(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】医療機器管理システム、管理サーバ、医療機器および医療機器管理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20240807BHJP
【FI】
G16H40/40
(21)【出願番号】P 2023529388
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2021024030
(87)【国際公開番号】W WO2022269883
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】只腰 春菜
(72)【発明者】
【氏名】徳永 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健夫
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/026176(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/110898(WO,A1)
【文献】特開2006-087689(JP,A)
【文献】特開2005-258565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品のステータスを取得し、または前記第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得する第2取得部と、
前記第1構成部品のステータスまたは前記第2識別情報と、前記第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する記録部と、
を備えることを特徴とする医療機器管理システム。
【請求項2】
前記第1医療機器は、単回使用の医療機器であり、
前記第1構成部品のステータスは、前記第1構成部品を組み込んだ医療機器が医療業務で使用された回数を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項3】
前記第1構成部品のステータスは、前記第1構成部品を組み込んだ医療機器が医療業務で使用された時間を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項4】
前記第1構成部品のステータスは、前記第1構成部品を組み込んだ医療機器が運送された回数または運送された時間を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項5】
前記第1識別情報は、前記第1医療機器に付与された識別情報である、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項6】
前記第2構成部品は、前記第1医療機器の基幹部品であり、
前記第1識別情報は、前記第2構成部品に付与された識別情報である、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項7】
前記記録部は、前記第1医療機器および前記第2医療機器を管理する管理サーバに設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項8】
前記記録部は、前記第2医療機器に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項9】
前記第1構成部品のステータスにもとづいて、前記第1構成部品が新しい医療機器に組み込めるか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部は、前記第1構成部品のステータスに含まれる医療業務で使用された回数が使用上限回数以上である場合に、新しい医療機器に組み込めないことを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項10】
前記第2識別情報にもとづいて、前記第1構成部品が新しい医療機器に組み込めるか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部は、前記記録部において前記第2識別情報に紐付けられたレコードから、前記第1構成部品が医療業務で使用された回数を導出し、当該使用された回数が使用上限回数以上である場合に、新しい医療機器に組み込めないことを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項11】
製造した前記第2医療機器に含まれる構成部品のステータスにもとづいて、前記
第2医療機器のクラスを定める分類部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項12】
前記第1医療機器および前記第2医療機器は内視鏡であり、
前記第1構成部品は、内視鏡の撮像ユニットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項13】
前記第1医療機器および前記第2医療機器は内視鏡であり、
前記第2構成部品は、内視鏡の操作部のメインフレームである、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項14】
前記第1医療機器および前記第2医療機器は内視鏡であり、
前記第2構成部品は、内視鏡の接続部のメイン部品である、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器管理システム。
【請求項15】
医療機器の管理を行う管理サーバであって、
第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得する第1取得部と、
前記第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品のステータスを取得し、または前記第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得する第2取得部と、
前記第1構成部品のステータスまたは前記第2識別情報と、前記第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する記録部と、
を備えることを特徴とする管理サーバ。
【請求項16】
複数の構成部品を有する医療機器であって、
前記構成部品を組み込んでいた別の医療機器を特定するための第1識別情報にもとづいて、前記別の医療機器に組み込まれていた前記構成部品のステータスを取得し、または前記別の医療機器に組み込まれていた前記構成部品を特定するための第2識別情報を取得する取得部と、
