(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 39/10 20230101AFI20240807BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20240807BHJP
H10K 30/40 20230101ALN20240807BHJP
【FI】
H10K39/10
H10K30/88
H10K30/40
(21)【出願番号】P 2023572364
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2022042633
(87)【国際公開番号】W WO2023132134
(87)【国際公開日】2023-07-13
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022001947
(32)【優先日】2022-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/壁面設置太陽光発電システム技術開発(開口部向けペロブスカイトBIPVモジュールの開発)」委託研究産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関本 健之
(72)【発明者】
【氏名】松井 太佑
(72)【発明者】
【氏名】中村 透
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸広
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-202375(JP,A)
【文献】国際公開第2021/009898(WO,A1)
【文献】特開2014-120338(JP,A)
【文献】特開2011-134775(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012404(WO,A1)
【文献】特開2017-103450(JP,A)
【文献】特開2013-168572(JP,A)
【文献】特開2018-037554(JP,A)
【文献】特開2016-122768(JP,A)
【文献】特開2019-169615(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112133832(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含み、
前記第1封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を構成
しており、
前記酸素濃度調整材は、有機材料を含み、
前記有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記樹脂は1.91×10
-9
cm
3
・cm/(cm
2
・s・cmHg)より大きい酸素透過係数を有する、
太陽電池。
【請求項2】
前記第2封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆している、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含み、
前記第2封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を備え、
前記第1封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記第1封止部は、前記光電変換素子の前記表面に接
しており、
前記酸素濃度調整材は、有機材料を含み、
前記有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記樹脂は1.91×10
-9
cm
3
・cm/(cm
2
・s・cmHg)より大きい酸素透過係数を有する、
太陽電池。
【請求項4】
前記第1封止部は、前記光電変換素子の前記表面に接している第1層と、前記第1層上に配置された第2層とを含む、
請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含み、
前記酸素濃度調整材は、有機材料を含み、
前記有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであ
り、
前記樹脂は1.91×10
-9
cm
3
・cm/(cm
2
・s・cmHg)より大きい酸素透過係数を有する、
太陽電池。
【請求項6】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含み、
前記第2封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を備え、
前記第2封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆するカバー部をさらに備え
、
前記第1封止部は、前記支持部および前記カバー部の間に位置する、
太陽電池。
【請求項7】
前記第1封止部は、前記光電変換素子に接していない、
請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含み、
前記第2封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を備え、
前記第2封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆するカバー部をさらに備え
、
前記第1封止部は、前記支持部および前記カバー部からなる群より選択される少なくとも1つを、前記外装体の前記外部から前記内部の方向へ貫通するように設けられている、
太陽電池。
【請求項9】
前記外装体は、前記第1封止部および前記第2封止部のみからなる、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記太陽電池は、前記外装体によって囲まれた第1空間を有し、
前記光電変換素子は、前記第1空間の内部に位置している、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記酸素濃度調整材は、無機材料および有機材料からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項
6または8に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記無機材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、ゼオライト、多孔質シリカ、多孔性炭素、多孔質セラミック、および金属からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項
11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項
11に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記第2封止部は、ガラス、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記光電変換素子は、第1電極、光電変換層、および第2電極、をこの順に備える、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項16】
水分ゲッター材および充填材からなる群より選択される少なくとも1つをさらに備え、
前記水分ゲッター材および前記充填材からなる群より選択される少なくとも1つは、前記外装体と前記光電変換素子との間に設けられる、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記光電変換素子に接する領域の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、
請求項1、3、5
、6および8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記第1封止部の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、
請求項
17に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記太陽電池は、前記外装体によって囲まれた第1空間を有し、
前記光電変換素子は、前記第1空間の内部に位置しており、
前記第1空間の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、
請求項
17に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、組成式ABX3(Aは1価のカチオン、Bは2価のカチオン、Xはハロゲンアニオン)により示されるペロブスカイト型結晶、および、その類似の構造体(以下、「ペロブスカイト化合物」という)を光電変換材料として用いた、ペロブスカイト太陽電池の研究開発が進められている。ペロブスカイト太陽電池の光電変換効率、および耐久性を向上するために、様々な取り組みが行われている。
【0003】
非特許文献1では、光照射下において、ペロブスカイト化合物内のカチオンは酸素と反応し、ペロブスカイト化合物の表面および粒界に金属酸化物または水酸化物が形成されることが報告されている。
【0004】
特許文献1は、外装構造体で太陽電池素子が密封されたCdS/CdTeもしくはCdS/CuInSe2系太陽電池モジュールにおいて、外装構造体に設けられた孔に酸素透過材が付与された構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Q.Sun、他8名、Advanced Energy Materials、2017年7月、第7巻、p.1700977.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、耐久性を向上させた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の太陽電池は、
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、耐久性を向上させた太陽電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の太陽電池の第3構成例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の太陽電池の第4構成例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の太陽電池の第5構成例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態の太陽電池の第3構成例を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態の太陽電池の第4構成例を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態による太陽電池における光電変換素子20の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
非特許文献1に報告されているように、鉛を含むペロブスカイト化合物は、光照射下において酸素と反応し、ペロブスカイト化合物の表面および粒界に酸化鉛(PbO)または水酸化鉛(Pb(OH)2)が形成される。酸化鉛および水酸化鉛は高い絶縁性を有するため、ペロブスカイト化合物の表面または粒界に酸化鉛または水酸化鉛が形成されると、光生成キャリアの移動が阻害される。その結果、ペロブスカイト太陽電池の特性が低下するという課題があった。
【0012】
したがって、一般的には、ペロブスカイト太陽電池は、周囲に酸素の極力少ない(例えば、酸素濃度が体積分率で0.1ppm以下)窒素雰囲気下で使用される。
【0013】
本明細書において、水蒸気濃度および酸素濃度は、体積分率の濃度を意味する。
【0014】
非特許文献1において、ペロブスカイト太陽電池の光照射試験後の規格化された光電変換効率は、太陽電池周囲の酸素濃度が0%の場合を基準として、酸素濃度が1%から20%まで増加するにつれて、単調に減少することが開示されている。
【0015】
一方、本発明者らは、酸素濃度の閾値(すなわち耐久性への影響が顕著となる値)を詳細に調査した結果、酸素濃度が0%以上かつ1%以下の範囲に、ペロブスカイト太陽電池の耐久性に最適な範囲が存在することを見出した。具体的には、封止空間内の水蒸気濃度を0.1ppm以下に維持した状態で、封止空間内の酸素濃度が10ppm以上かつ3000ppm以下の範囲において、光照射試験後の光電変換効率は最大値をとる。また、封止空間内の酸素濃度が100ppm以上かつ3000ppm以下の範囲で、耐熱試験後の光電変換効率が最大となることを見出した。したがって、ペロブスカイト太陽電池の光安定性および熱安定性は、封止空間内の酸素濃度が100ppm以上かつ3000ppm以下の範囲にある場合に両立できる。
【0016】
特許文献1は、CdS/CdTeもしくはCdS/CuInSe
2系太陽電池モジュールを開示している。CdS/CdTeもしくはCdS/CuInSe
2太陽電池は、太陽電池素子の周囲の酸素濃度が低い場合に、光電変換効率が急激に低下することが知られている。例えば、特許文献1において、酸素濃度が10%以下、5%以下、もしくは1%以下で急激に効率が低下することが開示されている。したがって、特許文献1に開示された封止構造は、CdS/CdTeもしくはCdTe/CuInSe
2太陽電池について、封止空間内の酸素濃度を1%以上、5%以上、もしくは10%以上の高濃度に維持するための構造である。特許文献1には、高い酸素濃度を維持するための封止構造として、外装構造体の一部に酸素導入孔が設けられており、その孔に、酸素透過材として有機ポリマー、撥水性有機多孔質材、あるいは多孔質無機材料に有機物を充填したものなどが付与された構造が開示されている。さらに、孔を塞ぐためにシート状のシリコン樹脂および高密度ポリエチレンシートなどが接着剤で付与された構造が開示されている。特許文献1の外装構造体とは、特許文献1の
