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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】チューブ内の流体の粒子密度の測定
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20240101AFI20240807BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20240807BHJP
   G01N 15/01 20240101ALI20240807BHJP
   G01N 15/075 20240101ALI20240807BHJP
【FI】
G01N15/00 A
G01N15/06 E
G01N15/01
G01N15/075
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023501275
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021066750
(87)【国際公開番号】W WO2022008213
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2050882-6
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501473877
【氏名又は名称】ガンブロ・ルンディア・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルマー, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アルソン, ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, エリック
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/118929(WO,A1)
【文献】特表2011-501804(JP,A)
【文献】特開2017-026438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の材料のチューブ部分を含むチューブ(16)を通って流れる流体中の粒子を検出するための光学検出装置であって、前記光学検出装置は、
前記チューブ部分のためのホルダ(30)と、
前記ホルダ(30)内に配置されたときに、前記チューブ部分の内側の標的体積(302)を照射するように構成された発光デバイス(34)と、
前記発光デバイス(34)によって照射されたときに、前記標的体積(302)から光を受光し、前記受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)を生成するように構成された少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)と、
前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)を処理して、前記流体中の前記粒子の密度を推定するように構成された計算デバイス(22)であって、前記密度を推定するために、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)における時間変動性を示すパラメータ値を決定するように構成される計算デバイス(22)と、を備える光学検出装置。
【請求項2】
前記標的体積(302)に入る個々の粒子について、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)において瞬間信号応答を生成するように構成される、請求項1に記載の光学検出装置。
【請求項3】
前記発光デバイス(34)が、前記標的体積(302)を照射するように動作可能なレーザ(34a)を含む、請求項1または2に記載の光学検出装置。
【請求項4】
前記発光デバイス(34)は、前記標的体積(302)を画定し、前記粒子の個々の断面積の10、10、10、10、または10倍未満の横方向断面積を有するよう構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項5】
前記発光デバイス(34)が、パルス光によって前記標的体積(302)を照射するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項6】
前記粒子が、50、40、30、または20マイクロメートル未満の平均サイズを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項7】
前記粒子が白血球を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項8】
前記流体が腹膜透析排液を含む、請求項7に記載の光学検出装置。
【請求項9】
前記計算デバイス(22)は、前記腹膜透析排液中の前記白血球の密度が所定の限界を超えた場合に感染または炎症のリスクを知らせるように構成される、請求項8に記載の光学検出装置。
【請求項10】
前記密度が、2000、1000、500、または200粒子/マイクロリットル未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項11】
前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分を変形させて、前記流体のための内部通路(16c)を有する平らな形状を達成するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項12】
前記ホルダ(30)は、前記発光デバイス(34)と前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)との中間に配置され、前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分を変形させて、間隔を空けて実質的に平面である第1および第2の壁部分(16a、16b)を画定するよう構成され、前記第1の壁部分(16)は前記発光デバイス(34)に面し、前記第2の壁部分(16b)は前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)に面する、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項13】
前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分と係合して前記第1および第2の壁部分(16a、16b)を画定するための透明または半透明の窓(32a、33a)を備える、請求項12に記載の光学検出装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)は、前記標的体積(302)を透過した光を受光し、透過光を表す第1の出力信号(Oa)を生成するために前記発光デバイス(34)と位置合わせされた第1の受光デバイス(35a)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)は、前記標的体積(302)から散乱された光を受光し、散乱光を表す第2の出力信号(Ob;Oc)を生成するように構成される、第2の受光デバイス(35b;35c)を含む、請求項14に記載の光学検出装置。
【請求項16】
前記第2の受光デバイス(35b;35c)は、前記第1の受光デバイス(35a)に対して前記チューブ部分の長手方向の広がりに沿って変位される、請求項15に記載の光学検出装置。
【請求項17】
前記計算デバイス(22)が、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(Ox)に基づいて1つまたは複数の前処理された信号(PPx)を生成する前処理を実行し、前記1つまたは複数の前処理された信号(PPx)の前記時間変動性を決定するよう構成され、前記前処理は、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(Ox)のハイパスフィルタリングを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項18】
前記ハイパスフィルタリングが、前記少なくとも1つの時間依存出力信号のそれぞれの時間エンベロープを決定すること、および前記時間エンベロープと前記少なくとも1つの時間依存出力信号との間の差分信号を計算すること、を含む、請求項17に記載の光学検出装置。
【請求項19】
前記計算デバイス(22)は、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)における、ピーク数、標準偏差、分散、変動係数、分散対平均、エネルギ、エントロピー、平均絶対偏差、または中央絶対偏差、またはその処理されたバージョンの1つまたは複数の関数として前記パラメータ値を決定するよう構成される、請求項1から18のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項20】