前記構成部品のステータスまたは前記第2識別情報と、当該医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する記録部と、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項17】
第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得し、
前記第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品のステータスを取得し、または前記第2医療機器に組み込まれる前記第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得し、
前記第1構成部品のステータスまたは前記第2識別情報と、前記第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する、
ことを特徴とする医療機器管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器を構成する部品のステータスを管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器には、医療安全および感染防止を担保するために、一度しか使用してはならないと定められている製品が存在する。このような製品は単回使用(シングルユース)医療機器と呼ばれ、医療施設で一度使用されると、専門の回収業者により回収される。
【0003】
特許文献1は、単回使用内視鏡が使用済みであるか否かを判断し、使用済みでない場合には当該内視鏡の起動を可能とし、一方、使用済みである場合には、当該内視鏡の使用が許可されていないことを示すメッセージをユーザに提示して、当該内視鏡を起動しないシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、資源の有効活用や医療廃棄物の削減等の観点から、使用済みの単回使用医療機器を、製造販売業者がその責任のもとで適切に分解、洗浄、部品交換、再組立て、滅菌等の処理を行い、再び使用できるようにする再製造が注目されている。
【0006】
単回使用医療機器を構成する部品は、繰り返し使用可能なリユース医療機器を構成する部品と比べて強度や耐久性をあえて低く設定している場合があるため、医療業務に再使用される回数や時間は制限されることが好ましい。本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療機器の構成部品のステータスを管理するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の医療機器管理システムは、第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得する第1取得部と、第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる第1構成部品のステータスを取得し、または第2医療機器に組み込まれる第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得する第2取得部と、第1構成部品のステータスまたは第2識別情報と、第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する記録部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様の管理サーバは、医療機器の管理を行う管理サーバであって、第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得する第1取得部と、第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる第1構成部品のステータスを取得し、または第2医療機器に組み込まれる第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得する第2取得部と、第1構成部品のステータスまたは第2識別情報と、第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する記録部と、を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様の医療機器は、複数の構成部品を有する医療機器であって、別の医療機器に組み込まれていた構成部品のステータスを取得し、または当該別の医療機器に組み込まれていた構成部品を特定するための識別情報を取得する取得部と、構成部品のステータスまたは識別情報と、当該医療機器を特定するための識別情報とを紐付けて記録する記録部と、を備える。
【0010】
本開示のさらに別の態様の医療機器管理方法は、第1構成部品と第2構成部品とを有する第1医療機器を特定するための第1識別情報を取得し、第1識別情報にもとづいて、第2医療機器に組み込まれる第1構成部品のステータスを取得し、または第2医療機器に組み込まれる第1構成部品を特定するための第2識別情報を取得し、第1構成部品のステータスまたは第2識別情報と、第2医療機器を特定するための第3識別情報とを紐付けて記録する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】医療機器管理システムの構成を示す図である。
【
図4】内視鏡を構成する各種部品の例を示す図である。
【
図5】使用上限回数および使用上限時間の例を示す図である。
【
図6】製造された内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す図である。
【
図7】使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す図である。
【
図8】構成部品のステータスを管理するためのフローチャートである。
【
図9】製造された内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す図である。
【
図10】使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの別の例を示す図である。
【
図11】使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの別の例を示す図である。
【
図12】使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す図である。
【
図13】使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す図である。
【
図14】構成部品のステータスを管理するためのフローチャートである。
【
図15】製造された内視鏡の構成部品のレコードの例を示す図である。
【
図16】複数のクラスに設定されている構成部品の使用上限回数および使用上限時間の例を示す図である。