図1を参照せよ。
【0017】
しかし、特許文献1の封止構造は、孔から封止空間内へ酸素を含む外気を積極的に取り込む構造である。このため、特許文献1の封止構造をペロブスカイト太陽電池の封止構造として用いた場合は、封止空間内の酸素濃度がペロブスカイト太陽電池の耐久性に最適な範囲よりも高くなる。したがって、ペロブスカイト太陽電池の耐久性が低下するという問題が生じる。
【0018】
これら先行技術に鑑み、本発明者らは、光電変換素子に接する領域の酸素濃度を低濃度に調整するための太陽電池の構造を見出した。具体的には、酸素濃度調整材を含む第1封止部を通して外気を取り込むことにより、光電変換素子に接する領域の酸素濃度を制御する。本構造により、実動作期間内において、光電変換素子近傍の酸素濃度が最適(例えば、10ppm以上かつ3000ppm以下、または100ppm以上かつ3000ppm以下)になるように制御され、太陽電池の耐久性が向上する。
【0019】
以下、本開示の太陽電池について、図面を参照しながら説明する。図面において、光電変換素子からの配線、モジュールを支持するフレーム、および端子ボックスは省略されている。
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の太陽電池について説明する。
【0021】
本開示の実施形態による太陽電池は、光電変換素子と、光電変換素子の全体を囲う外装体と、を備える。光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含む。外装体は、第1封止部および第2封止部を含む。第1封止部は、酸素濃度調整材を含む。第1封止部は、外装体の外部に露出した第1露出面および外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ第1露出面と第2露出面との間で連続している。第2封止部は、上記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含む。
【0022】
第1実施形態の太陽電池は、外装体が第1封止部および第2封止部を含み、第1封止部が酸素濃度調整材を含むため、光電変換素子に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にできる。その結果、ペロブスカイト化合物と酸素との反応生成物およびペロブスカイト化合物の分解生成物が適度な量となり、キャリアの移動を阻害しない。また、これらの適度な量の反応生成物および分解生成物はペロブスカイト化合物の表面または粒界に長期的に安定して存在でき、光電変換材料の欠陥を十分に終端できる。したがって、光電変換材料の欠陥により誘起される光劣化および熱劣化現象が抑制され、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0023】
光電変換素子に接する領域の酸素濃度は10ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。光電変換材料の欠陥により誘起される光劣化現象が抑制され、太陽電池の耐久性を向上させることができる。光電変換素子に接する領域の酸素濃度が100ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。光電変換材料の欠陥により誘起される光劣化および熱劣化現象が抑制され、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0024】
外装体は、第1封止部および第2封止部のみからなっていてもよい。
【0025】
第2封止部は、光電変換素子を支持する支持部を備えてもよい。
【0026】
以下、第1実施形態の太陽電池について、第1および第2構成例を用いて、より具体的に説明する。なお、第1実施形態の太陽電池は、以下の第1および第2構成例の太陽電池に限定されない。
【0027】
図1は、第1実施形態の太陽電池の第1例を模式的に示す断面図である。
【0028】
太陽電池100は、光電変換素子20と、外装体1とを備える。外装体1は、第2封止部と、第1封止部30と、を備える。第2封止部は、光電変換素子20を支持する支持部10を構成している。すなわち、第2封止部は、光電変換素子20を支持する支持部10を備える。第1封止部30は、第2封止部が備える支持部10に支持された光電変換素子20の表面を被覆している。本明細書では、第2封止部が備える支持部10を「支持部10」と記載することがある。
【0029】
光電変換素子20は、ペロブスカイト化合物を含む。
【0030】
第1封止部30は、酸素濃度調整材を含む。第1封止部30は、外装体1の外部に露出した第1露出面31および外装体1の内部に露出した第2露出面32を有し、かつ第1露出面31と第2露出面32との間で連続している。これにより、第1封止部30を通して、酸素が外装体1の外部と内部との間で透過することができる。
【0031】
第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面全面を被覆していてもよい。
【0032】
第1封止部30は、光電変換素子20の表面に接していてもよい。
【0033】
図1に示されるように、光電変換素子20は、支持部10および第1封止部30に挟まれていてもよい。
【0034】
光電変換素子20は、支持部10に接していてもよい。光電変換素子20は、支持部10および第1封止部30に接していてもよい。
【0035】
図1に示されるように、光電変換素子20は、1つの主面が支持部10に接し、他の主面および側面が、第1封止部30に被覆されていてもよい。
【0036】
外装体1は、支持部10および第1封止部30のみからなっていてもよい。
【0037】
第1封止部30の酸素濃度は、10ppm以上かつ3000ppm以下であってもよく、100ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。これにより、光電変換材料の欠陥により誘起される光劣化および熱劣化現象が抑制され、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0038】
外装体1の体積に対する第1封止部30の体積の割合は、0.0001%以上かつ100%未満であってもよく、0.001%以上かつ10%以下であってもよい。
【0039】
図2は、第1実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【0040】
図2に示される太陽電池110は、第1封止部30が、光電変換素子20の表面に接している第1層30aと、第1層30a上に配置された第2層30bとを含む点で、太陽電池100と異なる。
【0041】
図2に示されるように、第1封止部30は、光電変換素子20の表面に接している第1層30aと、第1層30a上に配置された第2層30bとを含んでもよい。第2層30bは、光電変換素子20に接していなくてもよい。
【0042】
第1封止部30は、2以上の複数の層からなっていてもよい。これにより、第1封止部30内の酸素の拡散速度、または第1封止部30による酸素透過速度を調整できる。したがって、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にしやすい。例えば、第1封止部30は、材料が異なる2以上の層を含んでいてもよい。これにより、外装体1における支持部10および第1封止部30の密着性を向上させることができる。
【0043】
第1実施形態の太陽電池において、第1構成例の太陽電池100および第2構成例の太陽電池110のように、第1封止部30が、第2封止部が構成する支持部10に支持された光電変換素子20の表面の少なくとも一部を被覆する構成を有する場合、第1封止部30の厚みは、0.6μm以上かつ15000μm以下であってもよく、20μm以上かつ10000μm以下であってもよい。なお、第1封止部30の厚みとは、第1封止部30の第1露出面31と第2露出面32との間の距離の最小値である。
【0044】
第1封止部30の厚みが0.6μm以上かつ15000μm以下の場合、第1封止部30の酸素透過係数は3.1×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ1.86×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であってもよい。
【0045】
第1封止部30の厚みが20μm以上かつ10000μm以下の場合、第1封止部30の酸素透過係数は3.1×10-17cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ1.0×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であってもよい。
【0046】
第1封止部30の酸素透過係数は、日本産業規格(JIS K-7126)に記載の方法で測定できる。
【0047】
以下、本開示の太陽電池の各構成要素について、具体的に説明する。
【0048】
(外装体1)
外装体1は、光電変換素子20の全体を囲う。外装体1は、第1封止部30を含む。外装体1は、さらに光電変換素子20を支持する支持部10を含んでもよく、第2封止部を含んでもよい。
【0049】
(第1封止部30)
第1封止部30は、酸素濃度調整材を含む。第1封止部30は、外装体1の外部に露出した第1露出面31および外装体1の内部に露出した第2露出面32を有し、かつ第1露出面31と第2露出面32との間で連続している。したがって、第1封止部30を通して、外装体1の外部と内部との間で酸素が透過できる。これにより、外装体1に囲まれる光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にできる。
【0050】
酸素濃度調整材は、酸素を透過させ得る材料である。酸素濃度調整材は、例えば、比較的高い酸素透過係数を有する。酸素濃度調整材としては、酸素を透過させ得る材料であれば使用できるが、例えば、酸素透過係数が3.1×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ1.86×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下である材料が使用できる。使用する材料の酸素透過係数に応じて、例えば第1封止部30の形状および外装体に占める体積比率等を調整することで、第1封止部30の酸素透過性を所望の範囲に調整することができる。
【0051】
酸素濃度調整材は、無機材料および有機材料からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。本開示において、有機材料は、多孔性配位高分子のような有機無機ハイブリッド材料を含む。
【0052】
当該無機材料は、酸化物であってもよい。
【0053】
酸化物および有機材料は、比較的広い範囲の酸素透過係数を有する。そのため、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にしやすくなる。比較的広い範囲の酸素透過係数とは、例えば、3.1×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上、かつ1.86×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下である。
【0054】
無機材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、ゼオライト、多孔質シリカ、多孔性炭素、多孔質セラミック、および金属からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。これらのうち、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化シリコンは、欠陥あるいは空孔が存在することで比較的高い酸素透過係数を有する。窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化シリコンの酸素透過係数は、例えば、9.1×10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ8.3×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下である。
【0055】
一方、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、ゼオライト、多孔質シリカ、多孔性炭素、多孔質セラミック、および金属は、酸素吸着能を有するため、酸素透過係数の異なる樹脂と組み合わせることで酸素透過係数を調整できる。
【0056】
有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。これらのうち、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、およびエチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物は、比較的高い酸素透過係数を有する。比較的高い酸透過係数は、例えば、9.1×10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上、かつ8.3×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下である。
【0057】
一方、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、およびシクロデキストリンは、酸素吸着能を有するため、酸素透過係数の高い樹脂と組み合わせることで酸素透過係数を比較的高く調整できる。有機材料は、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、およびシクロデキストリンからなる群より選択される少なくとも1つと、樹脂とを含んでいてもよい。樹脂は、酸素透過係数の高い樹脂であってもよい。