前記発光デバイス(34)用の制御デバイス(36)をさらに備え、前記制御デバイス(36)は、前記少なくとも1つの時間依存出力信号(OaからOc)のベースラインを所定の値に実質的に維持するように、前記発光デバイス(34)の出力パワーを調整するよう構成される、請求項1から19のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【請求項21】
透明または半透明の材料のチューブ部分を含むチューブを通って流れる流体中の粒子を検出するための方法であって、前記方法は、
ホルダ内に前記チューブ部分を配置すること(501)、
発光デバイスを動作させて、前記ホルダ内に配置されたとき前記チューブ部分の内側の標的体積に照射すること(502)、
少なくとも1つの受光デバイスを動作させて、前記発光デバイスによって照射されたときに前記標的体積から光を受光し、前記受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号を生成すること(503)、および
前記1つまたは複数の時間依存出力信号を処理することによって前記流体中の前記粒子の密度を推定することであって、前記1つまたは複数の時間依存出力信号における時間変動性を示すパラメータ値を決定することを含む推定すること(504)、を含む方法。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一項に記載の光学検出装置を含む、自動腹膜透析のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、流体中の粒子密度の測定に関し、特に、チューブを通して粒子密度を測定するための光学技術に関する。本開示は、例えば、感染または炎症のリスクを評価するために、腹膜透析からの流出液中の白血球の密度を測定するのに特に適しているが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
腹膜の炎症は、腹膜透析(PD)を受けている患者の間で一般的である。感染または炎症(「腹膜炎」)の早期発見は、苦しみや治療の中断を避けるために不可欠である。基本的に、PDを実行するための2つのモダリティがあり、自動化された腹膜透析(APD)と、手動の非自動化された手順である連続携帯型腹膜透析(CAPD)である。CAPDでは、使用済みの透析流体(「流出液」)が集められた流出液バッグを目視検査することで、感染を検出することができる。濁った流出液バッグは腹膜炎の兆候である。曇りは、感染によって引き起こされる白血球(WBC)の存在の増加によって引き起こされる。APDでは、流出液は流出液ラインを介して排出管に直接送られることが多く、かつ目視による検査は不可能である。したがって、胃の痛み等の他の兆候が現れ、かつ腹膜が損傷している可能性がある場合、感染は遅れて検出される。
【0003】
米国特許第6228047号明細書は、流出液ライン上に配置され、かつ光源および光検出器を備える流出液検出器を提案している。透析流体が腹腔から空になったときに流出液が濁っている場合、光検出器への光ビームが拡散し、かつ腹膜炎の発症が示される可能性がある。
【0004】
従来技術は、また、米国特許出願公開第2008/0045884号明細書および米国特許出願公開第2008/0183127号明細書を含み、流出液ラインに設置された専用の透明な測定チャンバを透過するレーザビームから散乱された光の量を測定することによって腹膜炎を検出することを提案している。
【0005】
透明または半透明材料の通常のチューブを通して粒子密度を測定するために適用できる光学技術を提供することが望ましい。しかし、この目的に光学技術を適用するには実際的な障害がある。障害の1つは、チューブの壁が入射光を散乱させ、それによってバックグラウンド信号が発生し、定量的測定が困難になることである。散乱の量は、一見同じように見えるチューブであっても、チューブ間で異なる場合がある。チューブの壁が半透明の素材でできている場合、この散乱は強化される。さらに、チューブの光学特性は、チューブの位置によって異なる場合がある。例えば、チューブは、押し出しプロセスまたはローラー等による製造中に形成される隆起、グレード、ライン、または他のマーキングを示す場合がある。別の例では、チューブの外側が不均一につや消しになっている場合がある。別の障害は、チューブが湾曲した断面形状を有する場合、チューブに出入りする光を屈折させる可能性があることである。この屈折により、チューブの位置がわずかにずれただけで、検出される信号が大きく変化する可能性がある。全体として、通常のチューブで粒子密度を測定するために適用される光学技術は、光学技術が慎重に校正されていない限り、再現性と信頼性の欠如に悩まされる可能性が高く、時間がかかり、かつオペレータの介入が必要になる場合がある。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の1つまたは複数の制限を少なくとも部分的に克服することが目的である。
【0007】
1つの目的は、チューブを通る流体中の粒子密度を測定するための光学技術を提供することである。
【0008】
別の目的は、チューブの特性の変動に対する耐性が改善されたそのような光学技術を提供することである。
【0009】
さらなる目的は、オペレータの介入を最小限に抑える必要があるそのような光学技術を提供することである。
【0010】
さらに別の目的は、腹膜炎の検出に使用するための光学技術を提供することである。
【0011】
これらの目的の1つまたは複数、ならびに以下の説明から明らかになり得るさらなる目的は、独立請求項による光学検出装置および方法によって少なくとも部分的に達成され、その実施形態は従属請求項によって定義される。
【0012】
第1の態様は、透明または半透明材料のチューブ部分を含むチューブを通って流れる流体中の粒子を検出するための光学検出装置である。光学検出装置は、チューブ部分用のホルダと、ホルダ内に配置されると、チューブ部分の内側の標的体積を照射するように構成された発光デバイスと、発光デバイスによって照射されたときに標的体積から光を受光し、かつ受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号を生成するように構成された少なくとも1つの受光デバイスと、を備えている。光学検出装置は、流体中の粒子の密度を推定するために、1つまたは複数の時間依存出力信号を処理するように構成された計算デバイスをさらに備え、計算デバイスは、密度を推定するために、1つまたは複数の時間依存出力信号の時間変動性を示すパラメータ値を決定するように構成されている。
【0013】
第2の態様は、透明または半透明材料のチューブ部分を含むチューブを通って流れる流体中の粒子を検出するための方法である。この方法は、チューブ部分をホルダに配置すること、発光デバイスを操作して、ホルダ内に配置されたチューブ部分の内側の標的体積を照射すること、少なくとも1つの受光デバイスを操作して、発光デバイスによって照射されたときに標的体積から光を受光して、受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号を生成すること、および1つまたは複数の時間依存出力信号を処理することによって流体中の粒子の密度を推定することを備え、推定することは、1つまたは複数の時間依存出力信号における時間変動を示すパラメータ値を決定することを含む。
【0014】
第3の態様は、第1の態様の光学検出装置を含む自動腹膜透析のための装置である。
【0015】
前述の態様は、少なくとも、1マイクロリットル当たり1000から2000個未満の粒子のような低い粒子密度について、それぞれの時間依存出力信号の時間変動性が流体中の粒子密度の増加とともに増加するという驚くべき発見に基づいている。時間変動性は、チューブの光学特性の変動に対して比較的ロバストであることがさらに判明しており、それによって校正および関連するオペレータの介入の必要性が軽減される。
【0016】
低密度での有用性は、時間変動性が白血球に匹敵するサイズの粒子の粒子密度を表すという発見と相まって、PD治療からの流出液中の感染または炎症、例えば腹膜炎の兆候の検出に第1および第2の態様を適用可能にする。
【0017】
さらに他の目的および態様、ならびに実施形態、特徴、利点、および技術的効果は、以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、および図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
ここで、添付の図面を参照して実施形態をより詳細に説明する。
【0019】
図1図1は、光学検出装置を含む腹膜透析のための例示的な構成の側面図である。
【0020】
図2図2は、例示的な光学検出装置の部分断面側面図である。
【0021】
図3A図3Aは、例示的な光学検出装置における構成の断面図である。
図3B図3Bは、光学検出装置によって生成された光ビームを通過する粒子を示す。
【0022】
図4図4は、チューブ部分と係合している例示的なホルダの側面図である。
【0023】
図5図5は、例示的な光学的検出方法のフローチャートである。
【0024】
図6図6は、光学検出装置における例示的な分析デバイスのブロック図である。
