(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240807BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240807BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240807BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20240807BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240807BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240807BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240807BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240807BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240807BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240807BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20240807BHJP
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A61P 11/02 20060101ALI20240807BHJP
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A61P 17/10 20060101ALI20240807BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240807BHJP
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A61P 19/06 20060101ALI20240807BHJP
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A61P 21/04 20060101ALI20240807BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240807BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240807BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240807BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61K35/74 A
A61K35/741
A61P1/02
A61P1/04
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A61P3/10
A61P5/14
A61P7/06
A61P7/10
A61P11/00
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A61P11/06
A61P11/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
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A61P19/06
A61P19/08
A61P21/00
A61P21/04
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2023510332
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2021010768
(87)【国際公開番号】W WO2022035269
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0102564
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC14231BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC14230BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520106231
【氏名又は名称】コバイオラブス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ボラム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キュンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン キ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,テ ウック
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドゥキュン
(72)【発明者】
【氏名】コ,グワン ピョ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23L 33/135
A61K 35/74
A61K 35/741
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 3/10
A61P 5/14
A61P 7/06
A61P 7/10
A61P 11/00
A61P 11/02
A61P 11/04
A61P 11/06
A61P 11/08
A61P 13/10
A61P 13/12
A61P 17/00
A61P 17/06
A61P 17/10
A61P 17/14
A61P 19/02
A61P 19/06
A61P 19/08
A61P 21/00
A61P 21/04
A61P 27/02
A61P 27/16
A61P 29/00
A61P 37/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株。
【請求項2】
前記菌株は、配列番号4で表される16S rRNA配列を有することを特徴とするものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記菌株は、細胞壁およびカプセル機能遺伝子を含むものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項4】
前記細胞壁およびカプセル機能遺伝子は、エキソポリサッカライド生合成(exopolysaccharide biosynthesis)またはラムノース包含グリカン(rhamnose containing glycans)の機能を果たすものである、請求項
3に記載の菌株。
【請求項5】
前記細胞壁およびカプセル機能遺伝子は、下記(1)~(7)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものである、請求項
3に記載の菌株:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase、
(2)Tyrosine-protein kinase、
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase、
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase、
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein、
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein、
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase。
【請求項6】
前記菌株は、下記(1)~(13)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものである、請求項1に記載の菌株:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase、
(2)Tyrosine-protein kinase、
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase、
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase、
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein、
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein、
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase、
(8)Predicted transcriptional regulator of N-Acetylglucosamine utilization, GntR family、
(9)Membrane-bound lytic murein transglycosylase B、
(10)Inosine-uridine preferring nucleoside hydrolase、
(11)LysR family transcriptional regulator、
(12)Cation efflux system protein、
(13)Cobalt-zinc-cadmium resistance protein。
【請求項7】
前記菌株は、抗炎症サイトカイン生成を誘導する特徴を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項8】
前記菌株は、腸上皮細胞間密着結合を強化する特徴を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項9】
前記菌株は、腸内微生物均衡度を改善する特徴を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項10】
前記腸内微生物均衡度改善は、下記(1)~(5)からなる群より選択された1種以上である、請求項
9に記載の菌株:
(1)動物の腸内菌叢多様性増加を誘導すること、
(2)動物の腸内菌叢の不均衡を改善すること、
(3)動物の腸内菌叢でプレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度増加を誘導すること、
(4)動物の腸内菌叢でリポ多糖類細胞壁を有する有害菌の相対的豊富度増加を防止すること、
(5)動物の腸内菌叢でプロテオバクテリア(Proteobacteria)門、バクテロイデス(Bacteroides)属および/またはプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株相対的豊富度の増加を防止すること。
【請求項11】
前記菌株は、下記(1)~(2)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものである、請求項1に記載の菌株:
(1)炎症性疾患による体重減少を防止すること、
(2)炎症性疾患による腸長さ減少を防止すること。
【請求項12】
請求項1~
11のうちのいずれか一項による菌株
を含む、炎症性疾患の予防、改善、または治療用組成物。
【請求項13】