【
図17】構成部品に設定されている運送上限回数および運送上限時間の例を示す図である。
【
図18】使用済み内視鏡の構成部品の運送ステータスの例を示す図である。
【
図19】スコープIDに、複数の構成部品の部品IDが紐付けられている状態を示す図である。
【
図20】特定の構成部品の部品IDに、複数の構成部品の部品IDが紐付けられている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、医療機器を構成する部品のステータスを管理する技術に関する。以下の実施例において医療機器は、単回使用(シングルユース)内視鏡であるが、内視鏡以外の単回使用医療機器であってもよい。病院などの医療施設において、単回使用内視鏡は検査に使用されると、廃棄ボックスに廃棄され、専門の回収業者は、定期的または必要に応じて、医療施設から使用済み単回使用内視鏡を回収して、医療機器メーカに運び込む。医療機器メーカは、使用済みの単回使用内視鏡を分解して部品を洗浄し、洗浄した複数の部品を組み合わせて単回使用内視鏡を再製造する。
【0014】
単回使用内視鏡を構成する部品の強度や耐久性は部品ごとに異なるため、内視鏡検査に使用可能な回数や使用可能な時間は、部品ごとに適切に設定される必要がある。そこで実施例の医療機器管理システムは、内視鏡の構成部品ごとに、これまでの使用実績や運送実績に応じて、新しい単回使用内視鏡に組み込めるか否かを判定する機能を有する。
【0015】
図1は、実施例における医療機器管理システム1の構成を示す。医療機器管理システム1は、単回使用内視鏡(以下、単に「内視鏡」と呼ぶこともある)の構成部品のステータスを管理する。医療機器管理システム1は、医療施設内に設けられる施設システム2と、医療施設の外部に設けられる外部システム3を備え、施設システム2と外部システム3は、インターネット4により通信可能に接続される。外部システム3は、内視鏡を医療施設に提供し、且つ、医療施設から回収した使用済み内視鏡を分解して部品を取り出し、新しい内視鏡を再製造する医療機器メーカによって運営されてよい。
【0016】
施設システム2は、制御装置10、画像記録装置14および施設管理部20を備える。制御装置10、画像記録装置14および施設管理部20は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク22によって通信可能に接続される。ネットワーク22は、ルータ18経由で、インターネット4に接続する。
【0017】
制御装置10は検査室に設けられ、医療機器である内視鏡を接続されて、内視鏡の機能を制御する。医療従事者が制御装置10に設けられた検査開始ボタンを操作すると、制御装置10は、内視鏡が撮影している患者体内の画像を表示装置12に表示し、医師は、表示される臓器の各部位を観察する。医師は病変を見つけると、内視鏡のレリーズスイッチを操作して、病変を含む画像を撮影する。制御装置10は、レリーズスイッチが操作されたタイミングで画像をキャプチャして、キャプチャした画像を画像記録装置14に送信する。全ての臓器の観察が終了すると、医療従事者は制御装置10に設けられた検査終了ボタンを操作し、検査が終了する。なお制御装置10は、検査終了後に、キャプチャした複数の画像をまとめて画像記録装置14に送信してもよい。
【0018】
画像記録装置14は、内視鏡検査で撮影された画像を記録する画像サーバであり、制御装置10から送信される画像を、検査の識別情報(検査ID)に紐付けて蓄積する。撮影画像にはメタデータとして、撮影日時、内視鏡の識別情報(以下、「スコープID」とも呼ぶ)、検査オーダに関する情報等が付加されてよい。
【0019】
施設管理部20は、制御装置10から、検査に関する情報を取得する。制御装置10は内視鏡を接続されると、内視鏡からスコープIDを取得し、検査IDとともにスコープIDを施設管理部20に送信する。また制御装置10は、検査開始ボタンが操作されると、検査IDとともに検査開始情報を施設管理部20に送信し、検査終了ボタンが操作されると、検査IDとともに検査終了情報を施設管理部20に送信する。
【0020】
検査開始情報に検査開始時刻が含まれ、検査終了情報に検査終了時刻が含まれている場合、施設管理部20は、検査開始時刻および検査終了時刻を抽出し、検査IDに紐付けてスコープID、検査開始時刻および検査終了時刻を記録する。なお施設管理部20は、検査開始情報を受け取った時刻を検査開始時刻として記録し、検査終了情報を受け取った時刻を検査終了時刻として記録してもよい。施設管理部20は、検査ID、スコープID、検査開始時刻および検査終了時刻を含む検査情報を、管理サーバ100に送信する。
【0021】
外部システム3は、単回使用内視鏡を構成する部品のステータスを管理する管理サーバ100を備える。管理サーバ100は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク104に接続し、ルータ102経由でインターネット4に接続する。上記したように外部システム3は、内視鏡を医療施設に提供し、且つ内視鏡を再製造する医療機器メーカによって運営されてよい。
【0022】
図2は、管理サーバ100の機能ブロックを示す。管理サーバ100は、単回使用内視鏡の管理を行い、通信部110、第1取得部112、第2取得部114、判定部116、記録処理部118、記録部120、上限保持部122、検査情報取得部124および分類部126を備える。
図2に示す構成はハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0023】
図3は、内視鏡の外観の例を示す。内視鏡は、医師が操作する操作部30、制御装置10に接続される接続部32と、患者の体内に挿入される挿入部34を有する。操作部30、接続部32および挿入部34は、それぞれ複数の部品を組み立てることで構成される。
図4は、内視鏡を構成する各種部品の例を示す。
図4に示すように、操作部30、接続部32および挿入部34は、それぞれ様々な部品から構成されている。
【0024】
単回使用内視鏡を構成する部品は、繰り返し使用可能なリユース内視鏡を構成する部品と比べて強度や耐久性をあえて低く設定している場合があるため、新しい医療機器に組み込まれて医療業務に使用される回数や時間は制限されることが好ましい。そこで実施例の医療機器管理システム1では、単回使用内視鏡の構成部品のそれぞれに、検査に使用可能な上限回数と、使用可能な上限時間とが設定されている。
【0025】
図5は、単回使用内視鏡の構成部品に設定されている使用上限回数および使用上限時間の例を示す。なお
図5は、代表して、単回使用内視鏡を構成する6つの部品の使用上限回数および使用上限時間を示しているが、これら以外の構成部品の使用上限回数および使用上限時間が設定されてよい。
【0026】
