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特許7535164バスバー保持具とそれを用いたバスバー組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】バスバー保持具とそれを用いたバスバー組立体
(51)【国際特許分類】
   H02G 5/02 20060101AFI20240807BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20240807BHJP
   H02B 1/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02G5/02
H05K7/06 C
H02B1/20 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023134858
(22)【出願日】2023-08-22
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 康夫
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-42487(JP,U)
【文献】特開2015-65055(JP,A)
【文献】特開2019-186406(JP,A)
【文献】米国特許第4255838(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00-1/38
H02B 1/46-7/08
H02G 5/00-5/10
H05K 7/02-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する素材から構成され、複数のバスバーを結合するバスバー保持具であって、前記バスバーを支持する複数の支持部と、前記支持部を結合する1つまたは2つ以上の結合部とを具備しており、前記結合部は可とう性を有した形状に形成されており、前記支持部は、第1の挟持片と、前記第1の挟持片にヒンジ結合された第2の挟持片とを有しており、前記第1の挟持片と前記第2の挟持片とで前記バスバーを挟み込むことで前記バスバーを支持することを特徴とするバスバー保持具。
【請求項2】
前記結合部は、変形することで前記支持部の間の寸法や前記バスバーの角度を容易に変化させることができることを特徴とする、請求項1記載のバスバー保持具。
【請求項3】
前記結合部は、波板状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のバスバー保持具。
【請求項4】
前記結合部は、前記支持部を構成する前記第1の挟持片及び前記第2の挟持片のうち、前記第1の挟持片に結合していることを特徴とする、請求項1記載のバスバー保持具。
【請求項5】
前記第1の挟持片には凹部が、前記バスバーには前記凹部に対応する箇所に前記凹部に嵌まり込む凸部がそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1記載のバスバー保持具。
【請求項6】
前記支持部の前記第1の挟持片に形成される前記凹部は、前記支持部に支持されるべき前記バスバーの前記凸部とのみ対応していることを特徴とする、請求項5記載のバスバー保持具。
【請求項7】
複数のバスバーと、このバスバーを結合する電気絶縁性を有するバスバー保持具とを具備しており、前記バスバー保持具は、前記バスバーを支持する複数の支持部と、前記支持部を結合する1つまたは2つ以上の結合部とを有しており、前記結合部は可とう性を有した形状に形成されており、前記支持部は、第1の挟持片と、この第1の挟持片にヒンジ結合された第2の挟持片とを有しており、前記第1の挟持片と前記第2の挟持片とで前記バスバーを挟み込むことで前記バスバーを支持することを特徴とするバスバー組立体。
【請求項8】
前記結合部は、変形することで前記支持部の間の寸法や前記バスバーの角度を容易に変化させることができることを特徴とする、請求項7記載のバスバー組立体。
【請求項9】
前記結合部は、波板状に形成されていることを特徴とする、請求項7記載のバスバー組立体。
【請求項10】
前記結合部は、前記支持部を構成する前記第1の挟持片及び前記第2の挟持片のうち、前記第1の挟持片に結合していることを特徴とする、請求項7記載のバスバー組立体。
【請求項11】
前記第1の挟持片には凹部が、前記バスバーには前記凹部に対応する箇所に前記凹部に嵌まり込む凸部がそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項7記載のバスバー組立体。
【請求項12】
前記支持部の前記第1の挟持片に形成される凹部は、前記支持部に支持されるべき前記バスバーの凸部とのみ対応していることを特徴とする、請求項7記載のバスバー組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車やハイブリッド型自動車などのモータ駆動により走行する自動車のモータ電力制御用や回生電力制御用インバーターに使用する複数のバスバーを保持するバスバー保持具と、このバスバー保持具を用いたバスバー組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車やハイブリッド型自動車などのモータ駆動により走行する自動車のモータ電力制御用や回生電力制御用インバーターには、大電流の流れるバスバーが存在する。一般的なバスバーには、導電性の良い金属導体(例えば、銅・銅合金・アルミ合金)が採用されている。バスバーは板材からのプレス加工(型抜き・曲げ加工・ボルト穴の打ち抜き等)による成形や、平角断面の線材(バーインコイル)のフォーミング加工による成形が施されている。バスバーの端部には、入力端子と出力端子にバスバーを圧着するボルト穴が設けられている。