【0058】
酸素透過係数の高い樹脂としては、例えば、エチルセルロース、シリコンゴム、ポリブタジエン、または天然ゴム、などが挙げられる。酸素透過係数の高い樹脂は、1.91×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)より高い酸素透過係数を有していてもよい。
【0059】
酸素濃度調整材は、第2封止部に用いる材料よりも1桁以上高い酸素透過係数を有していてもよく、2桁以上高い酸素透過係数を有していてもよい。酸素濃度調整材の酸素透過係数は、日本産業規格(JIS K-7126およびK-7129)に記載の方法で、例えば大気圧イオン化質量分析器、ガスクロマトグラフ、赤外センサー、クーロメトリックセンサー、または酸素濃度計などを用いて測定できる。酸素透過係数の値により測定機器または測定方法を選択する必要がある。
【0060】
酸素濃度調整材は、9.1×10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上の酸素透過係数を有していてもよい。このような材料としては、低密度の酸化物、低分子量の有機材料、酸素透過係数の高い樹脂、またはこれらの複合材料が挙げられる。酸素濃度調整材は、8.34×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)より低い酸素透過係数を有していてもよい。酸素濃度調整材は、9.1×10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ8.34×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)未満の酸素透過係数を有していてもよい。酸素濃度調整材は、9.1×10-15cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ8.3×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下の酸素透過係数を有していてもよい。
【0061】
低密度の酸化物は、例えば、酸化物ナノ粒子の塗布形成、化学気相蒸着法、またはスパッタ法などにより形成することができる。酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、または酸化シリコンなどの絶縁体が挙げられる。
【0062】
低分子量の有機材料としては、例えば、後述の光電変換層25の塗布形成に用いる塗布溶液の溶質であるホルムアミジニウムヨージドが挙げられる。光電変換層25の塗布形成に用いる塗布溶液の溶質は、第1封止部30と光電変換層25との間に腐食などの劣化現象を引き起こすことがない。
【0063】
第1封止部30における酸素濃度調整材の含有量は、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度がペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲になるように適宜調整してもよい。
【0064】
第1封止部30は、主成分として、酸素濃度調整材を含んでいてもよい。すなわち、第1封止部30は、酸素濃度調整材を、第1封止部30の全体に対する質量割合で50%以上(50質量%以上)、含んでもよい。
【0065】
第1封止部30は、酸素濃度調整材を、第1封止部30の全体に対する質量割合で70%以上(70質量%以上)、含んでもよい。
【0066】
第1封止部30は、酸素濃度調整材を、第1封止部30の全体に対する質量割合で90%以上(90質量%以上)、含んでもよい。
【0067】
第1封止部30は、酸素濃度調整材のみからなっていてもよい。
【0068】
第1封止部30のサイズは、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度が過度に増加しないように調整してもよい。
【0069】
第1封止部30内の酸素濃度は、10ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。これにより、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度が10ppm以上かつ3000ppm以下になり得る。その結果、ペロブスカイト化合物と酸素との反応生成物またはペロブスカイトの分解生成物がペロブスカイト表面または粒界に安定して存在できる。その結果、それらの生成物がキャリア移動を阻害しないため、欠陥により誘起される光劣化が抑制される。したがって、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0070】
第1封止部30内の酸素濃度は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)または昇温脱離ガス分析法(TDS)等で測定できる。すなわち、光電変換素子20と第1封止部30とが接している場合、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度は、上記の方法で第1封止部30内の酸素濃度を測定することで求められる。
【0071】
第1封止部30内の酸素濃度は、100ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。これにより、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度が100ppm以上かつ3000ppm以下になり得る。その結果、光電変換材料の欠陥を十分に終端でき、熱により誘起される光電変換材料の構造変化が生じにくくなる。したがって、光電変換材料の欠陥により誘起される熱劣化現象も抑制され、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0072】
第1封止部30内の酸素の拡散速度を下げるために、第1封止部30は、酸素吸収剤または酸素ゲッターを含んでいてもよい。
【0073】
太陽電池の実動作期間内において光電変換素子に接する領域の酸素濃度がペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲になるように、第1封止部30の形状、大きさ、厚み、および位置と、酸素濃度調整材の材料および含有量と、などは、適宜調整すればよい。例えば、酸素濃度調整材に用いる材料の酸素透過係数および太陽電池の動作環境から、酸素濃度調整材の含有量、第1封止部30の形状、厚み、大きさ、および位置が設計される。
【0074】
第1封止部30は、酸素濃度調整材を含ませた充填材から構成されてもよい。そのような酸素濃度調整材としては、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、または鉄系酸素吸着剤などの脱酸素剤、ゼオライト、多孔性炭素、多孔質シリカ、または多孔質セラミック(例えば、アルミナゲル等)などの無機多孔質材料、および、多孔性配位高分子(すなわち、有機金属構造体)、クラウンエーテル、またはシクロデキストリンなどの有機材料が挙げられる。
【0075】
充填材としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、またはポリイミド樹脂などの樹脂材料が挙げられる。
【0076】
(第2封止部)
第2封止部は、第1封止部30が含む酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含む。第2封止部は、例えばガスバリア性を有する。本明細書においてガスバリア性とは、主に酸素に対するバリア性を意味し、酸素透過係数が十分に低いことをいう。例えば、酸素透過係数が3.05×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であり、より好ましくは酸素透過係数が3.05×10-19cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下である。他のガスに対してもバリア性を有していてもよい。第2封止部は、ガラス、金属、セラミック、プラスチックおよび樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。第2封止部は、ガラスおよび樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0077】
第2封止部が備える支持部10は、光電変換素子20を支持する役割を果たす。支持部10は、例えば透明な材料から形成することができる。支持部10は、例えばガスバリア性を有する。支持部10としては、例えば、ガラス基板またはプラスチック基板を用いることができる。プラスチック基板は、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。ここで、プラスチックフィルムの酸素に対するバリア性が乏しい場合は、酸素透過係数が3.05×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下のガスバリア層が、プラスチックフィルム上に形成されていてもよい。また、光電変換素子20の一部を構成する第2電極27が透光性を有している場合には、支持部10の材料は、透光性を有さない材料であってもよい。例えば、支持部10の材料として、金属、セラミックス、または透光性の小さい樹脂材料を用いることができる。
【0078】
(光電変換素子20)
光電変換素子20は、第1電極、光電変換層、および第2電極、をこの順で備える。光電変換層は、ペロブスカイト化合物を含む。
【0079】
光電変換素子20は、第1電極と光電変換層との間にさらに電子輸送層を備えていてもよいし、また、光電変換層と第2電極との間にさらに正孔輸送層を備えてもよい。光電変換素子20は、第1電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、および第2電極、をこの順で備えていてもよい。
【0080】
図13は、本開示の実施形態による太陽電池における光電変換素子20の一例を模式的に示す断面図である。
【0081】
光電変換素子20は、例えば、基板21、第1電極22、電子輸送層23、多孔質層24、光電変換層25、正孔輸送層26、および第2電極27、をこの順で備える。
【0082】
光電変換素子20に光が照射されると、光電変換層25が光を吸収し、励起された電子と正孔とを発生させる。この励起された電子は、電子輸送層23を通り第1電極22に移動する。一方、光電変換層25で生じた正孔は、正孔輸送層26を介して第2電極27に移動する。これにより、光電変換素子20は、負極としての第1電極22と、正極としての第2電極27とから、電流を取り出すことができる。
【0083】
光電変換素子20は、例えば、以下の方法によって作製することができる。
【0084】
まず、基板21の表面に第1電極22を、化学気相蒸着法またはスパッタ法などにより形成する。次に、電子輸送層23を、化学気相蒸着法、スパッタ法、または溶液塗布法などにより形成する。次に、多孔質層24を、塗布法などにより形成する。次に、光電変換層25を形成する。光電変換層25は、例えば、溶液による塗布法、印刷法、または蒸着法などにより形成されてもよい。また、例えば、ペロブスカイト化合物を所定の厚さに切り出したものを光電変換層25として、多孔質層24上に配置してもよい。次に、光電変換層25の上に、正孔輸送層26を、化学気相蒸着法、スパッタ法、または溶液塗布法などにより形成する。次に、正孔輸送層26の上に、化学気相蒸着法、スパッタ法、または溶液塗布法などにより第2電極27を形成する。以上により、光電変換素子20が得られる。
【0085】
以下、光電変換素子20の各構成要素について、具体的に説明する。
【0086】
(基板21)
基板21は、付随的な構成要素である。
【0087】
基板21は、光電変換素子20の各層を保持する役割を果たす。
【0088】
基板21は、透明な材料から形成することができる。基板21としては、例えば、ガラス基板またはプラスチック基板を用いることができる。プラスチック基板は、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。また、第2電極27が透光性を有している場合には、基板21の材料は、透光性を有さない材料であってもよい。例えば、基板21の材料として、金属、セラミックス、または透光性の小さい樹脂材料を用いることができる。
【0089】
第1電極22が十分な強度を有している場合、第1電極22によって各層を保持することができるので、基板21を設けなくてもよい。この場合、光電変換素子20を封止しやすくするために、第1電極22は光電変換素子20を構成する他の層よりもサイズを大きくしてもよい。
【0090】
本開示の実施形態による太陽電池において、支持部10上に光電変換素子20を配置する場合、基板21を設けなくてもよい。すなわち、支持部10が基板21として機能してもよい。
【0091】
(第1電極22)
第1電極22は、導電性を有する。
【0092】
光電変換素子20が電子輸送層23を備えない場合、第1電極22は、光電変換層25とオーミック接触を形成しない材料から構成される。さらに、第1電極22は、光電変換層25からの正孔に対するブロック性を有する。光電変換層25からの正孔に対するブロック性とは、光電変換層25で発生した電子のみを通過させ、正孔を通過させない性質のことである。このような性質を有する材料とは、光電変換層25の価電子帯上端のエネルギーよりも、フェルミエネルギーが高い材料である。上記の材料は、光電変換層25よりも、フェルミエネルギーが高い材料であってもよい。具体的な材料としては、アルミニウムが挙げられる。
【0093】
光電変換素子20が、第1電極22および光電変換層25の間に電子輸送層23を備える場合、第1電極22は、光電変換層25からの正孔に対するブロック性を有していなくてもよい。すなわち、第1電極22の材料は、光電変換層25との間でオーミック接触を形成する材料であってもよい。