上限保持部122は、各構成部品の使用上限回数および使用上限時間を保持する。使用上限回数は、検査に使用される回数の最大値であり、言い換えると、検査に使用される内視鏡に当該構成部品が組み込まれる回数の最大値である。使用上限時間は、検査に使用される時間の最大値であり、言い換えると、当該構成部品を組み込んだ内視鏡が検査に使用される時間の合計の最大値である。構成部品の使用実績が、使用上限回数または使用上限時間のいずれかを超えると、当該構成部品は廃棄される。実施例で上限保持部122は、使用上限回数および使用上限時間を保持するが、いずれか一方のみを保持してもよい。使用上限回数および使用上限時間は、安全性に配慮して、医療機器メーカにより設定されてよい。
【0027】
(実施例1)
記録部120は、構成部品が内視鏡検査で使用された実績を記録し、構成部品の使用ステータスを管理する。実施例1の記録部120は、製造された内視鏡の識別情報(スコープID)に対応付けて、当該内視鏡を構成する部品の使用回数および使用時間の積算値を記録する。部品の使用回数は、当該部品を組み込んだ内視鏡が検査で使用された回数であり、部品の使用時間は、当該部品を組み込んだ内視鏡が検査で使用された時間の合計である。
【0028】
図6は、製造された内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す。医療機器メーカは、部品を組み立てて製造した単回使用内視鏡にスコープIDを付与する。この例では、製造された内視鏡が、スコープID“2001”を付与されており、記録処理部118は、スコープID“2001”に紐付けて、部品名称、使用回数および使用時間を、記録部120に記録する。各構成部品に対応づけられた使用回数および使用時間は、これまでの積算値であり、各構成部品の使用ステータスを構成する。
【0029】
湾曲ドラム(湾曲操作プーリー)は、使用回数が0回、使用時間が0時間の使用ステータスを有する。使用回数が0回、使用時間が0時間の使用ステータスは、当該湾曲ドラムが新品であることを示す。
【0030】
湾曲レバー(湾曲操作ノブ)は、使用回数が3回、使用時間が2時間の使用ステータスを有する。ここで3回の使用回数は、当該湾曲レバーが、過去に、3本の内視鏡に組み込まれて、3回の検査で使用されたことを意味し、2時間の使用時間は、過去に使用された3回の検査の合計時間が2時間であることを意味する。
【0031】
コネクタは、使用回数が15回、使用時間が8時間の使用ステータスを有する。上記したように、使用回数が15回ということは、当該コネクタが、過去に、15本の内視鏡に組み込まれて、15回の検査で使用されたことを意味する。
【0032】
記録処理部118は、各構成部品の最新の使用ステータスを、それぞれが直近に組み込まれていた内視鏡のスコープIDにもとづいて記録部120から読み出して、スコープID“2001”に紐付けたレコードを作成する。未使用/使用済の項目は、内視鏡が医療施設で、まだ使用されていないか、使用済みであるかを示し、内視鏡が製造された時点では「未使用」に設定される。
【0033】
製造された単回使用内視鏡は滅菌パックに包装され、個装箱に入れられた状態で、内視鏡の製造施設から医療施設に運送される。医療施設において単回使用内視鏡は、個装箱に入れられた状態のまま保管庫に保管され、内視鏡検査で使用されるときに、保管庫から取り出されて、検査室に運び込まれる。検査開始前、医療従事者は、滅菌パックを開封して内視鏡を取り出し、制御装置10に接続する。以下の説明では、スコープID“2001”の内視鏡が制御装置10に接続される。
【0034】
制御装置10は内視鏡を接続されると、内視鏡からスコープID“2001”を取得し、検査IDとともにスコープID“2001”を施設管理部20に送信する。医療従事者が検査開始ボタンを操作すると、制御装置10は、検査IDとともに検査開始情報を施設管理部20に送信する。医師による観察が終了し、医療従事者が検査終了ボタンを操作すると、制御装置10は、検査IDとともに検査終了情報を施設管理部20に送信する。実施例1において施設管理部20は、検査開始時刻“2021/6/15 10:15”、検査終了時刻“2021/6/15 11:15”を取得し、検査IDに紐付けてスコープID“2001”、検査開始時刻“2021/6/15 10:15”および検査終了時刻“2021/6/15 11:15”を検査情報として記録する。施設管理部20は、検査終了情報を受け取った後、検査ID、スコープID、検査開始時刻および検査終了時刻を含む検査情報を、管理サーバ100に送信する。施設管理部20は、医療施設における1日の業務終了後に、検査情報を管理サーバ100に送信してもよい。
【0035】
管理サーバ100において、通信部110が検査情報を受信し、検査情報取得部124が検査情報を取得する。検査情報取得部124は、取得した検査情報を、記録処理部118に提供する。上記したように検査情報は、検査ID、スコープID“2001”、検査開始時刻“2021/6/15 10:15”および検査終了時刻“2021/6/15 11:15”を含む。記録処理部118は、記録部120において、スコープID“2001”のレコード(
図6参照)を特定する。
【0036】
記録処理部118は、検査情報にもとづいて、当該内視鏡を構成する部品の使用ステータスを更新する。まず記録処理部118は、検査開始時刻“2021/6/15 10:15”および検査終了時刻“2021/6/15 11:15”から、検査が実施された時間(検査時間)を、1時間と導出する。
【0037】
図7は、使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す。
図6に示す使用ステータスと比べると、2021/6/15に実施された検査の実績が反映されており、各構成部品の使用回数が“1回”加算され、使用時間が“1時間”加算されている。記録処理部118は、レコード項目を更新して、記録部120に記録する。なお記録処理部118は、レコード項目を更新すると、未使用/使用済の項目を「使用済」に変更し、使用された日(検査日)を登録する。したがって記録部120には、2021/6/15の時点で、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれた構成部品の最新のステータスが記録される。
【0038】
医療施設において使用された内視鏡は、専門の回収業者により回収されて、医療機器メーカに運送される。医療機器メーカは、使用済み内視鏡を分解して、部品を洗浄する。判定部116は、各構成部品の使用ステータスにもとづいて、各構成部品が新しい内視鏡に組み込めるか否かを判定し、組み込めることが可能な構成部品は、製造工程に回される。
【0039】