【0003】
電気自動車やハイブリッド型自動車などのインバーター内部には直流部(+極-極の二線式)と交流部(UVWの三相式)が存在し、2本一組または3本一組のバスバーが組み込まれている。
【0004】
複数の入力端子の間隔と複数の出力端子の間隔は、電気絶縁構造が異なることや、接続作業時の工具挿入範囲を確保するため、必ずしも等しい間隔にはならない。また、入出力端子は、インバーターのケース内に固定されている。このため、バスバーの形状は、接続する入出力端子ごとに対応したそれぞれ異なる形状となる。
【0005】
電気自動車やハイブリッド型自動車などに搭載するインバーターの組立作業では、形状がそれぞれ異なるバスバーを取り出し、識別し、正規の取付け位置に配置し、入出力端子にバスバーを圧着するボルトを締める作業がバスバーごとに必要となる。そのため、インバーター組立作業員による誤組立(バスバーの取り違え、バスバーの組み立て間違い)が起きることがある。かかるインバーター組立作業員による誤組立を防止するため、複数のバスバーを一組ごとに保持する樹脂成形品、例えば、フェライトコアを収納する樹脂成形品ケースに複数のバスバーを保持する機能を持たせたものがある(特許文献1:特開2019-186406号公報)。
【0006】
また、バスバー間の電気絶縁のため、複数のバスバーと電気絶縁性を有した樹脂の射出成形品で一体成形するアイディアも多数ある(特許文献2:特開2021-123104号公報等)。
【0007】
さらに、図1に示すような2本のバスバー200と300を一体に保持するバスバー保持具100もありうる。このバスバー保持具100は、電気絶縁性を有する素材から構成され、バスバー200と300を支持する2つの支持部110と120と、支持部110と120を結合する1つの結合部130とを有している。バスバー200と300は、支持部110と120に射出成形によるインサート成形で支持されており、平板状の結合部130によって一体化している。
【0008】
しかし、2本のバスバー200と300を射出成形品であるバスバー保持具100で一体化したとき、入力端子と出力端子の間の寸法が大きいバスバー200と300自体の誤差や樹脂の射出成形品であるバスバー保持具100(特に結合部130)の冷却収縮やヒケなどによる変形により、インバーターの2つの端子に対してバスバー200と300のボルト穴211と311の位置の精度を確保することが大変困難となる。特に、バスバー200と300は、入力端子と出力端子との間の寸法が大きいため、バスバー保持具100(特に結合部130)の冷却収縮やヒケなどの僅かな変形でもレバー比が効くため、ボルト穴211と311の相対的な位置関係に大きなずれを生じさせることになる。
【0009】
また、インバーターケースの2つの端子の周囲には、端子間の絶縁を確実に行うために図1に示すような電気絶縁障壁910と920と930と940が突出形成されている。このため、一方のバスバー200を一方の端子の両側の電気絶縁障壁910と920の間におさめてボルト穴211と端子を接続できたとしても、上記のようなボルト穴211と311の相対的な位置関係のずれのため、もう一方のバスバーともう一方の端子の両側の電気絶縁障壁930と940との間で干渉が起きる。その結果、もう一方のバスバー300のボルト穴311にもう一方の端子が接続できないという事態が生じる。
【0010】
かかる事態は、端子に対するバスバー200と300のボルト穴211と311の相対的な位置ずれを吸収できるほどボルト穴211と311を拡大することで解決することは機械構造的には可能である。しかしながら、この解決手段は、バスバー200と300の端子に対する電気接点の接触面積が減少し、電流量に見合った接点容量が確保できなくなるおそれがあるため好ましくない。
【0011】
また、ボルト穴211と311を拡大することで解決するのではなく、バスバー200と300のボルト穴211と311の位置をバスバー保持具100の射出成形後に切削形成を施すことで対応することも可能ではある。しかしながら、バスバー保持具100の射出成形後にバスバー200と300に対してボルト穴211と311を切削加工することは、機械加工工程の増大を招くというデメリットが生じるので現実的ではない。
【0012】
この種のバスバー組立体には、車種に応じて多種多様のものがある。例えば、バスバー保持具100は共通するが、バスバーが異なるものがあるという具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2019-186406号公報
【文献】特開2021-123104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2記載の射出成形品は、複数のバスバーを重ねて配置することで単にバスバーの間隔がばらつくことを防止するものであって、射出成形品の仕上がり状態によるボルト穴間隔に誤差があったとしても、その誤差を吸収するものではない。