【0094】
第1電極22は、透光性を有する。例えば、可視領域から近赤外領域の光を透過する。第1電極22は、例えば、透明であり導電性を有する材料から構成される。第1電極22は、例えば、金属酸化物および/または金属窒化物を用いて形成することができる。このような材料としては、例えば、リチウム、マグネシウム、ニオブ、およびフッ素からなる群より選択される少なくとも1種がドープされた酸化チタン、錫およびシリコンからなる群より選択される少なくとも1種がドープされた酸化ガリウム、シリコンおよび酸素からなる群より選択される少なくとも1種がドープされた窒化ガリウム、アンチモンおよびフッ素からなる群より選択される少なくとも1種がドープされた酸化錫、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、およびインジウムからなる群より選択される少なくとも1種がドープされた酸化亜鉛、インジウム-錫複合酸化物、または、これらの複合物が挙げられる。
【0095】
第1電極22は、透明でない材料を用いて、光が透過するパターンを設けて形成されてもよい。光が透過するパターンとしては、例えば、線状、波線状、格子状、または多数の微細な貫通孔が規則的若しくは不規則に配列されたパンチングメタル状のパターンが挙げられる。第1電極22がこれらのパターンを有すると、電極材料が存在しない部分を光が透過することができる。透明でない電極材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、鉄、ニッケル、スズ、亜鉛、または、これらのいずれかを含む合金を挙げることができる。また、導電性を有する炭素材料を透明でない電極材料として用いることもできる。
【0096】
第1電極22の光の透過率は、例えば50%以上であってもよく、80%以上であってもよい。透過すべき光の波長は、光電変換層25の吸収波長に依存する。
【0097】
第1電極22の厚みは、1nm以上かつ1000nm以下であってもよい。
【0098】
(電子輸送層23)
電子輸送層23は、例えば、光電変換層25および第1電極22の間に配置される。電子輸送層23を備えることにより、光電変換層25で生じた電子を第1電極22に効率よく移動させることができる。その結果、電流を効率よく取り出すことができるため、光電変換素子20の光電変換効率を向上させることができる。
【0099】
電子輸送層23は、電子輸送材料を含有する。電子輸送材料は、電子を輸送する材料である。電子輸送材料は、半導体であり得る。電子輸送層23は、バンドギャップが3.0eV以上の半導体から形成されていてもよい。バンドギャップが3.0eV以上の半導体で電子輸送層23を形成することにより、可視光および赤外光を光電変換層25まで透過させることができる。
【0100】
電子輸送材料の例は、無機のn型半導体である。
【0101】
無機のn型半導体としては、例えば、金属元素の酸化物、金属元素の窒化物、およびペロブスカイト型酸化物を用いることができる。金属元素の酸化物としては、例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、またはCrの酸化物を用いることができる。より具体的な例としては、TiO2またはSnO2が挙げられる。金属元素の窒化物としては、例えば、GaNが挙げられる。ペロブスカイト型酸化物の例としては、SrTiO3またはCaTiO3が挙げられる。
【0102】
電子輸送層23は、バンドギャップが6.0eVよりも大きな物質によって形成されていてもよい。バンドギャップが6.0eVよりも大きな物質としては、フッ化リチウムおよびフッ化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化マグネシウムのようなアルカリ金属酸化物、または二酸化ケイ素などが挙げられる。この場合、電子輸送層23の電子輸送性を確保するために、電子輸送層23の厚みは、例えば、10nm以下であってもよい。
【0103】
電子輸送層23は、互いに異なる材料からなる複数の層を含んでいてもよい。
【0104】
光電変換素子20は、電子輸送層23を備えていなくてもよい。
【0105】
(多孔質層24)
多孔質層24は、例えば、電子輸送層23および光電変換層25の間に配置される。
【0106】
多孔質層24を備えることにより、光電変換層25を形成しやすくなる。多孔質層24の空隙に光電変換層25の材料が侵入し、多孔質層24が光電変換層25の足場となる。そのため、光電変換層25の材料が多孔質層24の表面で弾かれたり、凝集したりすることが起こりにくい。したがって、光電変換層25を容易に均一な膜として形成できる。
【0107】
多孔質層24によって光散乱が起こることにより、光電変換層25を通過する光の光路長が増大する効果も期待される。光路長が増大すると、光電変換層25中で発生する電子および正孔の量が増加すると予測される。
【0108】
多孔質層24は、電子輸送層23の上に、例えば塗布法によって形成される。光電変換素子20が電子輸送層23を備えない場合は、多孔質層24は、第1電極22の上に形成される。
【0109】
多孔質層24は、多孔質体を含む。多孔質体は、空隙を含む。
【0110】
多孔質体は、例えば、絶縁性または半導体の粒子の連なりによって形成される。絶縁性の粒子の例は、酸化アルミニウム粒子または酸化ケイ素粒子である。半導体の粒子の例は、無機半導体粒子である。無機半導体の例は、金属酸化物、金属元素のペロブスカイト型酸化物、金属硫化物、または金属カルコゲナイドである。金属酸化物の例は、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、またはCrの酸化物である。金属酸化物のより具体的な例は、TiO2である。金属元素のペロブスカイト型酸化物の例は、SrTiO3またはCaTiO3である。金属硫化物の例は、CdS、ZnS、In2S3、PbS、Mo2S、WS2、Sb2S3、Bi2S3、ZnCdS2、またはCu2Sである。金属カルコゲナイドの例は、CsSe、In2Se3、WSe2、HgS、PbSe、またはCdTeである。
【0111】
多孔質層24の厚みは、0.01μm以上かつ10μm以下であってもよく、0.05μm以上かつ1μm以下であってもよい。
【0112】
多孔質層24の表面粗さについては、実効面積/投影面積で与えられる表面粗さ係数が10以上であってもよく、100以上であってもよい。投影面積とは、物体を真正面から光で照らしたときに、後ろにできる影の面積である。実効面積とは、物体の実際の表面積のことである。実効面積は、物体の投影面積および厚さから求められる体積と、物体を構成する材料の比表面積および嵩密度とから計算することができる。比表面積は、例えば、窒素吸着法によって測定される。
【0113】
多孔質層24中の空隙は、光電変換層25と接する部分から電子輸送層23と接する部分まで繋がっている。すなわち、多孔質層24の空隙は、多孔質層24の一方の主面から、他方の主面まで繋がっている。これにより、光電変換層25の材料が多孔質層24の空隙を充填し、電子輸送層23の表面まで到達することができる。したがって、多孔質層24を設けても、光電変換層25と電子輸送層23とは、直接接触しているため、電子の授受が可能である。
【0114】
(光電変換層25)
光電変換層25は、ペロブスカイト化合物を含む。
【0115】
ペロブスカイト化合物は、組成式ABX3により表され得る。ここで、Aは1価のカチオンであり、Bは2価のカチオンであり、Xは1価のアニオンである。
【0116】
1価のカチオンAの例は、有機カチオンまたはアルカリ金属カチオンである。
【0117】
有機カチオンの例は、メチルアンモニウムカチオン(CH3NH3
+)、ホルムアミジニウムカチオン(HC(NH2)2
+)、エチルアンモニウムカチオン(CH3CH2NH3
+)、またはグアニジニウムカチオン(CH6N3
+)である。
【0118】
アルカリ金属カチオンの例は、カリウムカチオン(K+)、セシウムカチオン(Cs+)、またはルビジウムカチオン(Rb+)である。
【0119】
2価のカチオンBの例は、鉛カチオン(Pb2+)または錫カチオン(Sn2+)である。
【0120】
1価のアニオンXの例は、ハロゲンアニオンである。
【0121】
A、B、およびXのそれぞれのサイトは、複数種類のイオンによって占有されていてもよい。
【0122】
光電変換層25の厚みは、50nm以上かつ10μm以下であってもよい。
【0123】
光電変換層25は、溶液による塗布法、印刷法、または蒸着法などを用いて形成することができる。光電変換層25は、ペロブスカイト化合物を切り出して配置することによって形成されてもよい。
【0124】
光電変換層25は、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物を主として含んでもよい。ここで、「光電変換層25が、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物を主として含む」とは、光電変換層25が、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物を90質量%以上含むことである。光電変換層25は、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物を95質量%以上含んでいてもよい。光電変換層25は、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物からなってもよい。光電変換層25は、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物を含んでいればよく、欠陥または不純物を含んでもよい。
【0125】
光電変換層25は、組成式ABX3により表されるペロブスカイト化合物とは異なる他の化合物をさらに含んでいてもよい。異なる他の化合物としては、例えば、Ruddlesden-Popper型の層状ペロブスカイト構造を持つ化合物が挙げられる。
【0126】
(正孔輸送層26)
正孔輸送層26は、例えば、光電変換層25および第2電極27の間に配置される。正孔輸送層26を備えることにより、光電変換層25で生じた正孔を第2電極27に効率よく移動させることができる。その結果、電流を効率よく取り出すことができるため、光電変換素子20の光電変換効率を向上させることができる。
【0127】
正孔輸送層26は、正孔輸送材料を含有する。正孔輸送材料は、正孔を輸送する材料である。正孔輸送材料は、有機半導体または無機半導体であり得る。
【0128】
正孔輸送層26は、有機半導体を含んでいてもよい。有機半導体は、光電変換層25と良好な界面を形成し、接合時の界面欠陥が増加することを抑制できる。その結果、太陽電池の光電変換効率および耐久性を向上させることができる。
【0129】
有機半導体の構成要素としては、トリフェニルアミン、トリアリルアミン、フェニルベンジジン、フェニレンビニレン、テトラチアフルバレン、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、チオフェン、アニリン、ピロール、カルバゾール、トリプチセン、フルオレン、アズレン、ピレン、ペンタセン、ペリレン、アクリジン、またはフタロシアニンが挙げられる。
【0130】
正孔輸送材料として用いられる代表的な有機半導体の例は、2,2′,7,7′-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)9,9′-spirobifluorene、poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine](以下、「PTAA」と省略することもいう)、poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、または銅フタロシアニンである。
【0131】
正孔輸送材料として用いられる無機半導体は、p型の半導体である。無機半導体の例は、Cu2O、CuGaO2、CuSCN、CuI、NiOx、MoOx、V2O5、または酸化グラフェンのようなカーボン材料である。ここで、x>0である。
【0132】
正孔輸送層26は、互いに異なる材料からなる複数の層を含んでいてもよい。例えば、光電変換層25のイオン化ポテンシャルに対して、正孔輸送層26のイオン化ポテンシャルが順々に小さくなるように複数の層が積層されてもよい。これにより、正孔輸送特性が改善される。
【0133】
正孔輸送層26の厚みは、1nm以上かつ1000nm以下であってもよく、10nm以上かつ50nm以下であってもよい。この範囲内であれば、十分な正孔輸送特性を発現でき、太陽電池の低抵抗を維持できるので、高い効率で光発電を行うことができる。
【0134】
正孔輸送層26は、塗布法、印刷法、または蒸着法などを用いて形成することができる。これは、光電変換層25と同様である。塗布法の例は、ドクターブレード法、バーコート法、スプレー法、ディップコーティング法、またはスピンコート法である。印刷法の例は、スクリーン印刷法である。必要に応じて、複数の材料を混合して正孔輸送層26を作製し、加圧または焼成してもよい。正孔輸送層26の材料が有機の低分子体または無機半導体である場合には、真空蒸着法によって、正孔輸送層26を作製することも可能である。
【0135】
正孔輸送層26は、添加剤として、支持電解質、溶媒、およびドーパントからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。支持電解質および溶媒は、正孔輸送層26中の正孔を安定化させる効果を有する。ドーパントは、正孔輸送層26中の正孔数を増す効果を有する。
【0136】