図8は、構成部品のステータスを管理するためのフローチャートである。使用済み内視鏡が医療機器メーカに運び込まれると、第1取得部112は、使用済み内視鏡を特定するための識別情報を取得する(S10)。第1取得部112は、識別情報として、使用済み内視鏡のスコープIDを取得する。たとえば内視鏡の接続部がスコープIDを記録したRFタグを有している場合、第1取得部112は、RFタグからスコープIDを読み取る機能を有してよい。ここでは第1取得部112は、スコープID“2001”を取得する。
【0040】
実施例1では、スコープID“2001”に組み込まれていた構成部品が、特定の新しい内視鏡に組み込まれることを予定されている。なおスコープID“2001”に組み込まれていた各構成部品は、同じ内視鏡に組み込まれることが予定されていてもよいが、別の内視鏡に組み込まれることが予定されていてもよい。いずれにしても管理サーバ100は、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた構成部品が新しく組み込まれる内視鏡を認識していてよい。言い換えると、管理サーバ100は、新しく製造する内視鏡に組み込まれる各構成部品がそれぞれ直近に組み込まれていた内視鏡のスコープIDを認識していてよい。
【0041】
第2取得部114は、第1取得部112が取得した内視鏡のスコープID“2001”にもとづいて、新しい内視鏡に組み込まれる構成部品の使用ステータスを取得する(S12)。具体的に第2取得部114は、記録部120を参照して、スコープID“2001”を含むレコード(
図7参照)から、新しい内視鏡に組み込まれる予定の構成部品の使用ステータスを取得する。
【0042】
判定部116は、第2取得部114が取得した構成部品のステータスにもとづいて、当該構成部品が新しい内視鏡に組み込めるか否かを判定する(S14)。具体的に判定部116は、記録部120に記録された構成部品の使用回数および使用時間と、上限保持部122に保持された部品の使用上限回数および使用上限時間とを比較する。判定部116は、当該構成部品の使用ステータスに含まれる使用回数が使用上限回数以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定し、また当該構成部品の使用ステータスに含まれる使用時間が使用上限時間以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定する(S14のN)。再使用不可であることを判定された構成部品は、廃棄されてよい(S16)。
【0043】
図7に示すレコードにおいて、撮像ユニットの使用回数が5回であり、撮像ユニットの使用上限回数である5回(
図5参照)に到達している。したがって判定部116は、撮像ユニットが使用上限回数まで使用されたことを判定し、新しい内視鏡に組み込めないことを判定する。
【0044】
また
図7に示すレコードにおいて、蛇管の使用時間が3.5時間であり、蛇管の使用上限時間である3時間(
図5参照)を超えている。したがって判定部116は、蛇管の使用時間が使用上限時間を超えたことを判定し、新しい内視鏡に組み込めないことを判定する。再使用不可であることを判定された構成部品は、すみやかに廃棄されることが好ましい。当該構成部品は、ただちに廃棄されることが好ましいが、ただちに廃棄しない場合には、再使用されることがないように管理される必要がある。なお再使用不可であることを判定された撮像ユニットおよび蛇管の代わりに、使用可能な撮像ユニットおよび蛇管が、新しい内視鏡に対して割り当てられてよい。
【0045】
判定部116は、構成部品の使用ステータスに含まれる使用回数が使用上限回数未満であり、且つ当該構成部品の使用ステータスに含まれる使用時間が使用上限時間未満である場合に、当該構成部品が新しい内視鏡に組み込めることを判定する(S14のY)。
図7に示すレコードにおいて、湾曲ドラム、湾曲レバー、コネクタ、湾曲管の使用回数および使用時間は、それぞれ使用上限回数未満および使用上限時間未満である。したがって判定部116は、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた湾曲ドラム、湾曲レバー、コネクタ、湾曲管が、新しい内視鏡に組み込み可能であること、つまり再使用可能であることを判定する。
【0046】
再使用可能であることを判定された構成部品は、製造工場において、予定されていた内視鏡に組み込まれる(S18)。なおスコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた各構成部品が組み込まれる内視鏡は、同じであってもよいが、異なっていてもよい。以下、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた湾曲管が、新しく製造されるスコープID“2915”の内視鏡に組み込まれる場合について説明する。
【0047】
スコープID“2915”の内視鏡に関し、記録処理部118は、記録部120に、スコープID“2915”の内視鏡の構成部品の使用ステータスを記録する。記録処理部118は、スコープID“2915”に紐付けて、当該内視鏡を構成する部品の名称、使用回数および使用時間を、記録部120に記録する。
【0048】
具体的に記録処理部118は、第2取得部114が取得したスコープID“2001”を含むレコード(
図7参照)から、湾曲管の使用ステータスを抽出する。この例で湾曲管の使用ステータスは、使用回数が2回、使用時間が2時間の使用実績を含む。記録処理部118は、新しい内視鏡のスコープID“2915”に、湾曲管の使用ステータスを紐付けて記録する(S20)。
【0049】
図9は、製造された内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す。記録部120は、スコープID“2915”に紐付けて、新しい内視鏡を構成する部品の名称、使用回数および使用時間を記録する。
【0050】
上記したように、湾曲管の使用回数および使用時間の項目には、スコープID“2001”のレコードに記録されていた使用回数および使用時間(
図7参照)が記録される。したがって記録部120には、湾曲管の最新使用ステータスがスコープID“2915”に紐付けられて記録される。なお
図9を参照して、当該内視鏡には、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた湾曲ドラムも組み込まれており、当該湾曲ドラムの使用ステータスには、スコープID“2001”のレコードに記録されていた最新使用ステータスが反映されている。
【0051】
スコープID“2915”の内視鏡において、湾曲レバー、コネクタ、撮像ユニットは、スコープID“2001”の内視鏡とは別の内視鏡から取り出されたものが再使用されている。また蛇管には、新規部品が採用されている。実施例1では、記録部120が、新しく製造する内視鏡のスコープIDに、各構成部品の最新の使用ステータスを紐付けて記録することで、当該内視鏡が使用された後、判定部116が、各構成部品が再使用可能であるか否かを容易に判定することが可能となる。