【0015】
この種のバスバー組立体は、別工場から完成品として電気自動車等の製造ラインに納入され、製造する車種に対応した多種多様のバスバー組立体を準備することが通常である。ここで、バスバーの製造場面では需要の高い車種に対応するバスバー組立体は多量に準備しなければならないが、それほど需要が高くない車種に対応するバスバー組立体はそれほど準備しなくてもよい。このような事態は、バスバー組立体の製造場面からすると、車種ごとに異なった多種類のバスバー組立体を製造する必要があり、非常に非効率である。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、組立作業時の作業員による誤組立(バスバー取り違え、バスバーの組み立て間違い)を防ぐとともに、バスバーの工程間の搬送のときにも複数のバスバーの一体性を保持したまま移送することができるようにする。さらに、本発明は、インバーターのケース内に固定された入出力端子に確実に接続ができ、しかもバスバー組立体の製造場面における非効率を改善することができるバスバー組立体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様にかかるバスバー保持具は、電気絶縁性を有する素材から構成され、複数のバスバーを保持(結合)するバスバー保持具であって、図2に示す複数のバスバーを支持する複数の支持部と、この支持部を結合しており且つ可とう性を有した形状を有した少なくとも一つの結合部とを備えており、前記支持部は、図12に示す第1の挟持片112と122、この第1の挟持片112と122にそれぞれヒンジ結合された第2の挟持片160と170とを有しており、第1の挟持片と第2の挟持片とでバスバーを挟み込むことでバスバーを支持するようになっている。
【0018】
前記結合部130は、図14図15に示すように結合部の可とう性により変形することで、インバーターのケース内の端子位置に合わせて支持部の間隔やバスバーの角度を容易に変化させることができる構成であって、例えば波状に形成されている。
【0019】
本発明の一態様にかかるバスバー組立体は、図2に示す複数のバスバーをそれぞれ支持する複数の支持部と、複数の支持部間を結合する少なくとも一つの結合部とが一体に形成されたバスバー保持具にバスバーを組み付けることで、複数のバスバーを一体部品(バスバー組立体)として取り扱うことが可能となる。このため、バスバー組み付け作業時には作業員はバスバー取り違えやバスバーの組み立て間違いなどの誤組み付けを防ぐことができる。
【0020】
また、バスバー保持具の結合部の可とう性により、インバーターのケース内に固定された入出力端子に対してバスバーを精度よく組み付けることができる。
【0021】
前記第1の挟持片には図12に示す凹部113と123が、バスバーには図9に示す前記凹部に対応する箇所に凹部に嵌まり込む凸部231と331がそれぞれ形成されており、第1の挟持片に形成される凹部は、その支持部に支持されるべきバスバーの凸部とのみ対応しているので、支持すべきでない誤ったバスバーを支持することはない。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるバスバー保持具は、バスバーを支持する支持部とそれを結合する少なくとも一つの結合部とを一体に成形することで、複数のバスバーを一体部品(バスバー組立体)として扱うことが可能となる。このため、バスバー組み付け作業時に作業員はバスバーの取り違えやバスバーの組み立て間違いなどの誤組立を防ぐことができる。また、バスバー保持具の結合部の可とう性により、インバーターのケース内に固定された入出力端子に対してバスバーを精度よく組付けることができる。さらに、複数のバスバーの一体性を保持したまま移送することができるので、バスバーの工程間搬送時のバスバーの分離や散逸を防ぐことができる。また、このバスバー保持具であると、予め製造されたバスバー保持具に必要なバスバー組立体を構成するバスバーを組み込むことで臨機応変に対応することができるので、バスバー組立体の製造場面における非効率を改善することができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】バスバーを一体化した場合の問題点を示す従来のバスバー組立体及び電気絶 縁障壁の概略的平面図である。
図2】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的平面図である。
図3】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的底面図である。
図4】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的正面図である。
図5】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的背面図である。
図6】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的右側面図である。
図7】本発明の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的左側面図である。
図8】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具によって保持されるバスバーの 概略的平面図である。
