(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】内燃エンジンにおけるバルブ作動を制御するための回転アクチュエータシステム
(51)【国際特許分類】
F01L 13/08 20060101AFI20240807BHJP
F02N 99/00 20100101ALI20240807BHJP
【FI】
F01L13/08 F
F02N99/00 A
(21)【出願番号】P 2023530660
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2021061332
(87)【国際公開番号】W WO2022118287
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロン、ジュニア、ジー. マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】バルトラッキ、ジャスティン、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンソン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ニール、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】スワンボン、ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ジャナック、ロブ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、マテイ
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-8896(JP,A)
【文献】特開2013-130198(JP,A)
【文献】特開2016-138538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34- 1/356
F01L 9/00- 9/40
F01L 13/00-13/08
F02N 1/00-99/00
F01L 1/00- 1/32
F01L 1/36- 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンバルブと、少なくとも1つの運動伝達構成要素によって前記エンジンバルブに動作可能に接続されたバルブ作動運動源と、を備える内燃エンジンにおける、前記エンジンバルブの作動を制御するためのシステムであって、前記システムが、
ピボットと、
第1及び第2の脚部を有し、前記ピボットに動作可能に接続されたねじりばねと、
前記ピボットに調節可能に固設されており、前記ピボットから離れて伸長し、前記少なくとも1つの運動伝達構成要素のうちのある運動伝達構成要素に対して後退位置と伸長位置との間及びその逆で前記ピボットのピボット軸を中心に回転可能なレバーアームと、
内部に形成されたピボットボアを有し、前記ピボットが、前記ピボットボア内に回転可能に配設されたハウジングであって、前記ハウジングが、前記ピボットボアと交差する第1の開口部と、前記ピボットボアと交差する第2の開口部と、を更に備え、そのため、前記第1及び第2の脚部が、前記第1の開口部から伸長し、前記レバーアームが、前記第2の開口部から伸長する、ハウジングと、を備え、
前記後退位置において、前記レバーアームが、前記エンジンバルブの作動に実質的に影響を及ぼさず、前記伸長位置において、前記レバーアームが、前記運動伝達構成要素に接触するように位置決めされ、それによって、前記エンジンバルブの作動を制御し、
第1の力が、前記運動伝達構成要素によって前記レバーアームに印加されると、前記レバーアームを前記伸長位置に維持する、システム。
【請求項2】
付勢力を印加して、前記レバーアームを前記後退位置に回転させるように構成された付勢要素であって、前記運動伝達構成要素によって印加された前記第1の力が、前記付勢要素によって印加された前記付勢力に打ち勝つのに十分である、付勢要素を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の開口部が、第1の停止面及び第2の停止面を画定し、前記第1の停止面が、前記後退位置の範囲を定めるように構成され、前記第2の停止面が、前記伸長位置の範囲を定めるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の停止面が、前記第1の力の印加方向に対して0でない角度で前記レバー
アームを位置決めするように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記レバーアームが、前記レバーアームの遠位端に配設されたスイベルカップを更に備え、前記スイベルカップは、前記レバーアームが前記後退位置にあるときに前記第1の停止面に接触し、前記レバーアームが前記伸長位置にあるときに前記第2の停止面に接触するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の力が、エンジンバルブばねによって前記エンジンバルブに印加され、それによって、前記運動伝達構成要素に印加された閉鎖力である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
作動状態と非作動状態とを有するリニアアクチュエータと、
ハウジング上に摺動可能に取り付けられ、前記リニアアクチュエータに動作可能に接続された摺動ラックと、
前記リニアアクチュエータが前記非作動状態にあるときに、前記摺動ラックを開始位置に付勢するように構成された付勢要素と、を更に備え、
前記リニアアクチュエータが前記作動状態にあるときに、前記摺動ラックが、前記付勢要素の付勢に抗して、完全変位位置に移動し、
前記ねじりばねの前記第1及び第2の脚部が、前記摺動ラック内に形成されたスロットと交差するように構成されており、
前記開始位置において、前記第1の力が前記運動伝達構成要素によって前記レバーアームに印加されていないとき、前記スロットは、前記ねじりばねの前記第1の脚部と係合し、前記レバーアームを前記後退位置に位置決めし、
前記開始位置において、前記第1の力が前記運動伝達構成要素によって前記レバーアームに印加されるとき、前記スロットは、前記第1の力が前記レバーアームから除去されると、前記ねじりばねの前記第1の脚部に負荷を誘発して、前記レバーアームを前記後退位置に位置決めし、
前記完全変位位置において、前記第1の力が前記運動伝達構成要素によって前記レバーアームに印加されていないとき、前記スロットは、前記ねじりばねの前記第2の脚部と係合し、前記レバーアームを前記伸長位置に位置決めし、