支持電解質の例は、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、または遷移金属塩である。アンモニウム塩の例は、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、イミダゾリウム塩、またはピリジニウム塩である。アルカリ金属塩の例は、過塩素酸リチウムまたは四フッ化ホウ素カリウムである。アルカリ土類金属塩の例は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカルシウム(II)である。遷移金属塩の例は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)またはトリス[4-tert-ブチル-2-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリジン]コバルト(III)トリス(トリフルオロメタンスルホニル)である。
【0137】
ドーパントの例は、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのような含フッ素芳香族ホウ素化合物である。
【0138】
正孔輸送層26に含まれる溶媒は、イオン伝導性に優れるものであってもよい。当該溶媒は、水系溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。溶質をより安定化するために、正孔輸送層26に含まれる溶媒は、有機溶媒であってもよい。具体例としては、tert-ブチルピリジン、ピリジン、およびn-メチルピロリドンなどの複素環化合物溶媒が挙げられる。
【0139】
溶媒として、イオン液体を単独で用いてもよいし、他種の溶媒に混合して用いてもよい。イオン液体は、揮発性が低く、難燃性が高い点で望ましい。
【0140】
イオン液体の例は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレートなどのイミダゾリウム系、ピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、またはアゾニウムアミン系である。
【0141】
(第2電極27)
第2電極27は、導電性を有する。
【0142】
光電変換素子20が正孔輸送層26を備えない場合、第2電極27は、光電変換層25とオーミック接触を形成しない材料から構成される。さらに、第2電極27は、光電変換層25からの電子に対するブロック性を有する。ここで、光電変換層25からの電子に対するブロック性とは、光電変換層25で発生した正孔のみを通過させ、電子を通過させない性質のことである。このような性質を有する材料とは、光電変換層25の伝導帯下端のエネルギーよりも、フェルミエネルギーが低い材料である。上記の材料は、光電変換層25よりも、フェルミエネルギーが低い材料であってもよい。具体的な材料としては、白金、金、またはグラフェンなどの炭素材料が挙げられる。
【0143】
光電変換素子20が正孔輸送層26を備える場合、第2電極27は、光電変換層25からの電子に対するブロック性を有さなくてもよい。すなわち、第2電極27の材料は、光電変換層25とオーミック接触を形成する材料であってもよい。そのため、第2電極27を、透光性を有するように形成することができる。
【0144】
第1電極22および第2電極27のうち、少なくとも光を入射させる側の電極が透光性を有していればよい。したがって、第1電極22および第2電極27の一方は、透光性を有さなくてもよい。すなわち、第1電極22および第2電極27の一方は、透光性を有する材料を用いていなくてもよいし、光を透過させる開口部分を含むパターンを有していなくてもよい。
【0145】
(中間層)
光電変換素子20は、さらに中間層を備えてもよい。中間層は、例えば、電子輸送層23および光電変換層25の間に配置される。光電変換素子20が多孔質層24を備える場合、中間層は、例えば、多孔質層24および光電変換層25の間に配置される。
【0146】
中間層は、フラーレン(C60)、C60誘導体、またはC60を持つ自己組織化単分子層(以下、「C60SAM」ともいう)を含む。中間層はカルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物であってもよい。
【0147】
中間層により効率的に電子収集が行われるため、電子を電子輸送層23へ輸送する際の抵抗損失が低減される。したがって、中間層を備えることにより、光電変換層25で生じた電子を電子輸送層23または第2電極27に効率よく移動させることができる。その結果、電流を効率よく取り出すことができるため、光電変換素子20の光電変換効率を向上させることができる。
【0148】
C60誘導体の例は、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl esterまたは[6,6]-Phenyl-C61 butyric acid butyl esterである。
【0149】
C60SAMの例は、4-(1′,5′-Dihydro-1′-methyl-2′H-[5,6]fullereno-C60-Ih-[1,9-c]pyrrol-2′-yl)benzoic acid、(1,2-Methanofullerene C60)-61-carboxylic acid、またはC60 Pyrrolidine tris-acidである。
【0150】
中間層は、溶液による塗布法、浸漬法、印刷法、または蒸着法などを用いて形成することができる。
【0151】
光電変換素子20は、第1電極22の主面が支持部10に面していてもよいし、第2電極27の主面が支持部に面していてもよい。
【0152】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の太陽電池について説明する。第1実施形態で説明された事項は、適宜、省略され得る。
【0153】
第2実施形態の太陽電池は、第2封止部が、光電変換素子を支持する支持部10を備え、かつ、支持部10に支持される光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆するカバー部をさらに備える。
【0154】
第2実施形態の太陽電池は、第2封止部がカバー部を備えることにより、第1封止部30を介して外装体1の内部、すなわち光電変換素子20に接する領域に侵入する酸素の量をより制御しやすくできる。あるいは、第2封止部がカバー部を備えることにより、第1封止部30の近傍に、所定の雰囲気を有する空間を配置することができる。
【0155】
外装体は、第2封止部および第1封止部30のみからなっていてもよい。
【0156】
第1封止部30は、支持部10およびカバー部の間に位置していてもよい。
【0157】
以下、第2実施形態の太陽電池について、第1から第5構成例を用いて、より具体的に説明する。なお、第2実施形態の太陽電池は、以下の第1から第5構成例の太陽電池に限定されない。
【0158】
図3は、第2実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【0159】
太陽電池200は、光電変換素子20と、外装体1とを備える。外装体1は、支持部10と、第1封止部30と、第2封止部が備えるカバー部40と、を備える。第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面を被覆している。第2封止部が備えるカバー部40は、第1封止部30上に設けられている。すなわち、
図3に示される太陽電池200は、第1実施形態の太陽電池100の第1封止部30上にさらに、第2封止部が備えるカバー部40が設けられた構成である。本明細書では、第2封止部が備えるカバー部40を「カバー部40」と記載することがある。太陽電池200では、支持部10およびカバー部40が第2封止部である。
【0160】
図3に示されるように、カバー部40は、第1封止部30の1つの主面上に配置されていてもよい。カバー部40は、第1封止部30に接していてもよい。
【0161】
カバー部40は、例えばガスバリア性を有する。カバー部40としては、例えばガラス基板またはプラスチック基板を用いることができる。プラスチック基板は、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。ここで、プラスチックフィルムの酸素に対するバリア性が乏しい場合は、酸素透過係数が3.05×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下のガスバリア層が、プラスチックフィルム上に形成されていてもよい。カバー部40は、ガラス、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0162】
ガラスは酸素透過係数が低い。カバー部40が含む樹脂は、酸素透過係数が低い樹脂であってもよい。カバー部40を備えることで外気と接する面積が制限された第1封止部30を酸素が透過することにより、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にしやすくなる。支持部10とカバー部40とは、同一の材料から構成されていてもよい。当該材料は、ガラスであってもよい。
【0163】
図3に示される太陽電池200においては、第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面の全体を被覆しているが、第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。
【0164】
第1封止部30は、光電変換素子20の表面と接していてもよい。
【0165】
第1封止部30は、支持部10およびカバー部40からなる群より選択される少なくとも1つを、外装体1の外部から内部の方向へ貫通するように設けられていてもよい。
【0166】
第2実施形態の太陽電池は、外装体1によって囲まれた第1空間を有し、光電変換素子20は、第1空間の内部に位置していてもよい。
【0167】
第1空間は、封止空間であってもよい。
【0168】
図4は、第2実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【0169】
太陽電池210は、外装体1と、光電変換素子20と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備え、第2封止部は、支持部10と、カバー部40とを構成する。第1封止部30は、枠の形状を有する。支持部10、第1封止部30、およびカバー部40に囲まれて第1空間50が形成されている。光電変換素子20は第1空間50の内部に位置している。
【0170】
第1封止部30は、光電変換素子20に接していなくてもよい。
【0171】
第1空間50内の酸素濃度は、10ppm以上かつ3000ppm以下であってもよく、100ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。
【0172】
図5は、第2実施形態の太陽電池の第3構成例を模式的に示す断面図である。
【0173】
図5に示される太陽電池220は、第1封止部30が光電変換素子20の一部を被覆している点で、太陽電池210と異なる。
【0174】
図5に示されるように、太陽電池220は、光電変換素子20、第1封止部30、およびカバー部40に囲まれて第1空間51が形成されていてもよい。
【0175】
第1空間51内の酸素濃度は、10ppm以上かつ3000ppm以下であってもよく、100ppm以上かつ3000ppm以下であってもよい。
【0176】
第2実施形態の太陽電池は、第1空間とは異なる、第2空間を有していてもよい。
【0177】
図6は、第2実施形態の太陽電池の第4構成例を模式的に示す断面図である。
【0178】
太陽電池230は、外装体1と、光電変換素子20と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備え、第2封止部は、支持部10と、カバー部40とを構成する。第1封止部30、およびカバー部40に囲まれて第2空間52が形成されている。第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面を被覆している。
【0179】
図6に示されるように、太陽電池230は、第1封止部30およびカバー部40によって囲まれている第2空間52を備えていてもよい。第2空間52内の酸素濃度を調整することで、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度を高精度で制御できる。
【0180】
図6に示されるように、第2実施形態の太陽電池は、第1空間を有さず、第2空間のみを有していてもよい。
【0181】
第2実施形態の太陽電池は、第1空間および第2空間からなる群より選択される少なくとも1つを有していてもよい。
【0182】
第2空間52内の酸素濃度は、外気よりも低くてもよい。第2空間52内の酸素濃度は、例えば、3000ppm未満であってもよい。これにより、光電変換素子20および第1封止部30の界面近傍の酸素濃度を、例えば、10ppm以上かつ3000ppm以下、または100ppm以上かつ3000ppm以下にできる。
【0183】
以下、第1空間および第2空間を総称して、「空間」という場合がある。
【0184】
太陽電池の空間内における酸素濃度の測定は、大気圧イオン化質量分析計、ガスクロマトグラフィー、および電気化学式酸素濃度計等によって行うことができる。酸素濃度を測定する対象となる気体は、例えば、室温(25℃)にて、シリンジで空間内の気体を抽出する、或いは閉空間で太陽電池モジュールを破壊して空間内に含まれる気体を流出させて、気体の成分を測定して酸素の割合を算出することにより、酸素濃度を求めることができる。ここで、一例として、閉空間に太陽電池の空間内に含まれる気体を流出させて、その流出させた気体における酸素濃度を大気圧イオン化質量分析計によって測定する方法について説明する。例えば、太陽電池モジュールをアルゴンまたはクリプトンなどの不活性ガスで満たされたチャンバー内に置く。チャンバー内でモジュールを破損させることにより、太陽電池の空間内に含まれる気体を流出させる。次に、チャンバー内の気体を大気圧イオン化質量分析計で定量分析する。チャンバー内の気体中のすべての成分を定量し、その量の総和における酸素の割合を算出することにより、酸素濃度を求めることができる。空間内に含まれる、酸素以外の気体としては、窒素および希ガスなどの不活性ガス、二酸化炭素、および水蒸気などが挙げられる。なお、気体の分析に用いるチャンバー内を満たす不活性ガスと同じ種類の不活性ガスが、空間内に含まれていると、正確な気体の分析が困難となるおそれがある。そこで、空間内に含まれる気体の種類が不明な場合、同じ太陽電池モジュールを2つ用意し、チャンバー内を満たす不活性ガスとして、互いに異なる種類の不活性ガスを用いて、2つの太陽電池モジュールについてそれぞれ上記の手順で気体の分析を行う。2つの分析結果を比較することで、空間内に含まれる気体の組成を求めることができる。このようにして太陽電池の空間内における酸素濃度を測定することにより、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度を求めることができる。