前記炎症性疾患は、炎症性腸疾患、炎症性皮膚疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー疾患、自己免疫疾患、自己免疫性炎症性疾患、湿疹、喘息、アレルギー性喘息、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、リウマチ熱、ループス、全身性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギランバレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、側頭動脈炎、小児期糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、ベーチェット病、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽喉炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大膓炎、痛風、湿疹、にきび、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)、強直性脊髄炎、線維筋痛症(fibromyalgia)、骨関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、敗血症、血管炎、および滑液包炎からなる群より選択された1種以上である、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
前記炎症性腸疾患は、炎症性大膓疾患、潰瘍性大膓炎(ulcerative colitis;UC)、腸炎(enteritis)、過敏性大腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)、およびクローン病(Crohn’s disease;CD)からなる群より選択された1種以上である、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~
11のうちのいずれか一項による菌株
を含む、炎症性疾患の予防または改善用食品組成物。
【請求項16】
請求項1~
11のうちのいずれか一項による菌株
を含む、炎症性疾患の予防または改善用プロバイオティクス組成物。
【請求項17】
請求項1~
11のうちのいずれか一項による
菌株
を含む、腸内微生物均衡度改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康な人体の内部には人体の細胞数より10倍多い約100兆に達する微生物が共生している。これらの遺伝子数は人間の100倍を超え、腸内微生物叢は個人別、病症別に特異に構造化されている。健康な腸内共生微生物叢は人体細胞と複雑な相互作用を果たし物質代謝、免疫反応の調節を通じた免疫系発達と腸内恒常性を維持するなど多様な機能を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一例は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株を提供するためのものである。
【0004】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む組成物を提供するためのものである。
【0005】
本発明のまた他の一例は、炎症性疾患の治療または予防効能を有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株の炎症性疾患予防、改善、または治療用途を提供するためのものである。
【0006】
本発明のまた他の一例は、抗炎症活性を有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類を提供するためのものである。
【0007】
本発明のまた他の一例は、抗炎症活性を有する物質、例えば細胞外多糖類を生産するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株由来物質(例えば、抗炎症サイトカインの分泌を誘導する細胞外多糖類)を提供するためのものである。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、健康な韓国人から分離された新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株を発掘し、既存のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株と対比して卓越した抗炎症性サイトカイン生成促進と炎症性疾患の症状改善効能を確認した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一例は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株に関するものである。
【0010】
本発明のまた他の一例は、抗炎症活性を有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類に関するものである。
【0011】
本発明のまた他の一例は、細胞外多糖類を生産するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類に関するものである。前記細胞外多糖類は、抗炎症活性を有する物質であってもよい。
【0012】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む組成物に関するものである。
【0013】
前記組成物は、炎症性疾患の予防、改善、または治療用組成物であってもよい。
【0014】
前記組成物は、食品組成物またはプロバイオティクス組成物であってもよい。
【0015】
前記組成物は、腸内微生物均衡度改善用組成物であってもよい。
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の一例は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株に関するものである。
【0018】
前記菌株は、抗炎用途、抗炎症性サイトカイン誘導用途、腸上皮細胞間密着結合強化用途、腸内微生物均衡度改善用途、または炎症性疾患の予防、改善、緩和または治療用途のものであってもよい。
【0019】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、配列番号4で表される16S rRNA配列を有するものであってもよい。
【0020】
本願実施形態でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株および前記菌株と同一な種に属するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株の平均ヌクレオチド同一性(Average Nucleotide Identity;ANI)を比較した結果、同一な種に属するにもかかわらず、低い平均ヌクレオチド同一性を示した。これは、本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は従来のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ微生物と区別される遺伝的特性を有する新規な菌株であることを意味する。
【0021】
例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株との平均ヌクレオチド同一性(Average Nucleotide Identity;ANI)が100%未満、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、または85%以下のものであってもよい。通常の技術者であれば、前記平均ヌクレオチド同一性の下限値が特定されなくてもフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株との低い平均ヌクレオチド同一性を有する前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株を明確に実施することができるはずであり、例えば、前記平均ヌクレオチド同一性の下限値は5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、または80%以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0022】
本願実施形態でフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株の比較ゲノム分析結果、前記菌株と同一な種に属するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株と比較して前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株特異的な遺伝子が多数存在した。これは、本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が従来のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ微生物と区別される遺伝的特性を有する新規な菌株であることを意味する。
【0023】
例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、細胞壁およびカプセル(Cell Wall and Capsule)機能遺伝子を含むものであってもよい。前記細胞壁およびカプセル機能遺伝子は、エキソポリサッカライド生合成(exopolysaccharide biosynthesis)またはラムノース包含グリカン(rhamnose containing glycans)の機能を果たすものであってもよい。例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、下記(1)~(7)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものであってもよい:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase EpsF(EC 2.4.1.-)
(2)Tyrosine-protein kinase EpsD(EC 2.7.10.2)
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpA
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpB
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein LolD
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase TuaG
【0024】
例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、下記(1)~(13)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものであってもよい:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase EpsF(EC 2.4.1.-)
(2)Tyrosine-protein kinase EpsD(EC 2.7.10.2)
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpA
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpB
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein LolD
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase TuaG
(8)Predicted transcriptional regulator of N-Acetylglucosamine utilization, GntR family NagQ
(9)Membrane-bound lytic murein transglycosylase B(EC 3.2.1.-)
(10)Inosine-uridine preferring nucleoside hydrolase(EC 3.2.2.1)
(11)LysR family transcriptional regulator YnfL
(12)Cation efflux system protein CusA
(13)Cobalt-zinc-cadmium resistance protein CzcA
【0025】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は抗炎特性を有するものであってもよく、具体的に抗炎症サイトカイン生成を誘導して抗炎特性を有するものであってもよい。