前記完全変位位置において、前記第1の力が前記運動伝達構成要素によって前記レバーアームに印加されるとき、前記スロットは、前記第1の力が前記レバーアームから除去されると、前記ねじりばねの前記第2の脚部に負荷を誘発して、前記レバーアームを前記伸長位置に位置決めする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記付勢要素が、前記リニアアクチュエータと前記摺動ラックとの間に配設されたばねである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記摺動ラック内の前記スロットが、第1及び第2の長手方向チャネルを有するHスロットであり、前記ねじりばねの前記第1の脚部が、前記第1の長手方向チャネルと交差し、前記ねじりばねの前記第2の脚部が、前記第2の長手方向チャネルと交差する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ハウジングが、前記運動伝達構成要素の移動に対して固定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記ハウジングが、前記少なくとも1つの運動伝達構成要素のうちの別の運動伝達構成要素によって提供されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、内燃エンジンに関し、具体的には、そのような内燃エンジンにおけるバルブ作動を制御するための回転アクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは当技術分野で周知であり、別の機構の移動及び/又は動作を達成するように構成された様々なデバイスを備えてもよい。例えば、内燃エンジンの分野では、アクチュエータは、多くの場合、2つの位置、すなわち、ピストンが別の機構の移動/動作に影響を及ぼさない、ばね付勢された後退状態及びピストンが他の機構の移動/動作に影響を及ぼす、油圧制御された伸長状態を維持することができるピストンを備える。
【0003】
そのような内燃エンジンの例が
図1に示され、
図1は、本開示による、エンジンシリンダー102及び関連するバルブ作動システムの断面図を含む内燃エンジン100の部分概略図である。単一のシリンダー102が
図1に示されているが、これは例示を容易にするためだけであり、内燃エンジンは、クランクシャフト(図示せず)を駆動する複数のそのようなシリンダーを含むことが多いことが理解される。エンジンシリンダー102は、シリンダー102の正の動力動作(すなわち、ピストン104及びドライブトレインを駆動するための燃料の燃焼)及びエンジン制動動作(すなわち、ピストン104を使用して空気圧縮及びドライブトレインを介した動力の吸収を達成)の両方の間に繰り返し上下に往復運動するピストン104をその中に配設している。各シリンダー102の頂部には、少なくとも1つの吸気バルブ106及び少なくとも1つの排気バルブ108が存在してもよく、これらは、対応するバルブばね105、107によって、それぞれの閉位置に連続的に付勢される。吸気バルブ106及び排気バルブ108は、それぞれ、吸気ガス通路110及び排気ガス通路112との連通を提供するために開閉される。吸気バルブ106及び排気バルブ108を開放すためのバルブ作動力は、それぞれのバルブトレイン114、116によって伝達される。次に、そのようなバルブ作動力(破線の矢印で示されている)は、回転カムなどのそれぞれの主及び/又は補助運動源118、120、122、124によって提供されてもよい。本明細書で使用される場合、記述「主」は、いわゆる主事象エンジンバルブ運動、すなわち、正の力の生成中に使用されるバルブ運動を指し、一方で、記述「補助」は、正の力の生成を除いた(例えば、圧縮解放ブレーキ、ブリーダブレーキ、気筒減圧、ブレーキガス再循環(brake gas recirculation、BGR)など)、又は正の力の生成に追加する(例えば、内部排気ガス再循環(internal exhaust gas recirculation、IEGR)、可変バルブ作動(variable valve actuations、VVA)、ミラー/アトキンソンサイクル、スワール制御など)目的の他のエンジンバルブ運動を指す。
【0004】
バルブトレイン114、116は、当技術分野で知られている任意の数の機械的、油圧的、水力機械的、電磁的、又は他のタイプのバルブトレイン要素を含み得る。例えば、バルブトレイン114、116のそれぞれは、バルブ作動運動をバルブ106、108に伝達するために使用される1つ以上のカムフォロア、プッシュチューブ、ロッカーアーム、バルブブリッジなどを含み得る。加えて、1つ以上のアクチュエータ126、128は、バルブトレイン114、116のいずれか又は両方に含まれてもよく、それによって、バルブトレイン114、116によって典型的に伝達されるバルブ作動運動は、部分的に制御又は修正される。典型的には、そのようなアクチュエータ126、128は、対応するアクチュエータコントローラ130、132(油圧流体を制御するソレノイド、電磁リニアアクチュエータなど)の制御下にあり、アクチュエータコントローラ130、132は、エンジンコントローラ134によって制御され、エンジンコントローラ134は、アクチュエータコントローラ130、132と通信し、その動作を制御するための任意の電子、機械、油圧、電気油圧、又は他のタイプの制御デバイスを備えてもよい。例えば、エンジンコントローラ134は、当技術分野で知られているように、マイクロプロセッサ及び必要な制御機能を実装するために使用される実行可能命令を記憶する対応するメモリによって実装されてもよい。エンジンコントローラ134の他の機能的に同等の実施態様、例えば、好適なプログラムされた特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)などが等しく使用され得ることが理解される。このようなアクチュエータを使用する特定の機能は、気筒減圧又はブリーダ制動であるが、当業者であれば、他の用途も周知であることを理解するであろう。
【0005】
図2及び
図3A~
図3Cは、先行技術による内燃エンジンにおいて使用される回転アクチュエータの概略図である。例えば、米国特許第4,340,017号は、気筒減圧に使用されるそのような回転アクチュエータの例を示している。
図2に示すように、バルブトレイン200は、当該技術分野において知られているように、運動源202と、運動伝達構成要素208と、1つ以上のエンジンバルブ210と、を備える。更に示されるように、回転アクチュエータ206は、運動伝達構成要素208によって伝達された運動/運動伝達構成要素208の移動に対して固定オブジェクト204によって支持される。この場合、回転アクチュエータ206は、運動伝達構成要素208を所望の位置(又は場合によってはそうでない位置)に選択的に維持するように動作され、それによって、エンジンバルブ210を、例えば、気筒減圧又はブリーダエンジンブレーキの場合のように開位置に制御する。