【0025】
図7A図7Aは、それぞれ0、100および1000個の白血球/マイクロリットルの密度を有する流体について測定された透過光強度のグラフである。
図7B図7Bは、それぞれ0、100および1000個の白血球/マイクロリットルの密度を有する流体について測定された透過光強度のグラフである。
図7C図7Cは、それぞれ0、100および1000個の白血球/マイクロリットルの密度を有する流体について測定された透過光強度のグラフである。
【0026】
図8図8は、粒子密度の関数として、二乗MADによって与えられる、測定された時間変動性のグラフである。
【0027】
図9A図9Aは、図3Aの構成によって生成される出力信号の流量の関数として、MADによって与えられる時間変動性のグラフである。
図9B図9Bは、図3Aの構成によって生成される出力信号の流量の関数として、MADによって与えられる時間変動性のグラフである。
図9C図9Cは、図3Aの構成によって生成される出力信号の流量の関数として、MADによって与えられる時間変動性のグラフである。
【0028】
図10図10は、0、50および100個の白血球/マイクロリットルの密度を有する流体を含む30個の異なるチューブを通して測定された、MADによって与えられる時間的変動の分布のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここでは、全てではないがいくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下で実施形態をより十分に説明する。実際、本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化することができ、および本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用される法的要件を満たすことができるように提供される。
【0030】
また、可能であれば、本明細書に記載および/または企図される実施形態のいずれかの利点、特徴、機能、デバイス、および/または操作上の態様のいずれも、本明細書に記載および/または企図される他の実施形態のいずれにも含まれ得ること、および/またはその逆が理解されるであろう。さらに、可能であれば、本明細書で単数形で表現された用語は、別段の明示的な記載がない限り、複数形および/またはその逆も含むことを意味する。本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」は「1つまたは複数」を意味し、かつ、これらの語句は交換可能であることを意図している。したがって、用語「a」および/または「an」は、語句「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」も本明細書で使用されているが、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味するものとする。本明細書で使用される場合、表現言語または必要な含意のために文脈が別の方法を必要とする場合を除き、「含む(comprise)」という言葉、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」等のバリエーションは、包括的な意味で使用され、ただし、さまざまな実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。用語「および/または」は、関連するリスト項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含む。
【0031】
第1、第2等の用語は、本明細書では様々な要素を説明するために使用される場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことをさらに理解されたい。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。
【0032】
周知の機能または構造は、簡潔さおよび/または明確さのために詳細に説明されていない場合がある。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0033】
同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0034】
実施形態は、自動腹膜透析(「APD」)治療に関連する展開を参照して説明される。腹膜透析(PD)では、透析流体が患者の腹腔に注入される。この空洞は、高度に血管化された腹膜(「腹膜」)によって裏打ちされる。物質は、腹膜を通過して透析流体に拡散することにより、患者の血液から除去される。余分な流体(水)は、高張透析流体によって引き起こされる浸透によっても除去される。自動腹膜透析(「APD」)は、例えば患者が眠っている間に、充填、滞留、および排液段階を含む1つまたは複数の治療サイクルを自動的に実行するように動作可能なAPD装置によって実行される。APD装置は、移植されたカテーテル、透析流体の供給源またはバッグ、および流体ドレインに流体的に接続される。APD装置は、新しい透析流体を供給源からカテーテルを通して患者の腹腔に送り込み、および透析流体を腔内に滞留させて老廃物、毒素、および余分な水分を移動させるように操作される。次に、APD装置を操作して、使用済み透析流体を腹腔からカテーテルを介してドレインに送り出す。
【0035】
図1は、腹膜透析のための構成11の概略立面図である。構成11は、一般に「APDサイクラー」として知られるAPD装置11aを備える。この構成は、APDサイクラー11aに取り付けられた使い捨てユニット11bをさらに備える。APDサイクラー11aは、使い捨てユニット11bの油圧回路内で流体を適切に移動させるために、制御システム、センサ、およびアクチュエータの組み合わせを備える。図1には示されていないが、APDサイクラー11aは、データの入力/出力のためのユーザインタフェースも含み得る。使い捨てユニット11bは、カセット12と、カセット12に接続されたチューブのセット(「チューブセット」)とを含む。図示の例では、チューブセットは、治療流体(「透析流体」)を保持するように構成された容器13で終わる容器ライン14を含む。容器13は、例えば、APDサイクラー11aの専用トレイに配置される折り畳み式バッグの形態であってもよい。容器13は、透析流体の既製のバッグとして配送されてもよく、または容器13は、例えば、1つまたは複数の濃縮物を水と混合することによって、APDサイクラー11aまたは別の装置(図示せず)によってオンラインで調製された透析流体で満たされてもよい。APDサイクラー11aは、患者に供給される前に治療流体を加熱するためのヒータ(図示せず)を備えることができる。チューブセットは、患者に埋め込まれたカテーテル(図示せず)に接続するための患者ライン15と、使用済み治療流体(「排出液」)をドレイン(図示せず)、例えば容器またはシンクに分配するための排液ライン16と、をさらに備える。動作中、構成11は、APDサイクラー11a内のポンピング機構がカセット12を作動させて容器13からライン14、15を通して患者に治療流体をポンピングする充填段階と、治療流体が患者の腹腔内に残される滞留段階と、使用済みの治療流体が患者ライン排液ライン15、16を通ってドレインにポンプで送られる排液段階とを実行する。
【0036】
背景のセクションで説明したように、PDの患者は、留置カテーテルを介して侵入した細菌によって引き起こされる腹腔内の感染または炎症を引き寄せる高いリスクにさらされている。多くの場合、そのような感染または炎症は腹膜に位置し、「腹膜炎」と呼ばれる。発症した腹膜炎は、患者が発熱、びまん性腹痛、および吐き気を経験することによって明らかになる場合がある。腹膜炎は医療上の緊急事態であり、PD患者の罹患率と死亡率を減らすには、早期発見と治療が不可欠である。さらに、腹膜炎のエピソードが繰り返されると、血管増殖および間質性線維症の一因となり、その後の限外濾過能力の喪失および治療の失敗につながる可能性がある。PDでは、排液中の白血球(WBC)の密度を抽出して分析することにより、腹膜炎を検出できる。確立された慣例によれば、PDの排液中のWBC数が100細胞/μLを超える場合は、腹膜炎の徴候と見なされ、患者に抗生物質が投与される可能性がある。
【0037】
本開示は、排液のサンプルを抽出および分析する必要なく、PDを受けている患者における腹膜炎の早期検出を可能にする技術に関する。これは、排液が流れるチューブ部分に取り付けられたときに、排液中のWBC数を表す信号を生成するように動作可能な光学検出装置の使用によって達成される。したがって、本発明の実施形態は、WBC数の遠隔で非侵入的な決定を可能にする。以下の説明から理解されるように、光学検出装置は、WBCの検出に限定されず、チューブを通って流れる流体中の粒子の密度(「粒子密度」)の決定に一般的に適用可能である。本明細書で使用される「密度」は、単位体積当たりの数を指し、濃度と同等であり得る。
【0038】