【0026】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、抗炎症サイトカイン生成を誘導するものであってもよい。例えば、LPSと前記菌株を共に投与した場合、LPSを単独投与した対照群に対比して抗炎症性サイトカイン生成量(pg/mL)が1倍超過、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4倍超過、4.1倍以上、4.2倍以上、4.3倍以上、4.4倍以上、または4.5倍以上であるものであってもよい。前記抗炎症性サイトカインは、IL-10であってもよい。
【0027】
前記抗炎症性サイトカインIL-10は免疫調節サイトカインであって、炎症反応、腫よう発生、アレルギーおよび自己免疫疾患で重要な役割を果たすと知られている。具体的に、IL-10は多様な細胞で生成される重要な免疫調節サイトカインであって、炎症反応を抑制するだけでなく、T細胞、B細胞、NK(natural killer)細胞、抗原提示細胞、肥満細胞などの様々な免疫細胞の増殖と分化を調節する機能を果たす。IL-10は、感染性あるいは非感染性粒子を炎症反応を最少化しながらも除去する免疫活性化機能を示すこともある。また、IL-10はアレルギー反応に関連する大部分の細胞で抗原特異活性を抑制し、炎症部位で好酸球などの炎症細胞の移動を阻害させて、アレルギー誘発源であるIgE受容体などの発現が減少して単核細胞や樹脂細胞で効果的にアレルゲン反応を阻止する。よって、本発明の一例による菌株は抗炎症性サイトカインIL-10の生成を誘導して、炎症性疾患、アレルギーまたは自己免疫疾患などを予防、改善または治療する活性を示すことができる。
【0028】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、腸上皮細胞間密着結合を強化するものであってもよい。例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記菌株を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して密着結合関連遺伝子(一例として、Zo-1またはOccludin)の発現量が1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、または1.5倍以上、またはDSSおよびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株を共に投与した対照群に対比して密着結合関連遺伝子(一例として、Zo-1またはOccludin)の発現量が1倍超過、1.01倍以上、1.05倍以上、1.1倍以上、1.15倍以上、1.2倍以上、1.25倍以上、または1.3倍以上であるものであってもよい。
【0029】
腸上皮細胞の密着結合が弱くなる場合、自己免疫疾患の一種である腸漏れ症候群(intestinal permeability)、即ち、漏れる腸(リーキーガット、leaky gut)が発生することがある。具体的に、腸上皮細胞が防御膜をたてて他の物質が入ってこないように細胞の“密着結合”を誘導しなければならないが、密着結合関連蛋白質発現および生成に問題が発生する場合、外部物質が流入しながら消化管関連リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue、GALT)は免疫反応を起こして炎症を発生させる現象をいう。本発明の一例による菌株は腸上皮細胞の密着結合を強化して、腸漏れ症候群(intestinal permeability)または漏れる腸(リーキーガット、leaky gut)を予防、改善または治療することができ、炎症反応を予防、改善、緩和または治療することができる。
【0030】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、腸内微生物均衡度を改善するものであってもよい。腸内微生物不均衡が発生する場合、宿主と微生物叢の間に非正常的な相互作用が起こり、その結果、免疫恒常性が崩れて自己免疫、アレルギー、および慢性炎症性疾患などの免疫媒介性疾患が発生することがある。本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、生体内で腸内微生物叢の不均衡を改善して炎症反応、アレルギー疾患、自己免疫疾患などを予防、改善、緩和または治療することができる。例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、下記(1)~(5)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものであってもよい:
(1)動物の腸内菌叢多様性増加を誘導すること、
(2)動物の腸内菌叢の不均衡を改善すること、
(3)動物の腸内プレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度増加を誘導すること、または相対的豊富度減少を防止すること、
(4)動物の腸内菌叢で有害菌、例えばリポ多糖類細胞壁を有する菌株、一例としてプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株の相対的豊富度増加を防止すること、
(5)動物の腸内菌叢でバクテロイデス(Bacteroides)属菌株の相対的豊富度の増加を防止すること。
【0031】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、炎症性疾患の予防、改善または治療活性を有するものであってもよい。例えば、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は、下記(1)および(2)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものであってもよい:
(1)炎症性疾患による体重減少を防止すること、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記菌株を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して体重減少率(Weight change%)が1倍未満、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、または0.5倍以下、
(2)炎症性疾患による腸長さ減少を防止すること、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記菌株を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して腸長さ減少率(%)が1倍未満、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、または0.1倍以下。
【0032】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患の予防、改善、または治療用組成物に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0033】
前記炎症性疾患は炎症を伴う疾患であって、炎症を伴う疾患は制限なく含まれ、例えば、炎症性腸疾患、炎症性皮膚疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー疾患、自己免疫疾患、自己免疫性炎症性疾患、湿疹、喘息、アレルギー性喘息、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、リウマチ熱、ループス、全身性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギランバレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎 、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、側頭動脈炎、小児期糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、ベーチェット病、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽喉炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大膓炎、痛風、湿疹、にきび、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)、強直性脊髄炎、線維筋痛症(fibromyalgia)、骨関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、敗血症、血管炎、および滑液包炎からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0034】
前記アトピー性皮膚炎は、かゆみ症を示す慢性または再発性の炎症性皮膚状態を意味する。
【0035】
前記アレルギー疾患は、抗原に露出された免疫体系が生産した免疫グロブリンE(IgE)が結合された好塩基球および肥満細胞が分泌するヒスタミンなどが周辺組織の炎症を誘発したことを意味する。
【0036】
前記自己免疫疾患は、体内物質に対して免疫反応が起こって臓器または組織に自己免疫による炎症反応が発生したことを意味する。前記自己免疫疾患は、例えば、炎症性皮膚疾患であってもよい。前記炎症性皮膚疾患は、例えば、アトピー、乾癬、湿疹、にきび、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、および脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)からなる群より選択された1種以上であってもよい。前記自己免疫疾患は、臓器特異的自己免疫疾患または全身性自己免疫疾患であってもよい。前記臓器特異的自己免疫疾患は、例えば、第1型糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、特発性血小板減少症、および白斑からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。前記全身性自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、リウマチ関節炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、全身性強皮症、多発性筋炎、および皮膚筋炎からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0037】
前記炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease;IBD)は胃腸管の炎症性疾患であって、原因不明の場合が多く、炎症性腸疾患を治療するための薬物開発研究が莫大に行われており、次世代塩基配列分析方法を用いて炎症性腸疾患および潰瘍性大膓炎患者の腸内菌叢を分析した結果、健常者に比べて患者群では腸内菌叢の多様性が減少しプロテオバクテリア(Proteobacteria)が優占しているなど腸内菌叢の不均衡が示された。
【0038】
前記炎症性腸疾患は、炎症性大膓疾患、潰瘍性大膓炎(ulcerative colitis;UC)、腸炎(enteritis)、過敏性大腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)、およびクローン病(Crohn’s disease;CD)からなる群より選択された1種以上のものであってもよい。
【0039】
本発明の一例による炎症性疾患は、下記(1)~(10)からなる群より選択された1種以上の症状または病理的現象を誘発することであってもよい:
(1)炎症性サイトカイン誘導、
(2)抗炎症性サイトカイン抑制、
(3)自己免疫の過活性化、
(4)動物の体重減少、
(5)動物の腸長さ減少、
(6)動物の腸上皮細胞の密着結合弱化、
(7)動物の腸内菌叢の不均衡(dysbiosis)、
(8)動物の腸内菌叢で有害菌、例えばリポ多糖類細胞壁を有する菌株、一例としてプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株の相対的豊富度増加、