【0006】
‘017特許に記載されているタイプの回転アクチュエータの動作原理を、
図3A~
図3Cに関連して更に説明する。特に、回転アクチュエータ300は、回転軸304を有する回転可能なピボット302を備える。更に、回転アクチュエータ300は、ピボット302上に固設されたレバーアーム306を備える。この例では、ピボット302の外縁は、可動構成要素308(例えば、バルブトレインの運動伝達部品)から距離Dだけ離れて維持される。レバーアーム306の一部分は、ピボット302の外縁を越えて長さXだけ伸長し、ここでX>Dである。図示の例では、可動構成要素308は、ハウジング312内に画定されたボア310内に存在するピストンを備えるが、当業者であれば、可動構成要素308は、図示のピストン配置に限定される必要はなく、多種多様な形態のうちのいずれかをとり得ることを理解するであろう。
図3Aに示されるように、ピボット302及びレバーアーム306は、垂直に対して角度θ
1>0で軸304を中心に回転され、可動構成要素308の上面309の上方に間隙(又はラッシュ空間)Lを確立し、それによって、アクチュエータ300と可動構成要素308との間の任意の物理的相互作用を防止することにつながる。この状態では、アクチュエータ300は、「後退」、「オフ」、又は「非作動」状態にあると見なされる。
【0007】
一方、
図3Bは、レバーアーム306が垂直に配向されるように、すなわちθ
2=0であるように、回転可能なピボット302及びレバーアーム306が回転されたときの(320)、アクチュエータ300と可動構成要素308との間の相互作用を図示する。この状態では、アクチュエータ300は、「伸長」、「オン」又は「作動」状態にあると見なされる。レバーアーム306が図示のように垂直に配向されるとき、レバーアーム306と可動構成要素308との間の接触は、レバーアーム長306と上面309からのピボット302の距離との間の差、すなわちX-Dに等しい最大直線変位322をもたらす。θ
1>|θ
3|>θ
2であるいくつかの角度θ
3で、レバーアーム306は、可動構成要素308の上面309と接触して、可動構成要素が
図3Bに示される最大値よりも小さい量だけ依然として変位され得る(322)ことが理解されよう。この例が
図3Cに示されており、レバーアーム306が角度θ
3だけ回転され、その結果、新たな有効レバーアーム長X’=X
*cos(θ
3)となる。X’<Xの範囲では、結果として生じるラッシュ空間X’-Dも、
図3Bに示されるラッシュ空間X-Dよりも小さくなる。以下でより詳細に説明されるように、
図3Cに示されるようなそのような中間回転は、アクチュエータ300の動作を制御するために利用され得るモーメントをアクチュエータ300内に誘発させることができる。
【0008】
このようなアクチュエータは有用であることが証明されているが、様々な用途に対して更なるアクチュエータ設計が望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、内燃エンジンにおけるエンジンバルブの作動を制御するためのシステムであって、そのようなエンジンバルブと、少なくとも1つの運動伝達構成要素によってエンジンバルブに動作可能に接続されたバルブ作動運動源と、を備えるシステムを説明する。特に、そのようなシステムは、ピボットと、第1及び第2の脚部を有し、ピボットに動作可能に接続されたねじりばねと、を備える。レバーアームは、ピボットに調節可能に固設されており、レバーアームは、ピボットから離れて伸長し、運動伝達構成要素に対して後退位置と伸長位置との間及びその逆でピボットのピボット軸を中心に更に回転可能である。更に、内部に形成されたピボットボアを有し、ピボットが、ピボットボア内に回転可能に配設されたハウジングが提供される。ハウジングは、ピボットボアと交差する第1の開口部と、ピボットボアと交差する第2の開口部と、を更に備え、そのため、第1及び第2の脚部が、第1の開口部から伸長し、レバーアームが、第2の開口部から伸長する。後退位置において、レバーアームは、エンジンバルブの作動に実質的に影響を及ぼさず、伸長位置において、レバーアームは、運動伝達構成要素に接触するように位置決めされ、それによって、エンジンバルブの作動を制御する。第1の力が運動伝達構成要素によってレバーアームに印加されると、そのような第1の力は、レバーアームを伸長位置に維持する。
【0010】
一実施形態では、付勢要素は、付勢力を印加して、レバーアームを後退位置に回転させるように構成され、運動伝達構成要素によって印加された第1の力は、付勢要素によって印加された付勢力に打ち勝つのに十分である。
【0011】
別の実施形態では、ハウジング内の第2の開口部は、第1の停止面及び第2の停止面を画定し、第1の停止面は、後退位置の範囲を定めるように構成され、第2の停止面は、伸長位置の範囲を定めるように構成されている。この実施形態では、第2の停止面は、第1の力の印加方向に対して0でない角度でレバーを位置決めするように構成されている。更に、レバーアームは、レバーアームの遠位端に配設されたスイベルカップを更に備え、スイベルカップは、レバーアームが後退位置にあるときに第1の停止面に接触し、レバーアームが伸長位置にあるときに第2の停止面に接触するように構成されている。
【0012】
別の実施形態では、第1の力は、エンジンバルブばねによってエンジンバルブに印加され、それによって、運動伝達構成要素に印加された閉鎖力である。
【0013】
更に別の実施形態では、システムは、作動状態と非作動状態とを有するリニアアクチュエータと、固定ハウジング上に摺動可能に取り付けられ、リニアアクチュエータに動作可能に接続された摺動ラックと、リニアアクチュエータが非作動状態にあるときに、摺動ラックを開始位置に付勢するように構成された付勢要素と、を更に備えてもよく、リニアアクチュエータが作動状態にあるときに、摺動ラックは、付勢要素の付勢に抗して完全変位位置に移動する。一実施態様では、付勢要素は、リニアアクチュエータと摺動ラックとの間に配設されたばねを備えてもよい。この実施形態では、ねじりばねの第1及び第2の脚部は、摺動ラック内に形成されたスロットと交差するように構成されている。開始位置において、第1の力が運動伝達構成要素によってレバーアームに印加されていないとき、スロットは、ねじりばねの第1の脚部と係合し、レバーアームを後退位置に位置決めする。開始位置において、第1の力が運動伝達構成要素によってレバーアームに印加されるとき、スロットは、第1の力がレバーアームから除去されると、ねじりばねの第1の脚部に負荷を誘発して、レバーアームを後退位置に位置決めする。完全変位位置において、第1の力が運動伝達構成要素によってレバーアームに印加されていないとき、スロットは、ねじりばねの第2の脚部と係合し、レバーアームを伸長位置に位置決めする。更に、完全変位位置において、第1の力が運動伝達構成要素によってレバーアームに印加されるとき、スロットは、第1の力がレバーアームから除去されると、ねじりばねの第2の脚部に負荷を誘発して、レバーアームを伸長位置に位置決めする。更に、摺動ラック内のスロットは、第1及び第2の長手方向チャネルを有するHスロットを含んでもよく、ねじりばねの第1の脚部は、第1の長手方向チャネルと交差し、ねじりばねの第2の脚部は、第2の長手方向チャネルと交差する。