【0185】
カバー部40の一部は、支持部10と接していてもよい。
【0186】
カバー部40は、異なる2以上の層からなっていてもよい。
【0187】
図7は、第2実施形態の太陽電池の第5構成例を模式的に示す断面図である。
【0188】
図7に示される太陽電池240は、外装体1と、光電変換素子20と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備え、第2封止部は、支持部10と、カバー部40とを構成する。カバー部40は、カバー部の第1部分40aおよびカバー部の第2部分40bを含む。第1封止部30、第1部分40aおよび第2部分40bに囲まれて第2空間53が形成されている。第1封止部30は、支持部10に支持された光電変換素子20の表面を被覆している。すなわち、太陽電池240は、太陽電池230におけるカバー部40が、第1部分40aおよび第2部分40bを含む構成に相当する。
【0189】
図7に示されるように、第1部分40aは、支持部10と離れて対向するように配置されてもよい。第1部分40aは、板状部材であってもよい。
【0190】
図7に示されるように、第2部分40bは、支持部10と第1部分40aとの間に配置されてもよい。
【0191】
第2部分40bは、第1封止部30の周縁部と接していてもよく、第2部分40bの当該接する部分と対向する部分は、第1部分40aの周縁部と接していてもよい。これにより、第1封止部30、第1部分40a、および第2部分40bに囲まれている第2空間53を形成することができる。
【0192】
第2封止部が備えるカバー部40は、第1部分40aおよび第2部分40bを含む場合、第1部分40aは、支持部10と離れて対向するように配置されてもよく、第2部分40bは、支持部10と第1部分40aとの間に配置されてもよい。
【0193】
光電変換素子20が、支持部10側から入射する光を吸収して光電変換を行う場合は、第1部分40aは、ガラス基板程度のガスバリア性を有していればよく、光透過性を有していなくてもよい。この場合、第1部分40aの材料の例は、金属板、ガラス基板、セラミックス板、またはプラスチック基板である。プラスチック基板は、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。ここで、プラスチックフィルムの酸素に対するバリア性が乏しい場合は、酸素透過係数が3.05×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下のガスバリア層が、プラスチックフィルム上に形成されていてもよい。
【0194】
光電変換素子20が、支持部10と反対側から入射する光を吸収して光電変換を行う場合は、第1部分40aは、太陽光に対する透過性を有してもよい。この場合、第1部分40aの材料の例は、ガラス基板またはプラスチック基板などの透明基板である。
【0195】
第2部分40bは、ガスバリア性を有し、かつ、支持部10および第1部分40aの両方に対して高い接着性を有していてもよい。
【0196】
第2部分40bの材料の例は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、またはイソプレン‐イソブテン共重合樹脂などの樹脂材料である。
【0197】
第2部分40bの働きにより、実動作期間内における外気から外装体1の内部へのガスの侵入を防ぐことができる。
【0198】
カバー部の第2部分40bは、第1封止部30が含む酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含んでいてもよい。
【0199】
図3から7に示されるように、第1封止部30が、第2封止部が備える支持部10およびカバー部40の間に配置される場合、第1封止部30の厚み、すなわち第1封止部30の第1露出面31と第2露出面32との間の距離の最小値は、0.6μm以上かつ15000μm以下であってもよく、20μm以上かつ10000μm以下であってもよい。また、
図6および7に示されるように、第1封止部30およびカバー部40に囲まれて第2空間が形成される場合、第2空間に接する第1封止部30の表面と第1封止部の第2露出面32との間の距離の最小値は、0.001μm以上かつ15000μm以下であってもよく、0.01μm以上かつ10000μm以下であってもよい。
【0200】
第1封止部30の第1露出面31と第2露出面32との間の距離が0.6μm以上かつ15000μm以下の場合、第1封止部30の酸素透過係数は3.1×10-18cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ1.86×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であってもよい。
【0201】
第1封止部30の第1露出面31と第2露出面32との間の距離が20μm以上かつ10000μm以下の場合、第1封止部30の酸素透過係数は3.1×10-17cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以上かつ1.0×10-9cm3・cm/(cm2・s・cmHg)以下であってもよい。
【0202】
第1封止部30が第1空間内の酸素濃度がペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲になるように機能し、酸素濃度を適切な範囲(例えば、10ppm以上かつ3000ppm以下または100ppm以上かつ3000ppm以下)にできる。
【0203】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態の太陽電池について説明する。第1実施形態および第2実施形態で説明された事項は、適宜、省略され得る。
【0204】
第3実施形態の太陽電池は、第1封止部が、光電変換素子を支持する支持部を構成する。以下、第3実施形態の太陽電池について、第1構成例を用いて、より具体的に説明する。なお、第3実施形態の太陽電池は、以下の第1構成例の太陽電池に限定されない。
【0205】
図8は、第3実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
図8に示される太陽電池300は、光電変換素子20と、外装体1とを備える。外装体1は、第1封止部と、第2封止部60と、を備える。第1封止部は、光電変換素子20を支持する支持部70を構成する。第2封止部は、第1封止部が構成する支持部70に支持された光電変換素子20の表面を被覆している。本明細書では、第1封止部が構成する支持部70を「支持部70」と記載することがある。
【0206】
第1封止部は、外装体1の外部に露出した第1露出面31および外装体1の内部に露出した第2露出面32を有し、かつ第1露出面31と第2露出面32との間で連続している。太陽電池300においては、支持部70を通して、酸素が外装体1の外部と内部との間で透過することができる。
【0207】
図8に示されるように、第2封止部60は、支持部70に支持された光電変換素子20の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。第2封止部60は、支持部70に支持された光電変換素子20の表面全面を被覆していてもよい。
【0208】
第2封止部60は、光電変換素子20の表面に接していてもよい。
【0209】
図8に示されるように、光電変換素子20は、支持部70および第2封止部60に挟まれていてもよい。光電変換素子20は、支持部70に接していてもよい。光電変換素子20は、支持部70および第2封止部60に接していてもよい。
【0210】
図8に示されるように、光電変換素子20は、1つの主面が支持部70に接し、他の主面および側面が、第2封止部60に被覆されていてもよい。
【0211】
外装体1は、第1封止部が構成する支持部70および第2封止部60のみからなっていてもよい。
【0212】
第2封止部60は、2以上の複数の層からなっていてもよい。
【0213】
第1封止部が構成する支持部70は、2以上の複数の層からなっていてもよい。これにより、支持部70内の酸素の拡散速度、または支持部70による酸素透過速度を調整できる。したがって、光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にしやすい。例えば、支持部70は、材料が異なる2以上の層を含んでいてもよい。
【0214】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態の太陽電池について説明する。第1から第3実施形態で説明された事項は、適宜、省略され得る。
【0215】
第4実施形態の太陽電池は、第1封止部30が、支持部10およびカバー部40からなる群より選択される少なくとも1つを、外装体の外部から内部の方向へ貫通するように設けられている。以下、第4実施形態の太陽電池について、第1から第4構成例を用いて、より具体的に説明する。なお、第4実施形態の太陽電池は、以下の第1から第4構成例の太陽電池に限定されない。
【0216】
図9は、第
4実施形態の太陽電池の第1構成例を模式的に示す断面図である。
【0217】
太陽電池400は、光電変換素子20と、外装体1と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備える。第2封止部は、支持部10と、支持部10に支持される光電変換素子20を被覆するカバー部40を構成する。
図9において、カバー部40は支持部10に接する。第1封止部30および第2封止部で囲まれて第1空間50が形成されている。第1封止部30は、支持部10に接して囲まれており、かつ、外装体1の外部から内部まで貫通するように設けられている。すなわち、太陽電池400において、第1封止部30は、支持部10の一部を外装体1の外部から内部まで貫通するように配置されている。
【0218】
図10は、第4実施形態の太陽電池の第2構成例を模式的に示す断面図である。
【0219】
太陽電池410は、光電変換素子20と、外装体1と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備える。第2封止部は、支持部10と、支持部10に支持される光電変換素子20を被覆するカバー部40を構成する。
図10において、カバー部40は支持部10に接する。第1封止部30および第2封止部で囲まれて第1空間50が形成されている。第1封止部30は、カバー部40に接して囲まれており、かつ、外装体1の外部から内部まで貫通するように設けられている。すなわち、太陽電池410において、第1封止部30は、第2封止部が構成するカバー部40の一部を外装体1の外部から内部まで貫通するように配置されている。
【0220】
図11は、第
4実施形態の太陽電池の第3構成例を模式的に示す断面図である。
【0221】
太陽電池420は、光電変換素子20と、外装体1と、を備える。外装体1は、第1封止部30および第2封止部を備える。第2封止部は、支持部10と、支持部10に支持される光電変換素子20を被覆するカバー部40を構成する。
図11において、カバー部40は支持部10に接する。第1封止部30および第2封止部で囲まれて第1空間50が形成されている。第1封止部30は、1)支持部10に接して囲まれており、かつ、外装体1の外部から内部まで貫通するように設けられているものと、2)カバー部40に接して囲まれており、かつ、外装体1の外部から内部まで貫通するように設けられているものと、の2つを含む。すなわち、太陽電池420において、第1封止部30は、支持部10の一部およびカバー部40の一部を外装体1の外部から内部まで貫通するように配置されている。
【0222】
図9から
図11に示されるように、第1封止部30は、光電変換素子20に接していなくてもよい。
【0223】
第1封止部30は、光電変換素子20の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。
【0224】
図12は、第4実施形態の太陽電池の第4構成例を模式的に示す断面図である。
【0225】
図12に示される太陽電池430は、太陽電池400において、支持部10に支持された光電変換素子20の表面が、第1封止部30に被覆されている構成である。
【0226】
支持部10に支持された光電変換素子20の表面の少なくとも一部は、第1封止部30に被覆されていてもよい。
【0227】
外装体1の外部から内部まで貫通するように設けられている第1封止部30の形状は、特に限定されない。
【0228】
第1封止部30が支持部10を貫通するように位置している場合、第1封止部30の形状、すなわち貫通孔の形状は、平面視において円形または楕円形であってもよい。当該形状が円形である場合、貫通孔の直径は100μm以下であってもよい。
【0229】
第1から第4実施形態の太陽電池は、水分ゲッター材および充填材からなる群より選択される少なくとも1つをさらに備えてもよい。水分ゲッター材および充填材からなる群より選択される少なくとも1つは、外装体1と光電変換素子20との間に設けられる。
【0230】