【0052】
(実施例2)
以上の実施例1では、構成部品の識別情報(部品ID)を利用していないが、実施例2において記録部120は、内視鏡のスコープIDに紐付けて、構成部品の部品ID、使用回数および使用時間を記録する。
【0053】
図10は、使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの別の例を示す。
図7に示す使用ステータスと比べると、各構成部品が、部品IDによって管理されている。
部品ID“AA2013”の湾曲ドラムは、使用回数が1回、使用時間が1時間の使用ステータスを有する。使用回数が1回ということは、部品ID“AA2013”の湾曲ドラムを組み込んだ内視鏡が、スコープID“2001”の内視鏡のみであることを意味する。
【0054】
部品ID“FF0313”の湾曲管は、使用回数が2回、使用時間が2時間の使用ステータスを有する。2回の使用回数は、部品ID“FF0313”の湾曲管が、過去に、2本の内視鏡に組み込まれて、2回の検査で使用されたことを意味する。そのため、記録部120には、部品ID“FF0313”の湾曲管を組み込んだ内視鏡のレコードが2つ記録されており、
図10に示すレコードは、そのうちの1つである。
【0055】
図11は、使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの別の例を示す。
図11は、スコープID“1935”の内視鏡であって、部品ID“FF0313”の湾曲管を組み込んだ内視鏡のレコードを示す。このように記録部120において、部品ID“FF0313”の湾曲管の使用ステータスは、
図10に示すレコードと、
図11に示すレコードに記録されている。
【0056】
新しい内視鏡の製造に際し、記録処理部118は、各構成部品の部品IDを取得すると、記録部120において各構成部品の最新のレコードを探索する。部品ID“FF0313”の湾曲管がスコープID“2915”の内視鏡に組み込まれるとき、記録処理部118は、部品ID“FF0313”の使用ステータスを含むレコードを複数見つけると、そのうちの最新のレコードに含まれる使用ステータスを取得する。
図10に示すレコードと、
図11に示すレコードを比較すると、
図10に示すレコードの方が使用日が新しいため、記録処理部118は、
図10に示すレコードから部品ID“FF0313”の使用ステータスを取得して、新しく製造する内視鏡のスコープID“2915”に、当該使用ステータスを紐付けて記録してよい。
【0057】
なおレコードの使用日を用いない場合、記録処理部118は、記録部120に含まれる部品ID“FF0313”のステータスのうち、使用回数および使用時間の最大値を、最新の使用ステータスとして抽出してもよい。使用回数および使用時間の値は、新しいレコードほど大きくなるため、記録処理部118は、使用回数および使用時間の最大値を抽出することで、最新の使用ステータスを特定してもよい。
【0058】
部品IDを用いて構成部品を管理する場合、
図8に示すフローチャートにおいて、構成部品が再使用不可であることを判定されると(S14のN)、当該構成部品の部品IDを、廃棄する部品または使用不可である部品の部品IDとして登録して管理してもよい。このような管理を行うことで、再使用不可であると判定された当該構成部品が、新しい内視鏡に組み込まれて再使用されることを禁止できる。
【0059】
(実施例3)
実施例1,2では、構成部品のステータスとして、使用回数および使用時間が積算されて記録部120に記録されている例を示したが、実施例3では、構成部品のステータスとして、検査で使用された時間を記録し、複数の検査にまたがる積算値を記録しない。以下、実施例3における部品ID“FF0313”の湾曲管の使用ステータスについて説明する。なお部品ID“FF0313”の湾曲管は、過去に2回の検査で使用されたものとする。
【0060】
図12は、実施例3における使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す。
図12は、スコープID“1935”の内視鏡であって、部品ID“FF0313”の湾曲管を組み込んだ内視鏡のレコードを示す。使用日(検査日)は2021/5/13である。当該内視鏡を使用した検査時間は1時間であり、したがって湾曲管を含む複数の構成部品に対応付けられて、1時間の使用時間が記録されている。
【0061】
図13は、使用済み内視鏡の構成部品の使用ステータスの例を示す。
図13は、スコープID“2001”の内視鏡であって、部品ID“FF0313”の湾曲管を組み込んだ内視鏡のレコードを示す。使用日(検査日)は2021/6/15である。当該内視鏡を使用した検査時間は1時間であり、したがって湾曲管を含む複数の構成部品に対応付けられて、1時間の使用時間が記録されている。
【0062】
図14は、構成部品のステータスを管理するためのフローチャートである。使用済み内視鏡が医療機器メーカに運び込まれると、第1取得部112は、使用済み内視鏡を特定するための識別情報を取得する(S30)。第1取得部112は、識別情報として、使用済み内視鏡のスコープIDを取得し、ここでは第1取得部112が、スコープID“2001”を取得する。
【0063】
実施例3では、スコープID“2001”に組み込まれていた構成部品が、特定の新しい内視鏡に組み込まれることを予定されていてよい。管理サーバ100は、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた構成部品が、新しく組み込まれる内視鏡を認識している。言い換えると、管理サーバ100は、新しく製造する内視鏡に組み込まれる各構成部品がそれぞれ直近に組み込まれていた内視鏡のスコープIDを認識している。
【0064】
第2取得部114は、第1取得部112が取得した内視鏡のスコープID“2001”にもとづいて、新しい内視鏡に組み込まれる構成部品を特定するための識別情報(部品ID)を取得する(S32)。具体的に第2取得部114は、記録部120を参照して、スコープID“2001”を含むレコード(
図13参照)から、新しい内視鏡に組み込まれる予定の構成部品の部品IDを取得する。この例で第2取得部114は、部品ID“FF0313”を取得する。
【0065】
判定部116は、第2取得部114が取得した構成部品の部品IDにもとづいて、当該構成部品が新しい内視鏡に組み込めるか否かを判定する(S34)。具体的に判定部116は、記録部120において当該部品IDを含むレコードを特定し、特定した1以上のレコードにもとづいて当該構成部品の使用回数および使用時間を導出する。このとき判定部116は、特定したレコードの数を、当該構成部品の使用回数としてよい。また判定部116は、各レコードに含まれる使用時間を合計して、当該構成部品の使用時間を導出してよい。
【0066】