【0014】
現在好ましい実施形態では、ハウジングは、運動伝達構成要素の移動に対して固定されている。代替的に、ハウジングは、少なくとも1つの運動伝達構成要素のうちの別の運動伝達構成要素によって提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
前述及び他の特徴及び利点は、添付の図面とともに、特定の実施形態の以下の非限定的な説明で詳細に考察される。
【
図1】先行技術によるアクチュエータの典型的な配置を図示する、内燃エンジンの概略的な部分断面図である。
【
図2】先行技術による回転アクチュエータシステムを備える内燃エンジンのブロック図である。
【
図3A】先行技術による回転アクチュエータの動作原理を概略的に図示する。
【
図3B】先行技術による回転アクチュエータの動作原理を概略的に図示する。
【
図3C】先行技術による回転アクチュエータの動作原理を概略的に図示する。
【
図4A】本開示によるエンジンバルブの作動のために構成された回転アクチュエータの第1の実施形態を図示する。
【
図4B】本開示によるエンジンバルブの作動のために構成された回転アクチュエータの第1の実施形態を図示する。
【
図5A】本開示による回転アクチュエータの第2の実施形態を図示する。
【
図5B】本開示による回転アクチュエータの第2の実施形態を図示する。
【
図6】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの斜視図及び詳細図である。
【
図7】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの斜視図及び詳細図である。
【
図8】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの斜視図及び詳細図である。
【
図9A】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの斜視図及び詳細図である。
【
図9B】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの斜視図及び詳細図である。
【
図10A】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態の動作を図示する、
図6の気筒減圧システムの一部分の断面図である。
【
図10B】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態の動作を図示する、
図6の気筒減圧システムの一部分の断面図である。
【
図10C】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態の動作を図示する、
図6の気筒減圧システムの一部分の断面図である。
【
図10D】
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態の動作を図示する、
図6の気筒減圧システムの一部分の断面図である。
【
図11】
図6の気筒減圧システムの減圧作動を図示するフローチャートである。
【
図12】
図11に図示された減圧作動による複数のシリンダーのバルブリフトを図示するグラフである。
【
図13A】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図13B】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図13C】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図13D】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図13E】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図13F】
図11に図示された減圧作動による様々な動作点を図示する、
図6の気筒減圧システムの斜視図である。
【
図14】
図6の気筒減圧システムの減圧非作動を図示するフローチャートである。
【
図15】
図14に図示された減圧非作動による複数のシリンダーのバルブリフトを図示するグラフである。
【
図16】本開示の一実施形態による回転アクチュエータシステムを備える内燃エンジンのブロック図である。
【
図17】
図16の実施形態によるロッカーアームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」」に実質的に類似する語句は、文脈によって別段に記載又は暗示されない限り、選言的に解釈される、すなわち、A又はB又はC又はそれらの任意の組み合わせを要求するように意図される。更に、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」と実質的に同様の語句は、文脈によって別段の記載又は暗示されない限り、連言的に解釈される、すなわち、Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、及びCのうちの少なくとも1つを要求するように意図される。更に、「実質的に」という用語又は主観的な比較を必要とする類似の語は、文脈によって別段に記載又は暗示されない限り、「製造公差内」を意味することが意図される。別段の指示がない限り、本開示における、用語「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」などの絶対的な位置の修飾語、又は用語「上方」、「下方」、「より高い」、「より低い」などの相対的な位置の修飾語、又は「水平」、「垂直」などの配向の修飾語への言及は、図に示される配向に対して行われる。
【0017】
ここで
図4A及び