第1空間50、51および第2空間52、53は、水分ゲッター材、水分吸着材、または乾燥材、および充填材からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。これにより、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0231】
水分ゲッター材は、第2封止部の劣化および太陽電池の損傷などによる空間内の水分濃度の急激な上昇を抑制することができる。したがって、光電変換素子20に接する領域の水分濃度を低く保ち、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0232】
水分ゲッター材としては、水分の吸着能力に優れ、空間内に水分を再放出しないものが好ましい。
【0233】
充填材は、太陽電池の機械的強度(特に、耐衝撃性)を向上させることができる。
【0234】
充填材としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、またはポリイミド樹脂などの樹脂材料が挙げられる。
【0235】
充填材が光電変換素子20と接する場合は、充填材は酸素濃度調整材を含んでいてもよい。これにより、充填材および光電変換素子20の界面、すなわち光電変換素子20に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にできる。光電変換素子20に接する領域の酸素濃度は、10ppm以上かつ3000ppm以下でもよく、100ppm以上かつ3000ppm以下でもよい。
【0236】
第1空間50、51および第2空間52、53は、酸素吸収剤または酸素ゲッターを含んでいてもよい。これにより、太陽電池の実動作期間内において、光電変換素子に接する領域の酸素濃度がペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲になるように調整してもよい。
【0237】
[他の実施形態]
(付記)
以上の実施形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0238】
(技術1)
光電変換素子と、
前記光電変換素子の全体を囲う外装体と、
を備え、
前記光電変換素子は、ペロブスカイト化合物を含み、
前記外装体は、第1封止部および第2封止部を含み、
前記第1封止部は、酸素濃度調整材を含み、かつ、前記外装体の外部に露出した第1露出面および前記外装体の内部に露出した第2露出面を有し、かつ前記第1露出面と前記第2露出面との間で連続し、
前記第2封止部は、前記酸素濃度調整材よりも低い酸素透過係数を有する材料を含む、
太陽電池。
【0239】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0240】
(技術2)
前記外装体は、前記第1封止部および前記第2封止部のみからなる、技術1に記載の太陽電池。
【0241】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0242】
(技術3)
前記第1封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を構成する、技術1または2に記載の太陽電池。
【0243】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0244】
(技術4)
前記第2封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆している、技術3に記載の太陽電池。
【0245】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0246】
(技術5)
前記第2封止部は、前記光電変換素子を支持する支持部を備える、技術1または2に記載の太陽電池。
【0247】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0248】
(技術6)
前記第1封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆している、技術5に記載の太陽電池。
【0249】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0250】
(技術7)
前記第1封止部は、前記光電変換素子の前記表面に接している、技術6に記載の太陽電池。
【0251】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0252】
(技術8)
前記第1封止部は、前記光電変換素子の前記表面に接している第1層と、前記第1層上に配置された第2層とを含む、技術7に記載の太陽電池。
【0253】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0254】
(技術9)
前記第2封止部は、前記支持部に支持された前記光電変換素子の表面の少なくとも一部を被覆するカバー部をさらに備える、技術5から8のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0255】
この構成により、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0256】
(技術10)
前記第1封止部は、前記支持部および前記カバー部の間に位置する、技術9に記載の太陽電池。
【0257】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0258】
(技術11)
前記第1封止部は、前記光電変換素子に接していない、技術9または10に記載の太陽電池。
【0259】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0260】
(技術12)
前記第1封止部は、前記支持部および前記カバー部からなる群より選択される少なくとも1つを、前記外装体の前記外部から前記内部の方向へ貫通するように設けられている、技術9から11のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0261】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0262】
(技術13)
前記太陽電池は、前記外装体によって囲まれた第1空間を有し、前記光電変換素子は、前記第1空間の内部に位置している、技術1から12のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0263】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0264】
(技術14)
前記酸素濃度調整材は、無機材料および有機材料からなる群より選択される少なくとも1つを含む、技術1から13のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0265】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0266】
(技術15)
前記無機材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、ゼオライト、多孔質シリカ、多孔性炭素、多孔質セラミック、および金属からなる群より選択される少なくとも1つである、技術14に記載の太陽電池。
【0267】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0268】
(技術16)
前記有機材料は、ホルムアミジニウムヨージド、ホルムアミジニウムブロミド、ホルムアミジニウムクロリド、エチルアンモニウムヨージド、エチルアンモニウムブロミド、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ケイ酸化合物、多孔性配位高分子、クラウンエーテル、シクロデキストリン、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである、技術14に記載の太陽電池。
【0269】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0270】
(技術17)
前記第2封止部は、ガラス、および樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、技術1から16のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0271】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0272】
(技術18)
前記光電変換素子は、第1電極、光電変換層、および第2電極、をこの順に備える、技術1から17のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0273】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0274】
(技術19)
水分ゲッター材および充填材からなる群より選択される少なくとも1つをさらに備え、前記水分ゲッター材および前記充填材からなる群より選択される少なくとも1つは、前記外装体と前記光電変換素子との間に設けられる、技術1から18のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0275】
この構成により、太陽電池の耐久性を向上させることができる。
【0276】
(技術20)
前記光電変換素子に接する領域の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、技術1から19のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0277】
この構成により、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0278】
(技術21)
前記第1封止部の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、技術20に記載の太陽電池。
【0279】
この構成により、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0280】
(技術22)
前記太陽電池は、前記外装体によって囲まれた第1空間を有し、前記光電変換素子は、前記第1空間の内部に位置しており、前記第1空間の酸素濃度が、100ppm以上かつ3000ppm以下である、技術20または21のいずれか一項に記載の太陽電池。
【0281】
この構成により、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【実施例】
【0282】
以下、実施例および比較例を参照しながら、本開示がより詳細に説明される。
【0283】
実施例および比較例において、ペロブスカイト太陽電池を作製し、その太陽電池の初期特性、および、耐光試験後ならびに耐熱試験後の特性を評価した。
【0284】
実施例1、2および比較例1の太陽電池における光電変換素子の各構成は、以下のとおりである。
・基板:ガラス基板(厚さ:0.7mm)
・第1電極:透明電極(インジウム-錫複合酸化物層)(厚さ:200nm)
・電子輸送層:酸化チタン(TiO2)(厚さ:10nm)
・多孔質層:メソポーラス構造酸化チタン(TiO2)
・光電変換層:HC(NH2)2PbI3を主として含む層(厚さ:500nm)
・正孔輸送層:n-ブチルアンモニウムブロミド(greatcellSolar製)を含む層およびPTAAを主として含む層(添加剤として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(東京化成工業製)を含む)(厚さ:50nm)
・第2電極:Au(厚さ:200nm)
【0285】
<光電変換素子の作製>
まず、基板として、0.7mmの厚みを有するガラス基板を用意した。当該基板は、本開示の太陽電池における支持部(第2封止部が備える支持部10)としても機能する。
【0286】
当該基板上に、スパッタ法により、インジウム-錫複合酸化物の層が形成された。このようにして、第1電極が形成された。
【0287】
次に、第1電極上に、スパッタ法により、酸化チタンの層が形成された。このようにして、電子輸送層が形成された。
【0288】
次に、電子輸送層上に、メソポーラス構造を有する酸化チタンの層を形成した。具体的には、30NR-D(Great Cell Solar製)をスピンコートにより塗布した後、500℃で30分間焼成した。このようにして、多孔質層が形成された。
【0289】
次に、多孔質層上に、光電変換材料の原料溶液がスピンコートにより塗布されて、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層が形成された。当該原料溶液は、0.92mol/Lのヨウ化鉛(II)(東京化成工業製)、0.17mol/Lの臭化鉛(II)(東京化成工業製)、0.83mol/Lのヨウ化ホルムアミジニウム(GreatCell Solar製)、0.17mol/Lの臭化メチルアンモニウム(GreatCell Solar製)、0.05mol/Lのヨウ化セシウム(岩谷産業製)、および0.05mol/Lのヨウ化ルビジウム(岩谷産業製)を含んでいた。当該原料溶液の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)(acros製)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(acros製)を、DMSO:DMF=1:4の体積比で混合した混合溶媒であった。
【0290】
次に、光電変換層上に、6.49×10-3mol/Lのn-ブチルアンモニウムブロミドを含む溶液をスピンコート法により塗布した。溶媒は、2-プロパノールであった。さらに、正孔輸送材料の原料溶液をスピンコート法により塗布することにより、正孔輸送層を形成した。原料溶液の溶媒は、トルエン(acros製)であり、その溶液は10g/LのPTAAを含んでいた。