図1において、光学検出装置は参照番号20で表され、排液ライン16上に取り付けられた測定デバイス21と、WBC密度を表すパラメータ値を決定するための測定デバイス21の1つまたは複数の出力信号を受信して処理するように構成された分析デバイス22とを備える。測定および分析デバイス21、22が単一のユニットに統合されることが考えられる。別の変形例では、測定デバイス21は、その出力信号を分析デバイス22に無線で送信するように構成され、したがって、分析デバイス22は、測定デバイス21から離れて配置され得る。さらなる変形では、測定デバイス21および/または分析デバイスは、APDサイクラー11aに含まれる。
【0039】
測定デバイス21は、透明または少なくとも半透明の「チューブ部分」に取り付けられる。チューブ部分は、図1に示されるように、排液ライン16、または患者ライン15に含まれ得る。本明細書で使用するとき、「透明な」材料は、物体が材料を通してはっきりと見えるように光をほとんど散乱させずに透過させる特性を有し、および「半透明の」材料は、物体が材料を通してはっきりと見えないように光を拡散させながら光の通過を可能とする特性を有する。通常、使い捨てのチューブ11bは、透明または半透明の素材でできている。したがって、チューブ部分は、排液ライン16または患者ライン15の一体部分であってもよい。しかしながら、ライン16/15が不透明な材料で作られている場合、チューブ部分は、ライン16/15に接合される透明または半透明材料の別個のチューブであってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、チューブ部分は、丸みを帯びた、または少なくとも非長方形の断面を有し、かつ柔軟な材料で作られる。しかしながら、チューブ部分が、測定デバイス21による測定を容易にするためにライン16/15に設置される特殊なキャビティまたはチャンバであることも考えられる。そのような特殊なキャビティは、透明材料の平面光学面を有するキュベットであるか、またはキュベットを含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、光学検出デバイス20は、APDサイクラー11aと通信するように構成され得る。例えば、光学検出デバイス20は、APDサイクラー11aから、排液段階の開始を示す信号を受信し、それにより、排液ライン16内に排液が存在することを示すことができる。代替的または追加的に、APDサイクラー11aからの信号は、光学検出デバイス20をトリガーして粒子密度を測定することができる。また、光学検出デバイス20が測定結果を示す信号をAPDサイクラー11aに送信し、APDサイクラー11aがフィードバックユニットを作動させて使用者に知らせることも考えられる。
【0041】
以下の議論は、チューブ部分が、例えば柔軟で透明/半透明であり、丸みを帯びた断面を有することにより、使い捨て11bに含まれる通常のチューブと同じ特性を有するという仮定に基づいている。表記を簡単にするために、チューブ部分は、以下、「チューブ16」と呼ばれる。
【0042】
以下で詳細に説明するように、測定デバイス21は、チューブ16を通って流れる排液を照らすことによって、および排液によって透過および/または散乱される光を検出することによって、その出力信号を生成するように構成される。本出願人は、1)チューブによる光散乱は、出力信号に重大かつ未知の障害を導入する可能性があること、2)光学特性、したがって出力信号が、チューブ上の異なる位置間および異なるチューブ間で異なる場合があること、3)チューブの略湾曲した断面形状が、シリンドリカルレンズとしてチューブに入射する光および出射する光を屈折させることによって、検出装置の位置の精度と整合性が厳しく要求されること、4)チューブの形状が時間の経過とともに変化する可能性があり、出力信号にドリフトが生じる可能性があること、および5)排液に気泡が存在すると、出力信号に重大かつ未知の障害を導入する可能性があることを含むがこれらに限定されない、このアプローチに伴ういくつかの固有の問題を特定した。これらの問題の多くは、測定デバイス21を注意深く、可能であれば頻繁に校正することで克服できる。しかしながら、そのような校正は、配備を困難にし、かつ時間を浪費し、および光学検出装置20を訓練された人員が設置して操作することを必要とする場合がある。
【0043】
本明細書で説明する実施形態は、校正の必要性を軽減するか、または排除さえする異なるアプローチを取る。このアプローチを詳細に説明する前に、光学検出装置20の一例を、図2の立面図を参照して説明する。測定デバイス21は、破線で輪郭が描かれており、およびホルダ30、発光デバイス34、および光検出システム35を含み、これらは共通のベースプレートまたはプラットフォーム31上に取り付けられる。共通プラットフォーム31の提供は、ホルダ30、発光デバイス34および光検出システム35の間の適切な位置合わせを伴う測定デバイス21の組み立てを容易にする。プラットフォーム31は、また、機械的衝撃および応力に対するデバイス21のロバスト性を改善する。ホルダ30は、チューブ16(破線で概略的に示される)を受け入れるためのスロットを画定する第1および第2の壁(「保持要素」)32、33を備える。壁32、33の間の間隔は、典型的には約5から15mmであるチューブの外径以下であるため、チューブ16は、ホルダ30内に圧搾、摩擦保持、または他の方法で固定される。それぞれの壁32、33の少なくとも一部は、透明または半透明である。壁32、33の断面を示す図2の例では、それぞれの壁32、33は、貫通孔または開口部32a、33aを画定する。いくつかの実施形態では、透明/半透明の窓を開口部32a、33aに配置することができる。
【0044】
発光デバイス34は、紫外、可視、または赤外波長範囲の光ビーム300を放出するように構成された光源34aを備える。光源34は、発光ダイオード(FED)、またはレーザダイオード等の小型レーザデバイスを備えることができる。いくつかの実施形態では、発光デバイス34は、ビーム形成光学系34bをさらに含み、ビーム形成光学系34bは、ホルダ30の内側、例えば、壁32、33の間の公称位置の途中に光ビーム300を集束させるように配置され得る。代替的または追加的に、ビーム形成光学系34bは、光ビーム300の所定の横ビームプロファイルを達成するように構成され得る。示されるように、発光デバイス34は、光ビーム300が開口部32a、32bを通過するように、壁32、33と位置合わせされる。それにより、光ビーム300は、チューブ16内の標的体積302を画定する。図2において、デカルト座標系が壁32、33の間の中心に配置され、z軸は光ビーム300に沿って伸び、y軸は光ビーム300とチューブ16の長手方向の広がりの両方に対して横方向に伸び、およびx軸は、チューブ16の長手方向の広がりに平行に伸びる。
【0045】
光検出システム35は、放出された光に応答する光検出デバイス(「検出器」)35aを備える。図示の例では、検出器35aは、透過光を検出するように配置され、したがって、光ビーム300と位置合わせされる。いくつかの実施形態(図示せず)では、光検出システム35は、入射光を検出器35aに向けるための検出光学系を備えることができる。光検出システム35は、検出器35a上の入射光の量を表す出力信号を生成するように動作可能である。出力信号は、時変であり、およびさまざまな時間における入射光の瞬間的な量を表す信号値を含む。図示の例では、測定デバイス21は、検出器35aの出力信号に基づいて発光デバイス34のパワー制御信号を生成するように構成されたパワーコントローラ36をさらに備える。
【0046】
測定デバイス21の全体的な動作は、発光デバイス34のための制御信号C1および光検出システム35のための制御信号C2を生成するように構成され得る制御ユニット38によって制御される。制御信号C1、C2は、光源34aおよび検出器35aの起動をそれぞれ制御することができる。
【0047】
図2の例では、分析デバイス22はフィードバックユニット23に接続され、フィードバックユニット23は、患者および/または介護者に視覚的、聴覚的、または触覚的なフィードバックを生成するように動作可能であり得る。したがって、フィードバックユニット23は、ディスプレイ、インジケータランプ、スピーカ、ブザー、ビーパー、バイブレータ等の1つまたは複数を備えることができる。分析デバイス22は、その分析の結果をフィードバックデバイス23上に、例えば、WBC数、潜在的な感染または炎症の指標などを表す1つまたは複数のパラメータ値として提示するように構成され得る。フィードバックユニット23は、APDサイクラー11aに含まれていても含まれていなくてもよい。
【0048】
光学検出装置20の展開および動作は、図5のフローチャートによって表される例示的な方法500を参照して説明される。方法500は、チューブ16の一部をホルダ30に配置するステップ501を含む。ステップ500は、PD治療セッション中のいつでも、またはその前に、患者または介護者によって実行され得る。ステップ502において、発光デバイス34は、光ビーム300を生成することによって、チューブ16内の標的体積302を照射するように操作される。ステップ503において、光検出装置35は、標的体積が光ビーム300によって照明されている間、標的体積302から光を受け取るように操作される。ステップ503の結果として、光検出システム35は、光検出システム35が標的体積302から受け取った光の量を時間の関数として表す時間依存出力信号を生成する。ステップ502から503は、適切なタイミングで制御信号C1、C2を生成する制御ユニット38によって実行されてもよい。