図9】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具によって保持されるバスバーの 概略的底面図である。
図10】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具によって保持されるバスバー の概略的正面図である。
図11】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具によって保持されるバスバー の概略的背面図である。
図12】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具の開放された状態の概略的平 面図である。
図13】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具の開放された状態の概略的背 面図である。
図14】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具の開放された状態のヒンジ正 面図(右側斜め上からの概略的正面図)である。
図15】本発明の実施の形態にかかるバスバー保持具の開放された状態のヒンジ正 面図(左側斜め下からの概略的正面図)である。
図16】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー組立体の概略的平面図である。
図17】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー保持具の開放された状態の概略 的平面図である。
図18】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー保持具を構成するカバー部の概 略的平面図である。
図19】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー保持具を構成するカバー部の概 略的底面図である。
図20】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー保持具に支持されるバスバーの 概略的平面図である。
図21】本発明の他の実施の形態にかかるバスバー保持具に支持されるバスバーの 概略的正面図である。
図22】本発明のさらに他の実施の形態にかかるバスバー組立体の要部の概略的拡 大平面図である。
図23】本発明のさらに他の実施の形態にかかるバスバー組立体の要部の概略的拡 大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態にかかる、図2に示すバスバー保持具100は、電気絶縁性を有する素材から構成され、2本のバスバー200と300を結合するバスバー保持具であって、バスバー200と300を支持する2つの支持部110と120と、この支持部110と120を結合する結合部130とを備えている。前記結合部130は可とう性を有した形状に形成されている。前記支持部110と120は、図12に示すように第1の挟持片112と122と、この第1の挟持片112と122にヒンジ結合された第2の挟持片160と170とを有しており、第1の挟持片112と122と第2の挟持片160と170とでバスバー200と300を挟み込むことでバスバー200と300を支持するようになっている。
【0025】
このバスバー保持具100によって支持されるバスバー200と300は、図8図9図10図11に示すようにインバーターのケース内の端子位置と、インバーター内部部品との干渉回避や電気絶縁隙間を確保するため、いくつかの折り曲げ成形がなされた金属導体である。一方のバスバー200は一体のものではあるが、説明の都合上、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211が設置された側を入力側端210と、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221が設置された側を出力側端220と称し、入出力端をつなぐ略クランク状の部分を中間部230と称する。他方のバスバー300も一体のものではあるが、説明の都合上、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴311が設置された側を入力側端310と、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴321が設置された側を出力側端320と称し、入出力端をつなぐ略クランク状の部分を中間部330と称する。
【0026】
前記中間部230と330は、入力側段差240と340を介して入力側端210と310と、出力側段差250と350を介して出力側端220と320とそれぞれ連なっている。入力側段差240と340と出力側段差250と350との間の中間部230と330は、平面で見ると図8に示すように略クランク状に形成されており、正面から見ると図10および図11に示すように平坦に形成されている。
【0027】
しかも、一方のバスバー200の中間部230には、図9に示すように凸部231と231が、他方のバスバー300の中間部330には凸部331がそれぞれ形成されている。これらの凸部231と331はプレス加工によって形成されている。
【0028】