図4Bを参照すると、回転アクチュエータ400の第1の実施形態が、バルブブリッジ430に関連して図示されている。この実施形態では、アクチュエータ400は、ピボット404に回転可能に取り付けられたピボット本体402を備える。垂直線405によって示されるように、ピボット404の回転軸は、バルブブリッジ430及びエンジンバルブ(図示せず)上に形成された接触面432と位置合わせされる。
図3A及び
図3Bの実施形態と同様に、レバーアーム406は、ピボット本体402に形成された好適にねじ切りされたボアを介してハウジングに固定されたラッシュ調節ねじとして実装される。当技術分野で知られているように、ラッシュ調節ねじ408は、ピボット本体402からバルブブリッジ430及び接触面432の方向に概ね伸長するラッシュ調節ねじ408の選択された部分410を固定して(更に調節可能に)維持するために提供される。更に示されるように、当技術分野で「エレファントフット」又は「eフット」と呼ばれることもある旋回カップ412が、ラッシュ調節ねじ406の球状ボール端に回転可能に取り付けられる。回転アクチュエータ400が
図4Aに示されるオフ/後退/非作動状態にあるとき、旋回カップ412は、接触面432と接触して維持されてもよいが、示されるようにバルブブリッジ430のいかなる移動も別様に誘発しないか、又はラッシュ空間が
図3A及び
図3Bの実施形態に図示されるように提供されてもよい。
図4Aに更に示すように、アクチュエータ400がオフ/後退/非作動状態にあるとき、枢動カップ412は、ピボット404の回転軸から横方向にオフセットされる。ピボット本体402の回転は、枢動本体402に動作可能に結合された第2又は制御レバーアーム414の動作を通して選択されてもよい。加えて、回転アクチュエータ400をオフ/非作動状態に維持するために、制御レバーアーム414を(この場合、示されるように時計回り方向に)付勢するように、ばねなどのコンプライアント要素416が提供されてもよい。
【0018】
図4Bに示すように、回転アクチュエータ400は、制御レバーアーム414に好適に強い力440を印加することによって、すなわち、コンプライアント要素416によって印加された付勢に打ち勝つのに十分な力を印加することによって、オン/伸長/作動状態に置かれ、それによって、ピボット本体402を示されるように回転させてもよい。オン/伸長/作動状態への移行において、旋回カップ412は、示されるように、接触面432とより位置合わせされるように横方向に変位される(444)。更に、レバーアーム406、410の回転は、接触面432の垂直変位442をもたらし、これは次に、バルブブリッジ430の時計回りの回転を誘発する(
図4Bに示されるように)。制御レバーアーム414の回転を考慮すると、弾性要素416は、回転アクチュエータ400を
図4Aに示されるオフ/後退/非作動状態に向かって回転させて戻す傾向がある増加した張力下に置かれる。しかしながら、現在好ましい実施形態では、レバーアーム406、410の回転は、(
図4Bに示されるように)垂直を十分に過ぎて、その結果、バルブばね(図示せず)によって介在するエンジンバルブを介してバルブブリッジ430に印加された更なる付勢力が、反時計回りのモーメント446を誘発する。バルブばねによってレバーアーム406、410に誘発されたモーメントが、弾性要素416によって誘発された反対向きのモーメントよりも強い場合、回転アクチュエータ400は、バルブばねによって誘発されたモーメント446が回転アクチュエータ400から除去され、それによって、弾性要素が再びピボット本体402を回転させ、回転アクチュエータ400をオフ/後退/非作動状態に戻すことを可能にする時間まで、オン/伸長/アクティブ化状態のままである。
【0019】
ここで
図5A及び
図5Bを参照すると、回転アクチュエータ500の第2の実施形態が図示されている。この実施形態では、ピボット本体502がハウジング530内に回転可能に取り付けられている。ハウジング530は、好ましくは、回転アクチュエータ500の回転に対して、かつそれが相互作用する運動伝達構成要素(例えば、バルブブリッジ、ロッカーアームなど)の任意の移動に対して静止又は固定本体である。例えば、内燃エンジンの文脈において、ハウジング530は、シリンダーヘッド又は同様の構造と一体であってもよく、又はシリンダーヘッド又は同様の構造に固定して取り付けられてもよい。代替的に、以下で更に詳細に説明する実施形態では、ハウジング530は、ロッカーアームなどと一体化されてもよい。
【0020】
図示の例では、ピボット本体502は、ハウジング530に形成されたボア509に挿入されるように構成されており、その結果、ピボット本体502は、ボア509の中心軸の周りを自由に回転する。ボア509の閉鎖端は、ピボット本体502のボアへの挿入を制限する。ラッシュ調節ねじの形態のレバーアーム506が、ピボット本体502に形成されたねじ付き穴507に提供されている。
図4A及び
図4Bの実施形態と同様に、レバーアーム506の有効長を調節するために、ラッシュ調節ねじ514、及びこの場合はスペーサ516が提供されてもよい。ハウジング530内の第1の開口部511は、ピボット本体がボア509内に挿入されると、レバーアーム506がねじ付き穴507内に挿入され得るように、ボア509と交差する。第2の開口部513(
図7及び
図10A~
図10Dに最もよく示される)は、ハウジング530の下側に形成され、レバーアーム506の球状ボール端がねじ付き穴507から出現する点でボア509と交差する。旋回カップ512がレバーアーム506の球状ボール端に提供されている。
図10A~
図10Dに更に示されるように、第2の開口部513は、以下で更に詳細に説明するように、旋回カップ512と相互作用して、回転アクチュエータ500のいずれかの方向への回転を制限するように構成された第1の停止面515及び第2の停止面517を画定する。
【0021】
制御レバーアーム519は、ねじりばね520の形態で提供されている。以下でより詳細に説明するように、ねじりばね520の使用は、
図4A及び
図4Bに関連して上述した弾性要素216の機能を部分的に統合するコンプライアント制御レバーアームを生成する。ねじりばね520は、枢動本体502内に形成されたポケット521内に挿入されるように構成され、ねじ付き穴523に隣接し、ねじ付き穴は、次に、枢動本体502の回転軸に対して垂直かつ同心に形成される。ねじ付き穴523と嵌合し、ねじりばね520がポケット521内に完全に挿入されたときにねじりばね520のコイルの中央開口部に挿入される長手方向に伸長する部分を含み、それによって、ねじりばねをポケット521内に保持するねじ付きキャップ504が提供されている。このように構成されていると、ねじりばね520の第1の脚部522及び第2の脚部524は、ハウジング530に形成された第1の開口部511から伸長する。ねじりばね520が第1の開口部511によって画定された側壁532に当接することにより、ピボット本体502がボア509から外れることが防止される。