(9)動物の腸内菌叢でバクテロイデス(Bacteroides)属菌株の相対的豊富度増加、
(10)動物の腸内菌叢でプレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度減少。
【0040】
本発明の一例による組成物は抗炎特性を有するものであってもよく、具体的に抗炎症サイトカイン生成を誘導して抗炎特性を有するものであってもよい。例えば、LPSと前記組成物を共に投与した場合、LPSを単独投与した対照群に対比して抗炎症性サイトカイン生成量(pg/mL)が1倍超過、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4倍超過、4.1倍以上、4.2倍以上、4.3倍以上、4.4倍以上、または4.5倍以上のものであってもよい。前記抗炎症性サイトカインはIL-10であってもよい。
【0041】
本発明の一例による組成物は、動物の腸上皮細胞間密着結合を強化する特徴を有するものであってもよい。例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記組成物を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して密着結合関連遺伝子(一例として、Zo-1またはOccludin)の発現量が1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、または1.5倍以上、またはDSSおよびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677を共に投与した対照群に対比して密着結合関連遺伝子(一例として、Zo-1またはOccludin)の発現量が1倍超過、1.01倍以上、1.05倍以上、1.1倍以上、1.15倍以上、1.2倍以上、1.25倍以上、または1.3倍以上であるものであってもよい。
【0042】
本発明の一例による組成物は、腸内微生物均衡度を改善するものであってもよい。例えば、前記組成物は、下記(1)~(5)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものであってもよい:
(1)動物の腸内菌叢多様性増加を誘導すること、
(2)動物の腸内菌叢の不均衡(dysbiosis)を改善すること、
(3)動物の腸内菌叢で有害菌、例えばリポ多糖類細胞壁を有する菌株、一例としてプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株の相対的豊富度増加を防止すること、
(4)動物の腸内菌叢でバクテロイデス(Bacteroides)属菌株の相対的豊富度増加を防止すること、
(5)動物の腸内菌叢でプレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度増加を誘導すること、または相対的豊富度減少を防止すること。
【0043】
本発明の一例による組成物は、炎症性疾患の予防、改善または治療活性を有するものであってもよい。例えば、前記組成物は、下記(1)~(2)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものであってもよい:
(1)炎症性疾患による動物の体重減少を防止すること、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記組成物を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して体重減少率(Weight change%)が1倍未満、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、または0.5倍以下、
(2)炎症性疾患による動物の腸長さ減少を防止すること、例えば、デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)および前記組成物を共に投与した場合、DSSを単独投与した対照群に対比して腸長さ減少率(%)が1倍未満、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、または0.1倍以下。
【0044】
前記組成物は、腸内微生物均衡を改善するものであってもよい。例えば、前記組成物は、動物の腸内菌叢多様性を増加させるものであってもよい。一例として、前記組成物は、動物の腸内プレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度を増加させるものであってもよい。一例として、前記組成物は、動物の腸内バクテロイデス(Bacteroides)属および/またはプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株の相対的豊富度を減少させるものであってもよい。
【0045】
前記組成物は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株の細胞外多糖類(extracellular polysaccharide)を含むものであってもよい。本願実施形態によれば、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が特異的に細胞外多糖類を生成することを確認し、よって、前記組成物は寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株の細胞外多糖類を含むものであってもよい。
【0046】
本発明によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株は実験に基づいて同じ種に属する他の菌株に比べて優れた大膓炎疾患の症状改善効能を確認し、抗炎症性サイトカインIL-10と腸上皮細胞間密着結合機能と関連するZo-1とOccludin遺伝子発現量強化、そして腸内菌叢の回復効果を確認した。また、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が特異的に生成する細胞外多糖類物質を実験的、ゲノム的に確認し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株培養液による抗炎症サイトカインIL-10生性能をBMDMを基盤にして確認した。このような結果は、炎症性疾患の予防、改善、治療にフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が有用に活用可能であるのを意味する。
【0047】
本発明のまた他の一例は、抗炎症活性を有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0048】
本発明のまた他の一例は、抗炎症活性を有する物質、例えば細胞外多糖類を生産するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は寄託番号KCTC14230BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026菌株または寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよく、好ましくは寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0049】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、食品組成物に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株は前述の通りである。一例として、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0050】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、プロバイオティクス組成物に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株は前述の通りである。一例として、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0051】
本発明のまた他の一例は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、腸内微生物均衡度改善用組成物に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株は前述の通りである。一例として、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株であってもよい。
【0052】
本発明のまた他の一例は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を投与する段階を含む、炎症性疾患の予防、改善、または治療方法に関するものである。前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株、前記炎症性疾患などは前述の通りである。
【0053】
本発明のまた他の一例は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を投与する段階を含む、腸内微生物均衡度を改善する方法に関するものである。本願実施形態で本発明の一例による菌株を投与した結果、動物の腸内菌叢多様性増加が誘導され、動物の腸内菌叢の不均衡(dysbiosis)を改善し、具体的に動物の腸内菌叢で有害菌、例えばリポ多糖類細胞壁を有する菌株、一例としてプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株の相対的豊富度増加を防止し、動物の腸内菌叢でバクテロイデス(Bacteroides)属菌株の相対的豊富度増加を防止し、動物の腸内菌叢でプレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度増加を誘導、または相対的豊富度減少を防止した。よって、本発明の一例による菌株を投与して動物の腸内微生物均衡度を改善することができる。
【0054】
本発明で、用語‘有効成分’とは、単独で目的とする活性を示すかまたはそれ自体は活性がない担体と共に活性を示すことができる成分を意味する。
【0055】
本発明で、用語‘予防’は、疾病、障害または疾患の発病を抑制するか遅延することを意味する。疾病、障害または疾患の発病が予定された期間の間抑制されるか遅延された場合、予防は完全なことに見なされる。
【0056】
本発明で、用語‘治療’とは、特定疾病、障害および/または疾患または疾患による症状を部分的にまたは完全に軽減、改善、緩和、阻害または遅延させ、重症度を減少させるか、一つ以上の症状または特徴の発生を減少させることを意味する。
【0057】
本発明の組成物、例えば、薬学組成物は、前記有効成分以外に追加的に同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上追加的に含むことができる。
【0058】
また、本発明による組成物、例えば、薬学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明確に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体を用いて製剤化することによって単位容量形態に製造されるかまたは多用量容器内に入れて製造できる。本発明で、用語‘担体’は、細胞または組織内への化合物の付加を容易にする化合物を意味し、用語‘薬学的に許容される’とは、生理学的に許容され人間に投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさない組成物をいう。
【0059】
前記薬学的に許容される担体は製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。
【0060】
また、本発明による組成物、例えば、薬学的組成物は、前記成分以外に充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などの添加剤を追加的に含むことができる。本発明において、前記組成物に含まれる添加剤の含量は特に限定されるのではなく、通常の製剤化に使用される含量範囲内で適切に調節することができる。
【0061】