バスバー200と300の入力側端210と310は、中間部230と330に至るまでが平坦に形成されており、中間部230と330と入力側段差240と340を介して連なっている。かかる入力側端210と310は、中間部230と330より上側に位置している。また、この入力側端210と310は、出力側端220と320や中間部230と330と比較して長く設定されている。
【0029】
一方、出力側端220と320は、中間部230と330と出力側段差250と350を介して連なっており、出力側段差250と350からは斜め上方に向けて折り曲げされている。そのため出力側端220と320の先端は、入力側端210と310より高い位置に設置されている(図10図11参照)。
【0030】
なお、本発明にかかるバスバー保持具100が結合するバスバー200と300は、上述した形状のものに限定されるものではなく、種々の形状とすることができることはいうまでもない。
【0031】
前記バスバー保持具100は、電気絶縁性を有する樹脂(例えば、PETやPBT)から構成されており、2本のバスバー200と300を結合する。かかるバスバー保持具100は、バスバー200と300の中間部230と330の形状に沿った、平面から見ると略クランク状の2つの支持部110と120と、この支持部110と120を結合する可とう性を有した形状の結合部130とから構成されている。
【0032】
前記支持部110と120は、バスバー200と300の略クランク状に形成された中間部230と330の電気絶縁被覆である。一方、前記結合部130は、可とう性を確保するために波板状に形成されている。具体的に、結合部130は、各支持部110と120それぞれによってバスバー200と300を支持した状態においてバスバー200と300の板厚方向に沿う方向で湾曲された波板状に形成されている。なお、図面では2本のバスバー200と300が略平行になっているが、本発明がこれに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0033】
一方のバスバー200を支持する支持部110は、図12図13に示すように、第1の挟持片112と、この第1の挟持片112とヒンジ結合された第2の挟持片160とから構成されている。第1の挟持片112と第2の挟持片160とがバスバー200を挟み込んで支持する。第1の挟持片112は両サイドには、図12に示すように規制壁部114と115が設けられている。この規制壁部114と115の間の寸法は、支持すべきバスバー200の幅寸法と等しく設定されている。
【0034】
また、図14図15に示すように第1の挟持片112の規制壁部114と115の高さ寸法は、支持すべきバスバー200の厚さ寸法と等しく設定されている。
【0035】
第1の挟持片112と第2の挟持片160とは、ヒンジ部161でヒンジ結合されている。より具体的には、第1の挟持片112と第2の挟持片160とを開いた状態で第1の挟持片112と第2の挟持片160との間には、第1の挟持片112と第2の挟持片160とをヒンジ結合するヒンジ部161が形成されている。
【0036】
また、第2の挟持片160の縁部(第1の挟持片112と第2の挟持片160とを開いた状態で他方の支持部120に対してより離れた側)には係止爪162が、第1の挟持片112の縁部(他方の支持部120に対してより近い側)には前記係止爪162に対応した係止突起111がそれぞれ形成されている。
【0037】
さらに、支持部110の第1の挟持片112には,バスバー200の中間部230の凸部231と231にのみ対応した凹部113と113が形成されている。この凹部113と113は、支持すべきではない誤ったバスバーの支持を防止する機能とともに、支持すべきバスバー200の位置決めの機能を有している。
【0038】
このように構成された支持部110の第1の挟持片112にバスバー200を配置し(当然、第1の挟持片112の凹部113にバスバー200の凸部231が嵌まり込んでいる) 、第2の挟持片160のヒンジ部161を中心として第1の挟持片112側へと折り込み、第2の挟持片160の係止爪162と第1の挟持片112の係止突起111とを係合させる。これによって、支持すべきバスバー200は支持部110に正しく支持されることになる。
【0039】
なお、バスバー200の幅寸法と第1の挟持片112の規制壁部114と115の間の寸法、バスバー200の厚さ寸法と第1の挟持片112の規制壁部114と115の高さ寸法が上述のように構成されているので、バスバー200が支持部110に支持された状態では、バスバー200の幅方向の移動は規制壁部114と115によって規制され、バスバー200の厚さ向の移動は第1の挟持片112と第2の挟持片160のベース部163(図14を参照)によって規制される。これにより、支持部110に支持されたバスバー200はバスバー保持具100に対してずれなく支持されることになる。
【0040】
なお、支持部110に支持すべきではないバスバー300を支持させようとしても、支持部110の2つの凹部113と、バスバー300の1つの凸部331とが対応していないので支持させることができない。すなわち、バスバーの誤った支持を未然に防ぐことができる。
【0041】