図5Aに示すように、ねじりばね520は、自由状態すなわち無負荷状態にある。しかしながら、ねじりばね520がポケット521に挿入されると、ポケット521の閉じ込め側壁が脚部522、524を内側に付勢して、ねじりばねを予負荷状態又は部分負荷状態に置く。以下に説明するように、ねじりばね520の脚部522、524は、脚部522、524のいずれかに力を選択的に印加することによってピボット本体502の回転を制御するために使用されてもよい。更に、脚部522、524は柔軟であるため、回転アクチュエータ500に対する障害物(例えば、作動される可動構成要素)が離れるように移動されるときのみ、ピボット本体502の回転を引き起こすことが可能なモーメントをピボット本体502に誘発するように制御されてもよい。
【0022】
図6~
図9は、
図5A及び
図5Bの回転アクチュエータの第2の実施形態を組み込んだ気筒減圧システムの様々な図を含む。以下に提供される説明は、減圧システムに関するものであるが、当業者は、
図6~
図9に示されるシステムが、限定ではないが、ブリードブレーキ動作などの他の目的のために等しく採用されてもよいことを理解するであろう。
図6に示すように、気筒減圧システムは、複数の回転アクチュエータ602~606が内部に配置されたハウジング600を備える。一実施形態では、ハウジング600は、各回転アクチュエータ602~606の旋回カップ512が対応するバルブブリッジ(例えば、
図4A、
図4B及び
図10A~
図10Dに示すように)の上方に位置決めされるようにシリンダーヘッドに取り付けられることが好ましく、それにより、回転アクチュエータ602~606は、対応するエンジンシリンダーを減圧状態に維持するために、バルブブリッジを作動させるように制御されてもよい。リニアアクチュエータ608及び摺動ラック610も、ハウジング600に取り付けられている。電磁ソレノイドなどを備えてもよいリニアアクチュエータ608は、作動又は通電状態におけるリニアアクチュエータ608の動作がラック610の変位(
図6に示すように、右方向)を引き起こすように、ラック610に動作可能に接続されている。圧縮ばねの形態の付勢要素612が、リニアアクチュエータ608とラック610との間に提供されて、リニアアクチュエータ608が非作動又は非通電状態にあるときにラック610の反対方向の変位を誘発する、すなわち、
図6に示すようにラック610をその開始位置(左方向)に戻す。
【0023】
図6及び
図8に示すように、ラック610は、取付ねじ812によってハウジング600に摺動可能に固定された複数の開口部810を備える。更に、
図7及び
図8に最もよく示されるように、ねじりばね520の各々の脚部522、524は、ラック610に形成された対応するスロット802と相互作用する。現在好ましい実施形態では、スロット802は、第1及び第2の脚部522、524にそれぞれ対応する第1及び第2の長手方向チャネル804、806を各々備えるHスロットの形態で実装され、長手方向チャネル804、806は、突出部808によって範囲を定められる。本質的に、各ねじりばね520の脚部522、524は、ラック610に対してピニオンとして作用し、それによって、ラックの直線変位が脚部522、524の回転を誘発する。この例を、
図9A及び
図9Bに図示する。
【0024】
図9Aでは、ラック610は、その公称又は開始位置で、すなわち、戻しばね612によって、開口部810によって許容される最大左方向距離(図示されるように)に付勢されるときに図示される。この場合、Hスロットは、ねじりばね520の第1の脚部524を同様に左方向に付勢させ、それによって、旋回カップ512をハウジング600の第2の開口部513内に後退させる。この状態は、
図10Aを参照して更に図示されており、ラック610によって第1の脚部524(図示せず)に印加された付勢は、旋回カップ512の第2の開口部513の第1の停止面515との接触によって制限されるまで、ピボット本体502を反時計回り方向に回転させる。このオフ/後退/非作動状態では、旋回カップ512と対応するバルブブリッジ1002の上面との間にラッシュ空間が提供される。
【0025】
図9Bでは、ラック610は、開口部810によって許容されるように、完全変位位置(示されるように、右方向に最大限に変位された)で図示される。この場合、Hスロットは、ねじりばね520の第2の脚部522(
図9Bでは見えない)を同様に右方向に付勢させ、それによって、旋回カップ512をハウジング600の第2の開口部513から伸長させる。この状態は、まず
図10Bを参照して更に図示されており、ラック610によって第2の脚部522(図示せず)に印加された付勢は、旋回カップ512の第2の開口部513の第2の停止面517との接触によって制限されるまで、ピボット本体502を時計回り方向に回転させる。このオン/伸長/作動状態では、オフ/後退/非作動状態から旋回カップ512とバルブブリッジ1002との間の非作動状態から完全に塞がれるだけでなく、旋回カップ512の第2の開口部513からの伸長は、ピボット本体502の回転が旋回カップ512とバルブブリッジ1002との間の接触によって妨げられない程度まで、バルブブリッジ1002の変位を引き起こす。
図10B及び
図10Cは、ラック610が
図9Bに示されるような完全伸長状態に移動するときの回転アクチュエータの種々の移行状態を示し、バルブブリッジ1002は、旋回カップ512の移動又はピボット本体502の回転を妨害しないと仮定される。特に、
図10Bは、旋回カップ512をバルブブリッジ1002と最初に接触させるのに十分なピボット本体502の回転の程度を図示し、一方、
図10Cは、レバーアーム/ラッシュ調節ねじ506が垂直位置にあり、旋回カップ512がバルブブリッジ1002の下方向変位を開始するのに十分に第2の開口部から伸長するようなピボット本体502の回転の程度を図示する。
【0026】
図10Dを参照すると、バルブばね(図示せず)によってバルブブリッジ及びレバーアーム506に印加された比較的大きな付勢力1004が、旋回カップ512の第2の停止面517との接触を維持するのに十分なモーメントをピボット本体502に誘発するように、レバーアーム/ラッシュ調節ねじ506が、
図10Cに図示された垂直位置合わせを過ぎて回転されることが観察される。すなわち、大きな付勢力1004は、ラック610によってねじりばね520の第1の脚部524に印加されてもよい任意の付勢力よりも強く、そうでなければ、ピボット本体502の反時計回りの回転を誘発して、回転アクチュエータ602~606を