また、本発明による組成物、例えば、薬学組成物、食品組成物、またはプロバイオティクス組成物は、経口用製剤に剤形化することができる。前記経口用製剤の非制限的な例としては、錠剤、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調製粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤などが挙げられる。本発明による薬学的組成物を経口投与用に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンなどのような結合剤;ジカルシウムホスフェートなどのような賦形剤;とうもろこしデンプンまたはさつまいもデンプンなどのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムなどを使用することができ、甘味剤、芳香剤、シロップ剤なども使用することができる。さらに、カプセル剤の場合には前記で言及した物質以外にも脂肪油のような液体担体などを追加的に使用することができる。
【0062】
本発明で、用語‘賦形剤’は、治療剤でない、ある物質を意味し、治療剤の伝達のための担体または媒体として用いられるかまたは薬学的組成物に追加されるものを意味する。これによって、取り扱いおよび保存特性を改善するかまたは組成物の単位投与量形成を許容および促進させるようになる。
【0063】
本発明による組成物、例えば、薬学組成物、食品組成物、またはプロバイオティクス組成物はそれぞれの使用目的に合わせて通常の方法により液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、エキス剤、エマルジョン、シロップ剤、エアゾールなどの経口剤形、滅菌注射用水の注射剤など多様な形態に剤形化して使用することができ、経口投与するか静脈内、腹腔内、皮下、直腸、局所投与などを含む多様な経路を通じて投与することができる。本発明で、用語‘経口投与’は、活性物質が消化されるように製造された物質、即ち、吸収のための胃腸器官に投与されることを意味する。
【0064】
本発明による組成物、例えば、薬学組成物、食品組成物、またはプロバイオティクス組成物の好ましい投与量は患者の状態および体重、年齢、性別、健康状態、食餌体質特異性、製剤の性質、疾病の程度、組成物の投与時間、投与方法、投与期間または間隔、排泄率、および薬物形態によってその範囲が多様であり、この分野通常の技術者によって適切に選択できる。
【0065】
本発明で、用語‘薬学的組成物の有効投与量’は、特定の症状を治療するために十分な活性成分の組成物の量を意味する。これは薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間および/または投与経路などによって多様化され、薬学的組成物の投与で達成しようとする反応の種類と程度、投与対象になる個体の種類、年齢、体重、一般的な健康状態、疾病の症状や程度、性別、食餌、排泄、当該個体に同時または一時に共に使用される薬物その他組成物の成分などをはじめとする様々の因子および医薬分野でよく知られた類似因子によって多様化され、当該技術分野における通常の知識を有する者は目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定して処方することができる。
【0066】
本発明による薬学的組成物の投与は、一日に1回投与されてもよく、数回に分けて投与されてもよい。前記組成物は、個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的または同時に投与されてもよい。前記要素を全て考慮して副作用なく最小限の量で最大効果を得ることができる量で投与することができる。
【0067】
例えば、本発明による組成物は、体重1kg当り0.001~10,000mg、0.001~5,000mg、0.001~1,000mg、0.001~500mg、0.001~300mg、0.001~100mg、0.001~50mg、0.001~30mg、0.001~10mg、0.001~5mg、0.001~1mg、0.001~0.5mg、0.001~0.1mg、0.001~0.05mg、0.001~0.01mg、0.01~10,000mg、0.01~5,000mg、0.01~1,000mg、0.01~500mg、0.01~300mg、0.01~100mg、0.01~50mg、0.01~30mg、0.01~10mg、0.01~5mg、0.01~1mg、0.01~0.5mg、0.01~0.1mg、0.01~0.05mg、0.1~10,000mg、0.1~5,000mg、0.1~1,000mg、0.1~500mg、0.1~300mg、0.1~200mg、0.1~100mg、0.1~50mg、0.1~30mg、0.1~10mg、0.1~5mg、0.1~1mg、0.1~0.5mg、1~10,000mg、1~5,000mg、1~1,000mg、1~500mg、1~300mg、1~200mg、1~100mg、1~50mg、1~10mg、1~5mg、10~10,000mg、10~5,000mg、10~1,000mg、10~500mg、10~300mg、10~200mg、10~100mg、10~50mg、10~40mg、10~30mg、10~20mg、100~10,000mg、100~5,000mg、100~1,000mg、100~500mg、100~300mg、または100~200mgの一日投与量で投与することができるが、これに制限されるわけではない。一例として、本発明による組成物の一日投与量は、成人患者の経口投与基準にして0.001~10g/1日、0.001~5g/1日、0.01~10g/1日、または0.01~5g/1日であってもよい。また、一日総投与量を分割して必要によって連続的または非連続的に投与することができる。
【0068】
本発明で用語“菌株の培養物”は本発明の一例による菌株を培養した後に得られた産物を意味し、前記培養物は本発明の一例による菌株の全体培養物、その希釈液、濃縮物、乾燥物、凍結乾燥物、破砕物、および/または分画物などであってもよく、前記濃縮物は前記培養物を遠心分離または蒸発させて得ることができ、前記乾燥物は前記培養物を乾燥機などを用いて乾燥して得ることができ、前記凍結乾燥物は前記培養物を凍結乾燥機などを用いて凍結乾燥して得ることができ、前記破砕物は前記菌株または培養物を物理的にまたは超音波処理して得ることができ、前記分画物は前記培養物、破砕物などを遠心分離、クロマトグラフィーなどの方法に適用して得ることができる。前記培養物は固相(固体、例えば乾燥物)、液相(液体)、または流動状であってもよいが、これで制限されない。一例で、前記培養物は本発明の一例による菌株を一定期間培養して得られた培養された菌株、その代謝物、および/または余分の栄養分などを含む全体培地を意味することができる。一例で、前記培養物は、本発明の一例による菌株が除去または除去されていないものであってもよい。一例で、前記培養物は、本発明の一例による菌株を培地で培養した培養物において菌株(菌体)を除いた残り成分を意味するものであってもよい。一例で、前記培養物は本発明の一例による菌株を培地で培養した培養液から菌株(菌体)を除去した培養液(または培養物)であってもよい。前記菌株を除去した培養液(または培養物)は無細胞(cell free)培養液(または培養物)であるか死菌体を含む培養液であってもよく、例えば、ろ過、遠心分離して菌株を除去した濾液(遠心分離した上澄液)、および/または死菌体を含む培養液(または培養液の乾燥物)であってもよい。具体的に、前記培養物は、本発明の一例による菌株が示す活性と同等な水準の抗炎活性、または炎症性疾患の予防、改善または治療活性を示すものであってもよい。一例として、前記培養物は、本発明の一例による菌株が生産する細胞外多糖類を含むものであってもよい。
【0069】
本発明で、用語“菌株の破砕物”は、本発明の一例による菌株を化学的または物理的力によって破砕して得られた産物を意味するものであってもよい。具体的に、前記破砕物は、本発明の一例による菌株が示す活性と同等な水準の抗炎活性、または炎症性疾患の予防、改善または治療活性を示すものであってもよい。一例として、前記破砕物は、本発明の一例による菌株が生産する細胞外多糖類を含むものであってもよい。
【0070】
本発明で、用語“抽出物”は、本発明の一例による菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物またはこれらの混合物を抽出方法、抽出溶媒、抽出された成分または抽出物の形態を問わず抽出して得られた産物を意味することができ、抽出後他の方法で加工または処理して得られる物質を全て含む広範囲な概念である。例えば、前記抽出物は、本発明の一例による菌株の抽出物、前記菌株の培養物の抽出物、または前記菌株の破砕物の抽出物であってもよい。具体的に、前記抽出物は、本発明の一例による菌株、前記菌株の培養物、または前記菌株の破砕物が示す活性と同等な水準の抗炎活性、または炎症性疾患の予防、改善または治療活性を示すものであってもよい。一例として、前記抽出物は、本発明の一例による菌株が生産する細胞外多糖類を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0071】
本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株は、従来菌株に対比して抗炎症性サイトカイン生成促進に優れ抗炎特性を示して炎症性疾患の治療効果を発揮するところ、炎症性疾患の予防、改善、治療用組成物に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1a】16S rRNAに基づいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株を分離したKO-16対象者およびKBL1026菌株を分離したKO-13対象者の腸内菌叢分析結果を示した図である。
【
図1b】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株を分離したKO-16対象者およびKBL1026菌株を分離したKO-13対象者の腸内菌叢分布を分析した結果を示した図である。
【
図2a】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による体重変化を示した図である。
【
図2b】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による大腸長さ変化を示した図である。
【
図2c】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による大腸長さ変化を測定する過程を示した図である。
【
図3】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与後H&E染色結果を示した図である。
【
図4a】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による抗炎症サイトカイン遺伝子IL-10の発現量変化を示した図である。
【
図4b】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による密着結合遺伝子Zo-1の発現量変化を示した図である。
【
図4c】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による密着結合遺伝子Occludinの発現量変化を示した図である。
【
図5a】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による腸内菌叢の多様性変化を示した図である。
【
図5b】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与後腸内菌叢のweighted UniFrac distanceを通じた主成分分析結果を示した図である。
【
図5c】本発明の一例によるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株投与による腸内菌叢変化を調べるための単変量分析(LefSE)結果を示した図である。
【
図6】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株を走査電子顕微鏡で観察した結果を示した図である。
【