【0049】
ステップ504では、出力信号の時間変動性(TV)を表すTVパラメータの現在値を決定するために、時間依存出力信号が処理される。本明細書で使用される「時間変動性」は、信号の経時的な変動の大きさ、具体的には、標的体積302の照明から生じる変動の大きさを示す。TVパラメータは、出力信号の時間セグメントの信号値に基づいて計算される。ステップ504は、チューブ16を通って流れる流体中の粒子密度を推定するように見えるかもしれないのは、TVパラメータが粒子密度を表すことが分かっているからである(下記参照)。いくつかの実施形態では、ステップ504は、現在の値を粒子密度の推定値として使用できる。他の実施形態では、ステップ504は、例えば所定の関係(図8参照)の使用によって、現在値を実際の密度値に変換することができる。ステップ504の後に、例えば、感染/炎症の検出のための1つ以上の閾値レベルに関連して、推定粒子密度を評価するステップ505が続き得る。評価の結果に基づいて、ステップ505はフィードバックユニット23(図2)を作動させてアラートを生成することができる。代替的または追加的に、ステップ505は、フィードバックユニット23を操作して、推定された粒子密度を患者または介護者に提示することができる。代替的または追加的に、ステップ505は、推定された密度をローカルまたはリモートのコンピュータのメモリに格納することができる。ステップ504から505は、図2の分析デバイス22によって実行され得る。図1から2の文脈において、検出された粒子は、主にWBCを含み、および場合によっては気泡を含む。
【0050】
例示的な方法500は、かなりの実験努力の結果である。実験により、チューブ内の移動流体内の標的体積からの透過光または散乱光を表す出力信号の時間変動性と、移動流体内の粒子密度との関係が明らかになった。この現象の1つの説明は、標的体積302に入る個々の粒子が、出力信号が透過光を表す場合は減少の形で出力信号に瞬間的な信号応答を生じさせ、かつ出力信号が散乱光を表す場合は瞬間的に増加を生じさせることの可能性がある。したがって、検出技術(透過/散乱)とは無関係に、粒子が標的体積302を通過すると、出力信号にピークが生じる。粒子の密度が増加すると、単位時間あたりの出力信号のピーク数および/またはピークの大きさが増加し、出力信号の時間変動性の増加に対応する。例示的な方法500は、少なくとも、粒子密度が2000、1000、500、または200粒子/マイクロリットル(μL)未満の流体の密度評価に役に立つ。WBC数が1マイクロリットル当たり100以上である場合、PD患者における感染/炎症が既に推測されるので、方法500はPD排液中のWBCの検出に適していることが理解される。例示的な方法500は、光ビーム302を大幅に減衰させ、それによってピークが信号ノイズに埋もれる可能性がある、非常に濁った流体の測定にはあまり適していないと現在考えられる。
【0051】
例示的な方法500は、50、40、30、または20マイクロメートル未満の平均サイズを有する粒子を有する流体における測定に少なくとも有用である。WBCは約10マイクロメートルの平均サイズを有するので、方法500はPD排液中のWBCの検出に適している。
【0052】
例示的な方法500は、例えばチューブの外側の表面構造またはチューブ壁の材料の不規則性によって、チュー部自体によって引き起こされる光散乱に対して比較的鈍感であることが分かった。チューブによるそのような光散乱は、主に出力信号のベースラインに寄与し、およびチューブ上の異なる位置または異なるチューブ間の光散乱特性の変動は、主にベースラインをシフトするが、ベースラインに関連する時間的変動性は、そのようなバリエーションによってほとんど影響を受けない。それにより、方法500は比較的ロバストであり、かつ校正なしで展開することができる。
【0053】
図7Aから7Cは、例えば図2に示されるように、APD配置(図1の11参照)からの排液のWBCの異なる密度について、透過光を受信するように配置された検出器によって生成される出力信号の例を示す。図2に示す。出力信号の各信号値は、「積分期間」とも呼ばれる検出期間中に検出器によって検出された光の量を表す。図7Aは、0細胞/μLのWBC数を有する流体について生成される。ご覧のように、出力信号は一時的な変動が少なく、かつ時間の経過とともに安定したベースラインを有している。図7Bは、100細胞/μLのWBC数を有する流体について生成される。時間変動性は増大したが、信号のベースラインは安定したままであり、かつ実質的に図7Aと同じである。図7Cは、1000細胞/μLのWBC数を有する流体について生成される。時間変動性はさらに増加し、かつ信号のベースラインは時間の経過とともに安定したままである。また、ベースラインのレベルが図7Bに比べて減少していることが分かり、これは、粒子密度が非常に大きく、光ビームが著しく減衰していることを示している。図7Aから7Cから、測定時間中の出力信号の時間変動性が粒子密度を表していることは明らかである。このような測定時間ΔTの一例を図7Aに示す。測定時間は、排液段階の全部または一部にまたがってもよく、およびTVパラメータは、1つまたは複数の測定期間を表すために生成されてもよい。例えば、TVパラメータは、排液段階の間の1つまたは複数の測定期間内の出力信号の時間変動性の平均として計算され得る。
【0054】
さらなる実験により、測定デバイス21の様々な機能的および構造的変更が明らかになり、粒子密度の推定を改善するのに役立ち得る。実施形態として表されるこれらの変更は、以下に記載される。
【0055】
いくつかの実施形態では、光源34aは、実質的にコリメートされたビームでコヒーレントな単色光を放出するレーザである。非コヒーレントな光源と比較して、レーザはより高い放射輝度または輝度を有し、かつ標的体積302内の粒子との相互作用により多くのエネルギを可能にする。レーザビームは、明確に定義された標的体積302を提供する。標的体積302が小さい場合、例えばチューブ16内にある場合、出力信号において十分な信号応答を達成することは難しいかもしれない。これは、レーザ光の高い放射輝度によって促進される場合がある。
【0056】
いくつかの実施形態では、レーザは、流体中の粒子に、例えば蛍光またはリン光のようなフォトルミネッセンスによって光を放出させる波長で光を放出することができる。受光システム35によって放出させられた光を検出することによって、本明細書に記載の技術を適用して、流体中の特定の種類の粒子の密度を決定することができる。本開示の文脈において、そのような放射光は「散乱」という用語に包含される。
【0057】
いくつかの実施形態では、レーザは、粒子が異なる吸収特性を示すことが知られている2つ以上の波長で光を放出することができる。受光システム35によって2つ以上の波長で透過光を検出することによって、本明細書に記載の技術を適用して、流体中の特定の種類の粒子の密度を決定することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、発光デバイス34は、パルス光によって標的体積302を照射するように構成される。パルス光の使用は、光検出システム35が光パルスの間および光パルスの間でそれぞれ光を検出するように動作される場合、測定に対する周囲光の影響を抑制することを可能にする。これにより、光パルス間に検出された光は周囲光を表し、かつ光パルス中に検出された光から差し引かれ、周囲光の影響を実質的に除去することができる。そのような減算は、光検出システム35または分析デバイス22によって実行され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、発光デバイス34は、ホルダ30に取り付けられたときに、チューブ16のほぼ中心に焦点を合わせた光ビーム300を生成するように構成される(図2参照)。光ビームを集束させると、チューブ16内の光ビームの放射輝度が増加する。さらに、光ビームを集束させることによって、標的体積302の横方向の寸法または断面積を、検出される粒子に関連して設定することができる。さらに、光を集束することにより、チューブ16に入るときの光ビームの断面積300が減少し、かつ上述のレンズ効果の影響が緩和される。
【0060】
いくつかの実施形態では、発光デバイス34は、標的体積302を定義して、個々の粒子の断面積の10、10、10、10、または10倍未満の横断面積を持つように構成されている。出力信号のピークの大きさは、面積比の減少とともに増加する可能性が高いため、標的体積302の横断面積が減少するにつれて性能が改善されると現在考えられている。ただし、許容できる性能は、少なくとも標的体積と粒子の面積比が10の場合に達成される。標的体積302の断面積は、チューブ16内のその最大横方向寸法を指す。横方向寸法は、FWHM(半値全幅)等の任意の従来の尺度によって与えることができる。例えば、図7Aから7Cの出力信号は、2.3mm(図2のx方向)および1.3mm(図2のy方向)の横方向寸法を有する集束レーザビームに対して生成される。チューブの内面(図2)では、これらの寸法はわずかに大きく、約2.5mm×1.5mmである。