他方の支持部120も上述した支持部110と同様で、第1の挟持片122と、この第1の挟持片122にヒンジ部171でヒンジ結合された第2の挟持片170とから構成されている。第1の挟持片122と第2の挟持片170とがバスバー300を挟み込んで支持する。第1の挟持片122は両サイドに規制壁部126と127が設けられている。この規制壁部126と127の間の寸法は、支持すべきバスバー300の幅寸法と等しく設定されている。
【0042】
また、第1の挟持片122の規制壁部126と127の高さ寸法は、支持すべきバスバー300の厚さ寸法と等しく設定されている。
【0043】
この支持部120は、第1の挟持片122と第2の挟持片170とを開いた状態で第1の挟持片122と第2の挟持片170との間には、第1の挟持片122と第2の挟持片170とをヒンジ結合するヒンジ部171が形成されている。
【0044】
また、第2の挟持片170の縁部 (第1の挟持片122と第2の挟持片170とを開いた状態で一方の支持部110に対してより離れた側)には係止爪172が、第2の挟持片170の縁部(一方の支持部110に対して近い側)には前記係止爪172に対応した係止突起121がそれぞれ形成されている。
【0045】
さらに、支持部120の第1の挟持片122には,バスバー300の中間部330の凸部331にのみ対応した凹部123が形成されている。この凹部123は、支持すべきではない誤ったバスバーの支持を防止する機能とともに、支持すべきバスバー300の位置決めの機能を有している。
【0046】
このように構成された支持部120の第1の挟持片122にバスバー300を配置し(当然、第1の挟持片122の凹部123にバスバー300の凸部331が嵌まり込んでいる) 、第2の挟持片170のヒンジ部171を中心として第1の挟持片122側へと折り込み、第2の挟持片170の係止爪172と第1の挟持片122の係止突起121とを係合させる。これによって、支持すべきバスバー300は支持部120に正しく支持されることになる。なお、バスバー300の幅寸法と第1の挟持片122の規制壁部126と127の間の寸法、バスバー300の厚さ寸法と第1の挟持片122の規制壁部126と127の高さ寸が上述のように構成されているので、バスバー300が支持部120に支持された状態では、バスバー300の幅方向の移動は規制壁部126と127によって規制され、バスバー300の厚さ向の移動は第1の挟持片122と第2の挟持片170のベース部173(図15を参照)によって規制される。これにより、支持部120に支持されたバスバー300はバスバー保持具100に対してずれなく支持されることになる。
【0047】
なお、支持部120に支持すべきではないバスバー200を支持させようとしても、支持部120の凹部123がバスバー200の凸部231に対応していないので支持させることができない。すなわち、バスバーの誤った支持を未然に防ぐことができる。
【0048】
結合部130は、波板状に形成されているので、バスバー組立体1000の仕上がり状態から、入力端子および出力端子の位置に合わせて容易に変形させることができるようになっている。この結合部130は、支持部110の第1の挟持片112と、支持部120の第1の挟持片122とを結合している。このバスバー組立体1000は、複数の入力端子間隔と複数の出力端子間隔に合わせるように設計されている。バスバー組立体1000の仕上がり状態が設計通りであれば、入力端子と入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211と311、出力端子と出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221と321がそれぞれ一致するように構成されている。
【0049】
しかし、バスバー保持具100は電気絶縁性を有した樹脂の射出成形で形成されている。この樹脂の射出成形においては、溶融した樹脂の冷却に伴い、支持部110と120や結合部130となる樹脂がわずかに収縮する。このため、2本のバスバー200と300の平行性が損なわれ、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211と311および出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221と321の位置が設計位置からずれてしまい、バスバー組立体1000のインバーターケース内の入出力端子への組付けに支障が生じるおそれがある。
【0050】
ボルト穴位置の設計上の許容差を小さくして前記組付けの問題を改善することは、バスバー組立体1000の生産歩留まりを低下させ、バスバー組立体1000の製造費の増大を招くため好ましくない。
【0051】
本発明のバスバー組立体1000は、2つの支持部110と120を結合する可とう性を有した形状の結合部130を備えるため、2本のバスバー200と300のそれぞれの入力端子と入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211と311、出力端子と出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221と321に合わせて容易に変形させることができる。
【0052】
これにより入力端子と入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211と311および、出力端子と出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221と321を一致させ、接続ボルトを挿入し締付することができる。