図9A及び
図10Aに図示されるオフ/後退/非作動状態に戻すことができる。
【0027】
次に
図11を参照すると、
図4の気筒減圧システムの減圧作動を図示するフローチャートが示されている。
図11に図示される処理は、説明された機能を実行するのに必要な関連構成要素(例えば、燃料噴射器、ソレノイドなど)に動作可能に接続された好適な処理デバイスによって実行されることが好ましい。したがって、内燃エンジンのシリンダーの減圧を開始することが望ましい場合(例えば、エンジン停止時)、処理は、ステップ1102で始まり、関連シリンダーへの燃料噴射が中断され、リニアアクチュエータ408が通電される。
図6に図示する実施形態では、リニアアクチュエータ608の通電は、ラック610の右方向変位を引き起こし、その結果、アクチュエータピストンが後退する(ブロック1104)。上述したように、ラック410のそのような移動は、Hスロットの回転アクチュエータ602~606の各ねじりばね520の第2の脚部522との係合を引き起こし、その結果、ピボット本体502が自由に回転する場合には、ピボット本体502が回転し、ピボット本体502が自由に回転しない場合には、ねじりばね520が負荷を受ける。これは、
図13A~
図13Cを参照して、より完全に説明される。
【0028】
図13Aは、リニアアクチュエータ608が通電されているときの
図6のシステムを図示する。この時点で、第1~第3の回転アクチュエータ602~606にそれぞれ対応する旋回カップ512a~cは、回転アクチュエータ602~606のオフ/後退/非作動状態を反映して後退している。この状態では、回転アクチュエータ602~606のオフ/後退/非作動状態は、回転アクチュエータ602~606に対応する脚部522、524の各対が反時計回りに回転されるという事実に更に反映され、すなわち、脚部522、524の各対によって提供された制御レバーアームは、旋回カップ512a、512b、512cが後退されるようにピボット本体502を同様に回転させる。
図13Bは、ラック610のHスロットが、第1~第3の回転アクチュエータ602~606にそれぞれ対応する第2のねじりばね脚部522a、522b、522cに最初に係合する後続の時点を図示し、
図13Cは、ラック610が右方向に完全に変位した更に後続の時点を図示する。
図13Cに示される時点における第2のねじりばね脚部522a、522b、522cの状態は、旋回カップ512a、512c、512cがそれらの対応するバルブブリッジ(図示せず)によって妨害されるかどうかに依存する。例えば、
図13Cに示されるように、第1及び第2の回転アクチュエータ602、604に対応するバルブブリッジが、対応する旋回カップ512a、512bの伸長を妨害するように位置決めされている(すなわち、それらのバルブブリッジによって接触されるバルブが完全に閉鎖されている)と仮定される一方で、第3の回転アクチュエータ606に対応するバルブブリッジが、対応する旋回カップ512cの伸長を妨害するように位置決めされていない(すなわち、そのバルブブリッジによって接触されるバルブが少なくとも部分的に開放されている)と仮定される。その結果、第3の回転アクチュエータ606のピボット本体502が回転可能となり、旋回カップ512cが示されるように伸長する。加えて、第3の回転アクチュエータ606の第2のねじりばね脚部522cは、その対応するピボット本体502とともに回転することができるので、無負荷のままである。一方、第1及び第2の回転アクチュエータ602、604のピボット本体502は回転できないので、第1のねじりばね脚部522a、522bは、ラック610によって印加されたより大きな力によって変位し、それによって、対応するピボット本体502にモーメントをかける。
【0029】
再び
図11を参照すると、ブロック1106では、ブロック1104で以前に閉鎖されていたエンジンバルブの開放は、対応するバルブブリッジと、バルブブリッジによって以前に開放が妨害されていた旋回カップ512との間にクリアランスを生じさせる。これは、
図13D及び
図13Eを更に参照して例示される。
図13Dに示される時点では、第1の回転アクチュエータ602の旋回カップ512aを以前に妨害していたバルブブリッジが、その対応するバルブの開放を通して変位されたと仮定される。その結果、示されるように、その第2のねじりばね脚部522aによって第1の回転アクチュエータ602のピボット本体502にかけられたモーメントは、ピボット本体502の回転を引き起こすことができ、それによって、旋回カップ512aの伸長及びその対応するねじりばね520の変位/除負荷をもたらす。同様に、
図13Eに示される時点において、第2の回転アクチュエータ604の旋回カップ512bを以前に妨害していたバルブブリッジが、その対応するバルブの開放を通じて変位したと仮定される。その結果、示されるように、その第2のねじりばね脚部522bによって第2の回転アクチュエータ604のピボット本体502にかけられたモーメントは、ピボット本体502の回転を引き起こすことができ、それによって、旋回カップ512bの伸長及びその対応するねじりばね520の変位/除負荷をもたらす。
【0030】
各回転アクチュエータのこの連続的なターンオン/伸長/作動、及びその後のエンジンバルブを開状態に維持することによるエンジンシリンダーの減圧は、
図12を参照して更に例示される。特に、
図12は、6気筒エンジンの6つの異なるシリンダーのバルブリフト1202~1212、より具体的には、シリンダー1バルブリフト1202、シリンダー4バルブリフト1204、シリンダー2バルブリフト1206、シリンダー6バルブリフト1208、シリンダー3バルブリフト1210、及びシリンダー5バルブリフト1212を図示する。垂直破線1214によって示される時間(クランク角)で、リニアアクチュエータ608は、
図11のステップ1102で上述したように通電される。その後、シリンダー2バルブリフト1206の完了前に、シリンダーの各々の対応する旋回カップ512は、バルブブリッジとのクリアランスが提供されるような時点で完全に伸長されるように、完全に伸長されているか(対応するねじりばね520を通して)付勢されている。これは
図12に図示されており、シリンダー2のバルブの閉鎖は、そのシリンダーの旋回カップの伸長によって防止される(1216)。同様に、同様の時点(1218~1222)が残りのシリンダー(シリンダー1及びシリンダー4については図示せず)の各々について生じ、これらのシリンダーの対応するバルブブリッジは、エンジンバルブが完全に閉鎖することができないようにブロックされ、それによって、これらのシリンダーを減圧する。
【0031】
再び