【0061】
いくつかの実施形態では、光検出システム35は、一連の検出期間中に入射光を検出するように操作され、各検出期間は、出力信号の信号値をもたらす。検出期間の開始間の最小時間は、チューブ16を通る流体の予想されるまたは実際の流量に関連して設定され得る。速度Vxで標的体積302を横断する粒子303を示す図3Bを参照されたい。速度Vxは、流量Fとチューブ16の断面積Aとの間の比F/Aによってほぼ与えられる。標的体積302は、横幅Wxを有する。検出期間の1つにおいて標的ゾーン302内で1つの同じ粒子のみが検出されることを確実にするために、最小時間はWx/Vx、すなわち、W×・A/Fを超えるべきである。検出期間の開始間の実際の時間は、最小時間を超えるように設定できるが、例えば、TVパラメータの十分な精度を達成するため、事前に決められた測定期間中に十分な数の信号値を生成するのに十分小さくする(図7A中のΔT参照)。
【0062】
いくつかの実施形態では、例えば、図2に例示されるように、光検出システム35は、標的体積302を透過した光を受け取り、かつ透過光を表す出力信号を生成するために、発光デバイス34と位置合わせされた検出器35aを備える。透過光の検出は実装が簡単で、明確な出力信号が得られる。
【0063】
いくつかの実施形態では、透過光を検出する代わりに、または透過光を検出することに加えて、光検出システムは、標的体積から散乱された光を受け取り、かつ散乱光の量を表す第2の出力信号を生成するように配置された検出器を備えてもよい。一例を図3に示し、図3Aは、3つの検出器35aから35cを含む測定デバイス21の断面図である。第1の検出器35aは、透過光を検出し、かつ出力信号Oaを生成するように配置される。第2および第3の検出器35b、35cは、散乱光を検出し、かつ出力信号Ob、Ocを生成するように配置される。図3に破線矢印で示すように、光は、光ビーム300と干渉する粒子303によって散乱される。透過光の検出と比較して、散乱光の検出は検出器の位置の変化の影響を受けにくいため、機械的衝撃に対してより堅牢である可能性がある。
【0064】
例えば図3Aに示すように、散乱光を検出するために2つ以上の検出器を使用することは、粒子の存在に関する対応する情報を含む利用可能な出力信号の数を増加させるという利点を有する。ステップ504は、2つ以上の出力信号を処理してTVパラメータを生成することができ、およびTVパラメータの精度は、出力信号の数を増やすことで改善できることが理解される。同様に、図3Aに示すように、散乱光および透過光を検出するために2つ以上の検出器を使用することは、等しい利点を提供できる。
【0065】
透過光を検出するための第1の検出器と、散乱光を検出するための第2の検出器とを備える実施形態では、第2の検出器は、第1の検出器に対してチューブの長手方向の広がりに沿って変位することができる。第1および第2の検出器からの出力信号を組み合わせて処理することにより、チューブのレンズ効果の影響を軽減することができる。そのような実施形態の1つが図3Aに例示されており、検出器35bおよび35cは、チューブ16の延長に沿って検出器35aから変位される。チューブ16のレンズ効果は、主に、チューブ16の長手方向の広がりを横切る平面、すなわち、図3Aの図面平面に垂直な平面内で光ビーム300の広がりを引き起こすことが理解される。検出器35b、35cはこの平面の外側に配置されるので、それらの出力信号はレンズ効果によってほとんど影響を受けない。
【0066】
いくつかの実施形態では、チューブは、チューブのレンズ効果を軽減するために、平らな形状に変形され得る。このような実施形態の一例が図4に示されており、図4は、チューブ16(断面で示される)が取り付けられたホルダ30の側面図であり、チューブ16は、流体が流れる内部チャネル16cを画定しながら平らにされている。図示の例では、ホルダ30は、チューブ16を変形させて、間隔を空けて実質的に平面である第1および第2の壁部分16a、16bを画定するように構成される。図4には示されていないが、第1の壁部分16aは、発光デバイス34に面し、および第2の壁部分16bは、光検出システム35に面する。発光デバイス34および光検出システム35を壁部分16a、16bと位置合わせすることによって、チューブのレンズ効果が低減されるか、または排除されることさえあることが理解される。光ビーム300の屈折をさらに減少させるために、ホルダ30は、例えば図4に示すように、壁部分16a、16bを実質的に平行に配置するように構成することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ホルダ30の壁32、33は、例えば図4に示されるように、チューブの平らな形状を画定するように構成される。壁32、33は、チューブ16の横方向外径よりも小さい横方向スロット(「取り付けスペース」)を画定するように固定されて、チューブ16がスロットに押し込まれると、平らな形状を達成する。あるいは、図4に示すように、壁32、33の少なくとも1つがチューブ16の挿入のためにスロットを拡張し、かつスロットを収縮させ、それによって挿入されたチューブ16を変形させるために移動可能であり得る。図4の例では、壁33は、両頭矢印によって示されるように、プラットフォーム31に対して平行に移動可能である。さらに、ホルダ30は、壁32に向かって壁33に付勢力を加える付勢機構40を備える。図示の例では、壁32、33および付勢機構40はプレート31a上に取り付けられ、プレート31aはプラットフォーム31に固定される。付勢機構40は、壁33の対応する穴42内に延びるように配置された案内ピン41と、案内ピン41の周りに配置されて付勢力を提供するばね43とを備える。壁33は、プレート31a上をスライドしてストッパ44と係合するように配置され、付勢力を受ける。
【0068】
いくつかの実施形態では、壁32、33は、例えば図2に示されるように、光ビーム300のためのスルーホールを画定する。これは、光検出システム35によって受け取られる迷光の量を減少させ得る。他の実施形態では、ホルダ30は、図3に示されるように、チューブ16と係合して第1および第2の壁部分16a、16bを画定するための透明/半透明の窓32a、33aを備える。これは、壁部分16a、16bの実質的に平面形状の達成を促進し、また平面形状を経時的に安定させることが分かった。
【0069】
図面には示されていないが、ホルダ30は、チューブ16の設置後に壁32、33に固定され得る、例えば蓋の形態の上部閉鎖部を備え得る。これは、例えばチューブ16が壁32、33の間のスロットから滑り落ちるのを防止するために、経時的にチューブ16の位置を安定させるのに役立ち得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、例えば図3Aに示すように、発光デバイス34は、光ビーム300がチューブ16の長手方向の広がりに対して実質的に垂直になるように配置される。これは、発光デバイス34および光検出システム35がホルダ30と単純に位置合わせされ得るので、測定デバイス21の組み立てを容易にし得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、測定デバイス21は、発光デバイス34用の制御デバイス(「パワーコントローラ」)36をさらに含み、パワーコントローラ36は、事前に定義された値での出力信号のベースラインを実質的に維持するように発光デバイス34の出力パワーを調整するように構成される。ベースラインの安定化が大幅に性能を改善することがわかっている。ベースラインがチューブによって引き起こされる光散乱を含むことを想起すると、発光デバイス34の出力パワーの調整によるベースラインの安定化は、形状、表面構造、光学特性等のチューブの特性における空間的および/または時間的変動性の影響を打ち消すことが理解される。ベースラインの安定化により、効果的に校正不要になる。
【0072】
パワーコントローラ36は、ベースラインを安定させるために、P、PI、またはPID等の任意の形式のフィードバック制御を実施することができる。このフィードバック制御において、パワーコントローラ26は、現在のベースライン値を取得し、かつフィードバックループを操作して、現在のベースライン値とベースラインの設定値との間の差を最小化することができる。現在のベースライン値は、出力シグナルの時間ウィンドウ内の平均値、中央値、最大値、または最小値として計算できる。実装に応じて、パワー検出器36は、出力信号における現在のベースライン値を計算することができるか(図2参照)、またはそうでなければ、例えば分析デバイス22から現在のベースライン値を取得することができる。
【0073】
パワーコントローラ36は、測定期間の開始時に、または測定期間を通して連続的または断続的に、発光デバイス34の出力パワーを調整するように構成され得る(図7AのΔT参照)。
【0074】