【0053】
また、複数種類のバスバー保持具100と複数種類のバスバー200と300とを予め製造しておき、電気自動車等の製造ラインからの要望に応じて、必要なバスバー保持具100とバスバー200と300を選択し、バスバー200と300をバスバー保持具100に組み込むことによってバスバー組立体1000を製造することができるので、より効率的かつ臨機応変にバスバー組立体1000を製造ラインに供給することができるというメリットがある。
【0054】
上述した実施の形態にかかるバスバー保持具100は結合部を波板状としたが、他の形状であってもよい。例えば、他の結合部130としては、図22に示すように薄肉部を持ったヒンジ構造が連続した形状を形成してもよい。また、平面から見てW字形状もしくはS字形状(図23を参照)とすることも可能である。要するにこの結合部130は、可とう性を有した形状とすることで、容易に変形が可能であり、入出力端子の位置に合わせて変形ができればよい。
【0055】
上述した実施の形態にかかるバスバー組立体1000は、2本のバスバー200と300を一体化するものであったが、三相交流の場合には3本のバスバー200と300と400を使用するので、図16に示すようにバスバー保持具100には、支持部110と120とを結合する結合部130と、支持部120と140と結合する結合部150とが形成される。
【0056】
この場合、図16に示すように前記バスバー300は支持部120で支持される。また、この場合の前記バスバー400は、支持部140で支持されるものであって、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴411が設置された側を入力側端410と、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴421が設置された側を出力側端420と称し、入出力端をつなぐ略クランク状の部分を中間部430とが一体に形成されたものである。前記中間部430は、入力側段差440を介して入力側端410と、出力側段差450を介して出力側端420と連なっている。入力側段差440と出力側段差450との間の中間部430は、平面で見ると図20に示すように略クランク状に形成されており、正面から見ると図21に示すように平坦に形成されている。しかも、このバスバー400の中間部430には凸部431が、形成されている。この凸部431はプレス加工によって形成されている。なお、バスバー400は、この支持部140以外の支持部110と120で支持されるバスバー200と300とはほぼ同形状ではあるが、微妙にその寸法等が異なっている。バスバーを異なる支持部で支持できないようにするため、バスバー200の中間部230に形成された凸部231と、バスバー300の中間部330に形成された凸部331と、バスバー400の中間部430に形成された凸部431とでは、その大きさ、数、位置等が異なっている。
【0057】
この場合、図17に示すように両サイドの支持部110と140は上述したものと同様に第1の挟持片112と142と、この第1の挟持片112と142とヒンジ部161と171でヒンジ結合された第2の挟持片160と170から構成される。このため、支持部140には、上述したもの同様の規制壁部144と145、および、係止突起141が設けられる。一方、中央の支持部120は、両サイドの支持部110と140とは構成が異なっている。
【0058】
すなわち、支持部110と140に挟まれた中央の支持部120は、支持部110と140のように第1の挟持片112と142と、第1の挟持片112と142とヒンジ部でヒンジ結合された第2の挟持片160と170のような一体化されたものとは異なっている。この支持部120は、ベース部124(第1の挟持片112と142に相当する)と、このベース部124に嵌まり込むカバー部180(第2の挟持片160と170に相当する)とから構成される。ベース部124には凹部123が形成されている。これは支持すべきバスバー300の凸部331に対応している。すなわち、支持部110に形成された凹部113と、支持部120に形成された凹部123と、支持部140に形成された凹部143は、その大きさ、数、位置が異なっており、これがバスバーの誤った支持を未然に防いでいる。
【0059】
前記ベース部124の両側には規制壁部126と127が設けられている。さらにこのベース部124の縁部には、係止突起121と125が形成されている。一方、カバー部180の両縁部には前記係止突起121と125に対応した1つずつの係止爪181と182が設けられている。なお、前記規制壁部126と127の間の寸法は支持すべきバスバー300の幅寸法に等しく設定されている。各規制壁部126と127の高さ寸法は支持すべきバスバー300の厚さ寸法に設定されている。
【0060】