判定部116は、導出した構成部品の使用回数および使用時間と、上限保持部122に保持された部品の使用上限回数および使用上限時間とを比較する。判定部116は、導出した使用回数が使用上限回数以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定し、また導出した使用時間が使用上限時間以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定する(S34のN)。再使用不可であることを判定された構成部品は、廃棄されてよい(S36)。
【0067】
判定部116は、導出した使用回数が使用上限回数未満であり、且つ導出した使用時間が使用上限時間未満である場合に、当該構成部品が新しい内視鏡に組み込めることを判定する(S34のY)。
図12、
図13に示すレコードから、部品ID“FF0313”の湾曲管の使用回数は2回、使用時間は2時間と導出されるが、導出された使用回数および使用時間は、湾曲管に設定されている使用上限回数未満および使用上限時間未満である。したがって判定部116は、部品ID“FF0313”の湾曲管が、新しい内視鏡に組み込み可能であること、つまり再使用可能であることを判定する。
【0068】
再使用可能であることを判定された構成部品は、製造工場において、予定されていた内視鏡に組み込まれる(S38)。以下、スコープID“2001”の内視鏡に組み込まれていた部品ID“FF0313”の湾曲管が、新しく製造されるスコープID“2915”の内視鏡に組み込まれる場合について説明する。
【0069】
スコープID“2915”の内視鏡に関し、記録処理部118は、記録部120に、スコープID“2915”の内視鏡のレコードを作成する。
図15は、製造された内視鏡の構成部品のレコードの例を示す。記録部120は、スコープID“2915”に紐付けて、新しい内視鏡を構成する部品IDを記録する(S40)。実施例3では、スコープID“2915”の内視鏡が使用されていない状態では、使用時間の項目はブランクであり、内視鏡が使用されると、記録処理部118は、使用時間を記録する。実施例3では、記録部120が、新しく製造する内視鏡のスコープIDに、各構成部品の部品IDを紐付けたレコードを記録し、当該内視鏡が使用された後、その使用時間のみを記録するため、記録部120におけるレコード管理を容易に実現できる。
【0070】
(実施例4)
実施例4では、再製造する内視鏡にクラスが設定され、構成部品の使用ステータスによって内視鏡がクラス分けされる。
図16は、単回使用内視鏡の複数のクラスに設定されている構成部品の使用上限回数および使用上限時間の例を示す。なお
図16は、代表して、単回使用内視鏡を構成する6つの部品の使用上限回数および使用上限時間を示しているが、これら以外の構成部品の使用上限回数および使用上限時間が、内視鏡のクラスごとに設定されてよい。
【0071】
<新品クラス>
新品クラスは、全ての構成部品に新品を採用したクラスである。そのため、組み込む構成部品の使用上限回数は0回、使用上限時間は0回に設定される。
<長時間使用クラス>
長時間使用クラスは、長時間の検査における使用を保証するクラスである。そのため、組み込む構成部品の使用上限回数および使用上限時間は、比較的小さい値に設定される。
<短時間使用クラス>
短時間使用クラスは、短時間の検査における使用を保証するクラスである。そのため、組み込む構成部品の使用上限回数および使用上限時間は、長時間使用クラスと比べて、大きい値に設定されてよい。
【0072】
上限保持部122は、クラスごとに、各構成部品の使用上限回数および使用上限時間を保持する。実施例4で上限保持部122は、使用上限回数および使用上限時間を保持するが、いずれか一方のみを保持してもよい。使用上限回数および使用上限時間は、安全性に配慮して、医療機器メーカにより設定されてよい。内視鏡の販売価格、リース料、契約料などは、クラスに応じて定められてよく、新品クラス、長時間使用クラス、短時間使用クラスの順に高額に設定されてよい。
【0073】
あるクラスの内視鏡を再製造する場合、判定部116は、そのクラスに設定された各構成部品の使用上限回数および使用上限時間にもとづいて、内視鏡の再製造に予定されている部品が使用可能であるか否かを判定する。たとえば長時間使用クラスの内視鏡を製造する場合、判定部116は、長時間使用クラスの各構成部品に設定された使用上限回数未満および使用上限時間未満の使用ステータスを有する部品のみを、長時間使用クラスの内視鏡に使用できることを判定する。このように内視鏡のクラスを設定することで、患者の希望にマッチした内視鏡を検査に使用することが可能となる。
【0074】
分類部126は、新しく製造した内視鏡に含まれる構成部品の使用ステータスにもとづいて、当該内視鏡のクラスを定めてよい。具体的に分類部126は、内視鏡を、すべての構成部品の使用ステータスが条件を満足するクラスであって、より再使用率の低いクラスに分類する。なお再使用率は、新品クラス、長時間使用クラス、短時間使用クラスの順に低い。以下、
図9に示す内視鏡のレコードに関して説明する。
【0075】
図9に示すレコードにおいて、蛇管は新品であり、新品クラスの条件、長時間使用クラスの条件、短時間使用クラスの条件のいずれをも満たしている。次に、湾曲ドラム、湾曲レバーの使用ステータスは、長時間使用クラスの条件および短時間使用クラスの条件を満たしている。コネクタ、撮像ユニット、湾曲管の使用ステータスは、短時間使用クラスの条件のみを満たしている。このように、すべての構成部品の使用ステータスが短時間使用クラスの条件を満たしているため、分類部126は、
図9に示すスコープID“2915”の内視鏡を、短時間使用クラスに分類する。このように再製造後の内視鏡を分類することで、患者の希望にマッチした内視鏡を検査に使用することが可能となる。
【0076】
(実施例5)
単回使用内視鏡は、滅菌パックに包装された状態で医療施設に運送され、医療施設で使用されると、医療施設から医療機器メーカに運送される。単回使用内視鏡を構成する部品は、強度や耐久性をあえて低く設定している場合があるため、運送される回数が多かったり、また運送にかかる時間が長いと、品質が劣化する可能性がある。そこで実施例5では、記録部120が、構成部品が運送された実績を記録し、構成部品の運送ステータスを管理する。
【0077】
図17は、単回使用内視鏡の構成部品に設定されている運送上限回数および運送上限時間の例を示す。
図17は、代表して、単回使用内視鏡を構成する6つの部品の運送上限回数および運送上限時間を示しているが、これら以外の構成部品の運送上限回数および運送上限時間が設定されてよい。
【0078】