【0291】
次に、正孔輸送層上に、真空蒸着によってAu膜を堆積させることにより、第2電極が形成された。
【0292】
以上により、支持部であるガラス基板上に、実施例1、2および比較例1の太陽電池に用いる光電変換素子が得られた。
【0293】
実施例3および実施例4の太陽電池における光電変換素子の各構成は、以下のとおりである。実施例3および実施例4の太陽電池における光電変換素子は、中間層を有する。
・基板:ガラス基板(厚さ:0.7mm)
・第1電極:透明電極(インジウム-錫複合酸化物層)(厚さ:200nm)
・電子輸送層:酸化チタン(TiO2)(厚さ:10nm)
・多孔質層:メソポーラス構造酸化チタン(TiO2)
・中間層:4-(1′,5′-Dihydro-1′-methyl-2′H-[5,6]fullereno-C60-Ih-[1,9-c]pyrrol-2′-yl)benzoic acid(Sigma-Aldrich製)
・光電変換層:HC(NH2)2PbI3を主として含む層(厚さ:500nm)
・正孔輸送層:n-ブチルアンモニウムブロミド(greatcellSolar製)を含む層およびPTAAを主として含む層(添加剤として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(東京化成工業製)を含む)(厚さ:50nm)
・第2電極:Au(厚さ:200nm)
【0294】
<光電変換素子の作製>
まず、0.7mmの厚みを有するガラス基板を用意した。当該基板は、本開示の太陽電池における支持部としても機能する。
【0295】
当該基板上に、スパッタ法により、インジウム-錫複合酸化物の層が形成された。このようにして、第1電極が形成された。
【0296】
次に、第1電極上に、スパッタ法により、酸化チタンの層が形成された。このようにして、電子輸送層が形成された。
【0297】
次に、電子輸送層上に、メソポーラス構造を有する酸化チタンの層を形成した。具体的には、30NR-D(Great Cell Solar製)をスピンコートにより塗布した後、500℃で30分間焼成した。このようにして、多孔質層が形成された。
【0298】
次に、多孔質層まで形成された基板を、C60SAM溶液中に30分間浸漬させた後、取り出した。ここで、C60SAM溶液は、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬製)とエタノール(富士フイルム和光純薬製)とが1:1の体積比で混合された混合溶液に、C60SAMを濃度が1×10-5mol/Lとなるように添加することで得られた。溶液から取り出した基板をエタノール溶液で十分にリンスした後、ホットプレートを用いて100℃で、30分間アニールした。アニール後に、室温へ自然冷却することにより、多孔質層上にC60SAMが修飾された。このようにして、中間層が形成された。
【0299】
次に、中間層上に、光電変換材料の原料溶液がスピンコートにより塗布されて、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層が形成された。当該原料溶液は、0.92mol/Lのヨウ化鉛(II)(東京化成工業製)、0.17mol/Lの臭化鉛(II)(東京化成工業製)、0.83mol/Lのヨウ化ホルムアミジニウム(GreatCell Solar製)、0.17mol/Lの臭化メチルアンモニウム(GreatCell Solar製)、0.05mol/Lのヨウ化セシウム(岩谷産業製)、および0.05mol/Lのヨウ化ルビジウム(岩谷産業製)を含んでいた。当該原料溶液の溶媒は、DMSO(acros製)およびDMF(acros製)を、DMSO:DMF=1:4の体積比で混合した混合溶媒であった。
【0300】
次に、光電変換層上に、6.49×10-3mol/Lのn-ブチルアンモニウムブロミドを含む溶液をスピンコート法により塗布した。溶媒は、2-プロパノールであった。さらに、正孔輸送材料の原料溶液をスピンコート法により塗布することにより、正孔輸送層を形成した。原料溶液の溶媒は、トルエン(acros製)であり、その溶液は10g/LのPTAAを含んでいた。
【0301】
次に、正孔輸送層上に、真空蒸着によってAu膜を堆積させることにより、第2電極が形成された。
【0302】
以上により、支持部であるガラス基板上に実施例3および実施例4の太陽電池に用いる光電変換素子が得られた。
【0303】
<太陽電池の作製>
(実施例1)
実施例1では、光電変換素子の第2電極上に、酸素濃度調整材を含む原料溶液をスピンコート法により塗布することにより、第1封止部が形成された。当該原料溶液の溶媒は、2-プロパノールであり、その溶液は15質量%のアルミナナノ粒子(CIKナノテック製)を含んでいた。第1封止部は、光電変換素子のガラス基板と接する面以外の面を被覆するように形成された。
【0304】
次に、酸素濃度および水分濃度が0.1ppm以下に調整されたグローブボックス内で、第2封止部が形成された。第2封止部としてカバーガラスおよびUV硬化樹脂が用いられた。カバーガラスが第2封止部の第1部分40aに相当し、UV硬化樹脂が第2封止部の第2部分40bに相当する。第1封止部、カバーガラス、およびUV硬化樹脂によって囲まれる第2空間が形成されるように、第1封止部上に第2封止部が形成された。
【0305】
以上により、実施例1の太陽電池が得られた。
【0306】
実施例1の太陽電池は、
図7に示した構造を有する。すなわち、光電変換素子20は、支持部10(基板)および第1封止部30に挟まれるようにして被覆されていた。第1封止部30、第2封止部が備えるカバー部の第1部分40a(カバーガラス)、および第2封止部が備えるカバー部の第2部分40b(UV硬化樹脂)によって第2空間53が形成されていた。ここで、外装体1の体積に対する第1封止部30の体積の割合は0.025%であり、第1封止部30の厚みは2000μmであり、第2空間53に接する第1封止部30の表面と第1封止部30の第2露出面32との距離の最小値は0.46μmであった。
【0307】
(実施例2)
実施例2では、第1封止部の原料溶液の溶媒は、2-プロパノールであり、その溶液は50g/Lのホルムアミジニウムヨージドを含んでいた。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の太陽電池が得られた。実施例2の太陽電池は、実施例1と同様に、
図7に示した構造を有する。ここで、外装体1の体積に対する第1封止部30の体積の割合は0.011%であり、第1封止部30の厚みは2000μmであり、第2空間53に接する第1封止部30の表面と第1封止部30の第2露出面32との距離の最小値は0.2μmであった。
【0308】
(実施例3)
実施例3では、酸素濃度調整材を含む原料溶液が1.5質量%のアルミナナノ粒子(CIKナノテック製)を含むこと以外、実施例1と同様にして、実施例3の太陽電池が得られた。実施例3の太陽電池は、実施例1と同様に、
図7に示した構造を有する。ここで、外装体1の体積に対する第1封止部30の体積の割合は0.0021%であり、第1封止部30の厚みは2000μmであり、第2空間53に接する第1封止部30の表面と第1封止部30の第2露出面32との距離の最小値は0.04μmであった。
【0309】
(実施例4)
実施例4では、第1封止部の原料溶液は、アモルファスフッ素樹脂であるCYTOP(CTL-109AE、AGC製)を専用溶媒で希釈したものを使用した。それ以外は、実施例3と同様にして、実施例4の太陽電池が得られた。実施例4の太陽電池は、実施例1と同様に、
図7に示した構造を有する。なお、CYTOPは、AGC株式会社の登録商標である。ここで、外装体1の体積に対する第1封止部30の体積の割合は0.0011%であり、第1封止部30の厚みは2000μmであり、第2空間53に接する第1封止部30の表面と第1封止部30の第2露出面32との距離の最小値は0.02μmであった。
【0310】
(比較例1)
酸素濃度および水分濃度が0.1ppm以下に調整されたグローブボックス内で、ガラス基板、カバーガラス、およびUV硬化樹脂によって囲まれる空間が形成されるように、かつ、当該封止空間内に光電変換素子が位置するように、ガラス基板上にカバーガラスおよびUV硬化樹脂を配置した。このようにして、比較例1の太陽電池が得られた。すなわち、比較例1の太陽電池は、外装体が第1封止部及び第2封止部を含んでいなかった。
【0311】
比較例1の太陽電池の外装体は酸素濃度調整材を含む第1封止部を含まないため、太陽電池の空間内の酸素濃度は、0.1ppm以下である。すなわち、比較例1の太陽電池における光電変換素子に接する領域の酸素濃度は、0.1ppm以下である。
【0312】
<光電変換効率の測定>
実施例1から4および比較例1の太陽電池の光電変換効率を測定した。
【0313】
光電変換効率の測定には、電気化学アナライザ(ALS440B、BAS製)およびキセノン光源(BPS X300BA、分光計器製)を用いた。測定前に、シリコンフォトダイオードを用いて光強度を1Sun(100mW/cm2)に校正した。電圧の掃引速度は100mV/sで行った。測定開始前に、光照射および長時間の順バイアス印加のような事前調整は行わなかった。実効面積を固定し散乱光の影響を減少させるために、開口部0.1cm2の黒色マスクで太陽電池をマスクした状態で、マスクがされたガラス基板側から光を照射した。光電変換効率の測定は、室温で、乾燥空気(<2%RH)下で行った。
【0314】
以上のようにして測定された開放電圧(VOC)、短絡電流密度(JSC)、フィル・ファクター(FF)、および光電変換効率(Eff)が、表1に示される。
【0315】
【0316】
<耐光試験>
実施例1および比較例1の太陽電池について、耐光試験を実施した。
【0317】
耐光試験では、太陽電池の電圧および電流を最適動作点近傍に維持しつつ、基板側から1Sun相当の光が、基板の温度を50℃に維持しながら、9時間照射された。光照射後0時間および9時間における実施例1および比較例1の太陽電池の光電変換効率が、上記の方法で、測定された。
【0318】
実施例1および比較例1の太陽電池の光照射後0時間および9時間における光電変換効率、および光劣化率が、表2に示される。
【0319】
【0320】
<耐熱試験>
実施例1から4および比較例1の太陽電池について、耐熱試験を実施した。
【0321】
耐熱試験では、太陽電池は恒温槽中にて85℃に維持された。実施例1から2および比較例1では、耐熱試験は100時間行われた。すなわち、85℃に100時間維持された。実施例3および実施例4では、耐熱試験は70時間行われた。すなわち、85℃に70時間維持された。
【0322】
耐熱試験後に、上記の方法で、太陽電池の特性が測定された。測定された太陽電池特性が、表3に示される。
【0323】
【0324】
<考察>
(初期の太陽電池特性に対する第1封止部の効果について)
表1に示されるように、実施例1、2と比較例1を比較した場合、第1封止部の導入により、初期の光電変換効率が向上した。特に、VOCおよびFFが改善されていることから、ペロブスカイト表面および粒界の欠陥が低減されたことを示唆している。つまり、ペロブスカイト化合物と微量酸素との反応生成物およびペロブスカイトの分解生成物がペロブスカイト表面または粒界に長期的に安定して存在し、それら生成物がキャリア移動を阻害しない厚さを持ってペロブスカイトの欠陥を効果的に終端したものと推察される。以上の結果は、光電変換素子に接する領域の酸素濃度が、第1封止部の働きにより最適な濃度範囲(100ppm以上3000ppm以下)に調整されたことを意味している。
【0325】
実施例3と実施例4とを比較すると、初期の光電変換効率が実施例3の方がより高い。これは、実施例4の第1封止部として用いたアモルファスフッ素樹脂は、酸素透過係数のカタログ値(2018年7月)が8.34×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)であり、酸素透過係数が高いため、光電変換素子に接する領域の酸素濃度調整が実施例3と比べると不十分であったことを示している。したがって、酸素濃度調整材の酸素透過係数が8.34×10-10cm3・cm/(cm2・s・cmHg)より低いと、ペロブスカイト太陽電池の初期特性をより向上できるといえる。
【0326】
(耐光試験後の太陽電池特性に対する酸素濃度の効果について)
表2に示されるように、実施例1と比較例1を比較した場合、酸素濃度調整層の導入により光劣化率が低下しており、耐光性が改善された。これは、初期特性と同様に、酸素濃度調整層の働きにより、光電変換素子に接する領域の酸素濃度が最適な濃度範囲に調整され、光照射下における欠陥終端が十分になされたためと考えられる。
【0327】
(耐熱試験後の太陽電池特性に対する酸素濃度の効果について)
表3に示されるように、実施例1および2と比較例1とを比較した場合、第1封止部の導入により、耐熱試験後の光電変換効率は大幅に改善された。また、実施例3および4と比較例1とを比較した場合、中間層の有無の違いはあるものの、耐熱試験前後の光電変換効率の数値から、第1封止部の導入により、耐熱試験による光電変換効率の劣化が抑えられていることがわかる。以上から、実施例1から4の太陽電池は耐久性を有していた。比較例1の太陽電池は耐久性が低かった。これは、初期特性と同様に、第1封止部の働きにより、封止空間内の酸素濃度が最適な濃度範囲に調整され、加熱状態における欠陥終端が十分になされたためと考えられる。また、実施例3と実施例4とを比較した場合、実施例3のほうが実施例4よりも耐熱試験による光電変換効率の劣化がより抑制されており、実施例3のほうが実施例4よりも第2空間内の酸素濃度がより最適な濃度範囲に調整されたことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0328】
本開示は、光電変換素子に接する領域の酸素濃度をペロブスカイト太陽電池に適した低濃度の範囲にすることで、太陽電池の耐久性を大幅に向上させることができるものであり、産業上の利用の可能性が極めて高いといえる。