このように構成された支持部120のベース部124にバスバー300を配置し(当然、ベース部124の凹部123にバスバー300の凸部331が嵌まり込んでいる) 、カバー部180をベース部124にはめ込み、カバー部180の係止爪181と182とベース部124の係止突起121と125とを係合させる。これによって、バスバー300は支持部120に正しく支持されることになる。なお、バスバー300の幅寸法とベース部124の規制壁部126と127の間の寸法、ベース部124の規制壁部126と127の高さ寸法が上述のように構成されているので、バスバー300が支持部120に支持された状態では、バスバー300の幅方向の移動は規制壁部126と127によって規制され、バスバー300の厚さ向の移動は支持部120のベース部124とカバー部180のベース部183(図19を参照)によって規制される。これにより、支持部120に支持されたバスバー300はバスバー保持具100に対してずれなく支持されることになる。
【0061】
樹脂の射出成形品であるバスバー保持具100は、その樹脂の射出成形時において、溶融した樹脂の冷却に伴い、支持部110と120と140や結合部130と150となる樹脂がわずかに収縮して、3本のバスバー200と300と400の設計上の支持状態が損なわれ、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴211の位置、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴221の位置、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴311の位置、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴321の位置、入力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴411の位置、および、出力端子の接続ボルトを挿入するボルト穴421の位置が設計位置からずれてしまう場合がある。しかし、支持部110と140とを結合する結合部130と、支持部120と140とを結合する結合部150は、可とう性を有した形状、例えば波板状としているので、入力端子および出力端子の位置に合わせて容易に変形させることができる。よってバスバー組立体1000のインバーターケース内の入出力端子への組付けに支障は生じない。
【0062】
他の形態としては、4本以上のバスバーを一体化することも可能であるし、結合部130を図22に示すような薄肉ヒンジを有するものや、W字形状もしくはS字形状(図23を参照)とすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 バスバー保持具
110 バスバー支持部(+極またはU相)
111 係止突起
112 第1の挟持片
113 凹部
114 規制壁部
115 規制壁部
120 バスバー支持部(-極またはV相)
121 係止突起
122 第1の挟持片
123 凹部
124 ベース部
125 係止突起
126 規制壁部
127 規制壁部
130 バスバー結合部
140 バスバー支持部(W相)
141 係止突起
142 第1の挟持片
143 凹部
144 規制壁部
145 規制壁部
150 バスバー結合部
160 第2の挟持片
161 ヒンジ部
162 係止爪
163 ベース部
170 第2の挟持片
171 ヒンジ部
172 係止爪
173 ベース部
180 カバー部
181 係止爪
182 係止爪
200 バスバー(+極またはU相)
210 入力側端(+極またはU相)
211 入力側ボルト穴(+極またはU相)
220 出力側端(+極またはU相)
221 出力側ボルト穴(+極またはU相)
230 中間部(+極またはU相)
231 凸部
240 入力側段差(+極またはU相)
250 出力側段差(+極またはU相)
300 バスバー(-極またはV相)
310 入力側端(-極またはV相)
311 入力側ボルト穴(-極またはV相)
320 出力側端(-極またはV相)
321 出力側ボルト穴(-極またはV相)
330 中間部(-極またはV相)
331 凸部
340 入力側段差(-極またはV相)
350 出力側段差(-極またはV相)
400 バスバー(W相)
410 入力側端(W相)
411 入力側ボルト穴(W相)
420 出力側端(W相)
421 出力側ボルト穴(W相)
430 中間部(W相)
431 凸部
440 入力側段差(W相)
450 出力側段差(W相)
910 入力側電気絶縁障壁(+極またはU相)
920 入力側電気絶縁障壁(+極またはU相)
930 入力側電気絶縁障壁(-極またはV相)
940 入力側電気絶縁障壁(-極またはV相)
1000 バスバー組立体
【要約】
【課題】インバーター組立現場において、バスバーの取り違え、バスバーの組み立て間違いなどの誤組立を防ぐとともに、バスバー組立体の製造許容差を過度に精密にすることなく、確実に組立・接続作業ができるようにする。
【解決手段】バスバー保持具100は電気絶縁性を有する素材から構成され、2本のバスバー200、300を結合する部材であり、2本のバスバー200、300を支持する2つの支持部110、120と、これらの支持部110、120を結合する1つの結合部130を備えており、前記結合部130は可とう性を有する形状に形成されており、前記支持部110と120は第1の挟持片112 と122と、この第1の挟持片112 と122にヒンジ結合された第2の挟持片160と170とを有しており、第1の挟持片112 と122と第2の挟持片160と170とでバスバー200と300を挟み込むことでバスバー200と300を支持するようになっている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23