図7】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が特異的に生産する細胞外多糖類による抗炎効能を示した図である。
【
図8】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株のゲノムに特異的に存在する遺伝子をその機能特性によって示した図である。
【
図9】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株のゲノムに特異的に存在する細胞壁とカプセル(Cell Wall and Capsule)機能に属する遺伝子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株。
[実施形態2]前記菌株は、配列番号4で表される16S rRNA配列を有することを特徴とするものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態3]前記菌株は、細胞外多糖類を生産するものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態4]前記菌株は、細胞壁およびカプセル機能遺伝子を含むものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態5]前記細胞壁およびカプセル機能遺伝子は、エキソポリサッカライド生合成(exopolysaccharide biosynthesis)またはラムノース包含グリカン(rhamnose containing glycans)の機能を果たすものである、実施形態4に記載の菌株。
[実施形態6]前記細胞壁およびカプセル機能遺伝子は、下記(1)~(7)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものである、実施形態4に記載の菌株:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase、
(2)Tyrosine-protein kinase、
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase、
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase、
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein、
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein、
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase。
[実施形態7]前記菌株は、下記(1)~(13)からなる群より選択された1種以上の遺伝子を含むものである、実施形態1に記載の菌株:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase、
(2)Tyrosine-protein kinase、
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase、
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase、
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein、
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein、
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase、
(8)Predicted transcriptional regulator of N-Acetylglucosamine utilization, GntR family、
(9)Membrane-bound lytic murein transglycosylase B、
(10)Inosine-uridine preferring nucleoside hydrolase、
(11)LysR family transcriptional regulator、
(12)Cation efflux system protein、
(13)Cobalt-zinc-cadmium resistance protein。
[実施形態8]前記菌株は、抗炎症サイトカイン生成を誘導する特徴を有するものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態9]前記菌株は、腸上皮細胞間密着結合を強化する特徴を有するものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態10]前記菌株は、腸内微生物均衡度を改善する特徴を有するものである、実施形態1に記載の菌株。
[実施形態11]前記腸内微生物均衡度改善は、下記(1)~(5)からなる群より選択された1種以上である、実施形態10に記載の菌株:
(1)動物の腸内菌叢多様性増加を誘導すること、
(2)動物の腸内菌叢の不均衡を改善すること、
(3)動物の腸内菌叢でプレボテラ(Prevotella)属および/またはパラプレボテラセエ(Paraprevotellaceae)科菌株の相対的豊富度増加を誘導すること、
(4)動物の腸内菌叢でリポ多糖類細胞壁を有する有害菌の相対的豊富度増加を防止すること、
(5)動物の腸内菌叢でプロテオバクテリア(Proteobacteria)門、バクテロイデス(Bacteroides)属および/またはプロテオバクテリア(Proteobacteria)門菌株相対的豊富度の増加を防止すること。
[実施形態12]前記菌株は、下記(1)~(2)からなる群より選択された1種以上の特徴を有するものである、実施形態1に記載の菌株:
(1)炎症性疾患による体重減少を防止すること、
(2)炎症性疾患による腸長さ減少を防止すること。
[実施形態13]実施形態1~12のうちのいずれかによる菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類。
[実施形態14]実施形態1~12のうちのいずれかによる菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患の予防、改善、または治療用組成物。
[実施形態15]前記炎症性疾患は、炎症性腸疾患、炎症性皮膚疾患、炎症性コラーゲン血管疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー疾患、自己免疫疾患、自己免疫性炎症性疾患、湿疹、喘息、アレルギー性喘息、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、リウマチ性関節炎、リウマチ熱、ループス、全身性強皮症、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギランバレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、側頭動脈炎、小児期糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、ベーチェット病、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽喉炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大膓炎、痛風、湿疹、にきび、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)、強直性脊髄炎、線維筋痛症(fibromyalgia)、骨関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、敗血症、血管炎、および滑液包炎からなる群より選択された1種以上である、実施形態14に記載の組成物。
[実施形態16]前記炎症性腸疾患は、炎症性大膓疾患、潰瘍性大膓炎(ulcerative colitis;UC)、腸炎(enteritis)、過敏性大腸症候群(irritable bowel syndrome、IBS)、およびクローン病(Crohn’s disease;CD)からなる群より選択された1種以上である、実施形態15に記載の組成物。
[実施形態17]前記炎症性疾患の予防、改善、または治療は、前記菌株の細胞外多糖類によることである、実施形態14に記載の組成物。
[実施形態18]実施形態1~12のうちのいずれかによる菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患の予防または改善用食品組成物。
[実施形態19]実施形態1~12のうちのいずれかによる菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、炎症性疾患の予防または改善用プレバイオティクス組成物。
[実施形態20]実施形態1~12のうちのいずれかによるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、および前記菌株が生産する細胞外多糖類からなる群より選択された1種以上を含む、腸内微生物均衡度改善用組成物。
[実施形態21]抗炎症活性を有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類であって、
前記菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株である、菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類。
[実施形態22]抗炎症活性を有する物質を生産するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類であって、
前記菌株は、寄託番号KCTC14231BPを有するフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)KBL1027菌株である、菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類。
[実施形態23]前記抗炎症活性を有する物質は細胞外多糖類である、実施形態22に記載の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、前記培養物の抽出物、前記破砕物の抽出物、または前記菌株が生産する細胞外多糖類。
【実施例】
【0074】
実施例1.新規菌株の分離
韓国人の腸内菌叢から新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株を分離した。具体的に、腸内菌叢分離用試料は、6ヶ月間抗生剤を服用していない互いに異なる健康な一般人成人から提供を受けた糞便試料から分離、同定した(ソウル大学校IRB承認番号:1602/001-001)。糞便試料は、収得直後に本研究室に運送されて即時嫌気性チャンバー(Coy Laboratory Products Inc.)に移されて菌株分離に使用した。試料は、直接塗抹形式で1.5%寒天(agar)が含まれているYCFAG培地にストリーキング後、37℃、嫌気条件で最大48時間培養した。培養後純粋分離された集落(colony)を無作為的に選抜してYBHI培地で培養し、菌株の長期保管のためには指数期に到達した培養液にグリセロール(25%v/v)を添加して-80℃超低温冷凍庫に保管した。菌株の同定のためにWizard genomic purification kit(Promega)を使用して菌株のgenomic DNAを抽出した後、16S rRNA遺伝子をターゲットにして下記表1の27F/1492Rプライマー(配列番号1および2)を用いてPCR反応を行った。
【0075】
【0076】
これをQIAquick PCR purification kit(Qiagen)を使用して精製した後、ABI3711 automatic sequencer(マクロジェン)を用いて塩基配列分析を実施した。16S rRNA分析結果は下記表2の通りであり、この配列情報を用いてCHUNLABのEzBioCloudプログラム(http://www.ezbiocloud.net/identify)で多重比較して最終的に菌株の同定を完了した。
【0077】
【0078】