上限保持部122は、各構成部品の運送上限回数および運送上限時間を保持する。運送上限回数は、運送される回数の最大値であり、運送上限時間は、運送される時間の合計の最大値である。構成部品の運送実績が、運送上限回数または運送上限時間のいずれかを超えると、当該構成部品は廃棄されてよい。実施例で上限保持部122は、運送上限回数および運送上限時間を保持するが、いずれか一方のみを保持してもよい。運送上限回数および運送上限時間は、安全性に配慮して、医療機器メーカにより設定されてよい。
【0079】
実施例5において、記録部120は、構成部品が運送された実績を記録し、構成部品の運送ステータスを管理する。実施例5の記録部120は、製造された内視鏡の識別情報(スコープID)に対応付けて、当該内視鏡を構成する部品の運送回数および/または運送時間の積算値を記録してよい。製造工場から医療施設に運送された内視鏡は、使用された後、医療施設から製造工場に運送される。記録処理部118は、内視鏡の運送ルートから、内視鏡が運送された運送時間を導出して、記録部120に記録してよい。なお運送される内視鏡を収容する収容箱に、GPS受信機や、各種センサを設けることで、運送時間が導出されて、記録処理部118が、記録部120に記録してもよい。
【0080】
図18は、使用済み内視鏡の構成部品の運送ステータスの例を示す。内視鏡を再製造する場合、判定部116は、構成部品の運送上限回数および運送上限時間にもとづいて、再製造に予定されている部品が使用可能であるか否かを判定する。具体的に判定部116は、記録部120に記録された構成部品の運送回数および運送時間と、上限保持部122に保持された部品の運送上限回数および運送上限時間とを比較する。判定部116は、当該構成部品の運送ステータスに含まれる運送回数が運送上限回数以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定し、また当該構成部品の運送ステータスに含まれる運送時間が運送上限時間以上である場合に、新しい内視鏡に組み込めないことを判定する。
【0081】
一方、判定部116は、構成部品の運送ステータスに含まれる運送回数が運送上限回数未満であり、且つ当該構成部品の運送ステータスに含まれる運送時間が運送上限時間未満である場合に、当該構成部品が新しい内視鏡に組み込めることを判定してよい。
【0082】
以上、本開示を複数の実施例をもとに説明した。これらの複数の実施例は例示であり、複数の実施例は互いに組み合わせてよいこと、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、さらなる変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0083】
たとえば実施例1では、記録部120が、使用回数および使用時間の積算値を使用ステータスとして記録し、判定部116が、使用上限回数および使用上限時間と比較している。変形例では、記録部120が、使用の残り回数および使用の残り時間を使用ステータスとして記録し、判定部116が、閾値である0と比較してもよい。記録処理部118は、使用の残り回数を、(使用上限回数-使用回数)として導出し、使用の残り時間を、(使用上限時間-使用時間)として導出してよい。
【0084】
各実施例では、管理サーバ100が、医療施設外の外部システム3に設けられているが、施設システム2に設けられて、施設管理部20とネットワーク22で通信可能に接続されてもよい。
【0085】
各実施例では、使用済内視鏡が回収されたとき、第1取得部112は、使用済内視鏡を特定するための識別情報として、当該内視鏡に付与されたスコープIDを取得している(S10,S30)。実施例2では、内視鏡を構成する複数の部品の部品IDが、スコープIDに紐付けて管理されており、したがって第1取得部112がスコープIDを取得することで、第2取得部114が、当該スコープIDにもとづいて、新しい内視鏡に組み込まれる構成部品の使用ステータスを取得している。
図19は、スコープIDに対して、複数の構成部品の部品IDが紐付けられている状態の例を示す。このように実施例では、スコープIDに対して構成部品が紐付けられているため、第1取得部112が、使用済内視鏡を特定するための識別情報として、スコープIDを取得している。
【0086】
変形例では、第1取得部112が、使用済内視鏡を特定するための識別情報として、使用済内視鏡に組み込まれた特定の部品の識別情報を取得する。この変形例において、当該特定の部品の識別情報は、内視鏡を特定するための識別情報として利用される。たとえば当該特定の部品は、内視鏡の基幹部品であり、たとえば操作部のメインフレーム(地板等と称される、各種部品や操作装置が実装される板状又は筒状の部材)や、チャンネル分岐部品の本体、接続部のメイン部品(たとえばRFタグを搭載して制御装置10と信号を送受する回路部品や、コネクタ筐体のメインフレーム)であってよい。つまり変形例では、内視鏡を構成する1つの部品に付与された部品IDを、当該内視鏡を特定するための識別情報として利用してよい。
【0087】
図20は、特定の構成部品の部品IDに対して、内視鏡の複数の構成部品の部品IDが紐付けられている状態の例を示す。この例では、操作部のメインフレームの部品IDが、内視鏡を特定するための識別情報として利用され、操作部メインフレームの部品IDに、内視鏡を構成する複数の構成部品の部品IDが紐付けられている。なお複数の部品の中で、内視鏡を代表する部品は、接続部のメイン部品であってもよい。
【0088】
なお、基幹部品が廃棄される場合、当該基幹部品の部品IDに紐付けられて、使用ステータスを管理されている構成部品が全て廃棄されるまで、記録処理部118は、当該基幹部品に関するレコードを記録部120に保持することが好ましい。
【0089】
構成部品の使用回数や使用時間は、内視鏡に異常が生じたときの解析のための材料として利用されてよい。内視鏡に異常が生じたときに、構成する部品の使用回数や使用時間を解析することで、適切な使用上限回数や使用上限時間が再設定されてもよい。
【0090】
実施例では、管理サーバ100が第2取得部114、記録部120を保持しているが、内視鏡に、当該内視鏡を構成する部品のステータス、および/または、当該内視鏡を構成する部品の部品IDを取得して、当該内視鏡の識別情報に紐付けて記録する構成を設けてもよい。つまり内視鏡に、管理サーバ100の一部の機能である第2取得部114、記録部120の機能をもたせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、医療機器を構成する部品のステータスを管理する技術分野に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・医療機器管理システム、2・・・施設システム、3・・・外部システム、100・・・管理サーバ、102・・・ルータ、104・・・ネットワーク、110・・・通信部、112・・・第1取得部、114・・・第2取得部、116・・・判定部、118・・・記録処理部、120・・・記録部、122・・・上限保持部、124・・・検査情報取得部、126・・・分類部。