図6は、例示的な分析デバイス22のブロック図である。図6では、測定デバイス21からの時間依存出力信号はOxで示され、かつ例えば、図3Aの信号OaからOcの1つまたは複数に対応し得る。図示の例では、分析デバイス22は、信号Oxを受信するように構成された入力ブロック(「モジュール」)61を備える。前処理ブロック62は、Oxに作用して、対応する時間依存の前処理信号PPxを生成するように構成される。パラメータ計算ブロック63は、例えば図5のステップ504に従って、PPxを処理して、TVパラメータTVPxの1つまたは複数の値を生成するように構成される。Oxが2つ以上の出力信号を含む場合、前処理ブロック63は、それぞれの出力信号についてのTVPx、または出力信号についての集約されたTVPxを生成することができる。後処理ブロック64は、図5のステップ505を実行するように構成される。例えば、ブロック64は、感染/炎症の検出のためにTVPxを評価し、それに基づいて、フィードバックユニット23(図2)に制御信号を選択的に提供するように構成され得る。
【0075】
さらなる実験により、分析デバイス22の様々な機能的および構造的変更が明らかになり、粒子密度の推定を改善するのに役立ち得る。実施形態として表されるこれらの変更は、以下に記載される。
【0076】
いくつかの実施形態では、前処理ブロック62は、PPxを生成するときにOxのハイパス(HP)フィルタリングを実行するように構成される。HPフィルタリングは、時間の経過に伴うOxのベースラインのドリフトの影響を軽減する可能性がある。このようなドリフトは、チューブ16がホルダ30によって、例えば図4に示すように変形されたときに生じ得る。チューブ16が元の円筒形状から平らな形状に適応するのにいくらかの時間がかかる可能性があり、およびこの適応はOxのベースラインにドリフトを引き起こす可能性があることが分かっている。適応には1時間以上かかる場合があり、都合悪く測定開始が遅れる場合がある。この遅延は、HPフィルタリングを実行してOxのドリフトを抑制することで克服できる。
【0077】
カイザーウィンドウフィルタ、最小二乗フィルタ、および等リップルフィルタ等の有限インパルス応答(FIR)フィルタ、またはバターワースフィルタ、チェビシェフフィルタ、および楕円フィルタ等のIIR(無限インパルス応答)フィルタを含むがこれらに限定されない任意の種類のHPフィルタを使用することができる。非限定的な一例では、HPフィルタのカットオフ周波数は約1Hzであり得る。
【0078】
従来のHPフィルタは、大きな信号変化の後にフィルタリングされた信号にリンギングを導入する傾向があるため、Oxが標的体積に入る粒子に対応する多数のピーク(信号変化)を潜在的に含むことを想起して、前処理ブロック62での使用にはあまり適していない可能性がある。
【0079】
リンギングのリスクを回避する一実施形態では、前処理ブロック62によって実行されるHPフィルタリングは、Oxの時間エンベロープを決定することと、時間エンベロープとOxとの間の差信号を計算することとを含み、その後、差信号からPPxが生成される。差分信号は、Oxと時間エンベロープとを時間整合することによって、および時間エンベロープの値とOxの対応する値との間の差を計算することによって計算され得る。Oxが散乱光を表す場合(図3AのOb、Oc参照)では、Oxのより低い時間エンベロープが計算され、かつOxから差し引かれ、HPフィルタリングされた信号を生成する。Oxが透過光を表す場合(図3A中Oa参照)では、上部時間エンベロープが計算され、およびOxが上部時間エンベロープから差し引かれてもよい。このように、Oxは1回の操作でHPフィルタ処理と反転の両方が行われる。時間エンベロープは、例えば、信号から選択されたピーク値を抽出することによって、または信号に対してヒルベルト変換器を操作することによって、当業者が容易に利用できる任意の従来の信号処理技術によって決定することができる。
【0080】
パラメータ計算ブロック63は、多くの異なる方法でPPx(またはブロック62が省略される場合はOx)からTVPxを計算するように構成され得る。一例では、ブロック63は、測定期間中にPPx/Oxのピーク数をカウントするように構成され得る(図7A中のΔT参照)。時間変動性のそのような尺度は、測定期間中のチューブ16内の流量によって正規化される必要があるかもしれない。さらに、1つの検出期間中に2つ以上の粒子が標的体積302内に存在するかどうかを推測することは困難である場合がある。
【0081】
別の例では、ブロック63は、測定期間中のPPx/Oxのエネルギ量の関数としてTVPxを決定するように構成され得る。エネルギは粒子密度に比例すると考えられる。信号処理では、離散時間信号x(n)のエネルギEは次のように定義でき、Nは測定期間内のサンプル数である。
【0082】
【数1】
【0083】
散乱光と透過光のエネルギは、粒子密度に比例して増加すると考えられる。図7Aから7Cから分かるように、Oxのベースラインは、粒子密度が低い場合、粒子密度とは無関係であり、代わりに、例えばチューブによる散乱の他の条件に依存する。標的体積を通過する粒子から生じるエネルギEは、ベースラインを削除することによって計算でき、例えば、x(n)の平均
によって与えられる。
【0084】
【数2】
【0085】
信号のエネルギは、その長さNに依存する。EをNで割ると、サンプルあたりの平均エネルギの測定値が得られ、この場合、信号の分散σと同じである。したがって、別の例では、ブロック63は、分散、または、信号の標準偏差、変動係数、または分散対平均等の関連尺度の関数としてTVPxを決定するように構成され得る。
【0086】
さらなる例では、ブロック63は、Ox/PPxにおけるエントロピーの関数としてTVPxを決定するように構成され得る。
【0087】
前述のように、流体中の時折の気泡は、粒子密度の測定を妨害する可能性がある。このような気泡は、出力信号に大きなピークを生成する可能性があるため、TVPxに重大な影響を与える可能性がある。気泡の影響を軽減するには、TVPxを外れ値に対してロバストな尺度の関数として決定することが有利な場合がある。そのような尺度の1つが中央絶対偏差(MAD)である。
【0088】
【数3】
【0089】
ここで
はx(n)と
の中央値である。変形例では、

によって置き換えられることができ、つまりx(n)の平均に置き換えることができる。さらなる代替では、MADは、平均絶対偏差を指定することができる。
【0090】
【数4】
または
【0091】
定義に関係なく、MADは信号の平均エネルギの平方根に関連するため、MADは粒子密度に比例する可能性がある。図8は、0から1000細胞/μLの範囲の異なるWBC数を有する流体について得られた出力信号において計算されたMADのプロットである。分かるように、MADは粒子密度に比例する。この関係は、例えば上記で例示したように、他のエネルギベースの尺度にも当てはまる。
【0092】
理論的には、流量の変化は出力信号の周波数成分のみを変化させ、その変動の大きさは変化させないため、エネルギベースの尺度は流量とは無関係である必要がある。図9Aから9Cは、0から500ml/分の範囲の異なる流量で、図3Aの検出器35aから35cからの出力信号で計算されたMADを示す。分かるように、0を超える全ての流量について、透過光(図9A)および散乱光(図9Bから9C)の両方について、MADは実際に流量と実質的に無関係である。
【0093】
いくつかの実施形態では、ベースラインを安定化するためのパワーコントローラ36(図2)の上述の使用に対する代替または補足として、ブロック62は、測定期間のベースラインを推定し、推定されたベースラインによる正規化を実行するように構成され得る。例えば、ベースラインは、測定期間内のOx/PPxの平均、中央値、最大、または最小によって推定され得る。
【0094】
例示的な方法500の有用性をさらに実証するために、図10は、透過光を表す出力信号について計算されたMAD値のヒストグラムであり、エンベロープ減算によるHPフィルタリングの後、出力信号は、30個の異なるチューブおよび流体中のWBCの3つの異なる密度、0、50、100細胞/μLについて生成された。分かるように、MAD値は3つの別個のグループ101から103を形成し、グループ101は0細胞/μLのMAD値を含み、グループ102は50細胞/μLのMAD値を含み、およびグループ103は100細胞/μLのMAD値を含む。明らかに、これらのWBCの密度間を区別することは可能であり、それによって、使用されるチューブに関係なく、炎症/感染のリスクを確実に知らせることができる。
【0095】
本開示の主題は、現在最も実用的な実施形態であると考えられるものに関連して説明されてきたが、本開示の主題は、開示された実施形態に限定されるべきではないと理解されるべきで、逆に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるさまざまな変更および均等の構成をカバーすることを意図している。
【0096】
例えば、前述の技術は、APDに限定されるものではなく、CAPD等の他の種類のPD治療にも同様に適用可能である。この技術は、PD排液中のWBC密度の検出に限定されるものではなく、他の医療流体中のWBC密度の検出にも同様に適用可能である。この技術はWBCに限定されるものではなく、他の粒子、例えば他の種類の細胞にも同様に適用可能である。一例では、この技術は、増加した粒子密度が透析流体への血液の漏出を示す可能性がある、血液透析機のチューブを通って流れる透析流体中の赤血球を検出するために適用可能である。別の例では、この技術は、チューブが液体または気体を含むかどうかを推測すること、またはチューブを通って流れる流体中の気泡の存在を推測することに適用可能である。