分離された新規菌株2種をそれぞれフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026菌株およびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株と命名し、韓国生命工学研究院生物資源センターに2020年7月7日寄託してそれぞれ寄託番号KCTC14230BP(フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026)およびKCTC14231BP(フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027)を付与された。
【0079】
実施例2.新規菌株保有対象者の腸内菌叢の構造分析
実施例1で分離された新規菌株であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026菌株はKO-13対象者に由来し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株はKO-16対象者に由来した。新規菌株保有対象者の腸内菌叢構造を分析するために、確保した大便試料は腸内菌叢分析の目的で-80℃超低温冷凍庫に保管され、冷凍保管された試料を実験室に移してQIAamp FAST DNA stool mini kit(Qiagen)を用いて糞便内の総バクテリア genomic DNAを抽出した。抽出されたDNAは、バクテリアの16S rRNA遺伝子のV4領域をターゲットにする下記表3の515F/806Rプライマー(配列番号5および6)を用いて増幅された後、MiSeq(Illumina)を用いて塩基配列データを生成した。生成された大容量塩基配列分析は、QIIME pipelineを使用して腸内細菌の全体遺伝情報を確認して腸内菌叢の構造を把握した。
【0080】
【0081】
16S rRNAに基づいて腸内菌叢を分析した結果、
図1aに示されているように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株を分離したKO-16対象者は、KBL1026菌株を分離したKO-13対象者より腸内菌叢の多様性が高いのを確認した(
図1a)。
【0082】
また、菌叢の種(species)レベルで1%以上の比率を占めている菌の分布を分析した結果、
図1bに示されているように、KO-16対象者は腸内フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株の相対的豊富度(relative abundance)が15.5%以上で高く優占しているのを確認した(
図1b)。反面、KBL1026菌株を分離したKO-13対象者は腸内フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株の相対的豊富度が0.8%で非常に低い比率を占めているのを確認した(
図1b)。
【0083】
このような対象者の腸内フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ相対的豊富度差は、新規確保されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026およびKBL1027菌株が同じ種に属するが、由来した対象者の腸内菌叢環境が互いに異なるため菌株の機能性が異なることがあるのを示唆した。
【0084】
実施例3.動物モデルを用いた炎症性疾患改善効果分析
(1)動物モデル構築および食餌
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026またはKBL1027菌株の単一菌株投与による生体内炎症性疾患改善効果を確認するために動物実験を実施した(ソウル大学校IACUC承認番号:SNU-160602-9)。炎症性疾患の例示として炎症性腸疾患動物モデルを使用して実験に使用した。菌株の炎症性疾患改善効能を比較するために同じ種に属しながら抗炎症効能が知られたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィDSM17677菌株をドイツ菌株銀行(DSMZ)から分譲を受けて対照群として使用した。
【0085】
具体的に、大膓炎マウスモデルを構築するためにC57BL/6 7~8週齢の雌マウスを各8匹の群集に区分した後、2.5%デキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium、DSS)を飲用水に溶解して総5日間飲用させて急性腸炎を誘導した。正常対照群にはDSSが添加されていない飲用水を供給した。
【0086】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026、KBL1027、またはDSM17677菌株をそれぞれYBHI液体培地で指数期に到達するように37℃、嫌気条件で培養後、上清液を除去しPBSに2×108CFU/mlになるように希釈させた後、DSS供給開始一週間前から実験終了時まで前記希釈された菌株をそれぞれ毎日200μlずつマウスに経口投与して定着(colonization)させた。正常対照群にはPBSを毎日200μlずつ経口投与した。
【0087】
(2)体重変化分析
DSS供給は5日後、(Day5午前)中断し、DSS供給開始日(Day0)から9日間マウスの体重変化を毎日測定して
図2aに示した。
図2aは、急性腸炎によるマウス体重の変化を示した図である。
図2aに示されているように、DSSを投与していない正常対照群(Water+PBS)に比べてDSS対照群(DSS+PBS)は有意な体重の減少が示されて大膓炎マウスモデルの構築を確認した。また、KBL1027投与群(DSS+KBL1027)はDSS対照群(DSS+PBS)に比べて体重減少において有意に改善された効果を確認した。反面、KBL1026投与群とDSM17677投与群はDSS対照群(DSS+PBS)に比べて有意な重量変化がなかった。
【0088】
(3)腸長さ分析
DSS供給開始9日目になる日に実験を終了し、マウスを剖検して腸長さ変化を測定して
図2bに示した。
図2bに示されているように、KBL1027投与群がDSS対照群に比べて大腸長さ減少幅が顕著に改善されたのを確認することができた。
図2cは、マウス剖検後、腸長さを測定する過程を示した図である。
【0089】
(4)腸の組織病理学的分析
また、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ単一菌株投与による大腸の組織病理学的変化を観察するためのヘマトキシリン&エオシン(Hematoxylin & Eosin、H&E)染色を実施した。具体的に、剖検後、大腸のdistal部分を10%中性ホルマリン溶液に固定させた後、パラフィン組織標本を5μm厚さに切片後、H&E試薬で染色し光学顕微鏡で観察した。H&E染色結果を
図3に示し、DSS対照群(DSS+PBS)で正常対照群(Water+PBS)に比べて大腸組織内炎症細胞らの浸潤および粘膜層組織の顕著な破壊を観察することができた。反面、KBL1027投与群(DSS+KBL1027)はDSS対照群(DSS+PBS)に比べて炎症が緩和されたのを組織学的に確認することができた。
【0090】
(5)マーカー遺伝子を用いた生体内炎症性疾患改善効果分析
組織の免疫細胞分析のために実施例2の実験終了時マウスの腸組織を得てRNAlater(Thermo Fisher Scientific)溶液に保存して-81℃に冷凍保管し、RNAを抽出するためにeasy-spin total RNA extraction kit(Intron)を使用した。抽出したRNAは即時同量でhigh capacity RNA-to-cDNA kit(Applied biosystems)を使用してcDNAに合成させた後、roter-gene SYBR green PCR kit(Qiagen)を使用して遺伝子発現量を分析した。抗炎症サイトカインと知られたIL-10と腸上皮細胞間膜(tight junction)と関連するZo-1、およびOccludin遺伝子をターゲットにして表4のプライマーを用い、HPRTハウスキーピング遺伝子(housekeepinggene)で発現量を補正して遺伝子発現量分析結果を
図4a(IL-10)、
図4b(Zo-1)、および
図4c(Occludin)に示した。
【0091】
【0092】
図4aに示されているように、DSS対照群(DSS+PBS)に比べてKBL1027投与群(DSS+KBL1027)で抗炎症サイトカインであるIL-10遺伝子の発現量が有意に増加した。これはフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株がIL-10生成を誘導する免疫調節を通じて生体内炎症性疾患改善効果に寄与しているのを意味する。
【0093】
図4bおよび
図4cの結果によれば、腸上皮細胞間密着結合(tight junction)と関連するZo-1とOccludinの場合、正常対照群に比べてDSS対照群(DSS+PBS)で二つの遺伝子両方とも有意な発現量減少を示した。反面、DSS対照群(DSS+PBS)に比較してKBL1027投与群(DSS+KBL1027)はZo-1およびOccludin両方とも発現量が有意に増加した。これは、KBL1027菌株投与がZo-1とOccludinの発現量を増加させて腸上皮細胞間密着結合を強化して生体内炎症性疾患緩和に役立ったのを意味する。
【0094】
実施例4.動物モデルを用いた腸内菌叢変化分析
DSSによる急性腸炎と単一菌株の定着(colonization)が誘導する腸内菌叢の変化を分析するために、実施例3の実験終了時、マウスの糞便を得て-81℃に冷凍保管した。冷凍保管された試料は実施例1の方法に沿って総バクテリアgenomicDNAを抽出およびバクテリアの16S rRNA遺伝子のV4領域をターゲットにして大容量塩基配列データを生成した。QIIME pipelineを使用して腸内細菌の全体遺伝情報を確認してマウス糞便内菌叢の構造を把握し、グループによる単変量分析(LefSE)を実施してその結果を
図5a~
図5cに示した。
【0095】
16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢をグループによって腸内菌叢の多様性変化をFaith’s Phylogenetic diversity指標で確認した結果を
図5aに示し、DSS対照群(DSS+PBS)の場合、正常対照群(Water+PBS)より腸内菌叢の多様性が有意に減少するのを確認した。これは、DSSによる急性腸炎によって、有益菌の多様性の減少および潜在的な有害菌の優占により、腸健康に否定的な影響を与えることがあるのを示唆する。一方、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027投与群(DSS+KBL1027)でDSS対照群(DSS+PBS)に比べて腸内菌叢の多様性が有意に増加し、DSM17677投与群(DSS+DSM17677)では有意性がないのを確認した。これは、同一なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株であるとしても腸内菌叢に与える影響が互いに異なるように示され、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株投与が腸内菌叢の多様性を回復させて腸健康に肯定的な影響を与えることができるのを示唆する。
【0096】
16S rRNAに基づいて分析された腸内菌叢のweighted UniFrac distanceを通じた主成分分析を実施した結果を
図5bに示し、PCA plotを通じてDSS対照群が正常対照群と非常に異なる腸内菌叢構造を有することを確認した。一方、KBL1027投与群はDSS対照群と正常対照群の間の腸内菌叢構造を有することを確認した。これは、KBL1027菌株投与が腸内菌叢を構成している種を変化させてその構造を調節(modulation)したのを示唆する。
【0097】
KBL1027菌株投与によってどんな腸内菌叢が変わったのか分析するために単変量分析(LefSE)を実施した結果を
図5cに示した。DSS対照群ではバクテロイデス(Bacteroides)属と代表的な有害菌である細胞壁がリポ多糖類(lipopolysaccharide、LPS)から構成されているプロテオバクテリア(Proteobacteria)の優占を確認した。一方、KBL1027投与群ではPrevotellaおよびParaprevotellaceaeの増加を確認した。これは、KBL1027菌株投与がこのような腸内菌叢を変化させて大膓炎緩和に役立ったのを意味する。