図11を参照すると、上述のように気筒減圧を完全に作動させた後、処理はブロック1108に続き、リニアアクチュエータ608が通電を停止される(すなわち、オフにされるか、又はその非作動状態に置かれる)。その結果、
図13C~
図13Eに示すように、ラック610を最も右の位置に維持するための力は提供されない。その結果、戻しばね612によって印加される力は、ラック610が、ねじりばね520からのねじりが戻しばね512によって印加される付勢力と釣り合うように、第1のねじりばね脚部524a、524b、524cのうちの1つ以上に接触する時間まで、ラック610を再び左側に付勢させる。戻しばね612の付勢に抗してねじりばね520によって印加される付勢は、回転アクチュエータ602~606のピボット本体502に反時計回りのモーメントを誘発する。しかしながら、バルブばねによってピボット本体502内に誘発されるより大きい時計回りのモーメントを考慮すると、ねじりばね520によって誘発されるモーメントは、ピボット本体602をオフ/非作動位置に回転させることができない。この状態は、ピボット本体502上にバルブばねによって誘発されたモーメントが存在する限り維持される。
【0032】
次に
図14を参照すると、
図6の気筒減圧システムの減圧非作動を図示するフローチャートが示されている。再び、
図14に図示される処理は、説明された機能を実行するのに必要な関連構成要素(例えば、燃料噴射器、ソレノイドなど)に動作可能に接続された好適な処理デバイスによって実行されることが好ましい。したがって、内燃エンジンにおけるシリンダーの減圧を停止することが望ましい場合(例えば、エンジン始動時)、処理はステップ1402で始まり、ここでエンジン点火スイッチ(この例では)がオンにされ、それによってスタータモータにエンジンのクランキングを開始させる。その後、ブロック1404で、スタータモータがエンジンをクランキングすると、様々なエンジンバルブが通常の様式で開放され、すなわち、回転カムがロッカーアームの往復運動を引き起こし、次に、ロッカーアームは、エンジンバルブに接続されたバルブブリッジを往復運動させる。バルブブリッジと、オン/伸長/作動状態に維持された回転アクチュエータ602~606との間のクリアランスが生じると(又は、換言すれば、回転アクチュエータ602~606のオフ/後退/非作動状態への移行を防止するバルブブリッジによって提供される障害物が除去されると)、回転アクチュエータ602~606は、減圧開始プロセスの完了に続いてねじりばね520によって誘発されるモーメントによってオフ/後退/非作動状態に戻るように移行することが可能になる(
図13F)。これは
図15に図示されており、減圧作動前の時点1512で、様々なバルブリフトが一定の開放高さに維持される。図示の垂直線1514は、スタータモータによるクランキングが開始された時点(クランク角)を示している。その後、様々な時点1516~1522で、図示されたバルブリフトが実行され、それによって、回転アクチュエータ602~606がそれらの後退位置に回転して戻ることを可能にし、各シリンダーが通常の圧縮動作を再開することを可能にする。
【0033】
再び
図14を参照すると、上述のように気筒減圧が完全に停止されると、処理はブロック1408に続き、ここでシリンダーの燃料補給が再開される。
【0034】
前述のように、本開示による回転アクチュエータが固定ハウジングに取り付けられることは要件ではなく、代わりに動的ハウジングに取り付けられてもよい。この例が
図16に示されており、
図16は、回転アクチュエータ1606が図示のように運動伝達構成要素1604内に含まれていることを除いて、
図2の実施形態と実質的に同様であるバルブトレイン1600を概略的に図示する。例えば、回転アクチュエータ1606は、ロッカーアーム、バルブブリッジなどに含まれてもよい。この場合も、回転アクチュエータ106は、運動源1602によって生じた運動を選択的に失うように、又はその運動を任意の介在運動伝達構成要素1608及びエンジンバルブ1610に伝達するように制御されてもよい。
【0035】
図16によるシステムの特定の例が
図17に更に図示されており、
図17は、当技術分野で知られているように、運動受容端1704と運動付与端1706とを有するロッカーアーム1702を示す。しかしながら、この場合、ロッカーアーム1702は更に、上述した回転アクチュエータ500と実質的に同様の回転アクチュエータ1710をその中に取り付けている。特に、ロッカーアーム1702は、ロッカーアーム1702の運動付与端1706に形成された横ボア1714を有し、ピボット本体1712がその中に配設されている。また、上述したハウジング530と同様に、ロッカーアーム1702は、ボア1714と交差する第1の開口部1730及び第2の開口部(図示せず)を備え、その結果、回転アクチュエータ1710の構成要素が開口部から伸長してもよい。図示の例では、これは、第1の開口部1730から伸長するねじりばね1720の脚部1722、1724、及び第2の開口部から伸長するスイベルカップ1716を含む。
図17には示されていないが、
図6に示されたものと同様のリニアアクチュエータ及びラックシステムが、回転アクチュエータ1710の後退/伸長を制御する様式で、ねじりばね脚部1722、1724を作動させるために採用され得ることが理解されるであろう。しかしながら、この場合、そのようなラックの移動は、ロッカーアーム1702の長手方向軸に実質的に平行である。更に、ねじりばね脚部1722、1724の長さは、脚部1722、1724が対応するラックから係合解除されないように、ロッカーアーム1702の往復運動を考慮する必要がある。
【0036】
特定の実施態様が本明細書で説明されてきたが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更が採用され得ることを理解するであろう。例えば、付勢要素612の構成は、回転アクチュエータ602~606が、通常(すなわち、リニアアクチュエータ608が通電されていないとき)、ラック610によってそれらのオフ/後退/非作動位置に向かって付勢され、リニアアクチュエータ608の動作を通してオン/伸長/作動位置に切り替えられるようなものであるが、これは、要件ではない。すなわち、付勢要素612は、代わりに、ラック610が通常回転アクチュエータ602~606をそれらのオン/伸長/作動位置に向かって付勢し、リニアアクチュエータ608の動作がそれらをそれらのオフ/後退/非作動位置に切り替えるために必要とされるように構成され得る。そのような構成は、リニアアクチュエータ612の非作動が、関連するシリンダーの減圧(及び、それによって、通常の燃焼サイクルを通して電力を生成することができないこと)を引き起こすように、「安全インターロック」の形態として有用であってもよい。