ベース部600に挿入されると、収容部602内の洗浄液が最適な箇所に噴出される適切な位置にセットされる。また、ボス611はヘッド先端部28に接触しているため、洗浄後、ヘッド先端部28に残った洗浄液を毛細管現象により、多少流すことができる。それにより、印字ヘッド2を乾燥する時間を短縮することができる。
【0060】
液抜パーツ620は、液抜穴604と、フィルタ622と、Oリング623とを備えている。ヘッド先端部28は外部の塵埃などが付着する可能性が高く、それらが洗浄液により流され、液抜穴604に詰まる可能性がある。そこで、液抜穴604が詰まる頻度を低減させるために、液抜パーツ620の上部621にフィルタ622を設ける。
【0061】
ここで、フィルタ622は液抜パーツ620と一体となる構成にしているので、液抜パーツを交換することにより、フィルタ622も同時に交換することができる。ただし、一体構成に限定されず、例えば、フィルタ622が凸部によって上部に固定される構成にしても良い。この場合、液抜パーツ620を取り外した後に、フィルタ622のみを交換することもできる。その際、液抜パーツ620は、液抜穴604等を洗浄し、新しいフィルタ622を取付けて、液溜パーツ610に再装着する。
【0062】
液溜パーツ610の穴612と液抜パーツ620の上部621およびフィルタ622との間には隙間が生じてしまう。ここで、穴612と上部621の隙間(接続部)にOリング623を設けることで、空間603に洗浄液を溜めることができる。
【0063】
また、液抜穴604やフィルタ622が詰まり、空間603に液が溜まったままの状態で液抜パーツ620を交換する場合も考えられる。その際、液抜パーツ620を取り外した際に溜まっていた洗浄液が作業者側に流れ出る恐れがある。そこで、流れ出る洗浄液を受け止めることができるポケット部624を設けている。このポケット部624の容積は空間603の容積よりも大きくなるような構造となっている。また、洗浄液が流れ出ているのを目視で確認できるように、ポケット部624は半透明の材料とした方がよい。また、洗浄液が流れ出ているのに気づかずに液抜パーツが取り外されてしまうこともあるため、例えば、液溜パーツ610と液抜パーツ620の接続部をねじ構造にして、ねじ山数およびかみ合い長さを多く設定してもよい。
【0064】
なお、上述した洗浄では、印字ヘッド2の内部パーツを洗浄した洗浄液を利用するものであったが、ヘッド先端部28を洗浄する方法はこの方法に限定されない。例えば、ヘッド先端部28に直接洗浄液を噴出することができる洗浄ノズルを、内部洗浄用の洗浄ノズルとは別に設置して洗浄することでも良い。
【0065】
(洗浄制御の動作フロー)
次に、洗浄制御の動作フローについて図10を用いて説明する。
まず、印字作業が終了したことにより、ノズルからのインク噴出を停止させる。この状態がステップS01である。ステップS01により、印字ヘッド2の洗浄が可能となる。ステップS02では、作業員がヘッドカバー17を印字ヘッド2から取り外し、内部パーツおよびヘッド先端部28がインク等により汚れているか確認する。そこで、洗浄が必要と判断した場合、印字ヘッド2を洗浄ユニット3に挿入する。
【0066】
次にステップS03では、インクジェット記録装置100に備えられた操作表示部8(図1参照)から洗浄ユニット3のヘッド洗浄機能の開始を指示する。
【0067】
ステップS04では、ヘッド洗浄機能の処理が開始されると、洗浄ユニット3に備えられたセンサ27で印字ヘッド2が洗浄ユニットにセットされたか検知する。ここで、印字ヘッド2が挿入されていることが検知された場合、ステップS08に進み、検知されなかった場合、ステップS05に進む。
【0068】
ステップS05では、自動洗浄中断処理が行われる。次にステップS06で操作表示部8にアラームが表示される(例えば、”ヘッド挿入なし”)。そして、ステップS07でヘッド洗浄処理が停止される。これにより、作業者が誤操作をした場合などに、洗浄液を無駄に使用することを防ぐことができる。
【0069】
ステップS08は洗浄ノズル72から洗浄液を噴出し、ヘッド内部パーツおよびヘッド先端部28を洗浄するシーケンスを実行する。この入り簾尾シーケンスは、既に説明しているのでここでは省略する。このとき、洗浄液を断続的に噴出すると洗浄性能が向上し、少ない洗浄液で洗浄することができる。洗浄が終了するとステップS09に進む。
【0070】
次にステップS09では、エアノズル73から乾燥エアを吐出し、印字ヘッド2を乾燥させるシーケンスを実行する。このとき、乾燥エアを分岐させ、一つは内部パーツに向けて、一つは溶剤ガスが漏れやすい箇所に向けて噴出する。これにより、乾燥時に外部に廃棄される溶剤ガスの濃度を抑制することができる。また、溶剤ガス濃度を抑制する方法として、吸引ポンプを備えて、発生した溶剤ガスを本体1まで吸い出す方法もある。