【0098】
実施例5.F.prausnitzii KBL1027菌株由来物質の抗炎試験
(1)KBL1027菌株特有の細胞外多糖類観察
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株間の特異性(strain specificity)を確認するために走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)を使用してバクテリア試料の3次元表面形態を観察した。
【0099】
具体的に、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026、KBL1027、そしてDSM17677菌株をYBHI培地に37℃、嫌気条件で48時間培養して得られた試料をkarnovsky’s溶液および2%osmium tetroxideを用いた固定、エタノール脱水、臨界点乾燥の前処理過程を行った。その後、試料台(stub)に固定して白金蒸着(coating)後、走査電子顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して観察した。観察写真を
図6に示し、KBL1027の場合、KBL1026およびDSM17677菌株に比べて菌株特異的に細胞表面に細胞外多糖類(extracellular polysaccharide)物質を生成することを確認した。反面、KBL1026の場合、既存の報告されたDSM17677と類似の形態の様子が観察された。このようにKBL1027菌株が特異的に生成する物質をバクテリア細胞表面の観察を通じて確認し、このような菌株特異的特性(strain specificity)はフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ種に属する他の菌株に比べてKBL1027菌株の優れた炎症性疾患緩和機能性を由来できるのを示唆する。
【0100】
(2)KBL1027菌株の細胞外多糖類による抗炎効能
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が生産する物質による免疫調節効果の検証のためにマウスの骨髄由来大食細胞(Bone-marrow derived macrophage、BMDM)を分離してフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026、KBL1027、そしてDSM17677菌株の培養液を処理して抗炎症反応に関与するサイトカインであるIL-10の生成能有無を確認した。
【0101】
具体的に、菌株の培養液を得るためにフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026、KBL1027、そしてDSM17677菌株をYBHI培地500mlに37℃、嫌気条件で48時間培養して遠心分離を通じて上澄液を得て0.45μmフィルターを行う。陰性対照群として菌株を接種していないYBHI培地を使用し、確保した培地および上澄液は-81℃に冷凍保管後、凍結乾燥して100mg/mlになるように同量に合わせてPBSに希釈して準備した。
【0102】
マウスのBMDM細胞を得るために、C57BL/6マウスの骨髄を分離してDMEM培地に10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)、15%のL292細胞培養液を、1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生剤を添加したBMDM用培地に37℃、5%CO2条件のインキュベータを用いて7日間培養した。L292細胞は韓国細胞株銀行(Korean Cell Line Bank)から購入した。
【0103】
マウスのBMDM細胞を96ウェルプレートの各ウェルに2×104cellずつ分注し24時間付着させた後、陰性対照群YBHI培地とフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1026、KBL1027、そしてDSM17677菌株の上澄液を1mg/mlの濃度で培養液に添加して交替した。また、LPSが誘導する炎症反応刺激時の反応を確認するためにLPSを100ng/mlの濃度で添加後、各菌株の上澄液を同量で添加した。陽性対照群としてLPSを10ng/ml、100ng/mlの濃度で処理し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィが生成するブチル酸代謝体との比較のためにナトリウムブチル酸(sodium butyrate、sigma aldrich)を1ng/ml、10ng/mlで処理した。その後、24時間が経過した後、培養液を集めて-81℃に冷凍保管し、その後mouse IL-10ELISA kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて製造者方式によってIL-10サイトカインの量を測定した。
【0104】
その結果は
図7に示し、マウスのBMDM細胞ではフィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株の培養液が陰性対照群であるYBHI培地、KBL1026とDSM17677菌株の培養液に比較して最も有意に抗炎症サイトカインであるIL-10生成を誘導すると確認された。また、LPSを通じた炎症反応が刺激されている状況でも陰性対照群であるYBHI培地とKBL1026菌株の培養液より有意にIL-10生成を誘導した。このような実験結果は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が特異的に生産して排出する物質が抗炎症サイトカインIL-10生成を誘導するのを意味する。
【0105】
実施例6.F.prausnitzii KBL1027菌株の比較ゲノム分析
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株間の特異性(strain specificity)を確認するために比較ゲノム分析を実施した。バクテリアのゲノム情報を確保するためにKBL1026、そしてKBL1027菌株をYBHI培地に37℃、嫌気条件で培養して実施例1の方法に沿って菌株のgenomic DNAを抽出した。KBL1026の場合はMiSeq(Illumina)を用いて大容量塩基配列データを生成してA5-MiSeqパイプラインに沿ってassembleし、その結果を下記表5に示した。KBL1027の場合はRSII(PacBio)を使用してゲノム全体情報(complete genome)を確保した。DSM17677菌株のゲノム情報はNCBIから確保して比較ゲノム分析に使用した(accession number:GCA_000162015.1)。ゲノムの平均ヌクレオチド同一性(Average Nucleotide Identity、ANI)の比較のためにJSpeciesWS(http://jspecies.ribohost.com/jspeciesws/#analyse)を通じて計算し、確保した菌株のゲノム情報の要約および比較を表5に示した。KBL1027菌株とKBL1026菌株のANI値は96.13%であり、反面、DSM17677菌株とは83.25%に計算された。これは、KBL1027菌株が既存の知られたDSM17677菌株よりKBL1026菌株とさらにゲノム塩基配列類似度が高いのを意味する。
【0106】
【0107】
確保したフィーカリバクテリウムプラウスニッツィ菌株のゲノム情報に基づいてRAST(https://rast.nmpdr.org/)を使用してRASTtkパイプラインに沿ってannotationを行って比較ゲノム分析を実施した。DSM17677菌株と比較してKBL1027菌株のゲノムに特異的に存在する遺伝子は総61個であり、KBL1026菌株と比較してKBL1027菌株のゲノムに特異的に存在する遺伝子は総15個であった。これは、KBL1027菌株がDSM17677菌株と低いANI値を有したためさらに多くの遺伝子が特異的に存在すると解釈される。二つの比較菌株であるKBL1026菌株とDSM17677菌株とそれぞれ比較した時、KBL1027菌株のゲノムにのみ特異的に存在する遺伝子の個数をその機能特性によって
図8に示した。
【0108】
このうち、実施例5で明らかになった細胞外多糖類(extracellular polysaccharide)物質生成と関連した細胞壁とカプセル(Cell Wall and Capsule)機能の場合、KBL1026菌株と比較すれば7個、DSM17677菌株と比較すれば10個の遺伝子がKBL1027菌株特異的に存在するのを確認した。
【0109】
その次に、KBL1026菌株とDSM17677菌株には全てなく、KBL1027菌株のゲノムにのみ特異的に存在する遺伝子13個(下記(1)~(13))を確認し、このうち、7個(下記(1)~(7))が細胞壁とカプセル(Cell Wall and Capsule)機能に属するのを確認した:
(1)Exopolysaccharide biosynthesis glycosyltransferase EpsF(EC 2.4.1.-)
(2)Tyrosine-protein kinase EpsD(EC 2.7.10.2)
(3)Alpha-D-GlcNAc alpha-1,2-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpA
(4)Alpha-L-Rha alpha-1,3-L-rhamnosyltransferase(EC 2.4.1.-)rgpB
(5)capsular polysaccharide biosynthesis protein
(6)Lipoprotein releasing system ATP-binding protein LolD
(7)Putative N-acetylgalactosaminyl-diphosphoundecaprenol glucuronosyltransferase TuaG
(8)Predicted transcriptional regulator of N-Acetylglucosamine utilization, GntR family NagQ
(9)Membrane-bound lytic murein transglycosylase B(EC 3.2.1.-)
(10)Inosine-uridine preferring nucleoside hydrolase(EC 3.2.2.1)
(11)LysR family transcriptional regulator YnfL
(12)Cation efflux system protein CusA
(13)Cobalt-zinc-cadmium resistance protein CzcA
【0110】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株のゲノムに特異的に存在する細胞壁とカプセル(Cell Wall and Capsule)機能に属する遺伝子を
図9に示し、KBL1027菌株特異的遺伝子はエキソポリサッカライド生合成(exopolysaccharide biosynthesis)とラムノース包含グリカン(rhamnose containing glycans)の機能を果たしながらクラスタ(cluster)を成すことを確認した(
図9のB)。
図9のBは、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株のゲノム配列上で
図9のAで1、3、4、5番遺伝子のclusterを確認した結果を示した図である。このような比較ゲノム分析結果は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィKBL1027菌株が特異的に細胞外多糖類物質を生産するのを意味する。
【受託番号】
【0111】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14230BP
受託日付:2020年7月7日
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14231BP
受託日付:2020年7月7日
【0112】
【配列表】