【0097】
さらに、操作は特定の順序で図面に示されているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または図示された全ての操作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。
【0098】
以下では、上記で開示された、いくつかの態様および実施形態を要約するために、項目が列挙される。
【0099】
項目1:透明または半透明の材料のチューブ部分を含むチューブ(16)を通って流れる流体中の粒子を検出するための光学検出装置であって、前記光学検出装置は、
前記チューブ部分のためのホルダ(30)と、
前記ホルダ(30)内に配置されたときに、前記チューブ部分の内側の標的体積(302)を照射するように構成された発光デバイス(34)と、
前記発光デバイス(34)によって照射されたときに、前記標的体積(302)から光を受光し、前記受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)を生成するように構成された少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)と、
前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)を処理して、前記流体中の前記粒子の密度を推定するように構成された計算デバイス(22)であって、前記密度を推定するために、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)における時間変動性を示すパラメータ値を決定するように構成される計算デバイス(22)と、を備える光学検出装置。
【0100】
項目2:前記標的体積(302)に入る個々の粒子について、前記1つまたは複数の出力信号(OaからOc)において瞬間信号応答を生成するように構成される、項目1に記載の光学検出装置。
【0101】
項目3:前記発光デバイス(34)が、前記標的体積(302)を照射するように動作可能なレーザ(34a)を含む、項目1または2に記載の光学検出装置。
【0102】
項目4:前記発光デバイス(34)は、前記標的体積(302)を画定し、前記粒子の個々の断面積の10、10、10、10、または10倍未満の横方向断面積を有するよう構成される、項目1から3のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0103】
項目5:前記発光デバイス(34)が、パルス光によって前記標的体積(302)を照射するように構成される、項目1から4のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0104】
項目6:前記粒子が、50、40、30、または20マイクロメートル未満の平均サイズを有する、項目1から5のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0105】
項目7:前記粒子が白血球を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0106】
項目8:前記流体が腹膜透析排液を含む、項目7に記載の光学検出装置。
【0107】
項目9:前記計算デバイス(22)は、前記腹膜透析排液中の前記白血球の密度が所定の限界を超えた場合に感染または炎症のリスクを知らせるように構成される、項目8に記載の光学検出装置。
【0108】
項目10:前記密度が、2000、1000、500、または200粒子/マイクロリットル未満である、項目1から9のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0109】
項目11:前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分を変形させて、前記流体のための内部通路(16c)を有する平らな形状を達成するように構成される、項目1から10のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0110】
項目12:前記ホルダ(30)は、前記発光デバイス(34)と前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)との中間に配置され、前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分を変形させて、間隔を空けて実質的に平面である第1および第2の壁部分(16a、16b)を画定するよう構成され、前記第1の壁部分(16)は前記発光デバイス(34)に面し、前記第2の壁部分(16b)は前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)に面する、項目1から11のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0111】
項目13:前記ホルダ(30)は、前記チューブ部分と係合して前記第1および第2の壁部分(16a、16b)を画定するための透明または半透明の窓(32a、33a)を備える、項目12に記載の光学検出装置。
【0112】
項目14:前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)は、前記標的体積(302)を透過した光を受光し、透過光を表す第1の出力信号(Oa)を生成するために前記発光デバイス(34)と位置合わせされた第1の受光デバイス(35a)を備える、項目1から13のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0113】
項目15:前記少なくとも1つの受光デバイス(35aから35c)は、前記標的体積(302)から散乱された光を受光し、散乱光を表す第2の出力信号(Ob;Oc)を生成するように構成される、第2の受光デバイス(35b;35c)を含む、項目14に記載の光学検出装置。
【0114】
項目16:前記第2の受光デバイス(35b;35c)は、前記第1の受光デバイス(35a)に対して前記チューブ部分の長手方向の広がりに沿って変位される、項目15に記載の光学検出装置。
【0115】
項目17:前記計算デバイス(22)が、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(Ox)に基づいて1つまたは複数の前処理された信号(PPx)を生成する前処理を実行し、前記1つまたは複数の前処理された信号(PPx)の前記時間変動性を決定するよう構成され、前記前処理は、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(Ox)のハイパスフィルタリングを含む、項目1から16のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0116】
項目18:前記ハイパスフィルタリングが、前記少なくとも1つの時間依存出力信号のそれぞれの時間エンベロープを決定すること、および前記時間エンベロープと前記少なくとも1つの時間依存出力信号との間の差分信号を計算すること、を含む、項目17に記載の光学検出装置。
【0117】
項目19:前記計算デバイス(22)は、前記1つまたは複数の時間依存出力信号(OaからOc)における、ピーク数、標準偏差、分散、変動係数、分散対平均、エネルギ、エントロピー、平均絶対偏差、または中央絶対偏差、またはその処理されたバージョンの1つまたは複数の関数として前記パラメータ値を決定するよう構成される、項目1から18のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0118】
項目20:前記発光デバイス(34)用の制御デバイス(36)をさらに備え、前記制御デバイス(36)は、前記少なくとも1つの出力信号(OaからOc)のベースラインを所定の値に実質的に維持するように、前記発光デバイス(34)の出力パワーを調整するよう構成される、項目1から19のいずれか一項に記載の光学検出装置。
【0119】
項目21:透明または半透明の材料のチューブ部分を含むチューブを通って流れる流体中の粒子を検出するための方法であって、前記方法は、
ホルダ内に前記チューブ部分を配置すること(501)、
発光デバイスを動作させて、前記ホルダ内に配置されたとき前記チューブ部分の内側の標的体積に照射すること(502)、
少なくとも1つの受光デバイスを動作させて、前記発光デバイスによって照射されたときに標的体積から光を受光し、前記受光した光を示す1つまたは複数の時間依存出力信号を生成すること(503)、および
前記1つまたは複数の時間依存出力信号を処理することによって前記流体中の前記粒子の密度を推定することであって、前記1つまたは複数の時間依存出力信号における時間変動性を示すパラメータ値を決定することを含む推定すること(504)、を含む方法。
【0120】
項目22:項目1から20のいずれか一項に記載の光学検出装置を含む、自動腹膜透析のための装置。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10