【0071】
ステップS09はステップS08で噴出された洗浄液が収容部602に溜まっている状態で開始しても良い。また、ステップS08およびステップS09の動作をしていることは操作表示部8で確認できるようにし、好きなタイミングで作業者はヘッド洗浄処理を中断できるようにしてもよい。
【0072】
洗浄処理シーケンスが終了すると、ステップS10に進み、印字ヘッド洗浄の停止処理を行う。停止か完了したら、操作表示部8にヘッド洗浄の終了画面が表示される。
【0073】
ステップS11で、作業者は印字ヘッド2を洗浄ユニット3から取り出し、印字ヘッド2にヘッドカバー17を取り付ける。そして、印字ヘッド2を印字ヘッド固定用金具13に取り付けることで、印字を再開することができる。
【0074】
また、インクジェット記録装置100を停止させておく場合、印字ヘッド2は洗浄ユニット3に取り付けたままにしておいても良い。その後、インクジェット記録装置100を立ち上げる際に、ヘッド洗浄処理を行うと、立ち上げ時に、インク粒子Bが曲がりガターに回収されないなどの不具合発生を低減できる効果もある。
【0075】
なお、ステップS08およびステップS09において、洗浄液噴出や乾燥エア噴出の時間が異なるシーケンスを作業者が選択できるようにしてもよい。また、作業者がシーケンスの時間を設定できるような機能があってもよい。
【0076】
また、インクジェット記録装置100は、ヘッド洗浄処理が行われたログを残すことができ、使用された溶剤の量を算出するようにしてもよい。それにより、例えば、回収容器に溜まった洗浄液が廃液推奨量に達した場合に、ステップS10後に回収容器に溜まった洗浄液を廃棄するメッセージが表示できる。そして、回収容器が取り外されたことをセンサ76で検知すると回収容器に溜められた液量がリセットされるようにする。これにより、液位検出装置に異常が発生しても、回収容器が洗浄液で満たされる前に作業者に廃液するタイミングを知らせることができる。
【0077】
≪本発明のその他の実施例≫
本発明は、上述した本発明の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想や趣旨から逸脱しない範囲内において、その構成を変更した変形例を含む。また、上述した実施例は本発明の理解を容易にするために詳細に記載したものであり、本発明は説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…本体、2…印字ヘッド、3…洗浄ユニット、4…回収容器、4A…液位検出装置、5…導管、6…導管、8…操作表示部、11…ベルトコンベア、12A…印字対象物、12B…印字対象物、13…印字ヘッド固定用金具、16…ヘッドベース、17…ヘッドカバー、18…保護カバー、21…(ノズル、23…帯電電極、24…偏向電極、25…ガター、26…切替弁、27…センサ、28…ヘッド先端部、28A…印字用開口部、31…インク容器、31A…液位検出装置、32…補助インク容器、33…溶剤容器、34…ポンプ、35…ポンプ、37…ポンプ、38…ポンプ、39…フィルタ、40…フィルタ、41…フィルタ、43…フィルタ、45…粘度測定器、46…調圧弁、47…圧力センサ、49…電磁弁、50…電磁弁、53…電磁弁、54…電磁弁、55…電磁弁、56…電磁弁、68A…インク、68B…インク粒子、68C…インク、69A…溶剤、69B…洗浄液、71…洗浄槽、71A…取付部、72…洗浄ノズル、72A…液吐出穴、72B…液吐出穴、73…エアノズル、73A…エア吐出穴、73B…エア吐出穴、74…フロート、75…ホルダー、76…センサ、76A…電線、78…支持棒、81…蓋ブロック、81A…挿入部、82…蓋ヒンジ、83…蓋部材、84…液継手、85…カバー、86…近接センサ、91…固定用治具(本体用)、92…固定用治具、93…篏合部、100…インクジェット記録装置、600…洗浄ベース部、601…穴、602…収容部、602A~602D…壁、603…空間、604…液抜穴、605…底部、610…液溜パーツ、611…ボス、612…穴、620…液抜パーツ、621…上部、622…フィルタ、623…Oリング、624…ポケット部、801~805…経路、809~811…経路、821…経路、822…経路、825…経路、901…合流経路、903…分岐経路
図1
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